説明

検査システムにおける対話型閾値調整方法及びシステム

【課題】検査片の特性を検知し、分析してレベル情報を有する欠陥を識別する。
【解決手段】検査システムは、システム・パラメータの1組の初期閾値を用いてレベル情報を分析し、異常の初期部分を欠陥として捕らえる。捕らえた欠陥の概要を表示し、閾値パラメータに対する潜在的に捕らえられる欠陥の動作曲線も表示する。パラメータを選択的に変化させて修正閾値を形成し、この修正閾値を用いて、異常のレベル情報を分析する。レベル情報の直前の分析に基づいて、異常の更新部分を欠陥として捕らえ、捕らえた異常の概要を、再計算した動作曲線と共に表示する。閾値を選択的に変化させ、欠陥を捕らえ直すステップは、所望に応じて繰り返し、検査システムの処方に用いるために、修正した1組の閾値パラメータを記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路製造の分野に関する。更に特定すれば、本発明は、集積回路の製造中に用いられる検査機器の動作パラメータの最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路の製造は、製造プロセス中における種々の段階において形成される構造の頻繁かつ首尾一貫した検査に大きく依存している。検査の一部として電子的又は化学的な性質のものもあるが、検査の大多数は、性質上、光学的に実施される。言い換えると、集積回路を形成する基板即ち半導体ウェハを検査する際、基板から受ける光のような電磁放射線を収集し、その光が基板から反射されたものであろうと又は基板を透過したものであろうと、収集した光の特性を検査する。
【0003】
今日における光学検査の殆どは、収集した光をディジタル化し、コンピュータ化した精巧な分析ルーチンによってディジタル画像を分析することによって行われる。分析ルーチンは、これらの画像を1つ以上の種々の基準線又は標準化した基準と比較し、そして、取り込んだ画像と基準との間の相違を検出する。次いで、ルーチンは、更に、このようにして検出した任意の相違について、その性質を特定しようとする。この総合的なプロセスは、通常、このように形成される集積回路及びこれらを製造するプロセスを監視し改良する責務のあるプロセス技術者やその他の者には非常に有益である。
【0004】
しかしながら、このような光学的検査プロセスには、固有の難点がいくつかある。全般的な問題の一種に、どの位近づいて基板を検査すべきかということに関するものがある。例えば、光学素子の倍率が大きければ大きい程、一層小さな傷を検出する。また、光の波長が短い程、基板においてより小さな傷が検出される。更に、電荷結合素子のようなセンサでは、分解能が高い程、即ち、画素数が多い程そして画素サイズが小さい程、より小さな傷を検出することができる。更に、ソフトウェア・ルーチンは、スペクトルの一端において、基板画像と基準との間のあらゆる相違を欠陥として捕らえ、スペクトルの他端では、非常に大きな相違を除いて全てを無視するように、種々の異なるパラメータを用いて設定することができる。このように、検査機器ではある程度の調整即ち最適化が行われることが一般的である。
【0005】
通例、ユーザが検査処方(レシピ(recipe))を最適化するには、非常に労力を要する試行錯誤手順を用いる。検査走査の感度を制御する1組の閾値パラメータのような、任意所望の処方から開始して、ユーザは、その処方で検査を実行し、次いでこの検査によって捕らえた欠陥を再検討する。検査によって対象の欠陥が十分に捕らえられていない場合、ユーザは1つ以上の閾値パラメータを低くするか、あるいはその他の方法で調節する。一方、その処方で、対象以外の異常が余りに多く捕らえられ過ぎている場合、ユーザは、1つ以上の閾値を増大するか、又はその他の方法で調節する。次いで、ユーザは修正した処方で基板を再度走査し、再度検査結果を再検討する。ユーザは、容認できる1組の閾値に到達するまで、これらのパラメータを微調整し、基板を再度走査し、結果を再検討するという3つの段階を繰り返す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カリフォルニア州サンタクララのKLA-Tencor Technologies Corporationが製造する明視野機械(bright field machine)の区分自動閾値(segmented auto threshold)アルゴリズムのような、進化しつつある欠陥検出アルゴリズムでは、多くの閾値パラメータを必要とし、繰り返しの回数が閾値パラメータの数だけ倍増するため、この旧来の方法による効率性が著しく悪化している。
【0007】
