説明

椎間関節用プロテーゼ

脊椎運動分節の椎間関節を置換する人工器官インプラントは、脊椎運動分節の頭側脊椎の下脊椎関節突起上に外科的に準備処置されたサイトにインプラントするよう構成された概ね円錐形の上位要素と、脊椎運動分節の尾側の上脊椎関節突起上の外科的に準備処置されたサイトにインプラントするよう構成されたカップ状の下位要素とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
−関連出願の引用−
本出願は、2003年7月17日出願の米国仮特許出願第60/487,604号に基づく優先権を主張するものであり、そのすべての開示内容をここに援用する。
【0002】
本発明は人体脊椎の構造を置換するプロテーゼ(prosthesis: 人工器官)に関し、より詳しくは椎間関節を置換するプロテーゼに関するものである。
【背景技術】
【0003】
腰部の痛みはごくありふれた疾患であるが、様々な病的症状の原因となり、また仕事の時間を奪う元ともなる。腰痛の罹患率は非常に高く、場合によっては全人口のおよそ80%に及ぶ。大部分の患者は苦痛となる症状を時折感じるのみで完全に回復するが、およそ患者の10%は、様々な医療を施しても慢性的に続き、生活に支障を生じさせる腰痛に悩んでいる。
【0004】
慢性的で生活に支障を生じさせる腰痛のもっともありふれた原因は変性円板疾患(DDD:Degenerated Disk Disease)である。また、腰痛に関連してDDDに伴うことが多い問題の1つとして、椎骨の間の椎間関節の変性がある。
−椎間関節の解剖学的構造とバイオメカニクス−
【0005】
脊柱の機能単位は、三関節複合体(three-joint complex)、椎間円板および2つの椎間関節からなる脊椎運動分節(spinal motion segment)である。椎間関節は滑液関節であり、他の可動結合関節と同様に関節表面がヒアリン軟骨で覆われている。腰仙椎における椎間関節の向きはほとんどすべての人間において両側で対称になっているが、非対称な場合も時折見られる。文献によれば、椎間関節の非対称は円板変性の原因となるとされている。椎間関節は一般に矢状面および冠状面において傾いている。椎間関節の向きは脊椎内の異なる高さ部位、即ち脊椎の頚部、胸部、胸−腰部、腰−仙骨部によってかなり異なっている。ある個人の胸部脊椎または胸−腰部脊椎内において、椎間関節の大きさ・形・方向・角度は、異なる高さの運動分節間で大きく異なっている。この違いは異なる個体間の違いよりも大きいほどである。
【0006】
脊椎運動分節において、椎間円板が重量支持、安定化、運動の機能を行う中心的な構造であるが、椎間関節もこれらの機能において重要な役割を果たしている。
【0007】
重量支持機能:中立的な立ち姿勢において、1つの脊椎運動分節による重量支持のおよそ20%を椎間関節が担っている。椎間関節の重量支持機能は屈曲姿勢において減少し、伸身時に増加する(40%まで)。バイオメカニクスの諸研究は、椎間関節包が主として椎間関節の重量支持機能を軸方向において担っていることを示している。このような研究には、Al-Bohy,Yang KH,King AI“Experimental verification of facet load transmission by direct measurement of facet lamina contact pressure” J Biomech. 22: 931-941,1989、およびYang KH,King AI“Mechanism of facet load transmission as a hypothesis for low back pain” Spine 9: 557-565,1984がある。
【0008】
運動:2つの対向する関節隆起である椎間関節は、屈曲−伸展に際して滑動し、ねじりに際して回転し、脊椎運動分節が横に屈曲する際にはトグル動作する。椎間関節の運動は受動的運動に限られるわけではなく、小関節面の形状・向き・角度によって、および関節包によって案内される積極的な運動もある。正常な脊椎運動分節において、伸展時に椎間関節は「ロック」されて、回転運動および滑動を制限し、重量支持の安定性を促進する。屈曲時には椎間関節の係合はより弱くなり、より自由な動作を許容する。
【0009】
脊椎運動分節の安定性:椎間円板は損傷のない脊椎運動分節において主たる安定化の担い手である。しかし、脊椎運動分節において、椎間関節もねじりおよび剪断安定性に関して重要な安定化構造である。椎間関節はねじり安定性のおよそ45〜50%を担っており、椎間円板はねじり安定性のおよそ50〜55%を担っている。脊椎運動分節のねじり安定性についてはFarfan HF,Cossette JW,Robertson GH et al. “The effects of torsion on the lumbar intervertebral joints: The role of torsion in the production of disc degeneration” J Bone and Joint Surg. 52A: 468-497, 1970において論じられている。椎間円板が変性し安定化機能を失うと、椎間関節はより重要な安定化の担い手となる。椎間関節は過度のねじれおよび剪断運動を制限して椎間円板を保護する重要な構造である。
【0010】
椎間関節の構造変化は、多くの場合、脊椎運動分節の変性が進んだ段階で見られる。椎間円板の変性を伴わない、椎間関節単独の変性は極めて稀である。変性した椎間関節の病理は他の重量を支持する滑膜関節において見られるものと非常に似ており、滑膜および包の肥大、関節滲出/嚢胞、骨肥大、関節亜脱臼などがある。椎間関節包、滑膜または骨の肥大は脊椎狭窄を引き起こす。手術以外の治療の効果がない重篤な椎間関節の変性的な変化によって起こる慢性的で生活に支障を生じさせる腰痛や狭窄症状を有する患者には、脊椎固定術と共にあるいは脊椎固定術を用いずに行う減圧術を指示する場合もある。
