説明

検出システム

核酸の検出又は特徴付けに用いられる様々な方法における赤色核酸染色試薬、特に赤色蛍光性SYTO(登録商標)染料の使用を記載している。具体的には、赤色核酸染色試薬は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と特に適合可能であることが見出され、したがって、強化された検出法の基礎を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸を検出又は特徴付けるための方法における試薬の使用、例えば、増幅反応を定量的にモニターすることによって、試料中の標的ポリヌクレオチドを検出するための方法、並びにこれらの方法において使用するためのキットを提供する。この方法は、特に、多型又は対立遺伝子変異の検出に適しており、そのため診断方法に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
既知の蛍光ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)モニタリング技術には、いくつかの第二世代のPCR熱サイクル装置上で使用することができる鎖特異的及び包括的DNAインターカレーター技術が含まれる。これらの反応は、サーマルサイクラーの密封したチューブフォーマット中で均質に実行される。反応は、蛍光光度計を用いてモニターされる。このアッセイの正確な形式は変更されるが、多くの場合、増幅産物の存在を示すシグナルを生じさせるために、システム内で2つの蛍光部分間の蛍光エネルギー移動、即ちFETに依存する。
【0003】
包括的方法は、二本鎖DNA種に結合した場合、蛍光増加を示すDNAインターカレーティング染料(dye)を利用する。増幅中のDNAのバルク濃度の上昇による蛍光増加は、反応進行を測定し、標的分子のコピー数を決定するために用いることができる。さらに、制御された温度変化を用いて蛍光をモニターすることによって、DNA融解曲線は、例えば、PCR熱サイクルの終端で生じさせ得る。
【0004】
包括的DNA法は、核酸のバルク濃度の上昇をモニターするために用いられる場合、これらのプロセスは、(下記で検討したいくつかの他の既知のアッセイと比較して)最小時間ペナルティを用いてモニターすることができる。1つの蛍光読み取りは、全ての反応において同じ点で行われ得る。エンドポイント融解曲線分析は、アンプリコンからの人為的な影響を選別し、アンプリコンを識別するために用いることができる。産物の融解ピークは、アガロースゲル電気泳動によって視覚化することができない濃度について測定することができる。
【0005】
例えば複数の試料に対して高分解能の融解データを得るために、融解実験は、最大5分を要する既存のハードウェアでゆっくりと実行しなければならない。しかしながら、蛍光増幅を連続的にモニターすることによって、融解及びハイブリダイゼーションの履歴現象の3Dイメージが生じ得る。この3Dイメージは、アンプリコン依存的であり、産物の選別のために十分な情報を提供することができる。
【0006】
DNA融解曲線分析は、概して、PCR熱サイクルの最適化に力強いツールであることが判明している。アンプリコンの融解温度を測定することによって、この温度までその後のPCRサイクルの変性温度を下げることが可能となる。標的DNAというよりはむしろ第一世代の反応産物由来の増幅についての最適化は、その後のサイクルに生じる人為的な影響の形成を減少させる。プライマーオリゴヌクレオチド及びそれらの相補体の融解温度は、それらのアニーリング温度を決定するために使用可能であり、実証的な最適化に対する必要性を減少させる。
【0007】
しかしながら、包括的なインターカレーター法は、擬似的な鎖特異的に過ぎず、したがって、鎖特異的な検出が必要である場合、あまり有用ではない。
【0008】
鎖特異的な方法は、増幅反応の進行をモニターするために追加の核酸反応成分を利用する。これらの方法は、多くの場合、検出の基礎として、蛍光エネルギー移動(FET)を用いる。1以上の核酸プローブは、蛍光分子で標識され、その1つは、エネルギードナーとして作用し得て、その他は、エネルギーアクセプター分子である。これらは、ある場合には、それぞれレポーター分子及びクエンチャー分子として知られている。ドナー分子は、その励起スペクトル範囲内にある光の特定の波長で励起され、その後、その蛍光放出波長内で光を発光する。アクセプター分子はまた、種々の距離依存的なエネルギー移動メカニズムによって、ドナー分子からのエネルギーを受け入れることによりこの波長で励起される。生じる可能性のある蛍光エネルギー移動の特別な例は、蛍光共鳴エネルギー移動、即ち「FRET」である。一般に、アクセプター分子は、近接近(例えば、同じ又は隣接する分子)である場合、ドナー分子の励起エネルギーを受け入れる。蛍光エネルギー移動検出の基礎は、ドナーでの変化をモニターし、励起波長を受け入れることである。
【0009】
FET又はFRETプローブの共通に用いられる2つのタイプがあり、アクセプターからドナーを分離するための核酸プローブの加水分解を用いるものであり、ドナー及びアクセプター分子の空間的関係を変更するためにハイブリダイゼーションを用いるものである。
【0010】
加水分解プローブは、TaqMan(商標)プローブとして市販されている。これらは、ドナー及びアクセプター分子で標識されるDNAオリゴヌクレオチドからなる。プローブは、PCR産物の一本鎖上の特定領域に結合するように設計される。PCRプライマーのこの鎖へのアニーリング後、Taq酵素は、5’→3’ポリメラーゼ活性を用いてDNAを伸長する。Taq酵素はまた、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を示す。TaqMan(商標)プローブは、Taq伸長をプライミングすることからそれらを避けるためにリン酸化によって3’末端で保護される。TaqMan(商標)プローブは、産物鎖へハイブリダイズすると、伸長しているTaq分子はまた、プローブを加水分解し、検出の基礎として、アクセプターからドナーを遊離させることができる。この場合のシグナルは累積的であり、遊離したドナー及びアクセプター分子の濃度は、増幅反応の各サイクルに伴って増加する。
【0011】
シグナル発生は、プローブの加水分解反応の発生に依存するという事実は、この方法と関連した時間ペナルティがあることを意味する。さらに、プローブの存在は、PCRプロセスの円滑な証左を妨害する場合がある。
【0012】
さらに、加水分解は、例えば、多数の増幅サイクル、例えば50を超えるサイクルを必要とする場合、非特異的となり得ることが見出されている。これらの場合において、プローブの非特異的な加水分解は、シグナルの過度の上昇をもたらす。
【0013】
これは、このような技術がIdaho Technologies Inc.のRapidCycler(商標)及びLightCycler(商標)などの迅速な熱風サーモサイクラーの開発に伴ってより著名となっている急速PCR法とあまり適合しないことを意味する。他の急速PCR装置は、例えば、同時係属の英国特許出願第9625442.0号及び第9716052.7号に記載されている。従来のサーマルサイクルと比較して急速サイクルの利点は、他に報告されている。死亡又は重篤な傷害が回避されるべきで場合に、結果の迅速性が重要である場合、このような技術は、例えば生物兵器に対する検出システムに特に有用である。
【0014】
さらに、加水分解プローブは、融解の履歴現象に関して有意な情報を提供しない。これは、シグナル発生は、概して、アンプリコンの融解温度というよりはむしろプローブの加水分解に依存しているためである。
【0015】
米国特許第5,491,063号は、DNA結合剤によって、標識した一本鎖オリゴヌクレオチドからのシグナルの修飾に依存する蛍光標識したプローブの溶液中でクエンチング方法を記載している。ポリメラーゼ連鎖反応中のプローブ開裂(加水分解)後のプローブの鎖長の減少の結果として生じるこのシグナルの相違は、標的核酸の存在を検出する手段を提供することが示唆される。
【0016】
ハイブリダイゼーションプローブは、多くの形体で利用可能である。分子指標は、ヘアピンループを形成するように相補的な5’及び3’配列を有するオリゴヌクレオチドである。末端蛍光標識は、ヘアピン構造が形成されるとFRETが生じる近接近の状態にある。分子指標の相補配列のハイブリダイゼーション後、蛍光標識は分離され、このため、FRETは生じず、これは検出の基礎を形成する。
【0017】
標識したオリゴヌクレオチド対はまた用いることができる。これらは、FRETが生じ得るようにドナー及びアクセプター分子を一緒にするPCR産物鎖上の近接近な状態でハイブリダイズする。FRETの増加は、検出の基礎である。このタイプの変形は、1つの隣接プローブを用いた標識した増幅プライマーを用いることを含む。
【0018】
2つのプローブ、又は2つの標識分子を含む分子指標方のプローブの使用は、このプロセスに関係する費用を増やす。さらに、この方法は、互いに近接近な状態で特異的に結合するのに十分な長さである2つのプローブが知られるように合理的に長い既知の配列の存在を要する。これは、いくつか診断用途における問題となり得て、この場合、HIVウイルスなどの、効果的なプローブを設計するために用いることができる生物において保存された配列の長さが相対的に短くてもよい。
【0019】
さらに、プローブ対の使用は、より複雑な実験的設計を伴う。例えば、プローブの融解によって与えられるシグナルは、両方のプローブの融解脱落の作用である。小さなミスマッチの研究、又はプローブの1つが(例えばイントロンのどちらかの側の配列がプローブ部位として利用され得る試料中のDNAと比較してRNAを検出するために)スプライス領域を横断して結合するために要求される研究は、他のプローブが即座に溶解する場合には誤った結果を生じ得る。
【0020】
WO99/28500は、試料中の標的核酸配列の存在を検出するために非常に成功したアッセイについて記載している。この方法では、DNA二重鎖結合剤及び該標的配列に特異的なプローブが試料に添加される。プローブは、該DNA二重鎖結合剤から蛍光を吸収するか又は該DNA二重鎖結合剤に蛍光エネルギーを与えることができる反応分子を含む。次に、この混合物は、標的核酸が増幅され、条件は、プローブが標的配列にハイブリダイズする増幅プロセス中又はその後のいずれかに誘導される増幅反応に晒される。該試料からの蛍光をモニターする。
【0021】
プローブは標的配列にハイブリダイズするので、インターカレーティング染料などのDNA二重鎖結合剤は、鎖間にトラップされる。一般に、これは、該染料と関連した波長の蛍光を増加する。しかしながら、反応分子が染料(即ち、それはアクセプター分子である)からの蛍光を吸収し得る場合、FET、特にFRETを用いて該染料から発光エネルギーを受け入れ、そのため、その特徴的な波長で蛍光を放出する。アクセプター分子からの蛍光の増加は、染料の蛍光とは異なる波長であり、二重鎖形成におけるプローブの結合を指示する。
【0022】
同様に、反応分子は、染料(即ち、それはドナー分子である)に蛍光を与えることができる場合、ドナー分子からの発光は、FRETの結果として減少し、この減少が検出され得る。この染料の蛍光は、これらの環境下で期待されるものよりも増加する。
【0023】
プローブ上の反応分子からのシグナルは、鎖特異的なシグナルであって、試料内の標的の存在を指示する。このようにして、反応分子からの蛍光のシグナル変化は、プローブを含む二重鎖の形成又は不安定化を示し、好ましくはモニターされる。
【0024】
DNA二重鎖結合剤は、プロセスにおいて用いることができ、それ自体、二重鎖形体でDNAに付着又は関連付けられ、エネルギードナー又はアクセプターとして作用することができるいずれかの実体である。特定の例は、当該技術分野において周知であるようなインターカレーティング染料である。
【0025】
インターカレーティング染料及び単独で標識されているプローブなどのDNA二重鎖結合剤の使用は、これらの成分が、二重に標識されたプローブを要求する他のアッセイよりも非常に経済的であるという点で有利である。たった1つのプローブを用いることによって、プローブの基礎を形成するのに必要な既知の配列の長さは、相対的に短くてもよく、したがって、この方法は、困難な診断状況でさえ用いることができる。この場合のアッセイは、ResonSense(登録商標)として知られている。
【0026】
ResonSense(登録商標)アッセイに用いられるDNA二重鎖結合剤は、典型的には、インターカレーティング染料、例えばSYBR Green、例えばSYBR Green I、SYBR Gold、エチジウムブロミド及びYOPRO−1であり、それ自体が蛍光性である。
【0027】
反応分子と染料との間にFET、例えばFRETが生じるためには、(インターカレーティング染料又はプローブ上の反応分子のいずれかであってもよい)ドナーの蛍光放出は、アクセプター(即ち、染料又は反応分子以外のもの)よりも短い波長でなければならない。ドナー及び/又はアクセプターとして用いられる分子によって発生される蛍光シグナルは、可視スペクトル内のピークとして表すことができる。ResonSense(登録商標)の特定の既知の態様は、光(約470nm)がDNA結合剤であるSYBR(登録商標)Gold又はSYBR(登録商標)Green−1を励起するために用いられる普遍的なドナーシステムを利用する。エネルギーは、Cy5及びCy5.5などの特定のシアニン染料に移動する。
【0028】
一般に、発光の波長における少なくともいくらかの重複部分がある。シグナルは鋭いピークである場合でさえ、蛍光分子からのシグナルのある種の「漏れ」があり、そのため、一般には、DNA二重結合剤シグナルからのプローブによって与えられる鎖特異的なピークを解消するために必要とされる。これは、例えば、ドナーのスペクトルとアクセプターのスペクトルとの間の関係を経験的に決定すること、及びこの関係を用いて、ドナー及びアクセプターからのシグナルを標準化することによって行うことができる。SYBR染料は、発光の特にブロードなスペクトルを有し、したがって、カラー・デコンボリューションアルゴリズムは、アプリケーションに必要である。それらは、一般に本来は緑色である。
【0029】
さらに、SYBR染料は、複数の反応において、プローブシグナルが増幅の増加とともに減少するように反応において制限となり得て、これにより、1つのプローブシグナルは他のものと競合し得る。
【0030】
しかしながら、SYBR染料は、核酸検出及び融点分析を含む種々のアプリケーションにおいて幅広く用いられ、それは、大部分は、それらの蛍光特性が、フルオレセインなどの通常他に用いられる蛍光色素のものと「適合する」ためであり、これは、同じ光学(青色ダイオード/約520nMフィルター)をそれらの検出に用いられるようにするためである。
【0031】
リアルタイムPCRにおいて、特にSybr Green及び関連染料のpico greenの使用は、米国特許第5,569,627号及び欧州特許第1179600B号に記載されている。
【0032】
SYBR Greenは、この染料を効果的に用いるために、リアルタイムPCRで幅広く用いられているが、一般に、条件の注意深い最適化を行うことが必要である。これは、DMSO、ウシ血清アルブミン及びTriton X−100などの特定の試薬の封入を必要とする場合がある。濃度依存的にPCRそれ自体の阻害はまた、SYBR greenが封入され、これが頻繁に塩化マグネシウムの添加を必要とする場合に観察される。
【0033】
異なる染料である、SYBR Greenの代替物としての緑色染料であるSYTO9の使用は、Monisら,Analytical Biochemistry 340(2005)24−34に検討されている。
【0034】
WO2004/033726は、プローブ上の蛍光標識からの蛍光エネルギーを吸収することができるが、シグナルと干渉するように、可視光を発光しないDNA二重鎖結合剤を用いるResonSense(登録商標)方法の変形を記載している。WO02/097132は、特定のプローブタイプが利用される更なる変形を記載している。
【0035】
しかしながら、本出願人は、このタイプの方法における使用のための特に有利な組合せを見出した。
【発明の開示】
【0036】
本発明によれば、PCR反応、特にリアルタイムPCR反応において核酸の検出における核酸染色試薬(stain)の使用、特に赤色核酸染色試薬の使用を提供する。本明細書中では、PCR反応は、逆転写PCR(RT−PCR)、及びDNA増幅反応を含む。
【0037】
本明細書中で使用するとき、表現「核酸染色試薬」は、細胞又はそれらの内容物の染色に優先的に用いるために使用され、又は提案される製造物及び化合物を意味する。それらは、SYBR(登録商標)green又はSYBR(登録商標)gold並びにエチジウムブロミドなどの染料を除く。
【0038】
特に、使用される核酸染色試薬は、一般式(A):
【0039】
【化1】

