検出装置
【課題】検出回路の欠陥に起因した検出精度の低下を抑制する。
【解決手段】複数の検出回路Uの各々は、被検出物の有無に応じた検出信号Sを生成する。駆動回路20は、複数の検出回路から検出信号Sを取得する。欠陥判定部38は、複数の検出回路Uの各々における欠陥の有無を当該検出回路Uの検出信号Sに応じて判定する。駆動回路20は、複数の検出回路Uに含まれる複数の第1検出回路U1および複数の第2検出回路U2のうち欠陥の総数が少ない方から検出信号Sを取得する。
【解決手段】複数の検出回路Uの各々は、被検出物の有無に応じた検出信号Sを生成する。駆動回路20は、複数の検出回路から検出信号Sを取得する。欠陥判定部38は、複数の検出回路Uの各々における欠陥の有無を当該検出回路Uの検出信号Sに応じて判定する。駆動回路20は、複数の検出回路Uに含まれる複数の第1検出回路U1および複数の第2検出回路U2のうち欠陥の総数が少ない方から検出信号Sを取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出物の有無(接近や接触)を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の身体やペン型の指示部材(スタイラス)などの被検出物を検出する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、受光素子を含む複数の検出回路が表示用の画素とともに行列状に配列された表示装置が開示されている。受光素子に対する照射光の照度(強度)に応じた検出信号が複数の検出回路の各々から外部装置に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−318819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配線の断線または短絡や受光素子の不良など様々な欠陥が検出回路には発生し得る。検出回路に欠陥が発生すると適正な検出信号が生成されないから、被検出物の高精度な検出が困難となる。欠陥が発生した検出回路の検出信号を補正する回路を設置すれば、被検出物の検出は可能となるが、検出装置の回路の規模が肥大化するという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、検出回路の欠陥に起因した検出精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る検出装置は、被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、複数の検出回路から検出信号を取得する駆動回路と、複数の検出回路の各々における欠陥の有無を当該検出回路の検出信号に応じて判定する欠陥判定手段とを具備し、駆動回路は、複数の検出回路に含まれる複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方から検出信号を取得する。以上の態様においては、複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方から検出信号が選択的に取得されるから、欠陥の有無に関わらず全部の検出回路から検出信号を取得する構成と比較して、検出回路の欠陥に起因した検出精度の低下が抑制されるという利点がある。
【0006】
なお、「複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方から検出信号を取得する」とは、検出信号の取得先となる複数の検出回路(第1検出回路および第2検出回路の一方)の欠陥数が、検出信号の取得先とならない複数の検出回路(第1検出回路および第2検出回路の他方)の欠陥数を下回ることを意味する。したがって、複数の第1検出回路および複数の第2検出回路に加えて複数の第3検出回路も検出信号の取得先の候補として含む構成も本発明の範囲に包含される。
【0007】
第1の態様に係る検出装置の具体例において、複数の検出回路の各々は、複数の選択線と複数の検出線との各交差に対応して配置されるとともに選択線の選択により検出信号を検出線に出力し、複数の検出線は、2以上の第1検出回路が各々に接続された複数の第1検出線と、2以上の第2検出回路が各々に接続された複数の第2検出線とを含み、複数の第1検出線の各々は、複数の第2検出線の各間隙内に位置し、駆動回路は、各単位期間にて複数の選択線の各々を順次に選択する選択回路と、複数の第1検出線の各々に出力される検出信号を各単位期間にて取得する第1検出動作と、複数の第2検出線の各々に出力される検出信号を各単位期間にて取得する第2検出動作とを選択的に実行する出力回路とを含む。以上の態様においては、2以上の第1検出回路の集合(第1検出線)と2以上の第2検出回路の集合(第2検出線)とが分散して配置されるから、複数の第1検出回路(または複数の第2検出回路)が特定の領域内のみに偏在する構成と比較して、被検出物の検出に利用できる面積を確保し易いという利点がある。なお、以上の態様の具体例は例えば第1実施形態として後述される。
【0008】
第1の態様に係る検出装置の具体例において、複数の検出回路の各々は、複数の選択線と複数の検出線との各交差に対応して配置されるとともに選択線の選択により検出信号を検出線に出力し、複数の選択線は、2以上の第1検出回路が各々に接続された複数の第1選択線と、2以上の第2検出回路が各々に接続された複数の第2選択線とを含み、複数の第1選択線の各々は、複数の第2選択線の各間隙内に位置し、駆動回路は、各単位期間にて複数の第1選択線の各々を順次に選択する第1検出動作と、各単位期間にて複数の第2選択線の各々を順次に選択する第2検出動作とを選択的に実行する選択回路と、複数の検出線の各々に出力される検出信号を各単位期間にて取得する出力回路とを含む。以上の態様においては、2以上の第1検出回路の集合(第1選択線)と2以上の第2検出回路の集合(第2選択線)とが分散して配置されるから、複数の第1検出回路(または複数の第2検出回路)が特定の領域内のみに偏在する構成と比較して、被検出物の検出に利用できる面積を確保し易いという利点がある。なお、以上の態様の具体例は例えば第2実施形態として後述される。
【0009】
本発明の第2の態様に係る検出装置は、被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、複数の検出回路から検出信号を取得する駆動回路と、複数の検出回路の各々における欠陥の有無を当該検出回路の検出信号に応じて判定する欠陥判定手段と、複数の検出回路のうちの複数の第1検出回路の検出信号に応じた第1検出データと複数の第2検出回路の検出信号に応じた第2検出データとを生成する処理手段(例えば図8の処理部62)と、複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方の検出データを選択する選択手段(例えば図8の選択部64)とを具備する。以上の態様においては、第1検出回路が生成した検出信号に応じた第1検出データと第2検出回路が生成した検出信号に応じた第2検出データとのうち欠陥の総数が少ない方の検出データが選択されるから、検出回路の欠陥の有無に関わらず全部の検出データを被検出物の検出に利用する構成と比較して、検出回路の欠陥に起因した検出精度の低下が抑制されるという利点がある。なお、第2の態様に係る検出装置の具体例は、例えば第3実施形態として後述される。
【0010】
なお、第2の態様において「複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方の検出データを選択する」とは、選択手段が選択する検出データに対応した複数の検出回路(複数の第1検出回路および複数の第2検出回路の一方)の欠陥数が、選択手段が選択しない複数の検出回路(複数の第1検出回路および複数の第2検出回路の他方)の欠陥数を下回ることを意味する。したがって、複数の第1検出回路の第1検出データと複数の第2検出回路の第2検出データとに加えて複数の第3検出回路の第3検出データも選択手段による選択の候補となる構成も本発明の範囲に包含される。
【0011】
本発明の第3の態様に係る検出装置は、被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、複数の検出回路から検出信号を取得する駆動回路と、複数の検出回路のうちの複数の第1検出回路の検出信号に応じた第1検出データと複数の第2検出回路の検出信号に応じた第2検出データとを生成する処理手段(例えば図10の処理部62)と、複数の検出回路における欠陥の有無を検出信号に応じて判定する欠陥判定手段と、欠陥があると欠陥判定手段が判定した場合に、第1検出データと第2検出データとの平均を算定する平均手段(例えば図10の平均部66)とを具備する。以上の態様においては、複数の第1検出回路の第1検出データと複数の第2検出回路の第2検出データとが平均されるから、第1検出回路および第2検出回路の一方の欠陥の影響が平均後の検出データでは低減される。したがって、複数の検出回路の各々の検出信号を利用して被検出物を検出する構成と比較して、被検出物を高精度に検出できるという利点がある。なお、第3の態様に係る検出装置の具体例は、例えば第4実施形態として後述される。
【0012】
第1の態様から第3の態様に係る検出装置の好適な態様は、欠陥が有ると欠陥判定手段が判定した検出回路の総数が所定の閾値を上回る場合に警告を出力する制御手段を具備する。以上の態様においては、欠陥の総数が閾値を上回る場合に警告が出力されるから、多数の欠陥に起因して高精度な検出ができないことを利用者が認識できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る検出装置のブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る検出装置の検出回路の回路図である。
【図3】第1実施形態における第1検出回路と第2検出回路との関係を示す概念図である。
【図4】第1実施形態に係る検出装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】第1実施形態に係る検出装置の制御回路の動作のフローチャートである。
【図6】第2実施形態における第1検出回路と第2検出回路との関係を示す概念図である。
【図7】第2実施形態に係る検出装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】第3実施形態に係る検出装置のブロック図である。
【図9】第3実施形態に係る検出装置の制御回路の動作のフローチャートである。
【図10】第4実施形態に係る検出装置のブロック図である。
【図11】第4実施形態に係る検出装置の制御回路の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る検出装置100Aのブロック図である。検出装置100Aは、物体(被検出物)の検出に利用される機器(例えば、利用者の身体の接触を検出するタッチパネル)である。図1に示すように、検出装置100Aは、複数の検出回路Uが配列された検出部10と、各検出回路Uを駆動する駆動回路20と、駆動回路20を制御する制御回路30とを具備する。駆動回路20は、選択回路22Aと出力回路24Aとを含んで構成される。駆動回路20は、複数の集積回路(チップ)で構成され得る。
【0015】
検出部10には、X方向に延在するM本の選択線12と、各選択線12に対をなしてX方向に延在するM本の初期化線14と、X方向に交差するY方向に延在する2N本の検出線16とが形成される(M,Nは自然数)。複数の検出回路Uは、M本の選択線12(初期化線14)と2N本の検出線16との各交差に対応して縦M行×横2N列の行列状に配列される。
【0016】
