説明

検出装置

【課題】物体が検出されているときでも断線や短絡などの異常が検出できる検出装置を提供する。
【解決手段】共振部1が強制的に発振させられる自己診断モードにおいては、物体が検出範囲内に存在していても、共振部1に異常(断線又は短絡)が生じていない限りは発振が開始(再開)される。したがって、自己診断モードにおいて共振部1の発振が停止していれば、信号処理部3が共振部1に異常が生じていると判断することができる。そのため、物体が検出されているときでも断線や短絡などの異常(共振部1の異常)が検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を非接触で検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体を非接触で検出する検出装置として、特許文献1に記載されている近接センサが提供されている。特許文献1記載の従来例は、検出コイルとコンデンサのLC共振回路を含む発振回路を発振させ、金属体(導電体)又は磁性体(物体)が検出コイルに接近すると検出コイルのコンダクタンスが低下して発振回路の発振が停止するので、発振停止によって物体の存在(接近)を検出している。また、特許文献1記載の従来例では、発振回路の発振振幅(LC共振回路の共振電圧)を観測することで検出コイルの断線の有無を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−45531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載の従来例では、物体が検出コイルに接近しているときには発振回路の発振が停止しているので、LC共振回路の異常(検出コイルの断線や短絡)による発振の停止と、物体の接近による正常な発振の停止との判別が困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、物体が検出されているときでも断線や短絡などの異常が検出できる検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検出装置は、コイル及びコンデンサを含む共振部と、当該共振部を発振させる発振部と、当該共振部の発振状態を検出して発振が停止しているときに検出信号を出力する信号処理部とを備え、当該信号処理部は、前記発振部を強制的に発振させて前記共振部に異常が生じているか否かを判断する自己診断モードを間欠的に実行することを特徴とする。
【0007】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記発振部の負性コンダクタンスの絶対値を相対的に大きくすることで前記発振部を強制的に発振させることが好ましい。
【0008】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記発振部の負性コンダクタンスの絶対値を前記共振部のコンダクタンスの最大値よりも大きくすることで前記発振部を強制的に発振させることが好ましい。
【0009】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記共振部にパルス電圧又はパルス電流を印加することで前記発振部を強制的に発振させることが好ましい。
【0010】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記自己診断モードで異常ありと判断した場合に、前記検出信号と異なる異常検出信号を出力することが好ましい。
【0011】
この検出装置において、前記信号処理部は、異常なしと判断するまで、前記異常検出信号の出力を継続することが好ましい。
【0012】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記自己診断モードの実行中において異常有りと判断していない場合、当該自己診断モードの実行直前に前記検出信号を出力していれば、当該検出信号の出力を継続することが好ましい。
【0013】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記自己診断モードの実行中に前記検出信号と異なる信号を出力することが好ましい。
【0014】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記自己診断モードを定期的に実行することが好ましい。
【0015】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記自己診断モードの実行中でないときに前記共振部の発振停止を検出した場合に前記自己診断モードを実行することが好ましい。
【0016】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記発振停止の検出直後に前記自己診断モードを1回だけ実行することが好ましい。
【0017】
この検出装置において、前記信号処理部は、起動直後に前記自己診断モードを1回だけ実行することが好ましい。
【0018】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記自己診断モードを終了する際に前記共振部の発振を強制的に停止させることが好ましい。
