説明

椅子式マッサージ機

【課題】エアポンプの動作音の防音性能を向上して、静かに快適にマッサージを受けることのできるマッサージ機を提供する。
【解決手段】被施療部にマッサージを与えるエアバックに空気を供給するエアポンプ20を、椅子の座部の下方空間に配置した椅子式マッサージ機で、エアポンプ20を防音用クッション材60で包む。エアポンプ20は取付脚を具え、防音用クッション材60は取付脚を通すための穴64を有し、取付脚60を穴に通した上で取付板50上に装着する。防音用クッション材60により、エアポンプ20の動作音の伝播を大幅に抑えることができると共に、振動も吸収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張と収縮を繰返すエアバックによりマッサージするマッサージ機に関する。マッサージ機としては、座部や背凭れ部を有する椅子式マッサージ機の他、脚部だけをマッサージするマッサージ機やベッド式マッサージ機でもよい。
【背景技術】
【0002】
従来、座部や背凭れ部を有する椅子式マッサージ機で、膨張と収縮を繰返すエアバックによりマッサージするものは、エアバックに空気を供給するエアポンプを、座部の下方空間に配置している(例えば特許文献1参照)。エアポンプとしては、特許文献2にみられるような、電磁振動型ポンプが広く用いられている。
【特許文献1】特開2005−211201号公報
【特許文献2】特許第2609066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エアポンプの動作音は大きく、静かな室内での使用に際には、不快感を覚えるものである。そこで特許文献1のマッサージ機では、防音するためにエアポンプを鉄板製のカバーにより覆っている。
【0004】
しかしながら、エアポンプと鉄板製カバーとの間はかなり大きな隙間があり、充分に動作音を遮蔽することはできず、不快感を解消するまでには至らなかった。
【0005】
本発明の目的は、エアポンプの動作音の防音性能を向上して、静かに快適にマッサージを受けることのできるマッサージ機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係わる発明は、空気の供給による膨張と空気の排気による収縮を繰返すことにより被施療部にマッサージを与えるエアバックを具え、エアバックに空気を供給するエアポンプを椅子の座部の下方空間に配置した椅子式マッサージ機において、エアポンプを防音用クッション材で包んだものである。
【0007】
また請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明に加えて、エアポンプは取付脚を具え、防音用クッション材は取付脚を通すための穴を有し、取付脚を前記孔に通した上で取付板上に装着することにより、防音用クッション材で包まれたエアポンプを取付板上に設置したものである。
【0008】
また請求項3に係わる発明は、請求項1に係わる発明に加えて、防音用クッション材は帯状をしており、エアポンプをマッサージ機の前後方向に包んだものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係わる発明によれば、エアポンプを防音用クッション材で直接包み込んでいるので、エアポンプの動作音の伝播を大幅に抑えることができ、静かで快適にマッサージを受けることができる。
【0010】
請求項2に係わる発明によれば、防音用クッション材は、エアポンプを取付板上に装着する際にエアポンプの取付脚によって同時に装着することができ、エアポンプに接着剤で貼り付けたり、テープで貼り付けたりする必要はなく、作業性を向上できる。また、エアポンプと取付板との間に防音用クッション材が介在されるので、エアポンプの動作時における振動を吸収して取付板に伝播するのを抑制することができる。
【0011】
