説明

検査冶具およびタッチパネルの検査方法

【課題】簡便かつ短時間でのタッチパネルの検査を可能とし、汎用性を有する検査冶具およびタッチパネルの検査方法を提供する。
【解決手段】タッチパネル5のエッジ部に配置される頭部2と操作面上に配置される胴部3を有するT字状の検査冶具1を用い、胴部3の操作面と接する下部面に設けられた複数の導電領域6と、胴部3の下部面に対向する上部面に設けられた複数の導電領域8とはそれぞれ電気的に接続しており、導電領域6同士は絶縁領域7によって互いに絶縁されていて、導電領域8同士は絶縁領域9によって互いに絶縁されているように構成する。この検査冶具1をタッチパネルに配置し、胴部3の上部面の導電領域8に導電性の部材を接触させてタッチ操作を行い、タッチパネルのタッチ位置検出精度の検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査冶具およびタッチパネルの検査方法に関し、特にタッチパネルの検査に用いられる検査冶具およびその検査冶具を用いたタッチパネルの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォンやPDA(パーソナルデジタルアシスタント)などの電子機器では、画面の大型化への要求が大きく、スイッチやテンキーなどの入力装置を配置できる領域が少なくなっている。また、液晶ディスプレイ等の表示素子に表示された画像を参照しながら表示画像に触れ、分かりやすく情報の入力ができる情報入力方法の実現が求められている。そのため、最近タッチパネル付きの表示装置への要求が高まっている。
【0003】
タッチパネルは、上述した液晶ディスプレイなどの表示素子の上に配置され、操作者が指やペンなどで操作面に触れた場合、そのタッチ位置を検出する入力装置の総称である。接触位置検出の方式としては、抵抗膜方式や静電容量方式などがある。
抵抗膜方式は、表面に透明電極の配設された2枚の基板を、互いの透明電極が対向するように離間して配置する。すなわち2枚の基板を必要とするため、薄型化は難しい。そして、従来の抵抗膜方式タッチパネルでは、基板を押して対向する電極間をショートさせる構造であり、摩耗などを生じて耐久性に乏しい。
【0004】
静電容量方式は、使用する基板を一枚として薄型化することも可能であり、特に携帯電子機器には好適な方式である。静電容量方式は、人間が導体であり、操作者の指がグランドとして機能することを利用する。例えば、タッチパネルの基板上にマトリクス状に配置されたセンシング用の電極に指がタッチすると、指とそのタッチ位置にある電極との間に容量が形成され、そうした変化を制御回路等により検知する。そして、指のタッチの位置座標情報が読み出され、タッチ位置の検出が行われる。
【0005】
このような静電容量方式のタッチパネルでは、電極などの構成部材の膜厚の分布など、操作面内に容量の分布が形成されることがある。その場合、微細な容量変化の検出に影響が出て、ひいては、正確なタッチ位置の検出ができないことがあった。そのため、タッチパネルでは、製造後などに行われる検査が非常に重要となる。
【0006】
タッチパネルの検査に関する技術として、特許文献1には、タッチパネルを載置するステージと、人間の指を代替するペン部材と、ペン部材を支持するアーム部材とを備えたタッチパネルの検査装置が記載されている。この特許文献1に記載のタッチパネルの検査装置では、ステージ上にタッチパネルを載置し、タッチパネル専用のペン部材をアーム部材の先端に固定し、タッチパネルの操作面にペン部材の先端が乗るようにアーム部材を軸支するレール部材の高さを調節し固定する。そして、ペン部材によりタッチパネルの所望の位置に荷重をかけて、タッチパネルの検査を行っている。
【0007】
また、特許文献2には、タッチパネル上に配置される絶縁基板と、絶縁基板のタッチパネル側の面に形成されている複数の電極と、複数の電極それぞれを互いに独立に接地させるスイッチとを備えたタッチパネルの検査装置が記載されている。この特許文献2に記載のタッチパネルの検査装置はタッチパネル上に載置される。そして、検査装置の接地電位となる電極により指のタッチ操作を模擬することができ、簡便にタッチパネルの所望の位置での検査が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−303051号公報
【特許文献2】特開2010−44730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたタッチパネルの検査装置では、装置が大規模になってしまう問題や、ペン部材をタッチパネルに直接に当てるため、タッチパネル表面に傷が発生するなどの問題があった。また、その検査装置は、機械的にペン部材を動作させるため、検査に必要な時間が長時間となってしまうという問題も有していた。
