説明

植え込み型センサを使用した心不全患者のためのうっ血緩和治療滴定

心不全患者に施されるうっ血緩和治療を評価することは、患者の利尿状態を示す生理的パラメータを検知するよう構成される植え込み型センサおよび植え込み型センサに結合されるプロセッサの使用を含む。センサは、たとえば、胸部流体センサ、心音センサ、心腔または心房圧センサ、呼吸センサあるいは血液化学物質センサを含んでもよい。プロセッサは、患者の利尿目標レベルが、検知された生理的パラメータと患者について生成される閾値との関係に基づいて達成されたかどうかを判定し、患者の利尿目標レベルが達成されたと判定することに応答して、出力を生成するよう構成される。プロセッサは、植え込み型ハウジング内か、患者の外部のハウジング内か、または、ネットワークサーバシステム内に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、治療管理に関し、より詳細には、植え込み型医療デバイスなどの医療デバイスによって取得されるセンサデータを使用して、治療改善効果の目標レベルが達成されたかどうかを判定することに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性心不全などの種々の疾病および障害を持つ患者の日々の管理は、患者の状況の正確な臨床評価を必要とする。左心室の(LV)機能不全によって活性化される複雑な神経ホルモンメカニズムは、たとえば、流体容積の過負荷をもたらし、LV充満圧を増加させうる。これは、塩および水の摂取のわずかの変更、貧血、および薬物レジメンの変更によって悪化する可能性がある。変更は、心臓代償不全および肺内への流体の蓄積を引き起こすことが多く、費用のかかる入院および心不全の徐々の悪化をもたらす。適宜の臨床介入は、患者のHF状態の悪化を防止する可能性があり、患者状態の正確でかつ適宜の評価を必要とする。
【0003】
HF患者は、通常、症状を軽減し、疾病の進行を制御するために複数の薬物を摂取する。治療目標は、薬物と患者との間で変わる。たとえば、神経ホルモンの改善をもたらす薬物(たとえば、ベータ遮断薬、ACE阻害薬)は、目標用量まで滴定されるべきである。一方、利尿薬は、血行動態バランスを維持するために、連続して最適化される必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、心不全患者に施される治療を評価するシステムおよび方法を対象とする。本発明の実施形態は、患者の中から、治療に応答する患者の状態を示す生理的パラメータを検知すること、および、患者に対する治療改善効果の目標レベルが、検知された生理的パラメータと患者について生成される閾値との関係に基づいて達成されたかどうかを判定することを実現する。第1出力は、患者改善効果の目標レベルが達成されたと判定することに応答して生成されてもよく、第2出力は、患者が過剰治療を受けていると判定することに応答して生成されてもよい。治療は、薬物治療、神経刺激治療、および心臓電気刺激治療の1つまたは複数を含んでもよい。
【0005】
本発明の実施形態は、心不全患者に施されるうっ血緩和治療を評価することを実現してもよく、評価することは、患者の中から、患者の利尿状態を示す生理的パラメータを検知すること、患者利尿の目標レベルが、検知された生理的パラメータと患者について生成される閾値との関係に基づいて達成されたかどうかを判定すること、および、患者利尿の目標レベルが達成されたと判定することに応答して、出力を生成することを含んでもよい。
【0006】
検知された生理的パラメータと閾値との関係は、検知された生理的パラメーが、閾値として確立されたベースライン値に戻ること、検知された生理的パラメーが、閾値として確立されたベースライン値の所定のパーセンテージまたは関数に戻ること、閾値に対する検知された生理的パラメータの増加または減少の変化率、閾値として確立された患者利尿の安全レベルに対する検知された生理的パラメータの増加または減少の変化率、または、患者に施された以前の有効な治療に関連する生理的パラメータの応答に符合する検知された生理的パラメータの変化のうちの1つを含んでもよい。
【0007】
患者の利尿状態を示す生理的パラメータは、胸部流体パラメータ、胸部インピーダンスパラメータ、心音パラメータ、心腔圧パラメータ、心房圧パラメータ、呼吸パラメータ、心拍数パラメータ、心拍変化パラメータ、電位図伝導パターンパラメータ、血液化学物質パラメータ、カリウムレベルパラメータ、血液灌流パラメータ、血液酸素飽和度パラメータ、身体四肢温度パラメータ、身体四肢発汗パラメータ、および患者体重パラメータのうちの少なくとも1つを含んでもよい。閾値は、医師によって確立される。
【0008】
方法は、さらに、うっ血事象の発生を検出すること、および、うっ血事象の検出に応答して前記生理的パラメータを検知すること含んでもよい。本発明の方法は、長期的利尿薬治療およびうっ血性事象に対する緊急利尿薬治療の短期的管理のために実施されてもよい。
【0009】
本発明の実施形態は、生成された出力に基づいてうっ血緩和治療を滴定することを実現してもよい。警告は、患者に対する過剰利尿を検出すること、うっ血緩和治療の薬物レジメンに対する不適合性を検出すること、および、うっ血緩和治療に対する不応性を検出することの1つまたは複数に応答して生成されてもよい。
【0010】
本発明の方法は、うっ血緩和治療を施す間にリアルタイムに実施されてもよい。実施形態は、うっ血緩和治療のために患者に投与される薬物負荷のタイプ、うっ血緩和治療を施す方法、および1つまたは複数の患者固有状況の1つまたは複数に基づいて生理的パラメータの検知を調整すること含んでもよい。本発明の方法は、患者の外部のシステムまたはデバイスと協働して、完全に患者の中で、または、部分的に患者の中で実施されてもよい。
【0011】
種々の実施形態によれば、心不全患者に施されるうっ血緩和治療を評価するシステムは、好ましくは、患者の利尿状態を示す生理的パラメータを検知するよう構成される植え込み型センサと、植え込み型センサに結合するプロセッサとを含む。センサは、たとえば、胸部流体センサ、心音センサ、心腔または心房圧センサ、呼吸センサあるいは血液化学物質センサを含んでもよい。プロセッサは、好ましくは、患者利尿の目標レベルが、検知された生理的パラメータと患者について生成される閾値との関係に基づいて達成されたかどうかを判定し、患者利尿の目標レベルが達成されたと判定することに応答して、出力を生成するよう構成される。
【0012】
プロセッサは、植え込み型ハウジング内に配設されてもよい。プロセッサは、患者の外部のハウジング内に配設されてもよい。プロセッサは、ネットワークサーバシステムのプロセッサであってよい。プロセッサは、患者の過剰利尿を検出すること、うっ血緩和治療の薬物レジメンに対する不適合性を検出すること、およびうっ血緩和治療に対する不応性を検出することの1つまたは複数に応答して警告信号を生成するよう構成されてもよい。
【0013】
