説明

植栽仕切り構造物

【課題】仕切りとしての機能や目隠しをする機能を有すると共に、構造物の形状等の変更の自由度や、植物を配置する位置等の自由度の幅を広げ、また、樹木を容易に交換することができることにより景観の向上を図ることができる植栽仕切り構造物を提供する。
【解決手段】樹木22,24と、樹木22,24が植栽された植栽マット26,28とが一体的に設けられた植栽マット体30,32と、前記植栽マット体30,32を嵌合する凹部34c,36cを有する複数の箱状部材34,36と、地面等の設置面21から立設するよう固定され、前記箱状部材34,36を前記設置面21から所望の高さ位置に支持する支持部材38とを備え、前記箱状部材34,36は、前記支持部材38を介して他の箱状部材34,36と並んで支持された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塀や垣根等の仕切り及び目隠しに植栽マットを用いる植栽仕切り構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の断熱性や景観の向上、CO2の削減や大気洗浄等を目的として、建築物の外側に位置する屋上や壁面等に、植物を生育させる緑化が行われてきた。
【0003】
そして、空間の仕切り区分を明確なものとするためや、目隠しのために用いられる、塀や垣根等の仕切り構造物を緑化する方法としては、塀の両面に低木・草花・ツタ植物やその他野菜類等を植栽することができる植栽塀があった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図12に示すように、上記従来の植栽塀1は、15%から20%の勾配を有する二等辺三角形状をアングル材で形成し、その二等辺三角形状を横方向(図中矢印方向)に並べて接続し、その横方向に長さを有する枠状で、断面が逆V字形の骨組み2が、塀を設置する位置に配置されて固定されていた。
【0005】
そして、骨組み2の枠状の表裏両側を、格子状の枠に取付けた金網4を並べて覆い、その金網4の枠を不図示のU型ボルト等で骨組み2に固定するようになっていた。この格子状の枠に取付けた金網4の表裏両外面には、植栽箱付植栽マット体6がそれぞれ高さ方向の異なる位置に複数配置されていた。
【0006】
この植栽箱付植栽マット体6は、骨組み2の横方向に、骨組み2と同じ長さを有する直方体となっており、その側面が金網4の外面に接触して、骨組み2に固定されるようになっていた。そして、植栽箱付植栽マット体6は、内側に土等が充填されてその上面6a側に、図示してない低木や草花やその他野菜等を植栽できるようになっていた。
【0007】
このため、上記従来の植栽塀1は、植栽箱付植栽マット体6の上面6a側に低木や草花やその他野菜等を植栽できるため、塀の断熱性や景観の向上、CO2の削減や大気洗浄等を図ることができるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−154507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の植栽塀1においては、空間を仕切る機能を発揮するのは骨組み2であり、植栽箱付植栽マット体6は何ら仕切りとしての機能を発揮するものではなかった。また、目隠しをする機能を発揮するのは植栽箱付植栽マット体6であり、骨組み2は金網4を通って植栽塀1の向こう側が見えるので、目隠しをする機能を発揮するものではなかった。
【0010】
そして、前記従来の植栽塀1においては、骨組み2の二等辺三角形状の外面に植栽箱付植栽マット体6が固定されているため、植栽箱付植栽マット体6が骨組み2の二等辺三角形状の底面より外側にはみ出し、塀により仕切られる区分領域が明確なものではなくなり、空間を仕切って区分領域を明確なものとする仕切りとしての本来の機能を十分に発揮することができないという問題があった。
【0011】
また、骨組み2は、二等辺三角形状を横方向に接続して形成された長さを有する枠状に形成されているため、例えば仕切り対象が途中で折れ曲がっている場合には、骨組み2同士を折れ曲がっている仕切り対象に合わせて互いに繋げるのは、その構造上困難であるというように、構造物としての形状等を変更するための自由度の幅が非常に狭いものであるという問題があった。
【0012】
さらに、植栽箱付植栽マット体6は、骨組み2の横方向に、骨組み2と同じ長さを有するものであるため、その上面6aの高さ位置も骨組み2と同じ長さにおいて一定となる。このため、植栽箱付植栽マット体6に植栽される植物は、設置される上面6aの高さ位置が一定となるため、その景観は変化に乏しく、植物の配置に関して自由度の幅が非常に狭いものであるという問題があった。
