説明

植物性由来の抽出物を含んでなる抗更年期障害剤

【課題】 ニトベギクをエタノール抽出した人体に副作用のない、新規抗更年期障害剤の提供。
【解決手段】 キク科植物またはアカバナ科チョウジタデ属植物から抽出された抽出物を含んでなる、抗更年期障害剤により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キク科植物またはアカバナ科チョウジタデ属植物から抽出した抽出物を含んでなる、新規抗更年期障害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
女性の身体および情性は、卵巣から分泌される女性ホルモンに大きな影響を受けている。女性ホルモンは、一般に、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類があり、これらは心身調節機能として働といわれている。その具体的な機能としては、女性特有の身体形成、排卵を促進させ月経周期をもたらすという生理作用等が挙げられる。一般に、女性は、10代後半から卵巣における女性ホルモンの分泌活動が活発になり、20代〜30代の後半にかけてピークを迎えて、次第に50歳前後(更年期)から卵巣機能の低下に伴い急速に女性ホルモンの分泌活動が衰退するといわれている。また、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌または抑制等の機構は、脳、下垂体、卵巣により管理されているといわれている。
【0003】
女性は、更年期に近づいてくると、下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌は依然なされるのに対して、卵巣自体の働きが低下し卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌に応答した女性ホルモンの分泌を十分に行うことができなくなる。このような状況にあって、下垂体は、女性ホルモンの分泌を促す卵胞刺激ホルモン(FSH)を過剰に身体内に分泌せよとの生体反応(フィードバック反応)を生じさせる。このため、過剰に分泌された卵胞刺激ホルモン(FSH)と、それに対応しきれない不十分な女性ホルモンの分泌との間におこるホルモン調整機構が不安定な状態となる。このホルモン調整機構の不安定が主要要因となって、更年期の女性の心身に様々な障害等を及ぼすこととなる。更年期障害は、このような障害を総称するものである。
【0004】
更年期障害の症状としては、月経の変化による、子宮内膜症、閉経が挙げられる。また、不定愁訴(血管運動神経障害、運動器系障害、精神神経障害、知覚障害)、例えば、火照り、上せ、発汗、冷え、動悸、肩こり、腰痛、手足のシビレ、感覚の鈍り、めまい、頭痛、イライラ、不眠、鬱状態等の症状が挙げられる。不定愁訴は、症状の強弱、回数、個人等によって異なるものであるとされている。生殖器に対する影響としては、エストロゲン低下による膀胱および周辺の筋力低下による、頻尿(排尿回数の増加)、尿失禁等が挙げられる。また、閉経後により生じる膣炎により、膣前庭の灼熱感、掻痒感、乾燥感および性行為痛、性欲減退等の症状が挙げられる。ホルモン、特にエストロゲン分泌低下に伴う、骨粗鬆症、高脂血症、動脈硬化等の発病および病気の進行促進が挙げられている。
【0005】
また、近年、閉経前の20代〜40代の女性において、過度のストレスまたはダイエット等を理由に、ホルモン調整機構が崩れ、内因性女性ホルモンの低下が生じ、更年期障害に類似した症状を訴える者が増加しているとの報告がなされており、このような症状は若年性更年期障害といわれている。
【0006】
更年期障害の多くは卵巣機能の低下による女性ホルモン(特に、エストロゲン)分泌不足によることが原因とされているため、更年期障害を改善するためにはエストロゲン補充療法(女性ホルモン補充療法)が最も効果的であるといわれている。しかしながら、現在使用されているエストロゲン作用剤は、胃腸障害、血栓症、子宮出血、肝障害などの副作用を有することがあると指摘されており、特に、エストロゲン作用剤の長期間投与により子宮癌または乳癌等の女性特有の疾病が生じるとの報告もなされている。
【0007】
このため、植物由来の抽出物質を用いた抗更年期障害剤の使用が提案されている。例え
ば、特許公開2004−155779号(特許文献1)によれば、熟地黄を用いたエストロゲン補助剤またはそれを用いた抗更年期障害剤が提案されている。
【0008】
これに対して、本発明者らは、様々な植物を模索し検討してみたところ、植物ニトベギクの薬理効果に着眼した。植物ニトベギクは、例えば、特許第2609780号(特許文献2)によれば、糖尿病治療剤としての効果があるとされている。
【0009】
しかしながら、本発明者らが調べたところによれば、植物ニトベギクが更年期障害に対して薬理効果を有するとの報告は未だなされていない。
