説明

植物栽培システムおよび植物栽培プラント

【課題】 様々な種類の植物に幅広く適用が可能であるとともに、雑菌等の繁殖を抑え、植物の成長を促進して効率良く栽培をおこなうことができる植物栽培システムを提供する。
【解決手段】 植物栽培システム2は、上下複数段に配設保持される栽培ベッド40と、栽培植物Pの成長に応じて上下に移動させられる人工光源80と、空気通路87に、温度、湿度、CO濃度等が調整された空気を順次送り込む空調装置84と、を備えている。栽培ベッド40は、栽培槽72と、栽培槽72の上部に嵌着され養液Aの流路76を形成するとともに、流路76に向けて植物根P’が露出するようにして栽培植物Pを植付状態とする植付パネル73と、から構成されている。植物栽培システム2では、栽培ベッド40に供給される養液Aが、流路76を連続的に通過して排出された後に循環して再利用されるとともに、養液Aが、流路76に間欠的に流入するように制御されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜等の植物を水耕栽培するための植物栽培技術に関し、特に栽培ベッドを上下複数段に設けてなる多段棚式の植物栽培システムおよび植物栽培プラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜等の植物を水耕栽培するシステムとして、栽培床を略垂直に設け、栽培床の裏側に露出する植物根に養液を噴霧するようにした植物栽培システムがある(例えば、特許文献1)。この植物栽培システムを用いれば、狭小な土地であっても、生産効率を格段に向上させることが可能となる。
【0003】
しかしながら、上記の植物栽培システムでは、植物の植付姿勢に制約が生じるため、植物の種類(例えばキャベツ等)によっては、栽培が困難なものがあることが明らかとなっている。
これに対して、栽培ベッドを上下複数段に設けてなる多段棚式の植物栽培システムが知られている。このような植物栽培システムであれば、植物の植付姿勢にも無理がないことから、植物の種類を問わず比較的効率よく生産をおこなうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−92859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の多段棚式の植物栽培システムによれば、栽培ベッドの下部に養液を長期間プール状に貯留し、この養液に植物根を浸して栄養分を吸収させるタイプのものが多かったため、貯留した養液中に雑菌が繁殖し易く、植物の成長が妨げられるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、様々な種類の植物に幅広く適用が可能であるとともに、雑菌等の繁殖を抑え、植物の成長を促進して効率良く栽培をおこなうことができる植物栽培システムおよび植物栽培プラントを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の植物栽培システムは、栽培植物が植え付けられ、上下複数段に、且つそれぞれ略水平をなして配設保持される栽培ベッドと、各栽培ベッドの上方に設けられ、栽培植物の成長に応じて上下に移動させられる人工光源と、送風口または送風ファンを有し、各栽培ベッドの一方側から他方側に向かって形成される空気通路に、温度、湿度、CO濃度等が調整された空気を順次送り込む空調装置と、を備えた植物栽培システムであって、該栽培ベッドが、上部開放箱型の栽培槽と、該栽培槽の上部に嵌着され、該栽培槽の底面との間に、養液の流路を形成するとともに、該流路に向けて植物根が露出するようにして栽培植物を植付状態とする植付パネルと、から構成され、該栽培ベッドに供給される養液が、該流路を連続的に通過して排出された後に循環して再利用されるとともに、該養液が、該流路に間欠的に流入するように制御されていることを要旨とする。
【0008】
また、本発明の植物栽培システムは、さらには、該栽培ベッドに供給される該養液を貯留するとともに、該養液の濃度、容量、温度を一定の値に保持できる自動管理手段を有する供給タンクと、該栽培ベッドから排出された該養液を回収するための戻り液タンクと、該供給タンクと該戻り液タンクとの間に介設され、該戻り液タンクから該供給タンクに移される該養液のろ過および殺菌をおこなうためのろ過装置およびオゾン発生器を含む殺菌装置と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
また、本発明の植物栽培システムは、さらには、該栽培ベッドと並行して上部に設けられ、該栽培ベッドと同程度の面積を有する天井部を有しており、該天井部は栽培植物の成長に応じて上下に移動させられ、該天井部に該人工光源が設けられていることを要旨とする。
【0010】
また、本発明の植物栽培システムは、さらには、該空調装置は、該人工光源と連動して上下に移動させられるとともに、該栽培ベッドに植え付けられる栽培植物および該人工光源に向けて、温度、湿度、CO濃度等が調整された空気を噴き出す噴出口を有していることを要旨とする。
【0011】
また、本発明の植物栽培システムは、さらには、該流路の下流側に、上部空間が開放された溢流堰が形成され、該溢流堰の下部には、養液の供給を停止した際に流路の養液をすべて排出するための小孔が設けられていることを要旨とする。
【0012】
また、本発明の植物栽培システムは、さらには、表面に多数の孔部を有する方形板と、該方形板を地面から支えるための脚部からなる育成パネルであって、前記孔部は、上下ともに開放された逆円錐台形で、下端は育成パネル高さの略中間に位置するよう吊り下げた状態とした育成パネルを用いることを要旨とする。
【0013】
また、本発明の植物栽培システムは、さらには、植物栽培システムの稼動状況を表示するための表示部と、該植物栽培システムを構成する機器や装置の作動状態を監視できる監視手段と、該植物栽培システムを構成する機器や装置を操作できる操作手段と、を備えることにより、該植物栽培システムを構成する機器や装置の全体監視及び操作を可能とし、及び/又は、該植物栽培システムをネットワーク回線に接続し、遠隔地にある端末を該ネットワーク回線と接続することにより、端末を用いて遠隔から該植物栽培システムを構成する機器や装置の全体監視及び操作を可能としたことを要旨とする。
