説明

検出装置、電子機器、及びロボット

【課題】外力の有無を高速に検出し、且つ、外力の方向と大きさとを高い精度で検出する事が可能な検出装置、電子機器、及びロボットを提供する。
【解決手段】外力の有無を検出する第一機構31と、外力の大きさと方向とを検出する第二機構32と、を備え、第二機構32が形成される部位は窪んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、これを備えた電子機器、及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
外力を検出する検出装置として、特許文献1、及び特許文献2に記載の検出装置が知られている。この様な検出装置は、タッチパネルやロボットの触覚センサー等への応用が検討されている。特許文献1の検出装置は、裏面に錐状突起が略均一に配置された受圧シートを用い、その突起の変形量から外力分布を検出する構成となっている。特許文献2の検出装置は、表面に変位可能な接触子を備え、又、接触子の変位を検出ポイントで検出して出力する複数の感圧素子を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−135834号公報
【特許文献2】特開2008−164557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の検出装置では、突起の変形量をカメラにより撮影した画像から演算する為に演算量が多く、外力検出に要する時間が長くなる。又、受圧シートの測定面(裏面)にかかる外力の面内方向の力(滑り力)を測定する事はできない。上記特許文献2の検出装置では、演算により測定面(表面)にかかる外力の面内方向の力(滑り力)を算出する事ができるが、接触子一つあたりの検出ポイントが多い場合、出力値を得る為に必要な時間が長くなってしまう。以上の様に、特許文献1、及び特許文献2の検出装置では、いずれも外力の有無を高速に検出する機能と、外力の分布や方向及び大きさを高い精度で検出する機能とが両立されていないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決する為になされたものであり、以下の形態又は適用例として実現する事が可能である。
【0006】
(適用例1) 本適用例に係わる検出装置は、第一センサーと第二センサーとが設けられた第一基板と、第一基板に対向し、第一センサーに当接して外力によって弾性変形する第一弾性体突起と、第二センサーに当接して外力によって弾性変形する第二弾性体突起とが設けられた第二基板とを備え、第一基板は、凹部を備え、凹部には、第二センサーが複数配置され、第一センサーと第一弾性体突起とにより外力の有無を検出する第一機構を形成し、複数の第二センサーと第二弾性体突起とにより外力の大きさと方向を検出する第二機構とを形成している事を特徴とする。
この構成によれば、外力の有無の検出を第一機構によって検出し、外力の大きさと方向とを第二機構によって、其々分けて検出するので、検出部の全体で外力の有無を検出する場合と比較して、いち早く外力の有無を検出する事ができる。又、第二機構では、検出装置に滑り力(検出装置の平面に平行な方向の力)が加えられた際に、第二弾性体突起は凹部において第二センサーに当接した状態で弾性変形する。従って、大きな外力が斜め方向から検出装置に加えられた場合、凹部により、検出装置の平面に平行な方向への第二弾性体突起の過度の変形が抑制される。これにより、隣り合う第二弾性体突起同士が接触する事や、第二弾性体突起が所定の第二センサーの一群からはみ出してしまう事などを抑止できるので、外力の方向と大きさや、外力の分布状況を極めて正確に検出する事ができる。更に、第一機構と第二機構とを同一装置に配置する事により、検出装置を省スペースで構成する事ができる。具体的には、検出装置の薄型化や小型化、或いは低コスト化を進める事ができる。加えて、第二基板に第二弾性体突起が配置されているので、検出面(第二基板の裏面)が略平面となり、且つ、外力による第二弾性体突起の変形特性が同一となる為、外力の方向と大きさとを偏りなく正確に検出する事ができる。
【0007】
(適用例2) 上記適用例に係わる検出装置において、第一センサーは平坦部に形成され、第一機構に含まれる第一弾性体突起は、第一センサーと重なる位置に重心が位置し、先端部が第一センサーに当接する様に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、僅かな外力が加えられただけでも第一機構は感度良く外力の有無を検出できる。又、第一機構と第二センサーとが同一装置内に形成されているので、外力の大きさなどを演算処理する為の補正を少なくする事ができる。
【0008】
(適用例3) 上記適用例に係わる検出装置において、凹部の開口径は、第二弾性体突起の外径よりも大きい事が好ましい。
この構成によれば、凹部の開口径が第二弾性体突起の外径よりも大きいので、第二弾性体突起が第一基板の平坦部に平行な方向に変形しても、第二弾性体突起の凹部からのはみ出しが抑えられる。これにより、隣り合う第二弾性体突起同士が接触する事や、第二弾性体突起が第二センサーの一群からはみ出して隣の基準点に位置する第二センサーの一群に入り込んでしまう事を効果的に抑止できる。
【0009】
(適用例4) 上記適用例に係わる検出装置において、凹部の外周部における平坦部に対する傾斜角度は、凹部の中央部における平坦部に対する傾斜角度よりも大きい事が好ましい。
この構成によれば、第一基板の平坦部に対する凹部の傾斜角度が中央部よりも外周部において大きいので、平坦部に平行な方向への弾性体突起の変形を外周部で抑える事ができる。これにより、第二弾性体突起の凹部からのはみ出しが抑えられるので、隣り合う弾性体突起同士が接触する事や、第二弾性体突起が第二センサーの一群からはみ出して隣の基準点の第二センサーの一群に入り込んでしまう事を効果的に抑止できる。
【0010】
(適用例5) 上記適用例に係わる検出装置において、凹部の深さは、第二弾性体突起の高さよりも小さい事が好ましい。
この構成によれば、第二弾性体突起の高さは凹部の深さよりも大きいので、外力が付加されていない状態でも第二弾性体突起は第二センサーに当接する。従って、僅かな外力が検出装置に加えられただけであっても、第二弾性体突起を介して外力は第二センサーに敏感に伝達される。こうして外力の方向と大きさや、外力の圧力分布を正確に検出する事ができる。
【0011】
(適用例6) 上記適用例に係わる検出装置において、第一機構の検出結果に基づいて第二機構の検出動作を制御する制御部を有する事が好ましい。
この構成によれば、第一機構が外力の存在を検出した時に、制御部によって第二機構の検出動作を実行する様に制御するので、無駄な検出動作を省き、検出装置のエネルギー消費量を削減する事ができる。
【0012】
(適用例7) 上記適用例に係わる検出装置において、第一機構により外力がある事を検出した場合は、制御部からの信号により、第二センサーが外力の検出を開始する事が好ましい。
この構成によれば、外力の有無を検出した後、制御部によって第二機構の検出動作を実行する様に制御する事により、外力の大きさを検出する時間を、従来と比較して、早くする事ができる。
【0013】
(適用例8) 上記適用例に係わる検出装置において、第一機構は、平面視において、少なくとも2つの第二機構の間に形成されている事が好ましい。
この構成によれば、少なくとも2つの第二機構を備えているので、外力の方向や回転トルクを検出する事ができる。
【0014】
(適用例9) 上記適用例に係わる検出装置において、平面的に第一機構の周囲に少なくとも2つの第二機構が配置されている事が好ましい。
この構成によれば、少なくとも2つの第二機構を備えているので、外力の方向や回転トルクを検出する事ができる。
【0015】
(適用例10) 上記適用例に係わる検出装置において、第二センサーは、複数個が基準点に対して点対称に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、基準点に対して点対称(均等)に第二センサーが配置されているので、第二センサーと第二弾性体突起との位置関係による補正が不要となり、第二センサーの検出値の差分のみによって外力の方向と大きさとを検出する事ができる。又、第二センサーが複数配置されている事により、回転トルクを精度よく検出する事ができる。
【0016】
(適用例11) 上記適用例に係わる検出装置において、第二センサーは、複数個が平面的に互いに直交する2方向に行列状に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、各第二センサーで計測された圧力値のうち、任意に組み合わされた各第二センサーで計測された圧力値の差分から外力の方向と大きさとを演算する事ができる。
【0017】
(適用例12) 上記適用例に係わる検出装置において、第二センサーは、複数個が単位検出領域当たり少なくとも4行4列に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、第二センサーの数が16個以上と多くなるので、多数の第二センサーで検出された圧力値に基づいて、各第二センサーの検出結果を積算して外力の作用する方向と大きさとを求める事ができる。従って、外力の方向と大きさとを高い精度で検出する事ができる。
【0018】
(適用例13) 上記適用例に係わる検出装置において、第一センサーは、第一基板上に対向配置された第一電極と第二電極とを有し、第二センサーは、第一基板上に対向配置された第三電極と第四電極とを有し、少なくとも第三電極と第四電極との間に感圧導電体が配置されている事が好ましい。
