説明

検体分析装置

【課題】動作異常によって多くのキュベットの測定動作が中断した場合であっても、新規検体の測定を迅速に開始する。
【解決手段】測定部2は回転可能な反応テーブル200を備えている。制御部4は、測定開始の指示を受け付けると、反応テーブル200における残キュベットを検知する。残キュベットがある場合、制御部4は、それらの残キュベットが干渉を生じるかを判断し、干渉が生じなければ新規検体を反応テーブル200にセットし、反応テーブル200を回転させて順次処理を行う。これに連動して残キュベットが移送終了位置C56まで移送されると、ドレイン部282によって残液の吸引除去および廃棄孔Wへの廃棄が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キュベットに収容された検体を測定する検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キュベットに検体と試薬とを分注して測定する分析装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の分析装置は、複数のキュベットを保持する回転テーブル部を備えた1次反応部と、1次反応部から移送されたキュベットを保持してBF分離を行う1次BF分離部と、1次BF分離部によるBF分離が行われた複数のキュベットを保持する回転テーブルを備えた2次反応部と、2次反応部から移送されたキュベットを保持してBF分離を行う2次BF分離部と、検出部とを備えている。この分析装置においては、検体を収容したキュベットは、1次反応部、1次BF分離部、2次反応部、2次BF分離部、検出部に順次送られ、検出部でキュベット内の測定対象物質が検出され、検出が完了した後、廃棄袋に廃棄される。
【0004】
特許文献1の分析装置では、測定動作中に反応部またはBF分離部に異常が発生すると、異常が発生した反応部またはBF分離部よりも上流にあるキュベットに対する測定動作を中断し、異常が発生した反応部またはBF分離部よりも下流にあるキュベットに対する測定動作を継続する。装置は、異常復帰後にユーザによって測定再開が指示されると、測定動作が中断していたキュベットを全て廃棄し、全てのキュベットを廃棄した後、新規検体の測定動作を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の分析装置では、2次反応部や2次BF分離部などの測定動作の中でも終盤の工程を担う箇所で異常が発生すると、装置内の多くのキュベットの測定動作が中断する。この場合、それら全てのキュベットを廃棄するためには時間が掛かるため、新規検体の測定開始までに要する時間が長くなることがあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、動作異常によって多くのキュベットの測定動作が中断した場合であっても、新規検体の測定を迅速に開始することが可能な検体分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1局面による検体分析装置は、キュベットに収容された検体に対して測定のための処理を行う複数の処理ステーションと、検体を収容したキュベットを複数保持し、保持したキュベットを前記複数の処理ステーションに順次搬送するキュベット搬送部と、キュベット搬送部によって所定位置に搬送されたキュベットを廃棄する廃棄ステーションと、処理ステーションにおける異常を検知する異常検知手段と、を備え、異常検知手段によって異常を検知した場合、キュベットに対する処理を中断し、異常復帰後、処理開始の指示を受け付けた場合、新たな検体を収容したキュベットをキュベット搬送部に保持させて前記複数の処理ステーションへ順次搬送するとともに、該搬送に伴って、前記中断によって処理が未完了のキュベットが所定の位置に搬送されると、そのキュベットを廃棄ステーションによって廃棄することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、異常によって多くのキュベットに対する処理が中断し、未測定のキュベットが多数キュベット搬送部に存在する場合であっても、新規検体の測定に先立って未測定のキュベットを廃棄することなく、新規検体を測定しながら未測定のキュベットを廃棄することができるため、新規検体の測定を開始するまでに要する時間を短縮することができる。
【0010】
本発明の第2局面による検体分析装置は、検体を収容したキュベットを複数保持し、保持したキュベットを順次移送するための回転テーブルからなるキュベット搬送部と、キュベット搬送部により第一位置に搬送されたキュベットに、検体に含まれる測定対象物質と免疫反応する試薬を分注する試薬分注部と、キュベット搬送部により第一位置より下流側の第二位置に搬送されたキュベットに対して、少なくとも未反応物を分離除去する処理を行う分離除去部と、キュベット搬送部により第ニ一位置より下流側の第三二位置に搬送されたキュベットに対して、測定対象物質を検出する処理を行う検出部と、検出部による測定対象物質の検出処理後、キュベット内の液体を吸引除去する吸引除去部と、液体が吸引除去されたキュベットを廃棄するキュベット廃棄部と、前記検出部のキュベットを吸引除去部およびキュベット廃棄部に移送可能なキュベット移送部と、キュベット搬送部、試薬分注部、分離除去部、検出部、吸引除去部およびキュベット移送部の動作制御を行って、キュベット搬送部に保持された各キュベットに対して測定動作を順次実行する制御部と、異常を検知する異常検知手段とを備え、異常検知手段が測定動作中に異常を検知した場合、制御部は、測定動作を中断し、異常によって測定動作が中断し、異常の復帰処理後、測定開始の指示を受け付けた場合に、制御部は、新たな検体を収容したキュベットに対して、測定動作を順次実行するとともに、前記中断により未測定のキュベットを、前記測定動作に連動して順次キュベット搬送部から吸引除去部およびキュベット廃棄部に移送するようにキュベット移送部を制御することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、異常によって多くのキュベットに対する測定動作が中断し、未測定のキュベットが多数回転テーブル上に存在する場合であっても、それらを測定に先立って廃棄することなく新規検体の測定を開始できるため、新規検体の測定を開始するまでに要する時間を短縮することができる。
【0012】
上記の検体分析装置は、回転テーブル上のキュベットを検知するキュベット検知部と、記憶部とをさらに備え、制御部は、測定開始の指示を受け付けると、キュベット検知部によって回転テーブルに保持されているキュベットの位置情報を取得し、記憶部に記憶する構成であってもよい。
【0013】
上記の検体分析装置において、回転テーブル上にキュベットがある場合、制御部は、回転テーブル上のキュベットが保持されていない保持位置に、新たな検体を収容したキュベットがセットされるように回転テーブルを回転させた後、新たな検体を収容したキュベットに対する測定動作を開始する構成であってもよい。