【0011】
脊椎狭窄に対する減圧術は成功裏に症状を緩和させるが、症状の再発率が非常に高い(5年で40〜50%)。脊椎固定術は多くの場合良い結果をもたらすが、悪い作用もある。苦痛をもたらす機能不全の椎間円板を置換する椎間円板プロテーゼのアイディアが最近発展して来ている。近年いくつかの椎間円板プロテーゼが臨床的に用いられている。椎間円板プロテーゼは苦痛を伴うDDD患者であって、椎間関節の変性がまったくあるいはほとんどない患者に最も適している。脊椎運動分節の変性的な変化が進むと、3つの関節(椎間円板と2つの椎間関節)のすべてが冒され、椎間円板のみを置き換えるのでは良い結果が得られない。脊椎運動分節を修復し良い結果を得るには3つの関節(椎間円板と2つの椎間関節)すべてを置換する必要があるだろう。
【0012】
効果のある人工椎間関節プロテーゼに要請される条件は、以下のようなものである、即ち(1)椎間円板の横屈曲時において、屈曲−伸展時の滑動、回転およびトグル動作に十分な運動範囲を与えること、(2)安定性を有すること、特にねじりおよび剪断運動において安定性を有すること、(3)生理学的負荷の20〜30%の重量支持機能を与えること、(4)プロテーゼ要素が、特に上脊椎関節突起において極めて繰り返し起こる強い曲げモーメントと剪断力に耐える、骨への十分な固着性を有すること、(5)運動を積極的に案内すること、特に回転、および屈曲・伸展において積極的に案内すること、(6)広範囲な大きさ、形状、角度および向きの多様性の問題を解決し、ユーザーフレンドリーなものとなること、以上である。以上の特徴のどれか1つでも欠いたプロテーゼは、不具合が生ずるか、あるいはまた緩んで椎間円板や隣接する分節に好ましくない応力を与える恐れがあるだろう。
【0013】
人体の椎間関節を置換する、申し分のないプロテーゼを提供する多くの試みがなされてきた。
【0014】
“Artificial Facet Joint(人工椎間関節)”と題されたWilliam R.Fitzの米国特許第5,571,191号(および再発行特許第36,758号)は、下脊椎関節突起の遠位部に例えば骨ネジなどにより固定される、円錐形または角錐形の上位部分を有するプロテーゼを開示している。該プロテーゼの下位部分もおよそ円錐形または角錐形でその一辺は後側および内側にある程度長くなっている。これは上脊椎関節突起の遠位側に固定される。このプロテーゼは骨組織を改変することなく下および上脊椎関節突起を覆うことで、まず第一に椎間関節上の表面挿入物として機能する。この覆いキャップはその下にある骨関節突起にネジによって固定される。その内表面に多孔質のコーティングを設けて骨の内成長を促進してもよい。
【0015】
しかし、関節面の角度・向き・大きさ・形状の患者間でのばらつきが非常に大きいため、単一群の円錐形または角錐形のキャップでは、様々な個人のすべての骨構造に合わせることができない。自然に生ずるすべてのばらつきに合わせるためには、異なる大きさ・形状・角度・向きのほとんど限りない数のキャップ群が必要となる。この設計のもう一つの問題は埋め込まれたプロテーゼの安定性に関わる問題である。キャップをその下の関節突起に単に固定しただけでは度重なるねじり、屈曲および剪断力に耐えられない。また、概ね円錐形である上位部分の内部形状により、下脊椎関節突起の骨とプロテーゼとの界面において動いてしまう可能性がある。更に、上脊椎関節突起に固定される下位部分もまた、非常に強い曲げモーメントおよび剪断力に耐えられない可能性がある。最後に、上位部分と下位部分との間の関節面がねじり運動時、特に圧縮ねじり運動時に安定性を欠く可能性がある。また、このプロテーゼは軸方向における実質的な重量支持機能に問題がある。
【0016】
“Facet Arthroplasty Devices and Methods(関節面関節形成装置および方法)”と題されたMark A.Reileyの米国特許出願第2002/0123806号(現在米国特許第6,610,091号)は、同心の球部(下位関節面)および皿部即ち浅いソケット部(上位関節面)を有する自在関節面プロテーゼを開示している。このプロテーゼは、椎弓板(lamina)、上脊椎関節突起および下脊椎関節突起の片側または両側切除後に、これらを置換するものとして設計されている。これらのプロテーゼ部品は、脊椎骨に椎弓根(pedicle)を介してネジまたは釘により固定される。あるいは、これらを棘突起に固定してもよい。片側または両側の変形例も開示されている。
【0017】
この設計では同心の球部と浅いソケット部(即ち皿部)は上記の要請、特に運動分節の屈曲時において積極的にねじり安定性および剪断安定性を与えるという要請を満たさない。脊椎運動分節が圧縮−屈曲時にねじり制御を行うことができないことが、椎間円板の損傷の最も重大な原因であることがFarfanによるバイオメカニクス上の研究によって見出された(Farfan HF, Cossette JW, Robertson GH, et al. “The effects of torsion on the lumber intervertebral joints: The role of torsion in the production of disc degeneration, J. Bone and Joint Surg. 52A: 468-497, 1970)。正常な脊椎運動分節では、回転運動の中心は後椎体付近(椎間関節の前側)にあり、両側の上位関節面に対する下位関節面の横−内方向(medial-lateral)変位を伴う。しかし、同心の球部およびソケット即ち皿部からなる設計では、脊椎回転時の椎間関節の本来の動作を再現することは難しい考えられる。更に、椎弓根を介して椎体に一点で固定するのでは装置の十分な固定が得られず、圧縮屈曲および圧縮ねじり時に上位関節プロテーゼに作用する大きな曲げモーメントおよび剪断力を伴う応力の繰り返しに耐えることができる。
