検体中の標的核酸を検出するためのキットおよび方法
【課題】PCR増幅産物を二本鎖のまま特異的に検出しうるキットおよび検出方法を提供すること。
【解決手段】検体中の標的核酸を検出するためのキットは、前記標的核酸がレジオネラ属菌遺伝子であり、前記遺伝子中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されたプライマー対を含む。
【解決手段】検体中の標的核酸を検出するためのキットは、前記標的核酸がレジオネラ属菌遺伝子であり、前記遺伝子中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されたプライマー対を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジンクフィンガー蛋白質を用いるレジオネラ属菌(Legionella species)遺伝子を検出するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、浴槽、プール、人工池、人工河川等を備えたレジャー施設、医療施設、介護施設等でレジオネラ症の発生が多く報告されている。レジオネラ症の報告例としては、例えばビル内での集団感染、病院内においての院内感染、温泉施設においての集団感染が挙げられる。
【0003】
レジオネラ症は、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)等に代
表されるレジオネラ属菌によって引き起こされる感染症であり、レジオネラを含むエアロゾルまたは水の吸引による経気道感染のみならず、特に新生児の院内感染においては、経口感染、外傷からの感染の可能性も考えられている。レジオネラ属菌は、特に温水で繁殖し易いため、温泉等で病気の療養をかねた湯治が免疫力の弱まった老人の肺炎を引き起こすという事例も報告されている。
【0004】
ところで、レジオネラ属菌の検査方法としては、例えば、培養法や核酸増幅法であるPCR法、LAMP法が知られている。培養法は、レジオネラを培養により増殖させて検出する方法である。しかしながら、レジオネラ属菌は、増殖させるのがきわめて難しい菌であり、培養法によりレジオネラ属菌の検出を行う場合、レジオネラ属菌が検出可能な程度に増殖するまでに時間がかかり、検出結果が得られるまでに時間がかかるという問題がある。一方、PCR法等は、レジオネラの遺伝子を増幅して検出する方法である。しかしながら、PCR法等では、二本鎖の遺伝子を一本鎖にする必要があるため、時間および手間がかかる。その原因としては、PCR法等では、PCR増幅産物をハイブリダイゼーションにより検出するために、二本鎖であるPCR増幅産物を変性させて一本鎖とした後に、プローブDNAとハイブリダイズさせなければならないことが挙げられる。また、上記PCR法では、(i)相補的なPCR増幅産物同士が互いに塩基対を形成する確率が高いため、プローブDNAのハイブリダイゼーション効率が低いこと、(ii)一旦解離した一本鎖が再び元の二本鎖に戻ってしまうため、ハイブリダイゼーション効率がきわめて悪いという問題がある。したがって、PCR増幅産物を二本鎖のまま検出する方法が求められている。
【0005】
二本鎖DNAを変性させずに分析する方法としては、支持体上に固定された二本鎖DNA認識物質を用いて、検体中の二本鎖DNAを分析する方法が開示されている(例えば、特開2002‐125700号公報)。この方法は、二本鎖DNA認識物質と検体中の二本鎖DNAとを結合させ、結合した二本鎖をインターカレーター、抗DNA抗体、DNA転写因子等を用いて検出することを特徴とする。しかしながら、この方法によっては、存在する二本鎖DNAの量を測定することは可能であっても、標的とする核酸を特異的に検出することは困難である。すなわち、インターカレーターまたは抗DNA抗体を用いて検出する場合には、塩基配列の選択性が殆ど得られず、DNA転写因子を用いて検出する場合には、認識配列の長さが短いため特異性の高い検出を行うことができない。
【0006】
また、PCR増幅産物を二本鎖のまま検出する方法として、例えば、特開2003−285706号公報には、ジンクフィンガー蛋白質を用いて、PCR増幅産物中のジンクフィンガー蛋白質配列を検出することによって、標的とする二本鎖DNAを特異的に検出できることが開示されている。しかしながら、この検出方法においては、ジンクフィンガー蛋白質とPCR増幅物との結合能を調べる際に、融合蛋白質を発現するファージを使用しているため、標的分子によっては分子認識能が十分ではなく、その結果、高感度なレジオネラ属菌の検出は困難となっている。このように、PCR増幅産物を二本鎖のまま検出する方法においては、より迅速でかつ簡便なレジオネラの検出が求められている。一方、上記遺伝子検査法としてのPCR法等は、検査に使用する装置が高価であり、その操作も煩雑であるため現在のところ普及には至っていないという問題点がある。
【特許文献1】特開2002−125700号公報
【特許文献2】特開2003−285706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によれば、検体中のレジオネラ属菌遺伝子等に代表されるレジオネラ属菌遺伝子のPCR増幅産物を二本鎖のまま特異的に検出しうる測定系(キット)および方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る検体中の標的核酸を検出するためのキットは、
前記標的核酸がレジオネラ属菌遺伝子であり、
前記遺伝子中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されたプライマー対を含む。
【0009】
上記キットにおいて、前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列に結合しうるジンクフィンガー蛋白質をさらに含むことができる。この場合、前記ジンクフィンガー蛋白質は、検出可能な標識により標識されている。この場合、前記ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態であることができる。また、この場合、前記タグポリペプチドはGSTであることができる。さらにこの場合、前記ジンクフィンガー蛋白質がZif268であり、前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GCGTGGGCG−3’であることができる。あるいは、この場合、前記ジンクフィンガー蛋白質がSP1であり、前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGGCGGGG−3’であることができる。あるいは、この場合、前記ジンクフィンガータンパク質がSP2であり、前記ジンクフィンガータンパク質認識配列が5’−GGGCGGGACT−3’であることができる。
【0010】
上記キットにおいて、前記標的核酸が、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子から選ばれる一であることができる。
【0011】
上記キットにおいて、前記プライマー対は、検出可能な標識により標識されていることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る検体中の標的核酸を検出する方法は、
前記標的核酸がレジオネラ属菌遺伝子であり、
(a)前記遺伝子中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されているプライマー対を用いて、検体中の核酸をPCR反応により増幅させること、および
(b)ジンクフィンガー蛋白質を用いて、前記増幅させることにより得られたPCR増幅産物を検出すること、
を含む。
【0013】
上記方法において、前記ジンクフィンガー蛋白質は、検出可能な標識により標識されていることができる。この場合、前記ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態であることができる。また、この場合、前記タグポリペプチドはGSTであることができる。
【0014】
上記方法において、前記ジンクフィンガー蛋白質がZif268であり、前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GCGTGGGCG−3’であることができる。
【0015】
上記方法において、前記ジンクフィンガー蛋白質がSP1であり、前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGGCGGGG−3’であることができる。
【0016】
上記方法において、前記ジンクフィンガータンパク質がSP2であり、前記ジンクフィンガータンパク質認識配列が5’−GGGCGGGACT−3’であることができる。
【0017】
上記方法において、前記標的核酸が、レジオネラ・ニューモフィリアの2‐デオキシ‐D‐グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子から選ばれる一であることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のキットおよび検出方法によれば、ジンクフィンガー蛋白質は二本鎖に結合するため、PCR増幅産物を変性させて一本鎖に解離させる必要がない。このため、標的核酸であるレジオネラ属菌遺伝子の検出をより迅速かつ簡便に行うことができる。
【0019】
また、本発明のキットおよび検出方法によれば、ジンクフィンガー蛋白質の形態をタグペプチドとの融合蛋白質とすることにより、簡易かつ高感度にレジオネラ属菌遺伝子を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る標的核酸を検出するためのキットおよび方法について詳細に説明する。
【0021】
1.検体中の標的核酸を検出するための方法
本発明の一実施形態に係る検体中の標的核酸(レジオネラ属菌遺伝子)を検出するための方法(以下、単に「検出方法」ともいう)は、(a)標的核酸中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されているプライマー対を用いて、検体中の核酸をPCR反応により増幅させること、および(b)ジンクフィンガー蛋白質を用いて、増幅させることにより得られたPCR増幅産物を検出することを含む。
【0022】
1.1.ジンクフィンガー蛋白質
ジンクフィンガー蛋白質は、特定のDNA配列(ジンクフィンガー蛋白質認識配列)に特異的に結合しうるジンクフィンガーモチーフを有する蛋白質である。これまでに数百種類以上のジンクフィンガー蛋白質が同定されている。
【0023】
ジンクフィンガーモチーフは、典型的には、4個の残基(2個のシステイン残基および2個のヒスチジン残基)を含む長さ約30アミノ酸のモチーフであり、逆平衡二本鎖β構造およびαヘリックスから主に構成され、これらの4個の残基が亜鉛イオンに配位している立体構造を有している。
【0024】
ジンクフィンガーモチーフは、特定の配列を有する二本鎖DNAと特異的に結合することができる。例えば、マウス由来のジンクフィンガー蛋白質であるZif268は3連のジンクフィンガーモチーフを有し、5’−GCGTGGGCG−3’の9個の連続するDNA配列を認識して、該DNA配列を含む二本鎖DNAに特異的に結合することができる。また、例えば、ヒト由来のジンクフィンガー蛋白質であるSP1(転写制御因子)もまた3連のジンクフィンガーモチーフを有し、5’−GGGGCGGGG−3’の9個の連続するDNA配列を認識して、該DNA配列を含む二本鎖DNAに特異的に結合することができる。
【0025】
ジンクフィンガー蛋白質と標的とする二本鎖DNAとの結合に際しては、標的とする二本鎖DNAの主溝にαヘリックス部位が挿入されるため、ジンクフィンガー蛋白質が認識するDNAの配列は、ジンクフィンガー蛋白質のαヘリックスのアミノ酸配列により決定される。これまでに、それぞれ独特のDNA配列を認識する数千種類のジンクフィンガーモチーフが同定されている。αヘリックスのアミノ酸配列と認識されるDNA配列との関係をより詳細に解明することにより、目的とする特定のDNA配列を認識するジンクフィンガー配列を設計することも可能となると考えられる。また、ファージディスプレイにより作製されたジンクフィンガーペプチドのライブラリを用いて、目的とする特定のDNA配列を認識しうるジンクフィンガー配列を選択する方法が知られている。
【0026】
本実施形態に係る検出方法によれば、ジンクフィンガー蛋白質を用いることにより、標的とする二本鎖DNAを特異的に検出することができる。
【0027】
ジンクフィンガー蛋白質としては、例えば、認識部位が明らかにされている既知のいずれのジンクフィンガー蛋白質を用いてもよく、あるいは、所望の認識部位を有するように遺伝子工学的に改変されているジンクフィンガー蛋白質を用いてもよい。当該技術分野においては、ジンクフィンガー蛋白質の認識配列を変更する種々の方法が試みられている。
【0028】
また、ジンクフィンガー蛋白質は検出可能な標識により標識されていてもよい。これにより、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質を容易に検出することができる。このような標識としては、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチン、アビジン等のアフィニティー標識、酵素標識等が挙げられる。なお、ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態であってもよい。この場合、タグポリペプチドとしては、例えばGST(グルタチオンS‐トランスフェラーゼ)やHisタグ、MBP(マルトース結合タンパク質)が挙げられる。タグポリペプチドを上述の標識で標識化して、該標識の量または存在を検出することにより、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質を検出することができる。
【0029】
あるいは、ジンクフィンガー蛋白質は、適当な宿主中で組換え蛋白質として発現させてもよい。あるいは、ジンクフィンガー蛋白質は、組換えファージ中で発現させてファージ上に提示させることができる。このことにより、組換えジンクフィンガー蛋白質を精製することなく利用することができ、ファージに対する抗体を用いてジンクフィンガー蛋白質を容易に検出することができる。このようなファージディスプレイの手法は当該技術分野においてよく知られており、また、本明細書の実施例においても詳細に記載されている。
【0030】
1.2.核酸の調製
本実施形態に係る検出方法においては、まず、試験対象の検体から核酸(DNA)を調製する。検体としては、菌体の培養物、水(例えば、浴槽・プール・人工池・人工河川等で使用される水、水道水、汚水、生活排水、工業排水、農業排水、井戸水、湖水、海水、河川水、沼水、池水、湧水、温泉水)、農産物、食品、医薬品、化粧品、ならびに検査すべき動物およびヒトからの組織、体液、血液、唾液、汗、尿、糞便、喀痰、空調機室外冷却塔の冷却水、貯湯タンク水、給湯系水、加湿器の水、生物膜(バイオフィルム)(ここで、生物膜とは、壁面に付着した微生物が増殖するとともに、粘液性物質を体外に産出し、これらが混在、結合して形成されたものをいう。)、原生動物(アメーバなど)、循環浴槽のろ過装置(ろ過装置がアメーバの定着、増殖場所である場合、そのアメーバ細胞中でレジオネラ菌が増殖する。)などを用いることができる。このようなサンプルから核酸(DNA)を調製する手法は当該技術分野においてよく知られている。あるいは、試験すべきサンプルからRNAを調製し、定法によりcDNAを合成してもよい。
【0031】
1.3.(a)PCR反応による核酸の増幅
本実施形態に係る検出方法は、(a)標的核酸であるレジオネラ属菌遺伝子中のジンクフィンガー蛋白質により認識される配列を増幅しうるよう設計されたプライマー対を用いて、検体中の核酸をPCR反応により増幅させることを含む。すなわち、検体中の核酸(DNA)をテンプレートとして、プライマー対および耐熱性DNAポリメラーゼを用いて、PCR増幅を行う。ここで用いられるPCR増幅の条件および方法は当該技術分野においてよく知られている。
【0032】
ジンクフィンガー蛋白質により認識される配列は、その長さが比較的短いため配列の出現頻度が高く、目的とする標的核酸配列中のみならず、検体中に存在しうる他の核酸中にも多数見いだされることが予測される。
【0033】
例えば、Zif268およびSP1、SP2により認識される配列はいずれも、9−10個の連続するヌクレオチドからなり、このような配列は約26万塩基に1個の確率で存在する。したがって、検出の特異性を高めるためには、ジンクフィンガー蛋白質認識配列の周囲の配列についての広範囲な検索を行って、適切なPCRプライマーを設計する必要がある。
【0034】
PCRプライマーは、ジンクフィンガー蛋白質により認識される配列を含む配列領域が特異的に増幅されるように設計される。このためには、まず検出すべき生物(例えば、微生物、細菌、ウイルスなど)のゲノム配列中のジンクフィンガー認識配列を検索する。
【0035】
例えば、ジンクフィンガー蛋白質としてZif268を用いる場合、その認識配列であるGCGTGGGCGを含む遺伝子を同定する。次に、この認識配列の5’側および3’側の配列に基づいて、認識配列を増幅しうるプライマー対を選択する。同様に、例えば、ジンクフィンガー蛋白質としてSP1を用いる場合、その認識配列であるGGGGCGGGGを含む遺伝子を同定する。次に、この認識配列の5’側および3’側の配列に基づいて、認識配列を増幅しうるプライマー対を選択する。同様に、例えば、ジンクフィンガー蛋白質としてSP2を用いる場合、その認識配列であるGGGCGGGACTを含む遺伝子を同定する。次に、この認識配列の5’側および3’側の配列に基づいて、認識配列を増幅しうるプライマー対を選択する。
【0036】
プライマーの長さは、好ましくは12−30ヌクレオチド、より好ましくは15−25ヌクレオチドである。さらに、プライマーの選択においては、各プライマーが、分子内に二次構造を形成せず、融解温度がPCR反応に適した温度(例えば約58−63℃の範囲内)である等の、当該技術分野において知られるプライマー選定の基準も考慮すべきである。各プライマーとジンクフィンガー認識配列の間の距離は任意に選択することができ、ジンクフィンガー認識配列の5’側と3’側とでプライマーとの距離が同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
好ましくは、プライマーとジンクフィンガー認識配列との距離は0から500bpであり、より好ましくは0から300bpである。距離が0であるとは、後述の実施例において例示されるように、ジンクフィンガー認識配列に隣接してプライマーが配置されることを意味する。この距離が長いほど検出の特異性は高くなるが、検体中の核酸が分解・切断されていると検出されないため、糞便や生検組織切片を検体として用いる場合には、150bpより短いことが好ましい。次に、PCRにより増幅される配列、すなわち、両方のプライマーとジンクフィンガー認識配列とを含む配列について、検体中に存在する可能性のある他の核酸中にこれと相同な配列が存在しないことを確認する。これにより、標的核酸のみが特異的に検出されるようにすることができる。
【0038】
このようにして設計されたプライマー対の各オリゴヌクレオチドは、例えば汎用のDNA合成装置(例えば、Applied Biosystems社製 Model 394)を用いて化学的に合成することができる。オリゴヌクレオチドは、当該技術分野においてよく知られる他の方法のいずれかを用いて合成してもよい。
【0039】
1.4.(b)PCR増幅産物の検出
本実施形態に係る検出方法は、上記(a)PCR反応による核酸の増幅の後、(b)ジンクフィンガー蛋白質を用いて、増幅させることにより得られたPCR増幅産物を検出することを含む。具体的には、上記(a)で得られたPCR増幅産物とジンクフィンガー蛋白質とを接触させ、ジンクフィンガー蛋白質がPCR増幅産物に結合するか否かを検出することができる。
【0040】
例えば、標識によって適切に標識されたジンクフィンガー蛋白質を用いる場合、この標識の量を測定することにより、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質の存在または量を測定することができる。
【0041】
例えば、ジンクフィンガー蛋白質がタグポリペプチド(例えばGST)との融合蛋白質の形態である場合、タグポリペプチドに特異的な抗体を用いるELISAによって、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質を検出することができる。
【0042】
より具体的には、例えば、タグポリペプチドがGSTである場合、抗GST抗体を融合蛋白質のGST(抗原)部分に結合させ、未結合抗体を洗浄除去した後に、酵素反応や蛍光反応等によりGST(タグポリペプチド)の存在または量を測定することにより、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質の存在または量を測定することができる。
【0043】
または、PCR増幅産物を標識し、該標識されたPCR増幅産物を検出することにより、PCR増幅産物とジンクフィンガー蛋白質との結合を検出してもよい。このような標識は、PCR反応に用いるプライマー対をあらかじめ標識しておくか、あるいは、PCR増幅反応中に標識ヌクレオチドを取り込ませることにより行うことができる。
【0044】
標識の方法は当該技術分野においてよく知られており、標識としては、放射性標識、蛍光標識、ビオチン、アビジン等のアフィニティー標識等を用いることができる。または、インターカレーター法や蛍光偏光法を用いてジンクフィンガー蛋白質に結合した二本鎖DNAを検出してもよい。
【0045】
あるいは、ファージ上に提示されたジンクフィンガー蛋白質を用いる場合、このファージに特異的な抗体を用いるELISAを用いて検出することができる。すなわち、適切に標識された抗ファージ抗体を結合させ、未結合抗体を洗浄除去した後に、酵素反応、蛍光反応などにより標識の存在または量を測定することにより、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質の存在または量を測定することができる。
【0046】
1.5.用途
本実施形態に係る検出方法の1つの好ましい用途は、検体中の標的核酸(レジオネラ属菌遺伝子)を近縁の細菌と区別して検出することである。
【0047】
