説明

植物培養での高マンノース型タンパク質の製造

グリコシル化されたタンパク質(具体的には、高マンノース型グリコシル化を有するタンパク質)を植物培養で産生させ、一方で、そのようなタンパク質をERシグナルにより標的化する、および/または、タンパク質がゴルジ体を迂回するためのデバイス、システムまたは方法。本発明はさらに、トランスジェニック植物の根(具体的には、ニンジン細胞)を使用する酵素活性な高マンノース型リソソーム酵素の発現および産生のためのベクターおよび方法に関連する。より具体的には、本発明は、生物学的に活性な高マンノース型グルコセレブロシダーゼ(GCD)の高収率の発現および産生のための宿主細胞(具体的には、遺伝子導入されている懸濁されたニンジン細胞)、ベクターおよび方法に関連する。本発明はさらに、リソソーム蓄積症を処置するための組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高マンノース型タンパク質を産生させるための形質転換された宿主細胞、ならびに、これらのタンパク質を特に植物培養で産生させるための方法およびシステムに関連する。
【背景技術】
【0002】
ゴーシェ病は、最も一般的なリソソーム蓄積症である。ゴーシェ病は、グリコスフィンゴリピドのグルコセレブロシド(グルコシルセラミド、GlcCer)をグルコースおよびセラミドに加水分解することを触媒する膜結合型リソソーム酵素であるグルコセレブロシダーゼ(これはまた、グリコシルセラミダーゼとして知られている)の欠乏を生じさせる劣性の遺伝子障害(第1染色体のq21〜q31)によって引き起こされる。ゴーシェ病は、マクロファージのリソソームにおけるGlcCerの蓄積をもたらす、hGCD(ヒトグルコセレブロシダーゼ)遺伝子(GBA)における点変異によって引き起こされる。ゴーシェ細胞と呼ばれる特徴的な貯蔵細胞が、肝臓、脾臓および骨髄に見出される。付随する臨床的症状には、重度の肝脾腫大症、貧血、血小板減少症および骨格衰退が含まれる。
【0003】
ヒトGCDをコードする遺伝子が1985年に初めて配列決定された(6)。そのタンパク質は、536量体のプロペプチドに由来する497個のアミノ酸からなる。成熟hGCDは5つのN−グリコシル化アミノ酸コンセンサス配列(Asn−X−Ser/Thr)を含有する。これらの部位のうちの4つが正常にグリコシル化される。第1の部位のグリコシル化が、活性なタンパク質を産生させるために不可欠である。高マンノース型オリゴ糖鎖および複合型オリゴ糖鎖の両方が特定されている(7)。胎盤由来のhGCDは7%の炭水化物を含有し、そのうちの20%が高マンノース型である(8)。生化学的研究および部位特異的変異誘発研究により、折り畳み、活性化因子相互作用および活性部位存在位置にとって重要な領域および残基の最初のマップが提供されている(9)。
【0004】
ノイラミニダーゼによる胎盤hGCDの処理(これはアシアロ酵素をもたらす)は、ラット肝臓細胞による増大したクリアランス速度および取り込み速度をもたらし、同時に、肝臓の酵素活性における増大をもたらす(Furbish他、1981、Biochim.Biophys.Acta、673:425〜434)。このグリカン修飾された胎盤hGCは現在、ゴーシェ病の処置において治療剤として使用される。生化学的研究および部位特異的変異誘発研究により、折り畳み、活性化因子相互作用および活性部位存在位置にとって重要な領域および残基の最初のマップが提供されている[Grace他、J.Biol.Chem.269:2283〜2291(1994)]。
【0005】
3つの異なるタイプのゴーシェ病が存在しており、それぞれがhGC活性のレベルによって決定される。この疾患によって冒される主要な細胞がマクロファージであり、この場合、マクロファージはGlcCerの蓄積のために非常に肥大し、従って、「ゴーシェ細胞」として示される。
【0006】
ゴーシェ病の根本原因としてのGCDにおける欠陥の特定は、この障害のための治療的戦略としての酵素代償療法の開発につながった。
【0007】
もう1つの十分に特徴づけられているリソソーム蓄積症がファブリー病である。ファブリー病は、リソソーム酵素のα−ガラクトシダーゼA(α−GalA)の不十分な活性によって引き起こされるX連鎖のリソソーム蓄積症である。古典的ファブリー病の患者は、1%未満のα−GalA活性を典型的には有しており、また、多くの場合、四肢における重度の痛み(先端異常感覚)、発汗減少、角膜および水晶体の変化、皮膚病変(角化血管腫)、腎不全、心臓血管疾患、肺不全、神経学的症状ならびに発作を含めて、多様な様々な症状を明らかにする。非定型性ファブリー病では、残された酵素活性を有する個体が様々な症状を中年期以降に明らかにし、それらの症状は通常、1つの器官または少数の器官に限定される。女性保因者における臨床での症状発現は、ランダムなX染色体不活性化のために大きく変化する。保因者は一般に、生涯を通して無症候性のままであるが、多くが、罹患男性の臨床的症状と同じくらい変わりやすく、かつ、重症である臨床的症状を明らかにする。
【0008】
De Duveが最初に、失われたリソソーム酵素を外因性の生物学的に活性な酵素により置き換えることが、リソソーム蓄積症の処置に対する実用的な方法であるかもしれないことを提案した[Fed Proc.23:1045(1964)]。
【0009】
それ以降、様々な研究により、酵素代償療法が、様々なリソソーム蓄積症を処置するために有益であり得ることが示唆されている。最も優れた成功が、外因性酵素(β−グルコセレブロシダーゼ)の、胎盤から調製された酵素(Ceredase(商標))、または、より近年では、組換えにより調製された酵素(Cerezyme(商標))により処置されたI型ゴーシェ病の個体に関して示されている。
【0010】
天然の供給源に由来する非修飾のグルコセレブロシダーゼは、4つの炭水化物鎖を有する糖タンパク質である。このタンパク質は体内では食作用細胞を標的とせず、従って、治療的価値が限られている。ゴーシェ病のための現在の治療を開発することにおいて、グルコセレブロシダーゼの炭水化物鎖における末端の糖が、3つの異なるグリコシダーゼによる処理によって逐次的に除かれる。このグリコシダーゼ処理は、その末端の糖がマンノース残基からなる糖タンパク質をもたらす。食細胞は、マンノース残基で終わるオリゴ糖鎖を有する糖タンパク質および糖ペプチドを認識するマンノース受容体を有するので、グルコセレブロシダーゼの炭水化物再構成により、これらの細胞に対するこの酵素の標的化が改善されている[Furbish他、Biochem.Biophys.Acta 673:425(1981)]。
【0011】
本明細書で示されるように、グリコシル化はhGCD活性において非常に重要な役割を果たしており、従って、ツニカマイシン(Sf9細胞)、または、すべてのグリコシル化部位を無効にする点変異(Sf9細胞およびCOS−1細胞の両方)のどちらかを使用する、細胞株で発現されるhGCDの脱グリコシル化は、酵素活性の完全な喪失をもたらす。加えて、大腸菌で発現されるhGCDは、不活性であることが見出された。さらなる研究では、タンパク質活性のための様々なグリコシル化部位の重要性が示された。実際のタンパク質活性におけるグリコシル化の役割に加えて、商業的に製造される酵素は、特異的な薬物送達を容易にするグリカン配列修飾を含有する。グリコシル化タンパク質は、マンノース含有グリカン配列のみを含むように、抽出後、再構成される。
【0012】
ヒトGCD酵素は4つのグリコシル化部位および22個のリシンを含有する。組換え産生された酵素(Cerezyme(商標))は、胎盤酵素(Ceredase(商標))とは、アルギニンがヒスチジンにより置換されている495位において異なる。さらに、オリゴ糖組成が、組換えGCDと胎盤GCDとの間において、前者はより多くのフコース残基およびN−アセチル−グルコサミン残基を有し、一方、後者は1つの高マンノース鎖を保持するように異なる。上記で述べられたように、両方のタイプのGCDが、末端のマンノースを露出させるために、3つの異なるグリコシダーゼ(ノイラミニダーゼ、ガラクトシダーゼおよびP−Nアセチルグルコサミニダーゼ)により処理され、このことが食作用細胞の標的化を可能にしている。組換え産生された酵素を含む医薬調製物が米国特許第5549892号に記載される。言及されるすべての参考文献は、全体が本明細書に示されるかのように、本明細書により参照によって組み込まれることに留意しなければならない。
【0013】
酵素代償療法のための組換えα−ガラクトシダーゼAが、昆虫細胞(sf9細胞)(米国特許第7011831号を参照のこと)、ヒト線維芽細胞(米国特許第6395884号を参照のこと)、および、植物細胞(米国特許第6846968号を参照のこと)で産生されている。組換えa−GalA(アガルシダーゼβ[Fabrazyme]:Genzyme Corporation、Cambridge、Mass;アガルシダーゼα[Replagal]:TKT Corporation、Cambridge、Mass)を用いた臨床試験が行われており、両方の薬物が臨床使用のために承認されている。
【0014】
既存のリソソーム酵素代償療法処置に伴う1つの欠点が、例えば、低い取り込み、基質が蓄積する特定の細胞のリソソームに対する低下した標的化、および、リソソームにおける短い機能的インビボ半減期のために、酵素のインビボ生物活性が望ましくないほど低いことである。
【0015】
既存のGCD組換え酵素のもう1つの大きな欠点がその費用であり、このことは保健医療システムへの重い経済的負担となり得る。これらの組換え酵素の費用が大きいことは、複雑な精製プロトコル、および、比較的多量の治療剤が既存の処置のために要求されることから生じている。従って、GCDの費用を下げ、その結果、この救命治療が、これを必要とするすべての人々に、より手軽に提供され得るようにすることが緊急に求められている。
【0016】
医薬品使用のためのタンパク質は従来、哺乳動物または細菌の発現システムで産生されている。この10年間で、新しい発現システムが植物において開発されている。この方法論では、アグロバクテリウム(一本鎖DNA分子(T−DNA)を植物のゲノムに挿入することができる細菌)が利用される。遺伝子をタンパク質およびペプチドの大量製造のために導入することが比較的簡便であるために、この方法論が、代替のタンパク質発現システムとしてますます広まっている(1)。
【0017】
様々な翻訳後修飾が細菌の発現システムには存在しない一方で、植物由来の発現システムは実際に、タンパク質の発現および活性のために非常に重要であることが知られているこれらの修飾を容易にする。哺乳動物のタンパク質発現システムと植物のタンパク質発現システムとの間における大きな違いの1つが、生合成経路における違いによって引き起こされるタンパク質糖側鎖の変化である。グリコシル化は、タンパク質の活性、折り畳み、安定性、溶解性、プロテアーゼに対する感受性、血中クリアランス速度、および、抗原としての可能性に対する大きな影響を有することが示された。従って、植物におけるタンパク質製造はどれも、植物のグリコシル化の潜在的な派生問題を考慮に入れなければならない。
【0018】
タンパク質のグリコシル化は、N結合型修飾およびO結合型修飾の2つのカテゴリーに分けられる(2)。これら2つのタイプは、グリカン成分が結合するアミノ酸が異なり、N結合型はAsn残基に結合し、一方、O結合型はSer残基またはThr残基に結合する。加えて、それぞれのタイプのグリカン配列が特有の特徴的な特徴を有する。これら2つのタイプのうち、N結合型グリコシル化の方が多く存在し、タンパク質機能に対するその影響が広範囲に研究されている。他方で、O結合型グリカンは比較的希であり、情報が、タンパク質に対するその影響に関してあまり得られていない。
【発明の概要】
【0019】
背景技術では、グリコシル化タンパク質を植物培養で選択的に産生させるためのデバイス、システムまたは方法が教示または示唆されていない。背景技術ではまた、高マンノース型タンパク質を植物培養で産生させるためのそのようなデバイス、システムまたは方法が教示または示唆されていない。背景技術ではまた、タンパク質を、小胞体(ER)を介して植物培養で産生させるためのデバイス、システムまたは方法が教示または示唆されていない。背景技術ではまた、タンパク質を、ゴルジ体を迂回しながら、小胞体(ER)を介して植物培養で産生させるためのそのようなデバイス、システムまたは方法が教示または示唆されていない。背景技術ではまた、タンパク質を、ゴルジ体を迂回するためにERシグナルを使用することによって植物培養で産生させるためのそのようなデバイス、システムまたは方法が教示または示唆されていない。
【0020】
本発明者らは、グリコシル化されたタンパク質(具体的には、高マンノース型グリコシル化を有するタンパク質)を植物培養で産生させ、一方で、場合により、また、好ましくは、そのようなタンパク質をERシグナルにより標的化する(および/または、他の場合には、そのようなタンパク質のプロセシングを操作する)ためのデバイス、システムまたは方法を提供することによって背景技術のこれらの欠点を克服する。1つだけの仮説によって限定されることを望まないが、そのような標的化は、タンパク質がゴルジ体を迂回し、それにより、所望されるグリコシル化(具体的には、高マンノース型グリコシル化)を保持することをもたらすと考えられる。本明細書で使用される用語「植物培養」は、培養で成長する任意のタイプのトランスジェニック植物細胞、および/または、他の場合には遺伝子操作された植物細胞を包含することに留意しなければならない。遺伝子操作することは場合により、永続的または一過性であり得る。好ましくは、培養は、完全な植物を形成するようには組み立てられない細胞であって、植物の少なくとも1つの生物学的構造体が存在しないような細胞を特徴とする。場合により、また、好ましくは、培養は、複数の異なるタイプの植物細胞を特徴とする場合があり、しかし、好ましくは、培養は特定のタイプの植物細胞を特徴とする。場合により、特定のタイプの植物細胞を特徴とする植物培養は、元々は、そのような植物細胞の複数の異なるタイプに由来し得ることに留意しなければならない。
【0021】
植物細胞を、固体表面(例えば、プラスチックの培養容器または培養プレートなど)または懸濁状態での培養(これらに限定されない)を含めて、何らかのタイプの好適な培養方法に従って成長させることができる。
【0022】
本発明はさらに、トランスジェニック植物の根(具体的には、ニンジン細胞)を使用する酵素活性な高マンノース型リソソーム酵素の発現および産生のためのベクターおよび方法に関連する。より具体的には、本発明は、生物学的に活性な高マンノース型グルコセレブロシダーゼ(GCD)および高マンノース型α−ガラクトシダーゼAの高収率の発現および産生のための宿主細胞(具体的には、遺伝子導入されている懸濁されたニンジン細胞)、ベクターおよび方法に関連する。本発明はさらに、リソソーム蓄積症を処置するための組成物および方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、十分な量の生物学的に活性なリソソーム酵素(具体的には、ヒトGCDおよびヒトα−ガラクトシダーゼA)を欠乏細胞に提供するためのデバイス、システムおよび方法に関する。本発明はまた、リソソーム酵素(例えば、GCDおよびα−ガラクトシダーゼA)をコードする遺伝子の効率的な産生を可能にする新しいベクター組成物を含む宿主細胞に関する。
【0024】
従って、本発明は、特定のグリコシル化要求を有するタンパク質、例えば、リソソーム酵素の高マンノース型グリコシル化を有するタンパク質(例えば、GCDおよびα−ガラクトシダーゼA)などを産生させるための経済的に実行可能な技術に対する長年にわたる切実な要求を解決する。本発明は、この長年にわたる切実な要求を、植物細胞培養を使用することによって解決することができる。
【0025】
本発明をさらに説明するために、高マンノース型タンパク質の生合成経路の簡単な説明が次に提供される。高マンノース型および複合型のN結合型グリカンの基本的な生合成経路がすべての真核生物の間では高度に保存されている。生合成が、グリカン前駆体をオリゴサッカリルトランスフェラーゼによってドリコール脂質キャリアからタンパク質表面の特定のAsn残基に転移することで小胞体(ER)において始まる。前駆体は続いて、哺乳動物に存在するプロセスと同様に、高マンノース型構造を生じさせるために、グリコシダーゼI、グリコシダーゼIIおよび仮想的なマンノシダーゼによってERにおいて修飾される。
【0026】
複雑かつ混成型の構造へのグリカン配列のさらなる修飾がゴルジ体において生じる。そのような修飾には、4つマンノース残基のうちの1つがα−マンノシダーゼIによって除かれること、N−アセチルグルコサミン残基の付加、α−マンノシダーゼIIによる2つのさらなるマンノース残基の除去、N−アセチルグルコサミンの付加が含まれ、また、場合により、この段階で、キシロース残基およびフコース残基が、植物特異的なN結合型グリカンを生じさせるために付加されることがある。コアへのキシロースおよびフコースの転移の後、複合型タイプのN−グリカンがさらに、末端フコースおよび末端ガラクトースの付加によりプロセシングされ得る。さらなる修飾が糖タンパク質輸送の期間中に行われることがある。
【0027】
いくつかの取り組みが現在、植物におけるタンパク質のグリコシル化を制御および調節するために背景技術では使用されるが、それらのすべてが、特に本発明との比較において、著しい不備を有する。大雑把な修飾、例えば、グリコシル化の完全な阻害、または、ペプチド鎖からのグリコシル化部位の除去が1つの方策である。しかしながら、この取り組みは構造的な欠陥を生じさせ得る。さらなる取り組みでは、特定の炭水化物プロセシング酵素のノックアウトおよび導入が伴う。再度ではあるが、この取り組みは困難であり、この取り組みもまた、植物細胞自体に対する有害な影響を有する場合がある。
【0028】
本発明は、ERシグナルを使用することによって、および/または、ERからゴルジ体への分泌を阻止することによって背景技術の様々な取り組みのこれらの不備を克服する。1つだけの仮説によって限定されることを望まないが、リソソーム酵素の高マンノース型構造が好ましいので、分泌を阻止することができ、タンパク質をERにおいて維持することができるならば、天然に存在する高マンノース型構造が、再構成を必要とすることなく得られる。
【0029】
上記で示されたように、内膜系を介して輸送されるタンパク質は最初に小胞体に入る。この工程のための必要な輸送シグナルが、分子のN末端におけるシグナル配列(いわゆるシグナルペプチド)によって表される。このシグナルペプチドが、シグナルペプチドに結合した前駆体タンパク質を小胞体の中に入れることであるその機能を果たすとすぐに、シグナルペプチドは前駆体タンパク質からタンパク質分解的に切断される。その特異的な機能のおかげで、このタイプのシグナルペプチド配列は、細胞が、細菌、酵母、真菌、動物または植物であるかどうかにかかわらず、すべての生細胞において、進化の間、大きな程度に保存されている。
【0030】
多くの植物タンパク質がシグナルペプチドによって小胞体に入るが、それらはERに留まるのではなく、小胞体からゴルジ体に輸送され、そして、ゴルジ体から液胞への輸送を続ける。この輸送残基についてのそのような選別シグナルの1つのクラスが、前駆体タンパク質のC末端部分に存在するシグナルである[NeuhausおよびRogers(1998)、Plant Mol.Biol.38:127〜144]。小胞体に入るためのN末端のシグナルペプチドと、C末端の液胞標的化シグナルとの両方を含有するタンパク質は、ゴルジ体においてタンパク質に結合する複合型グリカンを含有することが予想される[Lerouge他(1998)、Plant Mol.Biol.38:31〜48]。そのようなC末端の選別シグナルの性質は非常に広範囲に変化し得る。米国特許第6054637号は、液胞標的化ペプチドとして作用する液胞タンパク質であるタバコ塩基性キチナーゼの領域から得られるペプチドフラグメントを記載する。C末端の標的化シグナルと、複合型グリカンとを含有する液胞タンパク質についての一例が、インゲンマメの種子から得られるファゼオリン貯蔵タンパク質である[Frigerio他(1998)、Plant Cell 10:1031〜1042;Frigerio他(2001)、Plant Cell 13:1109〜1126]。
【0031】
理論的枠組みは、真核生物細胞において、液胞タンパク質は、その最終的な行き先としての液胞において捕捉される前に、ERおよびゴルジ体を経由するということである。驚くべきことに、本発明の形質転換された植物根細胞は、予想されなかった高マンノース型のGCDおよびα−ガラクトシダーゼAを産生させた。好都合なことに、この高マンノース型産物は、生物学的に活性であることが見出され、従って、さらなる工程がその活性化のために必要とされなかった。1つだけの仮説によって限定されることを望まないが、ERシグナルの使用により、組換えタンパク質が植物細胞培養で産生される場合、ゴルジ体への輸送を抑えることができ、従って、所望される高マンノース型グリコシル化を保持することができたようである。場合により、ゴルジ体を迂回するためのいかなるタイプの機構も含めて、高マンノース型グリコシル化をもたらすことができるどのようなタイプの機構も本発明に従って使用することができる。
【0032】
第1の態様において、本発明は、目的とする高マンノース型組換えタンパク質を産生する宿主細胞に関連する。この細胞は、目的とするタンパク質をコードする組換え核酸分子により、または、この核酸分子を含む発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクションすることができる。そのような核酸分子は、目的とするタンパク質をコードする第1の核酸配列を、液胞標的化シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列に機能的に連結されて含む。第1の核酸配列は場合によりさらに、ER(小胞体)標的化シグナルペプチドをコードする第3の核酸配列に機能的に連結することができる。本発明の宿主細胞は、目的とするタンパク質が、高度にマンノシル化された形態で細胞によって産生されるという点で特徴づけられる。
【0033】
本発明の宿主細胞は真核生物細胞または原核生物細胞であり得る。
【0034】
1つの実施形態において、本発明の宿主細胞は原核生物細胞であり、好ましくは細菌細胞であり、最も好ましくはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞である。これらの細胞は、下記の好ましい植物宿主細胞に感染させるために使用される。
【0035】
別の好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は真核生物細胞である場合があり、好ましくは植物細胞である場合があり、最も好ましくは、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rihzogenes)により形質転換された根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される植物根細胞である場合がある。
【0036】
1つの好ましい実施形態において、植物根細胞はニンジン細胞である。本発明の形質転換されたニンジン細胞は懸濁状態で成長することに留意しなければならない。上記で述べられたように、また、実施例において記載されるように、これらの細胞はアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞により形質転換された。
【0037】
別の実施形態において、本発明の宿主細胞に含まれる組換え核酸分子は、塩基性タバコキチナーゼAの遺伝子に由来する液胞標的化シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列との機能的な連結にある、リソソーム酵素をコードする第1の核酸配列を含む。この液胞シグナルペプチドは、配列番号2によって示されるようなアミノ酸配列を有する。第1の核酸配列は場合によりさらに、配列番号1によって示されるようなER(小胞体)標的化シグナルペプチドをコードする第3の核酸配列と機能的な連結で連結することができる。1つの実施形態において、本発明の宿主細胞内に含まれる組換え核酸分子はさらに、植物細胞において機能的であるプロモーターを含む。このプロモーターは本発明の組換え分子に機能的に連結されなければならない。
【0038】
別の実施形態において、この組換え核酸分子は場合によりさらに、植物細胞において好ましくは機能的である機能的に連結されたターミネーターを含むことができる。本発明の組換え核酸分子は場合によりさらに、さらなる制御エレメント、促進エレメントおよび調節エレメント、ならびに/または、選択マーカーを含むことができる。これらの調節エレメントは組換え分子に機能的に連結されることに留意しなければならない。
【0039】
1つの好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞によって産生される目的とする高マンノース型タンパク質は、露出したマンノース末端残基を有する高マンノース型糖タンパク質であり得る。
【0040】
そのような高マンノース型タンパク質は、別の好ましい実施形態によれば、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼおよびシアリダーゼからなる群から選択されるリソソーム酵素であり得る。好ましい実施形態において、リソソーム酵素はヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)またはヒトα−ガラクトシダーゼAであり得る。以降、組換えGCD、rGCD、rhGCDはすべてが、別途示される場合を除き、組換えヒトGCDの様々な形態を示す。以降、A−gal、A−gal A、組換えA−gal、rA−gal、rhA−galはすべてが、別途示される場合を除き、組換えヒトα−ガラクトシダーゼAの様々な形態を示す[Genbankアクセション番号NM000169(コード配列)および同CAA29232(アミノ酸配列)]。
【0041】
前記のように、ゴーシェ病(最も一般的なリソソーム蓄積症)が、マクロファージのリソソームにおけるGlcCerの蓄積をもたらすhGCD(ヒトグルコセレブロシダーゼ)遺伝子(GBA)における点変異によって引き起こされる。ゴーシェ病の根本原因としてのGCD欠乏の特定は、この障害のための治療的戦略としての酵素代償療法の開発につながった。しかしながら、グリコシル化は非常に重要な役割をhGCD活性および標的細胞へのhGCD取り込みにおいて果たす。
【0042】
従って、本発明の他の好ましい実施形態によれば、好適にグリコシル化されたhGCDまたはα−ガラクトシダーゼAが、好ましくは、植物細胞培養におけるhGCDまたはhα−ガラクトシダーゼAの発現を制御することによって、場合により、また、より好ましくは、ERシグナルを提供することによって、および/または、他の場合には、場合により、また、より好ましくは、ゴルジ体への輸送を阻止することによって提供される。
【0043】
場合により、また、好ましくは、hGCDまたはα−ガラクトシダーゼAは、ゴーシェ病の処置または防止のために、露出したマンノース残基を含む少なくとも1つのオリゴ糖鎖を有する。
【0044】
なおさらに、1つの具体的な実施形態において、この好ましい宿主細胞は、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーターと、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトピンシンターゼターミネーターと、TMV(タバコモザイクウイルス)のΩ翻訳エンハンサーエレメントとをさらに含む組換え核酸分子により形質転換またはトランスフェクションされる。1つの好ましい実施形態によれば、この組換え核酸分子は、実質的には配列番号13によって示されるような核酸配列を含み、実質的には配列番号14または15によって示されるようなアミノ酸配列を有する高マンノース型GCDをコードする。
【0045】
本発明はさらに、生物学的に活性なリソソーム酵素をコードする核酸分子を含む発現ベクターを提供することを理解しなければならない。
【0046】
1つの好ましい実施形態において、本発明の発現ベクターは、生物学的に活性な高マンノース型のヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)またはヒトα−ガラクトシダーゼAをコードする核酸分子を含む。好ましくは、この好ましい発現ベクターは、実質的には配列番号13、17または19によって示されるような核酸配列を有する組換え核酸分子を含む。
【0047】
第2の態様において、本発明は、本発明の宿主細胞によって産生される組換え高マンノース型タンパク質に関連する。
【0048】
1つの好ましい実施形態において、この高マンノース型タンパク質は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼおよびシアリダーゼからなる群から選択される生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素であり得る。最も好ましくは、このリソソーム酵素はヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)であり得る。