【0014】
また、本発明の植物栽培プラントは、先に述べた植物栽培システムが設けられてなり、太陽光が遮断され、断熱性を有する屋根および外壁体にて覆われるとともに、該屋根には屋上緑化が施されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の植物栽培システムおよび植物栽培プラントによれば、栽培ベッドが、上下複数段に、且つそれぞれ略水平をなして配設保持されていることから、少ない面積において、苗床を多く作ることが可能であり、かつ、様々な種類の植物に幅広く適用することができる。
【0016】
また、栽培ベッドに供給される養液が、該流路を連続的に通過して排出された後に循環して再利用されることから、一度使った養液を廃棄する必要がなく、栽培に必要な養液の量を最小限に抑制することが可能である。そして、養液が、該流路に間欠的に流入するように制御されていることから、栽培植物の根が養液に浸った状態と浸っていない状態とを一定時間ごとに変化させることが可能であり、これにより栽培植物の根を刺激して、根がより多くの養液を吸収する状態にすることができる。さらに、雑菌等の繁殖を抑えることができる。
さらに、植付パネルを表面に多数の孔部を有する方形板と、該方形板を地面から支えるための脚部から構成し、前記孔部は、上下ともに開放された逆円錐台形で、下端は植付パネルの高さの略中間に位置するよう吊り下げた状態としたことにより、孔部に挿入する培地の水はけがよくなり、培地が空気にさらされることで植物の成長をはやめ、また、短時間で、培地に養液を供給し、又は培地から養液を排出することができる。
【0017】
また、上下に移動させられる人工光源、あるいは人工光源が設けられた天井部を有することから、植物の成長にあわせて植物から人工光源までの位置を常に一定距離に保つことができ、最も植物の生育に好ましい量の人工光を常時照射することができる。これにより、栽培植物の成長が促進される。
【0018】
また、空調装置により、各栽培ベッドの一方側から他方側に向かって形成される空気通路に、温度、湿度、CO濃度等が調整された空気を順次送り込むことにより、人工光源から発せられる熱を取り除き、栽培植物の周囲の温度や湿度等を、生育に最も適した状態にすることができる。さらに、空調装置を、筒状の形状とし、該栽培ベッドの長辺側に沿って一方に近接して、上下に移動可能な該天井部に固着して設置することで、天井部の昇降動作に連動して昇降し、天井部がどのような位置にあっても、常に天井部の真下部分に低温の空気を吹き付けることが可能となり、人工光源から発せられる熱をより確実に除去することができる。
【0019】
また、本発明の植物栽培プラントおよび植物栽培システムをコンピュータで制御することにより、各システムを構成する機器や装置を外部のモニターから全体監視および操作することができ、実際に植物を栽培している部屋内に入る必要がなくなり、目視による装置の監視や手動による機器の操作を行う手間を省くことができる。さらには、遠隔から植物栽培プラントを全体監視および操作することを可能としたことで、実際に植物栽培プラントが設置される建物内に人がいなくとも、栽培を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る植物栽培プラントの平面図である。
【図2】実施形態に係る植物栽培プラントの断面図である。
【図3】実施形態に係る植物栽培システムの構成図である。
【図4】栽培ベッドを示す一部破断拡大図である。
【図5】溢流堰を設けた栽培ベッドを示す一部破断拡大図である。
【図6】(a)実施形態に係る植物栽培システムを構成する駆動部を示す平面図、(b)同正面断面図である。
【図7】実施例2に係る空調装置を備えた栽培ベッドを示す一部破断拡大図である。
【図8】実施例2に係る空調装置を備えた栽培ベッドを示す側面断面図である。
【図9】(a)育苗用の植付パネルを示す平面図、(b)同正面図である。
【図10】(a)育成用の植付パネルを示す平面図、(b)同正面図である。
【図11】モニターに表示されるシステムの監視画面である。
【図12A】モニターに表示されるメインメニュー画面である。
【図12B】モニターに表示される運転操作メニュー画面である。
【図12C】モニターに表示される弁手動操作画面である。
【図12D】モニターに表示される育成室・棚温度設定画面である。
【図12E】モニターに表示される設定メニュー画面である。
【図12F】モニターに表示される監視メニュー画面である。
【図12G】モニターに表示される履歴メニュー画面である。
【図12H】モニターに表示される管理者メニュー画面である。
【図13】(a)実施形態に係る植物栽培システムを構成する別の駆動部を示す正面図、(b)同平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態として第1の実施例、第2の実施例および第3の実施例につき、説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の第1の実施例について、図面を参照しつつ説明する。図1、図2は実施形態に係る植物栽培プラント1の平面図および断面図、図3は植物栽培プラント1が備える植物栽培システム2の構成図、図6は実施形態に係る植物栽培システムを構成する駆動部を示す図、図13は実施形態に係る植物栽培システムを構成する別の駆動部を示す図である。
【0023】
図1、図2に示すように、植物栽培プラント1は比較的大型の平屋建てをなし、育成室10、育苗室11および機械室12を備えて構成されている。機械室12は、後述する植物栽培システム2を稼動させるポンプP1〜P5などの各種機器や分電盤、制御盤・動力盤を格納するものである。
