検体/ポリマー活性剤の二層配置による検体検出法
本発明は、分析センサーの分野に関する。詳細には本発明は電極配置によるサンプル中での検体の検出のための方法に関し、検体と電極の表面上の前記検体の電導性を増加させるための試薬の電導性2層の形成によって特徴付けられる。本発明は更にかかる方法を実施するために有用である電極配置、及びバイオサンサーとしてのかかる電極配置の使用にも関する。更に検体の電気化学的検出で使用するために適する、新規酸化還元ポリマーの分類も開示した。本ポリマーを分類する方法も開示した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分析センサーの分野に関する。特に本発明は、電導性の二層の検体及び電極の表面上で前記検体の電導性を増加させるための試薬の形態により特徴づけられる電極配置によってサンプル中で検体を検出するための方法に関する。本発明は、かかる方法及びバイオセンサーとしてかかる電極配置の使用を実行するために有用な電極配置にも関する。
【背景技術】
【0002】
高分子性バイオポリマー等の検体の検出及び定量化は、分析化学だけでなく、生化学、食品技術、又は機械の分野においても基本的な方法である。今日まで、バイオポリマーの存在及び濃度を決定するために最も頻繁に使用された方法は、オートラジオグラフィー、蛍光、化学発光又は生物発光及び電気化学的技術による検出を含む(例えばBakker, E.及びTelting-Diaz. M. (2002) Anal. Chem. 74, 2781-2800で検討される)。
【0003】
しかしながらオートラジオグラフィーは有害な放射化学を使用するために多くの分野で適用されることができず、一方、視覚的検出方法は、一般的に冗長なラベル化方法、並びに高価な試薬と技術装置を含む。他方、電気化学的検出技術は、高感度及び低コストの両方の観点において魅力的な代替物となった。
【0004】
核酸分子の検出に関して、現在3つの主な電気化学的検出のアプローチ、即ち電導性測定(Park,S. J.等.(2002) Science 295,1503-1506)、核酸-インターカレーション法(Zeman, S. M.等. (1998) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 95, 11561-11565;Erkkila, K. E. 等. (1999) Chem. Rev. 99,2777-2795)、及び触媒増幅(amplification)による検出(Caruana, D. J. & Heller,A. J. (1999) J. Am. Chem. Soc. 121,769-774 ;Patolsky, F.等.(2002) Angew.Chem. Int Ed. 41, 3398-3402)が適用されている。
【0005】
上記Park等は、金のナノ粒子により官能化したオリゴヌクレオチドを用いたDNAアッセイ検出方法を報告した。500 fMの検出限界が見出されたが、例えば転写因子又は所定の細胞-表面受容体をコードする非常に稀な核酸種を同定するには十分でない。核酸-インターカレーション法は低シグナル-対-ノイズ率によって阻まれる。なぜなら最も多くのDNA-インターカレーティング試薬は、二重らせんのDNA(dsDNA)中に挿入されないだけでなく、一重らせんのDNA分子と静電相互作用を介して、より低い限度であっても結合するからである。しかしながら、dsDNAへより選択的に(しかし排他的ではなく)結合する挿入剤を装着(threading)した、改良したフェロセンラベル化ナフタレンジイミドが合成された(Takenaka, S.等.(2000) Anal. Chem. 72,1334-1341)。
【0006】
DNAバイオエレクトロニクスにおける近年の進歩は、生物電気的触媒として、核酸/酵素-複合体の使用に注目が集められている(上記Caruana & Heller;上記Patolsky等.,)。同様に、核酸官能化リポソーム又はナノ粒子はDNA検出工程の増幅のための微粒子ラベルとして使用された。ごく最近では、0.5 fMの検出限界は、酵素増幅検出方法(およそ3000分子に相当する)を用いて、38-塩基オリゴヌクレオチドについて報告されている(Zhang,Y.等.(2003) Anal.Chem., page EST 2.4)。しかしながらこの感度は、通常20-50塩基長にある、短いDNAオリゴヌクレオチドだけを分析した場合に達成される。より大きい核酸分子、例えばゲノムDNAを検出するためのそれらの方法の使用は、高いバックグラウンドシグナルのために困難なものになり、pM又はnMの範囲においてでさえより低い感度となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上記制限を克服し、且つ高分子検体でさえ検出できるような高感度の検体を検出するための代替方法の必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
一つの観点では、本発明は検出電極により検体分子を電気化学的に検出するための方法を提供し、当該方法は:
(a)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子を検出電極上に固定化し;
(b)検出電極を検出されるべき検体分子を含むと想定される溶液と接触させ;
(c)前記溶液中に含まれる検体分子を検出電極上で捕捉分子と結合することを可能にし、それにより捕捉分子と検体分子間の複合体の形成を可能にし、前記複合体が電極上で第1層を形成し;
(d)検出電極を電気化学的活性剤と接触させ、ここでの前記電気化学的活性剤は静電気の正味電荷(捕捉分子と検体分子間で形成される複合体の静電気の正味電荷に相補的なものである)を有し、それによって電極上に第二層を形成し、ここでの第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成し;
(e)検出電極を電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ、それぞれ電子を運搬することを可能にする試薬と接触させ;
(f)検出電極での電気計測を実施し;
(g)得られた電気計測の結果をコントロール計測の結果と比較することにより検体を検出すること、
を含んで成る。
【0009】
他の観点では、本発明は本明細書で開示したような検体分子の電気化学的検出を実行するために有用である検出電極を含む電極配置を提供し、当該電極配置は:
(a)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子と検体分子との複合体を含む検出電極上の第一層;及び
(b)電気化学的活性剤を含む第二層、ここでの前記電気化学的活性剤は、捕捉分子及び検体分子間で形成される複合体の静電気の正味電荷と相補性である、静電気の正味電荷を有し、ここでの前記第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成する、
を含んで成る。
【0010】
更なる観点では、本発明は検体分子の電気化学的検出のためのバイオセンサーを提供し、以下:
(a)検出電極
(b)検出されるべき検体分子と結合することができる補足分子と検体分子との複合体を含む検出電極上の第一層;及び
(c)電気化学的活性剤を含む第二層、ここでの前記電気化学的活性剤は、捕捉分子と検体分子の間で形成された複合体の静電気の正味電荷と相補性である静電気の正味電荷を有し、ここでの第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成する、
を含んで成る。
【0011】
更なる観点では、本発明は水溶性酸化還元ポリマーを提供し、以下:
(a)重合可能なフェロセン誘導体を含む第一の単量体ユニット;及び
(b)(末端の)第一の酸又は塩基、正味電荷を捕捉できる酸又は塩基官能基を有すアクリル酸誘導体を含む第二の単量体ユニット
を含んで成る。
【0012】
1つの態様では、本新規水溶性酸化還元ポリマーにおけるアクリル酸誘導体は、一般式(I)により表され、
【化1】
式中RはCnH2n-NH2、CnH2n-COOH、NH-CnH2n-PO3H、及びNH-CnH2n-SO3Hから成る群から選定され、ここでのアルキル鎖は任意に置換されてよく、そしてここでのnは0から12の整数である。
【0013】
更に他の観点では、本発明は水溶性、酸化還元ポリマーを調製するための方法を提供し、前記方法は:
重合可能なフェロセン誘導体を含む第一の単量体ユニットと、正味電荷を獲得することができる酸又は塩基官能基を有するアクリル酸誘導体を含む第二の単量体ユニットをポリマー化し、ここで前記ポリマー化は水性アルコール培地中で実行されること、
を含んで成る。
【0014】
本発明は限定的でない実施例と図面を一緒にして検討する場合、詳細な説明を参照することによって、より理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
詳細な説明
本発明は、電気化学的活性剤(溶解した形態で存在し、且つ溶液中のその正味電荷が検出されるべき検体分子、又は同一物を含む複合体の正味電荷に相補的(即ち反対)である)の使用により有意に改良され得るバイオポリマー等の検体(一般的に非電導性又は僅かな電導性)の検出の感度を見出すことに基づく。それらの反対電荷のために、当該検体及び同一物を含む複合体は、電気化学的活性剤と一緒になって、静電気の層間を経由した自己集合を介して非常に安定な二層を形成する。この"電子交換ブリッジ"(又は"電子シャトル")としての二層機能は、電極の表面を完全に横断し、検体の検出のために使用される電極で電流に影響を与える。二層の使用は、電極に対して、より大きな、そしてより均質な接触面積を提供するという利点も有し、当業界において公知の他の手順と比較した、本発明の検出方法の増加した感度にも寄与する。
【0016】
本発明に係る用語"検出する"とは、サンプル中の検体の定性的検出及び定量的検出の両方を意味し、更に当該用語"検出する"とはサンプル中の検体の不存在を決定することも含むことを意味する。本発明の使用により、約1 fM (即ち、10-15M)程度に低い検体濃度は、明確に検出され得る。本発明の方法の検出のために適する検体の濃度範囲は、約10-12Mから10-15Mである。検出を実行するための検体の上限の濃度は、通常約10-11Mである。検体が10-11Mよりも高用量でサンプル中に存在すると信じられている場合、当該サンプルを希釈することができ、かくしてそれらの量は本発明の感度の範囲内にあることが明確であるという点が留意される。
【0017】
本明細書において使用される用語"捕捉分子"とは、単一タイプの分子、例えば核酸配列を限定する一本鎖核酸プロ−ブを言う。しかしながら、捕捉分子は多様なタイプの分子、例えば多様な核酸配列を有する核酸プローブを含んでもよい(従ってそれは多様な結合特異性も示す)。当該捕捉分子は抗体又は他のタイプのタンパク質に関連する結合分子、例えばanticalins(商標)のクラス(抗体等の所定のリガンドに対する特異的な結合特性を示すポリペプチド(更に、Beste等.(1999) Proc. Natl.Acad. Sci. 米 96, 1898-1903を参照))、であってもよく、それはタンパク質関連化合物の多様な表面領域(エピトープ)を認識する。多様なタイプの捕捉分子の使用は、多様な検体、例えば2つ以上のゲノムDNA(それらはいずれも1つの特定のタイプの捕捉分子に対して結合特異性を有している)の同時検出又は連続検出を可能にするたけでなく、多様な認識配列(例えば核酸分子又は受容体分子の2つのリガンド結合サイトの5'-及び3'-末端で)を介した同一検体を検出し、サンプル中の検体の数個のコピーでさえ検出する可能性まで増強させることも可能にする。
【0018】
本明細書において使用される用語"電気化学的活性剤"とは、検体と電極の間で電子を運搬する試薬を活性化させることができる任意の化合物を言い、(好適には特異的に)検出されるべき検体に結合し、そして前記検体よりも高い電流に関する電導性を示す。
【0019】
本発明の一つの態様では、電気化学的活性剤は、重合体酸化還元メディエーターである。本発明のいくつかの態様では、電気化学的活性剤は、酸化還元活性金属イオンを含む。かかる金属イオンの例は、銀、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、オスミウム又はルテニウムイオン又はそれらの混合物であり、それらの全てはカチオンとして検体の表面上の負に帯電した基へ結合し、静電気の相互作用により検出され得る。例えば、検出されるべき検体が核酸である場合、かかるカチオンは前記核酸の負に帯電したリン酸塩骨格に結合する。仮にタンパク質が検出された場合、かかるカチオンは酸性アミノ酸、例えばアスパラギン酸塩又はグルタミン酸塩の側鎖に結合し得る。
【0020】
一般的に適切な重合体酸化還元メディエーターは、当該サンプルが解析される間に酸化還元物質の拡散ロスを防止する、又は実質的に減少させる化学構造を有すべきである。かかる解除不能性(non-releasable)重合体酸化還元メディエーターの一つのタイプは、重合体化合物に共有結合した酸化還元物質を含む。かかる酸化還元ポリマーは典型的に遷移金属化合物であり、ここで酸化還元-活性遷移金属を基礎とするペンダント基は適したポリマー骨格に共有結合し、ここでそれ自体は電気的活性であってもなくてもよい。このタイプの例は、ポリ(ビニルフェロセン)及びポリ(ビニルフェロセン コ-アクリルアミド)である。或いは、当該重合体酸化還元メディエーターはイオン結合した酸化還元物質を含み得る。典型的にこれらのメディエーターは、反対に帯電した酸化還元物質と対になった帯電したポリマーを含む。このタイプの例は、負に帯電したポリマー(例えば正に帯電した酸化還元物質(例えばオスミウム又はルテニウムポリピリジルカチオン等)と対になったNafion(商標)(Dupont)等)或いは反対に正に帯電したポリマー(例えば負に帯電した酸化還元物質(例えばヘキサシアノ鉄酸塩(ヘキサシアノ鉄酸塩又はferrocyanide)等)と対になったポリ(1-ビニルイミダゾール)等)を含む。更に、当該酸化還元物質はポリマーへ配位結合することもできる。例えば、酸化還元メディエーターはオスミウム又はコバルト2,2'-ビピリジル複合体のポリ(1-ビニルイミダゾ−ル)又はポリ(4-ビニルピリジン)への配位によって形成され得る。他の例はオスミウム4,4'-ジメチル-2,2'-ビピリジル錯体に配位したポリ(4-ビニルピリジンコ-アクリルアミド)である。有用な酸化還元メディエーター及びそれらの合成方法は、米国特許No.5,264,104;5,356,786;5,262,035;5320,725;6,336,790;6,551494;及び6,576,101に発表された。
【0021】
本発明の更なる態様では、電気化学的活性剤は本明細書で後に詳述する酸化還元ポリマーの新規の分類から選定される。簡潔には、当該新規の酸化還元ポリマーの分類はポリ(ビニルフェロセン)、ポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリルアミド、ポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリル酸、及びポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリルアミド-(CH2)n-スルホン酸、及びポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリルアミド-(CH2)n-ホスホン酸を含み、ここでのnは0から12の整数である。
【0022】
本明細書において使用される用語"電子を運搬することができる試薬"とは、電気化学的活性剤(電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ、それぞれ電子を運搬することができる)により活性化する任意の試薬を言う。これは電子を提供し、且つ再度受容することができる試薬であり、少なくとも1つの前記試薬の原子の酸化状態の減少又は増加をもたらす。これにより当該試薬はそれぞれ検体/捕捉分子-複合体を形成する電導性の二層、及び電気化学的活性剤分子に結合、挿入、又は付随する。
【0023】
電子を運搬する試薬は、本目的のためだけに提供され得る。しかしながら当該試薬は捕捉分子として同時に機能する電子を運搬することも更に可能である。詳細なケースでは、検出されるべき検体が酵素基質である場合、その変換は電子計測により検出することができる(実施例2参照)。
【0024】
本発明の一つの態様では、電子を運搬することができる試薬は酵素又は酵素-複合体である。通常、任意の酵素は検出され得る電流の発生を導くために使用され得る。当該酵素は酸化還元酵素の群から選定され得る。適切な酸化還元酵素の例は、グルコースオキシダーゼ、水素ペルオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、ラクティックデヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ガラクトースデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コリンデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルタメートデヒドロゲナーゼ、グルタメートオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、NADPHオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、シトクロムCオキシダーゼ、及びactechol オキシダーゼである。
【0025】
本発明の方法により検出されるべき検体は核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド又はそれらの複合体、例えばDNA/タンパク質複合体又はRNA/タンパク質複合体であってよい。当該検体はオリゴサッカライドもしくはポリサッカライド、又は低分子化合物であってもよく、それは免疫学的ハプテンの特徴を示す遊離又は接合形態において表される。
【0026】
かかる化合物は、いくつかの例を挙げると、低分子薬物、栄養物、殺虫剤、又は毒素である。
【0027】
本発明の1つの好適な例では、検出されるべき検体は核酸分子である。従って本明細書において使用される用語"核酸又は核酸分子"とは、ゲノムDNA、cDNA及びRNA分子を言う。本発明に係る用語"オリゴヌクレトチド"とは、およそ10から80塩基対(bp)の長さ、より好適には15から40 bpの長さの分子を有する、より小さな核酸分子(DNA及びRNA)を言う。当該核酸は二重らせんであってよいが、少なくとも1つの一本鎖領域を有してもよく、又は完全に一本鎖の形態で存在してもよい(例えば、以前の熱変性又はそれらを検出するための他の種の鎖分離に起因)。本発明の好適な態様では、検出されるべき核酸の配列は予め確定され、即ち公知であり、ここでの完全な配列は公知であるか又はそれらの少なくとも一部分が公知であってよい。なぜなら本発明の検出方法の高感度は、検出されるべき核酸分子がゲノムサンプルを由来とすることができ、そして少ないコピー数、中間のコピー数または多くのコピー数で存在し得る。
【0028】
本発明の方法に係る核酸を検出するための適した捕捉分子は、核酸プローブであり、即ち一本鎖DNA又はRNA分子である。標的核酸の一本鎖領域にそれぞれ部分的又は完全に相補性である配列を有するプローブは、好適に使用される。当該核酸プローブは、合成オリゴヌクレオチド又はより長い核酸配列(後者はプローブと検出されるべき核酸のハイブリダイゼーションを阻害する任意の構造に折り畳まれない限り)であってよい。更に核酸プローブである捕捉分子として好適なものは、修飾したヌクレオチド、例えばビオチン-、ジゴキシゲニン-又はチオール-ラベルを運搬するヌクレオチドを含む。しかしながら捕捉分子としてDNA-又はRNA-結合タンパク質又は試薬を使用することも可能である。
【0029】
本発明の他の好適な態様では、検出されるべき検体はタンパク質又はペプチドである。それらは21個の天然のアミノ酸(セレノシステインを含む)から成るが、例えば糖残基又は翻訳後修飾の任意のタイプにより修飾されたアミノ酸残基を含んでもよい。本発明の方法によれば、核酸及びタンパク質の複合体、例えばRNA-結合タンパク質とその同種RNA標的複合体、又は転写因子とそれらの個々のDNA-結合ドメインとの複合体を検出することも可能にする。
【0030】
タンパク質又はペプチドを検出するための好適な捕捉分子は、検出されるべきタンパク質又はペプチドに結合活性を有する任意のタイプのリガンドである。かかるリガンドの例は、低分子量の酵素アゴニスト又はアンタゴニスト、受容体アゴニスト又はアンタゴニスト、医薬、糖、抗体、又はタンパク質もしくはペプチドに特異的に結合することができる任意の分子である。
【0031】
検体に関係なく結合活性を有している捕捉分子は、任意の適切な物理的又は化学的相互作用によって検出電極上に固定することができる。それらの相互作用は、例えば、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、又はイオン(静電気)相互作用、及び共有結合を含む。これは更に捕捉分子を疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用又は静電気相互作用により、或いは直接的固定化に適さない電極の表面へリンカー分子を用いた共有結合を通して、電極の表面へ直接固定化することができることを意味する。それは更に捕捉分子に対して結合活性を有する分子をリンカー分子として用いて、その後非共有的な相互作用、即ち錯形成によりリンカー分子へ結合させることにより捕捉分子を固定化することを可能にする(実施例2中のグルコースオキシダーゼ分子が捕捉分子として働くことを参照)。
【0032】
本発明に係る方法は、検出又は作動電極を含む当業界において公知の任意の電極配置を事実上使用することにより実施される。かかる電極配置は通常対極及び参照電極を更に含む。当該検出電極は、慣用の金属電極(金電極、銀電極等)、又はポリマー材料又は炭素から作製された電極、捕捉分子の固定化を促進するために任意に改良した表面であってよい。検出電極を含む電極配置は、通常のケイ素又はガリウムヒ化物基質であってもよく、ここでは金の層及び窒化ケイ素の層が適用され、そして引き続き慣用のリソグラフ及びエッチング技術によって構造化されていき、電極配置が作製される。構造化では、検体と対極の間の距離は、使用される構造化技術の種類及び検出されるべき検体のタイプに応じて変化させる。電極間の距離は一般的に約50μmから1000又はいくつかは1000μmである。
【0033】
本発明に係る方法は、単一の手法で2つ以上の検体を同時に又は連続して検出することも可能にする。本目的のために本明細書において開示されたような多数の電極配置を含む基質が使用され得る。ここでの多様なタイプの捕捉分子(それぞれが検出される特定の検体に(特異的)結合親和性を示す)は、個々の電極配置の電極上に固定される。或いは多数の電極配置を使用することも可能であり、それぞれが一つのタイプの捕捉分子のみを備えている。
【0034】
本発明の方法を実施するために使用され得る電極配置の例は、慣用の互いにかみあう電極である。その結果として、多数の互いにかみあう電極を備えた配置、即ち電極アッセイは、並行又は複合的測定を使用することができる。他の使用可能な電極配置は、トレンチ又は空洞の形態にある電極配置であり、それは例えば折り畳み領域により形成され、例えば検体と結合することができる捕捉分子がある金の層は2つの対辺壁に位置して固定される。
【0035】
本発明の方法は、最初の工程として、電極の表面上で検出されるべき検体と結合することができる捕捉分子の固定化を含む。当該捕捉分子は当業界において公知の任意の技術により固定化され得る。複合的検体が実行される場合、捕捉分子は、例えば、インクジェット印刷技術の補助と共に適用され得る。
【0036】
任意に遮断剤は(個々に又は捕捉分子と一緒に)バックグラウンドシグナルを減少させるために付加され得る。個々に付加する場合、非特異的方法における電気化学的活性剤との相互作用から、検体分子へ結合しないそれらの捕捉分子を妨げるために、当該遮断剤をアンプル溶液に先立ち、又は電極(捕捉分子で覆った)をサンプル溶液と接触させた後、付加してよい。任意の試薬を電極上に固定することができ、そしてそれは目的のために適している捕捉分子と検体分子との間の相互作用を妨げることができる(又は少なくとも有意の減少させる)。かかる試薬の例はチオール分子、ジスルフィド、チオフェン誘導体、及びポリチオフェン誘導体である。本発明で使用される遮断剤の1つの詳細な有用な分類は、例えば16-メルカプトヘキサデカン酸、12-メルカプトドデカン酸、11-メルカプトデカン酸又は10-メルカプトデカン酸等のチオール分子である。
【0037】
検出されるべき検体分子を含むと仮定される溶液、例えば電解液は、その後電極と接触させられ、かくして当該検体分子は、電極表面上の第一層を形成している捕捉分子と結合することができる。当該溶液が多数の多様な検出されるべき検体を含むならば、前記検体がそれらの個々の捕捉分子と同時に又は連続して結合することができるような条件が選定される。
【0038】
検体分子を捕捉分子に結合することを可能にした後、未結合の捕捉分子は電極から除去される。未結合の捕捉分子を除去することは任意であるが、しばしば利益を有し得る。なぜなら所定の捕捉分子(例えばオリゴヌクレオチド)は検出されるべき検体だけでなく、結果として電気化学的測定を確かに妨げる前記検体の電導性を増加させるための試薬(例えば還元可能な金属カチオン)にも結合することができる。