【0049】
なおさらに、本発明は、露出したマンノース残基を含む少なくとも1つのオリゴ糖鎖を有する組換えの生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素を提供する。
【0050】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明の組換えリソソーム酵素は標的部位において標的細胞上のマンノース受容体に結合することができる。好ましくは、この部位は、リソソーム蓄積症に罹患する対象の体内であり得る。
【0051】
組換えリソソーム酵素は、標的細胞に対する天然に存在するリソソーム酵素の対応する親和性との比較において、標的細胞に対する増大した親和性を有することに留意しなければならない。1つの具体的な実施形態において、標的部位における標的細胞は対象の肝臓におけるクップファー細胞であり得る。
【0052】
1つの好ましい実施形態において、組換えリソソーム酵素は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼまたはシアリダーゼからなる群から選択され得る。
【0053】
最も好ましくは、この組換えリソソーム酵素はグルコセレブロシダーゼ(GCD)である。
【0054】
第3の態様において、本発明は、高マンノース型タンパク質を産生させる方法に関連する。それによれば、本発明のこの方法は下記:(a)目的とする組換えタンパク質をコードする組換え核酸分子により、または、この組換え核酸分子を含む発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクションされた組換え宿主細胞の培養物を調製する工程;(b)工程(a)によって調製されるこれらの宿主細胞の培養物を、タンパク質の発現を可能にする条件下で培養する工程(この場合、宿主細胞により、タンパク質が、高度にマンノシル化された形態で産生される);(c)タンパク質を細胞から回収し、細胞を(a)において提供される培養物から集める工程;および(d)工程(c)のタンパク質を好適なタンパク質精製方法によって精製する工程を含む。
【0055】
1つの好ましい実施形態によれば、この方法によって使用される宿主細胞は本発明の宿主細胞である。
【0056】
別の好ましい実施形態において、本発明のこの方法によって産生される高マンノース型タンパク質は、露出したマンノース残基を含む少なくとも1つのオリゴ糖鎖を有する生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素であり得る。
【0057】
この組換え酵素は標的部位において標的細胞上のマンノース受容体に結合することができる。より具体的には、本発明の方法によって産生される組換え酵素は、標的細胞に対する天然に存在するリソソーム酵素の対応する親和性との比較において、標的細胞に対する増大した親和性を有する。それによれば、標的部位における標的細胞は対象の肝臓におけるクップファー細胞であり得る。
【0058】
1つの具体的な実施形態において、このリソソーム酵素は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼおよびシアリダーゼからなる群から選択され得る。最も好ましくは、このリソソーム酵素はグルコセレブロシダーゼ(GCD)またはα−ガラクトシダーゼAであり得る。
【0059】
別の好ましい実施形態において、本発明のこの方法によって使用される宿主細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスにより形質転換された根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される植物根細胞であり得る。最も好ましくは、植物根細胞はニンジン細胞である。本発明のこの方法において、形質転換された宿主ニンジン細胞は懸濁状態で成長することに特に留意しなければならない。
【0060】
1つのさらなる態様において、本発明は、下記の(a)および(b)を含む、リソソーム蓄積症を有する対象を、外因性の組換えリソソーム酵素を使用して処置するための方法に関連する:(a)形質転換された植物根細胞から精製され、かつ、リソソーム酵素が異常に不足している細胞を効率的に標的化することができる、組換えの生物学的に活性な形態のリソソーム酵素を提供すること。この組換えの生物学的に活性な酵素は、露出する末端マンノース残基を、結合するオリゴ糖において有する。(b)治療効果的な量のそのような組換えの生物学的に活性なリソソーム酵素を対象に投与すること。1つの好ましい実施形態において、本発明の方法によって使用される組換えの高マンノース型リソソーム酵素は本発明の宿主細胞によって産生させることができる。好ましくは、この宿主細胞はニンジン細胞である。
【0061】
別の好ましい実施形態において、本発明のこの方法によって使用されるリソソーム酵素は、露出したマンノース残基を有する少なくとも1つのオリゴ糖鎖を含む高マンノース型酵素であり得る。この組換え酵素は、対象の体内で、標的部位において標的細胞上のマンノース受容体に結合することができる。より好ましくは、この組換えリソソーム酵素は、標的細胞に対する天然に存在するリソソーム酵素の対応する親和性との比較において、これらの標的細胞に対する増大した親和性を有する。
【0062】
より具体的には、本発明のこの方法によって使用されるリソソーム酵素は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼまたはシアリダーゼからなる群から選択され得る。好ましくは、このリソソーム酵素はグルコセレブロシダーゼ(GCD)である。
【0063】
従って、1つの好ましい実施形態によれば、本発明のこの方法は、リソソーム蓄積症を処置するために意図され、具体的には、ゴーシェ病を処置するために意図される。
【0064】
そのような場合において、標的部位における標的細胞は対象の肝臓におけるクップファー細胞であり得る。
【0065】
本発明はさらに、本発明によって規定されるような組換えの生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素を有効成分として含む、リソソーム蓄積症を処置するための医薬組成物を提供する。本発明の組成物は場合によりさらに、医薬的に許容される希釈剤、キャリアまたは賦形剤を含むことができる。
【0066】
1つの具体的な実施形態において、本発明の組成物は、ゴーシェ病を処置するために意図される。そのような組成物は好ましくは、効果的な成分として、本発明によって規定されるように、生物学的に活性な高マンノース型のヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)を含むことができる。
【0067】
本発明はさらに、リソソーム蓄積症を処置または防止するための医薬品の製造における、本発明の組換えの生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素の使用に関連する。より具体的には、そのような疾患はゴーシェ病であり得る。
【0068】
それによれば、この生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素は、本発明によって規定されるように、生物学的に活性な高マンノース型のヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)である。
【0069】
本発明によれば、組換えタンパク質と、組換えタンパク質が高マンノース型タンパク質として産生されることを生じさせるためのシグナルとをコードするポリヌクレオチドを含む、高マンノース型組換えタンパク質を産生する宿主細胞が提供される。好ましくは、このポリヌクレオチドは、目的とするタンパク質をコードする第1の核酸配列を、シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列に機能的に連結されて含む。場合により、シグナルペプチドはER(小胞体)標的化シグナルペプチドを含む。好ましくは、このポリヌクレオチドはさらに、液胞標的化シグナルペプチドをコードするための第3の核酸配列を含む。
【0070】
好ましくは、シグナルは、組換えタンパク質がERに標的化されることを生じさせる。より好ましくは、シグナルは、組換えタンパク質がERに標的化されることを生じさせるためのシグナルペプチドを含む。最も好ましくは、ポリヌクレオチドは、そのようなシグナルペプチドをコードするための核酸セグメントを含む。
【0071】
場合により、また、好ましくは、シグナルは、組換えタンパク質がゴルジ体を迂回することを生じさせる。好ましくは、シグナルは、組換えタンパク質がゴルジ体に標的化されないことを生じさせるためのシグナルペプチドを含む。より好ましくは、ポリヌクレオチドは、そのようなシグナルペプチドをコードするための核酸セグメントを含む。
【0072】
場合により、また、好ましくは、宿主細胞は真核生物細胞および原核生物細胞のいずれかの細胞である。場合により、原核生物細胞は細菌細胞であり、好ましくはアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞である。好ましくは、真核生物細胞は植物細胞である。より好ましくは、植物細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスにより形質転換された根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される植物根細胞である。最も好ましくは、植物根細胞はニンジン細胞である。
【0073】
好ましくは、組換えポリヌクレオチドは、塩基性タバコキチナーゼAの遺伝子に由来する液胞標的化シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列との機能的な連結にある、目的とするタンパク質をコードする第1の核酸配列を含み、そのような液胞シグナルペプチドは、配列番号2によって示されるようなアミノ酸配列を有し、また、第1の核酸配列は場合によりさらに、配列番号1によって示されるようなER(小胞体)標的化シグナルペプチドをコードする第3の核酸配列に機能的に連結される。
【0074】
より好ましくは、組換えポリヌクレオチドはさらに、植物細胞において機能的であるプロモーターを含み、プロモーターは組換え分子に機能的に連結される。
【0075】
最も好ましくは、組換えポリヌクレオチドはさらに、植物細胞において機能的であるターミネーターを含み、ターミネーターは組換え分子に機能的に連結される。
【0076】
同様に最も好ましくは、組換えポリヌクレオチドは場合によりさらに、さらなる制御エレメント、促進エレメントおよび調節エレメント、ならびに/または、選択マーカーを含み、調節エレメントは組換え分子に機能的に連結される。
【0077】
好ましくは、高マンノース型タンパク質は、少なくとも1つの露出したマンノース残基を伴うグリコシル化を有する高マンノース型糖タンパク質である。より好ましくは、高マンノース型タンパク質は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼおよびシアリダーゼからなる群から選択される生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素である。
【0078】
最も好ましくは、リソソーム酵素はヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)である。
【0079】
好ましくは、GCDは、配列番号7によって示されるような核酸配列によってコードされる、実質的には配列番号8によって示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0080】
より好ましくは、細胞は、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーターと、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトピンシンターゼターミネーターと、TMV(タバコモザイクウイルス)のΩ翻訳エンハンサーエレメントである調節エレメントとをさらに含み、かつ、実質的には配列番号14または15によって示されるようなアミノ酸配列を有するGCDをコードする、実質的には配列番号13によって示されるような核酸配列を有する組換えポリヌクレオチドにより、または、そのような分子を含む発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクションされる。
【0081】
好ましい実施形態によれば、上記の宿主細胞によって産生される組換えの高マンノース型タンパク質が提供される。
【0082】
好ましくは、高マンノース型タンパク質は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼおよびシアリダーゼからなる群から選択される生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素である。
【0083】
より好ましくは、リソソーム酵素はヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)である。
【0084】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、露出したマンノース残基を含む少なくとも1つのオリゴ糖鎖を有する組換えの生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素が提供される。
【0085】
さらに他の好ましい実施形態によれば、シグナルペプチド活性を有する第1の部分と、リソソーム酵素活性を有する第2の部分とを含み、第1の部分により、第2の部分が、露出したマンノース残基を含む少なくとも1つのオリゴ糖鎖を伴って植物細胞においてプロセシングされることが引き起こされる組換えタンパク質が提供される。
【0086】
好ましくは、リソソーム酵素は、ゴーシェ病を処置または防止するためのタンパク質を含む。
【0087】
より好ましくは、そのようなタンパク質はhGCDを含む。
【0088】
別の実施形態において、リソソーム酵素は、ファブリー病を処置または防止するためのタンパク質を含む。
【0089】
より好ましくは、そのようなタンパク質はα−ガラクトシダーゼAを含む。
【0090】
好ましくは、第1の部分は植物細胞のER標的化シグナルペプチドを含む。より好ましくは、組換え酵素は、リソソーム蓄積症に罹患する対象の体内で、標的部位において標的細胞上のマンノース受容体に結合することができる。最も好ましくは、組換えリソソーム酵素は、標的細胞に対する天然に存在するリソソーム酵素の対応する親和性との比較において、標的細胞に対する増大した親和性を有する。標的細胞は、マンノース受容体を有する線維芽細胞およびマクロファージなどが可能である。
【0091】
同様に最も好ましくは、組換えリソソーム酵素は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼまたはシアリダーゼからなる群から選択される。
【0092】
好ましくは、組換えリソソーム酵素はグルコセレブロシダーゼ(GCD)である。
【0093】
同様に好ましくは、標的部位における標的細胞は対象の肝臓におけるクップファー細胞である。
【0094】
なおさらに他の好ましい実施形態によれば、植物細胞培養で産生される組換え高マンノース型タンパク質が提供される。好ましくは、このタンパク質は、タンパク質をERに標的化するための植物シグナルペプチドを特徴とする。
【0095】
より好ましくは、植物シグナルペプチドは、タンパク質を根の植物細胞培養でERに標的化するためのペプチドを含む。最も好ましくは、根の植物細胞培養はニンジン細胞を含む。
【0096】
さらに他の好ましい実施形態によれば、植物細胞培養で産生される組換え高マンノース型のhGCDタンパク質またはα−ガラクトシダーゼAタンパク質が提供される。
【0097】
なおさらに他の好ましい実施形態によれば、高マンノース型タンパク質を産生させるための植物細胞培養の使用が提供される。
【0098】
他の好ましい実施形態によれば、組換えタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドにより形質転換またはトランスフェクションされた組換え宿主細胞の培養物を調製すること;宿主細胞培養物を、組換えタンパク質の発現を可能にする条件(ただし、宿主細胞により、組換えタンパク質が、高度にマンノシル化された形態で産生される)下で培養することを含む、高マンノース型タンパク質を産生させる方法が提供される。
【0099】
好ましくは、宿主細胞培養物は懸濁状態で培養される。より好ましくは、この方法はさらに、タンパク質を精製することを含む。
【0100】
他の好ましい実施形態によれば、この方法は、前記のような宿主細胞を用いて行われる。好ましくは、高マンノース型タンパク質は、露出したマンノース残基を含む少なくとも1つのオリゴ糖鎖を有する生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素である。より好ましくは、組換え酵素は標的部位において標的細胞上のマンノース受容体に結合する。最も好ましくは、組換え酵素は、標的細胞に対する天然に存在するリソソーム酵素の対応する親和性との比較において、標的細胞に対する増大した親和性を有する。
【0101】
好ましくは、リソソーム酵素は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼおよびシアリダーゼからなる群から選択される。
【0102】
より好ましくは、リソソーム酵素はグルコセレブロシダーゼ(GCD)またはα−ガラクトシダーゼAである。最も好ましくは、標的部位における標的細胞は対象の肝臓における線維芽細胞またはクップファー細胞である。
【0103】
好ましくは、宿主細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスにより形質転換された根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される植物根細胞である。別の実施形態において、宿主細胞はタバコ細胞である。
【0104】
より好ましくは、植物根細胞はニンジン細胞である。
【0105】
最も好ましくは、形質転換された宿主ニンジン細胞は懸濁状態で成長する。
【0106】
なおさらに他の好ましい実施形態によれば、リソソーム蓄積症を有する対象を、外因性の組換えリソソーム酵素を使用して処置するための方法が提供され、この方法は、形質転換された植物根細胞から精製され、かつ、リソソーム酵素が異常に不足している細胞を効率的に標的化することができる組換えの生物学的に活性な形態のリソソーム酵素を提供すること(組換えの生物学的に活性な酵素は、結合するオリゴ糖において、露出する末端マンノース残基を有する)、および、治療効果的な量のそのような組換えの生物学的に活性なリソソーム酵素を対象に投与することを含む。この方法は場合により、前記のようないずれかの宿主細胞および/またはタンパク質を用いて行うことができる。
【0107】
好ましくは、組換え酵素は、対象の体内で、標的部位において標的細胞上のマンノース受容体に結合することができる。より好ましくは、組換えリソソーム酵素は、標的細胞に対する天然に存在するリソソーム酵素の対応する親和性との比較において、標的細胞に対する増大した親和性を有する。最も好ましくは、リソソーム酵素は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼまたはシアリダーゼからなる群から選択される。同様に最も好ましくは、リソソーム酵素はグルコセレブロシダーゼ(GCD)である。
【0108】
同様に最も好ましくは、リソソーム蓄積症はゴーシェ病である。同様に最も好ましくは、標的部位における標的細胞は対象の肝臓におけるクップファー細胞である。
【0109】
別の実施形態において、蓄積症はファブリー病であり、リソソーム酵素はα−ガラクトシダーゼAであり、標的細胞は線維芽細胞である。
【0110】
なおさらに他の好ましい実施形態によれば、上記のような組換えの生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素を有効成分として含む、リソソーム蓄積症を処置するための医薬組成物が提供され、そのような組成物は場合によりさらに、医薬的に許容される希釈剤、キャリアまたは賦形剤を含む。好ましくは、リソソーム蓄積症はゴーシェ病である。より好ましくは、組換えリソソーム酵素は、生物学的に活性な高マンノース型のヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)である。
【0111】
なおさらに他の好ましい実施形態によれば、リソソーム蓄積症を処置または防止するための医薬品の製造における、上記のような組換えの生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素の使用が提供される。好ましくは、疾患はゴーシェ病である。より好ましくは、生物学的に活性なリソソーム酵素は、生物学的に活性な高マンノース型のヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)である。
【0112】
別の実施形態において、疾患はファブリー病であり、生物学的に活性なリソソーム酵素はα−ガラクトシダーゼAである。
【0113】
本発明が下記の図によってさらに記載され、しかし、下記の図は例示にすぎず、本発明の範囲を限定しない。本発明の範囲はまた、添付された請求項によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0114】
本発明が、本明細書において、例としてのみであるが、添付されている図面を参照して記載される。
【図1A】図1Aは、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーター、TMV(タバコモザイクウイルス)のΩ翻訳エンハンサーエレメント、ER標的化シグナル、ヒトGCD配列(これはまた、配列番号7によって示される)、液胞シグナル、および、アグロバクテリウム・ツメファシエンス由来のオクトピンシンターゼターミネーター配列を含む得られる発現カセットを示す。
【図1B】図1Bは、pGreenIIプラスミド骨格の概略マップを示す。
【図2】図2は、抗hGCD特異的抗体を使用する、hGCD形質転換細胞の抽出物のウエスタンブロット分析を示す。標準物のCerezyme(レーン1)が陽性コントロールとして使用され、非形質転換のカルスが陰性コントロールとして使用され(レーン2)、様々な選択されたカルスの抽出物がレーン3〜8に示される。
【図3A】図3A〜3Cは、XKカラム(2.6×20cm)に充填された強カチオン交換樹脂(Macro−Prep high−S担体、Bio−Rad)でのrhGCDの最初の精製工程を示す。カラムを、電気伝導率モニタリング、pHおよび280nmでの吸光度を可能にするAKTAプライムシステム(Amersham Pharmacia Biotech)と一体化した。rh−GCDの溶出を、600mMのNaClを含有する平衡化緩衝液により得た。図3Aはこの精製工程の標準的操作を表す。操作期間中に集められる分画物が、図3Bによって示されるように酵素活性アッセイによってモニターされ、酵素活性を(溶出ピークにおいて)示すチューブをプールした。図3Cは、活性についてアッセイされた溶出分画物のクーマシーブルー染色を示す。
【図3B−C】図3A〜3Cは、XKカラム(2.6×20cm)に充填された強カチオン交換樹脂(Macro−Prep high−S担体、Bio−Rad)でのrhGCDの最初の精製工程を示す。カラムを、電気伝導率モニタリング、pHおよび280nmでの吸光度を可能にするAKTAプライムシステム(Amersham Pharmacia Biotech)と一体化した。rh−GCDの溶出を、600mMのNaClを含有する平衡化緩衝液により得た。図3Aはこの精製工程の標準的操作を表す。操作期間中に集められる分画物が、図3Bによって示されるように酵素活性アッセイによってモニターされ、酵素活性を(溶出ピークにおいて)示すチューブをプールした。図3Cは、活性についてアッセイされた溶出分画物のクーマシーブルー染色を示す。
【図3D】図3Dは、図3Aの場合と同様ではあるが、第2のカラムについての対応するグラフを示す。
【図3E−F】図3E〜3Fは、図3B〜図3Cの場合と同様ではあるが、第2のカラムについての対応するグラフを示す。
【図4A】図4A〜4Cは、XKカラム(2.6×20cm)に充填された疎水性相互作用樹脂(TSKゲル、Toyopearl Phenyl−650C、Tosoh Corp.)での組換えhGCDの最終精製工程を示す。カラムを、電気伝導率モニタリング、pHおよび280nmでの吸光度を可能にするAKTAプライムシステム(Amersham Pharmacia Biotech)と一体化した。前段カラムからのGCD溶出プールを6ml/分で負荷し、その後、UV吸光度がベースラインに達するまで平衡化緩衝液により洗浄した。純粋なGCDを、50%のエタノールを含有する10mMクエン酸緩衝液によって溶出した。図4Aは、この精製工程の標準的操作を表す。図4Bは、酵素活性アッセイによってモニターされた操作期間中に集められた分画物を示す。図4Cは、活性についてアッセイされた溶出分画物のクーマシーブルー染色を示す。
【図4B−C】図4A〜4Cは、XKカラム(2.6×20cm)に充填された疎水性相互作用樹脂(TSKゲル、Toyopearl Phenyl−650C、Tosoh Corp.)での組換えhGCDの最終精製工程を示す。カラムを、電気伝導率モニタリング、pHおよび280nmでの吸光度を可能にするAKTAプライムシステム(Amersham Pharmacia Biotech)と一体化した。前段カラムからのGCD溶出プールを6ml/分で負荷し、その後、UV吸光度がベースラインに達するまで平衡化緩衝液により洗浄した。純粋なGCDを、50%のエタノールを含有する10mMクエン酸緩衝液によって溶出した。図4Aは、この精製工程の標準的操作を表す。図4Bは、酵素活性アッセイによってモニターされた操作期間中に集められた分画物を示す。図4Cは、活性についてアッセイされた溶出分画物のクーマシーブルー染色を示す。
【図5A】図5Aは、腹腔マクロファージによる取り込みの後における組換えhGCDの活性を示す。
【図5B】図5Bは、腹腔マクロファージによる取り込みの後における組換えhGCDの活性を示す。
【図5C−D】図5Cは、腹腔マクロファージによる取り込みの後における組換えhGCDの活性を示し、一方、図5Dは、本発明による組換えGCDのウエスタンブロットを示す。
【図6】図6は、本発明によるrGCDについてのグリコシル化構造およびCerezyme(商標)のグリコシル化構造の比較を示す。
【図7】図7は、本発明によるrGCDについてのグリコシル化構造を示す。
【図8A】図8aは、本発明によるrGCDについてのさらなるN−グリカングリコシル化構造を示す。
【図8B】図8bは、本発明によるrGCDについてのさらなるN−グリカングリコシル化構造を示す。
【図8C】図8cは、本発明によるrGCDについてのさらなるN−グリカングリコシル化構造を示す。
【図8D】図8dは、本発明によるrGCDについてのさらなるN−グリカングリコシル化構造を示す。
【図9】図9aおよび9bは、本発明の精製された組換えヒトGCDと、哺乳動物CHO細胞で組換え産生される市販のヒトGCD(Cerezyme(登録商標))との抗原的同一性および電気泳動的同一性を示す。図9aは、本発明の植物産生によるhGCD(レーン1および2、それぞれ、5μgおよび10μgのタンパク質)、および、Cerezyme(登録商標)(レーン3および4、それぞれ、5μgおよび10μgのタンパク質)のクーマシーブルー染色されたSDS−PAGE分析である。図9bは、市販のCerezyme(登録商標)酵素と比較される、PAGE分離された本発明の組換えヒトGCD(レーン1および2、それぞれ、50ngおよび10ng)のウエスタンブロット分析である。SDS−PAGE分離されたタンパク質をニトロセルロースにブロットし(レーン3および4、それぞれ、50ngおよび100ngの抗原)、ポリクローナル抗GCD抗体およびペルオキシダーゼコンジュゲート化ヤギ抗ウサギHRP二次抗体を使用して免疫検出した。サイズおよび免疫反応性が、本発明の植物組換えGCDと、哺乳動物細胞(CHO)により調製される酵素(Cerezyme(登録商標))との間で一致していることに留意すること。MW=分子量標準物マーカー。
【図10】図10aおよび10bは、本発明の組換えヒトGCDのグリカン構造の概略図である。図10aはGCDの主グリカン構造分析の結果を示し、HPLC、酵素アレイ消化およびMALDIに基づくすべての構造およびそれらの相対的な量が示される。個々のグリカンの保持時間が、グルコースユニット(GU)のラダーを与えるデキストランの標準物部分加水分解の保持時間に対して比較される。図10bは、哺乳動物細胞(CHO)により調製される酵素(Cerezyme(登録商標))のグリカン構造をインビトロ修飾プロセスの前後において示す。キシロースグリコシドおよび露出したマンノースグリコシドが本発明の組換えヒトGCDでは優勢であることに留意すること。
