説明

植木鉢

【課題】 外鉢内に内鉢を設置して二重カップ構造となし、外鉢の胴部に排水孔を穿設してなる植木鉢があるが、この植木鉢は内鉢に設けた外フランジで外鉢の開口をぴったりと塞ぐようになっているため外鉢と内鉢の間の空気が淀む。
【解決手段】 外鉢2内に内鉢3を設置し、内鉢3に用土を入れて植物を植えると共に外鉢2に水を蓄えるようにした植木鉢1において、外鉢2は開口端面が焼成後の歪みを残した状態である陶磁器製とし、一方、内鉢3は全体が陶磁器製で外鉢2の開口部の外側の輪郭とほぼ同じ輪郭を有する外フランジ7を開口端面に備え、その外フランジ7を外鉢2の開口端面に載置することにより外鉢2内面との間に隙間Sを保って吊り支えられるようになし、さらに外鉢2の胴部であって内鉢3の胴部の中間に対応する高さに貫通孔11を穿設すると共に内鉢3に外鉢2の貫通孔3より高所と低所に複数の透孔10を穿設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を植える植木鉢に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示したように、上面が開口するカップ形態の外鉢100内にそれより小さいカップ形態であって上面が開口する内鉢101を設置し、内鉢101内に用土102を入れて植物を植えると共に外鉢100内に水103を蓄えるようにした二重カップ構造の植木鉢104が従来よりある(特許文献1参照)。
【0003】
前記従来の植木鉢104の内鉢101は、外鉢100の開口部の外側の輪郭より若干大きい輪郭を有する外フランジ105を開口端面に備え、その外フランジ105を外鉢100の開口端面に載置することにより外鉢100内面との間に隙間Sを保って外鉢100内に吊り支えられるようになっている。また、外鉢100には内鉢101の底より低所にオーバーフロー用の排水孔106が穿設されており、外鉢100に蓄えた水に内鉢101の底が浸からないようになっている。
【特許文献1】特開平9−28194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の植木鉢104は、図5に示したように内鉢101の外フランジ105がキャップ状になっていて、外鉢100の開口端面をぴったりと塞ぐようになっている。従って外鉢100と内鉢101の間の隙間Sに空気を供給する役目は専らオーバーフロー用の排水孔106が担うことになるため、排水孔106の開口面積をある程度大きく設定する必要がある。
【0005】
しかして外鉢100の排水孔106の開口面積を大きくするには小さい排水孔106を複数設ける方法と、一個の排水孔106を大きくする方法があるが、前者の場合には排水孔106が人目に付いて目障りであるため、植物が醸し出す自然な雰囲気を壊すおそれがある。一方、後者の場合には、排水孔106を背面に向けることにより上記の欠点は解消できるが、排水孔106が一個であると隙間Sにある空気が対流せずに淀むため新鮮な空気が供給できない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上面が開口するカップ形態の外鉢内にそれより小さいカップ形態であって上面が開口する内鉢を設置し、内鉢内に水苔や腐葉土等の用土を入れて植物を植えると共に外鉢内に水を蓄えるようにした植木鉢において、前記外鉢は、少なくとも開口端面が焼成後の歪みを残した状態である陶磁器製とし、一方、内鉢は、全体が陶磁器製で、前記外鉢の開口部の外側の輪郭とほぼ同じか又はそれより若干大きい輪郭を有する外フランジを開口端面に備え、その外フランジを外鉢の開口端面に載置することにより外鉢内面との間に隙間を保って外鉢内に吊り支えられるようになし、さらに外鉢の胴部であって前記内鉢の胴部の中間に対応する高さに貫通孔を穿設すると共に内鉢に外鉢の貫通孔より高所と低所に複数の透孔を穿設してなる植木鉢を提供する。
【0007】
また、請求項2に記載したように、前記外鉢の少なくとも開口端面に施釉し、一方、内鉢の少なくとも外フランジの裏面に施釉してなる請求項1記載の植木鉢を提供する。