【0013】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、仕切りとしての機能や目隠しをする機能を有すると共に、構造物の形状等の変更の自由度や、植物を配置する位置等の自由度の幅を広げ、また、樹木を容易に交換することができることにより景観の向上を図ることができる植栽仕切り構造物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明による植栽仕切り構造物は、
樹木と、該樹木が植栽された植栽マットとが一体的に設けられた植栽マット体と、
前記植栽マット体を嵌合する凹部を有する複数の箱状部材と、
地面等の設置面から立設するよう固定され、前記箱状部材を前記設置面から所望の高さ位置に支持する支持部材とを備え、
前記箱状部材は、前記支持部材を介して他の箱状部材と並んで支持される
ことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明により植栽仕切り構造物は、
前記複数の箱状部材のいくつかは、前記設置面に接触した状態で配置されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明により植栽仕切り構造物は、
前記複数の箱状部材のいくつかは、前記設置面から鉛直方向に複数並んで配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
このような本発明の植栽仕切り構造物によれば、
樹木と、該樹木が植栽された植栽マットとが一体的に設けられた植栽マット体と、
前記植栽マット体を嵌合する凹部を有する複数の箱状部材と、
地面等の設置面から立設するよう固定され、前記箱状部材を前記設置面から所望の高さ位置に支持する支持部材とを備え、
前記箱状部材は、前記支持部材を介して他の箱状部材と並んで支持されることにより、
仕切りとしての機能や目隠しをする機能を有すると共に、構造物の形状等の変更の自由度や、植物を配置する位置等の自由度の幅を広げ、また、樹木を容易に交換することができることにより景観の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20を示す正面図である。
【図2】図1に示す植栽仕切り構造物20の上面図である。
【図3】図1に示す植栽マット体30,32を示す斜視図である。
【図4】図4(a)は図3に示す植栽マット26,28の上面図であり、図4(b)はその正面断面図である。
【図5】図5(a)は図1に示す箱状部材36の上面図であり、図5(b)は図5(a)に示す箱状部材36のB―B線断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る植栽仕切り構造物60を示す正面図である。
【図7】図6に示す植栽仕切り構造物60を建物70,72間に設置した際の側面概念図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る植栽仕切り構造物80を示す正面図である。
【図9】図8に示す植栽仕切り構造物80を構造物90近傍に設置した際の上面概念図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る植栽仕切り構造物100を示す正面図である。
【図11】図10に示す植栽仕切り構造物100を建物110,112間に設置した際の上面概念図である。
【図12】従来の植栽塀1を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る植栽仕切り構造物を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0020】
図1から図5は、本発明の第1の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20について説明するために参照する図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20は、樹木22と植栽マット26により一体的に構成された植栽マット体30と、樹木24と植栽マット28により一体的に構成された植栽マット体32と、複数の箱状部材34,36と、複数の支持部材38により構成されている。
【0022】
そして、箱状部材34,36は、設置地面21(設置面)に立設する支持部材38により支持され、その支持部材38を介して、他の箱状部材34,36に連結するようになっている。
【0023】
