説明

植物栽培装置

【課題】植物栽培装置を簡素化及び小型化する。
【解決手段】栽培養液Lを熱源手段Nで冷却又は加熱して気体調温用の熱交換手段15で空間調整気体Gと熱交換させ、熱交換後の栽培養液Lを栽培槽4に供給し、熱交換後の空間調整気体Gを栽培槽4上の栽培空間(栽培領域6a)に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の葉野菜などを栽培する植物栽培装置に関し、詳しくは、槽内の栽培養液に根元部を浸漬させた状態で栽培植物を収容する栽培槽を備え、栽培養液を前記栽培槽に供給する給液手段、及び、空間調整気体を前記栽培槽上の栽培空間に供給する給気手段を備える植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の如き植物栽培装置において(図12参照)、栽培槽4に供給する栽培養液L、及び、その栽培槽4上の栽培空間6に供給する空間調整気体Gの夫々を冷却又は加熱して調温するには、栽培養液Lを冷却又は加熱する養液用の熱源手段Naと、空間調整気体Gを冷却又は加熱する気体用の熱源手段Nbとを各別に装備していた。
【0003】
即ち、この従来装置では、栽培槽4に供給する栽培養液Lの温度ti(給液温度)を栽培植物の育成に適した温度(即ち、栽培槽4内の養液Lを栽培植物の育成に適した温度状態に保ち得る温度)に調整し、また、栽培空間6に供給する空間調整気体Gの温度tgi(給気温度)を栽培植物の育成に適した温度(即ち、栽培空間6を栽培植物の育成に適した温度状態に保ち得る温度)に調整するのに、各熱源手段Na,Nbの冷却出力又は加熱出力を各別に調整することで、それら給液温度ti及び給気温度tgiの夫々を栽培植物の育成に適した温度に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−88425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来装置では、養液用の熱源手段Naと気体用の熱源手段Nbとを各別に装備するため、装置の全体構成が複雑になるとともに大型化し、この為、装置コストが嵩むとともに装置設置に大きなスペースが必要となる問題があった。
【0006】
ちなみに、この問題に対する改良装置として、図11に示す如く、熱媒eを冷却又は加熱する共通の熱源手段Nを設けるとともに、この共通熱源手段Nにより冷却又は加熱した熱媒eと栽培槽4に供給する栽培養液Lとを熱交換させる養液調温用の熱交換手段15a、及び、共通熱源手段Nにより冷却又は加熱した熱媒eと栽培空間6に供給する空間調整気体Gとを熱交換させる気体調温用の熱交換手段15bを各別に装備する装置も考えられる。
【0007】
即ち、この改良装置では、各熱交換手段15a,15bに対する共通熱源手段Nからの熱媒供給流量を調整することで、上記給液温度ti及び給気温度tgiの夫々を調整することができる。
【0008】
しかし、この改良装置においても、養液調温用の熱交換手段15aと気体調温用の熱交換手段15bとを各別に装備するため、また、共通熱源手段Nと各熱交換手段15a,15bとを接続するのに並列な2系統の熱媒配管が必要になるため、装置の複雑化や大型化を十分には回避することができず、この為、一定の改善は見られるものの、やはり装置コストが嵩むとともに装置設置に大きなスペースが必要になる問題がある。
【0009】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な装置構成を採ることで上記問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は、
槽内の栽培養液に根元部を浸漬させた状態で栽培植物を収容する栽培槽を備え、
栽培養液を前記栽培槽に供給する給液手段、及び、空間調整気体を前記栽培槽上の栽培空間に供給する給気手段を備える植物栽培装置であって、
前記給液手段により前記栽培槽に供給する栽培養液を冷却又は加熱する熱源手段を設けるとともに、
前記給気手段により前記栽培空間に供給する空間調整気体を熱媒と熱交換させて冷却又は加熱する気体調温用の熱交換手段を設け、
前記給液手段は、前記熱源手段により冷却又は加熱した栽培養液を前記熱媒として前記気体調温用の熱交換手段に通過させて空間調整気体と熱交換させ、この熱交換後の栽培養液を前記栽培槽に供給し、
前記給気手段は、前記気体調温用の熱交換手段で栽培養液と熱交換した後の空間調整気体を前記栽培空間に供給する構成にしてある点にある。
【0011】
この構成によれば、栽培槽に供給する栽培養液の温度(給液温度)、及び、栽培槽上の栽培空間に供給する空間調整気体の温度(給気温度)の夫々について、栽培植物の育成に適した温度(即ち、栽培槽内の養液やその槽上の栽培空間を栽培植物の育成に適した温度状態に保つことができる養液温度や気体温度)が栽培条件や調温負荷などにより異なるにしても、気体調温用の熱交換手段での熱交換条件(例えば、栽培養液及び空間調整気体夫々の温度、流量、流速など)を状況に応じたものに設定にすれば、熱源手段により冷却又は加熱した栽培養液を先ず熱媒として気体調温用の熱交換手段に通過させることで、空間調整気体を気体調温用の熱交換手段での栽培養液との熱交換により所要温度まで冷却又は加熱することができ、これにより、栽培空間に供給する空間調整気体の温度(給気温度)を栽培植物の育成に適した温度(つまり、栽培空間の調温負荷を処理して栽培空間を栽培植物の育成に適した温度状態に保つことができる気体温度)に調整することができる。
