説明

椅子の支持構造物およびその製造方法

【課題】製造コストを抑制し、デザインの自由度を向上させる。
【解決手段】椅子の支持構造物1は、フレーム2と、フレーム2に張り渡されて着座者を支える膜状部材3とを備え、膜状部材3には、溶融後に固化されて撓み量が変化した変質部4が部分的に設けられている。この支持構造物1の製造方法は、フレーム2に張り渡す前の膜状部材3の一部を溶融させた後、冷却させて固化させて撓み量を変化させた変質部4を膜状部材3に部分的に形成する工程と、変質部4が部分的に形成された膜状部材3をフレーム2に張り渡す工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者を支持するメッシュ材等の膜状部材をフレームに張り渡した椅子の支持構造物およびその製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、膜状部材の撓み量が部分的に異なる椅子の支持構造物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背フレームにメッシュ材等の膜状部材を張り渡した背もたれがある(例えば、特許文献1)。この背もたれは、メッシュ材の着座者の背中を支える部分を目の粗い低密度部とする共に、腰部を支える部分に目の細かい高密度部を形成し、メッシュ材の撓み量を部分的に変えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−112360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の背もたれでは、低密度部と高密度部とが予め編み分けられている出来上がりの生地を、背もたれにした場合に要求される位置に低密度部と高密度部とが配置されるように裁断する必要があり、生地の余剰部分を少なくするような合理的な裁断がし難い。しかも、メッシュ地の目の密度を変えることで撓み量を変化させるので、低密度部と高密度部とが編み分けられている高価な生地を使用する必要がある。これらのため、製造コストが高くなる。
【0005】
また、生地を編む段階で低密度部と高密度部とを形成するので、低密度部と高密度部とで形成される柄のパターンが制限されてしまい、背もたれのデザインの自由度に劣る。
【0006】
そして、これらの問題は背もたれだけに当てはまるものではなく、背もたれ以外の椅子の支持構造物、例えば座、ヘッドレスト、フットレスト等についても同様に当てはまることである。
【0007】
本発明は、製造コストを抑制し、デザインの自由度に優れた椅子の支持構造物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、フレームに膜状部材を張り渡した椅子の支持構造物の製造方法において、フレームに張り渡す前の膜状部材の一部を溶融させた後、冷却させて固化させて撓み量を変化させた変質部を膜状部材に部分的に形成する工程と、変質部が部分的に形成された膜状部材をフレームに張り渡す工程とを備えるものである。
【0009】
ここで、「溶融」には、膜状部材の一部が完全に溶けて液体の状態になる場合を含むことは勿論であるが、完全に溶けきる前の状態であって、冷却させて固化させることでその部分が他の部分よりも伸縮し難くなる程度に溶けた状態(半溶融状態)や、完全な液体の状態にはなっていないが熱によって変形した状態であって、冷却させて固化させることでその部分が他の部分よりも伸縮し難くなる程度に変形した状態(軟化状態)も含まれる。
【0010】
また、請求項2記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、膜状部材の溶融に高周波誘電加熱法を使用しても良いし、請求項3記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、膜状部材の溶融に超音波加熱法を使用しても良いし、請求項4記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、膜状部材に加熱した型を押し付けることで膜状部材を溶融させるようにしても良い。
【0011】
また、請求項5記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、変質部を形成した後、膜状部材を使用する形状に裁断するようにしても良いし、請求項6記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、膜状部材を使用する形状に裁断した後、変質部を形成するようにしても良い。
【0012】
また、請求項7記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、フレームは背もたれのフレームであり、膜状部材の着座者の腰部のサポート位置に変質部を設けるようにしても良く、請求項8記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、フレームは座のフレームであり、膜状部材の着座者の膝裏近傍の脚部のサポート位置に変質部を設けるようにしても良い。