【発明の効果】
【0008】
前記貫通孔に達するか又はその近くにまで水を入れた外鉢に内鉢を装着すると、内鉢の下半部が水に浸かって水嵩が上がるが、貫通孔より上の水はその貫通孔から外部に排出されるため、最終的な水位は貫通孔のレベルに落ち着く。この状態では内鉢の下半部が水に浸かっているため、その領域にある透孔から用土に水が沁み込む。一方、内鉢の上半部は水に浸かっていないため、その領域にある透孔から用土に空気が供給される。
【0009】
しかして、一般に陶磁器は焼成に伴う膨脹・収縮等により僅かに歪むため、その歪みを残したままの陶磁器の開口端面に固い陶磁器製の蓋を載せても気密性は保てない。本発明の植木鉢はそのような陶磁器の特徴を利用し、外鉢の開口端面を焼成しっぱなしの状態とし、その上に陶磁器製で固い内鉢の外フランジを載せるようにしたため、内鉢の外フランジと外鉢の開口端面の接触部に気密性がない、換言すると内鉢の外フランジと外鉢の開口端面の接触部に通気性がある。このような内鉢の外フランジと外鉢の開口端面の接触部の自然な通気性により、外鉢の貫通孔から隙間内に入った空気が前記接触部から外部に抜けるか、或はその逆になるため、空気の淀みが生じない。しかも外鉢の開口端面の歪みと言っても肉眼では殆ど判らない程度のものであり、外観上の見苦しさ・不自然さも全くない。
【0010】
その上さらに内鉢は、外鉢の開口端面に外フランジを単に載せた固定状態にあり、且つ、内鉢の外フランジの輪郭が外鉢の開口部の外側の輪郭とほぼ同じかそれより若干大きいため、外フランジの外周を横から指で挟んで持ち上げるだけで内鉢の着脱が簡単に行える。従って外鉢への水の補充が容易であり、内鉢を着脱する際に誤って外鉢を転倒させるおそれもない。
【0011】
また、請求項2のように、外鉢の少なくとも開口端面に施釉し、一方、内鉢の少なくとも外フランジの裏面に施釉するようにすれば、前記開口端面と前記外フランジの裏面の硬度が素焼状態より高まるから、通気のための隙間が接触部に出来やすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図1は縦断面図、図2は分解斜視図、図3は平面図、図4は使用状態を示す斜視図である。
【0013】
本発明の植木鉢1は、図1,図2に示したように、外鉢2と内鉢3を組み合わせた二重カップ構造である。前記外鉢2は、上面が開口するカップ形態であって、陶磁器製の外鉢本体4の底に高台5を形成し、その高台5の底端面を除く全周に釉薬を塗布して焼成したものである。
【0014】
一方、内鉢3は、上面が開口するカップ形態であって、前記外鉢2より小さいサイズの内鉢本体6と、その内鉢本体6の開口端面に突設した外フランジ7と、からなる。内鉢3は陶磁器製であって、胴部の下端を底壁8より下げて高台9とし、その高台9の底端面を除く全体に釉薬を塗布して焼成したものである。内鉢3の前記外フランジ7は、外鉢2の開口部の外側の輪郭とほぼ同じか又はそれより若干大きい輪郭を有する。従って図2矢示のように内鉢3を外鉢2に納めると、外フランジ7が外鉢2の開口端面に当たって載るため、内鉢3が外鉢2内面との間に隙間Sを保った状態で吊り支えられる。
【0015】
しかして前記内鉢3には底壁8の全面と、胴部の周方向と高さ方向に複数個の透孔10,10…が穿設されている。また、前記外鉢2には胴部に一個の貫通孔11が穿設されている。この貫通孔11は前記内鉢3の胴部の中間に対応する高さにあり、内鉢3の前記透孔10,10…はその外鉢2の貫通孔11より高所の上半部にあるものと、低所の下半部にあるものに区分される。
【0016】
次に本発明の植木鉢1の使用方法について説明する。