本発明の上記要約は、本発明のそれぞれの実施形態または全ての実施態様を説明することを意図されない。利点および達成物は、本発明のより完全な理解と一緒に、添付図面と一緒に考えられる、以下の詳細な説明および添付特許請求の範囲を参照することによって、明らかになり、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の実施形態による、植え込み型検知デバイスを使用して、心不全患者に施される治療を評価する方法のフロー図である。
【図1B】本発明の実施形態による、植え込み型検知デバイスを使用して、心不全患者に施されるうっ血緩和治療を評価する方法のフロー図である。
【図2】本発明の他の実施形態による、植え込み型デバイスによって検知された、うっ血緩和治療を施すことに応答した生理的パラメータ(たとえば、胸部インピーダンス)の変化を示す図である。
【図3】本発明の実施形態による、薬物治療に対する患者応答を示す出力に応答して実施されてもよい、種々の例証的なオペレーションを示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態による、患者から取得される植え込み型センサデータに基づいて患者に施される治療を評価するシステムのブロック図である。
【図5】本発明の実施形態による、心臓の断面図内に植え込まれて示されたリード線組立体を含む植え込み型心臓デバイスであって、患者の1つまたは複数の生理的パラメータを検知するよう実施される、植え込み型心臓デバイスの図である。
【図6】本発明の実施形態による、肋骨籠の外側に植え込まれて示される皮下の非胸部内リード線組立体を含む植え込み型医療デバイスであって、患者の1つまたは複数の生理的パラメータを検知するよう実施される、植え込み型医療デバイスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、種々の変更形態および代替形態を受けるが、その詳細は、図面において例として示されており、以下で詳細に述べられるであろう。しかし、その意図は、述べられる特定の実施形態に本発明を限定することではないことが理解される。逆に、本発明は、添付特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に入る、全ての変更形態、等価形態および代替形態を包含することを意図される。
【0016】
図示される実施形態の以下の説明において、実施形態の一部を形成し、また、その中で、本発明が実施されてもよい種々の実施形態が例証として示される、添付図面に対して参照が行われる。他の実施形態が利用されてもよく、また、本発明の範囲から逸脱することなく、構造的および機能的変更が行われてもよいことが理解される。
【0017】
本発明による医療デバイスは、以降で述べる医療デバイスの特徴、構造、方法またはその組合せの1つまたは複数を含んでもよい。たとえば、状態モニタ、心臓モニタ、心臓刺激器、あるいは、他のタイプの植え込み型のまたは患者の外部の医療デバイスは、以下に述べる有利な特徴および/またはプロセスの1つまたは複数を含むように実施されてもよい。こうしたモニタ、刺激器、あるいは、他の外部デバイス、植え込み式デバイスまたは部分的に植え込み式デバイスは、本明細書で述べる特徴の全てを含む必要はないが、有用な構造および/機能を実現する、選択された特徴を含むように実施されてもよいことが意図される。こうしたデバイスは、種々の治療または診断機能を提供するように実施されてもよい。
【0018】
心臓検知デバイスおよび/または心臓刺激デバイスなどの多様な植え込み型医療デバイスは、本発明の治療評価法を実施するよう構成されてもよい。こうしたデバイスの代表的なリストは、心臓モニタ、ペースメーカ、除細動器、再同期化器、ならびに他の心臓検知および治療を施すデバイスを含むが、これらには限定されない。これらのデバイスは、表面電極、経静脈電極、心内膜電極、および心外膜電極を含む種々の電極配置構成(すなわち、胸部内電極)、ならびに/または、缶電極、ヘッダ電極、および不関電極、ならびに、皮下アレイまたはリード線電極を含む、皮下の非胸部内電極(すなわち、非胸部内電極)によって構成されうる。
【0019】
たとえば、外部のまたは植え込み型の生理的センサを装備する外部のまた植え込み型の薬物送出デバイス、あるいは、植え込み型のまたは外部の生理的センサを装備する神経刺激デバイスなどの、心臓監視/刺激デバイス以外の種々のデバイスはまた、治療評価を実現するように実施されてもよい。こうしたデバイスは、便宜上、本明細書で一般に、患者植え込み型医療デバイス(PIMD)と呼ばれ、こうした医療デバイスは、あるいは、患者の外部の医療デバイスとして少なくとも部分的に実施されてもよいことが理解される。
【0020】
本発明は、治療に対する心不全患者の応答を評価し、その後、治療を適合させるシステムおよび方法を対象とする。本発明の実施形態は、うっ血緩和治療に対するHF患者の応答を評価し、その後、治療を適合させるシステムおよび方法を対象とする。HF患者におけるうっ血緩和治療の正確な投薬は、HF患者管理の難しいが重要な部分であることが知られている。短期的うっ血緩和中の流体除去についての治療的必要性と、過剰利尿に伴う潜在的なリスクとの釣り合いをとることが重要である。現在のところ、うっ血緩和治療の管理に指針を与えるためのエビデンスベースの情報がほとんど存在しない。
【0021】
心不全患者は、通常、患者の疾病状態を改善するために、治療の組合せを必要とする。従来の治療は、種々のクラスに入り、その一部(たとえば、ベータ遮断薬、ACE阻害薬、ARB)は、死亡率改善効果をもたらすことがわかっており、また、その一部(たとえば、利尿薬)は、死亡率改善効果の証明は全くないが、ほぼ症候性の軽減をもたらす。治療/薬物負荷の後者のクラスに入るループ利尿薬の使用は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)などの機能低下システムの活性化によって患者の心不全状態を悪化させるという関連リスクを有するが、それは、通常、HF患者を処置するのに使用される最初の防御線である。その結果、患者に過剰投薬することなく、効果的な応答(たとえば、利尿薬の場合、流体減少)をもたらすこれらの治療の目標または最適用量にHF患者を維持することが重要になる可能性がある。より重要なことには、HF患者が非代償性になると、患者が、非常に急速にさらに機能低下しうるため、このバランスがより必須になる。
【0022】
本発明の実施形態は、うっ血緩和の所望のまたは最適なレベルを達成するために利尿に指針を与えるための植え込み型デバイスベースのセンサ情報を提供する。一般に、うっ血緩和の所望のまたは最適なレベルは、信号目標値、または、ある範囲の目標値などの複数の目標値によって示されてもよい。うっ血緩和の所望のまたは最適なレベルは、うっ血緩和の所望のまたは最適なレベルが達成されたことを示す患者の暮らし向きのレベルなどの定性的因子によって示されてもよい。こうした定性的因子は、調査または質問表(たとえば、ネットワーク化された高度患者管理システムの使用によって実施される電子質問表)の使用によるなどで、臨床医か、患者か、または、両者によって確定されてもよい。
