説明

植栽パネル及び壁面緑化構造

【課題】植栽パネルの輸送時の損傷を低減し、かつ、輸送効率を向上する。
【解決手段】植栽パネル10は、板状のパネル本体12と、パネル本体12に形成された開口部14と、開口部14に挿入されてパネル本体12に取り付けられ、開口部14側が開口した植栽容器30とを有する。また、植栽パネル10では、植栽容器30が挿入されていない開口部14が目隠し蓋50で塞がれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽パネル及び壁面緑化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物外壁等の垂直な壁面の緑化は、気温緩和効果(夏期には構造物の温度上昇抑制、冬期には構造物の断熱効果)、防音効果、暴風効果、防火的効用や火災延焼防止効果が認められ、景観の向上および植物のもつ環境改善効果もある。
【0003】
特許文献1には、壁面にフェルトや不織布からなる基盤を配置して、この中に植物の苗を植え込むことで、壁面緑化を行う方法が開示されている。しかし、特許文献1の方法では、基盤に植え込んだ植物は、地面に対して略平行に向くので、植物が成長しづらい。
【0004】
特許文献2には、植物の根を植え込んだ植栽基盤を内部に収容し、植物部分を外部に露出させるように開口部を設けた植栽パネルが開示されている。しかし、特許文献2の構成も特許文献1と同様に、基盤に植え込んだ植物は、地面に対して略平行に向くため成長しづらい。
【0005】
そこで、特許文献3には、図18(A)に示すように、植栽パネル500が、板状のパネル本体502と、このパネル本体502と一体的に形成され、植物を植栽するポケット504とを有した構成が開示されている。この構成によれば、植物は当該ポケット504から地面に対して垂直に生育することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−254559号公報
【特許文献2】特開2008−113577号公報
【特許文献3】特開2008−29322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3の構成では、ポケット504がパネル本体502から突き出ているため、図18(B)に示すように、植栽パネル500を複数枚上に積み重ねて輸送する時、植栽パネル500のポケット504が他の植栽パネル500のパネル本体502に接触してポケット504やパネル本体502が損傷してしまう。
【0008】
また、パネル本体502の表面からポケット504が外側に突き出しているため、植栽パネル500を複数枚重ねた状態では、植栽パネル500同士の間に無駄な隙間506が形成されてしまい、植栽パネル500の輸送効率が悪かった。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮し、輸送時の損傷を低減し、かつ、輸送効率を向上することが可能な植栽パネル及び壁面緑化構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様の発明は、板状のパネル本体と、前記パネル本体に形成された開口部と、前記開口部に挿入されて前記パネル本体に取り付けられ、前記開口部側が開口した植栽容器と、を有する植栽パネルである。
【0011】
第1態様に記載の発明によれば、植栽パネルは、植栽容器をパネル本体に形成された開口部に挿入して取り付ける構成であるので、植栽パネルの輸送時には、植栽パネルをパネル本体と植栽容器に分離して複数のパネル本体を積み重ねることができる。これにより、植栽パネルをコンパクトに輸送でき、植栽パネルの輸送効率を向上させることができる。また、パネル本体と植栽容器が接触することを防止でき、輸送時における植栽容器及びパネル本体の損傷を低減することができる。
【0012】
第2態様の発明は、前記開口部は、複数個形成され、前記植栽容器が挿入されていない開口部は、蓋で塞がれている植栽パネルである。
【0013】
第2態様に記載の発明によれば、パネル本体に形成された複数の開口部が全て植栽容器又は蓋で塞がれることになるので、開口部が視認されることがなく、植栽パネルの意匠性が損なわれることを防止することができる。
【0014】
第3態様の発明は、前記植栽容器は、前記パネル本体に取り外し自在に取り付けられる植栽パネルである。