【0019】
この検出装置において、前記信号処理部は、前記自己診断モードを終了する際に当該自己診断モードの実行直前に前記検出信号を出力している場合にのみ、前記共振部の発振を強制的に停止させることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の検出装置は、物体が検出されているときでも断線や短絡などの異常が検出できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図2】同上の概略構成図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】実施形態2の概略構成図である。
【図5】同上の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図6】実施形態3の動作を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、従来例で説明したように金属体(導電体)又は磁性体からなる物体の存在を、検出コイルのコンダクタンスの変化に基づいて検出する検出装置に本発明の技術思想を適用した実施形態について説明する。但し、水分あるいは水分を含む人体などの物体の存在を、コイルとともに共振回路を構成するコンデンサのコンダクタンスの変化に基づいて検出する検出装置にも本発明の技術思想を適用することは可能である。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態は、図2に示すように共振部1と、発振部2と、信号処理部3とを備えている。
【0024】
共振部1は、検出対象の物体を検出するための検出コイル10にコンデンサ(共振用コンデンサ)11が並列接続されたLC共振回路である。共振部1の共振周波数(発振周波数)は、検出コイル10のインダクタンスとコンデンサ11の静電容量とで決定される。検出コイル10は、例えば導線(絶縁被覆電線など)を円筒状のコイルボビン(図示せず)の外周面に当該コイルボビンの軸方向に巻軸方向を沿わせた形で巻回することにより構成される。上記検出対象対象物体は、例えば金属体などの導電体によって平板状に形成され、検出コイル10の巻軸方向に沿って検出コイル10と対向し且つ検出コイル10との距離が変化する向きに移動する。
【0025】
共振部1の発振を維持するためには共振部1に電流を正帰還させる必要がある。故に、発振部2は共振部1に帰還電流を供給するための構成として、レベルシフト回路と、増幅回路と、電流帰還回路とを有する。ここで、レベルシフト回路は、共振部1のコンデンサ11の両端子間の電圧をレベルシフトし、増幅回路は、共振部1の電圧に応じた電流を出力し、電流帰還回路は、増幅回路が出力する電流の大きさに応じた帰還電流を共振部1に供給して発振を維持する。
【0026】
レベルシフト回路は、npn形のトランジスタ20からなる。トランジスタ20のコレクタは抵抗22を介して定電流源26に接続され、エミッタは一端が接地された共振部1の他端に接続されている。なお、図示例ではトランジスタ20のエミッタとグラウンドとの間に検出コイル10とコンデンサ11とからなる共振部1が挿入されている。したがって、トランジスタ20のエミッタの電位は、共振部1の発振電圧に等しい。また、トランジスタ20のコレクタとベースとは互いに接続されている。
【0027】
このようなレベルシフト回路は、増幅回路のnpn形のトランジスタ21のベース−エミッタ間電圧の分だけ共振電圧をレベルシフトすることで、トランジスタ21のエミッタとグラウンドとの間に、発振の正の半サイクルのみ、共振部1の共振電圧(発振電圧)に等しい電圧が印加されるようにしている。
【0028】
増幅回路は、トランジスタ21により構成された所謂エミッタフォロワ回路からなる。トランジスタ21のベースは、トランジスタ20のベースに接続され、レベルシフト回路によりレベルシフトされたトランジスタ20のエミッタの電位、すなわちレベルシフト回路により生成されたレベルシフト電圧がトランジスタ21のベースに入力される。したがって、増幅回路からは、共振部1の発振電圧に応じた電流が出力されることになる。
【0029】
この増幅回路の出力端子(トランジスタ21のエミッタ)とグランドとの間に、エミッタ電位設定用の抵抗25が挿入されている。抵抗25は、増幅回路が出力する電流の大きさ、すなわち帰還電流の大きさを調整するためのものであり、共振部1には、抵抗25の値によって調整された帰還電流が供給される。
【0030】
電流帰還回路は、pnp形のトランジスタ23,24により構成されたカレントミラー回路である。トランジスタ23は、増幅回路のトランジスタ21と電源ラインとの間に、コレクタをトランジスタ21のコレクタに、エミッタを電源ラインにそれぞれ接続する形で挿入されている。トランジスタ23のベースは、トランジスタ24のベースに接続され、トランジスタ23のエミッタは電源ラインに接続され、コレクタはトランジスタ20のエミッタに接続されている。
【0031】
ここで、増幅回路から電流が出力される際には、この電流に等しいトランジスタ21のコレクタ電流が、トランジスタ23のエミッタ−コレクタ間に流れることになる。そして、トランジスタ24のエミッタ−コレクタ間には、トランジスタ23のエミッタ−コレクタ間に流れた電流に等しい電流が流れ、この電流が共振部1に供給される帰還電流となる。つまり、電流帰還回路は、増幅回路が出力する電流に等しい帰還電流を共振部1に供給する。