【0018】
“Vertebral Joint Facets Prosthesis(脊椎椎間関節プロテーゼ)”と題されたJean-Raymond Martinの米国特許第6,132,464号は、一方は上位面用となり他方は下位関節面用となる互いに接触する2つの合成滑動面を有するプロテーゼを開示している。その下にある骨構造は損なわれることがなく、これらの滑動面は上位および下位関節面を覆う。この装置はネジにより、またはフック、爪や横突起周囲の留めカラーを用いて、あるいはまた支持板を用いて椎弓根内の適所に固定されるか、または横突起に固定される。
【0019】
しかし、椎間関節の解剖学的構造に本来的に大きなばらつきがあるため、プロテーゼをその下にある骨構造に適切に適合させることすなわち適切な輪郭形状を与えることは困難であると考えられる。解剖学的構造の個人差が大きいため、そしてまた一個人における異なる運動分節間でのばらつきにより、様々な大きさ・形状・向きの非常に多数の異なるプロテーゼが必要となるだろう。更に、プロテーゼにおいて、関節面の2つの滑動面を連結する構造は椎弓板の関節間部の前横に位置する。しかし、外へ向かう神経後根および後神経節神経(post-ganglion nerve)もまたこの領域を通っている。従って神経構造の混雑が問題となりうる。
【0020】
“Prosthesis for replacement of a Posterior Element of a Vertebra(脊椎後部要素を置換するプロテーゼ)”と題されたT. Wade Fallinの米国特許第6,132,464号は、脊椎突起、両側椎間関節および椎弓板を切除後にすべての後部脊椎構造を置換するように設計されたプロテーゼを開示している。その基本ユニットは関節面用の凹/凸形のブレードを有する人工器官板からなる。別の実施形態は、該基本ユニットに加えて、脊椎突起および/または横突起および/または椎弓根を置換する構造を備えている。装置は椎弓根にネジ留めされることで固定される。
【0021】
しかし元の関節面を凹/凸滑動ブレードで置換するので、この装置は積極的な運動案内機能や安定性に欠けている可能性がある。更に、椎弓根に対する固定が、永続的なプロテーゼとして十分確かな固定となるかという疑問が生ずる。
【0022】
総括すると、椎間関節プロテーゼの従来の設計の大部分には、何らかの明らかな問題がある。
【0023】
1) 接触面積および頭側脊椎の下脊椎関節突起から尾側脊椎の上脊椎関節突起へと伝わる力の大きさと方向は、脊椎運動分節の正常な運動範囲において絶えず変化する。接触面の角度が固定されている、球部−ソケット即ち球部−皿部関節などのプロテーゼは、広範囲に変化する運動円弧や安定性および重量支持機能をもたらすことができない。
【0024】
2) 椎間関節は、屈曲時に上脊椎関節面に作用する曲げモーメントが比較的大きい場合に、前側剪断に抗して安定性をもたらす非常に重要な関節である。上脊椎関節突起または面プロテーゼをその下の骨に恒久的に固定することが決定的に重要である。上脊椎関節突起の骨塊はネジ、ピン、釘、キャップなどで十分に機械的な固定を行うには非常に小さく、非常に大きな曲げモーメント(体重の2分の1×8乃至16インチの屈曲時曲げモーメント)に耐えることができない。
【0025】
3) ほぼ円形または楕円形の断面を有する構造によって取り付けられる下脊椎関節突起用のプロテーゼ装置は回転応力の作用下で、緩んでしまう傾向がある。
【0026】
従って、現在入手可能なプロテーゼの欠陥を持たない椎間関節プロテーゼが引き続き必要とされている。
【発明の開示】
【0027】
本発明は公知の椎間関節プロテーゼの諸問題を解決するものである。
【0028】
人体脊柱の脊椎運動分節内の椎間関節を置換するための人工器官インプラントは、
脊椎運動分節の頭側脊椎の下脊椎関節突起上に外科的に準備処置されたサイトにインプラントするように構成された上位要素であって、概ね円錐形の滑らかな外表面と頭側脊椎の下脊椎関節突起上のテーパを付けた切除部分にインプラントするように構成されたテーパを付けた内部キャビティとを有する概ね円錐形の部品からなる上位要素と、
脊椎運動分節の尾側脊椎の上脊椎関節突起上に外科的に準備処置されたサイトにインプラントするように構成された下位要素であって、上位要素の円錐形外表面を受容するように構成されたカップと、上脊椎関節突起上の外科的に準備処置されたサイトにインプラントするように構成された基部とからなる下位要素と、を備える。
【0029】
上位要素は概ね円錐形の要素であり、頭側脊椎の下脊椎関節突起の外科的に切除を施された遠位端上に嵌合するように構成されている。円錐形の上位プロテーゼは、尾側脊椎の上脊椎関節突起の一般的位置に形成された外科的サイトにインプラントされたカップ状の下位要素に、受容されるよう構成されている。
【0030】
このように、本発明は、人体脊柱の脊椎運動分節において椎間関節を置換するプロテーゼを提供することを1つの目的とする。
【0031】
別の目的は、脊椎運動分節の下脊椎関節突起の外科的に準備処置された遠位端上にインプラントするための円錐形プロテーゼを提供することである。
【0032】
また別の目的は、脊椎運動分節の尾側脊椎上にインプラントされ円錐形上位人工器官要素を受容するためのカップ状プロテーゼを提供することである。
【0033】
更に別の目的は、脊椎運動分節の尾側脊椎の下脊椎関節突起の外科的に準備処置された遠位端にインプラントするための、概ね三角形の断面の内部キャビティを有する概ね円錐形のプロテーゼを提供することである。
【0034】
