説明

植物体の栄養成分増強方法

【課題】
単子葉栽培植物、特に芽ネギの栄養成分の改良を行うことを課題とする。
【解決手段】
人工紫外線のUV−Bを、単子葉栽培植物の芽ネギに照射することにより、植物体中のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル消去活性を高めるアスコルビン酸やポリフェノールなどの機能性物質含量を増加させる栽培方法を提供すること、またこの方法で生産される芽ネギ、および生産された芽ネギを処理して得られる食品や医薬品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射により単子葉栽培植物、特に、芽ネギの栄養成分を増強する栽培方法、
栄養成分が増強された芽ネギおよびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
単子葉栽培植物の代表である芽ネギは、葉ネギを若取りしたものを総称し、スプラウトの1種である。スプラウトとは、一定の温度、光、栄養液がコントロールされた栽培施設で生育されている栽培野菜をいう。スプラウトの芽ネギは、古い時代から薬用植物として珍重されているネギの栄養成分を有し、日本人の食生活になじみの深いネギの食分野に広がりつつある。芽ネギの大きさは、葉長約10cm、径約2mmで、現在は、特に寿司のネタとして利用されることが多い。スプラウトが注目されるようになったのは、アメリカでブロッコリーの新芽に、ガン予防効果を持つというスルフォラファンが、多く含まれていると発表された後、ブロッコリーに限らずスプラウトには、発がん抑制効果や、抗酸化作用を有する物質など機能性物質が多く含まれていることが判明したからである。一般によく栽培されているスプラウトは、もやし、カイワレ大根、アルファルファ、ブロッコリー、クレス、レッドキャベツ、小松菜、マスタード、豆苗などがある。
【0003】
植物体内のビタミンやポリフェノール、ルチンなどの機能性物質を特徴的に増加させる方法は、すでに特許文献で報告されている。特許文献1には、大豆もやしに近紫外〜青色領域波長の光を照射することにより、含有ビタミンA、ビタミンEを増量させる方法が開示されており、特許文献2には、小松菜に対して、人工紫外線照射を1日5分間行うことで、機能性物質であるα−トコフェロールやビタミンCを増加させる栽培方法が開示され、特許文献3には、人工光源の青色光、赤色光及び遠赤色光の強度を調整することにより、小松菜、レタスのビタミンCやビタミンAを増加させる方法が開示されている。また、特許文献4には、植物に含まれるポリフェノールを増量させるために、通常の植物栽培の光量より5倍以上の光を照射して(光ストレスを与えて)、ベニバナ、ソバを栽培する方法が開示されており、特許文献5には、芽だし野菜(スプラウト)のブロッコリー、マスタード、ケール、レッドキャベツおよびダッタンソバに、赤外光、可視光、紫外光を組み合わせた人工光源を照射して、フェニル基含有アミノ酸を含む養分液との併用で、植物中のポリフェノール含量を増加させる方法が開示されている。さらに、特許文献6には、蕎麦のスプラウトに、複数のLED(光ダイオード)を調整して使用し、血管強化作用や血圧低下作用、抗酸化作用を有するルチンの含量を増加させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−103680号公報
【特許文献2】特開2004−305040号公報
【特許文献3】特開平8−205677号公報
【特許文献4】特開2003−009665号公報
【特許文献5】特開2006−20565号公報
【特許文献6】特開2005−151850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、芽ネギを初め、単子葉栽培植物の栄養成分の改良に関するものではない。本発明は、B領域紫外線(UV−B)を照射して、栄養成分中の機能性物質を増加させた単子葉栽培植物、特に芽ネギの栽培方法を提供すること、またこの方法で生産される芽ネギ、および生産された芽ネギを処理して得られる食品や医薬品を提供することをその主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、人工紫外線のUV−Bを、単子葉栽培植物の芽ネギに照射することにより、植物体中のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル消去活性を高めるアスコルビン酸やポリフェノールなどの機能性物質含量を増加させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(9)からなる。
