説明

検出装置

【課題】高精度かつシンプルな構造で、指等の関節の曲げ伸ばしを検出することが可能な検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、指の曲げ伸ばしを検出する、可撓性を有したケーブル状の圧電センサを使用した検出手段20を手の指に沿って取り付け、検出手段20の出力信号をもとに演算を行い、指の曲げ伸ばし状態を判定する演算手段21とを備え、関節の曲げ伸ばしを確実に検出し、シンプルで精度の高い検出装置を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指等の曲げ伸ばしを検出する検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の検出装置としては、姿勢センサや関節角度センサ等を用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は特許文献1に記載された従来の検出装置の図である。図6は手の指に姿勢センサを装着し、この姿勢センサの出力に基づいてコマンドを生成する入力装置であり、指の各関節に姿勢センサが取り付けられている。これらの構成により、各指の曲げを検出している。
【0004】
また、手の指の関節部分に1つのストレインゲージを配設して、指の屈伸運動を検出しているものもあった(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−344053号公報
【特許文献2】特開平9−62437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、手の指の曲げ伸ばしを検出するためには、関節毎にセンサを取り付ける必要があり、例えば、指1本に対して、指の第1関節から第3関節にセンサが必要であった。また、センサを指1本に対して、1つしか付けない場合であると、指の曲げ伸ばしを検出する精度が悪くなり、指を大きく曲げ伸ばさないと検出がしにくくなるという課題があった。また、バーチャルリアリティで使用した入力装置等では、指の曲げ伸ばしの検出は可能であるが、構造が複雑になり過ぎるという課題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、指の曲げ伸ばしを確実に検出し、様々な使用者や用途に応じて上記の課題を適応的に解決し、シンプルで精度の高い検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の検出装置は、可撓性を有したケーブル状の曲げ伸ばし検出手段を手の指に沿って取り付け、検出手段の出力信号をもとに演算を行い、指の曲げ伸ばし状態を判定する演算手段とを備え、関節の曲げ伸ばしを確実に検出し、シンプルで精度の高い検出を行う。
【発明の効果】
【0008】
本願発明の検出装置では、指の曲げ伸ばしを確実に検出し、構成はシンプルで検出精度の高い検出装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、手の指に沿って取り付け、指の曲げ伸ばしを検出する可撓性を有したケーブル状の検出手段と、検出手段の出力信号をもとに演算を行い、指の曲げ伸ばし状態を判定する演算手段とを備え、曲げ伸ばしの判定を行うことを特徴とした。
【0010】
これにより、指に取り付ける検出手段が可撓性のあるケーブル状であるため、指に沿って配設することができ、指の曲げ伸ばしを確実に検出することができ、小さな動きに対し
ても精度の高い曲げ伸ばし検出を行うことが可能となる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の検出手段において、手の指1本に対して1つの検出手段が配設されていることを特徴とした。
【0012】
これにより、検出手段一つで、指の第1関節から第3関節の曲げ伸ばしを検出することが可能となり、複数の検出手段を指の各関節取り付ける必要がなくなる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明の演算手段において、検出手段からの出力信号の信号レベルあるいは極性を判別することで、例えば検出手段を指に取り付けた場合、指の曲げ伸ばし方によって、検出手段からの出力が異なるが、出力信号の信号レベルや極性を判別することで、指がどのように動かされたかを判別することが可能となる。
【0014】
第4の発明は、第1から第3の発明の検出手段において、指に直接貼り付けられることを特徴とした。
【0015】