植物栽培プラント1には、この他に、収穫した栽培植物の出荷準備や用具の洗浄等をおこなうための出荷・洗浄室14、育成室10や育苗室11をモニタリングする中央監視設備が設置される管理室15、作業員等のロッカー室16が適宜設けられている。また、屋外には、空調室外機22や後述する植物栽培システム2の一部をなす供給タンク44、戻り液タンク45、冷温水槽67、ヒートポンプチラー68が配設されている。
【0024】
植物栽培プラント1は、断熱材や断熱塗料等によって断熱性を有する屋根18および外壁体19にて覆われているとともに、少なくとも育成室10、育苗室11については太陽光を完全に遮断できる構造を有している。また、図2に示すように、屋根18には屋上緑化20が施されている。このような構成により、熱負荷の軽減が図られ、効率的な生産が可能となる。
【0025】
育成室10および育苗室11には、それぞれ育成棚30および育苗棚31が複数列をなして配設されている。育成棚30および育苗棚31は、所定の栽培ベッドがそれぞれ上下複数段に亘って設けられたものである。
育苗棚31で育成された苗が、育成棚30に移し替えられ、その後栽培植物Pとして育成される。なお、図2に示すように、育成室10および育苗室11は半地下状に掘り下げられ、フロアレベルから下方が配管・配線スペース32として構成されている。
育成室10および育苗室11は密閉可能な構造を有しており、各室には空調機34、35、36が適宜設置されている。これにより、育成室10および育苗室11の温度や湿度が、年間を通して植物の生育に最適な一定範囲に調整されている。
【0026】
植物栽培プラント1は、図3に示す如くの植物栽培システム2が設けられてなる。植物栽培システム2は、図3に示すように、主として栽培ベッド40、給液管41、排液管42、供給タンク44、戻り液タンク45、ろ過装置47、殺菌装置48などから構成されている。栽培ベッド40は、特に育成室10の育成棚30に設けられているが、育苗室11の育苗棚31にも同様の栽培ベッドが配設され、同様のシステムによって、育苗のための養液が循環供給されているものである。
なお、植物栽培システム2には、電磁弁や逆流を防止する逆止弁、さらに排液を再利用しない場合にそのまま排出する排出手段等が必要に応じて各所に適宜設けられるものとする。
【0027】
図3に示すように、植物栽培システム2では、供給タンク44に貯留される養液Aが、供給ポンプP1によってポンプアップされ、給液管41を介して各栽培ベッド40に供給される。養液Aとしては、液肥を希釈したものが用いられる。
各栽培ベッド40から排出された養液Aは、排液管42を介して、土間地下に埋設されるポンプ槽50に収集されたのち、汲み上げポンプP2によってポンプアップされ、戻り液タンク45に回収される。ポンプ槽50と戻り液タンク45との間には、ゴミ取りカゴ52が介設されており、ここで汚泥等の大きなゴミが取り除かれる。
【0028】
戻り液タンク45に運ばれた養液Aは、戻り液ポンプP3によってポンプアップされ、ろ過装置47および殺菌装置48を通過して、再び供給タンク44に貯留される。ろ過装置47は、フィルター54によって形成されており、ここで小さなゴミまで取り除くことができる。殺菌装置48は、オゾン発生器55を備えており、オゾン発生器55によって発生させたオゾンを、戻り液タンク45から供給タンク44に移される養液Aに混入攪拌して殺菌処理する機能を有している。
【0029】
供給タンク44には、養液Aの濃度および容量を一定の値に保持する自動管理手段としての濃度センサー57および液位置センサー58が設けられている。図中60はコントローラであり、濃度センサー57および液位置センサー58からの入力信号に基づき、原液注入ポンプP4を適宜駆動させるようになっている。原液注入ポンプP4の駆動に伴って、原液タンク62の原液Bが供給タンク44に供給されるとともに、必要によって井水Wが混合攪拌されることにより、供給タンク44内で所定の養液Aが新たに調合される。
【0030】
供給タンク44には、養液Aの温度を一定の値に保持する自動管理手段としての温度センサー59も設けられている。温度センサー59が検出した信号は同様にコントローラ60に入力され、循環ポンプP5を駆動させる。循環ポンプP5は、供給タンク44内の養液Aをポンプアップし、冷温装置65を介して適温とされた養液Aが、供給タンク44へと戻される。冷温装置65は、熱交換器66、冷温水槽67、冷温水ポンプP6、ヒートポンプチラー68とから構成されるものである。
このようにして、供給タンク44に貯留される養液Aが、栽培植物Pの生育に最良のものとなるように常時保たれている。
【0031】
次に、栽培ベッド40及び植付パネル73について、図4、図5、図9、図10を参照してさらに説明する。図4は、育成室10の育成棚30に設けられる栽培ベッド40を示す一部破断拡大図、図5は溢流堰を設けた栽培ベッドを示す一部破断拡大図、図9は育苗用の植付パネルを示す図、図10は育成用の植付パネルを示す図である。
【0032】
図4に示すように、育成棚30が、直方体枠組み状に剛構成された架台70において、所定間隔で上下複数段に配設保持される栽培ベッド40を備えて構成されている。各栽培ベッド40は、ブラケットやアングルピース等の保持手段(図示せず)を介して、架台70の縦部材に略水平に固設されている。
栽培ベッド40の段数は、植物の種類等によっても異なるが、3〜9段程度とするのが作業性や生産効率の点から好ましい。
【0033】
栽培ベッド40は、平面視950mm×2600mmの矩形板状をなし、上部開放箱型の栽培槽72と、栽培槽72の上部に嵌着される植付パネル73とから構成されている。栽培槽72の底面75と植付パネル73との間には、養液Aの流路76が形成されている。そして、給液管41から分岐管41aを介して供給される養液Aが、植付パネル73の所定位置に穿設された給液口73aから栽培ベッド40に流入し、この流路76を連続的に通過して、栽培槽72の底面75の所定位置に接続される排液口75aおよび分岐管42aを介して、排液管42へと流下排出されるようになっている。
【0034】