【図11】図11は、バッチ間における組換えヒトGCDの一貫した、再現性のあるグリカン構造を示す、本発明の組換えヒトGCDのグリカンプロファイルのHPアニオン交換クロマトグラフィー分析である。
【図12】図12は、本発明の組換えヒトGCD(白三角)、および、哺乳動物細胞(CHO)により調製される酵素(Cerezyme(登録商標))(黒四角)の両方の触媒作用の速度論的特徴が同一であることを示す速度論的分析である。本発明の組換えヒトGCDと、Cerezyme(登録商標)(0.2μg)とを、C6−NBDGlcCerをMES緩衝液(50mM、pH5.5)において使用してアッセイした(5分、37℃)。ミカエリス−メンテン速度論を、GraphPad Prismソフトウエアを使用して分析した。データは2回の独立した実験の平均である。
【図13】図13Aおよび13Bは、タバコ植物で発現させたヒト組換えα−ガラクトシダーゼAの分子量分析の結果のプロットである。図13Aは、本明細書に記載されるようなゲルろ過によって求められたときの分子量を示す。図13Bは、質量分析法(MALDI−Tof)によって求められたときの分子量を示す。天然型α−ガラクトシダーゼAのMWに対応する48.6kDaにおける(MSでの)主ピークに留意すること。
【図14】図14Aおよび14Bは、タバコ植物で発現させたヒト組換えα−ガラクトシダーゼAのPAGE分析およびアミノ酸配列である。図14Aは、PAGEで分けられたとき、62kDaおよび47.6kDaに対応するヒト組換えα−ガラクトシダーゼAの2つの異なったバンドを示す。図14Bは、(「上側バンド」および「下側バンド」と標示される)これら2つのバンドのそれぞれに由来するアミノ酸配列を示す。それぞれのバンドにおける配列決定のために利用可能なポリペプチドの部分が赤色で示される。配列データをもたらすことができない領域(これらはおそらくはグリカン構造によって隠されている)が黒色で示される。配列決定された領域が、上側バンドと、下側バンドとの間において完全に一致することに留意すること。このことは、グリカン構造における区別が可能である同一のポリペプチドを示している。
【図15】図15は、タバコ植物で発現させたヒト組換えα−ガラクトシダーゼAの免疫反応性を示すウエスタンブロットの写真である。液胞に標的化されるヒトα−ガラクトシダーゼA(α−gal−vac、レーン「vac」)、または、ER保持シグナルを有するヒトα−ガラクトシダーゼ(α−gal−KDEL、レーン「KDEL」)のいずれかを発現するタバコ植物から抽出されたタンパク質をPAGEで分離し、ニトロセルロースにブロットし、(ヒトα−ガラクトシダーゼのアミノ酸326〜429に対する)抗α−ガラクトシダーゼA抗体と反応させ、HRP二次抗体により可視化した。強い特異的な反応がα−gal−vacおよびα−gal−KDELの両方の発現タンパク質には存在し、一方、トランスジェニックコントロール植物から抽出されたタンパク質(GFP)は非反応性であったことに留意すること。
【図16】図16Aおよび16Bは、植物で発現させたヒト組換えα−ガラクトシダーゼの触媒的性質の速度論的分析を表すグラフである。図16Aは、植物発現によるヒト組換えα−ガラクトシダーゼAと、市販されている組換えα−ガラクトシダーゼA調製物とを比較するミカエリス−メンテンプロットである。図16Bは、KmおよびVmax(挿入された表に詳しく示される)を示す、図16Aから導かれる酵素速度論のラインウィーバー−バークプロットである。緑色は、植物発現によるヒト組換えα−ガラクトシダーゼを示し、黒色はFabrazymeを示し、青色はReplagalを示す。植物発現によるヒト組換えα−ガラクトシダーゼと、市販されている調製物との間での、酵素速度論における非常に近い対応に留意すること。
【図17】図17Aおよび17Bは、植物で発現させたヒト組換えα−ガラクトシダーゼの様々な温度における安定性を示すASDS−PAGEの写真である。植物で発現させたヒト組換えα−ガラクトシダーゼ(植物a−Gal)と、市販のヒト組換えα−ガラクトシダーゼ(Replagal)とを、示された温度で2時間、活性緩衝液(図17A)または細胞培地(図17B)においてインキュベーションし、SDS−PAGEで分離し、本明細書に記載されるように可視化した。
【図18】図18は、植物発現によるヒト組換えα−ガラクトシダーゼのFabry線維芽細胞における取り込みおよび保持を示す、線維芽細胞の細胞溶解物のウエスタンブロット分析の写真である。レーン「植物αGalA」は、植物発現によるヒト組換えα−ガラクトシダーゼと2時間インキュベーションされ、洗浄され、溶解されたヒトFabry(α−ガラクトシダーゼ欠損)線維芽細胞からの線維芽細胞溶解物である。右端のレーンはFabrazyeme(登録商標)であり、その間には分子量ラダーが存在する。
【図19】図19は、特徴的なグリカン構造のピークを示すNP−HPLCプロファイルのプロット、および、グリカン自体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
医薬品使用のためのタンパク質は従来、哺乳動物または細菌の発現システムで製造されている。この数年間で、有望な新しい発現システムが植物において見出された。新しい遺伝子を導入することが比較的簡便であること、また、タンパク質およびペプチドの大量製造のための潜在的可能性のために、「分子ファーミング(pharming)」がタンパク質発現システムとしてますます広まっている。
【0116】
哺乳動物のタンパク質発現システムと植物のタンパク質発現システムとの間における大きな違いの1つが、生合成経路における違いによって引き起こされるタンパク質グリコシル化配列の変化である。グリコシル化は、タンパク質の活性、折り畳み、安定性、溶解性、プロテアーゼに対する感受性、血中クリアランス速度、および、抗原としての可能性に対する大きな影響を有することが示された。従って、植物におけるタンパク質製造はどれも、植物のグリコシル化の潜在的な派生問題を考慮に入れなければならない。
【0117】
このことが、生物学的に活性な哺乳動物タンパク質を植物において産生させるための以前の試みにおいて遭遇する様々な困難によって十分に例示される。例えば、米国特許第5929304号(Radin他(Crop Tech、Inc))は、タバコ植物において、ヒトα−L−イズロナーゼ(IDUA)およびグルコセレブロシダーゼ(hGC)を、その適切なヒトリソソーム酵素コード配列をタバコ植物のA.tumefaciens媒介による形質転換のためのバイナリープラスミド用の発現カセットに挿入することによって産生させることを開示する。トランスジェニック植物における組換えヒトリソソームタンパク質の産生が明らかにされ、また、組換えタンパク質における触媒活性が検出されたにもかかわらず、標的細胞への結合または標的細胞内への取り込みは何ら開示されておらず、また、リソソーム酵素組成物は、おそらくは、タンパク質の正確なグリコシル化がないこと、および、その後では、このようなポリペプチドは特異的な受容体を介してその標的細胞/組織と効率的に相互作用することができないことのために、治療的適用には適さないままであった。
【0118】
炭水化物成分はタンパク質の最も一般的な翻訳後修飾の1つである。タンパク質のグリコシル化は、N結合型およびO結合型の2つのカテゴリーに分けられる。これら2つのタイプは、グリカン成分がタンパク質の表面において結合するアミノ酸が異なり、N結合型はAsn残基に結合し、一方、O結合型はSer残基またはThr残基に結合する。加えて、それぞれのタイプのグリカン配列が特有の特徴的な特徴を有する。これら2つのタイプのうち、N結合型グリコシル化の方が多く存在し、タンパク質に対するその影響が広範囲に研究されている。他方で、O結合型グリカンは比較的希であり、情報が、タンパク質に対するその影響に関してあまり得られていない。植物におけるタンパク質のグリコシル化に関して得られるデータの大部分が、O結合型グリカンではなく、むしろ、N結合型グリカンに集中している。
【0119】
本発明は、本明細書において、場合により、また、好ましくは、懸濁状態で成長するトランスジェニック植物細胞(好ましくは根細胞である)に基づく植物発現システムを記載する。この発現システムは、目的とする高マンノース型タンパク質を効率的に産生させるために特に設計される。用語「高マンノース型」は、少なくとも1つの露出したマンノース残基を有するグリコシル化を包含する。
【0120】
従って、第1の態様において、本発明は、目的とする高マンノース型組換えタンパク質を産生する宿主細胞に関する。好ましくは、組換えタンパク質はER(小胞体)シグナルペプチドを特徴とし、より好ましくは、ER標的化シグナルペプチドを特徴とする。代替として、または、加えて、組換えタンパク質は、タンパク質がゴルジ体を迂回すること生じさせるシグナルを特徴とする。このシグナルは、好ましくは、組換えタンパク質が高マンノース型グリコシル化を特徴とすることを可能にし、より好ましくは、そのようなグリコシル化を保持することによって、また、最も好ましくは、ERを標的化することによって、および/または、ゴルジ体を迂回することによって、組換えタンパク質が高マンノース型グリコシル化を特徴とすることを可能にする。本明細書においてより詳細に記載されるように、そのようなシグナルは、好ましくは、シグナルペプチドとして実行され、より好ましくは、タンパク質配列の一部を形成するシグナルペプチドとして実行され、場合により、また、より好ましくは、シグナルペプチドをタンパク質の一部として同様に特徴とするようにタンパク質を操作することによって実行される。シグナルは、場合により、標的化シグナル、保持シグナル、回避(迂回)シグナル、または、それらの任意の組合せ、あるいは、所望される高マンノース型グリコシル化構造をもたらすことができる任意の他のタイプのシグナルであり得ることに留意しなければならない。
【0121】
1つだけの仮説によって限定されることを望まないが、ER標的化シグナルの使用により、組換えタンパク質が植物細胞培養で産生される場合、ゴルジ体への輸送を抑えることができ、従って、所望される高マンノース型グリコシル化を保持することができたと思われる。場合により、ゴルジ体を迂回するためのいかなるタイプの機構も含めて、高マンノース型グリコシル化をもたらすことができるどのようなタイプの機構も本発明に従って使用することができる。様々なER標的化シグナルペプチドがこの技術分野では広く知られており、それらはN末端のシグナルペプチドである。場合により、何らかの好適なER標的化シグナルペプチドを本発明とともに使用することができる。
【0122】
本発明による宿主細胞は場合により、目的とするタンパク質をコードする組換え核酸分子により、または、この核酸分子を含む発現ベクターにより(永続的および/または一過性に)形質転換またはトランスフェクションすることができる。そのような核酸分子は、目的とするタンパク質をコードする第1の核酸配列を、場合により、また、好ましくは、液胞標的化シグナルペプチドをコードする第2の核酸分子に機能的に連結されて含む。本明細書で使用される用語「機能的に」連結された(連結される)は、物理的な連結を必ずしも示さないことに留意しなければならない。第1の核酸配列はさらに、場合により、また、好ましくは、ER(小胞体)標的化シグナルペプチドをコードする第3の核酸配列に機能的に連結することができる。1つの実施形態において、本発明の宿主細胞は、目的とするタンパク質が、少なくとも1つの露出されたマンノース残基を含む形態で細胞によって産生されるが、好ましくは、高度にマンノシル化された形態である形態で細胞によって産生されるという点で特徴づけられる。1つのより好ましい実施形態において、目的とするタンパク質が、露出したマンノースおよび少なくとも1つのキシロース残基を含む形態で細胞によって産生され、それにもかかわらず、1つのより好ましい実施形態では、露出したマンノースおよび少なくとも1つのフコース残基をさらに含む形態で細胞によって産生される。1つの非常に好ましい実施形態において、タンパク質が、露出したマンノース、コアα(1,2)キシロース残基およびコアα−(1,3)フコース残基を含む形態で細胞によって産生される。
【0123】
「細胞」、「宿主細胞」または「組換え宿主細胞」は、本明細書では交換可能に使用される用語である。そのような用語は、対象とする特定の細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的な子孫もまた示すことが理解される。いくつかの変化が変異または環境的影響のいずれかのためにその後の世代において生じ得るので、そのような子孫は実際、親細胞と同一でないことがあるが、本明細書で使用される用語の範囲には依然として含まれる。本明細書で使用される「細胞」または「宿主細胞」は、ネイクドDNAにより、または、組換えDNA技術を使用して構築される発現ベクターにより形質転換することができる細胞を示す。本明細書で使用される用語「トランスフェクション」は、核酸(例えば、ネイクドDNAまたは発現ベクター)をレシピエント細胞に核酸媒介遺伝子移入によって導入することを意味する。本明細書で使用される「形質転換」は、細胞の遺伝子型が外因性DNAまたは外因性RNAの細胞取り込みの結果として変化するプロセスを示し、例えば、形質転換された細胞は、所望されるタンパク質の組換え形態を発現する。
【0124】
薬物抵抗性マーカーまたは他の選択マーカーが、一部には形質転換体の選択を容易にするために意図されることを理解しなければならない。加えて、選択マーカー(例えば、薬物抵抗性マーカー)の存在は、混入微生物を培養培地において増殖させないことにおいて有用である場合がある。形質転換された宿主細胞のそのような純粋培養が、誘導された表現型の生存のために要求される条件下で細胞を培養することによって得られる。
【0125】
上記で示されたように、本発明の宿主細胞は核酸分子によりトランスフェクションまたは形質転換することができる。本明細書で使用される用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、および、適する場合にはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを示す。これらの用語はまた、均等物として、ヌクレオチドアナログから作製される、RNAまたはDNAのどちらかのアナログ、ならびに、実施形態に対して適用可能であるとして記載される場合には、一本鎖(例えば、センスまたはアンチセンス)ポリヌクレオチドおよび二本鎖ポリヌクレオチドを包含することを理解しなければならない。
【0126】
さらに別の実施形態において、本発明の細胞は、組換え核酸分子を含む発現ベクターによりトランスフェクションまたは形質転換することができる。本明細書で使用される「発現ベクター」は、宿主のゲノムへのDNAフラグメントの組込みを可能にする様々なベクター(例えば、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNAフラグメントおよび他のビヒクル)を包含する。発現ベクターは、典型的には、所望される遺伝子またはそのフラグメントと、好適な宿主細胞において認識され、所望される遺伝子の発現をもたらす機能的に連結された遺伝子制御エレメントとを含有する自己複製性のDNA構築物またはRNA構築物である。これらの制御エレメントは、好適な宿主における発現をもたらすことができる。一般に、遺伝子制御エレメントは原核生物プロモーターシステムまたは真核生物プロモーター発現制御システムを含むことができる。そのようなシステムは典型的には、転写プロモーター、転写の開始を制御するための必要に応じて使用されるオペレーター、RNA発現のレベルを高めるための転写エンハンサー、好適なリボソーム結合部位をコードする配列、RNAスプライス接合部、転写および翻訳を終結させる配列などを含む。発現ベクターは通常、ベクターが宿主細胞とは無関係に複製することを可能にする複製起点を含有する。
【0127】
プラスミドはベクターの最も一般に使用される形態であるが、同等の機能を果たし、かつ、この技術分野で知られているか、または、知られるようになる他の形態のベクターが本明細書における使用のために好適である。例えば、Pouwels他、Cloning Vectors:a Laboratory Manual(1985年および増刊)、Elsevier、N.Y.、および、Rodriquez他(編)、Vectors:a Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses、Buttersworth、Boston、Mass(1988)を参照のこと(これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0128】
一般に、そのようなベクターはさらに、形質転換された細胞における表現型選択をもたらすことができる特定の遺伝子を含有する。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を発現させるための原核生物ウイルス発現ベクターおよび真核生物ウイルス発現ベクターの使用もまた意図される。
【0129】
場合により、ベクターは、(下記の実施例に関して記載されるように)一般的な植物ベクターである場合がある。代替として、ベクターは、場合により、根細胞に対して特異的である場合がある。
【0130】
1つの好ましい実施形態において、本発明の細胞は真核生物細胞または原核生物細胞であり得る。
【0131】
1つの具体的な実施形態において、本発明の細胞は原核生物細胞であり、好ましくは細菌細胞であり、最も好ましくはアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞である。これらの細胞は、下記の好ましい植物宿主細胞に感染させるために使用される。
【0132】
別の好ましい実施形態において、本発明の細胞は真核生物細胞、好ましくは植物細胞、最も好ましくは、アグロバクテリウム・リゾゲネスにより形質転換された植物根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される植物根細胞である場合がある。
【0133】
1つの好ましい実施形態において、植物根細胞はニンジン細胞である。本発明の形質転換されたニンジン細胞は懸濁状態で成長することに留意しなければならない。上記で述べられたように、また、実施例において記載されるように、これらの細胞は本発明のアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞により形質転換された。
【0134】
本発明の宿主細胞をトランスフェクションまたは形質転換するために使用される発現ベクターまたは組換え核酸分子はさらに、ペプチドシグナル配列を付加して、または、除いて、または、他の場合には、改変して、シグナルペプチドの切断を変化させるために、あるいは、発現したリソソーム酵素の、植物内膜系を介する標的化を増大または変化させるために、当業者に知られている様々な方法に従って改変することができる。例えば、しかし、限定としてではないが、発現構築物を、分泌のために、または、液胞での局在化のために、または、小胞体(ER)における保持のためにリソソーム酵素を標的化するように特に操作することができる。
【0135】
1つの実施形態において、発現ベクターまたは組換え核酸分子は、リソソーム酵素を植物液胞に標的化するシグナルをコードするヌクレオチド配列を取り込むように操作することができる。例えば、また、限定としてではないが、本発明の宿主細胞に含まれる組換え核酸分子は、塩基性タバコキチナーゼA遺伝子に由来する液胞標的化シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列との機能的な連結にある、リソソーム酵素をコードする第1の核酸配列を含む。この液胞シグナルペプチドは、配列番号2によって示されるようなアミノ酸配列を有する。第1の核酸配列は場合によりさらに、配列番号1によって示されるようなER(小胞体)標的化シグナルペプチドをコードする第3の核酸配列と機能的な連結で連結することができる。1つの実施形態において、本発明の宿主細胞に含まれる組換え核酸分子はさらに、植物細胞において機能的であるプロモーターを含む。このプロモーターは本発明の組換え分子に機能的に連結されなければならない。
【0136】
用語「機能的に連結された(される)」は、第1の核酸配列が第2の核酸配列との機能的な関係で置かれるとき、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的に連結されることを示すために本明細書で使用される。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼすならば、プロモーターはコード配列に機能的に連結される。場合により、また、好ましくは、機能的に連結されたDNA配列は連続しており(例えば、物理的に連結され)、また、2つのタンパク質コード領域をつなぐ必要がある場合には、同じリーディングフレームにある。従って、DNA配列および調節配列(1つまたは複数)は、適切な分子(例えば、転写活性化因子タンパク質)が調節配列(1つまたは複数)に結合したとき、遺伝子発現を可能にするような様式でつながれる。
【0137】
別の実施形態において、このような組換え核酸分子は場合によりさらに、植物細胞において好ましくは機能的である機能的に連結されたターミネーターを含むことができる。本発明の組換え核酸分子は場合によりさらに、さらなる制御エレメント、促進エレメントおよび調節エレメント、ならびに/または、選択マーカーを含むことができる。これらの調節エレメントは組換え分子に機能的に連結されることに留意しなければならない。
【0138】
発現構築物において使用することができる調節エレメントには、植物細胞にとって異種または同族的のどちらかであり得るプロモーターが含まれる。プロモーターは、連結された配列の高レベルの転写を植物細胞および植物において行わせることができる植物プロモーターまたは非植物プロモーターであり得る。本発明を実施することにおいて効果的に使用することができる植物プロモーターの限定されない例には、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35S、rbcS、クロロフィルa/b結合タンパク質に対するプロモーター、AdhI、NOSおよびHMG2、あるいは、それらの改変体または誘導体が含まれる。プロモーターは構成的または誘導可能のどちらかであり得る。例えば、また、限定としてではないが、誘導可能なプロモーターとして、植物、植物組織または植物細胞の機構的遺伝子活性化(MGA)の後、リソソーム酵素ヌクレオチド配列の発現または増大した発現を促進させるプロモーターが可能である。
【0139】
本発明の宿主細胞をトランスフェクションまたは形質転換するために使用される発現ベクターはさらに、植物および植物細胞における異種遺伝子の発現を増強または最適化するために、当業者に知られている様々な方法に従って改変することができる。そのような改変には、プロモーターの強さを増大させるためにDNA調節エレメントを変異すること、または、目的とするタンパク質を変化させることが含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
1つの好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞によって産生される目的とする高マンノース型タンパク質は、少なくとも1つの露出したマンノース残基(少なくとも1つの末端マンノース残基)を有する、マンノースが多い糖タンパク質であり得る。別の実施形態では、本発明の糖タンパク質において、マンノース残基のほとんど(75%超)が末端の露出したマンノース残基である。
【0141】
そのような高マンノース型タンパク質は、別の好ましい実施形態によれば、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼおよびシアリダーゼからなる群から選択されるリソソーム酵素であり得る。
【0142】
用語「リソソーム酵素」は、本発明によって記載される植物発現システムで産生される何らかのそのような酵素および産物に関して本明細書で使用される場合、ヒトまたは動物のリソソーム酵素、ヒトまたは動物の改変されたリソソーム酵素、あるいは、そのような酵素のフラグメント、誘導体または改変体をコードするヌクレオチド配列からトランスジェニック植物細胞で発現される組換えペプチドを示す。ヒトまたは動物の有用な改変されたリソソーム酵素には、天然に存在するか、または、人為的に導入された1つまたはいくつかのアミノ酸付加、アミノ酸欠失および/またはアミノ酸置換を有する、ヒトまたは動物のリソソーム酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
可溶性のリソソーム酵素は生合成の初期段階を分泌タンパク質と共有する:すなわち、リボソーム上での合成、粗面小胞体(ER)の表面に対するN末端シグナルペプチドの結合、シグナルペプチドが切断されるERの内腔への輸送、および、特定のアスパラギン残基へのオリゴ糖の付加(N結合型)、それに続く、ゴルジ装置における新生タンパク質のさらなる修飾[von FiguraおよびHasilik、Annu.Rev.Biochem.55:167〜193(1986)]。N結合型オリゴ糖は、複雑で、多様で、かつ、不均一であり得るし、また、高マンノース型残基を含有する場合がある。タンパク質は、ER後のプレ−ゴルジ区画において、また、シス−ゴルジにおいてさらなるプロセシングを受けて、リソソーム局在化酵素に対するN結合型マンノース6−リン酸(M−6−P)オリゴ糖依存性認識シグナルまたはN結合型M−6−Pオリゴ糖非依存性認識シグナルのどちらかを形成する[Kornfeld&Mellman、Ann.Rev.Cell Biol.、5:483〜525(1989);Kaplan他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:2026(1977)]。M−6−P認識シグナルの存在は、酵素がM−6−P受容体(MPR)に結合することをもたらす。これらの結合した酵素は細胞内に留まり、最終的にはリソソームにパッケージングされ、従って、分泌のために標的化されるタンパク質、または、原形質膜に対して標的化されるタンパク質から隔離される。
【0144】
1つの好ましい実施形態において、リソソーム酵素はヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)またはヒトα−ガラクトシダーゼAであり得る。
【0145】
なおさらに、1つの具体的な実施形態において、この好ましい宿主細胞は、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーター、好ましくは、配列番号9によって示されるような核酸配列を有するカリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーターと、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトピンシンターゼターミネーター、好ましくは、配列番号12によって示されるような核酸配列を有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトピンシンターゼターミネーターと、TMV(タバコモザイクウイルス)のΩ翻訳エンハンサーエレメントとをさらに含む組換え核酸分子によって形質転換またはトランスフェクションされる。1つの好ましい実施形態によれば、この組換え核酸分子は、実質的には配列番号13によって示されるような核酸配列を含み、実質的には配列番号14または15によって示されるようなアミノ酸配列を有する高マンノース型GCDをコードする。
【0146】
本発明はさらに、生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素をコードする核酸分子を含む発現ベクターを提供することを理解しなければならない。
【0147】
この態様の1つの好ましい実施形態において、本発明の発現ベクターは、生物学的に活性な高マンノース型のヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)をコードする核酸分子を含む。好ましくは、この好ましい発現ベクターは、実質的には配列番号13によって示されるような核酸配列を有する組換え核酸分子を含む。1つの具体的な実施形態によれば、好ましい発現ベクターでは、下記の実施例1によって記載されるようなpGREENIIプラスミドが利用される。本発明の別の実施形態において、発現ベクターは、生物学的に活性な高マンノース型のヒトα―ガラクトシダーゼ(α−gal−A)をコードする核酸分子を含む。好ましくは、この好ましい発現ベクターは、実質的には配列番号17または19によって示されるような核酸配列を有する組換え核酸分子を含む。1つの具体的な実施形態によれば、好ましい発現ベクターでは、下記の実施例5aによって記載されるようなpICH19170プラスミドが利用される。
