説明

植物コミュニケーション装置

【課題】 植物とのコミュニケーションを、確実かつ実用的に実現可能とする。
【解決手段】 植物10,用土20,容器30のいずれかに取り付けられた第一電極40と、この第一電極40に高周波電圧を印加する高周波電源50と、この高周波電源50の接地側を接地する第二電極60と、この第二電極60と高周波電源50との間に接続された検出手段70aと、負荷90を動作させる負荷制御手段80とを備え、検出手段70aは、人体が植物10に接近又は接触した場合としない場合との戻り電流の変化を検出し、負荷制御手段80は、人体が植物10に接近又は接触した場合に負荷90を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が植物に直接触れるなどしてコミュニケーションを図るための植物コミュニケーション装置に関し、特に、その人体の接近又は接触がスイッチング動作となって負荷に所定の動作を行わせ、これにより、あたかも植物が人間の行為に反応しているかのような演出を実現可能とする植物コミュニケーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建造物が乱立する都市空間にあって、歩道や公開空地などに植えられた植物が人間に与える影響は、想像以上に大きなものがある。例えば、癒しの効果があることは従来から注目されてきたところであり、植物を見ただけで情緒が安定して穏やかとなったり、恐れや怒りが和らげられたり、さらには疲労が取れ易くなるといった精神的効果がある。また、このような変化により血圧の低下や筋肉の弛緩、脳波上のアルファ波の増加、心拍数の減少などがみられ、心身をリラックスさせるといった効果もある。
このような精神的、身体的効果を期待して、各家庭やオフィス、店舗などでは、近年、植物を積極的に取り入れる動きが見られる。
【0003】
ところで、そうした精神的、身体的効果は、人間の感覚のうち視覚を通して受けるものである。すなわち、植物を見ることでその効果が得られる。
ただし、人間は、親しみを感じたものに対しては、単に見るだけでなく、触れることでコミュニケーションを図ろうとする。つまり、視覚だけでなく触覚を通して相手の存在を確認しようとする。
ところが、その対象が植物の場合は、一部を除き、外部からの刺激に反応して自らが外観を変化させるということをしない。つまり、植物は、人間の手で動かされることはあっても、自らの力で反応を示すことはしない。このため、人間から起こしたコミュニケーションは一方的なものとなり、この接触による精神的、身体的効果は得られないものとされてきた。
【0004】
そこで、植物が外部刺激に反応して生じた変化を、人間の感覚により感知可能とし、植物とのコミュニケーションを図ることができる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この技術は、植物が外部から刺激を受けるとその内部で生体電位が変化することに着目し、その生体電位の変化を検出し、これをトリガとしてLEDやブザーなどの負荷を動作させるものである。
このような技術によれば、人間による植物への接触が外部刺激となって、植物内の生体電位が変化し、これにもとづき負荷に所定の動作を行わせることができる。このため、人間は、自ら触れたことに起因して生じた植物の変化である負荷の動作を、視覚や聴覚等によって捉え、これにより植物とのコミュニケーションを図ることができる。
【特許文献1】特開平9−271263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術は、いわゆる当業者が反復継続して目的とする技術効果をあげることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されておらず、したがって未完成発明と言わざるを得ない。
この点を確認・立証するため、出願人は、特許文献1に開示の内容にしたがって「植物との対話システム」の実施を試みた。
