説明

椅子

【課題】ごく簡単な構造ながらロッキング機能を有する椅子を提供する。
【解決手段】座1と背もたれ2とは分離している。背もたれ2は、座1の左右外側に配置された複数本のフレーム8,9に取付けられている。フレーム8,9は互いに離反しており、背もたれ2は両フレーム8,9の弾性に抗して後傾動することが可能である。フレーム8,9の長さや側面形状、座1(又は座受け部材)及び背もたれ2に対する取付け位置を自由に設定できるため、背もたれ2の後傾動に対する最適の弾性復元力(硬さ)を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロッキング機能を有する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれの後傾動を簡易に実現する手段として、フレームの弾性変形を利用することが行われている。その例として特許文献1には、座と背もたれとを弾性変形可能なフレームで一体に連結すると共に、左右のフレームと座受けベースとを左右の平行リンク機構で連結することが記載されている。この特許文献1の構成では、着座した人が背もたれに凭れ掛かると、平行リンク機構がフレームの弾性に抗して後方に回動することにより、背もたれの後傾動と座の後傾動とが許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平9−502631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものは、フレームは側面視でループに近い形状になっており、従って、元々弾性変形しにくい形態であると言える。このため、背もたれに凭れ掛かったときに背もたれを的確に後傾動させるというロッキング応答性が必ずしも良くないと懸念される。また、特許文献1のものは、座と背もたれとは平行リンク機構によって前後方向に大きくスイングする一種の揺動椅子に近いものであり、一般の事務用椅子や会議用椅子には適用し難い(すなわち汎用性が低い)という問題もある。
【0005】
本願発明は、このような現状を改善することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明に係る椅子は、互いに分離した座と背もたれとを備えており、前記背もたれを、座又は座受け部材に弾性変形可能なフレームを介して取付けることにより、背もたれがフレームの弾性に抗して後傾するようになっている。そして、 前記フレームは、座の左右両側に露出するように複数本ずつ配置されており、複数本ずつのフレームは、座又は座受け部材に対しては前後に異なった位置において取付けられ、背もたれに対しては上下に異なった位置において取付けられている。
【発明の効果】
【0007】
特許文献1の場合、フレームは平行リンク機構との取付け関係から形状や取付け位置が規制されており、このため、弾性変形し易いように形状や取付け位置を選択することが困難である。これに対して本願発明のフレームは座又は座受け部材に背もたれを取付ける機能を有している過ぎないため、形状や取付け位置の選択に制限はなく、このため、背もたれ荷重によって確実に撓み変形する形状や取付け位置とすることができる。従って、着座した人が凭れ掛かると的確に後傾動する椅子を、簡単な構造で提供することができる。
【0008】
また、本願発明において背もたれは座とは独立して後傾動するものであり、座と背もたれとが一体にスイングするものではないため、通常の事務用回転椅子や会議用椅子にも支障無く適用できて汎用性が高い。この点も本願発明の特徴の1つである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る椅子の斜視図である。
【図2】部分的な正面図である。
【図3】図2の III-III視断面図である。
【図4】縦断側面図である。
【図5】第2〜第3実施形態を示す図である。
【図6】第4実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(1).第1実施形態(図1〜図4)
図1〜図4では第1実施形態を示している。図1は椅子の斜視図、図2は部分的な正面図、図3は図2の III-III視断面図、図4は要部の縦断側面図である。椅子は、互いに分離した座1及び背もたれ2と、脚3とを備えている。
【0012】
脚3は、脚柱としてのガスシリンダ4と、これを支えて放射状に延びる複数本の枝杆5とを備えており、各枝杆5の先端にはキャスター6を取付けている。従って、本実施形態は座1及び背もたれ2の高さ調節できる回転椅子に適用されている。
【0013】
ガスシリンダ4の上端には、座受け部材の一例としての座受けベース7が固定されており、この座受けベース7に、座2の左右外側に露出する左右一対ずつの第1フレーム8と第2フレーム9とを固定している。両フレーム8,9は、鋼製丸棒のように弾性変形可能な棒材又は金属パイプを素材として製造されている。
【0014】
そして、両フレーム8,9とも、座受けベース7に固定されて下水平部8a,9aと、座1の左右外側において上方に立ち上がる起立部8b,9bと、その上端から後方に延びる梁状部8c,9cと、その後端から背もたれ2の背面に回り込む上水平部8d,9dを備えており、上水平部8d,9dは背もたれ2の背面に取付けられている。
【0015】
座受けベース7の前端に固定された第1フレーム8は、高さが高くて背もたれ2の上端寄り部位に取付けられており、座受けベース7の後端に固定された第2フレーム9は、高さが低くて背もたれ2の下端寄り部位に取付けられている。従って、両フレーム8,9は略平行に延びながらクロスすることなく間隔が空いており、干渉することはない。なお、左右の第1フレーム同士及び第2フレーム同士は一体に連結されている。
【0016】
左右の起立部8b,9bは座2の下面の位置においてステー10で一体に連結されており、このステー10に座1を固定している。言うまでもないが、座1は座受けベース7に直接に又は中間部材を介して取付けても良いし、また、両フレーム8,9とも座1の下面に固定しても良い。
【0017】
座1及び背もたれ2ともシェル板1a,2aにクッション1b,2bを張った構造になっている(勿論、クッションを備えていない構成でも良い。)。図3では、座1及び背もたれ2をステー10及びフレーム8,9に取付ける方法の例を、第2フレーム9の上水平部9dに対する背もたれ2の取付けを例に挙げて示している。
【0018】