【0007】
(1)単子葉栽培植物の栽培方法において、UV−B照射により、植物中の機能性物質含量を増加させることを特徴とする単子葉栽培植物の栽培方法。
【0008】
(2)単子葉栽培植物が芽ネギである上記(1)に記載の栽培方法
【0009】
(3)UV−B照射が、温度と光を制御されて生育した植物の播種後3〜30日のものに対し、12時間日長周期の明期に、3〜10分間を4〜8日間行うものである上記(1)または(2)のいずれかに記載の栽培方法。
【0010】
(4)UV−Bが、波長域280〜380nmで、かつ波長312mm付近にピークを有する光源由来のものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の栽培方法。
【0011】
(5)前記の機能性物質が、従来の植物と比較して、DPPHラジカル消去活性を1.1〜1.5倍高める抗酸化物質である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の栽培方法。
【0012】
(6)前記の抗酸化物質が、アスコルビン酸及び/またはポリフェノールである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の栽培方法。
【0013】
(7)前記の(1)〜(6)のいずれかに記載の方法により得られた芽ネギ。
【0014】
(8)前記の(1)〜(6)のいずれかに記載の方法により栽培された芽ネギを用いたことを特徴とする食品。
【0015】
(9)前記の(1)〜(6)のいずれかに記載の方法により栽培された芽ネギを用いたことを特徴とする医薬品。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、単子葉栽培植物、特に芽ネギ中のアスコルビン酸、ポリフェノールなどの抗酸化能を有する機能性物質含量を増加させることができ、さらに、芽ネギを用いた一般加工食品のほか、特定保健用食品や栄養機能食品などの保健機能食品、および漢方薬を含む医薬品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、単子葉栽培植物、特に芽ネギの栽培方法において、UV−Bを照射することにより、植物中の機能性物質含量を増加させることを特徴とする栽培方法よりなるものである。
【0018】
本発明で使用する単子葉栽培植物としては、芽ネギのほか、イネ科やユリ科に属するライムギ、ハトムギ、ラッキョウ、ノビル、アサツキなどがあげられる。
【0019】
本発明で使用する芽ネギは、播種後、温度、光が制御された施設で栽培されるものを用いる。設定される温度は、18〜30℃、好ましくは22〜28℃である。光源は、従来、植物の栽培施設で用いる蛍光灯や、白色灯、人工光源などを使用することができ、本発明のUV−B照射対象物として充分に生育することができる条件であればいずれを使用しても良い。また、発芽まで暗所で栽培し、発芽後、上記の光源照射下で生育させることもできる。これらの光源からの照射は、発芽後、12時間周期の明期と暗期を繰り返して行い、明期の光強度は、光合成有効光量子束密度として、10〜100μmole・m−2・s−1であり、好ましくは20〜90μmole・m−2・s−1である。この範囲を超す光強度の過度な強弱は、生育障害につながり、重量不足や葉の伸長不足となる。
【0020】
本発明で、使用するUV−Bは、波長域が280〜380nmで、かつ波長312nm付近にピークを有する紫外線であることが望ましいが、最も好ましいUV−Bは、波長域が280〜320nmで、かつ波長312nmにピークを有するものである。312nmに波長のピークを有する光源であれば、独自に作成したものや市販のものを使用することもできる。
【0021】
本発明で、UV−B照射を開始する芽ネギは、播種後、3〜30日のものを使用する。UV−B照射は、明期3〜9時間後に、芽ネギの上部10〜50cmの位置から照射する。その場合、UV−B単独を照射することもできるが、従来、植物の栽培施設で用いる蛍光灯や、白色灯、人工光源などを同時に使用することもできる。UV−B単独、あるいは他の光源と合わせた時の、芽ネギに照射する光合成有効光量子束密度としては、10〜100μmole・m−2・s−1であり、好ましくは、20〜90μmole・m−2・s−1である。また紫外線強度としては、0.1〜1.0mW・cm−2であり、好ましくは、0.15〜0.2mW・cm−2である。