【0015】
第3態様に記載の発明によれば、植栽容器は、パネル本体に取り外し自在に取り付けられるので、この植栽容器をパネル本体から取り外し、他の植栽容器や蓋をパネル本体の開口部に挿入して取り付けることができる。このため、植栽容器のレイアウトを変更することができる。
【0016】
第4態様の発明は、前記植栽容器は、前記パネル本体の表面から突出し、植物が植栽される収容部と、前記収容部と一体成形され、前記開口部に嵌る嵌め込み部材と、前記嵌め込み部材の抜け落ちを阻止する抜け落ち阻止手段と、を有する植栽パネルである。
【0017】
第4態様に記載の発明によれば、パネル本体の開口部に嵌め込み部材が嵌り、抜け落ち阻止手段により嵌め込み部材の抜け落ちが阻止されるため、植栽容器をパネル本体へ取り付けることができる。
【0018】
第5態様の発明は、前記抜け落ち阻止手段は、前記嵌め込み部材から突設され、前記パネル本体の裏面に当るフランジである植栽パネルである。
【0019】
第5態様に記載の発明によれば、パネル本体の裏面から植栽容器を開口部へ挿入すると、パネル本体の裏面にフランジが当たって、パネル本体の表面から収容部が突き出て、パネル本体へ植栽容器が取り付けられる。このため、植栽容器がワンタッチでパネル本体に取り付けられる。また、植栽容器の抜け落ちを阻止するための部材を設ける必要が無い。
【0020】
第6態様の発明は、前記抜け落ち阻止手段は、前記開口部の内壁に形成され、前記パネル本体の裏面に向かって拡がる壁テーパー面と、前記嵌め込み部材の外周面に形成され、前記収容部に向かって狭まり、前記壁テーパー面と接触する容器テーパー面と、を有する植栽パネルである。
【0021】
第6態様に記載の発明によれば、パネル本体の裏面から開口部に植栽容器を挿入すると、壁テーパー面と容器テーパー面が接触して、植栽容器がワンタッチでパネル本体に取り付けられる。また、ネジや接着剤等で植栽容器をパネル本体に固定する場合に比べ、製造コストを低減できる。
【0022】
第7態様の発明は、上記植栽パネルが取り付けられる構造物の壁面と、前記植栽パネルと前記壁面の間に設けられた保水層と、を有する壁面緑化構造である。
【0023】
第7態様に記載の発明によれば、植栽容器に植栽される植物の根が植栽容器の開口部を通じて保水層に絡みつくので、植物の剥離や落下の恐れがなくなる。また、植物の育成を向上させることができる。
【0024】
第8態様の発明は、前記壁面が傾斜しているとき、前記収容部の上面が水平となるように前記植栽容器が加工されている壁面緑化構造である。
【0025】
第8態様に記載の発明によれば、収容部の上面が水平となるように植栽容器が加工されているため、パネル本体が取り付けられる壁面が傾斜していても、収容部から植物の実や種の流出を防ぎ、収容部内で植物を自然に繰り返し育成させることができる。また、パネル本体と植栽容器は別個に形成されているので、パネル本体と植栽容器が一体形成されている場合に比べ、植栽容器を自由に加工できるため、収容部の上面が水平となるように植栽容器を加工することも容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、植栽パネルの輸送時の損傷を低減し、かつ、輸送効率を向上することできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る植栽パネルの外観斜視図である。
【図2】図1に示す植栽パネルのA−A矢視断面図である。
【図3】図1に示すパネル本体の外観斜視図である。
【図4】(A)は、図1に示す植栽容器の概観斜視図である。(B)は、図1に示す目隠し蓋の概観斜視図である。
【図5】図4に示す植栽容器と目隠し蓋のパネル本体への取り付け途中の状態を示した図である。
【図6】(A)は、本発明の第1実施形態に係る壁面緑化構造を示す外観斜視図であり(B)は、図6(A)に示す壁面緑化構造の縦断面図である。
【図7】図6(A)に示す壁面緑化構造の分解斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る植栽パネルの作用を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る植栽パネルの外観斜視図である。
【図10】図9に示す植栽パネルのB−B矢視断面図である。
【図11】(A)は、図9に示す植栽容器の外観斜視図であり、(B)は、図9に示す目隠し蓋の外観斜視図である。