【0040】
で表されるチアゾールオレンジ部分を含むか又はそれから誘導されるものである。
【0041】
赤色核酸染色試薬は、一般に、600nmを超える、例えば610〜690nmの波長で蛍光は放出する。それらは、細胞透過性であり得て、例えば、Molecular Probesから市販されているSYTO(登録商標)赤色蛍光核酸染色試薬であり、それらが細胞に入り、特に細胞核を染色する場合に、多くの生物学研究において知られており、使用に推奨されている。結果として、それらは、核小体及びミトコンドリアを示し得る。赤色SYTO染料は、以前には、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅反応との関連で、インビトロでは核酸の検出に関連して利用されなかった。
【0042】
このタイプの染色試薬は、一般に、例えば、WO94/024213、WO96/013552、WO00/066664、WO02/028841、WO04/025259、WO05/038460、WO05/047242、WO05/047901、WO05/056687及びWO05/064336、及び特にWO00/66664に記載されるようなシアニン染料であり、これらの文献は、参照により本明細書中に援用される。特に、この染色試薬は、米国特許第5,658,751号に記載されるような、色が赤色であるシアニン染料である。
【0043】
これらの染料は、一般に、場合により置換されてもよい2種のヘテロ環式環系を含む不斉化学構造を含み、サブ式(i):
−(CR32=CR31n−CR30= (i)
で表される架橋メチンによって連結される。
【0044】
式中、nは、0、1又は2であり、R30、R31及びR32は、独立して、水素、C1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択される。特にR30、R31及びR32の少なくとも1つ、及び好ましくは全部は水素である。
【0045】
本明細書中で使用するとき、用語「アリール」は、芳香族炭素環式基、例えばフェニル又はナフチルを意味する。用語「ヘテロアリール」は、例えば5〜20原子の芳香族環式基を意味し、そのうち少なくとも1つは、酸素、窒素又は硫黄から選択されるヘテロ原子である。ヘテロアリール基は、本来は、適切には単環式又は二環式である。
【0046】
一般に、本発明に有用な赤色染色試薬では、nは1であるが、ヘテロ環式環が赤系統の色域に発光をシフトする効果がある場合は、他の値のnが許容され得る。
【0047】
例えば、赤色染色試薬は、nがゼロである化合物を含むことができ、これらの場合において、それらは、概して、例えば、ヘテロ原子、例えば窒素などの環に電子密度を与えることによって、エネルギーレベルを低下することができる緑色染料と比較して、環構造における修飾を含む。
【0048】
上述したサブ式(i)のメタン基のいずれかの側での結合のための具体的なヘテロ環式環系は、WO94/024213、WO96/013552、WO00/066664、WO02/028841、WO04/025259、WO05/038460、WO05/047242、WO05/047901、WO05/056687及びWO05/064336、及び特にWO00/66664に例示されている。
【0049】
特に、塩基性ベンゾチアゾリル及びキノリニウム環を含むこれらの参考文献に記載されている化合物が調製されてもよい。
【0050】
したがって、例えば、核酸染色試薬は、置換されたアザ−ベンゾリウム環である第1へテロ環式環を有し、それは、ピリジン、キノリン、ピリジニウム又はキノリニウム基である第2ヘテロ環式環に上述したサブ式(i)のメチンリンカーを介して連結されてもよい。
【0051】
特に、このような化合物は、一般式(I):
【0052】
【化2】