旧来の問題に伴う第1の問題は、設定時間が長いことである。基板を走査すること及びその結果を検討することの双方には、長い時間と多大な労力を要する可能性がある。第2の問題は、得られる処方が大抵の場合、最適には程遠いことである。これの理由の1つは、この手作業による最適化方法を用いる場合、機械は、欠陥について極めて少ない情報しか提供することができず、ユーザは、どのようにすれば処方を改良することができ、この先何回改良すればよいのか分からないからである。その結果、ユーザは、パラメータを調節する際に、本質的に自分自身の直感又は経験に頼り、調整の結果確定した1組の値は、大抵の場合、最適には程遠いものとなっている。加えて、この手作業の方法では非常に時間がかかるので、多くのユーザは、あるレベルの最適化が得られると、そこで切り上げてしまう。
したがって、パラメータ閾値の最適化をより容易に行うことができ、それによって、より良い結果が得られるようにするシステムの提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の及びその他の要望は、検査システムの調整方法によって満たされる。この検査システムを用いて、検査片の特性を検知し、検知した特性を分析して、位置情報及びレベル情報を有する異常を特定する。異常のレベル情報を、1組の検査システム・パラメータの初期閾値によって分析し、レベル情報の分析に基づいて、異常の初期部分を欠陥として捕らえる。捕らえた異常の概要を表示し、検査システム・パラメータの少なくとも1つについて、潜在的に捕らえられる欠陥対閾値の動作曲線も表示する。次いで、検査システム・パラメータの少なくとも1つを選択的に変化させて、検査システム・パラメータの1組の修正閾値を形成し、この検査システム・パラメータの1組の修正閾値によって、異常のレベル情報を分析する。直前のレベル情報の分析に基づいて、異常の更新部分を欠陥として捕らえ、捕らえた異常の概要を表示する。選択的に閾値を変化させ、かつ欠陥を再度捕らえるステップを、所望に応じて繰り返し、検査システムの処方で用いるために、検査システム・パラメータの1組の修正閾値を記憶する。
【0009】
このように、前述のシステムにより、明視野検査システムのような、検査システムのユーザは、検査処方を効率的かつ効果的に最適化することができる。本システムは、レベル情報のような、基板走査中に生成される空間ランタイム情報を収集し、次いで知識を与える対話式のグラフィカル・ユーザ・インターフェース環境を備えて、ユーザが処方の閾値パラメータを調整し基板を再度走査することなく、調整した閾値の有効性についてリアル・タイムのフィードバックを得ることを可能にする。このように、本発明では、システム・パラメータの閾値を変化させる効果について即座のフィードバックが得られ、ユーザは素早く検査システムを調整し、対象の欠陥の捕獲を増加、好ましくは最大化しつつ、関心のない異常の捕獲を減少、好ましくは除外することができる。
【0010】
種々の好適な実施形態において、検査システムは光学式検査システムである。検査片は、好ましくは、半導体ウェハである。好ましくは、検査片の特性は、表面欠陥である。好適な実施形態では、検査片上で捕らえた異常の空間表現を選択的に表示する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、検査片の特性を検知するように構成されたセンサを有する検査システムについて記載する。プロセッサが、検知した特性を分析して位置情報及びレベル情報を有する異常を識別し、検査システム・パラメータの1組の初期閾値を用いて異常のレベル情報を分析し、レベル情報の直前の分析に基づいて異常の初期部分を欠陥として捕らえる。ディスプレイが、捕らえた欠陥の概要及び検査システム・パラメータの少なくとも1つについて、潜在的に捕らえられる欠陥対閾値の動作曲線を表示する。入力が、検査システム・パラメータの先の少なくとも1つを選択的に変化させ、検査システム・パラメータの1組の修正閾値を形成する。プロセッサは、更に、検査システム・パラメータの1組の修正閾値を用いて、異常のレベル情報を分析し、レベル情報の直前の分析に基づいて、異常の更新部分を欠陥として捕らえる。ディスプレイは、更に、捕らえた異常の更新した概要を表示する。検査システムの処方に用いるために、検査システム・パラメータの1組の修正閾値をメモリに記憶する。
【0012】
本発明の更に別の利点は、詳細な説明を参照し、図面と関連付けて検討することによって明らかとなる。図面は、詳細を一層明確に示すように一定の拡縮率にはしていない。図面では、同様の参照番号は、それぞれの図全体を通じて、同様の要素を示すこととする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な実施形態による、基板検査中における閾値データの収集方法のフローチャートである。