【0014】
上記の検体分析装置において、回転テーブル上にあるキュベットによって測定を開始できない場合、制御部は、記憶部に記憶されたキュベットの位置情報に基づいて、測定を開始できる状態とするために廃棄する必要があるキュベットを特定し、測定開始に先立って、特定されたキュベットを順次キュベット搬送部から吸引除去部及びキュベット廃棄部に移送するようにキュベット移送部を制御する構成であってもよい。
【0015】
上記の検体分析装置において、制御部は、特定されたキュベットがキュベット廃棄部に廃棄された後、回転テーブル上のキュベットが保持されていない保持位置に、新たな検体を収容したキュベットがセットされるように回転テーブルを回転させ、新たな検体を収容したキュベットに対する測定動作を開始する構成であってもよい。
【0016】
上記の検体分析装置において、制御部は、中断により未測定のキュベットに対して、試薬分注を行わないように試薬分注部を制御する構成であってもよい。
【0017】
上記の検体分析装置は、検体を収容したキュベットをキュベット搬送部にセットする検体セット部をさらに備えていてもよい。
【0018】
上記の検体分析装置において、キュベット移送部は、第三位置に搬送されたキュベットをキュベット搬送部から取り出して検出部に移送し、検出後のキュベットを検出部から取り出して吸引除去部及びキュベット廃棄部に順次移送する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、異常によって多くのキュベットに対する測定動作が中断し、未測定のキュベットが多数回転テーブル上に存在する場合であっても、それらを測定に先立って廃棄することなく新規検体の測定を開始できるため、新規検体の測定を開始するまでに要する時間を短縮することができる。
【0020】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の免疫分析装置1の全体構成を示す斜視図である
【図2】測定部2内を上側から見た場合の構成を示す平面図である。
【図3】測定部2による測定フローを示すフローチャートである。
【図4】測定部2がユーザから測定開始の指示を受け付けてから、新規検体の測定を実行するまでの動作フローを説明するためのフローチャートである。
【図5】図4のステップS208のサブルーチンを説明するフローチャートである。
【図6】図4のステップS210のサブルーチンを説明するフローチャートである。
【図7】図4のステップS212のサブルーチンを説明するフローチャートである。
【図8】図4のステップS213のサブルーチンを説明するフローチャートである。
【図9】図9(a)は、キュベット配置バッファの構成を模式的に表す図である。図9(b)は、測定可能配置パターンを模式的に示す図である。図9(c)は、測定可能配置パターンとキュベット配置バッファの比較処理を説明するための図である。
【図10】測定可能配置パターンを反応テーブル200に照らして模式的に示した図である。
【図11】異常を検出するための異常検出部の概略構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施の形態は、血液などの検体を用いてB型肝炎、C型肝炎、腫瘍マーカおよび甲状腺ホルモンなど種々の項目の検査を行うための免疫分析装置に本発明を適用したものである。
以下、本実施の形態に係る免疫分析装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、免疫分析装置1の全体構成を示す斜視図である。免疫分析装置1は、測定部2と、検体搬送部3と、制御部4と、表示操作部5とを備えている。検体搬送部3は、血清からなる検体を収容した検体容器を保持する検体ラックを搬送する。測定部2は、検体搬送部3によって搬送された検体ラックに保持された検体容器から検体を吸引し、測定を行う。表示操作部5は、タッチパネルを備えており、測定部2による測定結果を表示したり、測定開始の指示を受け付ける機能を有している。制御部4は、測定部2に設けられており、免疫分析装置1の各部を制御する。
【0024】
[測定部の構成]
測定部2による測定フローを概略的に説明する。まず、測定対象である血清からなる検体と緩衝液(R1試薬)とを混合させる。得られた混合液に、検体に含まれる測定対象物質としての抗原に抗原抗体反応によって結合する捕捉抗体を担持した磁性粒子を含む試薬(R2試薬)を添加する。抗原と結合した捕捉抗体を担持する磁性粒子を1次BF(Bound Free)分離部220の磁石(図示せず)に引き寄せ、捕捉抗体と結合しなかった未反応の試薬成分を分離除去する。そして、抗原に対して抗原抗体反応によって結合する抗体を標識した標識抗体(R3試薬)をさらに添加する。そして、標識抗体および抗原に結合した捕捉抗体を担持する磁性粒子を2次BF分離部230の磁石(図示せず)に引き寄せ、未反応の標識抗体を分離除去する。さらに、分散液(R4試薬)および標識抗体との反応によって発光する発光基質(R5試薬)を添加した後、標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量を測定する。このような過程を経て、標識抗体に結合する検体に含まれる測定対象物質としての抗原が定量的に測定される。
【0025】
以下、図2及び図3を参照しながら、測定部2による測定フローに沿って、測定部2の構成を詳細に説明する。図2は、測定部2内を上側から見た場合の構成を示す平面図である。図3は、測定部2による測定フローを示すフローチャートである。
【0026】
測定部2は、複数の処理ステーションを含んでおり、主に、反応テーブル200と、キュベットテーブル210と、キュベット供給部270と、検体分注アーム260と、R1試薬分注アーム261と、R2試薬分注アーム262と、1次BF分離部220と、R3試薬分注アーム263と、2次BF分離部230と、R4/R5試薬供給部240と、検出部250と、廃棄部280と、を備えている。
【0027】
キュベット供給部270は、複数のキュベットを収納している。キュベット供給部270は、キュベットテーブル210のキュベットセット位置P1にキュベットを1つずつ順次供給する(ステップS101)。
【0028】
キュベットテーブル210は、4つのキュベット保持孔を有する回転可能なテーブルである。キュベットテーブル210は、キュベットセット位置P1においてキュベット供給部270からキュベットを受け取る。キュベットテーブル210は、回転することにより、受け取ったキュベットをR1試薬分注位置P2および検体分注位置P3に順次搬送する。
【0029】
R1試薬分注アーム261は、所定の位置に配置されたR1試薬容器からR1試薬を吸引し、R1試薬分注位置P2のキュベットに分注する(ステップS102)。
【0030】