【0053】
に含まれ得て、式中、Aは、各環において、6原子を有する1又は2個の縮合した芳香族環を形成し、そのうちの少なくとも1つは、場合により、窒素であり、該環(単数または複数)は、場合によりさらに、1回以上、1〜6個の炭素を有するアルキル、1〜6個の炭素を有するアルコキシ、トリフルオロメチル、ハロゲン、若しくは−L−R.;又は−L−Sによって置換される。
【0054】
Xは、O、S、Se、NR15、又はCR1617であって、ここで、R15は、H又は1〜6個の炭素を有するアルキル基であり;R16及びR17は、同一であるか又は異なっていてもよく、独立して、1〜6個の炭素を有するアルキル基であり、又はR16及びR17は、一緒になって、5若しくは6員の飽和した環を形成し;aは、0又は1である。
【0055】
2は、水素、場合により、スルホン酸塩、カルボキシ又はアミノによって置換される1〜6個の炭素を有するアルキル基であり;又は、R2は、−L−R.若しくは−L−S;又はテール;又はブリッジ−染料である。
【0056】
nは、0、1又は2であり、好ましくは1である。
Yは、−CR3=CR4−である。
p及びmは、p+m=1となるように、0又は1である。
【0057】
3、R4、R6、及びR7は、独立して、H;飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状の1〜6個の炭素を有するアルキル;又はハロゲン;又は環状基(アリール、ヘテロアリール、若しくは3〜10個の炭素を有するシクロアルキルから選択され、それらのいずれかは、場合により、ハロゲン、アミノ、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ又はカルボキシアルキル(ここで、各アルキル基は、1〜6個の炭素を有する)によって置換されてもよく、又はテール部分によって置換されてもよい);又は−OR8、−SR8、−(NR89);又はテール;又はBブリッジ−染料;又は−L−Rx;又は−L−Scであり、ここで、R8及びR9は、同じであるか又は異なっていてもよく、独立して、1〜6個の炭素を有するアルキル基;又は1〜2個の脂環式環若しくは芳香族環であり;あるいは、R8及びR9は、一緒になって、−(CH22−V−(CH22−であり、Vは、単結合、−O−、−CH2−、又は−NR10−であり、ここで、R10は、H又は1〜6個の炭素を有するアルキルである。
【0058】
あるいは、R6及びR7は、縮合した芳香族環−R11=R12−R13=R14−を形成し、R11、R12、R13、及びR14は、場合により、独立して、飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状の1〜6個の炭素を有するアルキル;又は−OR8、−SR8又は−(NR89);又は環状基(アリール、ヘテロアリール、又は3〜10個の炭素を有するシクロアルキルから選択され、それらのいずれかは、場合により、ハロゲン、アミノ、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ又はカルボキシアルキル(ここで、各アルキル基は、1〜6個の炭素を有する)によって置換されてもよく、又はテール部分によって置換されてもよい);又はテール;又はブリッジ−染料;又は−L−Rx;又は−L−Scであり;R5は、飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状の1〜6個の炭素を有するアルキルであり;又は、R5は、環状基(例えば、3〜8原子の炭素環式基又は複素環式基)であり;又は、R5は、テール;若しくはブリッジ−染料;又は−L−Rx;若しくは−L−Scであり;又は、R5は、電子対であり;R30、R31、及びR32は、独立して、H、1〜6個の炭素を有するアルキル、3〜10個の炭素を有するシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり;ここで、L及びブリッジは、独立して、1つの共有結合、又は直鎖状若しくは分岐状の環式又はヘテロ環式の飽和又は不飽和のC、N、P、O及びSからなる群から選択される1〜6個の水素以外の原子を有する共有連結であり、これによりこの連結は、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル、アミド結合;又は、一重、二重、三重若しくは芳香族炭素−炭素結合;又は、リン−酸素、リン−硫黄結合、窒素−窒素又は窒素−酸素結合;又は、芳香族若しくはヘテロ芳香族結合のいずれかの組合せを含む。
【0059】
xは、反応基であり;
cは、結合した(conjugated)基であり;
テールは、ヘテロ原子含有部分である。
【0060】
染料は、式(IA):
【0061】
【化3】

【0062】
で表される化合物であり、式中、A、X、R2、n、Y、m、p、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R30、R31、R32、テール、又は環式基(アリール、へテロアリール又は3〜10個の炭素を有するシクロアルキルから選択され、そのいずれかは、場合により、ハロゲン、アミノ、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ又はカルボキシアルキル(ここで、各アルキル基は、1〜6個の炭素を有する)によって、又はテール部分によって置換されてもよい)は、上記で定義される通りであり;R3、R4、R5、R6又はR7の1つでブリッジに結合される。
【0063】
反応基Rx及び結合した基Scの具体例は、WO00/66664に記載される通りである。これらの場合において、環Aは、窒素原子を含む。
【0064】
この一般的なタイプの化合物の他の例は、上記の式(A)のチアゾールオレンジの環エレメントを含む化合物であって、したがって、式(IB):
【0065】
【化4】

【0066】
(式中、n、R2、R5、R30、R31及びR32は上記で定義される通りである)
で表される化合物である。
【0067】
このような化合物には、式(IA)で表される化合物に関して、上述される置換基が含まれ得る。したがって、さらに一連の化合物は、赤色である式(II):
【0068】
【化5】

【0069】
で表される化合物であって、式中、R3、R4、R5、R30、R31、R32及びnは、上記で定義される通りであり、R2は、水素、場合によりスルホン酸塩、カルボキシ、又はアミノによって置換される1〜6個の炭素を有するアルキル基であり;ただし、前記化合物は、SYBRグリーン及びピコグリーン以外である。[SYBRグリーン及びピコグリーンの構造は、それぞれA及びBとして表される。]
【0070】
【化6】