すなわち、図2に示すように、植栽仕切り構造物20を上方から見ると、箱状部材34,36と支持部材38は、それらの側面34a,36a,38aの一つが互いに直線状に連続するように、互いに組み合わされて配置されている。
【0024】
このため、植栽仕切り構造物20は、設置地面21を領域A(図2中右下部分)と、領域B(図2中上部分及び左部分)に区分することができるようになっている。
【0025】
この植栽仕切り構造物20の植栽マット体30は、図3に示すように、地中に根を張り、生長する常緑中木である樹木22と、樹木22を植栽可能とする層状に形成された植栽マット26により構成されている。
【0026】
図3に示すように、樹木22は、その移動や植え換えに備えて予め、その根22aが略球状に丸めて形成されており、その略球状の根22aが、植栽マット26の中央部に形成された部屋26aの中に収納されている。
【0027】
そして、樹木22の略球状の根22aが収納された植栽マット26中の部屋26aの内周面と、根22aの略球状の外周面との間の空間には、ピートモス42などの軽量の土が、植栽マット26の上面26bと同程度の高さ位置に達するまで充填されている。
【0028】
この植栽マット26は、プラスチック繊維が3次元に密に絡み合わされて形成され、その空隙に、ピートモス42が充填され、図3及び図4(b)に示すように、その外形が全体として略矩形の板状になるよう形成された不織布マット44が、6枚重ね合わされて層状に形成されている。
【0029】
そして、不織布マット44の最下層とその真上の層との間には、水の移動を可能としつつ、根22aが伸びて張られる範囲を制限することができる、透水防根シート48が挟まれて設けられている。
【0030】
この透水防根シート48の上面48aと、その上の4つの不織布マット44の層に形成された、板厚方向に貫通する貫通孔44bの内周面と、後述する最上層の不織布マット44の下面とその半円状の切欠き44aが、全体として部屋26aを構成するようになっている。
【0031】
植栽マット26の最上層の不織布マット44は、図3及び図4(a)に示すように、半分ずつ2枚に分割されており、この2枚の不織布マット44の互いの突合せ部には、半円状の切欠き44aがそれぞれ形成されている。
【0032】
2枚の不織布マット44それぞれの突合せ部を互いに突き合わせたときに、それぞれの半円状の切欠き44aが互いに対応する位置に合わされることにより、樹木22の略球状の根22aの外径よりもその径寸法が小さいと共に、樹木22の幹22bを緩く貫通させることができる径寸法の貫通孔が形成されるようになっている。
【0033】
すなわち、樹木22の略球状の根22aを植栽マット26の部屋26a内に入れた後に、2枚に分割された最上層の不織布マット44が互いに突き合わされ、2つの半円状の切欠き44aが互いに対応する位置に合わされることにより、1つの円形状の貫通孔が形成されるようになっている。
【0034】
図3、4に示す複数の不織布マット44は、互いに固定されるようになっているため、樹木22の略球状の根22aの外径は、最上層の2つの不織布マット44の半円状の切欠き44aが互いに対応する位置に合わされて形成された貫通孔より径が大きいので、樹木22の根22aは、最上層の2つの不織布マット44に形成された貫通孔から抜けないようになり、樹木22は植栽マット26と一体的に固定されるようになっている。
【0035】
植栽仕切り構造物20の植栽マット体32は、その構成が、植栽マット体30の構成とは、植栽マット28の外形寸法が植栽マット26の外形寸法より小さく形成されている点においてのみ異なるものであり、それ以外は、植栽マット体30と同様の構成となっている。
【0036】
すなわち、植栽マット体32は、図3に示すように、地中に根を張り、生長する常緑中木(低木と高木の間の中位の高さの樹木)である樹木24と、樹木24を植栽可能とする層状に形成された植栽マット28により構成されている。
【0037】
図3に示すように、樹木24は、その移動や植え換えに備えて予め、その根24aが略球状に丸めて形成されており、その略球状の根24aが、植栽マット28の中央部に形成された部屋28aの中に収納されている。
【0038】
そして、樹木24の略球状の根24aが収納された植栽マット28中の部屋28aの内周面と、根24aの略球状の外周面との間の空間には、ピートモス42などの軽量の土が、植栽マット28の上面28bと同程度の高さ位置に達するまで充填されている。
【0039】
この植栽マット28は、プラスチック繊維が3次元に密に絡み合わされ形成され、その空隙に、ピートモス42が充填され、図3及び図4(b)に示すように、その外形が全体として、その外形寸法が植栽マット26の外形寸法より小さい、略矩形の板状になるよう形成された不織布マット46が、6枚重ね合わされて層状に形成されている。
