説明

検査方法、及び検査システム

【課題】配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしているか否かの検査を、より好適に実施すること。
【解決手段】配置基準軸と設置基準軸とが水平方向に沿って不一致である場合、対象レーダ装置5では、右規定範囲と左規定範囲とが左右非対称となるため、右規定範囲と左規定範囲とでは、検出開始時間Tsが不一致となる。この場合、対象レーダ装置5から照射され、輪郭範囲の大きさは、正常輪郭範囲の大きさに比べて、大きくなったり小さくなったりする。配置基準軸と設置基準軸とが垂直方向に沿って不一致であれば、輪郭範囲は、対象レーダ装置5を中心として、正常輪郭範囲が回転した形状となる。したがって、検出開始時間Tsが基準時間を超え、検出時間Tdが基準範囲を超えていれば、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしていないことがわかる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ波を送受信することで、該レーダ波を反射した物体を検知するレーダ装置を検査する検査方法、及びその検査方法を実現する検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の走行安全性を向上させる制御等のために、自動車に搭載して用いられるレーダ装置が知られている。このようなレーダ装置では、レーザ光,超音波,ミリ波等をレーダ波として送受信することによって、車両周囲に存在する障害物等の物体を検知する。
【0003】
レーダ装置の一つとして、図10に示すように、車両の前方に向けて光射源101から放射状に出射されるレーザ光の一部を、反射器102,103を用いて左右両側に反射させることで、車両の前方だけでなく車両の左右両側方についても物体の検知を可能としたレーダ装置100が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、レーダ装置を自動車に搭載する場合、物体の位置を正確に検知するためには、レーダ装置に規定された配置基準軸(例えば、レーザ光が照射される範囲の基準軸)を、自動車に規定された設置基準軸に一致させる必要がある。
【0005】
この配置基準軸が設置基準軸に一致しているか否かを検査する方法として、レーザ光を自動車の前方にのみ照射するレーダ装置に対し、レーザ光の照射方向の正面にボードを配置し、ボード上に規定された規定エリア内にレーザ光が照射されていれば、配置基準軸が設置基準軸に一致しているものと判断する方法(以下、この方法を軸検査方法と称す)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−103482号公報
【特許文献2】特開昭63−46855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された軸検査方法は、自動車の前方にのみレーザ光を照射するレーダ装置を前提としている。
このため、自動車の前進方向に対する側方にレーダ波を送信するレーダ装置について、配置基準軸が設置基準軸に一致しているか否かを検査する方法、即ち、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしているか否かを検査する方法として、特許文献2に記載された軸検査方法を適用することは容易ではない。
【0008】
そこで、本発明は、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしているか否かの検査を、より好適に実施可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明は、少なくとも1つのレーダ装置が、該レーダ装置に規定された軸である配置基準軸と自動車に規定された設置基準軸とが規定条件を満たすように自動車に取り付けられているか否かを、該自動車の製造ラインにおいて検査する検査方法に関する。
【0010】
ただし、本発明におけるレーダ装置とは、少なくとも1つの範囲である規定範囲に渡ってレーダ波を送信し、該レーダ波の反射波を受信することで物体を検知する装置であり、自動車の全長方向に対する左右の両側方のうちの少なくとも一方が、規定範囲として規定されている。
【0011】
そして、本発明の検査方法では、レーダ波検出手順において、レーダ装置が送信したレーダ波を検出する。このレーダ波検出手順は、製造ラインの一部を構成し、かつ予め規定された経路に沿って自動車を搬送するように可動する搬送部の両脇に設けられた非可動な部位である非可動部のうち、規定範囲が規定された方向と一致する方向の非可動部に規定された位置である規定位置に設置された検出センサにて実行する。
【0012】
さらに、輪郭範囲推定手順において、搬送部の定められた位置に配置され、かつ該搬送部によって搬送されている自動車(以下、対象車両とする)に取り付けられたレーダ装置(以下、対象レーダ装置とする)が送信したレーダ波を、規定位置にて受信した範囲の輪郭の少なくとも一部分である輪郭範囲を、レーダ波検出手順での検出結果に基づいて推定し、検査手順において、その推定した輪郭範囲を、正常輪郭範囲に照合する照合制御を実行することで、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たすように、対象レーダ装置が対象車両に取り付けられているか否かを検査する。
【0013】
ただし、本発明における正常輪郭範囲とは、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たした上で自動車に取り付けられたレーダ装置が送信したレーダ波を規定位置にて受信した範囲の輪郭として予め用意されたものである。
【0014】
このような検査方法では、対象車両に取り付けられた対象レーダ装置からレーダ波を送信し、その送信されたレーダ波を検出した範囲の輪郭である輪郭範囲を推定する。このとき推定される輪郭範囲は、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たすように対象レーダ装置が対象車両に搭載されていれば、正常輪郭範囲に一致する。
【0015】
したがって、本発明の検査方法によれば、自動車の全長方向(即ち、前進方向)に対する側方にレーダ波を送信するレーダ装置を自動車に搭載した場合であっても、該レーダ装置(即ち、対象レーダ装置)が送信するレーダ波に基づいて、該レーダ装置の配置基準軸が設置基準軸に一致しているか否かを検査することができる。
【0016】
換言すれば、本発明の検査方法によれば、配置基準軸が設置基準軸に一致しているか否かの検査を、より好適に実施可能とすることができる。