植付パネル73には、栽培植物Pを植付状態とするためのポット78を支持するポット受孔79が適宜の間隔で多数穿設されている。ポット78は、底部が開放且つ先端部がカットされた逆円錐形で、栽培植物Pの苗を培土とともに収容して栽培するための容器である。栽培植物Pは、植物根P’が、ポット78を貫通して、植付パネル73の下方に露出するようにして配設される。
【0035】
また、種の状態から苗の状態になるまで栽培する育苗用と、苗の状態から収穫できる状態になるまで栽培する育成用との二種類の植付パネル73を用いると、より好ましい。育苗用植付パネル73aは、図9(a)(b)に示すとおり、表面にポット受孔79aを多数有する平板であり、四隅と、横辺の中間部に、平板を高い位置で地面から支えるための脚部77が設けられている。また、ポット受孔79aは、上下ともに開放された逆円錐台形となっている。育苗用植付パネルの高さは約5cmであり、ポット受孔の深さは約3cmであることから、育苗用植付パネルは、ポット受孔の下端が植付パネルの高さの略中間に位置するよう、ポット受孔を吊り下げた状態となっている。
育成用植付パネル73bは、図10(a)(b)に示すとおり、育苗用植付パネル73aよりも、配置されるポット受孔の数が少なくなっている。その他の構成は、育苗用植付パネル73aと同様である。
【0036】
育苗用植付パネル73aを用いる場合、ポット受孔79aに、栽培植物Pの種を植えた逆円錐形のウレタン等を培地として挿入する。そして、この育苗用植付パネルを栽培槽72に嵌着し、栽培する。流路76に養液Aを供給することにより、植付パネル73aの下部空間を養液Aが流れることになるが、ポット受孔79aの底部から1cm乃至1.5cm程度養液Aが浸る程度となることが好ましい。ポット受孔79aの底部は開放されているため、底部に1cm程度養液Aが浸ると、毛細管現象により、培地となるウレタン等の下部から上部まで短時間で養液Aが行き渡る。これにより、培地の上部に植え付けた栽培植物Pの種にも、十分に養分が行き渡ることとなる。また、流路76への養液Aの供給を停止し、養液Aをすべて排出した場合、ポット受孔79aの底部が植付パネル73aの底部よりも上位に設けられ、ポット受孔79aの底部が開放されていること、及び培地に水はけのよいウレタン等を用いることから、培地から、養液Aが短時間で排出される。このような構成により、栽培植物Pの種を植えた培地に養液Aを供給し、又は培地から養液Aを排出する作業を迅速に行うことが可能となる。
上記育苗用植付パネル73aを用いて栽培植物Pを種の状態から育苗し、苗の状態になると、ポット受孔79aから培地を育成用植付パネル73bに植え替える。育苗用植付パネル73aと育成用植付パネル73bとは、ポット受孔の直径及び深さが略等しいため、培地はどちらにも容易に挿入できる。そして、育苗用植付パネル73aを栽培槽72から取り外し、該育成用植付パネル73bを栽培槽72に嵌着する。もちろん、あらかじめ植付パネルが嵌着されていない栽培槽を用意しておき、この栽培槽を用いてもよい。このように、二種類の植付パネルを用いることにより、苗の状態までは育苗用植付パネル73aを用いることで、より少ない植付パネル数で育成することができ、栽培に要される養液や照明を抑制できるため、経済的かつ効率よく栽培できる。また、育成用植付パネル73bは、ポット受孔間の配置間隔が広いため、育成用植付パネル73bへと移すことにより、栽培植物Pが苗の状態からさらに成長しても、互いに接触することなく、育成が阻害されることはない。
【0037】
排液口75aは、入口側よりも出口側が窄んだ漏斗状に形成されており、電磁弁41bによって養液Aの流入量や流入スピードを調整することで、流路76内を養液Aで略一杯に満たし、流路76に向けて露出した植物根P’が流路76を通過する養液Aに接触して、養液A中の栄養分を十分に吸収できるようになされている。
【0038】
また、養液Aは、電磁弁41bを介して、流路76に間欠的に流入するように制御されている。養液Aの供給を一定時間ごとにストップし、植物根P’に養液Aと空気を交互に触れさせることで栽培植物Pの成長をさらに促進することができる。そのため、植付パネル73に空気を取り込むための多数の透孔を設けたり、植付パネル73自体をメッシュ状に形成すればより好ましい。
【0039】
なお、栽培槽72における流路76の下流側に上部空間が開放された溢流堰91を形成し、養液Aが所定量になると堰を超えて、排液管42へと流出するような構成とすることもできる(図5)。この場合、溢流堰の下部に、排液用の小孔92を適所に設け、養液Aの供給を止めたときに、栽培槽72内の養液Aを残らず排液管へと排出できるようにする。また、溢流堰91の内側に、電磁弁に接続した排液口75aを設けておき、栽培槽72内の養液Aを残らず排液管42へと排出できるようにしてもよい。養液Aを排出し、植物根P’に空気を触れさせることで、植物根P’が刺激を受け、次に流入してくる養液Aを活発に吸い上げる。これによって、栽培植物Pの成長が促進される。
また、植付パネル73を固定しておき、養液Aの満ちた栽培槽72を上下させる構成とすることもできる。
【0040】
栽培植物Pとしては、野菜や果物など様々な種類の植物が対象となる。特に流路76内の養液Aが常に新鮮な状態に保たれることから、生姜も好適に採用され得る。
【0041】
図4に示すように、各栽培ベッド40の上方には、それぞれ栽培植物Pを照射するための人工光源80が付設されている。人工光源80は、手動または自動の走行装置81を介して、栽培ベッド40に対して上下移動自在に構成されている。
人工光源80は、栽培植物Pの成長に応じて上下移動させられる。光の強度や量が不足すると栽培植物Pの成長が遅れ、逆に過剰であると栽培植物Pに焼け等が生じる結果となる。上記人工光源80の構成によれば、人工光源80と栽培植物Pとの間の距離が常に適正(通常10〜20cm程度)に保たれ、栽培植物Pの成長を促進することが可能となる。
【0042】
