説明

植物病害用摂食忌避剤としてのベツリン由来化合物

本発明は、ベツリン由来化合物、および植物病害防除におけるその使用、特に、チョウの幼虫、甲虫、およびカタツムリ用摂食忌避剤としての使用に関する。さらに、本発明は、新規ベツリン誘導体、ならびにベツリンから直接またはベツリンに由来する中間体いずれかからのそれらの生成法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベツリンに由来する化合物、および植物病害防除におけるその使用、特に、チョウの幼虫、甲虫、およびカタツムリ用摂食忌避剤としての使用に関する。さらに、本発明は、新規ベツリン誘導体、ならびにベツリンから直接またはベツリンに由来する中間体いずれかからのそれらの生成法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に示す構造1を有するベツリンは、ルパン族の一員の天然に生じる五環式トリテルペンアルコールで、ベツリノールおよびルプ−20(29)−エン−3β,28−ジオールとしても既知である。ベツリンは、いくつかの樹木種の樹皮、特にバーチ(カバノキ属の種(Betula sp.))樹皮に、最高で樹皮の乾燥重量の40%までの量で見出される。ベツリンの他に、少量のベツリン誘導体も、樹皮から得られる。樹皮材料からベツリンを単離するために、主に抽出に基づく方法が既知である。
【0003】
【化1】

【0004】
用途によっては、ベツリンの溶解性が低いために、その使用および配合に関して問題が生じ、したがって、ベツリンを誘導体に変換して溶解性を改善することになる。こうした誘導体の生成では、ベツリンの官能基の反応性、すなわち、第一級ヒドロキシル基、第二級ヒドロキシル基、および二重結合が、主に利用される。ヒドロキシル基はどちらもエステル化することができ、こうしてモノエステルまたはジエステルが得られる。既知の手順を用いてベツリンからグリコシド誘導体を生成することもでき、適した酸化剤、還元剤、または酸触媒の存在下、ベツリンを、酸化、還元、および転位反応にかけることができる。
【0005】
以下の反応スキームに示す構造3を有するベツリン酸は、たとえばバーチ(カバノキ属の種)樹皮またはコルクガシ(Quercus suber L.)のコルクから抽出により単離することができ、さらに、ベツリンまたはカバノキ樹皮材料の直接酸化に主に基づくいくつかの方法により生成させることもできる。反応スキームでは、米国特許第6280778号明細書に従って酸化クロム(VI)触媒の存在下のジョーンズ酸化でベツリン1の直接酸化によりベツロン酸2とし、続いてこうして得られたベツロン酸2を水素化ホウ素ナトリウムで選択的に還元してベツリン酸3を得ている。
【0006】
【化2】

【0007】
ベツリン酸を生成する別のプロセスが、米国特許第5804575号明細書に開示されているが、このプロセスは酸化工程を含み、このときベツリンの3−β−ヒドロキシルはアセチル化により保護される。ベツリンの第二級ヒドロキシル基の異性化および酸化はこうして防止される。
【0008】
農薬および工業化学用途におけるベツリンおよびその誘導体の使用は、広く研究されてきている。ベツリンおよびそのいくつかの誘導体について、ある種の細菌およびウイルスに対する活性ならびに抗真菌活性が見出されている。
【0009】
五環式トリテルペノイドは、農業用途、特に植物に対して病原性の微生物を防除する植物保護用途が示唆されている。国際公開第00/033846号パンフレットには、殺真菌剤用途におけるベツリンおよびそのモノコハク酸、ジコハク酸、およびグルタル酸誘導体の使用を開示されている。
【0010】
J. Agric. Food Chem. 1995, 43, 2513-2516は、コロラドビートル(Colorado beetles)の防除用摂食忌避剤としての、ベツリンのいくつかのエステル誘導体、特にベツリン20,29−エポキシ−3β,28−ジアセタート、30−ヒドロキシルプ−20(29)−エン−3β,28−ジアセタート、および30−ヒドロキシ−20−オキソ−29−ノルルプ−3β,28−ジアセタートの使用を開示する。コロラドビートルに対しED50=8μg/cm2の投与量の活性を有する薬剤(この活性はリモネンの活性に匹敵する)が、ベツリンジアセタート側鎖の酸化およびさらに複雑な修飾により得られた。反対に、この化合物は、その他の試験昆虫として用いられた綿害虫である、ガのヘリコベルパ・ゼア(Helicoverpa zea)に対して活性がなかった。
【0011】
J. Agric. Food Chem. 1998, 46, 2797-2799は、タバコワーム(スポドプテラ・リツラ(Spodoptera litura)、Fabritius:ヤガ科(Noctuidae)のカラスヨトウ亜科(Amphipyrinae))に対するいくつかのベツリン誘導体の摂食忌避活性を記載する。メチル桂皮酸、メチルオキシ桂皮酸、またはトリ−O−メチル没食子酸基がC−3位に導入されたベツリン誘導体が、最も有効な化合物であることが見出された。
【0012】
害虫の摂食忌避剤は、一般に、活性に関して非常に特異的であり、その中には従来の合成害虫防除剤との相乗効果が見出されているものもある。昆虫、特に甲虫は、種が異なると、生活様式も嗜好性も非常に異なるのが一般的である。したがって、ある種に対して活性な薬剤は他の種に何の効果もないこともある。
【0013】
将来的には、植物病害用摂食忌避剤の使用が、従来の殺虫剤の戦略的に重要な代替法になるだろう。活性機構および生分解性の予測可能性を可能な限り高めるために、自然に見出される産物ならびにその半合成類似体および誘導体が最初に探求されて用いられる。しかしながら、そうした産物はほとんど用いられない。なぜなら、実用的なプロセスにより純粋な形で大量に自然から単離することができる化合物で適したものはほんのわずかしかないからである。
【0014】
上記の教示に基づいて、害虫に対して所望の効率的な摂食忌避活性を有する環境を破壊しない化合物の明らかな必要性がわかるかもしれない。
【0015】
本明細書では、ベツリンに由来する化合物は、五環式トリテルペノイドを示し、特に置換基として天然の化合物および/または既知の低毒性の化合物を含むベツリン、ベツリン酸、ベツロン酸、およびそれらの誘導体を示し、特にベツリンのアルコール、フェノールおよび/またはカルボン酸および/またはエステルおよび/またはアミドおよび/またはエーテル誘導体を示す。
【0016】
本明細書では、摂食忌避剤は、害虫の摂食を阻害する薬剤を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、植物病害用摂食忌避剤としてのベツリン由来化合物の使用である。
【0018】
本発明の別の目的は、チョウ、甲虫、およびカタツムリ用摂食忌避剤としてのベツリン由来化合物の使用である。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、新規ベツリン誘導体を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、この新規ベツリン誘導体を、ベツリンから直接、またはベツリン由来の中間体からのいずれかで生成する方法を提供することである。
【0021】
このベツリン由来化合物、ベツリン誘導体、およびそれらの製造方法の特徴は、本発明に従って、請求項に開示される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、ベツリン由来化合物の植物病害の防除における効率的な摂食忌避剤としての使用に関する。本発明はさらに、置換基として天然の化合物および/または低毒性の既知化合物を含む環境を破壊しない新規ベツリン誘導体、たとえばベツリンのアルコール、フェノールおよび/またはカルボン酸および/またはエステルおよび/またはアミドおよび/またはエーテル誘導体に関し、さらにそれらの製造法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】Alticinae Beettesの相対摂食被害と相対数の関係を示すグラフである。
【図2】幼虫に食べられた葉の質量対対照を示すグラフである。
【図3】幼虫の体重(12mgから19mgへ)の増加を示すグラフである。
【図4】24時間曝露後のCaco−2細胞の生存数(%)における影響を、細胞生存数を求める3種の方法(LDH、WSR−1、およびATP法)により測定したものを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
研究では、環境を破壊しないベツリン由来化合物の中に、植物病害に対して、特にチョウの幼虫(ヨトウガ、モンシロチョウ、およびコナガなど)、甲虫(キャベツビートル、およびガレルケラ(Galerucella)属の甲虫)、およびカタツムリに対して、幅広い摂食忌避活性を有するものがあることが見出された。特にカタツムリ防除について、強力な合成殺虫剤が従来用いられてきたが、これを少なくとも部分的に本発明による化合物で置き換えることができる。
【0025】
ベツリンおよびその誘導体から、環境を破壊せず効率的な所望の活性を有するだけでなく、植物病害を防除する用途で用いられる媒体への溶解性および/または混和性および/または乳化性にも優れている摂食忌避剤を、植物病害用に製造することも可能である。
【0026】
本発明に従って、植物病害用摂食忌避剤用途に適した化合物として、以下に示す一般式Iを有する以下のベツリン由来化合物およびその塩が挙げられ、式Iにおいて:
【化3】