【0040】
そして、不織布マット46の最下層とその真上の層との間には、水の移動を可能としつつ、根24aが伸びて張られる範囲を制限することができる、透水防根シート48が挟まれて設けられている。
【0041】
この透水防根シート48の上面48aと、その上の4つの不織布マット46の層に形成された、板厚方向に貫通する貫通孔46bの内周面と、後述する最上層の不織布マット46の下面とその半円状の切欠き46aが、全体として部屋28aを構成するようになっている。
【0042】
植栽マット28の最上層の不織布マット46は、図3及び図4(a)に示すように、半分ずつ2枚に分割されており、この2枚の不織布マット46の互いの突合せ部には、半円状の切欠き46aがそれぞれ形成されている。
【0043】
2枚の不織布マット46それぞれの突合せ部を互いに突き合わせたときに、それぞれの半円状の切欠き46aが互いに対応する位置に合わされることにより、樹木24の略球状の根24aの外径よりもその径寸法が小さいと共に、樹木24の幹24bを緩く貫通させることができる径寸法の貫通孔が形成されるようになっている。
【0044】
すなわち、樹木24の略球状の根24aを植栽マット28の部屋28a内に入れた後に、2枚に分割された最上層の不織布マット46が互いに突き合わされ、2つの半円状の切欠き46aが互いに対応する位置に合わされることにより、1つの円形状の貫通孔が形成される。
【0045】
図3、4に示す複数の不織布マット46は、互いに固定されるようになっているため、樹木24の略球状の根24aの外径は、最上層の2つの不織布マット46の半円状の切欠き46aが互いに対応する位置に合わされて形成された貫通孔より径が大きいので、樹木24の根24aは、最上層の2つの不織布マット46に形成された貫通孔から抜けないようになり、樹木24は植栽マット28と一体的に固定されるようになっている。
【0046】
このように樹木22,24は、植栽マット26,28と一体的に設けられているため、樹木22,24を取り付け、取り外しや交換などをしたいときは、植栽マット体30,32ごと作業を行うことができるため、その作業を容易にすることができる。
【0047】
また植栽マット体30,32は、植栽マット26,28を用いることにより、通常の土に樹木22,24を植栽する場合と比べて、その重量を軽くすることができると共に、その植栽マット26,28の高さ寸法を小さくすることができる。
【0048】
これにより植栽マット体30,32は、持ち運び易く、取り付け、取り外しや交換などの作業を容易にすることができる。また、これにより後述する箱状部材34,36の高さ寸法も植栽マット体30,32の植栽マット26,28に合わせて小さくすることができる。
【0049】
植栽仕切り構造物20の箱状部材34は、金属製であり、図1及び図2に示すように、直方体に形成されている。そして、箱状部材34の上面34bから深さを有する凹部34cが形成されており、植栽マット体30の植栽マット26がその内部に押し込まれ、互いに嵌合するようになっている。
【0050】
植栽仕切り構造物20の箱状部材36は、金属製であり、図1,図2,図5(a)及び(b)に示すように、その四隅に、後述する支持部材38の断面と同じ大きさの切り欠き部36dを有する多面体に形成されている。そして、箱状部材36の上面36bから深さを有する凹部36cが形成されており、植栽マット体32の植栽マット28がその内部に押し込まれ、互いに嵌合するようになっている。
【0051】
植栽仕切り構造物20の支持部材38は、図1に示すように、金属製で上下方向に長さを有する角柱状に形成されており、その下端部38bは設置地面21の地中に埋め込まれて堅く固定され、その上端部38cは設置地面21から突き出して鉛直方向に立設している。
【0052】
そして、箱状部材34は、図2に示すように、その四隅部の、その長さ方向の端面それぞれに、計4つの支持部材38の一つの側面が各々接触しており、その接触した部分の周囲を溶接することにより、箱状部材34は設置地面21から鉛直方向の所望の高さ位置に配置され、支持部材38に固定されるようになっている。
【0053】
箱状部材36は、その四隅の切り欠き部36dの互いに隣合う2つの面に、支持部材38の互いに隣合う2つの側面が接触しており、その接触した部分の周囲を溶接することにより、箱状部材36は設置地面21から鉛直方向の所望の高さ位置に配置され、支持部材38に固定されるようになっている。
【0054】
このため、植栽マット体30,32の樹木22,24は、箱状部材34,36と支持部材38により、それぞれ設置地面21から鉛直方向の所望の高さ位置に配置することができるようになっている。