【0010】
そして、タッチパネルでは、タッチ位置の検出精度を向上にさせるため、電極構造を微細にするとともに、より数多くの電極を配置する場合がある。その場合、特許文献2に記載されたタッチパネルの検査装置では、構成する電極の数が増大し、それによって、それら電極の電位の制御に大きな負担がかかることがあった。また、特許文献2に記載されたタッチパネルの検査装置では、検査対象となるタッチパネルの大きさに合わせた外形を備える必要があり、多様なタッチパネルの検査に対応するための汎用性に乏しいという問題を有していた。
【0011】
そのため、装置が大規模となることが無く、タッチパネルを傷つけること無く簡便に検査を行うことができ、多様なサイズのタッチパネルに使用できるタッチパネルの検査装置およびそれを用いたタッチパネルの検査方法が求められている。
【0012】
本発明は、以上のタッチパネルの検査装置やタッチパネルの検査方法の問題に鑑みてなされたものである。
すなわち、本発明の目的は、タッチパネルを傷つけることを抑えて簡便かつ短時間で検査を行うことができ、多様なサイズのタッチパネルに適用できる汎用性の高いタッチパネルの検査冶具およびそれを用いたタッチパネルの検査方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様は、タッチパネルのエッジ部に配置される頭部と、タッチパネルの操作面上に配置される胴部とを有するT字状の検査冶具であって、
胴部のタッチパネルの操作面と接する下部面に設けられた複数の第1の導電領域と、胴部の下部面に対向する上部面に設けられた複数の第2の導電領域とはそれぞれ電気的に接続しており、第1の導電領域同士は第1の絶縁領域によって互いに絶縁されていて、第2の導電領域同士は第2の絶縁領域によって互いに絶縁されていることを特徴とする検査治具に関する。
【0015】
本発明の第1の態様において、第1の導電領域と第2の導電領域は一体物であり、第1の絶縁領域と第2の絶縁領域も一対物であって、
これらの一対物が胴部の長手方向に沿って交互に並んでいることが好ましい。
【0016】
本発明の第1の態様において、第1の絶縁領域と第2の絶縁領域は一体となって絶縁体を構成しており、
その絶縁体には、その一方の面と他方の面とを貫通するスルーホールが設けられていて、
第1の導電領域と第2の導電領域とはそのスルーホールを介して電気的に接続していることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の検査冶具をタッチパネル上に配置し、第2の導電領域に導電性の部材を接触させて、タッチパネルへのタッチ操作を行い、タッチパネルのタッチ位置検出精度を検査することを特徴とするタッチパネルの検査方法に関する。
【0018】
本発明の第2の態様において、導電性の部材を検査冶具の胴部の長手方向にスライドさせながらタッチ操作を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡便かつ短時間でタッチパネルの検査を行うことができ、汎用性を有するタッチパネルの検査冶具およびそれを用いたタッチパネルの検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】タッチパネルの直線性評価の方法を説明するグラフである。
【図2】本実施の形態の検査冶具の構造を説明する平面図である。
【図3】本実施の形態の検査冶具の構造を説明する底面図である。
【図4】本実施の形態の検査冶具がタッチパネルの上に設置された状態を模式的に示す平面図である。
【図5】本実施の形態の検査冶具の胴部の導電領域間の接続方法を説明する図である。
【図6】本実施の形態の検査冶具の胴部の別の構成例を説明する、その一部の模式的な斜視図である。
【図7】本実施の形態のタッチパネルの検査方法を模式的に説明する図である。
【図8】本実施の形態のタッチパネルの検査方法の効果を模式的に説明する図である。
【図9】本実施の形態の検査冶具を用いたタッチパネルの検査方法による検査結果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