R1=−OH;−ORa(Raは、C1−C12の、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素残基を表す);オキソ(=O);−O(C=O)Rb(Rbは、C1−C22の、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素残基を表す);またはカルボキシメチル、カルボキシメチルエステル、またはカルボキシメチルアミド誘導体;
R2=−CH2ORc(Rcは、Hまたは−(C=O)Rd(Rdは、C1−C22の、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素残基;ベンジル、フェニル、アミノ酸、または無水誘導体を表す)を表す);または−(C=O)ORe(Reは、H;C1−C12の、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素残基;ベンジル、フェニル、またはアミノ酸アミド誘導体を表す);またはカルボキシメチル、カルボキシメチルエステル、またはカルボキシメチルアミド誘導体;および
R3=イソプロペニル、イソプロピル、イソプロピルフェニル、イソプロピルヒドロキシフェニル、またはイソプロピルコハク酸誘導体、である。
【0027】
好ましい化合物は、化合物IA〜ILであり、ここで基R1〜R3は以下の構造を表す:
IA:
R1=OH;
R2=CH2O(C=O)Rf(Rf=C11−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基);および
R3=CH2=CCH3(イソプロペニル基)
IB:
R1=OH;
R2=CH2O(C=O)(CHRg)CH2COOY(Rg=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基、Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRh、ここでRh=HまたはC1−C4アルキル基);および
R3=CH2=CCH3
IC:
R1=OH;
R2=CH2ORi(Ri=オルニチンエステル、ニコチンエステル、N−アセチルアントラニル酸エステル、またはトリメチルグリシンエステル(またはベタインエステル));および
R3=CH2=CCH3
ID:
R1=OH;
R2=CH2O(C=O)CHRj(NHZ)(Rj=H、C1−C4アルキル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、−CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、3−インドリルメチル、またはCH3SCH2基;およびZ=H、Rk、(C=O)Rk、またはCOORk、Rk=C1−C22の分岐または非分岐アルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);および
R3=CH2=CCH3
IE:
R1=OH;
R2=CH2ORn(Rn=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);および
R3=CH2=CCH3
IFa:
R1=O(C=O)Rm(Ra=C11−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基、またはC3−C22の非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、環式脂肪族炭化水素残基、またはベンジルまたはフェニル基);
R2=CH2O(C=O)Ro(Ro=C11−C22の直鎖、環式、または分岐アルキルまたはアルケニル基、またはC3−C22の非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、環式脂肪族炭化水素残基、またはベンジルまたはフェニル基);および
R3=CH2=CCH3
IFb:
R1=O(C=O)(CHRC)CH2COOY(Rc=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基、Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRh、ここでRh=HまたはC1−C4アルキル基);
R2=CH2O(C=O)(CHRd)CH2COOY(Rd=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基、Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRk、ここでRk=HまたはC1−C4アルキル基);および
R3=CH2=CCH3
IFc:
R1=ORr(Rr=オルニチンエステル、N−アセチルアントラニル酸エステル、またはトリメチルグリシンエステルまたはベタインエステル);
R2=CH2ORp(Rp=オルニチンエステル、N−アセチルアントラニル酸エステル、またはトリメチルグリシンエステルまたはベタインエステル);および
R3=CH2=CCH3
IFd:
R1=O(C=O)CHRs(NHZ)(Rs=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基;およびZ=H、Rk、(C=O)Rk、またはCOORk、ここでRk=C1−C22の分岐または非分岐のアルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);
R2=CH2O(C=O)CHRx(NHZ)(Rx=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基;およびZ=H、Ry、(C=O)Ry、またはCOORy、ここでRy=C1−C22の分岐または非分岐のアルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);および
R3=CH2=CCH3
IFe:
R1=ORv(Rv=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);
R2=CH2ORu(Ru=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);および
R3=CH2=CCH3
IG:
R1=OH;
R2=(C=O)NHCHRxCOOY(Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRy、ここでRy=HまたはC1−C4アルキル基;およびRx=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、3−インドリルメチル基);および
R3=CH2=CCH3
IH:
R1=OH;
R2=(C=O)Rw(Rw=ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、またはイソボルネオールのエステル);および
R3=CH2=CCH3
IIa:
R1=ORz(Rz=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基、またはカルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);
R2=(C=O)NHCHRxCOOY(Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRy、ここでRy=HまたはC1−C4アルキル基;およびRx=H、C1−C4アルキル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、−CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、3−インドリルメチル、またはCH3SCH2基);および
R3=CH2=CCH3
IIb:
R1=ORa(Ra=H、C1−C4アルキル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、CH2CH2CH2CH2NH2、またはCH3SCH2基、またはカルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);
R2=(C=O)Rw(Rw=ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、またはイソボルネオールのエステル);および
R3=CH2=CCH3
IJa:
R1=オキソ(=O)基;
R2=(C=O)NHCHRxCOOY(Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRy、ここでRy=HまたはC1−C4アルキル基;およびRx=H、C1−C4アルキル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、3−インドリルメチル、またはCH3SCH2基);および
R3=CH2=CCH3
IJb:
R1=オキソ基;
R2=(C=O)Rw(Rw=ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、またはイソボルネオールのエステル);および
R3=CH2=CCH3
IK:
R1=OHまたはO−(C=O)Rb(Rb=C1−C22アルキルまたはC1−C22アルケニル基またはフェニル基);
R2=CH2OHまたはCH2O−(C=O)Rf(Rf=C1−C22アルキルまたはC1−C22アルケニル基またはフェニル基);および
R3=(CH32CRzまたはCH3CHCH2z(Rz=C65-n(OH)nまたはC65-n-m(OH)n(OCH3m、ここでn=0〜5、m=0〜5、n+m≦5)
IL:
R1=OHまたはO−(C=O)Rb(Rb=C1−C22アルキルまたはC1−C22アルケニル基またはフェニル基);
R2=CH2OHまたはCH2O−(C=O)Rf(Rf=C1−C22アルキルまたはC1−C22アルケニル基またはフェニル基);および
R3=H2C=CCH2qまたはCH3CCH2q(Rq=無水コハク酸、コハク酸イミド、またはCH(COORo)CH2COORz、ここでRo=H、Na、K、Ca、Mg、またはC1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基;およびRz=H、Na、K、Ca、Mg、またはC1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基)。
【0028】
上記のベツリン由来化合物に存在する置換基は、代表的には、天然に生じる物質または低毒性であることが既知の化合物、またはその両方であるものに由来する。本発明のベツリン由来化合物は、植物病害用摂食忌避剤用途で弱い潜在的なマイナス効果のみを有する、環境を破壊しない化合物で、このマイナス効果は、一般に、合成化合物のものよりも予測しやすくもある。ベツリン由来化合物の分解は、一般に、ベツリンまたはその酸誘導体、さらには置換基の構成要素をもたらす。このように生成された、化合物および産物の構成部分として存在する構成要素(天然物質など)の分解経路は既知である。さらに、ベツリン由来化合物の毒性は、たとえば以下の実施例で行われた細胞毒性研究で実証されるように低い。
【0029】
研究では、植物病害(チョウ害虫、甲虫(たとえばキャベツビートルまたはガレンケラ属の甲虫)、およびカタツムリまたはナメクジなど)について、上記のベツリン由来化合物が驚くほど強力な摂食忌避活性を有することが示された。これらの化合物は、ガの仲間(ヤガ科)のヨトウガ亜科に属するもの(ヨトウガ(マメストラ・ブラッシカエ(Mamestra brassicae))など)、日中活動するチョウ類(チョウ目)のもの(モンシロチョウ(ピエリス・ブラッシカエ(Pieris brassicae))など)、小さいチョウ類の亜目(小鱗翅目)に属するガ類(コナガ(プルテラ・キシロステラ(Plutella xylostella))など)からなる群より選択されるチョウ(鱗翅目)に対して、ハムシ類(ハムシ科)のノミハムシ亜目(ナタネハムシ(フィロトレタ種(Phyllotreta spp.)、ストロベリービートルおよびクラウドベリービートル(ガレルケラ種)など)、クビボソハムシ亜科のリリービートル(リリオセリス・リリイ(Lilioceris lilii))から選択される甲虫(鞘翅目)に対して、ならびに腹足類(腹足綱)(陸カタツムリ(field snail)および偽陸カタツムリ(false field snail)(デロセラス種(Deroceras spp.)など)に対して、特に効率的である。
【0030】
好適な植物病害用摂食忌避剤化合物は、ベツリン3,28−O−イソステアリン(isostearylic)酸ジエステル、ベツリン28−O−イソステアリン(isostearylic)酸エステル、ベツリン3,28−O−オレイン(oleinylic)酸ジエステル、ベツリン28−O−オレイン(oleinylic)酸エステル、ベツリン3,28−O−オクタン(octanylic)酸ジエステル、ベツリン28−O−オクタン(octanylic)酸エステル、3,28−ジアセトキシベツリン、28−アセトキシベツリン、3−オキソ−28−アセトキシベツリン、ベツリン酸、3−デヒドロキシドベツリン、3−デヒドロキシド−28−アセトキシベツリン、ベツロン酸、ベツリン、ベツリン28−N−アセチルアントラニル(anthralinic)酸エステル、ベツリン28−ニコチン酸エステル、ベツリン3,28−C18−アルキレンコハク酸ジエステル、ベツリン28−C18−アルキレンコハク酸エステル、ベツリン28−カルボキシメトキシメントール、ベツリン28−カルボキシメトキシチモールエステル、ベツリン28−クリサンテメート、ベツリン28−桂皮酸エステル、ベツリンL−アスパラギン酸アミド、ベツリン酸L−ヒスチジン(histidin)アミド、ベツリン酸L−グルタミン(glutamin)アミド、ベツリン酸L−リジン(lycin)アミド、およびベツロン酸28−アスパラギン酸アミドジメチルエステルからなる群より選択される。
【0031】
特に好適な化合物は、ベツリン、ベツリン酸、ベツロン酸、ベツリンのコハク酸誘導体(ベツリン28−C18−アルキルコハク酸エステル)、およびベツリン28−カルボキシメトキシメントールである。
【0032】
新規の環境を破壊しないベツリン由来化合物として、以下に示す一般式Iによる以下のベツリン誘導体、およびその塩が挙げられ、式Iにおいて:
【化4】