なお、ここで言うレーダ波とは、レーザ光であっても良いし、ミリ波帯域の電波であっても良い。つまり、ここで言うレーダ装置は、いわゆるレーザレーダ装置であっても良いし、いわゆるミリ波レーダ装置であっても良い。
【0017】
レーダ装置による規定範囲へのレーダ波の送信は、複数の方向にレーダ波を照射可能に構成された装置を、自動車の側方にレーダ波を照射するように配置することで実現しても良いし、1つの方向にレーダ波を照射可能に構成された装置を、自動車の側方にレーダ波を照射するように配置することで実現しても良い。
【0018】
自動車の製造ラインとは、プレス工程,車体組立工程,塗装工程,艤装工程,ユニットマウント工程といった一連の工程を実行するラインであり、これらの全工程は、通常、少なくとも一つの搬送部によって自動車を搬送する過程で実行される。
【0019】
ところで、本発明は、検査システムとしてなされていても良い。
つまり、本発明の検査システムは、レーダ装置に規定された軸である配置基準軸と自動車に規定された設置基準軸とが規定条件を満たすように、自動車にレーダ装置が取り付けられているか否かを、該自動車の製造ラインにおいて検査する検査システムである。
【0020】
ただし、本発明におけるレーダ装置とは、少なくとも1つの範囲である規定範囲に渡ってレーダ波を送信し、該レーダ波の反射波を受信することで物体を検知する装置であり、自動車の全長方向に対する左右の両側方のうちの少なくとも一方が、規定範囲として規定されている。
【0021】
本発明の検査システムでは、レーダ波検出手段が、製造ラインの一部を構成し、かつ予め規定された経路に沿って自動車を搬送するように可動する搬送部の両脇に設けられた非可動な部位である非可動部のうち、規定範囲が規定された方向と一致する方向の非可動部に規定された位置である規定位置に設置されており、レーダ装置が送信したレーダ波を検出する。
【0022】
そして、レーダ波検出手段での検出結果に基づいて、輪郭範囲推定手段が、搬送部の定められた位置に配置され、かつ該搬送部によって搬送されている自動車である対象車両に取り付けられたレーダ装置を表す対象レーダ装置が送信したレーダ波を規定位置にて受信した範囲の輪郭の少なくとも一部分である輪郭範囲を推定する。
【0023】
さらに、検査手段が、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たした上で自動車に取り付けられたレーダ装置が送信したレーダ波を規定位置にて受信した範囲の輪郭として予め用意された正常輪郭範囲に、輪郭範囲推定手段で推定した輪郭範囲を照合する照合制御を実行することで、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たすように、対象レーダ装置が対象車両に取り付けられているか否かを検査する。
【0024】
このような検査システムによれば、請求項1に係る検査方法を実現できる。つまり、本発明の検査システムによれば、自動車の全長方向(即ち、前進方向)に対する側方にレーダ波を送信するレーダ装置を自動車に取り付けた場合であっても、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしているか否かの検査を実施することができる。換言すれば、本発明の検査システムによれば、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしているか否かの検査を、より好適に実現できる。
【0025】
本発明におけるレーダ波検出手段は、規定位置にて車高方向に沿って連続かつ隣接するように固定された複数の検出センサの各々が、レーダ波を検出し、計時手段が、搬送部の経路に予め規定された計測開始位置に対象車両が到達してから、対象レーダ装置が送信したレーダ波を検出センサのそれぞれが検出するまでの個々の時間長である検出開始時間、及び検出センサのそれぞれがレーダ波を検出している個々の時間長である検出時間を計測しても良い。
【0026】
この場合、本発明における輪郭範囲推定手段は、計時手段で計測した検出開始時間及び検出時間のうち、少なくとも一方をレーダ波検出手段での検知結果として、輪郭範囲を推定しても良い(請求項3)。
【0027】
特に、本発明の検査システムでは、規定位置にて車高方向に沿って連続かつ隣接するように複数の検出センサが固定されているため、自動車の製造工場において必要なスペースを狭くすることができる。
【0028】
このような検査システムによれば、レーダ装置が搭載された自動車が製造ラインに従って移動するときに計測した時間に基づいて、輪郭範囲を推定することができる。
ところで、レーダ装置を自動車に搭載する際に、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしていれば、検出開始時間の各々が、それぞれの検出センサに対して規定された正常輪郭範囲としての時間長(以下、基準範囲とする)内となる。
【0029】
このため、本発明における検査手段は、計時手段で計測した検出開始時間の各々が、それぞれに対応する基準範囲内であれば、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしているものと判断し、検出開始時間の各々が、それぞれに対応する基準範囲を超えていれば、照合制御を実行しても良い(請求項4)。
【0030】
このような検査システムによれば、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしている可能性が高い場合に、照合制御を実行することがないため、必要以上に照合制御が実行されることを防止できる。
【0031】
また、レーダ装置における規定範囲は、矩形状に設定されていても良い。
このように規定範囲が矩形状に設定されている場合、正常輪郭範囲では、1つの線分が車高方向に沿った直線となる。そして、規定位置にて車高方向に沿って連続かつ隣接するように固定された複数の検出センサのそれぞれで検出した検出開始時間の各々の差が、予め規定された許容値以下であれば、輪郭範囲における1つの線分が車高方向に沿って直線であるものとみなせる。
【0032】
このため、本発明の検査手段では、検出開始時間の各々の差が許容値以下であれば、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件のうちの車高方向に対する規定条件を満たしているものと判断しても良い(請求項5)。
【0033】
この結果、本発明の検査システムによれば、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしている可能性が高い場合には、照合制御を実行することがないため、必要以上に照合制御が実行されることを防止できる。