検体分注アーム260は、検体搬送部3によって搬送された検体容器内の検体を吸引し、吸引した検体を、検体分注位置P3のキュベットに分注する(ステップS103)。
【0031】
キュベットテーブル210の近傍には、キャッチャ261aが設けられている。キャッチャ261aは、検体が分注された検体分注位置P3のキュベットを、キュベットテーブル210から取り出し、反応テーブル200の搬送開始位置C1にセットする(ステップS104)。
【0032】
反応テーブル200は、キュベットを保持可能なキュベット保持孔Hを有する回転可能なテーブルからなる。キュベット保持孔Hは、反応テーブル200の外形に沿って、円環状に一定間隔ごとに70個配置されている。キュベット保持孔Hにセットされたキュベットは約42℃に加温される。これにより、キュベット内の検体と各種試薬との反応が促進される。
【0033】
反応テーブル200は、18秒周期(1ターンともいう)で一定角度θだけ時計回り方向(A1方向)に回転する。これにより、反応テーブル200は、キュベット保持孔Hにセットされたキュベットを、搬送開始位置C1から、C2、C3・・・に順次搬送し、後述するキャッチャ266によりキュベットが取り出される搬送終了位置C56まで搬送する。ここで、一定角度θとは、任意の位置Cnにおけるキュベット保持孔Hを、矢印A1方向に隣り合う位置Cn+1に移動させるのに必要な角度であり、具体的には、θ=360/70度である。
【0034】
以下では、C1を搬送開始位置と呼称し、C56を搬送終了位置と呼称する。また、搬送開始位置C1から数え始めて、時計回り方向でn番目の位置をCnと呼ぶ。図2では、C1からC70のうち、説明に必要な箇所にのみ符号を付している。また、図2では、測定部2の構成については実線の引き出し線を付し、位置を示す符号については破線の引き出し線を付している。また、図3では、ステップS104からS115まで、反応テーブル200が継続してキュベットを搬送しているが、図3では反応テーブル200による搬送は省略している。
【0035】
R2試薬分注アーム262は、所定の位置に配置されたR2試薬容器からR2試薬を吸引し、吸引したR2試薬を、R2試薬分注位置C11のキュベットに分注する(ステップS105)。R2試薬が分注されたキュベットは、反応テーブル200の回転により位置C17まで搬送される。
【0036】
1次BF分離部220は、キャッチャ221と、1次BFテーブル222とを備えている。キャッチャ221は、検体、R1試薬及びR2試薬が分注され、反応テーブル200の位置C17まで搬送されたキュベットを反応テーブル200から取り出して、1次BF分離部220の待機部223に搬送する(ステップS106)。
【0037】
1次BFテーブル222は、4つの保持孔224〜227を備えている。キャッチャ221は、待機部223に配置されたキュベットを取り出して、保持孔224〜227のいずれかにセットする。
【0038】
1次BF分離部220は、保持孔224〜227にセットされたキュベットに磁石を近づけてキュベット内の磁性粒子を局所的に集磁し、キュベット内の試料から捕捉抗体と結合しなかった成分を除去する。ついで、1次BF分離部220は、キュベットに洗浄液を分注し、攪拌し、再び磁性粒子を集磁して洗浄液を除去する。この処理を繰り返すことで未反応の試薬成分がキュベットから除去される(ステップS107)。
【0039】
1次BF分離処理が完了すると、キャッチャ221は、キュベットを取り出して反応テーブル200の位置C22に戻す(ステップS108)。1次BF分離が終了したキュベットは、反応テーブル200の回転により位置C22から位置C23へ搬送される。
【0040】
R3試薬分注アーム263は、所定の位置に配置されたR3試薬容器からR3試薬を吸引し、吸引したR3試薬を反応テーブル200のR3試薬分注位置C23のキュベットに分注する(ステップS109)。R3試薬が分注されたキュベットは、反応テーブル200の回転により位置C23から位置C32まで搬送される。
【0041】
2次BF分離部230は、キャッチャ231と、2次BFテーブル232とを備えている。キャッチャ231は、R3試薬が分注され、反応テーブル200の位置C32まで搬送されたキュベットを把持し、反応テーブル200から取り出して、2次BF分離部230の待機部233に搬送する(ステップS110)。
【0042】
2次BFテーブル232は、4つの保持孔234〜237を備えている。キャッチャ231は、待機部233に配置されたキュベットを、保持孔234〜237のいずれかにセットする。
2次BF分離部230は、保持孔234〜237にセットされたキュベットに磁石を近づけてキュベット内の磁性粒子を局所的に集磁し、キュベット内の試料から未反応のR3試薬を除去する。ついで、2次BF分離部230は、キュベットに洗浄液を分注し、攪拌し、再び磁性粒子を集磁して洗浄液を除去する。この処理を繰り返すことで未反応の試薬成分がキュベットから除去される(ステップS111)。
【0043】
2次BF分離処理が完了すると、キャッチャ231は、キュベットを把持して反応テーブル200の位置C37に戻す(ステップS112)。2次BF分離が終了したキュベットは、反応テーブル200の回転により位置C37から位置C38へ搬送される。
【0044】
R4/R5試薬供給部240は、キュベットを保持する保持孔241と、キャッチャ242を備えている。
キャッチャ242は、反応テーブル220の位置C38のキュベットを取り出し、保持孔241に向けて搬送する。R4/R5試薬供給部240は、保持孔241に向かう搬送経路の途中で、キャッチャ242に把持されたキュベットにR4試薬及びR5試薬を分注する。キャッチャ242は、R4試薬及びR5試薬が分注されたキュベットを保持孔241にセットする(ステップS113)。
キャッチャ242は、保持孔241にセットされたキュベットを取り出して、反応テーブル200の位置C39に向けて搬送し、反応テーブル200の位置C39に戻す(ステップS114)。R4試薬及びR5試薬が分注されたキュベットは、反応テーブル200の回転により位置C39から搬送終了位置C56まで搬送される。
【0045】
検出部250は、キュベットを収容可能な暗室を備え、暗室に収容されたキュベットから発せられる光を測光する機能を有する。
【0046】
廃棄部280は、キャッチャ266と、ドレイン保持部281と、ドレイン部282と、廃棄孔Wとを備えている。
キャッチャ266は、キュベットを把持して移送する機能を有している。ドレイン部282は、ドレイン保持部281に保持されたキュベットから液体を吸引して、廃液として装置外部に排出する機能を有している。廃棄孔Wは、装置の下方に設けられた廃棄袋に連通する孔からなる。
【0047】
キュベットが反応テーブル200の搬送終了位置C56まで搬送されると、キャッチャ266は、キュベットを取り出して検出部250に移送する。検出部250は、キュベット内の標識抗体と発光基質との反応過程で生じる光を、光電子増倍管(Photo Multiplier Tube)で取得することにより、その検体に含まれる抗原の量を測定する(ステップS115)。