具体的には、次の手順で行った。まず、鉢植えの植物を用意し、その茎の下部と中程に電極を取り付け、それら電極間に生じる電位の測定を試みた。高増幅率の差動増幅器を用い、商用交流電力100Vラインからの誘導を軽減し、その信号をオシロスコープで観察した。そして、この観察が行われている間、人が植物に接近したり遠のいたり、あるいは手を触れたり離したりすることを繰り返し行った。
その結果、オシロスコープで観察された波形は、商用交流電源の50Hzの波形のみで、生体電位らしき信号は観察されなかった。
【0006】
この原因としては、次のことが考えられる。
交流電源からの誘導は、植物全体の葉に起こっており、誘導電流iは、茎を伝わって流れ、鉢と地面との分布容量Ceを介して地面に落ちるが、その茎には電気抵抗rがあるので、両電極間にはe=irの誘導電圧が発生する。これにより、差動増幅器を用いた効果がなくなってしまう。
【0007】
また、二個の電極の間には2〜3の節があり、そこには葉も2〜3枚ついているので、上部の電極に誘導する電位よりも、下部の電極に誘導する電位の方が大きくなり、その差が増幅器の入力となって増幅され、交流電源の波形しか観察されなくなってしまう。
【0008】
ここで、電磁気的な誘導を防止するために、良好な導電性の金属でシステム全体を覆う、すなわちシールドを施すことが考えられる。そうすれば、誘導電流は、シールドの外側を流れて地面に流れるので、植物には誘導されない。
しかし、これではそのシールドに邪魔されて人間が植物に触れることができず、しかも、内部が見えないため、コミュニケーションを図るという目的を達成できない。
【0009】
このため、特許文献1に記載の技術では、人間が植物に接触して仮に生体電位が変化したとしても、室内の開放空間において交流電源からの誘導電流に妨害されることから、それを観測することは非常に困難であるという結論に至った。
この結論は、すなわち特許文献1に記載の技術が、解決手段(発明の構成要件)を掲げているものの、その手段のみをもってしては、目的とする技術効果をあげることができないことを意味するものである。また、その結論は、示された解決手段のみでは、明らかに目的を達成できないことを意味するものである。
したがって、植物とのコミュニケーションを図るという目的を確実に実現させるためには、特許文献1に開示されていない新たな技術を提供することが求められていた。
【0010】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、確実かつ実用的に、植物とのコミュニケーションを実現可能とする植物コミュニケーション装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の植物コミュニケーション装置は、植物の内部又は外部に生じる電気的変化を検出する検出手段と、電気的変化が検出されると負荷に所定の動作をさせる負荷制御手段とを備えた植物コミュニケーション装置であって、検出手段は、人体が植物に接近又は接触したときに植物の内部又は外部に生じる電気的変化を検出する構成としてある。
【0012】
植物コミュニケーション装置をこのような構成とすると、人体が植物に接近又は接触したとき、検出手段は、その接近又は接触にもとづいて生じた電気的変化を検出でき、負荷制御手段は、その電気的変化が検出されると負荷を動作させることができる。
ここで、人間にとっては、負荷が動作したことは、自ら植物に近づいたりあるいは触れたりしたことに起因したものと認識できる。つまり、人間は、接近又は接触という自身の行為に植物が反応してくれたものとして捉えることができる。これは、人間による接近又は接触という意思表示が一方的なものに終わらず、植物もその意思表示に呼応して負荷を動作させ、自らも意思表示したものと解することができる。したがって、人間と植物との間で互いに意思表示し合うというコミュニケーションを、確実かつ実用的に実現することができる。
【0013】
また、本発明の植物コミュニケーション装置は、植物,用土,容器のうちの一又は二以上に取り付けられた第一電極と、この第一電極に交流電圧を与える交流電源とを備え、検出手段は、人体が植物に接近又は接触したときに、植物の内部又は近傍、もしくは、人体の内部又は近傍に生じた電気的変化を検出する構成としてある。
【0014】
