説明

植物培養細胞塊の状態を判別する方法、そのための装置および植物培養細胞塊の状態を判別するためのプログラム

【課題】培養器内で培養環境にあるカルスの状態がフライアブルであるか、コンパクトであるかについての客観的な指標を与え、簡便で再現性よく客観的にカルスの状態を判別できるようにする。
【解決手段】カルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と、カルスのカラー画像の色成分画像をグレースケール変換した画像とを生成し、各々のグレースケール変換した画像についてそれぞれ濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行って画像のエントロピー値を算出し、カラー画像をグレースケール変換した画像と少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とのエントロピー値の相関対比を行う。カルスの画像を良好に取得するには、カルスを収容する培養器外から載置面内の側方の照明光を与えた場合と、斜め前方からの照明光を与えた場合とについて撮影し取得された画像についてそれぞれテクスチャ解析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物培養細胞塊の状態を判別する方法、そのための装置および植物培養細胞塊の状態を判別するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物細胞培養の技術は、医学、農業、食品製造等に広く利用される植物の二次代謝産物の効率的な生産、種苗生産技術への利用、種子のできにくい植物や種子の発芽率が低いため長期保存に適していない植物の保存等に利用されている。植物は二次代謝産物として、アルカロイド、テルペノイド、フラボノイド等さまざまな有用物質を生産するが、生産する量が少ないので、それらの成分を抽出するには大規模な圃場が必要になり環境を破壊することにもなる。そこで、植物細胞培養技術を用いることにより二次代謝産物を効率的に得ることができる。また、植物細胞培養は不定胚生産への利用など種苗大量生産技術としても有用である。
【0003】
このような植物細胞培養技術を最大限に利用するために、培養細胞を高品質に維持することが必要であり、特に植物の培養細胞は未分化細胞塊であるカルスを誘導し培養することから始められることが多く、このカルスの適正な評価、選抜が培養による増殖効率や代謝物の生産効率に大きな影響を与える。さらに、カルスの状態の評価は培養の再現性を高めるために不可欠である。
【0004】
カルスの状態を評価するにあたり、カルスを分類するのに使われるフライアブル・カルス(friable callus)、コンパクト・カルス(compact callus)という指標が一般的に用いられおり、この指標での分類により評価を行うのが有効であるとされている。カルスの状態を表す「コンパクト」は細胞同士が硬くしっかりとくっついて細胞塊になっている状態であり、一方「フライアブル」は細胞が緩く集まってもろい、ないし柔らかい細胞塊になっている状態を表しており、培養細胞の利用技術においては、細胞塊のこのようなフライアブル、コンパクトの状態を判別することが重要な意義を有している。
【0005】
しかしながら、実際にフライアブル・カルス、コンパクト・カルスの判別を行うにあたり、現状では目視で判別することになり、そのため評価する者の主観による個人差が避けられず、客観性、一般性をもつ評価を行うのは困難であった。
【0006】
培養細胞を客観的に評価するのに培養細胞を撮影し得られた画像から培養細胞の質を表す情報を抽出する画像解析の手法が一般的に試みられており、これには顕微鏡撮影によるミクロ画像を用いたものと、巨視的状態で撮影されたマクロ画像を用いたものとがある。ミクロ画像は多くの情報を含んでおり、解析手法も多様な形が利用可能であるが、試料のサンプリングに問題があり、どうしても試料を培養器外に取り出した破壊的な形での評価とならざるを得ない。これに対し、マクロ画像の場合は試料が培養器内にある状態で撮影することができ、サンプリングが容易で、培養細胞を客観的で単純かつ非破壊的に評価できる可能性をもつ。
【0007】
非特許文献1には、細胞懸濁培養における培養細胞の評価の重要性、細胞懸濁液のマクロ画像のテクスチャ解析がその中に含まれる懸濁培養細胞の評価に有効であることについて記載されており、培養器の底面から蛍光灯からの透過光下で撮影した懸濁培養細胞のマクロ画像における細胞塊に対応する画素の総数、画像中の全画素のB成分の値の合計値を用いて細胞懸濁液の圧縮細胞量を推定することができること、マクロ画像から濃度共起行列法により抽出したテクスチャ特徴量と懸濁培養細胞の不定胚形成能力との対応を調べることにより、細胞懸濁液中に不定胚になる能力を持つ比較的大きい細胞塊が多く含まれるか、比較的細かい細胞塊が多く含まれるかという細胞懸濁液中の細胞塊の大きさの分布の違いがテクスチャ特徴量としてのエントロピーの差として現れることが示されている。
【0008】
しかしながら、非特許文献1において、液体培地中で培養している懸濁培養細胞の評価にテクスチャ解析が有効であり、評価について細胞塊(カルス)の大きさや色の分布の違いによるテクスチャの違いを評価するものではあるが、培養細胞におけるフライアブル、コンパクトの状態の評価を行うものではなく、評価の有効性について十分なものではなかった。
【非特許文献1】Y.Ibaraki, K.Kurata「Application of image analysis to plant cell suspensioncultures」,Computers and Electronics in Agriculture 30(2001), pp193-203
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、従来の培養細胞の評価は目視での観察、顕微鏡を用いた観察で行われるか、培養細胞を撮影して得られたミクロ画像あるいはマクロ画像を用いて画像解析を行うという形態で行われており、このうち培養細胞の目視や顕微鏡を用いた観察によるものでは評価する者の主観による個人差が避けられず、客観的で再現性のある評価がなされないものであり、培養細胞の顕微鏡撮影によるミクロ画像を用いた画像解析によるものは撮影のための装置が煩雑であるとともに、試料を培養器外に取り出した破壊的な形での評価とならざるを得ないものであって、培養器内にある状態での細胞の評価ができないものであった。また、マクロ画像を用いた画像解析によるものでは、カルスの大きさや色の分布の違いによるテクスチャの違いの評価は行えるが、培養細胞の評価において重要なフライアブル、コンパクトの状態の評価を行ってはいなかった。このようなことから、カルスの状態に客観的な指標を与え、簡便で再現性よく客観的に評価できるようにすることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述した課題を解決すべくなしたものであり、本発明による植物培養細胞塊の状態を判別する方法は、植物培養細胞塊であるカルスを巨視的な大きさで撮影したカルスのカラー画像からカルスの状態がフライアブルであるかコンパクトであるかを判別する植物培養細胞塊の状態を判別する方法であって、前記カルスのカラー画像における背景部分を除去したカルスのカラー画像を生成することと、該背景部分を除去したカルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と該背景部分を除去したカルスのカラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とを生成することと、前記カラー画像をグレースケール変換した画像と前記カラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とについてそれぞれ濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行い各々のグレースケール変換したカルスの画像のエントロピー値を算出することと、算出された該エントロピー値を対比することによりカルスの状態がフライアブルであるかコンパクトであるかを定量的に判別することと、からなるものである。