まず、図2に二点鎖線で示したように内鉢3内に水苔や腐葉土等の用土12を入れて適当な植物13を植え、一方、外鉢2内に貫通孔11のレベルまで水14を入れる。次に外鉢2内に内鉢3を装着する。そうすると内鉢3の下半部が水14に浸かって水嵩が一旦上昇するが、上昇した水14は外鉢2の貫通孔11から排出されるため、最終的な水位は貫通孔11のレベルに落ち着く。この状態では内鉢3の下半部が水14に浸かっているため、下半部の領域(底壁8を含む)にある透孔10,10…から植物13が必要とする水14が用土12内に沁み込む。一方、内鉢3の上半部は水に浸かっていないため、上半部の領域にある透孔10,10…から用土12内に空気が供給される。従って植物13の栽培に必要な水14と空気が透孔10,10…を介して適度に供給される。
【0017】
ところで、一般に陶磁器は焼成に伴う膨脹・収縮等により僅かな歪みがあるため、その歪みを残したままの陶磁器の開口端面に固い陶磁器製の蓋を載せても気密性は保てない。本発明の植木鉢1はそのような陶磁器の特徴を利用し、外鉢2の開口端面を焼成しっぱなしの状態とし、その上に陶磁器製で固い内鉢3の外フランジ7を載せるようにしたため、内鉢3の外フランジ7と外鉢2の開口端面の接触部に気密性がない、換言すると内鉢3の外フランジ7と外鉢2の開口端面の接触部に通気性がある。このような内鉢3の外フランジ7と外鉢2の開口端面の接触部の自然な通気性により、外鉢2の貫通孔11から隙間S内に入った空気が前記接触部から外部に抜けるか、或はその逆になるため、空気の淀みが生じない。しかも外鉢2の開口端面の歪みと言っても肉眼では殆ど判らない程度のものであり、外観上の見苦しさ・不自然さも全くない。
【0018】
なお、本発明において施釉する方法には、釉薬を塗ったり吹き付けたりする場合の他、転写紙による釉薬層の形成も含まれる。また、実施形態では、外鉢2の開口端面と内鉢3の外フランジ7の裏面に施釉するようにしたが、釉薬を塗布しないで焼成することも可能である。
【実施例】
【0019】
図示した構造の植木鉢1を湯飲みサイズにして製造し、内鉢3に用土12たる水苔を入れて植物13を植え、外鉢2に貫通孔11のレベルまで水14を蓄え、室内環境で植物13の栽培実験を行った。その結果、一週間に一回、外鉢2に水14を補充するだけで植物13の栽培が行えた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】縦断面図である。
【図2】分解斜視図である。
【図3】平面図である。
【図4】使用状態を示す斜視図である。
【図5】従来の植木鉢を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 …植木鉢
2 …外鉢
3 …内鉢
7 …外フランジ
10…透孔
11…貫通孔
12…用土
13…植物
14…水
S …隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口するカップ形態の外鉢内にそれより小さいカップ形態であって上面が開口する内鉢を設置し、内鉢内に水苔や腐葉土等の用土を入れて植物を植えると共に外鉢内に水を蓄えるようにした植木鉢において、
前記外鉢は、少なくとも開口端面が焼成後の歪みを残した状態である陶磁器製とし、
一方、内鉢は、全体が陶磁器製で、前記外鉢の開口部の外側の輪郭とほぼ同じか又はそれより若干大きい輪郭を有する外フランジを開口端面に備え、その外フランジを外鉢の開口端面に載置することにより外鉢内面との間に隙間を保って外鉢内に吊り支えられるようになし、
さらに外鉢の胴部であって前記内鉢の胴部の中間に対応する高さに貫通孔を穿設すると共に内鉢に外鉢の貫通孔より高所と低所に複数の透孔を穿設してなることを特徴とする植木鉢。
【請求項2】
前記外鉢の少なくとも開口端面に施釉し、一方、内鉢の少なくとも外フランジの裏面に施釉してなることを特徴とする請求項1記載の植木鉢。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−197885(P2006−197885A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14956(P2005−14956)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(501073482)協業組合三峰陶苑 (1)
【Fターム(参考)】