【0048】
検出部250による検出が完了すると、キャッチャ266は、検出部250からキュベットを取り出してドレイン保持部281に移送し、ドレイン部282がキュベットから液体を吸引して排出する。そして、キャッチャ266がキュベットを廃棄孔Wの上方に移送し、廃棄孔Wに移送されたキュベットは、把持が解除されることにより廃棄孔Wから廃棄袋に廃棄される(ステップS116)。
【0049】
以上が、測定部2の主な構成と、各構成による一連の測定フローである。なお、図3の測定フローは、一つのキュベットに対する一連の測定フローのみを示したものであって、実際に測定部2が稼動する場合、この一連の測定フローが複数のキュベットに対して並行して実行される。
【0050】
測定部2は、さらに、反応テーブル200の近傍に設けられたキュベット検知部290を備えている。キュベット検知部290は、反応テーブル200のキュベット列の外側に設けられた照射部291と、反応テーブル200のキュベット列の内側に設けられた受光部292とを備える。照射部291は、反応テーブル200の位置C50(以下、キュベット検知位置ともいう)のキュベットに対して光を照射する。受光部292は、反応テーブル200の内側に固定的に設けられている。受光部292は、照射部291からキュベットに向けて照射された光を受光する。このような構成を備えるキュベット検知部290は、キュベット検知位置C50に配置されたキュベット保持孔Hにおけるキュベットの有無を検知する。具体的には、照射部291が光を照射したとき、キュベット検知位置C50のキュベット保持孔Hにキュベットがあれば、光がキュベットに当たって散乱するため、キュベットが無い場合に比べて受光部292に到達する光の光量が低下する。したがって、受光部292における光量が所定値以上であれば、そのキュベット保持孔Hにはキュベットがないと判定することができ、光量が所定値未満であれば、そのキュベット保持孔Hにはキュベットがあると判定することができる。
キュベット検知部290は、図3に示した一連の測定フローにおいて使用される機構ではなく、後述する優先廃棄キュベット決定処理において用いられる。
【0051】
[測定再開動作]
次に、測定に異常が発生してから測定を再開するまでの本実施形態の免疫分析装置1の動作について説明する。図4は、測定に異常が発生してから測定を再開するまでの動作フローを説明するためのフローチャートである。
【0052】
免疫分析装置1は、図3に示す一連の測定フローを複数のキュベットに対して行っているときに、測定動作に異常が発生したか否かを判断する(ステップS201)。
【0053】
図11は、測定動作における異常を検出するための異常検出部の概略構成を示すブロック図である。
図11に示すように、測定部2は、制御部4に接続された複数の異常検知部D1、D2・・・を備えている。異常検知部D1は、検体分注アーム260に設けられた分注ピペットの衝突を検知するためのピペットクラッシュセンサである。ピペットクラッシュセンサは、アーム移動時にピペットの先端が障害物に衝突した場合に検知信号を生成し、制御部2に送信する。制御部2は、検知信号を受信すると、測定動作の異常が発生したと判断する。このような異常検知センサS1は、検体分注アーム260だけでなく、R1試薬分注アーム261、R2試薬分注アーム262、R3試薬分注アーム263等の各アーム機構にも設けられている。
【0054】
異常検知部D2は、各処理ステーションに配置されたモータへ電流を供給する電力線の断線を検知するための断線検知回路である。モータには、例えば検体分注アーム260およびR1試薬分注アーム261などの各アーム機構を軸方向に回転させるモータや、上下方向に移動させるためのモータが含まれる。この断線検知回路は、定電圧電源とモータとの間に設けられた断線検知用の抵抗を有しており、この抵抗に流れる電流値が制御部4に出力されるようになっている。制御部4は、断線検知回路S2の出力信号を受信し、電流値を所定の基準値と比較する。モータが駆動されている間は、断線検出用の抵抗に基準値以上の電流が流れるが、モータを接続する電力線に断線が生じると、そのモータに接続された抵抗には電流が流れない。制御部4は、断線検出用の抵抗の電流値が基準値よりも低い場合に、断線による異常が発生したと判断する。
測定部2は、これら異常検知部D1、D2の他にも複数種類の異常検知部D3、D4・・・を備えている。異常検知部としては、例えば、外部電源からの電源供給が遮断されたことを検知するものや、測定部2の試薬容器やキュベット等から液体が漏水したことを検知するものもある。
【0055】
制御部4は、測定動作中に、上記の異常検知部D1、D2・・・によって異常が検知されると(ステップS201:YES)、測定動作を中断する(ステップS202)。測定が中断すると、反応テーブル200、1次BF分離部220、2次BF分離部230などの全ての処理ステーションが動作を停止する。これにより、測定が未完了のキュベットが反応テーブル200に残留する。
【0056】
異常が発生して測定動作が中断すると、ユーザあるいはサービスマンによって異常の原因が取り除かれることによって異常復帰が行われる。例えば、ピペットクラッシュが原因で測定動作が中断した場合には、ピペットクラッシュの原因となった障害物を取り除くことで異常復帰が行われる。また、断線が原因で測定動作が中断した場合には、断線した電力線を修復することで異常復帰が行われる。
【0057】
制御部4は、測定部2による測定開始指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS203)。具体的には、制御部4は、表示操作部5に表示された測定開始ボタンが操作されたか否かを判断する。ユーザから測定開始の指示がなければ(ステップS203:NO)、制御部4は判定を繰り返す。ユーザから測定開始の指示を受け付けると(ステップS203:YES)、制御部4は、異常復帰が行われているか否かを判断する(ステップS204)。
制御部4は、異常復帰が行われていなければ(ステップS204:NO)、異常復帰が行われていないため測定を再開できないことを示すエラーメッセージを表示操作部5に表示して(ステップS205)、ステップS203へ処理を戻す。異常復帰が行われていれば(ステップS204:YES)、制御部4は、機構部の初期化を行う(ステップS206)。
【0058】
機構部の初期化とは、測定部2内の各機構部を初期位置に戻す動作をいう。具体的には、制御部4は、検体分注アーム260、試薬分注アーム261〜263、キャッチャ261a、221、231、266等の機構を、全て予め決められている初期位置に戻す。
【0059】