【0013】
さらに、請求項9記載の発明は、フレームと、フレームに張り渡されて着座者を支える膜状部材とを備え、膜状部材には、溶融後に固化されて撓み量が変化した変質部が部分的に設けられているものである。膜状部材の一部を一旦溶融させた後に冷却して固化させることで形成される変質部は、他の部分よりも伸縮し難くなる。そのため、着座者を支える膜状部材の撓み量を部分的に変えることができる。
【0014】
また、請求項10記載の椅子の支持構造物のように、膜状部材を張り渡すフレームが背もたれのフレームであり、変質部が膜状部材の着座者の腰部サポート位置に設けられているものとしても良いし、請求項11記載の椅子の支持構造物のように、膜状部材を張り渡すフレームが座のフレームであり、変質部が膜状部材の着座者の膝裏近傍の脚部のサポート位置に設けられているものとしても良い。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の椅子の支持構造物の製造方法によれば、着座者を支える支持構造物として要求される位置に合わせて膜状部材に変質部を形成することができ、支持構造物として要求される位置の撓み量を変化させることができる。そのため、膜状部材として予め張力を部分的に変えた特殊で高価な生地を使用する必要がなくなり、一般的に広く流通している安価な生地の使用が可能となり、製造コストを安くすることができる。また、膜状部材となる生地の裁断を考慮して変質部を形成する位置を決定することで、生地を合理的に裁断することが可能になり、生地の余剰部分の発生を抑えてこの点からも製造コストを安くすることができる。
【0016】
また、膜状部材となる生地に後から柄となる変質部を形成するので、生地を編む段階で柄を形成する場合に比べて柄のバリエーションを増やすことができ、支持構造物のデザインの自由度を向上させることができる。
【0017】
ここで、請求項2記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、膜状部材の溶融に高周波誘電加熱法を使用しても良いし、請求項3記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、膜状部材の溶融に超音波加熱法を使用しても良いし、請求項4記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、膜状部材に加熱した型を押し付けることで膜状部材を溶融させるようにしても良い。これらの加熱手段はいずれも溶着技術で広く使用されており、高品質の変質部を安定して形成することができると共に、溶着装置をそのまま利用することができて製造コストを安く抑えることができる。
【0018】
また、請求項5記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、変質部を形成した後、膜状部材を使用する形状に裁断しても良く、請求項6記載の椅子の支持構造物の製造方法のように、膜状部材を使用する形状に裁断した後、変質部を形成するようにしても良い。
【0019】
また、請求項7記載の椅子の支持構造物の製造方法によれば、背もたれを製造することができる。さらに、請求項8記載の椅子の支持構造物の製造方法によれば、座を製造することができる。
【0020】
また、請求項9記載の椅子の支持構造物によれば、膜状部材をフレームに張り渡す前の段階で、フレームに張り渡した状態で要求される位置に合わせて膜状部材に変質部を形成することで、変質部を形成した膜状部材をフレームに張り渡すことで支持構造物として要求される位置の撓み量を変化させることができる。そのため、膜状部材として予め張力を部分的に変えた特殊で高価な生地を使用する必要がなくなり、一般的に広く流通している安価な生地の使用が可能となり、製造コストを安くすることができる。また、膜状部材となる生地の裁断を考慮して変質部を形成する位置を決定することで、生地を合理的に裁断することが可能になり、生地の余剰部分の発生を抑えてこの点からも製造コストを安くすることができる。
【0021】
また、膜状部材となる生地に後から柄となる変質部を形成するので、生地を編む段階で柄を形成する場合に比べて柄のバリエーションを増やすことができ、支持構造物のデザインの自由度を向上させることができる。
【0022】
ここで、椅子の支持構造物としては、フレームに張り渡した膜状部材で着座者を支えるものであれば特に制限されるものではなく、背もたれ(請求項10)としても良いし、座(請求項11)としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の椅子の支持構造物の実施形態の一例を示し、背もたれに適用した場合の椅子の正面図である。