【図2】本発明の好適な実施形態による、対話式閾値調整方法のフロー・チャートである。
【図3】第1パラメータに関する欠陥検出機能、及び第1パラメータを変化させる効果を示す図である。
【図4】第2パラメターに関する欠陥検出機能、及び第1パラメータを変化させる効果を示す図である。
【図5】n番目のパラメータに関する欠陥検出機能、及び第1パラメータを変化させる効果を示す図である。
【図6】第1パラメータに関する欠陥検出機能、及び欠陥種別に対する第1パラメータを変化させる効果を示す図である。
【図7】好適な実施形態による検査システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
これより図1を参照する。図1には、基板の光学的検査のような、検査走査中に閾値データを収集する方法10が示されている。しかしながら、ここに記載する方法及びデバイスは、光学的以外の検査種類、及び基板以外の検査対象にも適用可能であることは明らかであろう。
この方法10は、好ましくは、ブロック12に示すように、基板の走査から開始する。基板走査ステップは、検査片、すなわち集積回路基板に関する情報を収集する。この場合、収集とは、可視光のような、所与の範囲の光の波長を受け入れるようにフィルタリングされた電荷結合素子を用いる等によって、光学画像を取り込むことを意味する。方法10のステップ14は、取り込んだ基板の画像フレーム毎に繰り返される方法の部分への移行点にあたり、検出アルゴリズムを用いて、検出した任意の異常を欠陥として捕らえるステップ16を含む。
【0015】
方法10のステップ18は、現在分析中のフレームにおいて検出された欠陥毎に繰り返される、方法10の更に小さな部分への移行点にあたり、欠陥に対して少なくとも1つの閾値許容範囲を計算するステップ20を含む。この情報、即ち、ステップ16において判定した捕獲欠陥の指定、及びステップ20において判定した閾値許容範囲即ちレベル情報の計算は、方法10のステップ22においてフレーム・データとして保存される。次いで、ルーチンは、検出した各欠陥に対して閾値データを判定することを繰り返し、次いでフレーム毎に、全ての欠陥を判定することを繰り返して、フレーム全てにおける全ての欠陥を判定する。このように、方法10は、識別した欠陥に関するデータだけでなく、検出した異常の相対的レベルに関するデータ、及び欠陥として捕らえた又は捕らえなかったパラメータの閾値に関する異常のレベルも収集し記憶する。
【0016】
これより図2を参照する。図2には、方法10のステップ16において採用される、欠陥検出ルーチンの対話型閾値調整方法30、即ち最適化方法のステップが示されている。この方法30の目的は、欠陥検出ルーチン16において用いられる種々のパラメータの設定を最適化して、最も好ましくは、歩留まりに影響を及ぼす真性欠陥を検出して欠陥として捕らえ、歩留まりには影響を及ぼさないその他の異常を検出しないか又は欠陥として捕らえないようにすることである。
【0017】
方法30は、ブロック32に示すように、方法10の一部として収集し記憶した欠陥データ及び閾値データを含むフレーム・データをロードすることによって開始される。ステップ34において、検査処方(inspection recipe)、言い換えると、方法10のステップ16等において用いられる欠陥検出機能を制御する1組のパラメータもロードする。ブロック36に示すように、欠陥検出プロセスのシミュレーションを行い、これによって、検査処方において指定されている閾値をフレーム・データに適用し、ブロック38に示すように、シミュレートされた検出の概要等の結果を表示する。
【0018】
検出動作の結果を表示することに加えて、ブロック40に示すように、検出ルーチン又は処方の種々の入力パラメータについての動作曲線も計算し、表示する。動作曲線は、図3〜図6に概略的に表すような情報として図示される。図3は、入力パラメータ即ちパラメータP1の値に対する方法10のステップ16において検出された欠陥数というような、関数のグラフを示す。このグラフは、p1及びp1’のような、P1の種々の値において、その関数によって検出された欠陥間の関係を示す曲線を表す。図4は、同様の情報を入力P2について表し、図5は同様の情報を入力Pn(i)について表す。図6は、P1の種々の値について、欠陥検出関数の出力を、致命的欠陥(killer defect)、真性であるが致命的ではない欠陥、そして検出された異常ではあるが欠陥では全くない無害(nuisance)欠陥に分類して示す。
【0019】