図2は、各検出回路Uの回路図である。図2においては、第i行(i=1〜M)の第j列(j=1〜2N)に位置する1個の検出回路Uが代表的に図示されている。検出回路Uは、被検出物の有無(接近や接触)に応じた検出信号S(S[i,j])を生成する回路であり、図2に示すように、受光素子Eと増幅トランジスタTAMPと選択スイッチTSELと初期化スイッチTRSTとを含んで構成される。受光素子Eは、当該受光素子Eに対する照射光の照度(強度)に応じた電流値の光電流IPを生成する。例えばフォトダイオードが受光素子Eとして好適に採用される。受光素子Eに対する照射光の照度は、検出部10の上方における被検出物の有無や遠近に応じて変化する。
【0017】
増幅トランジスタTAMPと選択スイッチTSELと初期化スイッチTRSTとは、例えば、基板の表面に受光素子Eとともに形成されたトランジスタ(例えば、半導体層が低温ポリシリコンで形成された薄膜トランジスタ)で構成される。なお、検出回路Uを構成する各トランジスタの導電型は任意である。
【0018】
増幅トランジスタTAMPは、自身のゲートの電位に応じた検出信号(光電流IPを増幅した電流信号)S[i,j]を生成する要素であり、給電線18と第j列の検出線16との間に介在する。給電線18には電源回路(図示略)から所定の電位VRSTが供給される。増幅トランジスタTAMPのゲートは受光素子E(陰極)に接続される。
【0019】
選択スイッチTSELは、検出信号S[i,j]の経路上に配置され、検出線16に対する検出信号S[i,j]の出力の許否を制御する。具体的には、第j列の検出回路Uの選択スイッチTSELは、給電線18と第j列の検出線16とを結ぶ経路上に、増幅トランジスタTAMPに対して直列に配置される。第i行の各検出回路Uにおける選択スイッチTSELのゲートは、第i行の選択線12に対して共通に接続される。
【0020】
初期化スイッチTRSTは、増幅トランジスタTAMPのゲートと給電線18(または他の配線)との間に介在して両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する。第i行の各検出回路Uにおける初期化スイッチTRSTのゲートは、第i行の初期化線14に対して共通に接続される。
【0021】
図3に示すように、検出部10内の複数の検出回路Uは、複数の第1検出回路U1と複数の第2検出回路U2とに区分される。第1検出回路U1は、奇数列(第(2n-1)列)に位置する検出回路Uであり、第2検出回路U2は、偶数列(第2n列)に位置する検出回路Uである(n=1〜N)。すなわち、Y方向に配列するM個の第1検出回路U1の集合(奇数列)と、Y方向に配列するM個の第2検出回路U2の集合(偶数列)とが、検出部10内にてX方向に沿って交互に配置される。したがって、N個の第1検出回路U1とN個の第2検出回路U2とが1行内に存在する。
【0022】
また、2N本の検出線16は、図3に示すように、M個の第1検出回路U1が各々に接続されたN本の第1検出線161と、M個の第2検出回路U2が各々に接続されたN本の第2検出線162とに区分される。第1検出線161は奇数列(第(2n-1)列)に位置し、第2検出線162は偶数列(第2n列)に位置する。
【0023】
図1の制御回路30は、各第1検出回路U1の駆動で検出信号S[i,2n-1]を取得する第1検出動作と、各第2検出回路U2の駆動で検出信号S[i,2n]を取得する第2検出動作とを、駆動回路20に選択的に実行させる。第1検出動作は、図4に示す各単位期間(垂直走査期間)PUにて複数の検出回路Uを行単位で順次に選択し、選択行(第i行)の2N個の検出回路UのうちN個の第1検出回路U1の各々が生成した検出信号S[i,2n-1](S[i,1],S[i,3],S[i,5],……,S[i,2N-1])を各第1検出線161から取得する動作である。他方、第2検出動作は、複数の検出回路Uを各単位期間PUにて行単位で順次に選択し、選択行(第i行)の2N個の検出回路UのうちN個の第2検出回路U2の各々が生成した検出信号S[i,2n](S[i,2],S[i,4],S[i,6],……,S[i,2N])を各第2検出線162から取得する動作である。制御回路30は、第1検出動作および第2検出動作の何れかを選択し、選択した検出動作を指示する制御信号GXを駆動回路20(出力回路24A)に出力する。駆動回路20による検出動作を制御回路30が選択する処理については後述する。
【0024】
図1の選択回路22Aは、各選択線12の選択/非選択を指定する選択信号GSEL[i](GSEL[1]〜GSEL[M])を生成して第i行の選択線12に出力し、初期化信号GRST[i](GRST[1]〜GRST[M])を生成して第i行の初期化線14に出力する(図2参照)。なお、選択信号GSEL[1]〜GSEL[M]を生成する回路と初期化信号GRST[1]〜GRST[M]を生成する回路とを別個に実装した構成も採用される。
【0025】
図4に示すように、各単位期間PUはM個の選択期間PSEL[1]〜PSEL[M]を含む。選択信号GSEL[i]は、各単位期間PU内の選択期間PSEL[i]にてハイレベル(第i行の選択を意味するアクティブレベル)に設定され、選択期間PSEL[i]以外ではローレベルに維持される。初期化信号GRST[i]は、選択期間PSEL[i]の開始前の所定の期間内にてハイレベル(アクティブ)に設定され、当該期間以外ではローレベルに維持される(図示略)。
【0026】
初期化信号GRST[i]がハイレベルに設定されると、第i行の2N個の検出回路U(U1,U2)の各々の初期化スイッチTRSTがオン状態に遷移する。したがって、第i行の各増幅トランジスタTAMPのゲートの電位は給電線18の電位VRSTに初期化される。そして、初期化信号GRST[i]がローレベルに変化することで第i行の各初期化スイッチTRSTがオフ状態に遷移すると、増幅トランジスタTAMPのゲートは電気的なフローティング状態となる。したがって、増幅トランジスタTAMPのゲートの電位は、受光素子Eの光電流IPに応じた電位に設定される。
【0027】
図4に示すように、選択期間PSEL[i]では、選択信号GSEL[i]がハイレベルに設定されることで、第i行の2N個の検出回路U(U1,U2)の各々の選択スイッチTSELがオン状態に遷移する。したがって、第i行の2N個の検出回路Uの各々においては、増幅トランジスタTAMPに流れる電流を検出信号S[i,j]として第j列の検出線16に出力することが可能な状態となる。増幅トランジスタTAMPのゲートの電位は光電流IPに応じて設定されるから、検出信号S[i,j]は、受光素子Eに対する照射光の照度に応じた電流値の電流信号となる。
【0028】
図1の出力回路24Aは、図3に示すように、N個のスイッチ42[1]〜42[N]と信号処理回路44とを含んで構成される。スイッチ42[n]は、相隣接する第(2n-1)列の第1検出線161(a端)と第2n列の第2検出線162(b端)とを選択的に信号処理回路44に導通させる。スイッチ42[1]〜42[N]は、制御回路30から供給される制御信号GXに応じて制御される。
【0029】
第1検出動作を選択した場合、制御回路30は、図4に示すように、第1検出線161(a端)の選択を意味するハイレベルの制御信号GXをスイッチ42[1]〜42[N]に出力する。スイッチ42[1]〜42[N]は、制御信号GXに応じてN本の第1検出線161(第1検出回路U1)を信号処理回路44に導通させる。したがって、各単位期間PU内の選択期間PSEL[1]〜PSEL[M]の各々では、図4に示すように、第i行の2N個の検出回路UのうちN個の第1検出回路U1にて生成されたN系統の検出信号S[i,2n-1](S[i,1],S[i,3],S[i,5],……,S[i,2N-1])が各第1検出線161を介して信号処理回路44に並列に供給される。すなわち、駆動回路20(出力回路24A)は第1検出動作を実行する。他方、信号処理回路44とN本の第2検出線162とは電気的に絶縁されるから、各第2検出回路U2の増幅トランジスタTAMPに電流(検出信号S[i,2n])は流れない。
【0030】
第2検出動作を選択した場合、制御回路30は、図4に示すように制御信号GXをローレベル(第2検出線162の選択を意味するレベル)に設定することで、N本の第2検出線162(第2検出回路U2)を信号処理回路44に導通させる。したがって、各単位期間PU内の選択期間PSEL[i]では、図4に示すように、第i行の2N個の検出回路UのうちN個の第2検出回路U2にて生成されたN系統の検出信号S[i,2n](S[i,2],S[i,4],S[i,6],……,S[i,2N])が各第2検出線162を介して信号処理回路44に並列に供給される。すなわち、駆動回路20は第2検出動作を実行する。他方、信号処理回路44とN本の第1検出線161とは電気的に絶縁されるから、各第1検出回路U1の増幅トランジスタTAMPに電流(検出信号S[i,2n-1])は流れない。
【0031】
図3の信号処理回路44は、検出部10から並列に供給されるN系統の検出信号Sを選択期間PSEL[i]内にて順次に選択して1系統の検出信号SOUTを出力するP/S(parallel to serial)変換器である。検出信号SOUTは、制御回路30を介して外部装置に供給されたうえで被検出物の有無の判定や被検出物の形状の特定に利用される。なお、制御回路30が検出信号SOUTを利用して被検出物の有無や形状を判別する構成も採用される。
【0032】
各検出回路Uには、配線の短絡または断線や各要素(受光素子Eやトランジスタ)の不良などの欠陥が発生し得る。制御回路30は、複数の検出回路Uの各々について欠陥の有無を判定する欠陥判定部38を具備する。制御回路30は、複数の第1検出回路U1および複数の第2検出回路U2のうち欠陥の総数が少ない方を利用した検出動作(第1検出動作/第2検出動作)を選択して駆動回路20に指示する。図5は、制御回路30が駆動回路20の検出動作(第1検出動作/第2検出動作)を選択する処理のフローチャートである。例えば検出装置100Aの電源の投入後に図5の処理が実行される。
【0033】
図5の処理に先立ち、検出部10の各検出回路Uに対する照射光の照度が略同等となる状況が生成される。例えば、全面が所定の階調に設定された用紙(例えばグレーカード)を利用者が検出部10に近接して配置することで、各検出回路Uの照度が略同等に設定される。図5の処理を開始すると、制御回路30は、適正範囲A(上限値および下限値)を設定する(SA1)。適正範囲Aは、検出回路Uの欠陥の有無を判定する基準となる範囲(閾値)であり、例えば操作部(図示略)に対する利用者からの操作に応じて可変に設定される。図5の処理の実行時の各検出回路Uに対する照度は、欠陥がない各検出回路Uの検出信号S[i,j]の電流値が適正範囲A内に包含されるように設定される。
【0034】
制御回路30は、検出部10の全部の検出回路U(第1検出回路U1および第2検出回路U2の双方)から検出信号S[i,j](検出信号SOUT)を取得する(SA2)。例えば、制御回路30は、制御信号GXをハイレベルに設定して駆動回路20に第1検出動作を実行させることで各第1検出回路U1の検出信号S[i,2n-1]を検出信号SOUTとして取得し、制御信号GXをローレベルに設定して駆動回路20に第2検出動作を実行させることで各第2検出回路U2の検出信号S[i,2n]を検出信号SOUTとして取得する。
【0035】
制御回路30の欠陥判定部38は、各検出信号S[i,j]の電流値とステップSA1で設定した適正範囲Aとを比較することで、複数(全部)の検出回路Uの各々について欠陥の有無を判定する(SA3)。具体的には、欠陥判定部38は、検出信号S[i,j]が適正範囲A内の電流値である検出回路Uには欠陥がないと判定し、検出信号S[i,j]が適正範囲Aの外側の電流値である検出回路Uには欠陥があると判定する。
【0036】
制御回路30は、検出部10内の何れかの検出回路Uに欠陥があるか否かを、欠陥判定部38による処理の結果から判定する(SA4)。何れかの検出回路Uに欠陥があると判定した場合(SA4:YES)、制御回路30は、欠陥数λ1および欠陥数λ2を特定する(SA5)。欠陥数λ1は、複数の第1検出回路U1のうち欠陥があると欠陥判定部38が判定した第1検出回路U1の総数であり、欠陥数λ2は、複数の第2検出回路U2のうち欠陥があると欠陥判定部38が判定した第2検出回路U2の総数である。そして、制御回路30は、欠陥数λ1が欠陥数λ2を下回るか否かを判定する(SA6)。