【図12】第1実施形態で説明した植栽容器の形状の変形例を示す図である。
【図13】第1実施形態で説明した植栽パネルのレイアウトの変形例を示す図である。
【図14】第1及び第2実施形態で説明した植栽容器の変形例を示す図であり、パネル本体の表面側から開口部に挿入して取り付ける植栽容器の外観斜視図である。
【図15】図14と同様に、第1及び第2実施形態で説明した植栽容器の変形例を示す図であり、パネル本体の表面側から開口部に挿入して取り付ける植栽容器の外観斜視図である。
【図16】第1実施形態で説明した植栽パネルの背面形状の変形例を示す図である。
【図17】(A)及び(B)は、第1実施形態で説明した壁面緑化構造の変形を示す図である。
【図18】(A)は、従来の植栽パネルの外観斜視図であり、(B)は、従来の植栽パネルの作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。なお、実質的に同様の機能を有するものには、全図面通して同じ符号を付して説明し、場合によってはその説明を省略することがある。
【0029】
(植栽パネルの構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る植栽パネルの外観斜視図である。また、図2は、図1に示す植栽パネルのA−A矢視断面図である。
【0030】
本発明の第1実施形態に係る植栽パネル10は、板状のパネル本体12を有している。
【0031】
このパネル本体12のサイズは、1000mm×1000mm×30mmである。また、パネル本体12の素材は、発泡スチロール等の合成樹脂、金属類、GRC(ガラス繊維補強セメント)、FRP(ガラス繊維補強プラスチック)、CFRP(炭素繊維補強プラスチック)等の材料が挙げられ、特に限定されないが、本第1実施形態では、発泡スチロールにウレタン塗膜されたデコフォルムを用いる。さらに、パネル本体12の全面には、パネル本体12の素材に応じた耐候性塗料が塗装されている。
【0032】
図3は、図1に示すパネル本体12の外観斜視図である。同図に示すように、パネル本体12には、開口部14が所定の間隔で9個形成されている。これら開口部14は、パネル本体12の表面12Aから裏面12Bへ貫通しており、平面形状は四角形である。また、各開口部14の大きさは、縦幅が100〜250mm、横幅が100〜150mm、奥行きが30mmである。
【0033】
図5に示すように、パネル本体12の裏面12Bには、開口部14及びパネル本体12の外周部へ抜ける複数の溝16が所定の間隔で形成されている。これにより、植栽パネル10の裏面に、後述する保水吸水シート74(図6(B)参照)を設けたとき、植栽パネル10と保水吸水シート74の間には、溝16によって隙間が形成される。
【0034】
また、パネル本体12には、所定の間隔で、後述するボルト70(図7参照)が挿通可能な挿通孔18が4箇所形成されている。さらに、パネル本体12の上下左右の側端面には、それぞれ臍20が形成されている。これにより、植栽パネル10を並設したときに、隣接する植栽パネル10の臍20と不図示の連結板で連結され、複数枚の植栽パネル10が建物壁面に取り付けられる(詳細は、特許文献3の図11参照)。
【0035】
図4(A)は、図1に示す植栽容器の概観斜視図である。
【0036】
図1及び図4(A)に示すように、植栽パネル10は、5個の植栽容器30を有している。各植栽容器30は、パネル本体12の4隅にある開口部14と、中央部にある開口部14にそれぞれ挿入されてパネル本体12に取り外し自在に取り付けられており、開口部14側が開口している。各植栽容器30内には、植物、例えばタブノキ、ヤマモモ、ヤブツバキ、ヤマザクラ、ヤマモミジ、コナラ等の樹木が植栽される。
【0037】
植栽容器30のサイズは、縦幅Lが150〜250mmであり、横幅Wが100〜150mmで、厚みDが100〜150mmである。厚みDは、強度と植物育成性能が確保することが可能であれば薄い方が好ましい。また、植栽容器30の素材は、パネル本体12の素材と同一のものが挙げられ、特に限定されないが、本第1実施形態では発泡スチロールにウレタン塗膜されたデコフォルムを用いる。さらに、植栽容器30の全面には、植栽容器30の素材に応じた耐候性塗料が塗装されている。
【0038】