【0022】
本発明の植物体に生産させる機能性物質としては、アスコルビン酸やポリフェノール、ビタミンEなど、DPPHラジカル消去活性を高める物質、すなわち抗酸化能を有する物質である。
【0023】
アスコルビン酸は、ビタミンCとよばれ、ヒトの生体内では作り出すことができない成分であり、メラニンの抑制やコラーゲン合成の促進、抗酸化作用などさまざまな性質を有する。新鮮な野菜では、多く還元型として存在する。
【0024】
ポリフェノールは、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きをもつが、ヒトに対しては抗酸化作用、ホルモン促進作用などの効力を与える物質で、種類も多く、特にカテキンやクロロゲン酸等に代表されるオルトジフェノールは、強い抗酸化能であるラジカル消去能を有する。
【0025】
DPPHとは、抗酸化作用の評価に良く用いられている合成のラジカルである。このDPPHラジカル消去には、アスコルビン酸、ポリフェノール、ビタミンEなどの抗酸化物質がすべて関与している。アスコルビン酸の消去活性は高く、アスコルビン酸含量が高いと消去活性も高くなる。このように、DPPHラジカル消去活性は抗酸化能を総合的にみたものとなり、DPPHラジカル消去活性が高いということは、抗酸化能が高いということができる。
【0026】
本発明の機能性物質であるアスコルビン酸やポリフェノールなど、DPPHラジカル消去活性を高める物質を植物体内に増加させる栽培方法は、UV−Bの光源、光強度、照射開始生育日、照射期間、機能性物質の種類などにより異なる。
【0027】
例えば、アスコルビン酸含量およびポリフェノール含量の高い芽ネギは、播種後21〜30日から、UV−B照射を光強度0.18mW・cm−2(蛍光灯+UV−B照射で光合成有効光量子束密度20〜30μmole・m−2・s−1)で、毎日5〜10分間、6〜10日間行うことによって栽培することができる。この条件により、通常の1.2〜1.8倍量のアスコルビン酸および1.8〜2.8倍量のポリフェノールが芽ネギ中に生産する。上記の条件では、DPPHラジカル消去活性が、通常の1.1〜1.5倍量高くなる。
【0028】
また、短期間栽培によるアスコルビン酸含量の高い芽ネギは、播種後15〜17日から、UV−B照射を光強度0.18mW・cm−2(蛍光灯+UV−B照射で光合成有効光量子束密度80〜90μmole・m−2・s−1)で、毎日1〜5分間、4〜6日間行うことによって栽培することができる。この条件により、通常の1.3〜1.5倍量のアスコルビン酸が芽ネギ中に生産する。
【0029】
UV−Bを照射した芽ネギは、収穫した後、そのまま使用することもできるが、自然乾燥、あるいは凍結乾燥、熱風乾燥を行うと保存性が良くなるので扱い易くなる。乾燥後、あるいは乾燥前には、商品価値を高めるために着色することもできる。さらに、用途に合わせて切断や粉砕の処理を行い、得られた処理体を素材として食品や医薬品を製造することができる。
【0030】
本発明の「食品」は、飲料を含む食品全般を意味するが、いわゆる健康食品を含む一般加工食品のほか、厚生労働省の保健機能食品制度に規定される特定保健用食品や栄養機能食品をも含むものである。
【0031】
本発明の「食品」のうち、一般加工食品としては、スポーツ飲料、果実飲料、乳飲料、乳性飲料、茶飲料、アルコール飲料又は炭酸飲料等の飲料や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ等の調味類や、豆腐、こんにゃく、納豆などの豆製品や、フライ、餃子、コロッケ、サラダ、スープ、シチュー等の各種総菜や、パン、ケーキ、クッキー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、チューインガム、キャンディ等の菓子類や、クラッカー、チップス等のスナック類をあげることができる。
【0032】
また、本発明の「食品」が、特定保健用食品や栄養機能食品である保健機能食品である場合は、処理した芽ネギを単独で、あるいは食品衛生上許容される配合物、例えば、安定化剤、保存剤、着色料、香料ビタミン等の配合物を混合し、常法により錠剤状、顆粒状、粉末状、カプセル状、液状、クリーム状に製造し、最終食品に適した形態にて使用することができる。
【0033】