【0012】
また同時に、栽培養液を気体調温用の熱交換手段での上記熱交換に伴い所要温度幅だけ温度変化させる(即ち、空間調整気体の冷却に伴い所要温度幅だけ温度上昇させる、又は、空間調整気体の加熱に伴い所要温度幅だけ温度降下させる)ことができ、これにより、栽培槽に供給する栽培養液の温度(給液温度)も栽培植物の育成に適した温度(つまり、栽培槽内の養液の調温負荷を処理して栽培槽内の養液を栽培植物の育成に適した温度状態に保つことができる養液温度)に調整することができる。
【0013】
そして、この構成であれば、栽培養液を気体調温用の熱媒に兼用する形態を採るから、熱源手段については栽培養液を冷却又は加熱する熱源手段を設けるだけで済むとともに、調温用の熱交換手段についても気体調温用の熱交換手段を装備するだけで済み、また、熱源手段と調温用の熱交換手段との接続も本来の養液用の配管で済ませることができる。
【0014】
したがって、養液用の熱源手段と気体用の熱源手段とを各別に装備する先述の従来装置に比べ、また、共通熱源手段の装備に対し養液調温用の熱交換手段と気体調温用の熱交換手段とを各別に装備する先述の改良装置と比べても、装置の全体構成を効果的に簡素化及び小型化することができて、装置コストを大きく低減し得るとともに、装置設置に必要なスペースも大きく縮減することができる。
【0015】
なお、この構成の実施にあたり、気体調温用の熱交換手段として、栽培養液と空間調整気体とが伝熱壁を介さずに直接に熱交換する形式の熱交換手段(例えば、栽培養液の散布域に対して空間調整気体を通過させる形式の熱交換手段など)を採用すれば、栽培空間に供給する空間調整気体の湿度(具体的には、その空間調整気体が含有する栽培養液蒸気の濃度)を高めることができ、これにより、栽培空間を湿度面からも栽培植物の育成に適した空間に調整することができる。
【0016】
上記構成の実施において、給気手段により栽培空間に供給する空間調整気体は、空気に限らず、二酸化炭素ガスや二酸化炭素ガス富裕空気などの栽培用ガスであってもよい。
【0017】
また、省エネルギ化の観点からは、給気手段による空間調整気体の供給に伴い栽培空間から排出される空間内気体の全部又は一部を、気体調温用の熱交換手段において再び温度調整した上で空間調整気体として栽培空間に循環供給する方式を採るのが望ましいが、場合によっては、空間調整気体を栽培空間に一過的に供給する方式を採用して、栽培空間から排出される空間内気体を全て外部に放出するようにしてもよい。
【0018】
また同様に、省エネルギ化の観点からは、給液手段による栽培養液の供給に伴い栽培槽から排出される栽培養液の全部又は一部を、熱源手段において再び冷却又は加熱した上で気体調温用の熱交換手段を通じて栽培槽に循環供給する方式を採るのが望ましいが、場合によっては、栽培養液を栽培槽に一過的に供給する方式を採用して、栽培槽から排出される栽培養液を全て外部に放出するようにしてもよい。
【0019】
本発明の第2特徴構成は、
前記気体調温用の熱交換手段を、栽培養液の通液方向における上流側が空間調整気体の通気方向における下流側となる対向流方式の熱交換器にしてある点にある。
【0020】
この構成によれば、気体調温用の熱交換手段を対向流方式の熱交換器にしてあることから、熱源手段で冷却した栽培養液を気体調温用の熱交換手段で空間調整気体と熱交換させて空間調整気体を冷却する場合、気体調温用の熱交換手段を通過した熱交換後の空間調整気体の温度(即ち、前記給気温度)を、気体調温用の熱交換手段を通過した熱交換後の栽培養液の温度(即ち、前記給液温度)より低い温度にすることもできる。
【0021】
また同様に、熱源手段で加熱した栽培養液を気体調温用の熱交換手段で空間調整気体と熱交換させて空間調整気体を加熱する場合では、気体調温用の熱交換手段を通過した熱交換後の空間調整気体の温度(給気温度)を、気体調温用の熱交換手段を通過した熱交換後の栽培養液の温度(給液温度)より高い温度にすることもできる。
【0022】
したがって、この構成によれば、気体調整用の熱交換手段として、栽培養液の通液方向における上流側が空間調整気体の通気方向における上流側となる並行流方式の熱交換器を用いるのに比べ、栽培空間に供給する空間調整気体の温度(給気温度)、及び、栽培槽に供給する栽培養液の温度(給液温度)夫々の選択可能範囲を拡大することができ、その分、栽培条件や調温負荷の変動などに対する対応性を一層高く確保することができる。
【0023】
本発明の第3特徴構成は、
温度センサにより検出される前記栽培空間の温度に基づいて前記熱源手段の冷却出力又は加熱出力を調整する空間制御手段を設け、
この空間制御手段は、前記熱源手段の冷却出力又は加熱出力の調整により、前記熱源手段から前記気体調温用の熱交換手段に供給する栽培養液の温度を調整することで、前記栽培空間の温度を設定空間温度に調整する構成にしてある点にある。
【0024】
この構成によれば、調温負荷の変動にかかわらず栽培空間の温度が空間制御手段により自動的に設定空間温度に調整され保たれるから、その設定空間温度として栽培植物の育成に適した空間温度を設定しておくだけで、栽培植物を一層良好かつ安定的に栽培することができる。
【0025】
また、熱源手段から気体調温用の熱交換手段に供給する栽培養液の温度を調整することで栽培空間の温度を調整するから、換言すれば、気体調温用の熱交換手段に供給する栽培養液の温度を栽培空間における調温負荷の変動分だけ調整するから、この調整の実行によって、気体調温用の熱交換手段を通過した熱交換後における栽培養液の温度(給液温度)が大きく変化することはなく、このことからも、栽培植物を一層良好かつ安定的に栽培することができる。