このような植栽容器30は、上述の植物が植栽される収容部32を有している。収容部32は、上から下に向かって徐々に縮径された逆円錐形状の容器を約2分の1に分割した形状とされ、収容部32の上部の第1開口部36から土壌が投入される。この構成により、第1開口部36内に土壌を投入して植物を植栽したとき、土壌が収容部32によって保持される。
【0039】
この収容部32は、四角形状の嵌め込み台38の表面38Aへ一体成形されている。嵌め込み台38は、パネル本体12の開口部14に嵌るように、開口部14のサイズ・形状と略同一のサイズ・形状とされている。
【0040】
この嵌めこみ台38の中央部には、嵌めこみ台38を貫通し、第1開口部36と連通する第2開口部40が形成されている。これにより、植栽容器30がパネル本体12の開口部14に挿入されてパネル本体12の開口部14が塞がれても、植栽容器30に植栽された植物の根は、第2開口部40を通過して、パネル本体12の裏面12Bの先へと延伸することが可能となる。
【0041】
嵌め込み台38の裏面38Bには、複数のフランジ(鍔)44が嵌め込み台38から外側へ突設している。このフランジ44は、図5に示すように、植栽容器30の収容部32及び嵌め込み台38がパネル本体12の裏面12Bから開口部14に挿入される時に、パネル本体12の裏面12Bに当たり、植栽容器30がパネル本体12の表面12Aから抜け落ちることを阻止する。また、フランジ44は、隙間42をあけて配置されており、植栽容器30をパネル本体12に取り付けたとき、隙間42は溝16と重なり、溝16を塞がないようになっている。
【0042】
図4(B)は、図1に示す目隠し蓋50の概観斜視図である。
【0043】
図1及び図4(B)に示すように、植栽容器30の他に、植栽パネル10は、4個の目隠し蓋50を有している。各目隠し蓋50は、植栽容器30が挿入されていない開口部14にそれぞれ挿入されてパネル本体12に取り外し自在に取り付けられており、当該開口部14が目隠し蓋50で塞がれている。
【0044】
目隠し蓋50の素材は、パネル本体12及び植栽容器30の素材と同一のものが挙げられ、特に限定されないが、本第1実施形態では、発泡スチロールにウレタン塗膜されたデコフォルムを用いる。さらに、目隠し蓋50の全面には、目隠し蓋50の素材に応じた耐候性塗料が塗装されている。
【0045】
目隠し蓋50は、四角形状の嵌め込み台52を有している。嵌め込み台52は、パネル本体12の開口部14に嵌るように、開口部14のサイズ・形状と略同一のサイズ・形状とされている。
【0046】
嵌め込み台52の裏面52Aには、複数のフランジ(鍔)56が嵌め込み台52から外側へ突設している。フランジ56は、図5に示すように、目隠し蓋50の嵌め込み台52がパネル本体12の裏面12Bから開口部14に挿入される時に、パネル本体12の裏面12Bに当たり、目隠し蓋50がパネル本体12の表面12Aから抜け落ちることを阻止する。また、フランジ56は、隙間54をあけて配置されており、目隠し蓋50をパネル本体12に取り付けたとき、隙間54は溝16と重なり、溝16を塞がないようになっている。
【0047】
(壁面緑化構造)
上述した植栽パネル10は、本発明の第1実施形態に係る壁面緑化構造の構成要素として用いられる。以下、壁面緑化構造について簡単に説明する。
【0048】
図6(A)は、本発明の第1実施形態に係る壁面緑化構造を示す外観斜視図であり、図6(B)は、図6(A)に示す壁面緑化構造の縦断面図である。また、図7は、図6(A)に示す壁面緑化構造の分解斜視図である。
【0049】
本発明の第1実施形態に係る壁面緑化構造60では、建物外壁の壁面62に、アンカーボルト64によってS字プレート66が取り付けられている。このS字プレート66には、背面ボード68の裏面にボルト70で固定されたS字プレート72が係合しており、これらS字プレート66及びS字プレート72によって、背面ボード68が壁面62に取り付けられている。なお、背面ボード68は、PVC、コンパネ、コンクリート、石材、レンガ、鋼板等が用いられる。
【0050】
背面ボード68の表面には、保水吸水シート74が固定されている。具体的には、保水吸水シート74に所定の間隔で切欠76が形成されており(図7参照)、背面ボード68の表面(保水吸水シート74が取り付けられる面)に突出したボルト70に、この切欠76が引っ掛けられる。そして、接着剤もしくはタッカーにより、背面ボード68に保水吸水シート74が固定されている。