【図2】本発明の椅子の支持構造物の製造方法の実施形態の一例を示し、(A)は膜状部材となる生地を示す概略構成図、(B)は膜状部材に変質部を形成した状態を示す概略構成図、(C)は膜状部材を使用する形状に裁断した状態を示す概略構成図、(D)膜状部材をフレームに張り渡した状態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の椅子の支持構造物の他の実施形態を示し、背もたれに適用した場合の椅子の正面図である。
【図4】本発明の椅子の支持構造物の更に他の実施形態を示し、座に適用した場合の椅子の平面図である。
【図5】本発明の椅子の支持構造物の製造方法の他の実施形態を示し、(A)は膜状部材となる生地を示す概略構成図、(B)は膜状部材を使用する形状に裁断した状態を示す概略構成図、(C)は膜状部材に変質部を形成した状態を示す概略構成図、(D)膜状部材をフレームに張り渡した状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態では、椅子の支持構造物として背もたれを例に説明するが、必ずしも背もたれに限られず、着座者を支える支持構造物、例えば座,ヘッドレスト,フットレスト等についても適用可能である。
【0025】
図1に、本発明の椅子の支持構造物の実施形態の一例を示す。椅子の支持構造物(以下、単に支持構造物という)1は、フレーム2と、フレーム2に張り渡されて着座者を支える膜状部材3とを備え、膜状部材3には、溶融後に固化されて撓み量が変化した変質部4が部分的に設けられている。本実施形態のフレーム2は背もたれのフレームであり、変質部4は膜状部材3の着座者の腰部サポート位置5に設けられている。
【0026】
本実施形態では、フレーム2を枠状のものとしているが、必ずしも枠状のフレームに限られない。例えば、フレーム2を左右一対の棒状のフレームとし、左右の棒状フレームの間に膜状部材3を張り渡すようにしても良いし、あるいは、フレーム2を前後一対の棒状のフレームとし、前後の棒状フレームの間に膜状部材3を張り渡すようにしても良い。即ち、フレーム2の形状は、膜状部材3を張り渡すことができるものであれば特に制限されない。
【0027】
膜状部材3は着座者の背および腰を支えるものであり、伸縮し弾力性をもって着座者を支える。膜状部材3は、加熱と冷却により変質部4を形成することができる材料で伸縮可能に形成されたメッシュ材,ネット材,布,合皮等の膜状部材である。加熱と冷却により変質部4を形成することができる材料としては、例えばポリエステル、塩化ビニル等の熱可塑性樹脂がある。材料自体の伸縮性によって膜状部材3を伸縮可能にしても良いし、編み方や織り方によって膜状部材3を伸縮可能にしても良い。例えば、熱可塑性樹脂製の糸をメッシュ状に編むことで、変質部4を形成することができ且つ伸縮可能な膜状部材3が形成される。
【0028】
本実施形態では、膜状部材3の上辺および左右両辺にフレーム2を通すための筒状部が形成されており、当該筒状部にフレーム2を通すことで膜状部材3を所定のテンション(張力)で張り渡すようにしている。ただし、膜状部材3をフレーム2に張り渡す手段はこれに限られず、例えば膜状部材3の縁を前後方向に半割されたフレーム2に挟み込んだり、フレーム2の裏側に設けたフックに引っ掛けることで張り渡すようにしても良く、あるいは、膜状部材3の縁に樹脂コードを縫製すると共にフレーム2の側縁に樹脂コード嵌め込み用の溝を形成し、当該溝に樹脂コードを嵌め込むことで膜状部材3をフレーム2に張り渡すようにしても良く、その他の手段を使用しても良い。
【0029】
変質部4は、膜状部材3を部分的に溶融させた後、冷却し固化させることで形成される。好ましくは、冷却時に、加熱した型でそのまま加圧しながら固化させる。一度溶融させてから固化させた変質部4は他の部分に比べて弾力性が減少して伸縮し難くなり、撓み量が減少する。そのため、膜状部材3に変質部4を部分的に形成することで膜状部材3の撓み量を部分的に変化させることができる。本実施形態では、着座者の腰部をサポートする位置5に、左右方向に長い直線状の変質部4が上下に5段並べて形成されている。腰部サポート位置5に変質部4を設けることで、この位置5を所謂硬くしてサポート性を向上させることができる一方、その他の位置では撓み量を十分に確保してクッション性を良好にし、座り心地を良くすることができる。
【0030】
次に、椅子の支持構造物1の製造方法について説明する。この製造方法は、フレーム2に張り渡す前の膜状部材3の一部を溶融させた後、冷却させて固化させて撓み量を変化させた変質部4を膜状部材3に部分的に形成する工程(図2(B),図5(C))と、変質部4が部分的に形成された膜状部材3をフレーム2に張り渡す工程(図2(D),図5(D))とを備えている。
【0031】
図2に、本実施形態の支持構造物1の製造方法を示す。本実施形態では、膜状部材3に変質部4を形成した後、膜状部材3を使用する形状に裁断するようにしている。即ち、準備した膜状部材3の生地(図2(A))に変質部4を形成し(図2(B))、使用する形状に裁断し(図2(C))、例えば筒状部を形成してフレーム2に張り渡す(図2(D))。
【0032】