【0023】
種々の実施形態によれば、センサが展開され、少なくともその一部は、好ましくは、HF患者に植え込まれて、うっ血緩和治療の適用中にリアルタイムに患者状態を監視し、また、うっ血緩和治療がいつ終了されるべきかについてのフィードバックを提供してもよい。デバイスベースのセンサは、過剰利尿を防止するために、医師または臨床医に客観的な情報を提供してもよい。1つまたは複数のセンサは、利尿薬治療によって引き出される変化について、いくつかの生理的パラメータ(たとえば、胸部インピーダンスセンサまたは他のセンサによる胸部流体、心音、心腔または心房圧、呼吸、心拍数、心拍変化、電位図伝導パターン、血液化学物質、血圧、カリウム、血液灌流、血液酸素飽和度、身体の四肢温度、身体の四肢発汗、患者体重)を監視し、この情報を、即座の応答行動のために医師または臨床医に中継するよう構成されてもよい。種々のシステム実施形態は、1つまたは複数の植え込み型センサ、1つまたは複数の患者の外部のセンサ、または、内部センサと患者の外部のセンサの組合せを組込む実施形態を含んでもよい。
【0024】
うっ血緩和治療に対する患者応答を示すリアルタイムセンサ情報を臨床医または医師に提供することは、臨床医または医師が、患者の個々の薬物応答をよりよく理解し、患者薬物レジメンの最適化を容易にすることを可能にする。本発明の実施形態によって利用可能になるこうした適宜の応答データがない場合、臨床医または医師は、判断および/または専門家の標準に基づいて薬物投与量および/または送出頻度を調整するという従来の技法に制限される。そのため、うっ血緩和治療に応答する患者利尿状態を反映する適宜のセンサデータを医師に提供することは、医師/臨床医が個々の患者の生理的状態にアクセスできる可能性がある客観的データを提供することによって、従来の薬物滴定手法に伴う問題を克服し、また、患者に送出される薬物治療の効果的な滴定および患者への過剰投薬の回避を可能にする。
【0025】
ここで図1Aを考えると、本発明の実施形態による、治療に対する患者応答を評価する方法100が示される。図1Aに示す方法100によれば、治療は、患者に施される102か、または、患者によって摂取される(たとえば、経口薬)。治療は、通常、薬物治療(たとえば、利尿薬治療またはうっ血緩和治療)であるが、神経刺激治療または心臓電気刺激治療であってよく、または、それを含んでもよい。センサデータは、医療デバイスを使用して取得される104。医療デバイスは、好ましくは、植え込み型デバイスであるが、あるいは、患者の外部のデバイスであってよい。センサデータは、薬物治療に対する患者による応答を反映する。治療改善効果の目標レベルが、センサデータと患者について生成される閾値との関係に基づいて達成されたかどうかについての判定が行われる106。たとえば、患者が、過小治療および/または過剰治療を受けているかどうかについての判定が行われてもよい。治療改善効果の目標レベルが達成されること、および/または、患者が過剰治療を受けていると判定することに応答して出力が生成される108。
【0026】
図1Bは、本発明の実施形態による、うっ血緩和薬物治療に対する心不全患者の応答を評価する方法200が示される。方法200によれば、うっ血緩和治療は、HF患者に施される202。患者の利尿状態を示すセンサデータは、医療デバイスを使用して取得される204。医療デバイスは、好ましくは、植え込み型医療デバイスベースセンサであるが、あるいは、患者の外部のデバイスであってよい。種々の実施形態によれば、うっ血事象の発生は、1つまたは複数のセンサを使用して検出されてもよく、また、生理的パラメータの検知は、うっ血事象の検出に応答して開始してもよい。
【0027】
患者利尿の目標レベルが、センサデータと、好ましくは特に患者について生成される閾値との関係に基づいて達成されたかどうかについての判定が行われる206。たとえば、患者が、過小治療および/または過剰治療を受けているかどうかについての判定が行われてもよい。患者利尿の目標レベルが達成されること、および/または、患者が過剰利尿を検出することに応答して出力が生成される208。
【0028】
利尿薬治療の非最適レベル(たとえば、目標レベルまたは目標範囲を下回るまたは超えるレベル)は、いくつかの方法で確定されてもよい。たとえば、医師は最適な患者の状態を特定してもよく、デバイスは、医師が特定した最適な患者の状態に相当するセンサレベルを特定するよう構成されてもよい。最適な患者の状態は、血圧の低下、四肢に対する灌流の低下(たとえば、cold−dry)、および過度のカリウム喪失(血液化学物質センサ、または、電気心臓信号分析による不整脈の検出によって示される可能性がある)などの本明細書で説明される生理的状況またはセンサ出力の1つまたは複数に基づいて示されてもよい。
【0029】
図1Bに示す方法200は、好ましくは、安定した状況下で、かつ、うっ血緩和治療を施している間にリアルタイムに実施される。方法200は、植え込み型デバイスおよびセンサ(複数可)を使用して、完全にまたは少なくとも部分的に患者の中で実施されてもよい。方法200は、あるいは、いくつかの実施形態では、完全にまたは少なくとも部分的に患者の外部で実施されてもよい。たとえば、生理的センサデータを取得すること204は、患者の中で実施されてもよい。患者利尿の目標レベルが達成されたかどうかを判定すること206、および、患者利尿の目標レベルが達成されることに応答して出力を生成すること208は、それぞれ、患者の中でまたは患者の外部で実施されてもよい。
【0030】
図1Bのボックス206に示すように、患者利尿の目標レベルが達成されたかどうかを判定することは、好ましくは、センサデータと、好ましくは特に患者について生成される閾値との関係に基づく。閾値はいくつかの方法で確立されてもよい。一手法によれば、医師は、患者のHF状態、総合的状況、および他の関連する因子に基づいて利尿の目標レベルを確定してもよい。目標レベルは、特定の患者についての閾値として確立されてもよい。閾値は、プログラマまたは他の通信デバイスによって、通常、無線リンクによって医師から医療デバイスに転送されてもよい。特定の患者に関連する目標レベルは、たとえば、医師が指示した目標血圧および/または体重目標を含んでもよい。先に説明したように、こうした目標は、単一の値またはある範囲の値によって示されてもよく、また、こうした目標は、定量的目標および定性的目標(たとえば、患者暮らし向き目標)の一方または両方を含んでもよい。HF患者のクラスまたは母集団について生成される閾値が使用されてもよい。
【0031】