【0034】
さらに、本発明の検査システムにおいて、複数の検出センサは、正常輪郭範囲における車高方向に沿った最大の長さを少なくとも包含する長さの範囲(以下、センサ配置範囲と称す)に、連続かつ隣接するように固定されていれば良い(請求項6)。
【0035】
このようになされた複数の検出センサであれば、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしている場合に、対象レーダ装置から送信されたレーダ波の輪郭範囲を確実に検知することができる。このため、本発明の検査システムによれば、必要最小限の数の検出センサを用いて、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしているか否かを検査できる。
【0036】
一般的に、レーダ装置を自動車に取り付ける取付機構は、レーダ装置を自動車に取り付けた際の姿勢を調整可能(即ち、いわゆる姿勢公差の範囲内となるように配置基準軸を調整可能)に構成されている。したがって、センサ配置範囲は、取付機構における配置基準軸の調整可能な量のうち、最小値にてレーダ装置が取り付けられたときの正常輪郭範囲から、最大値にてレーダ装置が取り付けられたときの正常輪郭範囲までを包含するように設定されていることが好ましい。
【0037】
このように設定されたセンサ配置範囲であれば、レーダ波検出手段(ひいては検出センサ)にて、対象レーダ装置から送信されたレーダ波を、より確実に検出することができる。
【0038】
本発明における検査システムでは、報知手段が、検査手段での検査結果を報知しても良い(請求項7)。
このような検査システムによれば、当該システムの利用者に、検査結果を認識させることができる。
【0039】
このため、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たさない状態で対象レーダ装置が対象車両に取り付けられていれば、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たすように、当該検査システムの利用者に対象レーダ装置を調整させることができる。
【0040】
なお、報知手段が報知する検査手段での検査結果は、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしているか否かでも良いし、そのような状態で対象レーダ装置が対象車両に取り付けられているか否かでも良い。さらには、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たさない状態で対象レーダが対象車両に取り付けられている場合には、配置基準軸と設置基準軸とのズレ量を、検査手段での検査結果としても良い。
【0041】
この場合、本発明における検査手段は、輪郭範囲と正常輪郭範囲とを幾何学的に解析することで、配置基準軸と設置基準軸とのズレ量を導出すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明が適用された検査システムの概要を示す説明図である。
【図2】レーダ装置の概略構成を示す図である。
【図3】検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【図4】自動車の検査工程における一部の工程の手順を示すフローチャートである。
【図5】制御装置が実行する軸検査処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】軸ズレ検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】軸ズレ検出処理の原理を説明する説明図である。
【図8】軸ズレ検出処理の原理を説明する説明図である。
【図9】軸ズレ検出処理の変形例を示すフローチャートである。
【図10】従来のレーダ装置の概略構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1(A)は、本発明が適用された検査システムを上方から見た説明図であり、図1(B)は、本発明が適用された検査システムを側方から見た説明図である。
【0044】
この本実施形態の検査システム1が検査の対象とするレーダ装置5は、レーダ波としてのレーザ光を規定範囲に渡って送信(照射)し、その照射したレーザ光の反射光(即ち、反射波)を受光することで、規定範囲内に存在する物体を検知するレーザレーダ装置である。このようなレーダ装置5は、自動車AMに規定された設置基準軸に、当該レーダ装置5に規定された配置基準軸が一致するように、自動車AMの製造ラインにて自動車AMの前部に取り付けられる。
【0045】
ただし、自動車AMに取り付けられたレーダ装置5は、配置基準軸と設置基準軸とが不一致、即ち、予め規定された規定条件を満たしていない可能性があるため、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしているか否かを、自動車AMの検査工程にて検査する必要がある。この検査を実施するシステムとして、本実施形態の検査システム1が構成されている。
〈レーダ装置について〉
まず、検査システム1が検査の対象とするレーダ装置5について説明する。
【0046】
ここで、図2は、本実施形態のレーダ装置の構成および動作を示す説明図であり、図2(A)が上面図(照射側の説明図)、図2(B)が右側側面図、図2(C)が下面図(受光側の説明図)である。
【0047】
本実施形態のレーダ装置5は、図2に示すように、レーザ光を発生させる光源10と、レーザ光を受光する受光部11と、光源10から照射されたレーザ光を二つに分岐させ、レーザ光の光路をほぼ垂直方向に変化させることによって、規定範囲の1つである右規定範囲に照射する右照射光SR及び規定範囲の1つである左規定範囲に照射する左照射光SLを生成すると共に、これら右照射光SRおよび左照射光SLの反射光を、受光部11に導く光路変更器12と、光路変更器12から当該レーダ装置5の外部に至る右照射光の光路上に配置され、右照射光の発散または集束させる右側レンズ部13と、光路変更器12から当該レーダ装置5の外部に至る左照射光を発散または集束させる左側レンズ部14とを備えている。
【0048】
光源10は、レーザダイオードまたは発光ダイオードにより構成されている。以下では、光源10から照射されるレーザ光の光軸に沿った方向を前後方向(図2中の上下方向)、前後方向に直交する方向を横方向(図2(A),(C)中の左右方向,図2(B)中の紙面と直交する方向)、前後方向および横方向のいずれにも直交する方向(図2(A),(C)中の紙面と直交する方向、図2(B)中の左右方向)を上下方向という。