【0055】
このため、樹木22,24は、図2に示す領域A又は領域Bの一方から他方を見ようとする際に、植栽仕切り構造物20の仕切りの一部としてその視界を遮ることにより、目隠しの機能を発揮することができるようになっている。
【0056】
また、植栽仕切り構造物20は、図1に示すように、樹木22,24と植栽マット26,28により一体的に設けられた植栽マット体30,32と、複数の箱状部材34,36と、複数の支持部材38のみにより組み合わされ、構成されているために、植栽仕切り構造物20の形状等を変更するための自由度の幅が広いものとなっている。
【0057】
このような本発明の第1の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20によれば、仕切りとしての機能や目隠しをする機能を有すると共に、構造物20の形状等の変更の自由度や、植物が配置される位置等の自由度の幅を広げ、また、樹木22,24を容易に交換することができることにより景観の向上を図ることができる。
【0058】
図6及び図7は、本発明の第2の実施の形態に係る植栽仕切り構造物60について説明するために参照する図である。
【0059】
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る植栽仕切り構造物60は、樹木22と植栽マット26とが一体的に設けられた植栽マット体30と、複数の箱状部材34と、金属製で長さを有する角柱状に形成された複数の支持部材62により構成されている。
【0060】
そして、支持部材62と、支持部材62間に支持された箱状部材34により、その側面34a、62aの一つが直線状になるよう組み合わされて、水平方向に連続して配置されている。
【0061】
このため、図7に示すように、本実施の形態に係る植栽仕切り構造物60は、図中紙面奥側に長さを有する壁状に形成されており、植栽仕切り構造物60が設置されている設置地面61(設置面)の周辺領域を、建物70が設置されている側の領域Cと、建物72が設置されている領域側のDとの、2つの領域に区分することができるようになっている。
【0062】
植栽仕切り構造物60の支持部材62は、図6に示すように、金属製で長さを有する角柱状に形成されており、いくつかの支持部材62は、その下端部62bが設置地面61の地中に埋め込まれて堅く固定され、その上端部62cは設置地面61から突き出して鉛直方向に立設している。
【0063】
これらの支持部材62は、その上端部62cと、別の支持部材62の下端部62bの、互いの端面同士を接触させて、その接触面の周面を溶接により接合することにより、互いの長さ方向に連結されている。このため、支持部材62は、その長さを上方に延長することができるようになっている。
【0064】
本実施の形態に係る植栽仕切り構造物60においては、箱状部材34はその鉛直方向(図6中上下方向)に間隔をおいて互いに離れて、複数並んで配置されている。また、箱状部材34のいくつかは、その底面34dが設置地面61に接触した状態で支持部材62に支持されて固定されている。
【0065】
このような支持部材62によって、植栽マット26が嵌合している箱状部材34を、それぞれ所望の高さ位置に配置することができるため、図7に示すように、建物70,72の互いに対向する各階の高さ位置に樹木22を配置して、一つの植栽仕切り構造物60だけで建物70,72の各階ごとにおける互いの目隠しをすることができる。
【0066】
また、植栽仕切り構造物60は、図6に示すように、樹木22と植栽マット26により一体的に設けられた植栽マット体30と、複数の箱状部材34と、複数の支持部材62のみにより組み合わされ、構成されているために、植栽仕切り構造物60の形状等を変更するための自由度の幅が広いものとなっている。
【0067】
このような本発明の第2の実施の形態に係る植栽仕切り構造物60によっても、第1の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20と同様の効果を得ることができ、仕切りとしての機能や目隠しをする機能を有すると共に、構造物60の形状等の変更の自由度や、植物が配置される位置等の自由度の幅を広げ、また、樹木22を容易に交換することができることにより景観の向上を図ることができる。
【0068】
さらに、本発明の第2の実施の形態に係る植栽仕切り構造物60においては、互いに対向する建物70,72の間に、一つの植栽仕切り構造物60を設置するだけで、建物70,72の各階ごとにおける互いの目隠しをすることができる。
【0069】