植物コミュニケーション装置をこのような構成とすれば、植物,人体,地面,交流電源などの各間の静電容量が人体と植物との接触・非接触あるいは接近・非接近にもとづき変化し、この変化にもとづきそれら各間に流れる静電誘導電流も変化することを利用して、負荷の動作を制御することができる。これにより、人間が植物に触れることで負荷を動作させることが可能となり、人間と植物とのコミュニケーションを確実かつ実用的に実現できる。
【0015】
なお、電気的変化の検出には、植物の内部又は近傍もしくは人体の内部又は近傍に生じた電気的変化を直接検出する場合と、間接的に検出する場合とが含まれる。
ここで、直接検出する場合とは、例えば上述の例でいえば静電誘導電流の変化を検出する場合をいう。これは、静電誘導電流の変化が、人体の内部又は近傍において生じる電気的な変化だからである。
一方、間接的に検出する場合とは、例えば第二電極を介して地面から高周波電源へ流れ込む戻り電流を検出する場合をいう。これは、戻り電流が、人体又は植物の近傍で静電容量という電気的な量が変化したことにともない変化する電気的な量だからである。
【0016】
また、本発明の植物コミュニケーション装置は、交流電源の接地側端子を接地する第二電極を備え、検出手段は、交流電源と第二電極との間に接続されるとともに、交流電源と第二電極との間に流れる電流が、人体と植物との接近又は接触にもとづき変化することを検出する構成としてある。
【0017】
植物コミュニケーション装置をこのような構成とすると、第二電極から交流電源へ流れる電流が、人体と植物との接触・非接触あるいは接近・非接近により変化するため、これを利用して、負荷を動作させることができる。これにより、人間が植物に触れると、これに植物が呼応して負荷を動作させるというコミュニケーションを、確実かつ実用的に実現できる。
なお、本発明における第二電極は、交流電源の接地側端子を直接接地するものと、検出手段などを介在して接地する場合とを含む。
【0018】
また、本発明の植物コミュニケーション装置は、検出手段が、交流電源と第二電極との間に流れる電流を検出する検出用抵抗器と、電流の検出により検出用抵抗器で生じた電圧を整流するダイオードと、このダイオードで整流された電圧を増幅し、増幅電圧として出力する増幅器と、この増幅器からの増幅電圧と所定の電圧値を示す閾値電圧とを比較して、増幅電圧が閾値電圧よりも高いときに制御信号を出力する電圧比較器とを有し、負荷制御手段が、電圧比較器からの制御信号にもとづいて、負荷に所定の動作をさせる構成としてある。
【0019】
植物コミュニケーション装置をこのような構成とすれば、第二電極と交流電源との間に流れる電流の変化を検出し、この検出にもとづき負荷を確実に動作させることができる。
【0020】
また、本発明の植物コミュニケーション装置は、検出手段が、ブリッジ回路と、変動検出回路とを有し、ブリッジ回路が、第一辺と、この第一辺に隣接する第二辺と、この第二辺に隣接する第三辺と、この第三辺に隣接する第四辺とを有し、交流電源が、ブリッジ回路の第一辺と第二辺との接続点と、第三辺と第四辺との接続点との間に接続され、第一辺が、容器の対地静電容量を含んでおり、変動検出回路が、ブリッジ回路の第二辺と第三辺との接続点に生じる電圧の変動を検出する構成としてある。
【0021】
植物コミュニケーション装置をこのような構成とすれば、検出手段がブリッジ回路で構成された場合でも、人体が植物に接近又は接触することで生じた電気的変化を検出し、この検出にもとづき負荷を動作させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、人体が植物に接近又は接触したときに、検出手段は、その接近又は接触にもとづいて生じた電気的変化を検出でき、負荷制御手段は、その電気的変化が検出されると負荷を動作させることができる。このため、人間による「触れる」という意思表示が一方的なものに終わらず、植物もその意思表示に呼応し、負荷を動作させるという手法で意思表示したものと解することができる。したがって、人間と植物との間で互いに意思表示し合うというコミュニケーションを、確実かつ実用的に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る植物コミュニケーション装置の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