【0049】
受光部11は、一列に配置された複数の受光素子(CMOS,CCD等)を備えた周知のイメージセンサからなり、受光素子の配列方向が横方向と一致するように、光源10の下方に配置されている。
【0050】
光路変更器12は、三角柱状に形成されたプリズム型ミラーからなり、三角形の一頂点を通る中心線が光源10から照射されるレーザ光の光軸JCと一致するように配置されている。このため、光源10から照射されたレーザ光は、図2(A)に示すように、前記頂点を挟んだ二つの面に当たって反射することにより2分岐され、その2分岐されたレーザ光は、横方向に沿って互いに逆方向に向かうように光路が変更される。逆に、横方向両側(即ち、左右両側)から光路変更器12に到来する反射光は、受光部11に向かうように光路が変更される。
【0051】
このように構成されたレーダ装置5は、自動車AMの前進方向(即ち、全長方向)に対して左右両脇(即ち、右規定範囲、及び左規定範囲)を規定範囲としてレーダ波を送信されるように、自動車AMを製造する製造ラインにて、自動車AMの前部に設けられた取付機構(図示せず)に取り付けられる。つまり、本実施形態における設置基準軸は、自動車の前進方向に対する左脇が、左規定範囲となり、自動車の前進方向に対する右脇が、右規定範囲となるように規定されている。
【0052】
なお、取付機構は、レーダ装置5を自動車AMに取り付けた際の姿勢を調整するように配置基準軸を調整可能に構成されている。この配置基準軸を調整可能な範囲は、いわゆる姿勢公差の範囲内である。
【0053】
また、レーダ装置5がレーダ波を照射する規定範囲は、レーダ装置5の前後方向及び上下方向に、所定の形状及び大きさを有した範囲であり、当該規定範囲の輪郭によって表わされる前後方向及び上下方向での形状は、例えば、矩形や楕円といった形状である。このようなレーダ装置5から照射されるレーダ波は、レーダ装置5から離れるほど、拡散することになるため、規定範囲の輪郭によって表わされる形状は、レーダ装置5から離れるほど大きくなる。
〈検査システムについて〉
本実施形態における検査システム1は、自動車AMの製造ラインにて自動車に取り付けられたレーダ装置5を、当該自動車AMを出荷する前に検査するシステムである。
【0054】
図1(A),(B)に示すように、自動車AMの製造ラインは、予め規定された経路に沿って自動車AMを搬送するように可動する搬送部90と、搬送部90の両脇に設けられた非可動な部位である非可動部93とを有している。
【0055】
この製造ラインでは、プレス工程,車体組立工程,塗装工程,艤装工程,ユニットマウント工程,検査工程といった一連の工程が実施される。これらの全工程は、通常、少なくとも一つの搬送部90が自動車AMを搬送する過程で実行される。
【0056】
なお、検査工程は、複数の工程から構成されており、本実施形態の検査システム1によって実現される工程を、以下では、軸検査工程と称す。この軸検査工程では、設置基準軸と配置基準軸とが規定条件を満たすように、自動車AMにレーダ装置5が取り付けられているか否かが検査される。
【0057】
図3は、検査システムの概略構成を示すブロック図である。
そして、図3に示すように検査システム1は、非可動部93に設けられた、車両検出部21、レーダ波検出部30,35を備えている。この他、検査システム1は、計時装置22、速度取得装置23、制御装置24、報知装置27を備えている。
【0058】
車両検出部21は、搬送部90によって搬送される自動車AMが、予め規定された位置である計測開始位置SPに到達したか否かを検出するセンサである。具体的には、計測開始位置SPにおいて、搬送部90を挟むように非可動部93に設けられ、光を発光する発光部21Aと、発光部21Aからの光を受光する受光部21Bとからなる。
【0059】
計時装置22は、制御装置24からの指令に従って時間を計測する装置である。また、速度取得装置23は、搬送部90の移動速度を取得する装置であり、搬送部90を駆動する駆動部(図示せず)に接続された装置であっても良いし、検査システム1の利用者が入力した情報に従って移動速度を取得する装置であっても良い。
【0060】
さらに、レーダ波検出部30,35は、棒状の検知ポール31,36(図1参照)と、検知ポール31,36に固定され、かつレーザ光を検出する複数の検出センサ32a〜n(nは自然数:本実施形態では,n=7),37a〜nとを備えている。
【0061】
2つの検知ポール31,36は、搬送部90に規定された中心軸CLから規定された距離L離れた、搬送部90の左右の脇(即ち、非可動部93)に設けられている(図1(A),(B)参照)。これらの検知ポール31,36が設けられる位置(以下、規定位置とする)は、計測開始位置SPよりも搬送部90の移動方向に沿った下流であり、かつ搬送部90によって搬送される自動車AMに取り付けられたレーダ装置5からのレーザ光が照射される範囲内である。
【0062】
さらに、検出センサ32a〜nは、検知ポール31のセンサ配置範囲に、検出センサ37a〜nは、検出ポール36のセンサ配置範囲に固定されている。各センサ配置範囲における複数の検出センサ32a〜n,37a〜nは、それぞれが隣接かつ連続するように固定される。
【0063】
ただし、各センサ配置範囲は、車高方向に沿った長さを有した範囲であり、正常輪郭範囲における車高方向に沿った長さ(以下、正常検出範囲と称す)を少なくとも包含するように規定されている。なお、ここで言う正常輪郭範囲とは、配置基準軸が設置基準軸に一致した状態で自動車AMに取り付けられたレーダ装置5が送信したレーダ波を、規定位置にて検出したときの当該レーダ波の範囲の輪郭及び該輪郭の大きさである。また、ここで言う正常検出範囲は、取付機構における配置基準軸の調整可能な量のうち、最小値にてレーダ装置5が取り付けられたときの正常輪郭範囲から、最大値にてレーダ装置5が取り付けられたときの正常輪郭範囲までを包含するように設定されている。
【0064】
つまり、検出センサ32a〜n及び検出センサ37a〜nは、それぞれ、正常輪郭範囲における車高方向に沿った長さを少なくとも包含する長さの範囲内に隣接かつ連続するように固定される。
【0065】
報知装置27は、制御装置24からの指令に従って情報を表示する表示装置28と、制御装置24からの指令に従って情報を音声にて出力する音声出力装置29とを備えている。
【0066】
制御装置24は、処理プロクラムやデータを記憶する記憶部26と、処理プログラムに従って処理を実行する周知のマイクロコンピュータ(以下、マイコンとする)27とを備えている。
【0067】