【0071】
この場合において、nは0であり、R32、R31、R30は全て水素であり、R3は水素であり、R4はテール基であり、R5はフェニル以外に適切なものである。
【0072】
具体的には、R2は、メチルなどの1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。
さらに、nの具体例は、0又は1であり、例えば0である。
【0073】
nが1である場合、R32及びR33は、適切には水素である。
30の具体例は、水素である。
【0074】
適切には、R5は、テール基又はアリール若しくはピリジルなどの芳香族である複素環式基である。式(II)(R5がヘテロアリールである)で表される化合物は、本発明の特定の態様を形成し、(IIA)と称される。特に、nが0である場合、R5は、ピリジルなどのヘテロアリール基である。
【0075】
テール基の具体例には、式:
リンク−スペーサー−キャップ
で表される基が含まれ、ここで、リンクは、本発明の染料のコア構造にテールが結合する連結部分である。スペーサーは、リンクをキャップに結びつける共有結合的連結であり、キャップは、ヘテロ原子成分を有するテールの部分である。
【0076】
特に、リンクは、一重共有結合、エーテル連結(−O−)、チオエーテル連結(−S−)又はアミン連結(−NR20−−)(R20は、水素、C1-8アルキル基若しくは基−スペーサー’−キャップ’(スペーサー’及びキャップ’は、それぞれスペーサー及びキャップについて下記に定義される基である)から選択される)である。
【0077】
適切には、リンク基は、基NR20(R20は、上記で定義されるとおりである)である。
【0078】
スペーサー基の例は、1〜16個のC、N、P、O若しくはS原子の直鎖状、分岐状、環状、複素環式、飽和又は不飽和配列の整列の直接的な結合である。あるいは、スペーサーは、一重共有結合であり、ただし、リンク及びスペーサーの両方が同時に一重共有結合ではない。好ましくは、スペーサー連結は、炭素原子で開始しかつ終了しなければならない。典型的には、スペーサーが1個の原子からなる場合、それは炭素原子であることが必要であり、それにより、スペーサー中の最初と最後の原子(この特別な例では、それら同じ原子である)は炭素である。スペーサーを作る1〜16個の原子は、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル若しくはアミド結合;又は、一重、二重、三重若しくは芳香族炭素−炭素結合;又は、リン−酸素結合;又はリン−硫黄結合;又は、窒素−窒素結合;又は、窒素−酸素結合;又は、芳香族若しくはヘテロ芳香族結合のいずれかの適切な組合せを用いて合わせられる。スペーサーは、スペーサーの各原子の原子価状態を調整するために水素によってさらに置換される。
【0079】
一般に、スペーサーの原子は、スペーサーの直鎖状の骨格における全てのヘテロ原子が、少なくとも1個の炭素原子によって分離され、好ましくは少なくとも2個の炭素原子によって分離されるように整列されている。典型的には、スペーサーは、直鎖状又は分岐状の飽和した鎖の1〜6個の炭素原子である。本発明の一態様では、スペーサーは、6員の芳香族環(フェニレン連結)を組み入れる。本発明の別の態様では、スペーサーは、5又は6員のヘテロ芳香族環を組み入れ、ここで、ヘテロ原子は、O、N又はSである。あるいは、スペーサーは、アミド連結、エステル連結、単純なエーテルおよびチオエーテル、及びアミンを直線な整列に組み入れ、例えば、−CH2CH2(C=O)NHCH2CH2CH2である。好ましくは、スペーサーは、アルキレン−(CH2k−(k=1〜8)であり、特にプロピレン基である。
【0080】
リンク及びスペーサーは、組み合わせて、染料コア構造にヘテロ原子含有基であるキャップを結合させるために使用される。キャップは、式−OR21、−SR21、−NR2122、又は−N+212223.PSI-.に従って、酸素、硫黄又は窒素を含むことができ、ここで、R21、R22、及びR23は、独立して、Hであり、又は場合により置換された直鎖状若しくは分岐状の1〜8個の炭素を有するアルキル又はシクロアルキル基であり、PSI-は、下記に記載されるように、適切に生物学的に適合可能な対イオンである。
【0081】
21、R22及びR23のいずれかがアルキル又はシクロアルキルである場合、それらは、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、1〜8個の炭素を有するアルコキシ、アミノ、カルボキシ又はフェニルから選択される1以上の基によって置換され、ここで、フェニルは、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、1〜8個の炭素を有するアルコキシ、アミノ、1〜8個の炭素を有するアミノアルキル又は1〜8個の炭素を有するカルボキシアルキルによってさらに置換される。
【0082】
本発明の別の態様では、1以上のR21、R22及びR23は、スペーサーと一緒になって、芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式又はヘテロ脂環式環である5又は6員環を形成する。5又は6員環がヘテロ原子又はヘテロ脂環式である場合、この環は、O、N又はSである1〜3個のヘテロ原子を含む。あるいは、1以上のR21、R22、及びR23は、R20及びスペーサーと一緒になって、上記に記載される芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式又はヘテロ脂環式環である5又は6員環を形成する。好ましくは、R21、R22は水素、又は1〜8個の炭素を有するアルキルである。R23は、典型的には、H又は1〜8個の炭素を有するアルキルである。
【0083】
キャップが−N+212223.PSI.-である場合、生物学的に適合可能な対イオンである.PSI-は、第4級アンモニウム塩であるキャップ窒素に存在する正電荷の均衡を保つ。本明細書中で使用するとき、生物学的に適合可能である基質は、使用される場合に毒性でなく、生体分子に実質的に悪影響を有しない。.PSI-の例には、とりわけ、塩素、臭素、ヨウ素、硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、テトラアリールホウ化物、硝酸塩、及び芳香族又は脂環式カルボン酸のアニオンが含まれる。好ましい.PSI-対イオンは、塩素、ヨウ素、過塩素酸塩及び種々のスルホン酸塩である。
【0084】
さらに、本発明のいくつかの態様では、キャップは、環構造を組み入れる。これらの態様では、キャップは、典型的には、5又は6員の窒素含有環を組み入れ、場合により追加のヘテロ原子(典型的には酸素)を含み、ここで、環窒素は、場合により、R23によって置換され、アンモニウム塩が得られる。キャップの特定バージョンには、限定されないが、その内容が参照により本明細書中に援用される米国特許第5,658,751号の表1に列挙されているものが含まれる。
【0085】
テール基の具体例は、−NR20(C1-8アルキレン)NR2122であり、ここで、R20、R21及びR22は、上記で定義される通りである。例えば、テール基は、サブ式(i)、(ii)又は(iii)で表される基である。
【0086】
【化7】

【0087】
適切には、R3は水素であり、R4はテール基である。
特定の態様では、式(II)で表される化合物は、式(III)で表される化合物である。
【0088】
【化8】

【0089】
一態様では、式(III)の化合物は、式(IIIA)で表される化合物である。
【0090】
【化9】

【0091】
別の態様では、式(III)で表される化合物は、式(IIIB)で表される化合物である。
【0092】
【化10】

【0093】
さらに別の態様では、式(III)で表される化合物は、式(IIIC)で表される化合物である。
【0094】
【化11】

【0095】
適切な赤色核酸染色試薬の特定の例は、Molecular Probesから市販されているSYTO赤色核酸染色試薬であり、例えば、SYTO(登録商標)17、SYTO(登録商標)59、SYTO(登録商標)60、SYTO(登録商標)61、SYTO(登録商標)62、SYTO(登録商標)63及びSYTO(登録商標)64である。これらの染色試薬のスペクトル特性を表1に例証する。
【0096】
【表1】

