説明

椅子

【課題】容易且つ安全に脚載部本体の位置を調整できる椅子を提供する。
【解決手段】座部と、座部の前方に設けられた脚載部本体及び座部に上下方向へ回動自在に設けられた支持部を有する脚載部と、座部に対して任意の回動角度に脚載部を回動させる回動機構と、支持部に対して脚載部本体を使用者の脚の長さ方向へ移動させる移動機構とを備えた椅子であって、移動機構は、脚載部本体を座部側へ付勢すべく脚載部本体と支持部との間に架設された付勢手段と、第1及び第2スライドロック機構で脚載部本体の自重又は付勢手段の付勢力に抗して脚載部本体を支持部に所定の調整位置でとどめる位置調整機構と、によって構成され、第1スライドロック機構は脚載部本体が上方へ揺動する方向へ所定以上の力が加わることで係合が解除され、第2スライドロック機構は脚載部本体に対し使用者の脚の長さ方向へ所定以上の力が加わることで係合が解除されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が着座する座部と、使用者の脚部を支持すべく座部の前方に上下回動自在に取り付けられた脚載部を有し、脚載部が使用者の脚部の長手方向に移動可能に設けられている椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、使用者の脚部を支持する脚載部を備え、楽な姿勢で座ることが出来るように、使用者が座部に座った状態で脚載部が上下回動自在に設けられ、脚載部が使用者の脚部の長手方向に移動可能である椅子が知られている。このような椅子の一例として、支持部が座部に上下回動自在に連結されるとともに、支持部を回動させる回動機構と、支持部に対して脚載部本体の位置を調整可能な移動機構とを備え、脚載部本体の位置をとどめる位置調整機構が設けられているものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、このような椅子の脚載部の他の例として、支持部が座部に上下回動自在に連結されるとともに、支持部を回動させる回動機構と、支持部に対して脚載部本体の位置を調整可能な移動機構とを備え、支持部に対して脚載部本体を移動可能に支持するガイド部と、脚載部本体を座部の方向へ付勢する付勢手段と、脚載部本体の位置をとどめる位置調整機構が設けられているものがある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−309833
【特許文献2】特開2004−357945
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のような椅子は、脚載部本体が脚の長さ方向前方へ移動している状態で脚載部を下方に回動させると、脚載部本体の端部が床や障害物に当たる恐れがあった。従来の椅子では、脚載部本体の端部が床や障害物へ当たった場合、使用者が操作して脚載部本体を脚の長さ方向後方へ移動させる必要があった。したがって、脚載部本体が床や障害物へ当たった際に脚載部本体を脚の長さ方向後方へ移動させなければ、脚載部が床を傷つけてしまったり、脚載部と床との間で障害物を挟み込んでしまったりする恐れがあった。
さらに、従来の椅子の脚載部は、脚載部本体の固定を解除したとき、付勢手段によって脚載部本体が急な速度で移動してしまう恐れがあった。
【0006】
そこで本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、容易且つ安全に脚載部本体の位置を調整できる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、使用者が着座する座部と、使用者の脚部を支持すべく前記座部の前方に設けられた脚載部本体、ならびに前記座部に上下方向へ回動自在に設けられた支持部、を有する脚載部と、前記座部に対して任意の回動角度に前記脚載部を回動させる回動機構と、前記支持部に対して前記脚載部本体を使用者の脚の長さ方向へ移動させる移動機構と、を備えた椅子であって、前記移動機構は、前記脚載部本体を前記座部側へ付勢すべく前記脚載部本体と前記支持部との間に架設された付勢手段と、前記脚載部本体の自重又は前記付勢手段の付勢力に抗して前記脚載部本体を前記支持部に所定の調整位置でとどめるための位置調整機構と、によって構成されており、前記位置調整機構は、前記脚載部本体に対し当該脚載部本体が上方へ揺動する方向へ所定以上の力が加わることによって係合が解除されるように構成された第1スライドロック機構と、前記脚載部本体に対して使用者の脚の長さ方向へ所定以上の力が加わることによって係合が解除されるように構成された第2スライドロック機構と、を備えている。