【0037】
欠陥数λ1が欠陥数λ2を下回る場合(SA6:YES)、制御回路30は、各第1検出回路U1から検出信号S[i,2n-1]を取得する第1検出動作を選択する(SA7)。すなわち、制御回路30は、制御信号GXをハイレベルに設定する。他方、欠陥数λ1が欠陥数λ2を上回る場合(SA6:NO)、制御回路30は、各第2検出回路U2から検出信号S[i,2n]を取得する第2検出動作を選択する(SA8)。すなわち、制御回路30は、制御信号GXをローレベルに設定する。
【0038】
他方、何れの検出回路Uにも欠陥がないとステップSA4にて判定した場合、制御回路30は、第1検出動作および第2検出動作の何れかを任意に選択して制御信号GXを設定する(SA9)。例えば、利用者から指示された検出動作を制御回路30が選択する構成や、検出装置100Aの電源の投入のたびに検出動作が変更されるように制御回路30が検出動作を選択する構成が採用され得る。
【0039】
以上の処理が完了すると、制御回路30は、ステップSA7からステップSA9の何れかで選択した検出動作を駆動回路20に反復的に実行させる(SA10)。すなわち、駆動回路20は、複数の第1検出回路U1および複数の第2検出回路U2のうち欠陥数(λ1,λ2)が少ない方を対象として検出動作(第1検出動作/第2検出動作)を実行する。したがって、各検出回路Uに欠陥がある場合でも、被検出物を高精度に検出可能な検出信号SOUTの生成が可能である。他方、検出信号S[i,j]を補正する回路は原理的には不要であるから、補正用の回路を設置した構成と比較して検出装置100Aの回路の規模の肥大化が抑制されるという利点もある。
【0040】
また、第1検出回路U1と第2検出回路U2とが選択的に利用されるから、各単位期間PUにて常に全部の検出回路Uから検出信号S[i,j]を取得する(すなわち、全部の検出回路Uの増幅トランジスタTAMPに電流が流れる)構成と比較して、各検出回路Uを構成する要素(例えば増幅トランジスタTAMP)の劣化を抑制することが可能である。また、各単位期間PUでは第1検出回路U1および第2検出回路U2の一方の増幅トランジスタTAMPのみに電流(検出信号S[i,j])が流れるから、常に全部の検出回路Uから検出信号S[i,j]を取得する構成と比較して、検出部10内で消費される電力が削減されるという利点もある。
【0041】
さらに、検出部10内では第1検出回路U1と第2検出回路U2とがX方向に分散して配置されるから、第1検出回路U1や第2検出回路U2が検出部10内の特定の領域に偏在する構成と比較すると、検出部10内の全体を被検出物の検出に利用する(検出可能な面積を充分に確保する)ことが可能である。
【0042】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0043】
図6に示すように、検出部10には、X方向に延在する2M本の選択線12および初期化線14(図示略)と、Y方向に延在するN本の検出線16とが形成される。したがって、複数の検出回路Uは、縦2M行×横N列の行列状に配列される。複数の検出回路Uは、奇数行に位置する第1検出回路U1と偶数行に位置する第2検出回路U2とに区分される。すなわち、X方向に配列するN個の第1検出回路U1の集合(奇数行)と、X方向に配列するN個の第2検出回路U2の集合(偶数行)とが、検出部10内にてY方向に沿って交互に配置される。また、2M本の選択線12は、N個の第1検出回路U1が各々に接続されたM本の第1選択線121と、N個の第2検出回路U2が各々に接続されたM本の第2選択線122とに区分される。
【0044】
図6に示すように、第2実施形態の駆動回路20は、選択回路22Bと出力回路24Bとを含んで構成される。出力回路24Bは、第1実施形態の信号処理回路44と同様に、検出部10から並列に供給されるN系統の検出信号Sを順次に選択して1系統の検出信号SOUTを出力する。
【0045】
図6に示すように、選択回路22Bは、M個のスイッチ52[1]〜52[M]と信号生成回路54とを含んで構成される。信号生成回路54(例えばシフトレジスタ)は、図7に示すように、単位期間PU内の各選択期間PSEL[i]にて順次にハイレベル(アクティブ)に設定される制御信号G0[1]〜G0[M]を生成する。すなわち、制御信号G0[m](m=1〜M)の波形は、第1実施形態の選択信号GSEL[m]と同様である。
【0046】
図6のスイッチ52[m]は、相隣接する第(2m-1)行の第1選択線121(a端)と第2m行の第2選択線122(b端)とを選択的に信号生成回路54に接続する。スイッチ52[1]〜52[M]は、制御回路30から供給される制御信号GXで制御される。制御回路30は、図5の処理で選択した動作(第1検出動作/第2検出動作)に応じて制御信号GXのレベルを設定する。
【0047】
第1検出回路U1から検出信号S[i,j]を取得する第1検出動作を選択した場合、制御回路30は、図7に示すように、第1選択線121(a端)の選択を意味するハイレベルの制御信号GXをスイッチ52[1]〜52[M]に出力する。スイッチ52[1]〜52[M]は、制御信号GXに応じてM本の第1選択線121を信号生成回路54に導通させる。したがって、信号生成回路54が生成した制御信号G0[m]は、図7に示すように、選択信号GSEL[2m-1](GSEL[1],GSEL[3],GSEL[5],……,GSEL[2M-1])として第(2m-1)行の第1選択線121に出力される。すなわち、選択回路22Bは、M本の第1選択線121の各々を単位期間PU内の各選択期間PSEL[m]にて順次に選択する。
【0048】
したがって、単位期間PU内の各選択期間PSEL[m]では、図7に示すように、第(2m-1)行のN個の第1検出回路U1にて生成されたN系統の検出信号S[2m-1,j](S[2m-1,1],S[2m-1,2],S[2m-1,N])が各検出線16を介して出力回路24Bに並列に供給される。すなわち、駆動回路20(選択回路22B)は第1検出動作を実行する。他方、信号生成回路54とM本の第2選択線122とは電気的に絶縁されるから、各第2検出回路U2の増幅トランジスタTAMPに電流は流れない。
【0049】
他方、第2検出回路U2から検出信号S[i,j]を取得する第2検出動作を選択した場合、制御回路30は、制御信号GXをローレベルに設定することで、M本の第2選択線122を信号生成回路54に導通させる。したがって、信号生成回路54が生成した制御信号G0[m]は、図7に示すように、選択信号GSEL[2m](GSEL[2],GSEL[4],GSEL[6],……,GSEL[2M])として第2m行の第2選択線122に出力される。すなわち、選択回路22Bは、M本の第2選択線122の各々を単位期間PU内の各選択期間PSEL[m]にて順次に選択する。
【0050】
したがって、各選択期間PSEL[m]では、第2m行のN個の第2検出回路U2にて生成されたN系統の検出信号S[2m,j](S[2m,1],S[2m,2],S[2m,N])が各検出線16を介して出力回路24Bに並列に供給される。すなわち、駆動回路20は第2検出動作を実行する。他方、信号生成回路54とM本の第1選択線121とは電気的に絶縁されるから、各第1検出回路U1の増幅トランジスタTAMPに電流は流れない。
【0051】
制御回路30が駆動回路20の検出動作を選択する処理の内容は、第1実施形態(図5)と同様である。すなわち、複数の第1検出回路U1および複数の第2検出回路U2のうち欠陥数(λ1,λ2)が少ない方を対象として検出動作(第1検出動作/第2検出動作)が実行される。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の作用および効果が実現される。
【0052】
<C:第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態に係る検出装置100Bのブロック図である。検出装置100Bの検出部10には複数の検出回路Uが縦M行×横N列の行列状に配列される。複数の検出回路Uは、以上の各形態と同様に第1検出回路U1と第2検出回路U2とに区分される。
【0053】
駆動回路20は、選択回路22A(図3)と出力回路24B(図6)とを含んで構成される。選択回路22Aは、選択信号GSEL[1]〜GSEL[M]の出力で単位期間PU内にM本の選択線12の各々を順次に選択し、出力回路24Bは、検出部10から並列に供給されるN系統の検出信号S[i,j]を順次に選択して1系統の検出信号SOUTを出力する。すなわち、第1実施形態や第2実施形態では、第1検出回路U1または第2検出回路U2から選択的に検出信号S[i,j]を取得したのに対し、第3実施形態においては、各第1検出回路U1および各第2検出回路U2の双方から各単位期間PU内にて検出信号S[i,j]を取得する。以上のように、検出信号S[i,j]の取得の段階では第1検出回路U1と第2検出回路U2と(第1検出動作と第2検出動作と)を区別しないから、図8の制御回路30は、制御信号GXを駆動回路20に出力しない。
【0054】
図8に示すように、制御回路30は、第1実施形態と同様の欠陥判定部38に加えて処理部62と選択部64とを含んで構成される。処理部62は、第1検出回路U1に対応する検出データD1と第2検出回路U2に対応する検出データD2とを生成する。検出データD1は、各第1検出回路U1の検出信号S[i,j]の電流値に応じた複数(第1検出回路U1と同数)の検出値d1の集合である。他方、検出データD2は、各第2検出回路U2の検出信号S[i,j]の電流値に応じた複数(第2検出回路U2と同数)の検出値d2の集合である。すなわち、検出値d1は、第1検出回路U1の受光素子Eの照度に応じた数値に相当し、検出値d2は、第2検出回路U2の受光素子Eの照度に応じた数値に相当する。
【0055】
図8に示すように、処理部62は、A/D(analog to digital)変換器622と分離回路624とを含んで構成される。A/D変換器622は、出力回路24Bから供給される検出信号SOUT(アナログの電流信号)のA/D変換で各検出回路Uの検出値d(d1,d2)を生成する。分離回路624は、A/D変換器622による処理後の検出値dを検出値d1と検出値d2とに分離することで検出データD1と検出データD2とを生成する。選択部64は、欠陥数λ1および欠陥数λ2に応じて検出データD1および検出データD2の何れかを選択して出力する。
【0056】
図9は、第3実施形態における制御回路30の動作のフローチャートである。検出装置100Bの電源の投入後に図9の処理が実行される。図5のステップSA1からステップSA3と同様に、制御回路30は、適正範囲Aの設定(SB1)と各検出回路U(U1,U2)の検出信号S[i,j]の取得(SB2)とを実行し、欠陥判定部38は、検出信号S[i,j]の電流値と適正範囲Aとの比較で各検出回路Uの欠陥の有無を判定する(SB3)。そして、制御回路30の処理部62は、ステップSB2で取得した各検出信号S[i,j]から検出データD1および検出データD2を生成する(SB4)。
【0057】
制御回路30は、検出部10内の何れかの検出回路Uに欠陥があるか否かをステップSB3の結果から判定する(SB5)。何れの検出回路Uにも欠陥がないと判定した場合(SB5:NO)、制御回路30は、検出データD1および検出データD2の双方の選択を選択部64に指示する(SB10)。
【0058】
他方、検出部10内の何れかの検出回路Uに欠陥があると判定した場合(SB5:YES)、制御回路30は、図5のステップSA5およびステップSA6と同様に、複数の第1検出回路U1の欠陥数λ1と複数の第2検出回路U2の欠陥数λ2とを特定したうえで(SB6)、欠陥数λ1が欠陥数λ2を下回るか否かを判定する(SB7)。そして、欠陥数λ1が欠陥数λ2を下回る場合(SB7:YES)、制御回路30は、検出データD1(第1検出回路U1)の選択を選択部64に指示する(SB8)。他方、欠陥数λ1が欠陥数λ2を上回る場合(SB7:NO)、制御回路30は、検出データD2(第2検出回路U2)の選択を選択部64に指示する(SB9)。