本実施形態に係る検出方法によって検出可能なレジオネラ属菌としては、特に限定されないが、例えば、レジオネラ・ニューモフィリア(L. pneumophilia)、レジオネラ・ボゼマニイ(L. bozemanii)、レジオネラ・ミクダデイ(L. micdadei)、レジオネラ・ロング
ビーチ(L. longbeachae)、レジオネラ・ワドスワヒ(L. wadsworthii)、レジオネラ・ハッケリー(L. hackeliae)、レジオネラ・ビルミングハメンシス(L. birminghamensis)、レジオネラ・シンシナティエンシス(L. cincinnatiensis)、レジオネラ・ツクソネンシス(L. tucsonensis)、レジオネラ・ランシンジェネンシス(L. lansingenensis)
、レジオネラ・デュモフィ(L. dumoffii)、レジオネラ・ゴルマニィ(L. gormanii)、レジオネラ・ヨルダニス(L. jordanis)、レジオネラ・オークリジェンシス(L. oakridgensis)、レジオネラ・フェレイ(L. feeleii)、レジオネラ・サインテレンシス(L. sainthelensis)、レジオネラ・パリシエンシス(L. parisiensis)、レジオネラ・マッシェンケルニィー(L. maceachernii)、レジオネラ・アニサ(L. anisa)、レジオネラ・サンティクルシス(L. santicrucis)が挙げられる。
【0048】
レジオネラ菌の検出およびレジオネラ症の診断のためには、レジオネラ属菌を他の細菌と区別して検出することが必要である。
【0049】
レジオネラ属菌遺伝子の検出方法としては、一般に、分離培養法による培養とその形態学的観察、血清学的検査、特異的プローブを用いたハイブリダイゼーション、およびPCR増幅とハイブリダイゼーションとの組み合わせが用いられている。しかしながら、上述したように、レジオネラ属菌は、培養により増やすことが難しい菌であるため、培養による方法では日数がかかるという問題がある。
【0050】
後述の実施例に詳細に説明されるように、本実施形態に係る検出方法によれば、レジオネラ属菌遺伝子(例えばレジオネラ・ニューモフィリア遺伝子)を他の細菌と区別して特異的に検出することができる。
【0051】
例えば、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子を特異的に検出するためのPCR増幅の標的配列としては、ジンクフィンガー蛋白質としてZif268を使用する場合、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子(例えば、Legionella pneumophilia str.Philadelphia 1 2−deoxy−D−gluconate−3−dehydrogenase gene、Legionella pneumophilia str.Lens 2−deoxy−D−gluconate−3−dehydrogenase gene、Legionella pneumophilia str.Paris 2−deoxy−D−gluconate−3−dehydrogenase gene)中のジンクフィンガー蛋白質認識配列を含むことが好ましく、
ジンクフィンガー蛋白質としてSP1を使用する場合、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子(例えば、Legionella pneumophilia str.Philadelphia flhA gene、Legionella pneumophilia str.Lens flhA gene、Legionella pneumophilia str.Paris flhA gene)中のジンクフィンガー蛋白質認識配列を含むことが好ましい。また、ジンクフィンガー蛋白質としてSP2を使用する場合、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophila)の膜貫通蛋白質(transmembrane protein)の遺伝子(locus_tag = lpg1883)(例えば、Legionella pneumophila str. Philadelphia transmembrane proteinの gene、Legionella pneumophilia str. Lens transmembrane proteinの gene、Legionella pneumophilia str.Paris transmembrane proteinの gene)中のジンクフィンガー蛋白質認識配列を含むことが好ましい。
【0052】
したがって、レジオネラ・ニューモフィリアの2‐デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)の膜貫通蛋白質(transmembrane protein)の遺伝子(locus_tag = lpg1883)はそれぞれ、ジンクフィンガー蛋白質(Zif268、SP1、SP2)による検出の標的遺伝子であるのが好ましい。
【0053】
2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子は、2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼの生成に関与する遺伝子であり、2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼは炭水化物の代謝に関与する。
【0054】
flhA遺伝子は、鞭毛の生合成蛋白質であるFlhA(flagellar biosynthetic protein)の生成に関与する遺伝子であり、FlhAは走化性、運動性、細胞分裂に関与する。
【0055】
膜貫通蛋白質(transmembrane protein)の遺伝子(locus_tag = lpg1883)は、膜貫通型の蛋白質の生成に関与する遺伝子であるが、蛋白質の詳細は不明である。
【0056】
1.6.作用効果
本実施形態に係る検出方法によれば、PCR増幅産物の二本鎖の変性工程を必要としないため、検体中の標的核酸(レジオネラ属菌遺伝子、例えばレジオネラ・ニューモフィリア遺伝子)を高感度でかつ特異的に簡便に検出することができる。また、本実施形態に係る検体中の標的核酸の検出方法は、例えばセンサや電極を使用することにより、検体中の標的核酸を検出するための装置により実施することができる。
【0057】
2.キット
本発明の一実施形態に係る検体中の標的核酸(レジオネラ属菌遺伝子)を検出するためのキット(以下、単に「キット」ともいう)は、上述のプライマー対を含む。また、本実施形態に係るキットは、上述のジンクフィンガー蛋白質をさらに含むことができる。この場合、ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態であることができ、この場合、タグポリペプチドはGSTであるのが好ましい。
【0058】
また、本実施形態に係るキットは、標的核酸が、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)の膜貫通蛋白質(transmembrane protein)の遺伝子(locus_tag = lpg1883)から選ばれる一であることが好ましい。
【0059】
なお、ジンクフィンガー蛋白質は適当な担体上に固定化されて用いられてもよい。固定化されたジンクフィンガー蛋白質に上述のPCR増幅産物を結合させ、結合した二本鎖DNAの量を測定することにより、標的核酸を検出することができる。このような態様においては、PCR増幅産物が検出可能なように標識されていることが好ましい。
【0060】
3.実施例
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
3.1.実施例1
[レジオネラ・ニューモフィリアゲノム中のZif268認識配列の選択]
まず、NCBI nucleotide BLAST Search for short nearly exact matchesを用いて、レ
ジオネラ・ニューモフィリアのゲノム中からZif268認識配列であるgcgtgggcgの9塩基の配列を検索した(図1参照)。レジオネラ・ニューモフィリアのゲノム配列は先の報告にしたがった(GenBank受託番号:AE017354(Strain Philadelphia 1),CR628337(Strain Lens),CR628336(Strain Paris))。次に、この9塩基配列の5’側および3’側のそれぞれ20塩基をプライマー領域として含む連続する49塩基配列についてBLASTで検索し、他の細菌が類似した配列を有するか否かを調べた(図2参照)。さらに、その遺伝子の比較対照となる他の遺伝子配列の多さ、進化速度、水平移動能の有無等を基準として、標的とすべき遺伝子を選択した。
【0062】
その結果、Zif268の認識配列およびその5’側および3’側のプライマー領域は、レジオネラ・ニューモフィリアの糖代謝関連遺伝子(2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子)と高い相同性を示すことが明らかになった。以上の結果より、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子を標的遺伝子として選択した。
【0063】
図2は、3種のレジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子のZif268認識配列(結合部位)を含む49bpの配列アライメントを示す。図2によれば、Zif268認識配列およびその5’側および3’側の各20bpのプライマー領域を含む49bpの塩基配列は、レジオネラ・ニューモフィリア間で高い相同性を示すのに対して、確認を行った他の生物の遺伝子に対する相同性は低かった。これにより、Zif268認識配列およびその5’側および3’側の各20bpのプライマー領域を含む49bpの塩基配列を標的配列として用いることにより、レジオネラ・ニューモフィリア(特にLegionella pneumophilia str. Philadelphia 1)を特
異的に検出できると考えられる。
【0064】
3.2.実施例2
[Zif268−GST融合蛋白質の調製]
本実施例において、Zif268−GST融合蛋白質の調製は下記の手順で行った。
【0065】
マウス骨格筋cDNAライブラリ(TaKaRa)から、制限酵素サイト(SfiI、NotI)を導入したZif268のDNA結合部位の構造遺伝子を増幅し、それを制限
酵素消化した後、ファージミドベクターpCANTAB5に挿入し、ベクターpCAN/Zif268を得た。
【0066】
得られたベクターpCAN/Zif268から、制限酵素サイト(BamHI、EcoRI)を導入したZif268構造遺伝子(300bp)をPCR増幅し、TAクローニングすることにより、ベクターpGEM/Zif268を得た。これを増幅し、制限酵素処理した後、Schistosoma japonicum(日本住血吸虫)由来GST融合発現ベクターpGEX
−2Tとライゲーションすることにより、ベクターpGEX/Zif268を得た。Zif268構造遺伝子およびpGEX−2Tの塩基配列は、先の報告に従った(GenBank受託番号:NM_007913(Zif268構造遺伝子)、U13850(pGEX−2T)。Zif268構造遺伝子とGST構造遺伝子間のリンカー配列は、LVPRGSである。
【0067】
ベクターpGEX/Zif268を大腸菌BL21株に導入した後、この大腸菌BL21株を37℃で培養し、0.1mM IPTGにより発現を誘導した。その後、集菌および洗浄し、フレンチプレスにより菌体を破砕した。菌体破砕物の水溶性画分を、GSTrap(商標)HFカラムを用いてアフィニティー精製することにより、Zif268−GST融合蛋白質を得た。GST活性測定およびSDS−PAGEを行うことにより、hSP1−GST融合蛋白質の精製度を確認した。
【0068】
3.3.実施例3
[Zif268−GST融合蛋白質と標的二本鎖DNAとの結合能の確認]
本実施例では、実施例2で得られたZif268−GST融合蛋白質と二本鎖DNAとの結合能をELASAによって確認した。本実施例で用いたELASA用キット(標的核酸検出用キット)の構成を図3に示す。
【0069】
また、二本鎖DNAの配列を図4および以下に示す(No.1〜No.7)。なお、「Bio」はビオチンを示し、下線はジンクフィンガー蛋白質認識配列である。
No.1: Zif268−L.pneumophila Philadelphia 1 target(標的1)
Bio 5'−ATTGGTGTTCCGGAAGATAT CGC CCA CGC AATTGTGTTTTTGCTTAATC−3'
3'−TAACCACAAGGCCTTCTATA GCG GGT GCG TTAACACAAAAACGAATTAG−5'
No.2: Zif268−L.pneumophila Lens target(標的2)
Bio 5'−ATTGGTGTTCCGGAAGATAT TGC CCA CGC AATTGTGTTTTTGCTTAATC−3'
3'−TAACCACAAGGCCTTCTATA ACG GGT GCG TTAACACAAAAACGAATTAG−5'
No.3: Zif268−L.pneumophila random(比較例1、ランダム変異)
Bio 5'−ATTGGTGTTCCGGAAGATAT AGG CTC AGT AATTGTGTTTTTGCTTAATC−3'
3'−TAACCACAAGGCCTTCTATA TCC GAG TCA TTAACACAAAAACGAATTAG−5'
No.4: Zif268−S.typhiriumium target(比較例2)
Bio 5'−CAGAGCGTTGACTACCGAGA CGC CCA CGC CGTGCAGACCGCCGGAGACT−3'
3'−GTCTCGCAACTGATGGCTCT GCG GGT GCG GCACGTCTGGCGGCCTCTGA−5'
No.5: Zif268−S.typhiriumium random(比較例3)
Bio 5'−CAGAGCGTTGACTACCGAGA AGG CTC AGT CGTGCAGACCGCCGGAGACT−3'
3'−GTCTCGCAACTGATGGCTCT TCC GAG TCA GCACGTCTGGCGGCCTCTGA−5'
No.6: DNA未使用(対照1)
No.7: 蛋白質(Zif268−GST融合蛋白質)未使用(対照2)
ストレプトアビジン20でコートされたウエル(96穴プレート)18に、5’末端をビオチンで標識された一本鎖DNAとその相補鎖DNAからなる二本鎖DNA24(100pmol/ウエル)を添加し、室温で1時間インキュベートした後、2%スキムミルクを添加し、室温で1時間ブロッキングを行った。次に、融合蛋白質(実施例2で得られたZif268−GST融合蛋白質)26(5.7pmol/ウエル)を添加して、室温で1時間インキュベートした後、抗タグポリペプチド抗体28および基質酵素30(抗GST抗体−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)複合体溶液)を添加して室温で1時間インキュベートした。次いで、発色試薬32(ABTS溶液(0.4mM ABTS(2,2'−Azinobis(3−ethylbenzothiazolin−6−sulfonic Acid)、50mMクエン酸、0.2%H2O2、pH4.0))をウエル18に添加し、0、15、30、60分毎にプレートリーダーで波長405nmの光の吸光度を測定した。60分後の吸光度を図5に示す。
【0070】
図5によれば、二本鎖DNAとして標的1,2(No.1,No.2)を用いた場合、
ランダム変異二本鎖DNA(No.3,No.5)と比較して優位に吸光度が高かった。これにより、Zif268−GST融合蛋白質が標的二本鎖DNAに結合する能力を有することが理解できる。
【0071】
3.4.実施例4
[Zif268−GST融合蛋白質とPCR増幅産物との結合能の確認]
本実施例では、図6に示す各49bpの二本鎖DNAをテンプレートとして、PCRによるDNA増幅を行った。より具体的には、ビオチン修飾一本鎖DNA(センス鎖)およびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾された一本鎖DNA(アンチセンス鎖)(図6のNo.1〜No.6)を混合し、熱処理により各49bpの二本鎖DNAを得た。なお、図6のNo.1〜No.5の二本鎖DNAはそれぞれ、実施例2で用いた二本鎖DNA(No.1〜No.5)と同じ配列を有する。
【0072】
次に、各49bpの二本鎖DNAをテンプレートとして、95℃5分間→(95℃30秒間→48℃30秒間→74℃30秒間)×30回→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物をそれぞれ得た。各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図7に示す。図7によれば、標的二本鎖DNAがレジオネラ・ニューモフィリア遺伝子である場合(No.1およびNo.2)、目的とするビオチン標識49bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。
【0073】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例2で得られたZif268−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物(No.1〜No.6)との結合能をELASAによって確認した。その結果を図8に示す。
【0074】
図8によれば、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子中のDNA配列を用いて得られたPCR増幅産物(No.1およびNo.2)は、他のPCR増幅産物(No.3〜No.6)と比べて高い吸光度を示した。これにより、Zif268‐GST融合蛋白質が標的配列(Zif268認識配列)に特異的に結合することが理解できる。すなわち、Zif268‐GST融合蛋白質を用いて、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子中の標的配列を用いて得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0075】
3.5.実施例5
[レジオネラ・ニューモフィリアゲノム中のSP1認識配列の選択]
まず、NCBI nucleotide BLAST Search for short nearly exact matchesを用いて、レ
ジオネラ・ニューモフィリアのゲノム中からSP1認識配列であるggggcggggの9塩基の配列を検索した(図9参照)。レジオネラ・ニューモフィリアのゲノム配列は先の報告にしたがった(GenBank受託番号:AE017354(Strain Philadelphia
1),CR628337(Strain Lens),CR628336(Strain Paris))。次に、この9塩基配列の5’側および3’側のそれぞれ20塩基をプライマー領域として含む連続する49塩基配列についてBLASTで検索し、他の細菌が類似した配列を有するか否かを調べた(図10参照)。さらに、その遺伝子の比較対照となる他の遺伝子配列の多さ、進化速度、水平移動能の有無等を基準として、標的とすべき遺伝子を選択した。
【0076】
その結果、SP1の認識配列およびその5’側および3’側のプライマー領域は、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子と高い相同性を示すことが明らかになった。以上の結果より、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子を標的遺伝子として選択した。
【0077】
図10は、3種のレジオネラ属細菌のflhA遺伝子のSP1認識配列を含む49bpの配列アライメントを示す。図10によれば、SP1認識配列およびその5’側および3’側の各20bpのプライマー領域を含む49bpの塩基配列は、レジオネラ・ニューモフィリア間で高い相同性を示すのに対して、確認を行った他の生物の遺伝子に対する相同性は低かった。これにより、SP1認識配列およびその5’側および3’側の各20bpのプライマー領域を含む49bpの塩基配列を標的配列として用いることにより、レジオネラ・ニューモフィリア(特にLegionella pneumophilia str. Philadelphia 1)を特異
的に検出できると考えられる。
【0078】
3.6.実施例6
[SP1−GST融合蛋白質の調製]
本実施例においては、SP1−GST融合蛋白質の調製を図11に示す手順で行った。
【0079】
ヒトリンパ腺cDNAライブラリ(TaKaRa)から入手したSP1(hSP1)構造遺伝子(303bp)をPCR増幅し、TAクローニングすることにより、ベクターpGEM/hSP1 40を得た。次に、得られたベクターpGEM/hSP1 40に制限酵素サイト(SmaI、EcoRI)を導入することにより、hSP1遺伝子断片(302bp)42を得た。このhSP1遺伝子断片42を増幅し、制限酵素処理した後、Schistosoma japonicum(日本住血吸虫)由来由来GST融合発現ベクターpGEX−2Tとライゲーションすることにより、ベクターpGEX/hSP1 44を得た。hSP1構造遺伝子およびpGEX−2Tの塩基配列は、先の報告に従った(GenBank受託番号:NM_138473(hSP1構造遺伝子)、U13850(pGEX−2T))。Zif268構造遺伝子とGST構造遺伝子間のリンカー配列は、LVPRGSPGである。
【0080】
次いで、ベクターpGEX/hSP1 44を大腸菌BL21株に導入した後、この大腸菌BL21株を37℃で培養し、0.1mM IPTGにより発現を誘導した後、集菌および洗浄し、フレンチプレスにより菌体を破砕した。菌体破砕物の水溶性画分を、GSTrap(商標)HFカラムを用いてアフィニティー精製することにより、hSP1−GST融合蛋白質を得た。GST活性測定およびSDS−PAGEを行うことにより、hSP1−GST融合蛋白質の精製度を確認した。
【0081】
図12(a)および図12(b)にhSP1−GST融合蛋白質の電気泳動パターンを示す。図12(a)はIPTGにより発現を誘導した後、1時間、2時間、3時間、4時間の菌体破砕物の水溶性画分のSDS−PAGE結果を示し、図12(b)は各溶出画分のSDS−PAGE結果を示す。
【0082】