図8及び図9は、本発明の第3の実施の形態に係る植栽仕切り構造物80について説明するために参照する図である。
【0070】
図8に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る植栽仕切り構造物80は、樹木22と植栽マット26とが一体的に設けられた植栽マット体30と、複数の箱状部材82と、金属製で長さを有する角柱状に形成された複数の支持部材38により構成されている。
【0071】
図9に示すように、支持部材38と、支持部材38間に支持された箱状部材82により、その側面38a、82aの一つが直線状になるよう組み合わされて、水平方向に連続して配置されている。
【0072】
そして、図9に示すように、本実施の形態に係る植栽仕切り構造物80は、図中紙面に対して垂直方向に高さを有する壁状に形成されており、一つの直線状になる支持部材38の側面38aと箱状部材82の側面82aとが、例えば立体駐車場のような構造物90の近傍に、その側面90aに沿うように配置されている。
【0073】
このため植栽仕切り構造物80は、それが設置されている設置地面81(設置面)の周辺領域を、構造物90が設置されている側の領域Eと、植栽仕切り構造物80を挟んで領域Eとは反対側の、構造物90が設置されていない側の領域Fとの、2つの領域に区分することができるようになっている。
【0074】
植栽仕切り構造物80の箱状部材82は、金属製であり、図8及び図9に示すように、直方体に形成されている。そして、箱状部材82の上面82bから深さを有する凹部82cが形成されており、複数の植栽マット体30の植栽マット26がその内部に並ぶように押し込まれ、複数の植栽マット体30の植栽マット26と箱状部材82は、互いに嵌合するようになっている。
【0075】
本実施の形態に係る植栽仕切り構造物80においては、図8に示すように、箱状部材82はその鉛直方向(図中上下方向)に間隔をおいて互いに離れて、複数並んで配置されている。
【0076】
また、箱状部材82は、図9に示すように、その長さ方向の両端面それぞれの、同じ側の側面寄りに、計2つの支持部材38の一つの側面が各々接触しており、その接触した部分の周囲を溶接することにより、箱状部材82は設置地面81から鉛直方向の所望の高さ位置に配置され、支持部材38に固定されるようになっている。
【0077】
支持部材38によって、その凹部82cに複数の植栽マット26が並んで嵌合している箱状部材82を、それぞれ所望の高さ位置に配置することができるため、図9に示すように、構造物90に沿うように植栽仕切り構造物80を配置するだけで、構造物90を外部から目隠しすることができる。
【0078】
また、植栽仕切り構造物80は、図8に示すように、樹木22と植栽マット26により一体的に設けられた植栽マット体30と、複数の箱状部材82と、複数の支持部材38のみにより組み合わされ、構成されているために、植栽仕切り構造物80の形状等を変更するための自由度の幅が広いものとなっている。
【0079】
このような本発明の第3の実施の形態に係る植栽仕切り構造物80によっても、第1の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20と同様の効果を得ることができ、仕切りとしての機能や目隠しをする機能を有すると共に、構造物80の形状等の変更の自由度や、植物が配置される位置等の自由度の幅を広げ、また、樹木22を容易に交換することができることにより景観の向上を図ることができる。
【0080】
さらに、本発明の第3の実施の形態に係る植栽仕切り構造物80においては、構造物90に沿うように植栽仕切り構造物80を配置するだけで、構造物90を外部から目隠しすることができる。
【0081】
図10及び図11は、本発明の第4の実施の形態に係る植栽仕切り構造物100について説明するために参照する図である。
【0082】
図10に示すように、本発明の第4の実施の形態に係る植栽仕切り構造物100は、樹木22と植栽マット26とが一体的に設けられた植栽マット体30と、曲線に沿って形成され、上記植栽マット26が嵌合する凹部102c,104cが形成された凹部形成部材102,104(箱状部材に相当)と、金属製で長さと幅を有する板状に形成された複数の支持部材106により構成されている。
【0083】
そして、図11に示すように、複数の支持部材106それぞれの片面106aに凹部形成部材102,104の両端面102a,104aが接触して固定されることにより、支持部材106間に支持された凹部形成部材102,104が、高さ方向においては互い違いに配置され(図10参照)、長さ方向においては互いに平行に並んで配置されている(図11参照)。
【0084】