【0097】
本出願人は、これらの染色試薬がリアルタイムPCR検出法との関連で特に有益であることを見出した。それらは、反応を阻害せず、SYBT(登録商標)染料よりも有意に少ない制限である広い濃度範囲で添加することができることが見出されている。(SYTO緑色核酸染色試薬を含むSYTOファミリーの他のメンバーはまた、これらの利点を有してもよいが、それらのシグナルが測定されるために必要とされない反応における使用にあまり適切ではない。)
【0098】
結果として、それらは、核酸含量、したがってPCRの進行のモニター、及び包括的な検出、内部対照の封入、融点分析などに利用することができる。
【0099】
それらは、FET又はFRETによって、フルオレセイン及びその誘導体、例えばJOEを含む多種の最も容易に利用できる染料分子と相互作用することが見出されている。
【0100】
したがって、これらの核酸染色試薬は、フルオレセインのモニターが必要とされる増幅反応、特にPCR増幅に利用可能である様々な蛍光色素に非常に有益な付加を与える。
【0101】
このようにして、更なる局面では、本発明は、増幅中の生物試料の核酸配列を検出する方法を提供し、下記:
熱安定性ポリメラーゼ及び標的核酸配列の増幅のために設定したプライマーを生物試料に添加する工程;
上記で定義される核酸染色試薬及び場合により追加のシグナル蛍光色素の存在下で、ポリメラーゼ連鎖反応によって標的核酸配列を増幅する工程;
核酸染色試薬又は任意の追加の蛍光色素のいずれかによって吸収される波長の光で生物試料を照射する工程;及び
該試料中の増幅された標的核酸配列の存在又は量に関連した試料からの蛍光放出を検出する工程
を含む。
【0102】
核酸染色試薬は、例えば、その内容が参照により本明細書に援用される米国特許第6,569,627号に記載される方法に類似した方法を用いて、特にリアルタイムで、反応を測定するために単独で用いることができ、それは、それらの阻害の欠如がこれに関連して有用だからである。
【0103】
しかしながら、一般に、それらは、これらの染色試薬の発光の波長がこれらの多くと適合可能であるため、別の蛍光色素との組合せで用いられる。
【0104】
特に、それらは、リアルタイムPCR反応において利用可能であり、その場合、増幅の進行がモニターされる。これらの反応は、TAQMAN(商標)アッセイ、及び二重ハイブリダイゼーションプローブを利用するアッセイを含む、上述したリアルタイム蛍光アッセイのいずれかを含むことができる。しかしながら、特に、それらは、ReasonSense(登録商標)アッセイ、又はWO02/097132に記載されるこのアッセイの変形に利用される。
【0105】
したがって、特定の態様では、本発明は、試料中の標的核酸配列の存在を検出するための方法を提供し、該方法は、
(a)標的核酸配列を含むことが疑われる試料に、DNA二重結合剤、及び該標的配列に特異的なプローブを添加し、該プローブは、該DNA二重結合剤からの蛍光を吸収するか又は該DNA二重結合剤に蛍光エネルギーを与えることができる反応分子を含み、ここで、該反応分子又は該DNA二重結合剤の1つは、上述される核酸染色試薬であり、他方は、蛍光色素、例えばフルオレセイン又はその誘導体である、
(b)このように形成した混合物を標的核酸が増幅される増幅反応に供すること、
(c)該プローブが標的配列にハイブリダイズする条件に該試料を供すること、及び
(d)該試料からの蛍光をモニターすること
を含む。
【0106】
適切には、核酸染色試薬は、DNA二重結合剤として用いられる。
上述したタイプの核酸染色試薬を用いることによって、非常に多数の従来の利用可能な蛍光色素であり得る、システムの他のシグナルエレメントのシグナルを重複するシグナルを供給するという問題を避けるか又は最小化することができる。特に、様々な波長を有する核酸染色試薬が利用可能であり、既知の蛍光色素、特にレポーター染料の中から適切な組合せ、並びに励起源を選択できることを意味し、結果として、シグナルの重複を最小化させるか又は発生しないようする。このようにして、DNA二重結合剤からのシグナルからプローブからのシグナルを解明する必要性を排除することができ、意味のあるシグナルが測定される広いバンド幅が利用可能である。これは、装置、又は少なくとも装置に設置されたコンピュータ機器を単純化することができる。
【0107】
当該技術分野において理解されているように、蛍光をモニターするために、システム内の蛍光色素によって吸収される光の波長で試料を照射し、次に、適切な発光波長で蛍光の放出をモニターすることが必要である。1を超える蛍光色素は、このようにしてモニターされ得るが、光の1を越える波長で試料を照射し、様々な波長でも発光をモニターされる。本方法の特定の態様では、試料は、反応分子によって吸収される波長の光によって照射され、反応分子からの発光シグナルがモニターされる。核酸染色試薬からのシグナルをモニターする必要性はなく、それは、これがJOE及びFAMなどの従来の蛍光色素からのシグナルと干渉しそうもないからである。
【0108】
したがって、このアッセイは、より広い範囲の機器で実行することができる。
あるいは、可視スペクトルでの自由なバンド幅のいずれかの領域は、追加のプローブを組み入れることによって引き出すことができ、このプローブは、異なった波長で蛍光を発する異なった標識を含み、それにより、1つの標的を同時にモニターすることができる。これは、複数のPCR反応の場合に特に有用であり得る。
【0109】
上述される核酸染色試薬は、例えば、従来の方法を用いて、特定の又は種々の従来の蛍光色素から蛍光エネルギーを吸収するかどうかを見るために試験可能である。特に、それらは、クエンチング特性を試験するための標識プローブ又は蛍光インターカレート剤であってもよい。この試験を実行するための適したプロトコールは、以下の実施例1に記載されている。
【0110】
反応混合物に添加される核酸染色試薬の量は、適切には、例えば、システム内の他の蛍光色素からのシグナルをクエンチし、測定可能なシグナルを引き起こすには十分であるが、増幅を阻害するには十分でない。これを達成する濃度範囲は、使用される正確な核酸染色試薬に依存して変化し、以下に例示される日常的な方法によって測定可能である。しかしながら、一般に、核酸染色試薬の濃度は、1〜10μM、概して約5μMである。
【0111】
特定のResonSense(登録商標)法は、その用途に非常に多目的である。それは、例えばWO2004/033726に検討されているように、試料中の標的核酸配列に関する定量的及び定性的データを生じさせるように用いることができる。特に、定性的な増幅に与えられる方法だけでなく、二重の不安定化温度又は融点などの特徴的なデータを得るために、追加して又はそれに代えて用いることもできる。
【0112】
ReasonSense(登録商標)アッセイでは、試料は、増幅反応前、反応中又は反応後に試料にプローブをハイブリダイズする条件に晒されてもよい。したがって、このプロセスは、増幅及びモニタリングが初期に添加された全ての試薬を含む1個の容器内で実行することができるという点で、均質なように検出を達成することが可能である。その後の試薬の添加工程は不要である。(これはオプションであるが)固体支持体の存在下でこの方法を達成するのにいかなる必要性もない。
【0113】
プローブは、DNA又はRNAなどの核酸分子を含むことができ、後者が一本鎖形体である場合、標的核酸配列にハイブリダイズする。この例では、工程(c)は、標的核酸が一本鎖を与える条件の使用を伴う。
【0114】
プローブは、溶液中で遊離しているか、又は、例えば生成物の分離に有用な磁気ビーズの表面又は表面プラズモン共鳴検出器若しくは全内部反射蛍光検出器の導波管などの検出装置の表面などの固体支持体に固相化されていてもよい。選択は、観察される特定のアッセイの性質及び採用される特定の検出手段に依存する。
【0115】
特に、使用される増幅反応は、試料中に存在する標的核酸配列のいずれかが一本鎖となる条件に試料を供する工程を伴う。このような増幅反応には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はリガーゼ連鎖反応(LCR)が含まれるが、好ましくはPCR反応である。
【0116】
次に、適切なハイブリダイゼーション条件が与えられるという条件で増幅反応の経過中に、プローブはハイブリダイズすることができる。
【0117】
好ましい態様では、プローブは、これらの条件が増幅反応の各サイクル中に与えられるように設計されてもよい。このようにして、増幅反応の各サイクル中のある点では、プローブは標的配列にハイブリダイズし、そうすると直に蛍光シグナルがプローブと標的配列との間にトラップされたDNA二重結合剤に近接近の結果としてクエンチされる。増幅が進行するにつれて、プローブは、標的配列から分離されるか又は融解し、そのため、それによって発生したシグナルが回復する。ゆえに、増幅の各サイクルでは、プローブがアニールされる点で蛍光標識から蛍光ピークが生じる。ピーク強度は、より多くの標的配列がプローブへの結合に利用可能となるため、増幅が進行するにつれて減少する。
【0118】
各サイクル中の試料の蛍光標識の蛍光をモニターすることによって、増幅反応の進行は、種々の方法でモニターされ得る。例えば、融点ピークによって与えられるデータは、融点ピーク下の面積を計算し、サイクル数に対してプロットしたこのデータによって分析可能である。
【0119】
蛍光は、既知の蛍光光度計を用いて適切にモニターされる。これらからのシグナルは、例えば、光電子増倍管電流の形態で、データ処理装置ボードに送られ、各試料チューブと関連したスペクトルに返還される。複数のチューブ、例えば96チューブは、同時に評価することができる。データは、このようにして、反応全体で周期的な間隔、例えば10分に1回ごとに回収されもよい。
【0120】
このデータは、試料中に存在する標的核酸の量を定量するための機会を提供する。
さらに、プローブハイブリダイゼーションの動力学は、絶対的に標的配列の濃度の測定を可能にする。試料からの蛍光の変化は、試料に対するプローブのハイブリダイゼーションの比率の計算を可能にする。ハイブリダイゼーションの比率における増加は、試料中に存在する標的配列の量に関連する。標的配列の濃度は増幅反応が進むにつれて増加するので、プローブのハイブリダイゼーションはより迅速に行われる。したがって、このパラメータはまた、定量の基礎として用いることができる。データ処理のこのモードは、情報を提供するためのシグナル強度に依存しないという点で有用である。
【0121】
適切な他の蛍光色素は、特定の蛍光プローブラベルに含まれ、ローダミン染料又はCy5、Cy3、Cy5.5、フルオレセイン若しくはその誘導体などの他の染料である。具体的な誘導体は、商品名FAM又はJOEであるカルボキシフルオレセイン、例えば5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン又はそれらのスクシンイミジルエステル類である。しかしながら、上記で検討したように、これらの正確な選択は、利用される核酸染色試薬に依存する。しかしながら、特に赤色核酸染色試薬を用いることによって、使用するために利用可能な蛍光色素の範囲が拡張される。
【0122】
いずれかの標識は、伝統的な方法でプローブに結合されてもよい。プローブに沿った蛍光標識の位置は中間であるが、一般にはそれらがプローブの末端領域で位置される。
【0123】
好ましくは、それらは、プローブの3’端に位置され、次に増幅中のポリメラーゼによるプローブ伸長を阻害するために、それらは、立体的又は化学的ブロック剤として作用するためである。これは、増幅反応中にプローブの3’末端をブロックするために、リン酸化などの他の測定を採用するという必要性を回避することができる。
【0124】
プローブが増幅反応中に用いられるDNAポリメラーゼによって加水分解され、それによって蛍光標識を放出するようなプローブ及びアッセイ条件を設計することは可能である。この場合、プローブは、PCR反応のアニーリング及び伸長時期の間に結合するように設計され、このアッセイ中に用いられるポリメラーゼは、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有するものである。放出された蛍光標識は、DNA二重鎖結合剤によってもはやクエンチされないので、シグナル増加を生じさせる。したがって、この場合には、反応は、遊離した蛍光標識のシグナル増加を観察することによってモニターすることができる。シグナルは、プローブが標的又は生成物と相互作用する上記のものである。しかしながら、この場合、シグナルは、遊離した結合プローブ及びそのままの結合プローブの量の間の相違を測定するためにアニーリング段階中にモニターすることができる。
【0125】
しかしながら、このアッセイでは、プローブは、シグナル産生がプローブを分離せずに達成し得るので、このように消費されることは必要でない。
【0126】
反応の各段階で存在する増幅産物の量に直接関連し、及び/又は、例えば急速PCRにおいて、反応速度が最も重要である完全に可逆的であるシグナルを達成するために、プローブは、標的配列から無傷で放出されるように設計されることが好ましい。これは、例えば、増幅反応の伸長期の間であってもよい。しかしながら、シグナルは、プローブの加水分解に依存しないので、プローブは、増幅サイクル中のいずれかの段階で標的配列とハイブリダイズし融解するように設計されてもよい。例えば、サイクルの伸長期以外の段階で最も強力にハイブリダイズするプローブは、増幅反応との干渉が最小化することを確実にする。