請求項3に係わる発明によれば、帯状の防音用クッション材を、エアポンプの前後方向に包み込むというだけで、効果的にエアポンプの動作音を防音することができる。椅子式マッサージ機においては、座部下方の左右両側は、通常上記特許文献1のマッサージ機のように塞がっているのに対して、座部下方の前後方向(特に後方)は、開放されているのが一般的であり、この開放されている側から動作音が周囲へ漏れやすいところ、請求項3のように、防音用クッション材をエアポンプの前後方向に包み込むことにより、座部下方の開放された側からの動作音の漏れを防止でき、効果的な防音を行えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図に説明する。ここで便宜上、椅子に座った被施療者の右手側を右方、左手側を左方、胸側を前方、背中側を後方とする。図1は椅子式マッサージ機1の右前方から見た斜視図、図2は同マッサージ機の左後方から見た斜視図で、後述する左側の側板8を外した状態である。
【0013】
椅子式マッサージ機1は、被施療者が腰掛ける座部2の後方に背凭れ部3、前方に被施療者のふくらはぎを載置するふくらはぎ載置部4とふくらはぎ載置部4の下端に連結される被施療者の足先を置く足先載置部5からなるフットレスト6、左右のアームレスト7、アームレスト7が取付けられる左右の側板8、これら座部2、背凭れ部3、フットレスト6、側板8等を支持する角材やパイプ材からなるフレーム構造9を具えて構成される。
【0014】
背凭れ部3は、座部2に対して起倒可能且つ任意の位置で位置決め可能に連結される。ふくらはぎ載置部4は、座部2の前方に上下に回動自在に且つ任意の位置で位置決め可能に連結される。また足先載置部5は、ふくらはぎ載置部4に回動自在に連結される。
【0015】
背凭れ部3内には、被施療者の肩、背中、腰等を揉んだり叩いたりする公知のマッサージ装置(図示せず)が、背凭れ部3に沿って昇降可能に配備される。また背凭れ部3の上部には枕91が取り付けられている。座部2の下方空間の前方は化粧カバー90で覆われている。化粧カバー90は、補強のため水平方向に複数の突部が形成されている。背凭れ部3内のマッサージ装置としては、エアポンプからの空気の供給による膨張と空気の排気による収縮を繰り返すことにより被施療部にマッサージを与えるエアバックを用いたものでもよい。
【0016】
ふくらはぎ載置部4は、図1に示すように、被施療者の左右のふくらはぎを夫々挿入する一対の樋状凹部10、10を有している。各樋状凹部10の内側面には、ふくらはぎを側面から押圧する側面エアバック(ふくらはぎ載置部4全体を覆う布カバーにより隠れて見えない)が配備され、この側面エアバックは、エアポンプ20(図4参照)からの空気の供給を受けることにより膨張して、ふくらはぎを側方から押圧し、供給された空気を排気することにより収縮して押圧を解除し、この膨張収縮を繰り返すことによりふくらはぎをマッサージする。
【0017】
足先載置部5も、図1に示すように、被施療者の左右の足先(踝よりも先の部分)を夫々挿入する一対の樋状凹部11、11を有している。各樋状凹部11の内側面には、足先を側面から押圧する側面エアバック(足先載置部5全体を覆う布カバーにより隠れて見えない)が配備され、この側面エアバックも、エアポンプ20からの空気の供給を受けることにより膨張して、足先を側方から押圧し、供給された空気を排気することにより収縮して押圧を解除し、この膨張収縮を繰り返すことにより足先をマッサージする。
【0018】
図2において、21は、座部2の裏面のフレーム9と背凭れ部3の下端間に設けられた背凭れ部3を起倒させる周知のガススプリングよりなる起倒装置で、伸びると背凭れ部3を起こし、縮むと背凭れ部3を倒す。22は、フットレスト6と下側のフレーム9との間に設けられた周知のガススプリングよりなる回動装置で、伸びるとフットレスト6を上方へ回動して持ち上げ、縮むと下方へ回動して図1の状態に戻すものである。フットレスト6が回動しても足先載置部5は略水平状態を保ったまま持ち上げられる。
【0019】
座部2は、その高さが図の如く後方より前方が高くなっており、この座部2の下方前方空間の右寄りには、背凭れ部3やフットレスト6内のマッサージ装置やエアバックを電気的に制御する回路基板23や電子部品24、さらには前記エアポンプ20や電磁弁25等を内蔵した制御ボックス26が配置されている。制御ボックス26は、図3や図4に示す如く、上下2段構造になっている。
【0020】
下側のボックス27は、下側のフレーム9上に取り付けられた取付板50と、取付板50上に取り付けられ、エアポンプ20等を囲む鋼板製の第1カバー51より構成される。下側ボックス27の内部に、前記エアポンプ20や、エアポンプ20から前記側面エアバックへの空気供給路に介在されて側面エアバックへの空気の供給及び側面エアバックからの空気の排気を制御する複数の電磁弁25や、トランス28等が配置されている。エアポンプ20は、後述するように、防音用クッション材60を介して取付板50上に取り付けられている。エアポンプとしては、電磁振動型のものが用いられる。
