説明

植物の病気を制御するためのBacilluspumilus菌株

【課題】インビボで広い範囲の真菌による植物の病気を阻害し得る新規菌株、および抗生物質およびこの菌株の精製および未精製画分を含む殺真菌性の組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、ある特定の植物病原体に対してのみ抗真菌活性を示し、そして抗細菌活性を示さない、新規な抗生物質産生Bacillus sp.、ならびに、この菌株を同定する特徴全てを有する菌株の生物学的に純粋な培養物を提供することにより解決された。また、これらの菌株、これらの菌株によって産生される上清またはこれらの菌株から単離される代謝物の有効量を施用することによって、植物、果実、および根の真菌感染を処置または真菌感染から保護する方法が提供される。本発明はさらに、NRRL登録番号B−30087の菌株をB−21661(AQ713)と共に用いることの相乗的な殺真菌効果を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、1999年3月30日に提出された米国特許出願番号第09/281,360号の一部係属出願、および1999年12月14日に提出された米国特許出願番号第09/461,700号の一部継続出願であり、これらの内容は本明細書中において本開示の参考文献に組み込まれる。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、バイオ農薬の分野である。より具体的には、本発明は、Bacillus pumilusの新規菌株、NRRL登録番号第B−30087号は、インビボで広い範囲の真菌による植物の病気を阻害し得るという発見に関連する。本発明はまた、この新規Bacillus菌株、および抗生物質およびこの菌株の精製および未精製画分を単独で、または他の化学的および生物学的農薬と組み合せて含む殺真菌性の組成物に関連する。本発明はさらに、NRRL登録番号第B−30087号とNRRL登録番号B−21661号、(CCRC910106)を共に用いた相乗的な殺真菌効果に関連する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
一般的に、様々な微生物が植物の疾患を制御するのに有用な生物学的活性を示すことが知られている。作物学および園芸学的に重要な様々な植物の病気を制御することが、生物学的農薬を同定および開発する分野において進歩したが、使用されているほとんどの農薬は未だ合成化合物である。これら化学的殺真菌剤の多くは、Environmental Protection Agency(EPA)によって発癌性物質として分類され、そして野生生物および他の非標的種に対して毒性である。それに加えて、病原体は化学的農薬に対して抵抗性を発達させ得る。例えば、非特許文献1を参照のこと。
【0004】
生物学的な制御は、合成化学的殺真菌剤の魅力的な代替を提供する。バイオ農薬(生存生物体およびこれら生物体によって産生される天然に産生された化合物)はより安全で、より生物分解性で、そして開発するのがより安価であり得る。
【0005】
通常使用されるバイオ農薬の1つは、グラム陽性細菌Bacillus thuringiensisである。農薬性B.thuringiensis菌株は、胞子形成の間に結晶性タンパク質を産生することが知られており、それは特定の状態および特定の種の昆虫および線虫に特に毒性である(例えば米国特許第4,999,192号、および米国特許第5,208,017号を参照のこと)。B.thuringiensisによって産生されるタンパク質様のエンドトキシンはまた、キュウリヒゲナガハムシ属の数種のハムシおよび他の甲虫に対する殺虫剤として作用する(例えば、米国特許第5,187,09号および非特許文献2)。B.thuringiensisエンドトキシンは、精製結晶、洗浄細胞ペレット、および発現したタンパク質として有効であることが示された。Warrenら、第WO96/10083号は、Bacillus cereusおよびB.thuringiensisの生長期の間に産生される非エンドトキシンタンパク質を開示している。Vip1およびVip2と呼ばれるこれらの生長期タンパク質は、キュウリヒゲナガハムシ属の数種のハムシ(北部および西部)に対して強力な活性を有する。例えば、非特許文献3を参照のこと。
【0006】
ベータ外毒素と呼ばれる1つのB.thuringiensisの熱安定性代謝物も、農薬の性質を有することが示された。非特許文献4は、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)に対して活性であるベータ外毒素を報告している。それに加えて、公知のB.thuringiensisのベータ外毒素は、線虫だけでなく、ハエ、ガの幼虫、ダニ、およびキュウリヒゲナガハムシ属の数種のハムシを殺す、非特異的な農薬活性を示す。シグマ外毒素は、ベータ外毒素と類似の構造を有し、そしてコロラドハムシに対して活性である。非特許文献5を参照のこと。アルファ外毒素は、Musca domesticaの幼生に毒性である(非特許文献6)。ガンマ外毒素は、種々のタンパク質溶解酵素、キチナーゼ、およびプロテアーゼである。ガンマ外毒素の毒性効果は、ベータ外毒素またはデルタエンドトキシンと組み合せてのみ発現される。Forsberg,C.、「Bacillus thuringiensis:Its effects on Enviromental Quality」 National Research Council of Canada、公開番号第NRCC15385号、91〜109頁(1976)を参照のこと。非特許文献7は、Bacillus cereus菌株の上清における、キュウリヒゲナガハムシ属の数種のハムシに対して活性な、水溶性の2次代謝物を報告している。
【0007】
ツヴィッターマイシン(zwittermicin)Aは、多くの真菌および細菌性の植物病原体に対して広いスペクトルの活性を有する、水溶性の酸に安定な直鎖状アミノポリオール分子である(非特許文献8を参照のこと)。ツヴィッターマイシンAはまた、B.thuringiensisの活性を増強することが知られている。Mankerら(WO96/39037号)が、最初にツヴィッターマイシンAのB.thuringiensis−増強能力および性質を決定した。続いて、Schnepfらもまた、ツヴィッターマイシンAがB.thuringiensisを増強することを報告した(米国特許第5,702,703号)。
【0008】
バチルスは、抗真菌および抗細菌性の2次代謝物を産生することが知られている。非特許文献9、および非特許文献10を参照のこと。B.pumilusによって産生される化合物は、micrococcin P、pumilin、およびtetainを含む。
【0009】
Kawaguchiらは、米国特許第4,250,170号において、Bacillusから、広い範囲のグラム陽性およびグラム陰性細菌に対する活性を有する、新規水溶性抗生物質を単離した。非特許文献11は、抗真菌活性を示す特定のBacillus spp.(Bacillus spp.は、B.subtilis、B.cereus、B.mycoides、B.thuringiensisを含む)菌株を同定した。これらの菌株は、ツヴィッターマイシンAおよび/またはカノサミン(kanosamine)を産生することが示された。非特許文献12を参照のこと。これらは、Phytopathora medicaginis、P.nicotianae、P.aphanidermatumまたはSclerotinia minorによって起こる、土壌伝播性の病気である立枯れ病に対して有効である抗生物質である(非特許文献11、前出を参照のこと)。ツヴィッターマイシンAは、水溶性の、酸に安定な直鎖状アミノポリオール分子である。非特許文献8を参照のこと。それは多くの真菌および細菌性植物病原体に対して広いスペクトルの活性を有する。カノサミン(Milnerら、1996)もまた、広い範囲の真菌性植物病原体および少数の細菌種を阻害する。
【0010】
Handelsmanらは、米国特許第5,049,379号において、ツヴィッターマイシンA−産生B.cereusが、アルファルファおよびダイズの立枯れ病を制御する方法を記載している。種がB.cereus ATCC53522でコートされた場合、根腐れ真菌の病原性活性が阻害された。同様に、特定のB.cereus菌株の胞子に基づく処方を、ダイズの種または種の周りの土壌に適用すると、畑でのダイズの収量が改善されることが示された。非特許文献13を参照のこと。バイオ農薬の適用方法は、当該分野で周知であり、そして例えば微生物の可溶性の粉末、乾燥流動可能性(flowables)、マイクロカプセル封入、および液体処方、適当な培養物からの培養液全体または抗生物質画分を含む。例えば、Rossallの米国特許第5,061,495号、およびHandelsmanの米国特許第5,049,379号を参照のこと。
【0011】
非特許文献14は、インビトロにおいて広い範囲の細菌に対する活性を有する、B.pumilus由来の新規アミノ糖抗生物質を報告している。
【0012】
Khmel,I.A.ら(1995)は、SU1817875において、真菌性の植物病原体および細菌を制御するのに使用される、Bacillus pumilusの新規菌株VKM CR−333Dを開示している。
【0013】
非特許文献15は、2つのBacillus菌株、B.subtilis CL27およびB.pumilus CL45による、抗Botrytisおよび抗Alternaria抗生物質の産生を報告している。培養液全体および細胞がない濾液が、インビトロにおける試験でBotrytisおよびAlternariaに対して活性であり、そしてAstilbeに対するインビボ小植物試験においてBotrytisに対して活性である。Leifertら(1997)米国特許第5,597,565号は、収穫後の病気を引き起こす真菌、Alternaria brassicicolaおよびBotrytis cinereaを阻害するのに特に有効な、B.subtilis、B.pumilus、およびB.polymyxaを開示している。彼らはまた、細胞がない培養濾液において産生された抗生物質の存在、および異なるpH値でのその活性を開示しているが、彼らはこれらの化合物を同定していない。B.subtilis由来の化合物は、低いpHで活性を失うが、B.pumilus抽出物由来の活性は、5.6より低いpH値でのみ起こる。Leifertら(1998)米国特許第5,780,080号は、Alternaria brassicicolaおよびBotrytis cinereaを阻害するために、B.subtilis、B.pumilus、およびB.polymyxa菌株で治療し得るキャベツを開示している。
【0014】
非特許文献16は、抗真菌および抗細菌活性を有する種々の抗生物質を産生するB.subtilis、B.pumilus、B.licheniformis、およびB.coagulans菌株を開示している。B.pumilusはbacilysinおよびiturin Aを産生した。bacilysinは、分子量270の非常に小さい化合物であり、酵母のみを阻害する。iturinは、極性溶媒に可溶性であり、広い抗真菌および抗細菌活性を有する。
【0015】
米国特許第5,344,647号において、Rossallは、広い抗真菌活性を有するBacillus subtilis菌株を開示している。さらに、Rossallの米国特許第5,061,495号は、63,500ダルトン、5より低いpHで沈殿し、そしてグラム陽性細菌および真菌(BotrytisおよびErysiphe)に対して活性を有する、B.subtilis由来の新規抗生物質を提供する。非特許文献17、非特許文献18、非特許文献19、非特許文献20、および非特許文献21。全てBacillus spp.およびBacillus subtilisの、真菌植物病原体の生物学的制御薬剤としての使用を開示している。非特許文献22、Puseyら、米国特許第5,047,239号、および非特許文献23は、B.subtilisを用いた収穫後の果実腐敗の制御を開示している。Mckeenら、前出は、低分子量iturin環状ポリペプチドと類似の抗生物質が、B.subtilisのこの殺真菌活性に寄与していることを示した。
【0016】