膜状部材3を部分的に溶融させて変質部4を形成する手段としては、例えば、高周波エネルギーの電界作用によって膜状部材3そのものを内部から発熱させる高周波誘電加熱法の使用が可能である。高周波誘電加熱法では、物理的な振動がない金型で膜状部材3を挟み込むので表面の仕上がりが綺麗になる。膜状部材3の材質等に応じて加熱に使用する周波数や加熱時間を調整する。使用する装置として、例えば、高周波誘電加熱を行う溶着装置を使用して変質部4を形成することができる。通常の溶着を行う場合には溶着装置に溶着する2部材を重ねてセットするが、膜状部材3に変質部4を形成する場合には膜状部材3のみをセットする。変質部4の形状に合った型を使用することで、所望形状の変質部4を形成することができる。変質部4の形成に一般的に広く普及している溶着装置をそのまま使用することができるので、変質部4を安価に製造することができる。また、高周波誘電加熱法は溶着技術として広く使用された技術であり、高品質の変質部を安定して形成することができる。
【0033】
ここで、5段の変質部4を一度に形成することができる型を使用して一度の加工で5段の変質部4を形成するようにしても良いし、一部の段の変質部4を形成する型を使用して複数回の加工で5段の変質部4を形成するようにしても良い。また、1本の変質部4を1度の加工で形成しても良いし、短い型を使用して1本の変質部4を形成するのに複数回の加工を行うようにしても良い。
【0034】
高周波誘電加熱法は、変質部4を形成する際、溶融させた部分を加圧しながら冷却させるので、変質部4の厚さは他の部分の厚さよりも薄くなると共に目の大きさが変化する。そのため、見た目が変化し、変質部4の形状が膜状部材3の柄となる。
【0035】
膜状部材3の柄は変質部4の形状、大きさ、配置、数等によって決定される。ここで、高周波誘電加熱で使用する型の形状や大きさを変えることで変質部4の形状や大きさを変化させることができる。また、高周波誘電加熱による変質部4の形成では、変質部4の配置や個数を変えることは容易である。したがって、膜状部材3の柄として様々なパターンのものを作り出すのは容易である。即ち、膜状部材3となる生地を編む段階で柄(張力が異なる部分)を形成する場合に比べて柄のパターンを増やすのが容易であり、背もたれとしてのデザインの自由度を向上させることができる。
【0036】
変質部4は、膜状部材3をフレーム2に張り渡す前の段階で、フレーム2に張り渡した状態で撓み量変化が要求される位置(本実施形態では腰部のサポート位置5)に合わせて形成される。したがって、変質部4を形成した膜状部材3をフレーム2に張り渡すことで、背もたれとして要求される位置5の撓み量を変化させることができる。
【0037】
このように、背もたれとして完成させた状態で要求される位置に合わせて変質部4を形成するので、膜状部材3となる生地を合理的に裁断することが可能になり、生地の余剰部分の発生を抑えて製造コストを安くすることができる。また、膜状部材3として予め撓み量を部分的に変えた特殊で高価な生地を使用する必要がなくなり、一般的に広く流通している安価な生地の使用が可能となり、この点からも製造コストを安くすることができる。
【0038】
また、変質部4を形成することでその部分の厚さが他の部分の厚さよりも薄くなるので、膜状部材3に凹凸を形成することができ、凭り掛かった着座者を指圧することができる。
【0039】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0040】
例えば、上述の説明では、変質部4の形状を直線状にしていたが、必ずしもこの形状に限られない。例えば、三角形状,四角形状,五角形状等の多角形状、円形状、ハート形状、雲形状、曲線状、波線状、多角形の枠線状,円形の枠線状等にしても良い。また、変質部4の大きさや数についても様々に変更可能である。図3に円形の枠線状にした場合の例を示す。なお、この例では、複数の変質部4を椅子の左右方向に並べ、その列を上下方向に3段設けているが、これに限られない。この場合にも、膜状部材3の撓み量を部分的に変えてサポート性を向上させることができる。また、一つ一つの変質部4の内側が凸部となり、腰部サポート位置5に多数の凸部を形成して凭り掛かった着座者を指圧することができる。
【0041】
また、上述の説明では、背もたれの腰部サポート位置5に変質部4を設けていたが、腰部サポート位置5以外の位置に変質部4を設けても良い。
【0042】
また、上述の説明では、支持構造物1として背もたれを例にしていたが、適用できる支持構造物1は背もたれに限られず、例えば座、ヘッドレスト、フットレスト等についても適用可能である。座に適用した場合を図4に示す。この場合のフレーム2は座のフレームである。また、この例では膜状部材3の着座者の膝裏近傍の脚部のサポート位置6に変質部4を設けている。このサポート位置6に変質部4を設けることで、膜状部材3のフレーム2に隣接する部位を伸縮し難くして硬くすることができ、座り心地を向上させることができる。ただし、変質部4を設ける位置はこのサポート位置6に限られず、他の位置に変質部4を設けても良い。
【0043】