【0059】
以上の処理が完了すると、制御回路30は、駆動回路20を動作させることで各検出回路U(U1,U2)の検出信号S[i,j]を取得し(SB11)、検出データD1と検出データD2とを処理部62が検出信号S[i,j]から生成する(SB12)。制御回路30の選択部64は、ステップSB12で生成した検出データD1および検出データD2のうちステップSB8からステップSB10の何れかで指示された検出データD(検出データD1および検出データD2の片方または双方)を選択して外部装置に出力する(SB13)。
【0060】
例えば、ステップSB8にて検出データD1が指示された場合(欠陥数λ1が欠陥数λ2を下回る場合)、選択部64は、ステップSB12で生成した検出データD1および検出データD2から検出データD1を選択して外部装置に出力する。検出データD2は破棄される。他方、ステップSB9にて検出データD2が指示された場合(欠陥数λ1が欠陥数λ2を上回る場合)、選択部64は、検出データD2を選択して外部装置に出力するとともに検出データD1を破棄する。また、ステップSB10にて検出データD1および検出データD2の双方が指示された場合、選択部64は、ステップSB12で生成した検出データD1および検出データD2の双方を選択して外部装置に出力する。ステップSB11からステップSB13の処理は順次に反復される。
【0061】
外部装置は、制御回路30から出力される検出データD1または検出データD2を利用して被検出物の有無の判定や被検出物の形状の特定を実行する。なお、ステップSB13で選択した検出データDを利用して制御回路30が被検出物の有無や形状を判別する構成も採用される。
【0062】
以上のように、第3実施形態においては、複数の第1検出回路U1および複数の第2検出回路U2のうち欠陥数(λ1,λ2)が少ない方の検出データ(D1/D2)が選択されるから、第1実施形態と同様に、検出信号S[i,j]を補正する回路を必要とせずに、被検出物を高精度に検出することが可能である。また、第3実施形態においては、第1検出回路U1と第2検出回路U2とを選択的に駆動するための構成が不要であるから、第1実施形態と比較して駆動回路20の構成が簡素化されるという利点もある。
【0063】
<D:第4実施形態>
図10は、第4実施形態に係る検出装置100Cのブロック図である。検出装置100Cは、第3実施形態(図8)における制御回路30の選択部64を平均部66に置換した構成である。平均部66は、処理部62が生成した検出データD1と検出データD2とを平均した平均データave(D1,D2)を生成する。平均データave(D1,D2)は、相隣接する第1検出回路U1および第2検出回路U2の各組に対応する複数(M・N/2個)の検出値d0の集合である。検出値d0は、検出データD1における第1検出回路U1(例えば第i行第j列)の検出値d1と、検出データD2における第2検出回路U2(例えば第i行第(j+1)列)の検出値d2との平均値に相当する。
【0064】
図11は、第4実施形態における制御回路30の動作のフローチャートである。検出装置100Cの電源の投入後に図11の処理が実行される。図11に示すように、制御回路30(欠陥判定部38)は、図9のステップSB1からステップSB5と同様の処理を実行する(SC1〜SC5)。そして、検出部10内の何れかの検出回路Uに欠陥があるとステップSC5にて判定した場合、制御回路30は、検出データD1と検出データD2との平均データave(D1,D2)を検出データDOUTとして指定する(SC6)。他方、各検出回路Uに欠陥がない場合(SC5;NO)、制御回路30は、検出データD1および検出データD2の双方を検出データDOUTとして指定する(SC7)。
【0065】
以上の処理が完了すると、制御回路30は、駆動回路20を動作させることで各検出回路U(U1,U2)の検出信号S[i,j]を取得し(SC8)、検出データD1と検出データD2とを処理部62が検出信号S[i,j]から生成する(SC9)。そして、制御回路30は、ステップSC6またはステップSC7での指定の結果に応じた検出データDOUTを、ステップSC9にて生成した検出データD1および検出データD2から生成して外部装置に出力する(SC10)。
【0066】
例えば、平均データave(D1,D2)をステップSC6にて指定した場合(欠陥がある場合)、平均部66は、検出データD1の各検出値d1と検出データD2の各検出値d2との平均データave(D1,D2)を検出データDOUTとして生成して外部装置に出力する。他方、検出データD1および検出データD2の双方をステップSC7にて指定した場合(欠陥がない場合)、制御回路30は、検出データD1と検出データD2との双方を検出データDOUTとして外部装置に出力する。ステップSC8からステップSC10の処理は順次に反復される。
【0067】
外部装置は、制御回路30から出力される検出データDOUTを利用して被検出物の有無の判定や被検出物の形状の特定を実行する。なお、ステップSC10で生成した検出データDOUTを利用して制御回路30が被検出物の有無や形状を判別する構成も採用される。
【0068】
以上のように、第4実施形態においては、検出回路Uに欠陥がある場合に、各第1検出回路U1の検出信号S[i,j]に応じた検出データD1(検出値d1)と各第2検出回路U2の検出信号S[i,j]に応じた検出データD2(検出値d2)との平均で検出データDOUTが生成される。すなわち、検出データDOUTの各検出値d0は、第1検出回路U1の光電流IPと第2検出回路U2の光電流IPとの双方を反映した数値となる。したがって、第1検出回路U1と第2検出回路U2の一方に存在する欠陥の影響が検出データDOUTにて低減され、第1実施形態と同様に、被検出物を高精度に検出できるという効果が実現される。また、第1検出回路U1と第2検出回路U2とを選択的に駆動するための構成が不要であるから、第3実施形態と同様に、駆動回路20の構成を簡素化することが可能である。さらに、第4実施形態においては、検出データD1と検出データD2との平均で検出データDOUTが生成されるから、欠陥数λ1や欠陥数λ2の特定が不要である。したがって、検出装置100Cの構成や動作が簡素化されるという利点もある。
【0069】
<E:変形例>
以上の形態には様々な変形が加えられる。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は併合され得る。
【0070】
(1)変形例1
以上の各形態においては複数の検出回路Uを2種類(第1検出回路U1,第2検出回路U2)に区分したが、複数の検出回路Uを3種類以上に区分した構成も採用され得る。例えば、複数の検出回路UがK種類(K≧3)に区分された場合を想定すると、第1実施形態においては、スイッチ42[n]がK本の検出線16の何れかを選択的に信号処理回路44に導通させる構成が採用され、第2実施形態においては、スイッチ52[m]がK本の選択線12の何れかを選択的に信号生成回路54に導通させる構成が採用される。また、第3実施形態においては、処理部62が生成したK個の検出データの何れかを選択部64が選択し、第4実施形態においては、処理部62が生成したK個の検出データの平均を平均部66が算定する。
【0071】
(2)変形例2
検出回路Uの欠陥に起因した検出の精度の低下が以上の各形態で低減されるとは言っても、欠陥の総数が過度に多い場合には被検出物の高精度な検出が困難となる。そこで、複数の第1検出回路U1の欠陥数λ1および複数の第2検出回路U2の欠陥数λ2の双方が所定値を上回る場合に利用者に対して警告を出力する構成も採用される。例えば、制御回路30は、利用者に対する警告を音声や画像で出力したうえで検出装置100(100A,100B,100C)の動作を停止する。また、欠陥数が所定値を上回る複数の検出回路Uの集合については、検出動作や検出データの選択の対象から除外する構成も採用される。
【0072】
(3)変形例3
第1検出回路U1および第2検出回路U2の区分の仕方は任意である。例えば、第1検出回路U1と第2検出回路U2とがX方向およびY方向の双方に隣合うように複数の検出回路Uを配置した構成も採用される。また、第1検出回路U1と第2検出回路U2とを分散して配置した構成は本発明において必須ではない。例えば、検出部10内に画定された境界線からみて一方の領域に複数の第1検出回路U1を分布させるとともに他方の領域に複数の第2検出回路U2を分布させた構成も採用される。
【0073】
(4)変形例4
図5のステップSA4や図9のステップSB5や図11のステップSC5では、検出部10内の何れかの検出回路Uに欠陥があるか否かを判定したが、検出部10内の欠陥の総数(欠陥がある検出回路Uの総数)が所定値(2以上)を上回るか否かに応じて検出部10の欠陥の有無を判定する構成も採用される。
【0074】
(5)変形例5
被検出物を検出する方式は以上の例示(光検出式)に限定されない。例えば、被検出物の接触の有無に応じて容量値が変化する容量素子を受光素子Eの代わりに利用した静電容量方式の検出装置にも以上の各形態を同様に適用することが可能である。また、検出装置100(100A,100B,100C)の用途はタッチパネルに限定されない。例えば、利用者の指紋を検出する指紋センサや、利用者の手の静脈を検出する静脈センサ、原稿からの反射光を検出する読取装置(スキャナ)にも以上の各形態に係る検出装置100が利用され得る。
【符号の説明】
【0075】
100A,100B,100C……検出装置、10……検出部、U……検出回路、U1……第1検出回路、U2……第2検出回路、12……選択線、14……初期化線、16……検出線、18……給電線、20……駆動回路、22A,22B……選択回路、24A,24B……出力回路、30……制御回路、38……欠陥判定部、42[1]〜42[N]……スイッチ、44……信号処理回路、52[1]〜52[M]……スイッチ、54……信号生成回路、62……処理部、622……A/D変換器、624……分離回路、64……選択部、66……平均部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出物の有無(接近や接触)を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の身体やペン型の指示部材(スタイラス)などの被検出物を検出する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、受光素子を含む複数の検出回路が表示用の画素とともに行列状に配列された表示装置が開示されている。受光素子に対する照射光の照度(強度)に応じた検出信号が複数の検出回路の各々から外部装置に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−318819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配線の断線または短絡や受光素子の不良など様々な欠陥が検出回路には発生し得る。検出回路に欠陥が発生すると適正な検出信号が生成されないから、被検出物の高精度な検出が困難となる。欠陥が発生した検出回路の検出信号を補正する回路を設置すれば、被検出物の検出は可能となるが、検出装置の回路の規模が肥大化するという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、検出回路の欠陥に起因した検出精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る検出装置は、被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、複数の検出回路から検出信号を取得する駆動回路と、複数の検出回路の各々における欠陥の有無を当該検出回路の検出信号に応じて判定する欠陥判定手段とを具備し、駆動回路は、複数の検出回路に含まれる複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方から検出信号を取得する。以上の態様においては、複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方から検出信号が選択的に取得されるから、欠陥の有無に関わらず全部の検出回路から検出信号を取得する構成と比較して、検出回路の欠陥に起因した検出精度の低下が抑制されるという利点がある。
