説明

検出装置、検出方法、静脈センシング装置、走査プローブ顕微鏡、歪み検知装置および金属探知機

【課題】新規な原理に基づき、血管などの各種の対象物を高感度かつ高精度で検出することができる検出装置および検出方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、上記の直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子とにより検出装置を構成する。m個の電荷は4重極、平面6重極、平面8重極、立体8重極などである。4重極を構成する場合には正方形の頂点に4個の電極11〜14を配置する。これらの電極11〜14の中心に検出電極20を配置する。この検出装置を用いて静脈センシング装置などを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新規な原理に基づく検出装置、検出方法、静脈センシング装置、走査プローブ顕微鏡、歪み検知装置および金属探知機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体内における血管などを非侵襲的に測定する測定装置として、本出願人により提案されたものがある(特許文献1参照。)。この測定装置では、複数の周波数にそれぞれ対応する各距離において誘導電磁界に比して大きい強度が得られる準静電界を発信電極から発信し、この距離に対応する周波数の準静電界の強度変化を検出電極で検出することにより、血管などの状態を測定する。
【0003】
一方、従来、磁界感応センサを備えた近接スイッチが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この近接スイッチでは、垂直方向の磁化方向を有するU字形の永久磁石のU字の脚部の間に、3つの同名の極によって無磁束の領域が形成され、この領域において磁界に感応するセンサが取り付けられており、かつU字形の脚部の上方においてU字の基部に平行な平面において接近可能な面状の強磁性トリガ部材を備え、このトリガ部材がU字形の脚部の2つの極に接近する際に、前記無磁束の領域の相殺によってトリガされる、センサの切換信号が評価可能である。この近接スイッチを図49AおよびB(特許文献2の図1と等価な図)に示す。この近接スイッチの原理は次の通りである。図49Aに示すように、この近接スイッチにおいては、U字形の永久磁石のU字の脚部の間に、3個のN極で磁界を打ち消すために無磁束の領域、従って無磁界領域が生ずる。図49Bに示すように、トリガ部材として強磁性体が近接したとき、無磁界領域であった位置に磁界が生ずる。無磁界領域に取り付けた磁界感応センサによりこの磁界の変化を検出し、強磁性体の近接を推測する。
また、磁界感応センサを固有の永久磁石装置の無磁界領域に配設することが知られている(特許文献3参照。)。
【0004】
特許文献2、3で開示された技術によれば、従来は磁界感応センサでは検出できなかった強磁性体などの近接を検出することができる。その原理は、永久磁石の磁界と強磁性体との相互作用により磁界が歪み、それによって無磁界領域に変化が生ずることを磁界感応センサで検出するものである。しかしながら、特許文献2、3には、電荷を発生させる電極と、電界を検出する電界検出素子とを用いる検出装置については、何ら開示も示唆もされていない。
生体の各組織は、電気的特性(誘電率、導電率)が異なる、また組織ごとに周波数特性が異なる誘電体であることが知られている(非特許文献1、2、3参照。)。この性質(組織ごとの電気的特性の違い)を利用して、電気的な方法で組織を検出する方法であるインピーダンスCT(Computed Tomography)が従来から研究されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−73974号公報
【特許文献2】特表平9−511357号公報
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3901678号明細書
【非特許文献1】C Gabriel, S Gabriel and E Corthout: "The dielectric properties of biological tissues: I. Literature survey", Phys. Med. Biol. 41(1996) 2231-2249
【非特許文献2】S Gabriel, R W Lau and C Gabriel: "The dielectric properties of biological tissues: II. Measurements in the frequency range 10 Hz to 20 GHz", Phys. Med. Biol. 41(1996) 2251-2269
【非特許文献3】S Gabriel, R W Lau and C Gabriel: "The dielectric properties of biological tissues: III. Parametric models for the dielectric spectrum of tissues", Phys. Med. Biol. 41(1996) 2271-2293
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの知見によれば、特許文献1に提案された測定装置では、例えば血管と表皮との間にわずかでも脂肪組織が存在すると感度を得ることができず、血管の状態を正確に測定することが困難であった。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、新規な原理に基づき、血管などの各種の対象物を高感度かつ高精度で検出することができる検出装置および検出方法を提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、上記の新規な検出装置を用いた高性能の静脈センシング装置、走査プローブ顕微鏡、歪み検知装置および金属探知機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させ、上記の直線上の電界を検出するようにすることにより、上記課題を解決することができることを見出し、この発明を案出するに至った。この新規な原理に基づく検出装置および検出方法は、特許文献2、3に基づいて容易に考えられるものではない。以下にその理由について説明する。
【0008】
磁界と電界とは、電界での電荷に相当する単極子( モノポール) が磁界には存在しない点で異なるが、単極子ではなく双極子(ダイポール)で構成した場合には両者は基本的に等価となる。従って、特許文献2、3に開示された2つの従来技術における磁界を電界に置き換え、磁気双極子を電気双極子に置き換えることにより、特許文献2、3に開示された技術と同様な原理に基づく電界センサの実現が一見可能であるように考えられるが、次のような理由により、実際にはそのようなことは不可能である。すなわち、これらの従来技術において上記のような置き換えを行っただけでは、電界感応センサから信号を得るための配線自体が電極となってしまい、これが極子構造に影響を及ぼして対称性が喪失することにより電界がゼロとなる領域が形成されず、電界センサとして成立しなくなる。言い換えれば、磁界センサの構造と電界センサの構造とは、その物理効果の違いから構造的な互換性がない。また、上記のような置き換えを行った場合、図49Aに破線の円で示す3つのN極が電荷による3重極に対応するが、この発明は3重極では成立せず、最低でも4重極以上が必要であり、この点でも磁界センサの構造と電界センサの構造とは互換性がない。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するために、この発明の第1の発明は、
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、
上記直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子と
を有することを特徴とする検出装置である。
【0010】
この検出装置においては、典型的には、m個の電荷のうちの互いに隣り合う電荷の符号は互いに異なり(一方が正電荷、他方が負電荷)、また、m個の電荷の絶対値は互いに等しい。