[第一実施形態]
まず、本発明の植物コミュニケーション装置の第一実施形態について、図1を参照して説明する。
同図は、本実施形態の植物コミュニケーション装置の構成を示すブロック図である。
【0025】
同図に示すように、植物コミュニケーション装置1aは、植物10と、用土20と、容器30と、第一電極40と、高周波電源50と、第二電極60と、検出手段70aと、負荷制御手段80と、負荷90とを備えている。
植物10は、従来公知の任意好適な植物を用いることができ、特定の種類に限定されるものではない。
用土20とは、植物10を植えるための土をいう。この用土20には、例えば、培養土や改良用土など、栽培する植物10に合わせて土壌や肥料が調合された土を含む。さらに、用土20には、培養土等に配合される赤玉土、鹿沼土、腐葉土、パーライトなどが含まれる。この用土20についても、特定の種類に限定されるものではない。
【0026】
容器30は、用土20を入れる器であって、具体的には、例えば鉢(ポット)やプランタなどが含まれる。この容器30には、用土20とともに石や砂利などを入れることができ、さらに、そこに植物10が植えられる。
この容器30の形状は、特に限定されるものではない。
また、材質についても、炭,素焼き,プラスチック,陶器,ガラス,紙,石,木など任意の材質で形成することができる。
なお、容器30は、図1に示すように、テーブル上に乗せるとともに、プラスチック製の皿などを敷き床面に対して充分な電気的絶縁を保ち、床面から離した位置に設置するのが望ましい。
【0027】
第一電極40は、植物10,用土20,容器30のうちの一つ又は二つ以上に取り付けられており、高周波電源50の電圧印加側端子に接続されている。この第一電極40は、例えば、導電性材料で形成することができる。
高周波電源(交流電源)50は、第一電極40に高周波電圧を印加する。この高周波電源50は、例えば周波数50kHz、電圧10Vの高周波を出力することができる。ここで、周波数50kHzとしたのは、商用電源の50Hzからの干渉をなくすために、それよりも充分に高い周波数としたためである。
【0028】
第二電極60は、床面に置かれたアース板61(例えば、アルミ箔など)に取り付けられている。そして、第二電極60は、検出手段70aを介して高周波電源50の接地側端子に接続されている。
アース板61は、わざわざ床面に設置しなくても電流検出手段70a、負荷制御手段80および負荷90の電源装置の内部静電容量を介して地面に接地されることを応用してもよい。
【0029】
検出手段70aは、高周波電源50の接地側端子と第二電極60との間に接続されており、それら高周波電源50と第二電極60との間で生ずる電気的変化を検出する。
具体的には、アース板61と地面の間の静電容量Cgを介して地面から高周波電源50へ向かって流れ込む戻り電流を検出する。
【0030】
この検出手段70aの具体的な回路構成を図2に示す。
同図に示すように、検出手段70aは、電流検出用抵抗器R1と、検出用ダイオードD1と、小容量コンデンサC1と、ゲイン調整用可変抵抗器R2と、増幅器A1と、電圧比較器A2とを有している。
【0031】
ここで、電流検出用抵抗器(検出用抵抗器)R1は、戻り電流を検出する。
この検出により電流検出用抵抗器R1の両端に発生する電圧VR1は、図3に示すようになる。すなわち、人体が植物10に接近又は接触していないときは、小さい振幅の波形となり(同図(a))、一方、人体が植物10に接近又は接触すると、大きい振幅の波形となる(同図(b))。
この電流検出用抵抗器R1の抵抗値は、例えば、10kΩとすることができる。
【0032】
検出用ダイオードD1は、電流検出用抵抗器R1で検出された電圧VR1を整流する。この検出用ダイオードD1の両端の電圧VD1は、図4に示すようになる。すなわち、人体が植物10に接近又は接触したときの電圧(同図(b/2))が、接近又は接触していないときの電圧(同図(a/2))に比べて大きくなる。