【0011】
前記植物培養細胞塊の状態を判別する対象となる巨視的な大きさで撮影したカルスの画像を撮影装置により撮影により取得する際に、載置面上に配置された透明な培養器内に培養環境において収容されたカルスに対し載置面内で側方からの照明光を前記培養器外から照射し撮影して側方照明によるカルスのカラー画像を取得するとともに、前記載置面上に配置された透明な培養器内に培養環境において収容されたカルスに対し載置面に斜め前方から照明光を前記培養器外から照射し撮影して斜め方向照明によるカルスのカラー画像を取得し、前記側方照明によるカルスのカラー画像と斜め方向照明によるカルスのカラー画像との両方についてそれぞれ濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行うエントロピー値を対比するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明による植物培養細胞塊の状態を判別するための装置は、培養器載置台と、該培養器載置台上に配置され植物培養細胞塊を収容する培養器に対し側方および斜め方向の照明光を前記培養器の外方から選択的に照射するための照明手段と、前記培養器載置台上に配置された培養器内に収容された植物培養細胞塊を巨視的な大きさで撮影するための撮影部と、撮影により得られたカラー画像を取得しその背景部分を除去したカルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と該背景部分を除去したカルスのカラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とを生成する画像取得前処理部と、該画像取得前処理部で生成されたカラー画像をグレースケール変換した画像とカラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とについてそれぞれ濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行い各々のグレースケール変換したカルスの画像のエントロピー値を算出し相関対比を行うテクスチャ解析処理部と、からなるものである。
【0013】
また、本発明による植物培養細胞塊の状態を判別するためのプログラムは、植物培養細胞塊であるカルスを巨視的な大きさで撮影したカラー画像における背景部分を除去したカルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と該背景部分を除去したカルスのカラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とを生成し、前記カラー画像をグレースケール変換した画像と前記カラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とについてそれぞれ濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行い各々のグレースケール変換した画像のエントロピー値を算出し、前記カラー画像をグレースケール変換した画像と少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とのエントロピー値の相関対比を行うことをコンピュータ上で実行するためのものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、カルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と、カラー画像の色成分画像をグレースケール変換した画像とについてそれぞれ濃度共起行列法を用いたテクスチャ解析を行い画像の特徴量としてのエントロピー値を算出し、同じ色成分間または異なる色成分間でのエントロピー値を対比させることによりフライアブル・カルスとコンパクト・カルスとを分離させることができる。また、この手法でカルスの状態の判別を行う上で、十分な明るさの照明光を側方から照明して撮影した画像と斜め方向から照射して撮影した画像との両方についてテクスチャ解析を行うことによりフライアブル・カルスとコンパクト・カルスとの分離が良好になされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明においては、培養細胞を撮影して得られた画像についてテクスチャ解析を行い、画像として表された培養細胞についてのフライアブル、コンパクトの状態の評価を行う。そこで、テクスチャ解析について概略説明する。
[テクスチャ解析]
画像についてコンピュータで画像処理を行う上で、画像は多数の微小な画素が配列されたものとして扱われ、画像データとしては画像を構成する各画素について濃度値が与えられている。この濃度値を統計的に処理することで、画像の特徴を表すことができる。簡単な特徴量として画像の濃度ヒストグラムの平均、標準偏差があるが、これらは撮影条件の影響を受けやすい。そこで、濃度値の配列に注目した画像の特徴量の計算方法として、テクスチャ解析を用いることを考える。
【0016】
テクスチャは簡単に言えば模様である。テクスチャには統計的なものと、構造的なものとの二つのレベルがあり、構造性が強いものほど解析しやすいが、自然界に存在するテクスチャは統計的なものがほとんどであり、あらゆるテクスチャの違いを一般的に解析する方法はない。テクスチャ解析手法を大別すると、統計的特徴の抽出、局所的幾何学的特徴による解析、モデル当てはめによる解析、構造的解析に分けられる。本発明ではテクスチャ解析手法として代表的アルゴリズムである濃度共起行列法を用いるが、これは濃度共起行列を用いて種々の特徴量を計算し、テクスチャの識別を行うものである。
【0017】
濃度共起行列とは、濃度(i)、濃度(j)の画素対の出現確率を距離・方向別に行列P(i,j)として整理したものであり、画像の濃度階調数をn階調とすると、行列はn行n列の正方形行列になる。通常、距離dは近接から遠方へ数種類、角度θは0°、45°、90°、135°の4方向をとる。ある画像のテクスチャ情報はその画像中の画像濃度値の空間的相互関係に一様に含まれていると仮定すると、その画像のテクスチャ特徴量は全て濃度共起行列から導き出される。図1(a)は濃度階調数n=3(濃度値0,1,2)とした場合に原画像の3×3画素の濃度値の例を示しており、図1(b)はこの原画像についてd=1,θ=0°、n=3とした時の濃度共起行列を示している。
【0018】
濃度共起行列から画像についてのいくつかの特徴量が求められるが、本発明では画像の乱雑さを反映する特徴量であるエントロピー(以下、Entropy記す)を式(1)により計算する。
【0019】
【数1】