本発明のその他の目的は、以下の本発明の説明から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の改良された椎間関節プロテーゼの設計は、従来の設計の欠点を解決することを意図してなされている。
【0036】
本発明の改良された椎間関節プロテーゼは2つの関節要素からなる、即ち:
a) 頭側脊椎の下脊椎関節突起用の概ね円錐形のプロテーゼと、
b) 尾側脊椎の上脊椎関節突起用であって、頭側脊椎の円錐形プロテーゼを受容する概ねカップ状のプロテーゼ。
【0037】
これらのプロテーゼ関節要素は、それぞれの脊椎に適当な固定器具を用いて固定される。該固定器具は脊椎プロテーゼの固定に従来用いられているタイプのものでよい。あるいは、以下に論ずるように、いくつかの固定具は好ましい構造を有している場合がある。
【0038】
頭側脊椎用の円錐形プロテーゼ(「円錐体」)はほぼ円形の断面を有する。円錐体の底部から円錐体内部に広がる内部キャビティは、頭側脊椎の下脊椎関節突起の切除を施された遠位端を受容する。好ましくは骨インプラントにおいて従来行われているように、円錐体の内部キャビティに多孔質面を設け、骨の内成長を促進する。円錐体に加わる回転力に抗するため、好適には内部キャビティの断面を円形以外、たとえば多角形や楕円形とし、下脊椎関節突起の遠位端にそれと相補的な断面形状を与える。下脊椎関節突起が本来の断面であるおよそ三角形の断面を有するので、プロテーゼの円錐形要素は下脊椎関節突起によく適合するようにほぼ三角形の内部キャビティを有することが好ましい。円錐体はまた内部キャビティの頂部から延在し、下脊椎関節突起の端部に穿設した対応する孔に嵌合する内部軸方向突起を有してもよい。
【0039】
円錐体の外表面は、尾側脊椎の上脊椎関節突起上所定位置にインプラントされたカッププロテーゼと滑動関節動作するように滑らかである。
【0040】
円錐体の下脊椎関節突起への固定は、様々なやり方で行うことができる。円錐体の内部キャビティの大きさと形は切除を施された下脊椎関節突起の端部に適合するようにし、またキャビティ頂部から突出する内部突起を設けて下脊椎関節突起に設けた孔路に嵌合させるようにしてもよい。上に述べたように、好適には内部キャビティは三角形の断面を有し、かつ骨の内成長のために多孔質コーティングを施す。プロテーゼはまた従来の骨セメントあるいは化学的接着剤にて関節突起に固定してもよい。
【0041】
円錐体を椎弓板および/または脊椎突起および/または椎弓根および/または横突起に更に固定するための延長部を円錐体に設けてもよい。これらの延長部に、ネジなどによりこれらの構造に固定するための孔を設けてもよい。延長部は椎弓板の縁部や横突起の周りに折り曲げることのできるタブや舌部を有してもよい。
【0042】
円錐体の材質はこのような脊椎プロテーゼに用いることのできる従来のいかなる物質としてもよい。円錐体は一般的に、例えばコバルト−クロム−モリブデン合金、ステンレススチール。チタン合金その他の既存のプロテーゼに使われる合金、または適当な合成高分子、またはセラミックからなる。
【0043】
尾側脊椎用のカップ状プロテーゼ(「カップ」)はほぼ円形の断面の中空内部を有している。カップの断面径は円錐体の断面径より幾分大きい。このため円錐体は、カップと緩い嵌合をしている。更にカップ壁の内表面は円錐体よりも幾分大きい拡開角を有しており、円錐体の外壁とカップの内壁との間の角度はおよそ3°から10°の範囲となる。従って円錐体はカップに緩やかに嵌合し、径と角度のずれにより、円錐体がカップ壁で滑動して天然の椎間関節の提供する支持を置換する支持をもたらし、制御された横曲げと回転が可能となる。
【0044】
脊椎運動分節がその中立的な位置にあるとき、即ち頭側および尾側脊椎が互いに対して屈曲・伸展・横曲げ・回転のいずれも行っていないとき、円錐体の端部は垂直方向にカップ底部よりやや上に位置する。中立状態におけるカップに対する円錐体の垂直方向位置は、脊椎運動分節が完全に伸展した時に円錐体の先端がカップの底部に接触し積極的なロック機能および重量支持機能を果たすように選定する。
【0045】
上に説明したように、カップ壁は好適にはほぼ円形の断面を有する。しかし、特定の患者の特定の部位において適切な機能を果たすために必要で有れば、正確な円形から幾分逸脱した断面形状とすることを排除するものではない。更にまた、ある機能やクリアランスを与えるためにカップ壁の周囲の一部を切り欠くようにしてもよい。例えば、カップに下縁部を設けてもよく、または当該領域を通過する神経構造のためのスペースを与えるため、または脊椎運動分節の屈曲時に円錐体先端がカップの壁に当たるのを防止するために、カップの前−内方部分で壁の一部を切り取ってもよい。
【0046】
更に、好適には、屈曲時に円錐体の滑動を案内するために、カップ壁の近位−前方端をより高くし、かつ関節間部の椎弓板の前側表面の輪郭に沿って拡開させる。
【0047】
カップは典型的には、尾側脊椎の上脊椎関節突起および/または隣接骨構造にカップを固定するように構成された基部その他の外延長部を有する。一般的にカップは尾側脊椎の適所に、基部の孔を貫通する椎弓根ネジ(椎弓根スクリュ)によって椎弓根と脊椎体に固定される。好適には、ネジは椎弓根内に嵌合しかつ椎弓根内に椎弓根ネジを挿入することにより広がる拡張可能なスリーブを有し、椎弓根内に設けられた開口の内表面とのしっかりとした接触をもたらす。椎弓根が頭尾径が左右径より大きい楕円形の断面を有する場合、椎弓根の形状と合うように拡大式スリーブも楕円形断面とするのが好適である。椎弓根ネジにおいてこのようなスリーブの楕円形状は、患者の自然な活動に際しての脊椎運動分節の運動に伴う曲げおよび/またはねじりモーメントの反復的な印加によってネジが緩むことを防止する助けとなる。典型的には、拡張可能なスリーブの拡大は、スリーブ本体から脊椎内部に向かって延在する2つ以上の拡張可能なフィンガーを設けることにより実現する。中心テーパボア(内腔)が、スリーブの外端から内端に向かってその径が内端側で小さくなるように延在する。この中心テーパボアにねじ山を設けてもよい。かくして、フィンガーの内端はネジを椎弓根の骨構造の内表面に挿入されるにつれて広がり、内表面に押しつけられる。好適にはネジスリーブの外表面に、たとえば多孔質材料を塗布することにより骨の内成長のための多孔質構造を設ける。