R1=−OH;−ORa(RaはC3−C22の環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基、またはベンジル、フェニル、または無水物誘導体を表す);オキソ(=O);−O(C=O)Rb(RbはC3−C22の環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基、またはベンジル、フェニル、または無水物誘導体を表す);またはカルボキシメチル、カルボキシメチルエステル、またはカルボキシメチルアミド誘導体;
R2=−CH2ORc(Rcは、H、またはC3−C22の環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基、またはベンジル、フェニル、または無水物誘導体を表すか、またはRcは−(C=O)Rdを表し、ここでRdはC3−C22の環式、脂肪族、または複素環式の、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基;ベンジル、フェニル、無水物誘導体、またはアミノ酸誘導体、ただしR1は同時にオキソ(=O)を表す);またはR2=−(C=O)ORe(Reは、H;C3−C22の環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基;ベンジル、フェニルまたは無水物誘導体を表す);またはカルボキシメチル、カルボキシメチルエステル、またはカルボキシメチルアミド誘導体;および
R3=イソプロペニル、イソプロピル、イソプロピルフェニル、イソプロピルヒドロキシフェニル、またはイソプロピルコハク酸誘導体;
であるが、ただしこの化合物は、ベツリン、ベツリン酸、またはベツロン酸ではない。
【0033】
式Iによる好適な新規ベツリン誘導体は、以下:
R1は、以下の基:OH;オキソ基(=O);基O(C=)Rm(RmはC3−C22の環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基、またはベンジルまたはフェニル基を表す);基O(C=O)(CHRc)CH2COOY(Rc=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基;Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRh、ここでRh=HまたはC1−C4アルキル基);基ORr(Rr=オルニチンエステル、N−アセチルアントラニル酸(アントラニル酸)エステル、またはトリメチルグリシンエステル);基O(C=O)CHRs(NHZ)(Rs=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基;Z=H、Rk、(C=O)Rk、またはCOORk、ここでRk=C1−C22の分岐または非分岐のアルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);基ORv(Rv=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);基ORy(RyはC3−C22の環式、脂肪族、非分岐、または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基、またはベンジル、4−ヒドロキシベンジル、CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基を表す)、から選択され;および
R2は、以下の基:CH2OH;基CH2O(C=O)Rf(Rf=C3−C22の環式、脂肪族、分岐したまたは非分岐の、飽和または不飽和の炭化水素残基);基CH2O(C=O)(CHRg)CH2COOY(Rg=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基;Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRh、ここでRh=HまたはC1−C4アルキル基);基CH2ORi(Ri=オルニチンエステル、N−アセチルアントラニル酸エステル、またはトリメチルグリシンエステル);基CH2O(C=O)CHRj(NHZ)(Rj=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基;およびZ=H、Rk、(C=O)Rk、またはCOORk、ここでRk=C1−C22の分岐したまたは非分岐アルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);基CH2ORn(Rn=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);基(C=O)NHCHRxCOOY(Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRy、ここでRy=HまたはC1−C4アルキル基;およびRx=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基);基(C=O)Rw(Rw=ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、またはイソボルネオールのエステル);基ORy(Ryは、C3−C22の環式、脂肪族、分岐したまたは非分岐、飽和または不飽和の炭化水素残基、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル基、CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基を表す);基(C=O)ORp(Rp=HまたはC3−C22の環式、脂肪族、分岐したまたは非分岐、飽和または不飽和の炭化水素残基)、から選択され;および
R3は、以下の基:CH2=CCH3、基(CH32CRzまたはCH3CHCH2z(Rz=C65-n(OH)nまたはC65-n-m(OH)n(OCH3m、ここでn=0〜5、m=0〜5、n+m≦5);基H2C=CCH2qまたはCH3CCH2q(Rq=無水コハク酸、コハク酸イミド、またはCH(COORo)CH2COORz、ここでRo=H、Na、K、Ca、Mg、またはC1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基であり、Rz=H、Na、K、Ca、Mg、またはC1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基である)、から選択される化合物であり、そして上記の制限は好適な化合物にも関与する。
【0034】
本発明による好適な化合物は、IA〜IL型の化合物で、式中、基R1〜R3は以下の構造を表す:
IA:
R1=OH;
R2=CH2O(C=O)Rf(Rf=C3−C22の環式、脂肪族、分岐したまたは非分岐の、飽和または不飽和の炭化水素残基、またはベンジルまたはフェニル基);および
R3=CH2=CCH3(イソプロペニル基)
IB:
R1=OH;
R2=CH2O(C=O)(CHRg)CH2COOY(Rg=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基;Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRh、Rh=HまたはC1−C4アルキル基);および
R3=CH2=CCH3
IC:
R1=OH;
R2=CH2ORi(Ri=オルニチンエステル、N−アセチルアントラニル酸エステル、またはトリメチルグリシンエステル(またはベタインエステル);および
R3=CH2=CCH3
ID:
R1=OH;
R2=CH2O(C=O)CHRj(NHZ)(Rj=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基;およびZ=H、Rk、(C=O)Rk、またはCOORk、ここでRk=C1−C22の分岐したまたは非分岐アルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);および
R3=CH2=CCH3
IE:
R1=OH;
R2=CH2ORn(Rn=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);および
R3=CH2=CCH3
IFa:
R1=O(C=O)Rm(Ra=C3−C22の、環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、炭化水素残基、またはベンジルまたはフェニル基);
R2=CH2O(C=O)Ro(Ro=C3−C22の、環式、脂肪族、または非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、炭化水素残基、またはベンジルまたはフェニル基);および
R3=CH2=CCH3
IFb:
R1=O(C=O)(CHRc)CH2COOY(Rc=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基;Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRh、ここでRh=HまたはC1−C4アルキル基);
R2=CH2O(C=O)(CHRd)CH2COOY(Rd=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基;Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRk、ここでRk=HまたはC1−C4アルキル基);および
R3=CH2=CCH3
IFc:
R1=ORr(Rr=オルニチンエステル、N−アセチルアントラニル酸エステル、またはトリメチルグリシンエステル);
R2=CH2ORp(Rp=オルニチンエステル、N−アセチルアントラニル酸エステル、またはトリメチルグリシンエステル);および
R3=CH2=CCH3
IFd:
R1=O(C=O)CHRs(NHZ)(Rs=−CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基;Z=H、Rk、(C=O)Rk、またはCOORk、ここでRk=C1−C22の分岐したまたは非分岐アルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);
R2=CH2O(C=O)CHRx(NHZ)(Rx=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基;Z=H、Ry、(C=O)Ry、またはCOORy、ここでRy=C1−C22の分岐したまたは非分岐アルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);および
R3=CH2=CCH3
IFe:
R1=ORv(Rv=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);
R2=CH2ORu(Ru=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);および
R3=CH2=CCH3
IG:
R1=OH;
R2=(C=O)NHCHRxCOOY(Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRy、ここでRy=HまたはC1−C4アルキル基;およびRx=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基);および
R3=CH2=CCH3
IH:
R1=OH;
R2=(C=O)Rw(Rw=ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、またはイソボルネオールのエステル);および
R3=CH2=CCH3
IIa:
R1=ORz(Rz=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基、またはカルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);
R2=(C=O)NHCHRxCOOY(Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRy、ここでRy=HまたはC1−C4アルキル基;およびRx=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基);および
R3=CH2=CCH3
IIb:
R1=ORa(Ra=H、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、CH2CH2CH2CH2NH2基、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基;またはカルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);
R2=(C=O)Rw(Rw=ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、またはイソボルネオールのエステル);および
R3=CH2=CCH3
IJa:
R1=オキソ(=O)基;
R2=(C=O)NHCHRxCOOY(Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRy、ここでRy=HまたはC1−C4アルキル基;およびRx=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基);および
R3=CH2=CCH3
IJb:
R1=オキソ基;
R2=(C=O)Rw(Rw=ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、またはイソボルネオールのエステル);および
R3=CH2=CCH3
IK:
R1=OHまたはO−(C=O)Rb(Rb=C1−C22アルキルまたはC1−C22アルケニル基またはフェニル基);
R2=CH2OHまたはCH2O−(C=O)Rf(Rf=C1−C22アルキルまたはC1−C22アルケニル基またはフェニル基);および
R3=(CH32CRzまたはCH3CHCH2z(Rz=C65-n(OH)nまたはC65-n-m(OH)n(OCH3m、ここでn=0〜5、m=0〜5、n+m≦5)
IL:
R1=OHまたはO−(C=O)Rb(Rb=C1−C22アルキルまたはC1−C22アルケニル基またはフェニル基);
R2=CH2OHまたはCH2O−(C=O)Rf(Rf=C1−C22アルキルまたはC1−C22アルケニル基またはフェニル基);および
R3=H2C=CCH2qまたはCH3CCH2q(Rq=無水コハク酸、コハク酸イミド、またはCH(COORo)CH2COORz、ここでRo=H、Na、K、Ca、Mg、またはC1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基、およびRz=H、Na、K、Ca、Mg、またはC1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基)
【0035】
本発明の新規化合物として、ベツリンの環式炭化水素部分を含有するモノエステルおよびジエステル、ならびにベツリン、ベツロン酸、およびベツリン酸のアミノ酸誘導体およびテルペン誘導体(アントラニル酸、菊酸、オルニチン酸、桂皮酸、レチノール酸、α−テルピネオール、ベルベノール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、およびイソボルネオール誘導体など)、ならびにトリメチルグリシン誘導体が含まれる。そのうえ、本発明の新規化合物には、続いてベツリンの29−オレフィンを反応させて(アルキル化反応またはエン反応など)得られる生成物またはその誘導体(ベツリンスクシナート、フェノール、およびポリフェノール誘導体など)が挙げられる。
【0036】
本発明による好適な新規化合物として、ベツリンの28−C18−アルキレンコハク酸エステル、ベツリンの3,28−C18−アルキレンコハク酸ジエステル、ベツリン28−カルボキシメトキシメントール、ベツリンの28−カルボキシメトキシチモールエステル、ベツリン28−クリサンテメート、ベツリン28−桂皮酸エステル、ベツリン酸L−アスパラギン酸アミド、ベツリン酸L−ヒスチジンアミド、ベツリン酸L−グルタミンアミド、ベツリン酸L−リジンアミド、およびベツロン酸28−アスパラギン酸アミドジメチルエステルが挙げられる。
【0037】
特に好適な新規化合物として、ベツリンの28−C18−アルキレンコハク酸エステル、ベツリンの3,28−C18−アルキレンコハク酸ジエステル、およびベツリン28−カルボキシメトキシメントールが挙げられる。
【0038】
植物病害の防除用、特に摂食忌避用途のための組成物は、本発明の化合物から調製することができる。使用濃度では、この組成物は、活性摂食忌避剤(単数または複数)として、上記のベツリン由来(derined)化合物を1種または複数、0.01〜50ooo、好ましくは0.1〜10ooo含有する。そのうえ、組成物は、当該分野で既知の賦形剤および添加物を含んでもよい。組成物は、処理されるべき領域に、または栽培植物に、植物の葉に有効成分が1〜1000μg/cm2、好ましくは5〜200μg/cm2となる量で使用されて、所望の効果をもたらす。
【0039】
本発明のベツリン由来化合物は、既知の混合プロセスおよび添加物を用いて、水または植物病害を防除する用途で用いられる媒体に乳化、溶解、または混合させてもよい。適した添加物および媒体の例として、界面活性剤、乳化剤、分散剤、溶媒、天然油が挙げられる。この組成物は、随意に加熱しながら調製されて、そのまま使える組成物、または使用前に水または別の希釈剤であらためて希釈する濃縮物となる。適した媒体として、アセトン、エタノールなどのアルコール、植物油、および自然を破壊しない他の物質があげられる。適した植物油として、ナタネ、セイヨウアブラナ、トール(tall)、ヒマワリ、パーム、およびオリーブ油が挙げられる。本発明のベツリン誘導体はまた、必要があれば、乾燥した形で不活性キャリア(カオリンまたはタルクなど)と混合するか、そうした形でたとえば散粉(噴霧)により植物に使用してもよい。
【0040】
本発明に従って、ベツリン由来化合物は、1〜1000μg/cm2、好ましくは5〜200μg/cm2の範囲の量で、随意にキャリアおよび/または媒体と組み合わせて、植物に使用される。このベツリン誘導体は、病害の出現直後、または病害の危険性が予測できる場合に、植物に使用される。代表的には、キャベツについては、キャベツビートルを防除するために子葉の段階で、またはチョウおよびガを防除するために小株の段階で使用され、イチゴについては春にガレルケラ種害虫が出現するとすぐに、またリリオセリス・リリイの場合はユリが成長し始めてすぐおよび夏の間、使用される。カタツムリおよび腹足類により引き起こされる損傷を防ぐ目的では、代表的には、カタツムリの危険性が見られるか雨が予想された直後に、保護しようとする対象に噴霧される。
【0041】
置換基として長鎖アルキルを有するベツリン誘導体は特に、水または殺虫剤用途で一般に用いられる媒体(植物油など)に、優れた乳化性および/または溶解性および/または混和性を有する。
【0042】
本発明による溶液は、複数の利点がある。上記のベツリン由来化合物は、植物病害の防除に非常に有用である。なぜなら、それらは植物および環境に対して無害であり、植物の防御機構に有害な影響を及ぼさないからである。これらの化合物は、非常に生分解性が高く、自然に有害な分解残留物を残さない。また、これらの化合物は、標的の生物にのみきわめて特異的に影響する。標的となる微生物および殺虫剤用途に従って、ベツリンの置換基によって薬剤の選択性および分解速度を制御してもよい。必要ならば、もっとゆっくり分解して分解の間活性ベツリン要素を連続的に放出する化合物を調製して、さらに長い期間一定の効果を達成することもできる。
【0043】
上記の本発明のベツリン誘導体は、以下に示す方法I〜IXにより生成させることができる。
【0044】
方法I
上記のIBまたはIFb型のベツリンエステルは、イミダゾール(imidazol)(1〜7モル、好ましくは3〜5モル)と溶媒の存在下、0〜100℃、好ましくは20〜70℃で、5〜100時間、好ましくは10〜50時間、1molのベツリンを、0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モルの無水マレイン酸C4〜C22アルキルまたはアルケニル誘導体と反応させることにより生成させることができる。無水コハク酸C18アルケニル(ASA)が好ましくは用いられる。N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、酢酸エチル、炭化水素および/または塩化炭化水素、またはそれらの混合物、好ましくはNMPを、溶媒として用いることができる。反応完了後、反応混合物を室温まで放冷し、続いて、たとえば混合物を水に注いでデカントし、溶媒に溶解し、次いで必要であれば生成物を希塩酸および水で洗うことにより、生成物を分離する。溶媒を、たとえば乾固するまでエバポレートすることにより除去して、所望のベツリンエステルを粗生成物として得、これを結晶化、クロマトグラフィー、または好ましくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸エチル、炭化水素および/または塩化炭化水素、またはそれらの混合物を溶媒として用いて抽出により精製することができる。構造IFbに相当するエステルは、過剰の無水物を用いた場合(1.6〜5モル、好ましくは2〜2.5モル)に主生成物として得られるが、1〜1.2モル無水物を用いた場合は構造IBに相当するエステルが得られる。
