説明

植物栽培用ハウスのエネルギー供給システム

【課題】 植物栽培ハウス単体で扱うような、比較的小規模な農業施設形体において、コージェネレーション設備を使用して、ハウス内で栽培される植物に適した培地の管理と植物の育成を効率的に行うことができるようにする。
【解決手段】 植物12を栽培するハウス2内に、栽培に必要なエネルギーを供給するシステムにおいて、ガス燃料を使用して運転され、熱及び電力を生産するコージェネレーション設備1と、当該コージェネレーション設備1で生産された熱及び電力を使用して、前記ハウス2内の培地9を植物12の栽培に適した環境に改善する培地改善手段10と、コージェネレーション設備1で生産された電力を使用して、培地9に向けて電気照明を行い、人工的に日長反応の制御を行う電照制御手段11と、コージェネレーション設備1より排出される二酸化炭素ガスをハウス2内に供給して、植物12の代謝を活性化する二酸化炭素ガス供給手段8とを設けた植物栽培用ハウスのエネルギー供給システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムに関するものであり、特に、ハウス内で栽培される植物に適した環境に培地を整え、植物の育成を効率的に行うための植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス燃料で運転されて熱及び電力を生産するコージェネレーション設備で生産された、熱及び電力により培地を植物の栽培等に適した環境の培地へ、植物の育成を図るシステムは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のエネルギー供給システムは、一又は二以上の農業経営体において、熱及び電力を全体として消費する一又は二以上の農業施設に対して、ガス燃料を使用してコージェネレーション設備を運転し、コージェネレーション設備で生産される熱及び電力を供給するものである。
【特許文献1】特開2002−295307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の発明は、一又は二以上の農業経営体において、コージェネレーション設備を運転し、ここで生産された熱及び電力を農業施設に供給することについては開示されているが、このシステムは大規模な農業経営体に適したものであって、比較的小規模な農業経営体、例えば植物栽培用ハウス単体で扱うようなものではなく、小規模施設における細部的な構造については開示されていない。
【0005】
そこで、植物栽培ハウス単体で扱うような比較的小規模な農業施設形体において、コージェネレーション設備を使用してハウス内で栽培される植物に適した培地の管理と植物の育成を効率的に行うことができる具体的なシステムを得るために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、植物を栽培するハウス内に、栽培に必要なエネルギーを供給する植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムにおいて、ガス燃料を使用して運転され、熱及び電力を生産するコージェネレーション設備と、前記コージェネレーション設備で生産された熱及び電力を使用して、前記ハウス内の培地を前記植物の栽培に適した環境に改善する培地改善手段と、前記コージェネレーション設備で生産された電力を使用して、前記培地に向けて電気照明を行い、人工的に日長反応の制御を行う電照制御手段と、前記コージェネレーション設備で排出される二酸化炭素ガスを前記ハウス内に供給して前記植物の代謝を活性化させる二酸化炭素ガス供給手段、とを備える植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムを提供する。
【0007】
この構成によれば、商用電力を使わずにガスを燃料とするコージェネレーション設備で生産される熱及び電力を使用して、システムを運転できる。そして、培地改善手段によりハウス内の培地を加温して植物の栽培に適した環境に改善することができる。又、電照制御手段による日長反応制御で植物の育成を効率的に行うことができる。更に、二酸化炭素ガス供給手段によるハウス内への二酸化炭素ガスの供給で、植物が二酸化炭素を吸収し、この代謝系で植物の育成を効率的に行うことができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1において上記培地改善手段は、上記培地に栽培液を供給する培養液供給手段と、上記コージェネレーション設備からの熱で前記培地の温度を加温する培地加温手段とで構成した植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムを提供する。
【0009】
この構成によれば、培養液供給手段により植物の育成に必要な養分が培地に供給され、加温手段により植物の育成に必要な温度が確保できる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2において、上記培地改善手段は上記培地中の雑菌を殺す殺菌処理手段を有する植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムを提供する。
【0011】