【0048】
基部に少なくとも一対の、椎弓根ネジ孔付近のカップ基部から上位方向および下位方向に突出する耳部即ちタブを設けてもよい。これらの耳部を横突起の基部の周りに折り曲げて、カップ固定に付加的な強さと確実性を与えてもよい。
【0049】
カップと骨の機械的な固定に加え、ポリメチルメタクリレート(PMMA)骨セメントのような骨セメントやその他の化学的接着剤を用いてもよい。
【0050】
好適にはカップ壁の前縁に、前方にわずかに湾曲し脊椎運動分節の屈曲時に円錐体を案内する延長部(より高い壁)を設けてもよい。
【0051】
典型的には椎間関節プロテーゼのカップ要素は金属、例えば上に示した円錐体と同じ金属や、超高密度ポリエチレンなどの合成高分子またはセラミック物質からなる。
【0052】
椎間関節プロテーゼの設計は、天然の椎間関節の機能と運動をできるだけ忠実に再現するために、上に述べたように接触面積、重量伝達、運動の自由/制限、安定性、重量支持の広範囲なヴァリエーションを提供する。椎間運動分節の横曲げおよび回転量は径と拡開角度の違いにより制御する。即ち、前に述べたように、円錐体とカップとの間の「不整合」すなわち比較的緩い嵌合によって制御する。伸展時、即ち患者が背筋を伸ばした姿勢をとる際には、椎間関節はより大きな重量支持と安定性を提供しなければならないが、円錐体とカップとは比較的緊密に嵌合し、より大きな接触面積をもたらして重量支持と安定化を行う。屈曲時には、円錐体はカップ内により緩やかに勘合し、より多くの自由を許容し、かつより少ない重量を支持しつつも、剪断に抗して持続的な安定化を提供する。これは天然の椎間関節が天然の椎間円板に対して提供する機能と全く同じである。完全に屈曲した姿勢においても、円錐体はなおカップ内にあり、安定性および過度の回転または曲げに対する椎間円板の保護を提供する。
【0053】
本発明の椎間関節プロテーゼは、椎間関節の本来の働きにできるだけ近い支持と案内を提供するように、椎間運動分節内で配向しインプラントする。通常の場合、円錐体とカップアセンブリの長手軸は冠状面において内外方向におよそ10°乃至およそ30°好適にはおよそ15°乃至およそ25°より好適にはおよそ20°の範囲に向け、かつ矢状面において上下方向におよそ10°乃至およそ30°好適にはおよそ15°乃至およそ25°より好適にはおよそ20°の範囲に向ける。更に、椎間関節置換具は片側であっても両側であってもよい。
【0054】
当業者には理解されるように、本発明の椎間関節プロテーゼの構成およびインプラントに変更を加えることができる。例えば、骨と接するカップ要素の基部は、切除後に残存する上脊椎関節突起の大きさおよび形状に合わせて、様々な構成とすることができる。例えば、カップの基部に円錐形のくぼみを設け、概ね円錐形の残存突起上にインプラントするようにしてもよく、またより多く切除された突起用に、浅いドーム形のくぼみを設けてもよく、あるいは上脊椎関節突起のほとんどすべてを切除した場合に合わせて、平坦もしくはある程度凸形に隆起した表面としてもよい。
【0055】
要約すると、本発明の椎間関節プロテーゼは、従来公知のプロテーゼに対して以下のような特徴と利点を有するものである。
【0056】
a) 脊椎運動分節が中立的な位置にあるときに円錐体の外面とカップの内面とが接触するので、本プロテーゼは重量を支持することができる。更に、本プロテーゼは脊椎運動分節が完全に伸展したときに積極的にロックすることができる。
【0057】
b) 既知の装置よりも広い運動範囲全域において、安定性、支持および制御を該運動範囲(ROM)のどこにおいてもより効果的に提供する。特に:
・円錐体の外表面とカップの内表面の滑動的接触により、脊椎運動分節の屈曲および伸展範囲の全域において剪断安定性を提供する。
・脊椎運動分節が完全に伸展しているときに、本プロテーゼは重量支持と安定性の積極的な制限を与える。
・本プロテーゼは屈曲および伸展において広い運動範囲を許容し、従来技術の装置よりもこの点において優っている。
・回転における運動範囲を円錐体とカップの径の「不整合」によって許容しかつ制御するが、この「不整合」の大きさによりこの運動範囲を制限し安定性を与える。
・円錐体とカップの組み合わせは屈曲時の回転において、自由でありながら制御された運動を提供し、かつ公知の椎間関節プロテーゼの回転運動範囲よりも広くなるように設計されている。
・円錐体とカップの径の「不整合」により横曲げの運動範囲を提供しかつ制御する。
【0058】
c) 運動範囲において、円錐体の表面領域とカップの表面領域との間の継続的かつ接触量の可変な接触によって、脊椎運動分節を安定化する。特に、完全伸展時の重量支持を与える円錐体とカップ間の積極的な制止およびロック機能により安定性を提供する。屈曲−伸展運動範囲全域にわたって、円錐体とカップの角度と向きにより、椎間円板に対する剪断応力に対する積極的な抵抗を提供する。
【0059】
円錐体およびカップの両方のインプラント箇所に対する準備処置は、以下にプロテーゼの好適な実施形態について説明するようになされる。
【0060】