図12(a)および図12(b)のSDS−PAGE結果において、GSTのバンド(28kDa)とは異なる39kDaのシングルバンドが検出された。このバンドはhSP1‐GST融合蛋白質のものであると推測される。以上により、高純度のhSP1−GST融合蛋白質が得られたことが確認された。
【0083】
3.7.実施例7
[hSP1−GST融合蛋白質と標的二本鎖DNAとの結合能の確認]
本実施例では、実施例6で得られたhSP1−GST融合蛋白質と二本鎖DNAとの結合能を、実施例3と同様の方法(ELASA)によって確認した。
【0084】
また、用いた二本鎖DNAの配列を以下に示す(No.1〜No.6)。なお、「Bio」はビオチンを示し、下線はジンクフィンガー蛋白質認識配列である。
No.1: SP1−L.pneumophila Philadelphia 1 target(標的3)
Bio 5'−GATCCTGACTGA CCC CGC CCC CA GTGA−3'
3'−TGACT GGG GCG GGG GTCACTAG−5'
No.2: SP1−L.pneumophila Lens 1 mutation(比較例4、1塩基変異)
Bio 5'−GATCCTGACTGA CCC CAC CCC CAGTGA−3'
3'‐TGACT GGG GTG GGG GTCACTAG−5'
No.3: SP1−L.pneumophila 1 mutation−2(比較例5、1塩基変異)
Bio 5'−GATCCTGACTGA CCC CGC CCT CAGTGA−3'
3'−TGACT GGG GCG GGA GTCACTAG−5'
No.4: SP1−L.pneumophila 1 random(比較例6、ランダム変異)
Bio 5'−GATCCTGACTGA TCA ATC GCA CAGTGA−3'
3'−TGACT AGT TAG CGT GTCACTAG−5'
No.5: SP1−L.pneumophila 1 random−2(比較例7、ランダム変異)
Bio 5'−GATCCTGACTGA ATC CTC ATT CAGTGA−3'
3'−TGACT TAG GAG TAA GTCACTAG−5'
No.6: DNA未使用(対照)
ストレプトアビジン20でコートされたウエル(96穴プレート)18に、5’末端をビオチンで標識された一本鎖DNAとその相補鎖DNAからなる二本鎖DNA24(100pmol/ウエル)を添加し、室温で1時間インキュベートした後、2%スキムミルクを添加し、室温で1時間ブロッキングを行った。次に、融合蛋白質(実施例2で得られたSP1‐GST融合蛋白質)26(5.7pmol/ウエル)を添加して、室温で1時間インキュベートした後、抗タグポリペプチド抗体28および基質酵素30(抗GST抗体‐HRP複合体溶液)を添加して室温で1時間インキュベートした。次いで、発色試薬32(ABTS溶液(0.4mM ABTS、50mMクエン酸、0.2%H2O2、pH4.0))をウエル18に添加し、0、10、30、60分毎にプレートリーダーで波長405nmの光の吸光度を測定した。60分後の吸光度を図13に示す。
【0085】
図13によれば、二本鎖DNAとして標的3(No.1)を用いた場合、1塩基変異二本鎖DNA(No.2,No.3)およびランダム変異二本鎖DNA(No.4,No.5)と比較して吸光度が高かった。これにより、hSP1−GST融合蛋白質が二本鎖DNAに結合する能力を有することが理解できる。
【0086】
3.8.実施例8
[hSP1‐GST融合蛋白質と標的二本鎖DNAとの結合能の確認]
本実施例では、実施例6で得られたhSP1−GST融合蛋白質と二本鎖DNAとの結合能を、実施例7と同様の方法(ELASA)によって確認した。
【0087】
また、用いた二本鎖DNAの配列を図14および以下に示す(No.1〜No.4)。なお、「Bio」はビオチンを示し、下線はジンクフィンガー蛋白質認識配列である。
No.1: SP1−L.pneumophila target(標的1)
Bio 5'−GCACTTACTTCAGATACTCT CCC CGC CCC TTTTGTCACTACAACAAAGT−3'
3'−CGTGAATGAAGTCTATGAGA GGG GCG GGG AAAACAGTGATGTTGTTTCA−5'
No.2: SP1−L.pneumophila random(比較例8、ランダム変異)
Bio 5'−GCACTTACTTCAGATACTCT AGG CTC AGT TTTTGTCACTACAACAAAGT−3'
3'−CGTGAATGAAGTCTATGAGA TCC GAG TCA AAAACAGTGATGTTGTTTCA−5'
No.3: DNA未使用(対照1)
No.4: 蛋白質(hSP1−GST融合蛋白質)未使用(対照2)
標的1の配列は、Legionella pneumophila Philadelphia 1及びLens, Paris間で一致するものである。また、ELISAにより結合能を確認した結果を図15に示す。図15に示されるように、標的1(SP1−Legionella pneumophila Target配列)存在下においてのみ、高い吸光度が確認された。このことから、hSP1を用いることにより、レジオネラ属菌遺伝子(Legionella pneumophila philadelphia1, Lens, Paris)を特異的に検出することができることが理解できる。
【0088】
3.9.実施例9
[Zif268(またはhSP1)−GST融合蛋白質とPCR増幅産物との結合能の確認]
本実施例では、図16(a)および下記に示す各菌のゲノム(No.1〜No.4)の存在下、下記に示す各49bpの二本鎖DNA(A、B)をテンプレートとして、PCRによるDNA増幅を行った。より具体的には、ビオチン修飾一本鎖DNA(センス鎖)およびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾された一本鎖DNA(アンチセンス鎖)を混合し、熱処理により各49bpの二本鎖DNAを得た。なお、「Bio」はビオチンを示し、下線はジンクフィンガー蛋白質認識配列である。
【0089】
(テンプレート)
A: Zif268−L.pneumophila Philadelphia 1
Bio 5'−ATTGGTGTTCCGGAAGATAT CGC CCA CGC AATTGTGTTTTTGCTTAATC−3'
3'−TAACCACAAGGCCTTCTATA GCG GGT GCG TTAACACAAAAACGAATTAG−5' FITC
B: SP1‐L.pneumophila Philadelphia 1
Bio 5'−GCACTTACTTCAGATACTCT CCC CGC CCC TTTTGTCACTACAACAAAGT−3'
3'−CGTGAATGAAGTCTATGAGA GGG GCG GGG AAAACAGTGATGTTGTTTCA−5' FITC
(ゲノム)
No.1: Legionella pneumophila philadelphia1(NC_002942)
No.2: Escherichia coli DH5α(NC_000913:E.coli K12株 complete genome)
No.3: Lactobacillus Plantarum(IAM1216)
No.4: Proteus vulgaris(IAM1054)
各菌(No.1〜No.4)の存在下、各49bpの二本鎖DNAをテンプレートとして、95℃5分間→(95℃30秒間→48℃30秒間→74℃30秒間)×30回→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物をそれぞれ得た。各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図16(b)に示す。図16(b)によれば、レジオネラ・ニューモフィリアの存在下でPCR増幅を行った場合(No.1)、目的とするビオチン標識49bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。
【0090】
次いで、実施例3と同様の方法にて、PCR増幅産物と実施例2で得られたZif268−GST融合蛋白質との結合能、ならびに、PCR増幅産物と実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質との結合能をELASAによって確認した。その結果を図16(c)に示す。
【0091】
図16(c)によれば、テンプレートとしてA,Bのいずれを用いた場合においても、レジオネラ・ニューモフィリアの存在下で得られたPCR増幅産物(No.1)のみが高い吸光度を示した。これにより、ジンクフィンガー蛋白質がZif268およびSP1のいずれの場合においても、ジンクフィンガー蛋白質−GST融合蛋白質と標的配列とが特異的に結合することが理解できる。すなわち、ジンクフィンガー蛋白質‐GST融合蛋白質を用いて、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子中の標的配列を用いて得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0092】
3.10.実施例10
[SP1−GST融合蛋白質とPCR増幅産物の検出限界の確認]
本実施例では、種々のコピー数のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、PCRによるDNA増幅を行った。より具体的には、ビオチン修飾プライマーおよびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾プライマーを用いて、10000 コピー、1000コピー、100コピー、10コピー、0コピー のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、10000倍コピーのEscherichia coli DH5αゲノムおよびLactobacillus plantarumゲノム混在下で Herculase II fusion enzyme(STRATAGENE)を用い、95℃2分間→(95℃20秒間→55℃20秒間→74℃30秒間)×35回→74℃2分間→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。
【0093】
各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図17に示す。図17(A)によれば、100コピー以上のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとした場合、目的とするビオチン標識49bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。
【0094】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物との結合能をELASAによって確認した。その結果を図17(B)に示す。図17(B)によれば、100コピー以上のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物は、10コピーのテンプレート及びテンプレートを含まないPCR増幅産物と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP1−GST融合蛋白質が100コピー以上のテンプレートから増幅されたSP1認識配列を含むPCR増幅産物に特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP1−GST融合蛋白質を用いて、100コピー程度の少量のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムから得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0095】
3.11.実施例11
[SP1−GST融合蛋白質のPCR増幅産物に対する特異性の確認]
本実施例では、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、SP1認識配列を含む標的配列と認識配列を含まないコントロール配列をPCRによるDNA増幅を行い、SP1−GST融合蛋白質のPCR増幅産物に対する特異性を確認した。
より具体的には、異なるビオチン修飾プライマーおよびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾プライマーを用いて、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、SP1認識配列を含む49bpの標的配列と、認識配列を含まない49bpのコントロール配列(図18(A)参照)を95℃5分間→(95℃30秒間→48℃30病間→74℃30秒間)×30回→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。
【0096】
各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図18(B)に示す。図18(B)によれば、どちらのプライマーを用いてもLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムから、目的とするビオチン標識49bpのPCR増幅産物がそれぞれ得られたことが理解できる。
【0097】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物との結合能をELASAによって確認した。その結果を図18(C)に示す。図18(C)によれば、SP1標的配列のPCR増幅産物は、コントロール配列のPCR増幅産物と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP1−GST融合蛋白質がSP1認識配列を含むPCR増幅産物に特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP1−GST融合蛋白質を用いて、標的のPCR増幅産物とそれ以外のPCR増幅産物を特異的に区別することができることが明らかになった。
【0098】
3.12.実施例12
[蛍光偏光解消法を用いたSP1−GST融合蛋白質とPCR増幅産物との結合能の確認]
本実施例では、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとしてPCR増幅して得られたPCR増幅産物とSP1−GST融合蛋白質との結合能を蛍光偏光解消法により確認した。より具体的には、ビオチン修飾プライマーおよびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾プライマーを用いて、10000 コピー、1000コピー、100コピー、10コピー、0コピー のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、10000倍コピーのEscherichia coli DH5αゲノムおよびLactobacillus plantarumゲノム混在下で Herculase II fusion enzyme(STRATAGENE)を用い、95℃2分間→(95℃20秒間→55℃20秒間→74℃30秒間)×35回→74℃2分間→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。
【0099】
次いで、実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物との結合能を蛍光偏光解消法によって確認した。より具体的には、得られたPCR増幅産物とSP1−GST融合蛋白質を混合し、PCR増幅産物に修飾されているFITCの蛍光偏光度を励起波長485nm、蛍光波長530nmで測定した。PCR増幅産物にSP1−GST融合蛋白質が結合することによって、DNAに修飾されているFITCの回転が遅くなり、蛍光波長の偏光度が変化する。
【0100】
その結果を図19に示す。図19によれば、混合してから1分で、10コピー以上のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムから増幅されたPCR増幅産物は、テンプレートを含まないPCR増幅産物と比べて蛍光偏光度が大きく変化した。これにより、SP1−GST融合蛋白質が100コピー以上のテンプレートから増幅されたSP1認識配列を含むPCR増幅産物に特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP1−GST融合蛋白質を用いて、100コピー程度の少量のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムから得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0101】
3.13.実施例13
[レジオネラ・ニューモフィリアゲノム中のSP2標的配列の選択]
まず、NCBI nucleotide BLAST Search for short nearly exact matchesを用いて、Legionella pneumophilaのゲノム中からSP2認識配列であるGGGCGGGACTの10塩基の配列を検索した。Legionella pneumophilaのゲノム配列は先の報告にしたがった(GenBank受託番号:AE017354(Strain Philadelphia 1), CR628337(Strain Lens), CR628336(Strain Paris))。次に、この10塩基配列の5’側及び3’側にそれぞれ21塩基をプライマー領域として含む連続する52塩基配列についてBLASTで検索し、他の細菌が類似した配列を有するか否かを調べた。さらに、その遺伝子の比較対照となる他の遺伝子配列の多さ、進化速度、水平移動能の有無等を基準として、標的とすべき遺伝子を選択した。
【0102】
その結果、SP2の認識配列およびその5’側および3’側のプライマー領域は、レジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子(locus tag = lpg1883)と高い相同性を示すことが明らかになった。以上の結果より、レジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子(locus tag = lpg1883)を標的遺伝子として選択した。
【0103】
図20は、3種のLegionella属細菌の膜貫通蛋白質の遺伝子(locustae = lpg1883)のSP2認識配列を含む52bpの配列アライメントを示す。図20によれば、SP2認識配列およびその5’側および3’側の各21bpのプライマー領域を含む52bpの塩基配列は、レジオネラ・ニューモフィリア間で高い相同性を示すのに対して、確認を行った他の生物の遺伝子に対する相同性は低かった。これにより、SP2認識配列およびその5’側および3’側の各21bpのプライマー領域を含む52bpの塩基配列を標的配列として用いることにより、Legionella pneumophila Philadelphia1を特異的に検出できると考えられる。
【0104】
3.14.実施例14
[SP2−GST融合蛋白質の調製]
本実施例においては、SP2−GST融合蛋白質の調製を実施例6におけるSP1−GST融合蛋白質の調製と同様に図21に示す手順で行った。
【0105】
ヒトリンパ腺cDNAライブラリ(TaKaRa)から入手したSP2(hSP2)構造遺伝子(264bp)をPCR増幅し、TAクローニングすることにより、ベクターpGEM/hSP2を得た。次に、得られたベクターpGEM/hSP2に制限酵素サイト(BamHI、EcoRI)を導入することにより、hSP2遺伝子断片(276bp)を得た。このhSP2遺伝子断片を増幅し、制限酵素処理した後、Schistosoma japonicum(日本住血吸虫)由来GST融合発現ベクターpGEX−2Tとライゲーションすることにより、ベクターpGEX/hSP2を得た。hSP2構造遺伝子およびpGEX−2Tの塩基配列は、先の報告に従った(GenBank受託番号:AE017354(hSP2構造遺伝子)、U13850(pGEX−2T)。SP2構造遺伝子とGST構造遺伝子間のリンカー配列は、LVPRGSである。
【0106】
次いで、ベクターpGEX/hSP2を大腸菌BL21株に導入した後、この大腸菌BL21株を37℃で培養し、0.1mM IPTGにより発現を誘導した後、集菌および洗浄し、フレンチプレスにより菌体を破砕した。菌体破砕物の水溶性画分を、GSTrap(商標)HFカラムを用いてアフィニティー精製することにより、hSP2−GST融合蛋白質を得た。GST活性測定およびSDS−PAGEを行うことにより、hSP2−GST融合蛋白質の精製度を確認した。
【0107】
図22は各溶出画分のSDS−PAGE結果を示す。図22のSDS−PAGE結果において、GSTのバンド(28kDa)とは異なる34kDaのシングルバンドが検出された。このバンドはhSP2−GST融合蛋白質のものであると推測される。以上により、高純度のhSP2−GST融合蛋白質が得られたことが確認された。
【0108】
3.15.実施例15
[hSP2−GST融合蛋白質と標的二本鎖DNAとの結合能の確認]
本実施例では、実施例14で得られたhSP2−GST融合蛋白質と二本鎖DNAとの結合能を、実施例3と同様の方法(ELASA)によって確認した。
【0109】
また、用いた二本鎖DNAの配列を以下に示す(No.1〜No.3)。なお、「Bio」はビオチンを示し、下線はジンクフィンガー蛋白質認識配列である。
No.1: SP2-L.pneumophila target(標的1)
Bio 5'- AAGCCAGTCATTATTTTTTTA GGG CGG GACT CTGAACATAACAGGTTTTGTC -3'
3'- TTCGGTCAGTAATAAAAAAAT CCC GCC CTGA GACTTGTATTGTCCAAAACAG -5'
No.2: SP2-L.pneumophila 1-mutation(比較例1、1塩基変異)
Bio 5'- AAGCCAGTCATTATTTTTTTA GAG CGG GACT CTGAACATAACAGGTTTTGTC -3'
3'- TTCGGTCAGTAATAAAAAAAT CTC GCC CTGA GACTTGTATTGTCCAAAACAG -5'
No.3: SP2-L.pneumophila random(比較例2、ランダム変異)
Bio 5'- AAGCCAGTCATTATTTTTTTA CAC CCT GCGT CTGAACATAACAGGTTTTGTC -3'