このうち、記憶部26には、設置基準軸と配置基準軸とが規定条件を満たした状態でレーダ装置5が自動車AMに取り付けられているか否かを検査する軸検査処理を、マイコン27が実行するための処理プログラムが格納されている。さらに、記憶部26には、軸検査処理にて参照し、かつ正常輪郭範囲を表す情報である照合情報が格納されている。
【0068】
以下では、軸検査処理にて検査の対象とするレーダ装置5を対象レーダ装置5と称し、対象レーダ装置5が取り付けられた自動車AMを対象車両AMと称す。
〈検査工程について〉
ここで、図4は、検査システム1にて実施される軸検査工程を少なくとも含む、製造ラインにて実施される自動車の検査工程における一部の工程の手順を示したフローチャートである。
【0069】
この図4に示すように、検査工程において、軸検査工程へと進む前に、対象車両AMの中心軸と搬送部90の中心軸CLとを一致させる車両軸調整行程(S10)を実行する。
そして、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たした状態で自動車AMにレーダ装置5が取り付けられているか否かを検査する軸検査工程を実行する(S20)。
【0070】
そして、軸検査工程の結果、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしていなければ、規定条件を満たすように、レーダ装置5を調整する調整工程を実行し(S30)、その後、次の工程(S40)へと移行する。
【0071】
なお、本実施形態の検査工程においては、軸検査工程へと移行する前に、レーダ装置5が起動され、安定したレーダ波(即ち、レーザ光)を照射可能にされている。
また、本実施形態における軸検査工程は、検査システム1における制御装置24が、軸検査処理を実行することで実現される。
〈軸検査処理について〉
次に、検査システム1の制御装置24が実行する軸検査処理について説明する。
【0072】
ここで、図5は、制御装置が実行する軸検査処理の処理手順を示すフローチャートである。
この軸検査処理は、制御装置24に対して起動指令が入力されると起動されるものであり、搬送部90によって自動車AMが搬送されている間は、繰り返し実行されるものである。
【0073】
そして、軸検査処理は、起動されると、まず、車両検出部21の出力を取得する(S110)。そして、S110で取得した車両検出部21からの出力に基づいて、対象車両AMが計測開始位置SPに到達したか否かを判定する(S120)。
【0074】
このS120での判定の結果、対象車両AMが計測開始位置SPに到達していなければ(S120:NO)、S110へと戻り、対象車両AMが計測開始位置SPに到達するまで待機する。一方、S120での判定の結果、対象車両AMが計測開始位置SPに到達していれば(S120:YES)、計時装置22を起動し、時間を計測する(S130)。
【0075】
続いて、計時装置22にて計測している時間に基づいて、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしているか否かを検査する軸ズレ検出処理を実行する(S140)。
そして、S140での軸ズレ検出処理の結果を、報知装置27を介して報知する(S150)。具体的に本実施形態のS150では、軸ズレ検出処理の結果を表示装置28に表示すること、及び軸ズレ検出処理の結果を音声出力装置29から出力することのうちの少なくとも一方を実行する。
【0076】
そして、その後、S110へと戻る。
〈軸ズレ検出処理について〉
次に、軸検査処理のS140にて起動される軸ズレ検出処理について説明する。
【0077】
ここで、図6は、軸ズレ検出処理の処理手順を示したフローチャートである。この軸ズレ検出処理は、右規定範囲及び左規定範囲のそれぞれに対して実行されるものである。
この図6に示すように、軸ズレ検出処理は、起動されると、まず、検出センサ32a〜n(または、検出センサ37a〜n)において、レーダ波(本実施形態では、レーザ光)を検出したか否かを判定する(S210)。そのS210での判定の結果、検出センサ32a〜n(または、検出センサ37a〜n)の全てにて、レーダ波を検出していなければ(S210:NO)、検出センサ32a〜n(または、検出センサ37a〜n)のうちの少なくとも一つにてレーダ波が検出されるまで待機する。
【0078】
一方、S210での判定の結果、検出センサ32a〜n(または、検出センサ37a〜n)のうちの少なくとも一つにてレーダ波が検出されると(S210:YES)、先のS110にて計時装置22を起動してから、予め設定された時間長である設定時間が経過したか否かを判定する(S220)。
【0079】
そのS220での判定の結果、計時装置22を起動してから設定時間が経過していなければ(S220:NO)、S210へと戻る。なお、本実施形態における設定時間とは、検出センサ32a〜nの中で、正常輪郭範囲に照射されるレーダ波を検出すべき検出センサ32または検出センサ37(以下、検出対象センサと称す)が、計測開始位置SPに到達した対象レーダ装置5から照射されたレーダ波を検出するまでに要する時間長よりも長い時間長である。
【0080】
そして、S220での判定の結果、計時装置22を起動してから設定時間が経過していれば(S220:YES)、レーダ波を検出した検出センサ32(または検出センサ37)について、検出開始時間Tsを導出する(S230)。
【0081】
本実施形態のS230では、検出センサ32a〜n(または、検出センサ37a〜n)がレーダ波の検出を開始すると、その時点で計時装置22にて計測されていた時間を、対応する各検出センサ32(または検出センサ37)についての検出開始時間Tsとして導出する。つまり、検出開始時間Tsは、先のS110にて計時装置22を起動してから、検出センサ32がレーダ波の検出を開始するまでの時間長である。
【0082】
そして、検出開始時間Tsの各々が、各検出センサ32(または各検出センサ37)に対して予め規定された基準時間内であるか否かを判定する(S240)。ただし、本実施形態における基準時間とは、照合情報の一つであり、検出対象センサの各々が、対象車両AMが計測開始位置SPに到達してから、正常輪郭範囲に送信されるレーダ波の検出を開始するまでに要する時間長の許容範囲である。したがって、基準時間は、検出センサ32(または各検出センサ37)の各々に対して設定されている。そして、基準時間によって、正常輪郭範囲における輪郭の少なくとも一部分の形状及び正常輪郭範囲における輪郭の大きさが表される。
【0083】