【0006】
なお、「複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方から検出信号を取得する」とは、検出信号の取得先となる複数の検出回路(第1検出回路および第2検出回路の一方)の欠陥数が、検出信号の取得先とならない複数の検出回路(第1検出回路および第2検出回路の他方)の欠陥数を下回ることを意味する。したがって、複数の第1検出回路および複数の第2検出回路に加えて複数の第3検出回路も検出信号の取得先の候補として含む構成も本発明の範囲に包含される。
【0007】
第1の態様に係る検出装置の具体例において、複数の検出回路の各々は、複数の選択線と複数の検出線との各交差に対応して配置されるとともに選択線の選択により検出信号を検出線に出力し、複数の検出線は、2以上の第1検出回路が各々に接続された複数の第1検出線と、2以上の第2検出回路が各々に接続された複数の第2検出線とを含み、複数の第1検出線の各々は、複数の第2検出線の各間隙内に位置し、駆動回路は、各単位期間にて複数の選択線の各々を順次に選択する選択回路と、複数の第1検出線の各々に出力される検出信号を各単位期間にて取得する第1検出動作と、複数の第2検出線の各々に出力される検出信号を各単位期間にて取得する第2検出動作とを選択的に実行する出力回路とを含む。以上の態様においては、2以上の第1検出回路の集合(第1検出線)と2以上の第2検出回路の集合(第2検出線)とが分散して配置されるから、複数の第1検出回路(または複数の第2検出回路)が特定の領域内のみに偏在する構成と比較して、被検出物の検出に利用できる面積を確保し易いという利点がある。なお、以上の態様の具体例は例えば第1実施形態として後述される。
【0008】
第1の態様に係る検出装置の具体例において、複数の検出回路の各々は、複数の選択線と複数の検出線との各交差に対応して配置されるとともに選択線の選択により検出信号を検出線に出力し、複数の選択線は、2以上の第1検出回路が各々に接続された複数の第1選択線と、2以上の第2検出回路が各々に接続された複数の第2選択線とを含み、複数の第1選択線の各々は、複数の第2選択線の各間隙内に位置し、駆動回路は、各単位期間にて複数の第1選択線の各々を順次に選択する第1検出動作と、各単位期間にて複数の第2選択線の各々を順次に選択する第2検出動作とを選択的に実行する選択回路と、複数の検出線の各々に出力される検出信号を各単位期間にて取得する出力回路とを含む。以上の態様においては、2以上の第1検出回路の集合(第1選択線)と2以上の第2検出回路の集合(第2選択線)とが分散して配置されるから、複数の第1検出回路(または複数の第2検出回路)が特定の領域内のみに偏在する構成と比較して、被検出物の検出に利用できる面積を確保し易いという利点がある。なお、以上の態様の具体例は例えば第2実施形態として後述される。
【0009】
本発明の第2の態様に係る検出装置は、被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、複数の検出回路から検出信号を取得する駆動回路と、複数の検出回路の各々における欠陥の有無を当該検出回路の検出信号に応じて判定する欠陥判定手段と、複数の検出回路のうちの複数の第1検出回路の検出信号に応じた第1検出データと複数の第2検出回路の検出信号に応じた第2検出データとを生成する処理手段(例えば図8の処理部62)と、複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方の検出データを選択する選択手段(例えば図8の選択部64)とを具備する。以上の態様においては、第1検出回路が生成した検出信号に応じた第1検出データと第2検出回路が生成した検出信号に応じた第2検出データとのうち欠陥の総数が少ない方の検出データが選択されるから、検出回路の欠陥の有無に関わらず全部の検出データを被検出物の検出に利用する構成と比較して、検出回路の欠陥に起因した検出精度の低下が抑制されるという利点がある。なお、第2の態様に係る検出装置の具体例は、例えば第3実施形態として後述される。
【0010】
なお、第2の態様において「複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方の検出データを選択する」とは、選択手段が選択する検出データに対応した複数の検出回路(複数の第1検出回路および複数の第2検出回路の一方)の欠陥数が、選択手段が選択しない複数の検出回路(複数の第1検出回路および複数の第2検出回路の他方)の欠陥数を下回ることを意味する。したがって、複数の第1検出回路の第1検出データと複数の第2検出回路の第2検出データとに加えて複数の第3検出回路の第3検出データも選択手段による選択の候補となる構成も本発明の範囲に包含される。
【0011】
本発明の第3の態様に係る検出装置は、被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、複数の検出回路から検出信号を取得する駆動回路と、複数の検出回路のうちの複数の第1検出回路の検出信号に応じた第1検出データと複数の第2検出回路の検出信号に応じた第2検出データとを生成する処理手段(例えば図10の処理部62)と、複数の検出回路における欠陥の有無を検出信号に応じて判定する欠陥判定手段と、欠陥があると欠陥判定手段が判定した場合に、第1検出データと第2検出データとの平均を算定する平均手段(例えば図10の平均部66)とを具備する。以上の態様においては、複数の第1検出回路の第1検出データと複数の第2検出回路の第2検出データとが平均されるから、第1検出回路および第2検出回路の一方の欠陥の影響が平均後の検出データでは低減される。したがって、複数の検出回路の各々の検出信号を利用して被検出物を検出する構成と比較して、被検出物を高精度に検出できるという利点がある。なお、第3の態様に係る検出装置の具体例は、例えば第4実施形態として後述される。
【0012】
第1の態様から第3の態様に係る検出装置の好適な態様は、欠陥が有ると欠陥判定手段が判定した検出回路の総数が所定の閾値を上回る場合に警告を出力する制御手段を具備する。以上の態様においては、欠陥の総数が閾値を上回る場合に警告が出力されるから、多数の欠陥に起因して高精度な検出ができないことを利用者が認識できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る検出装置のブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る検出装置の検出回路の回路図である。
【図3】第1実施形態における第1検出回路と第2検出回路との関係を示す概念図である。
【図4】第1実施形態に係る検出装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】第1実施形態に係る検出装置の制御回路の動作のフローチャートである。
【図6】第2実施形態における第1検出回路と第2検出回路との関係を示す概念図である。
【図7】第2実施形態に係る検出装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】第3実施形態に係る検出装置のブロック図である。
【図9】第3実施形態に係る検出装置の制御回路の動作のフローチャートである。
【図10】第4実施形態に係る検出装置のブロック図である。
【図11】第4実施形態に係る検出装置の制御回路の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る検出装置100Aのブロック図である。検出装置100Aは、物体(被検出物)の検出に利用される機器(例えば、利用者の身体の接触を検出するタッチパネル)である。図1に示すように、検出装置100Aは、複数の検出回路Uが配列された検出部10と、各検出回路Uを駆動する駆動回路20と、駆動回路20を制御する制御回路30とを具備する。駆動回路20は、選択回路22Aと出力回路24Aとを含んで構成される。駆動回路20は、複数の集積回路(チップ)で構成され得る。
【0015】
検出部10には、X方向に延在するM本の選択線12と、各選択線12に対をなしてX方向に延在するM本の初期化線14と、X方向に交差するY方向に延在する2N本の検出線16とが形成される(M,Nは自然数)。複数の検出回路Uは、M本の選択線12(初期化線14)と2N本の検出線16との各交差に対応して縦M行×横2N列の行列状に配列される。
【0016】
図2は、各検出回路Uの回路図である。図2においては、第i行(i=1〜M)の第j列(j=1〜2N)に位置する1個の検出回路Uが代表的に図示されている。検出回路Uは、被検出物の有無(接近や接触)に応じた検出信号S(S[i,j])を生成する回路であり、図2に示すように、受光素子Eと増幅トランジスタTAMPと選択スイッチTSELと初期化スイッチTRSTとを含んで構成される。受光素子Eは、当該受光素子Eに対する照射光の照度(強度)に応じた電流値の光電流IPを生成する。例えばフォトダイオードが受光素子Eとして好適に採用される。受光素子Eに対する照射光の照度は、検出部10の上方における被検出物の有無や遠近に応じて変化する。
【0017】
増幅トランジスタTAMPと選択スイッチTSELと初期化スイッチTRSTとは、例えば、基板の表面に受光素子Eとともに形成されたトランジスタ(例えば、半導体層が低温ポリシリコンで形成された薄膜トランジスタ)で構成される。なお、検出回路Uを構成する各トランジスタの導電型は任意である。
【0018】
増幅トランジスタTAMPは、自身のゲートの電位に応じた検出信号(光電流IPを増幅した電流信号)S[i,j]を生成する要素であり、給電線18と第j列の検出線16との間に介在する。給電線18には電源回路(図示略)から所定の電位VRSTが供給される。増幅トランジスタTAMPのゲートは受光素子E(陰極)に接続される。
【0019】
選択スイッチTSELは、検出信号S[i,j]の経路上に配置され、検出線16に対する検出信号S[i,j]の出力の許否を制御する。具体的には、第j列の検出回路Uの選択スイッチTSELは、給電線18と第j列の検出線16とを結ぶ経路上に、増幅トランジスタTAMPに対して直列に配置される。第i行の各検出回路Uにおける選択スイッチTSELのゲートは、第i行の選択線12に対して共通に接続される。
【0020】
初期化スイッチTRSTは、増幅トランジスタTAMPのゲートと給電線18(または他の配線)との間に介在して両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する。第i行の各検出回路Uにおける初期化スイッチTRSTのゲートは、第i行の初期化線14に対して共通に接続される。
【0021】
図3に示すように、検出部10内の複数の検出回路Uは、複数の第1検出回路U1と複数の第2検出回路U2とに区分される。第1検出回路U1は、奇数列(第(2n-1)列)に位置する検出回路Uであり、第2検出回路U2は、偶数列(第2n列)に位置する検出回路Uである(n=1〜N)。すなわち、Y方向に配列するM個の第1検出回路U1の集合(奇数列)と、Y方向に配列するM個の第2検出回路U2の集合(偶数列)とが、検出部10内にてX方向に沿って交互に配置される。したがって、N個の第1検出回路U1とN個の第2検出回路U2とが1行内に存在する。
【0022】