3'- TTCGGTCAGTAATAAAAAAAT GTG GGA CGCA GACTTGTATTGTCCAAAACAG -5'
ストレプトアビジンでコートされたウエル(96穴プレート)に、5’末端をビオチンで標識された一本鎖DNAとその相補鎖DNAからなる二本鎖DNA(100pmol/ウエル)を添加し、室温で1時間インキュベートした後、2%スキムミルクを添加し、室温で1時間ブロッキングを行った。次に、融合蛋白質(実施例14で得られたSP2−GST融合蛋白質)26(5.7pmol/ウエル)を添加して、室温で1時間インキュベートした後、抗タグポリペプチド抗体および基質酵素(抗GST抗体−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)複合体溶液)を添加して室温で1時間インキュベートした。次いで、発色試薬(ABTS溶液(0.4mM ABTS(2,2'-Azinobis(3-ethylbenzothiazolin-6-sulfonic Acid)、50mMクエン酸、0.2%H2O2、pH4.0))をウエル18に添加し、0、15、30、60分毎にプレートリーダーで波長405nmの光の吸光度を測定した。60分後の吸光度を図23に示す。
【0110】
図23によれば、二本鎖DNAとして標的1(No.1)を用いた場合、1塩基変異及びランダム変異二本鎖DNA(No.2,No.3)と比較して優位に吸光度が高かった。これにより、SP2−GST融合蛋白質が標的二本鎖DNAに結合する能力を有することが理解できる。
【0111】
3.16.実施例16
[SP2−GST融合蛋白質とPCR増幅産物との結合能の確認]
本実施例では、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、PCRによるDNA増幅を行った。より具体的には、ビオチン修飾プライマーおよびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾プライマーを用いて、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、DNAポリメラーゼとしてHerculase II fusion enzyme(STRATAGENE)を用い、95℃2分間→(95℃20秒間→55℃20秒間→74℃30秒間)×35回→74℃2分間→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。コントロールとして、Escherichia coli DH5αゲノム、Proteum vulgaris (IAM 1025)ゲノムをテンプレートとして用い、またテンプレートを含まないサンプルも同様にPCR増幅を行い、PCR増幅産物をそれぞれ得た。
【0112】
各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図24(A)に示す。図24(A)によれば、テンプレートとしてLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いた場合(No.1)、目的とするビオチン標識52bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。
【0113】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例14で得られたSP2−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物(No.1〜4)との結合能をELASAによって確認した。その結果を図24(B)に示す。図24(B)によれば、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物(No.1)は、他のPCR増幅産物(No.2〜No.4)と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP2−GST融合蛋白質がSP2認識配列を含むPCR増幅産物に特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP2−GST融合蛋白質を用いて、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0114】
3.17実施例17
[SP2−GST融合蛋白質とPCR増幅産物の検出限界の確認]
本実施例では、種々のコピー数のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、PCRによるDNA増幅を行った。より具体的には、ビオチン修飾プライマーおよびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾プライマーを用いて、10000 コピー、1000コピー、100コピー、10コピー、0コピー のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、10000コピーのEscherichia coli DH5αゲノム混在下で Herculase II fusion enzyme(STRATAGENE)を用い、95℃2分間→(95℃20秒間→55℃20秒間→74℃30秒間)×35回→74℃2分間→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。
【0115】
各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図25(A)に示す。図25(A)によれば、10コピー以上のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとした場合、目的とするビオチン標識52bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。
【0116】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例14で得られたSP2−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物(No.1〜5)との結合能をELASAによって確認した。その結果を図25(B)に示す。図25(B)によれば、10コピー以上のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物(No.1〜4)は、テンプレートを含まないPCR増幅産物(No.5)と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP2−GST融合蛋白質が10コピー以上のテンプレートから増幅されたSP2認識配列を含むPCR増幅産物に特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP2−GST融合蛋白質を用いて、10コピー程度の少量のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムから得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0117】
3.18.実施例18
[PCR増幅産物に対するSP2−GST融合蛋白質の特異性の確認]
本実施例では、SP2の標的配列に対する特異性を確認した。より具体的には、認識配列及びプライマー領域に変異導入した配列、計10種類 (図26参照)をテンプレートとして、95℃2分間→(95℃20秒間→55℃20秒間→74℃30秒間)×35回→74℃2分間→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。
各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図27(A)に示す。図27(A)によれば、どの配列においても52bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。これはプライマー領域が類似しているからだと考えられる。
【0118】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例14で得られたSP2−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物(No.1〜10)との結合能をELASAによって確認した。その結果を図27(B)に示す。図27(B)によれば、標的配列のPCR増幅産物(No.1)は、類似した配列のPCR増幅産物(No.2〜10)と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP2−GST融合蛋白質は1〜2塩基の変異を認識し、標的配列のみに特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP2−GST融合蛋白質を用いて、標的配列を含むPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0119】
3.19.実施例19
[認識配列に対するSP2−GST融合蛋白質の特異性と検出限界の確認]
本実施例では、SP2の認識配列に対する特異性と結合能を確認した。より具体的には、実施例3と同様の方法にて、認識配列に変異導入された配列(図26参照)との結合能をELISAによって確認した。
【0120】
その結果を図28に示す。図28によれば、認識配列を含む(No.1、4、7)及び認識配列の4残基目に一塩基変異をもつ配列(No.5、6)は、類似した配列のPCR増幅産物(No.2〜3、8〜10)と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP2−GST融合蛋白質は認識配列の4残基目の変異を区別する事ができないがそれ以外の一塩基配列は区別する事ができると理解できる。すなわち、SP2−GST融合蛋白質だけでもある程度特異的に検出する事ができるが、PCRと組み合わせることでより特異的に検出できる事が明らかになった。 次いで、認識配列をもつ標的配列に対する検出限界を確認するために、実施例3と同様の方法にて、種々の濃度の標的配列との結合能をELISAによって確認した。
【0121】
その結果を図29に示す。図29によれば、1012コピー以上の標的配列に対して、それ以下のコピー数の標的配列と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP2−GST融合蛋白質で1012コピー以上の標的配列があれば検出できる事が明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係る検体中のレジオネラ属菌遺伝子を検出するためのキットおよび方法は、実験室における利用のみならず、例えば浴槽、プール、人工池、人工河川等を備えたレジャー施設、医療施設、介護施設等でのレジオネラの検出、ならびに医療機関における被験者のレジオネラ症感染の検出の他、空調機室外冷却塔の冷却水、給水給湯系などのビル施設の管理面でのレジオネラ属菌の検出にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1は、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子およびジンクフィンガー蛋白質(Zif268)認識配列を模式的に示す。
【図2】図2は、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子中のジンクフィンガー蛋白質(Zif268)認識配列およびその5’側および3’側のプライマー領域のヌクレオチド配列アライメントを示す。
【図3】図3は、実施例3、4および7で用いられた標的核酸の検出キットを模式的に示す。
【図4】図4は、実施例3で用いられたヌクレオチド配列(ビオチン標識二本鎖DNA)24の配列アライメントを示す。
【図5】図5は、実施例3で用いられたヌクレオチド配列(ビオチン標識二本鎖DNA)24に結合するZif268−GST融合蛋白質に対するELISAの結果(吸光度)を示す。
【図6】図6は、実施例4でのELISAに用いたPCR増幅産物の配列アライメントを示す。
【図7】図7は、実施例4で得られたPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。
【図8】図8は、実施例4で得られたPCR増幅産物に結合するZif268−GST融合蛋白質に対するELISAの結果(吸光度)を示す。
【図9】図9は、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子およびジンクフィンガー蛋白質(SP1)認識配列を模式的に説明する。
【図10】図10は、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子中のジンクフィンガー蛋白質(SP1)認識配列およびその5’側および3’側のプライマー領域のヌクレオチド配列アライメントを示す。
【図11】図11は、実施例6におけるジンクフィンガー蛋白質(SP1)とタグポリペプチド(GST)との融合蛋白質の発現ベクターの調製方法を模式的に説明する。
【図12】図12(a)および図12(b)は、実施例6で得られたジンクフィンガー蛋白質(SP1)とタグポリペプチド(GST)との融合蛋白質のSDS−PAGEの結果を示す。
【図13】図13は、実施例7で用いられたヌクレオチド配列に対するELISAの結果(吸光度)を示す。
【図14】図14は、実施例8で用いられたヌクレオチド配列(ビオチン標識二本鎖DNA)24の配列アライメントを示す。
【図15】図15は、実施例8で得られたPCR増幅産物に結合するZif268−GST融合蛋白質に対するELISAの結果(吸光度)を示す。
【図16】図16(a)は、実施例9で用いたゲノムおよびジンクフィンガー蛋白質(Zif268,SP1)認識配列を模式的に示す図であり、図16(b)は、実施例9で得られたPCR増幅産物の電気泳動パターン(左図はZif268認識配列を含むテンプレートAを用いた場合のPCR増幅産物を示し、右図はSP1認識配列を含むテンプレートBを用いた場合のPCR増幅産物を示す。)を示し、図16(c)は、実施例9で得られたPCR増幅産物に結合するジンクフィンガー蛋白質−GST融合蛋白質(左図は融合蛋白質がZif268−GST融合蛋白質である場合、右図は融合蛋白質がSP1−GST融合蛋白質である場合)に対するELISAの結果(吸光度)を示す。
【図17】図17(A)は、実施例10において種々のコピー数のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。図17(B)は、実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質と実施例10で得られた各PCR増幅産物との結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図18】図18(A)は、実施例11においてPCR増幅させたSP1標的配列とコントロール配列を示す。図18(B)は、実施例11において二種類のプライマーを用いてレジオネラゲノムから得られたPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。図18(C)は、実施例11で得られたPCR増幅産物に対する実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図19】図19は、実施例12における蛍光偏光解消法を用いたSP1−GST融合蛋白質とPCR増幅産物との結合能を確認する蛍光偏光度を示す。
【図20】図20は、実施例13におけるSP2の認識配列を含む標的配列のホモロジー検索の結果を示す。
【図21】図21は、実施例14におけるSP2−GST融合蛋白質のクローニングを示す。
【図22】図22は、実施例14における精製SP2-GST融合蛋白質のSDS−PAGEの結果を示す。
【図23】図23は、実施例15における標的二本鎖DNAに対するSP2―GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図24】図24(A)は、実施例16において各ゲノムからのPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。図24(B)は、実施例16で得られたPCR増幅産物に対するSP2−GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図25】図25(A)は、実施例17における種々のコピー数のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。図25(B)は、実施例17におけるPCR増幅産物に対するSP2−GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図26】図26は、実施例18におけるSP2認識配列及びプライマー領域に変異が導入された類似配列を示す。
【図27】図27(A)は、実施例18における10種類の配列を用いて得られたPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。図27(B)は、実施例18で得られた10種類のPCR増幅産物に対するSP2−GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図28】図28は、実施例19における認識配列及び変異導入配列に対するSP2−GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図29】図29は、実施例19における標的配列に対するSP2−GST融合蛋白質の検出限界を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【符号の説明】
【0124】
10・・・レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子
12・・・ジンクフィンガー蛋白質(Zif268)認識部位
18・・・ウエル(96穴プレート)
20・・・ストレプトアビジン
22・・・ビオチン
24・・・ビオチン標識二本鎖DNA
26・・・タグポリペプチドとジンクフィンガー蛋白質との融合蛋白質
28・・・抗タグポリペプチド抗体(抗GST抗体)
30・・・基質酵素(HRP)
32・・・発色試薬(ABTS)
40・・・pGEM/hSP1
42・・・hSP1遺伝子断片
44・・・ベクターpGEX/hSP1
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジンクフィンガー蛋白質を用いるレジオネラ属菌(Legionella species)遺伝子を検出するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、浴槽、プール、人工池、人工河川等を備えたレジャー施設、医療施設、介護施設等でレジオネラ症の発生が多く報告されている。レジオネラ症の報告例としては、例えばビル内での集団感染、病院内においての院内感染、温泉施設においての集団感染が挙げられる。
【0003】
レジオネラ症は、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)等に代
表されるレジオネラ属菌によって引き起こされる感染症であり、レジオネラを含むエアロゾルまたは水の吸引による経気道感染のみならず、特に新生児の院内感染においては、経口感染、外傷からの感染の可能性も考えられている。レジオネラ属菌は、特に温水で繁殖し易いため、温泉等で病気の療養をかねた湯治が免疫力の弱まった老人の肺炎を引き起こすという事例も報告されている。
【0004】
ところで、レジオネラ属菌の検査方法としては、例えば、培養法や核酸増幅法であるPCR法、LAMP法が知られている。培養法は、レジオネラを培養により増殖させて検出する方法である。しかしながら、レジオネラ属菌は、増殖させるのがきわめて難しい菌であり、培養法によりレジオネラ属菌の検出を行う場合、レジオネラ属菌が検出可能な程度に増殖するまでに時間がかかり、検出結果が得られるまでに時間がかかるという問題がある。一方、PCR法等は、レジオネラの遺伝子を増幅して検出する方法である。しかしながら、PCR法等では、二本鎖の遺伝子を一本鎖にする必要があるため、時間および手間がかかる。その原因としては、PCR法等では、PCR増幅産物をハイブリダイゼーションにより検出するために、二本鎖であるPCR増幅産物を変性させて一本鎖とした後に、プローブDNAとハイブリダイズさせなければならないことが挙げられる。また、上記PCR法では、(i)相補的なPCR増幅産物同士が互いに塩基対を形成する確率が高いため、プローブDNAのハイブリダイゼーション効率が低いこと、(ii)一旦解離した一本鎖が再び元の二本鎖に戻ってしまうため、ハイブリダイゼーション効率がきわめて悪いという問題がある。したがって、PCR増幅産物を二本鎖のまま検出する方法が求められている。
【0005】
二本鎖DNAを変性させずに分析する方法としては、支持体上に固定された二本鎖DNA認識物質を用いて、検体中の二本鎖DNAを分析する方法が開示されている(例えば、特開2002‐125700号公報)。この方法は、二本鎖DNA認識物質と検体中の二本鎖DNAとを結合させ、結合した二本鎖をインターカレーター、抗DNA抗体、DNA転写因子等を用いて検出することを特徴とする。しかしながら、この方法によっては、存在する二本鎖DNAの量を測定することは可能であっても、標的とする核酸を特異的に検出することは困難である。すなわち、インターカレーターまたは抗DNA抗体を用いて検出する場合には、塩基配列の選択性が殆ど得られず、DNA転写因子を用いて検出する場合には、認識配列の長さが短いため特異性の高い検出を行うことができない。
【0006】
また、PCR増幅産物を二本鎖のまま検出する方法として、例えば、特開2003−285706号公報には、ジンクフィンガー蛋白質を用いて、PCR増幅産物中のジンクフィンガー蛋白質配列を検出することによって、標的とする二本鎖DNAを特異的に検出できることが開示されている。しかしながら、この検出方法においては、ジンクフィンガー蛋白質とPCR増幅物との結合能を調べる際に、融合蛋白質を発現するファージを使用しているため、標的分子によっては分子認識能が十分ではなく、その結果、高感度なレジオネラ属菌の検出は困難となっている。このように、PCR増幅産物を二本鎖のまま検出する方法においては、より迅速でかつ簡便なレジオネラの検出が求められている。一方、上記遺伝子検査法としてのPCR法等は、検査に使用する装置が高価であり、その操作も煩雑であるため現在のところ普及には至っていないという問題点がある。