このS240での判定の結果、検出開始時間Tsの各々が、当該検出開始時間Tsに対応する基準時間内であれば(S240:YES)、詳しくは後述するS290へと移行する。一方、S240での判定の結果、検出開始時間Tsの各々が、当該検出開始時間Tsに対応する基準時間を超えていれば(S240:NO)、検出センサ32a〜n(または、検出センサ37a〜n)の各々において、レーダ波が非検出となったか否かを判定する(S250)。
【0084】
このS250での判定の結果、検出センサ32a〜n(または、検出センサ37a〜n)にてレーダ波が検出されていれば(S250:NO)、レーダ波が非検出となるまで待機する。一方、S240での判定の結果、このS240での判定の結果、検出センサ32a〜n(または、検出センサ37a〜n)の各々にてレーダ波が非検出となれば(S250:YES)、検出時間Tdを導出する(S260)。
【0085】
本実施形態のS250では、検出センサ32a〜n(または、検出センサ37a〜n)の各々が、レーダ波を検出している状態から非検出である状態へと切り替わると、レーダ波の検出を開始した時刻からレーダ波の検出を終了した時刻までの時間長を、対応する検出センサ32(または検出センサ37)についての検出時間Tdとして導出する。つまり、検出時間Tdは、S230にて検出開始時間Tsを導出してから、検出センサ32がレーダ波を非検出となるまでの時間長である。
【0086】
続いて、S230にて導出した検出開始時間Ts及びS250にて導出した検出時間Tdに基づいて、輪郭範囲を推定する(S270)。このS270にて導出する輪郭範囲とは、対象レーダ装置5が送信したレーダ波を規定位置にて受信した範囲を表し、輪郭範囲として、輪郭の少なくとも一部の形状及び輪郭の大きさを有している。具体的にS270では、検出開始時間Ts及び検出時間Tdの各々と搬送部90の移動速度に基づき、輪郭範囲の輪郭点間の距離を導出し、その導出した距離から輪郭範囲を推定する。
【0087】
そして、S270にて推定した輪郭範囲を正常輪郭範囲に照合し、輪郭範囲が正常輪郭範囲に一致するか否かを判定する(S280)。
具体的に、本実施形態のS280では、検出時間Tdの各々を輪郭範囲とし、その検出時間Tdの各々を、当該検出時間Tdに対応する基準範囲に照合することで、輪郭範囲が正常輪郭範囲に一致するか否かを判定する。ただし、本実施形態における基準範囲とは、照合情報の一つであり、検出対象センサの各々が、正常輪郭範囲に送信されるレーダ波を検出している時間長の許容範囲である。したがって、基準範囲は、検出センサ32(または各検出センサ37)の各々に対して設定されている。そして、基準範囲によって、正常輪郭範囲における輪郭の少なくとも一部分の形状及び正常輪郭範囲における輪郭の大きさが表される。
【0088】
このS280での判定の結果、輪郭範囲が正常輪郭範囲に一致、即ち、検出時間Tdの各々が、当該検出時間Tdに対応する基準範囲内であれば、(S280:YES)、配置基準軸が設置基準軸に一致している、即ち、規定条件を満たしているものと判定し、S290へと移行する。
【0089】
つまり、配置基準軸が設置基準軸に一致した状態の対象レーダ装置5では、図7(A)に示すように、右規定範囲に照射されるレーダ波、及び左規定範囲に照射されるレーダ波の両方について、検出開始時間Tsが同じ時間長となる。しかも、このような状況での検出開始時間Tsは、基準時間内となる。
【0090】
また、図7(B)に示すように、配置基準軸が設置基準軸に一致した状態の対象レーダ装置5が照射するレーダ波であって、規定位置にて検出されるレーダ波の範囲の輪郭形状及び大きさは、正常輪郭範囲の形状及び大きさに一致する、即ち、検出時間Tdが基準範囲内となる。
【0091】
なお、図7(B)中では、Ts1が検出センサ32aまたは検出センサ37aに対応する検出開始時間であり、Ts7が検出センサ32nまたは検出センサ37nに対応する検出開始時間である。また、Td3が検出センサ32cまたは検出センサ37cに対応する検出時間であり、Td6が検出センサ32fまたは検出センサ37fに対応する検出時間である。
【0092】
以上説明したように、検出開始時間Tsが基準時間内であり、検出時間Tdが基準範囲内であれば、配置基準軸と設置基準軸とが一致していること(即ち、規定条件を満たしていること)がわかる。
【0093】
続いて、S290では、軸ズレ検査処理の結果として、配置基準軸と設置基準軸とが軸ズレしていないことを示す情報を設定する。その後、軸検査処理のS150へと進む。
ところで、S280での判定の結果、検出時間Tdの各々が、当該検出時間Tdに対応する基準範囲外であれば(S280:NO)、設置基準軸と配置基準軸とが不一致、即ち、規定条件を満たしていないものと判定する。
【0094】
つまり、対象車両の水平方向に沿って、配置基準軸と設置基準軸とが不一致である場合、対象レーダ装置5では、図8(A)に示すように、右規定範囲と左規定範囲とは、左右非対称となる。このため、右規定範囲に照射されるレーダ波と、左規定範囲に照射されるレーダ波とは、検出開始時間Tsが不一致となる。しかも、対象車両の水平方向に沿って、配置基準軸と設置基準軸とが不一致である場合、対象レーダ装置5から照射され、規定位置にて検出されるレーダ波の範囲(即ち、輪郭範囲)の大きさは、図8(B)に示すように、正常輪郭範囲の大きさに比べて、大きくなったり小さくなったりする。
【0095】
さらに、対象車両の垂直方向に沿って、配置基準軸と設置基準軸とが不一致である場合、対象レーダ装置5を中心として、レーダ波が照射される範囲が車高方向に沿って回動するため、対象レーダ装置5から照射されたレーダ波の範囲は、図8(B)に示すように、正常輪郭範囲が回転した形状となる。
【0096】
なお、図8(B)中では、Ts1が検出センサ32aまたは検出センサ37aに対応する検出開始時間であり、Ts7が検出センサ32nまたは検出センサ37nに対応する検出開始時間である。また、Td1が検出センサ32aまたは検出センサ37aに対応する検出時間であり、Td5が検出センサ32eまたは検出センサ37eに対応する検出時間である。
【0097】
これらのことから、配置基準軸と設置基準軸とが不一致である場合には、レーダ波の範囲の形状及び大きさは、正常規定範囲の形状及び大きさに不一致、即ち、検出時間Tdの各々が、当該検出時間Tdに対応する基準範囲とは不一致となる。
【0098】
したがって、検出開始時間Tsが基準時間を超え、さらに、検出時間Tdの各々が当該検出時間Tdに対応する基準範囲を超えていれば、配置基準軸と設置基準軸とが不一致であること(即ち、規定条件を満たしていないこと)がわかる。
【0099】