この構成によれば、殺菌処理手段により植物の育成に障害となる培地中の雑菌を排除できる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、商用電力を使わずに安価なガスを燃料に使用するコージェネレーション設備で生産される熱及び電力を使用して運転するので、低コスト化が可能になる。又、培地改善手段によりハウス内における培地の温度管理、電照制御手段により植物に対する日長反応制御、二酸化炭素ガス供給手段によりハウス内への二酸化炭素ガスの供給等を夫々人手に頼ることなく行うことができる。これにより、省力化栽培が可能になり、生産者が高齢者や不慣れな者であっても作業を軽快にすることができ、また植物の育成効率化の向上を図ることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、培養液供給手段により植物の育成に必要な養分が培地に供給され、且つ、加温手段により植物の育成に必要な温度が確保されるので、請求項1記載の発明の効果に加えて更に省力化を進めた栽培が可能になると共に、植物の育成効率化の向上を図ることができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、殺菌処理手段により植物の育成に障害となる培地中の雑菌を排除するので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて更に省力化を進めた栽培が可能となるとともに、植物の育成効率化の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムについて、好適な実施例をあげて説明する。
【0016】
植物栽培用ハウス単体で扱うような、比較的小規模な農業施設形体において、コージェネレーション設備を使用して、ハウス内で栽培される植物に適した培地の管理と植物の育成を効率的に行うことができるようにすると云う目的を達成するために、植物を栽培するハウス内に、栽培に必要なエネルギーを供給する植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムにおいて、ガス燃料を使用して運転され、熱及び電力を生産するコージェネレーション設備と、前記コージェネレーション設備で生産された熱及び電力を使用して、前記ハウス内の培地を前記植物の栽培に適した環境に改善する培地改善手段と、前記コージェネレーション設備で生産された電力を使用して前記培地に向けて電気照明を行い、人工的に日長反応の制御を行う電照制御手段と、前記コージェネレーション設備で排出される二酸化炭素ガスを前記ハウス内に供給して前記植物の代謝を活性化させる二酸化炭素ガス供給手段とを設けることにより実現した。
【実施例】
【0017】
図1は本発明の一実施例として示す植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムの概略図である。図1において、このエネルギー供給システムは、ガス燃料を使用したコージェネレーション設備1を運転することにより電力と熱を生産し、熱をハウス2内の各種熱消費設備に供給するべく構成されている。尚、システム全体はコンピュータ3によりきめられた手順に従って制御される。
【0018】
コージェネレーション設備1は、例えばガスエンジン、ガスタービン、燃料電池等により駆動されるものであり、ガス燃料としては、例えばコージェネレーション設備1に接続してある都市ガス又はLPG供給設備4から供給される都市ガス又はLPG(液化石油ガス)の燃焼等によって生じる排気ガスは、排気筒5aを通してハウス2外に排出される。排気筒5aの途中には第1電動シャツター18a、末端には第2電動シャツター18b及びファン7が設置されている。二酸化炭素ガスをハウス2内に供給するには第1電動シャツター18aを閉じ、第2電動シャツター18bを開けファン7を稼動することにより、ハウス2内にCO2 供給ダクト5bにより供給される。二酸化炭素ガスのハウス2内への供給は、CO2 制御装置6により許可された時間及び二酸化炭素ガス濃度によりハウス2内に供給される。それ以外の時間では第1電動シャツター18aを開け、第2電動シャツター18bを閉じ、ファン7を停止することによりハウス2外へ排出される。CO2 制御装置6は予め二酸化炭素ガス供給時間帯がプログラムされ、植物12が二酸化炭素ガスを吸収する時間帯のみハウス2内へ二酸化炭素ガスを供給すると共に、ハウス2内に設置されたCO2 センサ22からの情報をもとに、ハウス2内の二酸化炭素ガス濃度を許可された一定濃度に制御することができる。
【0019】
ハウス2は、内部に植物12を栽培する為の培地9を設けており、この培地9を囲むようにして培地改善手段10及び電照制御手段11を設置してある。
【0020】
培地9は、いちご、メロン、ニラ等の農作物や花類、即ち、植物12を栽培する為に調整された液状又は固形の培養基となるものであり、土壌及び水耕のいずれの場合もある。本例では土壌の場合として説明し、その培地9には上記植物12が栽培中である場合とする。
【0021】
培地改善手段10は、培地9に培養液を供給する培養液供給手段13と、コージェネレーション設備1からの熱で培地9の温度を植物の栽培に適切な温度に加温する培地加温手段14とを備える。培地温度の調整は、温度センサ19とコンピュータ3の制御によって可能となる。
【0022】
培養液供給手段13は、培養液タンク15内に貯蔵されている液化肥料等の培養液を培養液供給パイプ16aを介して培地9内に送り込むものである。又、培養液供給パイプ16aの途中には培養液タンク15から培養液を培地9内に送るための培養液用ポンプ17が設けられている。
【0023】
培地加温手段14は、コージェネレーション設備1で生産された熱を、培地加温用パイプ16bを通して培地9内に送り込むものである。培地加温手段14には、培地9や周辺の雰囲気温度を検出する温度センサ19と、当該温度センサ19で検出された温度に応じて、コージェネレーション設備1から培地加温手段14に送り込まれる熱量を、コンピュータ3の制御の下で調整する為の調整バルブ20を設けている。
【0024】
電照制御手段11は、培地9で栽培中の植物12に対して人口照明を行うものであり、複数の照明具21を有している。この電照制御手段11は、コンピュータ3の下で許可された時間だけ植物12に人口光を照射し、該植物12に対して花卉分化等の日長反応の制御を行う。
【0025】
従って、この実施例のように構成されたエネルギー供給システムでは、次のような作用・効果が期待できる。