この検出装置においては、回転対称なm個の電荷の回転軸である直線上では、これらの電荷によって発生する電界の重ね合わせにより、電界E0 が0[V/m]となる。ここでは、この電界E0 =0[V/m]の領域(点、線、面)を特異領域と呼び、E0 =0[V/m]の領域の近傍にE0 ≒0[V/m]の領域が存在する場合には、電界E0 =0[V/m]の領域とこのE0 ≒0[V/m]の領域との全体を特異領域と呼ぶ。直線上の電界を検出するとは、この特異領域の電界を検出することを意味する。検出感度および検出精度の向上を図る観点からは、この特異領域の内外で急峻な電界の強度変化を起こすことが望ましい。すなわち、電界の強度変化を直接測定する場合には、電界E0 がE0 +ΔEに変化したとき、特にE0 >>ΔEならば、変化量ΔEはE0 に比してわずかであるため検出が難しく、アンプで増幅しても変化量ΔEとE0 との比率は変わらないため検出困難なことは改善できないのに対し、特異領域で電界を検出すれば、検出した電界強度がそのまま変化量ΔEに相当するため、電界変化を高精度かつ高感度に検出することができる。
【0011】
電界検出素子およびこの電界検出素子から外部に引き出す配線は上記の直線上に設けることが望ましい。これは、電界検出素子から外部に引き出す配線を等電位面上に設けることを意味する。すなわち、電界検出素子およびこの電界検出素子から外部に引き出す配線を等電位面上に設けることにより、m個の電荷の回転対称性を保つことができる。
この検出装置においては、何らかの原因により、特異領域の電界がE0 =0[V/m]またはE0 ≒0[V/m]以外に変化することを検出することにより、m個の電荷の回転対称性が破れたことを検出することができる。
【0012】
m個の電荷は、例えば、多重極または平面2n重極(nは2以上の整数)を構成し、あるいは正多面体または準正多面体の頂点に発生するようにする。多重極は、k個(kは2以上の整数)の双極子を、隣り合う双極子の電荷の符号が互いに逆になるように配置したものとみなすことができ、例えば4重極、8重極などが挙げられる。平面2n重極は、平面上にn個の双極子を、隣り合う双極子の電荷の符号が互いに逆になるように配置したものとみなすことができ、例えば4重極、6重極、8重極などが挙げられる。正多面体としては立方体が挙げられ、これは8重極を発生させる場合に用いることができる。準正多面体としては、切隅8面体(The Truncated Octahedron)や大菱形立方八面体(The Rhombitruncated cuboctahedron)などが挙げられる。
【0013】
例えば、4重極では、電荷分布は回転軸である直線の周りの180度の回転に対して不変な2回回転対称性を有し、回転軸である直線は1つだけである。この場合、この直線あるいはこの直線およびその近傍の領域が特異領域である。この4重極は、特異領域の内外の電界変化が特に急峻であり、電荷の回転対称性が破れたことの検出感度および検出精度が顕著に優れているので、特に好ましい。立体構造の8重極では、電荷分布は回転軸である直線の周りの180度の回転に対して不変な2回回転対称性を有し、回転軸である直線は互いに直交する3つの直線である。この場合、これらの直線あるいはこれらの直線およびその近傍の領域が特異領域である。
【0014】
この検出装置は、例えば、(1)m個の電極のうちの少なくとも1つの電極の位置の変化、(2)m個の電極のうちの少なくとも1つの電極に発生する電荷の電荷量(電圧)の変化、(3)m個の電極の外部の電荷(帯電した導体を含む)または物体(導体または誘電体からなるもの)を検出することができる。すなわち、(1)では、少なくとも1つの電極の位置が何らかの原因により変化すると、m個の電荷の回転対称性が破れるため、m個の電荷の回転軸である直線上の電界がE0 =0[V/m]またはE0 ≒0[V/m]以外に変化する。(2)では、少なくとも1つの電極に発生する電荷の電荷量が何らかの原因により変化すると、m個の電荷の回転対称性が破れるため、m個の電荷の回転軸である直線上の電界がE0 =0[V/m]またはE0 ≒0[V/m]以外に変化する。(3)では、m個の電極の外部に電荷または物体(導電体または誘電体からなるもの)が存在すると、その影響でm個の電荷の回転対称性が破れるため、m個の電荷の回転軸である直線上の電界がE0 =0[V/m]またはE0 ≒0[V/m]以外に変化する。
【0015】
m個の電極の電荷は、これらの電極に交流電圧を印加することにより発生するものであってもよいし、静電荷であってもよい。特に、m個の電極に正弦波の交流電圧を印加することによりm個の電荷を発生させる場合には、正弦波の波長をλ、m個の電荷を構成する双極子の長さをdとしたとき、d<<λ/2πであることが好ましい。この条件は、m個の電荷により発生する電界において、準静電界が支配的となるようにするためのものである。
【0016】
m個の電極は、必要に応じて形状を選択することができるが、一般的には、点電極または平面電極であり、検出感度および検出精度の観点からは正方形の平面電極が好ましい。m個の電極を1基本ユニットとした場合、検出装置は、1基本ユニットだけ用いてもよいし、この1基本ユニットを一次元アレイ状または二次元アレイ状に複数配置したマトリックスアレイ電極を用いてもよい。
電界検出素子の検出原理や構成は問わないが、一般的には検出電極が用いられる。この検出電極は、単一電極からなるものであってもよいが、検出感度および検出精度の向上の観点からは、例えば1対の電極を近接させた双極子(ダイポール)型のものを用いることが望ましい。この場合、このダイポール型の電極の間の電位差を測定し、必要に応じてこの電位差を増幅器などを用いて増幅することにより電界を検出することができる。このダイポール型の電極を2つ互いに直交して配置させて検出電極としてもよい。電界検出素子としては電気光学結晶を用いてもよく、電界によって屈折率変化が起こる電気光学効果を利用して電界を検出することができる。この場合、例えば、この電気光学結晶に偏波面を一定にしたレーザ光を照射し、この電気光学結晶を透過後のレーザ光の偏波面を検出し、偏波面の回転角度から屈折率変化を測定し、屈折率変化から電界を検出する。この電気光学結晶としては各種のものを用いることができる。
この検出装置は、電界の検出に基づいて電荷の検出、導体または誘電体の検出、物体の位置変化の検出などを行うことを利用する各種の装置、機器、システム、顕微鏡などに用いることができる。
【0017】
第2の発明は、
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させ、上記直線上の電界を検出することを特徴とする検出装置である。
第3の発明は、
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させ、上記直線上の電界を検出することを特徴とする検出方法である。
【0018】
第4の発明は、
検出対象または検出対象の状態変化を検出する検出装置であって、
上記検出対象に電界を印加する複数の電界印加手段と、
上記検出対象に近接する検出領域の電界を検出する電界検出手段と、
上記電界検出手段による上記検出領域の電界の変化を検出して、上記検出対象または上記検出対象の状態変化を検出する処理手段とを有し、
複数の上記電界印加手段は、上記検出対象が上記検出領域に近接していない、または上記検出対象が所定の状態である場合に、複数の上記電界印加手段から印加される電界が打ち消しあって、上記検出領域および上記電界検出手段の近傍の電界が略0となるような電界を印加する
ことを特徴とするものである。
ここで、電界印加手段の数は、典型的にはm個(mは4以上の偶数)である。また、検出領域とは、電界検出手段が電界を検出する領域を意味する。
【0019】
第5の発明は、
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、
上記直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子とを有する検出装置を用いた
ことを特徴とする静脈センシング装置である。
【0020】
第6の発明は、
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の整数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、
上記直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子とを有する検出装置を用いた
ことを特徴とする走査プローブ顕微鏡である。
ここで、走査プローブ顕微鏡(SPM)には、原子間力顕微鏡(AFM)、走査トンネル顕微鏡(STM)などの各種のものが含まれる。
【0021】
第7の発明は、
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の整数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、