【0026】
本発明の第4特徴構成は、
前記熱源手段で冷却して前記気体調温用の熱交換手段に供給する栽培養液の温度toを10℃〜14℃とし、
前記気体調温用の熱交換手段での空間調整気体との熱交換による栽培養液の温度上昇幅Δtを3℃deg〜7℃degとしてある点にある。
【0027】
この構成によれば、気体調温用の熱交換手段から栽培空間に供給する空間調整気体の温度(給気温度)、及び、気体調温用の熱交換手段から栽培槽に供給する栽培養液の温度(給液温度)の夫々を、レタスなどの一般葉野菜の育成に適した温度(即ち、栽培空間及び栽培槽内の養液をレタスなどの一般葉野菜の育成に適した温度状態に保つことができる気体温度及び養液温度)にすることができる。
【0028】
即ち、設計値として上記のto=10℃〜14℃,Δt=3℃deg〜7℃deg(最も望ましくはto=12℃、Δt=5℃)を採用すれば、レタスなどの一般葉野菜の栽培に好適な装置にすることができる。
【0029】
本発明の第5特徴構成は、
前記熱源手段で冷却又は加熱した栽培養液の一部を、前記気体調温用の熱交換手段に対し迂回させて前記栽培槽に供給する迂回給液路を設けるとともに、
前記熱源手段で冷却又は加熱した栽培養液のうち前記迂回給液路を通じて前記栽培槽に供給する栽培養液が占める流量比率を調整するための給液比率調整弁を設けてある点にある。
【0030】
この構成によれば、迂回給液路を通じて栽培槽に供給する栽培養液が、気体調温用の熱交換手段での空間調整気体との熱交換による温度変化の無いままで栽培槽に供給される栽培養液であることから、熱源手段において栽培養液を冷却する場合では、熱源手段で冷却した栽培養液のうち迂回給液路を通じて栽培槽に供給する栽培養液が占める流量比率を、給液比率調整弁により増大側へ調整することで、迂回給液路を通じて栽培槽に供給する栽培養液と気体調整用の熱交換器を通じて栽培槽に供給する栽培養液とを合わせた平均の給液温度を低下側に調整することができる。
【0031】
また、熱源手段において栽培養液を加熱する場合では、熱源手段で加熱した栽培養液のうち迂回給液路を通じて栽培槽に供給する栽培養液が占める流量比率を、給液比率調整弁により増大側へ調整することで、上記平均の給液温度を上昇側に調整することができる。
【0032】
即ち、この構成によれば、栽培槽に供給する栽培養液の温度(上記平均の給液温度)を給液比率調整弁による流量比率の調整で容易に調整することができ、これにより、栽培条件や調温負荷の変動などに対する対応性を一層高めることができる。
【0033】
本発明の第6特徴構成は、
前記給液手段による栽培養液の供給に伴い前記栽培槽から排出される栽培養液を前記熱源手段に戻す還液路を設けるとともに、
前記栽培槽から排出される栽培養液の一部を、前記熱源手段及び前記気体調温用の熱交換手段に対し迂回させて前記栽培槽に供給する迂回循環路を設け、
前記栽培槽から排出される栽培養液のうち前記迂回循環路を通じて前記栽培槽に供給する栽培養液が占める流量比率を調整するための循環液比率調整弁を設けてある点にある。
【0034】
この構成によれば、迂回循環液路を通じて栽培槽に供給する栽培養液が、熱源手段での再度の冷却又は加熱の無いままで栽培槽に再供給する栽培養液であることから、熱源手段において栽培養液を冷却する場合では、栽培槽から排出される栽培養液のうち迂回循環液路を通じて栽培槽に再供給する栽培養液が占める流量比率を循環液比率調整弁により増大側へ調整することで、迂回循環液路を通じて栽培槽に再供給する栽培養液と還液路から熱源手段及び気体調整用の熱交換器を通じて栽培槽に再供給する栽培養液とを合わせた平均の給液温度を上昇側に調整することができる。
【0035】
また、熱源手段において栽培養液を加熱する場合では、栽培槽から排出される栽培養液のうち迂回循環液路を通じて栽培槽に再供給する栽培養液が占める流量比率を循環液比率調整弁により増大側へ調整することで、上記平均の給液温度を低下側に調整することができる。
【0036】
即ち、この構成によれば、栽培槽に供給する栽培養液の温度(上記平均の給液温度)を循環液比率調整弁による流量比率の調整で容易に調整することができ、これにより、栽培条件や調温負荷の変動などに対する対応性を一層高めることができる。
【0037】
本発明の第7特徴構成は、
槽内の栽培養液に根元部を浸漬させた状態で栽培植物を収容する栽培槽を備え、
栽培養液を前記栽培槽に供給する給液手段、及び、空間調整気体を前記栽培槽上の栽培空間に供給する給気手段を備える植物栽培装置であって、
前記給気手段により前記栽培空間に供給する空調調整気体を冷却又は加熱する熱源手段を設けるとともに、
前記給液手段により前記栽培槽に供給する栽培養液を熱媒と熱交換させて冷却又は加熱する養液調温用の熱交換手段を設け、
前記給気手段は、前記熱源手段により冷却又は加熱した空間調整気体を前記熱媒として前記養液調温用の熱交換手段に通過させて栽培養液と熱交換させ、この熱交換後の空間調整気体を前記栽培空間に供給し、
前記給液手段は、前記養液調温用の熱交換手段で空間調整気体と熱交換した後の栽培養液を前記栽培槽に供給する構成にしてある点にある。
【0038】