機構部の初期化が終了すると、制御部4は、検出中又は検出後のキュベットを廃棄する(ステップS207)。この処理は、具体的には、検出部250、キャッチャ266、及びドレイン部保持部281にキュベットが保持されている場合に、それらのキュベットを廃棄する処理である。具体的には、キャッチャ266がキュベットを把持していれば、キャッチャ266に把持されているキュベット内の液体を、ドレイン部282によって除去し、キュベットを廃棄孔Wに廃棄する。また、検出部250にキュベットがあれば、キャッチャ266がキュベットをドレイン保持部281に移送し、ドレイン部282によって液体を除去して廃棄孔Wに廃棄する。また、ドレイン保持部281にキュベットがあれば、ドレイン部282によって液体を除去して廃棄孔Wに廃棄する。
【0060】
制御部4は、反応テーブル200のキュベット有無チェックを行う(ステップS208)。キュベット有無チェックとは、反応テーブル200に保持されている残留キュベットの数と、残留キュベットの位置を検知する処理である。なお、キュベット有無チェックと、検出中又は検出後のキュベットを廃棄する処理とは同時並行で実行してもよい。キュベット有無チェックの詳細については後述する。
【0061】
キュベット有無チェック(ステップS208)が完了すると、制御部4は、反応テーブル200にキュベットが残っているかを判断する(ステップS209)。反応テーブル200にキュベットが残っていなければ(ステップS209:NO)、制御部4は、以後のステップS206〜208をスキップしてステップS213へ処理を進める。
【0062】
反応テーブル200にキュベットが残っていれば(ステップS209:YES)、制御部4は、干渉キュベット数を推定する干渉キュベット数推定処理を実行し(ステップS210)、干渉キュベットがあるか否かを判断する(ステップS211)。なお、干渉キュベットとは、後述するように、測定を開始したときに他のキュベットと干渉を生じる可能性のあるキュベットをいう。制御部4は、干渉キュベット数推定処理による干渉キュベット数が1以上であれば、干渉キュベットありと判断し、干渉キュベットが0であれば、干渉キュベットなしと判断する。
【0063】
制御部4は、干渉キュベットがあると判断すれば(ステップS211:YES)、新規検体の測定に先立って干渉キュベットを廃棄する処理を実行する(ステップS208)。制御部4は、干渉キュベットがないと判断すれば(ステップS211:NO)、ステップ508をスキップし、ステップS213へ処理を進める。ついで、制御部4は、新規検体の測定を開始し、これと並行して、干渉キュベット以外の残留キュベットについて、測定を行うことなく順次廃棄する処理を行う(ステップS213)。詳しくは後述する。
【0064】
[キュベット有無チェック]
図5は、図4のステップS208のサブルーチンを説明するフローチャートである。以下、図5を参照してキュベット有無チェックの詳細な処理について説明する。
【0065】
制御部4は、制御部4の内部のRAMに空き領域を確保し、キュベット配置バッファを作成する(ステップS301)。
【0066】
図9(a)は、キュベット配置バッファの構成を模式的に表す図である。図9(a)に示すように、キュベット配置バッファは、70列の領域を有する1行のテーブルである。キュベット配置バッファの各列は、反応テーブル200の各キュベット保持孔Hに対応している。例えば、H1は、1番目のキュベット保持孔Hに対応しており、H2は、2番目のキュベット保持孔Hに対応している。なお、キュベット保持孔Hの番号は、各キュベット保持孔Hについてユニークな番号として決められているものではなく、制御部4が割り当てることによって付与される。具体的には、制御部4は、キュベット配置バッファの作成時に位置Cnにあるキュベット保持孔Hに番号Hnを割り当てる。
【0067】
キュベット配置バッファには、各キュベット保持孔Hにおけるキュベットの有無が、「1:キュベットあり」または「0:キュベットなし」のいずれかのフラグで示される。ステップS301の時点では、各キュベット保持孔Hにおけるキュベットの有無は不明であるので、各列はブランクとされる。
【0068】
制御部4は、キュベット保持孔Hnが、キュベット検知位置C50に位置づけられるまで、反応テーブル200を回転させる(ステップS302)。なお、nの初期値としてはn=1がセットされ、最初に実行されるステップS302により、キュベット保持孔H1がキュベット検知位置C50に位置づけられる。
【0069】
制御部4は、キュベット検知位置C50におけるキュベットの有無を検知する(ステップS303)。具体的には、制御部4は、照射部291から受光部292に光を照射させ、このときの受光部292における光量を取得する。制御部4は、キュベット保持孔Hにキュベットがあるか否かを判定する(ステップS304)。具体的には、制御部4は、ステップS301において取得した光量が、所定値以上であるか否かを判断し、所定値以上であればキュベットなし(ステップS304:NO)と判定し、所定値未満であればキュベットあり(ステップS304:YES)と判定する。
【0070】
制御部4は、キュベットありと判定した場合(ステップS304:YES)、RAMに展開したキュベット配置バッファのn列に、フラグ「1」をセットする(ステップS305)。一方、制御部4は、キュベットなしと判定した場合(ステップS304:NO)、キュベット配置バッファのn列に、フラグ「0」をセットする(ステップS306)。
【0071】
ついで、制御部4は、n=70であるか否かを判断する(ステップS307)。n=70でなければ(ステップS307:NO)、制御部4は、nを1だけインクリメントし、ステップS301に処理を戻す。制御部4は、n=70であれば(ステップS307:YES)、サブルーチンを終了して主ルーチンにリターンする。したがって、nが70に達するまでステップS302〜S306の処理が繰り返される。これにより、反応テーブル200の全てのキュベット保持孔H1〜H70がキュベット検知位置C50に位置づけられ、キュベットの有無が判断される。そして、キュベット配置バッファの全ての列に、フラグ「1」またはフラグ「0」がセットされる。
【0072】
[干渉キュベット数推定処理]
図6は、図4のステップS210のサブルーチンを説明するフローチャートである。以下、図6を参照して干渉キュベット数の推定処理の詳細について説明する。
【0073】
制御部4は、まず、予め制御部4のROMに格納されている測定可能配置パターンと、キュベット有無チェックによって作成されたキュベット配置バッファ(図9(a))とを比較して、干渉キュベットの数を算出する(ステップS401)。この処理について、図9及び図10を参照して説明する。
【0074】
図9(b)は、測定可能配置パターンを模式的に示す図である。図10は、この測定可能配置パターンを反応テーブル200に照らして模式的に示した図である。
測定可能配置パターンとは、キュベットの干渉が発生することなく測定を開始することができる反応テーブル200上のキュベットの配置を示したパターンである。
【0075】