【特許文献1】特許公開2004−155779号
【特許文献2】特許2609780号
【発明の概要】
【0010】
本発明者等は、本発明時において、キク科植物またはアカバナ科チョウジタデ属植物を抽出した抽出物を利用することにより、副作用がなく、薬理効果の高い抗更年期障害剤を提供することができるとの知見を得た。従って、本発明は、特定植物由来の抽出物を用いた薬理効果の高い抗更年期障害剤を提供することを目的とする。
従って、本発明による抗更年期障害剤は、キク科植物またはアカバナ科チョウジタデ属植物から抽出された抽出物質を含んでなるものである。
本発明によれば、更年期障害、特に、不定愁訴、とりわけ、不安、イライラ等の精神的不安定感を、抑制し、予防し、解消(治癒)するとの効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
抗更年期障害剤
抽出物/抽出方法
原料
原料は、キク科植物またはアカバナ科チョウジタデ属植物が挙げられる。キク科植物の好ましい具体例としては、ニトベギク、例えば、〔(ティソニア・ディベルシフォリア(ヘムスル)エー.グレイ:「Tithonia diversifolia(Hemsl)A.Gray」、(同属としてティソニア・フラティコサ・キャンバイ・アンド・ローズ:「Tithonia fruticosaCanby & Rose」)、(ティソニア・スカベリマア・ベンス:「Tithonia scaberrima Benth」)、(ティソニア・ロンゲラデイアタ(バートル)ブレーク:「Tithonia longeradiata(Bertol)Blake」)〕等の約10種類のものが挙げられ、また、メキシコヒマワリ〔学名はティソニア・ロタンディフォリア(ミル)ブレイク:「Tithonia rotundifolia(Mill)Blake〕)が挙げられる。
アカバナ科チョウジタデ属の植物の好ましい具体例としては、キダチキンバイ〔(ラドウィギア・オクトバルビス・ラーベン:「Ludwigia octovalvis Raven」)、チョウジタデ(ラドウィギア・プロストラータ・ロックス:「Ludwigia prostrataRoxb」)〕が挙げられる。
【0012】
抽出
本発明にあっては、溶媒を用いて抽出することが好ましく、溶媒は水溶性または非水溶性のものであってよく、好ましくは水溶性溶媒(より好ましくは水)を用いる。溶媒抽出の際に用いる原料は、そのままであっても、また乾燥したものであってもよいが、抽出率の向上、抽出手続等の利便性等の理由から乾燥させた原料を用いることが好ましい。
【0013】
濃縮
本発明の好ましい別の方法によれば、抽出物はそれから水を除去した抽出物であって良い。溶媒を除去する方法としては、一般的には、減圧濃縮、加熱濃縮、通風濃縮、冷凍濃縮、噴霧濃縮、およびその他の濃縮方法、またはこれらの混合方法を用いることができる。濃縮の際の、圧力、温度、風力、噴霧等は、得られる抽出物の量に併せて適宜設定することができる。
【0014】
乾燥/乾燥物
本発明の好ましい別の方法によれば、抗更年期障害剤は、得られた抽出物から水を除去したもの、または得られた抽出物を乾燥し、得られた乾燥物を含んでなるものであってもよい。本発明において、乾燥方法は、天日乾燥、(熱)風乾燥、真空乾燥、通気乾燥、流動乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、高周波乾燥、およびその他の乾燥法、またはこれらの混合方法が用いられるが、本発明においては、好ましくは凍結乾燥が利用される。この凍結乾燥を行う場合、凍結温度、乾燥(湿度)は得られる凍結乾燥物の量に併せて適宜設定することができる
【0015】
用途
本発明による抗更年期障害剤は更年期障害(若年性更年期障害)の予防、抑制、改善、または治療する目的に利用され、その効能が認められる。
【0016】
本発明による抗更年期障害剤は、経口および非経口(例えば、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で、人を含む動物に投与することができる。本発明による抗更年期障害剤は、投与経路に応じた適切な剤形として提供されることが好ましい。例えば、液剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠等の経口剤、直腸投与剤等の種々に調製して使用することが可能である。
【0017】
抗更年期障害剤としての効果をより確実なものとするために、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤等、薬学上許容される担体または添加剤を適宜選択し、組み合わせたものを本発明による抽出物等に添加してよい。使用可能な無毒性の上記添加剤は、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