【0039】
未結合の捕捉分子は酵素的に除去され得る。捕捉分子がDNAプローブである場合、これは一本鎖DNA、例えばマングビーンヌクレアーゼ、ヌクレアーゼP1又はヌクレアーゼS1を選択的に機能停止させる(breaks down)酵素によって達成され得る。捕捉分子が低分子量のリガンドである場合、これらのリガンドは電極上で酵素的に共有のリンケージ、例えばエステルリンケージを介して固定化される。この場合、未結合のリガンド分子を除去するために、例えば、カルボキシルエステルヒドラーゼ(エステラーゼ)を使用することが可能である。本酵素は電極と未結合のリガンド分子間のエステルリンケージを選択的に加水分解する。対照的にペプチド又はタンパク質により結合された電極とリガンド分子間のエステルリンケージは、リンケージの立体的接近性を減少させるために原型のままである。
【0040】
検出されるべき検体の検出電極は、その後、電気化学的活性剤と接触させられる特異的な捕捉分子を介して固定化され、前記検体へ結合することを可能にし、且つそれらの電気的電導性を伝える。電気化学的活性剤は静電気の正味電荷の静電気を有し、それは捕獲分子と検体分子間で形成される複合体の正味電荷の静電気に相補的であり、それにより電極上で第二層が形成される。ここでの第二層及び第一層は一緒になって静電気の自己集合を介して安定な電導性の二層を形成する。
【0041】
更に、検出電極は、それぞれ電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ、電子を運搬することができる試薬と接触し、検体と電極間の電子運搬を促進又は増幅さえし得る。当該電子を運搬し得る試薬は、電極配置と電気化学的活性剤との接触に先立ち、又は同一物が電極配置へ既に結合した後に、電気化学的活性剤と同時に付加してよい。電子を運搬することができる任意の試薬は、電気化学的活性剤(及び任意に基質分子の存在中)で活性化して使用してよく、電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から電子を運搬することができる。従って、当該試薬は、電極表面上で形成される電導性の二層に結合、挿入、又は付随する。本発明の好適な態様では、当該試薬は酵素又は酵素-複合体である。電導性の二層構造の層間の配置は、非特異的吸着及び電子を運搬することを可能にする試薬の静電気の相互作用を有意に減少させ、又は排除さえも成し、故により高いシグナル-対-ノイズ率、及びより高い検出限界をもたらす。
【0042】
引き続き、電気計測は検出電極で実施される。本発明に係る電気計測は、電流及び電圧を測定することを含む。その後、検出されるべき検体と結合できない捕捉分子を用いて得られた結果をコントロール測定と比較する。かかる"コントロール"捕捉分子の例は、標的核酸分子又は低分子量のリガンドの相補的配列を有す核酸プローブであり、検出されるべき受容体分子と相互作用できない。2つの電気計測、即ち"サンプル"及び"コントロール"計測が異なる場合、かかる方法では、決定される数値間の差異は、検出されるべき関連の検体を含むサンプル溶液の予め規定された閾値よりも大きい。
【0043】
また当該方法は、参照計測及び検体を検出するための計測が同時に実施される方法においてデザインされ得る。これは例えば、コントロール媒体のみによる参照計測、及び同時に検出されるべき検体を含むと想定されたサンプル溶液による計測を実行することによりなされ得る。
【0044】
更に本発明は、本明細書で開示したような検体分子の電気化学的検出を実行するために適した検出電極を含む電極配置に関し、以下:
(a)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子、及び検体分子の複合体を含む検出電極上に固定された第一相;及び
(b)電気化学的活性剤を含む第二層、ここでの前記電気化学的活性剤は静電気の正味電荷を有し、それは捕捉分子と検体分子間で形成される複合体の静電気の正味電荷に相補的であり、ここでの第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成する、
を含んで成る。
【0045】
本発明の一つの好適な電極配置において、検出電極上の電導性の二層の一部を形成している電気化学的活性剤は、検体と電極間で電子を運搬することができる重合体酸化還元メディエーターである。より好適な電極配置では、当該電気化学的活性剤が金属イオンを含み、及び特に好適な態様では、それらの金属イオンは銀、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、オスミウム、ルテニウム、およびそれらの混合物から成る群から選定される。
【0046】
本発明の一つの態様では、電極配置は重合体酸化還元メディエーターへ又は重合体酸化還元メディエーターから、電極から又は電極へ、それぞれ電子を運搬することができる試薬を更に含み、当該試薬は検出電極上の電導性二層に結合され、挿入され、又は付随する。本発明に係る好適な電極配置では、当該試薬は酵素又は酵素複合体である。
【0047】
本発明の検出電極及び対応の電極配置は、バイオセンサーとして使用され得る。かかるセンサーは、与えられたサンプル中の所定の検体の存在及び濃度を解析するために分析化学、生化学、薬理学、微生物学、食品技術又は薬等の多くの分野で必要とされる。例えば、バイオセンサーは糖尿病患者の血液もしくは尿サンプル中のグルコース、又は救命救急事象の間の乳酸塩をモニターするために使用され得る。しかしながらかかるバイオセンサーは飲料水、ミルク又は任意に他の食品中の不純物の検出及び提供のためにも使用され得る。その他の応用は、ゲノムプロジェクト(例えば 疾患の原因となる又は表示となる遺伝子又は単一ヌクレオチド多形(SNPs)といった遺伝子突然変異を検出)におけるかかるバイオサンサーの使用である。他方、かかるバイオセンサーはプロテオミクス(例えば、タンパク質間の相互作用の解析、及び特定の受容体分子のリガンドの同定)においても使用され得る。
【0048】
本発明は、検体分子の電気化学的検出のためのバイオセンサーにも関し、以下:
(a)検出電極;
(b)検出されるべき検体分子に結合することができる捕捉分子と検体分子間の複合体を含む検出電極上の第一層;及び
(c)電気化学的活性剤を含む第二層、前記電気化学的活性剤は静電気の正味電荷を有し、捕捉分子と検体分子間で形成される複合体の静電気の正味電荷に相補的であり、ここでの前記第二層と第一層は一緒になって電伝性の二層を形成する、
を含んで成る。
【0049】
本発明は新規のフェロセンを基礎とする酸化還元ポリマーに関し、それは本発明の検出方法及び任意の他の公知の電気化学的検出において、電気化学的活性剤として使用されるために非常に適切である。フェロセンを含有する単量体は一般的に多大な困難性を有するフリーラジカルポリマー化が行われるが、発明者等は、フェロセンを含む酸化還元ポリマーがアルコール性媒体を用いて、品よく且つ容易に調製することができる(例えばエタノールと水の混合物から、ラジカル開始剤としての過硫酸塩と一緒に調製される)ことを見出した。
【0050】
ポリマーを基礎とするこれらのフェロセン誘導体は、均質系における分散的電子移動として使用することができる。
【0051】
ポリマーに基づくこれらのフェロセン誘導体は、更に電極表面上で固定化されたメディエーターとして使用され、その後、酵素及び酸化還元ポリマーの側鎖中の交差連鎖できる官能基の間の交差連鎖を介して酵素又は抗原といったタンパク質分子へ結合することができる。
【0052】
酸化還元ポリマーを形成する最初の単量体として使用することができる適切な重合可能なフェロセン誘導体は、C-C二重もしくは三重結合、又はN-N二重結合もしくはS-S二重結合等の不飽和結合を有す側鎖単位を所有すべきである。かかる側鎖単位の例は、一般式R1-C=C-で表されるアルケニル基を含む。二重結合は任意の炭素原子に沿って位置することができる。芳香族基、例えばフェニル、トルオニル、及びナフチル基も、使用することができる。更に当該重合可能な基は、置換されたC-原子を含むこともできる。ここでのハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、酸素、又はヒドロキシ部分は、例えば基の中の炭素原子上において一つ以上の水素で置換される。更に実施例はアルキニル及びジスルフィド基を含む。
【0053】
本発明のポリマーのいくつかの態様では、当該重合可能なフェロセン誘導体はビニル-フェロセン、アセチレン-フェロセン、スチレン-フェロセン及びエチレンオキシド-フェロセンから成る群から選定される。
【0054】
これらの誘導体中の不飽和結合の存在は、フェロセン分子を共-ポリマー化を介して、ポリマー骨格へ少なくとも1つの不飽和C-C二重もしくは三重結合、又はN-N二重結合もしくはS-S二重結合を、フリーラジカルポリマー化を介して更に有する他の物質と共に結合させることを可能にする。
【0055】
重合可能なフェロセン誘導体により共-ポリマー化において使用される第二の単量体単位について、正味電荷を獲得することができる主な酸又は塩基を有する任意の適したアクリル酸誘導体を使用することができる。これは当該発明が正及び負に帯電したポリマーを提供し、そのために捕捉分子と検体分子との間で形成される複合体の正味電荷にかかわりなく上記のような電導性の二層を形成することができることを保証することを意味する。一般的に単量体として使用するために適したアクリル酸誘導体を選定するためには2つの要求がある。フェロセン誘導体との共ポリマー化のために、少なくとも1つの不飽和結合を有するべきであり、それらはC-C二重もしくは三重結合、又は N-N二重結合もしくはS-S二重結合によって提供され得る。
【0056】
次に、当該アクリル酸誘導体は、それぞれH+イオンを生産又はH+イオンを受容することによるBronsted-Lowryの酸又は塩基として機能することができる。Bronsted-Lowryの酸又は塩基の機能を提供することができる官能基の例は、H+イオンを受容して帯電したアミン基を形成できる第一級アミン基、又は酸機能をH+イオン放出と分離して考える場合H+イオンを提供することができるカルボキシル基、もしくは硫酸塩を含む。この点に関して、第一級アミン基の使用は本発明の適用において好適であるが、アクリル酸誘導体中に存在する第二級又は第三級アミン基も正に帯電した酸化還元ポリマーを生成するために使用することができることが当業者に明確であることも留意される。この点に関して、酸又は塩基の機能は、主要なものであるが、末端基である必要はないということも留意される。しかし分岐した側鎖の場合、より短い側鎖の一つの“内部”に存在することができる。
【0057】
一方、本発明のセンサーの酸化還元ポリマー中の第二の単量体として使用される好適な単量体である酸又は塩基官能基を有する任意の適したアクリル酸誘導体は、一般式(I):
【化2】
で表されるアクリル酸誘導体であり、
式中Rは、CnH2n-NH2、CnH2n-COOH、NH-CnH2n-PO3H、及びNH-CnH2n-SO3Hから成る群から選定され、ここでのアルキル鎖は任意に置換され、そしてここでのnは0から12、好適には0から8の整数である。従って、当該アルキル基は直鎖又は分岐してよく、そして二重もしくは三重結合、又は環構造、例えばシクロヘキシルを含むことができる。置換基Rの中での適した脂肪族部分の例をいくつか挙げるとメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル又はオクチルである。脂肪族基は更に、例えばフェニル等の芳香族基、ハロゲン原子、更なる塩基もしくは酸基、又は0-アルキル基によって置換され得る。置換基として存在できる例示的な芳香族基は、フェニル、トルオイル又はナフチルである。ハロゲン原子はフッ素、塩素、又は臭素から選定され得る。適したo-アルキル基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ又はブトキシであり、一方n-アルキル基は-NHMe、-N(Me)2、-N(エチル)2又は-N(プロピル)2から選定される。
【0058】
いくつかの態様では、本発明の酸化還元ポリマーは、約1000から5000ダルトン、又は好適には約2000から4000ダルトンの分子量を有する。
【0059】
本発明者等はポリマー化の程度に影響を与えるラジカルイニシエーターの量を見出した。高用量のラジカルイニシエーターは、有意にポリマー化効果を減少させて、低分子量の酸化還元ポリマーをもたらす。これは通常のフリーラジカルポリマー化反応と比較して、相対的に小さなラジカルイニシエーターがポリマー化工程において必要とされたことも意味する。使用されるフリーラジカルイニシエーターの量とは別に、本発明の工程に関連にして後述のより詳細な説明で検討されている反応物質を付加する順番は、更にポリマー化効果に影響を及ぼす。
【0060】
本発明の他の態様では、酸化還元ポリマーはフェロセン約2%から約20%、典型的に約3%から約14%を添加されたフェロセンを有する。本発明は、更にかかる水溶性酸化還元ポリマーを調製するための工程に関する。当該工程は、本質的に重合可能なフェロセン誘導体の最初の単量体単位をアクリル酸誘導体、例えば第一級、第二級、又は第三級アクリルアミド等を含む第二の単量体単位と共に、ポリマー化しコポリマーを産出することに関する。アクリル酸誘導体は、正味電荷を獲得することができる酸又は塩基官能基を有する。重要には当該ポリマー化反応は、イニシエーターが存在する水性アルコール性媒体中で実行される。
【0061】
単量体及びイニシエーターの付加順序は、変化させることができる。例えば、第一及び第二の単量体をアルコール性媒体中で混合することが可能であり、その後、イニシエーターを付加して反応を開始させる。更に最初に水性アルコール性媒体中に単量体の一つを溶解させて、その後、他の単量体を当該混合物に付加する前に、イニシエーターを付加することが可能である。
【0062】
アルコール性媒体は、任意の水混和性有機性アルコール、例えば、エタノール等の脂肪族アルコール、又はフェノール等の芳香族により調製することができる。容積測定率は、通常約5:1から1:1(アルコール/水)の範囲にある。いくつかの態様では、約3:1である。
【0063】
本発明の態様における工程は、エタノールと水を含む水性アルコール性溶媒を用いて実行される。
【0064】
ポリマー化はイニシエーターの付加なしで進めてもよいが、複数の単量体中の不飽和結合で見出される電子に富む中心を攻撃するイニシエーターを付加することが所望される。従って本発明の他の態様では、ポリマー化はフリーラジカルイニシエーターを付加することにより開始される。
【0065】
任意のフリーラジカルイニシエーターを使用することができる。実施例では無機塩、例えば、過硫酸塩等、又は有機化合物、例えばベンゾイルペルオキシドもしくは2,2'-アゾ-ビス-イソブチルニトリル(AIBN)を含み、それはイニシエーターフラグメントと呼ばれる、単量体単位中の不飽和結合を攻撃するフリーラジカルとして機能できる一つの対になっていない電子の、それぞれのラジカルフラグメントを産生することができる。
【0066】
本発明に係る工程のいくつかの態様では、フリーラジカルイニエーターは過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムから成る群から選定される。
【0067】
本発明のいくつかの態様では、付加されるフリーラジカルイニシエーターの重量率は、単量体の1グラム当たり、約20 mgから40 mgである。
【0068】
本発明に係る工程は、室温より高い還流下で実施することができるが、一般的に100℃未満である。一つの態様では、ポリマー化は約60℃から80℃の温度で、還流下で実施される。
【0069】
ポリマー化のために要求される時間の長さは、採用される温度、及び反応ブロスに付加されるイニシエーターの量に依存させることができる。典型的にポリマー化は、10から40時間、そして好適には約24時間の間で実施される。
【0070】
本発明工程の態様は、
アクリル酸誘導体単量体単位を水性アルコール性媒体に溶解し;その後、
フリーラジカルイニシエーターを付加し;そしてその後
重合可能なフェロセン誘導体単量体単位を当該混合物に付加すること、
を含む、前記第一及び第二の単量体をポリマー化する前に、前反応混合物を産生することを更に含む。
【0071】
上記態様の更なる態様では、アクリル酸誘導体の前反応混合物中の重合可能なフェロセン誘導体への供給率は、付加される単量体の重量の約5%から15%にあり、適切な分子量及び粘度を有する酸化還元ポリマーを得るために好適である。
【0072】
また更なる態様では、重合可能なフェロセン誘導体単量体単位は、反応混合物へ付加される前の水性アルコール性媒体中に溶かされる。
【実施例1】
【0073】
核酸の検出
一般的に本発明による核酸の検出は、図1に説明した通りに実施される。最初に捕捉分子 (20)として作用するチオール化オリゴヌクレオチドの混合物(ラベルとしてのビオチン修飾の運搬もする)及びバックグラウンドを減少させるために遮断剤(15)として作用するチオール分子を金の電極表面(10)上に固定する。その後、当該電極を所定の標的検体(30)を含むと想定される溶液へ曝す。引き続き、その相補的ビオチン化標的DNA(即ち、捕捉分子)への酵素-複合体(50)のハイブリダイゼーションは、アビジン-ビオチン相互作用を経由して付着される。最終的に、酸化還元ポリマー(40)は、層間の静電気の自己集合を通して、電極表面へもたらされる。当該酸化還元ポリマー層は電気化学的に標的DNAに結合した酵素ラベルを活性化する。基質分子(55)が存在する中で、基質の触媒酸化から発生した電流を電流滴定的に検出する。当該電流はサンプル溶液中での標的検体濃度と直接的に相互関係にある。
【0074】
実施例1.1:ラット組織からのmRNA抽出及びビオチン化cDNAの合成
ラット肝mRNAの抽出は、Dynabead(商標)mRNA DIRECT(商標)キット(Dynal ASA, Oslo, Norway)を用いて製造業者の指示に従って実施した。逆転写(RT)の間、1×eAMVのSigmaAldrich製の緩衝剤(50 mM Tris-HCI、pH8.3、40 mM KCI、8.0 mM MgCI2、1 mMDTT)、それぞれ500μMのdNTP、1.0μMのアンチセンスプライマー、20 U RNaseインヒビター及び20 U 増強させたトリ骨髄芽球症ウィルス逆転写酵素(eAMV)を含む、10 ngの当該mRNAを20μlの総容量で使用した。サンプルを50分、56℃で、DNAサーマルサイクラー(Gene AmpPCR System 9700, Applied Biosystems, Foster City, CA, 米.)中で培養し、そして得られたcDNAをPCR増幅のためのテンプレートとして直接使用した。
【0075】
PCRを1×AccuTaqのSigma-Aldrich製の緩衝剤(5 mM Tris-HCI、15 mMの硫酸アンモニウム、pH9.3、2.5mMのMgCI2、0.1%のTween 20)、それぞれ0.40μMのプライマー、2.5 U JumpStart AccuTaq LA DNAポリメラーゼ及び10mMのdNTP(Roche,Basel, スイス)を含む50μlの総容量中で2.0μ1のRT-反応混合物により実施した。2つの異なる遺伝子は、ハウスキーピング遺伝子、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)、及び規制した腫瘍タンパク質遺伝子53(TP53)を検体として選定した。
【0076】
以下のプライマーを使用した:GAPDHセンス、5'-ATGGTGAAGGTCGGTGTCAA-3'(SEQ ID NO:1);GAPDHアンチセンス、5'-TTACTCCTTGGAGGCCATGT-3'(SEQ ID NO:2);TP53センス、5'-ATGGAGGATTCACAGTCGGA-3'(SEQ ID NO:3)、及びTP53アンチセンス、5'-TCAGTCTGAGTCAGGCCC-3'(SEQ ID NO: 4)。
【0077】
ビオチン化cDNAの合成のために、多様な量のビオチン-16-dUTP(Roche,独)又はビオチン-21-dUTP(Clontech, Palo Alto,米)を当該反応に付加した。増幅は以下のプロファイルを用いて実施した:95℃で5分の最初の変性ステップの後、95℃で30秒、55.5℃で1分、そして72℃で2分の増幅の35サイクルを実施した。最後の10分、72℃での伸長ステップは全長DNAらせん構造の合成を確実にすることを含む。増幅後、PCR産物を1.0%のアガロースゲル上で分離し、そしてエチジウムブロマイドによる染色によって視覚化される(図2)。
【0078】
図2中の1と4のレーンは、ビオチン-dUTPの付加なしでのコントロール実験を説明する。増幅したPCR-フラグメントは、それぞれ全長ラットTP53(レーン1,1176 bp)及びGAPDH(レーン4,1002 bp)遺伝子のサイズとよく一致している。ラベリングに関して多様な量のビオチンで修飾したヌクレオチドをdNTPsと共に混合し、そしてラベリング効率を検査するためにPCR反応混合物に付加した(TP53のためのレーン2と3及び GAPDHのためのレーン5と6をそれぞれ参照)。ビオチン-16-dUTP(又はビオチン-21-dUTP)/dTTPのより高い比率は、より強いフラグメントをゲル中で遅くさせる。しかしながら、ビオチン修飾ヌクレオチドの正常ヌクレオチドに対する比率が増加すると共に増幅効率は、ビオチン修飾ヌクレオチドの大きな側鎖のために、推定上減少する。
【0079】
実施例1.2:捕捉プローブの固定化及び単層品質の評価
DNA検体の検出に先立ち、捕捉プローブとして働くチオール化したオリゴヌクレオチドの混合物、及びチオール分子を金の電極表面上に自己集合を介して固定化した。標的DNAの取り込みに関する非-ハイブリダイゼーションを最小化するために、陰イオン性チオール分子を用いて、混合した単層の遮断成分を形成する。以下の捕捉プローブを使用した:GAPHの検出のための、5'-T12TTACTCCTTGGA GGCCATGTAGG-3'(SEQ ID NO:5);及び5'-T12ATGGTGAAGGTCGGTGTCAACGG-3'(SEQ ID NO:6);TP53の検出のための、5'-T12ATGGAGGATTCACAGTCGGA-3'(SEQ ID NO:7)及び5'-T12TCAGTCTGAGTCAGGCCCCA-3'(SEQ ID NO:8);及びコントロールとして、5'-T12CCTCTCGCGAGTCAACAGAAACG-3'(SEQID NO:9)。オリゴヌクレオチドを、標準方法による11-メルカプトウンデカン酸を用いてそれらの5'-末端でチオール化し、そして 金の電極上に50μMのオリゴヌクレオチド溶液中にクリ−ン電極を3-16時間曝すことを介して集合させた。その後、残存している表面を11-メルカプトウンデカン酸(MUA)で遮断した。
【0080】
金の電極上で混合され自己集合した単層の形成は、光学的な偏光解析により定期的に接触角と表面被覆率測定をモニターされた。得られた全てのデータは、金の電極上に覆われた単一の成形体混合分子を示す。予想される通り、溶液中の電極を覆った単層と電気活性物質の間の電子伝達の明白な経路は、絶縁単層を介した電子トンネルを経由するであろう。当該電子トンネルバリアは、2.5 mMのヘキサシアノ鉄酸塩(ヘキサシアノ鉄酸塩)を含む0.50 MのNa2SO4溶液中でサイクリックボルタンメトリーによって調査された捕捉プローブ単層と混合された単層の特徴を示す(図3)。図3aで示す通り、裸の金の電極で得られる可逆的工程の数値の59 mVと比較して、Fe(CN)63-/4-の100mVs-1で>400mVの非常に大きなピーク間の電位差を有する、不可逆のボルタンメトリー波が混合された単層で覆われた金の電極で観察され、それは当該単層が電極と溶液の間での電子移動を妨げることを示した。単層を介する電子トンネルにより主に惹起される酸化還元電流は、有意に減少され、そしてその可逆的特質を失う。Os(4,4'-ジメチル-2,2'-ビピリジン)2CI+/2+(PVP-PAA- Os)と共に部分的にピリジン錯化されるポリ(ビニルピリジン-コ-アクリルアミド)コポリマーを酸化還元ポリマーとして使用した(Gao,Z.等.(2003) Angew.Chem. Int Ed.41,810-813)。しかしながら、酸化還元ポリマーは正に帯電し、且つ電極は負に帯電しているので、5.0 mg/mlのPVP-PAA-Os溶液中で短く(brief)浸されている電極は、静電気的に自己集合している層間を経由して電極上でDNA/酸化還元ポリマー二層の形成をもたらす。図3bで説明されるように、電極を覆った二層は、水とPBSで徹底的に洗浄した後、且つ-0.4 Vから+0.8 Vの多くの反復的な電位サイクルの後、殆ど電荷を有しない酸化還元対を固定した高度に可逆性の表面を正確に予測するように示され、金の電極上に静電気性の二層を固定した高度に安定な表面を曝した。かかる結果は全てのオスミウムの酸化還元中心が電極表面に達することを可能にし、そして可逆的異種電子運搬へ進むことを確実にする。陰イオン性物質(核酸及び酵素ラベル)の量及び電極に結合した核酸の量に依存している、オスミウム酸化還元中心に結合した総量である、1.8-8.0×10-10mole/cm2は、酸化ピーク又は還元電流ピークの領域から見積もった。その後、ヘキサシアノ鉄酸塩溶液におけるボルタンメトリー試験は、棒状にした金の電極(図3c)で得られたものと同一の結果を示した。これらの変化は二層形成のために電子トンネル中で減少することに帰着する。フィルム中の陰イオン性物質の存在は、電気化学的な酸化還元ポリマーを感知できるほどに変化させなかった。