下脊椎関節突起は円錐形プロテーゼを受容するようにトリミングする。腰椎椎間関節の下脊椎関節突起は椎弓板の延長であり、特徴的な三角形の断面形状を有する。円錐形プロテーゼを受容する準備として、下脊椎関節突起をトリミングして円錐体に嵌合させる三角形断面の領域を形成する。関節突起の先端に頭部方向に管路を穿設し、円錐体の中心キャビティ内の軸方向突起を受容するようにする。このようにトリミングすることにより、肥大性の変性的変化の減圧(decompression)と、回転および曲げモーメントに対して円錐体と骨の間での積極的な機械的ロック機能が実現される。
【0061】
上脊椎関節突起は脊椎狭窄を引き起こす主要な構造である。上脊椎関節突起の切除あるいはトリミングは、脊椎狭窄の完全な減圧をもたらし、椎間円板腔におけるすべての作業のための最大限の外科手術用露出窓を提供する。切除/トリミングの量は狭窄緩和に要求される減圧の程度、または椎間円板その他の構造の露出の程度によって異なる。代表的なトリミング量は以下の通りである。
・上脊椎関節突起の関節面をトリミングし、対応するカップ要素基部の概ね円錐形のくぼみを受け入れる概ね円錐形の骨突起を残すようにしてもよい。
・上脊椎関節突起の上3分の1乃至2分の1を切除し、対応するカップ要素基部の浅いくぼみを受け入れる浅いドーム部を残してもよい。
・上脊椎関節突起の全体を切除し、カップ要素基部を固定する露出した椎弓根を残してもよい。
【0062】
以下に本発明の好適な実施形態を示す図面を参照して、本発明を説明する。
【0063】
図1および図2はそれぞれ、腰椎の一部の図式的な側面図、および同じ部位の背面図であり、ある特定の脊椎運動分節100を示している。該脊椎運動分節は頭側脊椎102と尾側脊椎142とを含む。頭側脊椎102は椎体104、椎弓根106、椎弓板108、横突起110、棘突起112、関節面116を有する上脊椎関節突起114、下脊椎関節突起118を含む。尾側脊椎142は椎体144、椎弓根146、椎弓板148、横突起150、棘突起152、関節面156を有する上脊椎関節突起154、下脊椎関節突起158を含む。椎間円板182が頭側脊椎102と尾側脊椎142とを隔てている。
【0064】
図3は脊椎運動分節100の下部腰椎142を頭側からみた状態で示している。
【0065】
図4および図5はそれぞれ、本発明の椎間関節プロテーゼをインプラントした脊椎運動分節100の背面図および側面図である。図6はプロテーゼをインプラントした脊椎運動分節100の斜め左横−背面図である。
【0066】
これらの図において、円錐形要素200は頭部脊椎102の適切にトリミングされた下脊椎関節突起118に固定する。円錐体の対応する突起を受容する内部管路を設けた下脊椎関節突起118のトリミングされた先端部124の詳細は図9Aに見ることができる。
【0067】
図9A乃至9Dは円錐形要素200の好適な実施形態の1つを示す。円錐体200は上縁204と先端210とを有し、外表面202は概ね滑らかでカップの内面上で滑動するようになっている。円錐体200は内部キャビティ206を有しており、この内部キャビティ206は本実施形態では概ね三角形の断面を有する。キャビティ206の内面208は、骨の内成長を促進するために好適に多孔質としている。このような多孔質表面208は、多孔質コーティング、表面のテクスチュアリングやエッチングなどの任意の従来技法や、整形外科で用いられるインプラント用の多孔質表面を形成するのに適した、骨インプラントの多孔質内成長促進面の形成に用いられるその他の従来工程を用いて形成してよい。図示した好適な実施態様ではまた、円錐体200の先端210の内表面208から軸方向に延在する内部突起208を設けている。
【0068】
プロテーゼの別の実施形態を図10に示す。また、このプロテーゼを頭側脊椎の下脊椎関節突起にインプラントした詳細を図11に図式的に示す。この実施形態の円錐体200、は縁部204から上方向に延在する延長部214を有し、骨ネジ用の孔216を設けている。延長部214は、椎弓板や横突起などの隣接する解剖学的構造の上に折り曲げるためのタブ218および220を有している。延長部214はまた、隣接する棘突起の表面に接触するための側面タブ222を有し、該側面タブ222にもこれを棘突起に固定する骨ネジ用の孔226を設けている。
【0069】
図8A乃至8Eは椎間関節プロテーゼのカップ要素の好適な実施形態を示す。椎間関節プロテーゼのカップ要素300は尾側脊椎142に対し、適切に切除を施された上脊椎関節突起154の一般的な位置において固定する。カップ要素300はカップ302を含み、該カップ302は縁部306を有する壁部304を有する。カップ壁304の内表面308は円滑であり、カップ200の外表面202がその上で容易かつ円滑に滑動する表面を提供する。壁部の前−内方部に切り欠き部310を形成し、カッププロテーゼが脊柱管に与える制約を緩和している。カップ壁の前−横部には上方に延在し外方に拡開する延長部314がある。この延長部314は円錐体が、特に脊椎運動分節100の屈曲時にその上で滑動する表面を提供する。カップ302は基部即ち取り付け延長部316を有し、これはカップ壁304の下部から概ね横方向に延在して、例えば椎弓板、椎弓根、横突起などの隣接する骨構造と接触するようになっている。基部316はその孔318を貫通する椎弓根ネジにより脊椎に固定される。また好適には、基部316に横突起の基部の周りに折り曲げるべく配置したタブ320を設け、図5に示すようにカップ要素300を更に固定する(図ではインプラントをより明瞭に見ることができるように、横突起の遠位部は取り去っている)。
【0070】
図7は図3の下部腰椎にインプラントし、かつ椎弓根ネジアセンブリ400(破線にて示す)にて固定したカッププロテーゼの頭部側から見た図である。
【0071】