この構成によれば、少なくとも第三電極と第四電極との間に感圧導電体が挟持されているので、外力が加えられた際、感圧導電体を圧縮する事により、外力を電気信号に変換する事が可能となり、外力の大きさや方向を検出する事ができる。又、第一機構においては、第一電極と第二電極との間に感圧導電体が無い場合は、弱い外力でも第一電極と第二電極とを接触させる事が可能となり、第一機構と第二センサーとが同一の第一基板上にありながら、第二センサーよりも高い感度を得る事ができる。
【0019】
(適用例14) 上記適用例に係わる検出装置において、第一電極の平面積が、第三電極の平面積よりも大きい事が好ましい。
この構成によれば、第三電極が第一電極よりも小さいので、第一機構の平面積と第二機構の平面積とを同程度にでき、それ故に、第一機構に備えられた第一弾性体突起と第二機構に備えられた第二弾性体突起とを同一とできる。即ち、第一、第二弾性体突起を一種類のみとでき、第二基板の表面が容易に平面になって検出感度が向上し、同時に製造も容易となる。更に、第一センサーの感度を高める事ができる。
【0020】
(適用例15) 本適用例に係わる電子機器は、上記に記載の検出装置を備える事を特徴とする。
この構成によれば、上述した検出装置を備えているので、外力の有無を高速に検出する事ができ、又、外力の方向と大きさとを高い精度で検出する事が可能な電子機器を提供する事ができる。
【0021】
(適用例16) 本適用例に係わるロボットは、上記に記載の検出装置を備える事を特徴とする。
この構成によれば、上述した検出装置を備えているので、外力の有無を高速に検出する事ができ、又、外力の方向と大きさとを高い精度で検出する事が可能なロボットを提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】検出装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図2】検出装置の構成を示す分解斜視図。
【図3】検出部を説明する図。
【図4】検出装置における制御部の構成を示すブロック図。
【図5】検出装置の検出制御動作を示すフローチャート。
【図6】外力の法線方向の成分を検出する方法の説明図。
【図7】外力の滑り力を検出する方法の説明図。
【図8】第二機構の概略構成を示す図。
【図9】単位検出領域の座標系を示す図。
【図10】外力分布を示す図。
【図11】滑り方向の計算例を示す図。
【図12】第2実施形態の検出部の概略構成を示す分解斜視図。
【図13】検出装置の詳細説明図。
【図14】垂直方向の外力が付加された状態を説明する図。
【図15】斜め方向の外力が付加された状態を説明する図。
【図16】第2実施形態における単位検出領域Sの座標系を示す図。
【図17】本実施形態に係わる検出装置の概略構成を示す図。
【図18】検出装置を適用した携帯電話機の概略構成を示す模式図。
【図19】検出装置を適用した携帯情報端末の概略構成を示す模式図。
【図20】検出装置を適用したロボットハンドの概略構成を示す模式図。
【図21】変形例1に係わる検出装置の構成を示す分解斜視図。
【図22】変形例2に係わる検出装置の構造を示す模式断面図。
【図23】変形例7に係わるセンサー基板を説明する図。
【図24】変形例8及び変形例9に係わるセンサー基板又は突起シートを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。尚、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となる様に、適宜拡大又は縮小して表示している。尚、実施形態の検出装置は、外力の方向と大きさとを検出可能な圧力センサー方式のタッチパッドであり、例えば、ノート型パーソナルコンピューター(ノートパソコン)等の電子機器においてマウスの代わりのポインティングデバイスとして用いられる物である。又、本実施形態において、第一基板の「表面」とは、第一基板における複数の第二センサー形成面を指す。第二基板の「表面」とは、第二基板における弾性体突起形成面の反対面を指し、つまりは、外力を受ける面を指す。
【0024】
以下の説明においては、図2中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がセンサー基板本体11に対して平行な方向に設定されている。Z軸は、X軸とY軸とにそれぞれ直交する方向、即ち第一基板としてのセンサー基板本体11に対する法線方向に設定されている。
【0025】
(第1実施形態)
<検出装置の構成>
図1は、検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。以下、検出装置の電気的な構成を、図1を参照しながら説明する。図1に示す様に、検出装置100は、検出部110と制御部120とを備えている。検出部110は、外力Fの有無を検出する第一機構31(図3参照)と、外力Fの大きさと方向とを検出する第二機構32(図3参照)と、を備えている。検出部110によって検出された情報は制御部120に入力される。制御部120は、第一センサー12(図3参照)を用いて外力Fの有無を検出する動作を行い、その検出結果に基づいて第二センサー13(図3参照)の次の検出動作を制御する。
【0026】
図2は検出装置の構成を示す分解斜視図である。図3は検出部を説明する図で、図3(a)は図2に示す検出装置のA−A’線に沿う模式断面図で、図3(b)は平面図である。以下、検出部110の構成を、図2及び図3を参照しながら説明する。図2において、符号Pは基準点、符号Sは1つの弾性体突起22に対応して配置された単位検出領域を示す。尚、「基準点」とは、滑り力が作用していない場合に弾性体突起22の中心(重心)が平面視で位置するポイントである。
【0027】
図2に示す様に、検出部110は、第一基板としてのセンサー基板10と、第二基板としての突起シート20と、を有している。センサー基板10と突起シート20とは互いに対向する様に配置されている。突起シート20は、第二基板としての突起シート本体21と、その裏面に設けられた外力Fによって弾性変形する弾性体突起22とを含んでいる。
【0028】
センサー基板10は、センサー基板本体11に基準点Pが少なくとも2個以上定められ居り、各基準点Pの回りに第二センサー13が設けられている。第二センサー13は圧力センサーである。センサー基板本体11の表面には、平坦部と、この平坦部から窪む凹部18とが形成されており、基準点Pは凹部18に位置している。第二センサー13は基準点Pの回りで凹部18に平面視にて重なる様に複数個設けられている。具体的には、単位検出領域Sの中央部に基準点Pが定められ、基準点Pを中心に円錐状の凹部18が形成され、この凹部18に第二センサー13が平面的に重なる様に2行2列の4個配置されている。行列状に配置された第二センサー13の一群の中心が基準点Pとなっている。
【0029】
センサー基板10には第一センサー12も設けられている。第一センサー12は接触センサーである。第一センサー12は平坦部に形成され、平面視において、少なくとも2つの単位検出領域Sの間に形成されている。或いは、第一センサー12は、平面的にその周囲に少なくとも2つの単位検出領域Sが配置されている。センサー基板10は、例えば、ガラス、石英及びプラスチック等の材料で構成された矩形板状のセンサー基板本体11と、センサー基板本体11に行列状に配置された複数の第二センサー13と、2つの単位検出領域Sの間に配置された第一センサー12と、を具備して構成されている事になる。
【0030】
図3に示す様に、第一機構31は第一センサー12と弾性体突起22とを含み、第二機構32は第二センサー13と弾性体突起22とを含んでいる。第一機構31に含まれる弾性体突起22が第一弾性体突起であり、これは第一センサー12と重なる位置に重心が位置し、その先端部22aが第一センサー12に当接する様に配置されている。一方、第二機構32に含まれる弾性体突起22が第二弾性体突起であり、基準点Pと重なる位置に重心Gが位置し、先端部22aが第二センサー13に当接する様に配置されている。こうして、弾性体突起22は、その先端部22aが第一センサー12や第二センサー13に当接した状態で弾性変形し得る。以下、第一弾性体突起と第二弾性体突起とを特に区別する必要がない場合、単に弾性体突起22と記載する。
【0031】
複数の第二センサー13は、基準点Pに対して点対称に配置されている。例えば、複数の第二センサー13は、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)に行列状に配置されている。これにより、基準点Pと各第二センサー13との間の距離が互いに等しくなる。これにより、弾性体突起22の変形と各第二センサー13で検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。よって、各第二センサー13の圧力値のうち任意に組み合わされた各第二センサー13で検出された圧力値の差分を演算する事が容易となる。尚、圧力値の差分の演算方法については後述する。
【0032】
突起シート20は、上述した様に、矩形板状の突起シート本体21と、突起シート本体21に設けられた複数の弾性体突起22と、を具備して構成されている。突起シート本体21は、外力Fを直接受ける部分である。突起シート本体21は、例えば、ガラス、石英、及びプラスチック等の材料で構成する事もできるし、発泡ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂材料で構成する事もできる。本実施形態では、突起シート本体21及び弾性体突起22の形成材料として樹脂材料を用い、突起シート本体21、及び弾性体突起22を金型で一体形成している。