この構成によれば、栽培槽に供給する栽培養液の温度(給液温度)、及び、栽培槽上の栽培空間に供給する空間調整気体の温度(給気温度)の夫々について、栽培植物の育成に適した温度(即ち、栽培槽内の養液やその槽上の栽培空間を栽培植物の育成に適した温度状態に保つことができる養液温度や気体温度)が栽培条件や調温負荷などにより異なるにしても、養液調温用の熱交換手段での熱交換条件(例えば、栽培養液及び空間調整気体夫々の温度、流量、流速など)を状況に応じたものに設定にすれば、熱源手段により冷却又は加熱した空間調整気体を先ず熱媒として養液調温用の熱交換手段に通過させることで、栽培養液を養液調温用の熱交換手段での空間調整気体との熱交換により所要温度まで冷却又は加熱することができ、これにより、栽培槽に供給する栽培養液の温度(給液温度)を栽培植物の育成に適した温度(つまり、栽培槽内の養液の調温負荷を処理して栽培槽内の養液を栽培植物の育成に適した温度状態に保つことができる養液温度)に調整することができる。
【0039】
また同時に、空間調整気体を養液調温用の熱交換手段での上記熱交換に伴い所要温度幅だけ温度変化させる(即ち、栽培養液の冷却に伴い所要温度幅だけ温度上昇させる、又は、栽培養液の加熱に伴い所要温度幅だけ温度降下させる)ことができ、これにより、栽培空間に供給する空間調整気体の温度(給気温度)も栽培植物の育成に適した温度(つまり、栽培空間の温調負荷を処理して栽培空間を栽培植物の育成に適した温度状態に保つことができる気体温度)に調整することができる。
【0040】
そして、この構成であれば、空間調整気体を養液調温用の熱媒に兼用する形態を採るから、熱源手段については空間調整気体を冷却又は加熱する熱源手段を設けるだけで済むとともに、調温用の熱交換手段についても養液調温用の熱交換手段を装備するだけで済み、また、熱源手段と調温用の熱交換手段との接続も本来の空間調整気体用の配管で済ませることができる。
【0041】
したがって、養液用の熱源手段と気体用の熱源手段とを各別に装備する先述の従来装置に比べ、また、共通熱源手段の装備に対し養液調温用の熱交換手段と気体調温用の熱交換手段とを各別に装備する先述の改良装置と比べても、装置の全体構成を効果的に簡素化及び小型化することができて、装置コストを大きく低減し得るとともに、装置設置に必要なスペースも大きく縮減することができる。
【0042】
なお、この構成の実施にあたり、養液調温用の熱交換手段として、栽培養液と空間調整気体とが伝熱壁を介さずに直接に熱交換する形式の熱交換手段(例えば、栽培養液の散布域に対して空間調整気体を通過させる形式の熱交換手段など)を採用すれば、栽培空間に供給する空間調整気体の湿度(具体的には、その空間調整気体が含有する栽培養液蒸気の濃度)を高めることができ、これにより、栽培空間を湿度面からも栽培植物の育成に適した空間に調整することができる。
【0043】
上記構成の実施においも、給気手段により栽培空間に供給する空間調整気体は、空気に限らず、二酸化炭素ガスや二酸化炭素ガス富裕空気などの栽培用ガスであってもよい。
【0044】
また、省エネルギ化の観点からは、給気手段による空間調整気体の供給に伴い栽培空間から排出される空間内気体の全部又は一部を、熱源手段において再び冷却又は加熱した上で、空間調整気体として養液調温用の熱交換手段を通じ栽培空間に循環供給する方式を採るのが望ましいが、場合によっては、空間調整気体を栽培空間に一過的に供給する方式を採用して、栽培空間から排出される空間内気体を全て外部に放出するようにしてもよい。
【0045】
また同様に、省エネルギ化の観点からは、給液手段による栽培養液の供給に伴い栽培槽から排出される栽培養液の全部又は一部を、養液調温用の熱交換手段において再び温度調整した上で栽培槽に循環供給する方式を採るのが望ましいが、場合によっては、栽培養液を栽培槽に一過的に供給する方式を採用して、栽培槽から排出される栽培養液を全て外部に放出するようにしてもよい。
【0046】
また、この構成の実施においては、第2、第3、第5、第6特徴構成と同様の次の如き付加構成を採用してもよい。
【0047】
つまり、前記養液調温用の熱交換手段を、栽培養液の通液方向における上流側が空間調整気体の通気方向における下流側となる対向流方式の熱交換器にしてもよい。
【0048】
温度センサにより検出される前記栽培空間の温度に基づいて前記熱源手段の冷却出力又は加熱出力を調整する空間制御手段を設け、
この空間制御手段は、前記熱源手段の冷却出力又は加熱出力の調整により、前記熱源手段から前記養液調温用の熱交換手段に供給する空間調整気体の温度を調整することで、前記栽培空間の温度を設定空間温度に調整する構成にしてもよい。
【0049】
前記熱源手段で冷却又は加熱した空間調整気体の一部を、前記養液調温用の熱交換手段に対し迂回させて前記栽培空間に供給する迂回給気路を設けるとともに、
前記熱源手段で冷却又は加熱した空間調整気体のうち前記迂回給気路を通じて前記栽培空間に供給する空間調整気体が占める流量比率を調整するための給気比率調整手段を設けてもよい。
【0050】
そしてまた、前記給気手段による空間調整気体の供給に伴い前記栽培空間から排出される空間内気体を前記熱源手段に戻す還気路を設けるとともに、
前記栽培空間から排出される空間内気体の一部を、前記熱源手段及び前記養液調温用の熱交換手段に対し迂回させて前記栽培空間に供給する迂回循環路を設け、
前記栽培空間から排出される空間内気体のうち前記迂回循環路を通じて前記栽培空間に供給する空間調整気体が占める流量比率を調整するための循環気比率調整手段を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】植物栽培棚装置の斜視図
【図2】植物栽培棚装置の正面視断面図
【図3】植物栽培棚装置の分解斜視図
【図4】棚上栽培空間の天井部の分解斜視図
【図5】厚板状ブロック体の分解斜視図