【0032】
信号処理部3は、検波回路30、出力回路31、モード制御回路32などを備える。検波回路30は、共振部1の発振状態(図示例では発振振幅)を検出するものであって、発振振幅が所定のしきい値を下回ったときに共振部1の発振が停止したとみなして発振停止信号を出力する。但し、検波回路30は、発振振幅の代わりに発振周波数を検出してもよい。
【0033】
出力回路31は、後述する物体検出モードにおいては検波回路30の発振停止信号に基づいて検出対象物体(以下、物体と略す。)が検出範囲内に存在することを示す検出信号、又は物体が検出範囲内に存在しないことを示す非検出信号を出力する。また、出力回路31は、後述する自己診断モードにおいては検波回路30の発振停止信号に基づいて共振部1に異常(断線又は短絡)が生じていることを示す異常検出信号を出力する。
【0034】
モード制御回路32は、コレクタが抵抗34を介してトランジスタ21のエミッタと接続されるとともにエミッタがグランドに接続されたnpn形のトランジスタ33をオン・オフすることにより、信号処理部3の動作モードを物体検出モードと自己診断モードに択一的に切り換える。モード制御回路32は、物体検出モードにおいてはトランジスタ33をオフとし且つ出力回路31にハイレベルの切換信号を出力し、自己診断モードにおいてはトランジスタ33をオンとし且つ出力回路31にローレベルの切換信号を出力する。なお、モード制御回路32はタイマを内蔵しており、図1に示すように一定の周期Txで信号処理部3の動作モードを物体検出モードから自己診断モードに定期的に切り換える。
【0035】
ここで、発振部2の負性コンダクタンスの絶対値が検出コイル10のコンダクタンス値以上であれば共振部1が発振し、発振部2の負性コンダクタンスの絶対値が検出コイル10のコンダクタンス値未満であると共振部1の発振振幅が大幅に低下して発振が停止する。そして、検出コイル10のコンダクタンス(図3における曲線参照)は、物体と検出コイル10との距離に起因する渦電流損の変化、つまり検出コイル10と物体との距離(図3の横軸)に応じて変化する。ここで、物体が検出範囲(≦d0)内に存在しない場合に、共振部1が発振するように、発振部2の負性コンダクタンスの絶対値がW1に設定されていれば、物体が検出範囲内に在ると、発振部2の負性コンダクタンスの絶対値が検出コイル10のコンダクタンス値未満となって共振部1の発振が停止する。なお、物体検出モードにおける発振部2の負性コンダクタンスの絶対値は、抵抗25の抵抗値をRaとすれば、1/(2Ra)で表される。
【0036】
ところで、自己診断モードにおいては、モード制御回路32がトランジスタ33をオンすることで発振部2の抵抗25と信号処理部3の抵抗34(抵抗値Rb)とが並列接続されるため、その合成抵抗の抵抗値(以下、Ra//Rbと表記する。)が抵抗25の抵抗値Raよりも小さくなる。故に、自己診断モードにおける発振部2の負性コンダクタンスの絶対値は、1/(2×Ra//Rb)となり、物体検出モードにおける負性コンダクタンスの絶対値(=1/(2Ra))よりも増大し、例えば、W2(>W1)となる(図3参照)。但し、自己診断モードにおける発振部2の負性コンダクタンスの絶対値は抵抗34の抵抗値Rbによって決まるので、抵抗34の抵抗値Rbが適当に設定されることで検出コイル10のコンダクタンスの最大値Gcoilmaxよりも大きい値W3に設定されても構わない。なお、上述したように検出コイル10のコンダクタンスの値を増減する方法は一例であって、他の方法で検出コイル10のコンダクタンスの値を増減しても構わない。
【0037】
例えば、自己診断モードにおける発振部2の負性コンダクタンスの絶対値がW2に設定されているとする。この場合、モード制御回路32がトランジスタ33をオンして自己診断モードに切り換えると発振条件が満たされるため、例え物体と検出コイル10との距離がd0〜d1(<d0)の範囲内であっても、断線や短絡などの異常が生じていない限りは共振部1が強制的に発振させられることになる。
【0038】
検波回路30は、発振振幅が所定のしきい値以下になれば発振が停止したと判断して発振停止信号(例えば、ローレベルの直流電圧信号)を出力し、発振振幅がしきい値を越えれば発振が開始(再開)したと判断して発振停止信号の出力を止める(例えば、ハイレベルの直流電圧信号を出力する)。
【0039】
そして、図1に示すように、出力回路31は、物体検出モードのときに検波回路30から発振停止信号が出力されれば、物体が検出範囲内に在ると判断して所定の直流電圧レベル(例えば、1ボルト)の検出信号を出力する。一方、検波回路30から発振停止信号が出力されなければ、出力回路31は、物体が検出範囲内にないと判断して所定の直流電圧レベル(例えば、4ボルト)の信号(非検出信号)を出力する。また、自己診断モードのときに検波回路30から発振停止信号が出力されれば、出力回路31は共振部1に断線又は短絡(ショート)が生じていると判断して所定の直流電圧レベル(例えば、0ボルト)の異常検出信号を出力する。一方、検波回路30から発振停止信号が出力されなければ、出力回路31は共振部1に異常が生じていないと判断して異常検出信号を出力しない。従って、出力回路31から出力される信号の直流電圧レベルが1ボルトであれば物体が検出範囲内に在り、前記直流電圧レベルが4ボルトであれば物体が検出範囲内にないことが外部に知らされる。さらに、出力回路31から出力される信号の直流電圧レベルが、検出信号の直流電圧レベル(4ボルト)及び非検出信号の直流電圧レベル(1ボルト)の何れとも異なる直流電圧レベル(0ボルト)であれば共振部1に異常が生じていることが外部に知らされる。但し、出力回路31から出力される各信号の直流電圧レベルの値は一例であって、例示した値に限定されるものではない。