なお、本実施形態においては、図3及び図4に示したように、検出用ダイオードD1にて電圧VR1を整流する構成としてあるが、その整流は半波整流に限るものではない。すなわち、ここでは、検出した交流信号を直流に変換することが目的であるため、整流の手段は、例えば全波整流、倍電圧整流、ブリッジ整流などであってもよい。
【0033】
結合用の小容量コンデンサC1は、高周波のみを通すコンデンサであって、検出用ダイオードD1で整流して得られた直流成分を電流検出用抵抗器R1に逆戻りするのを阻止するとともに、電圧VD1を平滑化する。
【0034】
ゲイン調整用可変抵抗器R2は、増幅器A1のゲインを調整する。このゲイン調整用可変抵抗器R2を備えることで、増幅器A1から出力された電圧VA1における(a/2)’と(b/2)’との間に基準電圧(閾値電圧)Vsがくるように調整することができる(図5参照)。
増幅器A1は、ゲイン調整用可変抵抗器R2で調整されたゲインにしたがって、電圧VD1を増幅し、増幅電圧VA1として出力する。
なお、基準電圧Vsは、人体が植物10に接近又は接触していないときの増幅電圧VA1を記憶保持したものを利用してもよい。
【0035】
電圧比較器A2は、基準電圧Vsと、増幅器A1からの増幅電圧VA1とを比較する。これら比較される電圧の波形を図5に示す。
比較の結果、増幅電圧VA1が基準電圧Vsよりも高いとき、すなわち増幅電圧VA1が(b/2)’のときは、電圧比較器A2から制御信号VA2が出力される。
一方、増幅電圧VA1が基準電圧Vsよりも低いとき、すなわち増幅電圧VA1が(a/2)’のときは、電圧比較器A2から制御信号VA2は出力されない。
【0036】
負荷制御手段80は、検出手段70aからの制御信号にもとづいて負荷90の動作を制御する手段であって、リレードライバ81と、リレー82とを有している。
リレードライバ81は、電圧比較器A2からの制御信号VA2にもとづいてリレー72の動作時間を調整する。
このリレードライバ81の動作を図6に示す。同図に示すように、リレードライバ81は、制御信号VA2を受けると動作制御信号の出力を開始し(同図(s))、所定時間(T)が経過するまで、その動作制御信号を出力し続ける。そして、所定時間Tの経過後(同図(e))、動作制御信号の出力を停止する。
リレー82は、リレードライバ81から動作制御信号が送られてくる間、電源からの電圧を負荷90へ印加する。
【0037】
負荷90は、所定の電圧を印加することで一定の動作をする電気部品である。
この負荷90は、例えば、可聴出力や可視出力などの人間の五感で感知可能な出力を行うものを使用できる。
ここで、可聴出力の具体例としては、例えば、植物10からのメッセージを模した音声、人間や動物の声,風の音,水の音等を記録した記憶媒体によるもの、電子技術による合成音声によるもの、楽器の音や音楽によるもの、ブザーやチャイムによるもの、電子オルゴールによるもの、SLの音や船の汽笛等の擬音によるものなどが挙げられる。
【0038】
一方、可視出力の具体例としては、例えば、発光ダイオード,豆電球等の発光体を適宜並べておき、これらの全部又は一部を点灯又は点滅させるもの、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの表示装置に静止画や動画を表示させるものなどが挙げられる。
さらに、これら負荷90は、植物と一体的に設置することが望ましい。例えば、図7に示すように、LEDなどの発光体がほぼ等間隔に配置された電飾コードを植物10のほぼ全体に行き渡るように枝や葉などに取り付けてこれを点滅させたり、植物10の幹などにスピーカを取り付けて音声を出力させたりすることができる。
【0039】
次に、本実施形態の植物コミュニケーション装置の動作について、図1を参照して説明する。
なお、同図に示すように、植物10(葉)と人体(手)との間の静電容量をChl、容器30と人体(胴体)との間の静電容量をCsb、容器30とアース板61との間の静電容量をCsg、人体と地面(GND)との間の静電容量をCbg、地面とアース板61との間の静電容量をCgとする。
【0040】
高周波電源50が起動され、この高周波電源50から第一電極40に高周波電圧Vhfが印加される。
人体が植物10に接近又は接触していない状態では、検出手段70aにて、ベース電圧(図3の電圧a)が検出される。