さらに、図6(a)(b)に示すように、各栽培ベッド40の上方に天井部115を、天井部115の上方に駆動部118を設け、駆動部の作用により天井部を上下に移動可能としてもよい。天井部115は、栽培ベッド40に並行してその上部に設けられており、栽培ベッド40と同程度の面積を有する。駆動部118は、薄い箱型の形状で栽培ベッド40とは略水平に固着保持されており、主として軸ボルト100と、左右一対のアーム101a,101bとが内部に配置されている。
軸ボルト100は、全長にわたって螺子が刻設されたものであり、図6(a)(b)に示すように、駆動部118の略中央位置に前後に延在して設けられている。アーム101a,101bは、図6(a)(b)に示すように、左右対称のくの字状に形成されており、従動部102a,102bを介してそれぞれ開閉自在となされている。アーム101a,101bの先端部には、螺合部104,104が、アーム101a,101bに対して回動自在に接続されている。そして、この螺合部104,104を介して、アーム101a,101bが平面視菱形状となるように、軸ボルト100に螺合されている。
【0043】
軸ボルト100の前端には、所定の操作孔106が露呈して連接されており、操作ハンドル109(図6(b))の先端を操作孔106に差し込むことによって、軸ボルト100を正逆廻りに容易に回転させることができる。
上記螺合部104,104は、互いに逆向きの螺子が切られており、軸ボルト100の回転に伴って、螺合部104,104が、軸ボルト100に沿って互いに近づいたり離れたりして前後対称の移動をおこなう。これに従って、螺合部104,104に接続されるアーム101a,101bが左右方向に伸縮する。つまり、アーム101a,101bがそれぞれ開き角度を大小変化させながら、従動部102a,102bが軸ボルト100に略直行して互いに近づいたり離れたりして、左右対称の移動を行う。そして、天井部115の四隅近傍が、ワイヤー等の吊設部材110を介して従動部102a,102bに連結されていることから、従動部102a,102bの上記移動に連係して、天井部115が上下に移動可能となるものである。
【0044】
また、図13(a)(b)に示すように、駆動部118は、主に軸ボルト100と、左右対となる各2個1組で配置されるの内側滑車107a,107b、及び外側滑車108a,108bとからなる構成としてもよい。
軸ボルト100は全長にわたって螺子が刻設されたものであり、図13(a)(b)に示すように、駆動部118の略中央に前後して延在して設けられている。内側滑車107a,107bは、図13(a)(b)に示すように、螺合部104,104と線で結んだ場合に平面視菱形状となるよう、左右にそれぞれ、近接して2個ずつ駆動部118に固定して設けられている。外側滑車108a,108bは、図13(a)(b)に示すように、内側滑車107a,107bから軸ボルト100と垂直方向外側に、近接して2個ずつ駆動部118に固定して設けられている。
そして、1つの螺合部104には左右に1本ずつワイヤー等の吊設部材70が着設されており、各吊設部材70は、内側滑車107a,107b及び外側滑車108a,108bを介して、それぞれ駆動部118の該螺合部側の四隅へと延伸される。もう一方の螺合部104からも同様に左右に1本ずつ吊設部材70が内側滑車107a,107b及び外側滑車108a,108bを介して四隅へと延伸される。そして、駆動部118の四隅には開口部が設けられており、それぞれの吊設部材70は該開口部を遊貫して、天井部115へと連結される。
【0045】
軸ボルト100の前端には、所定の操作孔106が露呈して連接されており、操作ハンドル109の先端を操作孔106に差し込むことによって、軸ボルト100を正逆廻りに容易に回転させることができる。
上記螺合部104,104は、互いに逆向きの螺子が切られており、軸ボルト100の回転に伴って、螺合部104,104が、軸ボルト100に沿って互いに近づいたり離れたりして前後対称の移動をおこなう。これに従って、螺合部104,104から内側滑車107a,107bまでの吊設部材70の距離が長短に変化する。つまり、螺合部が軸ボルト上中央に近づけば近づくほど内側滑車との距離は短くなるし、逆に離れれば離れるほど内側滑車との距離は長くなる。各吊設部材70自体の長さは変化しないため、螺合部104,104の近づいたり離れたりする前後対称の移動に連係して、螺合部104,104から内側滑車107a,107bまでの吊設部材70の長さが長短変動し、よって、天井部115が上下に移動可能となるものである。
上記構成により、人工光源80と栽培植物Pとの間の距離を常に栽培植物Pの成育に最も適した距離に保つことが可能となる。
【0046】
人工光源80としては、栽培植物Pの成長にとって好ましい波長域となるように、蛍光灯、高圧ナトリウムランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ、冷陰極ランプ、LED等を単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。LEDを用いる場合には、例えば植付パネル73と略同面積の天井板を走行装置81によって上下移動自在に設け、この天井板に適宜間隔でLEDを埋設するようにしてもよい。
【0047】
また、図4に示すように、各栽培ベッド40は、空調装置84を備えている。空調装置84では、栽培ベッド40の短辺上部の一方側に送風口85、他方側に排気ファン86が設けられており、栽培ベッド40の上方において一方側から他方側に循環する空気通路87が形成されている。送風口85は、上記空調機34から延出するダクト34aの吹出し口に適宜接続されるとともに、排気ファン86は、上記空調機35から延出するダクト35aの吸込み口に適宜接続されている(図2参照)。送風口85に替えて、送風ファンを設けるようにしてもよい。
【0048】
このような空調装置84により、温度、湿度、CO濃度等が調整された空気を、各栽培ベッド40の栽培植物Pに確実に供給することが可能となる。空調効果を高めるために、育成棚30の架台70を断熱パネル等によって被覆する構成としてもよい。
【0049】