前述のような情報を、同じ場所又は離れた場所のいずれかにおいて、検査機器に接続されている計算機のグラフィカル・インターフェース等において表示したなら、図2に示す方法30のブロック42に示すように、システムはユーザに、許容できる処置の1つを実施するように促す。図2に示すように、許容できる処置の中で可能なことには、ブロック44に示すように欠陥を表示すること、ブロック46に示すように検査又は最適化に異なるパラメータを選択すること、ブロック48に示すようにパラメータ値を変化させること、又は、ブロック50に示すように最適化プロセスを完了することが含まれる。これら種々の選択肢のいずれか1つを選択し実行した後、勿論ブロック50に示すようなルーチンの終了を除いて、ルーチンはブロック42に戻り、別のユーザ命令を待つ。これらの選択肢の各々について、以下で更に詳しく説明する。
【0020】
ユーザが、ブロック44に示すような、欠陥を表示する選択肢を選択した場合、システムは、ブロック52に示すように、基板の画像及び欠陥を示すマークを有する空間表示のような、基板マップ上の欠陥の表示を更新する。基板マップ上における色や異なる欠陥指示証印(indicia)等によって欠陥の種別を示すというような、追加情報も提示することができる。これにより、最適化の方法30の現時点での結果について、ユーザに視覚的なフィードバックを与える。
【0021】
ブロック46において、最適化のための異なるパラメータが選択される。選択されると、ブロック54に示すように、図3〜図6に示すような動作曲線を計算し、表示する。ブロック48に示すように、種々のパラメータに対する異なる値を変化させることができる。パラメータ閾値を変化させると、システムは、ブロック56に示すように、欠陥検出ルーチンの別のシミュレーションを実行し、ブロック60に示すように、欠陥検出ルーチンの概要の表示を更新し、ユーザからの別の入力を待つ。ブロック50に示すように最適化ルーチンから抜け出すと、種々のパラメータに対する現在の閾値が、ブロック58に示すように、調整した処方の一部として保存される。
【0022】
このように、ここに記載する方法を組み込んだシステムは、分析システムを最適化することができるレベルを大幅に高める。何故なら、これは、各パラメータ閾値の調節後に、基板の新たな走査を行う必要がないからである。この理由の1つは、フレーム・データが、位置情報のような欠陥情報だけでなく、パラメータ閾値に関連して、検出した異常のレベルに関する閾値情報も含むからである。
【0023】
図7を参照すると、検査片の特性を検知するように構成されたセンサ102を有する検査システム100が示されている。プロセッサ104が、検知した特性を分析して、位置情報及びレベル情報を有する異常を識別し、検査システム・パラメータの1組の初期閾値によって異常のレベル情報を分析し、レベル情報の直前の分析に基づいて、異常の初期部分を欠陥として捕らえる。ディスプレイ106は、捕らえられた異常の概要と、検査システム・パラメータの少なくとも1つに対する閾値について、潜在的に捕らえられる欠陥を表す動作曲線とを表示する。入力108を介して、選択的に、検査システム・パラメータの少なくとも1つを変化させ、検査システム・パラメータの1組の修正閾値を形成する。更に、プロセッサ104は、検査システム・パラメータの1組の修正閾値によって、異常のレベル情報を分析し、レベル情報の直前の分析に基づいて、異常の更新部分を欠陥として捕らえる。更に、ディスプレイ106は、捕らえた異常の更新した概要を表示する。メモリ110は、検査システムの処方において用いるために、検査システム・パラメータの1組の修正閾値を記憶する。
【0024】
これより、本発明の一実施態様に関して詳細に説明する。本発明の種々の実施形態は、平面から成り複数のダイスをその上に有する半導体ウェハのような基板上における欠陥を検出するために用いられるような、欠陥検出アルゴリズムのパラメータを調整するための総合的ソフトウェア・ツール、装置、及び方法を包含する。欠陥検出アルゴリズムは、通常、ダイスの1又は複数の取り込んだ画像を調べ、同様の画像を各画素位置にて比較し、判別機能を用いて、これらの画像間の相違を判定する。相違が検出された場合、この機能は更に、この相違を基板上の欠陥として捕らえるか否かの判定を行う。
【0025】
判別機能は、前述のアルゴリズムの感度を制御する1組のパラメータを用いることが好ましい。これらのパラメータは、大抵の場合、スキャニング・システムによってディジタル化され、検出アルゴリズムに供給される材料や幾何学的形状の種類のような層の種類別に、所与の基板について個々にそして手作業で最適化しなければならない。パラメータは、検出される無害イベント(事象)の数を最少に抑えつつ、対象の欠陥の数、あるいは、言い換えると、生産歩留まりに影響を及ぼす欠陥であり、検出されそのように捕らえられる欠陥の数を最大にするように最適化することが好ましい。無害イベントとは、欠陥画素又はその他の撮像異常であり、アルゴリズムによって欠陥として捕らえられるが、実際には歩留まりに影響を及ぼさない。測定ノイズ、ダイ毎の膜厚のばらつき、及び金属粒(metal grain)は、欠陥として捕らえられる可能性があるが、半導体生産の歩留まりには影響を及ぼさないイベントの例である。