【0041】
その後、人体が植物10に接近又は接触すると、その植物10(葉)と人体(手)との間の静電容量Chlを介して人体に静電誘導電流が流れ、これが、さらに人体と地面との静電容量Cbgを通して地面に流れ込む。
そして、アース板61と地面との間の静電容量Cgを介して地面から高周波電源50へ戻り電流が流れ込む。
【0042】
検出手段70aの電流検出用抵抗器R1では、戻り電流が検出され、電圧VR1が発生する。その電圧VR1は、人体が植物10に接近又は接触していない状態では、図3で電圧aとして示したように小さい振幅の波形となり、一方、人体が植物10に接近又は接触している状態では、図3で電圧bとして示したように大きい振幅の波形となる。すなわち、電圧bは、電圧aよりも大きい電圧値となる。
そのVR1は、検出用ダイオードD1で整流され、小容量コンデンサC1で平滑される(図4参照)。整流された後の電圧VD1は、ゲイン調整用可変抵抗器R2で調整されたゲインにもとづき、増幅器A1で増幅され、増幅電圧VA1として出力される。
【0043】
電圧比較器A2にて、増幅器A1からの増幅電圧VA1と基準電圧Vsとが比較される(図5参照)。ここで、増幅電圧VA1が基準電圧Vsよりも高い値のときは、電圧比較器A2から制御信号VA2が出力される。一方、増幅電圧VA1が基準電圧Vsよりも低い値のときは、電圧比較器A2から制御信号VA2は出力されない。
【0044】
電圧比較器A2から出力された制御信号VA2は、負荷制御手段80のリレードライバ81へ送られ、その制御信号VA2の入力とともに動作制御信号がリレー82へ送られる。
リレー82では、リレードライバ81から動作制御信号が送られてくる間(図6のT)、電源の電圧が負荷90に印加される。これにより、負荷90が所定の動作を行う。
【0045】
以上のように、本実施形態の植物コミュニケーション装置は、人体が植物に接近又は接触すると、第二電極から高周波電源に流れ込む戻り電流の値が変化することを利用して、負荷の動作をON/OFF制御することができる。
ここで、戻り電流が変化するのは、人体が植物に接近又は接触している場合としていない場合とで、静電誘導電流(戻り電流)が流れるための回路構成が相違するからである。
【0046】
例えば、人体が植物に接近又は接触していない場合の回路構成は、高周波電源50−第一電極40−容器30−静電容量Csg−アース板61−第二電極60−検出手段70a−高周波電源50となる。
一方、人体が植物に接近又は接触している場合の回路構成は、上述の回路構成に、さらに、第一電極40−植物10−静電容量Chl−人体−静電容量Cbg−静電容量Cg−アース板61という経路が加わった回路構成となる。なお、この場合は、静電容量Csbも影響する。
【0047】
このように静電誘導電流(戻り電流)が流れるための回路構成がそれぞれ相違することから、検出手段では、人体が植物に接近又は接触している場合としていない場合とで異なった値の戻り電流を検出できる。これにより、人間が植物に接近又は接触したことを、検出手段が確実に検出して負荷を動作させることができる。
したがって、本実施形態の植物コミュニケーション装置を用いることで、人間と植物との間のコミュニケーションを確実かつ実用的に実現できる。
【0048】
[第二実施形態]
次に、本発明の植物コミュニケーション装置の第二実施形態について、図8を参照して説明する。
同図は、本実施形態の植物コミュニケーション装置の構成を示す回路図である。
本実施形態は、第一実施形態と比較して、検出手段の構成が相違する。すなわち、第一実施形態では、検出用抵抗器により戻り電流を検出し、検出用ダイオードにより検出電圧を整流し、増幅器により増幅し、電圧比較器により戻り電流が変化したことを検出して、リレー等により負荷を動作させる構成としたのに対し、本実施形態では、ブリッジ回路により戻り電流の変化を検出する構成とする。他の構成要素は第一実施形態と同様である。
したがって、図8において、図1等と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0049】