【0045】
方法II
上記のIA、IC、ID、IE、IFa、Ifc、IFd、およびIFe型の構造を有するベツリンエステルは、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.01〜1mol)とジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)、またはN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)と溶媒の存在下、ベツリン(1mol)とカルボン酸(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)を、0〜60℃、好ましくは20〜40℃で2〜50時間、好ましくは5〜25時間、撹拌することにより、生成させることができる。カルボン酸は、それぞれの化合物の型について以下のように選択される:IA:HO(C=O)Ri(Ri=C11−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基);IC:オルニチン、ニコチン、およびN−アセチルアントラニル酸またはトリメチルグリシン;ID:HO(C=O)CRx(NHRy)(Rx=アルキル、ヘテロアルキル、またはアリールアルキル基;Ry=Hまたはアシル基);およびIE:ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのカルボキシメトキシ誘導体;または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)。NMP、DMF、DMSO、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、酢酸エチル、炭化水素および/または塩化炭化水素、またはそれらの混合物、好ましくはジクロロメタンを、溶媒として用いることができる。反応完了後、反応混合物を水に注ぎ、有機層を分離し、続いて溶媒を、たとえば乾固するまでエバポレートすることにより除去して、ベツリンエステルを粗生成物として得、これは必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製することができる。0.8〜1.5モルのカルボン酸試薬を使用すると構造IA、IC、ID、IE、またはIFdを有する化合物が得られるが、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.6〜3モル、好ましくは2〜2.5モル)とともに、またはN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(1.6〜3モル、好ましくは2〜2.5モル)とともに、カルボン酸試薬を過剰(1.6〜3モル、好ましくは2〜2.5モル)に用いると構造IFa、IFc、IFd、またはIFeに相当する化合物が得られる。IEまたはIFe型の化合物を生成させるには、方法Vに従って、出発物質として用いられるアルコールの酢酸誘導体を最初に生成させる。
【0046】
方法III
上記のIA、IC、IE、IFa、IFc、およびIFd型の構造を有するベツリンエステルは、オルトチタン酸テトライソプロピル、オルトチタン酸テトラブチル、p−トルエンスルホン酸一水和物、またはピリジン−p−トルエンスルホン酸触媒(0.01〜1mol)、または硫酸もしくは塩酸(1〜6%、好ましくは2〜4%)、および溶媒の存在下、ベツリン(1mol)をカルボン酸(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)と、80〜160℃、好ましくは100〜140で2〜50時間、好ましくは4〜25時間、撹拌することにより、生成させることができる。カルボン酸は、それぞれの化合物の型について以下のように選択される:IA:HO(C=O)Ri(Ri=C11−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基);IC:オルニチン、ニコチン、N−アセチルアントラニル酸またはトリメチルグリシン;IE:ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのカルボキシメトキシ誘導体;または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)。炭化水素および/または塩化炭化水素、NMP、DMF、DMSO、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、酢酸エチル、またはそれらの混合物、好ましくはトルエンまたはキシレンを、溶媒として用いることができる。反応で生じた水は、水分離管または減圧を用いることで分離される。反応完了後、反応混合物を水に注ぎ、有機層を分離し、必要があれば塩基性水溶液、好ましくはNaHCO3またはNa2CO3水溶液で洗い、続いて溶媒を、たとえば乾固するまでエバポレートすることにより除去して、ベツリンエステルを粗生成物として得、これは必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製することができる。0.8〜1.5モルのカルボン酸試薬を使用すると構造IA、IC、またはIEを有する化合物が得られるが、カルボン酸試薬を過剰(1.6〜3モル、好ましくは2〜2.5モル)に用いると構造IFa、IFc、またはIFeに相当する化合物が得られる。IEまたはIFe型の化合物を生成させるには、方法Vに従って、出発物質として用いられるアルコールの酢酸誘導体を最初に生成させる。
【0047】
方法IV
上記のIA、IC、ID、IE、IFa、Ifc、IFd、およびIFe型の構造を有するエステルは、ベツリン(1mol)とカルボン酸(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)から、溶媒なしまたは溶媒の存在下、0〜80℃、好ましくは20〜50℃で、2〜50時間、好ましくは5〜25時間撹拌して、最初に塩化オキサリルまたは塩化チオニル(1〜10モル、好ましくは1〜4モル)と反応させて生成させることができる。カルボン酸は、それぞれの化合物の型について以下のように選択される:IA:HO(C=O)Ri(Ri=C11−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基;IC:オルニチン、ニコチン、N−アセチルアントラニル酸、またはトリメチルグリシン;ID:HO(C=O)CRx(NHRy)(Rx=アルキル、ヘテロアルキル、またはアリールアルキル基;Ry=Hまたはアシル基);およびIE:ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのカルボキシメトキシ誘導体;または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)。炭化水素および/または塩化炭化水素、NMP、DMF、DMSO、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、酢酸エチル、またはそれらの混合物、好ましくはジクロロメタンを、溶媒として用いることができる。反応完了後、溶媒を、たとえば乾固するまでエバポレートすることにより除去し、必要があれば、所望の酸クロリドを、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製する。こうして得られた酸クロリド(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)を、溶媒の存在下、またはDMAP触媒(0.001〜1mol)、ピリジン、および溶媒の存在下、ベツリン(1mol)、塩基(0.5〜10モル、好ましくは1〜5モル)(トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど、好ましくはトリエチルアミン)と、または塩基(0.5〜10モル、好ましくは1〜5モル)(トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど、好ましくはトリエチルアミン)、およびピリジンと、0〜80℃、好ましくは20〜50℃で2〜50時間、好ましくは5〜25時間撹拌することで、反応させる。炭化水素および/または塩化炭化水素、NMP、DMF、DMSO、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、酢酸エチル、またはそれらの混合物、好ましくはジクロロメタンを、溶媒として用いることができる。反応完了後、ベツリンアミドまたはベツリンエステル生成物は、必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製する。0.8〜1.5モルの酸クロリド試薬を使用すると構造IA、IC、ID、またはIEを有する化合物が得られるが、酸クロリド試薬を過剰(1.6〜3モル、好ましくは2〜2.5モル)に用いると構造IFa、IFc、IFd、またはIFeに相当する化合物が得られる。IEまたはIFe型の化合物を生成させるには、方法Vに従って、出発物質として用いられるアルコールの酢酸誘導体を最初に生成させる。
【0048】
方法V
方法II、III、またはIVによるIEおよびIFe型の構造を有するベツリン誘導体および方法IVによるIIaおよびIIb型の構造を有するベツリン誘導体の生成のために、以下のように、アルコールの酢酸誘導体を最初に生成させる。酢酸誘導体は、アルコール(1mol)とクロロ酢酸(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)を、リチウム、カリウム、ナトリウム、またはそのヒドリドもしくはヒドロキシド(1.5〜3モル、好ましくは1.8〜2.2モル)、好ましくはナトリウム(Na)、水素化ナトリウム(NaH)、または水酸化ナトリウム(NaOH)の存在下、水中で、1〜7時間、好ましくは3〜5時間、100〜150℃、好ましくは120〜130℃で混合することにより生成させる。アルコールは、ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、およびイソボルネオールからなる群より選択される。混合物を室温まで放冷し、濃塩酸で酸性にして、溶媒で抽出する。炭化水素および/または塩化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸エチル、またはそれらの混合物、好ましくはジエチルエーテルを、溶媒として用いることができる。必要があれば、有機相を塩基性水溶液、好ましくはNaHCO3またはNa2CO3水溶液で洗う。溶媒を、たとえば乾固するまでエバポレートすることにより除去してカルボキシメトキシ中間体を得、これは必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製する。
【0049】
方法VI
上記のIG、IH、II、およびIJ型の誘導体は、ベツロン酸(1mol)と、天然のアルコール(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)またはアミノ酸(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)を、溶媒およびDMAP(0.001〜1モル)およびDCC(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)、またはEDC(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)の存在下、0〜60℃、好ましくは20〜50℃で2〜50時間、好ましくは5〜25時間撹拌することにより生成させることができる。それぞれの化合物型について、アルコールは以下のように選択される:IH:ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、またはイソボルネオール。それぞれの化合物型について、アミノ酸は以下のように選択される:IG:HO(C=O)Rt(Rt=NHCHRxCOOY、ここでY=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRx、ここでRx=H、C1−C4アルキル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、−CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、3−インドリルメチル、またはCH3SCH2基);好ましくはアスパラギン酸ジメチルエステル塩酸塩、L−ヒスチジンメチルエステル塩酸塩、L−グルタミン酸(glutaminic acid)ジメチルエステル塩酸塩、またはL−リジンメチルエステル二塩酸塩。炭化水素および/または塩化炭化水素、NMP、DMF、DMSO、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、酢酸エチル、またはそれらの混合物、好ましくはジクロロメタンを、溶媒として用いることができる。反応完了後、所望のベツロン酸アミドまたはエステル生成物(IJaまたはIJb型のもの)は、必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製することができる。こうして得られたベツロン酸アミドまたはエステルは、所望であれば、米国特許第6280778号明細書に従って、水素化ホウ素ナトリウムを用いて、対応するベツリン酸アミドまたはエステル生成物(IGまたはIH型のもの)に還元することができる。反応完了後、このベツリン酸アミドまたはエステルは、必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製することができる。IIaおよびIIb型のベツリン誘導体は、こうして得られたベツリン酸アミドまたはエステルを方法II、III、またはIVに記載されるように反応させることで得られる。
【0050】
方法VII
上記のIG、IH、II、およびIJ型の構造を有する化合物は、ベツロン酸(1mol)を、塩化オキサリルまたは塩化チオニル(1〜10モル、好ましくは1〜4モル)と、溶媒なし、または溶媒の存在下、0〜80℃、好ましくは20〜50℃、2〜50時間、好ましくは5〜25時間、振盪させて反応させることにより生成させることができる。炭化水素および/または塩化炭化水素、NMP、DMF、DMSO、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、酢酸エチル、またはそれらの混合物、好ましくはジクロロメタンを、溶媒として用いることができる。反応完了後、所望の酸クロリドは、必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製することができる。反応からこうして得られたベツロン酸クロリド(1mol)を、アミノ酸(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)またはアルコール(0.8〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル)と、溶媒の存在下、またはDMAP触媒(0.001〜1mol)、ピリジン、および溶媒の存在下、塩基(トリエチルアミン、トリプロピルアミドジイソプロピルエチルアミン、ピリジンなど、好ましくはトリエチルアミン)を用いて、または塩基(0.5〜10モル、好ましくは1〜5モル)(トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど、好ましくはトリエチルアミン)およびピリジンを用いて、0〜80℃、好ましくは20〜50℃で、2〜50時間、好ましくは5〜25時間撹拌することにより反応させる。それぞれの化合物型について、アミノ酸は以下のように選択される:IG:HO(C=O)Rt(Rt=NHCHRxCOOY、ここでY=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRx、ここでRx=H、C1−C4アルキル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、−CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、3−インドリルメチル、またはCH3SCH2基);好ましくはアスパラギン酸ジメチルエステル塩酸塩、L−ヒスチジンメチルエステル塩酸塩、L−グルタミン酸(glutaminic acid)ジメチルエステル塩酸塩、およびL−リジンメチルエステル二塩酸塩。それぞれの化合物型について、アルコールは以下のように選択される:IH:ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオール、またはオイゲノール。炭化水素および/または塩化炭化水素、NMP、DMF、DMSO、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、酢酸エチル、またはそれらの混合物、好ましくはジクロロメタンを、溶媒として用いることができる。反応完了後、反応混合物を希塩酸および水で洗う。溶媒を乾固するまでエバポレートし、反応生成物(IJaまたはIJb型のもの)を必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製する。こうして得られたベツロン酸アミドまたはエステル生成物は、米国特許第6280778号明細書に従って、水素化ホウ素ナトリウムを用いて、対応するベツリン酸アミドまたはエステル生成物(IGまたはIH型のもの)に還元することができる。反応完了後、所望のベツリン酸アミドまたはエステルを、必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製する。II型のベツリン誘導体は、こうして得られたベツリン酸アミドまたはエステルを方法II、III、またはIVに記載されるように反応させることで得られる。
【0051】
方法VIII
上記のIK型の構造を有する化合物は、高分子酸触媒、好ましくはポリスチレンのスルホン酸誘導体(0.1〜1.5g、好ましくは0.5〜1g、16〜50メッシュ)および溶媒の存在下、ベツリン(1mol)とIK基のフェノール残基としてRz=C65-n(OH)nまたはC65-n-m(OH)n(OCH3mここでn=0〜5、m=0〜5、n+m≦5(4〜20モル)を有するように選択された芳香族化合物から生成することができる。反応混合物を、不活性雰囲気下、20〜120℃、好ましくは75〜110℃で、1〜5時間、好ましくは2〜4時間、撹拌する。反応で生じた水は、水分離管または減圧で適切に分離される。炭化水素および/または塩化炭化水素、NMP、DMF、DMSO、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、酢酸エチル、またはそれらの混合物、好ましくは炭化水素および/または塩化炭化水素またはエーテルを、溶媒として用いることができる。反応完了後、混合物を室温まで放冷し、ろ過し、ろ液を水で洗い、乾燥させ、そして溶媒を分離する。こうして得られたベツリン誘導体を、必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製する。
【0052】
方法IX
上記のIL型の構造を有する化合物は、方法II、III、またはIVで記載されるように調製したIAまたはIFa型の構造を有する化合物と、無水マレイン酸(0.8〜10モル、好ましくは1〜5モル)から、ハイドロキノン(0.05〜0.5モル、好ましくは0.08〜0.3モル)および溶媒の存在下、または反応混合物を150〜220℃、好ましくは160〜180℃に加熱して、1〜5時間、好ましくは2〜4時間、溶融させて、生成させることができる。炭化水素および/または塩化炭化水素、NMP、DMF、DMSO、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、酢酸エチル、またはそれらの混合物を溶媒として用いることができるが、好ましくは溶融させる。反応完了後、所望の生成物を、必要があれば、結晶化、クロマトグラフィー、または抽出、好ましくは抽出により、精製する。得られたベツリンの無水マレイン酸誘導体は、既知の方法で、IL型の構造を有するイミドまたはエステル化合物にさらに変換することができる。
【0053】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、その範囲は制限されない。
【実施例】
【0054】
実施例1
ベツリン28−C18アルキレンコハク酸エステルの調製
【化5】