【0040】
上述のように共振部1が強制的に発振させられる自己診断モードにおいては、物体が検出範囲内に存在していても、共振部1に異常(断線又は短絡)が生じていない限りは発振が開始(再開)されるはずである。したがって、自己診断モードにおいて共振部1の発振が停止していれば、信号処理部3が共振部1に異常が生じていると判断することができる。そのため、本実施形態では、物体が検出されているときでも断線や短絡などの異常(共振部1の異常)が検出できる。なお、自己診断モードでは物体を検出することができないが、本実施形態では自己診断モードが間欠的に実行されるため、物体の存在を検出し損なう検出ミスの発生が抑制できるものである。また、当然のことではあるが、物体検出モードにおいて共振部1の発振が停止していなければ、共振部1に異常が発生していないと判断できる。
【0041】
ところで、信号処理部3は、異常なしと判断するまで、異常検出信号の出力を継続することが好ましい(図1参照)。つまり、異常検出信号が自己診断モードの実行期間のみでしか出力されないとすると、出力回路31から信号を受け取る外部装置において、異常検出信号の出力期間が短すぎて認識できない虞がある。故に、本実施形態では、信号処理部3が自己診断モードで異常有りと判断した場合、自己診断モードが終了して物体検出モードに切り換わっても異常検出信号の出力を継続し、外部装置が異常検出信号を確実に認識できるようにしている。但し、共振部1の異常が解消して発振が再開された場合、信号処理部3は、自己診断モードで異常なしと判断するのを待たずに、物体検出モードにおいて共振部1の発振が確認できた時点で異常検出信号の出力を中止する(図1参照)。これにより、共振部1の異常が解消された後、いち早く物体を検出することができる。
【0042】
また、信号処理部3は、自己診断モードの実行中において異常有りと判断していない場合、当該自己診断モードの実行直前の物体検出モードで物体を検出していれば(検出信号を出力していれば)、当該検出信号の出力を継続することが好ましい。つまり、自己診断モードの実行期間が物体検出モードの実行期間よりも充分に短ければ、自己診断モードの実行期間の前後で物体の存在状況が変化する可能性は低いと考えられる。しかも、自己診断モードから物体検出モードに切り換わった時点で信号処理部3が直ちに物体の有無を検出するので、自己診断モードを実行している短時間だけ、信号処理部3が検出信号の出力を継続しても実用上特に支障はないと考えられる。
【0043】
(実施形態2)
本実施形態は、信号処理部3が自己診断モードにおいて共振部1を強制的に発振させるための構成に特徴があり、その他の構成については、実施形態1と共通である。故に、実施形態1と共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施形態では、図4に示すように実施形態1におけるトランジスタ33と抵抗34の代わりに、抵抗37を介して直列接続された2つのトランジスタ35,36が信号処理部3に設けられている。pnp形のトランジスタ35は、エミッタが電源ラインに接続されるとともにコレクタが抵抗37の一端に接続されている。また、npn形のトランジスタ36は、コレクタが抵抗37の他端に接続されるとともにエミッタがグランドに接続されている。
【0045】
本実施形態におけるモード制御回路32は、物体検出モードでは2つのトランジスタ35,36を何れもオフ状態とし、自己診断モードでは上段のトランジスタ35を極めて短い時間(例えば、数ミリ秒〜数十ミリ秒)だけオンする。このようにトランジスタ35が短時間だけオンされると、発振部2からパルス電圧が印加されて共振部1が強制的に発振させられる。なお、モード制御回路32は、自己診断モードが終了する際に下段のトランジスタ36を短時間だけオンすることにより、共振部1の発振を強制的に停止させている。また、本実施形態ではパルス電圧を印加することで共振部1を強制的に発振させているが、パルス電流を印加(供給)することで共振部1を強制的に発振させても構わない。
【0046】