【0051】
この保水吸水シート74は、10〜30mmの厚みを有し、フェルト、不織布、ウレタン、ヤシ繊維、スポンジ、またはこれらの素材に熱感応性ゲルや保水性ゲルを混入させたもので形成され、植物の根が侵入可能とされている。
【0052】
保水吸水シート74の上端は、灌水ホース78に巻き付けられている。灌水ホース78は、固定具79にて背面ボード68及び植栽パネル10に固定されており、図示しないパイプを介して、高圧ポンプにより水槽から水が高圧で送水される。また、灌水ホース78には、水を灌水する灌水口80が所定の間隔(本実施形態では、2〜5cm)で設けられている。これにより、水槽から灌水ホース78に送水された水が、灌水口80から灌水されて、保水吸水シート74に吸水される。灌水は、1日4・5回程度実施し、1回の灌水時間は3〜5分とする。
【0053】
また、保水吸水シート74の表面には、植栽パネル10が6枚取り付けられている。これら6枚の植栽パネル10は、保水吸水シート74上に2段で配置されており、上側の段に3枚、下側の段に3枚配置されている。
【0054】
各植栽パネル10の植栽容器30には、土壌82が収容され、植物84が植栽されている。また、各植栽パネル10の挿通孔18には、背面ボード68の表面に突出し、保水吸水シート74の切欠76を貫通したボルト70が挿通され、各植栽パネル10は、背面ボード68及び保水吸水シート74と共に壁面62に取り付けられている。
【0055】
さらに、各植栽パネル10の表面には、長板状の鋼板バー86が配置されている。この鋼板バー86には孔88(図7参照)が形成されており、各植栽パネル10の表面に突出したボルト70が、この孔88に挿通されて、不図示のワッシャーを介してナット90により締結されている。これにより、植栽パネル10が、壁面62との間に背面ボード68及び保水吸水シート74を挟み込んだ状態で、壁面62に固定される。
【0056】
このとき、横方向に並設された3枚の植栽パネル10は、1枚の鋼板バー86で壁面62に押さえつけられている。また縦方向に並設された2枚の植栽パネル10も、1枚の鋼板バー86で壁面62に押さえつけられている。このような構成により、複数枚の植栽パネル10を並設しても、鋼板バー86によって壁面62に固定されるので、植栽パネル10の端部が浮き上がりにくい。
【0057】
なお、図示は省略するが、壁面62に取り付けた背面ボード68、保水吸水シート74及び植栽パネル10の周囲には、見切り材を取り付けている。これにより、背面ボード68、保水吸水シート74及び植栽パネル10の横方向のズレを防いでいる。
【0058】
(第1実施形態の作用及び効果)
本発明の第1実施形態によれば、図1〜図5に示すように、植栽パネル10は植栽容器30をパネル本体12に形成された開口部14に挿入して取り付ける構成であるので、植栽パネル10の輸送時には、図8に示すように、植栽パネル10をパネル本体12と植栽容器30(図8では不図示)に分離して複数のパネル本体12を積み重ねることができる。これにより、図18(B)のように植栽パネル500同士の間に隙間506を形成して重ねる場合と比べて、植栽パネル10をコンパクトに輸送でき、植栽パネル10の輸送効率を向上させることができる。また、パネル本体12と植栽容器30が接触することを防止でき、輸送時における植栽容器30及びパネル本体12の損傷を低減することができる。
【0059】
また、植栽容器30が挿入されていない開口部14は、目隠し蓋50で塞がれているため、パネル本体12に形成された複数の開口部14が全て植栽容器30又は蓋50で塞がれることになる。これにより、開口部14が視認されることがなく、植栽パネル10の意匠性を損なうことを防止することができる。
【0060】
さらに、植栽容器30は、パネル本体12に取り外し自在に取り付けられるので、この植栽容器30をパネル本体12から取り外し、他の種類の植栽容器や蓋50をパネル本体の開口部に挿入して取り付けることができる。このため、植栽容器のレイアウト、ひいては植栽パネル10のレイアウトを変更することができる。なお、図6に示すように、植栽パネル10が壁面62に取り付けられている状態で植栽容器30を取り外すには、壁面緑化構造60から鋼板バー86を取り外し、複数ある植栽パネル10のうちレイアウト変更する植栽容器30を有した植栽パネル10のみを取り外す。
【0061】