椎弓根ネジ400を図12A乃至12Fに示す。椎弓根ネジアセンブリ400は、概ね従来の設計の椎弓根ネジ402と、椎弓根に設けられたキャビティ内に嵌合しキャビティの内面に対して拡張して、椎弓根ネジ単独よりも強い固定を実現するように意図されたスリーブ404とからなる。スリーブ404は概略楕円形の断面を有し、椎弓根の楕円形の断面と概ね適合する。スリーブの外側端部406は一体となっているが、内側端部408には内側端408から外側端に伸びるいくつかのスリット410が設けられている。このスリット410により外側端から内側端に向かって延在するいくつかのフィンガー412が形成される。スリーブ402は外側端部406から内側端部408に延在するテーパのついた内孔414を有する。スリーブが初期形態にあるときは、図12Aおよび断面図12B、12Cに示すようにフィンガー412は概ね平行になっており、拡張されていない。スリーブ400はこの初期形態で椎弓根に設けたキャビティ内に挿入される。その後、椎間関節プロテーゼのカップ要素を適所に設置し、カップ基部316の孔318に椎弓根ネジを挿入し、スリーブ400のテーパのついた内孔414を通過して脊椎の椎弓根内へと前進させる。これにより、図12Eおよび12Fに示すようにスリーブ404のフィンガー412が広がり、椎弓根に形成したキャビティの内壁に対して押しつけられる。好適には、整形外科技術において従来行われているように、スリーブ404の外表面416に多孔質構造を設ける。この多孔質構造は従来方式の処理またはコーティングによって設けてよい。椎弓根ネジおよびスリーブは、例えばステンレススチールやチタン合金などの整形外科に用いられる従来の合金としてよい。
【0072】
カップ要素300をインプラントする適切なサイトを提供するために、尾側脊椎142の上脊椎関節突起154に切除を施す。この切除の様々な可能性を図13A乃至13Cに破線にて示す。図13Aは概ね円錐形のサイト162を残す切除を示す。図13Bは浅いあるいは平坦なくぼみ164を残す大幅な切除を示す。図13Cは平坦なあるいは浅いドーム形の突起166を残す切除を示す。図13A乃至13Cに示すサイトにそれぞれインプラントするためのカップ300の実施形態を、図14A乃至14Cに示している。
【0073】
本発明をいくつかの実施形態によって説明したが、当業者には明らかであろうように、本発明の思想あるいは必須の特徴を逸脱することなく、多くの変形や変更が可能である。本発明はそのような変形を取り入れたすべての実施形態を含むものである。従って、ここになされた開示は例示のためのものであり、添付の請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではなく、本発明は均等の効力および範囲に含まれるすべての変形を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】脊椎運動分節を示す腰椎の側面図である。
【図2】脊椎運動分節の背面図である。
【図3】腰椎を頭側から見た図である。
【図4】本発明の椎間関節プロテーゼをインプラントした脊椎運動分節の背面図である。
【図5】本発明の椎間関節プロテーゼをインプラントした脊椎運動分節の側面図である。
【図6】本発明の椎間関節プロテーゼをインプラントした脊椎運動分節の斜め横−背面図図である。
【図7】本発明の上脊椎関節突起プロテーゼをインプラントした腰椎の頭側から見た図である。
【図8A】上脊椎関節突起プロテーゼの背側立面図である。
【図8B】上脊椎関節突起プロテーゼの平面図である。
【図8C】図8Bに示す8C−8C線に沿った上脊椎関節突起の断面図である。
【図8D】図8Bに示す8D−8D線に沿った上脊椎関節突起の断面図である。
【図8E】上脊椎関節突起プロテーゼのカップ要素の斜視図である。
【図9A】椎間関節プロテーゼの円錐形要素をインプラントするために切除を施された、概ね三角形の形状の下脊椎関節突起の先端を示す図である。
【図9B】下脊椎関節突起の遠位端上の外科的に準備処置されたサイト上にインプラントするように構成された、円錐形プロテーゼの好適な実施例を示す図である。
【図9C】図9Bに示すプロテーゼの、図9Bにおいて9C−9Cで示す平面における断面図である。
【図9D】図9Bに示すプロテーゼの、図9Bにおいて9D−9Dで示す平面における断面図である。
【図10】本発明のプロテーゼの円錐形上位要素の別の実施形態を示す図である。
【図11】脊椎の下脊椎関節突起にインプラントされた図10の円錐形上位要素を示す図である。
【図12A】本発明のプロテーゼの下位カップ状要素を脊椎運動分節の尾側脊椎に固定するための拡張可能なスリーブ要素即ち締結具を示す図である。
【図12B】図12Aの拡張可能なスリーブの、図12Aの12Bで表示した方向から見た断面図である。
【図12C】図12Aの拡張可能なスリーブの、図12Aで12Cと表示した方向から見た断面図である。
【図12D】図12Aの拡張可能なスリーブと共に用いるのに適した椎弓根ネジを示す図である。
【図12E】図12Aと図12Dに示すスリーブと椎弓根ネジが組み付けられた状態を示す図である。
【図12F】図12Dのアセンブリの端部を図12Dで12Eで表示した方向から見た図であり、拡張された被覆を示す図である。
【図13A】脊椎運動分節の図式的側面図であって、本発明のプロテーゼの下位カップ状要素をインプラントするサイトを提供するために切除しうる上脊椎関節突起の異なる量の1つを示す図である。
【図13B】脊椎運動分節の図式的側面図であって、本発明のプロテーゼの下位カップ状要素をインプラントするサイトを提供するために切除しうる上脊椎関節突起の異なる量の1つを示す図である。
【図13C】脊椎運動分節の図式的側面図であって、本発明のプロテーゼの下位カップ状要素をインプラントするサイトを提供するために切除しうる上脊椎関節突起の異なる量の1つを示す図である。
【図14A】上脊椎関節突起の異なる切除量に適したプロテーゼのカップ状下位要素の異なる実施形態の1つを示す図である。
【図14B】上脊椎関節突起の異なる切除量に適したプロテーゼのカップ状下位要素の異なる実施形態の1つを示す図である。