【0033】
複数の弾性体突起22は、突起シート本体21上においてX方向及びY方向に行列状に配置されている。弾性体突起22の先端部22aは、例えば、球面の錐状となっており、センサー基板10に当接している。第二弾性体突起の重心は、単位検出領域Sにおける初期的に基準点Pと重なる位置に配置されている。又、第一弾性体突起の重心は、第一センサー12の中心と重なる位置に配置されている。
【0034】
第一センサー12及び第二センサー13と接する弾性体突起22について説明したが、他の領域においても複数の弾性体突起22が突起シート本体21に形成されている。この様に、第一センサー12や第二センサー13が配置されていない領域にも弾性体突起22を配置する事によって、弾性体突起22が弾性変形したときの突起シート本体21の面内に平行な方向の変形量を許容する事ができる。又、弾性体突起22が突起シート本体21上においてX方向及びY方向に行列状に離間して配置されている事により、一方の弾性体突起22が変形した時に他方の弾性体突起22に変形の影響を及ぼす事を抑制する事ができる。この為、複数の弾性体突起22が互いに接触して配置されている場合に比べて、外力Fを正確に各第二センサー13に伝達する事ができる。従って、外力Fの方向と大きさとを高い精度で検出する事ができる。又、各第二センサー13の圧力値のうち任意に組み合わされた各第二センサー13の圧力値の差分から外力Fの方向と大きさとを演算する事が容易となる。又、弾性体突起22のサイズは任意に設定する事ができる。ここでは、弾性体突起22の基部の径は1.8mm程度になっている。一方、弾性体突起22の高さ(弾性体突起22のZ方向の距離)は2mm程度になっている。更に、隣り合う弾性体突起22の離間間隔は1mm程度になっている。尚、弾性体突起22のデュロメーター硬さ(タイプA、ISO 7619準拠のデュロメーターによる硬さ測定値)は、例えば、30〜60程度になっている。
【0035】
複数の第二センサー13は、単位検出領域S当たり縦2行、横2列に計4つ配置されている。4つの第二センサー13の中心(単位検出領域Sの中心)が基準点Pとなっている。例えば、単位検出領域Sの大きさ(平面視のサイズ)は、縦2.8mm×横2.8mm程度になっている。又、4つの第二センサー13の各面積がほぼ等しくなっている。又、単位検出領域Sにおける複数(4個)の第二センサー13と、第二センサー13に対向配置された弾性体突起22とにより、第二機構32が構成されている。具体的には、図3に示す様に、第二センサー13は、基準点Pに対して点対称に設けられた複数の第三電極13aと、第三電極13a上に設けられたベタ状の感圧導電体13cと、感圧導電体13c上に設けられた第四電極13bとを備えて構成されている。又、図3に示す様に、第一センサー12は、例えば、第三電極13aより平面的に面積が大きな第一電極12aと、第一電極12a上に設けられたベタ状の感圧導電体13cと、感圧導電体13c上に設けられた第二電極12bとを備えて構成されている。尚、2つのセンサー(12,13)を判別し易くする為に、図2や図3(b)に示す様に、第一電極12a及び第三電極13aのみを図示して、第一センサー12及び第二センサー13と称している。尚、図3(b)には、外力Fが付加されない状態における、複数の第二センサー13や基準点Pに対する弾性体突起22の先端部22aを記載してある。ここで先端部22aは、センサー基板10と弾性体突起22とが接する領域を示している。
【0036】
第一センサー12(第一電極12a)の平面的な面積は、1つの第二センサー13(第三電極13a)の面積よりも広い事が望ましい。第一センサー12の面積が広い事により、突起シート20に外力Fが加えられた際、感圧導電体13cを介して第一電極12aと第二電極12bとが接触したときの抵抗値が、第三電極13aと第四電極13bとが接触したときの抵抗値よりも小さい。よって、第一センサー12の感度が高くなる。
【0037】
感圧導電体13cとしては、例えば、感圧導電ゴム等による感圧素子を用いる事ができる。第二センサー13は、接触面に外力Fが作用した時に感圧導電ゴム等に加わる外力Fを電気信号に変換する。又、隣り合う第二センサー13の間隔は、0.1mm程度になっている。この為、外乱や静電気等の影響により、隣り合う位置の第二センサー13で検出される圧力値にノイズがのらない様になっている。第二センサー13としては、例えば、ダイアフラムゲージ等の感圧素子を用いる事ができる。この場合には、接触面に外力Fが作用した時にダイアフラムに加わる外力Fを電気信号に変換する。尚、この検出装置100は、単位検出領域Sを少なくとも2つ配置しているので、圧力値や外力Fの方向(滑り力)を求めるだけではなく、回転トルクも求める事ができる。
【0038】
図4は、検出装置における制御部の構成を示すブロック図である。以下、制御部の構成を、図4を参照に説明する。図4に示す様に、制御部120は、検出部110(図1参照)との信号の授受と演算結果の出力を行うインターフェイス部(I/O部)121と、各第二センサー13の制御処理を行う制御ユニット122と、各演算処理を行う演算装置123と、データを格納するデータメモリー124と、を有して構成されている。
【0039】
演算装置123は、外力Fによって弾性体突起22が弾性変形する事により、複数の第二センサー13で検出された圧力値のうち、任意に組み合わされた各第二センサー13で検出された各圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力Fが加えられた方向と大きさとを演算する。又、演算装置123は、検出部110で検出された外力Fの合力の方向と大きさとを演算する第2演算処理と、外力Fにより検出部110に作用する回転トルクの方向と大きさとを演算する第3演算処理を行う。これらの演算方法については後述する。
【0040】
尚、本実施形態では、制御ユニット122と演算装置123とにそれぞれCPUを備えているが、1つのCPUにより、制御ユニット122における装置の制御と、演算装置123における各種演算とを行わせる構成としてもよい。言い換えれば、制御ユニット122はCPUを備え、各種の演算にも対応するとしてもよい。
【0041】
図5は、検出装置の検出制御動作を示すフローチャートである。以下、検出装置の検出制御動作を、図5を参照しながら説明する。図5に示す様に、ステップS11では、第一機構31によって外力Fの検出動作を行い、外力を検出する。
【0042】
ステップS12では、検出された圧力値から外力Fがあるか否かを判定する。外力Fがあると判定された場合、ステップS13に移行する。外力Fが無いと判定された場合、ステップS11に移行して、引き続き、第一センサー12による圧力値の検出を行う。
【0043】
ステップS13では、外力Fがあると判定された場合、その判定結果から、対応する単位検出領域Sの第二センサー13の次の検出動作を決定する。具体的には、例えば、対応する単位検出領域Sの第二機構32に配置された複数の第二センサー13の圧力値をそれぞれ検出する。
【0044】
ステップS14では、外力Fの方向と大きさとを演算する。演算終了後は、その結果を出力すると同時に、ステップS11に戻り、第一センサー12により圧力値を検出し、外力Fの有無を検出する検出動作を行なう。
【0045】
図6は、外力Fの法線方向の成分(Fz)を検出する方法の説明図である。又、図7は、外力Fの滑り力(FxやFy)を検出する方法の説明図である。以下、外力Fの大きさ及び方向を検出する方法を、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0046】
突起シート本体21の表面に外力Fが付加される前の状態(外力Fの作用がない状態)は図3に示されている。図3に示す様に、突起シート本体21の表面に外力Fが付加される前においては、弾性体突起22は変形しない。これにより、センサー基板10と突起シート20との間の距離は一定に保たれる。又、弾性体突起22の重心Gは基準点Pと重なる位置に配置されている。この時の各第二センサー13の圧力値は、データメモリー124に記憶されている。データメモリー124に記憶された各第二センサー13の圧力値を基準として外力Fの作用する方向や大きさが求められる。
【0047】
図6は、突起シート本体21の表面に垂直方向(滑り力がない状態)の外力Fが付加された状態を示している。又、図6は、図7に示す突起シート本体21の表面に斜め方向の外力Fが加えられた際の、表面の法線方向(Z方向)の力の成分(Fz)の検出原理を表す図でもある。図6に示す様に、弾性体突起22は、突起シート20を介して垂直方向の外力Fが付加された時、第一機構31の一部をなす弾性体突起22の先端部22aが、いち早くセンサー基板本体11の表面に配置された第一センサー12を押圧する。同時に第二機構32の一部をなす弾性体突起22の先端部22aも、センサー基板本体11の表面に配置された第二センサー13を押圧する。即ち、弾性体突起22はセンサー基板10に当接した状態でZ方向に圧縮変形する(撓む)。そして、センサー基板10と突起シート20との間の距離が外力Fの作用がない時に比べて小さくなる。この時の第一センサー12や第二センサー13の圧力値は、外力Fの作用がない時に比べて大きくなる。但し、第一センサー12はセンサー基板本体11の平坦部に形成されている為に、弾性体突起22は第二センサー13よりも第一センサー12をより強く押圧する。更に、第一電極12aが第三電極13aよりも面積が広く、第一センサー12においてはセンサー基板10に当接している先端部22aの全域が第一電極12a内に位置する為に、外力Fの有無に対する感度は第一機構31が第二機構32よりも著しく高くなる。僅かな外力Fであっても第一機構31はその有無を検出できる事になる。