ここでは画像の等方性を仮定し、Entropyは水平方向(θ=0)のみ計算する。また、距離dはd=1,2,5,10,20で計算する。距離d=kの時のEntropyをEntkとし、距離d=20におけるEntropyと距離d=1におけるEntropyとの差をΔEntで表す。また、Entropyは、RGBカラー画像を輝度によりグレースケール変換した画像(Brig
htness image)、赤成分画像(R image)、緑成分画像(G image)、青成分画像(B image)についてのEntropyをそれぞれEntkBright、EntkR、EntkG、EntkBと表す。
【0020】
本発明において、このようなエントロピーに着目したテクスチャ解析によりカルスの状態を定量化する手法を実現する上で、カルスが撮影された画像を用いたテクスチャ解析を行う。テクスチャ解析を行う対象となる画像はカルスが撮影され画像データとして利用可能なものであればよいのであり、本発明では、論文から収集した既存のカルス画像についてテクスチャ解析を行ってカルスの状態を定量化する手法を定式化し、さらに撮影により得られたカルス画像についてテクスチャ解析を行う上で撮影条件がテクスチャ解析に及ぼす影響を考慮してテクスチャ解析によりカルスの状態を判別する上で良好な撮影条件を求めるものである。
〔1〕既存の画像についてのテクスチャ解析
カルスの画像が掲載されておりフライアブル・カルスとコンパクト・カルスとに分類されている文献からカルスの画像を収集し、それらの画像について濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行って、フライアブル・カルス、コンパクト・カルスの特徴量を見出し状態判別の指標を得ることを考える。
【0021】
文献は論文検索サイトのグーグル・スコラーGoogle Scholar)で検索したPDF形式の論文からカルスの画像が載っている論文を選び出し、それらの画像を画像抽出ソフトウェアで画像データとして取り込み、フライアブル・カルスとコンパクト・カルスとの巨視的外観の違いを定量化するテクスチャ解析のサンプルとして用いる。その際画像解析ソフトウェアによりカルスの画像における背景を自動選択ツールで選択して取り除き、細胞の部分だけをグレースケール画像に変換し、テクスチャ解析を行う。ここでは、
1)RGBカラー画像を輝度によりグレースケール変換した画像(Brightness image)
2)R成分画像をグレースケール変換した画像(R image)
3)G成分画像をグレースケール変換した画像(G image)
4)B成分画像をグレースケール変換した画像(B image)
の4種類の8ビットのグレースケール画像に変換したものに対してテクスチャ解析を行う。
【0022】
カルスの画像についてテクスチャ解析を行う形として、(a)同一論文上でフライアブル・カルスあるいはコンパクト・カルスとされている画像についてカクスチャ解析を行い、エントロピーを比較すること、(b)取得したフライアブル・カルスおよびコンパクト・カルスをグループ分けし、グループ別にテクスチャ解析を行い対比することの2つに分けて行った。
(a)同一論文上でフライアブル・カルスあるいはコンパクト・カルスとされている画像についてのカクスチャ解析
12の論文からカルスの画像を抽出し、同一論文上でそれぞれフライアブル・カルスあるいはコンパクト・カルスのいずれであるかが規定されているカルスの画像についてテクスチャ解析を行って式(1)によるEntropyを算出しフライアブルとコンパクトとの間でのエントロピーの比較を行い、その結果は表1、表2のようになっている。表1、表2で番号1〜12はカルスの画像を抽出した論文に付したものである。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