【0021】
上側のボックス29は、第1カバー51の天面30と、天面30上に取り付けられる樹脂製の第2カバー31より構成され、内部に、電子部品24を搭載した回路基板23が天面30から浮かせた状態で天面30に取り付けられている。
【0022】
このように制御ボックス26を上下2段構造にすることにより、設置スペースを最小限に抑えることができ(本実施例では座部2の下方空間の前方右側に寄せることができ)残りのスペースに、背凭れ部3やフットレスト6を回動させるガススプリング21、22を無理なく配置できる。また制御ボックス26の高さは高くなるが、座部2の下方空間のうち高さの高くなった前方に配置しているので、無理なく配置することができる。
【0023】
前記上側のボックス29からは、回路基板23上の複数のコネクタと接続された配線コード群33が外部へ引き出され、マッサージ装置のモータ等からなるマッサージ駆動部に接続される。第2カバー31には、配線コード群33を引き出すための引出口34が形成される。この引出口34は、第2カバー31の下端より(前記天面30側より)切り欠いて形成される。
【0024】
天面30上の引出口34内に位置する箇所には、図5に示すような樹脂製のホルダー35が取り付けられている。ホルダー35は、その下端2箇所より突接した突起36を天面30に設けた穴に嵌め込んで位置決したのち、ネジ37で天面30に取り付けられる。ホルダー35の回路基板23側には、回路基板23より高い位置までコード載置壁38が突設されている。(図4の円内拡大図参照)またホルダー35の下面には、コードバンド39のガイド溝40が形成されている。(図5参照)
配線コードは束にしてホルダー35にコードバンド39でもって固定され、一つの配線コード群33となる。コードバンド39はホルダー35下面の溝40に嵌っているので、ずれることはない。そして第2カバー31を天面30上に取り付ける。この際、ホルダー35は引出口34内に位置する。つまり、配線コード群33は、ホルダー35と引出口34より構成される狭い空間を通って引き出される。
【0025】
このような構成にしたことにより、引出口34からカバー31内への手指の侵入がホルダー35によって阻止でき、回路基板23や電子部品24に触わることはできず、安全性を確保することができる。
【0026】
またホルダー35に、配線コード群33を締結部材であるコードバンド39によって固定しているので、配線コード群33を引っ張ってもホルダー35で受け止めることができ、配線コードがコネクタから外れることを防止できる。
【0027】
図6は第1カバー51を除いた状態の取付板50を示し、取付板50には、前記エアポンプ20、複数の電磁弁25、複数のトランス28等が装着されている。エアポンプ20は、2本のエア吐出ホース61、61を有し、これらはジョイントピース62に接続されて一つになり、図示しないサージタンクを介して電磁弁25の入口25aに接続される。各電磁弁25の出口25bが夫々エアバックに接続されている。図6では、複数の出口25bのうち一つだけ、エアバックへの接続ホース25cを図示している。
【0028】
而して、エアポンプ20は、図の如く、スポンジ等からなる防音用クッション材60で包み込まれている。クッション材60は帯状のもので、座部2の前後方向(マッサージ機の前後方向)にエアポンプ20を包み込んでいる。図6で、左下方向が前方、右上方向が後方になる。
【0029】
詳述するに、エアポンプ20の下面には、4本の段付クッションからなる取付脚63を具え、防音用クッション材60の両端部には、取付脚63を通すための穴64を有し、防音用クッション材60をエアポンプ20に巻き付ける際に、前記孔64に取付脚63を通し、その上で、取付脚63を取付板50に形成した挿入孔65に挿入し、段付クッション63の段部63aに挿入孔65の周縁を係着することにより、防音用クッション材60で包まれたエアポンプ20を取付板50上に取り付けている。図7は、防音用クッション材60で包み込んだ状態のエアポンプ20を取付板50上へ取り付ける前の状態を示す。
【0030】