【特許文献1】特開2002−125700号公報
【特許文献2】特開2003−285706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によれば、検体中のレジオネラ属菌遺伝子等に代表されるレジオネラ属菌遺伝子のPCR増幅産物を二本鎖のまま特異的に検出しうる測定系(キット)および方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る検体中の標的核酸を検出するためのキットは、
前記標的核酸がレジオネラ属菌遺伝子であり、
前記遺伝子中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されたプライマー対を含む。
【0009】
上記キットにおいて、前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列に結合しうるジンクフィンガー蛋白質をさらに含むことができる。この場合、前記ジンクフィンガー蛋白質は、検出可能な標識により標識されている。この場合、前記ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態であることができる。また、この場合、前記タグポリペプチドはGSTであることができる。さらにこの場合、前記ジンクフィンガー蛋白質がZif268であり、前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GCGTGGGCG−3’であることができる。あるいは、この場合、前記ジンクフィンガー蛋白質がSP1であり、前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGGCGGGG−3’であることができる。あるいは、この場合、前記ジンクフィンガータンパク質がSP2であり、前記ジンクフィンガータンパク質認識配列が5’−GGGCGGGACT−3’であることができる。
【0010】
上記キットにおいて、前記標的核酸が、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子から選ばれる一であることができる。
【0011】
上記キットにおいて、前記プライマー対は、検出可能な標識により標識されていることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る検体中の標的核酸を検出する方法は、
前記標的核酸がレジオネラ属菌遺伝子であり、
(a)前記遺伝子中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されているプライマー対を用いて、検体中の核酸をPCR反応により増幅させること、および
(b)ジンクフィンガー蛋白質を用いて、前記増幅させることにより得られたPCR増幅産物を検出すること、
を含む。
【0013】
上記方法において、前記ジンクフィンガー蛋白質は、検出可能な標識により標識されていることができる。この場合、前記ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態であることができる。また、この場合、前記タグポリペプチドはGSTであることができる。
【0014】
上記方法において、前記ジンクフィンガー蛋白質がZif268であり、前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GCGTGGGCG−3’であることができる。
【0015】
上記方法において、前記ジンクフィンガー蛋白質がSP1であり、前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGGCGGGG−3’であることができる。
【0016】
上記方法において、前記ジンクフィンガータンパク質がSP2であり、前記ジンクフィンガータンパク質認識配列が5’−GGGCGGGACT−3’であることができる。
【0017】
上記方法において、前記標的核酸が、レジオネラ・ニューモフィリアの2‐デオキシ‐D‐グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子から選ばれる一であることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のキットおよび検出方法によれば、ジンクフィンガー蛋白質は二本鎖に結合するため、PCR増幅産物を変性させて一本鎖に解離させる必要がない。このため、標的核酸であるレジオネラ属菌遺伝子の検出をより迅速かつ簡便に行うことができる。
【0019】
また、本発明のキットおよび検出方法によれば、ジンクフィンガー蛋白質の形態をタグペプチドとの融合蛋白質とすることにより、簡易かつ高感度にレジオネラ属菌遺伝子を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る標的核酸を検出するためのキットおよび方法について詳細に説明する。
【0021】
1.検体中の標的核酸を検出するための方法
本発明の一実施形態に係る検体中の標的核酸(レジオネラ属菌遺伝子)を検出するための方法(以下、単に「検出方法」ともいう)は、(a)標的核酸中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されているプライマー対を用いて、検体中の核酸をPCR反応により増幅させること、および(b)ジンクフィンガー蛋白質を用いて、増幅させることにより得られたPCR増幅産物を検出することを含む。
【0022】
1.1.ジンクフィンガー蛋白質
ジンクフィンガー蛋白質は、特定のDNA配列(ジンクフィンガー蛋白質認識配列)に特異的に結合しうるジンクフィンガーモチーフを有する蛋白質である。これまでに数百種類以上のジンクフィンガー蛋白質が同定されている。
【0023】
ジンクフィンガーモチーフは、典型的には、4個の残基(2個のシステイン残基および2個のヒスチジン残基)を含む長さ約30アミノ酸のモチーフであり、逆平衡二本鎖β構造およびαヘリックスから主に構成され、これらの4個の残基が亜鉛イオンに配位している立体構造を有している。
【0024】
ジンクフィンガーモチーフは、特定の配列を有する二本鎖DNAと特異的に結合することができる。例えば、マウス由来のジンクフィンガー蛋白質であるZif268は3連のジンクフィンガーモチーフを有し、5’−GCGTGGGCG−3’の9個の連続するDNA配列を認識して、該DNA配列を含む二本鎖DNAに特異的に結合することができる。また、例えば、ヒト由来のジンクフィンガー蛋白質であるSP1(転写制御因子)もまた3連のジンクフィンガーモチーフを有し、5’−GGGGCGGGG−3’の9個の連続するDNA配列を認識して、該DNA配列を含む二本鎖DNAに特異的に結合することができる。
【0025】
ジンクフィンガー蛋白質と標的とする二本鎖DNAとの結合に際しては、標的とする二本鎖DNAの主溝にαヘリックス部位が挿入されるため、ジンクフィンガー蛋白質が認識するDNAの配列は、ジンクフィンガー蛋白質のαヘリックスのアミノ酸配列により決定される。これまでに、それぞれ独特のDNA配列を認識する数千種類のジンクフィンガーモチーフが同定されている。αヘリックスのアミノ酸配列と認識されるDNA配列との関係をより詳細に解明することにより、目的とする特定のDNA配列を認識するジンクフィンガー配列を設計することも可能となると考えられる。また、ファージディスプレイにより作製されたジンクフィンガーペプチドのライブラリを用いて、目的とする特定のDNA配列を認識しうるジンクフィンガー配列を選択する方法が知られている。
【0026】
本実施形態に係る検出方法によれば、ジンクフィンガー蛋白質を用いることにより、標的とする二本鎖DNAを特異的に検出することができる。
【0027】
ジンクフィンガー蛋白質としては、例えば、認識部位が明らかにされている既知のいずれのジンクフィンガー蛋白質を用いてもよく、あるいは、所望の認識部位を有するように遺伝子工学的に改変されているジンクフィンガー蛋白質を用いてもよい。当該技術分野においては、ジンクフィンガー蛋白質の認識配列を変更する種々の方法が試みられている。
【0028】
また、ジンクフィンガー蛋白質は検出可能な標識により標識されていてもよい。これにより、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質を容易に検出することができる。このような標識としては、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチン、アビジン等のアフィニティー標識、酵素標識等が挙げられる。なお、ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態であってもよい。この場合、タグポリペプチドとしては、例えばGST(グルタチオンS‐トランスフェラーゼ)やHisタグ、MBP(マルトース結合タンパク質)が挙げられる。タグポリペプチドを上述の標識で標識化して、該標識の量または存在を検出することにより、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質を検出することができる。
【0029】
あるいは、ジンクフィンガー蛋白質は、適当な宿主中で組換え蛋白質として発現させてもよい。あるいは、ジンクフィンガー蛋白質は、組換えファージ中で発現させてファージ上に提示させることができる。このことにより、組換えジンクフィンガー蛋白質を精製することなく利用することができ、ファージに対する抗体を用いてジンクフィンガー蛋白質を容易に検出することができる。このようなファージディスプレイの手法は当該技術分野においてよく知られており、また、本明細書の実施例においても詳細に記載されている。
【0030】
1.2.核酸の調製
本実施形態に係る検出方法においては、まず、試験対象の検体から核酸(DNA)を調製する。検体としては、菌体の培養物、水(例えば、浴槽・プール・人工池・人工河川等で使用される水、水道水、汚水、生活排水、工業排水、農業排水、井戸水、湖水、海水、河川水、沼水、池水、湧水、温泉水)、農産物、食品、医薬品、化粧品、ならびに検査すべき動物およびヒトからの組織、体液、血液、唾液、汗、尿、糞便、喀痰、空調機室外冷却塔の冷却水、貯湯タンク水、給湯系水、加湿器の水、生物膜(バイオフィルム)(ここで、生物膜とは、壁面に付着した微生物が増殖するとともに、粘液性物質を体外に産出し、これらが混在、結合して形成されたものをいう。)、原生動物(アメーバなど)、循環浴槽のろ過装置(ろ過装置がアメーバの定着、増殖場所である場合、そのアメーバ細胞中でレジオネラ菌が増殖する。)などを用いることができる。このようなサンプルから核酸(DNA)を調製する手法は当該技術分野においてよく知られている。あるいは、試験すべきサンプルからRNAを調製し、定法によりcDNAを合成してもよい。
【0031】
1.3.(a)PCR反応による核酸の増幅
本実施形態に係る検出方法は、(a)標的核酸であるレジオネラ属菌遺伝子中のジンクフィンガー蛋白質により認識される配列を増幅しうるよう設計されたプライマー対を用いて、検体中の核酸をPCR反応により増幅させることを含む。すなわち、検体中の核酸(DNA)をテンプレートとして、プライマー対および耐熱性DNAポリメラーゼを用いて、PCR増幅を行う。ここで用いられるPCR増幅の条件および方法は当該技術分野においてよく知られている。
【0032】
ジンクフィンガー蛋白質により認識される配列は、その長さが比較的短いため配列の出現頻度が高く、目的とする標的核酸配列中のみならず、検体中に存在しうる他の核酸中にも多数見いだされることが予測される。
【0033】
例えば、Zif268およびSP1、SP2により認識される配列はいずれも、9−10個の連続するヌクレオチドからなり、このような配列は約26万塩基に1個の確率で存在する。したがって、検出の特異性を高めるためには、ジンクフィンガー蛋白質認識配列の周囲の配列についての広範囲な検索を行って、適切なPCRプライマーを設計する必要がある。
【0034】
PCRプライマーは、ジンクフィンガー蛋白質により認識される配列を含む配列領域が特異的に増幅されるように設計される。このためには、まず検出すべき生物(例えば、微生物、細菌、ウイルスなど)のゲノム配列中のジンクフィンガー認識配列を検索する。
【0035】
例えば、ジンクフィンガー蛋白質としてZif268を用いる場合、その認識配列であるGCGTGGGCGを含む遺伝子を同定する。次に、この認識配列の5’側および3’側の配列に基づいて、認識配列を増幅しうるプライマー対を選択する。同様に、例えば、ジンクフィンガー蛋白質としてSP1を用いる場合、その認識配列であるGGGGCGGGGを含む遺伝子を同定する。次に、この認識配列の5’側および3’側の配列に基づいて、認識配列を増幅しうるプライマー対を選択する。同様に、例えば、ジンクフィンガー蛋白質としてSP2を用いる場合、その認識配列であるGGGCGGGACTを含む遺伝子を同定する。次に、この認識配列の5’側および3’側の配列に基づいて、認識配列を増幅しうるプライマー対を選択する。
【0036】
プライマーの長さは、好ましくは12−30ヌクレオチド、より好ましくは15−25ヌクレオチドである。さらに、プライマーの選択においては、各プライマーが、分子内に二次構造を形成せず、融解温度がPCR反応に適した温度(例えば約58−63℃の範囲内)である等の、当該技術分野において知られるプライマー選定の基準も考慮すべきである。各プライマーとジンクフィンガー認識配列の間の距離は任意に選択することができ、ジンクフィンガー認識配列の5’側と3’側とでプライマーとの距離が同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
好ましくは、プライマーとジンクフィンガー認識配列との距離は0から500bpであり、より好ましくは0から300bpである。距離が0であるとは、後述の実施例において例示されるように、ジンクフィンガー認識配列に隣接してプライマーが配置されることを意味する。この距離が長いほど検出の特異性は高くなるが、検体中の核酸が分解・切断されていると検出されないため、糞便や生検組織切片を検体として用いる場合には、150bpより短いことが好ましい。次に、PCRにより増幅される配列、すなわち、両方のプライマーとジンクフィンガー認識配列とを含む配列について、検体中に存在する可能性のある他の核酸中にこれと相同な配列が存在しないことを確認する。これにより、標的核酸のみが特異的に検出されるようにすることができる。
【0038】
このようにして設計されたプライマー対の各オリゴヌクレオチドは、例えば汎用のDNA合成装置(例えば、Applied Biosystems社製 Model 394)を用いて化学的に合成することができる。オリゴヌクレオチドは、当該技術分野においてよく知られる他の方法のいずれかを用いて合成してもよい。
【0039】
1.4.(b)PCR増幅産物の検出
本実施形態に係る検出方法は、上記(a)PCR反応による核酸の増幅の後、(b)ジンクフィンガー蛋白質を用いて、増幅させることにより得られたPCR増幅産物を検出することを含む。具体的には、上記(a)で得られたPCR増幅産物とジンクフィンガー蛋白質とを接触させ、ジンクフィンガー蛋白質がPCR増幅産物に結合するか否かを検出することができる。
【0040】
例えば、標識によって適切に標識されたジンクフィンガー蛋白質を用いる場合、この標識の量を測定することにより、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質の存在または量を測定することができる。
【0041】
例えば、ジンクフィンガー蛋白質がタグポリペプチド(例えばGST)との融合蛋白質の形態である場合、タグポリペプチドに特異的な抗体を用いるELISAによって、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質を検出することができる。
【0042】
より具体的には、例えば、タグポリペプチドがGSTである場合、抗GST抗体を融合蛋白質のGST(抗原)部分に結合させ、未結合抗体を洗浄除去した後に、酵素反応や蛍光反応等によりGST(タグポリペプチド)の存在または量を測定することにより、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質の存在または量を測定することができる。
【0043】
または、PCR増幅産物を標識し、該標識されたPCR増幅産物を検出することにより、PCR増幅産物とジンクフィンガー蛋白質との結合を検出してもよい。このような標識は、PCR反応に用いるプライマー対をあらかじめ標識しておくか、あるいは、PCR増幅反応中に標識ヌクレオチドを取り込ませることにより行うことができる。
【0044】
標識の方法は当該技術分野においてよく知られており、標識としては、放射性標識、蛍光標識、ビオチン、アビジン等のアフィニティー標識等を用いることができる。または、インターカレーター法や蛍光偏光法を用いてジンクフィンガー蛋白質に結合した二本鎖DNAを検出してもよい。
【0045】
あるいは、ファージ上に提示されたジンクフィンガー蛋白質を用いる場合、このファージに特異的な抗体を用いるELISAを用いて検出することができる。すなわち、適切に標識された抗ファージ抗体を結合させ、未結合抗体を洗浄除去した後に、酵素反応、蛍光反応などにより標識の存在または量を測定することにより、PCR増幅産物に結合したジンクフィンガー蛋白質の存在または量を測定することができる。
【0046】
1.5.用途
本実施形態に係る検出方法の1つの好ましい用途は、検体中の標的核酸(レジオネラ属菌遺伝子)を近縁の細菌と区別して検出することである。
【0047】
本実施形態に係る検出方法によって検出可能なレジオネラ属菌としては、特に限定されないが、例えば、レジオネラ・ニューモフィリア(L. pneumophilia)、レジオネラ・ボゼマニイ(L. bozemanii)、レジオネラ・ミクダデイ(L. micdadei)、レジオネラ・ロング
ビーチ(L. longbeachae)、レジオネラ・ワドスワヒ(L. wadsworthii)、レジオネラ・ハッケリー(L. hackeliae)、レジオネラ・ビルミングハメンシス(L. birminghamensis)、レジオネラ・シンシナティエンシス(L. cincinnatiensis)、レジオネラ・ツクソネンシス(L. tucsonensis)、レジオネラ・ランシンジェネンシス(L. lansingenensis)
、レジオネラ・デュモフィ(L. dumoffii)、レジオネラ・ゴルマニィ(L. gormanii)、レジオネラ・ヨルダニス(L. jordanis)、レジオネラ・オークリジェンシス(L. oakridgensis)、レジオネラ・フェレイ(L. feeleii)、レジオネラ・サインテレンシス(L. sainthelensis)、レジオネラ・パリシエンシス(L. parisiensis)、レジオネラ・マッシェンケルニィー(L. maceachernii)、レジオネラ・アニサ(L. anisa)、レジオネラ・サンティクルシス(L. santicrucis)が挙げられる。
【0048】
レジオネラ菌の検出およびレジオネラ症の診断のためには、レジオネラ属菌を他の細菌と区別して検出することが必要である。
【0049】
レジオネラ属菌遺伝子の検出方法としては、一般に、分離培養法による培養とその形態学的観察、血清学的検査、特異的プローブを用いたハイブリダイゼーション、およびPCR増幅とハイブリダイゼーションとの組み合わせが用いられている。しかしながら、上述したように、レジオネラ属菌は、培養により増やすことが難しい菌であるため、培養による方法では日数がかかるという問題がある。
【0050】
後述の実施例に詳細に説明されるように、本実施形態に係る検出方法によれば、レジオネラ属菌遺伝子(例えばレジオネラ・ニューモフィリア遺伝子)を他の細菌と区別して特異的に検出することができる。
【0051】
例えば、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子を特異的に検出するためのPCR増幅の標的配列としては、ジンクフィンガー蛋白質としてZif268を使用する場合、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子(例えば、Legionella pneumophilia str.Philadelphia 1 2−deoxy−D−gluconate−3−dehydrogenase gene、Legionella pneumophilia str.Lens 2−deoxy−D−gluconate−3−dehydrogenase gene、Legionella pneumophilia str.Paris 2−deoxy−D−gluconate−3−dehydrogenase gene)中のジンクフィンガー蛋白質認識配列を含むことが好ましく、
ジンクフィンガー蛋白質としてSP1を使用する場合、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子(例えば、Legionella pneumophilia str.Philadelphia flhA gene、Legionella pneumophilia str.Lens flhA gene、Legionella pneumophilia str.Paris flhA gene)中のジンクフィンガー蛋白質認識配列を含むことが好ましい。また、ジンクフィンガー蛋白質としてSP2を使用する場合、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophila)の膜貫通蛋白質(transmembrane protein)の遺伝子(locus_tag = lpg1883)(例えば、Legionella pneumophila str. Philadelphia transmembrane proteinの gene、Legionella pneumophilia str. Lens transmembrane proteinの gene、Legionella pneumophilia str.Paris transmembrane proteinの gene)中のジンクフィンガー蛋白質認識配列を含むことが好ましい。
【0052】
したがって、レジオネラ・ニューモフィリアの2‐デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)の膜貫通蛋白質(transmembrane protein)の遺伝子(locus_tag = lpg1883)はそれぞれ、ジンクフィンガー蛋白質(Zif268、SP1、SP2)による検出の標的遺伝子であるのが好ましい。