【0026】
汎用パラメータ・チューナ(generalized parameter tuner)は、検出された欠陥の数及び種類を、各アルゴリズム・パラメータの関数として示す1つ以上の動作曲線集合を表示することが好ましい。勿論、この情報は、棒グラフ、数値の表、円グラフ、又はその他の適したフォーマットで提示することもできる。しかしながら、中心的な概念は、ユーザがパラメータ空間において1つ以上の動作点を選択し、直ちにアルゴリズムの実行を視認することができるようにし、検査システム上で基板を再走査する必要性をなくすことである。アルゴリズムの性能は、例えば、種類毎の欠陥数という形態、基板表面上のどこに欠陥があるかを示す二次元基板マップ、又は各ダイに関してどこに欠陥があるかを示す積層ダイ・マップによって視認することができる。
【0027】
汎用パラメータ・チューナの重要な側面の1つは、ユーザがパラメータ空間において動作点を変化させるに連れて、曲線、チャート、又はマップの表示を更新できることである。所与のパラメータが他のパラメータの関数である場合、そのパラメータ値を変化させると、他の全ての動作曲線もしかるべく変化する。
【0028】
欠陥検出アルゴリズムは、n個のパラメータP1、P2、..Pnを有する汎用関数F()として定義することができ、F(P1,P2,..Pn)は、P1=p1、P2=p2、..Pn=pnのパラメータ値に対して、アルゴリズムが検出した欠陥の数を示す。関数Fは、色々な形態を取ることができる。例えば、ある場合には、Fはr個の分離可能な関数の和F(p1,p2,.. ,pn)=F1(p1, p2,..)+F2(p1,p2,..)+... +Fr(p1,p2..)として記述することができる。これは、例えば、各ダイをr個の領域に分割し、Fi()が、i番目の領域において所与のパラメータ設定に対して発見された欠陥を示すことができる。
【0029】
場合によっては、関数Fはパラメータ空間において分離可能であってもよい。これは、各パラメータが、F(p1,p2,..pn)=F1(p1)+F2(p2)...+Fn(pn)で示されるように、欠陥母集団の部分集合を決定することを意味する。別の場合では、一部のパラメータを結合し、他のパラメータは結合せず、F()は、例えば、F(p1,p2,..pn)=F1(p1,p2)+F2(p3,p4)...+Fs(pk,pn)におけるような、s個の分離可能な項の和となる。この例では、F1はP1及びP2の関数であるが、P3、P4等の関数ではない。一般に、関数Fは、m個の項、F1(), F2(), .. Fm()に分解することができ、各Fi()がn(i)個のパラメータ、P1,P2,...Pn(i)の関数である場合、ユーザは、図3〜図5に示すn(i)動作曲線集合を用いて、n(i)個のパラメータを手作業で調整することができる。
【0030】
実線の各曲線は、欠陥数Fi()の変動を、他の全てのパラメータ値をそれらの現在の動作値に保持する特定のパラメータの関数として示す。尚、実線の各曲線は、対応するパラメータに対する現在の動作点、即ち、P1=p1, P2=p2, ... Pn(i)=Pn(i)の動作値を示すことを注記しておく。ユーザがパラメータP1の動作値をp1から、例えば、図3に示すようにp1'に変化させた場合、Fi()対P2、Fi()対P3等に対する他の全ての動作曲線は、点線で示すように変化する。これは、各動作曲線が、他の全てのパラメータの特定の値が与えられたときに、そのパラメータ値に対する欠陥数の変動を示す関数であるからである。初期動作曲線(前述の実線曲線)は、関数Fi(P1,p2,p3,..pn(i))、Fi(p1,P2,p3,..pn(i))、Fi(p1,p2,P3,..pn(i))、 ... Fi(p1,p2,..Pn(i))であった。
【0031】
何らかの方法で、ユーザが手作業で又は自動欠陥分類アルゴリズムによって、欠陥を分類した場合、全欠陥数対所与のパラメータ値の単一動作曲線を示す代わりに、欠陥数を欠陥の種類(例えば、致命的、真性、心配なし、無害等)又は欠陥の等級(粒子、パターン、色ばらつき粒子等)によって分割し、図6に示すように、パラメータ値毎に、1組の動作曲線を種類/等級毎に1組ずつ示す。図6は、欠陥種類毎の欠陥数をP1の関数として示しているFi(P1,..pn(i))を表している。