【0081】
実施例1.3:GAPDHcDNAハイブリダイゼーション及び検出
予備的なハイブリダイゼーション試験では、PCR増幅混合物を更なる精製なしで、検体として使用した。ビオチン化GAPDHcDNA(実施例1.1参照)を標的として、そしてハイブリダイゼーション緩衝剤として0.10 M NaCIを含むTE(10 mM Tris-HCI、1.0 mM EDTA)を使用した。ハイブリダイゼーション前に、標的cDNAを95℃で、5分間変性させ、そして氷上で冷却した。ハイブリダイゼーションは55℃で、30分間水槽で実施し、ここでのGAPDH cDNAは相補的な捕捉プローブにより選択的結合し、それにより電極表面上に固定した。反復したハイブリダイゼーション緩衝剤による洗浄工程では、全ての非特異的核酸を除去した。その後、当該電極を2.5 RIグルコースオキシダーゼ/アビジンD-複合体(GOx-A、5mg/ml;Vector Laboratories, San Diego, CA, USA)へ35℃で30分間曝した。PBS緩衝剤による3回の洗浄工程の後、過剰な酵素ラベルを除去して、電極を少なくとも10分間、2.5μIのPVP-PM-Os酸化還元ポリマー溶液へ曝し、そしてPBS緩衝剤ですすいだ。
【0082】
電気化学的測定は、低ノイズのPentium(登録商標)コンピューターとの結合にあるCH Instruments Model 660A 電気化学的ワークステーションを有するファラデーゲージ中で実施した(CH Instruments, Austin, TX, 米)。サイクリックボルタンメトリーはPBS緩衝剤及び20 mMのグルコースを含むPBS緩衝剤の両方において実施した。Ag/AgCI 電極 (Cypress Systems, Lawrence, KS,米)を参照電極として、そしてプラチナワイヤーを対極として使用した。電流測定は0.36Vで実施した。本明細書において報告した全ての電位は、Ag/AgCIの参照電極について言及した。
【0083】
標的検体とハイブリダイズした電極の典型的なサイクリックボルタンメトリーを図4に示した。図4Aは、ハイブリダイゼーション後のPBS緩衝剤(曲線a)及び20 mMのグルコース溶液(曲線b)におけるGAPDH cDNAに相補的な捕捉プローブを有する電極のボルタモグラム(voltamogram)である。明白な触媒電流は、二層中のグルコースオキシダーゼの存在のためにグルコースの存在中で観察した。対照的に非-相補性プローブは任意のGAPDH cDNAをPCR混合物から捕捉できず、そのために酵素ラベルを電極表面に結合させることを可能にせず、触媒電流を何も検出しない結果をもたらした(図4B、それぞれa及びbの曲線)。
【0084】
電極を集合的にPBS緩衝剤中に浸した時、電流測定における酸化電流は、40mMのグルコースを緩衝剤へ付加すると、0.36V(対.Ag/AgCI)で10.2nA増加した(図5)。非-相補的捕捉プローブを用いるコントロール実験では、電流のごくわずかな変化が観察された。当該電流測定は、サイクリックボルタンメトリーを補足したデータを生じ、そしてGAPDH cDNAが高度な特異性を有するPCR混合物からうまく検出されたことを再度確認した。最適化された実験条件下で、ダイナミックレンジは、0.50 fMの検出限界により、2.0 fMから1.0 pMの間であることが見出された。
【0085】
実施例1.4:ラットTP53 cDNAの検出
ビオチン化ラットTP53cDNAを実施例1で発表したように合成した。PCR増幅後、TP53cDNAの総量は17.2ng/μl(22.5pM)であると決定された。10、50、100、200、500及び800 fMのTP53cDNA(TE緩衝剤中で希釈した)を含むサンプルを解析した。PCR混合物中のTP53特異的cDNAを酵素ラベル及び酸化還元ポリマーをそれぞれ付加する前にその相補的捕捉プローブにより、電極の表面に固定した(実施例1.3参照)。TP53cDNAの量と直接一致する触媒電流は0.36 Vで、検出された。図6に描かれるように、当該電流はこの範囲内のTP53cDNAの濃度で線形的に増加した。検出限界は約1.0 fMで見出された。サンプル容積を考慮に入れると、TP53 DNA分子のわずか1500個のコピーが当該提案されたアプローチを用いて成功裏に検出された。我々の認識では、これは今まで報告されたゲノムDNAの電気化学的に検出される最も少ない量である。
【0086】
実施例1.5:核酸混合物中での核酸の検出
核酸バイオセンサーは混合物中のE.coli 16S rRNA及びGAPDHcDNAの検出に応用した。当該混合物は:0.5-1500 fMのE.coli 16S rRNA、100-5000 fMのE.coli 23S rRNA、0.2-2000 fMの全長ラットGAPDHcDNA、1-500 mM BSA、及び1-100 mMの サケの精子のDNAを含んだ。GAPDH cDNAは、実施例1.1で発表したように、ラット肝mRNAを単離しそして引き続きPCR増幅により調製した。得られたGAPDH cDNAの総量は5.0±0.5μgであった。以後、PCR産物はpH 8.0のTris-EDTA緩衝剤で106倍(factor)に希釈した。
【0087】
以下のプローブを使用した:E.coli 16S rRNA-特異的捕捉プローブ:5'-GCCAGCGTTCAATCTGAGCCATGATCAAACTCTTCAAAAAAAAAAAAAA-3'(SEQ ID NO:10);Ecoli 16S rRNA-特異的検出プローブ:5'-AAAAAAAAAAAAAAGCTGCCTCCCGTAGGAGT-3'(SEQ ID NO: 11)。金の電極上での捕捉プローブの固定化は、実施例1.2.で発表した通りに実行した。
【0088】
直接的ハイブリダイゼーション及び電気化学的検出をE.coli RNAサンプル(実施例1.3及び1.4を参照)で実行した。グルコースオキシダーゼ及び酸化還元ポリマーを導入した後、触媒電流を0.35 Vで検出し、それは核酸の量と直接一致した。コントロールとして、非-相補性捕捉プローブを電極表面上に固定した。電流測定応答では290 fMのE.coli S16 rRNA及び150 fMのGAPDH cDNAの濃度と一致して、E.coli 16S rRNA に関して2.95 nA、及びGAPDH cDNAに関して1.65 nAであることがそれぞれ見出された(図7)。これらの結果は、ゲル電気泳動分析により得られた数値と十分に一致する(310 fMのEcoli S16 rRNA及び160 fMのGAPDH cDNA;データは示されていない)。
【0089】
実施例1.6:検出系の選択性
バイオセンサーの選択性は上記捕捉プローブ:5'-GCCAGCGTTCAATCTGAGCCATGATCAAACTC TTCAAAAAAAAAAAAAAAA-3'(SEQID NO:10)及び以下の合成オリゴヌクレオチド:相補性5'-AAATTGAAGAGTTTGATCATGGCTCAGATTGAACGCTGGCAAAAAAAAAAAAAACTCCTACGGGAGGCAGC-3'(SEQ ID NO: 12);単一塩基非適合5'-AAATTGAAGAGTTTGATCATGTCTCAGATTGAACGCTGGCAAAAAAAAAA AAAACTCCTACGGGAGGCAGC-3'(SEQ ID NO:13);2塩基不適合5'-AAATTGAAGAGTATGATCATGTC TCAGATTGAACGCTGGCAAAAAAAAAAAAAACTCCTACGGGAGGCAGC-3'(SEQ ID NO:14)(ヌクレオチド変異は下線で示される)を用いて評価した。捕捉プローブは、実施例1.2.で発表した通り、金の電極上に固定された。
【0090】
ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件下で、好適には完全に配列が適合した、3つの異なるDNAオリゴヌクレオチドの200 fMの溶液を用いた1μlの液滴中で実施した(53℃のハイブリダイゼーション温度を使用すること以外は、それぞれ実施例1.3及び1.4を参照)。得られた電流測定応答は図8に要約した。60 mMのグルコースを完全に配列が適合した検出媒体に付加する電流増大は、4.3±0.4 nA(曲線a)であり、一方1.0±0.3 nA及び0.3±0.1 nAは、一塩基不適合(曲線b)及び二塩基不適合配列(曲線c)にそれぞれ検出された。従ってバイオセンサーは完全に適合したDNAオリゴヌクレオチドと不適合なDNAオリゴヌクレオチドを容易に区別することができる。
【実施例2】
【0091】
小さい(低分子量)酵素基質の検出
検体濃度からの酸化電流の依存性を評価するために、GAPDH cDNA捕捉プローブの飽和量を金の電極の表面上で固定化し、そして10μMのビオチン化相補性GAPDH cDNAと接触させた。ハイブリダイゼーションにより、グルコースオキシダーゼ/アビジン-複合体をアビジン-ビオチン相互作用を介して付着させた。最終的に酸化還元ポリマーは層間の静電気的自己集合を通して、電極表面にもたらされた。PBS(pH7.4)は0.35 Vの処理電位で検出媒体として使用された。図9で説明するように、約20 mMまでのグルコールは、得られた酸化電流と検出された検体の量の間で線形性の関係にある。
【0092】
この点に関して留意すべきは、本実施例における二層の設置は実施例1と正確に同じである。しかしながら、実施例1のように核酸の検出が意図される場合、酵素を'飽和'させるために非常に高いグルコース濃度が本発明の方法において使用され得る。或いは言い換えれば、十分な感度を有するように、非常に高度なグルコース酸化率を使用してよい。核酸の検出を意図する代わりに、酸化還元酵素の酵素基質の検出が所望される場合、これは非常に高い核酸濃度により処理し、相補性核酸とグルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素により捕捉プローブを飽和することにより達成することができた。電流は溶液中のグルコースの酸化(又は一般的に酵素基質の酸化)によるからであり、電流濃度の関連性は、一般的にグルコース又は酸化可能な酵素基質の検出のために使用することができることにある。更に実施例2では、グルコースオキシダーゼ分子は捕捉分子として作用し、そして同時にそれぞれ電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ電子を運搬することができる試薬として作用することを留意するべきである。従って実施例2は本発明の検出方法を説明し、ここでの捕捉分子はそれぞれ電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ電子を運搬することができる。
【実施例3】
【0093】
ポリペプチドの検出
タンパク質の検出(核酸について類推、実施例1参照)は図1a及び図1b中の概説のとおりに実施する。この場合、電極をチオール分子(例えば16-メルカプトヘキサデカン酸)で最初に覆ってよく、この場合、捕捉分子の共有結合のためのリンカー分子を供給する。捕捉分子のアミノ基と後に共有結合を形成するだろうリンカーのカルボン酸基を活性化するために、その後、被覆した電極を1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド/N-ヒドロキシ-スクシンイミド(EDC/NHS)の混合物の中に浸す。例えば、捕捉分子は、タンパク質性検体に結合親和性を有する抗体又は低分子量のリガンドであり得る。その後、当該電極を捕捉分子と検体分子の間に複合体を形成することを可能にする検体を含む疑いのある溶液と接触させる。その後、酵素ラベルが結合した酸化還元ポリマーを、層間の静電気性自己集合(図1aを参照)を通して電極表面にもたらす。基質分子の存在中で、基質の触媒酸化から発生した電流を電流測定的に検出する。電流はサンプル溶液中で標的検体濃度に直接相互関係する。図1b中に示す通り、サンドウィッチELISAと似た方法で検出を実施することもできる。この目的のために、捕捉分子としての抗体、及び検体を含む複合体を検体に結合親和性を有する第二の抗体と同様に接触させる。この第二の抗体は例えばグルコースオキシダーゼ等の酵素と接合してよく、それぞれ電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ電子を運搬することができる試薬として働く。その後、酵素ラベルを結合した酸化還元ポリマーは、電極表面と接触させられて、それにより、層間の静電気性の自己集合(図1a参照)を形成し、そしてポリペプチドの検出を可能にする。
【実施例4】
【0094】
低分子量リガンドの検出
"サンドウィッチ-ELISA様"手順を用いることは実施例3で説明され、ここでの抗体は捕捉分子として使用され、そして検体を有する本捕捉抗体の複合体は適切な酵素と接合した第二の抗体と接触し、薬物(例えばコカイン、モルヒネ等)、栄養物(サッカロース、アミノ酸等)、環境有害物質(例えばトリアジン、DDT等の殺虫剤)等の事実上任意の小さなリガンドが本発明によって検出され得ることは明白である。
【0095】
実施例5.1:ポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリルアミド)、ポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリル酸)、及びポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリルアミドスルホン酸)コポリマーの合成
グルコースオキシダーゼ(GOx、黒色アスペルギルス由来EC1.1.3.4、191 ユニット/mg)はFluka(CH-9470 Buchs,スイス)から購入した。フェロセン(Fc)、ビニルフェロセン(VFc)、アクリルアミド(AA)、アクリル酸(AC)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸("アクリルアミド-スルホン酸"、AAS、カタログ番号28,273)及び過硫酸塩をSigmaAldrich(St. Luis, MO,米)から購入した。アセトン、エタノール、及びリン酸塩緩衝生理食塩水等の使用される他の全ての化学物質は、認定された分析的グレードであった。使用した全ての溶液は脱イオン化水で調製された。
【0096】
実験中で生産したUVスペクトルのポリマーをAgilent 8453 UV-可視分光光度計上で実行し、そして記録した。分子量は、水及び較正のための標準化したポリ(エチレンオキシド)及びポリ(エチレングリコール)中で、Toyo Soda高速ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定された。
【0097】
i)ポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリルアミド)ポリマーの合成
10mlのエタノール/水(3対1)の混合溶媒中に溶解した1.0 gのアクリルアミドを含む3つのサンプルを調製した。0.10g/mlの酸素-不存在過硫酸塩溶液の0.30mlのアリコートを10分間、脱酸素した後にそれぞれのサンプルに付加した。0.05 gから0.16 g の範囲にある3つの量のビニルフェロセンを脱気したエタノール中に溶解し、3つのビニルフェロセン溶液サンプルを形成した。それぞれアクリルアミド、対、ビニルフェロセンの供給比率(w/w)が、95:5、90:10及び85:15となるように算出されたフェロセンの量がそれぞれのサンプルに付加される。それぞれのビニルフェロセンサンプルをアクリルアミド-イニシエーター混合物へ付加した。反応混合物を70℃で24時間、窒素環境中で還流した。冷却後、当該反応混合物を、酸化還元ポリマーを沈殿させるために迅速に攪拌したアセトンへ別々に滴下付加した。沈殿した酸化還元ポリマーをアセトンで洗浄し、そして水への溶解、アセトンでの沈殿の複合サイクルにより精製した。その後、当該精製産物を50℃、真空下で乾燥させた。
【0098】
ii)ポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリル酸)ポリマーの合成
10 mlのエタノール/水(3:1)の混合溶媒に溶解した1.0 g アクリル酸を含む3つのサンプルを調製した。0.10g/mlの酸素不存在過硫酸塩溶液の0.30 mlアリコートを10分間脱酸素した後、それぞれのサンプルに付加した。0.05 gから0.16 gの範囲にある3つの量のビニルフェロセンを脱気したエタノール中に溶解させて、3つのビニルフェロセン溶液サンプルを形成した。それぞれアクリルアミド、対、ビニルフェロセンの供給比率(w/w)が、95:5、90:10及び85:15となるように算出されたビニルフェロセンの量がそれぞれのサンプルに付加される。その後、それぞれのビニルフェロセンサンプルをアクリルアミド-イニシエーター混合物へ付加した。反応混合物を70℃で24時間、窒素環境中で還流した。冷却後、当該反応混合物を、酸化還元ポリマーを沈殿させるために迅速に攪拌したアセトンへ別々に滴下付加した。沈殿した酸化還元ポリマーをアセトンで洗浄し、そして水への溶解、アセトンでの沈殿の複合的なサイクルにより精製した。その後、当該精製産物を真空下、50℃で乾燥させた。
【0099】
iii)ポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリルアミド-スルホン酸)ポリマーの調製
10 mlのエタノール/水(3:1)の混合溶媒に溶解した1.0 g アクリル酸を含む3つのサンプルを調製した。0.10g/mlの酸素不存在過硫酸塩溶液の0.30 mlアリコートを10分間脱酸素した後、それぞれのサンプルに付加した。0.05 gから0.16 gの範囲にある3つの量のビニルフェロセンを脱気したエタノール中に溶解させて、3つのビニルフェロセン溶液サンプルを形成した。それぞれアクリルアミド、対、ビニルフェロセンの供給比率(w/w)が、95:5、90:10及び85:15となるように算出されたビニルフェロセンの量がそれぞれのサンプルに付加される。その後、それぞれのビニルフェロセンサンプルをアクリルアミド-イニシエーター混合物へ付加した。反応混合物を70℃で24時間、窒素環境中で還流した。冷却後、当該反応混合物を、酸化還元ポリマーを沈殿させるために迅速に攪拌したアセトンへ別々に滴下付加した。沈殿した酸化還元ポリマーをアセトンで洗浄し、そして水への溶解、アセトンでの沈殿の複合的なサイクルにより精製した。その後、当該精製産物を真空下、50℃で乾燥させた。
【0100】
ビニルフェロセンのアクリルアミド及びその誘導体とのコ-ポリマー化は、慣用のラジカルポリマー化反応に基づき実施された。一般的な反応方程式は図12に描かれている。
【0101】
しかしながら、首尾よくコ-ポリマー化するために、当該単量体は多大な注意が払われて、系におけるビニルフェロセンの効果を終結させる。ビニルフェロセンは、通常、コポリマー化系においてラジカルスカベンジャーとして作用する。ラジカルイニシエーターの量は、正常のポリマー化の系において必要とされる量より実質的に少ないことが見出された。より高量のラジカルイニシエーターの量は、ポリマー化効率及び製品の分子量を有意に減少させる。その上、追加の手順(sequence)はポリマー化効率にも影響を及ぼす。
【0102】
20%未満のポリマー化は、ビニルフェロセンとアクリルアミドの溶液に過硫酸塩ラジカルイニシエーターを付加した時に観察された。これはおそらくポリマー化速度の遅延をもたらすフェロセニウムの反応混合物中での形成、及びより早いポリマー鎖成長過程の終結のためである。表1で示す通り、最適条件下において相対的に高い収率が得られた。
【0103】
表1.ビニルフェロセンとアクリルアミド及びその誘導体のコポリマー化
【表1】
【0104】
しかしながら、ポリマー収率は、ビニルフェロセン供給率の増加に伴い減少した。それはポリマー化過程で既に多大な注意が払われたにもかかわらず、ラジカルポリマー化における終結効果が尚存在していることを示す。一度青色になった反応混合物をわずかな収率で得られたことも見出した。それはポリマー化溶液中でのかなりの量のフェロセニウムの形成によるものであった。単量体供給において、通常フェロセン含有量未満であるフェロセン負荷は、3から14%で変動する。
【0105】
酸化還元ポリマー中のフェロセン負荷は、元素分析から決定される。エネルギー分散型X-線回折(EDX)を本目的のために使用した。酸化還元サンプル上で使用された電子線の生産されたエネルギーは120 keVである。サンプルにより発生したX-線は、リチウム泳動シリコン検出器による分析にかけた。
【0106】
酸化還元ポリマーの分子量はゲル浸透クロマトグラフィーによって決定した。一般的により高いフェロセン供給率により調製される酸化還元ポリマーは、より低い分子量及びより幅広い分子量分布を有した。
【0107】
合成したコポリマーは、淡い黄色、粉状材料であった。コポリマーの分子量は2000から4000ダルトンの間である。FT-IR実験(図13参照)は、アクリルアミド及びビニルフェロセンが共に成功裏にポリマー化され、そして得られた酸化還元ポリマーは高純度であり、単量体が存在しないことを示唆する1650でのビニル吸収の完全な消失を明確に示した。更なるエビデンスは1000-1300cm-1領域で見出すことができる。1126 cm-1での不十分な1つに付随する非常に強い吸収は、酸化還元ポリマー中のフェロセン単位の存在を示し、そして1218 cm-1での強力な吸収は、ポリマー中のアミド基を示唆した。UV実験は、再度ビニルフェロセンとアクリルアミドの成功裏のコポリマー化を確認した。300 nmでのわずかなショルダーは、コ-ポリマー中でのフェロセン部分を明確に表示するものである(図13を参照)。酸化還元ポリマー中にフェロセン及びアミン又はカルボン酸部分を有することは:電子を介する酸化還元活性及びタンパク質と交差連鎖するための化学活性、の二重の機能にさせられた。
【0108】
ビニルフェロセンの供給比率を増加させることは、酸化還元ポリマー中のフェロセン部分の比率を増加させることを意図した。しかしながら、ビニルフェロセンの量を変化させることは当該ポリマーの収率にも影響を与える。得られた最も高い収率は、ビニルフェロセンが最も低い比率で提供された時であった。それはラジカルポリマー化におけるフェロセン化合物の異常な挙動と十分に一致する。表1に示す通り、ポリマー中のフェロセン部分の含有量は、ビニルフェロセンを増加させることにより増加したが、供給率は明らかに全く線形性でない。バイオセンシングの目的のために、10%のアビニルフェロセンの供給率は十分であり、良好な仲介機能と良好な経済性を与えることを見出した。ポリマー化において使用されるイニシエーターの量は、酸化還元ポリマーの組成物及び収率にも影響を与える。良好な酸化還元ポリマーは、単量体のグラム当り、イニシエーターが20-40 mgの範囲内にある時に得られることが見出された。
【0109】
実施例5.2:酸化還元ポリマーのサイクリックボルタモグラムの獲得
0.0μg、及び10μgのGOx、及び10μgのGOx及び10 mMのグルコースが存在する中でのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中の酸化還元ポリマー。
【0110】
電気化学的試験を汎用電気化学的システム(GPES)マネージャーバージョン4.9の下で処理するAutoLabpotentiostat/galvanostatで実施した。A 3-電極システムセルをファラデーケージ中に格納した。電極は(Ag/AgCI)参照電極、プラチナワイヤー対極、及びAu作用電極(7.94mm2の表面積)であった。
【0111】
ビニルフェロセンと対照的に、合成した酸化還元ポリマーは、水に高い溶解性を有するが、殆どの有機溶媒には不溶性である。この特質は、殆どの酵素が水性媒体中で作用するのみであるから、酸化還元ポリマーをバイオセンシングにおける、特に酵素と連鎖したバイオセンシングにおけるメディエーターとして使用するための理想的なものにする。
【0112】
図15は酸化還元ポリマーのみを含むPBS中の典型的なサイクリックボルタモグラムを示す。ボルタモグラムは、高い可逆性溶液電気化学を示し:酸化還元波は〜0.18V(対.Ag/AgCI)で集中し、ボルタモグラムは拡散律速型を有し、陽極及び陰極ピーク電流の規模は同一であり、ピーク間の電位間隔(potential separation)は60 mVであり、25℃で59 mVである理論値に非常に接近する。これらの酸化還元波を酸化還元ポリマー中でのフェロセン部分の酸化及び還元に割り当てることができ、それは優れたポリマーの酸化還元活性を示す。当該電解電量計(ボルタンメトリー)実験では、ビニルフェロセンが、アクリルアミド及びその誘導体と成功裏にコ-ポリマー化され、そしてポリマー中のフェロセン部分がそれらの電気活性を保持することが再度実証された。PBS中の酸化還元ポリマーは実在溶液形態中で自由な拡散挙動を有すものである。多様な量のグルコースを有する本溶液をスパイクすることは、ボルタモグラムを全く変化させなかった。それは酸化還元ポリマー単独によるグルコースの触媒酸化が存在しないことを示唆する。更に、明確な変化は、酸化還元ポリマー溶液に少量のGOxを付加している時に観察されなかった。得られた溶液の電気化学は、酸化還元ポリマー単独溶液と事実上同じであった。しかしながら、10 mMのグルコースを当該溶液に付加した時、グルコースのGOxによる酵素的酸化は、溶液中で進行する。GOx中の酸化還元中心は、FADをFADH2へ変換させた。電極電位を酸化還元ポリマーの酸化還元電位を通して走査した場合、酸化還元ポリマー中のフェロセン部分の有意な量が電極表面付近でフェロセニウムへ酸化された。GOx 中のFAD/FADH2の酸化還元電位は-0.36V(対、Ag/AgCI)であり、それはフェロセン/フェロセニウム対よりもかなり低く、FADへ戻るように酸化されるFADH2の近傍にあるフェロセニウム部分、及び酸化還元ポリマー中のフェロセニウム部分はもとのフェロセン部分へ還元される。図10で説明されるような触媒サイクルを形成するこれらの2つの反応、又は言い換えればGOxによるグルコース酸化は、酸化還元ポリマーにより仲介される。