【0048】
図7は、突起シート本体21の表面に斜め方向の外力F(滑り力)が付加された状態を示している。尚、滑り力とは外力FのX成分(Fx)とY成分(Fy)とを指す。図7に示す様に、弾性体突起22は、突起シート本体21の表面に斜め方向の外力Fが付加された時、弾性体突起22の先端部22aがセンサー基板本体11の表面に配置された第二センサー13に当接した状態で斜めに傾いて圧縮変形する。つまり、弾性体突起22がZ方向に撓み、センサー基板10と突起シート20との間の距離が外力Fの作用がない時に比べて小さくなる。更に、弾性体突起22の重心Gは、基準点PからX方向やY方向にずれる。この場合、弾性体突起22と複数個の第二センサー13の各々との重なる面積は其々異なる。例えば図7(b)に示される様な外力Fが加えられた場合、弾性体突起22と4つの第二センサー13との重なる面積は、4つの第二センサー13の内で、+X方向及び−Y方向に配置された右下の第二センサー13と重なる面積が、−X方向及び+Y方向に配置された左上の第二センサー13と重なる面積よりも大きくなる。こうして、第二センサー13の各々からの出力を計測する事でFxやFyの大きさを特定できる。
【0049】
弾性体突起22は、斜め方向の外力Fにより変形に偏りが生じる。即ち、弾性体突起22の重心Gは基準点Pからずれて滑り方向(X方向及びY方向)に移動する。すると、各第二センサー13で異なる値の圧力値が検出される。そして、後述する差分の演算方法に基づいて加えられた外力Fの方向が求められる。突起シート本体21の表面に斜め方向の外力Fが付加された場合には、弾性体突起22が大きく変形する。そして、弾性体突起22がセンサー基板10に接した状態で、弾性体突起22でセンサー基板10に接触している部位がずれる。図7は、基準点Pに対する弾性体突起22の重心Gや接触している部位が外力Fに応じてずれる事を示している。
【0050】
図8は、第二機構32の概略構成を示す図であり、(a)はセンサー基板10及び突起シート20の基準点における断面図であり、図8(b)はセンサー基板10の基準点における断面図である。尚、図8(a)及び(b)に示す2点鎖線Lは、センサー基板10の平坦部(X方向)に平行である。又、図8(a)及び(b)では、分かり易くする為に第二センサー13の図示を省略している。
【0051】
図8(a)及び(b)に示す様に、第二機構32はセンサー基板10と突起シート20とを備えている。センサー基板10には、平坦部から−Z方向に窪む、断面が略楕円状の凹面に形成された凹部18が設けられている。凹部18の平坦部からの深さH1は、弾性体突起22の基部から先端部までの高さH2よりも小さい。その為、弾性体突起22が設けられた突起シート20の表面に外力Fが付加されていない状態において、弾性体突起22はセンサー基板10の平坦部からZ方向に突出するので、突起シート本体21がセンサー基板10の平坦部に接触する事はない。即ち、外力Fが付加されていない状態においては、センサー基板10の平坦部に対して弾性体突起22が突出するので、突起シート本体21とセンサー基板10とが離間される。こうして、突起シート20に付加された外力Fは、弾性体突起22を介して第二センサー13に伝達され、外力Fの作用する方向と大きさ(外力Fの成分)や、外力Fの圧力分布を正確に検出する事ができる。尚、凹部18の深さH1は、弾性体突起22がこれ以上変形しない臨界点となる外力Fが加えられた状態においても、弾性体突起22の高さH2よりも小さい事が望ましい。
【0052】
又、凹部18の開口径(直径)D1は、弾性体突起22の基部の外径(直径)D2よりも大きい。その為、外力Fが加えられた事により弾性体突起22が圧縮されて変形しても、弾性体突起22の凹部18からセンサー基板10の平坦部に平行な方向へのはみ出しが抑えられる。更に、図8(b)に示す様に、凹部18の外周部(周縁部)における平坦部に対する傾斜角度θ2は、凹部18の中央部における平坦部に対する傾斜角度θ1よりも大きい。その為、平坦部に平行な方向(X方向やY方向)への弾性体突起22の過度の変形を、凹部18の外周部により効果的に抑える事ができる。凹部18は、例えば、センサー基板本体11(図示省略)の平坦部側の一部を異方性エッチングにより除去した後、更に等方性エッチングを行う事で形成できる。これらにより、隣り合う弾性体突起22同士が接触する事や、弾性体突起22が所定の単位検出領域Sからはみ出して隣の単位検出領域Sに入り込んでしまう事を効果的に抑止できる。
【0053】
尚、本実施形態の様に、凹部18が傾斜面ではなく略楕円球状の凹面の場合、傾斜角度とは、図8(b)に示す断面において、凹部18の凹面の各部における接線と平坦部とがなす角度をいう。凹部18が略楕円球状の凹面の場合、凹部18の凹面の外周部における曲率は、凹部18の凹面の中央部における曲率よりも大きいと言い換える事もできる。
【0054】
図9は、単位検出領域Sの座標系を示す図である。図10は、第二センサー13として圧力センサーを複数個行列状に配列した際に計測される垂直方向の外力F分布を示す図である。図11は、複数の第二機構32による滑り方向の計算例を示す図である。図9に示す様に、第二センサー13が単位検出領域S当たりに2行2列に計4個配置され、それらをS1(13)〜S4(13)と名付ける。ここで、各第二センサーS1(13)〜S4(13)が検出する圧力値(検出値)をそれぞれPS1,PS2,PS3,PS4とすると、外力FのX方向成分Fx(外力Fの面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式(1)で表される。
【0055】
【数1】

【0056】
又、外力FのY方向成分Fy(外力Fの面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式(2)で表される。
【0057】
【数2】

【0058】
又、外力FのZ方向成分Fz(外力Fの垂直方向成分、Z軸は図9の図中省略)は以下の式(3)で表される。
【0059】
【数3】

【0060】
本実施形態では、外力Fによって弾性体突起22が弾性変形する事により4つの第二センサーS1(13)〜S4(13)で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力Fが加えられた方向が演算される。式(1)に示す様に、外力FのX方向成分Fxにおいては、4つの第二センサーS1(13)〜S4(13)で検出された圧力値のうち+X方向に配置された第二センサーS2、及び第二センサーS4で検出された値が組み合わされるとともに、−X方向に配置された第二センサーS1、及び第二センサーS3で検出された値が組み合わされる。この様に、+X方向に配置された第二センサーS2、及び第二センサーS4の組み合わせによる圧力値と−X方向に配置された第二センサーS1、及び第二センサーS3の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外力FのX方向成分が求められる。
【0061】
式(2)に示す様に、外力FのY方向成分Fyにおいては、4つの第二センサーS1(13)〜S4(13)で検出された圧力値のうち+Y方向に配置された第二センサーS1、及び第二センサーS2で検出された値が組み合わされるとともに、−Y方向に配置された第二センサーS3、及び第二センサーS4で検出された値が組み合わされる。この様に、+Y方向に配置された第二センサーS1、及び第二センサーS2の組み合わせによる圧力値と−Y方向に配置された第二センサーS3、及び第二センサーS4の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外力FのY方向成分が求められる。
【0062】
式(3)に示す様に、外力FのZ方向成分Fzにおいては、4つの第二センサーS1(13)〜S4(13)の圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0063】
検出部110に加わる外力Fの合計の方向と大きさは、第1演算処理で得られた各単位検出領域Sに加えられた外力Fの合計によって得られる。従って外力Fの合計の方向と大きさとを演算する第2演算処理は、第1演算処理で得られた各単位検出領域Sに加えられた外力Fの合計を算出する演算となる。
【0064】
又、検出部110に加わる回転トルクの方向と大きさは、突起シート本体21の表面に加わる外力Fの分布の重心を算出し、その座標を中心として点対称となる任意の単位検出領域Sに加わる外力FのX方向成分又はY方向成分の差分を取る事によって得られる。従って回転トルクの方向と大きさとを演算する第3演算処理は、外力Fの分布の重心の座標を中心とした点対称となる任意の単位検出領域Sに加わる外力FのX方向成分又はY方向成分の差分の演算となる。
【0065】
次に、図10に示す様に、タッチパッドの検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合を考える。この時、外力Fの垂直方向の外力Fは、外力Fが作用した部分の中心部が最も大きくなっている(第二センサーS1(13)〜S4(13)の出力電圧90〜120mV程度)。又、外力Fの垂直方向の外力Fは、中心部に次いでその周辺部(第二センサーS1(13)〜S4(13)の出力電圧60〜90mV程度)、最外周部(第二センサーS1(13)〜S4(13)の出力電圧30〜60mV程度)の順に小さくなっている。又、指で押されていない領域は、第二センサーS1(13)〜S4(13)の出力電圧が0〜30mV程度となっている。尚、タッチパッドには単位検出領域(第二センサーS1(13)〜S4(13)が集合した領域)が行列状(例えば縦16行×横16列に計256個)に配置されているとする。又、符号DGは検出した外力Fの分布の重心である。