また、2N本の検出線16は、図3に示すように、M個の第1検出回路U1が各々に接続されたN本の第1検出線161と、M個の第2検出回路U2が各々に接続されたN本の第2検出線162とに区分される。第1検出線161は奇数列(第(2n-1)列)に位置し、第2検出線162は偶数列(第2n列)に位置する。
【0023】
図1の制御回路30は、各第1検出回路U1の駆動で検出信号S[i,2n-1]を取得する第1検出動作と、各第2検出回路U2の駆動で検出信号S[i,2n]を取得する第2検出動作とを、駆動回路20に選択的に実行させる。第1検出動作は、図4に示す各単位期間(垂直走査期間)PUにて複数の検出回路Uを行単位で順次に選択し、選択行(第i行)の2N個の検出回路UのうちN個の第1検出回路U1の各々が生成した検出信号S[i,2n-1](S[i,1],S[i,3],S[i,5],……,S[i,2N-1])を各第1検出線161から取得する動作である。他方、第2検出動作は、複数の検出回路Uを各単位期間PUにて行単位で順次に選択し、選択行(第i行)の2N個の検出回路UのうちN個の第2検出回路U2の各々が生成した検出信号S[i,2n](S[i,2],S[i,4],S[i,6],……,S[i,2N])を各第2検出線162から取得する動作である。制御回路30は、第1検出動作および第2検出動作の何れかを選択し、選択した検出動作を指示する制御信号GXを駆動回路20(出力回路24A)に出力する。駆動回路20による検出動作を制御回路30が選択する処理については後述する。
【0024】
図1の選択回路22Aは、各選択線12の選択/非選択を指定する選択信号GSEL[i](GSEL[1]〜GSEL[M])を生成して第i行の選択線12に出力し、初期化信号GRST[i](GRST[1]〜GRST[M])を生成して第i行の初期化線14に出力する(図2参照)。なお、選択信号GSEL[1]〜GSEL[M]を生成する回路と初期化信号GRST[1]〜GRST[M]を生成する回路とを別個に実装した構成も採用される。
【0025】
図4に示すように、各単位期間PUはM個の選択期間PSEL[1]〜PSEL[M]を含む。選択信号GSEL[i]は、各単位期間PU内の選択期間PSEL[i]にてハイレベル(第i行の選択を意味するアクティブレベル)に設定され、選択期間PSEL[i]以外ではローレベルに維持される。初期化信号GRST[i]は、選択期間PSEL[i]の開始前の所定の期間内にてハイレベル(アクティブ)に設定され、当該期間以外ではローレベルに維持される(図示略)。
【0026】
初期化信号GRST[i]がハイレベルに設定されると、第i行の2N個の検出回路U(U1,U2)の各々の初期化スイッチTRSTがオン状態に遷移する。したがって、第i行の各増幅トランジスタTAMPのゲートの電位は給電線18の電位VRSTに初期化される。そして、初期化信号GRST[i]がローレベルに変化することで第i行の各初期化スイッチTRSTがオフ状態に遷移すると、増幅トランジスタTAMPのゲートは電気的なフローティング状態となる。したがって、増幅トランジスタTAMPのゲートの電位は、受光素子Eの光電流IPに応じた電位に設定される。
【0027】
図4に示すように、選択期間PSEL[i]では、選択信号GSEL[i]がハイレベルに設定されることで、第i行の2N個の検出回路U(U1,U2)の各々の選択スイッチTSELがオン状態に遷移する。したがって、第i行の2N個の検出回路Uの各々においては、増幅トランジスタTAMPに流れる電流を検出信号S[i,j]として第j列の検出線16に出力することが可能な状態となる。増幅トランジスタTAMPのゲートの電位は光電流IPに応じて設定されるから、検出信号S[i,j]は、受光素子Eに対する照射光の照度に応じた電流値の電流信号となる。
【0028】
図1の出力回路24Aは、図3に示すように、N個のスイッチ42[1]〜42[N]と信号処理回路44とを含んで構成される。スイッチ42[n]は、相隣接する第(2n-1)列の第1検出線161(a端)と第2n列の第2検出線162(b端)とを選択的に信号処理回路44に導通させる。スイッチ42[1]〜42[N]は、制御回路30から供給される制御信号GXに応じて制御される。
【0029】
第1検出動作を選択した場合、制御回路30は、図4に示すように、第1検出線161(a端)の選択を意味するハイレベルの制御信号GXをスイッチ42[1]〜42[N]に出力する。スイッチ42[1]〜42[N]は、制御信号GXに応じてN本の第1検出線161(第1検出回路U1)を信号処理回路44に導通させる。したがって、各単位期間PU内の選択期間PSEL[1]〜PSEL[M]の各々では、図4に示すように、第i行の2N個の検出回路UのうちN個の第1検出回路U1にて生成されたN系統の検出信号S[i,2n-1](S[i,1],S[i,3],S[i,5],……,S[i,2N-1])が各第1検出線161を介して信号処理回路44に並列に供給される。すなわち、駆動回路20(出力回路24A)は第1検出動作を実行する。他方、信号処理回路44とN本の第2検出線162とは電気的に絶縁されるから、各第2検出回路U2の増幅トランジスタTAMPに電流(検出信号S[i,2n])は流れない。
【0030】
第2検出動作を選択した場合、制御回路30は、図4に示すように制御信号GXをローレベル(第2検出線162の選択を意味するレベル)に設定することで、N本の第2検出線162(第2検出回路U2)を信号処理回路44に導通させる。したがって、各単位期間PU内の選択期間PSEL[i]では、図4に示すように、第i行の2N個の検出回路UのうちN個の第2検出回路U2にて生成されたN系統の検出信号S[i,2n](S[i,2],S[i,4],S[i,6],……,S[i,2N])が各第2検出線162を介して信号処理回路44に並列に供給される。すなわち、駆動回路20は第2検出動作を実行する。他方、信号処理回路44とN本の第1検出線161とは電気的に絶縁されるから、各第1検出回路U1の増幅トランジスタTAMPに電流(検出信号S[i,2n-1])は流れない。
【0031】
図3の信号処理回路44は、検出部10から並列に供給されるN系統の検出信号Sを選択期間PSEL[i]内にて順次に選択して1系統の検出信号SOUTを出力するP/S(parallel to serial)変換器である。検出信号SOUTは、制御回路30を介して外部装置に供給されたうえで被検出物の有無の判定や被検出物の形状の特定に利用される。なお、制御回路30が検出信号SOUTを利用して被検出物の有無や形状を判別する構成も採用される。
【0032】
各検出回路Uには、配線の短絡または断線や各要素(受光素子Eやトランジスタ)の不良などの欠陥が発生し得る。制御回路30は、複数の検出回路Uの各々について欠陥の有無を判定する欠陥判定部38を具備する。制御回路30は、複数の第1検出回路U1および複数の第2検出回路U2のうち欠陥の総数が少ない方を利用した検出動作(第1検出動作/第2検出動作)を選択して駆動回路20に指示する。図5は、制御回路30が駆動回路20の検出動作(第1検出動作/第2検出動作)を選択する処理のフローチャートである。例えば検出装置100Aの電源の投入後に図5の処理が実行される。
【0033】
図5の処理に先立ち、検出部10の各検出回路Uに対する照射光の照度が略同等となる状況が生成される。例えば、全面が所定の階調に設定された用紙(例えばグレーカード)を利用者が検出部10に近接して配置することで、各検出回路Uの照度が略同等に設定される。図5の処理を開始すると、制御回路30は、適正範囲A(上限値および下限値)を設定する(SA1)。適正範囲Aは、検出回路Uの欠陥の有無を判定する基準となる範囲(閾値)であり、例えば操作部(図示略)に対する利用者からの操作に応じて可変に設定される。図5の処理の実行時の各検出回路Uに対する照度は、欠陥がない各検出回路Uの検出信号S[i,j]の電流値が適正範囲A内に包含されるように設定される。
【0034】
制御回路30は、検出部10の全部の検出回路U(第1検出回路U1および第2検出回路U2の双方)から検出信号S[i,j](検出信号SOUT)を取得する(SA2)。例えば、制御回路30は、制御信号GXをハイレベルに設定して駆動回路20に第1検出動作を実行させることで各第1検出回路U1の検出信号S[i,2n-1]を検出信号SOUTとして取得し、制御信号GXをローレベルに設定して駆動回路20に第2検出動作を実行させることで各第2検出回路U2の検出信号S[i,2n]を検出信号SOUTとして取得する。
【0035】
制御回路30の欠陥判定部38は、各検出信号S[i,j]の電流値とステップSA1で設定した適正範囲Aとを比較することで、複数(全部)の検出回路Uの各々について欠陥の有無を判定する(SA3)。具体的には、欠陥判定部38は、検出信号S[i,j]が適正範囲A内の電流値である検出回路Uには欠陥がないと判定し、検出信号S[i,j]が適正範囲Aの外側の電流値である検出回路Uには欠陥があると判定する。
【0036】
制御回路30は、検出部10内の何れかの検出回路Uに欠陥があるか否かを、欠陥判定部38による処理の結果から判定する(SA4)。何れかの検出回路Uに欠陥があると判定した場合(SA4:YES)、制御回路30は、欠陥数λ1および欠陥数λ2を特定する(SA5)。欠陥数λ1は、複数の第1検出回路U1のうち欠陥があると欠陥判定部38が判定した第1検出回路U1の総数であり、欠陥数λ2は、複数の第2検出回路U2のうち欠陥があると欠陥判定部38が判定した第2検出回路U2の総数である。そして、制御回路30は、欠陥数λ1が欠陥数λ2を下回るか否かを判定する(SA6)。
【0037】
欠陥数λ1が欠陥数λ2を下回る場合(SA6:YES)、制御回路30は、各第1検出回路U1から検出信号S[i,2n-1]を取得する第1検出動作を選択する(SA7)。すなわち、制御回路30は、制御信号GXをハイレベルに設定する。他方、欠陥数λ1が欠陥数λ2を上回る場合(SA6:NO)、制御回路30は、各第2検出回路U2から検出信号S[i,2n]を取得する第2検出動作を選択する(SA8)。すなわち、制御回路30は、制御信号GXをローレベルに設定する。
【0038】
他方、何れの検出回路Uにも欠陥がないとステップSA4にて判定した場合、制御回路30は、第1検出動作および第2検出動作の何れかを任意に選択して制御信号GXを設定する(SA9)。例えば、利用者から指示された検出動作を制御回路30が選択する構成や、検出装置100Aの電源の投入のたびに検出動作が変更されるように制御回路30が検出動作を選択する構成が採用され得る。
【0039】
以上の処理が完了すると、制御回路30は、ステップSA7からステップSA9の何れかで選択した検出動作を駆動回路20に反復的に実行させる(SA10)。すなわち、駆動回路20は、複数の第1検出回路U1および複数の第2検出回路U2のうち欠陥数(λ1,λ2)が少ない方を対象として検出動作(第1検出動作/第2検出動作)を実行する。したがって、各検出回路Uに欠陥がある場合でも、被検出物を高精度に検出可能な検出信号SOUTの生成が可能である。他方、検出信号S[i,j]を補正する回路は原理的には不要であるから、補正用の回路を設置した構成と比較して検出装置100Aの回路の規模の肥大化が抑制されるという利点もある。
【0040】
また、第1検出回路U1と第2検出回路U2とが選択的に利用されるから、各単位期間PUにて常に全部の検出回路Uから検出信号S[i,j]を取得する(すなわち、全部の検出回路Uの増幅トランジスタTAMPに電流が流れる)構成と比較して、各検出回路Uを構成する要素(例えば増幅トランジスタTAMP)の劣化を抑制することが可能である。また、各単位期間PUでは第1検出回路U1および第2検出回路U2の一方の増幅トランジスタTAMPのみに電流(検出信号S[i,j])が流れるから、常に全部の検出回路Uから検出信号S[i,j]を取得する構成と比較して、検出部10内で消費される電力が削減されるという利点もある。
【0041】
さらに、検出部10内では第1検出回路U1と第2検出回路U2とがX方向に分散して配置されるから、第1検出回路U1や第2検出回路U2が検出部10内の特定の領域に偏在する構成と比較すると、検出部10内の全体を被検出物の検出に利用する(検出可能な面積を充分に確保する)ことが可能である。