Liuらは、米国特許第5,403,583号において、Bacillus sp.(ATCC 55000)および真菌植物病原体、Rhizoctonia solaniを制御する方法を開示している。非特許文献24は、コメの褐色斑点(rice brown spot)の原因であるDrechslera oryzaeに拮抗するBacillus sp.を開示している。同じ著者ら、非特許文献25はまた、Drechslera oryzae、Alternaria alternataおよびFusarium roseumに対するBacillus sp.のインビトロにおける拮抗を開示している。彼らは、培養濾液中の3つの成分について議論している。最も活性な抗生物質は、水およびメタノールに高度に可溶性であり、255nmにUVピーク、および260nmに肩を有し、ポリオキシン様のリポペプチドであることが証明された。非特許文献26は、ワタの根腐れの原因であるPhymatotrichum omnivorumによって死滅するワタの数を抑制するための、Bacillus sp.の懸濁液の使用を開示している。
【0017】
非特許文献27は、線虫捕獲真菌を刺激してその線虫を捕獲する能力を増加させるBacillus pumilusについて報告している。非特許文献28は、真菌(Fusarium)およびカンキツ属で感染を引き起こす線虫の細胞相互作用を論じている。その真菌はB.pumilusと結合しており(それらは共に存在する)、そして線虫もそこに存在する場合、真菌はより重症である。B.pummilusは、線虫の食料を供給しているようである。非特許文献29は、抗線虫薬であるB.pumilusについて報告しているが、彼らは抗真菌活性を報告していない。非特許文献30は、B.pumilusを含む多くの異なるBacillusを、キチナーゼを産生する能力に関して比較しているが、彼らは植物病原体に対する活性は報告していない。B.pumilusは、最も低いキチナーゼレベルを産生する。非特許文献31は、植物の幹および根中の内生植物である、多くのBacillusおよびB.pumilusを含む多くの型の細菌を調査した。しかし、彼らは、これらの内生植物菌株が抗真菌性であるという証拠は示していない。Cherninら(1995)Molecular Geneticsは、植物の疾患を引き起こす細菌(例えばXanthomanas、Pseudomonas、Erwinia)および真菌に対する広いスペクトルの活性を有するBacillus pumilusを発見した。Feyら(1991)Akad Landwirts Kartは、種イモをRhizoctonia solaniからある程度守るB.pumilus菌株について報告している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Schwinnら、Advances In Plant Pathology:Phytopathora infestans、The Cause of Late Blight of Potato、244頁、Academic Press、San Diego、Calif.(1991)
【非特許文献2】Johnson,T.J.ら(1993)、J.Econ.Entomol.、86:330−333
【非特許文献3】Estruchら(1997)、Nature−Biotechnology 15:137−141
【非特許文献4】BurgjeronおよびBiache(1979)、Entomophaga 11:279−284
【非特許文献5】Argauerら(1991)、J.Entomol.Sci.26:206−213
【非特許文献6】Cluthy(1980)、FEMS Microbiol.Lett.8:1−7
【非特許文献7】Stonardら(1994)、ACS Symposium Series 551:25
【非特許文献8】Heら(1994)、Tetrahedron Lett.35(16):2499−2502
【非特許文献9】Korzybskiら、「Bacillus科(バチルス科)から単離された抗生物質」、Antibiotics−Origin,Nature and Properties、American Society for Microbiology、Washington,D.C.第III巻(1978)
【非特許文献10】Berdy、CRC Handbook of Antibiotic Compounds、第I−XIV巻、CRC Press,Inc.、Boca Raton、FL(1980−87)
【非特許文献11】Stabbら(1990)Applied Environ.Microbiol.60:4404−4412
【非特許文献12】Milnerら、Appl.Environ.Microb.62:3061−3066(1996)
【非特許文献13】Osburneら(1995)Am.Phytopathol.Soc.79(6):551−556
【非特許文献14】Tsunoら(1986)J.Antibiotics XXXIX(7):1001−1003
【非特許文献15】Leifertら、J.Appl.Bacteriol.78:97−108(1995)
【非特許文献16】Loefflerら(1986)J.Phytopathology 115:204−213
【非特許文献17】Sholbergら(1995)Can.J.Microbiol.41:247−252
【非特許文献18】Swinburneら(1975)Trans.Brit.Mycol.Soc.65:211−217
【非特許文献19】SinghおよびDeverall(1984)Trans.Br.Mycol.Soc.83:487−490
【非特許文献20】Ferreiraら(1991)Phytopathology 81:283−287
【非特許文献21】Bakerら(1983)Phytopathology 73:1148−1152
【非特許文献22】Puseyら(1988)Plant Dis.72:622−626
【非特許文献23】McKeenら(1986)Phytopathology 76:136−139
【非特許文献24】IslamおよびNandi(1985)J.Plant Dis.Protect.92(3):241−246
【非特許文献25】IslamおよびNandi(1985)J.Plant Dis.Protect.92(3):233−240
【非特許文献26】Cookら(1987)Beltwide Cotton Production Research Conferences、Dallas、TX、43−45頁
【非特許文献27】B’ChirおよびNamouchi(1988)Revue Nematologique 11(2):263−266
【非特許文献28】B’ChirおよびBelkadhi(1986)Med.Fac.Landbouww.Rijksuniv.Gent 51/3b:1295−1310
【非特許文献29】GokteおよびSwarup(1988)Indian J.Nematol.18(2):313−318
【非特許文献30】Slabospitskayaら(1992)Mikrobiol Zh(Kiev)54(6):16−22
【非特許文献31】McInroyら(1995)Plant and Soil 173(2):337−342
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(本発明の開示)
特定の特異的な植物病原体に対してのみ抗真菌活性を示し、そして抗細菌活性を示さない、新規抗生物質産生Bacillus sp.が提供される。有効な量の抗生物質産生Bacillus sp.を適用する工程を含む、真菌の感染から植物、果実および根を処置または保護する方法も提供される。抗生物質産生Bacillus sp.は、培養液全体の懸濁液として、または抗生物質産生Bacillus sp.の培養液全体から得た、部分的に精製された抗生物質を含む上清として提供され得る。特異的な抗真菌活性を示し、そして抗細菌活性を示さない新規水溶性抗生物質も提供される。
【0020】
本発明はまた、B.thuringiensisの殺虫活性を増強する新規化合物も提供する。その化合物は、B.pumilusの培養液全体または上清から単離され、そしてB.thuringiensisと組み合せた場合、その殺虫活性を増強する。本発明はまた、Bacillusの細菌懸濁液またはBacillusの培養液の代謝物を含む上清または精製した代謝物を用いて、植物の上、または中への昆虫の侵入を制御するための植物を治療する方法を含む。
【0021】
本発明はさらに、殺真菌剤として使用するために菌株B−30087と菌株B−21661(AQ713)の組み合せを提供する。ここでその菌株を共に使用することは、いずれかを単独で使用する場合よりも高い有効性を提供する。
【0022】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1) 殺真菌活性を有する、NRRL番号B−30087と命名されたBacillus pumilus菌株、またはその変異体の、全ての同定す特徴を有する菌株の生物学的に純粋な培養物。
(項目2) NRRL番号B−30087と命名されたBacillus
pumilus菌株の生物学的に純粋な培養物。
(項目3) 項目1に記載の生物学的に純粋な培養物と担体とを含む組成物。
(項目4) 組成物が、水和剤、顆粒、水性懸濁液、および乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される、項目1に記載の組成物。
(項目5) 殺真菌活性を有する、NRRL登録番号B−30087と命名されたBacillus pumilus菌株、またはその変異体の、全ての同定する特徴を有する菌株の生物学的に純粋な培養物から分離される、単離された代謝物。
(項目6) 殺真菌活性を有する、NRRL登録番号B−30087と命名されたBacillus pumilus菌株、またはその変異体の、全ての同定する特徴を有する菌株の生物学的に純粋な培養物から分離される上清。
(項目7) 項目6に記載の上清から分離される、部分的に精製された画分。
(項目8) 項目5に記載の代謝物と担体とを含む、組成物。
(項目9) 項目6に記載の上清と担体とを含む、組成物。
(項目10) 項目7に記載の部分的に精製された画分と担体とを含む、組成物。
(項目11) 組成物が、水和剤、顆粒、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される、項目8に記載の組成物。
(項目12) 組成物が、水和剤、顆粒、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される、項目9に記載の組成物。
(項目13) 組成物が、水和剤、顆粒、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される、項目10に記載の組成物。
(項目14) 項目1に記載の代謝物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目15) 項目6に記載の上清の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目16) 項目7に記載の部分的に精製された画分の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目17) 項目8に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目18) 項目9に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目19) 項目10に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目20) 項目11に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目21) 項目12に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目22) 項目13に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目23) 前記真菌感染が、Bremia lactucae;Peronospora parasitica;Phytophthora infestans;Uncinula necatorおよびUromyces phaseoliからなる群から選択される少なくとも1つの微生物によって引き起こされる、項目17に記載の方法。