【0066】
指で押されていない領域は、第二センサー13の出力電圧が0〜30mV程度である為、第二センサー13の出力電圧30mVを外力Fの有無の判定基準として設定している。即ち単位検出領域Sである第二センサーS1(13)〜S4(13)の合計出力電圧が30mV未満であれば、外力Fは加わっていないと判定し、第二センサーS1(13)〜S4(13)の出力電圧が30mV以上であれば、外力Fが加わっていると判定する。図10の場合、縦16行×横16列に配置された単位検出領域Sのうち、7箇所の単位検出領域Sで外力Fが加わっていると判定される。外力Fの垂直方向の圧力値は、外力Fが作用した範囲の中心部が最も大きくなっている(単位検出領域Sの第二センサーの合計出力電圧90〜120mV程度)。又、外力Fの垂直方向の圧力値は、中心部に次いでその周辺部(60〜90mV程度)、最外周部(30〜60mV程度)の順に小さくなっている。
【0067】
図11に示す様に、検出部110の検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合の外力Fの面内方向成分(滑り方向)の算出方法を考える。図10の場合、指の押外力F(外力F)は、縦16行×横16列に配置された単位検出領域Sのうち、7箇所の単位検出領域Sで外力Fが加わっていると判定される。そこでこの7箇所の単位検出領域Sのみを抽出して第1演算処理による外力Fの面内方向成分(滑り方向)の演算を行う事により、演算処理が高速化される。抽出した7箇所の各単位検出領域Sは、それぞれ4つの第二センサーS1(13)〜S4(13)を有しており、各第二センサーS1(13)〜S4(13)で検出された圧力値のうち、任意に組み合わされた各第二センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力Fが加えられた方向が演算される。つまり、各単位検出領域Sでは、上述した式(1)及び式(2)に基づいて、各単位検出領域Sにおける外力FのX方向成分Fx及び外力FのY方向成分Fyが第1演算処理によって算出される。言い換えれば、第1演算処理により、各第二センサーS1(13)〜S4(13)で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力Fが加えられた方向と大きさとを求める事ができる。
【0068】
第2演算処理により、外力Fの合計の方向と大きさが算出される。ここでは、外力FがX方向に−0.54、Y方向に0.845の方向成分を持つ事から、+X方向を基準として左回りに約122°の方向に合計の外力Fが作用している事が分かる。
【0069】
又、第3演算処理により、回転トルクの方向と大きさが算出される。図10の場合、外力Fの分布の重心DGの座標はX=6.73、Y=10.04となり、X=7、Y=10に位置する単位検出領域Sに近似される。そこでX=7、Y=10を中心として点対称の関係にある2つの単位検出領域Sの組み合わせについて、X軸方向成分の差分から回転トルクの大きさを算出する。差分の大きさは8mVである事から、検出部110の検出面には右ねじの方向にごく微小な回転トルクが作用している事が分かる。
【0070】
以上詳述した様に、第1実施形態の検出装置100によれば、以下に示す効果が得られる。
【0071】
(1)第1実施形態の検出装置100によれば、外力Fの有無の検出を第一センサー12によって検出し、外力Fの大きさなどを第二機構32によって、それぞれ分けて検出するので、検出部110の全体で外力Fの有無などを検出する場合と比較して、早く外力Fの有無を検出する事ができる。更に、外力Fの有無を検出した後、制御部120によって第二機構32の検出動作のみを制御する事により、外力Fの大きさを検出する時間を、従来と比較して、早くする事ができる。
【0072】
(2)第1実施形態の検出装置100によれば、第一センサー12及び第二センサー13をセンサー基板本体11上に配置する事により、小さなスペースで構成する事ができる。具体的には、薄型化、小型化、低コスト化にする事ができる。又、同一基板上なので、外力Fの大きさなどを演算処理する為の補正を抑える事ができる。
【0073】
(3)第1実施形態の検出装置100によれば、第一センサー12を挟んで2つの第二機構32を備えているので、外力Fの方向や回転トルクを検出する事ができる。
【0074】
(4)第1実施形態の検出装置100によれば、第一センサー12(第一電極12a)の平面的な面積が、1つの第二センサー13(第三電極13a)の面積よりも広いので、突起シート20に外力Fが加えられた際、感圧導電体13cを介して第一電極12aと第二電極12bとが接触したときの抵抗値が、第三電極13aと第四電極13bとが接触したときの抵抗値よりも小さくなる。よって、第一センサー12の感度を高くする事ができる。
【0075】
(5)第二機構32に凹部18が設けられている為、外力Fが加えられた事により弾性体突起22が圧縮されて変形しても、弾性体突起22の凹部18からセンサー基板10の平坦部に平行な方向へのはみ出しが抑えられる。更に、平坦部に平行な方向(X方向やY方向)への弾性体突起22の過度の変形を、凹部18の外周部により効果的に抑える事ができる。これらにより、隣り合う弾性体突起22同士が接触する事や、弾性体突起22が所定の単位検出領域Sからはみ出して隣の単位検出領域Sに入り込んでしまう事を効果的に抑止できる。
【0076】
(第2実施形態)
<検出装置の構成>
図12は、第2実施形態の検出部の概略構成を示す分解斜視図である。図13は、図12に示す検出部の詳細説明図で、(a)はB−B’線に沿う模式断面図、(b)はその付近の平面図ある。以下、検出部110の構成を、図12及び図13を参照しながら説明する。図12に示す様に、第2実施形態の検出部110は、複数の第二センサー13が互いに直交する2方向(X方向及びY方向)に少なくとも縦i行、横i列に配置されている部分が、上述の第1実施形態で説明した検出装置100と異なっている。以下、第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付し、ここではそれらの説明を省略又は簡略化する。
【0077】
検出部110は、基準点Pの回りに複数配置された第二センサー13と、複数の第二センサー13で構成される単位検出領域Sと別の単位検出領域Sとの平面的な間に設けられた第一センサー12と、を備えるセンサー基板10を有する。更に、検出部110は、第1実施形態と同様に、先端部22aがセンサー基板10に当接し外力Fによって弾性変形する弾性体突起22が形成された突起シート20と、を備えている。ここでは、i個(iは4以上の整数)の第二センサー13を用いた場合に拡張した計算式を示す。
【0078】
図12に示す様に、センサー基板本体11上には、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)に少なくとも縦4行横4列(i=4)に合計16個の第二センサー13が配置されている。これら16個の第二センサー13の中心(単位検出領域Sの中心)が基準点Pとなっている。
【0079】
図13に示す様に、第一機構31の構成は実施形態1と同じである。第二機構32は、単位検出領域Sにおける複数の第二センサー13と、第二センサー13に対向配置された弾性体突起22とにより構成されている。具体的には、第二センサー13は、基準点Pに対して点対称に設けられた複数の第三電極13aと、第三電極13a上に設けられたベタ状の感圧導電体13cと、感圧導電体13c上に設けられた第四電極13bとを備えて構成されている。第一センサー12は、例えば、第三電極13aより平面的な面積が大きな第一電極12aと、第一電極12a上に設けられたベタ状の感圧導電体13cと、感圧導電体13c上に設けられた第二電極12bとを備えて構成されている。尚、第1実施形態と同様に、2つのセンサーを判別し易くする為に、図12に示す様に、第一電極12a及び第三電極13aのみを図示して、第一センサー12及び第二センサー13と称している。
【0080】
図14と図15とは、実施形態1の図6と図7とに対応しており、第2実施形態にて外力Fに応じて検出部110の被る変化を示す模式図で、其々(a)は図12のB−B’線に沿う模式断面図、(b)はその付近の平面図ある。以下、外力Fの大きさと方向を検出する方法を、図14及び図15を参照しながら説明する。突起シート本体21の表面に外力Fが付加される前の状態(外力Fの作用がないとき)は図13に示されている。突起シート本体21の表面に外力Fが付加される前においては、弾性体突起22は変形しない。これにより、センサー基板10と突起シート20との間の距離は一定に保たれる。この時、弾性体突起22の重心Gは基準点Pと重なる位置に配置されている。この時の各第二センサー13の圧力値はデータメモリー124に記憶されている。データメモリー124に記憶された各第二センサー13の圧力値を基準として外力Fの作用する方向や大きさが求められる。
【0081】