このような構成により、脚載部本体の位置調整を容易にするとともに、安全性の向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明は、使用者が着座する座部と、使用者の脚部を支持すべく前記座部の前方に設けられた脚載部本体、ならびに前記座部に上下方向へ回動自在に設けられた支持部、を有する脚載部と、前記座部に対して任意の回動角度に前記脚載部を回動させる回動機構と、前記支持部に対して前記脚載部本体を使用者の脚の長さ方向へ移動させる移動機構と、を備えた椅子であって、前記移動機構は、前記支持部に対して前記脚載部本体を移動可能に支持するガイド部と、前記脚載部本体を前記座部側へ付勢すべく前記脚載部本体と前記支持部との間に架設された付勢手段と、前記脚載部本体の自重又は前記付勢手段の付勢力に抗して前記脚載部本体を前記支持部に所定の調整位置でとどめるための位置調整機構と、によって構成されており、前記位置調整機構は、前記脚載部本体と共に移動する第1可動係合部ならびに当該第1可動係合部に係合可能で前記支持部に設けられた第1被係合部を有し、かつ、前記脚載部本体に対し当該脚載部本体が上方へ揺動する方向へ所定以上の力が加わることによって係合が解除されるように構成された第1スライドロック機構と、前記脚載部本体と共に移動する第2可動係合部ならびに前記支持部に設けられた第2被係合部とを有し、かつ、前記脚載部本体に対して使用者の脚の長さ方向へ所定以上の力が加わることによって係合が解除されるよう構成された第2スライドロック機構と、を備えている。このような構成により、容易に脚載部本体の位置を調整できるとともに、安全性の向上を図ることができる。
【0009】
さらに、前記ガイド部は、所定の許容範囲内で、前記支持部に対して前記脚載部本体が揺動可能に前記脚載部本体を支持していることが好ましい。
このような構成とすることにより、支持部から脚載部本体が離脱することを防止する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容易且つ安全に脚載部本体の位置を調整できる椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における一例を示した椅子の全体斜視図である。
【図2】図1に示した椅子の脚載部が下降した状態を示す側面図である。
【図3】図1に示した椅子の脚載部が上昇した状態を示す側面図である。
【図4】脚の長さ方向後方に移動した状態の脚載部の斜視図である。
【図5】脚の長さ方向前方へ移動した状態の脚載部の斜視図である。
【図6】図5に示した脚載部の背面側から見た斜視図である。
【図7】脚載部の機構を説明するための正面側からみた分解斜視図である。
【図8】脚載部の機構を説明するための背面側からみた分解斜視図である。
【図9】可動係合部の構造を説明するための説明図である。
【図10】被係合部の構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る椅子について、図1〜図10に示すマッサージ椅子を例として説明する。なお、本出願における方向の記載は、椅子1に座った使用者から見て、前方が「前」、後方が「後」であり、左手側が「左」、右手側が「右」である。また、背凭れ部3を起こした状態で椅子に座った使用者の頭部側が「上」、腰部側が「下」である。さらに、脚の長さ方向とは、脚載部5に載せた使用者の脚の膝と足首とを直線的に結ぶ方向であり、膝から足首へと向かう方向が脚の長さ方向前方であり、足首から膝へと向かう方向が脚の長さ方向後方である。
【0013】
[全体構成]
まず、本発明の実施形態に係る椅子1の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る椅子1の全体構成を示す斜視図である。この椅子1は、使用者が着座する座部2と、使用者の上半身を後方から支持する背凭れ部3と、使用者の脚部を支持する脚載部5と、座部2に対して脚載部5を回動させる回動機構4を主として構成されている。この椅子1には、使用者の身体に対してマッサージ動作を行うための施療部10が設けられていてもよい。
【0014】
[座部]
次に、座部2について説明する。
図1に示すように、座部2は、椅子1を支える脚部21と、脚部21の上部に設けられて、使用者が着座する座面22とによって構成されている。この座面22の下方には、空気の供給と排出を行う給排気装置(図示せず)と、マイコンからなる制御装置(図示せず)が設けられている。また、座部2には、使用者の左右の腕部を支持する左右の肘掛け部23が設けられている。
【0015】
[背凭れ部]
次に、背凭れ部3の構成について説明する。