【0148】
本発明は、上記で記載される発現ベクターに含まれる発現カセットを提供することにさらに留意しなければならない。
【0149】
第2の態様において、本発明は、本発明の宿主細胞によって産生される組換え高マンノース型タンパク質に関連する。
【0150】
1つの好ましい実施形態において、この高マンノース型タンパク質は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼおよびシアリダーゼからなる群から選択される生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素であり得る。最も好ましくは、このリソソーム酵素はヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)であり得る。
【0151】
用語「生物学的に活性な」は、組換えリソソーム酵素が、ヒトまたは動物の対応するリソソーム酵素の天然基質あるいはアナログ基質または合成基質のどれかを検出可能なレベルで加水分解することができることを意味するために、植物発現システムで産生されるいずれかの組換えリソソーム酵素に関して本明細書では使用される。
【0152】
なおさらに、本発明は、露出したマンノース残基を含む少なくとも1つのオリゴ糖鎖を有する組換えの生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素を提供する。
【0153】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明の組換えリソソーム酵素は標的部位において標的細胞上のマンノース受容体に結合することができる。好ましくは、この部位は、リソソーム蓄積症に罹患する対象の体内であり得る。
【0154】
場合により、また、より好ましくは、組換えリソソーム酵素は、標的細胞に対する天然に存在するリソソーム酵素の親和性との比較において、標的細胞に対する増大した親和性を有する。1つの具体的な実施形態において、標的部位における標的細胞は対象の肝臓におけるクップファー細胞であり得る。
【0155】
1つの好ましい実施形態において、組換えリソソーム酵素は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼまたはシアリダーゼからなる群から選択され得る。
【0156】
最も好ましくは、この組換えリソソーム酵素はグルコセレブロシダーゼ(GCD)またはα−ガラクトシダーゼAである。
【0157】
第3の態様において、本発明は、高マンノース型タンパク質を産生させる方法に関連する。それによれば、本発明のこの方法は、(a)目的とする組換えタンパク質をコードする組換え核酸分子により、または、この組換え核酸分子を含む発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクションされた組換え宿主細胞の培養物を調製する工程;(b)工程(a)によって調製される宿主細胞の培養物を、高マンノース型タンパク質の発現を可能にする条件下で懸濁状態で培養する工程(この場合、宿主細胞により、タンパク質が、高度にマンノシル化された形態で産生される);(c)細胞を(a)において提供された培養物から集め、タンパク質を細胞から回収する工程;および(d)工程(c)のタンパク質を好適なタンパク質精製方法によって精製する工程を含む。
【0158】
場合により、また、好ましくは、組換えタンパク質を、米国特許第6391638号(2002年5月21日発行、これは、全体が本明細書に示されるかのように本明細書により参照によって組み込まれる)に関して記載されるデバイスで培養することによって、本発明による植物細胞によって産生させることができる。植物細胞をこのデバイスにより懸濁状態で培養するための条件が、「CELL/TISSUE CULTURING DEVICE,SYSTEM AND METHOD」と題される米国特許出願(これは、本発明者らの1人によるものであり、本出願と共有である)に関して記載される(この米国特許出願は、全体が本明細書に示されるかのように本明細書により参照によって組み込まれ、また、本出願と同じ日に出願された)。
【0159】
本発明の1つの実施形態のさらなる態様によれば、組換えタンパク質を植物全体またはその一部において発現させることができる。それによれば、本発明のこの方法は、(a)植物または植物細胞を、目的とする組換えタンパク質をコードする組換え核酸分子により、または、この組換え核酸分子を含む発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクションする工程;(b)工程(a)によって調製される形質転換またはトランスフェクションされた植物または細胞を、高マンノース型タンパク質の発現を可能にする条件下で成長させる工程(この場合、植物細胞により、タンパク質が、露出した末端マンノース残基を有するマンノシル化された形態で産生される);(c)植物または組織を(a)において提供された植物または植物組織から集め、タンパク質を細胞から回収する工程;および(d)工程(c)のタンパク質を好適なタンパク質精製方法によって精製する工程を含む。本発明の別の実施形態において、ベクターによる植物の形質転換は安定的な形質転換であり、工程(b)の後には、目的とする組換えタンパク質を発現する植物を選抜すること、および、選抜されたトランスジェニック植物を増殖させることが、組換えタンパク質を集め、回収する前に行われる。植物または植物組織(これには、植物体(in planta)と同様に、培養でのカルス、未成熟胚、花粉、種子、茎頂部が含まれるが、これらに限定されない)を、所望される哺乳動物ポリペプチドの構成的発現または条件的発現のために組換え発現ベクターにより形質転換することが、例えば、バイナリープラスミドを(米国特許第5763748号に記載されるように)タバコ植物のA.tumefaciens媒介による形質転換のために使用して、または、共組み込み型ベクターを使用して、または、可動化ベクターを使用して、この技術分野では広く知られている。
【0160】
本発明の方法によって産生される目的とする高マンノース型タンパク質を回収および精製するための具体的かつ限定されない一例が、下記の実施例において見出され得る。実施例では、本発明によって産生される組換えh−GCDが、予想外にも、本発明の形質転換されたニンジン細胞の内膜に結合し、培地に分泌されなかったことが示される。可溶性rh−GCDは、この技術分野において知られている様々な手段(例えば、ろ過または沈殿)に従って、細胞破片および他の不溶性成分から分離することができる。例えば、凍結解凍サイクルの後、細胞は、破壊、および、細胞内可溶性タンパク質の放出を受け、これに対して、h−GCDは不溶性の膜破片に結合したままである。このような可溶物および不溶性膜破片の混合物は次に遠心分離され、可溶性画分が除かれ、従って、このことにより、精製が簡略化された。膜に結合したh−GCDは、その後、穏和な界面活性剤、プロテアーゼ阻害剤および酸化中和試薬の存在下での機械的な破壊によって溶解することができる。可溶性酵素はさらに、様々なクロマトグラフィー技術を使用して、例えば、カチオン交換クロマトグラフィーカラムおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムを使用して精製することができる。バイオリアクターにおけるrh−GCD産生期間中および精製プロセス期間中において、h−GCDの同一性、収量、純度および酵素活性を1つまたは複数の生化学的アッセイによって求めることができる。そのようなアッセイには、酵素の基質または基質アナログの加水分解を検出すること、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析および免疫学的分析(例えば、ELISAおよびウエスタンブロット)が含まれるが、これらに限定されない。
【0161】
植物全体および植物組織で発現させた組換えタンパク質の収量、純度、酵素活性、抗原特性、生物学的活性およびグリカンプロファイルを、下記の実施例において記載されるように、1つまたは複数の生化学的アッセイによって評価することができ、そのようなアッセイには、酵素の基質または基質アナログの加水分解を検出すること、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析、免疫学的分析(例えば、ELISAおよびウエスタンブロット)、グリコシダーゼ酵素によるグリカン分析、および、クロマトグラフィーが含まれるが、これらに限定されない。
【0162】
1つの好ましい実施形態によれば、この方法によって使用される宿主細胞は本発明の宿主細胞を含む。
【0163】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法によって産生される高マンノース型タンパク質は、露出したマンノース残基を含む少なくとも1つのオリゴ糖鎖を有する生物学的に活性な高マンノース型リソソーム酵素であり得る。
【0164】
この組換え酵素は標的部位において標的細胞上のマンノース受容体に結合することができる。より詳しくは、本発明の方法によって産生される組換え酵素は、標的細胞に対する天然に存在するリソソーム酵素の対応する親和性との比較において、標的細胞に対する増大した親和性を有する。それによれば、標的部位における標的細胞は対象の肝臓におけるクップファー細胞であり得る。
【0165】
1つの具体的な実施形態において、このリソソーム酵素は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼおよびシアリダーゼからなる群から選択され得る。最も好ましくは、このリソソーム酵素はグルコセレブロシダーゼ(GCD)であり得る。
【0166】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法によって使用される宿主細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスにより形質転換された根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される植物根細胞であり得る。最も好ましくは、植物根細胞はニンジン細胞である。形質転換された宿主ニンジン細胞は懸濁状態で成長することに特に留意しなければならない。
【0167】
さらなる態様において、本発明は、外因性の組換えリソソーム酵素を使用することによって、リソソーム蓄積症を有する対象(好ましくは、哺乳動物対象)を処置するための方法に関連する。
【0168】
本発明を開示し、記載したが、本発明は本明細書に開示される特定の実施例、方法工程、および材料に限定されないことが理解されるべきである。なぜなら、そのような方法工程および材料は多少変化しうるからである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のためにのみ使用され、特定の実施形態に限定されることを意図しないことも理解されるべきである。
【0169】
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、文脈が他のことを要求しない限り、語句「含む(comprise)」または変化形(comprisesまたはcomprisingなど)は、言及された完全体または工程、あるいは、完全体または工程の群を包含することを意味し、任意の他の完全体または工程、あるいは、完全体または工程の群を除外することを意味しないことが理解される。
【0170】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形態「a」、「an」および「the」は、内容がそうでないことを明確に示さない限り、複数形態を包含することに注意されるべきである。
【0171】
以下の実施例は、本発明の態様を実施する際に本発明者らによって利用される技術の代表例である。これらの技術が本発明の実施のための好ましい実施形態の例示であり、本開示に照らして、当業者が、本発明の精神および意図される範囲から逸脱することなく多数の変更がなされうることを理解することは理解されるべきである。
【実施例】
【0172】
実験手順:
プラスミドベクター
CE−T:これを、Galili教授から得られたプラスミドCEから構築した[米国特許第5367110号、1994年11月22日]。
【0173】
プラスミドCEをSalIにより消化した。
【0174】
SalIの付着末端を、DNAポリメラーゼIのラージフラグメントを使用して平滑末端にした。その後、プラスミドをPstIにより消化し、SmaIおよびPstIにより消化された塩基性エンドキチナーゼ遺伝子[Arabidopsis thaliana]由来のER標的化シグナル(ATGAAGACTAATCTTTTTCTCTTTCTCATCTTTTCACTTCTCCTATCATTATCCTCGGCCGAATTC)およびタバコキチナーゼA由来の液胞標的化シグナル(GATCTTTTAGTCGATACTATG)をコードするDNAフラグメントに連結した。
【0175】
pGREENII:これをP.Mullineaux博士から得た[Roger P.Hellens他(2000)、Plant Mol.Bio. 42:819〜832]。pGREENIIベクターからの発現は、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーター、TMV(タバコモザイクウイルス)のΩ翻訳エンハンサーエレメント、および、アグロバクテリウム・ツメファシエンス由来のオクトピンシンターゼターミネーター配列によって制御される。
【0176】
cDNA
hGCD:これをATCC(アクセション番号65696)から得た。グルコシダーゼβ(酸性)[グルコセレブロシダーゼ]を含有するGC−2.2[GCS−2kb;λ−EZZ−γ3ホモサピエンス]。インサート長さ(kb):2.20;組織:繊維芽細胞WI−38細胞。
【0177】
発現プラスミドの構築
hGCDをコードするcDNA(ATTCクローン番号65696)を、フォワードプライマー(5’CAGAATTCGCCCGCCCCTGCA3’)およびリバースプライマー(5’CTCAGATCTTGGCGATGCCACA3’)を使用して増幅した。精製されたPCR DNA産物をEcoRIおよびBglIIのエンドヌクレアーゼにより消化し(プライマー内の下線部の認識配列を参照のこと)、同じ酵素により消化された、発現カセットE−Tを有する中間ベクターに連結した。発現カセットを、SmaIおよびXbaIの制限酵素を使用して切断し、中間ベクターから取り出し、その後、バイナリーベクターpGREENIIに連結し、これにより、最終的な発現ベクターを形成した。カナマイシン抵抗性が、pGREENIIベクターと一緒に得られるnosプロモーターにより駆動されるNPTII遺伝子によって付与される(図1B)。得られる発現カセットが図1Aによって示される。
【0178】
得られたプラスミドを、下記の配列決定用プライマーを使用して、シグナルの正しいインフレーム融合を保証するために配列決定した:5’側35Sプロモーター:5’CTCAGAAGACCAGAGGGC3’、および、3’側ターミネーター:5’CAAAGCGGCCATCGTGC3’。
【0179】
ニンジンカルスの確立および細胞懸濁培養
本発明者らが行ったニンジンカルスの確立および細胞懸濁培養は、Torres K.C.によって以前に記載された通りであった(Tissue culture techniques for horticular crops、111頁、169)。
【0180】
ニンジン細胞の形質転換および形質転換細胞の単離
ニンジン細胞の形質転換を、以前に記載された方法[Wurtele,E.S.およびBulka,K.Plant Sci.、61:253〜262(1989)]の適合化によるアグロバクテリウム形質転換を使用して行った。液体培地で成長する細胞を、カルスの代わりに、プロセスを通して使用した。インキュベーション時間および成長時間を、液体培養されている細胞の形質転換のために適合化した。簡単に記載すると、アグロバクテリウム細菌をエレクトロポレーションによってpGREENIIベクターにより形質転換し[den Dulk−Ra,A.およびHooykaas、P.J.(1995)、Methods Mol.Biol.55:63〜72]、その後、30mg/mlのパロモマイシン抗生物質を使用して選抜した。ニンジン細胞をアグロバクテリウム細菌により形質転換し、液体培地において60mg/mlのパロモマイシン抗生物質を使用して選抜した。
【0181】
高レベルのGCDを発現するカルスを単離するための形質転換されたニンジン細胞のスクリーニング
形質転換後14日で、培養から得られる細胞を、個々の細胞クラスターからカルスを形成させるために3%充填細胞体積の希釈度で固体培地に置床した。個々のカルスが1cm〜2cmの直径に達したとき、細胞をSDSサンプル緩衝液においてホモジネートし、得られたタンパク質抽出物をSDS−PAGE[Laemmli U.(1970)、Nature 227:680〜685]で分離し、ニトロセルロースメンブラン(hybondCニトロセルロース、0.45ミクロン、カタログ番号:RPN203C、Amersham Life Scienceから得られる)に転写した。GCDを検出するためのウエスタンブロットを、ポリクローナル抗hGCD抗体(本明細書中下記に記載される)を使用して行った。著しいレベルのGCDを発現するカルスを拡大して、スケールアップ、タンパク質精製および分析のために液体培地における成長に移した。
【0182】
ポリクローナル抗体の調製
75マイクログラムの組換えGCD(Cerezyme(商標))を3mlの完全フロイントアジュバントに懸濁し、2羽のウサギのそれぞれに注射した。それぞれのウサギに追加免疫注射を2週間後に与えた。ウサギを追加免疫注射後の約10日で採血し、抗体力価が低下し始めるまで1週間の間隔で再び採血した。凝血塊を除いた後、血清を小分けし、−20℃で保存した。
【0183】
バイオリアクターにおけるアップスケール培養での成長
rh−GCD遺伝子を含有する遺伝子改変されたニンジン細胞の約1cm(直径)のカルスを、4.4gr/lのMSD培地(Duchefa)、9.9mg/lのチアミンHCl(Duchefa)、0.5mgの葉酸(Sigma)、0.5mg/lのビオチン(Duchefa)、0.8g/lのカゼイン加水分解物(Ducifa)、30g/lの糖、および、ホルモンの2−4D(Sigma)を含有する直径9cmのムラシゲ・スクーグ(MS)寒天培地平板に置床した。カルスを25℃で14日間成長させた。
【0184】
懸濁細胞培養を、この技術分野では広く知られているように、形質転換されたカルスをMSD液体培地(0.2mg/lの2,4−ジクロロ酢酸を含有するムラシゲ・スクーグ(1962))で継代培養することによって調製した。懸濁細胞を、250mlの三角フラスコにおいて、25℃で、60rpmの振とう速度により培養した(作業体積を25mlで開始し、7日後に50mlに増大させる)。続いて、細胞培養体積を、作業体積を同じ条件下で300mlにまで増やすことによって1Lの三角フラスコに増大させた。4LのMSD培地を含有する小型バイオリアクター(10L)[国際特許出願公開WO98/13469を参照のこと]の接種物を、7日間培養された2つの1Lの三角フラスコに由来する400mlの懸濁細胞を加えることによって得た。1Lpmの空気流とともに25℃での1週間の培養の後、MDS培地を10Lにまで加え、培養を同じ条件下で続けた。さらに5日間の培養の後、細胞のほとんどを、細胞培地を80μの網に通すことによって集め、回収した。余分な培地を絞り出し、押し固めた細胞ケークを−70℃で保存した。
【0185】
バイオリアクターデバイスのさらなる詳細を米国特許第6391638号(2002年5月21日発行、これは以前に参照により組み込まれる)に関して見出すことができる。
【0186】
タンパク質精製
培地を不溶性GCDから分離するために、約100gの湿重量の細胞を含有する凍結細胞ケークを解凍し、その後、解凍された細胞を、17000xgで20分間、4℃で遠心分離した。不溶物および無傷の細胞を100mlの洗浄緩衝液(20mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、20mMのEDTA)における再懸濁によって洗浄し、その後、17000gにおける20分間の4℃での遠心分離によって沈殿させた。rh−GCD(組換えヒトGCD)を、ペレットを200mlの抽出緩衝液(20mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、20mMのEDTA、1mMのPMSF、20mMのアスコルビン酸、3.8gのポリビニルポリピロリドン(PVPP)、1mMのDTTおよび1%のTriton−x−100)においてホモジネートすることによって抽出および可溶化した。その後、ホモジネートを室温で30分間振とうし、17000xgにおける20分間の4℃での遠心分離によって清澄化した。ペレットを捨て、上清のpHを濃クエン酸の添加によってpH5.5に調節した。pH調節後に生じた濁りを、上記と同じ条件下での遠心分離によって清澄化した。
【0187】
さらなる精製を下記のようなクロマトグラフィーカラム手順によって行った:200mlの清澄化された培地を、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)で平衡化され、XKカラム(2.6×20cm)に充填された20mlの強カチオン交換樹脂(Macro−Prep high−S担体、Bio−Rad)に負荷した。カラムを、電気伝導率、pHおよび280nmでの吸光度をモニターすることを可能にするAKTAプライムシステム(Amersham Pharmacia Biotech)と一体化した。サンプルを20ml/分で負荷し、その後、カラムを、UV吸光度がベースラインに達するまで平衡化緩衝液(25mMクエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.5)により12ml/分の流速で洗浄した。rh−GCDのプレ溶出を、200mMのNaClを含有する平衡化緩衝液により行い、溶出を、600mMのNaClを含有する平衡化緩衝液により得た。処理期間中に集められる分画物を酵素活性アッセイによってモニターし、酵素活性を(溶出ピークにおいて)示すチューブをプールした。プールされたサンプルを、5%のエタノールを含有する水で希釈(1:5)し、NaOHにより6.0にpH調節した。rh−GCDを含有するサンプルを、前段カラムの場合と同じ樹脂の10mlが充填された第2のXKカラム(1.6×20cm)に加えた。このカラムにおける樹脂は、5%のエタノールを含有する20mMクエン酸塩緩衝液(pH6.0)により平衡化された。サンプル負荷の後、カラムを平衡化緩衝液により洗浄し、GCDを溶出緩衝液(20mMクエン酸塩緩衝液(pH6.0)、5%のエタノールおよび1MのNaCl)によってカラムから溶出した。溶出工程における吸収ピークの分画物をプールし、第3のカラムに加えた。
【0188】
最終精製工程を、8mlの疎水性相互作用樹脂(TSKゲル、Toyopearl Phenyl−650C、Tosoh Corp.)が充填されたXKカラム(1.6×20cm)で行った。樹脂は、5%のエタノールを含有する10mMクエン酸塩緩衝液(pH6.0)において平衡化された。前段カラムからのGCD溶出プールを6ml/分で負荷し、その後、UV吸収がベースラインに達するまで平衡化緩衝液により洗浄した。純粋なGCDが、50%のエタノールを含有する10mMクエン酸塩緩衝液によって溶出され、これをプールし、−20℃で保存した。
【0189】
タンパク質濃度の測定
細胞抽出物および分画物におけるタンパク質濃度を、ウシ血清アルブミンの標準物(第V画分、Sigma)を使用してLowry/Bradfordの方法(Bio Radタンパク質アッセイ)[Bradford、M.、Anal.Biochem.(1976)、72:248]によってアッセイした。代替として、均一タンパク質サンプルの濃度を280nmにおける吸収によって求めた(1mg/ml=1.4O.D280)。純度を280/260nmの比によって求めた。
【0190】
GCD酵素活性アッセイ
GCDの酵素活性を、p−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド(Sigma)を基質として使用して求めた。アッセイ緩衝液は、60mMリン酸塩−クエン酸塩緩衝液(pH=6)、4mMのβ−メルカプトエタノール、1.3mMのEDTA、0.15%のTriton X−100、0.125%のタウロコール酸ナトリウムを含有した。アッセイを96ウエルELISAプレートにおいて行った。0〜50マイクロリットルのサンプルを250マイクロリットルのアッセイ緩衝液とインキュベーションし、基質を4mMの最終濃度に添加した。反応液を37℃で60分間インキュベーションした。生成物(p−ニトロフェニル;pNP)の形成を405nmにおける吸光度によって検出した。405nmにおける吸光度をt=0および終点でモニターした。60分後、6マイクロリットルの5N NaOHをそれぞれのウエルに加え、405nmにおける吸光度を再びモニターした。並行してアッセイされた参照標準曲線を使用して、試験されたサンプルにおけるGCDの濃度を定量した[Friedman他(1999)、Blood、93(9):2807〜16]。
【0191】
速度論的研究:
速度論的研究のために、GCD活性を、グルコシルセラミドの蛍光性の短アシル鎖アナログであるN−[6−[(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]ヘキサノイル]−D−erythro−グルコシルスフィンゴシン(C6−NBD−D−erythro−GlcCer)を使用して、いくつかの改変とともに本明細書中上記に記載されるようにアッセイした。C−NBD−GlcCerを、SchwarzmannおよびSandhoff(1987)によって記載されるように、スクシンイミジル6−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノヘキサノアートを使用するグルコシルスフィンゴシンのN−アシル化によって合成した。アッセイを、200μlのMES緩衝液(50mM、pH5.5)の最終体積において、0.2μgのCerezyme(登録商標)または本発明の植物GCDのどちらかを使用して行った。C−NBD−GlcCerの濃度は0.25μMから100μMにまで及んだ。反応を37℃で5分間進行させ、蛍光性脂質の抽出および分析の前に1.5mlのクロロホルム/メタノール(1:2、v/v)を加えることによって停止させた。
【0192】
生化学的分析:
ゲル内タンパク質分解および質量分析法による分析
ゲルにおける染色されたタンパク質バンドを清浄なカミソリ刃により切り出し、ゲル内のタンパク質を10mMのDTTにより還元し、10mM重炭酸アンモニウムにおける100mMのヨードアセトアミドにより修飾した。ゲル片を10mM重炭酸アンモニウムにおける50%アセトニトリルにより処理して、染色剤をタンパク質から除き、その後、ゲル片を乾燥した。乾燥ゲル片を、サンプルあたり約0.1μgのトリプシンを含有する10mM重炭酸アンモニウムにおける10%アセトニトリルにより再水和した。ゲル片を37℃で一晩インキュベーションし、得られたペプチドを、0.1%トリフルオロアセタートを含む60%アセトニトリルにより回収した。
【0193】
トリプシン消化ペプチドを、多孔性R2(Persepective)が均一充填された0.1X300mmの溶融シリカキャピラリー(J&W、内径:100マイクロメートル)での逆相クロマトグラフィーによって分離した。ペプチドを、約1μl/分の流速で、水における0.1%酢酸を含む5%〜95%のアセトニトリルの80分間の直線グラジエントを使用して溶出した。カラムからの液体をイオントラップ質量分析計(LCQ、Finnegan、San Jose、CA)にエレクトロスプレーした。質量分析を、全域MS走査を繰り返し使用し、その後、最初のMS走査から選択された最も優勢なイオンの衝突誘導解離(CID)を使用して陽イオンモードで行った。質量分析データを、Sequestソフトウエア[J.EngおよびJ.Yates、ワシントン大学およびFinnegan(San Jose)]を使用して、NR−NCBIデータベースにおけるタンパク質のシミュレートされたタンパク質分解およびCIDと比較した。
【0194】
タンパク質のアミノ末端を、製造者の説明書に従って、Peptide Sequencer 494A(Perkin Elmer)で配列決定した。
【0195】
腹腔マクロファージのGCD取り込み