次に、図5を参照しながら本実施形態の動作を説明する。モード制御回路32は、物体検出モードで物体が検出範囲内に存在することが検出された直後、すなわち、検波回路30から発振停止信号が出力された直後に自己診断モードを実行し、出力回路31に対してローレベルの切換信号を出力する。自己診断モードにおけるモード制御回路32は、上述したようにトランジスタ35をオンしてパルス電圧を印加することにより、発振停止している共振部1を強制的に発振させる。出力回路31は、自己診断モードにおいて検波回路30から発振停止信号が出力されなければ、共振部1に異常がないと判断して異常非検出信号を出力する。この異常非検出信号は、直流電圧レベルが検出信号のレベル(1ボルト)、非検出信号のレベル(4ボルト)、異常検出信号のレベル(0ボルト)の何れとも異なるレベル(2ボルト)に設定されている。そして、自己診断モードの実行期間内に検波回路30から発振停止信号が出力されなければ、モード制御回路32は、トランジスタ36を短時間だけオンして共振部1の発振を強制的に停止させることで自己診断モードを終了する。さらにモード制御回路32は、出力回路31に対してハイレベルの切換信号を出力して自己診断モードから物体検出モードに切り換える。
【0047】
一方、自己診断モードにおいて検波回路30から発振停止信号が出力された場合、出力回路31は、共振部1に異常があると判断して異常検出信号を出力するとともに、一定の周期でトランジスタ35をオンしてパルス電圧を間欠的に印加することで自己診断モードを継続する。そして、共振部1の異常が解消され、自己診断モードの継続中に検波回路30から発振停止信号が出力されなくなれば、モード制御回路32は、トランジスタ36を短時間だけオンして共振部1の発振を強制的に停止させて自己診断モードを終了する。さらにモード制御回路32は、出力回路31に対してハイレベルの切換信号を出力して自己診断モードから物体検出モードに切り換える。
【0048】
上述のように本実施形態では、パルス電圧を印加することで共振部1を強制的に発振させている。このようなパルス電圧には多くの周波数成分が含まれているので、パルス電圧の印加によって共振部1の発振の立ち上がりを早くして自己診断に要する時間を短縮することができる。また、発振部2の負性コンダクタンスが不足していても、パルス電圧の印加によって共振部1が短時間だけ減衰振動するので、その振幅(あるいは周波数)を観測すれば、継続的に発振させなくても共振部1の異常の有無を判断することが可能である。
【0049】
また、実施形態1では自己診断モードで共振部1の異常ありと判断されない場合、出力回路31は、直前の物体検出モードにおける検出結果を維持している(図1参照)。これに対して本実施形態では、自己診断モードで共振部1の異常ありと判断されない場合、出力回路31は、検出信号、非検出信号、異常検出信号の何れの信号とも直流電圧レベルが異なる異常非検出信号を出力している。このような構成は、例えば、物体が検出されているときに機器を動作させて物体の存否が不明のときは当該機器を動作させないような制御に利用される場合に有効である。
【0050】
また、本実施形態では物体検出モードにおいて物体が検出された場合、すなわち、検波回路30から発振停止信号が出力された場合にのみ、信号処理部3が自己診断モードを実行している。つまり、物体検出モードにおいて検波回路30から発振停止信号が出力されなければ、共振部1の発振が停止していないのであるから、共振部1に断線や短絡などの異常が発生していないと判断できる。一方、物体検出モードにおいて検波回路30から発振停止信号が出力された場合、その発振停止の原因が物体を検出したことによる正常な発振停止なのか、それとも共振部1に異常が生じたことによる発振停止なのかが判別できない。そこで、上述のように検波回路30から発振停止信号が出力された場合に信号処理部3が自己診断モードを実行することにより、共振部1の異常が検出されなければ物体の検出による正常な発振停止と判断可能である。反対に、自己診断モードで共振部1の異常が検出されれば、物体の検出によらない異常な発振停止と判断可能である。ここで、信号処理部3が自己診断モードを実行している間は共振部1を強制的に発振させるので、物体を検出することができない。したがって、物体の検出が不能となる自己診断モードの期間は、できる限り短いことが望ましいので、本実施形態の信号処理部3では、上述のように自己診断モードにおけるパルス電圧の印加を1回のみ、すなわち、自己診断モードを1回だけ実行している。このような構成は、例えば、比較的に長い周期で変位する物体の存在を検出する用途に好適である。
【0051】
ところで、自己診断モードでは共振部1が強制的に発振させられているので、物体が検出範囲内に在る状況で信号処理部3が自己診断モードから物体検出モードに移行した直後は、共振部1の発振が減衰するまで検波回路30から発振停止信号が出力されない虞がある。そこで本実施形態では、上述のように自己診断モードの終了時にモード制御回路32が共振部1の発振を強制的に停止させるので、物体検出モードに移行した直後に物体が検出範囲内に在れば、直ちに検波回路30から発振停止信号が出力されて物体を検出することができる。但し、自己診断モードに移行する直前の物体検出モードで物体が検出されていない場合、つまり、検波回路30から発振停止信号が出力されていない場合には、上述のように自己診断モードの終了時にモード制御回路32が共振部1の発振を強制的に停止させると、検波回路30から誤って発振停止信号が出力されてしまう虞がある。しかしながら、本実施形態では、物体が検出されている場合にのみ、自己診断モードの終了時にモード制御回路32が共振部1の発振を強制的に停止させるので、上述のような不具合は生じない。なお、本実施形態では共振部1にパルス電圧(又はパルス電流)を印加するのみで強制的に発振させているが、実施形態1で説明した検出コイル10のコンダクタンス値の増加と組み合わせれば、より効果的に共振部1を発振させることができる。