図8に示すように、本実施形態の植物コミュニケーション装置1bは、植物10と、用土20と、容器30と、第一電極40と、検出手段70bと、負荷制御手段80と、負荷90とを備えている。
ここで、検出手段70bは、ブリッジ回路72(CR交流ブリッジ回路)を有している。
【0050】
ブリッジ回路72は、容器30の対地静電容量であるCsが組み込まれた第一辺、抵抗Rb1が接続された第二辺、抵抗Rb2が接続された第三辺、固定のスタンダード容量であるコンデンサCb1が接続された第四辺を有している。
このブリッジ回路72の平衡条件は、Cb1・Rb2=Cs・Rb1となる。
なお、植物の個数や大きさによる変化があるため、抵抗Rb1又はRb2のいずれかを可変抵抗器で構成して平衡させ、ベース電流を抑制することができる。
【0051】
また、ブリッジ回路72においては、第一辺と第二辺との接続点をa12、第二辺と第三辺との接続点をa23、第三辺と第四辺との接続点をa342、第四辺と第一辺との接続点をa41とする。
さらに、点a12と点a34との間には、交流電源Sが接続されている。
そして、点a12は、第一電極40に接続され、点a23は、負荷制御手段80に接続され、点41は、接地されている。
【0052】
負荷制御手段(変動検出回路)80は、ブリッジ回路72の第二辺と第三辺との接続点である点a23に生じる電圧eの変動を検出する。
この負荷制御手段80の構成は、第一実施形態における負荷制御手段80の構成と同様とすることができる。すなわち、第一実施形態における制御信号VA2が電圧eに相当し、その電圧eが変動(発生)してこの電圧eが入力されるとリレードライバ81が動作制御信号をリレー82へ送る。
リレー82では、リレードライバ81から動作制御信号が送られてくる間(図6のT)、電源の電圧が負荷90に印加される。これにより、負荷90が所定の動作を行う。
【0053】
次に、本実施形態の植物コミュニケーション装置の動作について、図8を参照して説明する。
人体が植物10に接近又は接触していないときは、ブリッジ回路72は平衡状態となり、点a23では電圧eは0となる。このため、負荷制御手段80は動作せず、負荷90も動作しない。
【0054】
一方、人体が植物10に接近又は接触したときは、人体(手)と植物10(葉)との間の静電容量ChがCsに加算され、ブリッジ回路72の平衡状態が崩れる。これにより、電圧eが不平衡電圧として現われ、これが接触検出電圧となり、負荷制御手段80の制御により負荷90が動作する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の植物コミュニケーション装置によれば、検出手段をブリッジ回路で構成した場合でも、人体が植物に接近又は接触したことを確実に検出して負荷を動作させることができる。
特に、本実施形態の植物コミュニケーション装置は、検出手段をブリッジ回路で構成したため、ベース電流を含まない変化分すなわち手の接近接触だけによる電圧を抽出可能となり、電源電圧や周囲温度の変化によるスイッチング動作点の僅かな変化は無視し得るようになる。
【0056】
以上、本発明の植物コミュニケーション装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る植物コミュニケーション装置は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、植物、第一電極、第二電極、高周波電源、検出手段、負荷制御手段、負荷等をそれぞれ一つずつ備えた構成としてあるが、それらは一つずつに限るものではなく、それぞれ複数備えることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、人体が植物に接近又は接触することで負荷を動作させる発明であるため、負荷を電飾(LEDなど)とした場合の植物の装飾器具、負荷を音声出力装置とした場合の出力制御装置、負荷をモータとした場合の駆動制御装置などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第一実施形態の植物コミュニケーション装置の構成を示す概略図である。
【図2】第一実施形態の植物コミュニケーション装置における検出手段の構成を示す回路図である。