図1に示すように、使用者の上半身を支持する背凭れ部3は、座部2の後部に設けられている。また、背凭れ部3は、背フレーム31にクッション等が配置されて構成されており、一般的な体格の成人が座面22に着座した際に、この成人の身体の一部がその外部にはみ出ない程度の大きさで、前面視略長方形をなしている。
【0016】
なお、背凭れ部3の内部には、使用者に対してマッサージ動作を行うために、施療部10が設けられている。この施療部10は、昇降ユニットによって昇降可能なマッサージ器であって、複数の施療子を備え、マッサージ用モータ(図示せず)の駆動力を施療子に伝達して、施療子にもみ動作や叩き動作をさせるように構成されており、使用者の肩、背中、腰等に刺激を与えてマッサージ動作を行うことができるものである。
【0017】
また、背凭れ部3は、座部2に前後方向に回動可能に連結してあり、背凭れ部3と座部2との間に設けられたリクライニング機構32によって、座部3に対して傾動して任意の位置(角度)に停止可能であって、図2に示すように、背凭れ部3が前方向へ起きた状態(起立状態)から、図3に示すように、背凭れ部3が後方向へ倒れた状態(倒伏状態)へリクライニングすることができる。
【0018】
[脚載部]
次に、脚載部5の構成について説明する。
脚載部5は、使用者の脚部(膝から踵までの部分における少なくとも一部)を支持するものであり、座部2の前方に設けられている。図4に示すように、脚載部5は、使用者の左右の脚部に対して、それぞれマッサージ動作を行う施療部11が設けられている。この施療部11は、給排気装置による空気の供給と排出によって、膨張と収縮することができるエアセルからなり、給排気装置からエアセルに空気が供給されてエアセルが膨張すると、使用者の脚部を左右から挟持することができる。なお、図1乃至図3では脚載部5にはカバー部材が被せられているが、その他の図面についてはこのカバー部材を省略して記載している。
【0019】
[脚載部の回動について]
脚載部5は、左右水平軸(回動軸)周りに回動可能なように回動支点24を介して座部2の前部に連結される。脚載部5の後方に設けられた回動機構4は、座部2に対して任意の回動角度に脚載部5を回動させることができ、脚載部5は、図2に示すような下降状態(第1状態)と、図3に示すような上昇状態(第4状態)との間を移動する。この脚載部5は、略上下方向へ回動することによって、着座する使用者の膝の曲げ角度を変化させて、使用者の足の曲げ伸ばしを行うことができる。
【0020】
なお、本発明の実施形態における回動機構4は、背凭れ部3の傾動と連動して脚載部5を回動させるリンク機構42と、個別に脚載部5を回動させる回動駆動用エアセル43とにより構成されている。なお、回動機構4は、上記形態に限定されず、脚載部5を座部2に対して個別に回動させる回動駆動用エアセル43のみであってもよいし、この回動駆動用エアセル43に変えて、脚載部5を座部2に対して個別に回動させる電動式アクチュエータ(図示せず)であってもよい。
【0021】
リンク機構42は、背凭れ部3と脚載部5との間に設けられ、背凭れ部3のリクライニングに連動して脚載部5を回動させるように構成されている。詳しくは、図3のように、このリンク機構42の一方が背凭れ部3に回動可能に接続され、他方が回動支点24に回動可能に接続されている。すなわち、脚載部5及びリンク機構42は、同一の左右水平軸(回動軸)周りに回動可能なように回動支点24を介して座部2の前部に接続されている。したがって、図3のように背凭れ部3がリクライニングして倒伏状態になると、リンク機構42が座部2に対して揺動することによって脚載部5が回動する。
【0022】
また、回動駆動用エアセル43は、脚載部5とリンク機構42との間に配置されており、給排気装置による空気の供給と排出によって膨張と収縮を行い、リンク機構42に対して脚載部5を略上下方向へ回動させるように設けられている。詳しくは、回動駆動用エアセル43に空気が供給されて回動駆動用エアセル43が膨張すると、図3に示すように、リンク機構42に対して脚載部5が押し上げられて回動する。
【0023】
以上から、脚載部5は、背凭れ部3が起立状態で回動駆動用エアセル43が収縮状態にある第1状態と、背凭れ部3が倒伏状態で回動駆動用エアセル43が収縮状態にある第2状態と、背凭れ部3が起立状態で回動駆動用エアセル43が膨張状態にある第3状態と、背凭れ部3が倒伏状態で回動駆動用エアセル43が膨張状態にある第4状態となることができる。そして、脚載部5の床面に対する高さは、第1〜第4状態の順に高くなるように設定されており、脚載部5は、この第1〜第4状態の範囲で回動し、任意の位置で位置決めが可能である。また。この回動駆動用エアセル43による脚載部5の回動範囲は、背凭れ部3のリクライニングに伴う脚載部5の回動範囲よりも大きく設定されている。
【0024】