このため、図11に示すように、本実施の形態に係る植栽仕切り構造物100は、図中左右方向に長さを有する略壁状に形成されており、植栽仕切り構造物100が設置されている設置地面101(設置面)の周辺領域を、建物110が設置されている側の領域Gと、建物112が設置されている側の領域Hとの、2つの領域に区分することができるようになっている。
【0085】
植栽仕切り構造物100の凹部形成部材102は、金属製であり、図10及び図11に示すように、凹凸曲面を有すると共に四角断面を有し、波状の曲線に沿って形成されている。そして、凹部形成部材102の略水平部分における上面102bから深さを有する凹部102cが複数形成されており、それぞれに植栽マット体30の植栽マット26が収納されて互いに嵌合するようになっている。
【0086】
植栽仕切り構造物100の凹部形成部材104は、凹部形成部材102と同様の構成になっており、やはり金属製で、図10及び図11に示すように、凹凸曲面を有すると共に四角断面を有し、波状の曲線に沿って形成されている。そして、凹部形成部材104の略水平部分における上面104bから深さを有する凹部104cが複数形成されており、それぞれに植栽マット体30の植栽マット26が収納されて互いに嵌合するようになっている。
【0087】
植栽仕切り構造物100の支持部材106は、図10及び図11に示すように、上下方向に長さを有し、その下端部106bは設置地面101の地中に埋め込まれて堅く固定され、その上端部106cは設置地面101から上方に突き出して鉛直方向に立設している。
【0088】
また、凹部形成部材102,104は、図10に示すように、その長さ方向の端面102a,104aそれぞれに、2つの支持部材106の片面106aが各々接触しており、その接触した部分の周囲を溶接することにより、一対の支持部材106間に固定されるようになっている。
【0089】
凹部形成部材102,104は、その長さ方向の各部が設置地面101からの鉛直方向の高さ位置が変化するように形成され、それらの凹部102c,104cは、設置地面101から適切な高さ位置に配置されるようになっている。
【0090】
支持部材106によって、複数の植栽マット26が嵌合している凹部形成部材102,104の凹部102c,104cを、それぞれ所望の高さ位置に配置することができるため、図11に示すように、建物110,112に住む人の目の高さ位置に樹木22を配置して、一つの植栽仕切り構造物100だけで建物110,112間の互いの目隠しをすることができる。
【0091】
また、植栽仕切り構造物100は、図10に示すように、樹木22と植栽マット26により一体的に設けられた植栽マット体30と、複数の凹部形成部材102,104と、複数の支持部材106のみにより組み合わされ、構成されているために、植栽仕切り構造物100の形状等を変更するための自由度の幅が広いものとなっている。
【0092】
このような本発明の第4の実施の形態に係る植栽仕切り構造物100によっても、第1の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20と同様の効果を得ることができ、仕切りとしての機能や目隠しをする機能を有すると共に、構造物100の形状等の変更の自由度や、植物が配置される位置等の自由度の幅を広げ、また、樹木22を容易に交換することができることにより景観の向上を図ることができる。
【0093】
なお、前記第1ないし第4の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20,60,80,100においては、樹木22,24は常緑中木であったが、樹木22,24はこれに限定されるものではない。
【0094】
例えば、落葉樹であってもよく、低木や高木であってもよい。また、これらを組み合わせてもよい。また、樹木22,24が目隠し機能を有する必要がない箇所には、草花・ツタ植物やその他野菜類等を用いるようになっていてもよい。
【0095】
また、前記第1ないし第4の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20,60,80,100においては、植栽マット26,28は、不織布マットが重ね合わされ層状に形成されていたが、植物を植栽可能となっており、かつピートモス42を用いる等軽量なもの、かつ植栽マットの高さ寸法を小さくすることができるものであればどのようなものであってもよい。
【0096】