本発明の「医薬品」は、漢方薬を含む医薬品全般を意味するが、血圧降下剤、糖尿病の予防及び治療剤、免疫賦活剤、抗がん剤、皮膚外用剤、冷え性改善剤などに利用でき、芽ネギを単独で、あるいは医薬品として許容される賦形剤、結合剤、崩壊剤、増沢剤などを加えて、錠剤、顆粒剤、カプセル剤などの経口用製剤や、軟膏などの外用剤の形にすることもできる。
【0034】
これらの食品や医薬品には、UV−Bを照射した芽ネギを0.1〜90%含むことができるが、製品によってそれぞれ適した含量を選ぶことが望ましい。
【0035】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例をあげるが本発明はこれに限定されない。
【実施例1】
【0036】
(1)実験材料および生育条件
温度25℃で12時間日長周期(光合成有効光量子束密度20μmole・m−2・s−1)、水耕で生育させた芽ネギの播種後27日から34日までの間、明期の約6時間後に、UV−B(T−15Mランプ、紫外線強度0.18mW・cm−2、ピーク波長312nm)を、芽ネギの真上30cmの位置から毎日5分間、または10分間照射した(蛍光灯+UVランプでの光合成有効光量子束密度23.5μmole・m−2・s−1)。収穫後以下の方法で、照射した芽ネギ中の成分を測定し、紫外線照射を行っていないものとの比較を行った。
【0037】
(2)アスコルビン酸含量(ヒドラジン法)の測定
上記(1)で得られた芽ネギ5g(新鮮重量:FW)を10%メタリン酸10mlと少量の石英砂と共に氷中の乳鉢で磨砕した。そこへ蒸留水35mlを加えて吸引濾過を行い、この抽出液から1ml取り、ヒドラジン法により測定を行った。すなわち,抽出液1mlに2%メタリン酸、チオ尿素液を各1ml、さらに、DNP液0.5mlを加え、50℃のウォーターバス中で70分間放置した。その後、試験管を氷中に移し、各試験管に85%硫酸2.5mlを少しずつ加え、混和冷却した。室温で30分間放置し、分光光度計(HITACHI 330;日立製作所社製)でO.D.530nmにおける吸光度を測定した。その結果、芽ネギ中のアスコルビン酸含量は、図1に示すように、UV−B照射により増加することが明らかになった。
【0038】
(3)ポリフェノール含量の測定
100%エタノール35mlと蒸留水10mlを三角フラスコに入れ、ガラス管のついたゴム栓で栓をして加熱し、その後、上記(1)で得られた芽ネギ5g(新鮮重量:FW)加え再び15分加熱した。加熱後氷中で冷却し、磨砕して吸引濾過したものを70%エタノールで80mlに定容した。この抽出液1mlを3倍希釈したものを総フェノールとオルトジフェノール含量の測定に用いた。
【0039】
(3)−1) 総フェノール(フォーリン・チオカルト法)
上記(3)で得られたサンプル1mlに1Nフェノール試薬1mlを加え混合し、3分後に10%炭酸ナトリウム1mlを加え混合し、1時間後に分光光度計(HITACHI U−2000;日立製作所社製)を用いて、O.D.530nmにおける吸光度を測定した。ここで測定した総フェノールはポリフェノール含量を示す。
【0040】
(3)−2) オルトジフェノール(アルノー法)
上記(3)で得られたサンプル0.5mlに0.5N HCl1mlを加え混合した後、Arnow試薬1mlを加えて混和した。次いで1N NaOH1ml、蒸留水1mlを加えて混和し、室温で20分間放置した。その後、分光光度計(HITACHI U−2000;日立製作所社製)を用いて、O.D.530nmにおける吸光度を測定した。
【0041】
(3)−3) 結果
芽ネギ中の総フェノールとオルトジフェノール含量を図2に示した。UV−B照射によりフェノール類の増加が確認された。
【0042】
(4)DPPHラジカル消去活性の測定
上記(1)で得られた芽ネギ5g(新鮮重量:FW)に100%エタノール35mlと蒸留水10mlを加え、磨砕して吸引濾過し、70%エタノールで80mlに定容した。これを5倍濃縮したものをサンプルとして使用した。400μMとなるようにエタノールに溶解させた、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)0.9ml、200mM 2−Morpholinoethanesulphonic acid monohydrate (MES)緩衝液(pH6.0)0.9ml、および30%エタノール0.9mlを混合した液に、回帰式を求めるために0.3ml、0.6ml、0.9mlのサンプルを70%エタノールで0.9mlに調製したものを加えた。ブランクとして、70%エタノール0.9mlを用いた。室温で暗所下に20分間放置し、分光光度計(HITACHI U−2000;日立製作所社製)を用いて、O.D.520nmにおける吸光度を測定した。各サンプルのIC50(50% Inhibitory Concentration(阻害濃度))を試験管に加えたサンプル量をもとに、ブランクからのO.D.値の減少量を用いて回帰式を求め、計算した。その結果、芽ネギ中の抗酸化能を表すDPPHラジカル消去活性は図3に示すように、UV−B照射5分で増加した。