【0053】
2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子は、2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼの生成に関与する遺伝子であり、2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼは炭水化物の代謝に関与する。
【0054】
flhA遺伝子は、鞭毛の生合成蛋白質であるFlhA(flagellar biosynthetic protein)の生成に関与する遺伝子であり、FlhAは走化性、運動性、細胞分裂に関与する。
【0055】
膜貫通蛋白質(transmembrane protein)の遺伝子(locus_tag = lpg1883)は、膜貫通型の蛋白質の生成に関与する遺伝子であるが、蛋白質の詳細は不明である。
【0056】
1.6.作用効果
本実施形態に係る検出方法によれば、PCR増幅産物の二本鎖の変性工程を必要としないため、検体中の標的核酸(レジオネラ属菌遺伝子、例えばレジオネラ・ニューモフィリア遺伝子)を高感度でかつ特異的に簡便に検出することができる。また、本実施形態に係る検体中の標的核酸の検出方法は、例えばセンサや電極を使用することにより、検体中の標的核酸を検出するための装置により実施することができる。
【0057】
2.キット
本発明の一実施形態に係る検体中の標的核酸(レジオネラ属菌遺伝子)を検出するためのキット(以下、単に「キット」ともいう)は、上述のプライマー対を含む。また、本実施形態に係るキットは、上述のジンクフィンガー蛋白質をさらに含むことができる。この場合、ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態であることができ、この場合、タグポリペプチドはGSTであるのが好ましい。
【0058】
また、本実施形態に係るキットは、標的核酸が、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)の膜貫通蛋白質(transmembrane protein)の遺伝子(locus_tag = lpg1883)から選ばれる一であることが好ましい。
【0059】
なお、ジンクフィンガー蛋白質は適当な担体上に固定化されて用いられてもよい。固定化されたジンクフィンガー蛋白質に上述のPCR増幅産物を結合させ、結合した二本鎖DNAの量を測定することにより、標的核酸を検出することができる。このような態様においては、PCR増幅産物が検出可能なように標識されていることが好ましい。
【0060】
3.実施例
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
3.1.実施例1
[レジオネラ・ニューモフィリアゲノム中のZif268認識配列の選択]
まず、NCBI nucleotide BLAST Search for short nearly exact matchesを用いて、レ
ジオネラ・ニューモフィリアのゲノム中からZif268認識配列であるgcgtgggcgの9塩基の配列を検索した(図1参照)。レジオネラ・ニューモフィリアのゲノム配列は先の報告にしたがった(GenBank受託番号:AE017354(Strain Philadelphia 1),CR628337(Strain Lens),CR628336(Strain Paris))。次に、この9塩基配列の5’側および3’側のそれぞれ20塩基をプライマー領域として含む連続する49塩基配列についてBLASTで検索し、他の細菌が類似した配列を有するか否かを調べた(図2参照)。さらに、その遺伝子の比較対照となる他の遺伝子配列の多さ、進化速度、水平移動能の有無等を基準として、標的とすべき遺伝子を選択した。
【0062】
その結果、Zif268の認識配列およびその5’側および3’側のプライマー領域は、レジオネラ・ニューモフィリアの糖代謝関連遺伝子(2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子)と高い相同性を示すことが明らかになった。以上の結果より、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子を標的遺伝子として選択した。
【0063】
図2は、3種のレジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子のZif268認識配列(結合部位)を含む49bpの配列アライメントを示す。図2によれば、Zif268認識配列およびその5’側および3’側の各20bpのプライマー領域を含む49bpの塩基配列は、レジオネラ・ニューモフィリア間で高い相同性を示すのに対して、確認を行った他の生物の遺伝子に対する相同性は低かった。これにより、Zif268認識配列およびその5’側および3’側の各20bpのプライマー領域を含む49bpの塩基配列を標的配列として用いることにより、レジオネラ・ニューモフィリア(特にLegionella pneumophilia str. Philadelphia 1)を特
異的に検出できると考えられる。
【0064】
3.2.実施例2
[Zif268−GST融合蛋白質の調製]
本実施例において、Zif268−GST融合蛋白質の調製は下記の手順で行った。
【0065】
マウス骨格筋cDNAライブラリ(TaKaRa)から、制限酵素サイト(SfiI、NotI)を導入したZif268のDNA結合部位の構造遺伝子を増幅し、それを制限
酵素消化した後、ファージミドベクターpCANTAB5に挿入し、ベクターpCAN/Zif268を得た。
【0066】
得られたベクターpCAN/Zif268から、制限酵素サイト(BamHI、EcoRI)を導入したZif268構造遺伝子(300bp)をPCR増幅し、TAクローニングすることにより、ベクターpGEM/Zif268を得た。これを増幅し、制限酵素処理した後、Schistosoma japonicum(日本住血吸虫)由来GST融合発現ベクターpGEX
−2Tとライゲーションすることにより、ベクターpGEX/Zif268を得た。Zif268構造遺伝子およびpGEX−2Tの塩基配列は、先の報告に従った(GenBank受託番号:NM_007913(Zif268構造遺伝子)、U13850(pGEX−2T)。Zif268構造遺伝子とGST構造遺伝子間のリンカー配列は、LVPRGSである。
【0067】
ベクターpGEX/Zif268を大腸菌BL21株に導入した後、この大腸菌BL21株を37℃で培養し、0.1mM IPTGにより発現を誘導した。その後、集菌および洗浄し、フレンチプレスにより菌体を破砕した。菌体破砕物の水溶性画分を、GSTrap(商標)HFカラムを用いてアフィニティー精製することにより、Zif268−GST融合蛋白質を得た。GST活性測定およびSDS−PAGEを行うことにより、hSP1−GST融合蛋白質の精製度を確認した。
【0068】
3.3.実施例3
[Zif268−GST融合蛋白質と標的二本鎖DNAとの結合能の確認]
本実施例では、実施例2で得られたZif268−GST融合蛋白質と二本鎖DNAとの結合能をELASAによって確認した。本実施例で用いたELASA用キット(標的核酸検出用キット)の構成を図3に示す。
【0069】
また、二本鎖DNAの配列を図4および以下に示す(No.1〜No.7)。なお、「Bio」はビオチンを示し、下線はジンクフィンガー蛋白質認識配列である。
No.1: Zif268−L.pneumophila Philadelphia 1 target(標的1)
Bio 5'−ATTGGTGTTCCGGAAGATAT CGC CCA CGC AATTGTGTTTTTGCTTAATC−3'
3'−TAACCACAAGGCCTTCTATA GCG GGT GCG TTAACACAAAAACGAATTAG−5'
No.2: Zif268−L.pneumophila Lens target(標的2)
Bio 5'−ATTGGTGTTCCGGAAGATAT TGC CCA CGC AATTGTGTTTTTGCTTAATC−3'
3'−TAACCACAAGGCCTTCTATA ACG GGT GCG TTAACACAAAAACGAATTAG−5'
No.3: Zif268−L.pneumophila random(比較例1、ランダム変異)
Bio 5'−ATTGGTGTTCCGGAAGATAT AGG CTC AGT AATTGTGTTTTTGCTTAATC−3'
3'−TAACCACAAGGCCTTCTATA TCC GAG TCA TTAACACAAAAACGAATTAG−5'
No.4: Zif268−S.typhiriumium target(比較例2)
Bio 5'−CAGAGCGTTGACTACCGAGA CGC CCA CGC CGTGCAGACCGCCGGAGACT−3'
3'−GTCTCGCAACTGATGGCTCT GCG GGT GCG GCACGTCTGGCGGCCTCTGA−5'
No.5: Zif268−S.typhiriumium random(比較例3)
Bio 5'−CAGAGCGTTGACTACCGAGA AGG CTC AGT CGTGCAGACCGCCGGAGACT−3'
3'−GTCTCGCAACTGATGGCTCT TCC GAG TCA GCACGTCTGGCGGCCTCTGA−5'
No.6: DNA未使用(対照1)
No.7: 蛋白質(Zif268−GST融合蛋白質)未使用(対照2)
ストレプトアビジン20でコートされたウエル(96穴プレート)18に、5’末端をビオチンで標識された一本鎖DNAとその相補鎖DNAからなる二本鎖DNA24(100pmol/ウエル)を添加し、室温で1時間インキュベートした後、2%スキムミルクを添加し、室温で1時間ブロッキングを行った。次に、融合蛋白質(実施例2で得られたZif268−GST融合蛋白質)26(5.7pmol/ウエル)を添加して、室温で1時間インキュベートした後、抗タグポリペプチド抗体28および基質酵素30(抗GST抗体−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)複合体溶液)を添加して室温で1時間インキュベートした。次いで、発色試薬32(ABTS溶液(0.4mM ABTS(2,2'−Azinobis(3−ethylbenzothiazolin−6−sulfonic Acid)、50mMクエン酸、0.2%H2O2、pH4.0))をウエル18に添加し、0、15、30、60分毎にプレートリーダーで波長405nmの光の吸光度を測定した。60分後の吸光度を図5に示す。
【0070】
図5によれば、二本鎖DNAとして標的1,2(No.1,No.2)を用いた場合、
ランダム変異二本鎖DNA(No.3,No.5)と比較して優位に吸光度が高かった。これにより、Zif268−GST融合蛋白質が標的二本鎖DNAに結合する能力を有することが理解できる。
【0071】
3.4.実施例4
[Zif268−GST融合蛋白質とPCR増幅産物との結合能の確認]
本実施例では、図6に示す各49bpの二本鎖DNAをテンプレートとして、PCRによるDNA増幅を行った。より具体的には、ビオチン修飾一本鎖DNA(センス鎖)およびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾された一本鎖DNA(アンチセンス鎖)(図6のNo.1〜No.6)を混合し、熱処理により各49bpの二本鎖DNAを得た。なお、図6のNo.1〜No.5の二本鎖DNAはそれぞれ、実施例2で用いた二本鎖DNA(No.1〜No.5)と同じ配列を有する。
【0072】
次に、各49bpの二本鎖DNAをテンプレートとして、95℃5分間→(95℃30秒間→48℃30秒間→74℃30秒間)×30回→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物をそれぞれ得た。各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図7に示す。図7によれば、標的二本鎖DNAがレジオネラ・ニューモフィリア遺伝子である場合(No.1およびNo.2)、目的とするビオチン標識49bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。
【0073】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例2で得られたZif268−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物(No.1〜No.6)との結合能をELASAによって確認した。その結果を図8に示す。
【0074】
図8によれば、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子中のDNA配列を用いて得られたPCR増幅産物(No.1およびNo.2)は、他のPCR増幅産物(No.3〜No.6)と比べて高い吸光度を示した。これにより、Zif268‐GST融合蛋白質が標的配列(Zif268認識配列)に特異的に結合することが理解できる。すなわち、Zif268‐GST融合蛋白質を用いて、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子中の標的配列を用いて得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0075】
3.5.実施例5
[レジオネラ・ニューモフィリアゲノム中のSP1認識配列の選択]
まず、NCBI nucleotide BLAST Search for short nearly exact matchesを用いて、レ
ジオネラ・ニューモフィリアのゲノム中からSP1認識配列であるggggcggggの9塩基の配列を検索した(図9参照)。レジオネラ・ニューモフィリアのゲノム配列は先の報告にしたがった(GenBank受託番号:AE017354(Strain Philadelphia
1),CR628337(Strain Lens),CR628336(Strain Paris))。次に、この9塩基配列の5’側および3’側のそれぞれ20塩基をプライマー領域として含む連続する49塩基配列についてBLASTで検索し、他の細菌が類似した配列を有するか否かを調べた(図10参照)。さらに、その遺伝子の比較対照となる他の遺伝子配列の多さ、進化速度、水平移動能の有無等を基準として、標的とすべき遺伝子を選択した。
【0076】
その結果、SP1の認識配列およびその5’側および3’側のプライマー領域は、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子と高い相同性を示すことが明らかになった。以上の結果より、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子を標的遺伝子として選択した。
【0077】
図10は、3種のレジオネラ属細菌のflhA遺伝子のSP1認識配列を含む49bpの配列アライメントを示す。図10によれば、SP1認識配列およびその5’側および3’側の各20bpのプライマー領域を含む49bpの塩基配列は、レジオネラ・ニューモフィリア間で高い相同性を示すのに対して、確認を行った他の生物の遺伝子に対する相同性は低かった。これにより、SP1認識配列およびその5’側および3’側の各20bpのプライマー領域を含む49bpの塩基配列を標的配列として用いることにより、レジオネラ・ニューモフィリア(特にLegionella pneumophilia str. Philadelphia 1)を特異
的に検出できると考えられる。
【0078】
3.6.実施例6
[SP1−GST融合蛋白質の調製]
本実施例においては、SP1−GST融合蛋白質の調製を図11に示す手順で行った。
【0079】
ヒトリンパ腺cDNAライブラリ(TaKaRa)から入手したSP1(hSP1)構造遺伝子(303bp)をPCR増幅し、TAクローニングすることにより、ベクターpGEM/hSP1 40を得た。次に、得られたベクターpGEM/hSP1 40に制限酵素サイト(SmaI、EcoRI)を導入することにより、hSP1遺伝子断片(302bp)42を得た。このhSP1遺伝子断片42を増幅し、制限酵素処理した後、Schistosoma japonicum(日本住血吸虫)由来由来GST融合発現ベクターpGEX−2Tとライゲーションすることにより、ベクターpGEX/hSP1 44を得た。hSP1構造遺伝子およびpGEX−2Tの塩基配列は、先の報告に従った(GenBank受託番号:NM_138473(hSP1構造遺伝子)、U13850(pGEX−2T))。Zif268構造遺伝子とGST構造遺伝子間のリンカー配列は、LVPRGSPGである。
【0080】
次いで、ベクターpGEX/hSP1 44を大腸菌BL21株に導入した後、この大腸菌BL21株を37℃で培養し、0.1mM IPTGにより発現を誘導した後、集菌および洗浄し、フレンチプレスにより菌体を破砕した。菌体破砕物の水溶性画分を、GSTrap(商標)HFカラムを用いてアフィニティー精製することにより、hSP1−GST融合蛋白質を得た。GST活性測定およびSDS−PAGEを行うことにより、hSP1−GST融合蛋白質の精製度を確認した。
【0081】
図12(a)および図12(b)にhSP1−GST融合蛋白質の電気泳動パターンを示す。図12(a)はIPTGにより発現を誘導した後、1時間、2時間、3時間、4時間の菌体破砕物の水溶性画分のSDS−PAGE結果を示し、図12(b)は各溶出画分のSDS−PAGE結果を示す。
【0082】
図12(a)および図12(b)のSDS−PAGE結果において、GSTのバンド(28kDa)とは異なる39kDaのシングルバンドが検出された。このバンドはhSP1‐GST融合蛋白質のものであると推測される。以上により、高純度のhSP1−GST融合蛋白質が得られたことが確認された。
【0083】
3.7.実施例7
[hSP1−GST融合蛋白質と標的二本鎖DNAとの結合能の確認]
本実施例では、実施例6で得られたhSP1−GST融合蛋白質と二本鎖DNAとの結合能を、実施例3と同様の方法(ELASA)によって確認した。
【0084】
また、用いた二本鎖DNAの配列を以下に示す(No.1〜No.6)。なお、「Bio」はビオチンを示し、下線はジンクフィンガー蛋白質認識配列である。
No.1: SP1−L.pneumophila Philadelphia 1 target(標的3)
Bio 5'−GATCCTGACTGA CCC CGC CCC CA GTGA−3'
3'−TGACT GGG GCG GGG GTCACTAG−5'
No.2: SP1−L.pneumophila Lens 1 mutation(比較例4、1塩基変異)
Bio 5'−GATCCTGACTGA CCC CAC CCC CAGTGA−3'
3'‐TGACT GGG GTG GGG GTCACTAG−5'
No.3: SP1−L.pneumophila 1 mutation−2(比較例5、1塩基変異)
Bio 5'−GATCCTGACTGA CCC CGC CCT CAGTGA−3'
3'−TGACT GGG GCG GGA GTCACTAG−5'
No.4: SP1−L.pneumophila 1 random(比較例6、ランダム変異)
Bio 5'−GATCCTGACTGA TCA ATC GCA CAGTGA−3'
3'−TGACT AGT TAG CGT GTCACTAG−5'
No.5: SP1−L.pneumophila 1 random−2(比較例7、ランダム変異)
Bio 5'−GATCCTGACTGA ATC CTC ATT CAGTGA−3'
3'−TGACT TAG GAG TAA GTCACTAG−5'
No.6: DNA未使用(対照)
ストレプトアビジン20でコートされたウエル(96穴プレート)18に、5’末端をビオチンで標識された一本鎖DNAとその相補鎖DNAからなる二本鎖DNA24(100pmol/ウエル)を添加し、室温で1時間インキュベートした後、2%スキムミルクを添加し、室温で1時間ブロッキングを行った。次に、融合蛋白質(実施例2で得られたSP1‐GST融合蛋白質)26(5.7pmol/ウエル)を添加して、室温で1時間インキュベートした後、抗タグポリペプチド抗体28および基質酵素30(抗GST抗体‐HRP複合体溶液)を添加して室温で1時間インキュベートした。次いで、発色試薬32(ABTS溶液(0.4mM ABTS、50mMクエン酸、0.2%H2O2、pH4.0))をウエル18に添加し、0、10、30、60分毎にプレートリーダーで波長405nmの光の吸光度を測定した。60分後の吸光度を図13に示す。
【0085】
図13によれば、二本鎖DNAとして標的3(No.1)を用いた場合、1塩基変異二本鎖DNA(No.2,No.3)およびランダム変異二本鎖DNA(No.4,No.5)と比較して吸光度が高かった。これにより、hSP1−GST融合蛋白質が二本鎖DNAに結合する能力を有することが理解できる。
【0086】
3.8.実施例8
[hSP1‐GST融合蛋白質と標的二本鎖DNAとの結合能の確認]
本実施例では、実施例6で得られたhSP1−GST融合蛋白質と二本鎖DNAとの結合能を、実施例7と同様の方法(ELASA)によって確認した。
【0087】
また、用いた二本鎖DNAの配列を図14および以下に示す(No.1〜No.4)。なお、「Bio」はビオチンを示し、下線はジンクフィンガー蛋白質認識配列である。
No.1: SP1−L.pneumophila target(標的1)
Bio 5'−GCACTTACTTCAGATACTCT CCC CGC CCC TTTTGTCACTACAACAAAGT−3'
3'−CGTGAATGAAGTCTATGAGA GGG GCG GGG AAAACAGTGATGTTGTTTCA−5'
No.2: SP1−L.pneumophila random(比較例8、ランダム変異)
Bio 5'−GCACTTACTTCAGATACTCT AGG CTC AGT TTTTGTCACTACAACAAAGT−3'
3'−CGTGAATGAAGTCTATGAGA TCC GAG TCA AAAACAGTGATGTTGTTTCA−5'
No.3: DNA未使用(対照1)
No.4: 蛋白質(hSP1−GST融合蛋白質)未使用(対照2)