(項目24) 前記真菌感染が、Bremia lactucae;Peronospora parasitica;Phytophthora infestans;Uncinula necatorおよびUromyces phaseoliからなる群から選択される少なくとも1つの微生物によって引き起こされる、項目18に記載の方法。
(項目25) 前記真菌感染が、Bremia lactucae;Peronospora parasitica;Phytophthora infestans;Uncinula necatorおよびUromyces phaseoliからなる群から選択される少なくとも1つの微生物によって引き起こされる、項目19に記載の方法。
(項目26) 前記真菌感染が、Bremia lactucae;Peronospora parasitica;Phytophthora infestans;Uncinula necatorおよびUromyces phaseoliからなる群から選択される少なくとも1つの微生物によって引き起こされる、項目20に記載の方法。
(項目27) 前記真菌感染が、Bremia lactucae;Peronospora parasitica;Phytophthora infestans;Uncinula necatorおよびUromyces phaseoliからなる群から選択される少なくとも1つの微生物によって引き起こされる、項目21または22に記載の方法。
(項目28) 少なくとも1つの化学的または生物学的農薬を含む、項目1に記載の組成物。
(項目29) 少なくとも1つの化学的または生物学的農薬を含む、項目7に記載の組成物
(項目30) 少なくとも1つの化学的または生物学的農薬を含む、項目8に記載の組成物
(項目31) 少なくとも1つの化学的または生物学的農薬の有効量を施用する工程をさらに包含する、項目14に記載の方法。
(項目32) 少なくとも1つの化学的または生物学的農薬の有効量を施用する工程をさらに包含する、項目15に記載の方法。
(項目33) 少なくとも1つの化学的または生物学的農薬の有効量を施用する工程をさらに包含する、項目17に記載の方法。
(項目34) NRRL登録番号B−30087の生物学的に純粋な培養を増殖させる工程、および上清から抗真菌性代謝物を単離する工程を包含する、抗真菌上清の生成のためのプロセス。
(項目35) 項目34に記載の上清の部分的精製のためのプロセスであって、該プロセスが該上清を分画する工程、および該画分に対してバイオアッセイを行って抗真菌画分を同定する工程を包含する、プロセス。
(項目36) 項目34に記載のプロセスによって生成された上清。
(項目37) 前記画分が、植物病原性真菌に対する活性を示し、水性画分中に見いだされ、わずかに熱に対して不安定であり、酸/塩基およびプロテアーゼに対して安定であり、正に荷電し、そして10,000ダルトン未満の分子量を有する、項目7に記載の部分的に精製された画分。
(項目38) 前記代謝物が、植物病原性真菌に対する活性を示し、水性画分中に見いだされ、わずかに熱に対して不安定であり、酸/塩基およびプロテアーゼに対して安定であり、正に荷電し、そして10,000ダルトン未満の分子量を有する、項目5に記載の単離された代謝物。
(項目39) 水溶性化合物であって、Bacillus thuringiensisの殺虫活性を増強し、そして該化合物の分子量が10,000ダルトン未満であり、かつ該化合物がツヴィッターマイシンAではない、化合物。
(項目40) さらにBacillus thuringiensisを含む、項目39に記載の化合物。
(項目41) 項目39に記載の化合物と担体とを含む、組成物。
(項目42) 項目40に記載の組成物と担体とを含む、組成物。
(項目43) Bacillus thuringiensisが、微生物菌株、市販製品、遺伝子工学で作られた植物またはデルタエンドトキシンの形態である、項目40に記載の組成物。
(項目44) 少なくとも1つの化学的または生物学的農薬をさらに含む、項目40〜43のいずれか一項に記載の組成物。
(項目45) 組成物が、水和剤、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される処方物である、項目44に記載の組成物。
(項目46) Bacillus thuringiensisの殺虫活性を増強し、かつツヴィッターマイシンAまたはβ−外毒素ではないBacillusの、ブロス培養物全体の部分的に精製された画分。
(項目47) BacillusがBacillus pumilusである、項目46に記載の部分的に精製された画分。
(項目48) Bacillus pumilusが、NRRL登録番号NRRL B−30087の下に寄託されたBacillus pumilusである、項目47に記載の部分的に精製された画分。
(項目49) 項目46〜48のいずれか一項に記載の画分と担体とを含む、組成物。
(項目50) さらにBacillus thuringiensisを含む、項目46〜49のいずれか一項に記載の画分。
(項目51) Bacillus thuringiensisが、微生物菌株、市販製品、遺伝子工学で作られた植物またはデルタエンドトキシンの形態である、項目50に記載の画分。
(項目52) 項目49に記載の組成物およびBacillus thuringiensisとを含む、組成物。
(項目53) 少なくとも1つの化学的または生物学的農薬をさらに含む、項目46〜48のいずれか一項に記載の画分。
(項目54) 組成物が、水和剤、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される処方物である、項目49に記載の組成物。
(項目55) 組成物が、水和剤、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される処方物である、項目52に記載の組成物。
(項目56) 組成物が、水和剤、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される処方物である、項目53に記載の組成物。
(項目57) Bacillus thuringiensisの殺虫活性を増強するための方法であって、項目39に記載の化合物の有効量を植物または根に、そしてBacillus thuringiensisの有効量を該植物または根に施用する工程を包含する、方法。
(項目58) Bacillus thuringiensisの殺虫活性を増強する方法であって、項目46に記載の化合物の有効量を植物または根に、そしてBacillus thuringiensisの有効量を該植物または根に施用する工程を包含する、方法。
(項目59) 植物または根を昆虫の侵襲から保護または処置するための方法であって、項目40に記載の化合物の有効量を植物または根に施用する工程を包含する、方法。
(項目60) 植物または根を昆虫の侵襲から保護または処置するための方法であって、項目44に記載の組成物の有効量を植物または根に施用する工程を包含する、方法。
(項目61) 植物または根を昆虫の侵襲から保護または処置するための方法であって、項目50に記載の画分の有効量を植物または根に施用する工程を包含する、方法。
(項目62) 植物または根を昆虫の侵襲から保護または処置するための方法であって、項目52に記載の組成物の有効量を植物または根に施用する工程を包含する、方法。
(項目63) 植物または根を昆虫の侵襲から保護または処置するための方法であって、項目53に記載の画分の有効量を植物または根に施用する工程を包含する、方法。
(項目64) 少なくとも1つの化学的または生物学的農薬をさらに含む、項目51に記載の方法。
(項目65) 少なくとも1つの化学的または生物学的農薬をさらに含む、項目49または50に記載の方法。
(項目66) a)NRRL登録番号B−30087と命名されたBacillus pumilus菌株、またはその変異体の、全ての同定する特徴を有する菌株のブロス培養物全体;および
b)NRRL登録番号B−21661と命名されたBacillus subtilis菌株、またはその変異体の、全ての同定する特徴を有する菌株のブロス培養物全体、
を含む組成物であって、該菌株は相乗的な殺真菌活性を有する、組成物。
(項目67) 前記殺真菌活性が、Botrytis cinereaおよびPeronospora parasiticaに対する、項目66に記載の組成物。
(項目68) 前記菌株が、NRRL登録番号B−21661およびB−30087について1:2の比率で組み合わされる、項目66に記載の組成物。
(項目69) 前記菌株が、NRRL登録番号B−21661およびB−30087について1:4の比率で組み合わされる、項目66に記載の組成物。
(項目70) 前記菌株が、Botrytis cinereaまたはPerenospora parasiticaに対して、NRRL登録番号B−21661およびB−30087について1:2の比率で組み合わされる、項目66に記載の組成物。
(項目71) 前記菌株が、Botrytis cinereaまたはPerenospora parasiticaに対して、NRRL登録番号B−21661およびB−30087について1:4の比率で組み合わされる、項目66に記載の組成物。
(項目72) 項目66に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目73) 項目67に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目74) 項目68に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目75) 項目69に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目76) 項目70に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目77) 項目71に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
(項目78) 項目66に記載の培養物から分離される、上清。
(項目79) 項目78に記載の上清と担体とを含む、組成物。
(項目80) 組成物が、水和剤、顆粒、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される、項目79に記載の組成物。
(項目81) 少なくとも1つの生物学的または化学的殺虫剤をさらに含む、項目66に記載の組成物。
(項目82) 少なくとも1つの生物学的または化学的殺虫剤をさらに含む、項目79に記載の組成物。
(項目83) 組成物が、水和剤、顆粒、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される、項目81に記載の組成物。
(項目84) 組成物が、水和剤、顆粒、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物、およびマイクロカプセル化処方物からなる群から処方される、項目82に記載の組成物。
(項目85) 項目69に記載の組成物の有効量を施用する工程を包含する、植物、根または果実を真菌感染から予防または処置するための方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、NRRL登録番号第B−30087号で寄託された、Bacillus sp.の部分的に精製した殺真菌性画分の、D2O中400MHzで記録したNMRスペクトルである。
【図2】図2は、D2O中400MHzで記録した、ツヴィッターマイシンAの1H NMRスペクトルを示す。
【図3A】図3A〜3Cは、実施例9で記載されたようにBacillusから単離された上清のキャピラリー電気泳動図である。電気泳動の条件は:コートされていない56cmのキャピラリーを40C、30kV、陽性の極性、pH5.8のリン酸ナトリウム緩衝液で100μA、200nmでのUV検出で使用した。図3Aは、Bacillus pumilus B−30087の培養液全体のキャピラリー電気泳動図である。