以下、本発明の実施形態における椅子のストレッチ動作について説明する。
制御装置は、使用者が操作するコントローラに電気的に接続されており、コントローラから入力される入力信号に基づいて、リクライニング機構32及び回動駆動用エアセル43を動作制御するための出力信号を出力する。
【0025】
[ストレッチ動作(その1)]
例えば、コントローラに設けられたストレッチ動作(その1)ボタンを使用者が選択すると、背凭れ部3を起立状態及び脚載部5を第3状態となるように、制御装置は、リクライニング機構32及び回動駆動用エアセル43をそれぞれ動作制御する。続いて、制御装置は、使用者の脚部を挟持するように施療部11を動作制御する。続いて、背凭れ部3を起立状態とした状態で、脚載部5を第3状態から第1状態の位置へ変更させるように、制御装置は回動駆動用エアセル43を動作制御する。このように動作することにより、施療部11によって挟持された使用者の脚部が脚載部5へ拘束された状態で下方へ引っ張られるので、脚部のストレッチを行うことができる。
【0026】
[ストレッチ動作(その2)]
例えば、コントローラに設けられたストレッチ動作(その2)ボタンを使用者が選択すると、背凭れ部3を起立状態及び脚載部5を第3状態となるように、制御装置は、リクライニング機構32及び回動駆動用エアセル43をそれぞれ動作制御する。続いて、制御装置は、使用者の脚部を挟持するように施療部11を動作制御する。続いて、背凭れ部3を起立状態から倒伏状態の位置へと変更させ、脚載部5を第3状態から第2状態の位置へ変更させるように、制御装置はリクライニング機構32及び回動駆動用エアセル43を動作制御する。このように動作することにより、施療部11によって挟持された使用者の脚部が脚載部5へ拘束された状態で下方へ引っ張られ、かつ上半身が後方に反らされるので、脚部及び背部(背筋)のストレッチを行うことができる。
【0027】
[脚載部の移動について]
脚載部5は、使用者の脚の長短に対応させるために、脚の長さ方向に移動可能に構成されている。図4は脚の長さ方向後方に移動した状態の脚載部5の斜視図であり、図5及び図6は脚の長さ方向前方に移動した状態の脚載部5の正面側及び背面側の斜視図である。脚載部5は、使用者の脚部を支持すべく座部の前方に設けられた脚載部本体51及び座部2に対して上下方向へ回動自在に設けられて脚載部本体51を支持する支持部53によって構成されている。また、脚載部本体51と支持部53には、移動機構6が設けられており、移動機構6は、支持部53に対して脚載部本体51を使用者の脚の長さ方向に移動させる。
【0028】
支持部53は、左右水平軸(回動軸)周りに回動可能なように回動支点24を介して座部2の前部に連結されており、回動機構4によって上下方向に回動される。脚載部本体51は、移動機構6を介して支持部53上に取り付けられている。移動機構6は、脚載部本体51のバックプレート52と支持部53に設けられており、脚載部本体51を支持部53に対して脚の長さ方向に沿って移動させる。
【0029】
移動機構6は、ガイド部61と付勢手段63と位置調整機構65によって構成されている。ガイド部61は、付勢手段63及び位置調整機構65を挟んだ左右両側に平行に配置されている。左右のガイド部61は、それぞれスライドガイド61aとガイドレール61bを有しており、ガイドレール61bの長手方向に沿って、スライドガイド61aがスライド可能に設けられている。図8に示すようにバックプレート52にはスライドガイド61aが取り付けられ、図7に示すように支持部53にはガイドレール61bが取り付けられており、脚載部本体51が支持部53に対して脚の長さ方向に移動可能となっている。このガイド部61によって、脚載部本体51が左右にガタつくことを防止するとともに、脚載部本体51が支持部53から離脱することを防止している。
【0030】
また、付勢手段63は、位置調整機構65を挟んで左右に配置されている。この付勢手段63は、バネ63aとバネ支持部63bとを有している。図8に示すようにバックプレート52に設けられたバネ支持部63bと、図7に示すように支持部53に設けられたバネ支持部63bとの間にバネ63aが架設されている。この付勢手段63によって、脚の長さ方向前方へ移動して座部2から離れた状態にある脚載部本体51を、脚の長さ方向後方、即ち、座部2へ近づける方向に脚載部本体51を付勢する。
【0031】
位置調整機構65は、左右方向中央に配置されている。この位置調整機構65は、バックプレート52に設けられて脚載部本体51と共に移動する可動係合部65aと、支持部53に設けられた被係合部65bとを有している。この可動係合部65aと被係合部65bとが係合することによって、支持部53に対する脚載部本体51の位置が固定される。