イミダゾール(38.8mmol)とC18アルキレンコハク酸無水物(ASA)4(11.6mmol)をNMP(25ml)中で撹拌した。ベツリン1(9.7mmol)を加え、室温で3日間さらに撹拌した。有機相を水に注ぎ、デカントし、ジクロロメタンに溶解させ、洗った。溶媒をエバポレートして、ベツリン28−C18アルキレンコハク酸エステル5を得た(収率73%)。
【0055】
実施例2
ベツリン3,28−C18アルキレンコハク酸ジエステルの調製
【化6】

イミダゾール(54.2mmol)とC18アルキレンコハク酸無水物(ASA)4(32.5mmol)をNMP(30ml)中で撹拌した。ベツリン1(13.5mmol)を加え、混合物を室温で3日間さらに撹拌した。有機相を水に注ぎ、デカントし、ジクロロメタンに溶解させ、洗った。溶媒をエバポレートして、ベツリン3,28−C18アルキレンコハク酸ジエステル6を収率40%で得た。
【0056】
実施例3
ベツリン28−カルボキシメトキシメントールエステルの調製
【化7】

ベツリン1(11.7mmol)とメトキシ酢酸7(11.7mmol)をフラスコに計量し、続いてトルエン(120ml)を加えた。混合物を120℃に加熱して、チタン酸イソプロピル(1.4mmol)を加えた。水が水分離管に分離されるまで、反応混合物を3時間還流した。混合物を室温まで冷却して、形成した沈殿をろ過した。有機相を洗い、溶媒をエバポレートして、ベツリン28−カルボキシメトキシメントールエステル8を収率60%で得た。
【0057】
実施例4
ベツリン28−カルボキシメトキシカルバクロールエステルの調製
【化8】

NaOHの粒(66.6mmol)を水に溶解させて、カルバクロール9(33.3mmol)、クロロ酢酸10(33.3mmol)、および水(50ml)の混合物に加えた。混合物を120℃で3時間還流した。混合物を室温まで冷却して、塩酸で酸性にした。粗生成物をジエチルエーテルで抽出して水で洗った。溶媒をエバポレートして、カルバクロールオキシ酢酸11を得た(収率83%)。粗生成物をジエチルエーテルに溶解し、続いて水とNaHCO3溶液で抽出して精製した。水相を溜め、塩酸で酸性にしてジエチルエーテルで抽出した。エーテル相を乾燥させ、続いて乾固するまで溶媒をエバポレートして、カルバクロール酢酸11を得た、(収率45%)。ベツリン1(7.2mmol)とカルバクロールオキシ酢酸11(7.2mmol)をフラスコに計量し、トルエン(80ml)を加えた。浴を160℃に加熱してチタン酸イソプロピル(1.4mmol)を加えた。全ての水が水分離管に分離されるまで、反応混合物を6時間還流した。混合物を室温まで冷却して、形成した沈殿をろ過した。有機相をNaHCO3溶液で洗い、溶媒をエバポレートした。粗生成物を、シクロヘキサンとトルエンの沸騰溶液から再結晶した。溶媒を乾固するまでエバポレートして、ベツリン28−カルボキシメトキシカルバクロールエステル12を単離した(収率55%)。
【0058】
実施例5
ベツリン28−桂皮アルコール酢酸エステルの調製
【化9】