タッチパネルは、タッチ位置の高精度な検出を可能とするため、上述のように、その検査が重要となるが、検査の1つに直線性評価と称される検査がある。この直線性評価ではタッチパネルのタッチ位置検出精度を検査する。その方法としては、例えば、人の指を模したペン部材や金属棒など導電性の部材を用い、タッチパネルの操作面上で一本の直線を引くようにタッチ操作を行う。より詳細には、操作面上で、所定の直線方向に所定のごく短い間隔をあけてタッチ位置をずらしながら多数回のタッチ操作を行う。そして、こうした多数回のタッチ操作に対応するタッチ位置の位置座標情報を読み出し、タッチ位置検出結果のばらつきを評価する。特に、操作面上で直線方向にタッチ位置をずらしていく場合の、その直線方向と垂直な方向の位置検出結果のばらつきを評価し、タッチパネルのタッチ位置検出精度を検査する。
【0022】
図1は、タッチパネルの直線性評価の方法を説明するグラフである。
【0023】
タッチパネルの操作面には、例えば、正しく設置されたタッチパネル使用時の左右方向であるX座標と、それに直交する上下方向であるY座標が設定されている。その場合、タッチパネルの操作面が縦長の長方形状を有するとすると、X軸は操作面の下辺または上辺と平行な座標軸となり、Y軸は操作面の長手方向に伸びる辺である左辺または右辺と平行な座標軸となる。そして、タッチパネルでは、例えば、操作面をX軸方向に均等に352分割し、Y軸方向に均等に480分割して、352×480の分解能によってタッチ位置の位置検出が可能となるように構成されている。その場合、タッチ位置は、1〜352のいずれかの値のX座標と1〜480のいずれかの値のY座標からなる位置座標として読み出され、タッチ位置の検出が行われる。
【0024】
このようなタッチパネルの直線性評価では、上述した直線方向の多数回のタッチ操作を行うが、その場合、例えば、上述のX軸方向と平行な方向に伸びる直線の方向に多数回のタッチ操作を行うことにする。そして、図1に示すように、検出されたタッチ位置をグラフ上にプロットし、各プロットのY座標の値のばらつきを評価してタッチパネルの直線性評価を行う。良好な位置検出性能を備えたタッチパネルでは、図1に示すように、プロット結果は良好な一本の直線状となる。タッチパネルの性能にばらつきがあると、プロットはY座標値がばらついて、得られるプロットは直線状を示さなくなる。このY軸方向のプロットのばらつき状況を評価する事によりタッチパネルの位置検出性能を評価できる。位置検出性能にばらつきのあるタッチパネルでは、直線性の評価を行って図1と同様にプロットを行った場合、例えば、多数回のタッチ位置検出におけるY座標の最大は230となり、最小は200となり、その間のずれの値が30となることがある。そうした場合、こうしたずれの値(30)などを用い、タッチパネルの直線性について評価を行うことが可能である。
【0025】
以上のようなタッチパネルの直線性評価であるが、評価を実施する際に、多数回のタッチ操作を、一本の直線方向に正確に実施することが重要となる。そのような一直線上でのタッチ操作ができない場合、検出されたタッチ位置のY座標のばらつきの原因がタッチ操作のばらつきに由来するのか、タッチパネルの性能に由来するものなのかの区別ができず、正確な評価が行えないことになる。したがって、人が実際にタッチパネルにタッチして一直線上のタッチ操作を行うことは困難であり、検査装置などを用いて実施されることが必要となる。
【0026】
以上のようなタッチパネルの直線性評価は、上述した特許文献1および特許文献2にそれぞれ記載された検査装置を用いて行うことも可能である。しかしながら、その場合、すでに説明したような問題を生じさせてしまう。そこで本発明者らは、鋭意検討の結果、従来の検査装置の有する課題の改善された本実施の形態の検査冶具を開発した。以下で、本実施の形態の検査冶具およびそれを用いた検査方法について説明する。
【0027】
本実施の形態の検査冶具は、タッチパネルの評価、特に直線性評価に好適な検査冶具である。
【0028】
図2は、本実施の形態の検査冶具の構造を説明する平面図である。
【0029】
図3は、本実施の形態の検査冶具の構造を説明する底面図である。
【0030】
図2および図3に示すように、本実施の形態の検査冶具1は、タッチパネル(図2および図3中には、図示されない)のエッジ部に配置するための頭部2と、タッチパネルの操作面上に配置される胴部3とを有するT字状の形状を有する。胴部3の長手方向と直交する方向の幅は、後述するように人の指によるタッチ操作や金属棒などの導電性の部材によるタッチ操作を想定して、3mm〜15mmとすることが好ましい。胴部3の長さは、検査対象となるタッチパネルの大きさ、すなわち、設置時の横方向の幅や縦方向の幅より長いことが好ましい。例えば、胴部3の長さは、50mm〜300mmとすることが可能である。
【0031】