表1の結果では、12の論文中10の論文でコンパクト・カルスの画像の方がエントロピーが高くなっているのがわかる。フライアブル・カルスの画像の方がエントロピーが高くなった2つの論文のうち1つ(フライアブル・カルスの5−1,5−2、コンパクト・カルスの5)はB成分画像のみフライアブル・カルスの方がコンパクト・カルスよりエントロピーが高くなっており、この論文のカルスは他の論文のように黄味がかった色ではなく、B成分を多く含む緑色であったためにエントロピーが増大したと考えられる。もう1つの論文(10)ではフライアブル・カルスとコンパクト・カルスの撮影条件が一定でなく、この論文のフライアブル・カルスがコンパクト・カルスに近い状態のものであったことが考えられる。このことから、カルスの撮影条件を一定にすること、カルスの色に応じて抽出する色成分を変えることで、他の10の論文の場合と同様にコンパクト・カルスの画像の方がフライアブル・カルスの画像よりエントロピーが高くなるものと推察される。
(b)グループ分けしたカルスの画像についてのテクスチャ解析
取得されたフライアブル・カルスの画像およびコンパクト・カルスの画像をそれぞれ次の3つのグループに分ける。グループ分けは論文作者によるものと、目視によるものとを合わせた形でおこなう。
フライアブル・カルス
F1:論文の作者がフライアブルとし、目視により明らかにフライアブルとされるもの
F2:論文の作者がフライアブルとしたもののうちF1でもF3でもないもの
F3:論文の作者がフライアブルとしたもので、目視によりコンパクトとされるもの
コンパクト・カルス
C1:論文の作者がコンパクトとし、目視により明らかにコンパクトとされるもの
C2:論文の作者がコンパクトとしたもののうちC1でもC3でもないもの
C3:論文の作者がコンパクトとしたもので、目視によりフライアブルとされるもの
このようにグループ分けしたF1、F2、C1、C2のカルスの画像についてテクスチャ解析を行って算出されたエントロピーをそれぞれ表3、表4、表5、表6に示す。
【0025】
【表3】