水素化ナトリウム(8.2mmol)とテトラヒドロフランの混合物に、桂皮アルコール13(7.5mmol)を加え、撹拌を1時間続けた。クロロ酢酸メチル(7.5mmol)を反応フラスコに加え、撹拌を24時間続けた。反応完了後、反応混合物をジエチルエーテルで希釈して、有機相を水で洗い、乾燥させた。溶媒を乾固するまでエバポレートし、沈殿をメタノールとテトラヒドロフランの溶液に溶解させた。水酸化ナトリウム溶液(10.9mmol)を加え、反応混合物を4時間還流させた。溶媒をエバポレートした。水をフラスコに加え、塩酸で酸性にして、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を水で洗い、溶媒をエバポレートして、桂皮酸15を得た(収率23%)。ベツリン1(0.9mmol)と桂皮酸15(0.9mmol)をフラスコに計量し、トルエン(40ml)を溶媒として加えた。浴を160℃に加熱してチタン酸イソプロピル(0.2mmol)を反応混合物に加えた。全ての水が水分離管に分離されるまで、反応混合物を4.5時間還流した。混合物を室温まで冷却して、形成した沈殿をろ過した。有機相をNaHCO3溶液で洗い、溶媒をエバポレートした。粗生成物を、シクロヘキサンとトルエンの沸騰溶液から再結晶した。混合物を冷却してから、結晶化した沈殿をろ過した。溶媒を乾固するまでエバポレートして、ベツリン28−桂皮アルコール酢酸エステル16を収率14%で単離した。
【0059】
実施例6
ベツロン酸28−オイゲノールエステルの調製
【化10】

ベツロン酸クロリド17(1.4mmol)(実施例12に記載のとおりに調製)、オイゲノール18(1.1mmol)、DMAP(1.1mmol)、およびピリジンの混合物を、40℃で48時間加熱した。反応完了後、反応混合物をトルエンで希釈し、希塩酸および水で洗い、それから硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒をエバポレートして、ベツロン酸28−オイゲノールエステル19を収率81%で得た。
【0060】
実施例7
ベツリン28−カルボキシメトキシチモールエステルの調製
【化11】

NaOHの粒(66.6mmol)を水に溶解させて、チモール20(33.3mmol)、クロロ酢酸21(33.3mmol)、および水の混合物に加えた。混合物を120℃で3時間還流した。混合物を室温まで冷却し、酸性にし、ジエチルエーテルで抽出して洗った。溶媒をエバポレートして、沈殿したチモール酢酸22を収率29%で得た。ベツリン1(7.2mmol)、チモール酢酸22(7.2mmol)、およびトルエン(80ml)を160℃に加熱し、続いてチタン酸イソプロピル(1.4mmol)を反応混合物に加えた。全ての水が水分離管に分離されるまで、反応混合物を4.5時間還流した。混合物を室温まで冷却して、形成した沈殿をろ過した。有機相を洗い、溶媒をエバポレートした。粗生成物を、シクロヘキサンとトルエン(3.5:1)の沸騰溶液から再結晶して、ベツリン28−カルボキシメトキシチモールエステル23を収率61%で単離した。
【0061】
実施例8
ベツリン28−クリサンテメートの調製
【化12】

不活性雰囲気下、菊酸エチル24(23.3mmol)をTHF/MeOH溶液(1:2)に混ぜた。2MのNaOH溶液(93ml)を混合物にゆっくりと加え、それからTLC(ヘキサン:酢酸エチル6:1、5容量%の酢酸)で確認して出発物質が存在しなくなるまで、反応混合物を80℃で4時間加熱した。溶媒をエバポレートして、得られた粗生成物を水(400ml)に溶解し、ジエチルエーテルで抽出した。水相を塩酸で酸性にし、ジエチルエーテルで希釈した。エーテル相を洗い、溶媒を減圧エバポレートして菊酸25を収率90%で得た。
【0062】
不活性雰囲気下、室温で、無水ジクロロメタン(30ml)中、菊酸25(5.9mmol)に塩化オキサリル(11.8mmol)を加えた。6時間後、溶媒をエバポレートして、エバポレーション残渣を乾燥ジクロロメタンにとり、これを再びエバポレートした。この手順を3回繰り返して、菊酸クロリド26を収率81%で得た。
【0063】
不活性雰囲気下、ベツリン1(0.9mmol)、菊酸クロリド26(1.1mmol)、およびDMAP(0.9mmol)を、ピリジン中40℃で48時間撹拌した。EtOAc(100ml)を加え、有機相を水で洗い、溶媒をエバポレートして、残渣をシクロヘキサンで再結晶した。ベツリン28−クリサンテメート27を収率63%で得た。
【0064】
実施例9
ベツリン28−桂皮酸エステルの調製
【化13】

アルゴン雰囲気下、桂皮酸28(18.06mmol)と塩化チオニル(180.6mmol)を、40℃で24時間混合した。溶媒を減圧エバポレートし、続いてエバポレーション残渣をジクロロメタンに溶解し、溶解2回とエバポレーションを行って、桂皮酸クロリド29を収率99%で得た。
【0065】
不活性アルゴン雰囲気下、ベツリン1(5.4mmol)と桂皮酸クロリド29(5.6mmol)を、乾燥ピリジン(80ml)中、DMAP(5.6mmol)の存在下、40℃で24時間撹拌した。トルエン(100ml)を加え、有機相を洗った。溶媒をエバポレートし、続いて粗生成物をシクロヘキサン/トルエン混合物(5:1)での再結晶および抽出により精製した。ベツリン28−桂皮酸エステル30を収率67%で得た。
【0066】
実施例10
ベツリン脂肪酸エステルの調製
ベツリン1(5mmol)と脂肪酸(5mmol)を、水分離管を備えたフラスコに計量した。トルエンと、触媒量のチタン酸イソプロピルまたはp−トルエンスルホン酸一水和物を加え、続いて、反応混合物を、油浴中で約5時間還流させた。反応混合物を室温まで放冷し、有機層を炭酸水素ナトリウム溶液で洗い、分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、それから溶媒を乾固するまでエバポレートした。得られた粗生成物の、ベツリンモノエステルを、必要であれば、クロマトグラフィーで精製した。脂肪酸2当量とベツリン1当量を用いた場合、表1に示すようにベツリンジエステルも生成物として得られた。表1は、脂肪酸を用いたベツリンのエステル化反応の収率、およびエステル化の度合いを示す。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例11
ベツリン28−アミド誘導体の調製
【化14】

米国特許第6280778号明細書に従って、ベツリン1を酸化してベツリン酸3を調製した。ベツリン酸3(5mmol)とアミノ酸メチルエステル塩酸塩31(5mmol)をフラスコに計量し、ジクロロメタンに溶解させた。フラスコをアルゴンでパージして、ジクロロメタン(5mmol)とDMAP(2.5mmol)を加え、20時間撹拌し続けた。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして溶媒を乾固するまでエバポレートした。ベツリン酸アミド32粗生成物は、必要であれば、クロマトグラフィーで精製することができる。反応条件および生成物の粗収率を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
実施例12
ベツロン酸28−アスパラギン酸アミドジメチルエステルの調製
【化15】

不活性雰囲気下、ベツロン酸2(8.8mmol)をジクロロメタンに溶解し、続いて塩化オキサリル(18.6mmol)をこの溶液に加えた。反応混合物を室温で20時間撹拌した。反応完了後、溶媒を乾固するまでエバポレートして残渣を再びジクロロメタンに溶解し、これをもう一度乾固するまでエバポレートした。得られた粗生成物をジエチルエーテルで洗った。ベツロン酸クロリド33の収率は7.5mmol(85%)であった。ベツロン酸クロリド33(4.2mmol)とL−アスパラギン酸ジメチルエステル塩酸塩34(5.5mmol)をジクロロメタンに溶解し、トリエチルアミン(11mmol)を加えた。反応混合物を室温で20時間撹拌した。反応混合物を希塩酸、水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を乾固するまでエバポレートし、必要があれば、続いてクロマトグラフィーで粗生成物を生成した。ベツロン酸28−アスパラギン酸アミドジメチルエステル35の収率は1.8mmol(43%)であった。
【0071】
実施例13
ベツリン28−N−アセチルアントラニル酸エステルの調製
【化16】

N−アセチルアントラニル酸36(25.0mmol)と塩化オキサリル(250mmol)の混合物を40℃で16時間混合した。反応混合物を乾固するまでエバポレートして過剰な塩化オキサリルを除去した。残渣を2回、ジクロロメタンに溶解してこれを乾固するまでエバポレートした。こうしてN−アセチルアントラニル酸クロリド37を定量的に得た。ベツリン1(11.29mmol)、DMAP(11.29mmol)、N−アセチルアントラニル酸クロリド37、およびピリジン(80ml)の混合物を、40℃で24時間撹拌した。反応完了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、希塩酸および水で洗い、そして硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒をエバポレートし、続いてクロマトグラフィーにより粗生成物を精製して、ベツリン28−N−アセチルアントラニル酸エステル38を収率25%で得た。
【0072】
実施例14
ベツリン28−ニコチン酸エステルの調製(比較用)
【化17】

ニコチン酸39(25.0mmol)と塩化チオニル(250mmol)の混合物を40℃で24時間混合した。反応混合物を乾固するまでエバポレートして過剰な塩化チオニルを除去した。残渣を2回、ジクロロメタンに溶解して乾固するまでエバポレートした。ニコチン酸クロリド40を得た。ベツリン1(2.26mmol)、DMAP(2.26mmol)、ニコチン酸クロリド40(2.71mmol)、およびピリジン(10ml)の混合物を、40℃で24時間撹拌した。反応完了後、混合物を酢酸エチルで希釈し、希塩酸、水で洗い、そして硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒をエバポレートし、続いてシクロヘキサンでの再結晶により粗生成物を精製して、ベツリン28−ニコチン酸エステル41を収率88%で得た。
【0073】
実施例15
ベツリン3,28−ジアセトキシ−19,20−エン−29−コハク酸無水物の調製
【化18】

a)無水酢酸(19.2ml、203mmol)を、ベツリン1(15.0g、33.88mmol)、DMAP(0.41g、3.39mmol)、ピリジン(25ml、309mmol)、およびジクロロメタン(150ml)の混合物に加える。反応混合物を、室温で17時間撹拌した。有機相を、10%塩酸溶液(200ml)、飽和NaHCO3溶液(400ml)、水(100ml)で洗い、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を減圧でエバポレートして、3,28−ジアセトキシベツリン42を収率97%で得た。
【0074】
b)3,28−ジアセトキシベツリン42(4.57g、8.68mmol)とハイドロキノン(96mg、0.87mmol)の混合物を、200℃に加熱し、続いて、コハク酸無水物(2.50g、25.02mmol)を2時間の間に反応フラスコに加えた。反応完了後、粗生成物、ベツリン3,28−ジアセトキシ−19,20−エン−29−コハク酸無水物43を収率100%(5.41g、8,65mmol)で得た。
【0075】
実施例16
ベツリン3,28−ジベタインエステルの調製
【化19】