尚、胴部3の長さは検査対象となるタッチパネルの幅や大きさと同様の長さとなるように決めることができる。そして、胴部3の長さは、検査対象となるタッチパネルの幅や大きさより長い長さにすることも可能である。検査対象となるタッチパネルの幅や大きさより長い長さを有すれば、その検査に用いることが可能となる。そのため、1個の検査冶具を準備し、その胴部3の長さより短い幅を有する多様な大きさのタッチパネルの検査に適用することが可能である。したがって、検査冶具1は、高い汎用性を有する。
【0032】
図4は、本実施の形態の検査冶具がタッチパネルの上に設置された状態を模式的に示す平面図である。
【0033】
そして、図4に示すように、検査冶具1は、検査対象であるタッチパネル5のエッジに合わせて頭部2の長手方向の胴部3側のエッジが配置され、併せて、胴部3の下部面がタッチパネル5の操作面と接するよう配置される。胴部3は柱状部材からなり、柱状の形状を有する。胴部3の長手方向と直交する方向の断面形状は、下部面と上部面に由来する二辺が互いに平行となる形状であることが好ましい。例えば、胴部3の長手方向と直交する方向の断面形状は、正方形、長方形、平行四辺形または台形などである柱状の形状を有することが好ましい。特に、胴部3の断面形状は台形であって、胴部3の上部面に対応する上底が下部面に対応する下底より長い台形であることが好ましい。このような形状を備えることにより、胴部3の下部面より上部面が広くなり、疑似指である金属棒や人間の指によるタッチ操作をより行いやすくすることができる。
【0034】
そして、胴部3は剛直な部材からなる剛直な構造とすることが可能であるが、必ずしも剛直性は必須とされるわけではない。胴部3は、タッチパネル上に配置されて、自己の初期形状を維持できる程度の剛直さを備えていればよい。したがって、胴部3は、後述するように、ガラス材や木材やゴム材や樹脂材などを用いて構成することが可能である。
【0035】
さらに、本実施の形態の検査冶具1は、頭部2と胴部3との間の設定角度を自由に選択することが可能である。すなわち、タッチパネルの形状や、タッチパネルの検査位置に対応させて、頭部2と胴部3との間の角度を変動させることが可能である。こうすることにより、タッチパネルのエッジの形成方向に対して所望の方向に検査冶具1の胴部3を配置することができ、タッチパネルのエッジに対する任意の方向の直線性評価など、多様な検査を行うことが可能となる。
【0036】
図3に示すように、検査冶具1は、その胴部3の下部面に、導電性の導電領域6が絶縁性の絶縁領域7を挟んで、胴部3の長手方向に所定のピッチで配設されるよう構成されている。例えば、図3に示すように、検査冶具1の胴部3は、下部面の導電領域6を、絶縁領域7を挟んでストライプ状に配設することが可能である。そして、図2に示すように、胴部3の下部面と対向する上部面にも、下部面の各導電領域6に対応する位置に、複数の導電性の導電領域8が配設され、下部面の各絶縁領域7に対応する位置に、複数の絶縁性の絶縁領域9が配設されている。胴部3の上部面に配設される導電領域8も絶縁性の絶縁領域9を挟んで、下部面の導電領域6と同様の形状のストライプ状とすることが可能である。
【0037】
検査冶具1の胴部3における下部面の導電領域6の形成ピッチは、検査対象であるタッチパネルの電極の構造や位置検出分解能に従って決めることができる。そして、この導電領域6の形成ピッチをより小さくすることにより、より細かいピッチでのタッチパネルへのタッチ操作を可能とする。具体的には、導電領域6の、胴部3の長手方向の幅を0.2mm〜1mmとし、絶縁領域7の幅を0.8mm〜4mmとすることが好ましい。その場合、胴部3の上部面の導電領域8の形成ピッチも同様とすることが可能である。そして、上部面の導電領域8の胴部3の長手方向の幅を、同様に、0.2mm〜1mmとし、絶縁領域9の幅を0.8mm〜4mmとすることが好ましい。
【0038】
胴部3の下部面に配設される導電領域6および上部面に配設される導電領域8はいずれも、金、銀、銅、アルミ、モリブデンまたはそれらの合金等の金属材料から形成することが可能である。また、ITO(Indium Tin Oxide)などの導電性の無機材料や、導電性の高分子膜などの有機材料を用いて形成することも可能である。そして、胴部3では、上述したような、ガラス材や木材やゴム材や樹脂材などの絶縁性の材料から胴部3を構成する柱状を製造し、その柱状部材の下部面と上部面のそれぞれに、膜状の導電領域6および導電領域8とを形成することが可能である。そうすることによって、胴部3では、その下部面と上部面にそれぞれストライプ状の導電領域6および導電領域8をそれぞれ配設することが可能である。