【実施例2】
【0043】
(1)実験材料および生育条件
ピートバンを用いて播種した芽ネギの種子を、温度25℃の暗所で発芽させた。3日後、発芽した芽ネギを蛍光灯下12時間日長周期(光合成有効光量子束密度87μmole・m−2・s−1)で生育させた。播種後、15〜17日の明期約6時間後に、UV−B(T−15Mランプ、紫外線強度0.18mW・cm−2、ピーク波長312nm)を、芽ネギの真上30cmの位置から毎日1〜5分間ずつ、4〜6日間照射した。播種後21日で収穫し、実施例1の(2)アスコルビン酸含量(ヒドラジン法)の測定と同じ方法を用いて、照射した芽ネギ中のアスコルビン酸含量を測定し、紫外線照射を行っていないものとの比較を行った。
【0044】
2)結果
図4〜6に示すように、4日間処理後収穫する場合は、照射時間を毎日5分間行い、5または6日間処理後収穫する場合は、照射時間を毎日1〜3分間行うことが、アスコルビン酸生産量増加の条件として優れていることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、汎用のUV−Bを短時間使用して、栽培植物中の栄養成分を増加させる方法であり、既存の栽培施設に容易に設置することが可能で、ライン移動連続照射を行った場合は、栄養成分を付加した栽培植物の大量栽培が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】芽ネギ中のアスコルビン酸含量に及ぼすUV−B照射の影響を示す図である。
【図2】芽ネギ中のフェノール含量に及ぼすUV−B照射の影響を示す図である。
【図3】芽ネギ中のDPPHラジカル消去活性に及ぼすUV−B照射の影響を示す図である。
【図4】UV−B照射を4日間行った時の芽ネギ中のアスコルビン酸含量に及ぼすUV−B照射の影響を示す図である。
【図5】UV−B照射を5日間行った時の芽ネギ中のアスコルビン酸含量に及ぼすUV−B照射の影響を示す図である。
【図6】UV−B照射を6日間行った時の芽ネギ中のアスコルビン酸含量に及ぼすUV−B照射の影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単子葉栽培植物の栽培方法において、UV−B照射により、植物中の機能性物質含量を増加させることを特徴とする単子葉栽培植物の栽培方法。
【請求項2】
単子葉栽培植物が芽ネギである請求項1に記載の栽培方法
【請求項3】
UV−B照射が、温度と光を制御されて生育した植物の播種後3〜30日のものに対し、12時間日長周期の明期に、3〜10分間を4〜8日間行うものである請求項1または2のいずれかに記載の栽培方法。
【請求項4】
UV−Bが、波長域280〜380nmで、かつ波長312mm付近にピークを有する光源由来のものである請求項1〜3のいずれかに記載の栽培方法。
【請求項5】
前記の機能性物質が、従来の植物と比較して、DPPHラジカル消去活性を1.1〜1.5倍高める抗酸化物質である請求項1〜4のいずれかに記載の栽培方法。
【請求項6】
前記の抗酸化物質が、アスコルビン酸及び/またはポリフェノールである請求項1〜5のいずれかに記載の栽培方法。
【請求項7】
前記の請求項1〜6のいずれかに記載の方法により得られた芽ネギ。
【請求項8】
前記の請求項1〜6のいずれかに記載の方法により栽培された芽ネギを用いたことを特徴とする食品。
【請求項9】
前記の請求項1〜6のいずれかに記載の方法により栽培された芽ネギを用いたことを特徴とする医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−86272(P2008−86272A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271701(P2006−271701)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】