【図6】植物栽培棚装置の平面視断面図
【図7】植物栽培棚装置の配管系統図
【図8】別実施形態を示す概略装置構成図
【図9】他の別実施形態を示す概略装置構成図
【図10】他の別実施形態を示す概略装置構成図
【図11】改良装置を示す概略装置構成図
【図12】従来装置を示す概略装置構成図
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1及び図2は本発明による植物栽培装置の一例である植物栽培棚装置を示し、この装置では図3に示す如く、支柱1に各種の横フレーム2を横架して棚格子3を形成し、この棚格子3の上に棚上栽培槽4を載設して栽培棚5を構成してある。
【0053】
栽培棚5は上下に複数段(図では3段)設けてあり、各段の栽培棚5において、棚上栽培槽4の上には棚上栽培空間6を確保し、この棚上栽培空間6の天井部には栽培照明灯7を装備してある。
【0054】
棚上栽培槽4に貯留する栽培養液Lの液面上には栽培プレート8を配設してあり、この栽培プレート8に行列配置で形成した多数の栽培孔に栽培植物(図示省略)の根元部を挿入することで、レタスに代表される葉野菜などの多数の栽培植物を、それらの根元部が槽内の栽培養液Lに浸漬する状態にして栽培する。
【0055】
栽培照明灯7を装備する棚上栽培空間6の天井部は、金具を介して上段の棚格子3に支持させた厚板状ブロック体9で形成してあり、棚上栽培空間6の両側部には棚上栽培槽4の側縁部と厚板状ブロック体9の側縁部とにわたる縦壁部材10を設け、この縦壁部材10により棚上栽培空間6の両側部を閉塞することで、棚上栽培空間6をトンネル状の空間にしてある。
【0056】
棚上栽培空間6の床部を形成する棚上栽培槽4、棚上栽培空間6の天井部を形成する厚板状ブロック体9、並びに、棚上栽培空間6の両側部を閉塞する縦壁部材10はいずれも発泡スチロールで形成してあり、これにより、これら棚上栽培槽4、厚板状ブロック体9、縦壁部材10の製作加工並びに組み付けを容易にするとともに、発泡スチロールが備える高い断熱性をもって棚上栽培空間6に対する効果的な断熱効果を得ることができる。
【0057】
栽培照明灯7については、厚板状ブロック体9の下面部(即ち、天井面部)に、横断面形状が伏椀状の下拡がり形状で棚上栽培空間6に向かって下向きに開口する溝状の下向き凹部11を形成し、この溝状の下向き凹部11の上底部に、その溝状構造の全長にわたらせて栽培照明灯7を配置してある。
【0058】
この溝状の下向き凹部11の内面には光反射層11aを設けてあり、これにより、下向き凹部11を照明反射板とする形態で、栽培照明灯7の発生光のうち下向き凹部11の内面に向うものを反射させて棚上栽培空間6を効率的に照明する。
【0059】
栽培照明灯7は、下向き凹部11の上底部近くで厚板状ブロック体9の下面部に埋没状態で沿わせた棒状フレーム12に支持させてあり、この棒状フレーム12は厚板状ブロック体9とともに金具を介して上段の棚格子3に支持させてある。
【0060】
図2及び図4〜図6に示すように、天井部を形成する厚板状ブロック体9の内部には、櫛歯状に分岐して厚板状ブロック体9の面方向(本例では長手方向)に延びる複数の内部給気路13、及び、同じく櫛歯状に分岐して厚板状ブロック体9の面方向に延びる複数の内部排気路14を、平面視で噛み合せ状に交互配置して形成してあり、厚板状ブロック体9の一側面における長手方向一端部には、内部給気路13の入口となる給気接続口13aを形成し、厚板状ブロック体9の他側面における長手方向他端部には、内部排気路14の出口となる排気接続口14aを形成してある。
【0061】
また、厚板状ブロック体9には、内部給気路13と棚上栽培空間6とを連通させる複数の天井給気孔13b、及び、内部排気路14と棚上栽培空間6とを連通させる複数の天井排気孔14bの夫々を、厚板状ブロック体9の面方向に分散させて形成してある。
【0062】
つまり、後述する気液熱交換器15(気体調温用の熱交換手段の一例)により冷却した空間調整空気G(空間調整気体の一例)を、給気接続口13a、内部給気路13,天井給気孔13bを通じて天井部から均一に棚上栽培空間6に供給し、また、これに併行して棚上栽培空間6の空間内空気G′を、天井排気孔14b、内部排気路14、排気接続口14aを通じて天井部から均一に排出し、これにより、棚上栽培空間6に対し集中的かつ均一に調温(冷房)を施して、棚上栽培空間6の全体を栽培植物の育成に適した均一な温度状態に調整する。
【0063】
天井排気孔14bは、栽培照明灯7を装備する下向き凹部11の上底部で下向き凹部11の内部に開口させてあり、これにより、栽培照明灯7の大量の発生熱を空間内空気G′とともに棚上栽培空間6から速やかに排出して棚上栽培空間6の調温負荷(冷房負荷)を効果的に軽減する。
【0064】
図2、図3及び図7に示すように、空間調整空気Gを冷却する気液熱交換器15は、空間調整空気Gを各段の棚上栽培空間6に供給する循環ファン16とともに最下段の栽培棚5の下に配置し、この気液熱交換器15の空気出口を、縦姿勢で各段の栽培棚5にわたる給気縦ダクト17を通じて各段の厚板状ブロック体9における給気接続口13aに接続するとともに、この気液熱交換器15の空気入口を、同じく縦姿勢で各段の栽培棚5にわたる排気縦ダクト18を通じて各段の厚板状ブロック体9における排気接続口14aに接続してある。
【0065】
つまり、気液熱交換器15で冷却した空間調整空気Gの供給に伴い各段の棚上栽培空間6から排出される空間内空気G′を排気縦ダクト18を通じて集合状態で気液熱交換器15に戻して冷却し、この冷却空気を再び空間調整空気Gとして給気縦ダクト17を通じ各段の棚上栽培空間6に分配供給するようにしてある。