【0032】
いずれかの動作点をユーザが変化させる毎に、表示プログラムは基板マップ又は積層ダイ・マップを更新し、検出された欠陥を表示する。欠陥が種類/等級で分類されている場合、基板マップは、色又はその他の適したアイコンを用いて各欠陥の種類を示すことができる。各パラメータを順に変化させることにより、ユーザは検出欠陥に対する効果を瞬時に見て、感度と無害率(nuisance rate)との間のトレードオフを行うことができる。
【0033】
システムは、3つの主要部から成ることが好ましい。第1部は、特殊データ集合機能を基板検査での走査に追加する。つまり、基板の走査中に欠陥を検出することに加えて、システムはラン・タイム・データも収集する。このデータは、画素毎に閾値をどのように設定するか決定し、閾値に対してどれ位の許容範囲で、欠陥として捕らえた又は捕らえなかったと分類するのか決定する。現システムは、一度に1画像フレームを処理しその欠陥を検出するので、このようなデータをフレーム・データと呼ぶ。第2部分は、フレーム・データを用いてリアル・タイムに所与の処方の検出結果をシミュレートするアルゴリズムである。第3部分は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースであり、システムは、処方のシミュレーション結果の概要、各閾値パラメータの動作曲線、又は言い換えると、検出した欠陥数を閾値の関数として表示し、ユーザが閾値を操作し変化させたシミュレーションの結果を見ることができるようにする。
【0034】
本システムを用いる際、ユーザは、既にフレーム・データを含む検査結果を有するか、又はユーザは基準処方から開始するかのいずれかである。後者の場合、システムは、最初に特別な基板走査を実行してフレーム・データを収集することが好ましい。次いで、システムは、その特殊な基板走査において検出した欠陥の一部を分類するようにユーザを誘導することが好ましい。分類の後、システムは、自動的に初期処方を生成し、ユーザを処方調整段階(フェーズ)に進ませることが好ましい。処方調整段階では、システムは、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを起動することが好ましい。グラフィカル・ユーザ・インターフェースは、1)現閾値及び処方の検出結果の概要を示すウィンドウと、2)選択した閾値パラメータの動作曲線を示す2つのウィンドウから成ることが好ましい。
【0035】
検出の概要を得るために、システムは、処方をフレーム・データに適用することによって、欠陥検出シミュレーションを実行することが好ましい。次いで、システムは、検出した欠陥を種類毎に要約し、表示することが好ましい。次に、システムは、閾値パラメータ毎に、動作曲線を計算し表示することが好ましい。動作曲線を計算するために、システムは、特定の閾値パラメータのフレーム・データを抽出し、フレーム・データを動作曲線に変換することが好ましい。動作曲線上において、ユーザは、各種類毎に検出した欠陥数を閾値の関数として見ることができ、グラフィック上でパラメータを所望値に設定することができる。ユーザが特定のパラメータの値を変化させた場合、システムはシミュレーションに戻り、新たな検出結果の概要を表示することが好ましい。ユーザは、システムに、検出した(捕らえた)全ての欠陥、又は検出しなかった(捕らえなかった)欠陥を示すように命令することができる。
【0036】
従来の方法と比較すると、本発明は、動作曲線を示すことにより、閾値を調整するときに、捕らえた真性欠陥と捕らえた無害の欠陥との間におけるトレードオフを、ユーザに視覚化させることができる。また、本発明によって、ユーザは、閾値パラメータを調整した後、基板を再走査することなく、リアル・タイムのフィードバックを得ることができる。
【0037】
本実施態様は、区分(セグメント化された)自動閾値アルゴリズムのために設計され、前述のように収集したデータは、区分自動閾値アルゴリズムに特定的である。本発明の他の可能な構成では、異なる検出アルゴリズムに対する支援を含む。本発明を異なるアルゴリズムに適用する場合、システムは、その検出アルゴリズムに特定的なラン・タイム・データを収集し、そのデータを用いてリアル・タイム・シミュレーションのためのアルゴリズムを作成することが好ましい。グラフィカル・ユーザ・インターフェースが動作曲線及び検出結果を表示する態様も、種々の実施形態において変更することができる。
【0038】