【0039】
そして、検査冶具1においては、その胴部3の下部面に配設された導電領域6と、上部面の対応する位置にある導電領域8との間が電気的に接続されている。尚、下部面に配設された複数の導電領域6同士は、絶縁領域7によって互いに絶縁され、電気的に接続することはない。同様に、上部面に配設される複数の導電領域8同士も、絶縁領域9により絶縁されて、相互に電気的に接続されることはない。
【0040】
図5は、本実施の形態の検査冶具の胴部の導電領域間の接続方法を説明する図である。
【0041】
図5は、スルーホール11の構造を説明するための、胴部3の一部の長手方向の模式的な横断面図となる。
【0042】
図5に示すように、胴部3の導電領域6と導電領域8との間の電気的接続は、胴部3に設けられたスルーホール11を介して行うことが可能である。すなわち、図5に示すように、胴部3の下部面の導電領域6と上部面の導電領域8との間に胴部3を貫通するスルーホール11を設け、スルーホール11を介して導電領域6と導電領域8との間の電気的接続を実現することが可能である。その場合、例えば、スルーホール11内に導電材12を配置し、導電領域6と導電領域8との間の電気的接続を実現することができる。
【0043】
また、本実施の形態の検査冶具1の胴部3の導電領域6と導電領域8との間の接続方法の別の例としては、胴部3を構成する絶縁性の柱状部材に、その一部の周囲を包囲するリング状の導電性の部材を所定のピッチで配置する方法を用いることも可能である。この例では、胴部3の下部面と上部面のそれぞれに配置される導電領域6および導電領域8を、それぞれリング状に一体的に形成し、下部面の導電領域6と上部面の導電領域8との間の接続を実現することができる。
【0044】
次に、本実施の形態の検査冶具1では、上記した胴部3と別の構造の胴部を有することも可能である。その別の構造の胴部においても、それぞれストライプ状の形状を有する下部面の導電領域と上部面の導電領域との間の電気的接続を実現することも可能である。
【0045】
図6は、本実施の形態の検査冶具の胴部の別の構成例を説明する、その一部の模式的な斜視図である。尚、図2〜図4を用いて説明した検査冶具1の胴部3と共通する構成要素については、同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0046】
本実施の形態の検査冶具1の有する上記したものと別の構造の胴部13は、導電性の導電体14と絶縁性の絶縁体15とを長手方向に交互に積層してなるブロック体構造を有する。胴部13を構成する導電体14は、例えば、その長手方向と直交する方向の断面の形状が、正方形、長方形、平行四辺形または台形など、二辺が互いに平行となる形状を備えることが好ましい。特に、導電体14の断面形状は、台形であって、胴部13の上部面を構成する上底が下部面を構成する下底より長い形状の台形となることが好ましい。そして、導電体14は、所定の厚みを有する正方形状、長方形状、平行四辺形状または台形状の外形を有する板状の部材とすることができる。すなわち、胴部13では、下部面の導電領域と上部面の導電領域は一体物であり、下部面の絶縁領域と上部面の絶縁領域も一体物である。そして、胴部13は、それらの一対物が前記胴部の長手方向に沿って交互に並んでいる構成を有する。
【0047】
胴部13を構成するそれぞれの導電体14の、胴部13の長手方向の厚さは同じである。同様に、導電体14の間に配置される絶縁体15の、胴部13の長手方向の厚さもそれぞれ同じである。したがって、胴部13においては、導電体14が長手方向に所定のピッチによって配置されることになる。さらに、胴部13のそれぞれの導電体14の下部面は、それらによって胴部13の1つの下部面を構成するよう、相互に面一となるように構成される。尚、その場合、胴部13を構成するすべての導電体14の上部面は、それらによって胴部13の1つの上部面を構成するよう、相互に面一となるように構成されることが好ましい。
【0048】
以上のような構造を有する本実施の形態の検査冶具1の胴部13は、例えば、導電体としてカーボンなどを添加した導電性ゴムを用い、導電体を含有しない絶縁ゴムと交互に積層したブロック体を用いて構成することが可能である。
【0049】
次に、本実施の形態の検査冶具を使用した検査方法について説明する。本実施の形態の検査方法は、検査冶具1を用いて行うタッチパネルの検査方法であり、特に、上述したタッチパネルの直線性評価を行う検査方法である。
【0050】
図7は、本実施の形態のタッチパネルの検査方法を模式的に説明する図である。