【図3】検出手段の電流検出用抵抗器において戻り電流が検出されたときの波形を示す波形図である。
【図4】電流検出用抵抗器で発生した電圧を整流した波形を示す波形図である。
【図5】図4に示した電圧を増幅した波形を示す波形図である。
【図6】リレードライバから出力される信号の経時変化を示す波形図である。
【図7】負荷が取り付けられた植物の状態を示す外観正面図である。
【図8】本発明の第二実施形態の植物コミュニケーション装置の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0059】
1a、1b 植物コミュニケーション装置
10 植物
20 用土
30 容器
40 第一電極
50 高周波電源
60 第二電極
70a、70b 検出手段
72 ブリッジ回路
80 負荷制御手段
81 リレードライバ
82 リレー
90 負荷
R1 電流検出用抵抗器
D1 検出用ダイオード
A1 増幅器
A2 電圧比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の内部又は外部に生じる電気的変化を検出する検出手段と、前記電気的変化が検出されると負荷に所定の動作をさせる負荷制御手段とを備えた植物コミュニケーション装置であって、
前記検出手段は、人体が前記植物に接近又は接触したときに植物の内部又は外部に生じる電気的変化を検出する
ことを特徴とする植物コミュニケーション装置。
【請求項2】
植物,用土,容器のうちの一又は二以上に取り付けられた第一電極と、
この第一電極に交流電圧を与える交流電源とを備え、
前記検出手段は、人体が前記植物に接近又は接触したときに、前記植物の内部又は近傍、もしくは、前記人体の内部又は近傍に生じた電気的変化を検出する
ことを特徴とする請求項1記載の植物コミュニケーション装置。
【請求項3】
前記交流電源の接地側端子を接地する第二電極を備え、
前記検出手段は、前記交流電源と前記第二電極との間に接続されるとともに、前記交流電源と前記第二電極との間に流れる電流が、前記人体と前記植物との接近又は接触にもとづき変化することを検出する
ことを特徴とする請求項2記載の植物コミュニケーション装置。
【請求項4】
前記検出手段が、
前記交流電源と前記第二電極との間に流れる電流を検出する検出用抵抗器と、
前記電流の検出により前記検出用抵抗器で生じた電圧を整流するダイオードと、
このダイオードで整流された電圧を増幅し、増幅電圧として出力する増幅器と、
この増幅器からの前記増幅電圧と所定の電圧値を示す閾値電圧とを比較して、前記増幅電圧が前記閾値電圧よりも高いときに制御信号を出力する電圧比較器とを有し、
前記負荷制御手段が、前記電圧比較器からの制御信号にもとづいて、前記負荷に所定の動作をさせる
ことを特徴とする請求項3記載の植物コミュニケーション装置。
【請求項5】
前記検出手段が、ブリッジ回路と、変動検出回路とを有し、
前記ブリッジ回路が、
第一辺と、この第一辺に隣接する第二辺と、この第二辺に隣接する第三辺と、この第三辺に隣接する第四辺とを有し、
前記交流電源が、
前記ブリッジ回路の第一辺と第二辺との接続点と、第三辺と第四辺との接続点との間に接続され、
前記第一辺が、前記容器の対地静電容量を含んでおり、
前記変動検出回路が、
前記ブリッジ回路の前記第二辺と前記第三辺との接続点に生じる電圧の変動を検出する
ことを特徴とする請求項2記載の植物コミュニケーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−110960(P2007−110960A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305366(P2005−305366)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【特許番号】特許第3833237号(P3833237)
【特許公報発行日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(598140607)株式会社竹中庭園緑化 (9)
【Fターム(参考)】