【0113】
従って、酸化還元ポリマーによる触媒反応は、図13(薄灰色のトレース)中で見られるようにグルコースを含む溶液中のグルコース酸化電流を大きく増大させる。電子変換、特にFADH2、酸化還元ポリマー及び電極が全て非常に迅速である場合、大量のフェロセニウム部分は電気化学的酸化の間に産生され、そしてそれらは順番にFADH2により迅速に消費される。これはグルコース不存在溶液中で得られたものと比較して、フェロセニウム部分の電流をより低く減少させる理由となる。これらのデータは酸化還元ポリマーは、酸化還元メディエーターとして、酵素の酸化還元中心から電極へ電子をシャトリングして酵素反応中で有効に機能することを示唆する。
【0114】
実施例5.3:グルコースオキシダーゼ-ウシ血清アルブミン(GOx-BSA)とのビニルフェロセン-コ-アクリルアミド交差-連鎖を含む膜の合成
酸化還元ポリマーのタンパク質との交差-連鎖反応を実施し、得られた反応膜の電気化学的特質を研究した。酵素GOxを本実施例中で使用した。グルタルアルデヒド及びポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEG)を交差-リンカーとして選定した。生物学的等級のグルタルアルデヒド(水中で50%、製品コード00867-1 EA)及びポリ(エチレングリコール)ジグリシジル(PEGDE)(製品コード03800)をSigma-Aldrichから得た。
【0115】
最初に実施例5.1から得たポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリルアミド)を金の電極上に沈着させた。GOx-BSAはクロスリンカーで修飾して、末端のアルデヒド基を有する脂肪族炭素鎖を有するGOx-BSAを提供し、それは固定したメディエーター上に適切な官能基を有するクロスリンケージを提供することができる。引き続き、修飾したGOx-BSAを沈着させ、そして固定したイニシエーターと反応させた。修飾したGOx-BSA上のアルデヒド基はPAA-VFcのアミン基と反応し、共有結合性交差リンケージを形成した。反応を実施した後、PAA-VFc-GOx-BSAフィルムを乾燥させた。
【0116】
金の電極上で交差-連鎖したPAA-VFc-GOx-BSAフィルムを電解電量分析にかけた。ブランクPBSを使用して、電位走査速度50 mV/sを適用した。図16は、ブランクPBS中の金の電極上でGOx及びBSAとPEG交差連鎖したPAA-VFcのサイクリックボルタモグラム(voltamogram)を示す。図16で説明した通り、水とPBSで徹底的に洗浄した後、殆ど変化を有さず、そして-0.2 Vから+0.8Vの間の多くの反復的な電位サイクルの後、金の電極上で固定化されたフェロセンフィルムの高い安定性の表面を曝している、酸化還元対(A. J. Bard, L. R. Faulkner、Electrochemical Methods, John Wiley & Sons: New York, 2001.)を固定化した高い可逆性の表面が期待されるような交差連鎖フィルムを、正確に示した。遅い走査速度<100 mV/sでは、顕著に対称的なシグナルが理想的な挙動を示す一つの電子の酸化還元系を閉じ込めた表面を予測するように記録された。ピーク電流は、拡散挙動の場合に溶液中で観察されるように電位走査速度に比例しており、ピーク間の電位差は59 mVよりもかなり少なく(図15参照)、そしてピークの高さの半分の電流幅は、約90 mVである。かかる結果は、全てのフェロセンの酸化還元中心が電極表面に到達することを可能にし、そして可逆性の異種の電子運搬を進行させることを確実にする。10 mMのグルコースのPBS溶液への付加では、典型的な触媒電気化学的曲線が得られた。しかしながら、酸化還元ポリマーの還元ピークは消失した(図16、灰色のトレース)。これはセンシング層が、還元GOxからフェロセン部分への電子の運搬によって還元状態中で均質に維持されることを意味した。迅速な応答及び検出された電流は、バイオセンサーの高い電流感度(750nA/mMグルコース)の酸化還元ポリマーの優れた仲介機能を示した。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1A】図1は、本発明に係る検出方法を図式で描く。最初に、図1aに示す通り、検出されるべき検体と結合が可能な捕捉分子20を検出電極10の表面に固定した。任意に、電極表面上の未結合の部分を埋めるために遮断剤15を捕捉分子とは別個に又は捕捉分子と一緒に付加してよく、それによりバックグラウンドシグナルを減少させた。その後、当該検出電極を標的検体30を含むと想定される溶液へ曝す。検体分子を捕捉分子と結合させ、検出電極の表面上に第一層を形成する。引き続き、電気化学的活性剤40及び試薬50(それぞれ電気化学的活性剤へ、又は電気化学的活性剤から、電極から、又は電極へ電子を運搬するための試薬)を電極表面と接触させる(任意のオーダー、又は混合物として)。電気化学的活性剤は静電気の正味電荷を有し、捕捉分子と検体分子の間で形成される複合体の静電気の正味電荷に相補的でありそれにより電極上に第二層を形成し、ここでの第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成する。任意の基質分子55の存在は、電流測定的に検出される基質の触媒酸化から電流を発生させる。電流はサンプル溶液中の標的検体の濃度に直接相関する。
【0118】
【図1B】図lbは、検出電極(例えば、金の電極)の表面を修飾するためのリンカー分子の使用を説明する。
【0119】
【図2】図2は、多様な比率のビオチン-dUTP/dTTPを用いた代表的な全長ラットTP53cDNA(レーン1-3)及び全長GAPDHcDNA(レーン4-6)をコードするPCR産物のゲル電気泳動分離を描く。レーンMは、DNAサイズマーカーである。レーン1-3は、それぞれ0:100、35:65、及び65:35のビオチン-16-dUTP/dTTP比率に対応する。レーン4-6は、それぞれ0:10、1:10、及び2:10のビオチン-21-dUTP/dTTP比率に対応する。
【0120】
【図3】図3は、金の電極のサイクリックボルタモグラム(voltamograms)を描く。当該電極は(a)2.5 mMのK3Fe(CN)6及び0.50 MのNa2SO4中で混合した自己集合した単量体で覆われ、(b)PBS中でDNA/酸化還元ポリマーの二層を有し、そして(c)2.5 mMのK3Fe(CN)6及び0.50 MのNa2S04中でDNA/酸化還元ポリマーの二層を有す。走査速度は:100 mV/sである。(b)での電流スケールは、透明度のために10倍(factor)拡大された。
【0121】
【図4】図4は、PBS中のGAPDHcDNA(曲線a)と(A)GAPDHcDNAに対して相補性である捕捉プローブ、及び(B)GAPDHcDNAに対して非相補性である捕捉プローブを有する20mMのグルコース溶液(曲線b)との、ハイブリダイゼーション後の金の電極のサイクリックボルタモグラム(voltamograms)を描く。走査速度は:10 mV/sである。
【0122】
【図5】図5は、(a)GAPDHcDNAに対して相補性である捕捉プローブ、及び(b)GAPDHcDNAに対して非相補性である捕捉プローブを有する、PCR混合物中のGAPDHcDNAとの、ハイブリダイゼーション後の金の電極の電流測定応答を描く。処理電位は:40 mMのグルコースで0.36 Vである。
【0123】
【図6】図6は、2.5μlの液滴中での、それぞれ50、100、200、及び500 fMのTP53cDNAとのハイブリダイゼーション後の金の電極の電流測定応答を描く。処理電位は:40 mMのグルコース、0.36 Vである。
【0124】
【図7】図7は、E.coli 16S rRNA、E.coli 23S rRNA、及び全長ラットGAPDHcDNAの混合物とのハイブリダイゼーション後の金の電極の電流測定応答を描く。曲線(a)はE.coli 16S rRNAの応答に対応し、曲線(b)はラットGAPDHcDNAの応答に対応し、一方、曲線(c)はブランクコントロールに対応する。1μlの液滴を使用した。処理電位は:60 mMのグルコ−ス、0.35 Vである。
【0125】
【図8】図8は、アッセイ系の感度を評価するために、1μlの液滴中にそれぞれ200 fMの(a)完全に相補性である合成オリゴヌクレオチド、(b)1つの塩基が不適合であるオリゴヌクレオチド、及び(c)2つの塩基が不適合であるオリゴヌクレオチドとのE.coli 16S rRNA-特異的DNA捕捉プローブのハイブリダイゼーション後の金の電極の電流測定応答を描く。処理電位は:60 mMのグルコース、0.35 Vである。
【0126】
【図9】図9は検体濃度からの酸化電流の依存性を描く。GAPDHcDNA捕捉プローブは金の電極上に固定され、そして10μMのビオチン化GAPDHcDNAと接触させられる。ハイブリダイゼーションによって、グルコースオキシダーゼ/アビジン-複合体はアビジン-ビオチン相互作用を介して結合される。最終的に、酸化還元ポリマーは層間の静電気性自己集合を通して電極表面にもたらされる。グルコール検出媒体は:PBS(pH 7.4)である。処理電位は:0.35 Vである。
【0127】
【図10】図10は、バイオセンサーを介した酸化還元ポリマー中で実施される、カップリング酸化還元反応の説明図を示す。
【0128】
【図11】図11は、本発明の水溶性及び交差連鎖し得るポリマーの塩基単位の構造を説明する。本図はビニルフェロセンとアクリル酸 誘導体とのコポリマー中で見出される反復単位を示す。
【0129】
【図12】図12は、ビニルフェロセンとアクリル酸誘導体のコ-ポリマー化反応における一般反応方程式を描く。
【0130】
【図13】図13は、本発明の方法により生産された酸化還元ポリマーPAA-VFc及びPAAS-VFcのフーリエ変換赤外線(FT-IR)スペクトルを示す。
【0131】
【図14】図14は、Fc、PAA、PAAS及びVFcによるコ-ポリマー化から得られたコ-ポリマーの紫外線(UV)-可視スペクトルを示す。
【0132】
【図15】図15は、多様な系における酸化還元ポリマーのサイクリックボルタモグラム(voltamograms)を示す。リン酸緩衝化生理食塩水を使用し、そして電位走査速度をボルタムグラムが100 mV/sであるように得られるように適用した。
【0133】
【図16】図16は、酸化還元ポリマーPAA-VFcの他のサイクリックボルタルグラムを示し、それは金の電極上でグルコースオキシダーゼ-ウシ血清アルブミン(GOxBSA)フィルムと交差連鎖する。リン酸緩衝化生理食塩水を使用し、そして電位走査率をボルタルグラムが50 mV/sであるように得られるように適用した。
【技術分野】
【0001】
本発明は分析センサーの分野に関する。特に本発明は、電導性の二層の検体及び電極の表面上で前記検体の電導性を増加させるための試薬の形態により特徴づけられる電極配置によってサンプル中で検体を検出するための方法に関する。本発明は、かかる方法及びバイオセンサーとしてかかる電極配置の使用を実行するために有用な電極配置にも関する。
【背景技術】
【0002】
高分子性バイオポリマー等の検体の検出及び定量化は、分析化学だけでなく、生化学、食品技術、又は機械の分野においても基本的な方法である。今日まで、バイオポリマーの存在及び濃度を決定するために最も頻繁に使用された方法は、オートラジオグラフィー、蛍光、化学発光又は生物発光及び電気化学的技術による検出を含む(例えばBakker, E.及びTelting-Diaz. M. (2002) Anal. Chem. 74, 2781-2800で検討される)。
【0003】
しかしながらオートラジオグラフィーは有害な放射化学を使用するために多くの分野で適用されることができず、一方、視覚的検出方法は、一般的に冗長なラベル化方法、並びに高価な試薬と技術装置を含む。他方、電気化学的検出技術は、高感度及び低コストの両方の観点において魅力的な代替物となった。
【0004】
核酸分子の検出に関して、現在3つの主な電気化学的検出のアプローチ、即ち電導性測定(Park,S. J.等.(2002) Science 295,1503-1506)、核酸-インターカレーション法(Zeman, S. M.等. (1998) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 95, 11561-11565;Erkkila, K. E. 等. (1999) Chem. Rev. 99,2777-2795)、及び触媒増幅(amplification)による検出(Caruana, D. J. & Heller,A. J. (1999) J. Am. Chem. Soc. 121,769-774 ;Patolsky, F.等.(2002) Angew.Chem. Int Ed. 41, 3398-3402)が適用されている。
【0005】
上記Park等は、金のナノ粒子により官能化したオリゴヌクレオチドを用いたDNAアッセイ検出方法を報告した。500 fMの検出限界が見出されたが、例えば転写因子又は所定の細胞-表面受容体をコードする非常に稀な核酸種を同定するには十分でない。核酸-インターカレーション法は低シグナル-対-ノイズ率によって阻まれる。なぜなら最も多くのDNA-インターカレーティング試薬は、二重らせんのDNA(dsDNA)中に挿入されないだけでなく、一重らせんのDNA分子と静電相互作用を介して、より低い限度であっても結合するからである。しかしながら、dsDNAへより選択的に(しかし排他的ではなく)結合する挿入剤を装着(threading)した、改良したフェロセンラベル化ナフタレンジイミドが合成された(Takenaka, S.等.(2000) Anal. Chem. 72,1334-1341)。
【0006】
DNAバイオエレクトロニクスにおける近年の進歩は、生物電気的触媒として、核酸/酵素-複合体の使用に注目が集められている(上記Caruana & Heller;上記Patolsky等.,)。同様に、核酸官能化リポソーム又はナノ粒子はDNA検出工程の増幅のための微粒子ラベルとして使用された。ごく最近では、0.5 fMの検出限界は、酵素増幅検出方法(およそ3000分子に相当する)を用いて、38-塩基オリゴヌクレオチドについて報告されている(Zhang,Y.等.(2003) Anal.Chem., page EST 2.4)。しかしながらこの感度は、通常20-50塩基長にある、短いDNAオリゴヌクレオチドだけを分析した場合に達成される。より大きい核酸分子、例えばゲノムDNAを検出するためのそれらの方法の使用は、高いバックグラウンドシグナルのために困難なものになり、pM又はnMの範囲においてでさえより低い感度となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上記制限を克服し、且つ高分子検体でさえ検出できるような高感度の検体を検出するための代替方法の必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
一つの観点では、本発明は検出電極により検体分子を電気化学的に検出するための方法を提供し、当該方法は:
(a)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子を検出電極上に固定化し;
(b)検出電極を検出されるべき検体分子を含むと想定される溶液と接触させ;
(c)前記溶液中に含まれる検体分子を検出電極上で捕捉分子と結合することを可能にし、それにより捕捉分子と検体分子間の複合体の形成を可能にし、前記複合体が電極上で第1層を形成し;
(d)検出電極を電気化学的活性剤と接触させ、ここでの前記電気化学的活性剤は静電気の正味電荷(捕捉分子と検体分子間で形成される複合体の静電気の正味電荷に相補的なものである)を有し、それによって電極上に第二層を形成し、ここでの第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成し;
(e)検出電極を電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ、それぞれ電子を運搬することを可能にする試薬と接触させ;
(f)検出電極での電気計測を実施し;
(g)得られた電気計測の結果をコントロール計測の結果と比較することにより検体を検出すること、
を含んで成る。
【0009】
他の観点では、本発明は本明細書で開示したような検体分子の電気化学的検出を実行するために有用である検出電極を含む電極配置を提供し、当該電極配置は:
(a)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子と検体分子との複合体を含む検出電極上の第一層;及び
(b)電気化学的活性剤を含む第二層、ここでの前記電気化学的活性剤は、捕捉分子及び検体分子間で形成される複合体の静電気の正味電荷と相補性である、静電気の正味電荷を有し、ここでの前記第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成する、
を含んで成る。
【0010】
更なる観点では、本発明は検体分子の電気化学的検出のためのバイオセンサーを提供し、以下:
(a)検出電極
(b)検出されるべき検体分子と結合することができる補足分子と検体分子との複合体を含む検出電極上の第一層;及び
(c)電気化学的活性剤を含む第二層、ここでの前記電気化学的活性剤は、捕捉分子と検体分子の間で形成された複合体の静電気の正味電荷と相補性である静電気の正味電荷を有し、ここでの第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成する、
を含んで成る。
【0011】
更なる観点では、本発明は水溶性酸化還元ポリマーを提供し、以下:
(a)重合可能なフェロセン誘導体を含む第一の単量体ユニット;及び
(b)(末端の)第一の酸又は塩基、正味電荷を捕捉できる酸又は塩基官能基を有すアクリル酸誘導体を含む第二の単量体ユニット
を含んで成る。
【0012】
1つの態様では、本新規水溶性酸化還元ポリマーにおけるアクリル酸誘導体は、一般式(I)により表され、
【化1】
式中RはCnH2n-NH2、CnH2n-COOH、NH-CnH2n-PO3H、及びNH-CnH2n-SO3Hから成る群から選定され、ここでのアルキル鎖は任意に置換されてよく、そしてここでのnは0から12の整数である。
【0013】
更に他の観点では、本発明は水溶性、酸化還元ポリマーを調製するための方法を提供し、前記方法は:
重合可能なフェロセン誘導体を含む第一の単量体ユニットと、正味電荷を獲得することができる酸又は塩基官能基を有するアクリル酸誘導体を含む第二の単量体ユニットをポリマー化し、ここで前記ポリマー化は水性アルコール培地中で実行されること、
を含んで成る。
【0014】
本発明は限定的でない実施例と図面を一緒にして検討する場合、詳細な説明を参照することによって、より理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
詳細な説明
本発明は、電気化学的活性剤(溶解した形態で存在し、且つ溶液中のその正味電荷が検出されるべき検体分子、又は同一物を含む複合体の正味電荷に相補的(即ち反対)である)の使用により有意に改良され得るバイオポリマー等の検体(一般的に非電導性又は僅かな電導性)の検出の感度を見出すことに基づく。それらの反対電荷のために、当該検体及び同一物を含む複合体は、電気化学的活性剤と一緒になって、静電気の層間を経由した自己集合を介して非常に安定な二層を形成する。この"電子交換ブリッジ"(又は"電子シャトル")としての二層機能は、電極の表面を完全に横断し、検体の検出のために使用される電極で電流に影響を与える。二層の使用は、電極に対して、より大きな、そしてより均質な接触面積を提供するという利点も有し、当業界において公知の他の手順と比較した、本発明の検出方法の増加した感度にも寄与する。
【0016】
本発明に係る用語"検出する"とは、サンプル中の検体の定性的検出及び定量的検出の両方を意味し、更に当該用語"検出する"とはサンプル中の検体の不存在を決定することも含むことを意味する。本発明の使用により、約1 fM (即ち、10-15M)程度に低い検体濃度は、明確に検出され得る。本発明の方法の検出のために適する検体の濃度範囲は、約10-12Mから10-15Mである。検出を実行するための検体の上限の濃度は、通常約10-11Mである。検体が10-11Mよりも高用量でサンプル中に存在すると信じられている場合、当該サンプルを希釈することができ、かくしてそれらの量は本発明の感度の範囲内にあることが明確であるという点が留意される。
【0017】
本明細書において使用される用語"捕捉分子"とは、単一タイプの分子、例えば核酸配列を限定する一本鎖核酸プロ−ブを言う。しかしながら、捕捉分子は多様なタイプの分子、例えば多様な核酸配列を有する核酸プローブを含んでもよい(従ってそれは多様な結合特異性も示す)。当該捕捉分子は抗体又は他のタイプのタンパク質に関連する結合分子、例えばanticalins(商標)のクラス(抗体等の所定のリガンドに対する特異的な結合特性を示すポリペプチド(更に、Beste等.(1999) Proc. Natl.Acad. Sci. 米 96, 1898-1903を参照))、であってもよく、それはタンパク質関連化合物の多様な表面領域(エピトープ)を認識する。多様なタイプの捕捉分子の使用は、多様な検体、例えば2つ以上のゲノムDNA(それらはいずれも1つの特定のタイプの捕捉分子に対して結合特異性を有している)の同時検出又は連続検出を可能にするたけでなく、多様な認識配列(例えば核酸分子又は受容体分子の2つのリガンド結合サイトの5'-及び3'-末端で)を介した同一検体を検出し、サンプル中の検体の数個のコピーでさえ検出する可能性まで増強させることも可能にする。
【0018】
本明細書において使用される用語"電気化学的活性剤"とは、検体と電極の間で電子を運搬する試薬を活性化させることができる任意の化合物を言い、(好適には特異的に)検出されるべき検体に結合し、そして前記検体よりも高い電流に関する電導性を示す。
【0019】
本発明の一つの態様では、電気化学的活性剤は、重合体酸化還元メディエーターである。本発明のいくつかの態様では、電気化学的活性剤は、酸化還元活性金属イオンを含む。かかる金属イオンの例は、銀、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、オスミウム又はルテニウムイオン又はそれらの混合物であり、それらの全てはカチオンとして検体の表面上の負に帯電した基へ結合し、静電気の相互作用により検出され得る。例えば、検出されるべき検体が核酸である場合、かかるカチオンは前記核酸の負に帯電したリン酸塩骨格に結合する。仮にタンパク質が検出された場合、かかるカチオンは酸性アミノ酸、例えばアスパラギン酸塩又はグルタミン酸塩の側鎖に結合し得る。
【0020】
一般的に適切な重合体酸化還元メディエーターは、当該サンプルが解析される間に酸化還元物質の拡散ロスを防止する、又は実質的に減少させる化学構造を有すべきである。かかる解除不能性(non-releasable)重合体酸化還元メディエーターの一つのタイプは、重合体化合物に共有結合した酸化還元物質を含む。かかる酸化還元ポリマーは典型的に遷移金属化合物であり、ここで酸化還元-活性遷移金属を基礎とするペンダント基は適したポリマー骨格に共有結合し、ここでそれ自体は電気的活性であってもなくてもよい。このタイプの例は、ポリ(ビニルフェロセン)及びポリ(ビニルフェロセン コ-アクリルアミド)である。或いは、当該重合体酸化還元メディエーターはイオン結合した酸化還元物質を含み得る。典型的にこれらのメディエーターは、反対に帯電した酸化還元物質と対になった帯電したポリマーを含む。このタイプの例は、負に帯電したポリマー(例えば正に帯電した酸化還元物質(例えばオスミウム又はルテニウムポリピリジルカチオン等)と対になったNafion(商標)(Dupont)等)或いは反対に正に帯電したポリマー(例えば負に帯電した酸化還元物質(例えばヘキサシアノ鉄酸塩(ヘキサシアノ鉄酸塩又はferrocyanide)等)と対になったポリ(1-ビニルイミダゾール)等)を含む。更に、当該酸化還元物質はポリマーへ配位結合することもできる。例えば、酸化還元メディエーターはオスミウム又はコバルト2,2'-ビピリジル複合体のポリ(1-ビニルイミダゾ−ル)又はポリ(4-ビニルピリジン)への配位によって形成され得る。他の例はオスミウム4,4'-ジメチル-2,2'-ビピリジル錯体に配位したポリ(4-ビニルピリジンコ-アクリルアミド)である。有用な酸化還元メディエーター及びそれらの合成方法は、米国特許No.5,264,104;5,356,786;5,262,035;5320,725;6,336,790;6,551494;及び6,576,101に発表された。
【0021】
本発明の更なる態様では、電気化学的活性剤は本明細書で後に詳述する酸化還元ポリマーの新規の分類から選定される。簡潔には、当該新規の酸化還元ポリマーの分類はポリ(ビニルフェロセン)、ポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリルアミド、ポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリル酸、及びポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリルアミド-(CH2)n-スルホン酸、及びポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリルアミド-(CH2)n-ホスホン酸を含み、ここでのnは0から12の整数である。