【0051】
図7では、後述する胴部3の上部面での導電性の部材である金属棒20の動作を、上方から見て模式的に示している。
【0052】
本実施の形態のタッチパネルの検査方法では、初めに、検査対象であるタッチパネル5のエッジ部に合わせて、検査冶具1の頭部2の胴部側のエッジを配置し、胴部3の下部面をタッチパネル5の操作面上に配置する。そして、導電性の部材である金属棒20を用い、金属棒20の先端を検査冶具1の胴部の上部面に接触させながら、胴部3の長手方向、すなわち、頭部2のある先端から他方の先端に向かってそれをスライドさせる。このとき、人間が金属棒20を持って操作することが可能である。その場合、金属棒20が接触している胴部3の上部面の導電領域8は、金属棒20を介してグラウンドと接続されることになる。胴部3の下部面の導電領域6は、上部面の導電領域8と電気的に接続しており、導電領域6もグラウンドに接続することになる。その結果、検査冶具1を載置するタッチパネル5では、検査冶具1の胴部3の導電領域6と対向する部分において、その部分の電極(図示されない)と導電領域6との間で容量が形成されることになる。
【0053】
そして、そうした電極での容量形成は、タッチパネル5の制御回路等により検知される。すなわち、検査冶具1と金属棒20とを用い、タッチパネル5へのタッチ操作が再現されることになる。そして、検査冶具1の胴部3を介してなされた金属棒20のタッチ操作のタッチ位置の座標情報が読み出され、タッチ位置の検出が行われる。
【0054】
タッチパネルの直線性評価では、評価を実施する際に、多数回のタッチ操作を、一本の直線方向に正確に実施することが重要となる。本実施の形態の検査方法では、検査冶具1を検査対象であるタッチパネル5の上に載置する。そして、金属棒20を用い、その先端を検査冶具1の胴部3の上部面に接触させながら、頭部2のある先端から他方の先端に向かってスライドさせる。検査冶具1の胴部3では、上述したように、金属棒20がスライドする上部面に、導電領域8が絶縁領域9を挟んでストライプ状に所定のピッチで配置されている。そして、タッチパネル5の操作面に接する胴部3の下部面には、各導電領域8に対応する位置に導電領域6が、絶縁領域7を挟んで同様のストライプ状となるよう配置されている。導電領域8とそれに対向する導電領域6とは、電気的な接続が実現されている。したがって、金属棒20の胴部3の上部面でのスライド動作に従い、ストライプ状に配置される胴部3の下部面の各導電領域6は、順次、グラウンドへの接続とその後の切断が行われることになる。
【0055】
このとき、検査冶具1の胴部3の下部面に配置された各導電領域6の形状と位置は胴部3において一定である。したがって、タッチパネル5の胴部2の配置された操作面の、胴部3の導電領域6と対向する位置で、人間の指や金属棒20などの導電性の部材によるタッチ操作が実現されることになる。すなわち、タッチパネル5への多数回のタッチ操作を、胴部3に沿った一本の直線方向に正確かつ容易に実施できることになる。
【0056】
図8は、本実施の形態のタッチパネルの検査方法の効果を模式的に説明する図である。
【0057】
図8に示すように、検査冶具1の胴部3に対し金属棒20をスライドさせる操作を行う場合、スライド動作が上下に変動し、一本の直線方向に正確に金属棒20をスライドさせることができない場合がある。こうした場合であっても、本実施の形態の検査冶具1を用いることにより、タッチパネル5の操作面上で実現される多数回のタッチ操作は、検査冶具1の胴部3の構造によって規定された一定の操作となる。すなわち、本実施の形態の検査冶具1を用いることにより、金属棒20を用いたタッチパネル5への多数回のタッチ操作は、常に一本の直線方向に向かう再現性の高いものとなる。その結果、本実施の形態の検査方法においては、正確な直線性評価を簡便に実施できることになる。
【0058】
図9は、本実施の形態の検査冶具を用いたタッチパネルの検査方法による検査結果の例を示す図である。
【0059】
検査対象であるタッチパネル5と同様の構造のタッチパネルは、従来の検査装置を用いて既に直線性評価が実施されたタッチパネルである。このタッチパネルにおいては、操作面に、設置して使用する際の左右方向に対応するX座標と、それに直交する上下方向に対応するY座標が設定されている。このタッチパネルの操作面が縦長の長方形状を有しており、X軸は操作面の下辺および上辺と平行な座標軸となり、Y軸は操作面の長手方向に伸びる辺である左辺および右辺と平行な座標軸となる。そして、タッチパネルでは、操作面をX軸方向に均等に352分割し、Y軸方向に均等に480分割して、352×480の分解能によってタッチ位置の位置検出が可能となるように構成されている。したがって、タッチ位置は、1〜352のいずれかの値のX座標と、1〜480のいずれかの値のY座標からなる位置座標として読み出され、タッチ位置の検出が行われる。