(1)ガス燃料でコージェネレーション設備1を運転させて電力と熱を生産し、ここで生産された電力をハウス2内の電照制御手段の照明具21の照明用電力、培養液タンク15内に蓄えられている培養液を培養液供給手段13を構成する培養液供給パイプ16aを通して培地9に送り込む培養液用ポンプ17の電力、及び、CO2 供給ダクト5b内に二酸化炭素ガスを強制的に送り込むファン7を駆動する電力等として使用し、消費することができる。よって、商用電源23を使用しなくてもよいので、商用電源23がきていない地域においてもシステムの使用が可能である。尚、商用電源23を利用できる場所では、系統連系制御装置24によって商用電源23を共用することも可能であり、共用した場合では電力の過不足が生じても自動的に電力会社の電力で補完され、安定した電力供給を得ることができる。
(2)生産された熱は、培地加温用パイプ16bを通して培地9に送り込まれて消費し、培地9を植物12の育成に適した温度にして好熱性微生物並びにその酵素の活性化を図り、代謝後の不要となった組織・成分並びに病原菌を分解することができるので、植物12の育成効率化が図れる。
(3)生産された熱は、培地9内に存在する雑菌を殺菌するのに使用することもできる。即ち、該殺菌に必要な温度に加温された熱を培地加温用パイプ16bを通し、培地殺菌処理手段25を用いて前記培地9内に存在する雑菌の殺菌処理が実行される。而して、この殺菌処理は、植物12の栽培がなされていない時期に実施される。又、前記殺菌に必要な温度の調整は前記コンピュータ3の制御によって実施されるようにしてもよい。更に又、培養液内に混入された殺菌剤或いは微生物資材を使用して病原性微生物の繁殖を抑制することも可能である。この場合は、植物12の栽培が行われている間においても実施できる。之等の方法を併用することにより、殺菌剤等の農薬の使用量を節減でき、或いは無農薬による栽培も可能となる。
(4)電照制御手段11により、例えばイチゴ、メロン、菊、ニラ等の植物12に対し、花卉分化等の日長反応の制御を行うために、比較的低出力の人口照明を行い、日長を人為的に調整して栽培する電照栽培を行うことにより植物の育成を効率的に行うことができる。
(5)ガス燃料を燃やすことによって発生する二酸化炭素ガスは、CO2 供給ダクト5bを通してハウス2内に供給されるので、大気中に放出される二酸化炭素ガスが低減し、環境汚染の改善が図られる。尚、ハウス2内に放出された二酸化炭素ガスは植物の代謝のために活用され、活性化されて浄化される。又、ハウス2内に放出される二酸化炭素ガスは、コンピュータ3の制御により必要な時間帯に自動的に供給されるようにしてある。
(6)システム全体の制御は、コンピュータ3を使用して自動制御が可能であるので、生産者が高齢者や不慣れな者であっても作業負加を軽くすることができる。
(7)尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例として示す植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムの概略構成図。
【符号の説明】
【0027】
1 コージェネレーション設備
2 ハウス
3 コンピュータ
4 都市ガス又はLPG供給設備
5a 排気筒
5b CO2 供給用ダクト
6 CO2 制御装置
7 ファン
8 二酸化炭素ガス供給手段
9 培地
10 培地改善手段
11 電照制御手段
12 植物
13 培養液供給手段
14 培地加温手段
15 培養液タンク
16a 培養液供給パイプ
16b 培地加温用パイプ
17 培養液用ポンプ
18a 第1電動シャツター
18b 第2電動シャツター
19 温度センサ
20 調整バルブ
21 照明具
22 CO2 センサ
23 商用電源
24 系統連系制御装置
25 培地殺菌処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培するハウス内に、栽培に必要なエネルギーを供給する植物栽培用ハウスのエネルギー供給システムにおいて、
ガス燃料を使用して運転され、熱及び電力を生産するコージェネレーション設備と、
前記コージェネレーション設備で生産された熱及び電力を使用して、前記ハウス内の培地を前記植物の栽培に適した環境に改善する培地改善手段と、
前記コージェネレーション設備で生産された電力を使用して、前記培地に向けて電気照明を行い、人工的に日長反応の制御を行う電照制御手段と、
前記コージェネレーション設備で排出される二酸化炭素ガスを前記ハウス内に供給して前記植物の代謝を活性化させる二酸化炭素ガス供給手段、
とを備えることを特徴とする植物栽培用ハウスのエネルギー供給システム。
【請求項2】
上記培地改善手段は、上記培地に培養液を供給する培養液供給手段と、上記コージェネレーション設備からの熱で前記培地の温度を加温する加温手段とで構成したことを特徴とする請求項1記載の植物栽培用ハウスのエネルギー供給システム。
【請求項3】
上記培地改善手段は、上記培地中の雑菌を殺す殺菌処理手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の植物栽培用ハウスのエネルギー供給システム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−20524(P2007−20524A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210596(P2005−210596)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000161998)京葉瓦斯株式会社 (46)
【出願人】(598092993)京葉プラントエンジニアリング株式会社 (8)
【出願人】(501176303)日環科学株式会社 (10)
【Fターム(参考)】