【0022】
本明細書において使用される用語"電子を運搬することができる試薬"とは、電気化学的活性剤(電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ、それぞれ電子を運搬することができる)により活性化する任意の試薬を言う。これは電子を提供し、且つ再度受容することができる試薬であり、少なくとも1つの前記試薬の原子の酸化状態の減少又は増加をもたらす。これにより当該試薬はそれぞれ検体/捕捉分子-複合体を形成する電導性の二層、及び電気化学的活性剤分子に結合、挿入、又は付随する。
【0023】
電子を運搬する試薬は、本目的のためだけに提供され得る。しかしながら当該試薬は捕捉分子として同時に機能する電子を運搬することも更に可能である。詳細なケースでは、検出されるべき検体が酵素基質である場合、その変換は電子計測により検出することができる(実施例2参照)。
【0024】
本発明の一つの態様では、電子を運搬することができる試薬は酵素又は酵素-複合体である。通常、任意の酵素は検出され得る電流の発生を導くために使用され得る。当該酵素は酸化還元酵素の群から選定され得る。適切な酸化還元酵素の例は、グルコースオキシダーゼ、水素ペルオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、ラクティックデヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ガラクトースデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コリンデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルタメートデヒドロゲナーゼ、グルタメートオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、NADPHオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、シトクロムCオキシダーゼ、及びactechol オキシダーゼである。
【0025】
本発明の方法により検出されるべき検体は核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド又はそれらの複合体、例えばDNA/タンパク質複合体又はRNA/タンパク質複合体であってよい。当該検体はオリゴサッカライドもしくはポリサッカライド、又は低分子化合物であってもよく、それは免疫学的ハプテンの特徴を示す遊離又は接合形態において表される。
【0026】
かかる化合物は、いくつかの例を挙げると、低分子薬物、栄養物、殺虫剤、又は毒素である。
【0027】
本発明の1つの好適な例では、検出されるべき検体は核酸分子である。従って本明細書において使用される用語"核酸又は核酸分子"とは、ゲノムDNA、cDNA及びRNA分子を言う。本発明に係る用語"オリゴヌクレトチド"とは、およそ10から80塩基対(bp)の長さ、より好適には15から40 bpの長さの分子を有する、より小さな核酸分子(DNA及びRNA)を言う。当該核酸は二重らせんであってよいが、少なくとも1つの一本鎖領域を有してもよく、又は完全に一本鎖の形態で存在してもよい(例えば、以前の熱変性又はそれらを検出するための他の種の鎖分離に起因)。本発明の好適な態様では、検出されるべき核酸の配列は予め確定され、即ち公知であり、ここでの完全な配列は公知であるか又はそれらの少なくとも一部分が公知であってよい。なぜなら本発明の検出方法の高感度は、検出されるべき核酸分子がゲノムサンプルを由来とすることができ、そして少ないコピー数、中間のコピー数または多くのコピー数で存在し得る。
【0028】
本発明の方法に係る核酸を検出するための適した捕捉分子は、核酸プローブであり、即ち一本鎖DNA又はRNA分子である。標的核酸の一本鎖領域にそれぞれ部分的又は完全に相補性である配列を有するプローブは、好適に使用される。当該核酸プローブは、合成オリゴヌクレオチド又はより長い核酸配列(後者はプローブと検出されるべき核酸のハイブリダイゼーションを阻害する任意の構造に折り畳まれない限り)であってよい。更に核酸プローブである捕捉分子として好適なものは、修飾したヌクレオチド、例えばビオチン-、ジゴキシゲニン-又はチオール-ラベルを運搬するヌクレオチドを含む。しかしながら捕捉分子としてDNA-又はRNA-結合タンパク質又は試薬を使用することも可能である。
【0029】
本発明の他の好適な態様では、検出されるべき検体はタンパク質又はペプチドである。それらは21個の天然のアミノ酸(セレノシステインを含む)から成るが、例えば糖残基又は翻訳後修飾の任意のタイプにより修飾されたアミノ酸残基を含んでもよい。本発明の方法によれば、核酸及びタンパク質の複合体、例えばRNA-結合タンパク質とその同種RNA標的複合体、又は転写因子とそれらの個々のDNA-結合ドメインとの複合体を検出することも可能にする。
【0030】
タンパク質又はペプチドを検出するための好適な捕捉分子は、検出されるべきタンパク質又はペプチドに結合活性を有する任意のタイプのリガンドである。かかるリガンドの例は、低分子量の酵素アゴニスト又はアンタゴニスト、受容体アゴニスト又はアンタゴニスト、医薬、糖、抗体、又はタンパク質もしくはペプチドに特異的に結合することができる任意の分子である。
【0031】
検体に関係なく結合活性を有している捕捉分子は、任意の適切な物理的又は化学的相互作用によって検出電極上に固定することができる。それらの相互作用は、例えば、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、又はイオン(静電気)相互作用、及び共有結合を含む。これは更に捕捉分子を疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用又は静電気相互作用により、或いは直接的固定化に適さない電極の表面へリンカー分子を用いた共有結合を通して、電極の表面へ直接固定化することができることを意味する。それは更に捕捉分子に対して結合活性を有する分子をリンカー分子として用いて、その後非共有的な相互作用、即ち錯形成によりリンカー分子へ結合させることにより捕捉分子を固定化することを可能にする(実施例2中のグルコースオキシダーゼ分子が捕捉分子として働くことを参照)。
【0032】
本発明に係る方法は、検出又は作動電極を含む当業界において公知の任意の電極配置を事実上使用することにより実施される。かかる電極配置は通常対極及び参照電極を更に含む。当該検出電極は、慣用の金属電極(金電極、銀電極等)、又はポリマー材料又は炭素から作製された電極、捕捉分子の固定化を促進するために任意に改良した表面であってよい。検出電極を含む電極配置は、通常のケイ素又はガリウムヒ化物基質であってもよく、ここでは金の層及び窒化ケイ素の層が適用され、そして引き続き慣用のリソグラフ及びエッチング技術によって構造化されていき、電極配置が作製される。構造化では、検体と対極の間の距離は、使用される構造化技術の種類及び検出されるべき検体のタイプに応じて変化させる。電極間の距離は一般的に約50μmから1000又はいくつかは1000μmである。
【0033】
本発明に係る方法は、単一の手法で2つ以上の検体を同時に又は連続して検出することも可能にする。本目的のために本明細書において開示されたような多数の電極配置を含む基質が使用され得る。ここでの多様なタイプの捕捉分子(それぞれが検出される特定の検体に(特異的)結合親和性を示す)は、個々の電極配置の電極上に固定される。或いは多数の電極配置を使用することも可能であり、それぞれが一つのタイプの捕捉分子のみを備えている。
【0034】
本発明の方法を実施するために使用され得る電極配置の例は、慣用の互いにかみあう電極である。その結果として、多数の互いにかみあう電極を備えた配置、即ち電極アッセイは、並行又は複合的測定を使用することができる。他の使用可能な電極配置は、トレンチ又は空洞の形態にある電極配置であり、それは例えば折り畳み領域により形成され、例えば検体と結合することができる捕捉分子がある金の層は2つの対辺壁に位置して固定される。
【0035】
本発明の方法は、最初の工程として、電極の表面上で検出されるべき検体と結合することができる捕捉分子の固定化を含む。当該捕捉分子は当業界において公知の任意の技術により固定化され得る。複合的検体が実行される場合、捕捉分子は、例えば、インクジェット印刷技術の補助と共に適用され得る。
【0036】
任意に遮断剤は(個々に又は捕捉分子と一緒に)バックグラウンドシグナルを減少させるために付加され得る。個々に付加する場合、非特異的方法における電気化学的活性剤との相互作用から、検体分子へ結合しないそれらの捕捉分子を妨げるために、当該遮断剤をアンプル溶液に先立ち、又は電極(捕捉分子で覆った)をサンプル溶液と接触させた後、付加してよい。任意の試薬を電極上に固定することができ、そしてそれは目的のために適している捕捉分子と検体分子との間の相互作用を妨げることができる(又は少なくとも有意の減少させる)。かかる試薬の例はチオール分子、ジスルフィド、チオフェン誘導体、及びポリチオフェン誘導体である。本発明で使用される遮断剤の1つの詳細な有用な分類は、例えば16-メルカプトヘキサデカン酸、12-メルカプトドデカン酸、11-メルカプトデカン酸又は10-メルカプトデカン酸等のチオール分子である。
【0037】
検出されるべき検体分子を含むと仮定される溶液、例えば電解液は、その後電極と接触させられ、かくして当該検体分子は、電極表面上の第一層を形成している捕捉分子と結合することができる。当該溶液が多数の多様な検出されるべき検体を含むならば、前記検体がそれらの個々の捕捉分子と同時に又は連続して結合することができるような条件が選定される。
【0038】
検体分子を捕捉分子に結合することを可能にした後、未結合の捕捉分子は電極から除去される。未結合の捕捉分子を除去することは任意であるが、しばしば利益を有し得る。なぜなら所定の捕捉分子(例えばオリゴヌクレオチド)は検出されるべき検体だけでなく、結果として電気化学的測定を確かに妨げる前記検体の電導性を増加させるための試薬(例えば還元可能な金属カチオン)にも結合することができる。
【0039】
未結合の捕捉分子は酵素的に除去され得る。捕捉分子がDNAプローブである場合、これは一本鎖DNA、例えばマングビーンヌクレアーゼ、ヌクレアーゼP1又はヌクレアーゼS1を選択的に機能停止させる(breaks down)酵素によって達成され得る。捕捉分子が低分子量のリガンドである場合、これらのリガンドは電極上で酵素的に共有のリンケージ、例えばエステルリンケージを介して固定化される。この場合、未結合のリガンド分子を除去するために、例えば、カルボキシルエステルヒドラーゼ(エステラーゼ)を使用することが可能である。本酵素は電極と未結合のリガンド分子間のエステルリンケージを選択的に加水分解する。対照的にペプチド又はタンパク質により結合された電極とリガンド分子間のエステルリンケージは、リンケージの立体的接近性を減少させるために原型のままである。
【0040】
検出されるべき検体の検出電極は、その後、電気化学的活性剤と接触させられる特異的な捕捉分子を介して固定化され、前記検体へ結合することを可能にし、且つそれらの電気的電導性を伝える。電気化学的活性剤は静電気の正味電荷の静電気を有し、それは捕獲分子と検体分子間で形成される複合体の正味電荷の静電気に相補的であり、それにより電極上で第二層が形成される。ここでの第二層及び第一層は一緒になって静電気の自己集合を介して安定な電導性の二層を形成する。
【0041】
更に、検出電極は、それぞれ電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ、電子を運搬することができる試薬と接触し、検体と電極間の電子運搬を促進又は増幅さえし得る。当該電子を運搬し得る試薬は、電極配置と電気化学的活性剤との接触に先立ち、又は同一物が電極配置へ既に結合した後に、電気化学的活性剤と同時に付加してよい。電子を運搬することができる任意の試薬は、電気化学的活性剤(及び任意に基質分子の存在中)で活性化して使用してよく、電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から電子を運搬することができる。従って、当該試薬は、電極表面上で形成される電導性の二層に結合、挿入、又は付随する。本発明の好適な態様では、当該試薬は酵素又は酵素-複合体である。電導性の二層構造の層間の配置は、非特異的吸着及び電子を運搬することを可能にする試薬の静電気の相互作用を有意に減少させ、又は排除さえも成し、故により高いシグナル-対-ノイズ率、及びより高い検出限界をもたらす。
【0042】
引き続き、電気計測は検出電極で実施される。本発明に係る電気計測は、電流及び電圧を測定することを含む。その後、検出されるべき検体と結合できない捕捉分子を用いて得られた結果をコントロール測定と比較する。かかる"コントロール"捕捉分子の例は、標的核酸分子又は低分子量のリガンドの相補的配列を有す核酸プローブであり、検出されるべき受容体分子と相互作用できない。2つの電気計測、即ち"サンプル"及び"コントロール"計測が異なる場合、かかる方法では、決定される数値間の差異は、検出されるべき関連の検体を含むサンプル溶液の予め規定された閾値よりも大きい。
【0043】
また当該方法は、参照計測及び検体を検出するための計測が同時に実施される方法においてデザインされ得る。これは例えば、コントロール媒体のみによる参照計測、及び同時に検出されるべき検体を含むと想定されたサンプル溶液による計測を実行することによりなされ得る。
【0044】
更に本発明は、本明細書で開示したような検体分子の電気化学的検出を実行するために適した検出電極を含む電極配置に関し、以下:
(a)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子、及び検体分子の複合体を含む検出電極上に固定された第一相;及び
(b)電気化学的活性剤を含む第二層、ここでの前記電気化学的活性剤は静電気の正味電荷を有し、それは捕捉分子と検体分子間で形成される複合体の静電気の正味電荷に相補的であり、ここでの第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成する、
を含んで成る。
【0045】
本発明の一つの好適な電極配置において、検出電極上の電導性の二層の一部を形成している電気化学的活性剤は、検体と電極間で電子を運搬することができる重合体酸化還元メディエーターである。より好適な電極配置では、当該電気化学的活性剤が金属イオンを含み、及び特に好適な態様では、それらの金属イオンは銀、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、オスミウム、ルテニウム、およびそれらの混合物から成る群から選定される。
【0046】
本発明の一つの態様では、電極配置は重合体酸化還元メディエーターへ又は重合体酸化還元メディエーターから、電極から又は電極へ、それぞれ電子を運搬することができる試薬を更に含み、当該試薬は検出電極上の電導性二層に結合され、挿入され、又は付随する。本発明に係る好適な電極配置では、当該試薬は酵素又は酵素複合体である。
【0047】
本発明の検出電極及び対応の電極配置は、バイオセンサーとして使用され得る。かかるセンサーは、与えられたサンプル中の所定の検体の存在及び濃度を解析するために分析化学、生化学、薬理学、微生物学、食品技術又は薬等の多くの分野で必要とされる。例えば、バイオセンサーは糖尿病患者の血液もしくは尿サンプル中のグルコース、又は救命救急事象の間の乳酸塩をモニターするために使用され得る。しかしながらかかるバイオセンサーは飲料水、ミルク又は任意に他の食品中の不純物の検出及び提供のためにも使用され得る。その他の応用は、ゲノムプロジェクト(例えば 疾患の原因となる又は表示となる遺伝子又は単一ヌクレオチド多形(SNPs)といった遺伝子突然変異を検出)におけるかかるバイオサンサーの使用である。他方、かかるバイオセンサーはプロテオミクス(例えば、タンパク質間の相互作用の解析、及び特定の受容体分子のリガンドの同定)においても使用され得る。
【0048】
本発明は、検体分子の電気化学的検出のためのバイオセンサーにも関し、以下:
(a)検出電極;
(b)検出されるべき検体分子に結合することができる捕捉分子と検体分子間の複合体を含む検出電極上の第一層;及び
(c)電気化学的活性剤を含む第二層、前記電気化学的活性剤は静電気の正味電荷を有し、捕捉分子と検体分子間で形成される複合体の静電気の正味電荷に相補的であり、ここでの前記第二層と第一層は一緒になって電伝性の二層を形成する、
を含んで成る。
【0049】
本発明は新規のフェロセンを基礎とする酸化還元ポリマーに関し、それは本発明の検出方法及び任意の他の公知の電気化学的検出において、電気化学的活性剤として使用されるために非常に適切である。フェロセンを含有する単量体は一般的に多大な困難性を有するフリーラジカルポリマー化が行われるが、発明者等は、フェロセンを含む酸化還元ポリマーがアルコール性媒体を用いて、品よく且つ容易に調製することができる(例えばエタノールと水の混合物から、ラジカル開始剤としての過硫酸塩と一緒に調製される)ことを見出した。
【0050】
ポリマーを基礎とするこれらのフェロセン誘導体は、均質系における分散的電子移動として使用することができる。
【0051】
ポリマーに基づくこれらのフェロセン誘導体は、更に電極表面上で固定化されたメディエーターとして使用され、その後、酵素及び酸化還元ポリマーの側鎖中の交差連鎖できる官能基の間の交差連鎖を介して酵素又は抗原といったタンパク質分子へ結合することができる。
【0052】
酸化還元ポリマーを形成する最初の単量体として使用することができる適切な重合可能なフェロセン誘導体は、C-C二重もしくは三重結合、又はN-N二重結合もしくはS-S二重結合等の不飽和結合を有す側鎖単位を所有すべきである。かかる側鎖単位の例は、一般式R1-C=C-で表されるアルケニル基を含む。二重結合は任意の炭素原子に沿って位置することができる。芳香族基、例えばフェニル、トルオニル、及びナフチル基も、使用することができる。更に当該重合可能な基は、置換されたC-原子を含むこともできる。ここでのハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、酸素、又はヒドロキシ部分は、例えば基の中の炭素原子上において一つ以上の水素で置換される。更に実施例はアルキニル及びジスルフィド基を含む。
【0053】
本発明のポリマーのいくつかの態様では、当該重合可能なフェロセン誘導体はビニル-フェロセン、アセチレン-フェロセン、スチレン-フェロセン及びエチレンオキシド-フェロセンから成る群から選定される。
【0054】
これらの誘導体中の不飽和結合の存在は、フェロセン分子を共-ポリマー化を介して、ポリマー骨格へ少なくとも1つの不飽和C-C二重もしくは三重結合、又はN-N二重結合もしくはS-S二重結合を、フリーラジカルポリマー化を介して更に有する他の物質と共に結合させることを可能にする。
【0055】
重合可能なフェロセン誘導体により共-ポリマー化において使用される第二の単量体単位について、正味電荷を獲得することができる主な酸又は塩基を有する任意の適したアクリル酸誘導体を使用することができる。これは当該発明が正及び負に帯電したポリマーを提供し、そのために捕捉分子と検体分子との間で形成される複合体の正味電荷にかかわりなく上記のような電導性の二層を形成することができることを保証することを意味する。一般的に単量体として使用するために適したアクリル酸誘導体を選定するためには2つの要求がある。フェロセン誘導体との共ポリマー化のために、少なくとも1つの不飽和結合を有するべきであり、それらはC-C二重もしくは三重結合、又は N-N二重結合もしくはS-S二重結合によって提供され得る。
【0056】
次に、当該アクリル酸誘導体は、それぞれH+イオンを生産又はH+イオンを受容することによるBronsted-Lowryの酸又は塩基として機能することができる。Bronsted-Lowryの酸又は塩基の機能を提供することができる官能基の例は、H+イオンを受容して帯電したアミン基を形成できる第一級アミン基、又は酸機能をH+イオン放出と分離して考える場合H+イオンを提供することができるカルボキシル基、もしくは硫酸塩を含む。この点に関して、第一級アミン基の使用は本発明の適用において好適であるが、アクリル酸誘導体中に存在する第二級又は第三級アミン基も正に帯電した酸化還元ポリマーを生成するために使用することができることが当業者に明確であることも留意される。この点に関して、酸又は塩基の機能は、主要なものであるが、末端基である必要はないということも留意される。しかし分岐した側鎖の場合、より短い側鎖の一つの“内部”に存在することができる。
【0057】
一方、本発明のセンサーの酸化還元ポリマー中の第二の単量体として使用される好適な単量体である酸又は塩基官能基を有する任意の適したアクリル酸誘導体は、一般式(I):
【化2】
で表されるアクリル酸誘導体であり、
式中Rは、CnH2n-NH2、CnH2n-COOH、NH-CnH2n-PO3H、及びNH-CnH2n-SO3Hから成る群から選定され、ここでのアルキル鎖は任意に置換され、そしてここでのnは0から12、好適には0から8の整数である。従って、当該アルキル基は直鎖又は分岐してよく、そして二重もしくは三重結合、又は環構造、例えばシクロヘキシルを含むことができる。置換基Rの中での適した脂肪族部分の例をいくつか挙げるとメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル又はオクチルである。脂肪族基は更に、例えばフェニル等の芳香族基、ハロゲン原子、更なる塩基もしくは酸基、又は0-アルキル基によって置換され得る。置換基として存在できる例示的な芳香族基は、フェニル、トルオイル又はナフチルである。ハロゲン原子はフッ素、塩素、又は臭素から選定され得る。適したo-アルキル基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ又はブトキシであり、一方n-アルキル基は-NHMe、-N(Me)2、-N(エチル)2又は-N(プロピル)2から選定される。
【0058】
いくつかの態様では、本発明の酸化還元ポリマーは、約1000から5000ダルトン、又は好適には約2000から4000ダルトンの分子量を有する。
【0059】
本発明者等はポリマー化の程度に影響を与えるラジカルイニシエーターの量を見出した。高用量のラジカルイニシエーターは、有意にポリマー化効果を減少させて、低分子量の酸化還元ポリマーをもたらす。これは通常のフリーラジカルポリマー化反応と比較して、相対的に小さなラジカルイニシエーターがポリマー化工程において必要とされたことも意味する。使用されるフリーラジカルイニシエーターの量とは別に、本発明の工程に関連にして後述のより詳細な説明で検討されている反応物質を付加する順番は、更にポリマー化効果に影響を及ぼす。
【0060】
本発明の他の態様では、酸化還元ポリマーはフェロセン約2%から約20%、典型的に約3%から約14%を添加されたフェロセンを有する。本発明は、更にかかる水溶性酸化還元ポリマーを調製するための工程に関する。当該工程は、本質的に重合可能なフェロセン誘導体の最初の単量体単位をアクリル酸誘導体、例えば第一級、第二級、又は第三級アクリルアミド等を含む第二の単量体単位と共に、ポリマー化しコポリマーを産出することに関する。アクリル酸誘導体は、正味電荷を獲得することができる酸又は塩基官能基を有する。重要には当該ポリマー化反応は、イニシエーターが存在する水性アルコール性媒体中で実行される。
【0061】
単量体及びイニシエーターの付加順序は、変化させることができる。例えば、第一及び第二の単量体をアルコール性媒体中で混合することが可能であり、その後、イニシエーターを付加して反応を開始させる。更に最初に水性アルコール性媒体中に単量体の一つを溶解させて、その後、他の単量体を当該混合物に付加する前に、イニシエーターを付加することが可能である。
【0062】
アルコール性媒体は、任意の水混和性有機性アルコール、例えば、エタノール等の脂肪族アルコール、又はフェノール等の芳香族により調製することができる。容積測定率は、通常約5:1から1:1(アルコール/水)の範囲にある。いくつかの態様では、約3:1である。
【0063】
本発明の態様における工程は、エタノールと水を含む水性アルコール性溶媒を用いて実行される。
【0064】
ポリマー化はイニシエーターの付加なしで進めてもよいが、複数の単量体中の不飽和結合で見出される電子に富む中心を攻撃するイニシエーターを付加することが所望される。従って本発明の他の態様では、ポリマー化はフリーラジカルイニシエーターを付加することにより開始される。
【0065】
任意のフリーラジカルイニシエーターを使用することができる。実施例では無機塩、例えば、過硫酸塩等、又は有機化合物、例えばベンゾイルペルオキシドもしくは2,2'-アゾ-ビス-イソブチルニトリル(AIBN)を含み、それはイニシエーターフラグメントと呼ばれる、単量体単位中の不飽和結合を攻撃するフリーラジカルとして機能できる一つの対になっていない電子の、それぞれのラジカルフラグメントを産生することができる。
【0066】
本発明に係る工程のいくつかの態様では、フリーラジカルイニエーターは過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムから成る群から選定される。