【0026】
【表4】

【0027】
【表5】

【0028】
【表6】

表3〜6においては、B image、G image、Brightness imageでは、ほぼ全てのカルスの画像においてC1のグループのEnt20とΔEntとがF1のグループのEn20とΔEntとよりも値が大きくなっている。特にB imageとG imageとでその傾向が顕著になっている。ここで、F1のNo.4およびNo.5ではF1のグループにおけるEntが特に高くなっているが、これらのカルスの色は他のカルスと異なり緑色が強く、このことがB成分のグレースケール画像におけるエントロピーの増加をもたらしているとも考えられる。また、R imageではF1とC1のグループの分離が明確になされなくなっているが、これはサンプルとなったRGBカラー画像のカルスの色が白、黄、薄い緑であったために、R成分でスケール化することによりテクスチャ情報が失われたことが考えられる。このことから、単一成分のグレースケール画像だけでテクスチャ解析を行って算出されたエントロピー値の高低からフライアブルかコンパクトかを判別するのは難しいと言える。
【0029】
そこで、異なる色成分画像についての相関を見ることを考える。図2(a)は表3〜6の結果において同じ色成分画像についての相関の例としてC1とF1とのグループにおけるΔEntGとEnt20Gとの関係を示しており,また、図2(b)はΔEntBrightとEnt20Brightとの関係を示しているが、F1とC1とが明確に分離されてはいない。一方、図3(a)は異なる色成分画像についての相関の例としてC1とF1とのグループにおけるEnt20RとEnt20Gとの関係を示し、図3(b)はEnt20BrightとEnt20Rとの関係を示しているが、これらの相関図においては、F1とC1とがより明確に分離されている。このことから、異なる色成分画像もとにした複数のグレースケール画像についてのエントロピーを用いることにより、カルスの色による影響を抑えてカルスの状態の判別を行うことができると考えられる。
【0030】
また、論文の作者によるカルスの状態(フライアブル、コンパクト)について判断が画像を目視したことでは確認しにくいF2およびC2のグループにおけるカルスの画像を加えて同様にテクスチャ解析を行いエントロピー値を算出した。その結果から、図4(a)は同じ色成分画像の場合についての相関の例としてΔEntBとEnt20Bとの関係を示し、図4(b)はEnt20BrightとEnt20Gとの関係を示している。これらの結果から、F2、C2を加えるとある程度フライアブル、コンパクトの判別がし難くなるものの、F1、C1のみのグループの画像の場合と同様に、異なる色成分画像についてのエントロピーの相関を見ることによりフライアブル、コンパクトがより明確に分離されることは示される。特にBrightness image−G imageのプロット、B image−G imageのプロットではほぼフライアブル、コンパクトの分離がなされることがわかる。
【0031】
さらに、フライアブル、コンパクトの判別の精度を調べるために、最も明確な分析がなされたF1とC1とのグループにおけるB image−G imageのプロットについて統計ソフトウエア(MINITAB)を用いて線形判別を行ったが、その結果、フライアブル・カルスの10個の画像のうちフライアブルと判別できなかったものが1つ、コンパクト・カルスの12個の画像のうちコンパクト・カルスと判別できなかつたものが0個であり、正確率で95.5%であった。
【0032】
このように、カルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と、カラー画像の色成分画像をグレースケール変換した画像とについてそれぞれ濃度共起行列法を用いたテクスチャ解析を行い画像の特徴量としてのエントロピー値を算出し、同じ色成分間または異なる色成分間でのエントロピー値を対比させることによりフライアブル・カルスとコンパクト・カルスとを分離させることができる。多数の画像におけるカルスはこのようにしてフライアブルかコンパクトかに分離され、このように多数のカルスの例を表す画像についてテクスチャ解析により得られたエントロピー値を集積しておくことにより、コンパクト・カルスかフライアブル・カルスかのエントロピーの域値を設定しておくことにより、特定のカルスについフライアブルであるか、コンパクトであるかを定量的に判別できるものである。
【0033】
エントロピー値の相関によりコンパクト・カルスとフライアブル・カルスとが明確に分離されるか否かについては、カルスの色が関係することが考えられる。カルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と、カルスのカラー画像を色分解した画像とについてテクスチャ解析によりエントロピー値を得て、同じ色成分あるいは異なる色成分のグレースケール画像のエントロピー値の相関をとることにより、種々の色のカルスに対してカルスの状態の判別が良好になされるようになる。
〔2〕カルスの状態を判別するのに良好な画像を取得するための撮影の形態
[1]において、既存のカルスを撮影した画像について濃度共起行列法を用いたテクスチャ解析を行いカルスの画像についてのエントロピー値を算出することにより、カルスの状態がフライアブルであるかコンパクトであるかを定量的に判別できることを示したが、画像によっては、判別しにくい状況は起こり得る。これは、カルスを撮影する条件、特にカルス撮影の際に照明光をどのように当てるかということが関係することが大きいと考えられる。そのため、カルスを撮影した画像をもとにテクスチャ解析によりカルスの状態を判別する上で撮影条件がどのように影響するかについて知るために、実際にカルスを撮影して画像を取得し、その画像についてテクスチャ解析を行ってカルスが判別し易さがどのようになるかについて実験を行い検討した。