さらに、可動係合部65aは、第1可動係合部7a及び第2可動係合部8aを有し、被係合部65bは、第1被係合部7b及び第2被係合部8bを有している。
なお、第1可動係合部7aと第1被係合部7bをあわせて第1スライドロック機構7とよび、第2可動係合部8aと第2被係合部8bをあわせて第2スライドロック機構8とよぶ。この第1スライドロック機構7及び第2スライドロック機構8について以下に説明する。
【0032】
[第1スライドロック機構について]
第1可動係合部7aは、図8に示すように、バックプレート52に設けられており、脚載部本体51と共に移動する。この第1可動係合部7aは、図9に示すように第1被係合部7bと係合するための凸部が形成されている。また、第1被係合部7bは、図7に示すように、支持部53に設けられている。この第1被係合部7bは、図10に示すように、第1可動係合部7aと係合可能な凹部が脚の長さ方向に所定の間隔をおいて一直線状に複数形成されており、いずれか一つと第1可動係合部7aが係合する。この凹部は、第1可動係合部7aとの対面側が開口する切欠き又は孔である。したがって、脚載部本体51を脚の長さ方向に移動させれば、上記間隔で、第1可動係合部7aと第1被係合部7bが係合して脚載部本体51の位置を固定することができる。
【0033】
第1スライドロック機構は、脚載部本体51に対して脚載部本体51が下方から上方へ揺動する方向へ所定以上の力がかかることによって、第1可動係合部7aと第1被係合部7bとの係合が解除される。なお、脚載部本体51が下方から上方へ揺動する方向へ所定以上の力がかかることによって、第1可動係合部7aと第1被係合部7bとの係合が解除される際、ガイド部61のスライドガイド61aを保持するガイドレール61bによって、支持部53から脚載部本体51が離脱しないように、脚載部本体51の揺動可能範囲が規制される。
【0034】
[第2スライドロック機構について]
第2可動係合部8aは、図8に示すように、バックプレート52に設けられており、脚載部本体51と共に移動する。この第2可動係合部8aは、左右方向外側に突出可能に設けられており、第2被係合部8bと係合して、クリックを発生させる。第2可動係合部8aは、例えば、鋼球とスプリングとを有しており、鋼球が第2被係合部8b側へ突出するようにスプリングによって付勢されている。そして、図10に示すように、支持部53に設けられた第2被係合部8bは、第1被係合部7bを挟んで左右2列に配置されている。この第2被係合部8bは、第2可動係合部8aと係合可能な凹部が脚の長さ方向に、第1被係合部7bの凹部と同じ所定の間隔で一直線状に複数形成されており、いずれか一つと第2可動係合部8aが係合する。この凹部は、第2可動係合部8aとの対面側が開口する切欠き又は孔である。したがって、脚載部本体51を脚の長さ方向に移動させれば、上記間隔で、第2可動係合部8aと第2被係合部8bが係合してクリックが発生するので、容易に脚載部本体51の位置を決めて固定させることができる。
【0035】
第2スライドロック機構8は、脚載部本体51に対して脚の長さ方向へ所定以上の力がかかることによって、第2可動係合部8aと第2被係合部8bとの係合が解除される。したがって、脚載部本体51が下方から上方へ揺動する方向へ所定以上の力がかかることによって第1スライドロック機構7の係合が解除された状態で、脚載部本体51に対して脚の長さ方向へ所定以上の力がかかると脚載部本体51を移動させることが可能である。
なお、脚載部本体51が下方から上方へ揺動する方向へ所定以上の力がかかることによって、第1スライドロック機構7の係合が解除される際、ガイド部61のスライドガイド61aを保持するガイドレール61bによって、支持部53から脚載部本体51が離脱しないように、脚載部本体51の揺動可能範囲が規制されており、第1スライドロック機構7の係合が解除された状態で、脚載部本体51に対して脚の長さ方向へ所定以上の力がかかると脚載部本体51を移動させることが可能である。
【0036】
第1スライドロック機構7と第2スライドロック機構8とによって、脚載部本体51の自重又は付勢手段63の付勢力に抗して脚載部本体51を支持部53に所定の調整位置でとどめるように構成されている。したがって、第2スライドロック機構8のみで脚載部本体51の位置を固定する場合に比べて、第2スライドロック機構8の係合を解除するのに必要な力が小さくて済むように第2スライドロック機構8を構成することができる。よって、第1スライドロック機構7の係合が解除された状態で脚の長さ方向へ脚載部本体51を容易に移動させて位置調整することが可能である。
【0037】