マクロファージに対するGCDの標的化および取り込みが、マンノース/N−アセチルグルコサミン受容体によって媒介されることが知られており、これは、Stahl P.およびGordon S.[J.Cell Biol.(1982)、93(1):49〜56]によって記載されるように、マウスから得られるチオグリコラート誘発された腹腔マクロファージを使用して求めることができる。簡単に記載すると、マウス(メス、C57−B6系統)に2.4%のデキストロース非含有Bacto−チオグリコラート培地(Difcoカタログ番号0363−17−2)の2.5mlを腹腔内注射した。4〜5日後、処置されたマウスを頸部脱臼によって屠殺し、腹膜腔をリン酸塩緩衝化生理的食塩水により洗浄した。細胞を遠心分離(1000xg、10分間)によってペレット化し、10%ウシ胎児血清を含有するDMEM(Beit Haemek、イスラエル)に再懸濁した。その後、細胞を1〜2×10細胞/ウエルで96ウエル組織培養プレートに置床し、37℃でインキュベーションした。90分後、非接着性の細胞を、PBSを使用して3回洗浄して除き、接着性のマクロファージを、酵母マンナン(2−10、5mg/ml)の非存在下および存在下、200マイクロリットルの最終体積において0から40マイクログラムにまで及ぶ指定量のrhGCDを含有する培養培地において37℃で90分間インキュベーションした。インキュベーション後、過剰なrGCDを含有する培地を除き、細胞をPBSにより3回洗浄し、その後、溶解緩衝液(10mMのTris(pH=7.3)、1mMのMgCl、0.5%のNP−40およびプロテアーゼ阻害剤)により溶解した。細胞によって取り込まれたrGCDの活性を、細胞溶解物を上記で記載されるようなインビトロでのグリコシダーゼアッセイに供することによって求めた。
【0196】
実施例1
発現プラスミドの構築
本実施例は、下記の実施例に関して使用される例示的な発現プラスミドの構築をより詳しく記載する。
【0197】
hGCDをコードするcDNA(ATTCクローン番号65696)を、フォワードプライマーの5’CAGAATTCGCCCGCCCCTGCA3’(これはまた配列番号1によって示される)およびリバースプライマーの5’CTCAGATCTTGGCGATGCCACA3’(これはまた配列番号2によって示される)を使用して増幅した。
【0198】
精製されたPCR DNA産物をEcoRIおよびBglIIのエンドヌクレアーゼにより消化し(プライマー内の下線部の認識配列を参照のこと)、同じ酵素により消化された、発現カセットCE−Tを有する中間ベクターに連結した。CE−Tは、塩基性エンドキチナーゼ遺伝子[Arabidopsis thaliana]由来のER標的化シグナルMKTNLFLFLIFSLLLSLSSAEA(これはまた配列番号3によって示される)と、タバコキチナーゼA由来の液胞標的化シグナルDLLVDTM(これはまた配列番号4によって示される)とを含む。
【0199】
発現カセットを、SmaIおよびXbaIの制限酵素を使用して切断し、中間ベクターから取り出し、バイナリーベクターpGREENIIに連結し、これにより、最終的な発現ベクターを形成した。カナマイシン抵抗性が、pGREENIIベクターと一緒にnosプロモーターにより駆動されるNPTII遺伝子によって付与される(図1B)。得られる発現カセットが図1Aによって示される。
【0200】
得られたプラスミドを、下記の配列決定用プライマーを使用して、シグナルの正しいインフレーム融合を保証するために配列決定した。
【0201】
5’側35Sプロモーターに由来するプライマー:5’CTCAGAAGACCAGAGGGC3’(これはまた配列番号5によって示される)、および、3’側ターミネーター:5’CAAAGCGGCCATCGTGC3’(これはまた配列番号6によって示される)。確認されたクローン化hGCDのコード配列が配列番号7によって示される。
【0202】
実施例2
ニンジン細胞の形質転換、および、rhGCDを発現する形質転換細胞についてのスクリーニング
本実施例は、下記の実施例において使用されるような、ニンジン細胞を本発明に従って形質転換するための例示的な方法を記載する。
【0203】
ニンジン細胞の形質転換を、[WurteleおよびBulka(1989)、同上]によって以前に記載されたようなアグロバクテリウム形質転換によって行った。遺伝子改変されたニンジン細胞を、形質転換体を選抜するための抗生物質を含むムラシゲ・スクーグ(MS)寒天培地に置床した。図2によって示されるように、生じつつあるカルスから調製された抽出物を、抗hGCD抗体を使用するウエスタンブロット分析によってGCDの発現について調べ、Cerezyme標準物(陽性コントロール)および非形質転換細胞の抽出物(陰性コントロール)と比較した。調べられた様々なカルスの中で、1つのカルス(No.22)をスケールアップ成長およびタンパク質精製のために選択した。
【0204】
ウエスタンブロットを下記のように行った。
【0205】
このアッセイのために、得られたサンプルに由来するタンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、ニトロセルロースに転写した。この目的のために、SDSポリアクリルアミドゲルを下記のように調製した。SDSゲルは、(Laemmli、UK(1970)、Cleavage of structural proteins during assembly of the head of bacteriphage T4、Nature、227、680〜685に従って)濃縮ゲルおよび分離ゲルからなる。分離ゲルの組成は下記の通りであった:12%のアクリルアミド(Bio−Rad)、10mlのゲル溶液あたり4マイクロリットルのTEMED(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン;Sigmaカタログ番号T9281)、0.1%のSDS、375mMのTris−HCl(pH8.8)および0.1%の過硫酸アンモニウム(APS)。TEMEDおよび過硫酸アンモニウムを重合のためのフリーラジカル開始剤としてこの状況では使用した。重合開始後約20分で、濃縮ゲル(3%のアクリルアミド、0.1%のSDS、126mMのTris−HCl(pH6.8)、0.1%のAPSおよび5mlの濃縮ゲル溶液あたり5マイクロリットルのTEMED)を分離ゲルの上に注ぎ、12または18間隔のコームを挿入して、サンプルのためのウエルを作製した。
【0206】
陽極チャンバーおよび陰極チャンバーを同一の緩衝剤溶液(SDSを含有するTrisグリシン緩衝液(Biorad、カタログ番号161−0772)、pH8.3)で満たした。抗原含有物を0.5体積のサンプル負荷緩衝液(30mlのグリセロール(Sigma、カタログ番号G9012)、9%のSDS、15mlのメルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)、187.5mMのTris−HCl(pH6.8)、500マイクロリットルのブロモフェノールブルー、すべての体積が100mlのサンプル緩衝液あたりである)により処理した。その後、混合物を100℃で5分間加熱し、濃縮ゲルに負荷した。
【0207】
電気泳動を、好適な時間、室温で行った(例えば、サイズが13×9cmのゲルについては、50〜70ボルトの定電流強度を使用して45〜60分間、その後、180〜200ボルトで45〜60分間)。その後、抗原をニトロセルロース(Schleicher and Schuell、Dassel)に転写した。
【0208】
タンパク質の転写を、実質的には本明細書に記載される通りに行った。ゲルを、Whatmann3MMろ紙、導電性の厚さ0.5cmの発泡物、および、白金電極により電流を通すワイヤ電極の間に、隣接するニトロセルロースと一緒に配置した。ろ紙、発泡物およびニトロセルロースは転写緩衝液(Bioradから得られるTG緩衝液(カタログ番号161−0771);これはメタノールおよび水の緩衝液(20%メタノール)により10倍希釈された)に十分に浸された。転写を100ボルトにおいて4℃で90分間行った。
【0209】
転写後、ニトロセルロース上の未結合の結合部位を、リン酸塩緩衝液(Riedel deHaen、カタログ番号30435)により希釈された、1%ドライミルク(Dairy America)および0.1%Tween20(Sigma、カタログP1379)を含有するブロッキング緩衝液により4℃で一晩飽和させた。ブロット細片を抗体(希釈度、上記のように1%ドライミルクおよび0.1%Tween20を含有するリン酸塩緩衝液(pH7.5)において1:6500)と37℃で1時間インキュベーションした。
【0210】
抗体とインキュベーションした後、ブロットを、PBS(リン酸塩緩衝化リン酸ナトリウム緩衝液(Riedel deHaen、カタログ番号30435))により3回、それぞれの場合において10分間、洗浄した。その後、ブロット細片を、室温で1時間、好適な二次抗体(ヤギ抗ウサギ(完全分子)HRP(Sigma、カタログ#A−4914)、リン酸塩緩衝液(Riedel deHaen、カタログ番号30435)により希釈された、1%ドライミルク(Dairy America)および0.1%Tween20(Sigma、カタログP1379)を含有する緩衝液での1:3000の希釈物)とインキュベーションした。PBSにより数回洗浄した後、ブロット細片をECL発色剤試薬(Amersham、RPN2209)により染色した。
【0211】
ブロットをECL試薬に浸けた後、ブロットをX線フィルム(FUJI Super RX 18x24)にさらし、FUJI−ANATOMIX現像液および定着液(FUJI−X定着、カタログ#FIXRTU1/2)により現像した。抗体が結合したタンパク質を特徴づけるバンドが、この処理の後で視認された。
【0212】
バイオリアクターにおけるアップスケール培養での成長
カルス22の懸濁培養物を、形質転換されたカルスを液体培地で継代培養することによって得た。細胞を、(実験手順において記載されるように)、総体積がバイオリアクターへの接種のために十分になるまで振とう三角フラスコで培養した。遺伝子改変されたトラスジェニックニンジン細胞は数ヶ月を超えて培養することができ、細胞採取を5日〜7日のサイクルで得ることができる(データは示されず)。ニンジン細胞におけるrh−GCD産生量がピークである培養7日目に、細胞を、培養物を100メッシュの網に通すことによって集めた。細胞は、この技術分野において知られている手段(例えば、ろ過または遠心分離)によって集めることができることに留意しなければならない。押し固めた細胞ケークは、h−GCDを均一に精製するための材料を提供するものであり、冷凍温度で保存することができる。
【0213】
実施例3
形質転換されたニンジン細胞からの組換えによる活性なhGCDタンパク質の精製
形質転換されたニンジン細胞で発現させた組換えh−GCDは、細胞の内膜に結合し、培地に分泌されないことが見出された。機械的な細胞破壊はrGCDを不溶性の膜破片に結合させたままである(データは示されず)。その後、rGCDを、穏和な界面活性剤を使用して溶解し、細胞破片および他の不溶成分から分離した。可溶性酵素をさらに、実験手順において記載されるように、カチオン交換クロマトグラフィーカラムおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムを含むクロマトグラフィー技術を使用して精製した。
【0214】
培地を不溶性GCDから分離するために、約100gの湿重量の細胞を含有する凍結細胞ケークを解凍し、その後、17000xgで20分間、4℃で遠心分離した。不溶物および無傷の細胞を100mlの洗浄緩衝液(20mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、20mMのEDTA)における再懸濁によって洗浄し、17000gにおける20分間の4℃での遠心分離によって沈殿させた。rGCDを、ペレットを200mlの抽出緩衝液(20mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、20mMのEDTA、1mMのPMSF、20mMのアスコルビン酸、3.8gのポリビニルポリピロリドン(PVPP)、1mMのDTTおよび1%のTriton−x−100(Sigma))においてホモジネートすることによって抽出および可溶化した。ホモジネートを室温で30分間振とうし、17000gにおける20分間の4℃での遠心分離によって清澄化した。ペレットを捨て、上清のpHを濃クエン酸の添加によってpH5.5に調節した。pH調節後に生じた濁りを、上記で記載と同じ条件下の遠心分離によって清澄化した。
【0215】
さらなる精製を下記のようにクロマトグラフィーカラムによって行った:最初の段階では、200mlの清澄化された抽出物を、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)で平衡化され、XKカラム(2.6×20cm)に充填された20mlの強カチオン交換樹脂(Macro−Prep high−S担体、Bio−Rad)に負荷した。カラムを、電気伝導率、pHおよび280nmでの吸光度をモニターすることを可能にするAKTAプライムシステム(Amersham Pharmacia Biotech)と一体化した。サンプルを20ml/分で負荷し、その後、カラムを、UV吸光度がベースラインに達するまで平衡化緩衝液(25mMクエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.5)により12ml/分の流速で洗浄した。rh−GCDのプレ溶出を、200mMのNaClを含有する平衡化緩衝液により行い、溶出を、600mMのNaClを含有する平衡化緩衝液により得た。操作期間中に集められる分画物を酵素活性アッセイによってモニターし、酵素活性を(溶出ピークにおいて)示すチューブをプールした。プールされたサンプルを、5%のエタノールを含有する水で希釈(1:5)し、NaOHによりpH6.0にpH調節した。
【0216】
図3Aはこの精製段階の標準的な操作を表す。操作期間中に集められる分画物は、図3Bによって示されるように、酵素活性アッセイによってモニターされた。図3Cは、活性についてアッセイされた溶出分画物のクーマシーブルー染色を示す。
【0217】
rGCDを含有する溶出分画物を、第2の精製段階のために、前段カラムの場合と同じ樹脂の10mlが充填された第2のXKカラム(1.6×20cm)に加えた。このカラムにおける樹脂は、5%のエタノールを含有する20mMクエン酸塩緩衝液(pH6.0)により平衡化された。サンプルを負荷した後、カラムを平衡化緩衝液により洗浄し、rGCDを溶出緩衝液(20mMクエン酸塩緩衝液(pH6.0)、5%のエタノールおよび1MのNaCl)によってカラムから溶出した。図3Dはこの精製段階の標準的な操作を表す。操作期間中に集められる分画物は、図3Eによって示されるように、酵素活性アッセイによってモニターされた。図3Fは、活性についてアッセイされた溶出分画物のクーマシーブルー染色を示す。
【0218】
溶出工程における吸収ピークの分画物を、第3の精製段階のために、プールし、第3のカラムに加えた。第3の精製段階を、8mlの疎水性相互作用樹脂(TSKゲル、Toyopearl Phenyl−650C、Tosoh Corp.)が充填されたXKカラム(1.6×20cm)で行った。樹脂は、5%のエタノールを含有する10mMクエン酸塩緩衝液(pH6.0)において平衡化された。前段カラムからのGCD溶出プールを6ml/分で負荷し、その後、UV吸光度がベースラインに達するまで平衡化緩衝液により洗浄した。純粋なGCDが、50%のエタノールを含有する10mMクエン酸塩緩衝液によって溶出され、これをプールし、−20℃で保存した。
【0219】
図4はこの精製段階の標準的な操作を表す。操作期間中に集められる分画物は酵素活性アッセイによってモニターされた(図4B)。図4Cは、活性についてアッセイされた溶出分画物のクーマシーブルー染色を示す。
【0220】
処理された細胞の回分精製において、rGCDタンパク質が、95%を超えるレベルに精製された。第1段階および第3段階だけが行われるならば、純度が約80%のレベルで達成される(結果は示されず)。
【0221】
生化学的分析
精製されたrhGCDの同一性を確認するために、Mass−Spec Mass−Spec(MSMS)分析を行った。得られた結果は、リーダーペプチド配列および標的化配列を含めて、発現カセットのDNAに基づく予測されたアミノ酸配列と一致したタンパク質配列のカバー範囲が49%であることを示した。
【0222】
prGCDの特徴づけおよび配列決定:本発明の植物産生によるヒト組換えGCDをさらに特徴づけるために、rhGCDを、酸化防止剤の存在下、Triton X−100を使用して可溶化し、カチオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性クロマトグラフィーによって均一に精製した(図9a)。本発明の植物産生によるヒト組換えGCDのアミノ酸配列決定では、rhGCDの配列(配列番号15)がヒトGCDの配列(Swiss Prot P04062、タンパク質ID AAA35873)に対応し、また、シグナルペプチドの融合のために使用されたリンカーに由来するN末端における2つのさらなるアミノ酸(EF)(これらは、それに従えば、−2および−1と呼ばれる)と、液胞標的化シグナルに由来するC末端におけるさらなる7個のアミノ酸(これらは497〜503と呼ばれる)とを含むことが明らかにされた。
【0223】
精製された本発明の植物産生によるヒト組換えGCDの、抗GCDポリクローナル抗体による免疫検出を、Cerezyme(登録商標)タンパク質と一緒にSDS−PAGE分離タンパク質のウエスタンブロッティングによって行った(図9b)。これにより、植物産生のタンパク質と、CHO産生のタンパク質とが、抗原的に同一であることが確認された。
【0224】
組換えhGCDの酵素活性:
本発明の植物産生によるヒト組換えGCDの活性を、蛍光性のGlcCerアナログを使用してCerezyme(登録商標)の活性と比較した。図12は、類似する比活性が得られたこと(Vmax値がprGCDについては0.47±0.08KmolのC6−NBD−セラミド形成/分/mgタンパク質であり、Cerezyme(登録商標)については0.43±0.06KmolのC6−NBD−セラミド形成/分/mgタンパク質である)、および、類似するK値が得られたこと(本発明のGCDについては20.7±0.7KMであり、Cerezyme(登録商標)については15.2±4.8KMである)を示す。従って、これらの速度論的研究は、本発明の植物産生によるヒト組換えGCDの活性がCHO発現による酵素の活性と類似することを示す。
【0225】
腹腔マクロファージにおける組換えhGCDの取り込みおよび活性
ニンジンで産生されたrhGCDが正しくグリコシル化されているか、また、標的細胞による取り込みを受け得るか、従って、ゴーシェ病を処置するために有用であり得るかを明らかにするために、次に、rhGCDがマクロファージに結合し、マクロファージによって取り込まれることができるかをアッセイした。マクロファージに対するrhGCDの標的化がマンノース/N−アセチルグルコサミン(Man/GlcNAc)受容体によって媒介され、これを、チオグリコラート誘発された腹腔マクロファージを使用して求めることができる。図5によって示されるように、rGCDは、細胞による取り込みを高いレベルで受ける。図5Aは、本発明によるrGCDの細胞による取り込みをマンナン濃度に関して示す。
【0226】
図5Aは、Cerezyme(商標)と匹敵するレベルでの取り込みを示す(この調製物は、上記で記載される精製プロセスの第1段階および第3段階だけにより80%の純度に調製された)。
【0227】
図5Bおよび図5Cは、この調製物が、上記で記載された精製プロセスの3つの段階のすべてにより、95%を超える純度に調製されたので、rGCDの取り込みが、Cerezyme(商標)よりも高いレベルであることを示す。
【0228】
図5Cに関して、明らかに、4mg/mlのマンナンによって阻害される、総活性からの特異的活性の割合が、下記のように、本発明のGCD(rGCD、すなわち、組換えヒトGCD)については、市場における現在入手可能な製造物よりも大きい:GCD(CB−mix1、これは本発明のrGCDである)−75%、Cerezyme−65%。さらに、図によって示されるように、マンナンの添加は、細胞によるrGCDの結合を明らかに阻害した。2mg/mlのマンナンの濃度において、rGCDの結合が50%阻害された。
【0229】
これらの結果は、グリカン構造の再構成がない場合でさえ、形質転換されたニンジン細胞から発現および精製されるrhGCDは、Man/GlcNAc受容体を介して特異的にマクロファージ細胞を標的化するために取り込みを受けることができることを示す。そのうえ、この組換えrhGCDは酵素的に活性である。
【0230】
図5Dは、rhGCDがまた、ウエスタンブロットにおいて抗GCD抗体によって認識されることを示す:rGCDは本発明によるタンパク質を示し、一方、GCD標準物(レーンあたり5ng、10ngおよび25ngで示される)は、購入された市販のGCD(Cerezyme(登録商標))である。
【0231】
実施例4
毒物学試験
上記の精製手順に従って得られる物質を、標準的な毒物学試験プロトコル(医薬品のための単回用量急性毒性試験に関する業界指針、薬物評価研究センター(CDER)PT1(61FR43934、1996年8月26日)に従って、また、ICH M3(M)、医薬品のためのヒト臨床試験を実施するための非臨床的安全性研究、CPMP/ICH/286/95変更、2000年11月16日)によって試験した。
【0232】
マウスに下記のように注射した:1.8mg/kg(臨床的用量)の初回用量の後、9および18mg/kgの用量が続いた。試験群には、6匹のマウス(ICR CD−1;3匹のオスおよび3匹のメス)が、本発明によるrGCD(25mMクエン酸塩緩衝液、150mMのNaCl、0.01%のTween80、5%のエタノールを特徴とする液体キャリアにおいて)を受けるために含まれ、別の6匹のマウスが、コントロール群としてキャリアだけにより処置されるために含まれた。その後、マウスを14日間観察し、安楽死させた。
【0233】
別の研究では、ビヒクル溶液だけ、あるいは、標準的な臨床的用量(60ユニット/kg)の1倍、5倍または10倍の倍量でのprGCDの用量がICR(CD−1(登録商標))マウスに与えられた。動物(6匹/群、3匹のオスおよび3匹のメス)は薬物を10ml/kgの体積で静脈内に受けた。
【0234】
両方の毒性研究では、処置に関連づけられる明白な有害反応がないこと、甚だしい病理学的知見がないこと、体重変化がないこと、および、死亡発生がないことが、投与された最大用量でさえ認められたことが明らかにされた。さらに、臨床的用量の10倍が投与された高用量群における動物から採取された血液サンプルを血液学および臨床化学について試験した。血液学および臨床化学のすべての値が正常な範囲内であった。加えて、そのような高用量で処置された動物は、肝臓、脾臓および腎臓の組織病理学的検査に供された。巨視的または微視的な組織病理学的知見が何ら認められなかった。
【0235】
実施例5
グリコシル化分析
前記の実施例に関して記載されるように産生されたrGCDの表面に存在するグリカン構造の分析を行った。下記においてより詳細に記載されるように、結果は、グリカンの大部分が、高マンノース型構造だけでなく、末端のマンノース残基を含有することを示している。好都合なことに、この高マンノース型産物は、生物学的に活性であることが見出され、従って、さらなる工程がその活性化のために必要とされなかった。
【0236】
下記の方法を使用して、上記で示される実施例に従って産生された組換えhGCDのグリコシル化構造を決定した。簡単に記載すると、N−グリカンおよびO−グリカンの両方についての単糖結合を、加水分解およびGC−MSによる戦略を使用することによって決定した。この方法では、ペプチドに対する炭水化物の結合タイプ、および、糖タンパク質の全体的な単糖組成が推定される。以前の知識、および、同様に、様々な単糖の間における比率に基づいて、この方法により、糖タンパク質表面のグリカンのタイプが示唆され得る。この情報は、タンパク質表面に存在する、可能性のあるグリカン構造を推定するために重要である。
【0237】
別の方法はN−グリカン集団のオリゴ糖分析を特徴とした。FAB−MSおよびMALDI−TOF MSを、サンプルのアリコートをトリプシンおよびペプチドN−グリコシダーゼF(PNGaseF)により消化し、グリカンの完全メチル化を行った後で行った。この方法は、N結合型炭水化物を酵素消化された糖タンパク質から分離および単離するために使用される。単離されたグリカン混合物におけるグリカン集団の質量が決定され、データベースから得られる既知構造の質量と比較され、また、単糖組成分析に照らして比較される。提案された構造はまた、供給源生物のグリコシル化パターンにも基づく。
【0238】
別の方法では、O−グリカン集団を、トリプシンおよびPNGaseFにより処理された糖ペプチドの還元的脱離、脱塩、ならびに、完全メチル化の後で分析することが含まれた。O−グリカンはPNGaseFによって遊離されず、従って、ペプチドに結合したままであるグリカンは、O結合型グリカンである可能性が最も高い。その後、これらのグリカンを還元的脱離によって遊離させ、それらの質量が分析される。
【0239】
単糖組成分析(下記で要約される)では、植物でのグリコシル化に特徴的なヘキソース、ヘキソサミンおよびペントースの特徴的な分布が明らかにされた。GlcNacとマンノースとの間における比率により、特徴的なN結合型構造が、優勢なグリカン集団であることが示唆される。
【0240】
上記で記載されるように産生されたhGCDに由来するN−グリカンの質量分光分析では、優勢なN−グリカン集団がPent.deoxyHex.Hex3.HexNAc2の単糖組成を有することが示される。
【0241】
材料および方法
分析を、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)、高速原子衝撃質量分析(FAB−MS)および遅延抽出−マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析(DE−MALDI−TOF MS)の組合せを使用して行った。
【0242】
オリゴ糖分析のために、N−グリカン集団を、サンプルのアリコートをトリプシンおよびペプチドN−グリコシダーゼF(PNGaseF)により消化し、グリカンの完全メチル化を行った後、FAB−MSおよびMALDI−TOF MSによって分析した。O−グリカン集団を、トリプシンおよびPNGaseFにより処理された糖ペプチドの還元的脱離、脱塩、ならびに、完全メチル化の後で分析した。
【0243】
N−グリカンおよびO−グリカンの両方についての単糖結合を、加水分解、誘導体化およびGC−MSによる戦略を使用して決定した。
【0244】
実験の記載
サンプル
サンプルバイアルには下記(表1)のように特有のサンプル番号を付けた:
【0245】

【0246】
サンプルは、必要とされるまで−10〜−30℃の間で保存された。
【0247】
タンパク質化学
無傷サンプルの透析
1個のバイアル(0.8mg/mlの規定された濃度で1mlのタンパク質を含有する)をSlide−A−Lyzer透析カセット(10kDaの分子量排除)に注入し、水に対して4℃で24時間にわたって透析し、その間、水を3回交換した。透析後、サンプルをカセットから取り出し、凍結乾燥した。
【0248】
オリゴ糖スクリーニングのための無傷サンプルのトリプシン消化
透析後の凍結乾燥サンプルを、10%アンモニア水によりpH8.4に調節された50mM重炭酸アンモニウム緩衝液に再懸濁し、SOP B001およびSOP B003に従って37℃で4時間、TPCK処理トリプシンにより消化した。反応を、95℃の加熱ブロックに2分間入れることによって停止させ、その後、凍結乾燥した。
【0249】
炭水化物化学
ペプチドN−グリコシダーゼAによる消化
糖タンパク質サンプルから得られるトリプシン切断されたペプチド/糖ペプチド混合物を、酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.5)において37℃で15時間、ペプチドN−グリコシダーゼA(PNGaseA)酵素により処理した。反応を凍結乾燥によって停止させた。得られた生成物を、C18Sep−Pakカートリッジを使用して精製した。
【0250】
還元的脱離
可能性のあるO結合型糖ペプチドを含有するSep−Pak分画物を、0.05M水酸化ナトリウムにおける10mg/mlのホウ水素化ナトリウムの溶液に溶解し、45℃で16時間インキュベーションした。反応を氷酢酸の添加によって停止させた。
【0251】
還元的脱離物質の脱塩
Dowexビーズを使用する脱塩を、SOP B022に従って行った。サンプルをカラムに負荷し、4mlの5%酢酸水溶液を使用して溶出した。回収された画分を凍結乾燥した。
【0252】
遊離炭水化物の完全メチル化
5%酢酸水溶液のSep−Pak分画物において溶出するN結合型炭水化物、および、還元的脱離によって遊離する、可能性のあるO結合型グリカンを、水酸化ナトリウム(NaOH)/ヨウ化メチル(MeI)手法(SOP B018)を使用して完全メチル化した。完全メチル化されたN結合型グリカン混合物の一部をFAB−MSおよびMALDI−TOF MSによって分析し、残りを結合分析に供した。
【0253】
N結合型炭水化物の結合分析
誘導体化