さらにまた、図2に示すように、嵌め込み台38のサイズ・形状が、開口部14のサイズ・形状と略同一のサイズ・形状とされているため、パネル本体12の開口部14に植栽容器30の嵌め込み台38が嵌る。このため、植栽容器30をパネル本体12に安定して取り付けることができる。
【0062】
また、パネル本体12の裏面12Bから植栽容器30を開口部14へ挿入すると、パネル本体12の裏面12Bにフランジ44が当たって、パネル本体12の表面12Aから収容部32が突き出てパネル本体12へ植栽容器30が取り付けられる。このため、植栽容器30がワンタッチでパネル本体12に取り付けられる。また、植栽容器30の抜け落ちを阻止するための部材を設ける必要が無い。なお、目隠し蓋50についても、フランジ56が設けられているので、植栽容器30の効果と同一の効果を奏する。
【0063】
さらに、本発明の第1実施形態に係る壁面緑化構造60によれば、図6、図7に示すように、保水吸水シート74を設けることで、灌水ホース78から灌水された水が、保水吸水シート74全体に吸収されるので、植栽容器30に植栽された植物84の根へまんべんなく水が行き渡る。また、植物84の根が、第2開口部40(開口部14)から植栽パネル10の裏面に侵入し、保水吸水シート74に絡みつくので、植物84の剥離や落下の恐れがなくなる。また、植物84の育成を向上させることができる。
【0064】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る植栽パネルについて説明する。なお、本第2実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0065】
図9は、本発明の第2実施形態に係る植栽パネルの外観斜視図である。また、図10は、図9に示す植栽パネルのB−B矢視断面図である。
【0066】
本発明の第2実施形態に係る植栽パネル100は、板状のパネル本体102を有している。パネル本体102は、当該パネル本体102の表面102Aから裏面102Bへ貫通する9個の開口部104と、これら開口部104の内壁に形成され、パネル本体102の裏面102Bに向かって拡がる壁テーパー面106を有している。
【0067】
また、植栽パネル100は、4個の植栽容器108を有している。各植栽容器108は、パネル本体102の中央部から上下左右にある開口部104にそれぞれ挿入されてパネル本体102に取り外し自在に取り付けられており、開口部104側が開口している。
【0068】
さらに、植栽パネル100は、5個の目隠し蓋110を有している。各目隠し蓋110は、植栽容器108が挿入されていない開口部104にそれぞれ挿入されてパネル本体102に取り外し自在に取り付けられており、当該開口部104が目隠し蓋110で塞がれている。
【0069】
図11(A)は、図9に示す植栽容器108の外観斜視図であり、図11(B)は、図9に示す目隠し蓋110の外観斜視図である。
【0070】
植栽容器108には、第1実施形態のものと異なり、抜け落ち阻止手段としてのフランジが設けられていない。そして、その代わりとして、嵌め込み台112の外周面に形成され、収容部32に向かって狭まり、壁テーパー面106と接触する容器テーパー面114が設けられている。なお、容器テーパー面114のテーパー角度は、壁テーパー面106の角度に対応して設定されている。
【0071】
同様に、目隠し蓋110にも、抜け落ち阻止手段としてのフランジが設けられていない。そして、その代わりとして、嵌め込み台116の外周面に形成され、嵌め込み台116の表面に向かって狭まり、壁テーパー面106と接触する蓋テーパー面118が設けられている。なお、蓋テーパー面118のテーパー角度は、壁テーパー面106の角度に対応して設定されている。
【0072】
図9及び図10に戻って、壁テーパー面106と、容器テーパー面114及び蓋テーパー面118は、完全に密着している。
【0073】
以上のように、本発明の第2実施形態によれば、パネル本体12の裏面12Bから開口部14に植栽容器108を挿入すると、壁テーパー面106と容器テーパー面114が接触して、植栽容器108がワンタッチでパネル本体12に取り付けられる。また、ネジや接着剤等で植栽容器をパネル本体に固定する場合に比べ、製造コストを低減できる。なお、目隠し蓋110についても、蓋テーパー面118を有しているため、植栽容器108と同一の効果を奏する。