上記直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子とを有する検出装置を用いた
ことを特徴とする歪み検知装置である。
【0022】
第8の発明は、
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の整数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、
上記直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子とを有する検出装置を用いた
ことを特徴とする金属探知機である。
第2〜第8の発明においては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して述べたことが同様に成立する。
【0023】
上述のように構成されたこの発明においては、m個の電荷の回転軸である直線およびその近傍の特異領域では電界がE0 =0[V/m]またはE0 ≒0[V/m]であるため、m個の電荷の対称性が保たれているときには、この電界が保たれる。何らかの理由によりm個の電荷の対称性が破れたときは、特異領域の電界がE0 =0[V/m]またはE0 ≒0[V/m]以外に変化する。また、回転軸である直線上に電界検出素子およびその配線を設けることにより、配線自体がm個の電荷の対称性に影響を及ぼさない。つまり、m個の電荷の対称性が保存されるため、配線によって検出性能への影響が生じない。また、この検出装置および検出方法では、例えば、表皮と血管との間に脂肪組織が存在するような場合においても十分に大きな感度を得ることができ、血管を高感度かつ高精度で検出することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、新規な原理に基づき、血管などの各種の対象物を高精度かつ高感度で検出することができる検出装置を実現することができる。そして、この検出装置を用いて高性能の静脈センシング装置、走査プローブ顕微鏡、歪み検知装置および金属探知機を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
まず、この発明による検出装置においてm個の電荷の発生に用いられる電極構造およびm個の電荷により発生する特異領域の具体例について説明する。
(1)4重極
4重極を得るためには、正方形の頂点の位置に4個の電極を配置する。そして、正方形の1つの対角線上の電極に同じ電圧を印加するとともに、この電圧に対して極性が反転した電圧をもう1つの対角線上の電極に印加する。印加電圧は直流電圧または交流電圧である。
【0026】
直流電圧を印加する場合、1つの対角線上の電極は+Q[C]に帯電し、もう1つの対角線上の電極は−Q[C]に帯電する。
交流電圧を印加する場合は、例えば、1つの対角線上の電極に正弦波電圧を印加し、もう1つの対角線上の電極にはこの正弦波電圧から位相を180度ずらした正弦波電圧を印加する。
この発明において、電極に直流電圧を印加する場合と交流電圧を印加する場合とは原理的に同等であるので、以下においては電極に直流電圧を印加して静電荷を帯電させるモデルで説明する。
【0027】
4個の電極の全ての電荷の絶対値が互いに等しい場合には、4個の電極のちょうど中央に特異領域が生ずる。このときの電荷分布を図1AおよびBに示す。この場合、xy平面上に4個の点電荷+Q、−Q、+Q、−Qが配置されている。図1Aにおいて、破線で表されるz軸が電界0[V/m]の特異領域を示す。また、図1Bにおいて、破線で表されるx軸、y軸およびz軸が電位0[V]の領域を示す。
【0028】
図2AおよびBは、図1AおよびBに示す電荷分布において4個の点電荷によって発生する電界の重ね合わせによりxy平面内の電界を計算してマッピングした図であり、図2Aでは電界E[V/m]を対数尺度で表し、図2Bでは電界E[V/m]を線形尺度(リニアスケール)で表している。図3AおよびBはそれぞれ図2AおよびBの中心部を拡大したものである。また、図2Cは図2AおよびBに示す電界分布に対応する電位分布、図3Cは図2Cの中心部を拡大したものである。ただし、Q=1[C]、点電荷間の距離は0.01mとした。
図2Bおよび図3Bからわかるように、特異領域は4個の電極の中央(x=0、y=0の位置)に生ずる。図2Cにおける黒い太線は電位0[V]の領域を示す。
【0029】
(2)平面2n重極
平面2n重極は上記の平面上の4重極を一般化したものであり、正2n角形(正方形、正六角形、正八角形など)の頂点に相当する位置に隣同士が逆極性になるように電荷を配置した構造である。この場合、この正2n角形の中心部が特異領域になる。
図4Aに6重極(n=3の場合)、図4Bに8重極(n=4の場合)を示す。
4重極、6重極および8重極の中心部の特異領域の急峻さを評価した。その結果を図5に示す。図5からわかるように、平面2n重極では4重極の特異領域が最も急峻であり、対称性が破れたことを鋭敏に検出することができる。
【0030】
図5からわかるように、平面2n重極ではnが大きいほど特異領域の内外の電界変化が緩やかであるが、これは次のような理由による。
図6A、BおよびCに示すように、多角形(正方形、正六角形および正八角形)の隣り合う2個の頂点にある電荷(+Q、−Q)に着目する。多角形の中心、すなわち特異領域から各頂点までの距離rが一定であれば、nが大きくなるほど、隣り合う電荷間の距離l(=多角形の辺の長さ)が小さくなる。図6A、BおよびCにおいてはl4 >l6 >l8 である。
【0031】
多角形の各頂点から特異領域までの距離rに対してlが小さいほど、2個の電荷による電界が打ち消し合い、特異領域の電界強度が小さくなる。つまりlが大きいほど、特異領域の電界強度が大きくなる。具体的には、正方形の頂点に電荷を配置した場合に、特異領域の電界強度が最大になる。図6A、BおよびCにおけるx軸上の電界強度をグラフにしたものを図7に示す。図7からわかるように、4重極の2個の電荷による電界強度が、他の平面2n重極の2個の電荷による電界強度に比べて最も大きい。
【0032】
(3)立体構造の8重極
立体構造の8重極を得るためには、立方体の頂点の位置に8個の電極を配置する。
8個の電極の全ての電荷の絶対値が等しい場合には、8個の電極のちょうど中央、すなわち立方体の中心に特異領域が生ずる。このときの電荷分布を図8AおよびBに示す。図8Aにおいて、破線で表されるx軸、y軸およびz軸が電界0[V/m]の特異領域を示す。また、図8Bにおいて、破線で示した3枚の平面(xy平面、yz平面、zx平面)が電位0[V]の領域を示す。
【0033】
図9AおよびBは、図8AおよびBに示す電荷分布において立方体の下面の電界を計算してマッピングした図であり、図9Aでは電界E[V/m]を対数尺度で表し、図9Bでは電界E[V/m]を線形尺度で表している。図10AおよびBはそれぞれ図9AおよびBの中心部を拡大したものである。また、図9Cは図9AおよびBに示す電界分布に対応する電位分布、図10Cは図9Cの中心部を拡大したものである。ただし、Q=1[C]、点電荷間の距離は0.01mとした。
図9Bおよび図10Bからわかるように、特異領域は8個の電極の中央(x=0、y=0、z=0の位置)に生ずる。図9Cにおける黒い太線は電位0[V]の領域を示す。
【0034】
(4)その他の多重極構造の例
正多面体、準正多面体で全ての面の形状が2n角形ならば、各面の頂点に、隣り合う極性が反転するように電荷を与えて多重極を構成することができる。このとき、各面の中心の法線を軸とした回転対称図形になる。つまり、各面の中心の法線が特異領域になるように構成することができる。正多面体でこの構成が可能なものは立方体のみで、上記の8重極に該当する。
準正多面体でこの構成が可能なものは、切隅8面体や大菱形立方8面体などがある。切隅8面体の各面の頂点に、隣り合う極性が反転するように電荷を与えて多重極を構成した場合を図11に示す。
【0035】
以上のことを前提としてこの発明の実施形態について説明する。
図12AおよびBはこの発明の第1の実施形態による検出装置を示し、図12Aは斜視図、図12Bは側面図を示す。
図12AおよびBに示すように、この検出装置においては、正方形の頂点に4個の電極11〜14を配置し、これらの電極11〜14により4重極を構成する。これらの電極11〜14はそれぞれ信号源15〜18を介して導体板19に接続されている。導体板19は接地され、電位の基準となる。電極11、14に信号源15、18により同じ正弦波電圧を印加し、電極12、13には信号源16、17により、電極11、14に印加した正弦波電圧と位相が180度ずれた正弦波電圧を印加する。このとき、4個の電極11〜14の中心を通る垂直線上に特異領域が生ずる。この特異領域に電界検出用の検出電極20を設ける。検出対象がない場合は、電極11〜14の電荷の対称性があるため、この検出電極20により検出される電界は特異領域の電界、すなわちE=0[V/m]またはE≒0[V/m]である。