【図14C】上脊椎関節突起の異なる切除量に適したプロテーゼのカップ状下位要素の異なる実施形態の1つを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体脊柱の脊椎運動分節内の椎間関節を置換するための人工器官インプラントであって、
脊椎運動分節の頭側脊椎の下脊椎関節突起上に外科的に準備処置されたサイトにインプラントするように構成された上位要素であって、概ね円錐形の滑らかな外表面と前記頭側脊椎の下脊椎関節突起上のテーパを付けた切除部分にインプラントするように構成されたテーパを付けた内部キャビティとを有する概ね円錐形のプロテーゼからなる上位要素と、
脊椎運動分節の尾側脊椎の上脊椎関節突起上に外科的に準備処置されたサイトにインプラントするように構成された下位要素であって、側壁を有し前記上位要素の円錐形外表面を受容するように構成されたカップと、前記上脊椎関節突起上の前記外科的に準備処置されたサイトにインプラントするように構成された基部とからなる下位要素と、
を備える人工器官インプラント。
【請求項2】
前記概ね円錐形のプロテーゼの前記テーパを付けたキャビティは概ね三角形の断面を有することを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項3】
前記概ね円錐形のプロテーゼの前記テーパを付けたキャビティは多孔質表面を備えることを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項4】
前記上位要素の前記概ね円錐形のプロテーゼは丸みを付けた先端を有することを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項5】
前記概ね円錐形のプロテーゼは前記概ね円錐形のプロテーゼを前記下脊椎関節突起に取り付けるための少なくとも1つの延長部を備えることを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項6】
前記延長部は、骨ネジのための孔を有することを特徴とする請求項6記載の人工器官インプラント。
【請求項7】
前記延長部は、前記下脊椎関節突起の少なくとも一部のまわりに折り曲げるための、少なくとも1つのタブを備えることを特徴とする請求項6記載の人工器官インプラント。
【請求項8】
前記下位要素の前記カップは滑らかな内表面を有することを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項9】
前記下位要素の前記カップの前記側壁はその内方―前側部において取り去られていることを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項10】
前記カップの前記側壁はその前側部において上方かつ外方に延在することを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項11】
前記カップ要素の前記基部は椎弓根ネジ用の孔を備えることを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項12】
前記カップ要素の前記基部は、隣接する解剖学的構造の周りに折り曲げるように構成されたタブを備えることを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項13】
前記タブは前記尾側脊椎の横突起の一部の周りに折り曲げるように構成されていることを特徴とする請求項9記載の人工器官インプラント。
【請求項14】
前記下位要素の前記基部は、概ね円錐形のサイトを提供するように切除された前記上脊椎関節突起上のサイトにインプラントするよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項15】
前記下位要素の前記基部は、概ね平坦なサイトを提供するように切除された前記上脊椎関節突起上のサイトにインプラントするよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項16】
前記下位要素の前記基部は、概ねドーム形のサイトを提供するように切除された前記上脊椎関節突起上のサイトにインプラントするよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の人工器官インプラント。
【請求項17】
椎弓根ネジのための拡張可能なスリーブであって、第1端と第2端とを有し、前記第1端側の楕円円柱形部分と、前記楕円円柱部分から前記第2の端に向かって軸方向に延在する径方向外側に折り曲げ可能な複数のフィンガーと、前記第1端から前記第2端に延在し前記第1端から前記第2端に向かってテーパのついたテーパ軸方向ボアとを有するスリーブ。
【請求項18】
人体脊椎の脊椎運動分節の変性した椎間関節を置換する方法であって、変性した椎間関節の少なくとも一部を除去することと、除去された部分を請求項1記載の人工器官インプラントで置換することからなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−537768(P2007−537768A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520393(P2006−520393)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/023074
【国際公開番号】WO2005/009302
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506018053)
【氏名又は名称原語表記】LEE, Casey, K.
【Fターム(参考)】