【0127】
伸長温度で又はそれ以下で強力に結合するプローブが用いられる場合、標的配列から無傷でのそれらの放出は、増幅反応中のポリメラーゼのようなTaq又はPwoのStoffle断片などの酵素を欠損している5’−3’エキソヌクレアーゼを用いることによって達成することができる。
【0128】
次に、プローブはこの反応に再度参加してもよく、それによりプローブの経済的な用途を示す。
【0129】
標的に可逆的にハイブリダイズし、加水分解されないプローブを用いたこの方法で生じたデータは、種々の方法で解釈可能である。その最も簡単な形態で、増幅反応の経過又は終端でプローブのアニーリング温度での蛍光標識の蛍光の減少は、存在する標的配列の量の増加を指示し、増幅反応が進行し、したがって、実際に標的配列が試料中に存在するという事実を示唆している。
【0130】
しかしながら、上記で概説したように、全体を通して増幅反応をモニターすることによって定量も可能である。
【0131】
最後に、下記にさらに検討されるように、配列に関する情報を得るために、終点測定又は全体のいずれかで特徴付けデータ、特に特定の融点分析を得ることが可能である。
【0132】
このようにして、本発明の好ましい態様には、核酸増幅を検出する方法が含まれ、該方法は、(a)核酸ポリメラーゼ、(b)該標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマー、(c)該標的ポリヌクレオチド配列に結合することができ、蛍光標識を含むオリゴヌクレオチドプローブ、及び(d)該蛍光標識からの蛍光エネルギーを吸収することができる核酸染色試薬、特に上述される赤色核酸染色試薬の存在下で標的ポリヌクレオチドに対して核酸増幅を行うこと;及び、増幅反応中に蛍光の変化をモニターすることを含む。
【0133】
増幅は、当該技術分野において十分に理解されているように、DNA鎖中の標的ヌクレオチド配列だけが増幅されるように設計されるプライマー対を用いて適切に実行される。核酸ポリメラーゼは、適切には、Taqポリメラーゼなどの熱安定性ポリメラーゼである。
【0134】
増幅反応が実行され得る適切な条件は、当該技術分野において周知である。最適条件は、関連する特定のアンプリコン、使用されるプライマーの性質、及び採用される酵素に依存して、各場合で利用可能である。最適な条件は、当業者によって各場合において決定することができる。典型的な変性温度は95℃のオーダーであり、典型的なアニーリング温度は55℃の温度であり、伸長温度は72℃のオーダーである。
【0135】
前述のように、特定の態様では、試料は、オリゴヌクレオチドプローブの蛍光標識によって吸収される波長の光によって照射され、蛍光標識からの発光シグナルは、反応の進行を測定するためにモニターされる。このシステムにおける他の蛍光色素はまた、例えば、複数のアッセイで所望によりモニターされてもよく、これらは、従来の方法を用いて解析される必要がある場合がある。しかしながら、核酸染色からのシグナルをモニターする必要はない場合があるが、ただし、これは、蛍光標識からのシグナルと重複せず、かつ、顕著に干渉しないという条件である。
【0136】
適切には、蛍光は、増幅プロセスを通じて、好ましくは各増幅サイクル中の同じ点でモニターされる。特に、蛍光は、プローブが標的にアニールする温度でモニターすることが必要である。例えば、これは、約60℃の温度であってもよい。
【0137】
標的が形成されるにつれて、プローブはそれにアニールされるようになり、核酸染色試薬に近接近してもたらされる結果としてクエンチされる。この蛍光の減少は、増幅の進行を指示している。
【0138】
試料に存在するTaqポリメラーゼなどのポリメラーゼは、プローブを標的から取り除く効果を有する。この効果は、プローブのアニーリング温度などのポリメラーゼに対する次善の温度で低レベルで起こる。したがって、この温度で、これらの2つの反応、アニーリング温度でのプローブの結合及びプローブを標的から取り除くためのポリメラーゼの効果は競合する。一般に、前者の反応は、かなりの数の反応サイクルに対して優勢であり、増幅反応をモニターすることが可能である。しかしながら、最終的に、バランスシフト及びポリメラーゼの効果がより優勢になると、蛍光の上昇が観察される場合がある。したがって、これらの結果は、「フック(hook)」効果を表すことができ、生成物の再アニーリングがプローブ/生成物アニーリングよりも好適である場合に生じると考えられ、増幅反応の終了での蛍光曲線の方向に変化を生じさせる。本発明の方法を用いて得られるデータは、増幅反応の進行をモニターするために処理することができ、したがって、試料中に存在する標的の量を定量するために用いることができる。
【0139】
得られたデータを解釈するために、ある種の調整が必要となる場合がある。例えば、伝統的なPCRモニタリング反応、例えばWO99/28500に記載されているものでは、PCR反応は、蛍光の指数関数的な上昇をもたらし、そのため、バックグランド蛍光の基準調整は得られた最低値から誘導されることが必要である。
【0140】
対照的に、本出願の方法では、PCR反応の進行は、進行的により多くの標識されたプローブがDNA二重結合剤、及び特に核酸染色によってクエンチされるので、最終的には指数関数的な減少となる。したがって、基本調整は、達成される蛍光の最高レベルに基づくことが必要である。
【0141】
これは、試料反応からデータを採取し、全てのデータポイントに下記の方程式:
y=1/x
z=y−MIN
を適用することによって適切になされる。式中、xは、LightCylerなどのPCR機器からのデータポイントであり、zは、基本調整されたデータポイントであり、MINは、全データセットと比較したyについての最小値である。Z対サイクル数のプロットは、適切な基準調整が計算されるのを可能にする。
【0142】
この方法は、特定の配列の特徴を決定するためにハイブリダイゼーションアッセイにおいて用いることができる。
【0143】
したがって、更なる局面では、本発明は、配列の特徴を決定するための方法を提供し、該方法は、
(a)該配列を含むことが疑われる試料に、該標的配列に特異的な蛍光標識したプローブ、及びプローブ上の蛍光標識からの蛍光を吸収可能なDNA二重結合剤を添加すること、ここで、プローブ又はDNA二重結合剤の標識の1つは核酸染色試薬であり、特に上述される赤色核酸染色試薬である;
(b)該プローブが標的配列にハイブリダイズする最中の可変セットの反応条件に該試料を供すること;
(c)該試料からの蛍光をモニターし、プローブの試料へのハイブリダイゼーション、又はプローブと標的核酸配列との間に形成される二重鎖の不安定化の結果として蛍光が変化する、該配列に特徴的な特定の反応条件を決定すること
を含む。
【0144】
適切な反応条件には、温度、電気化学的なもの、又は特定の酵素若しくは化学物質の存在に対する応答が含まれる。これらの特性は変化するので、蛍光の変化をモニターすることによって、配列の正確な性質の情報特徴付けを決定することができる。例えば、温度の場合では、プローブが標的配列から分離又は「融解する」温度が決定され得る。これは、例えば、遺伝子診断における対立遺伝子変異を含む配列における多形を検出し、所望により定量するためにも非常に有用であり得る。「多形」によって、配列、特に天然において生じる場合がある転位、トランスバージョン、挿入、欠失又は反転が含まれる。
【0145】
プローブの融解の履歴現象は、標的配列がたった1つの塩基対によって変化する場合に異なっている。したがって、試料がたった1つの対立遺伝子変異を含む場合、プローブの融解の温度は、たった1つの別の対立遺伝子変異を含む試料に観られるものとは異なっている特定の値となる。試料は、対立遺伝子変異のそれぞれに対応する2つの融点を示す対立遺伝子の両方を含む。
【0146】
類似の考察は、電気化学的特性に関して、又はある種の酵素若しくは化学物質の存在下で適用する。プローブは、電気化学ポテンシャルが適用され得る固体表面に固相化することができる。標的配列は、表面の正確な性質に依存して特定の電気化学的値でプローブに結合するか又は取り除かれる。
【0147】
この態様は、上述したPCR反応などの増幅反応と連動して作用することができ、又は個別に採用することができる。
【0148】
本発明の更なる側面には、本発明の方法に用いられるキットが含まれる。これらのキットは、核酸染色試薬、特に、上述したような赤色核酸染色試薬を含む。キットの他の潜在的な成分は、増幅反応に用いられる試薬、例えばDNAポリメラーゼ(「ホットスタート」反応用の化学的に修飾したTAQを含む)、プライマー、バッファー、及び抗Taq抗体などの「ホットスタート」試薬などのPCRプロセスを改善することで知られている添加物、又は同時係属の国際特許出願PCT/GB02/01861に記載されるピロリン酸塩及びピロホスファターゼを含む。キットには、付加的に又は代替的に、蛍光標識される標的配列に対するプローブが含まれてもよい。特に、核酸染色試薬は、プローブの蛍光標識から蛍光を吸収することである。
【0149】
キットは、単一の容器に全ての試薬が一緒に含まれてもよく、又はその場で混合するために別々の容器に入っていてもよい。
【0150】
上述したような核酸染色試薬の使用は、ユニバーサル・アクセプター・アレンジメント(Universal Acceptor arrangement)を提供し、その場合、複数の光源を用いて、1個のDNA結合染料にエネルギーを移すことが可能である。これは、多数の利点を生じ、アッセイが多重で良好に実行されるという事実が含まれる。それは多くのプラットフォームで行うことができ、アクセプター染料のモニタリングを必要としない。
【0151】
さらに、染料の波長の範囲は、新規の可能性を提供する。同じ反応において、ユニバーサル・ドナー及びユニバーサル・アクセプターの両方のメカニズムを有するようにアレンジすることが可能である。短い波長(例えば、UVダイオード)は、上述される二重結合剤として用いられると、より長い波長の核酸染色試薬へのエネルギー移動のために標識を励起することができる。第2のダイオードは、蛍光標識を用いて第2のプローブへの更なるエネルギー移動用に同じ核酸染色試薬を励起するために用いることができる。
【0152】
PCRを実行するようにアレンジされた市販されている大部分の機器は、複数の光源を有するが、SYBR染料は業界標準となっている。しかしながら、別の波長を用いれば、プローブ標識発光と干渉しないDNA結合染料は容易に利用可能な技術オプションである。
本発明は、ここで、添付の図面に関する例証として具体的に記載される。
【実施例】
【0153】
実施例1
本出願人は、核酸染色試薬のSYTO(登録商標)赤色ファミリーから蛍光標識したプローブ及び様々な核酸染色試薬を利用して実験を行った。これらの染料は、阻害なしにPCRに添加することができ、高濃度で添加され得ることが見出された。それらは、プローブ上の多数の蛍光色素と組み合わせることができるように広範囲の波長で利用可能である。
【0154】
バシラス・グロビイ(Bacillus globii)遺伝子配列のためにResonSense(登録商標)フォーマットのPCRは、下記の実験プロトコールを用いて実行した。
【0155】
水性PCR混合調合物を調製し、下記の成分:
Tris pH8.8 50mM
ウシ血清アルブミン(BSA) 250ng/μl
塩化マグネシウム 3mM
dUTPヌクレオチド 200μM
Taqポリメラーゼ 0.04ユニット/μl
抗Taq抗体 0.04ユニット/μl
フォワード・プライマー 1μM
リバース・プライマー 1μM
SYTO(登録商標)染料 5μM
蛍光標識したプローブ 0.2μM
を含んでいた。
【0156】
フルオレセイン標識したプローブ又はSYTO(登録商標)染料のいずれかを含まない負の対照反応も行った。
【0157】
試験したSYTO染料には、SYTO(登録商標)60、SYTO(登録商標)61及びSYTO(登録商標)63が含まれる。次に、反応混合物を遠沈させ、下記のサイクルプログラムに基づいてRoche Lightcyclerで実行した:
【0158】
変性
95℃、5分間
サイクル×50
95℃、5秒
55℃、20秒
74℃、5秒
融解分析×1
55℃、15秒
【0159】
0.1℃/秒で95℃まで傾斜してゆっくり上昇させる。この工程全体で蛍光を回収した。
試験した染料は、この手法を通じてフルオレセインシグナルを首尾よくクエンチした。
【0160】
これらの実験の結果は図1〜6に示される。図1〜4において、F1チャネルは、2つのDNA希釈剤の増幅とともに蛍光の減少を示す。F3チャネルは、インターカレーターの赤色発光における減少を示す。
【0161】
グラフ(図5及び6)は、SYTO63/フルオレセイン実験に関して蛍光の逆数プロットを示す。SYTO63/フルオレセインの比率も提供される。しかしながら、Syto63(F3チャネル)からフルオレセインF1チャネルのスペクトルの重複がないため、結果を分析するためにこれらのエネルギーをモニターし、スペクトル的に解析する必要はない。
【0162】
実施例2
口蹄疫ウイルス(FMDV)遺伝子配列のためのResonSense(登録商標)フォーマットにおけるPCRは、下記の実験プロトコールを用いて実行される。標的のためのプライマー及びプローブは、従来の方法を用いて設計した。プローブをFAM分子で標識した。内部対照核酸をそのためのJOE標識したプローブとともに添加した。
【0163】
下記のプロトコールを用いた。
【0164】
【表2】