トリプシンおよびPNGaseAによる消化または還元的脱離の後で得られる完全メチル化グリカンサンプル混合物を加水分解し(2M TFA、120℃で2時間)、還元した(2M NHOHにおけるホウ重水素化ナトリウム(NaBD)、室温で2時間、SOP B025)。ホウ重水素化物が分解したときに生じるホウ酸塩を、メタノール/氷酢酸(90:10)の混合物の添加、それに続く凍結乾燥を3回行うことによって除いた。その後、サンプルを、無水酢酸を使用してアセチル化した(100℃で1時間)。アセチル化サンプルをクロロホルムへの抽出によって精製した。その後、部分的にメチル化されたアルジトールアセテートをガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)によって調べた。部分的にメチル化されたアルジトールアセテートの標準物混合物、および、ブランクもまた、同じ条件下で処理した。
【0254】
気液クロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)
ヘキサンに溶解された誘導体化炭水化物サンプルのアリコート(1μl)を、Autosystem XLガスクロマトグラフおよびDellデータシステムを伴うPerkin Elmer Turbomass Gold質量分析計を使用するGC/MSによって下記の条件下で分析した:
ガスクロマトグラフィー
カラム:DB5
注入:オンカラム
インジェクター温度:40℃
プログラム:40℃で1分間、その後、70℃/分で100℃に、100℃で1分間保持し、その後、8℃/分で290℃に、最後に290℃で5分間保持する。
キャリアガス:ヘリウム
質量分析
イオン化電圧:70eV
取得モード:スキャニング
質量範囲:35〜450ダルトン
MS分解能:ユニット
【0255】
無傷グルコセレブロシダーゼの糖分析
誘導体化
500μgのグルコセレブロシダーゼに等しいアリコートを内部標準物としての10μgのアラビトールとともに凍結乾燥した。その後、これを80℃での一晩のメタノリシスに供し、窒素下で乾燥した。遊離した単糖を、メタノール、ピリジンおよび無水酢酸の溶液を使用して再度N−アセチル化し、再び窒素下で乾燥し、SOP B023に従ってそれらのトリメチルシリル(TMS)誘導体に変換した。TMS誘導体を窒素下で濃縮し、2mlのヘキサンに溶解し、3分間超音波処理した。その後、サンプルを4℃で一晩平衡化させた。10μgのアラビトールを含有するブランクと、それぞれ10μgのフコース、キシロース、マンノース、ガラクトース、グルコース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルノイラミン酸およびアラビトールを含有する標準物単糖混合物とを並行して調製した。その後、これらのTMS誘導体をガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)によって調べた。
【0256】
気液クロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)
ヘキサンに溶解された誘導体化炭水化物サンプルのアリコート(1μl)を、Autosystem XLガスクロマトグラフおよびDellデータシステムを伴うPerkin Elmer Turbomass Gold質量分析計を使用するGC/MSによって下記の条件下で分析した:
ガスクロマトグラフィー
カラム:DB5
注入:オンカラム
インジェクター温度:40℃
プログラム:90℃で1分間、その後、25℃/分で140℃に、5℃/分で220℃に、最後に10℃/分で300℃にして、300℃で5分間保持する。
キャリアガス:ヘリウム
質量分析
イオン化電圧:70eV
取得モード:スキャニング
質量範囲:50〜620ダルトン
MS分解能:ユニット
【0257】
遅延抽出−マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(DE−MALDI MS)および高速原子衝撃質量分析(FAB−MS)
MALDI−TOF質量分析を、遅延抽出(DE)と結合させたVoyager STR Biospectrometry Research Stationレーザー脱離質量分析計を使用して行った。
【0258】
乾燥した完全メチル化グリカンをメタノール:水(80:20)に再溶解し、2,5−ジヒドロ安息香酸のマトリックスを使用して分析した。ブラジキニン、アンジオテンシンおよびACTHを外部校正物質として使用した。
【0259】
陽イオン高速原子衝撃質量分析による分析を、Vacc=8kVで作動するM−Scan’s VG AutoSpecE質量分析計で、分解能がおよそ2500である最大感度において4500の質量範囲について行った。セシウムイオンガンを、30kVで作動するスペクトルを作製するために使用した。スペクトルを、Opusソフトウエアを使用するVAXデータシステム3100M76で記録した。
【0260】
乾燥した完全メチル化グリカンをメタノールに溶解し、供給源への挿入の前に、2〜4μlのチオグリセロールがマトリックスとして事前に塗られた標的に負荷した。
【0261】
別の一組のグリコシル化分析では、類似する方法が、グリコシル化パターンを決定するために、また、本発明のニンジン細胞懸濁培養によって産生される主要なグリコシル化産物を特定するために使用された。
【0262】
グリコシル化パターンを、様々なエキソグリコシダーゼによる逐次消化を使用して、グリカン構造および相対的な量を求めるために、National Institute for BiotechnologyのGlycobiology Center(Ben Gurion大学、Beer Sheba、イスラエル)によって分析した。本発明の植物GCDサンプルをSDS−PAGEで処理し、61kDaのバンドを切り出し、その後、PNGaseAとのインキュベーション、または、トリプシンとのインキュベーション、それに続くPNGaseAとのインキュベーションのどちらかに供して、N結合型グリカンを遊離させた。グリカンをアントラニルアミド(2AB)により蛍光標識し、順相HPLCで処理した。
【0263】
標識グリカンプールの配列決定を、様々なエキソグリコシダーゼによる逐次消化、その後でのHPLC分析によって達成した。個々のグリカンの保持時間を、グルコースユニット(GU)のラダーを与えるデキストランの標準的な部分加水分解物の保持時間と比較した。非標識のグリカンをさらに精製し、MALDI質量分析によって分析した。使用されたエキソグリコシダーゼ:ウシ腎臓のα−フコシダーゼ(これはα1−6およびα1−3のコアフコースを消化する;Prozyme)、タチナタマメのマンノシダーゼ(これは、α1−2,6>3マンノースを除く;Prozyme)、キサントモナスのβ1,2−キシロシダーゼ(これは、α−結合したマンノースが除かれた後でのみ、α1−2キシロースを除く;Calbiochem)。
【0264】
ウシ精巣のα−ガラクトシダーゼ(これは、非還元末端ガラクトースのα1−3結合およびα1−4結合を加水分解する;Prozyme)、肺炎連鎖球菌のヘキソサミニダーゼ(これは、α1−2,3,4,6のGalNAcおよびGlcNAcを消化する;Prozyme)。グリコシル化をさらに、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)、高速原子衝撃質量分析(FAB−MS)および遅延抽出−マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(DE−MALDI TOF MS)を使用してM−Scan(Berkshire、英国)によって分析した。オリゴ糖決定のために、N−グリカン集団を、トリプシンおよびPNGaseAによるサンプルの消化、そして、グリカンの完全メチル化の後、FAB−MSおよびMALDI−TOF MSによって分析した。O−グリカンを、トリプシンおよびPNGaseAにより処理された糖ペプチドの還元的脱離、脱塩、ならびに、完全メチル化の後で分析した。
【0265】
prGCDの異なるバッチにおけるN−グリカンの類似性を、prGCDのバッチ間の一貫性を明らかにするという目的のために、糖タンパク質から遊離するオリゴ糖についてのクロマトグラフィープロファイルを得るために、トリプシンおよびPNGaseAによる消化の後、パルスアンペロメトリック検出(HPAEC−PAD、Dionex法)による高性能アニオン交換クロマトグラフィーによって分析した。この手法は、定性的かつ定量的な様式でのオリゴ糖パターンのクロマトグラフィー比較を可能にする。
【0266】
結果および考察
グルコセレブロシダーゼのTMS糖分析
N結合型オリゴ糖スクリーニング
無傷の糖タンパク質を透析に供し、その後、トリプシン消化した。凍結乾燥した生成物を、PNGaseAを使用して消化し、その後、C18Sep−Pakを使用して精製した。5%酢酸水溶液(N結合型オリゴ糖含有)画分を完全メチル化し、FAB質量スペクトルを、誘導体化されたオリゴ糖の一部を使用して、フラグメントイオンについての低質量範囲で得た。DE−MALDI−TOF質量スペクトルを、誘導体化されたオリゴ糖の一部を使用して、分子イオンについての高質量範囲で得た。
【0267】
グルコセレブロシダーゼ由来のN−グリカンの分析
表1は、FABスペクトルに存在する優勢なフラグメントイオン、および、MALDIスペクトルに存在する分子イオンを列挙する。分子イオン領域(付録IIIに示される)には、優勢なシグナルが1505.8のm/z(これは、Pent.deoxyHex.Hex.HexNAcの組成を有する構造についての[M+Na]擬分子イオンと一致する)において含有される。強度がそれほど大きくない一連の擬分子イオンもまた、複合型構造および高マンノース型構造と一致して検出された。検出された高マンノース型構造は、サイズにおいて、1579.8のm/zにおけるHex.HexNAcから、2193.0のm/zにおけるHex.HexNAcにまで及ぶ。複雑なシグナルが、1331.7のm/z(これは、Pent.Hex.HexNAcの組成を有する構造についての[M+Na]擬分子イオンと一致する)などのそれほど広範囲にプロセシングされていないN−グリカンから生じているか、または、例えば、1751.0のm/z(これは、Pent.deoxyHex.Hex.HexNAcの組成を有する構造についての[M+Na]擬分子イオンと一致する)、2375.4のm/z(これは、Pent.deoxyHex.Hex.HexNAcの組成を有する構造についての[M+Na]擬分子イオンと一致する)、および、2753.6のm/z(これは、Pent.deoxyHex.Hex.HexNAcの組成を有する構造についての[M+Na]擬分子イオンと一致する)のより大きいN−グリカンから生じている。
【0268】
FAB質量スペクトルは、スペクトルの低質量領域におけるフラグメントイオンに基づいてアンテナ構造に関する情報をもたらす(データは示されず)。様々なシグナルが検出され、これらにより、ヘキソース(219のm/zにおいて)およびHexNAc(260のm/zにおいて)がN−グリカンにおける非還元末端の単糖として特定された。
【0269】

【0270】
第1欄におけるすべての質量が、別途言及される場合を除き、モノアイソトピックである。ソフトウエアは、多くの場合、特に1700Daを超える質量については、質量数を13Cの同位体ピークに帰属するので、これらの質量数は生データに直接に関連しない場合がある。
【0271】
グルコセレブロシダーゼ由来のN−グリカンの結合分析
結合分析を、PNGaseA消化、Sep−Pak精製および完全メチル化の後、遊離したN結合型炭水化物について行った。
【0272】
複雑なクロマトグラムが、誘導体化試薬に起因するいくつかの不純物ピークとともに得られた。保持時間およびスペクトルを標準物混合物と比較することにより、表3に列挙される糖含有ピークの暫定的な帰属が可能であった。
【0273】

【0274】
4.3 O結合型オリゴ糖スクリーニング
還元的脱離を、トリプシン消化およびPNGaseA消化の後のグルコセレブロシダーゼのSep−Pak精製から得られる60%2−プロパノール画分(可能性のあるO結合型糖ペプチド画分)に対して行った。サンプルを反応停止後に脱塩し、ホウ酸塩を除去した後、完全メチル化した。FAB質量スペクトルを、誘導体化されたオリゴ糖の一部を使用して、フラグメントイオンについての低質量範囲で得た。DE−MALDI−TOF質量スペクトルを、誘導体化されたオリゴ糖の一部を使用して、分子イオンについての高質量範囲で得た。O結合型グリカンの存在と一致するシグナルが観測されなかった(データは示されず)。
【0275】
グルコセレブロシダーゼ由来のO−グリカンの結合分析
結合分析を、完全メチル化の後、還元的脱離の生成物に対して行った。典型的なO結合型グリカンの存在と一致するシグナルが観測されなかった(データは示されず)。
【0276】
図6は、哺乳動物細胞であるCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞から得られるGCD(Cerezyme(商標))と、ニンジン細胞から得られる本発明のGCDとの間における比較としてのいくつかの例示的なグリカン構造を示す。示されるように、これらの構造の再構成が、Cerezyme(商標)については、露出したマンノース残基を得るために必要である。それに反して、そのような露出したマンノース残基が、本発明に従って植物細胞から得られるGCDについては、さらなる操作、例えば、グリコシラーゼによるさらなる操作を必要とすることなく、直接に得られる。
【0277】
図7は、rGCDに見出される主要なグリカン構造を表す。図7は、a)ニンジン細胞の懸濁で発現させたhGCの表面に見出される優勢なオリゴ糖集団(1505.7のm/z);b)典型的なN結合型コア;c)フコシル化された植物N結合型コアからなる提案される構造を示す。N結合型グリカンが、アスパラギンを介して、かつ、図の右側におけるGlcNac(GN)残基の還元性末端を介してタンパク質に結合する。植物のグリコシル化パターンでは、フコース残基が、α(1−3)グリコシド結合を使用して最初のGlcNacに結合するコア構造の一部である場合があり、一方、哺乳動物の構造では、α(1−6)グリコシド結合が典型的に使用される。
【0278】
図8A〜図8Dは、本発明によるrGCDタンパク質において検出されるN−グリカンについて、すべての可能な構造を示す。
【0279】
特定された優勢なグリカン構造は、エンドウマメ、イネ、トウモロコシおよび他の食用植物から得られるほとんどの植物糖タンパク質において見出されるコアグリカン構造である。この構造は、コアのα−(1,3)−フコースだけでなく、コアのキシロース残基を含有する。Bardor他(33)によって行われた研究では、非アレルギー性供血者の50%がコアキシロースについての特異的な抗体をその血清に有し、また、25%が、コアのα−(1,3)−フコースに対する特異的な抗体を有することが示される。しかしながら、そのような抗体が植物由来の生物医薬用糖タンパク質の使用に対する制限をもたらし得るかどうかはまだ研究されていない。
【0280】
上記で記載されるように産生されたhGCDの優勢でないグリカン集団は主に、Hex4HexNAc2からHex8HexNAc2までの高マンノース型構造であった。複雑な構造のなかには、Pent.deoxyHex2.Hex4.HexNAc3およびPent.deoxyHex3.Hex5.HexNAc3などの構造を示したものがあった。Pent.Hex3.HexNAc2がより小さい割合で検出された。
【0281】
主要な末端単糖はヘキソース(マンノースまたはガラクトース)およびN−アセチルヘキソサミンであり、このことは、高マンノース型構造および部分的にプロセシングされた複合型構造の存在と一致している。
【0282】
O結合型オリゴ糖スクリーニングに関しては、典型的なO結合型グリカンと一致するシグナルが観測されなかった。これらの結果は、哺乳動物培養システムにおいて産生される天然型GCDおよび組換えGCDを含めて、他の細胞システムから得られるGCDの知られているグリコシル化と一致しているように、GCDは、O結合型オリゴ糖を有しないことがこの技術分野では知られている。しかしながら、単糖組成において、アラビノースと一致するシグナルが検出された。
【0283】
本発明に関して重要な点は、hGCDタンパク質のN−グリカン組成分析により、N−グリカンの大部分がマンノース残基で終わることが示されたことである。このことは、マクロファージのマンノース受容体による治療的hGCDの取り込みを助けるマンノース末端N−グリカンのための必要条件と一致する。しかしながら、哺乳動物細胞で産生される天然型GCDまたは組換えGCDのどちらも高マンノース型ではない。従って、本発明では、商業的に製造されているhGCDタンパク質の顕著な欠点、すなわち、これらのタンパク質が、上記で記載されるように産生されるタンパク質とは異なり、マンノース糖で終わるように改変されるという欠点が克服される。
【0284】
さらなるグルコシル化分析を、植物細胞で調製される精製されたヒト組換えグルコセレブロシダーゼに対して行った。グリコシル化を、様々なエキソグリコシダーゼによる逐次消化を使用して、グリカン構造およびグリカンの量比を求めるために分析した(National Institute for BiotechnologyのGlycobiology Center(Ben Gurion大学、Beer Sheba、イスラエル))(上記の方法を参照のこと)。この分析では、N結合型グリカンが、2つのさらなるマンノース残基にα1−3結合およびα1−6結合で結合する、2つのGlcNAc残基および1−4結合したマンノースからなる主要なコアを有することが見出された。見出されたさらなる残基が、HPLC、酵素アレイ消化およびMALDIに基づくすべての構造およびそれらの相対的な量を示す図10aに示される。図10bはCerezyme(登録商標)のグリカン構造をインビトロ酵素プロセシングの前後において示す。注目すべきことに、本発明のGCDのグリカン構造の分析では、グリカンの90%超がマンノースを多く含み、露出した末端マンノース残基を有したことが明らかにされた(図10a)。これに対して、Cerezyme(登録商標)の場合、マンノース残基は、複雑なインビトロ手順の後でのみ、露出するだけである(図10b)。本発明のGCDにおける優勢なグリカンは、エンドウマメ、イネ、トウモロコシおよび他の食用植物から精製されたほとんどの糖タンパク質において見出されるコア構造である。この構造は、コアα−(1,3)−フコースだけでなく、コアα−(1,2)−キシロース残基を含有する(図10a)。DE−MALDI−MSのデータは、典型的なO結合型グリカンと一致するシグナルを全く含有しなかった。異なる製造バッチから得られる本発明のGCDについてのグルカンプロファイルのさらなる分析を、ニンジン細胞システムにおいて産生されるGCDのバッチ間の再現性を評価するために行った。図11に示されるように、本発明の植物GCDの表面におけるグリカンの集団はバッチ間において非常に再現性がある。
【0285】
実施例5a
生物学的に活性なα−ガラクトシダーゼの植物細胞における発現
ヒトα−ガラクトシダーゼA(X連鎖型リソソーム蓄積症のファブリー病における病変)が配列決定およびクローン化されている。治療的使用のために好適なα−ガラクトシダーゼAが植物細胞で産生され得るかどうかを調べるために、植物の小胞体に対して標的化されるヒトα−ガラクトシダーゼAのコード配列を含むベクターを植物細胞で発現させ、植物由来の組換えヒトα−ガラクトシダーゼAのポリペプチド配列、生物学的活性およびグリカン構造を評価した。
【0286】
ヒトα−ガラクトシダーゼAの発現ベクター:ヒトα−ガラクトシダーゼAのコード配列と、翻訳されたタンパク質を植物の小胞体(ER)分泌系に標的化するためのN末端のリンゴペプチナーゼのリーダーペプチド(配列番号16、MALKTQLLWSFVVVFVVSFSTTSCSG)とを含有するベクターを構築した。2つの異なる構築物をクローン化した。この場合、異なるC末端配列が、翻訳されたタンパク質を特定の細胞区画において持続させるために設計された。一方の構築物(α−gal−vac、配列番号17)は、ERから植物液胞へのタンパク質の輸送のために設計されたC末端の液胞標的化シグナル(DLLVDTM、配列番号4)を含有した。第2の構築物(α−gal−KDEL、配列番号19)はそのようなC末端の液胞標的化シグナルを有さず、cis−ゴルジからERに戻る逆行輸送を可能にするために設計されたC末端のER保持配列(KDEL、配列番号23)を含有した(Rayon他、Journal of Experimental Botany、第49巻、第326号、1463頁〜1472頁、1998;および、Evron他、2007、FASEB Jを参照のこと)。
【0287】
α−gal−vacクローン:
ヒトα−galのコード配列が、GENEART AG(Regensburg、ドイツ)によって人工合成された(配列番号17)。α−gal−vac配列は、リンゴペクチナーゼのリーダー(配列番号16)(MALKTQLLWSFVVVFVVSFSTTSCSG)、成熟型α−ガラクトシダーゼ配列(配列番号24)、および、液胞保持シグナル(配列番号4)を含む。合成遺伝子は、サブクローニングを容易にするための制限部位によって囲まれる。
【0288】
遺伝子を、ニコチアナ・ベンタミアマ(Nicotiana benthamiama)植物における一過性発現のためにICON genetics(Halle、ドイツ)によって開発されたベクターに、NCOIおよびHindIIIを使用してクローン化した。
【0289】
α−gal−KDELクローン:
C末端のER保持シグナルを有するクローンを構築するために、液胞シグナルを、BglII−HindIIIフラグメントを置換するためにリン酸化リンカー(配列番号21および22)を付加することによってER保持シグナルにより置換した。リン酸化リンカーはER保持シグナルをコードし、BglIIおよびHindIIIの酵素によって生じる末端と適合し得る付着末端を有する:

【0290】
α−gal−KDEL構築物を作製するために、α−gal−vac構築物(配列番号17)をBglIIおよびHindIIIにより消化し、上記リンカーと連結した。リンカーの挿入をSacIによる制限によって確認した。得られた構築物を、その後、N.benthamiamaにおける一過性発現のために、本明細書に記載されるようにICONベクターにクローン化した。
【0291】
N.benthamiamaにおける一過性発現システム
植物ウイルスベクターの使用が、植物体におけるタンパク質の迅速かつ高レベルの一過性発現を可能にする、トランスジェニック植物の代替として、この場合には選ばれた。
【0292】
目的とするタンパク質が、強力な重複させたウイルスプロモーター(例えば、コートタンパク質サブゲノムプロモーター)から発現される。このシステムは、アグロバクテリウムによって植物に送達されるウイルスベクターの一時的増幅(アグロ感染)に頼る。アグロ感染では、植物において機能的なプロモーターおよびRNAウイルスのcDNAがアグロバクテリウムから植物細胞の中にT−DNAとして移される。T−DNAが植物において転写されて、自己複製を開始することができる生物学的に活性なウイルスRNAを生じさせる。
【0293】
この方法は多数のタンパク質変化体の迅速な組み立ておよび発現を可能にする。この方法は非常に万能的であるだけでなく、ミリグラム量のタンパク質もまたほんの数日でもたらす。
【0294】
植物体のトランスフェクション:
N.Benthamiana植物を発芽させ、長日(16時間照明/8時間消灯)の光条件(50μE)下、24℃〜25℃で、顆粒状の徐放性肥料(Scott Marysville、OH)が補充された市販の混合土壌(Givaat Ada、IL)において成長させる。
【0295】
一過性発現のために、ICON genetics(Weinbergweg、ドイツ)によって開発された3ベクター組換えシステムを記載される通りに使用した(Gleba他、Vaccine、23:2042〜2048、2005)。ベクターの1つには、α−ガラクトシダーゼのcDNAが挿入され、他の2つのベクターは、完全なウイルスレプリコンを構築するための遺伝子(RdRpおよびインテグラーゼ)を含有し、従って、自己複製を開始することができる生物学的に活性なウイルスRNAを生じさせる。
【0296】
アグロバクテリアを、エレクトロポレーション(2500V、5msec)を使用してα−ガラクトシダーゼベクター含有プラスミドにより形質転換した[den Dulk−Ra,A.およびHooykaas,P.J.(1995)、Methods Mol.Biol.55:63〜72]。植物に、3つのICONプラスミドを含有するアグロバクテリウムを、この技術分野において知られている標準的な方法による真空浸潤によって浸潤させた。簡単に記載すると、N.benthamiana植物(5〜6週齢)を、すべての地上部の植物器官を細菌懸濁物に浸すことによる浸潤に供し、真空チャンバーに置いた。約0.8barの真空を1分間加え、その後、大気圧に素早く戻した。植物を、同じ条件下でさらに5日間〜7日間、温室に戻した。
【0297】
タンパク質精製:
タバコの葉を冷凍し、その後、乳鉢および乳棒を用いて粉砕した。粉砕された葉を、20mMのTris、20mMのEDTA、20mMのアスコルビン酸、1mMのMDTT、1mMのPMSFを含有する抽出緩衝液(pH7.2)に1:1の体積対重量の比率で再懸濁した。その後、細胞を破砕し、ホモジネートした。懸濁物をさらに、ナイフホモジナイザーを使用してホモジネートした。細胞懸濁物をマイクロ流体細胞破砕機に通し、得られた調製物を遠心分離した。ペレットを捨て、上清を硫酸アンモニウムにより処理し、遠心分離した。その後、ペレットをクエン酸塩緩衝液(20mM、pH6)に溶解し、溶液をpH5.5にさらに酸性化し、遠心分離し、ろ過した(0.45μM)。ろ液を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムに負荷し、溶出された分画物をプールし、カチオン交換クロマトグラフィーカラムに負荷した。溶出された分画物をプールし、触媒活性について分析した。
【0298】
ウエスタンブロティング:
ウエスタンブロットを、ポリクローナルのウサギ抗α−galA抗体を使用することによって、形質転換されたタバコ植物から得られるα−ガラクトシダーゼ分子を特定するために行った。
【0299】
タンパク質の転写を、実質的には本明細書に記載されるように行った。簡単に記載すると、ゲルからニトロセルロースへの転写を100ボルトにおいて4℃で90分間行った。転写後、ブロットをブロッキング緩衝液(1%ドライミルク、0.1%Tween20(Sigma、カタログP1379)、リン酸塩緩衝液において)によりブロッキング処理した。その後、ブロットを抗体とのインキュベーションによって免疫検出し、洗浄し、好適な二次抗体(Jackson−Labs HRPコンジュゲート化ヤギ抗ウサギAb)と反応させた。その後、ブロットをECL発色剤試薬(Amersham、RPN2209)により発色させ、オートラジオグラフィーを可視化のために使用した。
【0300】
活性なα−ガラクトシダーゼ酵素の測定:
活性な植物α−ガラクトシダーゼAのレベルを、200〜12.5ng/mlの濃度範囲についてプロットされた市販α−ガラクトシダーゼのFabrazyme(Genzyme、Cambridge、Mass)の活性の校正曲線に対して求めた。活性を、p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(Sigma)を加水分解基質として使用して求めた。アッセイ緩衝液は、pH4.6で、20mMのクエン酸、30mMのリン酸ナトリウム、0.1%のBSAおよび0.67%のエタノールを含有した。アッセイを96ウエルELISAプレート(Greiner#655061、96W)において行い、50マイクロリットルのサンプルを150マイクロリットルのアッセイ緩衝液とインキュベーションし、30マイクロリットルの基質を8mMの最終濃度に加えた。反応混合物を37℃で90分間インキュベーションし、結果を校正結果に対してプロットした。生成物(p−ニトロフェニル;pNP)の形成を405nmにおける吸光度によって検出した。405nmにおける吸光度をt=0および終点においてモニターした。90分後、100マイクロリットルの1.98M炭酸ナトリウムをそれぞれのウエルに加え、405nmにおける吸光度を再びモニターした。
【0301】
速度論的研究:
Kmを求めるために、p−ニトロフェニル(pNP)(Sigma)の濃度を1000μM〜45000μMの範囲で変化させた。25ng/mLのα−ガラクトシダーゼおよび様々な濃度の基質を含有する反応混合物を、37℃で、85分から105分にまで及ぶ時間にわたって反応させた。反応サンプルを飽和炭酸ナトリウムにより反応停止させ、p−ニトロフェニル生成物の吸光度を430nmにおいて検出した。
【0302】
生化学的分析
PAGEから得られるタンパク質バンドのトリプシン消化が、Smoler Proteomics Center(Technion、Haifa、IL)によって行われた。簡単に記載すると、ゲルにおける染色されたタンパク質バンドを清浄なカミソリ刃により切り出し、ゲル内のタンパク質を10mMのDTTにより還元し、10mM重炭酸アンモニウムにおける100mMのヨードアセトアミドにより修飾した。ゲル片を10mM重炭酸アンモニウムにおける50%アセトニトリルにより処理して、染色剤をタンパク質から除き、その後、ゲル片を乾燥した。乾燥したゲル片を、サンプルあたり約0.1μgのトリプシンを含有する10mM重炭酸アンモニウムにおける10%アセトニトリルにより再水和した。ゲル片を37℃で一晩インキュベーションし、得られたペプチドを、0.1%トリフルオロアセタートを伴う60%アセトニトリルにより回収した。