反応テーブル200における70個のキュベット保持孔Hは、大きく分けて4つの領域に区画することができる。1つ目は、C1からC21までの21個のキュベット保持孔Hからなる領域P1である。2つ目は、C22からC37までの16個のキュベット保持孔Hからなる領域P2である。3つ目は、C38からC55までの18個のキュベット保持孔Hからなる領域P3である。4つ目は、C56からC70までの15個のキュベット保持孔Hからなる領域P4である。
【0076】
領域P1のC16〜C21は、キュベットが保持されているとキュベットの干渉が発生する領域、換言すれば、キュベット保持孔Hが空でなければならない領域(干渉領域)N1とされている。この干渉領域N1にキュベットがあると、1次BF分離部220から反応テーブル200にキュベットが戻されたときに、キュベット同士が干渉するためである。
【0077】
領域P2のC30〜C37は、干渉領域N2とされている。この干渉領域N2にキュベットがあると、2次BF分離部230から反応テーブル200にキュベットが戻されたときに、キュベット同士干渉するためである。
【0078】
領域P4のC56〜C70は、干渉領域N3とされている。C56よりも下流にはキュベットを廃棄する機構がないため、この配置不可領域N3にキュベットがあると、搬送開始位置C1にキュベットがセットされたときに、キュベット同士が干渉するためである。
なお、図10では、干渉領域のキュベット保持孔Hを黒塗りの円で示し、キュベットが置かれていても測定の開始を妨げないキュベット保持孔Hは、白抜きの円で示している。
【0079】
図10に示す測定可能配置パターンを、キュベット配置バッファと比較可能なデータ列として記載すると、図9(b)のようになる。図9(b)では、干渉領域に対応する位置にフラグ「1」を、それ以外の箇所にフラグ「0」をセットしている。したがって、この測定可能配置パターンと、キュベット配置バッファとを比較すれば、反応テーブル200を任意の角度にしたときの干渉領域に位置するキュベットの数およびそれらの位置を特定することができる。
【0080】
図9(c)は、測定可能配置パターンとキュベット配置バッファの比較処理を説明するための図である。
制御部4は、測定可能配置パターンの各列とキュベット配置バッファの各列とでAND演算を行い、各列におけるAND演算の結果の和を求める。
【0081】
ここで、測定可能配置パターンにおいて干渉領域はフラグ「1」で示されており、キュベット配置バッファにおいてキュベットがある位置はフラグ「1」で示されている。したがって、これらの各列のAND演算の結果が「1」となる列は、その列にあるキュベットが干渉キュベットであることを示している。また、AND演算の結果の和は、干渉キュベットの数を示している。
図9(c)に示す例では、測定可能配置パターンとキュベット配置バッファの各列のANDをとると、網掛けで示した6つの列において演算結果が1になり、AND演算の結果の和は6になる。したがって、この場合の干渉キュベットの数は6となり、干渉キュベットは、H16、H17、H19、H21、H30、H31のキュベットになる。
【0082】
図6に戻って、制御部4は、ステップS401で得られた干渉キュベットの数が、予め記憶されている最小干渉キュベット数よりも小さいか否かを判定する(ステップS402)。ここで、1回目の処理において比較される最小干渉キュベット数は、1回目の処理によって得られる干渉キュベット数が必ず最小干渉キュベット数よりも小さい値となるような、十分に大きな数、例えば「70」が最小干渉キュベット数としてプリセットされている。
【0083】
制御部4は、ステップS401で得られた干渉キュベット数が最小干渉キュベット数よりも小さければ(ステップS402:YES)、そのときの干渉キュベット数を最小干渉キュベット数としてROMに記憶し(ステップS403)、そのときのキュベット配置バッファの先頭列のキュベット保持孔Hの番号と、干渉キュベットのキュベット保持孔Hの番号をROMに記憶する(ステップS404)。制御部4は、ステップS405へ処理を進める。
【0084】
一方、ステップS401で得られた干渉キュベット数が最小干渉キュベット数と同じかそれより大きければ(ステップS402:NO)、制御部4は、ステップS403及びS404をスキップして、ステップS405へ処理を進める。
【0085】
制御部4は、比較回数xが70に達したか否かを判定する(ステップS405)。ここで、比較回数xは、キュベット配置バッファと測定可能配置パターンとを比較した回数のカウンタであり、xの初期値は1である。制御部4は、比較回数xが70であれば(ステップS405:YES)、図6のサブルーチンを終了して主ルーチンにリターンし、比較回数xが70に達していなければ(ステップS405:NO)、ステップS406に処理を進める。
【0086】
制御部4は、比較回数xを1だけインクリメントするとともに、キュベット配置バッファを1列だけ右にシフトする(ステップS406)。具体的には、キュベット配置バッファを1列だけ右にシフトすると、最小桁(第70列)において桁落ちがおきるので、この桁落ちした列の値で、最大桁(第1列)を埋める。そして、制御部4は、処理を再びステップS401に戻し、1列右シフトしたキュベット配置バッファと、測定可能配置パターンとを比較し、再び干渉キュベットの数を算出する。
【0087】
このように、キュベット配置バッファを1列右シフトする毎に測定可能配置パターンと比較する処理を70回繰り返すことで、反応テーブル200がとり得る全ての回転角度における干渉キュベット数を推定することができる。
【0088】
[干渉キュベット廃棄処理]
図7は、図4のステップS212のサブルーチンを説明するフローチャートである。以下、図7を参照して干渉キュベットの廃棄処理の詳細について説明する。
【0089】
制御部4は、干渉キュベットとして決定されたキュベットが、搬送終了位置C56(図2参照)に位置づけられるように、反応テーブル200を回転させる(ステップS501)。図6のステップS404において、制御部4のROMには、干渉キュベットとして決定されたキュベット保持孔Hの番号が記憶されている。制御部4は、この番号を読み出し、その番号のキュベット保持孔Hが搬送終了位置C56に位置づけられるよう、反応部200を時計回り方向A1または反時計回り方向に回転させる。
【0090】
制御部4は、キャッチャ266により、搬送終了位置C56に位置づけられたキュベットを取り出し、ドレイン保持部281にセットし、ドレイン部282により、キュベットから液体を吸引して、廃液として装置外部に排出する(ステップS502)。
制御部4は、キャッチャ266により、ドレイン保持部281にある空のキュベットを把持し、廃棄孔Wに移送して廃棄する(ステップS503)。
【0091】