軸ズレ検出処理では、続いて、軸ズレ検査処理の結果として、配置基準軸と設置基準軸とが軸ズレしていることを示す情報を設定する(S300)。これと共に、本実施形態のS300では、配置基準軸と設置基準軸とのズレ量を導出し、軸ズレ検査処理の結果として設定しても良い。この配置基準軸と設置基準軸とのズレ量は、輪郭範囲と基準範囲とを幾何学的に処理することで導出すれば良い。ここでいう幾何学的処理とは、輪郭範囲の少なくとも一部分と、その一部分に対応する正常輪郭範囲の一部分との角度や、輪郭範囲の大きさと正常輪郭範囲の大きさとの比率を導出することなどである。
【0100】
その後、軸検査処理のS150へと進む。
[実施形態の効果]
以上説明したように、検査システム1では、軸ズレ検査処理において、対象車両AMに取り付けられた対象レーダ装置5からレーダ波を送信し、その送信されたレーダ波を検出した範囲の輪郭である輪郭範囲を推定する。このとき推定される輪郭範囲は、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たした状態で対象レーダ装置5が対象車両AMに取り付けられていれば、正常輪郭範囲に一致する。
【0101】
したがって、検査システム1によれば、自動車の全長方向(即ち、前進方向)に対する側方にレーダ波を送信するレーダ装置5を自動車AMに取り付けた場合であっても、対象レーダ装置5が送信するレーダ波に基づいて、該対象レーダ装置5の配置基準軸が設置基準軸に一致しているか否かを検査することができる。
【0102】
換言すれば、配置基準軸が設置基準軸に一致しているか否かの検査を、より好適に実施可能とすることができる。
また、検査システム1では、軸ズレ検査処理の検査結果を、軸検査処理にて報知する。したがって、検査システム1の利用者は、軸ズレ検査処理の検査結果を認識することができる。
【0103】
このため、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たさない状態で対象レーダ装置5が対象車両AMに取り付けられていれば、検査システム1の利用者は、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たすように対象レーダ装置5を調整することができる。
【0104】
なお、上記実施形態における複数の検出センサ32,37は、正常検出範囲にて隣接かつ連続するように固定されている。
このため、検査システム1によれば、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしている場合に、対象レーダ装置5から送信されたレーダ波の輪郭範囲を確実に検知することができる。
【0105】
特に、上記実施形態における正常検出範囲は、取付機構における配置基準軸の調整可能な量のうち、最小値にてレーダ装置5が取り付けられたときの正常輪郭範囲から、最大値にてレーダ装置5が取り付けられたときの正常輪郭範囲までを包含するように設定されている。したがって、検査システム1によれば、正常検出範囲に固定された検出センサにて、対象レーダ装置5から送信されたレーダ波を、より確実に検出することができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0106】
例えば、軸ズレ検出処理の処理内容は、上記実施形態にて説明したものに限らない。
すなわち、軸ズレ検出処理の処理内容は、検出開始時間Ts及び検出時間Tdを導出し、それら検出開始時間Ts及び検出時間Tdに基づいて輪郭範囲を推定すると共に、その推定した輪郭範囲を正常輪郭範囲に照合することで、配置基準軸と設置基準軸とが一致するか否かを検査するものであれば、どのようなものでも良い。
【0107】
具体的には、図6に示すフローチャートにおいて、S230,S260〜S300を実行可能であれば、他のステップは省略されていても良い。
また、規定範囲が矩形状である場合には、軸ズレ検出処理の処理内容は、図9に示すようにしても良い。この図9に示す軸ズレ検出処理は、上記実施形態にて説明した軸ズレ検査処理におけるS230に続くステップ(S235)として、検出開始時間Tsの各々が一定とみなせるか否かを判定し、検出開始時間Tsの各々が一定とみなせれば(S235:YES)、S240へと移行し、検出開始時間Tsの各々が一定とみなせなければ(S235:NO)、S250へと移行する。図9に示す軸ズレ検出処理は、S235以外のステップは、上記実施形態(即ち、図6に示す軸ズレ検出処理)と同様の内容であるため、ここでの説明は省略する。
【0108】
なお、この検出開始時間Tsの各々が一定であるか否かの判定方法としては、検出開始時間Tsの各々の差分を導出し、全ての差分が、予め規定された許容値以下であれば、検出時間Tsの各々が一定であると判断することなどが考えられる。
【0109】
また、図9に示す軸ズレ検出処理において、S235にて、検出開始時間Tsの各々が一定とみなせれば(S235:YES)、軸ズレ検査処理の結果として、配置基準軸と設置基準軸とが軸ズレしていないことを示す情報を設定しても良い。
【0110】
つまり、規定範囲が矩形である場合、その規定範囲における一辺は、車高方向に沿った直線となる。そして、検出開始時間Tsの各々が一定であることを検出することで、規定範囲の車高方向に沿った直線を認識した場合には、配置基準軸と設置基準軸とが軸ズレしていないものと判定しても良い。
【0111】
このような軸ズレ検出処理によれば、配置基準軸と設置基準軸とが規定条件を満たしている可能性が高い場合には、必要以上に多くのステップが実行されることを抑制できる。この結果、配置基準軸と設置基準軸とが一致しているか否かを検査するまでに要する時間長を短縮することができる。
【0112】
また、上記実施形態では、レーダ装置5として、自動車AMの前進方向に対する左右の両方向を規定範囲としてレーダ波を照射可能な装置として構成したが、レーダ装置5の構成は、これに限るものではない。例えば、一つの方向を規定範囲としてレーザ光を照射可能なレーダ装置を、自動車AMの前進方向に対する左右のいずれかの方向を規定範囲とするように自動車AMに取り付けても良い。この場合、左右の両方向を規定範囲とするために、複数のレーダ装置を自動車AMに取り付けても良い。
【0113】
なお、上記実施形態では、レーダ装置5として、レーザレーダ装置を想定したが、レーダ装置5は、レーダ波として、ミリ波帯域の電波や超音波を送信するレーダ装置を想定しても良い。この場合、検出センサ32,37として、ミリ波帯域の電波や超音波を検出するセンサを用いる必要がある。
[実施形態と特許請求の範囲との対応関係]
最後に、上記実施形態の記載と、特許請求の範囲の記載との関係を説明する。
【0114】