【図3B】図3A〜3Cは、実施例9で記載されたようにBacillusから単離された上清のキャピラリー電気泳動図である。電気泳動の条件は:コートされていない56cmのキャピラリーを40C、30kV、陽性の極性、pH5.8のリン酸ナトリウム緩衝液で100μA、200nmでのUV検出で使用した。図3Bは、ツヴィッターマイシンAスタンダードを加えたBacillus pumilus B−30087の培養液全体のキャピラリー電気泳動図である。ツヴィッターマイシンAのピークは3.25分の実行時間付近に現れ、培養液全体のいずれのピークとも共に溶出しない。
【図3C】図3A〜3Cは、実施例9で記載されたようにBacillusから単離された上清のキャピラリー電気泳動図である。電気泳動の条件は:コートされていない56cmのキャピラリーを40C、30kV、陽性の極性、pH5.8のリン酸ナトリウム緩衝液で100μA、200nmでのUV検出で使用した。図3Cは、約3.28分の実行時間におけるツヴィッターマイシンAスタンダードを示す。
【図4A】図4は、NRRL登録番号第B−30087号単独の部分的に精製した画分(図4A)、ツヴィッターマイシンAを含むNRRL登録番号第B−30087号の部分的に精製した画分(図4B)、およびツヴィッターマイシンA単独(図4C)のキャピラリー電気泳動(CE)分析からの、3つの電気泳動図を比較する。
【図4B】図4は、NRRL登録番号第B−30087号単独の部分的に精製した画分(図4A)、ツヴィッターマイシンAを含むNRRL登録番号第B−30087号の部分的に精製した画分(図4B)、およびツヴィッターマイシンA単独(図4C)のキャピラリー電気泳動(CE)分析からの、3つの電気泳動図を比較する。
【図4C】図4は、NRRL登録番号第B−30087号単独の部分的に精製した画分(図4A)、ツヴィッターマイシンAを含むNRRL登録番号第B−30087号の部分的に精製した画分(図4B)、およびツヴィッターマイシンA単独(図4C)のキャピラリー電気泳動(CE)分析からの、3つの電気泳動図を比較する。
【図5】図5は、D2O中400MHzで記録した、B−30087から単離したB+エンハンサーとしての活性を有する、部分的に精製した活性画分の1H NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(本発明の実施方法)
本発明は、サビ菌、ウドンコ病菌、およびべと病菌のような、特定の植物病原体に対してのみ抗真菌活性を有する、Bacillus sp.の新規菌株およびその変異体または改変体の、全ての識別する特徴を有する菌株の生物学的に純粋な培養物を提供する。このB.pumilusの新規菌株は、1999年1月14日に、Agricultural Research Culture Collection(NRRL)、1815 North University Street、Peoria Ill、61604、USAに供託され、そして特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の規定のもとに、受け入れ番号第NRRL B−30087号を与えられた。NRRL B−21661号と呼ばれる菌株が、同じ組織に1997年3月7日に供託された。それはその後American Type Culture Collection(ATCC)によってBacillus subtilisとして同定された。
【0025】
本発明はまた、そのような細菌菌株、またはそのような細菌菌株から得た抗生物質を含む上清または純粋な抗生物質を用いて、植物の根を含む植物における真菌性の病気を予防および治療する方法も含む。本発明はまた、10,000ダルトンより小さい分子量を有し、わずかに熱不安定性、陽性に荷電、そしてUV吸収によるHPLCピークが280nmで最大、そして230nmに肩がある、水溶性抗真菌性抗生物質も含む。その抗生物質はツヴィッターマイシンAではない。
【0026】
本発明のさらなる局面は、B.thuringiensisと組み合せた場合にB.thuringiensisの殺虫活性を増強する、B.pumilusの培養液全体または上清を含む。本発明はまた、Bacillusの細菌懸濁液、またはBacillusの培養物の代謝物を含む上清、または精製した代謝物を用いて、植物の上または中への昆虫の侵入を制御するために、植物を治療する方法を含む。
【0027】
本発明のさらなる局面は、殺真菌剤としてB.pumilus(NRRL B−30087)とB.subtilis(NRRL B−21661)の菌株を組み合せて使用することの、予想外の相乗効果である。本発明はその組成物およびそれらを殺真菌剤として用いる方法を含む。
【0028】
(定義)
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」「an」および「the」は、他に文脈が明らかに指図しなければ、複数の表示を含む。例えば、「a cell」という用語は、その混合物を含む複数の細胞を含む。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「含む」という用語は、その組成物および方法は、列挙した成分を含むが、他を除外しないことを意味するように意図される。「本質的に〜からなる」は、組成物および方法を定義するために使用される場合、その組み合せに本質的に重要な他の成分を除外することを意味する。従って、本質的に本明細書中で定義されたような要素からなる組成物は、単離および精製方法からの痕跡混入物および、リン酸緩衝化生理食塩水、保存剤等のような薬剤学的に許容できる担体を除外しない。「〜からなる」は、他の成分および本発明の組成物を投与する重要な方法工程の痕跡要素以上のものを除外することを意味する。これら変化(transition)用語のそれぞれによって定義された実施形態は、本発明の範囲内である。
【0030】
「単離された」という用語は、「生物学的に純粋な」と交換可能に使用され、そしてその菌株または代謝物が通常天然に結合している成分、細胞および他から分離されたことを意味する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「生物学的制御」は、2番目の生物体を用いることによる、病原体または昆虫の制御として定義される。生物学的制御の公知のメカニズムは、根の表面の空間に関して真菌をアウトコンピーティング(out−competing)することによって根腐れを制御する腸の細菌を含む。抗生物質のような細菌の毒素が、病原体を制御するために使用されてきた。その毒素を、単離および植物に直接適用し得、またはインサイチュで毒素を産生するように細菌種を投与し得る。
【0032】
「真菌(fungus)」または「真菌(fungi)」という用語は、クロロフィルを欠く、広範に種々の有核の胞子を有する生物体を含む。真菌の例は、酵母、カビ、ウドンコ病、錆菌類、およびキノコを含む。
【0033】
「細菌」という用語は、明確な核を有さないあらゆる原核生物を含む。
【0034】
「殺真菌性」は、真菌の死亡率を増加させる、または増殖速度を阻害する物質の能力を意味する。
【0035】
「抗生物質」は、微生物を殺すまたは阻害することができるあらゆる物質を含む。抗生物質は、微生物によって、または合成過程によって、もしくは半合成過程によって産生され得る。従って、その用語は、真菌を阻害するまたは殺す物質、例えばツヴィッターマイシンAまたはカノサミンを含む。
【0036】
「抗真菌剤」は、真菌を殺すまたは増殖を阻害できるあらゆる物質を含む。
【0037】
「培養」という用語は、様々な種類の培地上または中での生物体の増殖を指す。
【0038】
「ブロス培養物全体」とは、細胞および培地を両方含む液体培地をいう。
【0039】
「上清」とは、培養液中で増殖した細胞を遠心、ろ過、沈降、または当該分野で周知の他の方法によって除去した場合に残る液体培養液をいう。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「昆虫」という用語は、「昆虫綱」の全ての生物体を含む。「前成虫」昆虫とは、例えば卵、幼生、および若虫を含む、成虫期より前のあらゆる形態の生物体を指す。「殺虫性」とは、昆虫の死亡率を増加させる、または増殖速度を阻害する物質の能力をいう。「抗線虫性」とは、線虫の死亡率を増加させるか、または増殖速度を阻害する物質の能力をいう。「農薬の」は、昆虫、線虫、およびダニの死亡率を増加させるまたは増殖速度を阻害する物質の能力をいう。
【0041】
「ポジティブコントロール」は、農薬活性を有することが知られている化合物を意味する。「ポジティブコントロール」は、市販で入手可能な化学的農薬を含むがこれに限らない。「ネガティブコントロール」という用語は、農薬活性を有さないことが公知の化合物を意味する。ネガティブコントロールの例は、水または酢酸エチルである。
【0042】
「溶媒」という用語は、溶液中に別の物質を保持するあらゆる液体を含む。「溶媒抽出可能」とは、溶媒に溶解し、そして次いで溶媒から単離し得るあらゆる化合物をいう。溶媒の例は、酢酸エチルのような有機溶媒を含むがこれに限らない。
【0043】
「代謝物」という用語は、農薬活性を有する微生物の発酵のあらゆる化合物、物質または副産物を指す。上記で定義した抗生物質は、微生物に対して特に活性な代謝物である。
【0044】
「組成物」は、活性薬剤および、不活性(例えば検出可能な薬剤または標識)、またはアジュバントのように活性な、別の化合物または組成物との組み合せを意味することを意図する。
【0045】
「画分」は、上清の分子を大きさ、極性、または電荷によって分離するために使用される分画アッセイからのアリコートを意味することを意図する。
【0046】
「部分的に精製した画分」は、バイオアッセイで発芽を阻害、またはlepioloplausに対するB+活性を増強し得る、分画アッセイで回収されたアリコートの1つである。
【0047】
「有効な量」は、有益なまたは望ましい結果を得るのに十分な量である。有効な量を、1つ以上の用途において適用し得る。治療および防御に関して、「有効な量」は、昆虫の外寄生の進行を改善、安定化、逆行、遅延(slow)、または遅延(delay)させるのに十分な量である。
【0048】
本発明者らは、特定の植物病原体にのみ抗真菌活性を有し、そして抗細菌活性を有さない、NRRL登録番号第B−30087号で寄託されたBacillus sp.の新規抗生物質産生菌株、およびその変異体の、全ての同定する性質を有する菌株の生物学的に純粋な培養を記載する。1つの局面において、その菌株はNRRL登録番号第B−30087号で寄託されたBacillus pumilus、およびその菌株の変異体である。
【0049】
他の局面では、その菌株は、NRRL登録番号第B−30087号で寄託された菌株の全ての同定する性質(下記で提供されるような)を有する、NRRL登録番号第B−30087号の変異体または改変体である。変異体または改変体は、本開示中で相互交換可能に使用され、そしてさらに、高いストリンジェンシーの条件下でNRRL登録番号第B−30087号のゲノムとハイブリダイズするゲノムを有するものとして同定され得る。「ハイブリダイゼーション」とは、1つ以上のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化される複合体を形成する反応をいう。水素結合は、ワトソン−クリック塩基対形成、フーグスティーン結合、またはあらゆる他の配列特異的な様式によって起こり得る。その複合体は、二本鎖構造を形成する2本の鎖、複数鎖の複合体を形成する3本以上の鎖、1本の自己ハイブリダイズ鎖、またはこれらのあらゆる組み合せを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で行い得る。一般的に、低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション反応は、10×SSC中約40℃で、または同等のイオン強度/温度の溶液で行われる。中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、代表的には6×SSC中約50℃で、そして高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション反応は、一般的に1×SSC中約60℃で行われる。
【0050】