すなわち、図3(A)では、上水平部9dに嵌まるホルダー部材11をビス12でシェル板2aに固定しており、図3(B)に示す例では、上水平部9dに外側から重なる押さえ部材13を介してビス12でシェル板2aに固定しており,図3(C)に示す例では、樹脂製のシェル板2aに一体形成したボス部14に押さえ板15及びビス12で離脱不能に保持している。勿論、他の方法も採用できる。また、上水平部8d,9dは、シェル板2aに対して相対回転可能な状態で取付けても良い。なお、背もたれ2にその背面を覆う裏カバーを設けても良い。
【0019】
本実施形態では、第1フレーム8及び第2フレーム9とも、座1の前後中間位置よりも後方に配置されている。図4に二点鎖線で示すように、第1フレーム8の梁状部8cに肘当て15を取付けることも可能である。
【0020】
以上の構成において、着座した人が背もたれ2に凭れ掛かると、図4に一点差線で示すように、両フレーム8,9が弾性変形することにより、背もたれ2は後傾動する。この場合、図4では背もたれ2の後傾動によって第2フレーム9がやや前傾する状態を描いているが、第2フレーム9も後傾する態様はあり得る。
【0021】
ところで、背もたれ2を支持するフレームが1本しか存在しない場合は、背もたれ荷重の全てがフレームに対して曲げ応力として作用するため、フレームは過大な力に絶えきれずに塑性変形したり破損したりしてしまう。
【0022】
他方、本実施形態では、複数本のフレーム8,9が存在することにより、両フレーム8,9と背もたれ2と座1とが全体として閉ループ状の構造体を構成しているため、両フレーム8,9はいわば突っ張りあった状態で弾性変形することになり、その結果、背もたれ2に大きな荷重が作用すると両フレーム8,9は変形し難くなって、ある程度以上には変形しない。このため、フレーム8,9が塑性変形したり破損したりすることはない。
【0023】
両フレーム8,9は長さが長いほど、また、高さが高くなるほど弾性変形しやすいが、椅子の用途に適合した所望の弾性復元力(硬さ)が得られるように、フレーム8,9の前後位置や高さ、線径、素材を選択したら良い。素材が一定であると長さや取付け位置を変えることによって弾性復元力を変えることになるが、本願発明では長さや取付け位置に制約はないので、最適の弾性復元力が得ることができる。
【0024】
(2).他の実施形態(図5)
図5(A)では第2実施形態を示している。この実施形態は第1実施形態の変形例であり、第1実施形態との相違点は、第1フレーム8の後端を背もたれ2の下端より部位に取付け、第2フレーム9の後端を背もたれ2の上端寄り部位に取付けている点である。すなわち、本実施形態では両フレーム8,9は側面視ではクロスしている。第1フレーム8の梁状部8cに着座した人が握ることのできるグリップを取付けることも可能である。
【0025】
図5(B)では第3実施形態を示している。この実施形態は会議用の簡易椅子に適用しており、脚装置3はパイプ製の4本の足杆16を備えた方式になっている。また、フレーム8,9は側面視で円弧状に湾曲している。このようなフレームの側面視形状を自由に設定できる点も本願発明の特徴の1つである。
【0026】
(3).第4実施形態(図6)
図6では第4実施形態を示している。この実施形態では、脚装置3は前後左右4本の足杆16を備えた方式であり、座受けベース7に両フレーム8,9の下水平部8a,9aを溶接等によって固着している。また、座1は、座受けベース7に固着した前後一対の受け部材18,19で支持しているが、本実施形態の特徴として、座1は、その後部を中心にして跳ね上げ回動させ得るように後部座受け部材19又は座受けベース7に回動自在に取付けられている。
【0027】
受け部材18,19は棒材又はパイプ材から成っていて左右方向に張り出すように形成されている(勿論、他の形態でも良い)。座1を後部受け部材19に回動自在に取付ける場合は、座の下面に固定したホルダー部材或いはブッシュに座後部受け部材19を嵌め込んだら良い。座1を座受けベース7に取付ける場合は、蝶番で取付けたり、ピンで軸支したりしたら良い。
【0028】
更にこの実施形態では、特徴として、前部の一対の足杆16の左右間隔と後部の一対の足杆16の左右間隔とを異ならせている。このため、座1をはね上げると、複数の椅子を前後に嵌め合わせた状態にスタッキングすることができる。第1フレーム8及び第2フレーム9を平面視で前向きに広がるハ字状に形成すると、前後椅子は座受けベース7が互いに密着又は近接する状態まで深く嵌め合わせることができる。
【0029】
(4).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化することができる。例えばフレームは左右2本ずつ配置することには限らず、3本ずつ以上配置しても良い。また、本願発明は劇場用や競技場用の固定式椅子にも適用することができる。また、座は、独自の弾性支持手段によって座受け部材に取付けることも可能である。更に、各フレームは座の左右側部から立ち上がっていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 座
2 背もたれ
3 脚装置
7 座受けベース
8 第1フレーム
9 第2フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに分離した座と背もたれとを備えており、前記背もたれを、座又は座受け部材に弾性変形可能なフレームを介して取付けることにより、背もたれがフレームの弾性に抗して後傾するようになっている椅子であって、
前記フレームは、座の左右両側に露出するように複数本ずつ配置されており、複数本ずつのフレームは、座又は座受け部材に対しては前後に異なった位置において取付けられ、背もたれに対しては上下に異なった位置において取付けられている、
椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−136203(P2011−136203A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48952(P2011−48952)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【分割の表示】特願2005−57721(P2005−57721)の分割
【原出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】