ボックス206に示す、検知された生理的パラメータと閾値との関係は、いくつかの形態をとってもよい。たとえば、検知された生理的パラメータと閾値との関係は、検知された生理的パラメータがベースライン値に戻ることとして規定されてもよい。検知された生理的パラメータと閾値との関係は、検知された生理的パラメータがベースライン値に戻ることとして規定されてもよい。検知された生理的パラメータと閾値との関係は、検知された生理的パラメータがベースライン値の所定のパーセンテージまたは関数に戻ることとして規定されてもよい。さらなる例として、検知された生理的パラメータと閾値との関係は、閾値に対する検知された生理的パラメータの増加または減少の変化率として規定されてもよい。検知された生理的パラメータと閾値との関係はまた、患者利尿の安全レベルに対する検知された生理的パラメータの増加または減少の変化率として規定されてもよい。同様に、検知された生理的パラメータと閾値との関係は、患者に施された以前の有効な治療に関連する生理的パラメータの応答に符合する検知された生理的パラメータの変化として規定されてもよい。
【0032】
ボックス204で取得される生理的センサデータは、植え込み型デバイスベースセンサを含む、広い範囲のセンサを使用して生成されるデータを含んでもよい。たとえば、生理的センサデータは、とりわけ、(たとえば、胸部インピーダンスセンサを使用して導出されるような)胸部流体パラメータ、心音パラメータ、心腔または心房圧パラメータ、呼吸パラメータ、心拍数パラメータ、心拍変化パラメータ、血液化学物質パラメータ、および、電位図伝導パターンパラメータの少なくとも1つを含んでもよい。同様に、1つまたは複数の生理的センサデータパラメータの検知は、うっ血緩和治療のために患者に投与される薬物負荷のタイプ、うっ血緩和治療(たとえば、経静脈のまたは経口の)を施す方法、および1つまたは複数の患者固有状況の1つまたは複数に基づいて調整されてもよい。
【0033】
図2は、本発明の実施形態による、植え込み型デバイスによって検知された、患者のためのうっ血緩和治療の施しに応答した生理的パラメータの変化を示す。センサ応答信号226が監視されて、信号226が閾値220に達したかどうかが判定され、閾値220に達することは、治療の最適なまたは所望のレベルが達成されたことを示す。治療は、好ましくは、センサ応答信号226が、閾値220に落ち着くかまたは近づくように、経時間的に滴定される。信号226は、好ましくは植え込み型センサによって生成される、本明細書で説明された生理的信号のうちの任意の信号であってよい。
【0034】
明確にするために、単一の信号波形が図2に示されるが、複数のセンサ応答信号が、任意の数でかつ任意のタイプのセンサから取得され、監視されてもよいことが理解される。さらに、図2は、さらに、薬物治療に対する患者の応答の臨床医評価を容易にするための、薬物用量のプロット(たとえば、時間および送出量)を含んでもよい。図2は、たとえば、それぞれが、異なる薬物パラメータか、他のうっ血緩和パラメータか、または、HF治療パラメータに関連する、異なるセンサ応答信号のプロットを含んでもよい。(たとえば、電子スケールまたは機械式ベッドスケールによって)自動的にまたは手動で取得される可能性がある患者の体重の変化が、図2にプロットされてもよい。
【0035】
本発明の実施形態によれば、センサ応答信号226は、繰返される利尿介入に対する患者の応答について、分または時間などの、時間の単位(x軸)にわたってプロットされた胸部インピーダンス(y軸)の変化を示してもよい。所望である場合、図2のプロットは、さらに、薬物送出およびうっ血事象がない場合の、植え込み式胸部インピーダンスセンサを使用して患者について生成される平均インピーダンス信号を示してもよい。曲線226は、利尿薬の送出に応答する胸部インピーダンスの変化を示す。
【0036】
閾値220は、好ましくは、先に説明したように、患者について確立される。閾値220は、この例証的な例では、医師によって確定された、胸部流体の目標レベルを示す胸部インピーダンスの目標レベルを示してもよい。患者から取得された生理的データを使用すると、図2にプロットされたデータを見てすぐにわかるように、患者利尿の所望のまたは最適なレベルが達成されるように、うっ血緩和治療が滴定されうる。
【0037】
図3は、本発明の実施形態による、HF患者のためのうっ血緩和治療を評価するシステムおよび方法によって実施されてもよい、種々の例証的なオペレーションを示すブロック図である。図3に示すように、HF患者のためのうっ血緩和治療を評価する方法を実施するアルゴリズムからの出力は、患者利尿の目標レベルが達成されたか否かについての判定に基づいて供給される302。この出力は、種々の形態をとってもよく、また、種々の目的で使用されてもよい。出力は、患者の中に植え込まれた医療デバイスによって生成されてもよい。出力はまた、患者の中に植え込まれた医療デバイスからセンサデータを受信する患者の外部のデバイスによって生成されてもよい。他の出力シナリオが考えられる。
【0038】
図3に示すように、患者の利尿状態は、出力302を使用して確定されるかまたは示されてもよい304。臨床医および/または患者に対する警告306は、患者の過剰利尿を検出することに応答してなど、出力302に応答して、臨床医および/または患者に対して種々の形態で生成され、通信されてもよい。薬物治療適合性は、患者、臨床医または介護者によって、出力302を使用して監視されてもよい308。患者のHF状態および利尿状態を示す信号は、生成され310、たとえば、電気または電磁気信号、光信号、または音響信号を含む、いくつかの形態をとってもよい。
【0039】
薬物治療に対する患者の不応性の程度は、出力302に基づいて確定されるかまたは示されてもよい312。うっ血緩和治療に対する患者の応答の感度がまた、確定されるかまたは示されてもよい。うっ血緩和治療は、先に説明したように、調整されるかまたは滴定されてもよい316。患者のうっ血緩和治療応答データの統計的分析は、出力302に応答して始動されるかまたは実施されてもよい。
【0040】
患者、介護者、および/または臨床医は、元々処方された、または、出力302に基づいて医師によって調整された、薬物投与のための必要性について、可聴手段、テキスト手段、または視覚手段によってなどで催促される320。うっ血緩和治療に対する患者の応答感度は、監視される、かつ/または、傾向付けされてもよい314。種々の応答データ、傾向データ、ならびに、他の薬物および生理的データは、患者、介護者、臨床医および/または医師が使用するために表示されてもよい322。図3は、本発明の原理による、植え込み型のまたは患者の外部の医療デバイスの1つまたは複数のセンサから生成される出力情報302の使用に関する例についての、非網羅的で非制限的なリストを提供することを意図される。
【0041】
図4は、本発明の実施形態による、薬物送出に対する患者の応答に基づいて患者薬物送出を管理するシステム400のブロック図である。図4は、医師によって処方された薬物治療を受ける患者402を示す。薬物治療は、薬物ポンプデバイスなどの薬物治療デバイス404を使用して、注入によって患者402に送出されてもよい。薬物治療はまた、処方された薬物負荷の患者の消費によって送出されてもよく、この場合、薬物治療デバイス404は、たとえば、丸薬計数デバイスまたは薬物消費質問表を表してもよい。
【0042】