これにより、可撓性を有したケーブル状の曲げ伸ばし検出手段は指の動きと連動し、高精度で指の曲げ伸ばしを検出することが可能となる。
【0016】
第5の発明は、第1から第3の検出手段において、手袋に取り付けられていることを特徴とした。
【0017】
これにより、手袋を手に装着して使用することで、誰にでも簡単に検出手段を取り付けることができる。
【0018】
第6の発明は、第1から5の発明において、検出手段および演算手段を、他機器への入力装置として使用することで、コンピュータのカーソルを動かすマウスを使わずに、手の動きをマウスによるカーソルの動きに対応させたりすることができる。
【0019】
第7の発明は、第1から6の発明において、検出手段として可撓性をもつケーブル状の圧電センサを使用した検出装置となる。これにより、圧電センサが指の曲げ伸ばしによる変位を受けて撓むことにより発生する出力信号に基づき指の曲げ伸ばしの判定を行うものである。また、圧電センサは可撓性を有しているので、指の曲げ伸ばしに対して抑制をかけることなく、圧電センサを取り付けていても自然な動きを行うことができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態における検出装置を手の指に直接取り付けた構成の場合についての動作を説明する。図1は、検出手段を手の各指に取り付けた構成図である。図1において、20は検出手段であり、本実施の形態では、可撓性をもつケーブル状の圧電センサを使用している。21は演算手段であり、22は演算手段と外部機器23を接続する信号線である。ここで検出手段20は手の指に直接取り付けられた構成としているが取り付け方法については、各指の関節部分に固定できればよく、指の曲げ伸ばしと連動して、検出手段も撓めばよい。固定方法としては、テープ等で固定してもよいし、面ファスナーのバンドで手に固定してもよい。また、演算手段21の固定方法も検出手段20と同様の固定方法でよいが、演算手段21を手には固定せずに、検出手段20をシールド線等の信号線で中継し、演算手段21に接続するようにしてもよい。また、演算手段21と外部機器23は有線で接続しているが、これは無線通信でもよい。
【0022】
図2(a)は圧電センサ20と演算手段21の構成図である。図2(b)は図2(a)のB−B位置における断面図を示すものである。図2(a)において、圧電センサ20は電極の断線・ショート検出用の抵抗体が内蔵された先端部141を備えている。図2(b)において、圧電センサ14は導体からなる中心電極142、圧電体層143、導体からなる外側電極144、弾性体からなる被覆層145を備えている。圧電体層143はポリフッ化ビニリデン等の樹脂系の高分子圧電体を用いることも考えられるが、耐熱温度が上限で80℃程度であり、高分子圧電体を用いることは好ましくない。圧電体層143としては特定の樹脂基材中に圧電セラミックスの粉体を混合した複合圧電体を用いると100℃以上の高温耐久性を有することができ、このような複合圧電体を使用することが好ましい。
【0023】
図3は、本発明の第1の実施の形態における演算手段21のブロック図である。図3において、211は、フィルタで圧電センサ20からの出力信号を所定の濾波特性で濾波する。212は、所定の増幅度で増幅を行うアンプ、213は、フィルタの特性や増幅率を変更できる検出レベル調整部である。フィルタ211の濾波特性としては、手の曲げ伸ばし時の周波数はだいたい10Hz以下であり、特に3〜8Hzの範囲が多く、濾波特性としては例えば、3〜8Hzの信号成分を通過させるバンドパスフィルタとする。214は初期判定部、215はピーク値検出手段、216は閾値調整部、217は判定部、218は外部機器である。
【0024】
以上のように構成された検出装置について、以下その動作、作用について図4を用いて説明する。図4は、指に圧電センサ20を取り付けて、関節の曲げ伸ばしを行った時の圧電センサ20の出力電圧をフィルタ部211、アンプ212を通して出力された信号Vと、出力信号Vのピーク値を検出した値と、ピーク値が閾値を超えた場合に、判定部217から外部機器23に出力される出力信号Kの経時変化を示す特性図である。指の曲げ伸ばしにより、圧電センサ20も連動して、撓んでいく。圧電センサ20は可撓性を有しているため、容易に変形する。図4の時刻tで圧電センサ20の変形が開始し、圧電センサ20からは圧電効果により圧電センサ20の変形の加速度に応じた信号が出力される。
【0025】