【0036】
いま、図13に示すように、検出対象21が電極11、12の下にある場合を考える。この場合、電極13、14から拡がる電界の強度は大きく、一方、電極11、12から拡がる電界の強度は小さくなる。この違いにより、検出電極20により検出される電界がE=0[V/m]またはE≒0[V/m]以外に変化する。逆に、検出電極20により検出される電界がE=0[V/m]またはE≒0[V/m]以外であれば、電極11〜14の近傍に検出対象21が近接したことを検出することができる。
この場合、検出対象21の検出に際しては、検出対象21とその周りの空間との電気的特性(誘電率、導電率)の違いを利用している。検出対象21は、具体的には、例えば、空気中の導体、空気中の誘電体(誘電体の誘電率は空気の誘電率より大きい方が検出しやすい)、脂肪中の血液(脂肪に比べて血液は導電率が大きい)などである。
【0037】
検出対象21が棒状または線状である場合(例えば、検出対象21が静脈である場合)には、電界強度だけではなく、検出する電界ベクトルを考慮に入れることが好ましい。そこで、このような場合について説明する。
棒状または線状の検出対象21が4個の電極11〜14のうちの2個の電極の下に位置する場合は、この検出対象21の向き(長手方向)と同じ方向の成分の電界が生ずる。例えば、図14Aに示すように、電極13、14の下に棒状の検出対象21が位置する場合には、y方向の電界成分Ey が支配的となる。また、図14Bに示すように、電極12、14の下に棒状の検出対象21が位置する場合には、x方向の電界成分Ex が支配的となる。従って、この場合には、x方向の電界成分Ex およびy方向の電界成分Ey の両方を検出することができるような検出電極20を設けるのが好ましい。こうすることで、電界成分Ex 、Ey およびそれらの大きさによって検出対象21の方向を検出することができる。
【0038】
この検出装置においては、電極11〜14の配置、電極11〜14の形状、電極11〜14から検出対象21までの距離が検出量(電界強度)に関係する。そこで、これらについて電磁界シミュレーションに基づき定式化を行った結果について説明する。
シミュレーションの条件は次の通りである。
定式化のモデルを図15に示す。導体板の大きさは0.04m×0.04m、電極間ピッチは0.04m、検出対象は長さ0.08m、断面0.048m×0.048mの導体棒とした。
シミュレーションソフトウエア:株式会社情報数理研究所EEM−FDM
計算手法:マクスウェル方程式を周波数領域差分法で計算。
計算領域:x:−0.04〜0.04m、y:−0.06〜0.06m、z:−0.05〜0.05m
メッシュサイズ:0.002m
周波数:1MHz、振幅:1V
【0039】
定式化項目は次の通りである。
a.検出対象の水平位置−特異領域の電界強度
b.検出対象の深さ−特異領域の電界強度
c.検出対象の大きさ−特異領域の電界強度
d.電極間ピッチ−検出深さ
e.電極の長さ−検出深さ
f.電極先端部大きさ−検出深さ
【0040】
以下、順次説明する。
a.検出対象の水平位置−特異領域の電界強度
シミュレーションの結果を図16に示す。図16からわかるように、検出電界強度は検出対象と電極との水平位置関係に依存する。図17に検出装置と検出対象との水平方向の位置関係を示す。図16および図17からわかるように、検出対象である導体棒のエッヂが電極の中心(特異領域)に位置するとき、すなわち図16の横軸の水平方向変位が約28mmのときに最も検出電界強度が大きくなる。
【0041】
b.検出対象の深さ−中心点の電界強度
シミュレーションの結果を図18に示す。図18からわかるように、検出対象が近い、言い換えると検出深さが浅いものほど、電界強度が高くなり、検出しやすい。
c.検出対象の大きさ−特異領域の電界強度
シミュレーションの結果を図19に示す。図20に検出対象の大きさを変化させたときの側面図を示す。図19からわかるように、検出対象の大きさが変化しても、特異領域の電界強度はほぼ一定であり、検出対象の大きさの影響はほとんどない。
【0042】
d.電極間ピッチ−検出深さ
シミュレーションの結果を図21に示す。図21からわかるように、電極間ピッチは、大きい方が深い位置の検出対象を検出しやすい傾向がある。
e.電極の長さ−検出深さ
シミュレーションの結果を図22に示す。図22からわかるように、電極長さは、20mm程度以上あれば検出対象の検出性能はほぼ一定になる。
f.電極先端部の大きさ−検出深さ
シミュレーションの結果を図23に示す。図23からわかるように、電極先端部の平板の面積が大きい方が検出に有利である。
【0043】
以上のことをまとめると、特異領域の電界強度は、検出対象の水平方向位置と深さとに依存し、水平方向では位置変化に対する感度が顕著に高く、深い位置の検出対象は検出量が小さくなる。また、電極を平板とし、その平板の面積が大きいほど、深い位置の検出対象を検出することができる。
【0044】
次に、この検出装置による検出内容について説明する。
まず、この検出装置により、電極11〜14の位置変化を検出する場合について説明する。
いま、電極11〜14のいずれかの位置が変化したことにより電荷の位置がずれたとする。ここでは、電極11、12が、図12AおよびB中において左に約0.001[m]ずれた場合を考える。電極11、12の位置がずれる前の4重極の電界強度をマッピングしたものを図24Aに、電極11、12の位置が約0.001[m]ずれた後の4重極の電界強度をマッピングしたものを図24Bに示す。また、図25Aは図24Aにおけるy=0の線上の電界強度をグラフにしたもの、図25Bは図24Bにおけるy=0の線上の電界強度をグラフにしたものであり、横軸はx方向の位置を示す。
【0045】
図24AおよびBならびに図25AおよびBからわかるように、電界強度0の位置の電界は、
電極11、12の位置がずれていない場合:x=0[m]でE=0[V/m]
電極11、12が左にずれた場合:x=0[m]でE=36.1[V/m]
である。
この場合、特異領域の電界強度0の部分が左(xの負方向)へ0.001/2=0.0005[m]移動するが、特異領域近傍では、電界の変化が急峻であるため、電界の検出量が大きい。一般的には、電極が2個だけ平行にx軸方向にaだけ移動した場合、特異領域はa/2だけ移動する。図25AおよびBのグラフからわかるように、特異領域での電界の変化量が大きい。
【0046】
次に、この検出装置により、電極11〜14の電荷量の変化を検出する場合について説明する。
いま、電極11、12の電荷+1[C]、−1[C]が2倍の+2[C]、−2[C]に変化した場合を考える。電極11、12の電荷量が変化する前の4重極の電界強度をマッピングしたものを図26Aに、電極11、12の電荷量が2倍に変化した後の4重極の電界強度をマッピングしたものを図26Bに示す。また、図27Aは図26Aにおけるy=0の線上の電界強度をグラフにしたもの、図27Bは図26Bにおけるy=0の線上の電界強度をグラフにしたものであり、横軸はx方向の位置を示す。
【0047】
次に、この検出装置により、電極11〜14の付近に他の電荷が近づいてきたことを検出する場合について説明する。
この場合には、4重極の電界強度と、電極11〜14に近づいてくる電荷の電界強度との重ね合わせが生ずる。この重ね合わせの結果電界強度が0になる位置で検出を行う。
【0048】
次に、電極11〜14に印加する電圧の周波数について説明する。
この検出装置では、電極11〜14の電荷により静電的に特異領域を決定している。電極11〜14に静電荷(直流の場合)を帯電させてもよいし、この電極11〜14に、波長λが検出対象21あるいは検出部より十分大きい、すなわち電極11、12間あるいは電極13、14間の間隔、言い換えると双極子の長さdに対し、d<<λ/2πの周波数の正弦波電圧を印加する。
【0049】
次に、検出電極20による電界検出方法の具体例について説明する。図28Aは検出電極20の一例を示す。図28Aに示すように、この例では、検出電極22を一対の電極20a、20bからなる微小ダイポールにより構成する。この微小ダイポールは、電極11〜14とほぼ等しい高さに配置する。この微小ダイポールを構成する電極20a、20bは差動アンプ31の入力端子にそれぞれ接続されている。この場合、電極20a、20b間の電位差を検出し、この電位差を電界に換算することにより電極11〜14の中心位置の電界を求めることができる。電極20a、20b間の電位差は、入力インピーダンスが高い差動アンプ31で低いインピーダンスに変換した後、同軸ケーブル32およびアンプ33を経由して処理装置34に信号を伝える。この場合、検出部は検出部シールド35によりシールドされている。