【0165】
【表3】

【0166】
反応中、FAMは、LC2.0装置の青色LEDによって励起した。
【0167】
読み取りパラメータ
FAM−JOE−Syto63色補正:
FMDV特異的なテンプレート 530nm(FAM 521nm)
FMDV−λ競合内部対照 560nm(JOE 548nm)
【0168】
試料の10-3〜10-6の希釈範囲全体での結果をそれぞれ図7〜9に示す。
【0169】
アンプリコンはPCR中に蓄積されるので、プローブ上のFAM標識は、SYTO63はそこからのエネルギーを受け入れるためクエンチされるようになることは図7から明確である。FAMシグナルは、サイクル数の増加及び様々な量の開始テンプレートとともに減少していることが明確に観察され、これは、増幅をモニターするための確実なシグナルシステムであることを指示している。
【0170】
同様のシグナルは、内部対照配列からのJOEシグナルで見られる(図8)。FAM及びJOEシグナルは、LightCycler 2.0ソフトウェアの色補正アルゴリズムを用いて解析された。
【0171】
対照的に、図9に示されるように、FAM配列からの発光は670nmで測定され、サイクル数の増加及び様々な量の開始テンプレートとともに増加する。したがって、FAM及びJOEシグナルからのエネルギーを吸収している。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1a】SYTO63を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図1b】SYTO63を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図1c】SYTO63を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図1d】SYTO63を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図2a】SYTO62を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図2b】SYTO62を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図2c】SYTO62を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図2d】SYTO62を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図3a】SYTO61を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図3b】SYTO61を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図3c】SYTO61を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図3d】SYTO61を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図4a】SYTO60を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図4b】SYTO60を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図4c】SYTO60を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図4d】SYTO60を用いたフルオレセインプローブのクエンチングの結果を示す。
【図5a】SYTO63/フルオレセイン実験に関連した蛍光の逆数プロットを示す。
【図5b】SYTO63/フルオレセイン実験に関連した蛍光の逆数プロットを示す。
【図5c】SYTO63/フルオレセイン実験に関連した蛍光の逆数プロットを示す。
【図5d】SYTO63/フルオレセイン実験に関連した蛍光の逆数プロットを示す。
【図6a】SYTO63/フルオレセイン実験に関連した蛍光の逆数プロットを示す。
【図6b】SYTO63/フルオレセイン実験に関連した蛍光の逆数プロットを示す。
【図7】本アッセイで使用される標的核酸用のオリゴヌクレオチドプローブに結合した蛍光色素(FAM)からの発光シグナルを示す。
【図8】本アッセイで使用される内部対照の蛍光色素(JOE)からの発光シグナルを示す。
【図9】図7及び8に示されるようなResonSense(商標)アッセイとの関連で用いた場合のSYTO63からの発光シグナルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)での核酸の検出における赤色核酸染色試薬(stain)の使用。
【請求項2】
PCRがリアルタイムPCRである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
核酸染料が、600nmを超える波長で蛍光を発する、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
核酸染色試薬が、610〜690nmの波長で蛍光を発する、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
染料(dye)が、SYTO(登録商標)赤色蛍光核酸染色試薬である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
SYTO(登録商標)染料が、SYTO(登録商標)17、SYTO(登録商標)59、SYTO(登録商標)60、SYTO(登録商標)61、SYTO(登録商標)62、SYTO(登録商標)63及びSYTO(登録商標)64から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
核酸染色試薬が、式(IIA):
【化1】