【0034】
実験は、供試植物体を培地で培養し、カルス誘導を行って得られたカルスについて、培養条件において照明条件を変化させ撮影してカルスの画像を取得し、取得された画像について濃度共起行列法を用いたテクスチャ解析を行って評価するという形で行った。
(a)供試植物体
供試植物体としてのニンジン(品種名:金港四寸)を用い、ニンジンの種子を蒸留水で洗浄、表面殺菌し、滅菌水で濯いでから発芽促進媒体が入った試験管に1本あたり10粒程度の滅菌種子を置床し、プラスチックの蓋をした後にアルミホィルで覆って遮光し、25°Cのインキュベータ内で14日間静置培養した。無菌播種から14日目のニンジン小植物体の胚軸を無菌的に5mm程度切り出し、カルス培養誘導媒体が入った試験管1本につき5本ほどの胚軸切片を入れ、アルミホィルで覆って遮光し、24°Cのインキュベータ内で焼く2か月間静置培養した。カルスができ始めた胚軸切片をカルス誘導媒体が入った三角フラスコに移植し、アルミホィルで蓋をして27°C、80rpm、連続暗期の振盪培養機内で10日間振盪培養した。胚軸から分離したカルスのみをカルス誘導媒体が入った三角フラスコに移植し、さらに2週間振盪培養し、細胞懸濁液を得た。
【0035】
細胞懸濁液が入った試験管からピペットを用いて懸濁液をシャーレに移植し、パラフィルムで封をした後シャーレを25°Cのインキュベータ内で約2か月間培養しコンパクト・カルスを得た。また、30°Cのインキュベータ内で約2か月間培養しフライアブル・カルスを得た。
【0036】
培養によって得られたニンジンのコンパクト・カルスもしくはフライアブル・カルスの入ったシャーレを水平な台上に載置し、シャーレに対し垂直上方から撮影するようにデジタルカメラを三脚に固定して数種の照明条件で撮影を行った。
【0037】
図5(a),(b)は培養環境にあるカルスを撮影する装置の配置形態を示す図であり、(a)が側面図、(b)が平面図であり、小型暗箱1について断面として内部を示している。小型暗箱1内に培養環境でカルスCを収容するシャーレ2が載置面上に配置されており、カルスCを照明する光源として載置面上のシャーレ2の側方から照射光を与えるための白色LEDからなる側方照射光源3Aと、シャーレ2の上側で斜め方向から照射光を与えるための白色LEDからなる斜め方向照射光源3Bとが配設されており、斜め方向照射光源3Bは支柱4に取り付けられたリング状取付部材5に必要な数だけ取り付けられており、また白色LEDは砲弾型等の指向性の高いものを用い、カルスCに向かって照明光を照射するように取り付けられる。このように照明光源の配設することにより、側方照明光源3AではカルスCを収容するシャーレ1の配置された面内の方向(0°)の光が照射され、斜め方向照射光源3Bではシャーレ1の配置された面に対して斜めの方向(例えば45°)の光が照射される。また、側方照明光源3Aと斜め方向照明光源3Bとの白色LEDはスイッチ手段を介して電源部(図示せず)に接続されており、側方照明光源3Aと斜め方向照明光源3Bとのうちの一方を選択的に点灯して照明できるようにしてある。
【0038】
小型暗箱1の外側に配設されたカメラ支持固定柱10にカルスCを収容したシャーレ1を上方から撮影できるようにダジタルカメラ11が支持固定されている。デジタルカメラ11のボデー側は操作のため小型暗箱1外とし、レンズ鏡胴は小型暗箱1内に入り込み、小型暗箱1の鏡胴が通り抜ける部分の壁部は抜き取られた形になっており、他の部分は遮光されている。また、図5(b)において、カメラ支持固定柱10は図示されておらず、デジタルカメラ11の位置を示してある。
【0039】
デジタルカメラはクールピクス990(ニコン製)で、レンズがマクロレンズ(Nicon8×20D)、撮像素子画素数が300万画素CCD、寸法が24μm/画素のものであり、撮影距離は25cmとした。照明手段は白色発光ダイオード(LED)を用い、照射光強度(PPFD:5μmol,50μmol)と照射角度(0°,45°)を変えて撮影した。また、撮影により取得された画像は24ビットRGBカラーモード、2048×1536画素モードで保存した。
【0040】
デジタルカメラによりカルスを撮影して得られた画像について前処理を行い、濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行った。画像の前処理には画像処理ソフトウェア(フォトショップ6.0)を用い、撮影した画像の画素数をバイキュービック補間方式に基づく画像の変換機能により修正し、画像を512×384画素にした。その画像の背景となるカルス以外の部分を自動変換ツールで選択して取り除きカルスの部分のみの画像としてから、そのRGBカラー画像を〔1〕で説明したように4種類の8ビットのグレースケール画像に変換した。このようにコンパクト・カルスの画像およびフライアブル・カルスの画像のそれぞれについて4種類の8ビットのグレースケール画像を生成し、それらの各々について濃度共起行列法を用いたテクスチャ解析を行ってエントロピー値を算出した。
【0041】
4つのコンパクト・カルスの画像A,B,C,Dから生成された各色成分画像(B image,G image,R image,Brightness image)について算出されたエントロピー値の結果を表7〜10に示しており、照明光の照射条件はそれぞれ表7が45°,50μmol、表8が0°,50μmol、表9が45°,5μmol、表10が0°,5μmolである。また、4つのフライアブル・カルスの画像E,F,G,Hから生成された各色成分画像(B image,G image,R image,Brightness image)について算出されたエントロピー値の結果を表11〜14に示しており、照明光の照射条件はそれぞれ表11が45°,50μmol、表12が0°,50μmol、表13が45°,5μmol、表14が0°,5μmolである。
【0042】
【表7】