【0052】
(実施形態3)
本実施形態は、信号処理部3が自己診断モードを実行するタイミングに特徴がある。但し、本実施形態の構成は実施形態1又は実施形態2の何れかと共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して図示並びに説明を省略する。
【0053】
本実施形態における信号処理部3は、起動直後に自己診断モードを1回だけ実行する。例えば、図6に示すように検出装置の電源が投入されて動作電源(図示例では5ボルトの直流電源)が供給されると、信号処理部3が起動し、最初に自己診断モードを1回だけ実行した後、物体検出モードに切り換わる。これ以降、信号処理部3は、動作電源の供給が停止されるまで物体検出モードのみを実行し、動作電源の供給が再開されて起動するときに、自己診断モードを実行する。
【0054】
本実施形態は、動作している時間よりも停止している時間の方が長いなど、動作中に共振部1の異常が発生する確率が小さいと考えられる場合や、動作中に物体の検出が不能になると支障を来すような場合に有効である。なお、本実施形態では、電源リセットによる起動直後に信号処理部3が自己診断モードを実行しているが、例えば、リセットスイッチの操作による起動直後に信号処理部3が自己診断モードを実行しても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1 共振部
2 発振部
3 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル及びコンデンサを含む共振部と、当該共振部を発振させる発振部と、当該共振部の発振状態を検出して発振が停止しているときに検出信号を出力する信号処理部とを備え、当該信号処理部は、前記発振部を強制的に発振させて前記共振部に異常が生じているか否かを判断する自己診断モードを間欠的に実行することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記発振部の負性コンダクタンスの絶対値を相対的に大きくすることで前記発振部を強制的に発振させることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記発振部の負性コンダクタンスの絶対値を前記共振部のコンダクタンスの最大値よりも大きくすることで前記発振部を強制的に発振させることを特徴とする請求項2記載の検出装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記共振部にパルス電圧又はパルス電流を印加することで前記発振部を強制的に発振させることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記自己診断モードで異常ありと判断した場合に、前記検出信号と異なる異常検出信号を出力することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記信号処理部は、異常なしと判断するまで、前記異常検出信号の出力を継続することを特徴とする請求項5記載の検出装置。
【請求項7】
前記信号処理部は、前記自己診断モードの実行中において異常有りと判断していない場合、当該自己診断モードの実行直前に前記検出信号を出力していれば、当該検出信号の出力を継続することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記信号処理部は、前記自己診断モードの実行中に前記検出信号と異なる信号を出力することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記信号処理部は、前記自己診断モードを定期的に実行することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記信号処理部は、前記自己診断モードの実行中でないときに前記共振部の発振停止を検出した場合に前記自己診断モードを実行することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項11】
前記信号処理部は、前記発振停止の検出直後に前記自己診断モードを1回だけ実行することを特徴とする請求項10記載の検出装置。
【請求項12】
前記信号処理部は、起動直後に前記自己診断モードを1回だけ実行することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項又は請求項10記載の検出装置。
【請求項13】
前記信号処理部は、前記自己診断モードを終了する際に前記共振部の発振を強制的に停止させることを特徴する請求項1〜12の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項14】
前記信号処理部は、前記自己診断モードを終了する際に当該自己診断モードの実行直前に前記検出信号を出力している場合にのみ、前記共振部の発振を強制的に停止させることを特徴する請求項13記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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