図14は、突起シート本体21の表面に垂直方向(滑り力がない状態)の外力Fが付加された状態を示している。突起シート本体21の表面に垂直方向の外力Fが付加されたとき、弾性体突起22は、Z方向に圧縮変形する。そして、センサー基板10と突起シート20との間の距離が外力Fの作用がない時に比べて小さくなる。この時の第二センサー13の圧力値は、外力Fの作用がない時に比べて大きくなる。又、その変化量は各第二センサー13ともほぼ同じ値となる。
【0082】
図15は、突起シート本体21の表面に斜め方向(滑り力がある状態)の外力Fが付加された状態を示している。突起シート本体21の表面に斜め方向の外力Fが付加された時、弾性体突起22は、斜めに傾いて圧縮変形する。これにより、弾性体突起22がZ方向に撓み、センサー基板10と突起シート20との間の距離が外力Fの作用がない時に比べて小さくなる。更に、突起シート20の撓み量は滑り力の大きさや方向に応じて変わってくる。即ち、弾性体突起22の重心Gは基準点Pから±X方向及び±Y方向にずれる。この場合、弾性体突起22の先端部22aと複数の第二センサー13との重なる面積の割合は、第二センサー13間で異なってくる。例えば図15(b)に示される様に、外力Fが加えられた場合、弾性体突起22と第二センサー13との重なる面積は、16個の第二センサー13の内で、+方向及び−Y方向に配置された右下に位置する第二センサー13と重なる面積が、−X方向及び+Y方向に配置された左上に位置する第二センサー13と重なる面積よりも大きくなる。こうして、第二センサー13の各々からの出力を計測する事でFxやFyの大きさを特定できる。
【0083】
図16は、図9に対応した、第2実施形態における単位検出領域Sの座標系を示す図である。尚、図16において、複数の第二センサーSi(13)(100個)が行列状に配置されており、このうちの25個の第二センサーSi(13)がそれぞれ−X方向及び+Y方向に区画された領域、+X方向及び+Y方向に区画された領域、−X方向及び−Y方向に区画された領域、+X方向及び−Y方向に区画された領域に配置されている。又、図16においては、便宜上、100個の第二センサーSi(13)を図示しているが、第二センサーSi(13)の配置数はこれに限らず任意に変更する事ができる。
【0084】
図16に示す様に、複数の第二センサーSi(13)は、単位検出領域S当たり縦10行、横10列に計100個配置されている。ここで、各第二センサーSi(13)が検出する圧力値(検出値)をそれぞれPi(i=1〜100)、基準点Pと各第二センサーSi(13)との間の距離の面内方向成分をri(i=1〜100)とする。又、面内方向成分のうちX方向成分をrxi(i=1〜100)、面内方向成分のうちY方向成分をryi(i=1〜100)とすると、単位検出領域Sに加わる外力FのX方向成分Fx(外力Fの面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式(4)で表される。
【0085】
【数4】

【0086】
又、単位検出領域Sに加わる外力FのY方向成分Fy(外力Fの面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式(5)で表される。
【0087】
【数5】

【0088】
又、単位検出領域Sに加わる外力FのZ方向成分Fz(外力Fの垂直方向成分)は以下の式(6)で表される。
【0089】
【数6】

【0090】
本実施形態では、外力Fによって弾性体突起22が弾性変形する事により変化する100個の第二センサーSi(13)の圧力値のうち任意に組み合わされた各第二センサーSi(13)の圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力Fが加えられた方向が演算される。
【0091】
式(4)に示す様に、外力FのX方向成分Fxにおいては、100個の第二センサーSi(13)で検出された圧力値のうち相対的に+X方向に配置された第二センサーSi(13)で検出された値が組み合わされるとともに、相対的に−X方向に配置された第二センサーSi(13)で検出された値が組み合わされる。この様に、相対的に+X方向に配置された第二センサーSi(13)の組み合わせによる圧力値と相対的に−X方向に配置された第二センサーSi(13)の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外力FのX方向成分が求められる。
【0092】
式(5)に示す様に、外力FのY方向成分Fyにおいては、100個の第二センサーSi(13)の圧力値のうち相対的に+Y方向に配置された第二センサーSi(13)で検出された値が組み合わされるとともに、相対的に−Y方向に配置された第二センサーSi(13)で検出された値が組み合わされる。この様に、相対的に+Y方向に配置された第二センサーSi(13)の組み合わせによる圧力値と相対的に−Y方向に配置された第二センサーSi(13)の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外力FのY方向成分が求められる。
【0093】
式(6)に示す様に、外力FのZ方向成分Fzにおいては、100個の第二センサーSi(13)で検出された圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0094】
尚、外力Fの作用する方向の算出にあっては、100個の第二センサーSi(13)で検出された圧力値の算出結果の平均値で求める方法、或いは100個の第二センサーSi(13)で検出された圧力値の算出結果のうちの最大値(例えば、所定のしきい値よりも大きい検出値)により求める方法を用いる事ができる。
【0095】
検出部110に加わる外力Fの合力の方向と大きさは、第1実施形態と同様、第1演算処理で得られた各単位検出領域Sに加えられた外力Fの合計によって得られる。従って外力Fの合計の方向と大きさとを演算する第2演算処理は、第1演算処理で得られた各単位検出領域Sに加えられた外力Fの合計を算出する演算となる。
【0096】
又、検出部110に加わる回転トルクの方向と大きさは、突起シート本体21の表面に加わる外力Fの分布の重心の座標を算出し、その外力Fの分布の重心の座標を中心とした点対称となる、任意の単位検出領域Sに加わる外力FのX方向成分、又はY方向成分の差分を取る事によって得られる。従って回転トルクの方向と大きさとを演算する第3演算処理は、外力Fの分布の重心の座標を中心として点対称となる任意の単位検出領域Sに加わる外力FのX方向成分又はY方向成分の差分の演算となる。
【0097】
以上詳述した様に、第2実施形態の検出装置100によれば、上述した第1実施形態の(1)〜(5)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0098】
(6)第2実施形態の検出装置100によれば、配置される第二センサー13の数が第1実施形態と比較して多いので、多数の第二センサー13で検出される圧力値に基づいて各第二センサー13の検出結果を積算して外力Fの作用する方向と大きさとを決める事ができる。従って、外力Fの方向と大きさとを高い精度で検出する事ができる。
【0099】
(第3実施形態)
<検出装置>
次に、第3実施形態に係わる検出装置を説明する。本実施形態に係わる検出装置は、第1実施形態に対して、センサー基板10の構成が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。第1実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0100】
図17は、本実施形態に係わる検出装置の概略構成を示す図である。詳しくは、図17(a)はセンサー基板10及び突起シート20の基準点における断面図であり、図17(b)はセンサー基板10の製造方法を説明する図である。
【0101】
図17(a)に示す様に、本実施形態に係わる検出装置100は、センサー基板10と突起シート20とを備えている。センサー基板10は、センサー基板本体11と、接着層37と、圧力センサーシート33と、を備えている。接着層37は、例えば、UV硬化型の接着剤等からなる。
【0102】
圧力センサーシート33は、樹脂層36と、樹脂層36上に順に形成された第一電極12a並びに第三電極13aと、感圧導電体13cと、第二電極12b並びに第四電極13bと、を備えている。樹脂層36は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)等のフレキシブルな樹脂で構成されている。従って、センサー基板10では、第一センサー12や第二センサー13がセンサー基板本体11上に接着層37及び樹脂層36を介して配置されている。
【0103】
第一電極12aや第二電極12b、第三電極13a、第四電極13bは、例えば、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の金属材料からなる。感圧導電体13cは、例えば感圧導電ゴム等の、感圧材料からなる。圧力センサーシート33は、外力が付加され第一電極12aと第二電極12bとの間の距離、或いは第三電極13aと第四電極13bとの間の距離が小さくなると、外力の作用がないときに比べて抵抗値が小さくなる。圧力センサーシート33は、抵抗値の変化により外力を検出する抵抗方式の圧力測定器である。
【0104】
図17(b)に示す様に、センサー基板10は、接着層37を介して、センサー基板本体11上に圧力センサーシート33を接着する事により形成される。この様に、検出装置100では、汎用の圧力センサーシート33を用いてセンサー基板10を形成する事ができる。又、センサー基板本体11に圧力センサーシート33を接着する事により、半導体プロセスにより製造するセンサー基板10に比べて、センサー基板10の製造工程を簡略化する事ができる。