【実施例】
【0018】
本発明の内容を下記の実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
抽出物の調製
植物ニトベギクの乾燥物(50kg)を用意し、容器(1,000リットル)に水800リットル入れて、95℃で1〜4時間加熱し、ろ過により不純物を取り除いて凍結乾燥し、抽出物(5〜20kg)を得た。
【0019】
評価試験
試験ラット
3〜4回出産を経験したWistar系リタイヤ雌ラット(日本医科学実験資材研究所より購入)を、1週間飼育した後、エーテル麻酔を施し、両側卵巣を摘出した。その後、飼育温度23±1℃、飼育湿度55±1%、照明(12時間毎に明暗)、試料および水自由摂取の下、4週間飼育した。
比較例1:コントロール群(1)
3〜4回出産を経験したWistar系リタイヤ雌ラット一群を断頭採血し、血漿を得た。
比較例2:コントロール群(2)
上記飼育した雌ラットの一群をそのまま飼育した。
その後、断頭採血し、血漿を得た。
比較例3:ストレス負荷群
上記飼育した雌ラットの一群をそのまま飼育し、20分間エーテル吸入させて、ストレスを負荷させ、その後、断頭採血し、血漿を得た。
実施例1:3日間ニトベギク抽出物投与群
上記飼育した雌ラットの一群に、調製したニトベギク抽出物を、人(体重50kg)が1日摂取する量を1gとしたときの10倍量に当たる0.2g/kgを水に懸濁させて、1日1回3日間経口投与した。その後、20分間エーテル吸入させて、ストレスを負荷させ、その後、断頭採血し、血漿を得た。
実施例2:11日間ニトベギク抽出物投与群
上記飼育した雌ラットの一群に、調製したニトベギク抽出物を、人(体重50kg)が1日摂取する量を1gとしたときの10倍量に当たる0.2g/kgを水に懸濁させて、1日1回11日間経口投与した。その後、20分間エーテル吸入させて、ストレスを負荷させ、その後、断頭採血し、血漿を得た。
【0020】
評価試験
実施例1、2、比較例2、3において採取した血漿について、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アドレナリン(AD)、ノルアドレナリン(NA)、ドーパミン(DO)の各量を測定し、図1の(a)〜(d)に表した。実施例1、2、比較例1、3において採取した血漿について、性腺刺激ホルモン(LH)の量を測定し、図1の(e)に表した。
評価結果
図1(a)において、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の数値が低くコントロール(2)に近いほど、更年期障害を予防し、抑制し、治療する効果が高い。図1(b)において、アドレナリン(AD)の数値が高くコントロール(2)に近いほど、更年期障害を予防し、抑制し、治療する効果が高い。図1(c)において、ノルアドレナリン(NA)の数値が高くコントロール(2)に近いほど、更年期障害を予防し、抑制し、治療する効果が高い。図1(d)において、ドーパミン(DO)の数値が高くコントロール(2)に近いほど、更年期障害を予防し、抑制し、治療する効果が高い。図1(e)において、性腺刺激ホルモン(LH)の数値が低くコントロール(1)に近いほど、更年期障害を予防し、抑制し、治療する効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、更年期障害剤を予防し、抑制し、治療することを指し示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キク科植物またはアカバナ科チョウジタデ属植物から抽出された抽出物を含んでなる、抗更年期障害剤。
【請求項2】
キク科植物がニトベギクである、請求項1に記載の抗更年期障害剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抽出物を乾燥して得られた乾燥物を含んでなる、抗更年期障害剤。
【請求項4】
更年期障害を予防し、抑制し、または治療するために使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗更年期障害剤。
【請求項5】
薬学上許容される担体または添加剤をさらに含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗更年期障害剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−347933(P2006−347933A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174783(P2005−174783)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(500094015)株式会社 ヒロインターナショナル (4)
【Fターム(参考)】