上記実施形態のレーダ波検出部30,35、及び計時装置22が、特許請求の範囲におけるレーダ波検出手段に相当し、軸ズレ検出処理におけるS230,S260,S270が、特許請求の範囲における輪郭範囲推定手段に相当する。そして、軸ズレ検出処理におけるS240,S280〜S300が、特許請求の範囲における検査手段に相当し、軸検査処理におけるS150が、特許請求の範囲における報知手段に相当する。
【符号の説明】
【0115】
1…検査システム 5…レーダ装置 21…車両検出部 22…計時装置 23…速度取得装置 24…制御装置 26…記憶部 27…マイコン 27…報知装置 28…表示装置 29…音声出力装置 30…レーダ波検出部 31,36…検出ポール 32,37…検出センサ 90…搬送部 93…非可動部 Td…検出時間 Ts…検出開始時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの範囲である規定範囲に渡ってレーダ波を送信し、該レーダ波の反射波を受信することで物体を検知する少なくとも1つのレーダ装置が、該レーダ装置に規定された軸である配置基準軸と自動車に規定された設置基準軸とが規定条件を満たすように自動車に取り付けられているか否かを、該自動車の製造ラインにおいて検査する検査方法であって、
前記自動車の全長方向に対する左右の両側方のうちの少なくとも一方が、前記規定範囲として規定されており、
前記製造ラインの一部を構成し、かつ予め規定された経路に沿って前記自動車を搬送するように可動する搬送部の両脇に設けられた非可動な部位である非可動部のうち、前記規定範囲が規定された方向と一致する方向の前記非可動部に規定された位置である規定位置に設置された検出センサにて、前記レーダ装置が送信したレーダ波を検出するレーダ波検出手順と、
前記搬送部の定められた位置に配置され、かつ該搬送部によって搬送されている前記自動車である対象車両に取り付けられた前記レーダ装置を表す対象レーダ装置が送信したレーダ波を、前記規定位置にて受信した範囲の輪郭の少なくとも一部分である輪郭範囲を、前記レーダ波検出手順での検出結果に基づいて推定する輪郭範囲推定手順と、
前記配置基準軸と前記設置基準軸とが規定条件を満たした上で前記自動車に取り付けられた前記レーダ装置が送信したレーダ波を前記規定位置にて受信した範囲の輪郭として予め用意された正常輪郭範囲に、前記輪郭範囲推定手順で推定した輪郭範囲を照合する照合制御を実行することで、前記配置基準軸と前記設置基準軸とが規定条件を満たすように、前記対象レーダ装置が前記対象車両に取り付けられているか否かを検査する検査手順と
を備えることを特徴する検査方法。
【請求項2】
少なくとも1つの範囲である規定範囲に渡ってレーダ波を送信し、該レーダ波の反射波を受信することで物体を検知する少なくとも1つのレーダ装置が、該レーダ装置に規定された軸である配置基準軸と自動車に規定された設置基準軸とが規定条件を満たすように自動車に取り付けられているか否かを、該自動車の製造ラインにおいて検査する検査システムであって、
前記自動車の全長方向に対する左右の両側方のうちの少なくとも一方が、前記規定範囲として規定されており、
前記製造ラインの一部を構成し、かつ予め規定された経路に沿って前記自動車を搬送するように可動する搬送部の両脇に設けられた非可動な部位である非可動部のうち、前記規定範囲が規定された方向と一致する方向の前記非可動部に規定された位置である規定位置に設置され、前記レーダ装置が送信したレーダ波を検出するレーダ波検出手段と、
前記搬送部の定められた位置に配置され、かつ該搬送部によって搬送されている前記自動車である対象車両に取り付けられた前記レーダ装置を表す対象レーダ装置が送信したレーダ波を、前記規定位置にて受信した範囲の輪郭の少なくとも一部分である輪郭範囲を、前記レーダ波検出手段での検出結果に基づいて推定する輪郭範囲推定手段と、
前記配置基準軸と前記設置基準軸とが規定条件を満たした上で前記自動車に取り付けられた前記レーダ装置が送信したレーダ波を前記規定位置にて受信した範囲の輪郭として予め用意された正常輪郭範囲に、前記輪郭範囲推定手段で推定した輪郭範囲を照合する照合制御を実行することで、前記配置基準軸と前記設置基準軸とが規定条件を満たすように、前記対象レーダ装置が前記対象車両に取り付けられているか否かを検査する検査手段と
を備えることを特徴する検査システム。
【請求項3】
前記レーダ波検出手段は、
各々が前記レーダ波を検出し、前記規定位置にて車高方向に沿って連続かつ隣接するように固定された複数の検出センサと、
前記搬送部の経路に予め規定された計測開始位置に前記対象車両が到達してから、前記対象レーダ装置が送信したレーダ波を前記検出センサのそれぞれが検出するまでの個々の時間長である検出開始時間、及び前記検出センサのそれぞれが前記レーダ波を検出している個々の時間長である検出時間を計測する計時手段と
を備え、
前記輪郭範囲推定手段は、
前記計時手段で計測した前記検出開始時間及び前記検出時間のうち、少なくとも一方を前記レーダ波検出手段での検知結果として、前記輪郭範囲を推定する
ことを特徴とする請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記検査手段は、
前記計時手段で計測した検出開始時間の各々が、前記検出センサのそれぞれに対して予め規定された前記正常輪郭範囲としての時間長である基準範囲内であれば、前記配置基準軸と前記設置基準軸とが規定条件を満たしているものと判断し、前記検出開始時間の各々が前記基準範囲を超えていれば、前記照合制御を実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記レーダ装置における前記規定範囲は矩形状に設定されており、
前記検査手段は、
前記計時手段で計測した検出開始時間の各々の差が、予め規定された許容値以下であれば、前記配置基準軸と前記設置基準軸との規定条件のうちの車高方向に対する条件を満たしているものと判断することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
前記複数の検出センサは、
前記正常輪郭範囲における車高方向に沿った最大の長さを少なくとも包含する長さの範囲に、連続かつ隣接するように固定されている
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項7】
前記検査手段での検査結果を報知する報知手段
を備えることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−215523(P2012−215523A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82145(P2011−82145)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】