【0050】
図14AおよびBに示すような場合に、電界ベクトルの成分Ex 、Ey の両方を検出することができるようにするには、例えば、図28Bの平面図に示すように、x軸方向の一対の電極20a、20bからなる微小ダイポールとy軸方向の一対の電極20c、20dからなる微小ダイポールとにより検出電極20を構成する。x軸方向の微小ダイポールを構成する電極20a、20bは差動アンプ31の入力端子にそれぞれ接続されている。同様に、y軸方向の微小ダイポールを構成する電極20c、20dは差動アンプ36の入力端子にそれぞれ接続されている。この場合、電極20a、20b間の電位差を検出し、この電位差を電界に換算することにより、電界ベクトルの成分Ex を求めることができる。同様に、電極20c、20d間の電位差を検出し、この電位差を電界に換算することにより、電界ベクトルの成分Ey を求めることができる。
【0051】
以上のように、この第1の実施形態による検出装置によれば、電極11〜14に発生する電荷による4重極の特異領域に検出電極20を設けて電界を検出することにより、検出対象21を高感度かつ高精度に検出することができる。この検出装置は、電極11〜14の位置変化や、電極11〜14の電荷量の変化や、電極11〜14の付近に他の電荷が近づいてきたことなどの検出に用いることができる。
【0052】
次に、この発明の第2の実施形態による検出装置について説明する。
この検出装置においては、第1の実施形態による検出装置における検出電極20の代わりに、電気光学結晶を用いた検出素子により電界ベクトルの成分Ex 、Ey を検出する。図29Aにその一例を示す。図29Aに示すように、導体板19に開けた穴に光ファイバ37、38をz軸方向に平行に通す。これらの光ファイバ37、38はそれぞれ電界ベクトルの成分Ex 、Ey の検出用である。これらの光ファイバ37、38としては偏波保持ファイバが用いられる。光ファイバ37の一端には電気光学結晶39およびミラー40が取り付けられている。また、光ファイバ38の一端には光を90度曲げる光学部品41が取り付けられている。この光学部品41は例えばミラーまたはプリズムである。この光学部品41の先端にx軸方向に平行に光ファイバ42が取り付けられ、この光ファイバ42の先端に電気光学結晶43およびミラー44が取り付けられている。光ファイバ42としても偏波保持ファイバが用いられる。ここで、同じ位置の電界ベクトルの成分Ex 、Ey を検出するため、電気光学結晶39、43はxy平面で同じ位置にかつz軸方向に互いに近接して設けられている。電気光学結晶39、43としては、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3 )が用いられるが、これに限定されるものではない。電気光学結晶39、43の結晶方位は、電気光学結晶39については電界ベクトルの成分Ex によってのみ屈折率変化が生じ、電気光学結晶43については電界ベクトルの成分Ey によってのみ屈折率変化が生じるように定められている。電気光学結晶39、43は、電極11〜14に対して十分に小さく構成する。電気光学結晶39、43の大きさの具体例を挙げると、270μm×270μm×10μmの正方形の板や、直径125μm、厚さ5μmの円板などである。
【0053】
光ファイバ37、38の他端は光検出系と接続されている。この光検出系の一例を図30に示す。ここでは、光ファイバ37の他端に接続された光検出系について説明するが、光ファイバ38の他端に接続された光検出系についても同様である。図30に示すように、光ファイバ37の他端は、集光レンズ45、ビームスプリッタ46、集光レンズ47および光ファイバ48を介してレーザ光源49と接続されている。光ファイバ48としても偏波保持ファイバが用いられる。ビームスプリッタ46から取り出される一つの光の光路上には、1/2波長板50、1/4波長板51および偏光ビームスプリッタ52が設けられている。偏光ビームスプリッタ52から取り出される二つの光は集光レンズ53、54により集光されてフォトダイオード55、56で検出される。これらのフォトダイオード55、56からの電気信号は差動アンプ57に入力され、この差動アンプ57の出力はロックインアンプ58に入力されるようになっている。
【0054】
この電気光学結晶を用いた検出素子により電界ベクトルの成分Ex 、Ey を検出する方法について説明する。
図30に示すように、レーザ光源49からの、偏波面を一定にしたレーザ光59は、光ファイバ48、集光レンズ47、ビームスプリッタ46、集光レンズ45、光ファイバ37および電気光学結晶39を順次通ってミラー40に入射する。このミラー40で反射されたレーザ光59は再び電気光学結晶39を通る。図29Bにレーザ光59がミラー40に入射し、反射される様子を示す。レーザ光59が電気光学結晶39を通るとき、この電気光学結晶39の位置の電界ベクトルの成分Ex によりこの電気光学結晶39の屈折率が変化し、その変化量に応じた角度だけレーザ光59の偏波面が回転する。この電気光学結晶39を通ったレーザ光59は、光ファイバ37および集光レンズ45を通ってビームスプリッタ46に入射する。このビームスプリッタ46から取り出される一つの光は1/2波長板50および1/4波長板51を順次通り、偏光ビームスプリッタ52に入射する。この偏光ビームスプリッタ52で互いに直交する偏波成分に分離された二つの光はそれぞれ集光レンズ53、54により集光されてフォトダイオード55、56に入射し、電気信号に変換される。これらのフォトダイオード55、56から出力される電気信号は差動アンプ57に入力される。この差動アンプ57では、フォトダイオード55、56への入射光量の差が、これらのフォトダイオード55、56から出力される電気信号の差として検出される。こうして得られる電気信号により、電界ベクトルの成分Ex を求めることができる。電界ベクトルの成分Ey についても同様に求めることができる。
【0055】
光ファイバ37、38、42、48の誘電率が周囲(例えば、空気)の誘電率と異なる場合は、これらの光ファイバ37、38、42、48の存在が検出位置の電界に影響を与えるおそれがあるが、光ファイバ37、38、42、48の屈折率は約1.1〜1.5、従って比誘電率はεr =約1.2〜2.5であり、空気の誘電率(比誘電率1)に近いため、光ファイバ37、38、42、48による電界への影響は、電気的な検出方式で課題になっている配線による電界への影響に比べて小さい。
上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な利点を得ることができる。
【0056】
次に、この発明の第3の実施形態による静脈センシング装置について説明する。
この静脈センシング装置においては、図12に示す第1の実施形態による4重極型検出装置を用い、皮膚の下に埋もれている静脈のパターンを検出する。
検出対象21が棒状の静脈であるので、電界強度だけではなく、検出する電界ベクトルを考慮に入れることが好ましい。静脈がx軸方向にある場合には、電界ベクトルのx方向の成分Ex が0[V/m]以外になる。静脈がy軸方向にある場合には、電界ベクトルのy方向の成分Ey が0[V/m]以外になる。つまり、電界ベクトルの向きにより、静脈の方向を検出することができる。電界の検出には、例えば図28Bに示す検出電極20を用いることができる。
【0057】
電磁界シミュレーションで、数値ファントムで構成した皮膚モデルに対して、4重極電極を用いて静脈検出を行うことができることを示す。
定式化のモデルを図31に示す。導体板の大きさは0.002m×0.002m、電極間ピッチは0.002m、検出対象は長さ0.008m、断面0.002m×0.002mの静脈とした。
正方形の1つの対角線上の2個の電極に同じ正弦波電圧を印加し、もう1つの対角線上の2個の電極にはこの正弦波電圧と位相が180度ずれた正弦波電圧を印加する。
周波数は、生体の電気的特性のうち血液の導電率が他の組織の導電率に比べて高くなる周波数を選択した。このシミュレーションでは1MHzの場合で計算した。
【0058】
シミュレーションの条件は次の通りである。
シミュレーションソフトウエア:株式会社情報数理研究所EEM−FDM
計算手法:マクスウェル方程式を周波数領域差分法で計算。
計算領域:x:−4mm〜4mm、y:−3mm〜3mm、z:−5mm〜5mm