図4に示すシステム400は、患者402の中に植え込まれる患者植え込み型医療デバイスを含む。PIMD402は、1つまたは複数の植え込み型センサ408を組込む、または、それに結合される。センサ408の1つまたは複数は、患者の生理的パラメータまたは状況を検知するよう構成される。こうしたセンサ408は、胸部インピーダンスセンサ(たとえば、植え込み式経胸部総合インピーダンスセンサ)、血液(内部充満)圧力センサ、血流センサ、血液灌流センサ(たとえば、プレチスモグラフィセンサ)、血液温度センサ、血液ガスセンサ(たとえば、オキシメータセンサ)、心音センサ(たとえば、加速度計またはマイクロフォン)、および、血液化学物質または組成センサ(たとえば、POセンサ、SAOセンサ、グルコースセンサ、カリウムセンサ、乳酸センサ、PCOセンサ、pHセンサ、および分子プローブ)の1つまたは複数を含んでもよい。適した血液(内部充満)圧力センサ、血流センサ、血液温度センサ、および関連する検出技法の例は、参照により本明細書に組込まれる、権利者が共通である米国特許第6,666,826号明細書および第6,892,095号明細書に記載される。
【0043】
種々の外部センサ405が、患者の種々の生理的パラメータを検知するのに使用されてもよい。こうした外部センサ405は、とりわけ、パルスオキシメータセンサ、血圧センサ、血液化学物質センサ、患者温度センサ、患者発汗センサ、患者体重センサ,EKGセンサ機構の1つまたは複数を含んでもよい。
【0044】
システム400は、いくつかの患者の外部のデバイスを含む。外部システムインタフェース410は、PIMD406との通信を行うよう構成された通信回路を含む。外部システムインタフェース410はまた、単方向または双方向通信リンクによってなどで、薬物治療デバイス404との通信を行うよう構成されてもよい。外部システムインタフェース410は、さらに、外部センサ405との通信を行うよう構成されてもよい。
【0045】
単方向通信は、薬物治療デバイス404から外部システムインタフェース410への薬物治療情報(たとえば、薬物タイプ、用量、投与日時)の転送を容易にする。外部システムインタフェース410は、種々の実施形態において、薬物治療デバイス404に一体化されてもよく、または、薬物治療デバイス404から分離されてもよいことが理解される。双方向通信は、患者の薬物治療の閉ループ管理を容易にし、閉ループ管理は、好ましくは、薬物治療デバイス404とPIMD406との間に確立されるループ内への医師入力/介入を可能にする。このシステム構成は、有利には、患者に送出される薬物治療の自動または半自動の滴定を可能にする。
【0046】
外部システムインタフェース410は、プログラマ416、高度患者管理システム418、携帯式または手持ち式コミュニケータ414、または、他の患者の外部のシステムの1つまたは複数に通信可能に結合してもよく、または、一体化されてもよい。外部システムインタフェース410は、グラフィカルユーザインタフェース、または、ディスプレイを提供する他のインタフェースなどのユーザインタフェース412に結合する。ユーザインタフェース412は、好ましくは、キーボード、タッチスクリーンセンサ、マウス、ライトペンなどのような、ユーザ作動式入力/出力デバイスを含む。ユーザインタフェース412は、投与される薬物(複数可)のタイプ、こうした薬物の用量、薬物投与の時間および日付けなどの、薬物治療情報、患者の体重、健康であるという認識、および患者の状況を含む患者情報、または、薬物レジメンを入力するのに使用されてもよい。ユーザインタフェース412はまた、図2に示す閾値220などの、患者について生成される1つまたは複数の閾値を入力するのに使用されてもよい。
【0047】
プロセッサ420は、外部システムインタフェース410に結合するのが示される。あるいは、プロセッサ420は、仮想線で示すように、PIMD406のコンポーネントとして組込まれてもよい。プロセッサ420はまた、コミュニケータ414、プログラマ416、またはAPMシステム418のコンポーネントとして組込まれてもよい。プロセッサ420は、上述した種々のプロセスを実施し、たとえば、ユーザインタフェース412を介して医師、臨床医および/または患者に表示するために、治療データに対する患者の応答を外部システムインタフェース410に供給する。
【0048】
本発明に述べる種々の実施形態は、HF監視、診断および/または治療を提供するデバイスと共に使用されてもよい。本発明の患者植え込み型医療デバイスまたはPIMDは、2腔または両心室ペーシングペーシング/治療、心臓再同期治療、心臓機能最適化、または、他のHF関連方法を含むHF特徴を組込んでもよい。たとえば、本発明のPIMDは、以下の参考文献:それぞれが、参照により本明細書に組込まれる、権利者が共通である米国特許公報第2003/0130702号明細書ならびに米国特許第6,411,848号明細書、第6,285,907号明細書、第4,928,688号明細書、第6,459,929号明細書、第5,334,222号明細書、第6,026,320号明細書、第6,371,922号明細書、第6,597,951号明細書、第6,424,865号明細書および第6,542,775号明細書の1つまたは複数の特徴を組込んでもよい。
【0049】
本明細書に示すいくつかの構成は、植え込み型除細動器(ICD)によって従来から実施される種々の機能を実施することが可能であり、当技術分野で知られるように、多数のカルディオバージョン/除細動カルディオバージョン/除細動モードで動作してもよい。その態様が本発明のPIMDに組込まれてもよいICD回路、構造、および機能の例は、参照により本明細書に組込まれる、権利者が共通である米国特許第5,133,353号、第5,179,945号、第5,314,459号、第5,318,597号、第5,620,466号および第5,662,688号に開示される。
【0050】
特定の構成では、システムおよび方法は、カルディオバージョン/除細動治療に加えて、当技術分野で知られているように、種々のペーシング治療を供給することなど、ペースメーカによって従来から実施される機能を実施してもよい。その態様が本発明のPIMDに組込まれてもよいペースメーカ回路、構造、および機能の例は、参照により本明細書に組込まれる、権利者が共通である米国特許第4,562,841号明細書、第5,284,136号明細書、第5,376,106号明細書、第5,036,849号明細書、第5,540,727号明細書、第5,836,987号明細書、第6,044,298号明細書および第6,055,454号明細書に開示される。
【0051】
本発明によるPIMDは、診断機能および/または監視機能を実施すると共に、心臓刺激治療を提供してもよい。その態様が本発明のPIMDに組込まれてもよい心臓監視回路、構造、および機能の例は、参照により本明細書に組込まれる、権利者が共通である米国特許第5,313,953号明細書、第5,388,578号明細書および第5,411,031号明細書に開示される。
【0052】