ベツリン1(7.0g、16mmol)とベタイン68(3.8g、32mmol)を、加熱しながらトルエン(150ml)に溶解した。その後、チタン酸イソプロピル(Ti(OCHMe24)触媒(0.85g、3mmol)を加え、混合物を3時間還流した。固体の最終生成物をろ過して分離した。テトラヒドロフランを加えて副生成物を除去し、ろ過を繰り返した。最終生成物69(ベツリン3,28−ジベタインエステル)の収率は2.7g(4.1mmol、26%)であった。
【0076】
実施例17
フィロトレタ属種の甲虫についてのベツリン由来化合物の摂食忌避活性
ベツリン3,28−O−イソステアリン酸ジエステル(実施例10に記載のとおり調製)、3,28−ジアセトキシベツリン(実施例15aに記載のとおり調製)、およびベツリンを用いて、フィロトレタ属種のナタネハムシについての摂食忌避活性を試験した。試験化合物を2mlのナタネ油に溶解して、子葉の段階のナタネ苗に100μg/cm2の量で噴射した。このように処理した植物を虫かごに入れ、続いて24時間後に甲虫を導入した。試験では、1かごあたり20匹の甲虫を用い、各かごには苗の乗ったペトリ皿3枚(1枚は対照皿で、2枚は異なる試験皿)が入っており、かごの数(=平行試験)は5であった。純粋なナタネ油を対照として用いた。甲虫はどの植物にも自由に近づけるようにし、1週間後、試験を終了して、植物を観察するとともに、甲虫による食害を評価した。
【0077】
被害を受けた葉の枚数と被害の程度を評価した(食われた葉表面積%、嗜好評価)。ベツリン3,28−O−イソステアリン酸ジエステルおよびベツリンはともに、対照試料ほど複雑ではなく、図1に示す図表および以下の表3の嗜好試験(ナタネ油=100%)からわかるように、甲虫の摂食を効率的に阻害した。
【0078】
ベツリン20,29−エポキシ−3β,28−ジ酢酸エステルを、J. Arg. Food Chem. 1995, 43, 2513-2516に記載されるとおり調製して、対照化合物として用いた。
【0079】
【表3】

【0080】
実施例18
モンシロチョウ(マメストラ・ブラッシカエ)についてのベツリン由来化合物の摂食忌避活性
モンシロチョウ(マメストラ・ブラッシカエ)の幼虫について摂食忌避活性を、ベツリン由来化合物6種で試験した。キャベツの葉から切り取った直径5cmのディスクをペトリ皿に置き、100μg/cm2の量の試験薬剤で処理した。各皿に1匹の小さな幼虫を導入した。各薬剤は、10の平行試験で試験した。キャベツの葉の質量を、皿に載せたまま、処理の0、21、43、および73時間後に測定し、幼虫に食べられた葉の質量を、対照に基づいてパーセントで計算した。
【0081】
図2は、幼虫に食べられた葉の質量対対照を図示する。ベツリン酸(一番低い曲線)およびベツリン28−C18−アルキレンコハク酸エステル(真ん中の曲線)は、明らかに、モンシロチョウ(マメストラ・ブラッシカエ)の幼虫に摂食忌避活性を有する。選択試験では活性がより明確になるかもしれない(ここでは非選択試験)。
【0082】
図3は、幼虫の体重の増加(12mgから19mgへ)を示す。小さな幼虫の体重の増加は、特にベツリン酸を用いた処理が最終的には幼虫の駆除をもたらすことを示唆している:7時間後の体重が初期体重よりも低かった。
【0083】
幼虫に食べられた葉の質量対対照を表4に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
実施例19
カタツムリの摂食行動におけるベツリン誘導体の効果
野外で採取された長さ約2cmのカタツムリ、デロセラス・アグレステ(陸カタツムリ)とデロセラス・レチクラツム(偽陸カタツムリ)を、この摂食忌避試験に用いた。餌用植物としてキャベツとレタスの葉を直径4cmのディスク状に切り、ペトリ皿に置いた。それぞれの葉のディスクの半分を試験物質で処理し、残り半分は対照とした。カタツムリ1種を各皿に置き、カタツムリが葉を食べた試験のみ評価した。結果は試験開始の36時間後に記録した。アセトンを対照として用い、ベツリン、ベツリン酸、ベツロン酸、およびベツリン28−カルボキシメトキシメントールエステルはアセトンに溶解させて試験物質とした。研究する葉は、用いた試験物質で100μg/cm2の量で処理した。この試験結果を以下の表5に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
実施例20
ストロベリービートル(ガレルケラ・テネラ(Galerucella tenella))に対するベツリン由来化合物の摂食忌避活性
ベツリンおよびベツロン酸の食阻害活性を、植物の葉を用いて、ストロベリービートル(ガレルケラ・テネラ)の成虫および幼虫で試験した。試験物質をエタノールに溶解し、植物の葉を処理して、試験物質の濃度が約100μg/cm2になるようにした。実験は、半分を試験物質で処理し残り半分はエタノールのみで処理したストロベリーの葉を載せたペトリ皿で、選択試験として行った。2匹(オスおよびメス)のストロベリービートル(ガレルケラ・テネラ)成虫または2匹の幼虫をディスクに置いた。昆虫により食べられた穴の数を4日間毎日計数した;同時に、成虫が産んだ卵の数を計数した。成虫および幼虫の両方で10回試験を行った。ストロベリービートル(ガレルケラ・テネラ)での嗜好試験および産卵防止試験の結果を以下の表6に示す。成虫の摂食防止は、ベツロン酸でのみ試験したが、ベツロン酸は明らかに摂食を防止した(約41%);しかし、処理は葉への産卵を非常に強力に防止した(90%超)。ベツリン(78%)およびベツロン酸(82%)もともに顕著に幼虫の摂食を防止した。
【0088】
【表6】

【0089】
実施例21
リリービートル(リリオセリス・リリイ)に対するベツリン由来化合物の摂食忌避活性
ベツリンおよびベツロン酸の食阻害活性を、ブラウンリリー植物の葉を用いて、リリービートル(リリオセリス・リリイ)の成虫および幼虫で試験した。試験物質をエタノールに溶解し、植物の葉を処理して、試験物質の濃度が約100μg/cm2になるようにした。実験は、ブラウンリリー植物から切り取った葉を2枚載せたペトリ皿で、選択試験として行った。一枚は試験物質で処理し、もう一枚はエタノールのみで処理した。2匹(オスおよびメス)のリリービートル(リリオセリス・リリイ)成虫をディスクに置いた。昆虫が食べた葉の質量を、葉を計量して4日間毎日計測した。同時に、成虫が産んだ卵の数を計数した。10回平行試験を行った。幼虫での試験は非選択試験で、処理または未処理の葉のいずれかとビートル幼虫1匹を各ディスクに置いた。7回平行試験を行った。リリービートル(リリオセリス・リリイ)の成虫および幼虫での嗜好試験および産卵防止試験の結果を以下の表7に示す。ベツロン酸はリリービートル成虫の摂食を明らかに防止した(約78%)。ベツリンは、それより程度は低いが摂食を減らした(約47%)。ベツロン酸は、非常に効率的に成虫の葉への産卵を減らした(90%超)。ベツロン酸は、効率的に幼虫の摂食を減らしたが(92%)、ベツリンではこれは観測されなかった。非選択状況では、幼虫はベツロン酸処理した葉で死んでしまったが、他の試験処理では幼虫は普通に成長した。
【0090】
【表7】

【0091】
実施例22
ベツリン由来化合物の細胞毒性試験
Caco−2細胞(ヒト腸モデルとして用いられる細胞株)を、96ウェルプレートに、ウェルあたり35000個(LDH法用)、45000個(WST−1法用)、または25000個(ATP法用)の細胞数で導入した。24時間増殖後、試験化合物を培養培地に添加して濃度を500mM(DMSO貯蔵溶液として)にすることにより、細胞を化合物に24時間さらした。
【0092】
細胞の生存数における化合物の影響を、異なる3種の方法で測定した。ポリミキシンBを対照として用いた。乳酸脱水素酵素(LDH)は、細胞で見出される酵素であり、したがって、細胞外にその量が増えるのは細胞膜が損傷したためである。曝露による試料中のLDHの量を、INT(ヨードニトロテトラゾリウム)着色試薬を用いて酵素反応により定量した。ここで、着色した反応生成物は490nmで測光して求めた。WST−1法では、曝露後の細胞の代謝活性をWST−1試薬を用いて測定した。細胞の代謝活性は、試薬から着色した生成物を生じさせ、この生成物が光度測定(440nmでの吸光)による細胞の生存数の評価に用いられる。ATP法では、細胞の損傷により急速に減少する細胞内ATP量を測定した。この方法では、ATP依存ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応により発光測定でATPを定量した。
【0093】
添付の図4は、24時間曝露後のCaco−2細胞の生存数(%)における影響を、細胞生存数を求める3種の方法(LDH、WSR−1、およびATP法)により測定したものを示す。限界値すなわち80%の生存数を越えた化合物は、in vitroで細胞の生存数に有意な負の効果を有さないと判断される。表8の化合物が試験に用いられた。
【0094】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨトウガ亜科(Hadeninae)に属するガ(ヤガ科(Noctuidae))、日中活動するチョウ類(チョウ目(Rhopalocera))、および小さいチョウ類の亜科(小鱗翅目(Microlepidoptera))からなる群より選択されるチョウ(鱗翅目(Lepidoptera))用、ハムシ類(ハムシ科(Chrysomelidae))に属する、ノミハムシ亜科(Alticinae)、ヒゲナガハムシ亜科(Galerucinae)およびクビボソハムシ亜科(Criocerinae)から選択される甲虫(鞘翅目(Coleoptera))用、ならびに腹足類(腹足綱(Gastropoda))用の摂食忌避剤としての、一般式I:
【化1】