メッシュサイズ:0.0002m
周波数:1MHz、振幅:1V
生体ファントム:ヒトの表皮を模した図32に示す生体ファントムによる。生体組織の表皮近くは、上から表皮、真皮、脂肪、筋肉という層構造になっている。手の甲、手首などの部位では真皮層のすぐ下の脂肪層の中に皮静脈が走っている。生体組織の電気的特性はガブリエルによる表1の値を用いた(非特許文献1〜3参照。)。
【0059】
【表1】

【0060】
定式化項目は次の通りである。
a.静脈の水平位置−特異領域の電界強度
b.静脈の深さ−特異領域の電界強度
c.静脈の大きさ−特異領域の電界強度
d.電極間ピッチ−検出深さ
e.電極の長さ−検出深さ
f.電極先端部大きさ−検出深さ
【0061】
以下、順次説明する。
a.静脈の水平位置−特異領域の電界強度
シミュレーションの結果を図33に示す。図33からわかるように、検出電界強度は検出対象と電極の水平位置関係とに依存する。静脈のエッヂが電極の中心に位置するときが最も検出電界強度が大きくなる。
b.静脈の深さ−特異領域の電界強度
シミュレーションの結果を図34に示す。図34からわかるように、静脈が表皮に近いほど、電界強度が高くなり、検出しやすい。
【0062】
c.静脈の大きさ−特異領域の電界強度
シミュレーションの結果を図35に示す。図35からわかるように、静脈の大きさの影響はほとんどない。静脈と脂肪の境界の電気的特性の違いを検出しているため、静脈の大きさにはある程度以上太くても検出性能に影響がないと考えられる。
d.電極間ピッチ−検出深さ
シミュレーションの結果を図36に示す。図36からわかるように、電極間ピッチは大きい方が深い位置のターゲットを検出しやすい傾向がある。
e.電極の長さ−検出深さ
シミュレーションの結果を図37に示す。図37からわかるように、電極の長さは小さい方が深い位置のターゲットを検出しやすい傾向がある。
【0063】
以上のことをまとめると、生体内部の表皮近くにある静脈(血液)の深さについては、静脈の水平方向位置と深さとに依存し、水平方向では位置の変化に対する感度が顕著に高く、深い位置の対象は検出量が小さくなる。電極先端部の平板の面積を大きくする方法や電極間ピッチを狭くする方法で検出量を大きく改善することができることがわかった。
【0064】
この第3の実施形態による静脈センシング装置によれば、表皮の上から生体内部の静脈を非侵襲的に高感度かつ高精度に検出することができ、静脈のパターンを正確に検出することができる。この静脈センシング装置は、例えば、静脈個人認証の目的で腕静脈に当てて静脈のパターンを検出する場合に適用することができる。
表皮の上から生体内部の静脈パターンを検出する従来の方法としてインピーダンス測定方式があるが、インピーダンス測定方式では、電極を皮膚に接触する押し当て方でインピーダンスが変動し安定しない、発汗の影響を受ける、静脈と静脈以外の差が明瞭でない、電極を接触するときに皮膚に2種類の電極(金属)を当てると起電力が生じてしまい、インピーダンス測定のノイズになる、などの問題がある。これに対し、この第3の実施形態による静脈センシング装置はこのような問題がない。表2に、本方式による検出方法とインピーダンス測定方式による検出方法とを比較して示す。
【0065】
【表2】

【0066】
次に、この発明の第4の実施形態による静脈センシング装置について説明する。
図38に示すように、この静脈センシング装置においては、xy平面内に電極61をマトリックスアレイ状に多数配置したマトリックスアレイ電極を用いる。このマトリックスアレイ電極は、第1の実施形態による検出装置において用いた4重極型電極を1基本ユニットとして2次元アレイ状に多数配置したものに相当する。このマトリックスアレイ電極の一部の拡大図を図39に示す。図39において、一点鎖線の正方形の頂点の4個の電極61が第1の実施形態による検出装置の電極11〜14と対応し、これが1基本ユニットとなる。この1基本ユニットの中心が特異領域(電界検出位置)である。
【0067】
図38および図39に示すマトリックスアレイ電極および第3の実施形態と同様な数値生体ファントムを用いて電磁界シミュレーションを行った。
シミュレーションの条件は次の通りである。
シミュレーションソフトウエア:株式会社情報数理研究所EEM−FDM
計算手法:マクスウェル方程式を周波数領域差分法で計算。
計算領域:x:−0.003〜0.031m、y:−0.003〜0.031m、
z:−0.05〜0.05m
メッシュサイズ:0.002m
周波数:1MHz、振幅:1V
生体ファントム:ヒトの表皮を模した図32の生体ファントムによる。電気的特性は表1に示す通りである。
電極61は、14×14=196個配置した。
【0068】
1基本ユニットを構成する4個の電極61の中心である検出位置13×13個のうちの中央部9×9個の検出位置の電界強度を図40に示す。図41は図40のy=0.014の断面を示す。静脈のエッヂに相当する部分の電界強度は約5.3[V/m]である。それ以外の特異領域の電界強度は0.08[V/m]以下である。この電界強度の違いから静脈の位置を検出することができる。
【0069】
マトリックスアレイ電極を用いることにより、水平方向分解能と深さ方向検出性能との両方の向上を図ることができる。その理由について説明する。
4重極型電極による検出性能は、すでに述べたように、電極面積が大きいほど深い位置の静脈を検出することができる。しかしながら、電極面積が大きいと平面分解能が悪くなる。そこで、マトリックスアレイ電極のうちの複数個の電極を群として電気的に同じ信号(電圧)を印加することで、見かけ上一つの大きな電極として扱う。この場合、最小構成要素、すわち1基本ユニットとその集合体の群とが同一構造となるため、これをフラクタル構造と呼ぶことにする。図42Aは、マトリックスアレイ電極の一部を示したものである。図42Aにおいて、破線で囲まれた4個の電極61に電気的に同じ信号を印加して、1個の見かけ上面積が大きい電極として扱う。この場合、見かけ上面積が大きい電極を4個用いて4重極を構成することにより、より深い位置の検出対象(静脈)が検出可能となる。図42Bは、図42Aと別の部位の電極61で、面積が大きい電極を構成した例である。
【0070】
このようなフラクタル構造を有するマトリックスアレイ電極を用いて検出を行う場合、例えば次のようにしてスキャンを行う。
マトリックスアレイ電極のスキャンは数回に分けて行う。第1のスキャンにおいては、図42Aにおいて破線で囲んだ4個の電極61を用いて検出を行う。第2のスキャンにおいては、図42Bにおいて破線で囲んだ4個の電極61を用いて検出を行う。この場合、図42Aに比べてx方向にずらした電極構成にしている。第3のスキャンにおいては、図42Aをy方向にずらした電極構成を用いて検出を行う。第4のスキャンにおいては、図42Bをy方向にずらした電極構成を用いて検出を行う。
【0071】
以上のように、この第4の実施形態による静脈センシング装置によれば、マトリックスアレイ電極の電気的切り替えで面積が大きい電極を構成し、平面方向の分解能は1基本ユニットの電極61のピッチに依存させ、その分解能でスキャンを行うことができる。このため、この静脈センシング装置においては、物理的に面積が大きい電極と同等の深さ方向の検出性能を得ることができるとともに、1基本ユニットの電極単位でスキャンを行うことができるため、単純に面積が大きい電極では得ることができなかった高い水平方向の分解能を得ることができる。
なお、図42AおよびBに示す例では、2×2個の電極61を組み合わせることにより面積が大きい電極を構成したが、一般にn×n個の電極を組み合わせて面積が大きい電極を構成することができる。これによって、平面方向だけでなく深さ方向に関してもスキャンを行うことが可能となり、3次元スキャンが可能となる。
【0072】
次に、この発明の第5の実施形態による走査プローブ顕微鏡について説明する。
図43に示すように、この走査プローブ顕微鏡においては、4個の電極11〜14が、従来の走査プローブ顕微鏡のプローブと同様に先端が尖った形状に形成され、これらの電極11〜14からなる基本ユニットが2次元アレイ状に多数配置されてマトリックスアレイ電極が形成されている。電極11、14間には同じ極性および位相の正弦波電圧を印加し、この正弦波電圧に対して位相が180度ずれた正弦波電圧を電極12、13間に印加する。電極11〜14の中心の特異領域に検出電極20を設ける。
【0073】
