説明

検査方法および装置

【課題】パターンの線幅情報の測定不良を抑制する。
【解決手段】表面検査方法は、基材と、その基材の表面を被覆し、かつ繰り返しパターンが形成された下地部とを含むウェハの表面に光を照射し、その光が照射されたウェハの表面からの反射光の光強度情報を、受光光学系の測定面で検出するステップ128と、その測定面において、第1位置での第1光強度の検出信号を求めるステップ130と、その下地部の情報とその第1光強度の検出信号とを用いて、その繰り返しパターンの線幅の情報を求めるステップ140とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体デバイスの製造工程においてウェハ等の基板に形成されたパターンの線幅の情報を検出可能な検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、電子デバイス等のマイクロデバイスの製造工程においては、露光装置などの基板処理装置を用いて基板が処理される。
その製造工程において、例えば、露光し、現像した後の基板上のパターンの線幅を管理している。その製造工程で発生する欠陥の検出性能およびパターンの線幅であるCD値(critical dimension)を管理している。
【0003】
下記の特許文献1には、基板に形成されたパターンの線幅を測定する検査装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0192953号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、パターンの構造性複屈折効果による偏光の変化量を抽出して、基板に形成されたパターンの線幅を測定する場合、線幅以外の基板に関する状態により、偏光が変化する可能性がある。偏光の変化量に、線幅以外の基板に関する情報が含まれると、測定不良を起こす可能性がある。その結果、CD管理に不具合が生じる可能性がある。
【0006】
本発明の態様は、パターンの線幅情報の測定不良を抑制する検査方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、基材と、その基材の表面を被覆し、かつパターンが形成された被覆材とを含む基板の表面に偏光成分を含む光を照射し、その光が照射されたその基板の表面からの反射光の光強度情報を、受光光学系の測定面で検出することと、その測定面において、第1位置での第1光強度を求めることと、その被覆材の情報とその第1光強度とを用いて、パターンの線幅の情報を求めることと、を含む検査方法が提供される。
【0008】
また、第2の態様によれば、パターンが形成された基板の表面に偏光成分を含む光を照射する照射部と、その光が照射されたその基板の表面からの反射光を受光する受光光学系と、その受光光学系の測定面において、その反射光の光強度情報を検出する検出部と、その検出部で検出された光強度情報からそのパターンの線幅の情報を求める演算部とを備え、その基板は、基材と、その基材の表面を被覆し、かつそのパターンが形成された被覆材とを含み、その演算部は、その測定面において、第1位置での第1光強度を求め、その被覆材の情報とその第1光強度とを用いて、そのパターンの線幅の情報を求める検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パターンの線幅の測定不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の一例の表面検査装置の全体構成を示す図である。
【図2】(a)は繰り返しパターンを示す拡大斜視図、(b)は繰り返しパターンを示す拡大平面図である。
【図3】撮像素子で検出した瞳像を示す図である。
【図4】瞳像を領域分割した状態を示す図である。
【図5】(a)および(b)はそれぞれ繰り返しパターンと入射光の偏光方向との関係を示す図、(c)は瞳座標系内の測定点の一例を示す図である。
【図6】(a)は検量線の一例を示す図、(b)は基準ウェハのCD換算値とCD−SEM値との相関の一例を示す図、(c)は量産ウェハの補正前のCD換算値とCD−SEM値との相関の一例を示す図である。
【図7】繰り返しパターンに入射する光の偏光方向が入射面内にある状態を示す拡大斜視図である。
【図8】(a)は繰り返しパターンの方位角を示す図、(b)は図8(a)の方位角に対応する瞳像内の測定点の一例を示す図である。
【図9】(a)および(b)はそれぞれ繰り返しパターンの方位角が0度および90度の場合に瞳像内で補正点がある領域を示す図である。