制御部4は、全ての干渉キュベットを廃棄したかを判定する(ステップS504)。廃棄されていない干渉キュベットが存在する場合(ステップS504:NO)、制御部4は、ステップS501に戻って、次の干渉キュベットに対してステップS501〜503の処理を実行する。全ての干渉キュベットを廃棄した場合(ステップS504:YES)、制御部4は、図7のサブルーチンを終了して主ルーチンにリターンする。
【0092】
[廃棄・測定処理]
図8は、図4のステップS213のサブルーチンを説明するフローチャートである。以下、図8を参照して廃棄・測定処理の詳細について説明する。
【0093】
制御部4は、まず、反応テーブル200を測定開始角度まで回転させる(ステップS601)。ここで、測定開始角度とは、ステップS404でROMに記憶された先頭列の番号で示されるキュベット保持孔Hが、搬送開始位置C1に位置する反応テーブル200の角度である。
【0094】
ついで、制御部4は、新規検体の測定を開始する(ステップS602)。新規検体の測定のフローは、図3に示したとおりであるので、詳しい説明は省略する。
新規検体の測定と並行して、制御部4は、残キュベットの廃棄処理を実行する(ステップS604)。残キュベットとは、反応テーブル200の上に置かれていたキュベットのうち干渉キュベット以外のキュベットのことである。
【0095】
新規検体の測定と、残キュベットの廃棄の並行処理について詳しく説明する。
新規検体の測定では、測定部2は、新規検体を収容したキュベットを反応テーブル200の搬送開始位置C1にセットし、1ターン毎に一定角度θだけ反応テーブル200を回転させながら、図3に示した各工程をキュベットに対して実行していく。この反応テーブル200の回転に連動して、反応テーブル200にセットされた残キュベットも順次搬送されていく。
【0096】
このとき、測定部2は、残キュベットに対しては、図3の工程のうち、試薬分注及びBF分離を行わず、移動の工程のみを実行する。移動工程とは、具体的には次の工程である。
S106(反応テーブルから1次BFテーブルへの移動)
S108(1次BFテーブルから反応テーブルへの移動)
S110(反応テーブルから2次BFテーブルへの移動)
S112(2次BFテーブルから反応テーブルへの移動)
S113(反応テーブルからR4/R5試薬分注テーブルへの移動)
S114(R4/R5試薬分注テーブルへの移動)
【0097】
残キュベットが搬送終了位置C56に到達すると、キャッチャ266が残キュベットを反応テーブル200から取り出し、検出部250へ移送する(ステップS115)。検出部250では測光は行われず、次のターンになるまで待機する。そして、キャッチャ266が検出部250からキュベットを取り出し、ドレイン保持部281に移送し、ドレイン部282がキュベットから液体を吸引して排出する。そして、キャッチャ266がキュベットを廃棄孔Wの上方に移送し、廃棄孔Wに移送されたキュベットは、把持が解除されることにより廃棄孔Wから廃棄袋に廃棄される(ステップS116)。
【0098】
制御部4は、全ての残キュベットが廃棄されたか否かを判断する(ステップS604)。残キュベットが全て廃棄されれば(ステップS604:YES)、残キュベット廃棄処理が終了する。
【0099】
制御部4は、測定すべき検体の測定が全て完了したか否かを判断する(ステップS603)。全ての測定が完了していれば(ステップS603:YES)、新規検体測定処理が終了する。
【0100】
以上説明したように、本実施形態の免疫分析装置1は、異常によって測定動作が中断し、異常の復帰処理後、測定開始の指示を受け付けた場合に、制御部4が、新たな検体を収容したキュベットに対して、測定動作を順次実行するとともに、中断により未測定のキュベットを、新たな検体の測定動作に連動して順次キュベット搬送部から吸引除去部およびキュベット廃棄部に移送するようにキュベット移送部を制御する。
このような構成により、測定中断によって多くの未測定のキュベットが反応テーブル200に残留した場合であっても、未測定のキュベットを全て廃棄することなく新たな検体の測定を開始することができる。したがって、新たな検体の測定開始までに要する時間を短縮することができる。
【0101】
なお、本実施形態の免疫分析装置では、干渉キュベットが存在するか否かを判断し、干渉キュベットが存在する場合には、新規検体の測定に先立って干渉キュベットを順次廃棄している。このような構成により、次のような利点がある。
【0102】
ユーザは、異常復帰の際、反応テーブル200上の未測定のキュベットを別の位置に移動してから異常復帰を行うことがあり、この場合、キュベットは、装置が正常に動作した場合とは異なる配置パターンで反応テーブル200に残存することになる。
また、装置は正常な動作を期すべく定期的に保守点検が行われるが、そのような場合にも、ユーザやオペレータが反応テーブル200に手動でキュベットをセットして動作を確認することがある。このような場合、万が一キュベットを回収し忘れると、装置が正常に動作した場合とは異なる配置パターンで反応テーブル200に残存することになる。
本実施形態では、測定を開始する前に、干渉キュベットが存在するか否かを判断し、干渉キュベットが存在する場合には、新規検体の測定開始前にそれらを廃棄するため、上記のように、装置が正常に動作した場合とは異なる配置パターンで反応テーブル200に残存した場合であっても、キュベット同士が干渉することなく、安全に測定を開始することができる。
【0103】
なお、上記した実施の形態は全て例示であって、種々の変更を伴い得る。
例えば、上記実施形態では、異常検知部D1、D2・・・によって異常が検知された場合、測定部2の全ての処理ステーションの動作を停止する形態を示したが、これに限られない。例えば、特開2009−204386に開示されているように、ある処理ステーションにおいて異常が検知された場合、その処理ステーションに到達していないキュベットに対する処理を中断し、その処理ステーションを既に通過したキュベットに対する処理を継続する構成であってもよい。
より詳細に、1次BF分離部220においてキュベットを振動攪拌するためのモータに断線が発生した場合を例にとって説明する。この場合、1次BF分離部220による処理が既に行われたキュベット、より詳しくは、反応テーブル200の位置C22よりも下流の工程にあるキュベットについては処理を継続する。一方、1次BF分離部220の待機部223及び4つの保持孔224〜227に保持されているキュベット、並びに反応テーブルC1〜C17に保持されているキュベットについては、処理を中断する。
このような構成によれば、可能な限り多くのキュベットに対して処理を継続することができ、検体及び試薬の無駄を少なくすることができる。
【0104】
上記実施形態では、R1試薬分注アーム261がR1試薬分注位置P2においてキュベットにR1試薬を分注し、検体分注アーム260が検体分注位置P3においてキュベットに検体を分注し、キャッチャ261aが、検体が分注されたキュベットを搬送開始位置C1にセットすることでキュベットの搬送が開始される形態を示したが、このような形態に限られない。例えば、キャッチャ261aは、空のキュベットを反応テーブル200の移送開始位置C1にセットし、R1試薬分注アーム261及び検体分注アームが、反応テーブル200上のキュベットにR1試薬及び検体を分注する形態であってもよい。