NRRL登録番号第B−30087号の変異体または改変体はまた、NRRL登録番号第B−30087号のゲノムと、85%より多い、より好ましくは90%より多い、またはより好ましくは95%より多い配列が同一であるゲノム配列を有する菌株として定義され得る。ポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)が、別の配列に対して特定の割合(例えば80%、85%、90%、または95%)の「配列同一性」を有することは、整列した場合、2つの配列を比較してその塩基(またはアミノ酸)の割合が同一であることを意味する。この整列および相同性の割合または配列同一性は、当該分野で公知のソフトウェアプログラム、例えばCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubelら編、1987)補遺30、第7.7.18節、表7.7.1で記載されているものを用いて決定し得る。好ましくは、整列のためにデフォルトパラメーターを使用する。好ましい整列プログラムは、デフォルトパラメーターを使用するBLASTである。特に、好ましいプログラムは、以下のデフォルトパラメーターを使用するBLASTNおよびBLASTPである:遺伝コード=標準;フィルター=無し;鎖=両方;カットオフ=60;予期=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;分類=HIGH SCORE;データベース=非重複性、Genbank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細を、以下のインターネットアドレスにおいて見出し得る:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/cgi−bin/BLAST。
【0051】
本発明はさらに、上記で述べた培養から得た上清を提供する。その上清を、遠心;ろ過;沈降等を含む、当該分野で周知の方法によって得ることができる。
【0052】
別の局面において、本発明は、水溶性抗真菌性抗生物質である単離された代謝物を含む。その代謝物は、本発明の菌株から単離され、そして上記で記載される。それは、特定の植物病原体に対して活性を有するが細菌には活性を有さず、10,000ダルトンより小さい、UV吸収のピークが280nm、および肩が230nm、酸および塩基に安定、80℃より上でわずかに熱不安定性、そして陽性に荷電した化学的性質を有する。本発明はさらに、この代謝物を産生する過程、本発明の菌株を培養する工程、および下記で記載する方法を用いて活性代謝物を単離する工程を包含する方法を提供する。
【0053】
本発明のさらなる局面は、殺真菌活性を有する、NRRL登録番号第B−30087号の、部分的に精製された活性画分である。活性画分は、ツヴィッターマイシンAと同一ではない。
【0054】
本発明によってさらに、あらゆる上記の菌株(その変異体または改変体を含む)、上清、画分および代謝物を、単独または、お互いにおよび担体と組み合せて含む組成物が提供される。これらの組成物は、さらに少なくとも1つの化学的または生物学的農薬を加えることによって補充され得る。これらの組成物は、水和剤、顆粒処方、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物(emulsifiable concentrate)またはマイクロカプセル化を含むがこれらに限定されない、種々の処方の形態を取り得る。
【0055】
本発明の範囲内で組成物のよい分散および接着を達成するために、培養液全体、上清、画分および/または代謝物/抗生物質を、分散および接着を助ける成分とともに処方することが有利であり得る。よって、適当な処方が当業者に公知である(水和剤、顆粒等、または適当な媒体等中にマイクロカプセル化され得る処方、液体(例えば水性の流動可能物(flowables)および水性懸濁液)ならびに乳化可能な濃縮物)。他の適当な処方が、当業者に公知である。
【0056】
上記で述べたあらゆる菌株、代謝物、画分、上清およびこれら活性成分を含む組成物を、植物、根または果実を真菌感染から処置または保護する方法を提供するために使用し得る。その方法は、有効な量の菌株、代謝物、画分、上清またはこれら活性成分を含む組成物を、単独で、またはお互いにおよび/または他の生物学的または化学的農薬と組み合せて、感染した根、植物、または果実に適用することを含む。有効な量のこれら組成物をまた、そのような外寄生を予防するために、植物、根、または果実に適用し得る。
【0057】
さらなる局面において、本発明は、新規菌株Bacillus sp.NRRL登録番号第B−30087号の同定する性質を全て有する菌株またはその改変体によって産生された、有効な量の抗生物質を適用することを含む、真菌性の病気から植物、根、または果実を処置または保護する方法を含む。1つの実施形態において、その菌株はBacillus sp.NRRL登録番号第B−30087号である。
【0058】
本発明はさらに、Bacillus thuringiensisの殺虫活性を増強する、水溶性化合物を提供する。ここでその化合物は、10,000ダルトン未満の分子量を有し、そしてその化合物はツヴィッターマイシンAではない。その化合物は、ベータ外毒素または他のBacillus thuringiensis産生外毒素ではない。
【0059】
その化合物を、陰イオン交換樹脂、アセトニトリル沈殿、およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって単離する。本発明はまた、その新規化合物を含むBacillusの上清の、部分的に精製された画分を提供する。その新規化合物および活性画分を、B.subtilis、B.cereus、B.mycoides、およびB.pumilusを含むがこれに限らないBacillus spp.の群から選択されるBacillusから単離し得る。
【0060】
当該分野の化学者(chemist skilled in the art)が、化合物が完全に精製されたかどうか決定することを可能にする、その1HNMR(またはプロトンNMR)スペクトルによって、部分的に精製された活性画分を同定し得る。化合物が純粋な場合、1つのプロトンを示すピークが1の任意の値に統合する。次いで、2つのプロトン、例えばメチレン基を示すピークは、2の値に統合する。3つのプロトン、例えばメチル基を示すピークは、3に統合する。これは図3、純粋なツヴィッターマイシンAスタンダードの場合である。しかし、活性な部分的に精製されたBacillus thuringiensisエンハンサーの1H NMRスペクトルは、1より小さく統合するピークの群を有し、そして従ってスペクトル中のより大きなピーク由来の、別の化合物に属する。
【0061】
単離において、その化合物は殺虫活性を示さない。Bacillus thuringiensisとの組み合せが、植物および植物の根に適用した場合にBacillus thuringiensisの殺虫効果を増強する。Bacillus thuringiensisは、微生物菌株、市販製品、遺伝子工学で作られた植物(engineered plant)、殺虫的に活性な代謝物、殺虫的に活性な上清またはデルタエンドトキシンの形態であり得る。
【0062】
Bacillus thuringiensisは、パラ胞子(parasporal)結晶性タンパク質を含むことによって特徴付けられる、グラム陽性、胞子形成細菌である。そのタンパク質は、害虫に対して高度に毒性であり得、そしてその毒性活性において特異的であり得る。上記の特許請求の範囲で使用される場合、「Bacillus thuringiensis」という用語は、微生物菌株、そのような菌株またはその菌株から単離された活性代謝物または画分を含む単離物を含む市販製品、Bacillus thuringiensisの殺虫性タンパク質または遺伝子産物またはデルタエンドトキシンをコードする遺伝子を発現する、遺伝的に改変された、または遺伝子操作された植物を含む。毒素遺伝子が単離および配列決定され、そして組換えDNAに基づくBacillus thuringiensis産物が産生および使用が認可された。遺伝子工学技術および、これらのBacillus thuringiensisエンドトキシンを農業環境に伝達する新しいアプローチが、開発中であり、そして商業生産されている。これらは、害虫抵抗性のためにエンドトキシン遺伝子を用いて遺伝子操作された植物の使用、および安定化したインタクトな微生物細胞の、Bacillus thuringiensisエンドトキシン伝達媒体としての使用を含む(Gaertnerら(1988)TIBTECH 6:S4−S7)。標的害虫を、天然に毒素を発現する野生型Bacillus thuringiensisに曝露することによって、Bacillus thuringiensisを、標的害虫に対して使用可能にし得る。あるいは、望ましい毒素をコードする遺伝子を、適当な組換え宿主中で形質転換および発現させ得る。殺虫活性を保持するBacillus thuringiensis毒素のフラグメントも使用し得る。
【0063】
以下の米国特許は、農薬性のBacillus thuringiensis単離物またはBacillus thuringiensis毒素を発現する組換え微生物を開示している:米国特許第5,006,335号;同第5,106,620号;同第5,045,469号;同第5,135,867号;同第4,990,332号;同第5,164,180号;同第5,126,133号;同第5,093,119号;同第5,208,017号;同第5,186,934号;同第5,185,148号;同第5,211,946号;同第4,948,734号;同第4,849,217号;同第4,996,155号;同第4,999,192号;同第4,966,765号;同第5,073,632号;同第5,196,342号;同第5,063,055号;同第5,080,897号;同第5,024,837号;同第5,147,640号;同第5,173,409号;および同第5,186,934号。
【0064】
Bacillus thuringiensis subsp.kurstakiの胞子および結晶の調製物が、鱗翅目害虫に対する市販の農薬として、長年使用されてきた。例えば、Bacillus thuringiensis var.kurstaki HD−1は、多くの鱗翅目昆虫の幼生に対して毒性である、デルタエンドトキシンと呼ばれる結晶を産生する。Bacillus thuringiensisのさらなる種、すなわちisraelensisおよびtenebrionisが、昆虫を制御するために市販で使用されてきた。
【0065】
Escherichia coliにおけるBacillus thuringiensis結晶タンパク質遺伝子のクローニングおよび発現は、Schnepf,H.ら(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2893−2897において記載された。米国特許第4,448,885号、および米国特許第4,467,036号はいずれも、E.coliにおける結晶タンパク質の発現を開示している。増加した毒性を示し、そして標的害虫に対する拡大した宿主範囲を示す、ハイブリッドBacillus thuringiensis結晶タンパク質遺伝子が構築された。米国特許第5,128,130号、および同第5,055,294号を参照のこと。米国特許第4,797,276号および第4,853,331号は、様々な環境において鞘翅目害虫を制御するために使用し得る、Bacillus thuringiensis株San Diego(B.t.tenebrionisとしても知られる、M−7としても知られる)を開示している。米国特許第4,918,006号は、双翅類に対する活性を有するBacillus thuringiensisを開示している。米国特許第4,849,217号は、アルファルファゾウリムシに対する活性を有するBacillus thuringiensis単離物を開示している。米国特許第5,151,363号および米国特許第4,948,734号は、線虫に対する活性を有するBacillus thuringiensisの特定の単離物を開示している。
【0066】