標的1の配列は、Legionella pneumophila Philadelphia 1及びLens, Paris間で一致するものである。また、ELISAにより結合能を確認した結果を図15に示す。図15に示されるように、標的1(SP1−Legionella pneumophila Target配列)存在下においてのみ、高い吸光度が確認された。このことから、hSP1を用いることにより、レジオネラ属菌遺伝子(Legionella pneumophila philadelphia1, Lens, Paris)を特異的に検出することができることが理解できる。
【0088】
3.9.実施例9
[Zif268(またはhSP1)−GST融合蛋白質とPCR増幅産物との結合能の確認]
本実施例では、図16(a)および下記に示す各菌のゲノム(No.1〜No.4)の存在下、下記に示す各49bpの二本鎖DNA(A、B)をテンプレートとして、PCRによるDNA増幅を行った。より具体的には、ビオチン修飾一本鎖DNA(センス鎖)およびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾された一本鎖DNA(アンチセンス鎖)を混合し、熱処理により各49bpの二本鎖DNAを得た。なお、「Bio」はビオチンを示し、下線はジンクフィンガー蛋白質認識配列である。
【0089】
(テンプレート)
A: Zif268−L.pneumophila Philadelphia 1
Bio 5'−ATTGGTGTTCCGGAAGATAT CGC CCA CGC AATTGTGTTTTTGCTTAATC−3'
3'−TAACCACAAGGCCTTCTATA GCG GGT GCG TTAACACAAAAACGAATTAG−5' FITC
B: SP1‐L.pneumophila Philadelphia 1
Bio 5'−GCACTTACTTCAGATACTCT CCC CGC CCC TTTTGTCACTACAACAAAGT−3'
3'−CGTGAATGAAGTCTATGAGA GGG GCG GGG AAAACAGTGATGTTGTTTCA−5' FITC
(ゲノム)
No.1: Legionella pneumophila philadelphia1(NC_002942)
No.2: Escherichia coli DH5α(NC_000913:E.coli K12株 complete genome)
No.3: Lactobacillus Plantarum(IAM1216)
No.4: Proteus vulgaris(IAM1054)
各菌(No.1〜No.4)の存在下、各49bpの二本鎖DNAをテンプレートとして、95℃5分間→(95℃30秒間→48℃30秒間→74℃30秒間)×30回→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物をそれぞれ得た。各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図16(b)に示す。図16(b)によれば、レジオネラ・ニューモフィリアの存在下でPCR増幅を行った場合(No.1)、目的とするビオチン標識49bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。
【0090】
次いで、実施例3と同様の方法にて、PCR増幅産物と実施例2で得られたZif268−GST融合蛋白質との結合能、ならびに、PCR増幅産物と実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質との結合能をELASAによって確認した。その結果を図16(c)に示す。
【0091】
図16(c)によれば、テンプレートとしてA,Bのいずれを用いた場合においても、レジオネラ・ニューモフィリアの存在下で得られたPCR増幅産物(No.1)のみが高い吸光度を示した。これにより、ジンクフィンガー蛋白質がZif268およびSP1のいずれの場合においても、ジンクフィンガー蛋白質−GST融合蛋白質と標的配列とが特異的に結合することが理解できる。すなわち、ジンクフィンガー蛋白質‐GST融合蛋白質を用いて、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子中の標的配列を用いて得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0092】
3.10.実施例10
[SP1−GST融合蛋白質とPCR増幅産物の検出限界の確認]
本実施例では、種々のコピー数のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、PCRによるDNA増幅を行った。より具体的には、ビオチン修飾プライマーおよびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾プライマーを用いて、10000 コピー、1000コピー、100コピー、10コピー、0コピー のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、10000倍コピーのEscherichia coli DH5αゲノムおよびLactobacillus plantarumゲノム混在下で Herculase II fusion enzyme(STRATAGENE)を用い、95℃2分間→(95℃20秒間→55℃20秒間→74℃30秒間)×35回→74℃2分間→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。
【0093】
各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図17に示す。図17(A)によれば、100コピー以上のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとした場合、目的とするビオチン標識49bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。
【0094】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物との結合能をELASAによって確認した。その結果を図17(B)に示す。図17(B)によれば、100コピー以上のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物は、10コピーのテンプレート及びテンプレートを含まないPCR増幅産物と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP1−GST融合蛋白質が100コピー以上のテンプレートから増幅されたSP1認識配列を含むPCR増幅産物に特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP1−GST融合蛋白質を用いて、100コピー程度の少量のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムから得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0095】
3.11.実施例11
[SP1−GST融合蛋白質のPCR増幅産物に対する特異性の確認]
本実施例では、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、SP1認識配列を含む標的配列と認識配列を含まないコントロール配列をPCRによるDNA増幅を行い、SP1−GST融合蛋白質のPCR増幅産物に対する特異性を確認した。
より具体的には、異なるビオチン修飾プライマーおよびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾プライマーを用いて、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、SP1認識配列を含む49bpの標的配列と、認識配列を含まない49bpのコントロール配列(図18(A)参照)を95℃5分間→(95℃30秒間→48℃30病間→74℃30秒間)×30回→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。
【0096】
各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図18(B)に示す。図18(B)によれば、どちらのプライマーを用いてもLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムから、目的とするビオチン標識49bpのPCR増幅産物がそれぞれ得られたことが理解できる。
【0097】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物との結合能をELASAによって確認した。その結果を図18(C)に示す。図18(C)によれば、SP1標的配列のPCR増幅産物は、コントロール配列のPCR増幅産物と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP1−GST融合蛋白質がSP1認識配列を含むPCR増幅産物に特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP1−GST融合蛋白質を用いて、標的のPCR増幅産物とそれ以外のPCR増幅産物を特異的に区別することができることが明らかになった。
【0098】
3.12.実施例12
[蛍光偏光解消法を用いたSP1−GST融合蛋白質とPCR増幅産物との結合能の確認]
本実施例では、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとしてPCR増幅して得られたPCR増幅産物とSP1−GST融合蛋白質との結合能を蛍光偏光解消法により確認した。より具体的には、ビオチン修飾プライマーおよびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾プライマーを用いて、10000 コピー、1000コピー、100コピー、10コピー、0コピー のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、10000倍コピーのEscherichia coli DH5αゲノムおよびLactobacillus plantarumゲノム混在下で Herculase II fusion enzyme(STRATAGENE)を用い、95℃2分間→(95℃20秒間→55℃20秒間→74℃30秒間)×35回→74℃2分間→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。
【0099】
次いで、実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物との結合能を蛍光偏光解消法によって確認した。より具体的には、得られたPCR増幅産物とSP1−GST融合蛋白質を混合し、PCR増幅産物に修飾されているFITCの蛍光偏光度を励起波長485nm、蛍光波長530nmで測定した。PCR増幅産物にSP1−GST融合蛋白質が結合することによって、DNAに修飾されているFITCの回転が遅くなり、蛍光波長の偏光度が変化する。
【0100】
その結果を図19に示す。図19によれば、混合してから1分で、10コピー以上のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムから増幅されたPCR増幅産物は、テンプレートを含まないPCR増幅産物と比べて蛍光偏光度が大きく変化した。これにより、SP1−GST融合蛋白質が100コピー以上のテンプレートから増幅されたSP1認識配列を含むPCR増幅産物に特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP1−GST融合蛋白質を用いて、100コピー程度の少量のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムから得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0101】
3.13.実施例13
[レジオネラ・ニューモフィリアゲノム中のSP2標的配列の選択]
まず、NCBI nucleotide BLAST Search for short nearly exact matchesを用いて、Legionella pneumophilaのゲノム中からSP2認識配列であるGGGCGGGACTの10塩基の配列を検索した。Legionella pneumophilaのゲノム配列は先の報告にしたがった(GenBank受託番号:AE017354(Strain Philadelphia 1), CR628337(Strain Lens), CR628336(Strain Paris))。次に、この10塩基配列の5’側及び3’側にそれぞれ21塩基をプライマー領域として含む連続する52塩基配列についてBLASTで検索し、他の細菌が類似した配列を有するか否かを調べた。さらに、その遺伝子の比較対照となる他の遺伝子配列の多さ、進化速度、水平移動能の有無等を基準として、標的とすべき遺伝子を選択した。
【0102】
その結果、SP2の認識配列およびその5’側および3’側のプライマー領域は、レジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子(locus tag = lpg1883)と高い相同性を示すことが明らかになった。以上の結果より、レジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子(locus tag = lpg1883)を標的遺伝子として選択した。
【0103】
図20は、3種のLegionella属細菌の膜貫通蛋白質の遺伝子(locustae = lpg1883)のSP2認識配列を含む52bpの配列アライメントを示す。図20によれば、SP2認識配列およびその5’側および3’側の各21bpのプライマー領域を含む52bpの塩基配列は、レジオネラ・ニューモフィリア間で高い相同性を示すのに対して、確認を行った他の生物の遺伝子に対する相同性は低かった。これにより、SP2認識配列およびその5’側および3’側の各21bpのプライマー領域を含む52bpの塩基配列を標的配列として用いることにより、Legionella pneumophila Philadelphia1を特異的に検出できると考えられる。
【0104】
3.14.実施例14
[SP2−GST融合蛋白質の調製]
本実施例においては、SP2−GST融合蛋白質の調製を実施例6におけるSP1−GST融合蛋白質の調製と同様に図21に示す手順で行った。
【0105】
ヒトリンパ腺cDNAライブラリ(TaKaRa)から入手したSP2(hSP2)構造遺伝子(264bp)をPCR増幅し、TAクローニングすることにより、ベクターpGEM/hSP2を得た。次に、得られたベクターpGEM/hSP2に制限酵素サイト(BamHI、EcoRI)を導入することにより、hSP2遺伝子断片(276bp)を得た。このhSP2遺伝子断片を増幅し、制限酵素処理した後、Schistosoma japonicum(日本住血吸虫)由来GST融合発現ベクターpGEX−2Tとライゲーションすることにより、ベクターpGEX/hSP2を得た。hSP2構造遺伝子およびpGEX−2Tの塩基配列は、先の報告に従った(GenBank受託番号:AE017354(hSP2構造遺伝子)、U13850(pGEX−2T)。SP2構造遺伝子とGST構造遺伝子間のリンカー配列は、LVPRGSである。
【0106】
次いで、ベクターpGEX/hSP2を大腸菌BL21株に導入した後、この大腸菌BL21株を37℃で培養し、0.1mM IPTGにより発現を誘導した後、集菌および洗浄し、フレンチプレスにより菌体を破砕した。菌体破砕物の水溶性画分を、GSTrap(商標)HFカラムを用いてアフィニティー精製することにより、hSP2−GST融合蛋白質を得た。GST活性測定およびSDS−PAGEを行うことにより、hSP2−GST融合蛋白質の精製度を確認した。
【0107】
図22は各溶出画分のSDS−PAGE結果を示す。図22のSDS−PAGE結果において、GSTのバンド(28kDa)とは異なる34kDaのシングルバンドが検出された。このバンドはhSP2−GST融合蛋白質のものであると推測される。以上により、高純度のhSP2−GST融合蛋白質が得られたことが確認された。
【0108】
3.15.実施例15
[hSP2−GST融合蛋白質と標的二本鎖DNAとの結合能の確認]
本実施例では、実施例14で得られたhSP2−GST融合蛋白質と二本鎖DNAとの結合能を、実施例3と同様の方法(ELASA)によって確認した。
【0109】
また、用いた二本鎖DNAの配列を以下に示す(No.1〜No.3)。なお、「Bio」はビオチンを示し、下線はジンクフィンガー蛋白質認識配列である。
No.1: SP2-L.pneumophila target(標的1)
Bio 5'- AAGCCAGTCATTATTTTTTTA GGG CGG GACT CTGAACATAACAGGTTTTGTC -3'
3'- TTCGGTCAGTAATAAAAAAAT CCC GCC CTGA GACTTGTATTGTCCAAAACAG -5'
No.2: SP2-L.pneumophila 1-mutation(比較例1、1塩基変異)
Bio 5'- AAGCCAGTCATTATTTTTTTA GAG CGG GACT CTGAACATAACAGGTTTTGTC -3'
3'- TTCGGTCAGTAATAAAAAAAT CTC GCC CTGA GACTTGTATTGTCCAAAACAG -5'
No.3: SP2-L.pneumophila random(比較例2、ランダム変異)
Bio 5'- AAGCCAGTCATTATTTTTTTA CAC CCT GCGT CTGAACATAACAGGTTTTGTC -3'
3'- TTCGGTCAGTAATAAAAAAAT GTG GGA CGCA GACTTGTATTGTCCAAAACAG -5'
ストレプトアビジンでコートされたウエル(96穴プレート)に、5’末端をビオチンで標識された一本鎖DNAとその相補鎖DNAからなる二本鎖DNA(100pmol/ウエル)を添加し、室温で1時間インキュベートした後、2%スキムミルクを添加し、室温で1時間ブロッキングを行った。次に、融合蛋白質(実施例14で得られたSP2−GST融合蛋白質)26(5.7pmol/ウエル)を添加して、室温で1時間インキュベートした後、抗タグポリペプチド抗体および基質酵素(抗GST抗体−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)複合体溶液)を添加して室温で1時間インキュベートした。次いで、発色試薬(ABTS溶液(0.4mM ABTS(2,2'-Azinobis(3-ethylbenzothiazolin-6-sulfonic Acid)、50mMクエン酸、0.2%H2O2、pH4.0))をウエル18に添加し、0、15、30、60分毎にプレートリーダーで波長405nmの光の吸光度を測定した。60分後の吸光度を図23に示す。
【0110】
図23によれば、二本鎖DNAとして標的1(No.1)を用いた場合、1塩基変異及びランダム変異二本鎖DNA(No.2,No.3)と比較して優位に吸光度が高かった。これにより、SP2−GST融合蛋白質が標的二本鎖DNAに結合する能力を有することが理解できる。
【0111】
3.16.実施例16
[SP2−GST融合蛋白質とPCR増幅産物との結合能の確認]
本実施例では、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、PCRによるDNA増幅を行った。より具体的には、ビオチン修飾プライマーおよびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾プライマーを用いて、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、DNAポリメラーゼとしてHerculase II fusion enzyme(STRATAGENE)を用い、95℃2分間→(95℃20秒間→55℃20秒間→74℃30秒間)×35回→74℃2分間→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。コントロールとして、Escherichia coli DH5αゲノム、Proteum vulgaris (IAM 1025)ゲノムをテンプレートとして用い、またテンプレートを含まないサンプルも同様にPCR増幅を行い、PCR増幅産物をそれぞれ得た。
【0112】
各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図24(A)に示す。図24(A)によれば、テンプレートとしてLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いた場合(No.1)、目的とするビオチン標識52bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。
【0113】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例14で得られたSP2−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物(No.1〜4)との結合能をELASAによって確認した。その結果を図24(B)に示す。図24(B)によれば、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物(No.1)は、他のPCR増幅産物(No.2〜No.4)と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP2−GST融合蛋白質がSP2認識配列を含むPCR増幅産物に特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP2−GST融合蛋白質を用いて、Legionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0114】
3.17実施例17
[SP2−GST融合蛋白質とPCR増幅産物の検出限界の確認]
本実施例では、種々のコピー数のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、PCRによるDNA増幅を行った。より具体的には、ビオチン修飾プライマーおよびFITC(fluorescein isothiocyanate)修飾プライマーを用いて、10000 コピー、1000コピー、100コピー、10コピー、0コピー のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとして、10000コピーのEscherichia coli DH5αゲノム混在下で Herculase II fusion enzyme(STRATAGENE)を用い、95℃2分間→(95℃20秒間→55℃20秒間→74℃30秒間)×35回→74℃2分間→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。