【0074】
<変形例>
なお、本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変形、変更、改良が成される。
【0075】
例えば、第1実施形態では、パネル本体12、開口部14、植栽容器30、目隠し蓋50の形状・大きさについて詳細に説明したが、本発明では特に限定されることはなく、如何なる形状・大きさをも採用することができる。一例としては、第1実施形態では、植栽容器30の収容部32が、逆円錐形状の容器を約2分の1に分割した形状とされている場合を説明したが、図12に示すように、植栽容器130の収容部132を箱型形状とすることもできる。また、この植栽容器130を用いて、植栽パネル140のレイアウトを、図13に示すようにすることもできる。
【0076】
さらに、第1実施形態では、植栽容器30内に、植物のうち、特に樹木が植栽される場合を説明したが、草本が植栽されてもよく、また同様に図12に示す植栽容器130にも何れの植物が植栽されても良い。ただし、大きな樹木を植栽する場合には、樹木の根を細長く納めるために、縦長の植栽容器であることが好ましい。
【0077】
さらにまた、本発明に係る植栽容器としては、第1実施形態で説明したフランジ44と、第2実施形態で説明した容器テーパー面114を組み合わせて作製しても良い。
【0078】
また、第1及び第2実施形態では、パネル本体12、102の裏面12B、102B側から開口部14、104に挿入して取り付ける植栽容器30、108について説明したが、パネル本体の表面側から開口部に挿入して取り付ける植栽容器を用いるようにしても良い。この場合、植栽パネルを壁面に取り付ける前だけでなく、壁面に取り付けた後でもパネル本体に植栽容器を取り付けることができる。また、植栽容器の取り外しも、植栽パネルを壁面から取り外すことなく行うことができるため、植栽容器のレイアウト変更が容易である。
【0079】
図14及び図15は、第1及び第2実施形態で説明した植栽容器の変形例を示す図であり、パネル本体の表面側から開口部に挿入して取り付ける植栽容器の外観斜視図である。
【0080】
図14に示すように、植栽容器150は、コ字状に形成され、GRC等硬い素材で構成されている。植栽容器150の両端には、それぞれ挿通穴152が設けられている。一方、パネル本体154には、パネル本体154の表面154Aから裏面154Bへ貫通する開口部156が形成されており、この開口部156の内壁両端には、それぞれタボ穴158が設けられている。
このような構成の下では、植栽容器150を、パネル本体154の表面154A側から開口部156に挿入する。そして、2つのピン160を、各挿通穴152へ通してタボ穴158に留め、植栽容器150をパネル本体154に取り付ける。
【0081】
また、図15に示すように、植栽容器160は、コ字状に形成され、EPSやFRP等弾力性のある素材で構成されている。植栽容器160の両端には、それぞれ、くさび型の係止突起162が設けられている。一方、パネル本体164には、パネル本体164の表面164Aから裏面164Bへ貫通する開口部166が形成されており、この開口部166の内壁両端には、係止突起162に対応する係止穴168がそれぞれ設けられている。
このような構成の下では、植栽容器160には弾力性があるため、植栽容器160の両端を多少縮み変形させながら、パネル本体164の表面164A側から開口部166に挿入する。そして、この挿入を係止突起162が係止穴168に引っ掛るまで行い、植栽容器160をパネル本体164に取り付ける。この構成によれば、パネル本体164の表面164A側から植栽容器160をワンタッチで取り付けることができる。
【0082】
さらに、植栽容器をパネル本体の表面から開口部に挿入して取り付ける方法としては、接着剤でパネル本体に取り付けることも可能である。
【0083】
ところで、上記第1実施形態では、図5に示すように、裏面12Bに溝16が形成されたパネル本体12、嵌め込み台38の裏面に隙間42が形成された植栽容器30、嵌め込み台52の裏面に隙間54が形成された目隠し蓋50を用いる場合を説明したが、本発明は、図16に示すように、上記のような溝や隙間が形成されていないパネル本体170、植栽容器172、目隠し蓋174を用いることも可能である。
【0084】