【0067】
本発明のいくつかの態様では、付加されるフリーラジカルイニシエーターの重量率は、単量体の1グラム当たり、約20 mgから40 mgである。
【0068】
本発明に係る工程は、室温より高い還流下で実施することができるが、一般的に100℃未満である。一つの態様では、ポリマー化は約60℃から80℃の温度で、還流下で実施される。
【0069】
ポリマー化のために要求される時間の長さは、採用される温度、及び反応ブロスに付加されるイニシエーターの量に依存させることができる。典型的にポリマー化は、10から40時間、そして好適には約24時間の間で実施される。
【0070】
本発明工程の態様は、
アクリル酸誘導体単量体単位を水性アルコール性媒体に溶解し;その後、
フリーラジカルイニシエーターを付加し;そしてその後
重合可能なフェロセン誘導体単量体単位を当該混合物に付加すること、
を含む、前記第一及び第二の単量体をポリマー化する前に、前反応混合物を産生することを更に含む。
【0071】
上記態様の更なる態様では、アクリル酸誘導体の前反応混合物中の重合可能なフェロセン誘導体への供給率は、付加される単量体の重量の約5%から15%にあり、適切な分子量及び粘度を有する酸化還元ポリマーを得るために好適である。
【0072】
また更なる態様では、重合可能なフェロセン誘導体単量体単位は、反応混合物へ付加される前の水性アルコール性媒体中に溶かされる。
【実施例1】
【0073】
核酸の検出
一般的に本発明による核酸の検出は、図1に説明した通りに実施される。最初に捕捉分子 (20)として作用するチオール化オリゴヌクレオチドの混合物(ラベルとしてのビオチン修飾の運搬もする)及びバックグラウンドを減少させるために遮断剤(15)として作用するチオール分子を金の電極表面(10)上に固定する。その後、当該電極を所定の標的検体(30)を含むと想定される溶液へ曝す。引き続き、その相補的ビオチン化標的DNA(即ち、捕捉分子)への酵素-複合体(50)のハイブリダイゼーションは、アビジン-ビオチン相互作用を経由して付着される。最終的に、酸化還元ポリマー(40)は、層間の静電気の自己集合を通して、電極表面へもたらされる。当該酸化還元ポリマー層は電気化学的に標的DNAに結合した酵素ラベルを活性化する。基質分子(55)が存在する中で、基質の触媒酸化から発生した電流を電流滴定的に検出する。当該電流はサンプル溶液中での標的検体濃度と直接的に相互関係にある。
【0074】
実施例1.1:ラット組織からのmRNA抽出及びビオチン化cDNAの合成
ラット肝mRNAの抽出は、Dynabead(商標)mRNA DIRECT(商標)キット(Dynal ASA, Oslo, Norway)を用いて製造業者の指示に従って実施した。逆転写(RT)の間、1×eAMVのSigmaAldrich製の緩衝剤(50 mM Tris-HCI、pH8.3、40 mM KCI、8.0 mM MgCI2、1 mMDTT)、それぞれ500μMのdNTP、1.0μMのアンチセンスプライマー、20 U RNaseインヒビター及び20 U 増強させたトリ骨髄芽球症ウィルス逆転写酵素(eAMV)を含む、10 ngの当該mRNAを20μlの総容量で使用した。サンプルを50分、56℃で、DNAサーマルサイクラー(Gene AmpPCR System 9700, Applied Biosystems, Foster City, CA, 米.)中で培養し、そして得られたcDNAをPCR増幅のためのテンプレートとして直接使用した。
【0075】
PCRを1×AccuTaqのSigma-Aldrich製の緩衝剤(5 mM Tris-HCI、15 mMの硫酸アンモニウム、pH9.3、2.5mMのMgCI2、0.1%のTween 20)、それぞれ0.40μMのプライマー、2.5 U JumpStart AccuTaq LA DNAポリメラーゼ及び10mMのdNTP(Roche,Basel, スイス)を含む50μlの総容量中で2.0μ1のRT-反応混合物により実施した。2つの異なる遺伝子は、ハウスキーピング遺伝子、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)、及び規制した腫瘍タンパク質遺伝子53(TP53)を検体として選定した。
【0076】
以下のプライマーを使用した:GAPDHセンス、5'-ATGGTGAAGGTCGGTGTCAA-3'(SEQ ID NO:1);GAPDHアンチセンス、5'-TTACTCCTTGGAGGCCATGT-3'(SEQ ID NO:2);TP53センス、5'-ATGGAGGATTCACAGTCGGA-3'(SEQ ID NO:3)、及びTP53アンチセンス、5'-TCAGTCTGAGTCAGGCCC-3'(SEQ ID NO: 4)。
【0077】
ビオチン化cDNAの合成のために、多様な量のビオチン-16-dUTP(Roche,独)又はビオチン-21-dUTP(Clontech, Palo Alto,米)を当該反応に付加した。増幅は以下のプロファイルを用いて実施した:95℃で5分の最初の変性ステップの後、95℃で30秒、55.5℃で1分、そして72℃で2分の増幅の35サイクルを実施した。最後の10分、72℃での伸長ステップは全長DNAらせん構造の合成を確実にすることを含む。増幅後、PCR産物を1.0%のアガロースゲル上で分離し、そしてエチジウムブロマイドによる染色によって視覚化される(図2)。
【0078】
図2中の1と4のレーンは、ビオチン-dUTPの付加なしでのコントロール実験を説明する。増幅したPCR-フラグメントは、それぞれ全長ラットTP53(レーン1,1176 bp)及びGAPDH(レーン4,1002 bp)遺伝子のサイズとよく一致している。ラベリングに関して多様な量のビオチンで修飾したヌクレオチドをdNTPsと共に混合し、そしてラベリング効率を検査するためにPCR反応混合物に付加した(TP53のためのレーン2と3及び GAPDHのためのレーン5と6をそれぞれ参照)。ビオチン-16-dUTP(又はビオチン-21-dUTP)/dTTPのより高い比率は、より強いフラグメントをゲル中で遅くさせる。しかしながら、ビオチン修飾ヌクレオチドの正常ヌクレオチドに対する比率が増加すると共に増幅効率は、ビオチン修飾ヌクレオチドの大きな側鎖のために、推定上減少する。
【0079】
実施例1.2:捕捉プローブの固定化及び単層品質の評価
DNA検体の検出に先立ち、捕捉プローブとして働くチオール化したオリゴヌクレオチドの混合物、及びチオール分子を金の電極表面上に自己集合を介して固定化した。標的DNAの取り込みに関する非-ハイブリダイゼーションを最小化するために、陰イオン性チオール分子を用いて、混合した単層の遮断成分を形成する。以下の捕捉プローブを使用した:GAPHの検出のための、5'-T12TTACTCCTTGGA GGCCATGTAGG-3'(SEQ ID NO:5);及び5'-T12ATGGTGAAGGTCGGTGTCAACGG-3'(SEQ ID NO:6);TP53の検出のための、5'-T12ATGGAGGATTCACAGTCGGA-3'(SEQ ID NO:7)及び5'-T12TCAGTCTGAGTCAGGCCCCA-3'(SEQ ID NO:8);及びコントロールとして、5'-T12CCTCTCGCGAGTCAACAGAAACG-3'(SEQID NO:9)。オリゴヌクレオチドを、標準方法による11-メルカプトウンデカン酸を用いてそれらの5'-末端でチオール化し、そして 金の電極上に50μMのオリゴヌクレオチド溶液中にクリ−ン電極を3-16時間曝すことを介して集合させた。その後、残存している表面を11-メルカプトウンデカン酸(MUA)で遮断した。
【0080】
金の電極上で混合され自己集合した単層の形成は、光学的な偏光解析により定期的に接触角と表面被覆率測定をモニターされた。得られた全てのデータは、金の電極上に覆われた単一の成形体混合分子を示す。予想される通り、溶液中の電極を覆った単層と電気活性物質の間の電子伝達の明白な経路は、絶縁単層を介した電子トンネルを経由するであろう。当該電子トンネルバリアは、2.5 mMのヘキサシアノ鉄酸塩(ヘキサシアノ鉄酸塩)を含む0.50 MのNa2SO4溶液中でサイクリックボルタンメトリーによって調査された捕捉プローブ単層と混合された単層の特徴を示す(図3)。図3aで示す通り、裸の金の電極で得られる可逆的工程の数値の59 mVと比較して、Fe(CN)63-/4-の100mVs-1で>400mVの非常に大きなピーク間の電位差を有する、不可逆のボルタンメトリー波が混合された単層で覆われた金の電極で観察され、それは当該単層が電極と溶液の間での電子移動を妨げることを示した。単層を介する電子トンネルにより主に惹起される酸化還元電流は、有意に減少され、そしてその可逆的特質を失う。Os(4,4'-ジメチル-2,2'-ビピリジン)2CI+/2+(PVP-PAA- Os)と共に部分的にピリジン錯化されるポリ(ビニルピリジン-コ-アクリルアミド)コポリマーを酸化還元ポリマーとして使用した(Gao,Z.等.(2003) Angew.Chem. Int Ed.41,810-813)。しかしながら、酸化還元ポリマーは正に帯電し、且つ電極は負に帯電しているので、5.0 mg/mlのPVP-PAA-Os溶液中で短く(brief)浸されている電極は、静電気的に自己集合している層間を経由して電極上でDNA/酸化還元ポリマー二層の形成をもたらす。図3bで説明されるように、電極を覆った二層は、水とPBSで徹底的に洗浄した後、且つ-0.4 Vから+0.8 Vの多くの反復的な電位サイクルの後、殆ど電荷を有しない酸化還元対を固定した高度に可逆性の表面を正確に予測するように示され、金の電極上に静電気性の二層を固定した高度に安定な表面を曝した。かかる結果は全てのオスミウムの酸化還元中心が電極表面に達することを可能にし、そして可逆的異種電子運搬へ進むことを確実にする。陰イオン性物質(核酸及び酵素ラベル)の量及び電極に結合した核酸の量に依存している、オスミウム酸化還元中心に結合した総量である、1.8-8.0×10-10mole/cm2は、酸化ピーク又は還元電流ピークの領域から見積もった。その後、ヘキサシアノ鉄酸塩溶液におけるボルタンメトリー試験は、棒状にした金の電極(図3c)で得られたものと同一の結果を示した。これらの変化は二層形成のために電子トンネル中で減少することに帰着する。フィルム中の陰イオン性物質の存在は、電気化学的な酸化還元ポリマーを感知できるほどに変化させなかった。
【0081】
実施例1.3:GAPDHcDNAハイブリダイゼーション及び検出
予備的なハイブリダイゼーション試験では、PCR増幅混合物を更なる精製なしで、検体として使用した。ビオチン化GAPDHcDNA(実施例1.1参照)を標的として、そしてハイブリダイゼーション緩衝剤として0.10 M NaCIを含むTE(10 mM Tris-HCI、1.0 mM EDTA)を使用した。ハイブリダイゼーション前に、標的cDNAを95℃で、5分間変性させ、そして氷上で冷却した。ハイブリダイゼーションは55℃で、30分間水槽で実施し、ここでのGAPDH cDNAは相補的な捕捉プローブにより選択的結合し、それにより電極表面上に固定した。反復したハイブリダイゼーション緩衝剤による洗浄工程では、全ての非特異的核酸を除去した。その後、当該電極を2.5 RIグルコースオキシダーゼ/アビジンD-複合体(GOx-A、5mg/ml;Vector Laboratories, San Diego, CA, USA)へ35℃で30分間曝した。PBS緩衝剤による3回の洗浄工程の後、過剰な酵素ラベルを除去して、電極を少なくとも10分間、2.5μIのPVP-PM-Os酸化還元ポリマー溶液へ曝し、そしてPBS緩衝剤ですすいだ。
【0082】
電気化学的測定は、低ノイズのPentium(登録商標)コンピューターとの結合にあるCH Instruments Model 660A 電気化学的ワークステーションを有するファラデーゲージ中で実施した(CH Instruments, Austin, TX, 米)。サイクリックボルタンメトリーはPBS緩衝剤及び20 mMのグルコースを含むPBS緩衝剤の両方において実施した。Ag/AgCI 電極 (Cypress Systems, Lawrence, KS,米)を参照電極として、そしてプラチナワイヤーを対極として使用した。電流測定は0.36Vで実施した。本明細書において報告した全ての電位は、Ag/AgCIの参照電極について言及した。
【0083】
標的検体とハイブリダイズした電極の典型的なサイクリックボルタンメトリーを図4に示した。図4Aは、ハイブリダイゼーション後のPBS緩衝剤(曲線a)及び20 mMのグルコース溶液(曲線b)におけるGAPDH cDNAに相補的な捕捉プローブを有する電極のボルタモグラム(voltamogram)である。明白な触媒電流は、二層中のグルコースオキシダーゼの存在のためにグルコースの存在中で観察した。対照的に非-相補性プローブは任意のGAPDH cDNAをPCR混合物から捕捉できず、そのために酵素ラベルを電極表面に結合させることを可能にせず、触媒電流を何も検出しない結果をもたらした(図4B、それぞれa及びbの曲線)。
【0084】
電極を集合的にPBS緩衝剤中に浸した時、電流測定における酸化電流は、40mMのグルコースを緩衝剤へ付加すると、0.36V(対.Ag/AgCI)で10.2nA増加した(図5)。非-相補的捕捉プローブを用いるコントロール実験では、電流のごくわずかな変化が観察された。当該電流測定は、サイクリックボルタンメトリーを補足したデータを生じ、そしてGAPDH cDNAが高度な特異性を有するPCR混合物からうまく検出されたことを再度確認した。最適化された実験条件下で、ダイナミックレンジは、0.50 fMの検出限界により、2.0 fMから1.0 pMの間であることが見出された。
【0085】
実施例1.4:ラットTP53 cDNAの検出
ビオチン化ラットTP53cDNAを実施例1で発表したように合成した。PCR増幅後、TP53cDNAの総量は17.2ng/μl(22.5pM)であると決定された。10、50、100、200、500及び800 fMのTP53cDNA(TE緩衝剤中で希釈した)を含むサンプルを解析した。PCR混合物中のTP53特異的cDNAを酵素ラベル及び酸化還元ポリマーをそれぞれ付加する前にその相補的捕捉プローブにより、電極の表面に固定した(実施例1.3参照)。TP53cDNAの量と直接一致する触媒電流は0.36 Vで、検出された。図6に描かれるように、当該電流はこの範囲内のTP53cDNAの濃度で線形的に増加した。検出限界は約1.0 fMで見出された。サンプル容積を考慮に入れると、TP53 DNA分子のわずか1500個のコピーが当該提案されたアプローチを用いて成功裏に検出された。我々の認識では、これは今まで報告されたゲノムDNAの電気化学的に検出される最も少ない量である。
【0086】
実施例1.5:核酸混合物中での核酸の検出
核酸バイオセンサーは混合物中のE.coli 16S rRNA及びGAPDHcDNAの検出に応用した。当該混合物は:0.5-1500 fMのE.coli 16S rRNA、100-5000 fMのE.coli 23S rRNA、0.2-2000 fMの全長ラットGAPDHcDNA、1-500 mM BSA、及び1-100 mMの サケの精子のDNAを含んだ。GAPDH cDNAは、実施例1.1で発表したように、ラット肝mRNAを単離しそして引き続きPCR増幅により調製した。得られたGAPDH cDNAの総量は5.0±0.5μgであった。以後、PCR産物はpH 8.0のTris-EDTA緩衝剤で106倍(factor)に希釈した。
【0087】
以下のプローブを使用した:E.coli 16S rRNA-特異的捕捉プローブ:5'-GCCAGCGTTCAATCTGAGCCATGATCAAACTCTTCAAAAAAAAAAAAAA-3'(SEQ ID NO:10);Ecoli 16S rRNA-特異的検出プローブ:5'-AAAAAAAAAAAAAAGCTGCCTCCCGTAGGAGT-3'(SEQ ID NO: 11)。金の電極上での捕捉プローブの固定化は、実施例1.2.で発表した通りに実行した。
【0088】
直接的ハイブリダイゼーション及び電気化学的検出をE.coli RNAサンプル(実施例1.3及び1.4を参照)で実行した。グルコースオキシダーゼ及び酸化還元ポリマーを導入した後、触媒電流を0.35 Vで検出し、それは核酸の量と直接一致した。コントロールとして、非-相補性捕捉プローブを電極表面上に固定した。電流測定応答では290 fMのE.coli S16 rRNA及び150 fMのGAPDH cDNAの濃度と一致して、E.coli 16S rRNA に関して2.95 nA、及びGAPDH cDNAに関して1.65 nAであることがそれぞれ見出された(図7)。これらの結果は、ゲル電気泳動分析により得られた数値と十分に一致する(310 fMのEcoli S16 rRNA及び160 fMのGAPDH cDNA;データは示されていない)。
【0089】
実施例1.6:検出系の選択性
バイオセンサーの選択性は上記捕捉プローブ:5'-GCCAGCGTTCAATCTGAGCCATGATCAAACTC TTCAAAAAAAAAAAAAAAA-3'(SEQID NO:10)及び以下の合成オリゴヌクレオチド:相補性5'-AAATTGAAGAGTTTGATCATGGCTCAGATTGAACGCTGGCAAAAAAAAAAAAAACTCCTACGGGAGGCAGC-3'(SEQ ID NO: 12);単一塩基非適合5'-AAATTGAAGAGTTTGATCATGTCTCAGATTGAACGCTGGCAAAAAAAAAA AAAACTCCTACGGGAGGCAGC-3'(SEQ ID NO:13);2塩基不適合5'-AAATTGAAGAGTATGATCATGTC TCAGATTGAACGCTGGCAAAAAAAAAAAAAACTCCTACGGGAGGCAGC-3'(SEQ ID NO:14)(ヌクレオチド変異は下線で示される)を用いて評価した。捕捉プローブは、実施例1.2.で発表した通り、金の電極上に固定された。
【0090】
ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件下で、好適には完全に配列が適合した、3つの異なるDNAオリゴヌクレオチドの200 fMの溶液を用いた1μlの液滴中で実施した(53℃のハイブリダイゼーション温度を使用すること以外は、それぞれ実施例1.3及び1.4を参照)。得られた電流測定応答は図8に要約した。60 mMのグルコースを完全に配列が適合した検出媒体に付加する電流増大は、4.3±0.4 nA(曲線a)であり、一方1.0±0.3 nA及び0.3±0.1 nAは、一塩基不適合(曲線b)及び二塩基不適合配列(曲線c)にそれぞれ検出された。従ってバイオセンサーは完全に適合したDNAオリゴヌクレオチドと不適合なDNAオリゴヌクレオチドを容易に区別することができる。
【実施例2】
【0091】
小さい(低分子量)酵素基質の検出
検体濃度からの酸化電流の依存性を評価するために、GAPDH cDNA捕捉プローブの飽和量を金の電極の表面上で固定化し、そして10μMのビオチン化相補性GAPDH cDNAと接触させた。ハイブリダイゼーションにより、グルコースオキシダーゼ/アビジン-複合体をアビジン-ビオチン相互作用を介して付着させた。最終的に酸化還元ポリマーは層間の静電気的自己集合を通して、電極表面にもたらされた。PBS(pH7.4)は0.35 Vの処理電位で検出媒体として使用された。図9で説明するように、約20 mMまでのグルコールは、得られた酸化電流と検出された検体の量の間で線形性の関係にある。
【0092】
この点に関して留意すべきは、本実施例における二層の設置は実施例1と正確に同じである。しかしながら、実施例1のように核酸の検出が意図される場合、酵素を'飽和'させるために非常に高いグルコース濃度が本発明の方法において使用され得る。或いは言い換えれば、十分な感度を有するように、非常に高度なグルコース酸化率を使用してよい。核酸の検出を意図する代わりに、酸化還元酵素の酵素基質の検出が所望される場合、これは非常に高い核酸濃度により処理し、相補性核酸とグルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素により捕捉プローブを飽和することにより達成することができた。電流は溶液中のグルコースの酸化(又は一般的に酵素基質の酸化)によるからであり、電流濃度の関連性は、一般的にグルコース又は酸化可能な酵素基質の検出のために使用することができることにある。更に実施例2では、グルコースオキシダーゼ分子は捕捉分子として作用し、そして同時にそれぞれ電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ電子を運搬することができる試薬として作用することを留意するべきである。従って実施例2は本発明の検出方法を説明し、ここでの捕捉分子はそれぞれ電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ電子を運搬することができる。
【実施例3】
【0093】
ポリペプチドの検出
タンパク質の検出(核酸について類推、実施例1参照)は図1a及び図1b中の概説のとおりに実施する。この場合、電極をチオール分子(例えば16-メルカプトヘキサデカン酸)で最初に覆ってよく、この場合、捕捉分子の共有結合のためのリンカー分子を供給する。捕捉分子のアミノ基と後に共有結合を形成するだろうリンカーのカルボン酸基を活性化するために、その後、被覆した電極を1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド/N-ヒドロキシ-スクシンイミド(EDC/NHS)の混合物の中に浸す。例えば、捕捉分子は、タンパク質性検体に結合親和性を有する抗体又は低分子量のリガンドであり得る。その後、当該電極を捕捉分子と検体分子の間に複合体を形成することを可能にする検体を含む疑いのある溶液と接触させる。その後、酵素ラベルが結合した酸化還元ポリマーを、層間の静電気性自己集合(図1aを参照)を通して電極表面にもたらす。基質分子の存在中で、基質の触媒酸化から発生した電流を電流測定的に検出する。電流はサンプル溶液中で標的検体濃度に直接相互関係する。図1b中に示す通り、サンドウィッチELISAと似た方法で検出を実施することもできる。この目的のために、捕捉分子としての抗体、及び検体を含む複合体を検体に結合親和性を有する第二の抗体と同様に接触させる。この第二の抗体は例えばグルコースオキシダーゼ等の酵素と接合してよく、それぞれ電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ電子を運搬することができる試薬として働く。その後、酵素ラベルを結合した酸化還元ポリマーは、電極表面と接触させられて、それにより、層間の静電気性の自己集合(図1a参照)を形成し、そしてポリペプチドの検出を可能にする。
【実施例4】
【0094】
低分子量リガンドの検出
"サンドウィッチ-ELISA様"手順を用いることは実施例3で説明され、ここでの抗体は捕捉分子として使用され、そして検体を有する本捕捉抗体の複合体は適切な酵素と接合した第二の抗体と接触し、薬物(例えばコカイン、モルヒネ等)、栄養物(サッカロース、アミノ酸等)、環境有害物質(例えばトリアジン、DDT等の殺虫剤)等の事実上任意の小さなリガンドが本発明によって検出され得ることは明白である。
【0095】
実施例5.1:ポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリルアミド)、ポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリル酸)、及びポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリルアミドスルホン酸)コポリマーの合成
グルコースオキシダーゼ(GOx、黒色アスペルギルス由来EC1.1.3.4、191 ユニット/mg)はFluka(CH-9470 Buchs,スイス)から購入した。フェロセン(Fc)、ビニルフェロセン(VFc)、アクリルアミド(AA)、アクリル酸(AC)、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸("アクリルアミド-スルホン酸"、AAS、カタログ番号28,273)及び過硫酸塩をSigmaAldrich(St. Luis, MO,米)から購入した。アセトン、エタノール、及びリン酸塩緩衝生理食塩水等の使用される他の全ての化学物質は、認定された分析的グレードであった。使用した全ての溶液は脱イオン化水で調製された。
【0096】
実験中で生産したUVスペクトルのポリマーをAgilent 8453 UV-可視分光光度計上で実行し、そして記録した。分子量は、水及び較正のための標準化したポリ(エチレンオキシド)及びポリ(エチレングリコール)中で、Toyo Soda高速ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定された。
【0097】
i)ポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリルアミド)ポリマーの合成