【0303】
トリプシン消化ペプチドを、多孔性R2(Persepective)が均一充填された0.1X300mmの溶融シリカキャピラリー(J&W、100マイクロメートルのID)での逆相クロマトグラフィーにより分離した。ペプチドを、約1μl/分の流速で、水における0.1%酢酸を含む5%〜95%のアセトニトリルの80分間の直線グラジエントを使用して溶出した。カラムからの液体をイオントラップ質量分析計(LTQ、Orbitrap、Waltham、MA)にエレクトロスプレーした。質量分析を、全域MS走査を繰り返し使用し、その後、最初のMS走査から選択された最も優勢なイオンの衝突誘導解離(CID)を使用して陽イオンモードで行った。質量分析データを、Sequestソフトウエア[J.EngおよびJ.Yates、ワシントン大学およびFinnegan(San Jose)]を使用して、NR−NCBIデータベースにおけるタンパク質のシミュレートされたタンパク質分解およびCIDと比較した。
【0304】
タンパク質のアミノ末端を、製造者の説明書に従って、Peptide Sequencer 494A(Perkin Elmer)で配列決定した。
【0305】
MALDI−TOF:
MALDI−TOF質量分析が、Smoler Proteomics Center(Technion、Haifa、IL)において、この技術分野において知られている方法に従って、MALDI TOF TOF4700(Applied Biosystems)を使用して行われた。
【0306】
ゲルろ過:
ゲルろ過クロマトグラフィーでは、タンパク質がサイズに基づいて分離される。分子が多孔性ビーズの中を通って移動し、これにより、ビーズ内に拡散する。このとき、より小さい分子はビーズの細孔の中にさらに拡散し、従って、すき間の中をより遅く移動し、一方、より大きい分子はあまり進入しないか、または、全く進入せず、従って、すき間の中をより速く移動する。分子量および三次元形状の両方が保持の程度に寄与する。植物α−ガラクトシダーゼサンプルを分析緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、pH=6.0)に再懸濁し、流速が0.5ml/分であり、100μgのサンプルをカラム(−TSK Gel−2000、Tosoh Bioscience、San Francisco、CA)に負荷した。
【0307】
線維芽細胞におけるα−ガラクトシダーゼ取り込み:
α−ガラクトシダーゼの標的化および取り込みを、ファブリー病患者に由来するヒト線維芽細胞(カタログID GM02775、Cornell Institute)に対して試験した。線維芽細胞を、12%のFBS、5mMのL−グルタミン、5mlのMEM Eagleビタミン溶液、10mlのMEMアミノ酸溶液、5mlのMEM Eagle非必須アミノ酸溶液および5mlのPen−Strep溶液が補充されたDMEM培地(カタログD5546、Sigma)において培養した(すべての補充物がBiological Industries(Beit Haemek、IL)から得られた)。細胞を、12%のFBSが補充されたPBSにおいて300ug/mlの植物α−ガラクトシダーゼAと4時間インキュベーションし、その後、洗浄し、溶解した(20mMリン酸塩緩衝液(pH6.8)、0.1%Triton+プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma、P−2714)、2サイクルの凍結・解凍によって)。20ulのサンプルを12%SDSゲルに負荷し、ウエスタンブロッティングによって分析した(上記参照)。
【0308】
SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)では、タンパク質が主にその分子量によって分離される。加えて、この技術は、タンパク質の純度および組成に関する多くの情報をもたらす。タバコ植物から産生されたα−ガラクトシダーゼの分子量同一性およびタンパク質不純物パターンを、標準的なゲル分離プロトコルに従って、クーマシーブリリアントブルー染色を使用してSDS−PAGE分析によって調べた。簡単に記載すると、SDSゲルは濃縮ゲル(3%)および分離ゲル(12%)からなる。泳動緩衝液がTris/SDS(pH8.3)であり、負荷緩衝液がグリセロール−Tris−メルカプトエタノール(pH6.8)であった。
【0309】
結果:
図13Aおよび図13Bは、本発明の方法によってタバコ植物で発現および産生された植物由来の組換えα−ガラクトシダーゼの分子量の、ゲルろ過(図13A)および質量分析(図13B)による特徴づけを示す。質量分析プロファイルは、植物発現によるα−ガラクトシダーゼの分子量の推定値が48kDa〜52kDaの範囲でいくつかの集団からなることを示す。αGalは非共有結合による二量体であるので、MALDI−TOFのエネルギーは、二量体から単量体への解離を生じさせる。この分子量は、46.3kDaを与える407個のアミノ酸と、残る分子量についてのグリカン構造の付加とを反映する。質量分析では、タンパク質が48.6kDaであることが確認され、これらの結果は十分に、天然型ヒトα−ガラクトシダーゼの分子量(約51kDa)の範囲内である。ゲルろ過校正曲線は、植物α−ガラクトシダーゼの主ピークの保持時間(18.41分)に対応する分子量が76.56kDaであることを示し、このことは二量体を示唆する。20.403分における非常に小さいピークは、校正曲線によれば、単量体(43.27kDa)に対応する。ゲルろ過分析は穏和な条件で行われるので、ゲルろ過分析では、タンパク質をその二量体形態で観測することができる。
【0310】
PAGE分析による組換えα−ガラクトシダーゼの分離では、2つの主要なバンドが明らかにされた(図14A)。このことは、成熟型組換え酵素のグリコシル化における違いを示唆する。PAGEから得られる単離されたバンドの配列決定は、配列決定のために利用可能なポリペプチドの領域(すなわち、グリカンによって覆われていない領域)が、2つのバンドにおいて全く同じ位置に突き止められないとはいえ、重なる場合には100%の同一性を示したので、このことが実際に当てはまったことを示していた(図14Bを参照のこと、赤色での配列決定された部分)。図14B(下側バンド)は、脱グリコシル化されたα−ガラクトシダーゼの完全な配列特定を示す[脱グリコシル化が、PNGaseF(Sigma)を使用して行われた]。赤色での配列は、以前に特定された配列を示す。緑色の配列は、グリカン除去後の配列決定に利用可能な配列を示す。黒色の配列は、今までのところ特定されない配列を示す。本来のグリコシル化部位が黄色の強調で示される。C末端のKDELが、抗KDEL抗体(Santa Cruz、CA)を使用して確認された。まとめると、これらの結果は、本発明の方法によって発現されたα−ガラクトシダーゼタンパク質が、予想されたクローン化配列と同一であることを示す。
【0311】
植物発現によるヒト組換えα−ガラクトシダーゼは天然型組換えα−ガラクトシダーゼと抗原的に同一である:
本発明の構築物が植物組換えシステムにおけるヒトリソソーム酵素の正確な発現のために好適であることのさらなる確認が、植物発現によるα−ガラクトシダーゼのウエスタンブロットでの免疫検出によってもたらされた。図15は、α−gal−vac構築物(レーン「vac」)およびα−gal−KDEL構築物(レーン「KDEL」)の両方からタバコ植物で発現させたポリペプチドが、天然型ヒトα−ガラクトシダーゼのアミノ酸326〜429の間で示されるようなポリペプチドセグメントに対して惹起されたウサギポリクローナル抗体によって検出される画分を含んでいたことを示す。GFPにより形質転換されたコントロール植物(レーン「GFP」)は何らかの免疫反応性のバンドをもたらさなかった。
【0312】
組換えα−ガラクトシダーゼの速度論的分析:
植物発現によるヒト組換えα−ガラクトシダーゼの好適性を評価するために、タバコ植物由来の精製された組換えα−ガラクトシダーゼを速度論的分析に供し、KmおよびVmaxの値を求めた。図16Aおよび図16Bでは、組換えα−ガラクトシダーゼの速度論(赤色の記号)が、市販されている組換えヒトα−ガラクトシダーゼのFabrazyme(登録商標)の速度論(黒色の記号)およびReplagal(登録商標)の速度論(青色の記号)と比較して示される。KmおよびVmaxの計算により、本発明の組換えα−ガラクトシダーゼ(これはERに標的化され、ERにおいて発現される)が、これらの市販の酵素と非常に類似するKmおよびVmaxのパラメーターを有すること、すなわち、Replagal(登録商標)よりも大きいVmaxおよび低いKmを有し、Fabrazyme(登録商標)よりも大きいVmaxおよびわずかに大きいKmを有することが示される。このことは、植物におけるポリペプチドの発現およびプロセシングが正確であること、また、触媒活性が臨床適用のために好適であることを示している。
【0313】
組換えの植物発現によるヒトα−ガラクトシダーゼは広範囲の温度で安定である:
本発明の1つの実施形態に従って植物から発現および精製された組換えヒトα−ガラクトシダーゼをさらに評価するために、様々な温度(4℃〜37℃)におけるポリペプチドの安定性を試験した。図17Aおよび図17Bは、植物発現による組換えヒトα−ガラクトシダーゼ(植物a−Gal)が、試験されたすべての温度において、電気泳動移動度における変化を何ら受けず、また、哺乳動物細胞由来の市販されている組換えα−ガラクトシダーゼ(Replagal(登録商標))よりも安定でないとしても、それと同程度に安定であったことを示す。組換えα−ガラクトシダーゼの安定性は、活性緩衝液(図17A)においてインキュベーションされたか、または、細胞培地緩衝液(図17B)においてインキュベーションされたかにかかわらず、明白であった。
【0314】
組換えの植物発現によるヒトα−ガラクトシダーゼはヒト線維芽細胞において能動的に取り込まれる:
タバコで産生された組換えα−ガラクトシダーゼが標的細胞による取り込みを受け得るか、従って、ファブリー病の処置のために有用であり得るかを明らかにするために、組換えヒトα−ガラクトシダーゼが線維芽細胞に結合し、かつ、線維芽細胞によって取り込まれ得るかを次にアッセイした。図18に示されるように、組換えα−ガラクトシダーゼは細胞による取り込みを受ける(レーン「植物αGal」は、標準物として泳動された20ngの市販の組換えαGal(Replagal、右から最初のレーン、)と一緒に泳動された、線維芽細胞溶解物から採取された20ulのサンプルにおけるαGalの免疫検出を示す)。間には、分子量マーカーラダーがある。
【0315】
これらの結果は、グリカン構造の再構成がない場合でさえ、形質転換されたタバコ植物から発現および精製された組換えα−ガラクトシダーゼは、α−ガラクトシダーゼが欠乏している線維芽細胞を標的化するために取り込みを受けることができることを示す。そのうえ、この組換えα−ガラクトシダーゼは酵素活性である。
【0316】
植物発現による組換えヒトα−ガラクトシダーゼのグリカンプロファイル:
前記実施例に関して記載されるように産生されたヒトα−ガラクトシダーゼの表面に存在するグリカン構造の分析を行った。下記においてより詳しく記載されるように、結果は、グリカンの大部分が、高マンノース型構造だけでなく、末端のマンノース残基を含有することを示している。好都合なことに、この高マンノース型構造は、生物学的に活性であることが見出された。従って、さらなる工程がその活性化のために必要とされなかった。
【0317】
ヒトα−ガラクトシダーゼとして特定されるPAGE分離されたバンドを、トリプシン消化、グリカンの蛍光標識化、および、エキソグリコシダーゼ(BKF、JBM、XYLおよびJBH)による逐次消化、その後でのHPLCの後で配列決定したとき、グリコシル化の特徴的なパターンが認められる(図19、87分)。露出するマンノースを有するグリカン構造が優勢である。
【0318】
単糖組成分析(図19を参照のこと)では、植物でのグリコシル化に特徴的なヘキソース、ヘキソサミンおよびペントースの分布が明らかにされた。GlcNacおよびマンノースの間における比率により、特徴的なN結合型構造が、優勢なグリカン集団であることが示唆される。
【0319】
実施例6
本発明による処置
本発明に従って産生される組換えタンパク質は好ましくは、植物細胞培養物によって産生される好適にグリコシル化されたタンパク質(これは、好ましくは、例えば、リソソーム酵素であり、かつ/または、高マンノース型のグリコシル化されたタンパク質である)を含む。
【0320】
本明細書における好ましい実施形態によれば、本発明に従って産生されるタンパク質は、リソソーム関連疾患(例えば、リソソーム蓄積症など)の処置のために好適である。
【0321】
処置方法は、場合により、また、好ましくは、(a)形質転換された植物根細胞から精製され、かつ、リソソーム酵素が異常に不足している細胞を効率的に標的化することができる組換えの生物学的に活性な形態のリソソーム酵素を提供すること(この組換えの生物学的に活性な酵素は、露出した末端マンノース残基を、付属するオリゴ糖に有する);および(b)そのような組換えの生物学的に活性なリソソーム酵素の治療効果的な量、または、そのような組換えの生物学的に活性なリソソーム酵素を含む組成物の治療効果的な量を対象に投与することを含む。1つの好ましい実施形態において、本発明の方法によって使用される組換え高マンノース型リソソーム酵素を本発明の宿主細胞によって産生させることができる。好ましくは、この宿主細胞はニンジン細胞である。
【0322】
「ほ乳動物対象」または「哺乳動物患者」によって、ヒト、ウシ、ウマ、イヌおよびネコの対象を含めて、遺伝子治療が所望されるいずれかの哺乳動物が意味され、最も好ましくは、ヒト対象が意味される。
【0323】
用語「処置」はまた、病理学的状態および/またはその1つもしくは複数の症状を改善または緩和すること、あるいは、そのような状態を治療すること、あるいは、そのような状態の発生を防止することを包含することに留意しなければならない。
【0324】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法によって使用されるリソソーム酵素は、露出したマンノース残基を有する少なくとも1つのオリゴ糖鎖を含む高マンノース型酵素であり得る。この組換え酵素は対象の体内で標的部位において標的細胞上のマンノース受容体に結合することができる。より好ましくは、この組換えリソソーム酵素は、標的細胞に対する天然に存在するリソソーム酵素の対応する親和性との比較において、これらの標的細胞に対する増大した親和性を有する。従って、それぞれの用量が、GCDが異常に不足している細胞を効果的に標的化することに依存しており、また、そのような形態のGCDのそれぞれの用量は、治療的効果を達成するために類似する様式で他の場合において投与される天然に存在するGCDの用量よりも実質的に少ない。
【0325】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のタンパク質は、リソソーム蓄積症を処置するために好適であり、その結果、本発明はまた、そのような疾患を処置するための方法を含む。リソソーム蓄積症は、糖脂質または多糖の老廃物を細胞のリソソームにおいて分解する酵素をコードする遺伝子における欠陥の結果である、40を超える障害からなる一群である。酵素反応生成物(例えば、糖および脂質)は、その後、新しい生成物に再利用される。これらの障害のそれぞれが、リソソームにおける酵素のレベルに影響を及ぼす遺伝性の常染色体劣性形質またはX連鎖劣性形質から生じる。一般に、影響を受けた酵素の生物学的または機能的な活性が罹患者の細胞および組織において認められない。そのような疾患において、酵素機能における欠如は、体内で、細胞におけるリソソームでの脂質基質または炭水化物基質の進行性の全身的沈着を生じさせ、最終的には器官機能の喪失および死を引き起こす。リソソーム蓄積症の遺伝的病因、臨床的症状発現、分子生物学および可能性が、Scriver他[Scriver他編、The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease、第7版、第II巻、McGraw Hill(1995)]に詳しく記載される。
【0326】
リソソーム蓄積症(およびその関連した欠損酵素)の例には、ファブリー病(α−ガラクトシダーゼ)、ファーバー病(セラミダーゼ)、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、Gmlガングリオシド症(β−ガラクトシダーゼ)、テイ・サックス病(β−ヘキソサミニダーゼ)、ニーマン・ピック病(スフィンゴミエリナーゼ)、シンドラー病(α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ)、ハンター症候群(イズロン酸−2−スルファターゼ)、スライ症候群(β−グルクロニダーゼ)、ハーラー症候群およびハーラー・シャイエ症候群(イズロニダーゼ)、ならびに、I細胞/サン・フィリポ症候群(マンノース−6−リン酸輸送因子)が含まれるが、これらに限定されない。
【0327】
ゴーシェ病はヒトにおける最も一般的なリソソーム蓄積症であり、最も高頻度にはアシュケナージ系ユダヤ人集団において発生する。合衆国では約5000人〜10000人の人々がこの疾患に苦しむ[Grabowski、Adv.Hum.Genet.21:377〜441(1993)]。ゴーシェ病はグルコセレブロシダーゼ(hGCD;グルコシルセラミダーゼ)の欠如から生じる。この欠如は、骨髄、脾臓および肝臓の細網内皮細胞における酵素基質(グルコセレブロシド)の蓄積を引き起こし、その結果、著しい骨格合併症(例えば、骨髄膨張および骨衰退)を生じさせ、また、脾機能亢進症、肝腫大、血小板減少症、貧血および肺合併症もまた生じさせる[Grabowski(1993)、同上;Lee、Prog.Clin.Biol.Res.95:177〜217(1982)]。
【0328】
より具体的には、本発明の方法によって使用されるリソソーム酵素は、グルコセレブロシダーゼ(GCD)、酸性スフィンゴミエリナーゼ、ヘキソサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、酸性リパーゼ、α−ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、α−マンノシダーゼまたはシアリダーゼからなる群から選択され得る。好ましくは、処置される疾患がゴーシェ病である場合、本発明の方法によって使用されるリソソーム酵素はグルコセレブロシダーゼ(GCD)である。
【0329】
本発明のタンパク質は、医薬組成物を製造するために使用することができる。従って、本発明の別の態様によれば、その有効成分として、タンパク質を含み、かつ、医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物が提供される。本明細書で使用される「医薬組成物」は、本明細書に記載される有効成分の1つまたは複数(例えば、組換えタンパク質)を他の化学的成分(例えば、従来の薬物、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)とともに有する調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対するタンパク質または細胞の投与を容易にすることである。本発明の医薬組成物は、この技術分野において広く知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0330】
1つの好ましい実施形態において、用語「医薬的に許容される」は、動物(より具体的にはヒト)における使用について、連邦政府または州政府の規制当局によって承認されているか、あるいは、米国薬局方または他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。以降、表現「生理学的に好適なキャリア」および表現「医薬的に許容されるキャリア」は交換可能に使用され、著しい刺激を生物に対してもたらさず、かつ、投与されたコンジュゲートの生物学的な活性および性質を阻害しない承認されたキャリアまたは希釈剤を示す。
【0331】
用語「キャリア」は、治療剤が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤またはビヒクルを示す。そのような医薬用キャリアは無菌の液体が可能であり、例えば、水およびオイル(石油起源、動物起源、植物起源または合成起源のものを含む)など、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などが可能である。水は、医薬組成物が静脈内投与されるときの好ましいキャリアである。生理的食塩水溶液およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液もまた、液体キャリアとして用いることができ、具体的には、注射用溶液のための液体キャリアとして用いることができる。好適な医薬用賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアラート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水およびエタノールなどが含まれる。組成物はまた、所望されるならば、微量の湿潤化剤もしくは乳化剤、または、pH緩衝化剤を含有することができる。これらの組成物は、溶液、懸濁物、エマルション、錠剤、ピル、カプセル、粉末剤および持続放出配合物などの形態を取ることができる。組成物は、従来のバインダーおよびキャリア(例えば、トリグリセリド)を用いて、坐薬として配合することができる。経口用配合物は標準的なキャリア(例えば、医薬規格のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含むことができる。好適な医薬用キャリアの様々な例が、E.W.Martinによる「Remingtons’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。そのような組成物は、患者に対する適正な投与のための形態を提供するように、治療効果的な量のタンパク質(好ましくは、精製された形態でのタンパク質)を好適な量のキャリアと一緒に含有する。配合は投与様式のために好適でなければならない。
【0332】
本明細書において、用語「賦形剤」は、有効成分の加工および投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0333】
有効成分の配合および投与のためのさらなる技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出されることができ、これは参考として本明細書中に組み込まれる。
【0334】
本明細書に記載される医薬組成物はまた、好適な固相キャリアまたはゲル相キャリア、あるいは賦形剤を含むことができる。このようなキャリアまたは賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールのようなポリマーが挙げられる。
【0335】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、経皮送達、腸管送達または非経口送達(筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、くも膜下注射、直接的な心室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射または眼内注射を含む)が含まれ得る。
【0336】
従って、本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬的に使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つ以上の医薬的に許容されるキャリアを使用して、従来の様式で配合することができる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0337】
注射の場合、本発明の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液または生理学的な生理的食塩水緩衝液など)において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0338】
経口投与の場合、有効成分は、場合により、例えばGCDまたはα−ガラクトシダーゼのような本発明によるタンパク質を産生する細胞全体の投与によって処方され得る。有効成分はまた、有効成分および/または細胞を、この分野で広く知られている医薬的に許容されるキャリアと組み合わせることによって処方され得る。そのようなキャリアは、本発明の有効成分が、患者により経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして処方されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物を、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤には、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーがある。所望する場合には、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0339】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料を、有効成分の量を明らかにするために、または有効成分の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0340】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。また、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0341】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0342】
吸入による投与の場合、本発明に従って使用される有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位が、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器において使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、有効成分および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを処方することができる。
【0343】
本明細書中に記載される有効成分は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために処方することができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、そして、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0344】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態での活性な調製物の水溶液が含まれる。また、有効成分の懸濁物を適切な油性の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0345】
好ましい実施形態において、組成物は、ヒトに対する静脈内投与のために適合化された医薬組成物として、日常的な手法に従って配合される。典型的には、静脈内投与される医薬組成物は、無菌の等張性の水性緩衝液における溶液である。一般に、成分は別々に提供されるか、または、単位投薬形態で一緒に混合されて、例えば、活性な薬剤の量を示す気密容器(例えば、アンプルまたは小袋など)における乾燥した凍結乾燥粉末または無水高濃度物として提供される。組成物が注入によって投与されることになる場合、組成物は、無菌の医薬規格の水または生理的食塩水を含有する注入ボトルとともに分配され得る。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、注射用無菌水または生理的食塩水のアンプルが提供される。
【0346】
本発明の医薬組成物は中性形態または塩形態として配合することができる。医薬的に許容される塩には、アニオンを伴って形成される塩、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する塩など、および、カチオンを伴って形成される塩、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する塩などが含まれる。
【0347】