従来の構成では、指の関節毎にセンサを取り付けないと、指の曲げ伸ばしを検出できなく、センサの配設数を減らすために、指の先端部だけ等にセンサを取り付けた場合は、センサ出力が充分に得られないことがあった。本実施の形態1の検出装置の構成では、指に沿ってセンサを取り付け、センサ1本で指1本の関節の曲げ伸ばしの検出をカバーできるため、シンプルな構成で、高精度の検出が可能である。
【0026】
圧電センサ20の出力信号は、フィルタ部211により手の曲げ伸ばしの周波数帯域である3〜8Hzの信号を通過させ、他の周波数帯の信号は除去される。手の曲げ伸ばし時には、Vに基準電位Vより大きな信号成分が現れる。初期判定部214は、圧電センサ20からの出力電圧VのVからの振幅|V−V|がD(初期判定閾値)を超えると、これは、指の曲げ伸ばしが始まったとして、時刻t1でピーク値検出部215はセンサ出力のピーク値検出を開始する。次に、ピーク値を検出している際に、判定閾値(図4の点線)を超えた場合、本実施の形態1ではPが検出された時点で、指の曲げ伸ばしを検出したとして、判定部217は時刻tで判定出力としてLo→Hi→Loのパルス信号を出力する。本実施の形態では、判定出力としての信号をパルス信号としたが外部機器に合わせて設定を行えばよい。
【0027】
また、検出レベル調整部213により、圧電センサ20からの検出レベルが調整可能であり、配設状況や用途に応じて使用者が調整することが可能である。また、閾値調節部216により、判定のための各種閾値を変更できるようになっている。
【0028】
また、本実施の形態1では、各指に取り付けた圧電センサ20を一つの演算手段21で出力信号を処理しているが、どの指が曲げ伸ばしを行ったかを検出する場合には、演算手段21をセンサ毎に取り付けることにより、どの指が曲げ伸ばしを行ったかを特定することが可能となる。この時、例えば人差し指を曲げ伸ばした場合は、同時に中指がわずかながら動いてしまう場合があるが、人差し指に取り付けたセンサの出力信号に対して、中指に取り付けたセンサの出力信号は小さく、センサの出力レベルでどの指を曲げ伸ばしたか判別することが可能である。
【0029】
また、本実施の形態1では、指にセンサを直接取り付けているが、手袋の指の部分にあらかじめセンサを取り付けておけば、複数の人が使用する場合においても、簡単に取替えを行うことができる。
【0030】
図5(a)は中指に圧電センサ20と演算手段21を取り付けた構成図であり、図5(b)と図5(c)は中指をE方向、F方向に動かした場合の圧電センサ20の出力信号を示した図である。中指をE方向に動かした場合は、1波目は、図5(b)で示すように、基準電位Vより大きな信号成分が現れる。逆にF方向に動かした場合の1波目は、図5(c)で示すように、基準電位Vより小さな信号成分が現れる。これにより、基準電位Vに対して、センサ出力信号の極性を判定することにより、指の動かした方向(指を曲げたか伸ばしたか)を特定することが可能となる。これらの判別をことにより、適宜、検出目的に合わせて信号レベルや信号の極性判定の設定をすることができ、きめ細かく曲げ伸ばしの検出をすることができる。
【0031】
また、本実施の形態の検出装置を使用して、他機器への入力装置として使用することも可能である。
【0032】
ゲーム機のコントローラとして使用する場合、各指の曲げ伸ばしに対応して、画面上のキャラクターを動作させたりすることができる。例えば、右手の人差し指の曲げ伸ばしを検出した場合は、キャラクターを上方向に、右手の親指を動かした場合は、下方向に動かす等することができる。また、センサの出力信号レベルに合わせて、キャラクターを動かすことも可能で、出力信号が大きい場合は、キャラクターの動きを大きくしたり、出力信号が小さい場合は、キャラクターの動きを小さくしたりすることも可能である。また、センサ出力信号の極性を判定することにより、指の動かした方向に対応してキャラクターを動かすことも可能である。
【0033】
また、仮想楽器の操作にも使用可能である。例えば笛などで、指の動かした箇所によって音を出したりすることが可能である。
【0034】
また、ここ数年、国内外の学者はよく指を動かすことにより脳細胞が刺激され、脳の活性化に繋がるという発表を行っており、リハビリテーションでも指の体操等が行われている。そのため、リハビリテーション用の指の曲げ伸ばし検出にも使用可能である。例えば画面の指示に合わせて指を動かす場合では、画面に指示が出てからどのくらいで反応ができるか、あるいは、正確に指示に合わせて指が動かせたか等のデータ測定も可能となる。これにより、反応時間が除々に短くなっていったりすることがわかり、効果的にリハビリテーションが行えるようになる。