また、上述の説明では、膜状部材3に変質部4を形成した後、膜状部材3を使用する形状に裁断するようにしていたが、逆に、膜状部材3を使用する形状に裁断した後、変質部4を形成するようにしても良い。この場合の手順を図5に示す。準備した膜状部材3の生地(図5(A))を使用する形状に裁断し(図5(B))、変質部4を形成し(図5(C))、例えば筒状部を形成してフレーム2に張り渡す(図5(D))ようにしても良い。この場合にも、支持構造物1として完成させた状態で要求される位置に合わせて変質部4を形成することができる。
【0044】
また、上述の説明では、膜状部材3の溶融に高周波誘電加熱法を使用していたが、必ずしもこれに限られない。例えば、超音波振動を圧力とともに膜状部材3に加え生じる摩擦熱で加熱する超音波加熱法等の使用も可能である。この場合、例えば、超音波加熱法を行う溶着装置を使用して変質部4を形成することができる。この場合にも、変質部4の形状に合った型を使用することで、所望形状の変質部4を形成することができる。
【0045】
あるいは、膜状部材3に加熱した型を押し付けることで変質部4を形成するようにしても良い(型加熱法)。型を加熱する手段としては、例えばヒータ等の使用が可能である。この場合、例えば熱溶着を行う溶着装置を使用して変質部4を形成することができる。この場合にも、変質部4の形状に合った型を使用することで、所望形状の変質部4を形成することができる。
【0046】
また、膜状部材3の溶融に異なる加熱法を併用しても良い。例えば、高周波誘電加熱法と型加熱法とを併用しても良く、あるいは、高周波誘電加熱法と超音波加熱法との併用、超音波加熱法と型加熱法との併用、高周波誘電加熱法と超音波加熱法と型加熱法との併用でも良く、その他の加熱法を併用しても良い。
【0047】
さらに、膜状部材3の一部分に熱風を当てることで変質部4を形成するようにしても良い。この場合にも、撓み量が他の部分と異なる変質部4を部分的に形成することができる
【符号の説明】
【0048】
1 椅子の支持構造物
2 フレーム
3 膜状部材
4 変質部
5 膜状部材の着座者の腰部サポート位置
6 膜状部材の着座者の膝裏近傍の脚部のサポート位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに膜状部材を張り渡した椅子の支持構造物の製造方法において、前記フレームに張り渡す前の前記膜状部材の一部を溶融させた後、冷却させて固化させて撓み量を変化させた変質部を前記膜状部材に部分的に形成する工程と、前記変質部が部分的に形成された前記膜状部材を前記フレームに張り渡す工程とを備えることを特徴とする椅子の支持構造物の製造方法。
【請求項2】
前記膜状部材の溶融に高周波誘電加熱法を使用することを特徴とする請求項1記載の椅子の支持構造物の製造方法。
【請求項3】
前記膜状部材の溶融に超音波加熱法を使用することを特徴とする請求項1記載の椅子の支持構造物の製造方法。
【請求項4】
前記膜状部材に加熱した型を押し付けることで前記膜状部材を溶融させることを特徴とする請求項1記載の椅子の支持構造物の製造方法。
【請求項5】
前記変質部を形成した後、前記膜状部材を使用する形状に裁断することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の椅子の支持構造物の製造方法。
【請求項6】
前記膜状部材を使用する形状に裁断した後、前記変質部を形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の椅子の支持構造物の製造方法。
【請求項7】
前記フレームは背もたれのフレームであり、前記膜状部材の着座者の腰部のサポート位置に前記変質部を設けることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の椅子の支持構造物の製造方法。
【請求項8】
前記フレームは座のフレームであり、前記膜状部材の着座者の膝裏近傍の脚部のサポート位置に前記変質部を設けることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の椅子の支持構造物の製造方法。
【請求項9】
フレームと、前記フレームに張り渡されて着座者を支える膜状部材とを備え、前記膜状部材には、溶融後に固化されて撓み量が変化した変質部が部分的に設けられていることを特徴とする椅子の支持構造物。
【請求項10】
前記フレームは背もたれのフレームであり、前記変質部は前記膜状部材の着座者の腰部サポート位置に設けられていることを特徴とする請求項9記載の椅子の支持構造物。
【請求項11】
前記フレームは座のフレームであり、前記変質部は前記膜状部材の着座者の膝裏近傍の脚部のサポート位置に設けられていることを特徴とする請求項9記載の椅子の支持構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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