【0043】
【表8】

【0044】
【表9】

【0045】
【表10】

【0046】
【表11】

【0047】
【表12】

【0048】
【表13】

【0049】
【表14】

図6〜9は、表7〜10における色成分ごとのエントロピー値について、同じ色成分の間でのエントロピー値の相関あるいは異なる色成分の間でのエントロピー値の相関をとったものの例を示している。図6(a),(b)は照明光の照射条件45°、50μmolでのそれぞれB成分およびR成分のグレースケール変換した画像のエントロピー値の相関を示し、図7(a)(b)は照明条件0°、50μmolでのそれぞれB成分およびR成分のグレースケール変換した画像のエントロピー値の相関を示し、図8(a),(b)は照明光の照射条件45°、50molでのエントロピー値と照射条件0°50μmolでのエントロピー値との相関をそれぞれB成分のグレースケール変換した画像とR成分のグレースケール変換した画像の場合について示している。図9(a),(b)は照明光の照射条件45°、5μmolでのそれぞれG成分およびカラー画像からのグレースケール変換した画像のエントロピー値の相関を示している。
【0050】
表7〜10における結果では、照明光の照射強度を高くすると、エントロピーが高い値になること、照射強度が低いとコンパクト・カルスとフライアブル・カルスのエントロピーの違いがわかりにくくなり、R imageではコンパクト・カルスのエントロピーがフライアブル・カルスより低い値になっていることがわかる。エントロピー値の相関で見た場合に、図6〜8のように50μmolの照射光ではフライアブルとコンパクトとが良好に分離されるが、図9のように5molの照射光の場合にはフライアブルとコンパクトとが明確に分離されないことがわかる。このように、照明光の照射強度が十分でないと、コンパクト・カルスとフライアブル・カルスとにおけるエントロピー値の差が明確にならず、エントロピー値の相関を示す図においてコンパクト・カルスとフライアブル・カルスとが明確に分離されないことがわかる。
【0051】
また、PPFD50μmolm−2−1で照射角度0°の時は、コンパクト・カルスの画像とフライアブル・カルスの画像とでエントロピー値に大きな違いが見られないが、PPFD50μmolm−2−1で照射角度45°の時には、コンパクト・カルスの画像とフライアブル・カルスの画像とでエントロピー値に大きな差が生じた。これは、照射角度が0°の時に撮影された画像においてカルス自体の凹凸による影が写ることによりフライアブル・カルスにおいてもウントロピーが増大するためと考えられ、さらに、照射角度0°では反射光だけでなくカルスを透過した光も画像に入り込み、光の透過率が比較的高いと考えられるフライアブル・カルスの画像におけるコントラストが高まり、結果的に画像における乱雑さがましてエントロピー値が高くなることも考えられる。一方、照射角度45°で撮影すると、カルス自体の影が写り込むこともなく、また、透過光の影響も抑えられるので、コンパクト・カルスの画像とフライアブル・カルスの画像とにおけるエントロピー値の差が大きくなると考えられる。
【0052】
このように、十分な照射光強度で撮影されたフライアブル・カルスの画像では、照明光の照射角度0°の場合と照射角度45°の場合とでエントロピー値に大きな違いがあることがわかる。一方、コンパクト・カルスの画像については、照射光の角度における有意な差は得られていない。つまり、判別対象となるカルスがフライアブルであればあるほど光照射角度による影響を受けやすく、逆にコンパクト・カルスであればあるほど光照射角度の影響を受けにくいということがわかる。
【0053】
なお、実験結果としては特に照射角度が0°と45°との場合について示しているが、照射角度0°はシャーレの載置されている面内における側方からの照明であり、一方、照射角度45°はシャーレの載置されている面に対して角度をなす斜めの方向での照明についての代表的な照射角度であって、照射角度については例えば20°〜50°の範囲内の他の角度においても、エントロピー値として若干変わってくるが同様な傾向が見られる。
【0054】
また、カルスの撮影において、台上に載置されたシャーレの上方から撮影しており、カルスは培養環境にあるので、シャーレ内面側、特に上側の部分に水滴が付着していて、照射角度45°のような斜め方向の照射の場合に、この水滴の影響を受けるため、前述した実験の際にクリーンベンチ内でシャール内の水滴を取り払っている。この状況を避けるためには、シャーレ内のカルスを下側から撮影する形態をとるようにすればよい。この場合、斜め方向の照明光源は図5の場合と対称的に斜め下方からとすることになる。ただし、培地の光透過性についての評価が必要になる。
【0055】
カルスの撮影のための照明光源として白色LEDを用いた例を示したが、他の白点状または線状の白色光源を用いてもよい。
【0056】
以上のように、本発明によるカルスの画像について濃度共起行列法を用いたテクスチャ解析を行いカルスの状態がコンパクトであるか、フライアブルであるかを判別する上で、照明光源を十分な明るさのものとして、台上に載置されたシャーレ内のカルスを側方から照射して撮影したカルスの画像と、斜め方向から照射して撮影したカルスの画像との両方についてテクスチャ解析を行いエントロピー値の相関をとるのがカルスの状態の判別する上で有効であると言える。
【0057】
濃度共起行列法を用いたテクスチャ解析によりカルスの状態を判別するのに良好な画像を取得する方法について説明したが、このように画像を撮影し取得されたカルスの画像についてテクスチャ解析処理を行う装置の基本的形態について図10に示す。図10において、12は培養環境にあるカルスを収容する透明な培養器(シャーレ)の載置台であり、3A,3BはそれぞれLED等の側方照明手段、斜め方向照明手段であり、11は撮像素子を有する撮影部であり、撮影部11と載置台12との間の空間は側方照明手段3Aおよび斜め方向照明手段3Bを含んで遮光部材(図示せず)で外部から遮光される状態になっている。側方照明手段3Aは培養器内のカルスの高さ位置に合わせて位置調整可能に支持されており、また、斜め方向照明手段3Bは培養器内のカルスに対する照射角度を調整できるように位置調整可能に支持されている。撮影動作制御部21は側方照明手段3A,3Bを位置調整し、選択的に動作させるとともに、撮影部での撮影動作の制御を行う。
【0058】
撮影部11で撮影された画像のデータは画像取得前処理部22に移送され、ビット数変換、背景除去、グレースケール変換、色分解・グレースケール変換の処理がなされる。これらの処理がなされた画像データは逐次記憶部23に蓄積保持される。テクスチャ解析処理部24においては、前処理のなされたカルスのグレースケール変換画像について濃度共起行列法を用いたテクスチャ解析を行い、各グレースケール変換画像のエントロピー値を算出し、相関対比する演算を行い、演算処理の結果を記憶部23に蓄積保持する。表示部25は、撮影動作、演算処理、処理結果のデータの表示を行い、中央制御部26は全体的な制御を行う。
【0059】
図10において、画像動作制御部21、画像取得前処理部22、テクスチャ解析処理部23、中央制御部26は各々の制御ないし演算の処理を行う専用処理回路を備えるものとして構成され、本発明はこのような専用処理回路を備える植物培養細胞塊の状態を判別するための装置の形態とすることができる。
【0060】