Bacillus thuringiensis培養物はまた、Brownsville、Tex.のUnited States Department of Agriculture(USDA)から入手可能である。依頼は、USDA、ARS、Cotton Insects Research Unit、P.O.Box1033、Brownsville、Tex.78520 USA、またはNorthern Research Laboratory、U.S.Department of Agriculture、1815 North University Street、Peoria、Ill.USAに対してなされるべきである。
【0067】
従って、その化合物および活性画分は、線虫、ハエ、ガの幼虫、ダニ、コロラドハムシ、トウモロコシの根を食べる昆虫の幼虫を含むがこれに限らない昆虫に対するBacillus thuringiensisの殺虫活性を増強する。
【0068】
当業者に周知であるように、その活性成分を、組成物の形態で適用し得る。よって、本発明はまた、新規化合物および溶媒または農業的に適当なキャリアのようなキャリアを含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、組成物はさらに、上記で記載したような有効な量のBacillus thuringiensisを含む。またさらなる実施形態において、組成物は、当該分野で伝統的に使用されているような、少なくとも1つの化学的または生物学的農薬を含む。本発明の範囲内で組成物のよい分散および接着を達成するために、培養液全体、上清および/または代謝物を、分散および接着を助ける成分と共に処方することが有利であり得る。植物または植物の根への適用を容易にするために、その処方は、水和剤、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物およびマイクロカプセル化処方からなる群から選択される処方へ処理され得る。
【0069】
新規化合物、活性画分、またはそれらを含む組成物を、Bacillus thuringiensisの殺虫活性を増強するために使用し得る。従って、本発明はまた、有効な増強量の新規化合物、活性画分またはそれらを含む組成物を、Bacillus thuringiensisと組み合わせることによって、Bacillus thuringiensisの殺虫活性を増強する方法を提供する。さらなる局面において、有効な量の少なくとも1つのバイオ農薬または化学的農薬をその処方に加える。
【0070】
本発明はさらに、殺真菌剤として使用するために、培養液全体として植物、根、または果実に適用する、新規化合物NRRL登録番号第B−30087号をNRRL登録番号第B−21661号と組み合わせて使用することを含み、その殺真菌剤は化合物の組み合せの予期しない相乗効果の結果として、より強力な効果を有する。より好ましくは、その組み合せは、Botrytis cinereaまたはPeronospora parasiticaに対して1:2(B−21661:B−30087)の比で適用される。さらにより好ましくは、その組み合せはBotrytis cinereaまたはPeronospora parasiticaに対して1:4の比で適用される。またさらなる実施形態において、組成物は当該分野で伝統的に使用されるような、少なくとも1つの化学的または生物学的農薬を含む。本発明の範囲内で組成物のよい分散および接着を達成するために、培養液全体、上清および/または代謝物を、分散および接着を助ける成分と共に処方することが有利であり得る。植物または植物の根への適用を容易にするために、その処方は、水和剤、水性懸濁液、乳化可能な濃縮物およびマイクロカプセル化処方からなる群から選択される処方へ処理され得る。
【0071】
本開示を通して、種々の出版物、特許および公開された特許明細書が、識別する引用によって言及される。これらの出版物、特許および公開された特許明細書の開示は、これによって本発明が属する技術分野の状態をより充分に説明するために本開示に参考として援用される。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、限定することは意図されない。
【0073】
(実施例1)
(菌株NRRL登録番号B−30087の特徴づけ)
NRRL登録番号B−30087を、メチルエステルへと誘導体化した全細胞の細胞性脂肪酸−FAMSに基づいて同定し(Miller,L.T.(1982)「Single derivatization method for routine analysis of bacterial whole cell wall fatty acid methyl esters,including hydroxy acids」J.Clin.Microbiol.16:584〜586)、そしてMIDIシステム(Microbial Identification System,Inc.、Newark、DE)を使用するガスクロマトグラフィーにより分析した。細菌培養物を増殖するために使用される手順およびプロトコル、ならびに装置仕様は、MIDIにより記載されている(細胞性脂肪酸のガスクロマトグラフィーによる細菌の同定。Technical Note#101.MIDI,Inc.、115 Barksdale Professional Center、Newark、DE)。単離物をTSA(BBL)プレート上で28℃にて24時間増殖させ、そして細胞を収集した。1mlのメタノール性NaOH(50%(容量/容量)メタノール中15%(重量/容量)NaOH)を添加し、そして細胞を100℃にて30分間けん化した。脂肪酸のエステル化を、46%(容量/容量)メタノール中3.25N HCl 2mlを80℃にて10分間用いて実施した。FAMEを、1:1(容量/容量)メチル−tert−ブチルエーテル−ヘキサン1.25ml中に抽出し、そしてその有機抽出物を、3mlの1.2%(重量/容量)NaOHで洗浄し、その後、ガスクロマトグラフィーにより分析した。このガスクロマトグラフ(Hewlett−Packard 5890A)は、水素炎イオン化検出器およびキャピラリーカラム(Hewlett−Packard 19091B−102、架橋型5%フェニルメチルシリコン;25m×0.22mm内径;フィルム厚0.33 1lm;相比150)を備え、水素をキャリアガスとして用いた。Hewlett−Packard 3392積分器が自動的にFAMEピークを積分した。そして細菌単離物を、MIDI Microbial Identification Software(Sherlock TSBA Library version 3.80)を使用して命名した。Xanthomonas maltophila ATCC 13637のFAMEプロフィールを、MIDI決定のための参照チェックとして使用した。
【0074】
別個の3連のMIDIプロフィールの結果は、類似性指標スコア0.875にて、NRRL登録番号B−30087をBacillus pumilusとして同定した。
【0075】
(実施例2)
(インビトロ培養における植物病原体に対するNRRL登録番号B−30087の活性(ゾーンアッセイ))
NRRL登録番号B−30087が広範囲の植物病原性真菌に対して有効であるか否かを決定するために、以下の実験を、以下のこれらの植物病原体を使用して実施した:Botrytis cinerea、Alternaria brassicicola、Colletotrichum acutatum、Cladosporium carophylum、Monilinia fructicola、Venturia inaequalis、Rhizoctonia solani、Sclerotinia sclerotiorum、Fusarium oxysporum、Taphrina deformansおよびVerticillium dahliae。
【0076】
寒天拡散(ゾーン)アッセイにおいてNRRL登録番号B−30087の活性を決定するために、植物病原体胞子(胞子は、ペトリ皿の表面から掻き落とし、そして約1×105胞子/ml(病原体に依存する)に希釈した)を、10cmペトリ皿中のジャガイモデキストロース寒天の表面上にスプレッディングした。Rhizoctonia solaniおよびSclerotinia sclerotiorumについては、胞子の代わりに菌糸断片をプレート上にスプレッディングした。約7.0mmの環状ウェルを寒天から除去し、そして250ml振盪フラスコ中でダイズ、酵母抽出物培地にて72時間増殖させたNRRL登録番号B−30087の上清125 lサンプルを、ウェル中に配置した。
【0077】
上清を、12,000rpmにて10分間遠心分離することによって調製した。代表的な結果は、ウェルの周囲の、増殖していない病原体のゾーンおよび/または増殖が減少した病原体のゾーンからなり得るか、あるいは全くゾーンが存在しない状態からなり得る。ゾーンのサイズをミリメートルにて測定し、そしてゾーンが存在するか否かを記録した。結果を、下記の表1に示す。
【0078】
【表1】

NRRL登録番号B−30087上清は、ゾーン試験においてほとんどの真菌性植物病原体に対して活性を示さなかった。
【0079】
(実施例3)
(細菌性植物病原体に対するNRRL登録番号B−30087の活性)
標準的寒天拡散アッセイを、実施例2のように設定した。各細菌病原体のローンを、ジャガイモデキストロース寒天の表面上にスプレッディングした。NRRL登録番号B−30087上清の125 lのサンプルを、上記のように各ウェルに配置した。ゾーンの存在またはゾーンのサイズを、ミリメートルにて測定した。
【0080】
【表2】

NRRL登録番号B−30087は、インビトロにて試験した細菌性植物病原体のいかなる種に対しても活性ではなかった。
【0081】
(実施例4)
(植物試験における植物病原体に対するNRRL登録番号B−30087の活性)
NRRL登録番号B−30087の活性を、マメサビ菌Uromyces phaseoliに対してサヤマメにおいて、そして灰色カビ菌Botrytis cinereaに対してコショウ植物において、Alternaria solaniに対してトマト植物において、そしてレタスのべと病菌Bremia lactucaeに対して;アブラナのべと病菌に対して、Peronospora parasiticaに対して、トマトの疫病Phytophthora infestansに対して、そしてブドウウドン粉病菌Uncinula necatorに対して、試験した。
【0082】
(Alternaria solani)
病原体Alternaria solaniを、PDAを含む標準的ペトリ皿(10cm)上で増殖させた。真菌コロニーをプレートから切断し、そして胞子形成培地(1lの滅菌水あたり、20gスクロース、30g炭酸カルシウム、および20g寒天)上に配置した。滅菌水を菌糸ブロックを部分的に覆うようにプレートに添加し、そしてプレートを22〜26℃にて2日間、14時間の光周期でインキュベートする。菌糸ブロックをビーカーの滅菌水中に掻き落とすことによって胞子を収集する。胞子懸濁物を、2×104胞
子/mlに調整する。
【0083】
2インチポットに植えそして平箱に配置した3〜4葉齢のトマト種子(UC82−B)に、250ml振盪フラスコにおいて72時間ダイズ粉末、酵母抽出物培地にて増殖させたNRRL登録番号B−30087のブロス全体を、画家用エアブラシ(artists air brush)を用いて噴霧して溢れ出させた(runoff)。噴霧後、実生を最低2時間乾燥させた。接種された実生を22℃のPercival露チャンバ(dew chamber)にて、限定はしないが最初の40時間配置した。各平箱中の植物をプラスチックドームで覆い、そして14時間の光周期で、Percivalインキュベーターにて20〜22℃で48時間維持した。NRRL登録番号B−30087を含まず病原体の胞子を含む水、ならびにNRRL登録番号B−30087を含まず病原体の胞子を含まない水を、ネガティブコントロールおよびポジティブ病原体コントロールとして使用した。また、化学殺真菌剤(例えば、Azoxystrobin、Abound(登録商標))を、100〜250ppmの率にて比較のために使用した。植物を、0〜5のスケールにスコア付けした。ここで、5は、100%感染であり、そして0は症状が存在しない。水A.solaniコントロールにおいて、すべての葉にわたって均一な病変が存在し、そして子葉が剥離し、そして重篤に感染した(評点5=完全感染、制御なし)。NRRL登録番号B−30087で処理した植物は、水コントロールと異ならないように見えた。NRRL登録番号B−30087による病原体の制御は存在しなかった(これもまた、評点5)。ネガティブコントロールは感染しなかった。化学処理した植物は、0と1との間のスコアを有した。