(式中、
nは、0、1又は2であり、R30、R31及びR32は、独立して、水素、C1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択され;
2は、水素、場合によりスルホン酸塩、カルボキシ又はアミノによって置換される1〜6個の炭素を有するアルキル基であり;
3及びR4は、独立して、H;飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状であって、1〜6個の炭素を有するアルキル;又はハロゲン;又はアリール、ヘテロアリール、若しくは3〜10個の炭素を有し、そのいずれかが場合によりハロゲン、アミノ、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ若しくはカルボキシアルキルによって置換されてもよく、ここで、各アルキル基が1〜6個の炭素を有し、又はテール部分によって置換されてもよいシクロアルキルから選択される環式基;又は−OR8、−SR8、−(NR89);又はテールであり;ここで、R8及びR9は、同一であるか又は異なっていてもよく、独立して、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基;又は1〜2個の脂環式環若しくは芳香族環であり;あるいは、R8及びR9は、一緒になって、−(CH22−V−(CH22−であり、ここで、Vは、一重結合、−O−、−CH2−、又は−NR10−であり、R10は、H又は1〜6個の炭素を有するアルキルであり;
5は、ヘテロアリール基であり;
30、R31、及びR32は、独立して、H、1〜6個の炭素を有するアルキル、3〜10個の炭素を有するシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり;ここで、L及びブリッジは、独立して、1つの共有結合又は直鎖状若しくは分岐状の環式若しくはヘテロ環式の飽和若しくは不飽和である共有連結であって、C、N、P、O及びSからなる群から選択される1〜16個の水素でない原子を有し、該連結が、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル、アミド結合;又は一重、二重、三重若しくは芳香族炭素−炭素結合;又はリン−酸素、リン−硫黄結合、窒素−窒素若しくは窒素−酸素結合;又は芳香族結合若しくはヘテロ芳香族結合のいずれかの組合せを含むようにし;テールがヘテロ原子含有部分である)
である赤色染色試薬である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
2が、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
nが0である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
5がピリジルである、請求項6〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
3が水素であり、R4がテールである、請求項6〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
テール基が、基:
リンク−スペーサー−キャップ
(式中、リンクはNR20であり、ここで、R20は、水素、C1-8アルキル基又は基−スペーサー’−キャップ’から選択され、スペーサー’及びキャップ’は、それぞれスペーサー及びキャップについて下記に定義される基であり、
スペーサーは、直鎖状又は分岐状の飽和鎖における1〜6個の炭素原子であり、キャップは、基OR21、−SR21、−NR2122又は−N+212223.PSI-であり、R21、R22、及びR23は、独立して、H、又は場合により置換された直鎖状若しくは分岐状の1〜8個の炭素を有するアルキル又はシクロアルキルであり、PSI-は対イオンである)
である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
テール基が、サブ式(i)、(ii)又は(iii):
【化2】

で表される基である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
式(IIA)で表される化合物が、式(III):
【化3】

で表される化合物である、請求項7〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
増幅中の生物試料の核酸配列を検出する方法であって、
熱安定性ポリメラーゼ及び標的核酸配列の増幅用に設定されているプライマーを生物試料に添加する工程;
請求項1〜14のいずれか1項に定義される核酸染色試薬及び場合により追加のシグナル蛍光色素(fluorophore)の存在下でポリメラーゼ連鎖反応によって標的核酸配列を増幅する工程;
核酸染色試薬又は任意の追加のシグナル蛍光色素のいずれかによって吸収される波長の光を用いて生物試料を照射する工程;及び
該試料中の増幅した標的核酸配列の存在又は量に関連した該試料からの蛍光放出を検出する工程
を含む前記方法。
【請求項16】
試料中の標的核酸配列の存在を検出するための請求項15に記載の方法であって、
(a)該標的核酸配列を含むことが疑われる試料にDNA二重鎖結合剤、及び該標的配列に特異的なプローブを添加すること、ここで、該プローブは、該DNA二重鎖結合剤から蛍光を吸収し、又は該DNA二重鎖結合剤に蛍光エネルギーを与えることができる反応分子を含み、ここで、該反応分子又は該DNA二重鎖結合剤の1つは、請求項1〜14のいずれか1項に定義される核酸染色試薬であり、その他は、フルオレセイン又はその誘導体などの蛍光色素である;
(b)このように形成した混合物を標的核酸が増幅される増幅反応に晒すこと;
(c)該試料を該プローブが標的配列にハイブリダイズする条件に晒すこと;及び
(d)前記試料から蛍光をモニターすること
を含む前記方法。
【請求項17】
前記試料が、反応分子により吸収される波長の光によって照射され、該反応分子からの発光シグナルがモニターされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
核酸染色試薬がDNA二重鎖結合剤として使用される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応である、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
(a)核酸ポリメラーゼ、(b)標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマー、(c)該標的ポリヌクレオチド配列に結合することができ、蛍光標識を含むオリゴヌクレオチドプローブ、及び(d)該蛍光標識から蛍光エネルギーを吸収することができる請求項1〜14のいずれか1項に定義される核酸染色試薬の存在下で該標的ポリヌクレオチドに基づいて核酸増幅を行うこと;及び、増幅反応中に蛍光の変化をモニターすることを含む核酸増幅を検出する方法。
【請求項21】
前記試料が蛍光標識により吸収される波長の光によって照射され、蛍光分子からの発光シグナルがモニターされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
データが試料反応から採取され、下記の方程式:
y=1/x
z=y−MIN
(ここで、xは、LightCylerなどのPCR機器からのデータポイントであり、zは、基準に調整したデータポイントであり、MINは、全データセットに対してyについての最小値である)
が全てのデータポイントに適用される、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
配列の特徴を決定するための方法であって、
a)該配列を含むことが疑われる試料に、該標的配列に特異的な蛍光標識したプローブ、及びプローブ上の蛍光標識からの蛍光を吸収することができるDNA二重鎖結合剤を添加すること、ここで、プローブ上のラベル又はDNA二重鎖結合剤の1つが請求項1〜14のいずれか1項に定義される核酸染色試薬である;
b)該プローブが標的配列にハイブリダイズする可変反応条件に該試料を晒すこと;
c)該試料からの蛍光をモニターし、プローブによる試料へのハイブリダイゼーションの結果、又は該プローブと標的核酸配列との間に形成される二重鎖の不安定化の結果として蛍光が変化する該配列に特徴的な特定の反応条件を決定すること
を含む前記方法。
【請求項24】
核酸の検出、核酸増幅の進行の検出に使用されるか、又は核酸配列の特徴を決定するためのキットであって、請求項1〜14のいずれか1項に定義される赤色核酸染色試薬を含む前記キット。
【請求項25】
核酸増幅反応に用いられる1以上の試薬をさらに含む、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
核酸増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応である、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
核酸標的配列に特異的な蛍光標識したプローブをさらに含み、該核酸染色試薬がプローブ上の蛍光標識からの蛍光を吸収する、請求項24〜26のいずれか1項に記載のキット。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−526542(P2009−526542A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554850(P2008−554850)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000559
【国際公開番号】WO2007/093816
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(506072055)エニグマ ディアグノスティックス リミテッド (13)
【Fターム(参考)】