また、空調装置84は、人工光源80の熱を除去する働きもなす。人工光源80には、上記した如く栽培植物Pの成長に応じて上下動し、栽培植物Pに対する距離を調節できる走行装置81が付設されている。上記送風口85や排気ファン86を、この走行装置81の動作に伴って上下動するように構成し、常に人工光源80近辺に向かって冷風を吹き付けて冷却するようにしてもよい。これにより、人工光源80付近に熱が滞り、栽培植物Pの成長に悪影響が生じるのを確実に防止することが可能となる。送風口85に替えて送風ファンを用いてもよいことは上述のとおりである。
冷却後の空気は、育成室10内に拡散させ、育成室10の空気と混同させて空調機で冷やし、これを循環させるようにしてもよい。
【0050】
以上、説明した如くの植物栽培プラント1および植物栽培システム2によれば、栽培ベッド40の流路76に供給される養液Aが、流路76を連続的に通過して排出され、ろ過装置47や殺菌装置48、さらに自動管理手段を有する供給タンク44などを経由した後に循環して再利用されるものであるため、常に一定の新鮮な養液Aを栽培植物Pに供給することができ、栽培槽72の流路76内に雑菌等が繁殖するおそれが低い。また、人工光源80や空調装置84などの所定構成とも相俟って、栽培植物Pの成長を促進して効率良く栽培をおこなうことができるものである。
【実施例2】
【0051】
本発明の第2の実施例について、図面を参照しつつ説明する。第2の実施例は、実施例1における空調装置とは別構成の空調装置を用いるものである。図7は、実施例2に係る空調装置を備えた栽培ベッドを示す一部破断拡大図であり、図8は、実施例2に係る空調装置を備えた栽培ベッドを示す側面断面図である。
図7、図8に示すとおり、第2の実施例に係る空調装置116の形状は、栽培ベッド40の長辺の長さに略相当する全長を有する筒状であり、天井の一方の長辺側に沿って近接して設けることを特徴とする。
空調装置116は、上下方向に移動可能な天井部115に吊り下げて設け、天井部の昇降動作に連動して空調装置116も昇降することとする。固着手段としては、例えば、図8に示すとおり、バンド状の取付金具133を用いることが考えられる。空調装置116は、伸縮自在のフレキシブルダクト131および分岐ダクト132を介して、架台70に近接して設けられた空調装置用ダクト130に接続されている。空調装置用ダクト130は、上記空調機34から延出するダクト34aの吹出し口に接続されることとしてもよいし、別の空気発生源から空気を取り込むこととしてもよい。
空調装置116のやや上部所定の位置には、多数の噴出口135a,135bが、千鳥状の上下二段に設けられている。そして、下側の噴出口135aから、栽培ベッド40に植え付けられている栽培植物Pに向けて、温度、湿度、CO濃度等が調整された空気が噴出される。
【0052】
また、図8に示すように、上側の噴出口135bからは、人工光源80に向けても、温度、湿度、CO濃度等が調整された空気が噴出される。これにより、人工光源80から生じた熱を取り除き、栽培ベッド40の上部空間の温度を低温に保つことが可能となる。植物の種類によっても異なるが、栽培植物Pが生育する上で理想となる温度は、およそ15℃から20℃である。一方、人工光源80と栽培植物Pとの距離は約10cm〜20cmと短く、かつ、人工光源80近辺は約60℃と高温になるため、熱を除去する工夫がなければ、栽培植物Pの周辺は高温になってしまう。さらに、本発明の栽培ベッド40は上下複数段で構成されており、下段の人工光源80から発生した熱は上昇するため、上段の栽培ベッド40の周囲は、より高温になってしまう。仮に栽培ベッドが5段で構成される場合、最下段と最上段の栽培ベッド40周囲の温度を比較した場合、最上段のほうが、およそ10℃近くも高温となる。
天井部115の昇降動作に連動して空調装置116も昇降する構成とすると、天井部115の上下位置に関係なく、いつでも上側の噴出口135bからは、人工光源80に向けて、15℃前後の低温の空気が噴出される。これにより、人工光源80付近あるいは真下に停滞する熱を拡散させ、人工光源80自体も冷却することで、栽培ベッドの周囲(特に上部空間)の温度の上昇をより確実に抑制し、栽培植物Pの生育に悪影響が生じるのを防止することができるのである。
【0053】
なお、栽培ベッド40の上部空間の温度等を計測するセンサーを、各段ごとに設けてもよい。育成ベッド40は、下段の育成光源80の熱が上昇し加わることにより、上段ほど高温になる傾向にある。そこで、各段の栽培ベッド40ごとに温度を計測し、高温の段ほど多量の空気あるいは冷たい空気が噴出されるようにすると、各段の栽培ベッド40周囲の温度を一定に保つことが可能となる。また、噴出口135a,135bとしてノズルを用いる場合には、噴出される空気を分散させ易くなり、噴出口135a,135bの配設数を低減できる。
【0054】
また、天井部115の下面には、図8に示すように、傾斜壁面122、122を有する凹部123が、栽培ベッド40に略等しい左右幅で、且つ長辺に略並行して2列に形成されることとしてもよい。そして、この凹部123に、人工光源80が配設されるとともに、少なくとも上記傾斜壁面122が、反射性を有する材料によって形成されることとしてもよい。傾斜壁面122の傾斜角度は、人工光源80の光を反射させたい方向に応じて適宜設定し得るものであるが、おおむね30度から45度前後が好ましい。このような構成により、狭小な空間であっても、人工光源80による光を拡散させることなく、非常に効率よく集中的に栽培植物Pに与えることが可能となる。例えば人工光源80として蛍光灯を使用する場合には、光量が約1.3倍から1.4倍に増加する。しかも、上記天井部115の構造によれば、凹部123内の熱が、工夫した空調装置により冷却されることで逃げ易いため、空調負荷の低減にもなる。
【実施例3】
【0055】
本発明の第3の実施例について図面を参照しつつ説明する。第3の実施例は、植物栽培プラント1及び植物栽培システム2の全体監視及び全体操作に関するものであり、さらには、遠隔からの全体監視及び全体操作に関するものである。図11はモニターに表示されるシステムの監視画面であり、図12Aから図12Hは、モニター操作を行った際にモニターに表示される所定の画面である。