本システムは、以下のような革新的な特徴を有する。検査走査中におけるラン・タイム・フレーム・データ及び検出情報の収集。新たな1組の閾値パラメータの入力時における欠陥検出のリアル・タイム・シミュレーション。処方における個々の各閾値パラメータに対する欠陥検出の動作曲線の計算。欠陥種類毎に1本ずつ、多数の動作曲線を表示し、閾値を調整する際に、捕らえた真性欠陥と捕らえた無害欠陥との間のトレードオフをユーザに視覚化させる機能。種類別に欠陥母集団に対する閾値境界を、ユーザに視覚化させ操作させるグラフィカル・ユーザ・インターフェース。所与の閾値パラメータ集合について、パレート図、基板マップ、又は概要表のような、種々の形式で、捕らえた欠陥及び捕らえなかった欠陥を示すことができる機能。
【0039】
本発明についての好適な実施形態の以上の記載は、例示及び説明の目的のために提示したものである。これらは、それで全てであることも、本発明を開示した形態そのものに限定することも意図してはいない。前述の教示を参考にすれば、すぐに分かるような変更又は変形は可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実用的な用途の最良の例示を提供しようとして、そしてこれによって当業者が種々の実施形態において、更に想定される個々の使用に適した種々の変更を伴って、本発明を利用することができるように、選択し記載したものである。このような変更及び変形は、公正に、合法的に、そして衡平的に与えられる広さに応じて解釈した際に添付した特許請求の範囲によって判断される、本発明の範囲に該当するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査システムの調整方法であって、
a.前記検査システムを用いて検査片の特性を検知するステップと、
b.前記検知した特性を分析して、位置情報及びレベル情報を含む異常を識別するステップと、
c.前記異常のレベル情報を、検査システム・パラメータの1組の初期閾値を用いて分析するステップと、
d.ステップcにおける前記レベル情報の分析に基づいて、前記異常の初期部分を欠陥として捕らえるステップと、
e.前記捕らえた異常の概要を表示するステップと、
f.潜在的に捕らえられる欠陥と前記検査システム・パラメータの少なくとも1つに対する閾値との関係を表す動作曲線を表示するステップと、
g.前記検査システム・パラメータの少なくとも1つを選択的に変化させて前記検査システム・パラメータの1組の修正閾値を形成するステップと、
h.前記検査システム・パラメータの1組の修正閾値を用いて、前記異常のレベル情報を分析するステップと、
i.ステップhにおける前記レベル情報の分析に基づいて、前記異常の更新された部分を欠陥として捕らえるステップと、
j.前記捕らえた異常の概要を表示するステップと、
k.ステップgからjまでを選択的に繰り返すステップと、
l.検査システムの処方に用いるために、前記検査システム・パラメータの1組の修正閾値を記憶するステップと
から成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記検査システムは、光学検査システムであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記検査片は、半導体ウェハであることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記検査片の特性は、表面欠陥であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、該方法は更に、前記検査片上で捕らえた異常の空間表現を選択的に表示するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
検査システムの処方を調整する方法であって、
a.検知した異常についてのレベル情報を受け取るステップと、
b.検査システム・パラメータの1組の初期閾値を用いて、前記異常のレベル情報を分析するステップと、
c.ステップbにおける前記レベル情報の分析に基づいて、前記異常の初期部分を欠陥として捕らえるステップと、
d.前記捕らえた異常の概要を表示するステップと、
e.潜在的に捕らえられる欠陥と前記検査システム・パラメータの少なくとも1つに対する閾値との関係を表す動作曲線を表示するステップと、
f.前記検査システム・パラメータの少なくとも1つを選択的に変化させ、前記検査システム・パラメータの1組の修正閾値を形成するステップと、
g.前記検査システム・パラメータの1組の修正閾値を用いて、前記異常のレベル情報を分析するステップと、
h.ステップgにおける前記レベル情報の分析に基づいて、前記異常の更新された部分を欠陥として捕らえるステップと、
i.前記捕らえた異常の概要を表示するステップと、
j.ステップfからiまでを選択的に繰り返すステップと、
k.検査システムの処方に用いるために、前記検査システム・パラメータの1組の修正閾値を記憶するステップと