本発明の有効成分はまた、例えば、従来の坐薬基剤(例えば、カカオバターまたは他のグリセリド)を使用して直腸用組成物(例えば、坐薬または停留浣腸剤)に配合することができる。
【0348】
本明細書に記載される医薬組成物はまた、ゲル相キャリアまたはゲル相賦形剤の好適な固体を含むことができる。そのようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)が含まれるが、これらに限定されない。
【0349】
局所的経路が場合により行われ、局所用キャリアによって支援される。局所用キャリアは、局所的な有効成分投与のために一般に好適であるキャリアであり、これには、この技術分野において知られている任意のそのような物質が含まれる。局所用キャリアは、組成物を所望される形態で提供するように、例えば、組成物を、液体キャリアまたは非液体キャリア、ローション、クリーム、ペースト、ゲル、粉末、軟膏、溶媒、液体希釈剤および滴剤などとして提供するように選択され、局所用キャリアは、天然に存在する起源または合成起源のどちらかの物質から構成され得る。明らかなことではあるが、選択されたキャリアは、局所用配合物の活性な薬剤または他の成分に悪影響を及ぼさないこと、また、局所用配合物のすべての成分に関して安定であることが不可欠である。本明細書における使用のための好適な局所用キャリアの例には、水、アルコールおよび他の非毒性の有機溶媒、グリセリン、鉱油、シリコーン、ワセリン、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン類およびワックスなどが含まれる。本明細書における好ましい配合物は、無色無臭の軟膏、液体、ローション、クリームおよびゲルである。
【0350】
軟膏は、典型的にはペトラタムまたは他の石油誘導体に基づく半固体の調製物である。使用される具体的な軟膏基剤は、当業者によって理解されるように、最適な有効成分送達を提供し、かつ、好ましくは、他の所望される特徴(例えば、皮膚軟化性など)もまた提供するものである。他のキャリアまたはビヒクルの場合と同様に、軟膏基剤は、不活性で、安定で、非刺激性で、かつ、非感作性でなければならない。Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版(Easton、Pa.:Mack Publishing Co.、1995)において1399頁〜1404頁で説明されるように、軟膏基剤は、油性基剤、乳化可能な基剤、エマルション基剤および水溶性基剤の4つのクラスに類別することができる。油性の軟膏基剤には、例えば、植物油、動物から得られる脂肪、および、石油から得られる半固体の炭化水素が含まれる。乳化可能な軟膏基剤は、吸収軟膏基剤としてもまた知られており、水をほとんど含有しないか、または、水を全く含有せず、これには、例えば、ヒドロキシステアリンスルファート、無水ラノリンおよび親水性ペトラタムが含まれる。エマルション軟膏基剤は油中水型(W/O)エマルションまたは水中油型(O/W)エマルションのどちらかであり、これには、例えば、セチルアルコール、グリセリルモノステアラート、ラノリンおよびステアリン酸が含まれる。好ましい水溶性軟膏基剤が様々な分子量のエチレングリコールから調製される。再度ではあるが、さらなる情報については、Remington:The Science and Practice of Pharmacyを参照することができる。
【0351】
ローションは、摩擦を伴うことなく皮膚表面に塗布されるための調製物であり、典型的には、固体粒子(活性な薬剤を含む)が水またはアルコールの基剤に存在する液体または半液体の調製物である。ローションは、通常、固体の懸濁物であり、水中油型タイプの液体油性エマルションを含むことができる。ローションは、より多くの流体組成物を塗布することが容易であるので、大きな身体面積を処置するための本明細書における好ましい配合物である。ローションにおける不溶物は細かく分割されることが一般に必要である。ローションは、典型的には、より良好な分散を生じさせるための懸濁化剤を、活性な薬剤を皮膚との接触状態で局在化し、かつ、保つために有用な有効成分(例えば、メチルセルロースまたはナトリウムカルボキシメチルセルロースなど)と同様に含有する。
【0352】
選択された有効成分を含有するクリームは、この技術分野では知られているように、水中油型または油中水型のどちらかであっても、粘性の液体エマルションまたは半固体エマルションである。クリーム基剤は水洗性であり、油相、乳化剤および水相を含有する。油相は、時には「内部」相とも呼ばれることがあるが、一般には、ペトラタムおよび脂肪アルコール(例えば、セチルアルコールまたはステアリルアルコール)から構成される;水相は、通常の場合、必ずではないが、体積において油相を超え、また、一般には保湿剤を含有する。クリーム配合物における乳化剤は、Remington(上掲)において説明されるように、一般には、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤または両性界面活性剤である。
【0353】
ゲル配合物は、頭皮への適用のために好ましい。局所用有効成分配合物の分野に従事する当業者によって理解されるように、ゲルは半固体の懸濁物タイプのシステムである。単一相ゲルは、キャリア液体全体に実質的に一様に分布される有機高分子を含有し、この場合、キャリア液体は典型的には水性であり、しかし、同様に、好ましくは、アルコールおよび場合によりオイルを含有する。
【0354】
様々な添加剤が当業者に知られているが、これらを本発明の局所用配合物に含めることができる。例えば、溶媒を、ある種の有効成分物質を可溶化するために使用することができる。必要に応じて使用される他の添加剤には、皮膚浸透増強剤、乳白剤、酸化防止剤、ゲル化剤、増粘剤および安定剤などが含まれる。
【0355】
本発明の局所用組成物はまた、従来の皮膚型のパッチまたは物品を使用して皮膚に送達することができ、この場合、有効成分組成物は、皮膚に貼り付けられるための薬物送達デバイスとして役立つ積層化された構造体の中に含有される。そのような構造体において、有効成分組成物は、上部支持層の下に存在する層、すなわち、「リザーバー」に含有される。積層化された構造体は、1つだけのリザーバーを含有することができるか、または、多数のリザーバーを含有することができる。1つの実施形態において、リザーバーは、有効成分送達期間中にシステムを皮膚に貼り付けるために役立つ医薬的に許容される接触接着性物質のポリマーマトリックスを含む。好適な皮膚接触接着性物質の例には、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレートおよびポリウレタンなどが含まれるが、これらに限定されない。選択される具体的なポリマー接着剤は、具体的な有効成分、ビヒクルなどに依存する。すなわち、接着剤は、有効成分含有組成物のすべての成分との適合性を有しなければならない。代替では、有効成分含有リザーバーおよび皮膚接触接着剤が別個の異なる層として存在し、この場合、接着剤はリザーバーの下に位置し、リザーバーは、この場合には、上記で記載されるようなポリマーマトリックスであり得るか、あるいは、リザーバーは液体またはヒドロゲルのリザーバーであり得るか、または、何らかの他の形態を取り得る。
【0356】
これらの積層体における支持層は、デバイスの上部表面として役立つものであり、積層化された構造体の主要な構造的要素として機能し、また、デバイスにその柔軟性の多くをもたらす。支持材のために選択される材料は、有効成分含有組成物の有効成分およびいずれかの他の成分に対して実質的に不浸透性であるように、従って、デバイスの上部表面からの何らかの成分の喪失を防止するように選択されなければならない。支持層は、皮膚が有効成分送達期間中に水和されることが所望されるかどうかに依存して、閉鎖性または非閉鎖性のどちらかであり得る。支持材は、好ましくは柔軟性のエラストマー材料からなるシートまたはフィルムから好ましくは作製される。支持層のために好適であるポリマーの例には、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリエステルが含まれる。
【0357】
貯蔵期間中および使用前において、積層化された構造体は剥離ライナーを含む。使用直前に、この層が、その基層表面(有効成分リザーバーまたは別個の接触接着剤層のどちらか)を露出させるためにデバイスから除かれ、その結果、このシステムを皮膚に貼り付けることができるようにされる。剥離ライナーは、有効成分/ビヒクル不浸透性の材料から作製されなければならない。
【0358】
そのようなデバイスは、この技術分野において知られている様々な従来的技術を使用して製造することができ、例えば、接着剤、有効成分およびビヒクルの液状混合物を支持層に注ぎ、その後、剥離ライナーを積層化することによって製造することができる。同様に、接着剤混合物を剥離ライナーに注ぎ、その後、支持層を積層化することができる。代替として、有効成分リザーバーを有効成分または賦形剤の非存在下で調製することができ、その後、有効成分/ビヒクルの混合物に「浸す」ことによって負荷することができる。
【0359】
本発明の局所用配合物の場合のように、これらの積層化されたシステムの有効成分リザーバーに含有される有効成分組成物は数多くの成分を含有することができる。いくつかの場合において、有効成分は、「何も加えない状態」で、すなわち、さらなる液体の非存在下で送達することができる。しかしながら、ほとんどの場合において、有効成分は、好適な医薬的に許容されるビヒクル(典型的には、溶媒またはゲル)に溶解または分散または懸濁される。存在することができる他の成分には、保存剤、安定剤および界面活性剤などが含まれる。
【0360】
本発明のタンパク質(例えば、高マンノース型リソソーム酵素)は好ましくは、必要としている患者に、効果的な量で投与されることに留意しなければならない。本明細書で使用される「効果的な量」は、選択された結果を達成するために必要である量を意味する。例えば、本発明の組成物の効果的な量を、リソソーム蓄積症の処置のために有用であることのために選択することができる。
【0361】
本発明に関連して使用される好適な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、処置されている対象の疾患の症状を予防または緩和または改善するために効果的であるか、あるいは、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分の量を意味する。
【0362】
治療効果的な量の決定は、特に本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0363】
本発明の方法において使用される任意の有効成分について、治療効果的な量または用量は、動物における活性アッセイから最初に推定することができる。例えば、用量を、活性アッセイによって決定されるようなIC50を含む循環濃度範囲を達成するために動物モデルにおいて定めることができる。
【0364】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば、対象とする有効成分についてIC50およびLD50(処置された動物の50%において死を生じさせる致死量)を決定することによって明らかにすることができる。これらの活性アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用される投薬量範囲を定める際に使用することができる。例えば、遺伝傷害の処置のために好適な治療有効量は、これらの疾患の動物モデルによる実験から決定されることができる。
【0365】
投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第1章、1頁を参照のこと)。
【0366】
投薬量および投薬間隔は、調節作用を維持するために十分な、活性成分の血漿レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)をもたらすために個々に調節することができる。MECは、それぞれの調製物について変化するが、場合により、動物データ全体から推定することができる。
【0367】
投薬間隔はまた、MEC値を使用して決定することができる。調製物は、場合により、期間の10%〜90%について、好ましくは30%〜90%の間、最も好ましくは50%〜90%の間、MECを超えて血漿レベルを維持する治療方法を使用して投与することができる。
【0368】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬はまた、本明細書中上記で記載された徐放性組成物の単回投与であり得る。この場合、処置の経過は、数日から数週間まで、または、治癒が達成されるまで、もしくは、疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0369】
本発明の組成物は、所望される場合には、有効成分を含有する1つ以上の単位投薬形態物を含有し得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーデバイスにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴い得る。この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物に対する米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の有効成分を含む組成物はまた、適応状態を処置するために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。
【0370】
本明細書で使用される用語「調節する」は、疾患の進行を実質的に阻害すること、または、遅くすること、または、逆戻りさせること、あるいは、疾患または状態の臨床的症状を実質的に改善すること、あるいは、疾患または状態の臨床的症状の出現を実質的に防止することを包含する。従って、「調節剤」には、疾患または状態を調節することができる薬剤が含まれる。
【0371】
他の実施形態
本発明はその詳細な記述と関連して説明されているが、前述の説明は添付の特許請求の範囲によって規定される発明の範囲を説明するためであって制限することを意図していないことは理解されるべきである。他の態様、利点、および変形例は特許請求の範囲内にある。
【0372】


【配列表フリーテキスト】
【0373】
配列番号1は、ERシグナルペプチドの配列を示す。
配列番号2は、タバコキチナーゼAからの液胞標的化シグナルの配列を示す。
配列番号3〜6および21〜22は、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列を示す。
配列番号10は、ERシグナルペプチドをコードする核酸配列を示す。
配列番号11は、液胞標的化配列をコードする核酸配列を示す。
配列番号12は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのターミネーターの核酸配列を示す。
配列番号13は、高マンノースヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)をコードする核酸配列を示す。
配列番号14は、高マンノースヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)の配列を示す。
配列番号15は、処理された植物産生によるヒト組換えGCDタンパク質の配列を示す。
配列番号16は、リンゴペプチナーゼのリーダーペプチドの配列を示す。
配列番号17は、α−gal−vac発現構築物の配列を示す。
配列番号18は、α−gal−vacポリペプチドの配列を示す。
配列番号19は、α−gal−KDEL発現構築物の配列を示す。
配列番号20は、α−gal−KDELポリペプチドの配列を示す。
配列番号23は、ER保持シグナルペプチドの配列を示す。
配列番号24は、成熟型α−ガラクトシダーゼの配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C末端の液胞標的化シグナルおよびN末端の小胞体シグナルペプチドに連続して連結されるヒトリソソームタンパク質をコードする単離された核酸配列であって、前記ヒトリソソームタンパク質はヒトα−ガラクトシダーゼである、単離された核酸配列。
【請求項2】
C末端の小胞体保持シグナルおよびN末端の小胞体シグナルペプチドに連続して連結されるヒトリソソームタンパク質をコードする単離された核酸配列であって、前記ヒトリソソームタンパク質はヒトα−ガラクトシダーゼである、単離された核酸配列。
【請求項3】
前記ヒトα−ガラクトシダーゼは、配列番号24に記載されるものである、請求項1または2に記載の単離された核酸配列。
【請求項4】
前記液胞標的化シグナルは、配列番号4に記載されるものである、請求項1に記載の単離された核酸配列。
【請求項5】
前記小胞体保持シグナルは、配列番号23(KDEL)に記載されるものである、請求項2に記載の単離された核酸配列。
【請求項6】
配列番号19に記載されるものである、請求項2の記載の単離された核酸配列。
【請求項7】
配列番号17に記載されるものである、請求項1に記載の単離された核酸配列。
【請求項8】
前記ヒトリソソームタンパク質は、ヒトα−ガラクトシダーゼである、請求項1に記載の単離された核酸配列。
【請求項9】
前記ヒトリソソームタンパク質は、配列番号24に記載されるものである、請求項1に記載の単離された核酸配列。
【請求項10】
請求項1に記載の単離された核酸を含む、植物細胞において発現することができる核酸構築物。
【請求項11】
請求項2に記載の単離された核酸を含む、植物細胞において発現することができる核酸構築物。
【請求項12】
請求項10に記載の核酸構築物を含む細胞。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸構築物を含む細胞。
【請求項14】
前記ヒトリソソームタンパク質を組換え産生する、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
前記ヒトリソソームタンパク質が、少なくとも1つのキシロース残基および少なくとも1つの露出したマンノース残基を有するように組換え産生される、請求項13に記載の細胞。
【請求項16】
前記ヒトリソソームタンパク質が、少なくとも1つのコアα−(1,2)キシロース残基および少なくとも1つのコアα−(1,3)フコース残基を有するように組換え産生される、請求項13に記載の細胞。
【請求項17】
前記細胞は植物細胞である、請求項13に記載の細胞。
【請求項18】
前記植物細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスにより形質転換された根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される植物根細胞である、請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
前記植物細胞は、タバコ細胞である、請求項18に記載の細胞。
【請求項20】
前記細胞は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞である、請求項13に記載の細胞。
【請求項21】
前記ヒトリソソームタンパク質は、少なくとも1つのコアα−(1,2)キシロースおよび少なくとも1つのコアα−(1,3)フコースを有する、請求項13に記載の細胞。
【請求項22】
少なくとも1つの露出したマンノース残基およびα(1−3)グリコシド結合を有する少なくとも1つのフコース残基を含む、ヒトリソソームタンパク質。
【請求項23】
少なくとも1つのキシロース残基をさらに含む、請求項22に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項24】
前記キシロース残基は、コアα−(1,2)キシロース残基である、請求項23に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項25】
前記ヒトリソソームタンパク質は、グルコセレブロシダーゼである、請求項22に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項26】
前記ヒトリソソームタンパク質は、α−ガラクトシダーゼである、請求項22に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項27】
前記ヒトリソソームタンパク質は、C末端の液胞標的化シグナルに連続して連結される、請求項22に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項28】
前記ヒトリソソームタンパク質は、C末端の液胞標的化シグナルおよびN末端の小胞体シグナルペプチドに連続して連結される、請求項22に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項29】
前記ヒトリソソームタンパク質は、C末端の小胞体保持シグナルおよびN末端の小胞体シグナルペプチドに連続して連結される、請求項22に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項30】
前記液胞標的化シグナルは、塩基性タバコキチナーゼA遺伝子の液胞標的化シグナルである、請求項27に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項31】
前記液胞標的化シグナルは、配列番号2に記載されるものである、請求項30に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項32】
前記小胞体シグナルペプチドは、配列番号1または配列番号16に記載されるものである、請求項28に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項33】
前記ヒトグルコセレブロシダーゼは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む、請求項25に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項34】
前記ヒトリソソームタンパク質は、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む、請求項25に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項35】
前記ヒトグルコセレブロシダーゼは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項36】
前記ヒトリソソームタンパク質は、配列番号18または配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項37】
前記ヒトリソソームタンパク質は、生物学的活性を有する、請求項22に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項38】
前記生物学的活性は、マクロファージへの取り込みである、請求項37に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項39】
前記生物学的活性は、線維芽細胞への取り込みである、請求項37に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項40】
前記生物学的活性は、酵素活性である、請求項37に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項41】
前記マクロファージに対する天然に存在するリソソームタンパク質の対応する親和性との比較において、前記マクロファージに対する増大した親和性を有する、請求項37に記載のヒトリソソームタンパク質。
【請求項42】
請求項22に記載のヒトリソソームタンパク質および医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物。
【請求項43】
少なくとも1つの露出されたマンノース残基およびα(1−3)グリコシド結合を有する少なくとも1つのフコース残基を含むヒトリソソームタンパク質を含む植物細胞調製物。
【請求項44】
少なくとも1つのキシロース残基をさらに含む、請求項43に記載の植物細胞調製物。
【請求項45】
前記キシロースはコアα−(1,2)キシロースである、請求項44に記載の植物細胞調製物。
【請求項46】
前記ヒトリソソームタンパク質は、ヒトグルコセレブロシダーゼである、請求項45に記載の植物細胞調製物。
【請求項47】
前記ヒトリソソームタンパク質は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の植物細胞調製物。
【請求項48】
前記ヒトリソソームタンパク質は、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の植物細胞調製物。
【請求項49】
前記ヒトリソソームタンパク質は、ヒトα−ガラクトシダーゼである、請求項45に記載の植物細胞調製物。
【請求項50】
前記ヒトグルコセレブロシダーゼは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の植物細胞調製物。
【請求項51】
前記ヒトリソソームタンパク質は、配列番号18または配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の植物細胞調製物。
【請求項52】
前記ヒトリソソームタンパク質は、C末端の液胞標的化シグナルに連続的に連結される、請求項43に記載の植物細胞調製物。
【請求項53】
前記ヒトリソソームタンパク質は、C末端の液胞標的化シグナルおよびN末端の小胞体保持シグナルペプチドに連続的に連結される、請求項43に記載の植物細胞調製物。
【請求項54】
前記ヒトリソソームタンパク質は、C末端の小胞体保持シグナルおよびN末端の小胞体シグナルペプチドに連続的に連結される、請求項43に記載の植物細胞調製物。
【請求項55】
前記液胞標的化シグナルは、塩基性タバコキチナーゼA遺伝子の液胞標的化シグナルである、請求項54に記載の植物細胞調製物。
【請求項56】
前記液胞標的化シグナルは、配列番号2に記載されるものである、請求項55に記載の植物細胞調製物。
【請求項57】
前記小胞体シグナルペプチドは、配列番号1または配列番号16に記載されるものである、請求項55に記載の植物細胞調製物。
【請求項58】
少なくとも1つの露出されたマンノース残基を有する前記ヒトリソソームタンパク質は、連鎖分析によって測定すると、前記ヒトリソソームタンパク質の主要な分画物を含む、請求項43に記載の植物細胞調製物。
【請求項59】
請求項43に記載の植物細胞調製物および医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物。
【請求項60】
リソソーム蓄積症を処置するための医薬の製造のための、請求項37に記載の生物学的に活性なヒトリソソームタンパク質の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図3A】
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【図3D】
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【図4A】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図19】
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【図2】
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【図3B−C】
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【図3E−F】
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【図4B−C】
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【図5C−D】
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【図9】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−525806(P2010−525806A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−505007(P2010−505007)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000576
【国際公開番号】WO2008/132743
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(505161910)プロタリクス リミテッド (8)
【Fターム(参考)】