ここで図5を参照すると、本発明の実施形態による、HF患者のためのうっ血緩和治療を評価するために、1つまたは複数の生理的パラメータを検知するよう構成されたPIMDの実施形態が示される。この例証的な例では、PIMDは、心臓内リード線システム710に電気的にかつ物理的に結合する植え込み型パルス発生器705を含む心調律管理デバイス(CRM)700を含む。
【0053】
心臓内リード線システム710の所定部分は、患者の心臓内に挿入される。心臓内リード線システム710は、心臓の電気心臓活動を検知し、電気刺激を心臓に施し、患者の経胸部インピーダンスまたは経胸部総合インピーダンスを検知し、血液(内部充満)圧力、血流および/または血液温度を検知し、加速度および/または身体音響を検知し、かつ/または、他の生理的パラメータを検知するよう構成された1つまたは複数の電極および/またはセンサを含む。パルス発生器705のハウジング701の所定部分は、任意選択で、缶電極の役割を果たしてもよい。
【0054】
通信回路は、ハウジング701内に配設されて、パルス発生器705と、たとえば、携帯式またはベッドサイド通信ステーション、患者保持/装着通信ステーション(たとえば、コミュニケータ)、外部プログラマ、または、高度患者管理システムインタフェースなどの外部通信デバイスとの間の通信を容易にする。通信回路はまた、1つまたは複数の植え込み式の、外部の、皮膚の、皮下の、生理的または非生理的センサ、患者入力デバイスおよび/または情報システムとの単方向または双方向通信を容易にしてもよい。
【0055】
パルス発生器705は、任意選択で、患者活動ならびに種々の呼吸および心臓関連状況を検知するのに使用されてもよい動き検出器720を組込んでもよい。たとえば、動き検出器720は、たとえば、いびき、活動レベルおよび/または呼吸努力に伴う胸壁運動を検知するよう構成されてもよい。動き検出器720は、パルス発生器705のハウジング701内にまたはハウジング701上に位置決めされた加速度計として実施されてもよい。加速度計として実施される動きセンサの場合、動きセンサはまた、呼吸、たとえば、ラ音、咳、および心臓、たとえば、S1〜S4心音、雑音、および他の音響情報を提供してもよい。加速度計は、種々の呼吸パラメータがそこから生成される可能性がある呼吸波形を生成するのに使用されてもよい。
【0056】
CRM700のリード線システム710およびパルス発生器705は、患者の呼吸波形または他の呼吸関連情報を取得するのに使用されてもよい1つまたは複数の経胸部インピーダンスセンサを組込んでもよい。経胸部インピーダンスセンサは、たとえば、心臓790の1つまたは複数の腔内に位置決めされた1つまたは複数の心臓内電極741、742、751〜755、763を含んでもよい。心臓内電極741、742、751〜755、763は、パルス発生器705のハウジング内に位置決めされたインピーダンスドライブ/センス回路に結合されてもよい。
【0057】
一実施態様では、インピーダンスドライブ/センス回路730は、インピーダンスドライブ電極751と、パルス発生器705のハウジング701上の缶電極との間の組織を通って流れる電流を生成する。缶電極に対するインピーダンスセンス電極752の電圧は、患者の経胸部インピーダンスが変化するにつれて変わる。インピーダンスセンス電極752と缶電極との間で生成される電圧信号は、インピーダンスセンス回路730によって検出される。インピーダンスセンスおよびドライブ電極の他のロケーションおよび/または組合せもまた可能である。
【0058】
リード線システム710は、患者の心臓790からの電気信号を検知し、かつ/または、心臓790にペーシングパルスを送出するために、1つまたは複数の心腔内か、心腔上か、または、心腔の周りに位置決めされた1つまたは複数の心臓ペース/センス電極751〜755を含んでもよい。図5に示すような、心臓内センス/ペース電極751〜755は、左心室、右心室、左心房および/または右心房を含む心臓の1つまたは複数の腔を検知する、かつ/または、ペーシングするのに使用されてもよい。リード線システム710は、除細動/カーディオバージョンショックを心臓に送出するために1つまたは複数の除細動電極741、742を含んでもよい。
【0059】
リード線システム710は、それぞれが、心臓内に延在する1つまたは複数の電極を有する、1つまたは複数のリード線を含んでもよい。図5は、3つのこうしたリード線を示し、1つは右心房内に延在し、1つは右心室内に延在し、1つは左心室の表面に配置するために冠静脈内に延在する。左心室リード線は、特に、左心室をペーシングし、かつ/または、検知するために、左心室内のまたは左心室の周りの適切なロケーションに配置されたLV遠位電極755およびLV近位電極754を含む。左心室リード線は、上大静脈を介して心臓の右心房内に誘導されてもよい。右心房から、左心室リード線は、冠状静脈洞小孔、冠状静脈洞の開口内に展開されてもよい。リード線は、冠状静脈洞を通って左心室の冠状静脈へ誘導されてもよい。この静脈は、心臓の右側から直接アクセス可能でない左心室の表面に、リード線が達するためのアクセス経路として使用される。
【0060】
パルス発生器705は、心臓不整脈を検出し、かつ/または、リード線システム710を通して心臓に送出される、電気刺激パルスまたはショックの形態のペーシングまたはデフィブリレーション治療を制御するための回路を含んでもよい。パルス発生器705はまた、参照により本明細書に組込まれる、権利者が共通である米国特許第5,203,348号明細書、第5,230,337号明細書、第5,360,442号明細書、第5,366,496号明細書、第5,397,342号明細書、第5,391,200号明細書、第5,545,202号明細書、第5,603,732号明細書、第5,916,243号明細書、第6,360,127号明細書および第6,597,951号明細書、ならびに、米国特許公報第2002/0143264号明細書に開示される植え込み型医療デバイスの回路、構造、および機能を組み込んでもよい。
【0061】
制限のためではなく例証のために、本発明によって実施されるデバイスの種々の実施形態は、患者の胸領域内の皮膚下に植え込まれてもよいPIMDの文脈で本明細書において記載される。PIMDは、たとえば、皮下に植え込まれてもよいため、デバイスの全てまたは選択された要素は、心臓活動を検知し、かつ/または、心臓刺激治療を施すのに適した、患者の前部ロケーション、後部ロケーション、側部ロケーション、または他の身体ロケーション上に位置決めされる。PIMDの要素は、電極要素がそれぞれ、心臓の近くか、心臓の周りか、心臓内か、または、心臓上に位置決めされた状態で、胸領域、腹領域、または鎖骨下領域内など、いくつかの異なる身体ロケーションに配置されてもよいことが理解される。
【0062】
PIMDの主要なハウジング(たとえば、アクティブまたはノンアクティブ缶)は、たとえば、肋骨籠の外側で肋間または肋骨下ロケーションか、腹部内か、または、上部胸領域(たとえば、第3肋骨の上などの鎖骨下ロケーション)内に位置するよう構成されてもよい。一実施態様では、電極を組込む1つまたは複数のリード線は、従来の経静脈送出手法の使用によって植え込まれた1つまたは複数のリード線によってなどで、心臓、大血管、または冠血管に直接接触して配置されてもよい。別の実施態様では、1つまたは複数の電極は、心臓、大血管、または冠血管に直接接触しないが、主要なハウジング上に、かつ/または、他のロケーションに配置されてもよい。