10mlのエタノール/水(3対1)の混合溶媒中に溶解した1.0 gのアクリルアミドを含む3つのサンプルを調製した。0.10g/mlの酸素-不存在過硫酸塩溶液の0.30mlのアリコートを10分間、脱酸素した後にそれぞれのサンプルに付加した。0.05 gから0.16 g の範囲にある3つの量のビニルフェロセンを脱気したエタノール中に溶解し、3つのビニルフェロセン溶液サンプルを形成した。それぞれアクリルアミド、対、ビニルフェロセンの供給比率(w/w)が、95:5、90:10及び85:15となるように算出されたフェロセンの量がそれぞれのサンプルに付加される。それぞれのビニルフェロセンサンプルをアクリルアミド-イニシエーター混合物へ付加した。反応混合物を70℃で24時間、窒素環境中で還流した。冷却後、当該反応混合物を、酸化還元ポリマーを沈殿させるために迅速に攪拌したアセトンへ別々に滴下付加した。沈殿した酸化還元ポリマーをアセトンで洗浄し、そして水への溶解、アセトンでの沈殿の複合サイクルにより精製した。その後、当該精製産物を50℃、真空下で乾燥させた。
【0098】
ii)ポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリル酸)ポリマーの合成
10 mlのエタノール/水(3:1)の混合溶媒に溶解した1.0 g アクリル酸を含む3つのサンプルを調製した。0.10g/mlの酸素不存在過硫酸塩溶液の0.30 mlアリコートを10分間脱酸素した後、それぞれのサンプルに付加した。0.05 gから0.16 gの範囲にある3つの量のビニルフェロセンを脱気したエタノール中に溶解させて、3つのビニルフェロセン溶液サンプルを形成した。それぞれアクリルアミド、対、ビニルフェロセンの供給比率(w/w)が、95:5、90:10及び85:15となるように算出されたビニルフェロセンの量がそれぞれのサンプルに付加される。その後、それぞれのビニルフェロセンサンプルをアクリルアミド-イニシエーター混合物へ付加した。反応混合物を70℃で24時間、窒素環境中で還流した。冷却後、当該反応混合物を、酸化還元ポリマーを沈殿させるために迅速に攪拌したアセトンへ別々に滴下付加した。沈殿した酸化還元ポリマーをアセトンで洗浄し、そして水への溶解、アセトンでの沈殿の複合的なサイクルにより精製した。その後、当該精製産物を真空下、50℃で乾燥させた。
【0099】
iii)ポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリルアミド-スルホン酸)ポリマーの調製
10 mlのエタノール/水(3:1)の混合溶媒に溶解した1.0 g アクリル酸を含む3つのサンプルを調製した。0.10g/mlの酸素不存在過硫酸塩溶液の0.30 mlアリコートを10分間脱酸素した後、それぞれのサンプルに付加した。0.05 gから0.16 gの範囲にある3つの量のビニルフェロセンを脱気したエタノール中に溶解させて、3つのビニルフェロセン溶液サンプルを形成した。それぞれアクリルアミド、対、ビニルフェロセンの供給比率(w/w)が、95:5、90:10及び85:15となるように算出されたビニルフェロセンの量がそれぞれのサンプルに付加される。その後、それぞれのビニルフェロセンサンプルをアクリルアミド-イニシエーター混合物へ付加した。反応混合物を70℃で24時間、窒素環境中で還流した。冷却後、当該反応混合物を、酸化還元ポリマーを沈殿させるために迅速に攪拌したアセトンへ別々に滴下付加した。沈殿した酸化還元ポリマーをアセトンで洗浄し、そして水への溶解、アセトンでの沈殿の複合的なサイクルにより精製した。その後、当該精製産物を真空下、50℃で乾燥させた。
【0100】
ビニルフェロセンのアクリルアミド及びその誘導体とのコ-ポリマー化は、慣用のラジカルポリマー化反応に基づき実施された。一般的な反応方程式は図12に描かれている。
【0101】
しかしながら、首尾よくコ-ポリマー化するために、当該単量体は多大な注意が払われて、系におけるビニルフェロセンの効果を終結させる。ビニルフェロセンは、通常、コポリマー化系においてラジカルスカベンジャーとして作用する。ラジカルイニシエーターの量は、正常のポリマー化の系において必要とされる量より実質的に少ないことが見出された。より高量のラジカルイニシエーターの量は、ポリマー化効率及び製品の分子量を有意に減少させる。その上、追加の手順(sequence)はポリマー化効率にも影響を及ぼす。
【0102】
20%未満のポリマー化は、ビニルフェロセンとアクリルアミドの溶液に過硫酸塩ラジカルイニシエーターを付加した時に観察された。これはおそらくポリマー化速度の遅延をもたらすフェロセニウムの反応混合物中での形成、及びより早いポリマー鎖成長過程の終結のためである。表1で示す通り、最適条件下において相対的に高い収率が得られた。
【0103】
表1.ビニルフェロセンとアクリルアミド及びその誘導体のコポリマー化
【表1】
【0104】
しかしながら、ポリマー収率は、ビニルフェロセン供給率の増加に伴い減少した。それはポリマー化過程で既に多大な注意が払われたにもかかわらず、ラジカルポリマー化における終結効果が尚存在していることを示す。一度青色になった反応混合物をわずかな収率で得られたことも見出した。それはポリマー化溶液中でのかなりの量のフェロセニウムの形成によるものであった。単量体供給において、通常フェロセン含有量未満であるフェロセン負荷は、3から14%で変動する。
【0105】
酸化還元ポリマー中のフェロセン負荷は、元素分析から決定される。エネルギー分散型X-線回折(EDX)を本目的のために使用した。酸化還元サンプル上で使用された電子線の生産されたエネルギーは120 keVである。サンプルにより発生したX-線は、リチウム泳動シリコン検出器による分析にかけた。
【0106】
酸化還元ポリマーの分子量はゲル浸透クロマトグラフィーによって決定した。一般的により高いフェロセン供給率により調製される酸化還元ポリマーは、より低い分子量及びより幅広い分子量分布を有した。
【0107】
合成したコポリマーは、淡い黄色、粉状材料であった。コポリマーの分子量は2000から4000ダルトンの間である。FT-IR実験(図13参照)は、アクリルアミド及びビニルフェロセンが共に成功裏にポリマー化され、そして得られた酸化還元ポリマーは高純度であり、単量体が存在しないことを示唆する1650でのビニル吸収の完全な消失を明確に示した。更なるエビデンスは1000-1300cm-1領域で見出すことができる。1126 cm-1での不十分な1つに付随する非常に強い吸収は、酸化還元ポリマー中のフェロセン単位の存在を示し、そして1218 cm-1での強力な吸収は、ポリマー中のアミド基を示唆した。UV実験は、再度ビニルフェロセンとアクリルアミドの成功裏のコポリマー化を確認した。300 nmでのわずかなショルダーは、コ-ポリマー中でのフェロセン部分を明確に表示するものである(図13を参照)。酸化還元ポリマー中にフェロセン及びアミン又はカルボン酸部分を有することは:電子を介する酸化還元活性及びタンパク質と交差連鎖するための化学活性、の二重の機能にさせられた。
【0108】
ビニルフェロセンの供給比率を増加させることは、酸化還元ポリマー中のフェロセン部分の比率を増加させることを意図した。しかしながら、ビニルフェロセンの量を変化させることは当該ポリマーの収率にも影響を与える。得られた最も高い収率は、ビニルフェロセンが最も低い比率で提供された時であった。それはラジカルポリマー化におけるフェロセン化合物の異常な挙動と十分に一致する。表1に示す通り、ポリマー中のフェロセン部分の含有量は、ビニルフェロセンを増加させることにより増加したが、供給率は明らかに全く線形性でない。バイオセンシングの目的のために、10%のアビニルフェロセンの供給率は十分であり、良好な仲介機能と良好な経済性を与えることを見出した。ポリマー化において使用されるイニシエーターの量は、酸化還元ポリマーの組成物及び収率にも影響を与える。良好な酸化還元ポリマーは、単量体のグラム当り、イニシエーターが20-40 mgの範囲内にある時に得られることが見出された。
【0109】
実施例5.2:酸化還元ポリマーのサイクリックボルタモグラムの獲得
0.0μg、及び10μgのGOx、及び10μgのGOx及び10 mMのグルコースが存在する中でのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中の酸化還元ポリマー。
【0110】
電気化学的試験を汎用電気化学的システム(GPES)マネージャーバージョン4.9の下で処理するAutoLabpotentiostat/galvanostatで実施した。A 3-電極システムセルをファラデーケージ中に格納した。電極は(Ag/AgCI)参照電極、プラチナワイヤー対極、及びAu作用電極(7.94mm2の表面積)であった。
【0111】
ビニルフェロセンと対照的に、合成した酸化還元ポリマーは、水に高い溶解性を有するが、殆どの有機溶媒には不溶性である。この特質は、殆どの酵素が水性媒体中で作用するのみであるから、酸化還元ポリマーをバイオセンシングにおける、特に酵素と連鎖したバイオセンシングにおけるメディエーターとして使用するための理想的なものにする。
【0112】
図15は酸化還元ポリマーのみを含むPBS中の典型的なサイクリックボルタモグラムを示す。ボルタモグラムは、高い可逆性溶液電気化学を示し:酸化還元波は〜0.18V(対.Ag/AgCI)で集中し、ボルタモグラムは拡散律速型を有し、陽極及び陰極ピーク電流の規模は同一であり、ピーク間の電位間隔(potential separation)は60 mVであり、25℃で59 mVである理論値に非常に接近する。これらの酸化還元波を酸化還元ポリマー中でのフェロセン部分の酸化及び還元に割り当てることができ、それは優れたポリマーの酸化還元活性を示す。当該電解電量計(ボルタンメトリー)実験では、ビニルフェロセンが、アクリルアミド及びその誘導体と成功裏にコ-ポリマー化され、そしてポリマー中のフェロセン部分がそれらの電気活性を保持することが再度実証された。PBS中の酸化還元ポリマーは実在溶液形態中で自由な拡散挙動を有すものである。多様な量のグルコースを有する本溶液をスパイクすることは、ボルタモグラムを全く変化させなかった。それは酸化還元ポリマー単独によるグルコースの触媒酸化が存在しないことを示唆する。更に、明確な変化は、酸化還元ポリマー溶液に少量のGOxを付加している時に観察されなかった。得られた溶液の電気化学は、酸化還元ポリマー単独溶液と事実上同じであった。しかしながら、10 mMのグルコースを当該溶液に付加した時、グルコースのGOxによる酵素的酸化は、溶液中で進行する。GOx中の酸化還元中心は、FADをFADH2へ変換させた。電極電位を酸化還元ポリマーの酸化還元電位を通して走査した場合、酸化還元ポリマー中のフェロセン部分の有意な量が電極表面付近でフェロセニウムへ酸化された。GOx 中のFAD/FADH2の酸化還元電位は-0.36V(対、Ag/AgCI)であり、それはフェロセン/フェロセニウム対よりもかなり低く、FADへ戻るように酸化されるFADH2の近傍にあるフェロセニウム部分、及び酸化還元ポリマー中のフェロセニウム部分はもとのフェロセン部分へ還元される。図10で説明されるような触媒サイクルを形成するこれらの2つの反応、又は言い換えればGOxによるグルコース酸化は、酸化還元ポリマーにより仲介される。
【0113】
従って、酸化還元ポリマーによる触媒反応は、図13(薄灰色のトレース)中で見られるようにグルコースを含む溶液中のグルコース酸化電流を大きく増大させる。電子変換、特にFADH2、酸化還元ポリマー及び電極が全て非常に迅速である場合、大量のフェロセニウム部分は電気化学的酸化の間に産生され、そしてそれらは順番にFADH2により迅速に消費される。これはグルコース不存在溶液中で得られたものと比較して、フェロセニウム部分の電流をより低く減少させる理由となる。これらのデータは酸化還元ポリマーは、酸化還元メディエーターとして、酵素の酸化還元中心から電極へ電子をシャトリングして酵素反応中で有効に機能することを示唆する。
【0114】
実施例5.3:グルコースオキシダーゼ-ウシ血清アルブミン(GOx-BSA)とのビニルフェロセン-コ-アクリルアミド交差-連鎖を含む膜の合成
酸化還元ポリマーのタンパク質との交差-連鎖反応を実施し、得られた反応膜の電気化学的特質を研究した。酵素GOxを本実施例中で使用した。グルタルアルデヒド及びポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEG)を交差-リンカーとして選定した。生物学的等級のグルタルアルデヒド(水中で50%、製品コード00867-1 EA)及びポリ(エチレングリコール)ジグリシジル(PEGDE)(製品コード03800)をSigma-Aldrichから得た。
【0115】
最初に実施例5.1から得たポリ(ビニルフェロセン-コ-アクリルアミド)を金の電極上に沈着させた。GOx-BSAはクロスリンカーで修飾して、末端のアルデヒド基を有する脂肪族炭素鎖を有するGOx-BSAを提供し、それは固定したメディエーター上に適切な官能基を有するクロスリンケージを提供することができる。引き続き、修飾したGOx-BSAを沈着させ、そして固定したイニシエーターと反応させた。修飾したGOx-BSA上のアルデヒド基はPAA-VFcのアミン基と反応し、共有結合性交差リンケージを形成した。反応を実施した後、PAA-VFc-GOx-BSAフィルムを乾燥させた。
【0116】
金の電極上で交差-連鎖したPAA-VFc-GOx-BSAフィルムを電解電量分析にかけた。ブランクPBSを使用して、電位走査速度50 mV/sを適用した。図16は、ブランクPBS中の金の電極上でGOx及びBSAとPEG交差連鎖したPAA-VFcのサイクリックボルタモグラム(voltamogram)を示す。図16で説明した通り、水とPBSで徹底的に洗浄した後、殆ど変化を有さず、そして-0.2 Vから+0.8Vの間の多くの反復的な電位サイクルの後、金の電極上で固定化されたフェロセンフィルムの高い安定性の表面を曝している、酸化還元対(A. J. Bard, L. R. Faulkner、Electrochemical Methods, John Wiley & Sons: New York, 2001.)を固定化した高い可逆性の表面が期待されるような交差連鎖フィルムを、正確に示した。遅い走査速度<100 mV/sでは、顕著に対称的なシグナルが理想的な挙動を示す一つの電子の酸化還元系を閉じ込めた表面を予測するように記録された。ピーク電流は、拡散挙動の場合に溶液中で観察されるように電位走査速度に比例しており、ピーク間の電位差は59 mVよりもかなり少なく(図15参照)、そしてピークの高さの半分の電流幅は、約90 mVである。かかる結果は、全てのフェロセンの酸化還元中心が電極表面に到達することを可能にし、そして可逆性の異種の電子運搬を進行させることを確実にする。10 mMのグルコースのPBS溶液への付加では、典型的な触媒電気化学的曲線が得られた。しかしながら、酸化還元ポリマーの還元ピークは消失した(図16、灰色のトレース)。これはセンシング層が、還元GOxからフェロセン部分への電子の運搬によって還元状態中で均質に維持されることを意味した。迅速な応答及び検出された電流は、バイオセンサーの高い電流感度(750nA/mMグルコース)の酸化還元ポリマーの優れた仲介機能を示した。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1A】図1は、本発明に係る検出方法を図式で描く。最初に、図1aに示す通り、検出されるべき検体と結合が可能な捕捉分子20を検出電極10の表面に固定した。任意に、電極表面上の未結合の部分を埋めるために遮断剤15を捕捉分子とは別個に又は捕捉分子と一緒に付加してよく、それによりバックグラウンドシグナルを減少させた。その後、当該検出電極を標的検体30を含むと想定される溶液へ曝す。検体分子を捕捉分子と結合させ、検出電極の表面上に第一層を形成する。引き続き、電気化学的活性剤40及び試薬50(それぞれ電気化学的活性剤へ、又は電気化学的活性剤から、電極から、又は電極へ電子を運搬するための試薬)を電極表面と接触させる(任意のオーダー、又は混合物として)。電気化学的活性剤は静電気の正味電荷を有し、捕捉分子と検体分子の間で形成される複合体の静電気の正味電荷に相補的でありそれにより電極上に第二層を形成し、ここでの第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成する。任意の基質分子55の存在は、電流測定的に検出される基質の触媒酸化から電流を発生させる。電流はサンプル溶液中の標的検体の濃度に直接相関する。
【0118】
【図1B】図lbは、検出電極(例えば、金の電極)の表面を修飾するためのリンカー分子の使用を説明する。
【0119】
【図2】図2は、多様な比率のビオチン-dUTP/dTTPを用いた代表的な全長ラットTP53cDNA(レーン1-3)及び全長GAPDHcDNA(レーン4-6)をコードするPCR産物のゲル電気泳動分離を描く。レーンMは、DNAサイズマーカーである。レーン1-3は、それぞれ0:100、35:65、及び65:35のビオチン-16-dUTP/dTTP比率に対応する。レーン4-6は、それぞれ0:10、1:10、及び2:10のビオチン-21-dUTP/dTTP比率に対応する。
【0120】
【図3】図3は、金の電極のサイクリックボルタモグラム(voltamograms)を描く。当該電極は(a)2.5 mMのK3Fe(CN)6及び0.50 MのNa2SO4中で混合した自己集合した単量体で覆われ、(b)PBS中でDNA/酸化還元ポリマーの二層を有し、そして(c)2.5 mMのK3Fe(CN)6及び0.50 MのNa2S04中でDNA/酸化還元ポリマーの二層を有す。走査速度は:100 mV/sである。(b)での電流スケールは、透明度のために10倍(factor)拡大された。
【0121】
【図4】図4は、PBS中のGAPDHcDNA(曲線a)と(A)GAPDHcDNAに対して相補性である捕捉プローブ、及び(B)GAPDHcDNAに対して非相補性である捕捉プローブを有する20mMのグルコース溶液(曲線b)との、ハイブリダイゼーション後の金の電極のサイクリックボルタモグラム(voltamograms)を描く。走査速度は:10 mV/sである。
【0122】
【図5】図5は、(a)GAPDHcDNAに対して相補性である捕捉プローブ、及び(b)GAPDHcDNAに対して非相補性である捕捉プローブを有する、PCR混合物中のGAPDHcDNAとの、ハイブリダイゼーション後の金の電極の電流測定応答を描く。処理電位は:40 mMのグルコースで0.36 Vである。
【0123】
【図6】図6は、2.5μlの液滴中での、それぞれ50、100、200、及び500 fMのTP53cDNAとのハイブリダイゼーション後の金の電極の電流測定応答を描く。処理電位は:40 mMのグルコース、0.36 Vである。
【0124】
【図7】図7は、E.coli 16S rRNA、E.coli 23S rRNA、及び全長ラットGAPDHcDNAの混合物とのハイブリダイゼーション後の金の電極の電流測定応答を描く。曲線(a)はE.coli 16S rRNAの応答に対応し、曲線(b)はラットGAPDHcDNAの応答に対応し、一方、曲線(c)はブランクコントロールに対応する。1μlの液滴を使用した。処理電位は:60 mMのグルコ−ス、0.35 Vである。
【0125】
【図8】図8は、アッセイ系の感度を評価するために、1μlの液滴中にそれぞれ200 fMの(a)完全に相補性である合成オリゴヌクレオチド、(b)1つの塩基が不適合であるオリゴヌクレオチド、及び(c)2つの塩基が不適合であるオリゴヌクレオチドとのE.coli 16S rRNA-特異的DNA捕捉プローブのハイブリダイゼーション後の金の電極の電流測定応答を描く。処理電位は:60 mMのグルコース、0.35 Vである。
【0126】
【図9】図9は検体濃度からの酸化電流の依存性を描く。GAPDHcDNA捕捉プローブは金の電極上に固定され、そして10μMのビオチン化GAPDHcDNAと接触させられる。ハイブリダイゼーションによって、グルコースオキシダーゼ/アビジン-複合体はアビジン-ビオチン相互作用を介して結合される。最終的に、酸化還元ポリマーは層間の静電気性自己集合を通して電極表面にもたらされる。グルコール検出媒体は:PBS(pH 7.4)である。処理電位は:0.35 Vである。
【0127】
【図10】図10は、バイオセンサーを介した酸化還元ポリマー中で実施される、カップリング酸化還元反応の説明図を示す。
【0128】
【図11】図11は、本発明の水溶性及び交差連鎖し得るポリマーの塩基単位の構造を説明する。本図はビニルフェロセンとアクリル酸 誘導体とのコポリマー中で見出される反復単位を示す。
【0129】
【図12】図12は、ビニルフェロセンとアクリル酸誘導体のコ-ポリマー化反応における一般反応方程式を描く。
【0130】
【図13】図13は、本発明の方法により生産された酸化還元ポリマーPAA-VFc及びPAAS-VFcのフーリエ変換赤外線(FT-IR)スペクトルを示す。
【0131】
【図14】図14は、Fc、PAA、PAAS及びVFcによるコ-ポリマー化から得られたコ-ポリマーの紫外線(UV)-可視スペクトルを示す。
【0132】
【図15】図15は、多様な系における酸化還元ポリマーのサイクリックボルタモグラム(voltamograms)を示す。リン酸緩衝化生理食塩水を使用し、そして電位走査速度をボルタムグラムが100 mV/sであるように得られるように適用した。
【0133】
【図16】図16は、酸化還元ポリマーPAA-VFcの他のサイクリックボルタルグラムを示し、それは金の電極上でグルコースオキシダーゼ-ウシ血清アルブミン(GOxBSA)フィルムと交差連鎖する。リン酸緩衝化生理食塩水を使用し、そして電位走査率をボルタルグラムが50 mV/sであるように得られるように適用した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出電極による検体分子の電気化学的検出のための方法であって:
(a)検出電極上で検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子を固定し;
(b)電極を検出されるべき検体分子を含むことが想定される溶液と接触させ;
(c)前記溶液中に含まれる検体分子を電極上の捕捉分子と結合させて、それによって、捕捉分子と検体分子間に複合体が形成され、当該複合体が検出電極上に第一層を形成し;
(d)検出電極と電気化学的活性剤を接触させ、当該電気化学的活性剤は、捕捉分子と検体分子の間で形成した複合体の静電気性正味電荷に相補的なものである静電気性正味電荷を有し、それにより電極上に第二層を形成し、当該第二層及び第一層は、一緒になって電導性の二層を形成し;
(e)検出電極を電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ、それぞれ電子を運搬することができる試薬と接触させ;
(f)検出電極で電気的計測を行い、そして;
(g)当該得られた電気的計測の結果をコントロール計測の結果と比較することによって検体を検出すること、
を含んで成る方法。
【請求項2】
前記電気化学的活性剤が、検体と電極間で電子を運搬することができるポリマー性酸化還元メディエーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気化学的活性剤が、金属イオンを含んで成る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属イオンが、銀、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、オスミウム、ルテニウム、及びそれらの混合物から成る群から選定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電気化学的活性剤が、ポリ(ビニルフェロセン)、ポリ(ビニルフェロセン)-コアクリルアミド、ポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリル酸、及びポリ(ビニルフェロセン)コ-アクリルアミド-(CH2)n-スルホン酸、及びポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリルアミド-(CH2)n-ホスホン酸、ここでn=0−12である、から成る群から選定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電気化学的活性剤へ、又は電気化学的活性剤から電子を運搬することができる試薬が、酵素又は酵素複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素が、酸化還元酵素又は酸化還元酵素の混合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化還元酵素が、グルコースオキシダーゼ、水素ペルオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ガラクトースデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コリンデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、オキサレートオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルタメートデヒドロゲナーゼ、グルタメートオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、NADPHオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、シトクロムCオキシダーゼ、及びアルコールオキシダーゼから成る群から選定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記捕捉分子が、検出されるべき検体と特異的に結合することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記検出されるべき検体が、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖及びそれらの複合体から成る群から選定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記検出されるべき検体が、核酸分子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸分子が、予め規定された配列を有す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸分子が、少なくとも1つの一本鎖領域を含んで成る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記捕捉分子が、検出されるべき核酸分子の一本鎖領域と相補性の配列を有する、少なくとも1つの核酸プローブである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記検出されるべき検体が、タンパク質又はペプチドである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記捕捉分子が、タンパク質又はペプチドと結合することができる少なくともリガンド上にある、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