【0084】
(Botrytis cinerea)
病原体Botrytis cinereaを、PDAを含む標準的ペトリ皿(10cm)上で増殖させ、そして胞子を、麦芽(0.5g/L)および酵母抽出物(0.5g/L)を補充したジャガイモデキストロースブロス(PDB)を使用して収集し、そして1×106胞子/mlに調整した。使用した植物は、3〜5本葉期まで2インチポットにて生長させたコショウ(Yolo Wonder)であった。NRRL登録番号B−30087および病原体の適用は、上記と同じであった。ポットが入った平箱を、限定しないが20℃一定にてインキュベートした。この平箱をプラスチックドームで覆い、そして胞子形成するまで2.5日間(60〜65時間)放置した。
【0085】
化学殺真菌剤(例えば、Iprodione、Rovral(登録商標))を、20〜100ppmの率で比較のために使用した。植物を、0〜5のスケールにてスコア付けした。ここで、5は、100%感染であり、そして0は症状が存在しない。水B.cinereaコントロールにおいて、すべての葉にわたって均一な病変が存在した(評点5=完全感染、制御なし)。NRRL登録番号B−30087で処理した植物は、水コントロールと異ならないように見えた。NRRL登録番号B−30087による病原体の制御は存在しなかった(これもまた、評点5)。ネガティブコントロールは感染しなかった。化学処理した植物は、0と1との間のスコアを有した。
【0086】
(Bremia lactucae)
Bremia試験について、レタス種子を、約8センチメートルの高さおよび正方形である小さく透明なプラスチックの植物箱において、ピート、パーライトおよびバーミキュライトを含む滅菌培養土混合物の層に植えた。植付けの1週間後、レタス実生に、NRRL登録番号B−30087ブロスまたは上清サンプルを噴霧した。この植物を乾燥させ、次いで感染したレタス実生から収集したべと病菌胞子懸濁物(2×104胞子/ml)を
実生に噴霧した。Aliette(fosetyl−al)およびRidomi(metalaxyl)からなる化学物質スタンダードもまた、適用した。しかし、これらの試験において使用したBremia lactucaeの単離物は、商業的に使用されるこれらの2つの化学物質スタンダードに非感受性であることが以前に示された。プラスチックの箱をきつくフィットするフタで覆い、そして制限しないが16時間Percivalインキュベーターにて15〜16℃にてインキュベートした。次いで、プラスチックの箱を6日間、光の下で室温(20〜26℃)に配置した。実生の覆いを取り、水を噴霧し、再び覆い、そして胞子形成が生じるように15〜16℃にて一晩インキュベーターに戻した。レタスべと病菌の化学物質耐性菌に対するNRRL登録番号B−30087の効果を、下記表3に示す。
【0087】
【表3】

NRRL登録番号B−30087は、レタスべと病菌に対する優れた活性を有し、種子において病原体の胞子形成がほとんどないかまたは全くなかったが、コントロール(水チェック)植物は、べと病菌により完全に胞子形成された。化学物質スタンダードは、病原体を効果的には制御しなかった。
【0088】
(Peronospora parasitica)
Bacillus菌株NRRL登録番号B−30087を、250ml振盪フラスコにて、上記のように増殖させた。1×強度のブロス培養物全体を、完全子葉期の1週齢のカリフラワー植物または芽キャベツ植物に、圧縮空気を動力源とする画家用エアーブラシを用いて噴霧した。1処理あたり3連の15〜25実生/ポットに噴霧した。1〜5×104胞子/mlのべと病菌Peronospora parasiticaの胞子懸濁物を、まずNRRL登録番号B−30087を適用した後に、Brassica植物に噴霧した。Aliette(fosetyl−al)およびRidomil(metalaxyl)からなる化学物質スタンダードもまた、適用した。しかし、これらの試験において使用したPeronospora parasiticaの単離物は、商業的に使用されるこれら2つの化学物質スタンダードに非感受性であることが以前に示された。
【0089】
感染のために植物を15〜17℃で16時間保持し、次いで実生を20〜24℃で6日間インキュベートした。病原体の胞子形成が生じるように、ポットを15〜17℃に一晩戻した。各植物を、0〜5のスケールに基づいて疾患制御パーセントを評価することによって、評価した。評点0は、胞子形成病変を伴わない植物である。レプリカポットすべてにわたって平均した結果を、以下表4に示す。
【0090】
【表4】

NRRL登録番号B−30087は、未処理チェックおよび化学物質スタンダードと比較した場合に、より有効にBrassicaべと病菌を制御した。
【0091】
(Uncinula necator)
ブドウ実生(Chardonnay)を、6〜9本葉期まで2インチポットにて生長させた。ウドン粉病菌の培養物を、14時間光周期のもとで22〜26℃にてブドウ実生上に維持した。ほとんど最も若い2〜4つの葉を除去する。NRRL登録番号B−30087、化学殺真菌剤(Rally(登録商標)、25ppmのミクロブタニル(myclobutanil))および水チェックを、試験した他の病原体についての上記の通りに、適用して溢れ出させる。4〜5つのレプリカを、各処理に使用する。ウドン粉病菌を接種するために、維持実生(maintenance seeding)上にカビを有する葉をかみそりで除去し、そして各植物に個別に接種する。維持実生の表面を絵の具刷毛でおだやかにブラッシングして、胞子が試験植物の上側表面上に堆積するようにする。この手順は、すべての植物が等価な接種物を得るのを確実にするように、ライト付3×拡大レンズを使用して実施する。ポットが入った平箱を、20〜24℃にて16〜24時間暗所に配置する。平箱を、試験を判断するまでさらに9〜11日間、14時間の光周期で22〜26℃に維持する。上記のように、植物に、0〜5のスコアを与える。NRRL登録番号B−30087を使用する結果を、以下の表5に示す。
【0092】
【表5】

NRRL登録番号B−30087は、未処理チェックと比較して有効に、そして化学物質スタンダードRallyとほとんど同様に、Uncinulaウドン粉病菌を制御した。
【0093】
(Phytophthora infestans)
トマト疫病P.infestansの試験を、2インチ四方のプラスチックポットにて生長させた4〜6本葉期のトマト実生(UC82−B)を使用して実施した。以前に記載されたように増殖させたNRRL登録番号B−30087の適用を、トマト実生に行った。P.infestansの接種物を、ライムギ種子寒天上に増殖した胞子形成コロニーを掻き落とし、そして0.7×104〜1.0×104胞子嚢/mlの間に接種濃度を調整することによって、生成した。A.solani試験について上記した通りに正確に、接種した実生を平箱中に配置し、そしてインキュベートした。実生を、0〜5スケールにて評価した。Quadris(登録商標)(アゾキシストロビン(azoxystrobin))を、62.5〜125ppmの率にて、比較のために使用した。NRRL登録番号B−30087を使用する結果を、以下の表6に示す。
【0094】
【表6】

NRRL登録番号B−30087は、接種の4日後に、化学物質スタンダードQuadrisとほぼ同様に、疫病を制御した。
【0095】
(Uromyces phaseoli)
マメサビ菌U.phaseoliの試験を、第一葉が3/4拡大するまで、サヤマメ実生(供給者の変種)を使用して実行した。NRRL登録番号B−30087の適用を、他の宿主/病原体の組み合わせについて以前に記載した通りに実行した。サビ病病原体の接種物を、−20℃のバイアル中に乾燥サビ菌胞子として貯蔵した。接種物を、0.01% Tween 20を含む水に乾燥サビ菌胞子を添加することにより調製し、そして少なくとも1時間磁気攪拌器上で激しく攪拌した。接種物を、2×105〜4×105胞子/mlに調整する。第一葉に接種し、そして実生を平箱中に配置し、そしてPercival露チャンバにて20℃にて一晩インキュベートする。次いで実生を、室温(20〜26℃)でさらに8〜10日間インキュベートする。実生を、存在する胞子形成サビ菌いぼの発生率および重篤度に基づいて、0〜5のスケールにて評価する。
【0096】
化学殺真菌剤Break(登録商標)(プロピコナゾール)を、40ppmの率で比較のために使用した。NRRL登録番号B−30087ブロス全体を使用する結果を、以下表7に示す。
【0097】
【表7】

NRRL登録番号B−30087は、マメサビ菌を、化学物質スタンダードBreak(登録商標)とほぼ同様に制御した。
【0098】
(実施例5)
(NRRL登録番号B−30087により生成される抗真菌代謝産物)
NRRL登録番号B−30087のブロス全体を、酢酸エチル画分、ブタノール画分、および水性画分に分割した。各画分を、胞子発芽アッセイにおいてキンギョソウサビ菌に対して試験した。キンギョソウサビ菌胞子を、40 lのサンプルおよび20 lの病原体胞子を含む、凹部付き(depression)顕微鏡スライドにて各サンプルの存在下で発芽させた。約16時間後、胞子を顕微鏡下で観察して、胞子が発芽したかを観察する。水コントロール(100%発芽および増殖=スコア5)と比較しての発芽なし(スコア0)は、試験するサンプルの活性を示す。異なるNRRL登録番号B−30087画分を用いたサビ菌発芽アッセイの結果を、以下表8に示す(上記のような0〜5の評点に基づくスコア)。
【0099】
【表8】

代謝産物は、明らかに水可溶性画分中にあり、そしてブタノールまたは酢酸エチル中に容易には抽出可能ではない。
【0100】
この代謝産物の他の特徴を決定した。この分子は、10,000分子量カットオフフィルターを通ることが示された。このことは、この代謝産物が10,000ダルトン未満であることを示す。この活性は、プロテアーゼでの処理後に失われず、酸で処理した場合でも塩基で処理した場合でも失われなかった。この活性は、80℃まで1時間加熱した際にわずかに失われた(キンギョソウサビ菌に対するスコアは、0から1.5に増加した)。この活性は、カチオン樹脂にて吸収されたが、アニオン樹脂には吸収されなかった(この代謝産物は、正に荷電している)。
【0101】
(実施例6)
(NRRL登録番号B−30087の殺真菌画分の部分精製)
NRRL登録番号B−30087由来のブロス培養物全体(850ml)を、4200rpmで15分間遠心分離し、そして上清を収集した。活性炭(30g)をこの上清に添加し、そしてこれを十分に振盪した後、11,500rpmで20分間遠心分離した。上清をロータリーエバポレーターにて乾燥し、次いで15mlの水に再溶解した。次いで、サンプルを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってさらに精製して、分子量によって成分を分離した。
【0102】
P−2樹脂(130g、BioRad)を、ミリQ脱イオン水で膨張させて、カラム2.5cm×80cmに充填した。15mlの濃縮物をこのP−2カラム上にローディングし、このカラムを重力によって水を用いて溶出し、そして10ml画分を収集した。P−2カラムについてのパラメーター:範囲=2、nm=226nm、16mv。
【0103】
溶出した画分を、実施例5に記載したキンギョソウサビ菌発芽アッセイを使用してアッセイした。画分18〜24が、発芽を完全に阻害することを見出した。これらの画分を混合し、そしてロータリーエバポレーターにて乾燥し、次いで、8mlの水に再溶解し、そして0.2mlフィルターに通して濾過した。これを、第2のP−2カラムにローディングし、そして上記のように流したが、ただし、7ml画分を収集した。
【0104】
画分29〜38が、バイオアッセイにおいて発芽を阻害することを見出した。これらの画分を乾燥し、次いで水に再溶解した。小アリコート(5mg)を、アミノカラム(4.6mm×15cm、5m、100Å)を使用するHPLCによりさらに分離した。このカラムを、0.01M KH2PO4中で平衡化し、そして4%〜44%アセトニトリル/0.01M KH2PO4勾配を、200nmのUVにより検出して、1ml/分で30分間流した。
【0105】