【0042】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0043】
図6に示すように、検出部10には、X方向に延在する2M本の選択線12および初期化線14(図示略)と、Y方向に延在するN本の検出線16とが形成される。したがって、複数の検出回路Uは、縦2M行×横N列の行列状に配列される。複数の検出回路Uは、奇数行に位置する第1検出回路U1と偶数行に位置する第2検出回路U2とに区分される。すなわち、X方向に配列するN個の第1検出回路U1の集合(奇数行)と、X方向に配列するN個の第2検出回路U2の集合(偶数行)とが、検出部10内にてY方向に沿って交互に配置される。また、2M本の選択線12は、N個の第1検出回路U1が各々に接続されたM本の第1選択線121と、N個の第2検出回路U2が各々に接続されたM本の第2選択線122とに区分される。
【0044】
図6に示すように、第2実施形態の駆動回路20は、選択回路22Bと出力回路24Bとを含んで構成される。出力回路24Bは、第1実施形態の信号処理回路44と同様に、検出部10から並列に供給されるN系統の検出信号Sを順次に選択して1系統の検出信号SOUTを出力する。
【0045】
図6に示すように、選択回路22Bは、M個のスイッチ52[1]〜52[M]と信号生成回路54とを含んで構成される。信号生成回路54(例えばシフトレジスタ)は、図7に示すように、単位期間PU内の各選択期間PSEL[i]にて順次にハイレベル(アクティブ)に設定される制御信号G0[1]〜G0[M]を生成する。すなわち、制御信号G0[m](m=1〜M)の波形は、第1実施形態の選択信号GSEL[m]と同様である。
【0046】
図6のスイッチ52[m]は、相隣接する第(2m-1)行の第1選択線121(a端)と第2m行の第2選択線122(b端)とを選択的に信号生成回路54に接続する。スイッチ52[1]〜52[M]は、制御回路30から供給される制御信号GXで制御される。制御回路30は、図5の処理で選択した動作(第1検出動作/第2検出動作)に応じて制御信号GXのレベルを設定する。
【0047】
第1検出回路U1から検出信号S[i,j]を取得する第1検出動作を選択した場合、制御回路30は、図7に示すように、第1選択線121(a端)の選択を意味するハイレベルの制御信号GXをスイッチ52[1]〜52[M]に出力する。スイッチ52[1]〜52[M]は、制御信号GXに応じてM本の第1選択線121を信号生成回路54に導通させる。したがって、信号生成回路54が生成した制御信号G0[m]は、図7に示すように、選択信号GSEL[2m-1](GSEL[1],GSEL[3],GSEL[5],……,GSEL[2M-1])として第(2m-1)行の第1選択線121に出力される。すなわち、選択回路22Bは、M本の第1選択線121の各々を単位期間PU内の各選択期間PSEL[m]にて順次に選択する。
【0048】
したがって、単位期間PU内の各選択期間PSEL[m]では、図7に示すように、第(2m-1)行のN個の第1検出回路U1にて生成されたN系統の検出信号S[2m-1,j](S[2m-1,1],S[2m-1,2],S[2m-1,N])が各検出線16を介して出力回路24Bに並列に供給される。すなわち、駆動回路20(選択回路22B)は第1検出動作を実行する。他方、信号生成回路54とM本の第2選択線122とは電気的に絶縁されるから、各第2検出回路U2の増幅トランジスタTAMPに電流は流れない。
【0049】
他方、第2検出回路U2から検出信号S[i,j]を取得する第2検出動作を選択した場合、制御回路30は、制御信号GXをローレベルに設定することで、M本の第2選択線122を信号生成回路54に導通させる。したがって、信号生成回路54が生成した制御信号G0[m]は、図7に示すように、選択信号GSEL[2m](GSEL[2],GSEL[4],GSEL[6],……,GSEL[2M])として第2m行の第2選択線122に出力される。すなわち、選択回路22Bは、M本の第2選択線122の各々を単位期間PU内の各選択期間PSEL[m]にて順次に選択する。
【0050】
したがって、各選択期間PSEL[m]では、第2m行のN個の第2検出回路U2にて生成されたN系統の検出信号S[2m,j](S[2m,1],S[2m,2],S[2m,N])が各検出線16を介して出力回路24Bに並列に供給される。すなわち、駆動回路20は第2検出動作を実行する。他方、信号生成回路54とM本の第1選択線121とは電気的に絶縁されるから、各第1検出回路U1の増幅トランジスタTAMPに電流は流れない。
【0051】
制御回路30が駆動回路20の検出動作を選択する処理の内容は、第1実施形態(図5)と同様である。すなわち、複数の第1検出回路U1および複数の第2検出回路U2のうち欠陥数(λ1,λ2)が少ない方を対象として検出動作(第1検出動作/第2検出動作)が実行される。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の作用および効果が実現される。
【0052】
<C:第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態に係る検出装置100Bのブロック図である。検出装置100Bの検出部10には複数の検出回路Uが縦M行×横N列の行列状に配列される。複数の検出回路Uは、以上の各形態と同様に第1検出回路U1と第2検出回路U2とに区分される。
【0053】
駆動回路20は、選択回路22A(図3)と出力回路24B(図6)とを含んで構成される。選択回路22Aは、選択信号GSEL[1]〜GSEL[M]の出力で単位期間PU内にM本の選択線12の各々を順次に選択し、出力回路24Bは、検出部10から並列に供給されるN系統の検出信号S[i,j]を順次に選択して1系統の検出信号SOUTを出力する。すなわち、第1実施形態や第2実施形態では、第1検出回路U1または第2検出回路U2から選択的に検出信号S[i,j]を取得したのに対し、第3実施形態においては、各第1検出回路U1および各第2検出回路U2の双方から各単位期間PU内にて検出信号S[i,j]を取得する。以上のように、検出信号S[i,j]の取得の段階では第1検出回路U1と第2検出回路U2と(第1検出動作と第2検出動作と)を区別しないから、図8の制御回路30は、制御信号GXを駆動回路20に出力しない。
【0054】
図8に示すように、制御回路30は、第1実施形態と同様の欠陥判定部38に加えて処理部62と選択部64とを含んで構成される。処理部62は、第1検出回路U1に対応する検出データD1と第2検出回路U2に対応する検出データD2とを生成する。検出データD1は、各第1検出回路U1の検出信号S[i,j]の電流値に応じた複数(第1検出回路U1と同数)の検出値d1の集合である。他方、検出データD2は、各第2検出回路U2の検出信号S[i,j]の電流値に応じた複数(第2検出回路U2と同数)の検出値d2の集合である。すなわち、検出値d1は、第1検出回路U1の受光素子Eの照度に応じた数値に相当し、検出値d2は、第2検出回路U2の受光素子Eの照度に応じた数値に相当する。
【0055】
図8に示すように、処理部62は、A/D(analog to digital)変換器622と分離回路624とを含んで構成される。A/D変換器622は、出力回路24Bから供給される検出信号SOUT(アナログの電流信号)のA/D変換で各検出回路Uの検出値d(d1,d2)を生成する。分離回路624は、A/D変換器622による処理後の検出値dを検出値d1と検出値d2とに分離することで検出データD1と検出データD2とを生成する。選択部64は、欠陥数λ1および欠陥数λ2に応じて検出データD1および検出データD2の何れかを選択して出力する。
【0056】
図9は、第3実施形態における制御回路30の動作のフローチャートである。検出装置100Bの電源の投入後に図9の処理が実行される。図5のステップSA1からステップSA3と同様に、制御回路30は、適正範囲Aの設定(SB1)と各検出回路U(U1,U2)の検出信号S[i,j]の取得(SB2)とを実行し、欠陥判定部38は、検出信号S[i,j]の電流値と適正範囲Aとの比較で各検出回路Uの欠陥の有無を判定する(SB3)。そして、制御回路30の処理部62は、ステップSB2で取得した各検出信号S[i,j]から検出データD1および検出データD2を生成する(SB4)。
【0057】
制御回路30は、検出部10内の何れかの検出回路Uに欠陥があるか否かをステップSB3の結果から判定する(SB5)。何れの検出回路Uにも欠陥がないと判定した場合(SB5:NO)、制御回路30は、検出データD1および検出データD2の双方の選択を選択部64に指示する(SB10)。
【0058】
他方、検出部10内の何れかの検出回路Uに欠陥があると判定した場合(SB5:YES)、制御回路30は、図5のステップSA5およびステップSA6と同様に、複数の第1検出回路U1の欠陥数λ1と複数の第2検出回路U2の欠陥数λ2とを特定したうえで(SB6)、欠陥数λ1が欠陥数λ2を下回るか否かを判定する(SB7)。そして、欠陥数λ1が欠陥数λ2を下回る場合(SB7:YES)、制御回路30は、検出データD1(第1検出回路U1)の選択を選択部64に指示する(SB8)。他方、欠陥数λ1が欠陥数λ2を上回る場合(SB7:NO)、制御回路30は、検出データD2(第2検出回路U2)の選択を選択部64に指示する(SB9)。
【0059】
以上の処理が完了すると、制御回路30は、駆動回路20を動作させることで各検出回路U(U1,U2)の検出信号S[i,j]を取得し(SB11)、検出データD1と検出データD2とを処理部62が検出信号S[i,j]から生成する(SB12)。制御回路30の選択部64は、ステップSB12で生成した検出データD1および検出データD2のうちステップSB8からステップSB10の何れかで指示された検出データD(検出データD1および検出データD2の片方または双方)を選択して外部装置に出力する(SB13)。
【0060】
例えば、ステップSB8にて検出データD1が指示された場合(欠陥数λ1が欠陥数λ2を下回る場合)、選択部64は、ステップSB12で生成した検出データD1および検出データD2から検出データD1を選択して外部装置に出力する。検出データD2は破棄される。他方、ステップSB9にて検出データD2が指示された場合(欠陥数λ1が欠陥数λ2を上回る場合)、選択部64は、検出データD2を選択して外部装置に出力するとともに検出データD1を破棄する。また、ステップSB10にて検出データD1および検出データD2の双方が指示された場合、選択部64は、ステップSB12で生成した検出データD1および検出データD2の双方を選択して外部装置に出力する。ステップSB11からステップSB13の処理は順次に反復される。
【0061】
外部装置は、制御回路30から出力される検出データD1または検出データD2を利用して被検出物の有無の判定や被検出物の形状の特定を実行する。なお、ステップSB13で選択した検出データDを利用して制御回路30が被検出物の有無や形状を判別する構成も採用される。
【0062】
以上のように、第3実施形態においては、複数の第1検出回路U1および複数の第2検出回路U2のうち欠陥数(λ1,λ2)が少ない方の検出データ(D1/D2)が選択されるから、第1実施形態と同様に、検出信号S[i,j]を補正する回路を必要とせずに、被検出物を高精度に検出することが可能である。また、第3実施形態においては、第1検出回路U1と第2検出回路U2とを選択的に駆動するための構成が不要であるから、第1実施形態と比較して駆動回路20の構成が簡素化されるという利点もある。
【0063】
<D:第4実施形態>