【0115】
各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図25(A)に示す。図25(A)によれば、10コピー以上のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムをテンプレートとした場合、目的とするビオチン標識52bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。
【0116】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例14で得られたSP2−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物(No.1〜5)との結合能をELASAによって確認した。その結果を図25(B)に示す。図25(B)によれば、10コピー以上のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物(No.1〜4)は、テンプレートを含まないPCR増幅産物(No.5)と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP2−GST融合蛋白質が10コピー以上のテンプレートから増幅されたSP2認識配列を含むPCR増幅産物に特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP2−GST融合蛋白質を用いて、10コピー程度の少量のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムから得られたPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0117】
3.18.実施例18
[PCR増幅産物に対するSP2−GST融合蛋白質の特異性の確認]
本実施例では、SP2の標的配列に対する特異性を確認した。より具体的には、認識配列及びプライマー領域に変異導入した配列、計10種類 (図26参照)をテンプレートとして、95℃2分間→(95℃20秒間→55℃20秒間→74℃30秒間)×35回→74℃2分間→4℃の条件にてPCR増幅を行い、PCR増幅産物を得た。
各PCR増幅産物のゲル電気泳動パターンを図27(A)に示す。図27(A)によれば、どの配列においても52bpのPCR増幅産物が得られたことが理解できる。これはプライマー領域が類似しているからだと考えられる。
【0118】
次いで、実施例3と同様の方法にて、実施例14で得られたSP2−GST融合蛋白質と各PCR増幅産物(No.1〜10)との結合能をELASAによって確認した。その結果を図27(B)に示す。図27(B)によれば、標的配列のPCR増幅産物(No.1)は、類似した配列のPCR増幅産物(No.2〜10)と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP2−GST融合蛋白質は1〜2塩基の変異を認識し、標的配列のみに特異的に結合することが理解できる。すなわち、SP2−GST融合蛋白質を用いて、標的配列を含むPCR増幅産物を特異的に検出することができることが明らかになった。
【0119】
3.19.実施例19
[認識配列に対するSP2−GST融合蛋白質の特異性と検出限界の確認]
本実施例では、SP2の認識配列に対する特異性と結合能を確認した。より具体的には、実施例3と同様の方法にて、認識配列に変異導入された配列(図26参照)との結合能をELISAによって確認した。
【0120】
その結果を図28に示す。図28によれば、認識配列を含む(No.1、4、7)及び認識配列の4残基目に一塩基変異をもつ配列(No.5、6)は、類似した配列のPCR増幅産物(No.2〜3、8〜10)と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP2−GST融合蛋白質は認識配列の4残基目の変異を区別する事ができないがそれ以外の一塩基配列は区別する事ができると理解できる。すなわち、SP2−GST融合蛋白質だけでもある程度特異的に検出する事ができるが、PCRと組み合わせることでより特異的に検出できる事が明らかになった。 次いで、認識配列をもつ標的配列に対する検出限界を確認するために、実施例3と同様の方法にて、種々の濃度の標的配列との結合能をELISAによって確認した。
【0121】
その結果を図29に示す。図29によれば、1012コピー以上の標的配列に対して、それ以下のコピー数の標的配列と比べて高い吸光度を示した。これにより、SP2−GST融合蛋白質で1012コピー以上の標的配列があれば検出できる事が明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係る検体中のレジオネラ属菌遺伝子を検出するためのキットおよび方法は、実験室における利用のみならず、例えば浴槽、プール、人工池、人工河川等を備えたレジャー施設、医療施設、介護施設等でのレジオネラの検出、ならびに医療機関における被験者のレジオネラ症感染の検出の他、空調機室外冷却塔の冷却水、給水給湯系などのビル施設の管理面でのレジオネラ属菌の検出にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1は、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子およびジンクフィンガー蛋白質(Zif268)認識配列を模式的に示す。
【図2】図2は、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子中のジンクフィンガー蛋白質(Zif268)認識配列およびその5’側および3’側のプライマー領域のヌクレオチド配列アライメントを示す。
【図3】図3は、実施例3、4および7で用いられた標的核酸の検出キットを模式的に示す。
【図4】図4は、実施例3で用いられたヌクレオチド配列(ビオチン標識二本鎖DNA)24の配列アライメントを示す。
【図5】図5は、実施例3で用いられたヌクレオチド配列(ビオチン標識二本鎖DNA)24に結合するZif268−GST融合蛋白質に対するELISAの結果(吸光度)を示す。
【図6】図6は、実施例4でのELISAに用いたPCR増幅産物の配列アライメントを示す。
【図7】図7は、実施例4で得られたPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。
【図8】図8は、実施例4で得られたPCR増幅産物に結合するZif268−GST融合蛋白質に対するELISAの結果(吸光度)を示す。
【図9】図9は、レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子およびジンクフィンガー蛋白質(SP1)認識配列を模式的に説明する。
【図10】図10は、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子中のジンクフィンガー蛋白質(SP1)認識配列およびその5’側および3’側のプライマー領域のヌクレオチド配列アライメントを示す。
【図11】図11は、実施例6におけるジンクフィンガー蛋白質(SP1)とタグポリペプチド(GST)との融合蛋白質の発現ベクターの調製方法を模式的に説明する。
【図12】図12(a)および図12(b)は、実施例6で得られたジンクフィンガー蛋白質(SP1)とタグポリペプチド(GST)との融合蛋白質のSDS−PAGEの結果を示す。
【図13】図13は、実施例7で用いられたヌクレオチド配列に対するELISAの結果(吸光度)を示す。
【図14】図14は、実施例8で用いられたヌクレオチド配列(ビオチン標識二本鎖DNA)24の配列アライメントを示す。
【図15】図15は、実施例8で得られたPCR増幅産物に結合するZif268−GST融合蛋白質に対するELISAの結果(吸光度)を示す。
【図16】図16(a)は、実施例9で用いたゲノムおよびジンクフィンガー蛋白質(Zif268,SP1)認識配列を模式的に示す図であり、図16(b)は、実施例9で得られたPCR増幅産物の電気泳動パターン(左図はZif268認識配列を含むテンプレートAを用いた場合のPCR増幅産物を示し、右図はSP1認識配列を含むテンプレートBを用いた場合のPCR増幅産物を示す。)を示し、図16(c)は、実施例9で得られたPCR増幅産物に結合するジンクフィンガー蛋白質−GST融合蛋白質(左図は融合蛋白質がZif268−GST融合蛋白質である場合、右図は融合蛋白質がSP1−GST融合蛋白質である場合)に対するELISAの結果(吸光度)を示す。
【図17】図17(A)は、実施例10において種々のコピー数のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。図17(B)は、実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質と実施例10で得られた各PCR増幅産物との結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図18】図18(A)は、実施例11においてPCR増幅させたSP1標的配列とコントロール配列を示す。図18(B)は、実施例11において二種類のプライマーを用いてレジオネラゲノムから得られたPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。図18(C)は、実施例11で得られたPCR増幅産物に対する実施例6で得られたSP1−GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図19】図19は、実施例12における蛍光偏光解消法を用いたSP1−GST融合蛋白質とPCR増幅産物との結合能を確認する蛍光偏光度を示す。
【図20】図20は、実施例13におけるSP2の認識配列を含む標的配列のホモロジー検索の結果を示す。
【図21】図21は、実施例14におけるSP2−GST融合蛋白質のクローニングを示す。
【図22】図22は、実施例14における精製SP2-GST融合蛋白質のSDS−PAGEの結果を示す。
【図23】図23は、実施例15における標的二本鎖DNAに対するSP2―GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図24】図24(A)は、実施例16において各ゲノムからのPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。図24(B)は、実施例16で得られたPCR増幅産物に対するSP2−GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図25】図25(A)は、実施例17における種々のコピー数のLegionella pneumophila subsp. pneumophila philadelphia1ゲノムを用いて得られたPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。図25(B)は、実施例17におけるPCR増幅産物に対するSP2−GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図26】図26は、実施例18におけるSP2認識配列及びプライマー領域に変異が導入された類似配列を示す。
【図27】図27(A)は、実施例18における10種類の配列を用いて得られたPCR増幅産物の電気泳動パターンを示す。図27(B)は、実施例18で得られた10種類のPCR増幅産物に対するSP2−GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図28】図28は、実施例19における認識配列及び変異導入配列に対するSP2−GST融合蛋白質の結合能を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【図29】図29は、実施例19における標的配列に対するSP2−GST融合蛋白質の検出限界を確認するELASAの結果(吸光度)を示す。
【符号の説明】
【0124】
10・・・レジオネラ・ニューモフィリア遺伝子
12・・・ジンクフィンガー蛋白質(Zif268)認識部位
18・・・ウエル(96穴プレート)
20・・・ストレプトアビジン
22・・・ビオチン
24・・・ビオチン標識二本鎖DNA
26・・・タグポリペプチドとジンクフィンガー蛋白質との融合蛋白質
28・・・抗タグポリペプチド抗体(抗GST抗体)
30・・・基質酵素(HRP)
32・・・発色試薬(ABTS)
40・・・pGEM/hSP1
42・・・hSP1遺伝子断片
44・・・ベクターpGEX/hSP1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の標的核酸を検出するためのキットであって、
前記標的核酸がレジオネラ属菌遺伝子であり、
前記遺伝子中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されたプライマー対を含むキット。
【請求項2】
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列に結合しうるジンクフィンガー蛋白質をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記ジンクフィンガー蛋白質は、検出可能な標識により標識されている、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態である、請求項2記載のキット。
【請求項5】
前記タグポリペプチドはGSTである、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記ジンクフィンガー蛋白質がZif268であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GCGTGGGCG−3’である、請求項2ないし5のいずれかに記載のキット。
【請求項7】
前記ジンクフィンガー蛋白質がSP1であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGGCGGGG−3’である、請求項2ないし5のいずれかに記載のキット。
【請求項8】
前記ジンクフィンガー蛋白質がSP2であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGCGGGACT−3’である、請求項2ないし5のいずれかに記載のキット。
【請求項9】
前記標的核酸が、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子から選ばれる一である、請求項1ないし8のいずれかに記載のキット。
【請求項10】
前記プライマー対は、検出可能な標識により標識されている、請求項1ないし9のいずれかに記載のキット。
【請求項11】
検体中の標的核酸を検出する方法であって、
前記標的核酸がレジオネラ属菌遺伝子であり、
(a)前記遺伝子中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されているプライマー対を用いて、検体中の核酸をPCR反応により増幅させること、および
(b)ジンクフィンガー蛋白質を用いて、前記増幅させることにより得られたPCR増幅産物を検出すること、
を含む方法。
【請求項12】
前記ジンクフィンガー蛋白質は、検出可能な標識により標識されている、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タグポリペプチドはGSTである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ジンクフィンガー蛋白質がZif268であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GCGTGGGCG−3’である、請求項11ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ジンクフィンガー蛋白質がSP1であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGGCGGGG−3’である、請求項11ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ジンクフィンガー蛋白質がSP2であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGCGGGACT−3’である、請求項11ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記標的核酸が、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子から選ばれる一である、請求項11ないし17のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
検体中の標的核酸を検出するためのキットであって、
前記標的核酸がレジオネラ属菌遺伝子であり、
前記遺伝子中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されたプライマー対を含むキット。
【請求項2】
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列に結合しうるジンクフィンガー蛋白質をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記ジンクフィンガー蛋白質は、検出可能な標識により標識されている、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態である、請求項2記載のキット。
【請求項5】
前記タグポリペプチドはGSTである、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記ジンクフィンガー蛋白質がZif268であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GCGTGGGCG−3’である、請求項2ないし5のいずれかに記載のキット。
【請求項7】
前記ジンクフィンガー蛋白質がSP1であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGGCGGGG−3’である、請求項2ないし5のいずれかに記載のキット。
【請求項8】
前記ジンクフィンガー蛋白質がSP2であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGCGGGACT−3’である、請求項2ないし5のいずれかに記載のキット。
【請求項9】
前記標的核酸が、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子から選ばれる一である、請求項1ないし8のいずれかに記載のキット。
【請求項10】
前記プライマー対は、検出可能な標識により標識されている、請求項1ないし9のいずれかに記載のキット。
【請求項11】
検体中の標的核酸を検出する方法であって、
前記標的核酸がレジオネラ属菌遺伝子であり、
(a)前記遺伝子中に存在するジンクフィンガー蛋白質認識配列がPCR反応により増幅されるよう設計されているプライマー対を用いて、検体中の核酸をPCR反応により増幅させること、および
(b)ジンクフィンガー蛋白質を用いて、前記増幅させることにより得られたPCR増幅産物を検出すること、
を含む方法。
【請求項12】
前記ジンクフィンガー蛋白質は、検出可能な標識により標識されている、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ジンクフィンガー蛋白質は、タグポリペプチドとの融合蛋白質の形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タグポリペプチドはGSTである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ジンクフィンガー蛋白質がZif268であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GCGTGGGCG−3’である、請求項11ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ジンクフィンガー蛋白質がSP1であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGGCGGGG−3’である、請求項11ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ジンクフィンガー蛋白質がSP2であり、
前記ジンクフィンガー蛋白質認識配列が5’−GGGCGGGACT−3’である、請求項11ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記標的核酸が、レジオネラ・ニューモフィリアの2−デオキシ−D−グルコナート−3−デヒドロゲナーゼ遺伝子、レジオネラ・ニューモフィリアのflhA遺伝子及びレジオネラ・ニューモフィリアの膜貫通蛋白質の遺伝子から選ばれる一である、請求項11ないし17のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2008−92948(P2008−92948A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237280(P2007−237280)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(392017303)システム・インスツルメンツ株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(392017303)システム・インスツルメンツ株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
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