式I中、
R1=−OH;−ORa(Raは、C1−C12の、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素残基を表す);オキソ(=O);−O(C=O)Rb(Rbは、C1−C22の、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素残基を表す);またはカルボキシメチル、カルボキシメチルエステル、またはカルボキシメチルアミド誘導体;
R2=−CH2ORc(Rcは、Hまたは−(C=O)Rd(Rdは、C1−C22の、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素残基;ベンジル、フェニル、アミノ酸、または無水誘導体を表す)を表す);または−(C=O)ORe(Reは、H;C1−C12の、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素残基;ベンジル、フェニル、またはアミノ酸アミド誘導体を表す);またはカルボキシメチル、カルボキシメチルエステル、またはカルボキシメチルアミド誘導体;および
R3=イソプロペニル、イソプロピル、イソプロピルフェニル、イソプロピルヒドロキシフェニル、またはイソプロピルコハク酸誘導体、
を有するベツリン由来化合物およびその塩の使用。
【請求項2】
R1が、OH;O(C=O)Rm(Rm=C1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基;O(C=O)(CHRc)CH2COOY(Rc=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基、およびY=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRh、ここでRh=HまたはC1−C4アルキル基);ORr(Rr=オルニチンエステル、ニコチンエステル、N−アセチルアントラニル酸エステル、またはトリメチルグリシンエステル);O(C=O)CHRs(NHZ)(Rs=H、C1−C4アルキル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、3−インドリルメチル、またはCH3SCH2基、およびZ=H、Rk、(C=O)Rk、またはCOORk、ここでRk=C1−C22の分岐したまたは非分岐アルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);ORa(Ra=H、C1−C4アルキル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、3−インドリルメチル、またはCH3SCH2基、またはカルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);オキソ基からなる群より選択され;
R2が、CH2O(C=O)Rf(Rf=C11−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基);CH2O(C=O)(CHRg)CH2COOY(Rg=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基、およびY=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRh、ここでRh=HまたはC1−C4アルキル基);CH2ORi(Ri=オルニチンエステル、ニコチンエステル、N−アセチルアントラニル酸エステル、またはトリメチルグリシンエステル);CH2O(C=O)CHRj(NHZ)(Rj=H、C1−C4アルキル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、3−インドリルメチル、またはCH3SCH2基、およびZ=H、Rk、(C=O)Rk、またはCOORk、ここでRk=C1−C22の分岐したまたは非分岐アルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジルまたは4−ヒドロキシベンジル基);CH2ORn(Rn=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)エステル);CH2O(C=O)Ro(Ro=C11−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基);(C=O)Rw(Rw=ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、またはイソボルネオールのエステル;(C=O)NHCHRxCOOY(Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRy、ここでRy=HまたはC1−C4アルキル基、およびRx=H、C1−C4アルキル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、−CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、3−インドリルメチル、またはCH3SCH2基);およびCH2OH;からなる群より選択され;および
R3が、CH2=CCH3;(CH32CRzまたはCH3CHCH2z(Rz=C65-n(OH)nまたはC65-n-m(OH)n(OCH3m、およびn=0〜5、m=0〜5、n+m≦5);およびH2C=CCH2qまたはCH3CCH2q(Rq=無水コハク酸、コハク酸イミド、またはCH(COORoCH2COORZ、ここでRo=H、Na、K、Ca、Mg、またはC1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基、およびRz=H、Na、K、Ca、Mg、またはC1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基)からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記ベツリン由来化合物が、ベツリン3,28−O−イソステアリン(isostearylic)酸ジエステル、ベツリン28−O−イソステアリン(isostearylic)酸エステル、ベツリン3,28−O−オレイン(oleinylic)酸ジエステル、ベツリン28−O−オレイン(oleinylic)酸エステル、ベツリン3,28−O−オクタン(octanylic)酸ジエステル、ベツリン28−O−オクタン(octanylic)酸エステル、3,28−ジアセトキシベツリン、28−アセトキシベツリン、3−オキソ−28−アセトキシベツリン、ベツリン酸、3−デヒドロキシベツリン、3−デヒドロキシ−28−アセトキシベツリン、ベツロン酸、ベツリン、ベツリン28−N−アセチルアントラニル酸エステル、ベツリン28−ニコチン酸エステル、ベツリン28−C18−アルキレンコハク酸エステル、ベツリン3,28−C18−アルキレンコハク酸ジエステル、ベツリン28−カルボキシメトキシメントール、ベツリン28−カルボキシメトキシチモールエステル、ベツリン28−クリサンテメート、ベツリン28−桂皮酸エステル、ベツリン酸L−アスパラギン酸アミド、ベツリン酸L−ヒスチジンアミド、ベツリン酸L−グルタミンアミド、ベツリン酸L−リジンアミド、およびベツロン酸28−アスパラギン酸アミドジメチルエステルからなる群より選択されることを特徴とする請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記ベツリン由来化合物が、1〜1000μg/cm2、好ましくは5〜200μg/cm2の範囲の量で、随意にキャリアおよび/または媒体と組み合わせて、ベースまたは群で使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
式I中:
【化2】

R1=−OH;−ORa(Raは、C3−C22の環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基、またはベンジル、フェニル、または無水物誘導体を表す);オキソ(=O);−O(C=O)Rb(Rbは、C3−C22の環式、脂肪族、非分岐、または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基を表す);またはカルボキシメチル、カルボキシメチルエステル、またはカルボキシメチルアミド誘導体;
R2=−CH2ORc(Rcは、H、またはC3−C22の環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基、またはベンジル、フェニル、または無水物誘導体を表すか、またはRcは−(C=O)Rdを表し、ここでRdはC3−C22の環式、脂肪族、または複素環式の、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基;ベンジル、フェニル、無水物誘導体、またはアミノ酸誘導体、ただしR1は同時にオキソを表す);またはR2=−(C=O)ORe(Reは、H;C3−C22の環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基;ベンジル、フェニルまたは無水物誘導体を表す);またはカルボキシメチル、カルボキシメチルエステル、またはカルボキシメチルアミド誘導体;および
R3=イソプロペニル、イソプロピル、イソプロピルフェニル、イソプロピルヒドロキシフェニル、またはイソプロピルコハク酸誘導体;
ただし、該化合物は、ベツリン、ベツリン酸、またはベツロン酸ではない、
である一般式Iのベツリン誘導体由来の化合物またはその塩。
【請求項6】
R1が、以下:OH;オキソ基(=O);基O(C=O)Rm(Rm=C3−C22の環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基、またはベンジルまたはフェニル基);基O(C=O)(CHRc)CH2COOY(Rc=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基;Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRh、ここでRh=HまたはC1−C4アルキル基);基ORr(Rr=オルニチンエステル、N−アセチルアントラニル酸(アントラニル酸)エステル、またはトリメチルグリシンエステル);基O(C=O)CHRs(NHZ)(Rs=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基;Z=H、Rk、(C=O)Rk、またはCOORk、ここでRk=C1−C22の分岐または非分岐のアルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);基ORv(Rv=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);基ORy(RyはC3−C22の環式、脂肪族、非分岐または分岐した、飽和または不飽和の炭化水素残基、またはベンジル、4−ヒドロキシベンジル、CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基を表す)、からなる群より選択され;
R2が、以下:CH2OH;基CH2O(C=O)Rf(Rf=C3−C22の環式、脂肪族、分岐したまたは非分岐の、飽和または不飽和の炭化水素残基);基CH2O(C=O)(CHRg)CH2COOY(Rg=C4−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基;Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRh、ここでRh=HまたはC1−C4アルキル基);基CH2ORi(Ri=オルニチンエステル、N−アセチルアントラニル酸エステル、またはトリメチルグリシンエステル);基CH2O(C=O)CHRj(NHZ)(Rj=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基;およびZ=H、Rk、(C=O)Rk、またはCOORk、ここでRk=C1−C22の分岐したまたは非分岐アルキルまたはアルケニル基、またはフェニル、ベンジル、または4−ヒドロキシベンジル基);基CH2ORn(Rn=カルボキシメトキシ置換したベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、イソボルネオールのエステル、または菊酸、桂皮酸、またはレチノール酸(retinolic acid)のエステル);基(C=O)NHCHRxCOOY(Y=H、Na、K、Ca、Mg、C1−C4アルキル基、またはNRy、ここでRy=HまたはC1−C4アルキル基;およびRx=CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基);基(C=O)Rw(Rw=ベルベノール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、メントール、桂皮アルコール、クルクミン、オイゲノール、ボルネオール、またはイソボルネオールのエステル);基ORy(Ryは、C3−C22の環式、脂肪族、分岐したまたは非分岐、飽和または不飽和の炭化水素残基、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル基、CH2CH2CH2CH2NH2、4−イミダゾリルメチル、または3−インドリルメチル基を表す);基(C=O)ORp(Rp=HまたはC3−C22の環式、脂肪族、分岐したまたは非分岐、飽和または不飽和の炭化水素残基)、からなる群より選択され;および
R3が、以下:CH2=CCH3、基(CH32CRzまたはCH3CHCH2z(Rz=C65-n(OH)nまたはC65-n-m(OH)n(OCH3m、ここでn=0〜5、m=0〜5、n+m≦5);基H2C=CCH2qまたはCH3CCH2q(Rq=無水コハク酸、コハク酸イミド、またはCH(COORo)CH2COORz、ここでRo=H、Na、K、Ca、Mg、またはC1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基であり、Rz=H、Na、K、Ca、Mg、またはC1−C22の直鎖または分岐アルキルまたはアルケニル基である)からなる群より選択されることを特徴とする請求項5記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、ベツリン28−C18−アルキレンコハク酸エステル、ベツリン3,28−C18−アルキレンコハク酸ジエステル、ベツリン28−カルボキシメトキシメントール、ベツリン28−カルボキシメトキシチモールエステル、ベツリン28−クリサンテメート、ベツロン酸L−アスパラギン酸アミド、ベツロン酸L−ヒスチジンアミド、ベツロン酸L−グルタミンアミド、ベツロン酸L−リジンアミド、およびベツロン酸28−アスパラギン酸アミドジメチルエステルからなる群より選択されることを特徴とする請求項5または6記載の化合物。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載のベツリン由来化合物またはその塩を含むことを特徴とする、ヨトウガ亜科に属するガ(ヤガ科)、日中活動するチョウ類(チョウ目)および小さいチョウ類の亜科(小鱗翅目)からなる群より選択されるチョウ(鱗翅目)の、ハムシ類(ハムシ科)に属する、ノミハムシ亜科、ヒゲナガハムシ亜科およびクビボソハムシ亜科から選択される甲虫(鞘翅目)の、ならびに腹足類(腹足綱)の摂食を防止する摂食忌避剤組成物。
【請求項9】
前記組成物が、界面活性剤、乳化剤、分散剤、溶媒、および天然油から選択される、賦形剤ならびに媒体を含むことを特徴とする請求項8記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−539811(P2009−539811A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513717(P2009−513717)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国際出願番号】PCT/FI2007/050318
【国際公開番号】WO2007/141383
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(501374390)バルティオン テクニリーネン トゥトキムスケスクス (16)
【住所又は居所原語表記】Vuorimiehentie 5, Fin−02150, Espoo, Finland
【Fターム(参考)】