本発明の植物栽培プラント1及び植物栽培システム2は、すべて機械室12に設置されているコンピュータによって制御されており、管理室15あるいはその近辺に設置される小型モニターによって、全体監視及び全体操作が可能になっている。
小型モニターには、通常、図1のようにシステム全体を監視する「全体監視画面」が表示されている。この画面では、主に、各段の栽培ベッド40の温度、供給タンク44の温度等、戻り液タンク45の温度、養液のヒートポンプチラー68通過前後の温度、室内外の温度や湿度等、植物栽培システム2を稼動させる上で重要な情報を確認することができる。
また、小型モニターは、タッチパネル式となっており、画面に触れることで、各種のシステム操作が可能となる。例えば、植物栽培システムは自動モードと手動モードとの切り替えが可能であり、通常は自動モードにしておくことで、植物栽培プラント1における植物の栽培に最も適した環境が維持されることとなる。また、各段の栽培ベッドごとに異なる植物を栽培するため、各段ごとに異なる温度・湿度設定にしたい場合や、なんらかの事情により自動モードでは植物の栽培に支障が生じる場合は、手動モードにすることにより、不都合な部分のシステム操作を個別に行うことが可能となる。
【0056】
さらに、あらかじめ育成する野菜の種類ごとに最も適した養液量や照明の量、あるいは空調装置から噴出される空気の温度や湿度等の各設定をコンピュータの記憶部に記憶させておき、特定の設定データを読み出すことで、あらかじめ記憶させた各設定を選択的に再現することができる。そして自動モードにしておくと、人間がシステムを操作しなくとも、自動的に選択した設定が維持されることとなる。これにより、栽培する植物に適した設定データを選択し、あとは自動モードにしておくだけで、その植物に適した環境が人の手を介さずとも維持されるのである。
以下、小型モニターを用いた植物栽培システム2の操作方法の一例を、図12A〜図12Cを用いて説明する。ここでは、所定の栽培ベッド40への養液の供給あるいは停止を手動で行うこととする。まず、図11の「全体監視画面」において、下側の各種パネルボタンから「メインメニュー」ボタンを押すことで、図12Aの「メインメニュー画面」に画面が切り替わる。次に、各システムを操作する場合は、「メインメニュー画面」において、「運転操作画面」のボタンを押すことにより、図12Bの「運転操作メニュー」画面に切り替わる。続いて、「弁手動操作(トレー2)」ボタンを押すことで、「手動操作(育成2トレー用弁)」画面(図12C)に切り替わり、この画面上で、所定の栽培ベッドに養液Aを供給あるいは停止するための電磁弁の開閉が可能となる。また、電磁弁の開閉は、栽培ベッド各段ごとに可能であるため、1段目は養液Aを供給して、2段目は供給を停止する、といった制御も行える。なお、各種画面の下側の各種パネルボタンから「メインメニュー」ボタンを押すことで、「メインメニュー画面」に戻る。
【0057】
換気・給気システムの手動操作や各タンク、照明の手動操作といった運転操作のほかにも、「設定メニュー」画面(図12E)から所定の画面へ進むことで、温度設定やCOの濃度設定、作物管理設定等が可能であるし、「監視メニュー」画面(図12F)から所定の画面へ進むことで、電力の監視やCOの監視、前月実績の確認等が可能である。また、「履歴メニュー」画面(図12G)から所定の画面へ進むことで、運転履歴や故障履歴を確認でき、「管理者メニュー」画面(図12H)から所定の画面へ進むことで、時刻の修正や機器状態の確認が可能である。例えば、「メインメニュー画面」(図12A)から「設定画面」、「育成室・棚温度設定」とたどることで、図12Dの「育成室・棚温度設定」画面が表示される。この画面上で、育成室の温度や育成棚の温度等を調整することができる。
植物栽培プラント1及び植物栽培システム2をコンピュータ制御とし、システムの稼動状態をモニターで監視可能とし、さらにシステムをモニター上で操作可能としたことにより、育成室10の内部の状況をモニター上で容易に把握でき、育成室10内に入ることなく各種弁やタンク、照明装置をモニター上で操作できるため、植物の栽培に際し、人的負担が軽減される。
【0058】
また、植物栽培プラント1及び植物栽培システム2を制御するためのコンピュータをインターネット回線や専用回線等のネットワーク回線に接続することで、これらの回線に接続したパーソナルコンピュータやPDA、携帯電話等の端末からの監視・操作を行うことができる。モニター画面を有する端末を用いることが好ましく、端末のモニター上に、管理室15等に設置された小型モニターに表示される画面と同じ画面を表示させることにより、各種操作が簡便に可能となる。この場合、タッチパネル式でなくとも、端末が十字ボタンや決定ボタンを具備していると、これらのボタンで画面上のアイコンを選択及び決定することにより、各種の操作が可能である。
このような構成により、建物内の別室や建物外の施設等の遠隔から、植物栽培プラント1及び植物栽培システム2を全体監視・操作でき、育成室10、機械室12、管理室15近辺、さらには植物栽培プラントが設置される建物内に人が常駐しなくとも、植物の栽培を継続して行うことができる。また、植物栽培システムに異常が生じた際にも、端末を通して異常を感知し、その場で端末により植物栽培システムを操作できるため、システムの誤作動等の異常にも遠隔から容易に対応することができる。
【0059】
なお、上記各実施形態の記述は、本発明をこれに限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更等が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、様々な種類の植物に幅広く適用が可能であるとともに、雑菌等の繁殖を抑え、植物の成長を促進して効率良く栽培をおこなうことができる植物栽培システムおよび植物栽培プラントを提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0061】