【0105】
以上詳述した様に、第3実施形態の検出装置100によれば、上述した第1実施形態及び第2実施形態の(1)〜(6)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0106】
(7)本実施形態に係わる検出装置100の構成によれば、第1実施形態に係わる検出装置100と同様に、隣り合う弾性体突起22同士が相互に接触する事や、弾性体突起22が所定の単位検出領域Sからはみ出して隣の単位検出領域Sに入り込んでしまう事を抑止できる。
【0107】
(8)本実施形態に係わる検出装置100の構成によれば、半導体プロセスによりセンサー基板10を製造する第1実施形態に比べて、汎用の圧力センサーシート33を用いて、容易にセンサー基板10を製造する事ができるので、検出装置100の製造コストを低減する事ができる。
【0108】
(第4実施形態)
<電子機器>
図18は、上記実施形態の検出装置のいずれかを備えた携帯電話機の概略構成を示す模式図である。電子機器の一例としての携帯電話機1000は、複数の操作ボタン1003及びコントロールパッド1002、並びに表示部としての液晶パネル1001を備えている。コントロールパッド1002を操作する事によって、液晶パネル1001に表示される画面がスクロールされる。液晶パネル1001にはメニューボタン(図示略)が表示される。例えば、メニューボタンにカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド1002を強く押す事で、電話帳が表示されたり、携帯電話機1000の電話番号が表示されたりする。
【0109】
図19は、上記実施形態に係わる検出装置のいずれかを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital AsSi(13)stants)の概略構成を示す模式図である。電子機器の一例としての携帯情報端末2000は、複数の操作ボタン2002及びコントロールパッド2003、並びに表示部としての液晶パネル2001を備えている。コントロールパッド2003を操作すると、液晶パネル2001に表示され為ニューを操作できる。例えば、メニュー(図示略)にカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド2003を強く押す事で、住所録が表示されたり、スケジュール帳が表示されたりする。
【0110】
この様な電子機器によれば、上述した検出装置100をコントロールパッド1002や2003に備えているので、外力Fの方向と大きさとを高い精度で検出する事ができる。
【0111】
尚、電子機器としては、この他にも、例えばパーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチールカメラ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの電子機器に対しても、本発明に係わる検出装置を適用させる事ができる。
【0112】
以上述べた様に、第4実施形態の電子機器によれば、以下に示す効果が得られる。
【0113】
(9)第4実施形態の電子機器によれば、上記に記載の検出装置100を備えているので、外力Fの有無を高速に検出する事ができ、又、外力Fの方向と大きさとを高い精度で検出する事ができる。
【0114】
(第5実施形態)
<ロボット>
図20は、上記実施形態に係わる検出装置のいずれかを備えたロボットハンドの概略構成を示す模式図である。図20(a)に示す様に、ロボットハンド3000は、本体部3003及び一対のアーム部3002、並びに上記検出装置100のいずれかを適用した把持部3001を備えている。例えば、リモコン等の制御装置によりアーム部3002に駆動信号を送信すると、一対のアーム部3002が開閉動作する。
【0115】
図20(b)に示す様に、ロボットハンド3000でコップ等の対象物3010を把持する場合を考える。この時、対象物3010に作用する力は把持部3001で外力Fとして検出される。ロボットハンド3000は、把持部3001として上述した検出装置100のいずれかを備えているので、対象物3010の表面(接触面)に垂直な方向の力と併せて重力Mgですべる方向の力(滑り力の成分)や回転トルクを検出する事が可能である。例えば、柔らかい物体を変形させたり滑りやすい物体を落としたりしない様、対象物3010の質感に応じて力を加減しながら持つ事ができる。
【0116】
このロボットによれば、上述した検出装置100のいずれかを備えているので、外力Fの方向と大きさとを高い精度で検出する事ができる。
【0117】
以上述べた様に、第5実施形態のロボットによれば、以下に示す効果が得られる。
【0118】
(10)第5実施形態のロボットによれば、上記に記載の検出装置100を備えているので、外力Fの有無を高速に検出する事ができ、又、外力Fの方向と大きさとを高い精度で検出する事ができる。
【0119】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加える事が可能である。変形例を以下に述べる。
【0120】
(変形例1)
上述の第1実施形態の様に、2つの単位検出領域Sの間に第一センサー12を配置する事に限定されず、例えば、図21に示す様な構成であってもよい。図21は、変形例1の検出装置の構成を示す分解斜視図である。
【0121】
図21に示す検出部110は、複数の第二センサー13を備える単位検出領域S(図2参照)が、第一センサー12の回りに点対称に4個配置されている。第一センサー12はセンサー基板本体11の平坦部に形成され、第二センサー13は凹部18と平面視にて重なる様に形成されている。尚、上記実施形態と同様、第一センサー12及び第二センサー13が配置されていない領域にも弾性体突起22が配置されている。この様に、1つの第一機構31(図3参照)に対して第二機構32(図3参照)の数を増やす事により、回転トルクなどの検出をより精度よく検出する事ができる。尚、演算時間を早くしたい場合は、第1実施形態の様に第二機構32を二つとし、検出精度を高めたい場合は、変形例1の様に第二機構32を四つとするなど、使用方法に応じて選択する事が望ましい。
【0122】
(変形例2)
上述した様に、第一センサー12における第一電極12aと第二電極12bとの間に感圧導電体13cを設ける事に限定されず、図22に示す様に、感圧導電体13cを設けない構造にしてもよい。図22は、変形例2の検出装置の構造を示す模式断面図である。図22(a)は、突起シート20に外力Fが加えられていない状態を示す。図22(b)は、突起シート20に外力Fが加えられている状態を示す。
【0123】
これによれば、第一センサー12において感圧導電体13cがない為、弱い外力Fでも第二電極12bと第一電極12aとを接触させる事ができる。これにより、同じセンサー基板本体11上でありながら、第一センサー12の方が第二機構32よりも高い感度を得る事ができる。
【0124】
又、図22に示す様に、突起シート20とセンサー基板10との間に弾性シート400を設ける様にしてもよい。尚、弾性シート400と弾性体突起22とは、固定もしくは一体成形されている。これによれば、突起シート20に外力Fが加えられた際、弾性体突起22の位置がずれてしまう事を抑える事ができる。
【0125】
又、弾性体突起22が弾性シート400に固定されている事により、2つの隣り合う弾性体突起22が互いに反対の方向に圧縮変形する事を抑える事が可能となり、高い精度で外力Fを検出する事ができる。尚、弾性体突起22がずれない構造であれば、弾性シート400と固定されていなくてもよい。
【0126】
(変形例3)
上述した様に、第一センサー12と第二機構32との配置関係は、2つの第二機構32の間(中間)に第一センサー12を配置する構造(図2参照)に限定されず、例えば、第一センサー12の周囲に少なくとも2つの第二機構32が配置されている構造でもよい。尚、少なくとも2つの第二機構32の距離は、回転トルクを高い精度で検出したい事から、第一センサー12を中心としてなるべく離れている事が望ましい。
【0127】
(変形例4)
上述した様に、外力Fがあったと判断した後、外力Fの大きさや方向を出力する事に限定されず、例えば、以下の様な動作を行う様にしてもよい。図20に示すロボットハンド3000の場合、一対のアーム部3002が接近していき、コップなどを挟んだら、コップを壊さない様に、演算した外力Fに応じてアーム部3002の閉じる速度を落とす、又は停止する動作を行う様にしてもよい。
【0128】
更に、コップを移動する場合、回転トルクがある場合には、別のロボットハンド3000に持ち変えるなどの動作を行う様にしてもよい。又、初期の段階では、第一機構31をフルにセンシングさせておき、外力Fが加わったと判断したら、第一機構31のセンシングを停止する様にしてもよい。その後、第二機構32及び演算装置123によって、外力Fの大きさ、方向、回転トルクなどの演算処理を開始する。又、初期滑りの時に発生する振動を検出する様にして、アーム部3002の動作を制御する様にしてもよい。
【0129】
(変形例5)
上述した様に、第二センサー13は、感圧導電ゴムなどの感圧素子を用いる事に限定されず、例えば、静電容量値変化型の感圧素子を用いる様にしてもよい。この場合、外力Fが作用すると静電容量値の変化を感知して外力Fを検出する事ができる。又、インダクタンスの変化を検出する様にしてもよい。
【0130】
(変形例6)