電極を検体分子が含まれていると想定される溶液に接触させる前に、遮断剤が電極上に固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
検出電極によって検体分子を電気化学的に検出するための方法であって:
(a)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子を、検出電極上に固定し;
(b)電極を検出されるべき検体分子を含むと想定される溶液と接触させ;
(c)前記溶液中に含まれる検体分子を電極上の捕捉分子に結合させ、それによって捕捉分子と検体分子間に複合体が形成し、前記複合体が検出電極上に第一層を形成し;
(d)当該検出電極と電気化学的活性剤を接触させ、当該電気化学的活性剤は、捕捉分子と検体分子の間で形成した複合体の静電気性正味電荷に相補的なものである静電気性正味電荷を有し、それにより電極上に第二層を形成し、当該第二層及び第一層は、一緒になって電導性の二層を形成し、そして当該捕捉分子は、それぞれ電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ、電子を運搬することを可能にし;
(e)検出電極で電気的計測を実施し、そして;
(f)当該得られた電気的計測の結果をコントロール計測の結果と比較することによって検体を検出すること、
を含んで成る方法。
【請求項19】
請求項1で規定したような検体分子の電気化学的検出を行うために適した、検出電極を含んで成る電極配置であって:
(a)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子と、検体分子間の複合体を含む検出電極上の第一層;及び
(b)電気化学的活性剤を含む第二層であって、当該電気化学的活性剤が捕捉分子と検体分子間で形成される複合体の静電気性正味電荷に相補的である静電気性正味電荷を有し、ここでの第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成すること、
を含んで成る電極配置。
【請求項20】
前記電気化学的活性剤が、前記検体と電極間で電子を運搬することができるポリマー性酸化還元メディエーターである、請求項19に記載の電極配置。
【請求項21】
前記剤が金属イオンを含む検体の電導性を増加させる、請求項20に記載の電極配置。
【請求項22】
前記金属イオンが銀、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、オスミウム、ルテニウム及びそれらの混合物から成る群から選定される、請求項21に記載の電極配置。
【請求項23】
それぞれポリマー性酸化還元メディエーターへ又はポリマー性酸化還元メディエーターから、電極から又は電極へ電子を運搬することができる試薬を更に含んで成り、当該試薬が電導性の二層に結合し、挿入し、又は付随する、請求項19に記載の電極配置。
【請求項24】
前記試薬が酵素又は酵素複合体である、請求項23に記載の電極配置。
【請求項25】
バイオセンサーとしての請求項19に記載の電極配置の使用。
【請求項26】
検体分子の電気化学的検出のためのバイオセンサーであって:
(a)検出電極;
(b)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子と検体分子間の複合体を含む検出電極上の第一層;及び
(c)電気化学的活性剤を含む第二層、当該電気化学的活性剤は、捕捉分子と検体分子の間で形成した複合体の静電気性正味電荷に相補的なものである静電気性正味電荷を有し、当該第二層及び第一層は、一緒になって電導性の二層を形成すること;
を含んで成るバイオサンサー。
【請求項27】
水溶性酸化還元ポリマーであって:
(a)ポリマー化可能なフェロセン誘導体を含む第一の単量体単位;及び
(b)正味電荷を捕捉できる第一の酸又は塩基の官能基を有するアクリル酸誘導体を含む第二の単量体単位、
を含んで成る水溶性酸化還元ポリマー。
【請求項28】
前記第二の単量体単位が、正味電荷を捕捉できる末端の第一の酸又は塩基官能基を有するアクリル酸誘導体を含んで成る、請求項26に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項29】
前記アクリル酸誘導体が、一般式(I)
【化1】
(式中Rは、CnH2n-NH2、CnH2n-COOH、NH-CnH2n-PO3H、及びNH-CnH2n-SO3H、ここでのアルキル鎖は任意に置換され得、そしてここでのnは0から12の整数である、から成る群から選定される)により表される、請求項27に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項30】
前記ポリマー化され得るフェロセン誘導体が、ビニル-フェロセン、アセチレン-フェロセン、スチレン-フェロセン、及びエチレンオキシド-フェロセンから成る群から選定される、請求項27に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項31】
前記フェロセン誘導体がビニルフェロセンである、請求項30に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項32】
前記酸化還元ポリマーの分子量が、約1000から5000ダルトンである、請求項27に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項33】
前記酸化還元ポリマーにローディングしているフェロセンが約3%から14%の間である、請求項27に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項34】
水溶性酸化還元ポリマーを調製するための方法であって、:ポリマー化され得るフェロセン誘導体を、正味電荷を捕捉できる酸又は塩基の官能基を有するアクリル酸誘導体を含む第二の単量体単位と共に含む第一の単量体単位をポリマー化することを含んで成り、前記ポリマーが水性アルコール性媒体中で実施される方法。
【請求項35】
前記アルコール性媒体が、エタノール及び水を2:1から3:1の容積比で含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマー化が、フリーラジカルイニシエーターの付加により開始される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記フリーラジカルイニシエーターが、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウムから成る群から選定される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記付加されるフリーラジカルイニシエーターの重量比が、単量体の1グラム当り、約20 mgから40 mgの間である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリマー化が、還流下で、約60℃から80℃の温度で実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記ポリマーが、不活性ガス環境中で実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリマー化が、約24時間実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記第一及び第二の単量体をポリマー化する前に、反応前混合物を形成することを更に含んで成り:
アクリル酸誘導体単量体単位を水性アルコール性媒体に溶解させ、その後、フリーラジカルイニシエーターを付加し、その後、
ポリマー化され得るフェロセン誘導体単量体単位を付加し、反応前混合物を形成すること、を含んで成る、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記アクリル酸の反応前混合物中のポリマー化され得るフェロセン誘導体への供給率が付加された単量体の約5重量%から15重量%の間である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ポリマーされ得るフェロセン誘導体の単量体単位が、付加される前の水性アルコール性媒体中で溶解される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記酸化還元メディエーターを有機溶媒中で沈殿させることを更に含んで成る、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記有機溶媒がエーテル及びケトンから成る群から選定される、請求項41に記載の方法。
【請求項1】
検出電極による検体分子の電気化学的検出のための方法であって:
(a)検出電極上で検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子を固定し;
(b)電極を検出されるべき検体分子を含むことが想定される溶液と接触させ;
(c)前記溶液中に含まれる検体分子を電極上の捕捉分子と結合させて、それによって、捕捉分子と検体分子間に複合体が形成され、当該複合体が検出電極上に第一層を形成し;
(d)検出電極と電気化学的活性剤を接触させ、当該電気化学的活性剤は、捕捉分子と検体分子の間で形成した複合体の静電気性正味電荷に相補的なものである静電気性正味電荷を有し、それにより電極上に第二層を形成し、当該第二層及び第一層は、一緒になって電導性の二層を形成し;
(e)検出電極を電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ、それぞれ電子を運搬することができる試薬と接触させ;
(f)検出電極で電気的計測を行い、そして;
(g)当該得られた電気的計測の結果をコントロール計測の結果と比較することによって検体を検出すること、
を含んで成る方法。
【請求項2】
前記電気化学的活性剤が、検体と電極間で電子を運搬することができるポリマー性酸化還元メディエーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気化学的活性剤が、金属イオンを含んで成る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属イオンが、銀、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、オスミウム、ルテニウム、及びそれらの混合物から成る群から選定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電気化学的活性剤が、ポリ(ビニルフェロセン)、ポリ(ビニルフェロセン)-コアクリルアミド、ポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリル酸、及びポリ(ビニルフェロセン)コ-アクリルアミド-(CH2)n-スルホン酸、及びポリ(ビニルフェロセン)-コ-アクリルアミド-(CH2)n-ホスホン酸、ここでn=0−12である、から成る群から選定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電気化学的活性剤へ、又は電気化学的活性剤から電子を運搬することができる試薬が、酵素又は酵素複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素が、酸化還元酵素又は酸化還元酵素の混合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化還元酵素が、グルコースオキシダーゼ、水素ペルオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ガラクトースデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コリンデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、オキサレートオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルタメートデヒドロゲナーゼ、グルタメートオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、NADPHオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、シトクロムCオキシダーゼ、及びアルコールオキシダーゼから成る群から選定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記捕捉分子が、検出されるべき検体と特異的に結合することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記検出されるべき検体が、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖及びそれらの複合体から成る群から選定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記検出されるべき検体が、核酸分子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸分子が、予め規定された配列を有す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸分子が、少なくとも1つの一本鎖領域を含んで成る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記捕捉分子が、検出されるべき核酸分子の一本鎖領域と相補性の配列を有する、少なくとも1つの核酸プローブである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記検出されるべき検体が、タンパク質又はペプチドである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記捕捉分子が、タンパク質又はペプチドと結合することができる少なくともリガンド上にある、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
電極を検体分子が含まれていると想定される溶液に接触させる前に、遮断剤が電極上に固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
検出電極によって検体分子を電気化学的に検出するための方法であって:
(a)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子を、検出電極上に固定し;
(b)電極を検出されるべき検体分子を含むと想定される溶液と接触させ;
(c)前記溶液中に含まれる検体分子を電極上の捕捉分子に結合させ、それによって捕捉分子と検体分子間に複合体が形成し、前記複合体が検出電極上に第一層を形成し;
(d)当該検出電極と電気化学的活性剤を接触させ、当該電気化学的活性剤は、捕捉分子と検体分子の間で形成した複合体の静電気性正味電荷に相補的なものである静電気性正味電荷を有し、それにより電極上に第二層を形成し、当該第二層及び第一層は、一緒になって電導性の二層を形成し、そして当該捕捉分子は、それぞれ電気化学的活性剤へ又は電気化学的活性剤から、電極から又は電極へ、電子を運搬することを可能にし;
(e)検出電極で電気的計測を実施し、そして;
(f)当該得られた電気的計測の結果をコントロール計測の結果と比較することによって検体を検出すること、
を含んで成る方法。
【請求項19】
請求項1で規定したような検体分子の電気化学的検出を行うために適した、検出電極を含んで成る電極配置であって:
(a)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子と、検体分子間の複合体を含む検出電極上の第一層;及び
(b)電気化学的活性剤を含む第二層であって、当該電気化学的活性剤が捕捉分子と検体分子間で形成される複合体の静電気性正味電荷に相補的である静電気性正味電荷を有し、ここでの第二層及び第一層は一緒になって電導性の二層を形成すること、
を含んで成る電極配置。
【請求項20】
前記電気化学的活性剤が、前記検体と電極間で電子を運搬することができるポリマー性酸化還元メディエーターである、請求項19に記載の電極配置。
【請求項21】
前記剤が金属イオンを含む検体の電導性を増加させる、請求項20に記載の電極配置。
【請求項22】
前記金属イオンが銀、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、オスミウム、ルテニウム及びそれらの混合物から成る群から選定される、請求項21に記載の電極配置。
【請求項23】
それぞれポリマー性酸化還元メディエーターへ又はポリマー性酸化還元メディエーターから、電極から又は電極へ電子を運搬することができる試薬を更に含んで成り、当該試薬が電導性の二層に結合し、挿入し、又は付随する、請求項19に記載の電極配置。
【請求項24】
前記試薬が酵素又は酵素複合体である、請求項23に記載の電極配置。
【請求項25】
バイオセンサーとしての請求項19に記載の電極配置の使用。
【請求項26】
検体分子の電気化学的検出のためのバイオセンサーであって:
(a)検出電極;
(b)検出されるべき検体分子と結合することができる捕捉分子と検体分子間の複合体を含む検出電極上の第一層;及び
(c)電気化学的活性剤を含む第二層、当該電気化学的活性剤は、捕捉分子と検体分子の間で形成した複合体の静電気性正味電荷に相補的なものである静電気性正味電荷を有し、当該第二層及び第一層は、一緒になって電導性の二層を形成すること;
を含んで成るバイオサンサー。
【請求項27】
水溶性酸化還元ポリマーであって:
(a)ポリマー化可能なフェロセン誘導体を含む第一の単量体単位;及び
(b)正味電荷を捕捉できる第一の酸又は塩基の官能基を有するアクリル酸誘導体を含む第二の単量体単位、
を含んで成る水溶性酸化還元ポリマー。
【請求項28】
前記第二の単量体単位が、正味電荷を捕捉できる末端の第一の酸又は塩基官能基を有するアクリル酸誘導体を含んで成る、請求項26に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項29】
前記アクリル酸誘導体が、一般式(I)
【化1】
(式中Rは、CnH2n-NH2、CnH2n-COOH、NH-CnH2n-PO3H、及びNH-CnH2n-SO3H、ここでのアルキル鎖は任意に置換され得、そしてここでのnは0から12の整数である、から成る群から選定される)により表される、請求項27に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項30】
前記ポリマー化され得るフェロセン誘導体が、ビニル-フェロセン、アセチレン-フェロセン、スチレン-フェロセン、及びエチレンオキシド-フェロセンから成る群から選定される、請求項27に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項31】
前記フェロセン誘導体がビニルフェロセンである、請求項30に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項32】
前記酸化還元ポリマーの分子量が、約1000から5000ダルトンである、請求項27に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項33】
前記酸化還元ポリマーにローディングしているフェロセンが約3%から14%の間である、請求項27に記載の酸化還元ポリマー。
【請求項34】
水溶性酸化還元ポリマーを調製するための方法であって、:ポリマー化され得るフェロセン誘導体を、正味電荷を捕捉できる酸又は塩基の官能基を有するアクリル酸誘導体を含む第二の単量体単位と共に含む第一の単量体単位をポリマー化することを含んで成り、前記ポリマーが水性アルコール性媒体中で実施される方法。
【請求項35】
前記アルコール性媒体が、エタノール及び水を2:1から3:1の容積比で含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマー化が、フリーラジカルイニシエーターの付加により開始される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記フリーラジカルイニシエーターが、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウムから成る群から選定される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記付加されるフリーラジカルイニシエーターの重量比が、単量体の1グラム当り、約20 mgから40 mgの間である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリマー化が、還流下で、約60℃から80℃の温度で実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記ポリマーが、不活性ガス環境中で実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリマー化が、約24時間実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記第一及び第二の単量体をポリマー化する前に、反応前混合物を形成することを更に含んで成り:
アクリル酸誘導体単量体単位を水性アルコール性媒体に溶解させ、その後、フリーラジカルイニシエーターを付加し、その後、
ポリマー化され得るフェロセン誘導体単量体単位を付加し、反応前混合物を形成すること、を含んで成る、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記アクリル酸の反応前混合物中のポリマー化され得るフェロセン誘導体への供給率が付加された単量体の約5重量%から15重量%の間である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ポリマーされ得るフェロセン誘導体の単量体単位が、付加される前の水性アルコール性媒体中で溶解される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記酸化還元メディエーターを有機溶媒中で沈殿させることを更に含んで成る、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記有機溶媒がエーテル及びケトンから成る群から選定される、請求項41に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2007−510154(P2007−510154A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537944(P2006−537944)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000351
【国際公開番号】WO2005/040403
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506205103)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (26)
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000351
【国際公開番号】WO2005/040403
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506205103)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (26)
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
【Fターム(参考)】
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