【0066】
即ち、本例において、循環ファン16及び給気縦ダクト17は、厚板状ブロック体9の内部給気路13を通じて棚上栽培空間6に空間調整空気Gを供給する給気手段を構成する。
【0067】
また、循環ファン16及び排気縦ダクト18は、厚板状ブロック体9の内部排気路14を通じて棚上栽培空間6の空間内空気G′を排出する排気手段を構成する。
【0068】
各段の棚上栽培空間6はトンネル状の空間にしてあるため、各段の棚上栽培空間6に供給した空間調整空気Gの外部への逸散は効果的に抑制され、これにより、各段の棚上栽培空間6だけを集中的かつ効率的に調温(冷房)することができて、その調温に要するエネルギや運転コストを効果的に低減することができる。
【0069】
図4及び図5に示すように、厚板状ブロック体9は上側板状部分9aと下側板状部分9bとからなる二分割構造にしてあり、上側板状部分9aの分割面部(下面部)には、給気路用溝13cと排気路用溝14cとを形成してある。
【0070】
また、下側板状部分9bの分割面部(上面部)には、同じく給気路用溝13dと排気路用溝14dとを形成するとともに、天井給気孔13b及び天井排気孔14bを形成してあり、これら上側板状部分9aと下側板状部分9bとを結合して厚板状ブロック体9を形成すると、それに伴い、上側板状部分9aの給気路用溝13cと下側板状部分9bの給気路用溝13dとが合わさって内部給気路13が厚板状ブロック体9の内部に形成されるとともに、上側板状部分9aの排気路用溝14cと下側板状部分9bの排気路用溝14dとが合わさって内部排気路14が厚板状ブロック体9の内部に形成される。
【0071】
図1は植物栽培棚装置の単位構成U(換言すれば1ユニット)を示すものであり、図7に示すように、この単位構成Uを一列状に連ねて複数配置することで所要長の植物栽培棚装置を構築する。
【0072】
そして、この場合、複数の厚板状ブロック体9が装置長手方向に一列状に連なる装置構成となることで、装置の全長にわたって連続する各段の棚上栽培空間6も形式的には厚板状ブロック体9ごとの栽培領域6aに区分され、それら栽培領域6aごとに、気液熱交換器15、循環ファン16、給気縦ダクト17、排気縦ダクト18からなる給排気システムを配備した装置構成になる。
【0073】
図7において、19は各段の棚上栽培槽4に供給する栽培養液Lを冷却する熱源側熱交換器であり、この熱源側熱交換器19では、冷凍機20との間での冷水循環路21を通じた冷水循環おいて冷凍機20から供給される低温冷水Cと、還液路22を通じて各段の棚上栽培槽4から戻る栽培養液L′とを熱交換させて、その栽培養液L′を所定温度to(熱源側出口温度)まで冷却する。
【0074】
還液路22には、補給水路23及び補給液路24を接続した補給槽25を介装してあり、この補給槽25において、各段の棚上栽培槽4から戻る栽培養液L′に対し、所要量の水Wを補給水路23から補給するとともに所要量の原養液LLを補給液路24から補給することで、常時一定濃度の栽培養液Lを各段の棚上栽培槽4に供給する。
【0075】
熱源側熱交換器19で冷却した栽培養液Lは定水量型の循環ポンプ26により主給液路27を通じて栽培領域6aごとの気液熱交換器15に分配送給し、これら気液熱交換器15では、対応の排気縦ダクト18を通じて各段棚上栽培空間6の対応栽培領域6aから戻る空間内空気G′を、主給液路27から供給される冷却後の栽培養液Lと対向流方式で熱交換させて所定温度tgiまで冷却し、この冷却空気を空間調整空気Gとして対応の給気縦ダクト17を通じて各段棚上栽培空間6の対応栽培領域6aに供給する。
【0076】
また、栽培領域6aごとの気液熱交換器15の夫々を通過した熱交換後の栽培養液L(即ち、空間調整空気Gとの熱交換で熱源側出口温度toから所定温度幅Δtだけ昇温した栽培養液)は、栽培領域6aごとの縦給液路28を通じて各段棚上栽培空間6の対応栽培領域6aにおいて各段の棚上栽培槽4に分配供給する。
【0077】
即ち、循環ポンプ26、主給液路27、並びに、上記栽培領域6aごとの縦給液路28は棚上栽培槽4に栽培養液Lを供給する給液手段を構成する。
【0078】
各段の棚上栽培槽4には、棚上栽培槽4の液位を所定液位に保つオーバーフロー排液口29を装置長手方向の一端部に配置して装備してあり、各段の棚上栽培空間6において上記の如く栽培領域6aごとに栽培養液Lを棚上栽培槽4に供給するのに伴い、各段の棚上栽培槽4における槽内の栽培養液L′は各段のオーバーフロー排液口29へオーバーフローにより流出させ、これら各段のオーバーフロー排液口29から排出される栽培養液L′を還液路22を通じて熱源側熱交換器19に戻すようにしてある。
【0079】
つまり、この植物栽培棚装置であれば、各気液熱交換器15における熱交換条件(例えば、栽培養液L及び空間調整空気G夫々の温度、流量、流速など)を栽培条件や調温負荷などに応じて設定しておくことで、それら気液熱交換器15での栽培養液Lと空間調整空気Gとの熱交換をもって、各段の棚上栽培空間6に供給する空間調整空気Gの温度tgi(給気温度)を、栽培植物の育成に適した温度(即ち、各段の棚上栽培空間6の調温負荷を処理して各段の棚上栽培空間6を栽培植物の育成に適した温度状態に保ち得る空気温度)に調整すると同時に、各段の棚上栽培槽4に供給する栽培養液Lの温度ti[=to+Δt](給液温度)も、栽培植物の育成に適した温度(即ち、各段の棚上栽培槽4内における養液Lの調温負荷を処理して各段の棚上栽培槽4内における養液Lを栽培植物の育成に適した温度状態に保つことができる養液温度)に調整することができる。