また、上記第1実施形態では、植栽パネル10を地面に直交する壁面62に取り付ける壁面緑化構造60について説明したが、図17(A)に示すように、植栽パネル10を水平な地面180に対して例えば60度以上90度未満に傾斜した壁面182に取り付ける壁面緑化構造184を採用することもできる。但し、この場合、植栽容器30が適宜加工等されていないと、植栽容器30の収容部32の上面34が水平とならない。
【0085】
しかしながら、本発明では、植栽パネル10をパネル本体12と植栽容器30に分離することができるため、従来のようにパネル本体と植栽容器が一体成形されている場合に比べ、植栽容器30を自由に加工できるため、壁面182の傾斜角度を予め把握し、収容部32の上面34が水平となるように植栽容器30を容易に加工することができる。
【0086】
図17(B)は、図17(A)に示す植栽容器を加工した場合の壁面緑化構造を示す図である。図17(B)に示す壁面緑化構造186では、収容部188の上面190が水平となるように植栽容器192が加工されている。このため、植栽パネル10が取り付けられる壁面182が傾斜していても、収容部188から植物84の実や種の流出を防ぎ、収容部188内で植物84を自然に繰り返し育成させることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 植栽パネル
12 パネル本体
14 開口部
30 植栽容器
32 収容部
38 嵌め込み台(嵌め込み部材)
44 フランジ
50 目隠し蓋(蓋)
60 壁面緑化構造
62 壁面
74 保水吸水シート(保水層)
84 植物
100 植栽パネル
102 パネル本体
104 開口部
106 壁テーパー面
108 植栽容器
110 蓋
112 嵌め込み台(嵌め込み部材)
114 容器テーパー面
130 植栽容器
132 収容部
140 植栽パネル
150 植栽容器
154 パネル本体
156 開口部
160 植栽容器
164 パネル本体
166 開口部
170 パネル本体
172 植栽容器
174 蓋
182 壁面
184 壁面緑化構造
186 壁面緑化構造
188 収容部
192 植栽容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のパネル本体と、
前記パネル本体に形成された開口部と、
前記開口部に挿入されて前記パネル本体に取り付けられ、前記開口部側が開口した植栽容器と、
を有する植栽パネル。
【請求項2】
前記開口部は、複数個形成され、
前記植栽容器が挿入されていない開口部は、蓋で塞がれている請求項1に記載の植栽パネル。
【請求項3】
前記植栽容器は、前記パネル本体に取り外し自在に取り付けられる請求項1又は請求項2に記載の植栽パネル。
【請求項4】
前記植栽容器は、
前記パネル本体の表面から突出し、植物が植栽される収容部と、
前記収容部と一体成形され、前記開口部に嵌る嵌め込み部材と、
前記嵌め込み部材の抜け落ちを阻止する抜け落ち阻止手段と、
を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の植栽パネル。
【請求項5】
前記抜け落ち阻止手段は、前記嵌め込み部材から突設され、前記パネル本体の裏面に当るフランジである請求項4に記載の植栽パネル。
【請求項6】
前記抜け落ち阻止手段は、
前記開口部の内壁に形成され、前記パネル本体の裏面に向かって拡がる壁テーパー面と、
前記嵌め込み部材の外周面に形成され、前記収容部に向かって狭まり、前記壁テーパー面と接触する容器テーパー面と、
を有する請求項4に記載の植栽パネル。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の植栽パネルが取り付けられる構造物の壁面と、
前記植栽パネルと前記壁面の間に設けられた保水層と、
を有する壁面緑化構造。
【請求項8】
前記壁面が傾斜しているとき、前記収容部の上面が水平となるように前記植栽容器が加工されている請求項7に記載の壁面緑化構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−24543(P2011−24543A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176490(P2009−176490)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】