この走査プローブ顕微鏡の動作について説明する。図43に示すように、図示省略したステージ上に試料71を載せ、この試料71の表面に、2次元アレイ状に多数配置された電極11〜14の尖った先端を近接させ、ステージを固定したまま電極11〜14の2次元アレイからなるマトリックスアレイ電極を電気的にスキャンする。このとき、電極11〜14の中心の特異領域の電界が試料71の表面の凹凸に応じて変化するため、この変化を検出することにより試料71の表面の凹凸を測定することができる。
この第5の実施形態によれば、新規な原理に基づく走査プローブ顕微鏡を実現することができる。この走査プローブ顕微鏡では、従来の原子間力顕微鏡と異なり、試料を水平移動させるための機構が不要であり、機械的に動作するカンチレバーを用いる必要がなく、非接触方式であるため試料に傷を付けるなどの影響を与えず、高速でしかも高精度に試料の表面の凹凸の探査を行うことができる。
【0074】
次に、この発明の第6の実施形態による歪み検知装置について説明する。
この歪み検知装置においては、多重極電極の位置変化を特異領域の電界強度変化で検出することにより、建物などの構造物や土地などの歪みを検知する。
一例を図44に示す。図44に示すように、例えば建物81の上面の四隅に4重極型電極、すなわち電極11〜14を設置する。例えば、建物81が一つの部屋である場合は、天井の四隅に4重極型電極を設置してもよい。電極11〜14の中心の特異領域に検出電極20を設ける。
この歪み検知装置においては、建物81がゆがんでいない場合には、特異領域の電界は0[V/m]であるが、建物81がゆがんで電極11〜14の位置がわずかでも変化した場合には、検出電極20により検出される電界は0[V/m]以外に変化する。そこで、この電界の変化により、建物81のゆがみを推測することができる。
この第6の実施形態によれば、新規な原理に基づく歪み検知装置を実現することができる。
【0075】
次に、この発明の第7の実施形態による金属探知機について説明する。
図45に示すように、この金属探知機においては、第1の実施形態と同様な4重極型の検出装置の導体板19上に支持棒91が取り付けられ、この支持棒91の一端にハンドル92が取り付けられている。
この金属探知機においては、検出電極20の付近に導電率が異なる物体あるいは誘電率が異なる物体が近づいたときにこれらの物体を検出する。検出対象21は、具体的には、例えば、地面表面近くに埋まっている金属、地面と電気的特性が異なる物質、壁に埋め込まれた金属などである。
【0076】
この金属探知機の動作について説明する。
作業者がハンドル92を手で握ってこの金属探知機を地面の表面に沿って水平に移動させる。このとき、一様な物体の上部では、電極11〜14に発生した電荷、言い換えると4重極が発生する電界は電極11〜14に対してバランスが取れており、ちょうど電極11〜14の中央位置の電界強度は0[V/m]である。もし、電極11〜14の中心からずれた位置に金属あるいは電気的特性が異なる物体が存在すれば、電極11〜14の電荷により発生する電界のバランスが崩れ、中央位置の検出電極20により0[V/m]以外の電界を検出する。この電界の変化によって、金属探知を行うことができる。
検出電極20による電界検出は、図28AおよびBに示すものと同様な図46に示す検出系を用いて行うことができる。この場合、処理装置34に伝えられた信号を表示装置93に送ることにより検出状態表示を行うことができる。
この第7の実施形態によれば、新規な原理に基づく金属探知機を実現することができる。
【0077】
次に、この発明の第8の実施形態による走査プローブ顕微鏡について説明する。
図47に示すように、この走査プローブ顕微鏡においては、ステージ101上に載せた試料71の表面に、第1の実施形態による検出装置をプローブとして近接させ、この状態でステージ101を水平面内で移動させる。この場合、検出装置の4個の電極11〜14の中心の特異領域の電界が試料71の表面の凹凸により変化することを検出することにより、試料71の表面の凹凸を検出することができる。検出装置の出力信号の処理は処理装置102により行う。ステージ101の移動は駆動電源103により行う。図48にプローブとして用いる検出装置の構成の一例を示す。
この走査プローブ顕微鏡によれば、検出装置を試料の表面に接触させないため、試料に傷を付けることがないだけではなく、従来の原子間力顕微鏡のように機械的に動作するカンチレバーを用いないため、高速でしかも高精度に試料の表面の凹凸の探査を行うことができる。
この第8の実施形態によれば、新規な原理に基づく走査プローブ顕微鏡を実現することができる。
【0078】
以上この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた数値、構成、配置、形状などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、配置、形状などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明における4重極を示す略線図である。
【図2】この発明における4重極により発生する電界および電位の分布を示す略線図である。
【図3】この発明における4重極により発生する電界および電位の分布の一部を拡大して示す略線図である。
【図4】この発明における6重極および8重極を示す略線図である。
【図5】この発明における4重極、6重極および8重極の特異領域を通る線上の電界の分布を示す略線図である。
【図6】この発明における4重極、6重極および8重極の電荷間の距離による影響を説明するための略線図である。
【図7】図6A、BおよびCに示すx軸上の電界分布を示す略線図である。
【図8】この発明における立体構造の8重極を示す略線図である。
【図9】この発明における立体構造の8重極により発生する電界および電位の分布を示す略線図である。
【図10】この発明における立体構造の8重極により発生する電界および電位の分布の一部を拡大して示す略線図である。
【図11】この発明における切隅8面体の各頂点に電荷を配置した電荷配置を示す略線図である。
【図12】この発明の第1の実施形態による検出装置を示す斜視図および側面図である。
【図13】この発明の第1の実施形態による検出装置の動作を説明するための側面図である。
【図14】この発明の第1の実施形態による検出装置の動作を説明するための平面図である。
【図15】この発明の第1の実施形態による検出装置に関して行った電磁シミュレーションで用いた定式化モデルを示す略線図である。
【図16】この発明の第1の実施形態による検出装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図17】図16に示す結果に対応した検出対象の水平位置の変化を示す略線図である。
【図18】この発明の第1の実施形態による検出装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図19】この発明の第1の実施形態による検出装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図20】図19に示す結果に対応した検出対象の大きさの変化を示す略線図である。
【図21】この発明の第1の実施形態による検出装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図22】この発明の第1の実施形態による検出装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図23】この発明の第1の実施形態による検出装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図24】この発明の第1の実施形態による検出装置において電極の位置がずれたときの電界の分布の変化を示す略線図である。
【図25】図24AおよびBに示すx軸上の電界の分布を示す略線図である。
【図26】この発明の第1の実施形態による検出装置において電極の電荷が変化したときの電界の分布の変化を示す略線図である。
【図27】図26AおよびBに示すx軸上の電界の分布を示す略線図である。
【図28】この発明の第1の実施形態による検出装置において用いる検出系を説明するための略線図である。
【図29】この発明の第2の実施形態による検出装置において用いる検出系を説明するための略線図である。
【図30】この発明の第2の実施形態による検出装置において用いる検出系を説明するための略線図である。
【図31】この発明の第3の実施形態による静脈センシング装置に関して行った電磁シミュレーションで用いた定式化モデルを示す略線図である。
【図32】この発明の第3の実施形態による静脈センシング装置に関して行った電磁シミュレーションで用いた電極構造および数値ファントムを示す略線図である。