このように防音用クッション材60は、エアポンプ20を取付板50上に装着する際に、エアポンプの取付脚63によって同時に装着することができる。従って、防音用クッション材60をエアポンプ20に接着剤で貼り付けたり、テープで貼り付けたりする必要はなく、作業性を向上できる。
【0031】
ところで、エアポンプ20の動作音の周囲への伝播は、エアポンプ20を鋼板製の第1カバー51で覆うことにより、ある程度は軽減されるが、さらにエアポンプ20を防音用クッション材60で直接包み込むことにより、エアポンプ20の動作音の伝播を大幅に抑えることができる。
【0032】
ここで椅子式マッサージ機1におけるエアポンプ20の動作音の周囲への伝播について吟味するに、座部2の下方の左右両側は、左右の側板8で塞がれているのが一般的であるのに対して、座部下方の前後方向(この実施例では後方)は、開放されているのが一般的であり、この開放されている側から動作音が周囲へ漏れやすい。そこで、帯状の防音用クッション材60を、エアポンプ20の前後方向に包み込むことにより、動作音が漏れやすい方向をクッション材60で覆い、効果的にエアポンプ20の動作音を防音することができる。
【0033】
エアポンプ20の振動の取付板50への伝播は、段付クッションからなる取付脚63により吸収されるが、さらにエアポンプ20と取付板50との間に防音用クッション材60の両端部が介在されるので、この防音用クッション材60によっても振動を吸収することができ、エアポンプの動作時における振動をより吸収できて、取付板50に伝播するのを抑制することができる。その結果、回路基板23へ伝わる振動を弱め、回路基板23を保護することができる。
【0034】
このように本実施例におけるマッサージ機は、エアポンプ20による動作音の大幅な軽減が可能であると共に、エアポンプ20による振動の伝播も軽減でき、静かで快適なマッサージが受けられるものである。
【0035】
なお、以上の説明は椅子式マッサージ機について述べたが、エアポンプを防音用クッション材で包み込む技術は、エアポンプを使用している全てのタイプのマッサージ機に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例として示した椅子式マッサージ機の右前方から見た斜視図である。
【図2】同マッサージ機の左後方から左側の側板を外した状態の斜視図である。
【図3】同マッサージ機の制御ボックスの斜視図である。
【図4】同制御ボックスの縦断面図と、その円内拡大図である。
【図5】同制御ボックスに用いられるホルダーの斜視図である。
【図6】同マッサージ機のエアポンプ等を取付けた状態の取付板の斜視図である。
【図7】防音用クッション材に包まれたエアポンプと取付板の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
20 エアポンプ
2 座部
1 椅子式マッサージ機
60 防音用クッション材
63 取付脚
64 穴
50 取付板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の供給による膨張と空気の排気による収縮を繰返すことにより被施療部にマッサージを与えるエアバックを具え、エアバックに空気を供給するエアポンプを椅子の座部の下方空間に配置した椅子式マッサージ機において、エアポンプを防音用クッション材で包んだことを特徴とする椅子式マッサージ機。
【請求項2】
前記エアポンプは取付脚を具え、前記防音用クッション材は取付脚を通すための穴を有し、取付脚を前記孔に通した上で取付板上に装着することにより、防音用クッション材で包まれたエアポンプを取付板上に設置してなる請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項3】
前記防音用クッション材は帯状をしており、エアポンプをマッサージ機の前後方向に包んだ請求項1又は請求項2に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項4】
空気の供給による膨張と空気の排気による収縮を繰返すことにより被施療部にマッサージを与えるエアバックを具え、エアバックに空気を供給するエアポンプを、防音用クッション材で包んだことを特徴とするマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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