第1可動係合部7aと第1被係合部7bとの係合は、脚載部本体51に対して脚載部本体51が下方から上方へ揺動する方向へ所定以上の力がかかることによって解除される。したがって、例えば、脚の長さ方向前方へ脚載部本体51が移動している状態で脚載部5を下方に回動させて、床や障害物に脚載部本体51が当たった場合、脚載部本体51が下方から上方へ揺動する方向へ力がかかり、第1スライドロック機構7の係合が解除される。第1スライドロック機構7の係合を解除させて付勢手段63によって脚載部本体51が座部2へ近づく方向へ移動させる際、第2スライドロック機構8によって急激な移動を防ぐことができる。よって、安全性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明は、使用者が着座する座部と、使用者の脚部を支持すべく座部の前方に上下回動自在に取り付けられた脚載部を有し、脚載部が使用者の脚部の長手方向に移動可能に設けられている椅子に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 椅子
10 施療部
11 施療部
2 座部
21 脚部
22 座面
23 肘掛け部
24 回動支点
3 背凭れ部
31 背凭れフレーム
32 リクライニング機構
4 回動機構
42 リンク機構
43 回動駆動用エアセル
5 脚載部
51 脚載部本体
52 バックプレート
53 支持部
6 移動機構
61 ガイド部
61a スライドガイド
61b ガイドレール
63 付勢手段
63a バネ
63b バネ支持部
65 位置調整機構
65a 可動係合部
65b 被係合部
7 第1スライドロック機構
7a 第1可動係合部
7b 第1被係合部
8 第2スライドロック機構
8a 第2可動係合部
8b 第2被係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する座部と、
使用者の脚部を支持すべく前記座部の前方に設けられた脚載部本体、ならびに前記座部に上下方向へ回動自在に設けられた支持部、を有する脚載部と、
前記座部に対して任意の回動角度に前記脚載部を回動させる回動機構と、
前記支持部に対して前記脚載部本体を使用者の脚の長さ方向へ移動させる移動機構と、
を備えた椅子であって、
前記移動機構は、
前記脚載部本体を前記座部側へ付勢すべく前記脚載部本体と前記支持部との間に架設された付勢手段と、
前記脚載部本体の自重又は前記付勢手段の付勢力に抗して前記脚載部本体を前記支持部に所定の調整位置でとどめるための位置調整機構と、
によって構成されており、
前記位置調整機構は、
前記脚載部本体に対し当該脚載部本体が上方へ揺動する方向へ所定以上の力が加わることによって係合が解除されるように構成された第1スライドロック機構と、
前記脚載部本体に対して使用者の脚の長さ方向へ所定以上の力が加わることによって係合が解除されるように構成された第2スライドロック機構と、を備えている
ことを特徴とする椅子。
【請求項2】
使用者が着座する座部と、
使用者の脚部を支持すべく前記座部の前方に設けられた脚載部本体、ならびに前記座部に上下方向へ回動自在に設けられた支持部、を有する脚載部と、
前記座部に対して任意の回動角度に前記脚載部を回動させる回動機構と、
前記支持部に対して前記脚載部本体を使用者の脚の長さ方向へ移動させる移動機構と、
を備えた椅子であって、
前記移動機構は、
前記支持部に対して前記脚載部本体を移動可能に支持するガイド部と、
前記脚載部本体を前記座部側へ付勢すべく前記脚載部本体と前記支持部との間に架設された付勢手段と、
前記脚載部本体の自重又は前記付勢手段の付勢力に抗して前記脚載部本体を前記支持部に所定の調整位置でとどめるための位置調整機構と、
によって構成されており、
前記位置調整機構は、
前記脚載部本体と共に移動する第1可動係合部ならびに当該第1可動係合部に係合可能で前記支持部に設けられた第1被係合部を有し、かつ、前記脚載部本体に対し当該脚載部本体が上方へ揺動する方向へ所定以上の力が加わることによって係合が解除されるように構成された第1スライドロック機構と、
前記脚載部本体と共に移動する第2可動係合部ならびに前記支持部に設けられた第2被係合部とを有し、かつ、前記脚載部本体に対して使用者の脚の長さ方向へ所定以上の力が加わることによって係合が解除されるよう構成された第2スライドロック機構と、を備えている
ことを特徴とする椅子。
【請求項3】
前記ガイド部は、所定の許容範囲内で、前記支持部に対して前記脚載部本体が揺動可能に前記脚載部本体を支持していることを特徴とする請求項2に記載の椅子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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