また、画像取得、前処理、テクスチャ解析処理における演算処理を行うプログラムを備えた汎用コンピュータにより濃度共起行列法を用いたカルスの状態の判別を行うことができ、本発明はこのような濃度共起行列法を用いたカルスの状態の判別を行うことをコンピュータ上で実行するためのプログラムとしての形態をも有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】濃度共起行列の例を示す図である。
【図2】既存のカルスのカラー画像の同じ色成分のグレースケール画像についてのエントロピー値の相関を示す図である。
【図3】既存のカルスのカラー画像の異なる色成分のグレースケール画像についてのエントロピー値の相関を示す図である。
【図4】図2および図3の場合と異なる種類のカルスの画像を含めた場合のエントロピー値の相関を示す図である。
【図5】培養環境においてカルスを撮影するための装置の配置形態を示す図である。
【図6】十分な照明光におけるエントロピー値の相関を示す図であり、(a)B成分のグレースケール変換した画像の場合(b)R成分のグレースケール変換した画像の場合について示すものである。
【図7】十分な照明光におけるエントロピー値の相関を示す図であり、(a)B成分のグレースケール変換した画像の場合(b)R成分のグレースケール変換した画像の場合
【図8】十分な照射光におけるエントロピー値の相関を示す図であり、(a)照射角45°でのエントロピー値と照射角0°でのエントロピー値との相関を示す図であり、(a)B成分のグレースケール変換した画像の場合(b)R成分のグレースケール変換した画像の場合について示すものである。
【図9】輝度の低い照明光におけるエントロピー値の相関を示す図であり、(a)G成分のグレースケール変換した画像の場合(b)カラー画像のグレースケール変換した画像の場合について示すものである。
【図10】テクスチャ解析処理を行う装置の基本的形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0062】
1 小型暗箱
2 シャーレ
3A 白色LED(側方照明手段)
3B 白色LED(斜め方向照明手段)
4 支柱
5 リング状取付部材
10 カメラ支持固定柱
11 デジタルカメラ(撮影部)
12 培養器載置台
21 撮影動作
22 画像取得前処理部
23 記憶部
24 テクスチャ解析処理部
25 表示部
26 中央制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物培養細胞塊であるカルスを巨視的な大きさで撮影したカルスのカラー画像からカルスの状態がフライアブルであるかコンパクトであるかを判別する植物培養細胞塊の状態を判別する方法であって、前記カルスのカラー画像における背景部分を除去したカルスのカラー画像を生成することと、該背景部分を除去したカルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と該背景部分を除去したカルスのカラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とを生成することと、前記カラー画像をグレースケール変換した画像と前記カラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とについてそれぞれ濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行い各々のグレースケール変換したカルスの画像のエントロピー値を算出することと、算出された該エントロピー値を対比することによりカルスの状態がフライアブルであるかコンパクトであるかを定量的に判別することと、からなることを特徴とする植物培養細胞塊の状態を判別する方法。
【請求項2】
前記植物培養細胞塊の状態を判別する対象となる巨視的な大きさで撮影したカルスの画像を撮影装置により撮影により取得する際に、載置面上に配置された透明な培養器内に培養環境において収容されたカルスに対し載置面内で側方からの照明光を前記培養器外から照射し撮影して側方照明によるカルスのカラー画像を取得するとともに、前記載置面上に配置された透明な培養器内に培養環境において収容されたカルスに対し載置面に斜め前方から照明光を前記培養器外から照射し撮影して斜め方向照明によるカルスのカラー画像を取得し、前記側方照明によるカルスのカラー画像と斜め方向照明によるカルスのカラー画像との両方についてそれぞれ濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行うエントロピー値を対比するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の植物培養細胞塊の状態を判別する方法。
【請求項3】
培養器載置台と、該培養器載置台上に配置され植物培養細胞塊を収容する培養器に対し側方および斜め方向の照明光を前記培養器の外方から選択的に照射するための照明手段と、前記培養器載置台上に配置された培養器内に収容された植物培養細胞塊を巨視的な大きさで撮影するための撮影部と、撮影により得られたカラー画像を取得しその背景部分を除去したカルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と該背景部分を除去したカルスのカラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とを生成する画像取得前処理部と、該画像取得前処理部で生成されたカラー画像をグレースケール変換した画像とカラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とについてそれぞれ濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行い各々のグレースケール変換したカルスの画像のエントロピー値を算出し相関対比を行うテクスチャ解析処理部と、からなることを特徴とする植物培養細胞塊の状態を判別するための装置。
【請求項4】
植物培養細胞塊であるカルスを巨視的な大きさで撮影したカラー画像における背景部分を除去したカルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と該背景部分を除去したカルスのカラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とを生成し、前記カラー画像をグレースケール変換した画像と前記カラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とについてそれぞれ濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行い各々のグレースケール変換した画像のエントロピー値を算出し、前記カラー画像をグレースケール変換した画像と少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とのエントロピー値の相関対比を行うことをコンピュータ上で実行するようにしたことを特徴とする植物培養細胞塊の状態を判別するためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−261631(P2008−261631A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73835(P2007−73835)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】