から成ることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記異常は、検査片上の表面欠陥を表すことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6記載の方法において、該方法は更に、前記捕らえた異常の空間表現を選択的に表示するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
検査システムであって、
検査片の特性を検知するように構成されたセンサと、
プロセッサであって、
前記検知した特性を分析して、位置情報及びレベル情報を有する異常を識別し、
検査システム・パラメータの1組の初期閾値を用いて、前記異常のレベル情報を分析し、
前記レベル情報の分析に基づいて、前記異常の初期部分を欠陥として捕らえる
ように構成されたプロセッサと、
前記捕らえた異常の概要を表示し、かつ、潜在的に捕らえられる欠陥と前記検査システム・パラメータの少なくとも1つに対する閾値との関係を表す動作曲線を表示する
ように構成されたディスプレイと、
前記検査システム・パラメータの少なくとも1つを選択的に変化させ、前記検査システム・パラメータの1組の修正閾値を形成するように構成された入力と
を備えており、
前記プロセッサは、更に、前記検査システム・パラメータの1組の修正閾値を用いて、前記異常のレベル情報を分析し、前記レベル情報の直前の分析に基づいて、前記異常の更新部分を欠陥として捕らえるように構成されており、
前記ディスプレイは、更に、前記捕らえた欠陥の更新した概要を表示するように構成されており、
前記検査システムはさらに、該検査システムの処方に用いるために、前記検査システム・パラメータの1組の修正閾値を記憶するように構成されたメモリを備えている
ことを特徴とする検査システム。
【請求項10】
請求項9記載の検査システムにおいて、該検査システムは光学的検査システムであることを特徴とする検査システム。
【請求項11】
請求項9記載の検査システムにおいて、前記検査片は半導体ウェハであることを特徴とする検査システム。
【請求項12】
請求項9記載の検査システムにおいて、前記検査片の特性は表面欠陥であることを特徴とする検査システム。
【請求項13】
請求項9記載の検査システムにおいて、前記ディスプレイは更に、前記検査片上で捕らえた異常の空間表現を選択的に表示するように構成されていることを特徴とする検査システム。
【請求項14】
請求項1記載の方法において、ステップjにおいて、再計算された動作曲線を表示することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法において、前記検査システムは、検査片の特性を複数枚の画像として感知するよう構成され、前記検査システムによって感知された検査片の各画像について、前記方法のそれぞれのステップが繰り返し実行されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項6記載の方法において、ステップiにおいて、再計算された動作曲線を表示することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項6記載の方法において、前記レベル情報は検査片の複数枚の画像として受け取られ、該受け取られた各画像について、前記方法のそれぞれのステップが繰り返し実行されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項9記載の検査システムにおいて、前記ディスプレイは更に、再計算された動作曲線を表示するよう構成されていることを特徴とする検査システム。
【請求項19】
請求項9記載の検査システムにおいて、前記センサが検査片の複数の画像を生成し、前記検査システムが前記検査片の各画像を処理するよう構成されていることを特徴とする検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−286501(P2010−286501A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204492(P2010−204492)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2006−501321(P2006−501321)の分割
【原出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(500049141)ケーエルエー−テンカー コーポレイション (126)
【Fターム(参考)】