【図33】この発明の第3の実施形態による静脈センシング装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図34】この発明の第3の実施形態による静脈センシング装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図35】この発明の第3の実施形態による静脈センシング装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図36】この発明の第3の実施形態による静脈センシング装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図37】この発明の第3の実施形態による静脈センシング装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図38】この発明の第4の実施形態による静脈センシング装置を示す略線図である。
【図39】この発明の第4の実施形態による静脈センシング装置において用いるマトリックスアレイ電極の一部を示す平面図である。
【図40】この発明の第4の実施形態による静脈センシング装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図41】この発明の第4の実施形態による静脈センシング装置に関して行った電磁シミュレーションの結果を示す略線図である。
【図42】この発明の第4の実施形態による静脈センシング装置において用いるマトリックスアレイ電極の一部を示す平面図である。
【図43】この発明の第5の実施形態による走査プローブ顕微鏡を示す略線図である。
【図44】この発明の第6の実施形態による歪み検知装置を示す略線図である。
【図45】この発明の第7の実施形態による金属探知機を示す略線図である。
【図46】この発明の第7の実施形態による金属探知機において用いる検出系を説明するための略線図である。
【図47】この発明の第8の実施形態による走査プローブ顕微鏡を示す略線図である。
【図48】この発明の第8の実施例による走査プローブ顕微鏡においてプローブとして用いる検出装置を示す略線図である。
【図49】特許文献2に開示された技術を説明するための略線図である。
【符号の説明】
【0080】
11〜14、61…電極、15〜18…信号源、19…導体板、20…検出電極、20a、20b、20c、20d…電極、21…検出対象、31…差動アンプ、32…同軸ケーブル、33…アンプ、34…処理装置、37、38、42、48…光ファイバ、39、43…電気光学結晶、40、44…ミラー、71…試料、81…建物、93…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、
上記直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子と
を有することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
上記m個の電荷のうちの互いに隣り合う電荷の符号が互いに異なることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
上記m個の電荷の絶対値が互いに等しいことを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項4】
上記電界検出素子およびその配線が上記直線上に設けられていることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項5】
上記m個の電荷は多重極を構成することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項6】
上記m個の電荷は平面2n重極(nは2以上の整数)を構成することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項7】
上記m個の電荷は正多面体または準正多面体の頂点に発生することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項8】
上記m個の電極のうちの少なくとも1つの電極の位置の変化を検出することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項9】
上記m個の電極のうちの少なくとも1つの電極に発生する電荷の電荷量の変化を検出することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項10】
上記m個の電極の外部の電荷または物体を検出することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項11】
上記m個の電極に交流電圧を印加することにより上記m個の電荷を発生させることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項12】
上記m個の電極に正弦波の交流電圧を印加することにより上記m個の電荷を発生させる場合において、上記正弦波の波長をλ、上記m個の電荷を構成する双極子の長さをdとしたとき、d<<λ/2πであることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項13】
上記m個の電荷は静電荷であることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項14】
上記m個の電極は点電極または平面電極であることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項15】
上記m個の電極を1基本ユニットとして一次元アレイ状または二次元アレイ状に複数配置したことを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項16】
検出対象または検出対象の状態変化を検出する検出装置であって、
上記検出対象に電界を印加する複数の電界印加手段と、
上記検出対象に近接する検出領域の電界を検出する電界検出手段と、
上記電界検出手段による上記検出領域の電界の変化を検出して、上記検出対象または上記検出対象の状態変化を検出する処理手段とを有し、
複数の上記電界印加手段は、上記検出対象が上記検出領域に近接していない、または上記検出対象が所定の状態である場合に、複数の上記電界印加手段から印加される電界が打ち消しあって、上記検出領域および上記電界検出手段の近傍の電界が略0となるような電界を印加する
ことを特徴とする検出装置。
【請求項17】
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させ、上記直線上の電界を検出することを特徴とする検出方法。
【請求項18】
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、
上記直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子とを有する検出装置を用いた
ことを特徴とする静脈センシング装置。
【請求項19】
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、
上記直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子とを有する検出装置を用いた
ことを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項20】
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、
上記直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子とを有する検出装置を用いた
ことを特徴とする歪み検知装置。
【請求項21】
少なくとも1つの直線の周りに回転対称なm個(mは4以上の偶数)の電荷であってそれらの電荷量の合計が略0であるものを発生させるm個の電極と、
上記直線上の電界を検出する少なくとも1つの電界検出素子とを有する検出装置を用いた
ことを特徴とする金属探知機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公開番号】特開2008−212525(P2008−212525A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56954(P2007−56954)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】