【0060】
この検査対象のタッチパネルを用い、その上に検査冶具1を上述した方法によって載置した。このとき、検査冶具1の載置は、検査冶具1の頭部2を用い、検査冶具1の胴部3がX軸方向と平行に配置されるようになされた。次いで、検査実施者が疑似指である金属棒20を持ち、胴部3の上部面を頭部2側から他方の端部に向かってスライドさせた。そして、上部面の多数の導電領域8に、順次、導電性の部材である金属棒20の先端を触れさせた。その結果、金属棒20が触れている胴部3の上部面の導電領域8に対応する下部面の導電領域6では、グラウンドへの接続がなされた。この操作により、タッチパネルの操作面において、X軸方向と平行な一本の直線方向に沿った多数回のタッチ操作が行われたのと同様になる。
【0061】
そして、検査冶具1の胴部3の導電領域6に対向する位置にある、タッチパネルの操作面の部分において、タッチ位置の検出が行われた。タッチパネルによるタッチ位置の検出結果は、図9に示すように、グラフ上にプロットされた。図9に示すグラフ上のプロット結果から、このタッチパネルの、多数回のタッチ位置検出におけるY座標の最大は215あり、最小は201であり、その間のずれの値は14であることがわかった。タッチパネルの直線性評価は、このずれの値(14)を用いてなされ、評価結果は、従来の検査装置を使用して行われた直線性評価の結果と同等であった。したがって、本実施の形態の検査冶具を用いる本実施の形態のタッチパネルの検査方法は、正確な直線性評価を簡便かつ迅速に行えることが分かった。すなわち、本実施の形態の検査冶具を用いる本実施の形態のタッチパネルの検査方法は、タッチパネルのタッチ位置検出精度を簡便かつ迅速に検査することができる。
【0062】
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 検査冶具
2 頭部
3、13 胴部
5 タッチパネル
6、8 導電領域
7、9 絶縁領域
11 スルーホール
12 導電材
14 導電体
15 絶縁体
20 金属棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルのエッジ部に配置される頭部と、前記タッチパネルの操作面上に配置される胴部とを有するT字状の検査冶具であって、
前記胴部の前記操作面と接する下部面に設けられた複数の第1の導電領域と、前記胴部の前記下部面に対向する上部面に設けられた複数の第2の導電領域とはそれぞれ電気的に接続しており、前記第1の導電領域同士は第1の絶縁領域によって互いに絶縁されていて、前記第2の導電領域同士は第2の絶縁領域によって互いに絶縁されていることを特徴とする検査治具。
【請求項2】
前記第1の導電領域と前記第2の導電領域は一体物であり、前記第1の絶縁領域と前記第2の絶縁領域も一対物であって、
これらの一対物が前記胴部の長手方向に沿って交互に並んでいることを特徴とする請求項1に記載の検査治具。
【請求項3】
前記第1の絶縁領域と前記第2の絶縁領域は一体となって絶縁体を構成しており、
前記絶縁体には、その一方の面と他方の面とを貫通するスルーホールが設けられていて、
前記第1の導電領域と前記第2の導電領域とは前記スルーホールを介して電気的に接続していることを特徴とする請求項1に記載の検査治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の検査冶具を前記タッチパネル上に配置し、前記第2の導電領域に導電性の部材を接触させて、前記タッチパネルへのタッチ操作を行い、前記タッチパネルのタッチ位置検出精度を検査することを特徴とするタッチパネルの検査方法。
【請求項5】
前記導電性の部材を前記胴部の長手方向にスライドさせながら前記タッチ操作を行うことを特徴とする請求項4に記載のタッチパネルの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−238199(P2012−238199A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107116(P2011−107116)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000103747)京セラディスプレイ株式会社 (843)
【Fターム(参考)】