上述した様に、電子機器は、携帯電話機1000や携帯情報端末2000に限定されず、例えば、高精細EVF(Electric View Finder)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、テレビ、車載機器、オーディオ機器などに搭載する事ができる。
【0131】
(変形例7)
図23は変形例7に係わるセンサー基板10を説明した図である。上述した実施形態では、弾性体突起22が設けられた突起シート20を、検出装置100が備える構成であったが、この様な形態に限定されない。例えば、図23に示す様に、弾性体突起22がセンサー基板10上に配置された構成であってもよい。図23に示す例では、弾性体突起22の基部が平坦部と凹部18とに設置されており、弾性体突起22の先端部22aに外力が付加される構成となっている。この様な構成であっても、凹部18により、センサー基板10の平坦部に平行な方向への弾性体突起22の過度の変形を抑える事ができる。
【0132】
(変形例8)
図24は変形例8及び変形例9に係わるセンサー基板10又は突起シート20を説明した図である。上述した実施形態では、凹部18は球状面又は楕円球状面を有していたが、この様な形態に限定されない。凹部18は、例えば、図24(a)に示す凹部18の様に、センサー基板10の断面が傾斜面となる円錐状の凹面であっても良い。或いは、図24(b)に示す凹部18の様に、センサー基板10の断面が傾斜角度が異なる複数の傾斜面で構成される凹面であってもよい。又、凹部18は、これらの傾斜面と球状面との組み合わせで構成されていてもよい。この様な構成であっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。尚、凹部18が複数の傾斜面や球状面の組み合わせで構成される場合は、外周部における曲率又は傾斜角度が中央部における曲率又は傾斜角度よりも大きい事が望ましい。
【0133】
(変形例9)
上述した実施形態では、弾性体突起22の先端部22aが球面の錘状であったが、この様な形態に限定されない。弾性体突起22の形状は、例えば、図24(c)に示す様に半球状であってもよいし、図24(d)に示す様に円柱状でああってもよい。この様な構成であっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0134】
(変形例10)
上述した実施形態では、第二センサー13が単位検出領域S当たり2行2列の計4個、又は4行4列の計16個、行列状に配置されている例をあげて説明したが、この様な形態に限定されない。第二センサー13は、単位検出領域S当たり3つ以上配置されていればよいし、行列状以外の配置であってもよい。この様な構成であっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0135】
(変形例11)
上述した実施形態では、第一センサー12や第二センサー13は電気抵抗を計測する方式のセンサーであったが、この様な形態に限定されない。これらのセンサーとして、例えば、静電容量式センサーを用いる構成や、ダイアフラムに加わる圧力を電気信号に変換するダイアフラムゲージ等の感圧素子を用いる構成や、インダクタンスの変化を検出する素子を用いる構成であってもよい。この様な構成であっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0136】
(変形例12)
上述した実施形態では、検出装置100が電子機器やロボットハンド3000の把持部3001に搭載された例を説明したが、この様な形態に限定されない。例えば、ロボットの指先や足裏等に搭載して触覚センサーとして用いる構成としてもよい。この様な構成によれば、対象物の表面状態や動作状態を検知して、より精密な動作を行う事が可能なロボットを提供する事ができる。或いは、検出装置100を衣服等の身に着けるものの中に縫い込む事や埋め込む事により搭載する構成であってもよい。この様な構成によれば、筋肉等の身体の一部の動作を検知する事が可能となる。
【符号の説明】
【0137】
10…センサー基板、11…センサー基板本体、12…第一センサー、12a…第一電極、12b…第二電極、13…第二センサー、13a…第三電極、13b…第四電極、13c…感圧導電体、18…凹部、20…突起シート、21…突起シート本体、22…弾性体突起、22a…先端部、31…第一機構、32…第二機構、33…圧力センサーシート、36…樹脂層、37…接着層、100…検出装置、110…検出部、120…制御部、122…制御ユニット、123…演算装置、124…データメモリー、400…弾性シート、1000…携帯電話機、1001…液晶パネル、1002…コントロールパッド、1003…操作ボタン、2000…携帯情報端末、2001…液晶パネル、2002…操作ボタン、2003…コントロールパッド、3000…ロボットハンド、3001…把持部、3002…アーム部、3003…本体部、3010…対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一センサーと第二センサーとが設けられた第一基板と、
前記第一基板に対向し、前記第一センサーに当接して外力によって弾性変形する第一弾性体突起と、前記第二センサーに当接して前記外力によって弾性変形する第二弾性体突起とが設けられた第二基板とを備え、
前記第一基板は、凹部を備え、前記凹部には、前記第二センサーが複数配置され、
前記第一センサーと前記第一弾性体突起とにより外力の有無を検出する第一機構を形成し、複数の前記第二センサーと前記第二弾性体突起とにより前記外力の大きさと方向を検出する第二機構とを形成することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記第一基板は、平坦部を備え、
前記第一センサーは前記平坦部に形成され、
前記第一機構に含まれる前記第一弾性体突起は、前記第一センサーと重なる位置に重心が位置し、先端部が前記第一センサーに当接する様に配置されている事を特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記凹部の開口径は、前記第二弾性体突起の外径よりも大きい事を特徴とする請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記凹部の外周部における前記平坦部に対する傾斜角度は、前記凹部の中央部における前記平坦部に対する傾斜角度よりも大きい事を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記凹部の深さは、前記第二弾性体突起の高さよりも小さい事を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第一機構の検出結果に基づいて前記第二機構の検出動作を制御する制御部を有する事を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記第一機構により外力がある事を検出した場合は、前記制御部からの信号により、前記第二センサーが外力の検出を開始する事を特徴とする請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記第一機構は、平面視において、少なくとも2つの前記第二機構の間に形成されている事を特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項9】
平面的に前記第一機構の周囲に少なくとも2つの前記第二機構が配置されている事を特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記第二センサーは、複数個が前記基準点に対して点対称に配置されている事を特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項11】
前記第二センサーは、複数個が平面的に互いに直交する2方向に行列状に配置されている事を特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項12】
前記第二センサーは、複数個が単位検出領域当たり少なくとも4行4列に配置されている事を特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項13】
前記第一センサーは、前記第一基板上に対向配置された第一電極と第二電極とを有し、
前記第二センサーは、前記第一基板上に対向配置された第三電極と第四電極とを有し、
少なくとも前記第三電極と前記第四電極との間に感圧導電体が配置されている事を特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項14】
前記第一電極の平面積が、前記第三電極の平面積よりも大きい事を特徴とする請求項13に記載の検出装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の検出装置を備える事を特徴とする電子機器。
【請求項16】
請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の検出装置を備える事を特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−96884(P2013−96884A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240917(P2011−240917)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】