【0035】
また、コンピュータ等のIT機器の入力操作を行うマウス相当の機能を、手の動きによって簡単に行うことも可能である。例えば人差し指がカーソルを上下、中指がカーソルを左右、親指がクリック等簡単に設定することが可能である。これによりマウスの設置場所が不要となり、狭い場所でのコンピュータ操作が簡単に行うことができる。また、プレゼ
ンテーション等の画面操作でも、いちいちコンピュータのある位置で操作を行う必要がなくなり、作業効率もあがる。
【0036】
また、腕や膝等、指以外の関節の曲げ伸ばし検出にも使用することが可能である。これにより身体全体の動きを検出することができ、スポーツでのフォーム動作の確認等に使用することができる。また、人工関節用の曲げ伸ばし検出にも使用することができる。この場合は体内に埋め込めるように、センサの表皮を体内で使用可能な部材でコーティングを行ったり、部材自体に入れて使用する必要がある。これにより、関節をどの程度曲げるか伸ばすかを制御するためのセンサとして使用することができる。このように、多様な検出し得る構成であり、各種多様な曲げ伸ばし事象を判別することが可能である。そして、各種用途に応じた設定をすることで、利便性の高い検出装置とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかる検出装置は、指の曲げ伸ばしや、各関節の曲げ伸ばしを精度よく、かつシンプルな構成で検出が可能である。加えて、本発明にかかる検出装置を用いた場合のバーチャルリアリティシステムでは、ロボットの遠隔操作や対話型医療シミュレーションあるいは3次元モデリングCAD(モーションキャプチャ)等の様々な分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態における検出手段を手の各指に取り付けた構成図
【図2】(a)本発明の実施の形態における圧電センサと演算手段の構成図(b)図2(a)のB−B位置における断面図
【図3】本発明の実施の形態における検出装置のブロック図
【図4】本発明の実施の形態における検出装置で、指を曲げ伸ばした時の出力信号Vと判定部の出力信号Kの経時変化を示す特性図
【図5】(a)本発明の実施の形態における検出手段と演算手段を指に取り付けた構成図(b)指をE方向に動かした時の出力信号Vを示すグラフ(c)指をF方向に動かした時の出力信号Vを示すグラフ
【図6】従来の他の侵入検出装置の断面図
【符号の説明】
【0039】
20 圧電センサ(感圧手段)
21 演算手段
211 フィルタ
212 アンプ
213 検出レベル調整部
214 初期判定部
215 ピーク値検出部
216 閾値調整部
217 判定部
23 外部機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手の指に沿って取り付け、指の曲げ伸ばしを検出する可撓性を有したケーブル状の検出手段と、前記検出手段の出力信号をもとに演算を行い、指の曲げ伸ばし状態を判定する演算手段とを備えた検出装置。
【請求項2】
前記検出手段は、手の指1本に対して1つ配設されていることを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記検出手段からの出力信号の信号レベルあるいは極性を判別することを特徴とする請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記検出手段は、指に直接貼り付けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記検出手段は、手袋に取り付けられ、前記手袋を装着した手の指の曲げ伸ばしを検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記検出手段および演算手段は、他機器の入力装置として使用することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
検出手段として可撓性をもつケーブル状の圧電センサを使用した請求項1から6のいずれか1項に記載の検出装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−276664(P2008−276664A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122060(P2007−122060)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】