1 植物栽培プラント
2 植物栽培システム
10 育成室
11 育苗室
12 機械室
18 屋根
19 外壁体
20 屋上緑化
30 育成棚
31 育苗棚
34、35 空調機
40 栽培ベッド
44 供給タンク
45 戻り液タンク
47 ろ過装置
48 殺菌装置
55 オゾン発生器
57 液濃度センサー
58 液位置センサー
59 液温度センサー
72 栽培槽
73 植付パネル
73a 育苗用植付パネル
73b 育成用植付パネル
76 流路
79,79a,79b ポット受孔
80 人工光源
81 走行装置
84 空調装置
85 送風口
86 排気ファン
87 空気通路
91 溢流堰
92 小孔
100 軸ボルト
101a,101b アーム
107a,107b 内側滑車
108a,108b 外側滑車
110 吊設部材
115 天井部
116 空調装置
118 駆動部
A 養液
P 栽培植物
P’ 植物根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培植物が植え付けられ、上下複数段に、且つそれぞれ略水平をなして配設保持される栽培ベッドと、
各栽培ベッドの上方に設けられ、栽培植物の成長に応じて上下に移動させられる人工光源と、
送風口または送風ファンを有し、各栽培ベッドの一方側から他方側に向かって形成される空気通路に、温度、湿度、CO濃度等が調整された空気を順次送り込む空調装置と、を備えた植物栽培システムであって、
該栽培ベッドが、
上部開放箱型の栽培槽と、
該栽培槽の上部に嵌着され、該栽培槽の底面との間に、養液の流路を形成するとともに、該流路に向けて植物根が露出するようにして栽培植物を植付状態とする植付パネルと、から構成され、
該栽培ベッドに供給される養液が、該流路を連続的に通過して排出された後に循環して再利用されるとともに、該養液が、該流路に間欠的に流入するように制御されている植物栽培システム。
【請求項2】
該栽培ベッドに供給される該養液を貯留するとともに、該養液の濃度、容量、温度を一定の値に保持できる自動管理手段を有する供給タンクと、
該栽培ベッドから排出された該養液を回収するための戻り液タンクと、
該供給タンクと該戻り液タンクとの間に介設され、該戻り液タンクから該供給タンクに移される該養液のろ過および殺菌をおこなうためのろ過装置およびオゾン発生器を含む殺菌装置と、を備えた請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項3】
該栽培ベッドと並行して上部に設けられ、該栽培ベッドと同程度の面積を有する天井部を有しており、
該天井部は栽培植物の成長に応じて上下に移動させられ、
該天井部に該人工光源が設けられていることを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載の植物栽培システム。
【請求項4】
該空調装置は、該人工光源と連動して上下に移動させられるとともに、
該栽培ベッドに植え付けられる栽培植物および該人工光源に向けて、温度、湿度、CO濃度等が調整された空気を噴き出す噴出口を有していることを特徴とする、
請求項3記載の植物栽培システム。
【請求項5】
該流路の下流側に、上部空間が開放された溢流堰が形成され、
該溢流堰の下部には、養液の供給を停止した際に流路の養液をすべて排出するための小孔が設けられていることを特徴とする、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の植物栽培システム。
【請求項6】
表面に多数の孔部を有する方形板と、該方形板を地面から支えるための脚部からなる植付パネルであって、
前記孔部は、上下ともに開放された逆円錐台形で、下端は植付パネルの高さの略中間に位置するよう吊り下げた状態とした植付パネルを用いることを特徴とする、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の植物栽培システム。
【請求項7】
植物栽培システムの稼動状況を表示するための表示部と、
該植物栽培システムを構成する機器や装置の作動状態を監視できる監視手段と、
該植物栽培システムを構成する機器や装置を操作できる操作手段と、
を備えることにより、
該植物栽培システムを構成する機器や装置の全体監視及び操作を可能とし、
及び/又は
該植物栽培システムをネットワーク回線に接続し、遠隔地にある端末を該ネットワーク回線と接続することにより、端末を用いて遠隔から該植物栽培システムを構成する機器や装置の全体監視及び操作を可能としたことを特徴とする、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の植物栽培システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の植物栽培システムが設けられてなり、
太陽光が遮断され、断熱性を有する屋根および外壁体にて覆われるとともに、該屋根には屋上緑化が施されている植物栽培プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図12H】
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【図13】
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【図12D】
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【公開番号】特開2010−88425(P2010−88425A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186895(P2009−186895)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(508275537)日本グリーンファーム株式会社 (2)
【Fターム(参考)】