【0063】
さらなる実施態様では、たとえば、1つまたは複数の電極サブシステムまたは電極アレイは、アクティブ缶を使用するPIMD構成でまたはノンアクティブ缶を使用する構成で、心臓活動を検知し、任意選択で、心臓刺激エネルギーを送出するのに使用されてもよい。電極は、心臓に対して前側および/または後ろ側ロケーションに位置してもよい。本発明の種々の実施形態に組込まれてもよい有用な電極ロケーションおよび特徴の例は、参照により本明細書に組込まれる、権利者が共通であり同時係属中の米国特許公報第2004/0230230号明細書および第2004/0230243号明細書に記載される。
【0064】
一構成では、図6に示すように、PIMDの電極サブシステムは、患者の心臓810の周りに配置される。PIMDシステムは、缶電極を備える第1電極サブシステム802、および、少なくとも2つの電極または少なくとも1つの多要素電極を含む第2電極サブシステム804を含む。第2電極サブシステム804は、検知および/または電気刺激のために使用される複数の電極を含んでもよい。
【0065】
種々の構成では、第2電極サブシステム804は、電極の組合せを含んでもよい。第2電極サブシステム804の電極の組合せは、以下で記載するように、コイル電極、先端電極、リング電極、多要素コイル、螺旋コイル、非導電性バッキング上に搭載された螺旋コイル、スクリーンパッチ電極、および他の電極構成を含んでもよい。適した非導電性バッキング材料は、たとえば、シリコーンゴムである。
【0066】
缶電極802は、PIMD電子部品を閉囲するハウジング801上に位置決めされる。一実施形態では、缶電極802は、ハウジング801の外部表面の全体を含む。他の実施形態では、ハウジング801の種々の部分は、缶電極802から、または、組織から電気絶縁されてもよい。たとえば、缶電極802のアクティブエリアは、心臓検知および/または刺激に有利な方法で電流を流すために、ハウジング801の前側表面または後ろ側表面の全てまたは一部分を含んでもよい。たとえば、ハウジング801の所定部分は、電流を流すために、非導電性のまたはその他の方法で電気的に抵抗性がある材料で被覆されてもよい。適した非導電性材料コーティングは、たとえば、シリコーンゴム、ポリウレタン、またはパリレンから形成されるコーティングを含む。
【0067】
図6に示すPIMDシステムは、うっ血緩和治療および/または患者の利尿状態を評価するのに有用なパラメータを検知するよう構成された1つまたは複数のセンサを組込む。センサは、要素802が、単独、または、缶電極と組合せてこうしたセンサ(複数可)を表すように、ハウジング801上に配設されてもよい。センサ(複数可)は、リード線806上、リード線806から離れたリード線上、または、サブシステム要素804上など、PIMDシステムの別のコンポーネント上に配設され、単独、または、心臓電極と組合せてこうしたセンサ(複数可)を表してもよい。
【0068】
本発明のPIMDは、適切な通信インタフェースまたは外部プログラマによって患者管理サーバまたはネットワークと通信するよう実施されてもよい。本発明のPIMDは、高度患者管理(APM)システムの構造内で使用されてもよい。高度患者管理システムは、医師が、心臓および呼吸機能、ならびに、胸部流体レベルなどの他の患者状況を遠隔でかつ自動的に監視することを可能にする。一例では、心臓ペースメーカ、除細動器、または再同期デバイスとして実施されるPIMDは、リアルタイムデータ収集、患者の診断、および患者の処置を有効にする種々の電気通信および情報技術を装備してもよい。本明細書で記載する種々のPIMD実施形態は、高度患者管理と共に使用されてもよい。遠隔患者/デバイス監視、診断、治療、または他のAPM関連方法を実現するようになっていてもよい、本明細書で記載する方法、構造、および/または技法は、以下の参考文献、米国特許第6,221,011号明細書、第6,270,457号明細書、第6,277,072号明細書、第6,280,380号明細書、第6,312,378号明細書、第6,336,903号明細書、第6,358,203号明細書、第6,368,284号明細書、第6,398,728号明細書および第6,440,066号明細書の1つまたは複数の特徴を参照により本明細書に組込んでもよい。
【0069】
本明細書で記載するコンポーネント、機能、および構造的構成は、PIMDまたは患者の外部の医療デバイスに組込まれてもよい種々の特徴および特徴の組合せの理解を可能にすることを意図される。比較的精緻な設計から比較的簡単な設計にわたる、様々なPIMD、外部医療デバイス、ならびに他の植え込み型監視および/または刺激デバイスが考えられることが理解される。したがって、特定の医療デバイス構成は、本明細書で記載した特定の特徴を含む可能性があるが、一方、他のこうしたデバイス構成は、本明細書で記載した特定の特徴を排除する可能性がある。
【0070】
本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更および追加が、先に説明した好ましい実施形態に対して行われうる。たとえば、本明細書で記載する方法およびシステムは、一般に、患者の1つまたは複数の生理的パラメータを測定するための植え込み型デバイスまたはセンサを含む。本発明の方法およびシステムが、患者の外部のデバイスおよびセンサを使用して実施されてもよいこと、および、本明細書で述べる実施形態が、こうした患者の外部のデバイスおよびセンサの文脈で実施されてもよいことが理解される。さらに、本発明の技法は、一般的な利尿維持のための長期的処置、ならびに、うっ血事象解決のための緊急利尿薬の短期的管理で使用されてもよい。相応して、本発明の範囲は、上述した特定の実施形態によって制限されるべきではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物だけによって規定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全患者に施されるうっ血緩和治療を評価する方法であって、
前記患者の中から、前記患者の利尿状態を示す生理的パラメータを検知すること、
前記検知された生理的パラメータと前記患者について生成される閾値との関係に基づいて、患者の利尿目標レベルが達成されたかどうかを判定すること、
前記患者利尿の目標レベルが達成されたと判定することに応答して、出力を生成すること、を備える方法。
【請求項2】
うっ血事象の発生を検出すること、および、前記うっ血事象の検出に応答して前記生理的パラメータを検知することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