【0080】
そして、熱源側熱交換器19で冷却した栽培養液Lを気液熱交換器15での空間調整空気Gの冷却に用いて、栽培養液Lを空間調整空気Gに対する冷却用熱媒として兼用する形態を採ることで、また、熱源側熱交換器19及び冷凍機20からなる養液用の熱源手段Nを空間調整空気Gに対する空気用の熱源手段に兼ねる形態を採ることで、装置構成の効果的な簡素化及び小型化を可能にしている。
【0081】
なお、レタスなどの一般葉野菜を栽培する場合、気液熱交換器15に供給する栽培養液Lの熱源側出口温度to、及び、気液熱交換器15での熱交換による栽培養液Lの温度上昇幅Δt(=ti−to)の好適な設計値例としては、to=10℃〜14℃,Δt=3℃deg〜7℃deg、最も望ましくはto=12℃,Δt=5℃を挙げることができる。
【0082】
30は各段の棚上栽培空間6における温度trを検出する温度センサ、Vは冷凍機20から熱源側熱交換器19に供給する冷水Cの流量を調整して熱源側熱交換器19の冷却出力を調整するための流量調整弁、31は各段の温度センサ30による検出温度trに基づき流量調整弁Vを操作する制御装置(空間制御手段の一例)である。
【0083】
そして、この制御装置31は、各段の温度センサ30による検出温度trに基づき流量調整弁Vの操作して熱源側熱交換器19の冷却出力を調整することで、気液熱交換器15に供給する栽培養液Lの熱源側出口温度toを調整し、この熱源側出口温度toの調整により、各段の棚上栽培空間6における温度trを平均的に設定空間温度trs(つまり、栽培植物の育成に適した空間温度として設定された温度)に調整するよう動作する構成にしてある。
【0084】
なお、この制御装置31は、擬似夜間としての照明消灯時と擬似昼間としての照明点灯時とで設定空間温度trsを自動的に変更し、そのことで栽培植物に対し光と温度との両面から昼夜を擬似体験させるものにしてもよい。
【0085】
また、栽培植物の生育状態に応じて設定空間温度trsを自動的に変更するものにしてもよい。
【0086】
〔別実施形態〕
前述の実施形態では、栽培養液L及び空間調整空気Gを冷却する装置構成を示したが、寒冷地などでは、また、栽培植物種によっては、加熱用の熱源手段Nを用いて栽培養液L及び空間調整空気Gを加熱するようにしてもよく、また、栽培養液L及び空間調整空気Gを冷却する冷却運転と栽培養液L及び空間調整空気Gを加熱する加熱運転との切り換え実施を可能にしてもよい。
【0087】
前述の実施形態では、熱源手段Nで冷却(又は加熱)した栽培養液Lの全量を気液熱交換器15を通じて栽培槽4に供給する装置構成を示したが、図8に示す如く、熱源手段Nで冷却(又は加熱)した栽培養液Lの一部を気液熱交換器15に対し迂回させて栽培槽4に供給する迂回給液路27aを設けるとともに、熱源手段Nで冷却(又は加熱)した栽培養液Lのうち迂回給液路27を通じて栽培槽4に供給する栽培養液Laが占める流量比率を調整するための給液比率調整弁Vaを設けてもよい。
【0088】
即ち、この構成によれば、給液比率調整弁Vaを操作して、迂回給液路27を通じて栽培槽4に供給する栽培養液Laの流量比率を調整することにより、栽培槽4に供給する栽培養液Lの温度ti(給液温度)を調整することができる。
【0089】
なお、給液比率調整弁Vaは、三方弁又は二方弁の組み合わせなど、どのような装備形態を採るものであってもよい。
【0090】
前述の実施形態では、栽培槽4から排出される栽培養液L′の全量を還液路22を通じて熱源手段Nに戻す装置構成を示したが、図9に示す如く、栽培槽4から排出される栽培養液L′の一部を、熱源手段N及び気液熱交換器15に対し迂回させて栽培槽4に供給する迂回循環路22aを設け、栽培槽4から排出される栽培養液L′のうち迂回循環路22aを通じて栽培槽4に供給する栽培養液Lbが占める流量比率を調整するための循環液比率調整弁Vbを設けてもよい。
【0091】
即ち、この構成によれば、循環液比率調整弁Vbを操作して、迂回循環路22aを通じて栽培槽4に再供給する栽培養液Lbの流量比率を調整することにより、栽培槽4に供給する栽培養液Lの温度ti(給液温度)を調整することができる。
【0092】
なお、循環液比率調整弁Vbも、三方弁又は二方弁の組み合わせなど、どのような装備形態を採るものであってもよい。
【0093】
前述の実施形態では、栽培養液Lを空気調温用の熱媒に兼用する装置構成を示したが、図10に示す如く、熱源手段Nで冷却又は加熱した空間調整空気Gを気液熱交換器15(この場合は養液調温用熱交換手段の一例)で栽培養液Lと熱交換させ、この熱交換後の栽培養液Lを栽培槽4に供給すると共に、熱交換後の空間調整空気Gを栽培槽4上の栽培空間6に供給するようにしてもよい。
【0094】
この装置構成においても、気液熱交換器15における熱交換条件を栽培条件や調温負荷などに応じて設定しておくことで、気液熱交換器15での栽培養液Lと空間調整空気Gとの熱交換をもって、栽培空間6に供給する空間調整空気Gの温度tgi(給気温度)を、栽培植物の育成に適した温度(栽培空間6の調温負荷を処理して栽培空間6を栽培植物の育成に適した温度状態に保ち得る空気温度)に調整すると同時に、栽培槽4に供給する栽培養液Lの温度ti(給液温度)も、栽培植物の育成に適した温度(栽培槽4内における養液Lの調温負荷を処理して栽培槽4内における養液Lを栽培植物の育成に適した温度状態に保ち得る養液温度)に調整することができる。