3つのピークを収集し、そしてピーク1を、サイズ排除HPLCカラム(Toso Haas、G1000 PW、7.5mm×30cm、10m)上にて脱塩し、200nmのUVにより検出して、1ml/分の水で溶出した。1つのピークを、サイズ排除カラムから収集し、そして発芽アッセイにおいて活性であることを見出した。この半純粋の(semi−pure)活性物質の1H−NMRスペクトルを、図1に示すようにD2Oにおいて400MHzにて記録した。
【0106】
(実施例7)
(殺真菌成分の化学的特徴は、ツウィッターマイシン(zwittermicin)Aと異なる)
本発明の殺真菌活性画分は、キャピラリー電気泳動において、ツウィッターマイシンAと異なることが示された。NRRL登録番号B−30087ブロス全体を、ダイズ粉末、デキストロース、酵母抽出物、KH2PO4、K2HPO4、NaClおよびMgSO4×7H2Oを含む、Bacillus培養培地において増殖させた。画線培養物を使用して、250ml振盪フラスコに接種した。フラスコを、210rpmにて30℃で4日間振盪した。
【0107】
NRRL登録番号B−30087ブロス全体に、精製ツウィッターマイシンAを加え、そしてキャピラリー電気泳動(CE)において泳動した。30μlのNRRL登録番号B−30087ブロス全体に、10μlのツヴィッターマイシンAを加えた。NRRL登録番号B−30087ブロス全体、NRRL登録番号B−30087ブロス全体+ツウィッターマイシンA、およびツヴィッターマイシンA単独のうちの1つのサンプル各々を、リン酸ナトリウム緩衝液(pH5.8)を使用してCE上で泳動した。各サンプルについて生じた電気泳動図を図3に示す。
【0108】
次いで、部分精製画分を、キャピラリー電気泳動(CE)を使用して、ツヴィッターマイシンAと比較した。図4は、B−30087の部分精製殺真菌成分の電気泳動図、25μlのツヴィッターマイシンAを加えたB−30087の部分精製殺真菌成分の電気泳動図、およびツヴィッターマイシンA単独の電気泳動図を示す。
【0109】
図2に示されるツヴィッターマイシンAの1H−NMRスペクトルおよび図1に示されるB−30087の部分精製殺真菌代謝産物の1H−NMRスペクトルを、400MHzにてD2Oにおいて記録した。図1および図2に示されるようなこれらのスペクトルは、NRRL登録番号B−30087からの殺真菌代謝産物は、ツウィッターマイシンAと異なることを示す。
【0110】
NRRL登録番号B−30087からの殺真菌代謝産物はまた、1H−NMRにより−体外毒素と区別され得る。−体外毒素の1H−NMRスペクトルは、Analytical Chemistry of Bacillus thuringiensis、L.A.HickleおよびW.L.Fitch編、ACS Symposium Series 432、131頁(1990)に示されるように、5ppmを超える7つの共鳴を有する。対照的に、図1は、NRRL登録番号B−30087サンプルについて、5ppmを超える陽子共鳴は出現しないことを示す。
【0111】
(実施例8)
(エンハンサーの精製)
エンハンサーを、以下のようにB−30087ブロス全体から半精製した。これは、アニオン交換樹脂、アセトニトリル沈殿およびサイズ排除クロマトグラフィーでの435mLブロス全体の処理によって、半精製した。このブロス全体を遠心分離して細胞を除去し、そして14.5gアニオン樹脂(AG1−X8、100〜200メッシュ、アセテート形態)を上清に添加し、そして混合物を1分間振盪した。これを5000rpmにて20分間遠心分離し、そして上清をデカントし、そして次の工程にて使用した。アセトニトリルを上清に添加して、50%溶液を得、そしてこれを1分間振盪し、そして5000rpmで20分間遠心分離した。下部の暗褐色層が、Bacillus thuringiensisエンハンサーを含んだ。
【0112】
上記からのこの褐色の層を、さらにサイズ排除クロマトグラフィーによって二工程で精製した。最初に、130gのP−2樹脂(BioRad)をカラム2.5cm×80cmを充填するためにミリQ脱イオン水で膨潤させた。褐色の層を、約4×、回転エバポレーターを使用して濃縮し、15mlの濃縮物をP2カラムに置いた。このカラムを、重力下でMQ水を用いて溶出し、そして10分の画分を12時間集めた(280nmでのUV検出、吸収範囲2.0、10mV)。画分26〜28のさらなる精製を、回転エバポレーターを使用して画分を3×まで濃縮し、そしてこれらをもとのP2カラムに適用することによって行った。カラムをMQ水を用いて溶出した。10分の画分を最初の80分間集め、次いで、2分の画分を次の2時間集めた。Bacillus thuringiensisエンハンサー活性は、画分16〜20で溶出した(220nmでのUV検出、吸収範囲2.0、10mV)。
【0113】
(実施例9)
エンハンサーの化学的特徴は、ツヴィッターマイシンAとは異なる。
【0114】
本発明のエンハンサーは、キャピラリー電気泳動においてツヴィッターマイシンAとは異なることが示された。B−30087のブロス全体は、ダイズ粉、ブドウ糖、酵母抽出物、KH2PO4、K2HPO4、NaClおよびMgSO4×7H2Oを含むBacillus培養培地で増殖された。画線培養を使用して250ml振盪フラスコに播種した。フラスコを210rpm、30℃、4日間振盪した。Bacillus thuringiensis B−30087ブロス全体を、精製したツヴィッターマイシンAを加え、キャピラリー電気泳動(CE)を行った。30μLのB−30087ブロス全体を、10μLツヴィッターマイシンAを加えた。B−30087ブロス全体(図3A)、B−30087ブロス全体およびツヴィッターマイシンA(図3B)ならびにツヴィッターマイシンAのみ(図3C)を、pH5.8のリン酸ナトリウム緩衝液を使用してCEで電気泳動を行った。CEの電気泳動図が図4に示される。
【0115】
ツヴィッターマイシンAおよびB−30087半精製エンハンサーの1H−NMRスペクトルを、D2O中、400MHzで記録した。スペクトルは、エンハンサーがツヴィッターマイシンAとは異なることを示す。
【0116】
(実施例10)
Bacillus thuringiensisを用いる殺虫性増強の決定
B.thuringiensis増強を、シロイチモンジヨトウ(beet army worm)(Spodoptera exigua)相乗アッセイにおける試験によって、B.pumilus、NRRL登録番号B−30087のブロス全体を使用して示した。アッセイを96ウェルマイクロプレートで行った。各ウェルは固体寒天基質を含んだ。20μLのB−30087ブロス全体を、バイオアッセイにおいて、B.thuringiensis、Javelin(0.25〜1.50μg/ウェル)の市販の調製物を用いて試験した。Javelin濃縮物のみの一連の希釈物を、同様に行った。
【0117】
殺虫活性をアッセイするために、寒天基質を、Marroneら、(1985)、J.Econ.Entomol.78:290−293に従ってマイクロプレートのウェルに対して調製した。脱イオン水を、ネガティブコントロールとして使用した。試験サンプルまたはコントロールの2つの複製を各アッセイのために使用した。次いで、プレートを換気フード内におき、約2〜3時間乾燥させた。
【0118】
1〜3匹のSpodoptera exiguaの第1齢(first instar)幼虫を各ウェルに加えた。マイクロプレートをMylar(登録商標)のような気密な物質を用いて密封し、そして各ウェルをピン圧力によって通気した。プレートを27℃で7日間までインキュベートした。
【0119】
インキュベーション後、ウェルを、新生児死亡率または幼虫の発達の程度に注意することによってスコア付した。死亡した幼虫の数を記録した。発育阻止された幼虫を1〜4の評点でスコア付した。発育阻止スコアは、以下である:4=コントロールサイズ;3=コントロールサイズの75%;2=コントロールサイズの50%;1=コントロールサイズの25%。結果を以下の表9に要約する。
【0120】
【表9】

第2の試験を、上記手順を使用して行った。結果を以下の表10に要約する。
【0121】
【表10】

半精製画分の殺虫増強性質を決定するために、サンプルを上記にように、0.1μg/ウェルJavelinを使用して試験し、そして40μl/ウェルの画分を試験した。結果を以下の表11に示す。
【0122】
【表11】

(実施例11)
B.pumilus(B−30087)およびB.subtilis(B−21661)を殺真菌剤として一緒に使用した。
【0123】
B.pumilus、NRRL B−30087の菌株を、B.subtilis、NRRL B−21661を用いて試験し、一緒に使用した場合、それぞれの菌株が単独で使用された場合よりも殺真菌効果が大きいか否かを決定した。各菌株を、10リットルまたは5,000リットルの発酵槽において、ダイズ粉ベースの培地中で約50時間増殖させた。各菌株を、コショウ上のBotrytis cinerea灰色カビ菌、およびBrassica上のPeronospora parasiticaべと病菌に対するブロス培養物全体として試験した。ブロス全体を、1×、1/2×および1/8×で試験した。次いで、2つの菌株を、1/2×、1/4×、および1/8×にて互いに種々の組み合わせで試験した。水チェック(コントロール)および化学殺真菌剤(20ppmのBREAK(登録商標))もまた比較のために試験した。植物を0〜5のスケールに基づいてスコア付した(ここで、5=100%疾患、制御なし;および0=100%制御、疾患なし)。この結果は以下の表12に示される。
【0124】
【表12】

Botrytis cinerea試験結果は、菌株が単独で使用される場合と比較した、その菌株が組み合わせて使用される場合の統計的な差を示す。例えば、B−21661 1/4×およびB−30087 1/2×についてのスコア0.7は、単独で使用されたB−21661 1/4×についてのスコア1.2とは統計的に異なる。また、B−21661 1/8×およびB−30087 1/2×のスコア1.4は、B−21661 1/8×のみについてのスコア1.7またはB−30087 1/2×のみについてのスコア2.3とは統計的に異なる。一緒のスコアは、単独で使用される各菌株についての予期される平均よりも低い。これは、殺菌剤としての効力の増加について一緒に菌株を使用することの相乗効果を示す。
【0125】
Peronospora parasitica試験結果は、B−21661 1/8×およびB−30087 1/2×の組み合わせについてのスコアが、添加効果から予期されるよりもはるかに良いことを示す。スコア2.05は、菌株の組合せからの添加効果のみが存在する場合、予期される。しかし、実際のスコアは、0.3であり、これは、組み合わせて菌株を使用することによる明確な相乗効果が存在することを示す。他のスコアもまた、予期される結果よりも良いことを示し、例えば、B−21661 1/4×およびB−30087 1/4×が、スコア0.5を有し、これは、個々の菌株の添加効果のみから予想される(2.35の推定されるスコア)よりもずっと良い。この同じ相乗作用はまた、B−21661 1/2×およびB−30087 1/2×(スコア0.3)、B−21661 1/2×およびB−30087 1/4×(スコア0.3)、ならびにB−21661 1/2×およびB−30087 1/8×(スコア0.5)の組み合わせにおいて示される。これらの試験は、菌株を組み合わせて使用する場合、相乗効果が存在し、そして予期されない効果が存在することを示す。
【0126】
本発明が上記実施形態とともに記載されているが、先の記載および実施例は、例示を意図し、本発明の範囲を限定しないことが理解される。本発明の範囲内の他の局面、利点および改変は、本発明が関係する当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−200765(P2010−200765A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118742(P2010−118742)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【分割の表示】特願2000−608723(P2000−608723)の分割
【原出願日】平成12年3月21日(2000.3.21)
【出願人】(500281006)アグラクエスト インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】