長期的利尿薬治療とうっ血性事象に対する緊急利尿薬治療の短期的管理とのために実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生成された出力に基づいて前記うっ血緩和治療を滴定することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の過剰利尿を検出することに応答して警告を生成することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記うっ血緩和治療の薬物レジメンに対する不適合性を検出することに応答して警告を生成することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記うっ血緩和治療に対する不応性を検出することに応答して警告を生成することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記うっ血緩和治療を施しているにリアルタイムに実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
うっ血緩和治療のために前記患者に投与される薬剤のタイプ、前記うっ血緩和治療を施す方法、および1つまたは複数の患者固有状況のうちの1つまたは複数に基づいて前記生理的パラメータの検知を調整することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記患者内で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
比較すること、判定すること、および生成することのうちの少なくとも1つは、前記患者の外部で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記検知された生理的パラメータと前記閾値との関係は、
前記検知された生理的パラメーが、前記閾値として確立されたベースライン値に戻ること、
前記検知された生理的パラメーが、前記閾値として確立されたベースライン値の所定のパーセンテージまたは関数に戻ること、
前記閾値に対する前記検知された生理的パラメータの増加または減少の変化率と、
前記閾値として確立された患者利尿の安全レベルに対する前記検知された生理的パラメータの増加または減少の変化率と、
前記患者に施された以前の有効な治療に関連する生理的パラメータの応答に符合する前記検知された生理的パラメータの変化と
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記生理的パラメータは、胸部流体パラメータ、胸部インピーダンスパラメータ、心音パラメータ、心腔圧パラメータ、心房圧パラメータ、呼吸パラメータ、心拍数パラメータ、心拍変化パラメータ、電位図伝導パターンパラメータ、血液化学物質パラメータ、カリウムレベルパラメータ、血液灌流パラメータ、血液酸素飽和度パラメータ、身体四肢温度パラメータ、身体四肢発汗パラメータ、および患者体重パラメータのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記閾値は医師によって確立される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
心不全患者に施される治療を評価する方法であって、
前記患者の中から、前記治療に応答する前記患者の状態を示す生理的パラメータを検知すること、
前記検知された生理的パラメータと前記患者について生成される閾値との関係に基づいて、前記患者に対する治療改善効果の目標レベルが達成されたかどうかを判定すること、 前記患者改善効果の目標レベルが達成されたと判定することに応答して第1出力を生成し、前記患者が過剰治療を受けていると判定することに応答して第2出力を生成することを備える、方法。
【請求項16】
前記治療は薬物治療を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記治療は神経刺激治療を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記治療は心臓電気刺激治療を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
心不全患者に施されるうっ血緩和治療を評価するシステムであって、
前記患者の利尿状態を示す生理的パラメータを検知するよう構成される植え込み型センサと、
前記植え込み型センサに結合したプロセッサであって、患者の利尿目標レベルが、前記検知された生理的パラメータと前記患者について生成される閾値との関係に基づいて達成されたかどうかを判定し、且つ前記患者の利尿目標レベルが達成されたと判定することに応答して、出力を生成するよう構成される、前記プロセッサとを備える、システム。
【請求項20】
前記プロセッサは、植え込み型ハウジング内に配設される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記プロセッサは、前記患者の外部のハウジング内に配設される、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記プロセッサは、ネットワークサーバシステム用のプロセッサである、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサは、前記患者の過剰利尿を検出すること、前記うっ血緩和治療の薬物レジメンに対する不適合性を検出すること、および前記うっ血緩和治療に対する不応性を検出することのうちの1つまたは複数に応答して警告信号を生成するよう構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記センサは胸部流体センサを備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記センサは心音センサを備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記センサは心腔または心房圧センサを備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
前記センサは呼吸センサを備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
前記センサは血液化学物質センサを備える、請求項19に記載のシステム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−527693(P2010−527693A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509378(P2010−509378)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/006526
【国際公開番号】WO2008/153717
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】