また、前記第1ないし第4の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20,60,80,100においては、箱状部材34,36,82、凹部形成部材102,104及び支持部材38,62,106は金属製で、互いに溶接により固定されるようになっていたが、互いに固定されるようになっていれば、金属製でなく木造等の他の材料を用いてもよく、また、溶接により固定されていなくても、ビスやボルト・ナット等の他の手段により固定されていてもよい。
【0097】
また、箱状部材34,36,82、凹部形成部材102,104及び支持部材38,62,106は、互いの側面(端面)が接触した状態で固定されるようになっていたが、このような状態のみの固定に限定されるわけではなく、例えば、互いの角が突き合わさった状態で固定されるようになっていてもよい。
【0098】
また、箱状部材34,36,82、凹部形成部材102,104及び支持部材38,62,106は、上記実施の形態の外形にのみ限定されるものではなく、直線状の他に曲線状であってもよい。また、支持部材38,62,106は、その下端部が設置地面の地中に埋め込まれて固定されるようになっていたが、設置地面に固く固定されるようになっていれば、その下端部が設置地面の地中に埋め込まれるようになっていなくてもよい。
【0099】
また、設置地面21,61,81,101は土が露出したり草等が生えている地面の代わりに、地面上を例えばコンクリートやアスファルト等で固めた、コンクリート面やアスファルト面等、或はアンツーカー等の人工土を用いたものであってもよい。
【0100】
また、前記第1ないし第3の実施の形態に係る植栽仕切り構造物20,60,80においては、箱状部材及び支持部材の側面の一つが直線状になるよう組み合わされていたが、仕切りとしての機能を発揮する態様になっていれば、必ずしも直線状になっていなくても、曲線状になっていてもよい。
【0101】
また、前記第3の実施の形態に係る植栽仕切り構造物80においては、構造物90に沿うように配置されていたが、構造物90に接触するように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 植栽塀
2 骨組み
4 金網
6 植栽箱付植栽マット体
6a 上面
20 植栽仕切り構造物
21 設置地面
22,24 樹木
22a,24a 根
22b,24b 幹
26,28 植栽マット
26a,28a 部屋
26b,28b 上面
30,32 植栽マット体
34,36 箱状部材
34a,36a 側面
34b,36b 上面
34c,36c 凹部
34d 底面
36d 切欠き部
38 支持部材
38a 側面
38b 下端部
38c 上端部
42 ピートモス
44,46 不織布マット
44a,46a 切欠き
44b,46b 貫通孔
48 透水防根シート
60 植栽仕切り構造物
61 設置地面
62 支持部材
62a 側面
62b 下端部
62c 上端部
70,72 建物
80 植栽仕切り構造物
81 設置地面
82 箱状部材
82a 側面
82b 上面
82c 凹部
90 構造物
90a 側面
100 植栽仕切り構造物
101 設置地面
102,104 凹部形成部材
102a,104a 端面
102b,104b 上面
102c,104c 凹部
106 支持部材
106a 片面
106b 下端部
106c 上端部
110,112 建物
A,B 領域
C,D 領域
E,F 領域
G,H 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木と、該樹木が植栽された植栽マットとが一体的に設けられた植栽マット体と、
前記植栽マット体を嵌合する凹部を有する複数の箱状部材と、
地面等の設置面から立設するよう固定され、前記箱状部材を前記設置面から所望の高さ位置に支持する支持部材とを備え、
前記箱状部材は、前記支持部材を介して他の箱状部材と並んで支持される
ことを特徴とする植栽仕切り構造物。
【請求項2】
前記複数の箱状部材のいくつかは、前記設置面に接触した状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の植栽仕切り構造物。
【請求項3】
前記複数の箱状部材のいくつかは、前記設置面から鉛直方向に複数並んで配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の植栽仕切り構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−65635(P2012−65635A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215581(P2010−215581)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】