図10は、第4実施形態に係る検出装置100Cのブロック図である。検出装置100Cは、第3実施形態(図8)における制御回路30の選択部64を平均部66に置換した構成である。平均部66は、処理部62が生成した検出データD1と検出データD2とを平均した平均データave(D1,D2)を生成する。平均データave(D1,D2)は、相隣接する第1検出回路U1および第2検出回路U2の各組に対応する複数(M・N/2個)の検出値d0の集合である。検出値d0は、検出データD1における第1検出回路U1(例えば第i行第j列)の検出値d1と、検出データD2における第2検出回路U2(例えば第i行第(j+1)列)の検出値d2との平均値に相当する。
【0064】
図11は、第4実施形態における制御回路30の動作のフローチャートである。検出装置100Cの電源の投入後に図11の処理が実行される。図11に示すように、制御回路30(欠陥判定部38)は、図9のステップSB1からステップSB5と同様の処理を実行する(SC1〜SC5)。そして、検出部10内の何れかの検出回路Uに欠陥があるとステップSC5にて判定した場合、制御回路30は、検出データD1と検出データD2との平均データave(D1,D2)を検出データDOUTとして指定する(SC6)。他方、各検出回路Uに欠陥がない場合(SC5;NO)、制御回路30は、検出データD1および検出データD2の双方を検出データDOUTとして指定する(SC7)。
【0065】
以上の処理が完了すると、制御回路30は、駆動回路20を動作させることで各検出回路U(U1,U2)の検出信号S[i,j]を取得し(SC8)、検出データD1と検出データD2とを処理部62が検出信号S[i,j]から生成する(SC9)。そして、制御回路30は、ステップSC6またはステップSC7での指定の結果に応じた検出データDOUTを、ステップSC9にて生成した検出データD1および検出データD2から生成して外部装置に出力する(SC10)。
【0066】
例えば、平均データave(D1,D2)をステップSC6にて指定した場合(欠陥がある場合)、平均部66は、検出データD1の各検出値d1と検出データD2の各検出値d2との平均データave(D1,D2)を検出データDOUTとして生成して外部装置に出力する。他方、検出データD1および検出データD2の双方をステップSC7にて指定した場合(欠陥がない場合)、制御回路30は、検出データD1と検出データD2との双方を検出データDOUTとして外部装置に出力する。ステップSC8からステップSC10の処理は順次に反復される。
【0067】
外部装置は、制御回路30から出力される検出データDOUTを利用して被検出物の有無の判定や被検出物の形状の特定を実行する。なお、ステップSC10で生成した検出データDOUTを利用して制御回路30が被検出物の有無や形状を判別する構成も採用される。
【0068】
以上のように、第4実施形態においては、検出回路Uに欠陥がある場合に、各第1検出回路U1の検出信号S[i,j]に応じた検出データD1(検出値d1)と各第2検出回路U2の検出信号S[i,j]に応じた検出データD2(検出値d2)との平均で検出データDOUTが生成される。すなわち、検出データDOUTの各検出値d0は、第1検出回路U1の光電流IPと第2検出回路U2の光電流IPとの双方を反映した数値となる。したがって、第1検出回路U1と第2検出回路U2の一方に存在する欠陥の影響が検出データDOUTにて低減され、第1実施形態と同様に、被検出物を高精度に検出できるという効果が実現される。また、第1検出回路U1と第2検出回路U2とを選択的に駆動するための構成が不要であるから、第3実施形態と同様に、駆動回路20の構成を簡素化することが可能である。さらに、第4実施形態においては、検出データD1と検出データD2との平均で検出データDOUTが生成されるから、欠陥数λ1や欠陥数λ2の特定が不要である。したがって、検出装置100Cの構成や動作が簡素化されるという利点もある。
【0069】
<E:変形例>
以上の形態には様々な変形が加えられる。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は併合され得る。
【0070】
(1)変形例1
以上の各形態においては複数の検出回路Uを2種類(第1検出回路U1,第2検出回路U2)に区分したが、複数の検出回路Uを3種類以上に区分した構成も採用され得る。例えば、複数の検出回路UがK種類(K≧3)に区分された場合を想定すると、第1実施形態においては、スイッチ42[n]がK本の検出線16の何れかを選択的に信号処理回路44に導通させる構成が採用され、第2実施形態においては、スイッチ52[m]がK本の選択線12の何れかを選択的に信号生成回路54に導通させる構成が採用される。また、第3実施形態においては、処理部62が生成したK個の検出データの何れかを選択部64が選択し、第4実施形態においては、処理部62が生成したK個の検出データの平均を平均部66が算定する。
【0071】
(2)変形例2
検出回路Uの欠陥に起因した検出の精度の低下が以上の各形態で低減されるとは言っても、欠陥の総数が過度に多い場合には被検出物の高精度な検出が困難となる。そこで、複数の第1検出回路U1の欠陥数λ1および複数の第2検出回路U2の欠陥数λ2の双方が所定値を上回る場合に利用者に対して警告を出力する構成も採用される。例えば、制御回路30は、利用者に対する警告を音声や画像で出力したうえで検出装置100(100A,100B,100C)の動作を停止する。また、欠陥数が所定値を上回る複数の検出回路Uの集合については、検出動作や検出データの選択の対象から除外する構成も採用される。
【0072】
(3)変形例3
第1検出回路U1および第2検出回路U2の区分の仕方は任意である。例えば、第1検出回路U1と第2検出回路U2とがX方向およびY方向の双方に隣合うように複数の検出回路Uを配置した構成も採用される。また、第1検出回路U1と第2検出回路U2とを分散して配置した構成は本発明において必須ではない。例えば、検出部10内に画定された境界線からみて一方の領域に複数の第1検出回路U1を分布させるとともに他方の領域に複数の第2検出回路U2を分布させた構成も採用される。
【0073】
(4)変形例4
図5のステップSA4や図9のステップSB5や図11のステップSC5では、検出部10内の何れかの検出回路Uに欠陥があるか否かを判定したが、検出部10内の欠陥の総数(欠陥がある検出回路Uの総数)が所定値(2以上)を上回るか否かに応じて検出部10の欠陥の有無を判定する構成も採用される。
【0074】
(5)変形例5
被検出物を検出する方式は以上の例示(光検出式)に限定されない。例えば、被検出物の接触の有無に応じて容量値が変化する容量素子を受光素子Eの代わりに利用した静電容量方式の検出装置にも以上の各形態を同様に適用することが可能である。また、検出装置100(100A,100B,100C)の用途はタッチパネルに限定されない。例えば、利用者の指紋を検出する指紋センサや、利用者の手の静脈を検出する静脈センサ、原稿からの反射光を検出する読取装置(スキャナ)にも以上の各形態に係る検出装置100が利用され得る。
【符号の説明】
【0075】
100A,100B,100C……検出装置、10……検出部、U……検出回路、U1……第1検出回路、U2……第2検出回路、12……選択線、14……初期化線、16……検出線、18……給電線、20……駆動回路、22A,22B……選択回路、24A,24B……出力回路、30……制御回路、38……欠陥判定部、42[1]〜42[N]……スイッチ、44……信号処理回路、52[1]〜52[M]……スイッチ、54……信号生成回路、62……処理部、622……A/D変換器、624……分離回路、64……選択部、66……平均部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、
前記複数の検出回路から前記検出信号を取得する駆動回路と、
前記複数の検出回路の各々における欠陥の有無を当該検出回路の検出信号に応じて判定する欠陥判定手段とを具備し、
前記駆動回路は、前記複数の検出回路に含まれる複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方から前記検出信号を取得する
検出装置。
【請求項2】
被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、
前記複数の検出回路から前記検出信号を取得する駆動回路と、
前記複数の検出回路の各々における欠陥の有無を当該検出回路の検出信号に応じて判定する欠陥判定手段と、
前記複数の検出回路のうちの複数の第1検出回路の検出信号に応じた第1検出データと複数の第2検出回路の検出信号に応じた第2検出データとを生成する処理手段と、
前記複数の第1検出回路および前記複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方の検出データを選択する選択手段と
を具備する検出装置。
【請求項3】
被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、
前記複数の検出回路から前記検出信号を取得する駆動回路と、
前記複数の検出回路のうちの複数の第1検出回路の検出信号に応じた第1検出データと複数の第2検出回路の検出信号に応じた第2検出データとを生成する処理手段と、
前記複数の検出回路における欠陥の有無を検出信号に応じて判定する欠陥判定手段と、
欠陥があると前記欠陥判定手段が判定した場合に、前記第1検出データと前記第2検出データとの平均を算定する平均手段と
を具備する検出装置。
【請求項4】
欠陥があると前記欠陥判定手段が判定した検出回路の総数が所定の閾値を上回る場合に警告を出力する制御手段
を具備する検出装置。
【請求項1】
被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、
前記複数の検出回路から前記検出信号を取得する駆動回路と、
前記複数の検出回路の各々における欠陥の有無を当該検出回路の検出信号に応じて判定する欠陥判定手段とを具備し、
前記駆動回路は、前記複数の検出回路に含まれる複数の第1検出回路および複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方から前記検出信号を取得する
検出装置。
【請求項2】
被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、
前記複数の検出回路から前記検出信号を取得する駆動回路と、
前記複数の検出回路の各々における欠陥の有無を当該検出回路の検出信号に応じて判定する欠陥判定手段と、
前記複数の検出回路のうちの複数の第1検出回路の検出信号に応じた第1検出データと複数の第2検出回路の検出信号に応じた第2検出データとを生成する処理手段と、
前記複数の第1検出回路および前記複数の第2検出回路のうち欠陥の総数が少ない方の検出データを選択する選択手段と
を具備する検出装置。
【請求項3】
被検出物の有無に応じた検出信号を各々が生成する複数の検出回路と、
前記複数の検出回路から前記検出信号を取得する駆動回路と、
前記複数の検出回路のうちの複数の第1検出回路の検出信号に応じた第1検出データと複数の第2検出回路の検出信号に応じた第2検出データとを生成する処理手段と、
前記複数の検出回路における欠陥の有無を検出信号に応じて判定する欠陥判定手段と、
欠陥があると前記欠陥判定手段が判定した場合に、前記第1検出データと前記第2検出データとの平均を算定する平均手段と
を具備する検出装置。
【請求項4】
欠陥があると前記欠陥判定手段が判定した検出回路の総数が所定の閾値を上回る場合に警告を出力する制御手段
を具備する検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−18101(P2011−18101A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160506(P2009−160506)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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