【0105】
上記実施形態では、検出部250は反応テーブル200から取り出されたキュベットに含まれる測定対象物質を検出する形態を示したが、キュベットを反応テーブル200に保持させたままキュベット内の測定対象物質を検出する構成であってもよい。
【0106】
上記実施形態では、新規検体の測定と並行して残キュベットを廃棄する際、新規検体に対する測定処理フローと同じく、残キュベットを一旦検出部に移送し、それから廃液の除去およびキュベットの廃棄を行う形態を示したが、これに限られない。残キュベットは、検出部を経由せずに直接ドレイン保持部281に移送し、ドレイン部282によって廃液を除去し、廃棄孔Wに廃棄してもよい。
【0107】
上記実施形態では、免疫分析装置に本発明を適用した例を説明したが、これに限られるものではなく、血液凝固分析装置や生化学分析装置に本発明を適用してもよい。ただし、血液凝固検査は、測定項目によって測定プロトコルが異なるため、多項目測定を可能としつつ、複数のキュベットを一つの回転テーブルに保持して搬送するシステムを構築するには、キュベット全てについて同じ反応時間となるよう、測定できる測定項目を制限しなくてはならない。この点、免疫分析装置では、測定項目によらず反応時間が一定であるため、測定項目を制限したりする必要がなく、本発明を好適に適用することができるものである。
【符号の説明】
【0108】
1 … 免疫分析装置
2 … 測定部
200 … 反応テーブル
210 … キュベットテーブル
220 … 1次BF分離部
230 … 2次BF分離部
240 … R4/R5試薬分注部
250 … 検出部
260 … 検体分注部
261 … R1試薬分注部
262 … R2試薬分注部
263 … R3試薬分注部
270 … キュベット供給部
280 … 廃棄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュベットに収容された検体に対して測定のための処理を行う複数の処理ステーションと、
検体を収容したキュベットを複数保持し、保持したキュベットを前記複数の処理ステーションに順次搬送するキュベット搬送部と、
キュベット搬送部によって所定位置に搬送されたキュベットを廃棄する廃棄ステーションと、
処理ステーションにおける異常を検知する異常検知手段と、を備え、
異常検知手段によって異常を検知した場合、キュベットに対する処理を中断し、異常復帰後、処理開始の指示を受け付けた場合、新たな検体を収容したキュベットをキュベット搬送部に保持させて前記複数の処理ステーションへ順次搬送するとともに、該搬送に伴って、前記中断によって処理が未完了のキュベットが所定の位置に搬送されると、そのキュベットを廃棄ステーションによって廃棄することを特徴とする、検体分析装置。
【請求項2】
検体を収容したキュベットを複数保持し、保持したキュベットを順次搬送するための回転テーブルからなるキュベット搬送部と、
キュベット搬送部により第一位置に搬送されたキュベットに、検体に含まれる測定対象物質と反応する試薬を分注する試薬分注部と、
キュベット搬送部により第一位置より下流側の第二位置に搬送されたキュベットに対して、測定対象物質を検出する処理を行う検出部と、
検出部による測定対象物質の検出処理後、キュベット内の液体を吸引除去する吸引除去部と、
液体が吸引除去されたキュベットを廃棄するキュベット廃棄部と、
前記検出部のキュベットを吸引除去部およびキュベット廃棄部に移送可能なキュベット移送部と、
キュベット搬送部、試薬分注部、検出部、吸引除去部およびキュベット移送部の動作制御を行って、キュベット搬送部に保持された各キュベットに対して測定動作を順次実行する制御部と、
異常を検知する異常検知手段とを備え、
異常検知手段が測定動作中に異常を検知した場合、制御部は、測定動作を中断し、異常の復帰処理後、測定開始の指示を受け付けた場合、新たな検体を収容したキュベットに対して、測定動作を順次実行するとともに、前記中断により未測定のキュベットを、前記測定動作に連動して順次キュベット搬送部から吸引除去部およびキュベット廃棄部に移送するようにキュベット移送部を制御することを特徴とする検体分析装置。
【請求項3】
回転テーブル上のキュベットを検知するキュベット検知部と、記憶部とをさらに備え、
制御部は、測定開始の指示を受け付けると、キュベット検知部によって回転テーブルに保持されているキュベットの位置情報を取得し、記憶部に記憶する、請求項2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
回転テーブル上にキュベットがある場合、制御部は、回転テーブル上のキュベットが保持されていない保持位置に、新たな検体を収容したキュベットがセットされるように回転テーブルを回転させた後、新たな検体を収容したキュベットに対する測定動作を開始する、請求項3に記載の検体分析装置。
【請求項5】
回転テーブル上にあるキュベットによって測定を開始できない場合、制御部は、記憶部に記憶されたキュベットの位置情報に基づいて、測定を開始できる状態とするために廃棄する必要があるキュベットを特定し、測定開始に先立って、特定されたキュベットを順次キュベット搬送部から吸引除去部及びキュベット廃棄部に移送するようにキュベット移送部を制御する、請求項3に記載の検体分析装置。
【請求項6】
制御部は、特定されたキュベットがキュベット廃棄部に廃棄された後、回転テーブル上のキュベットが保持されていない保持位置に、新たな検体を収容したキュベットがセットされるように回転テーブルを回転させ、新たな検体を収容したキュベットに対する測定動作を開始する、請求項5に記載の検体分析装置。
【請求項7】
制御部は、中断により未測定のキュベットに対して、試薬分注を行わないように試薬分注部を制御する、請求項2〜6のいずれか一項に記載の検体分析装置。
【請求項8】
検体を収容したキュベットをキュベット搬送部にセットする検体セット部をさらに備える、請求項2〜7のいずれか一項に記載の検体分析装置。
【請求項9】
キュベット移送部は、第三位置に搬送されたキュベットをキュベット搬送部から取り出して検出部に移送し、検出後のキュベットを検出部から取り出して吸引除去部及びキュベット廃棄部に順次移送する、請求項2〜8のいずれか一項に記載の検体分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−36756(P2013−36756A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170498(P2011−170498)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】