【0095】
前述の実施形態では、空間調整気体Gを空気とする場合を示したが、栽培空間6に供給する空間調整気体Gは、空気に限らず、二酸化炭素ガスや二酸化炭素ガス富裕空気などの栽培用ガスであってもよい。
【0096】
本発明による植物栽培装置は、前述の実施例の如き上下複数段の棚構造のものに限らず、栽培槽4及び栽培槽4上の栽培空間6を一段だけ備えるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明による植物栽培装置は種々の植物の栽培に使用することができる。
【符号の説明】
【0098】
L 栽培養液
4 栽培槽
26,27,28 給液手段
6 栽培空間
16,17 給気手段
N 熱源手段
G 空間調整気体
15 気体調温用(又は養液調温用)の熱交換手段
30 温度センサ
tr 空間温度
31 空間制御手段
to 熱源側出口温度
trs 設定空間温度
La 栽培養液の一部
27a 迂回給液路
Va 給液比率調整弁
22 還液路
Lb 栽培養液の一部
22a 迂回循環路
Vb 循環液比率調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内の栽培養液に根元部を浸漬させた状態で栽培植物を収容する栽培槽を備え、
栽培養液を前記栽培槽に供給する給液手段、及び、空間調整気体を前記栽培槽上の栽培空間に供給する給気手段を備える植物栽培装置であって、
前記給液手段により前記栽培槽に供給する栽培養液を冷却又は加熱する熱源手段を設けるとともに、
前記給気手段により前記栽培空間に供給する空間調整気体を熱媒と熱交換させて冷却又は加熱する気体調温用の熱交換手段を設け、
前記給液手段は、前記熱源手段により冷却又は加熱した栽培養液を前記熱媒として前記気体調温用の熱交換手段に通過させて空間調整気体と熱交換させ、この熱交換後の栽培養液を前記栽培槽に供給し、
前記給気手段は、前記気体調温用の熱交換手段で栽培養液と熱交換した後の空間調整気体を前記栽培空間に供給する構成にしてある植物栽培装置。
【請求項2】
前記気体調温用の熱交換手段を、栽培養液の通液方向における上流側が空間調整気体の通気方向における下流側となる対向流方式の熱交換器にしてある請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項3】
温度センサにより検出される前記栽培空間の温度に基づいて前記熱源手段の冷却出力又は加熱出力を調整する空間制御手段を設け、
この空間制御手段は、前記熱源手段の冷却出力又は加熱出力の調整により、前記熱源手段から前記気体調温用の熱交換手段に供給する栽培養液の温度を調整することで、前記栽培空間の温度を設定空間温度に調整する構成にしてある請求項1又は2記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記熱源手段で冷却して前記気体調温用の熱交換手段に供給する栽培養液の温度toを10℃〜14℃とし、
前記気体調温用の熱交換手段での空間調整気体との熱交換による栽培養液の温度上昇幅Δtを3℃deg〜7℃degとしてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記熱源手段で冷却又は加熱した栽培養液の一部を、前記気体調温用の熱交換手段に対し迂回させて前記栽培槽に供給する迂回給液路を設けるとともに、
前記熱源手段で冷却又は加熱した栽培養液のうち前記迂回給液路を通じて前記栽培槽に供給する栽培養液が占める流量比率を調整するための給液比率調整弁を設けてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記給液手段による栽培養液の供給に伴い前記栽培槽から排出される栽培養液を前記熱源手段に戻す還液路を設けるとともに、
前記栽培槽から排出される栽培養液の一部を、前記熱源手段及び前記気体調温用の熱交換手段に対し迂回させて前記栽培槽に供給する迂回循環路を設け、
前記栽培槽から排出される栽培養液のうち前記迂回循環路を通じて前記栽培槽に供給する栽培養液が占める流量比率を調整するための循環液比率調整弁を設けてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
槽内の栽培養液に根元部を浸漬させた状態で栽培植物を収容する栽培槽を備え、
栽培養液を前記栽培槽に供給する給液手段、及び、空間調整気体を前記栽培槽上の栽培空間に供給する給気手段を備える植物栽培装置であって、
前記給気手段により前記栽培空間に供給する空調調整気体を冷却又は加熱する熱源手段を設けるとともに、
前記給液手段により前記栽培槽に供給する栽培養液を熱媒と熱交換させて冷却又は加熱する養液調温用の熱交換手段を設け、
前記給気手段は、前記熱源手段により冷却又は加熱した空間調整気体を前記熱媒として前記養液調温用の熱交換手段に通過させて栽培養液と熱交換させ、この熱交換後の空間調整気体を前記栽培空間に供給し、
前記給液手段は、前記養液調温用の熱交換手段で空間調整気体と熱交換した後の栽培養液を前記栽培槽に供給する構成にしてある植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−51941(P2013−51941A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194227(P2011−194227)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】