【図10】(a)は補正点の階調値とCD−SEM値に対する乖離値との相関の一例を示す図、(b)は乖離値を補正した後のCD換算値とCD−SEM値との相関の一例を示す図である
【図11】(a)はCD−SEM値に対する乖離値のばらつきの一例を示す図、(b)は補正後のCD−SEM値に対する乖離値のばらつきの一例を示す図である。
【図12】(a)はCD換算値を計算する係数を決定する方法の一例を示すフローチャート、(b)は乖離値を計算する係数を決定する方法の一例を示すフローチャートである。
【図13】(a)は測定点を決定する場合の基準ウェハの方位角の一例を示す平面図、(b)は補正点を決定する場合の基準ウェハの方位角の一例を示す平面図である。
【図14】(a)は乖離値と階調値との相関係数の一例を示す図、(b)は瞳像の座標を示す図である。
【図15】表面検査方法の一例を示すフローチャートである。
【図16】(a)は測定点データを取得するときのウェハの方位角の一例を示す平面図、(b)は補正点データを取得する場合のウェハの方位角の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例につき図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の表面検査装置1を示す。表面検査装置1は、被検査物としての半導体ウェハ5(以下、単にウェハ5と称する。)が載置されるステージ6と、対物レンズ7と、プリズム8と、照明光学系10と、検出光学系15と、演算処理部20と、装置全体の動作を統括的に制御するコンピュータよりなる主制御系3と、その他の駆動部等とを備えている。ウェハ5は、例えば露光装置(不図示)による露光およびコータ・ディベロッパ(不図示)によるフォトレジストの現像後に、またはエッチング装置等(不図示)によりパターンが形成された後に、不図示の搬送系により、パターン(繰り返しパターン)の形成面を上にした状態でステージ6に載置される。
【0012】
以下、対物レンズ7の光軸に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図1の紙面と垂直な方向にX軸を、図1の紙面に平行な方向にY軸を取って説明する。また、XY平面内でZ軸に平行な軸を中心とした回転角を方位角と称する。
ステージ6は、不図示のベース部材の表面に沿ってX方向、Y方向に移動可能なXYステージ6Aと、XYステージ6Aの上部に固定されて、Z軸に平行な軸の回りに回転可能な回転ステージ6Bとを有する。ウェハ5は、真空吸着等により回転ステージ6Bの表面(XY平面)に保持される。主制御系3が、レーザ干渉計等の位置測定装置(不図示)の測定値に基づいて、駆動部4を介してXYステージ6Aの位置および回転ステージ6Bの回転角を制御する。
【0013】
照明光学系10は、図1の右側から左側へ向けて配置順に、光源11と、集光レンズ12と、波長選択フィルター13と、第1の偏光フィルター14とを有する。光源11には、一例として水銀ランプ等が用いられる。水銀ランプは、複数の波長λの光、例えば、e線(λ=546nm)、g線(λ=436nm)、h線(λ=405nm)、j線(λ=313nm)、さらにはλ=250nm付近の光などを発生させる。これら複数の波長の光のうち、特定の波長の光のみを選択するために、波長選択フィルター13を用いる。
【0014】
なお、光源11は、ハロゲンランプや青色励起型LED等の波長帯域の広い光源であってもよい。このように波長帯域の広い光源が使用される場合には、波長選択フィルター13は、例えば青色(B:λ=436nm)、緑色(G:λ=546nm)、赤色(R:λ=700nm)の光を透過させるようなフィルターであってもよい。したがって、波長選択フィルター13は、透過波長帯域の異なる複数のフィルターとして、光路中に挿脱することで選択的に波長や波長帯域を変更可能な構成とすることが好ましい。
【0015】
光源11から放出された光は、集光レンズ12および波長選択フィルター13を透過したのち、第1の偏光フィルター14を透過する。第1の偏光フィルター14は、透過光がX方向に偏光するように、すなわち、第1の偏光フィルター14を透過して得られる直線偏光の光の偏光方向PがX方向となるよう配置する。
第1の偏光フィルター14を透過した光は、プリズム8で下方へ反射される。プリズム8で反射される光は集光レンズ12を通過しているので、ウェハ5に向かう入射光Iは平行光となる。入射光Iは対物レンズ7を通してウェハ5に照射される。
【0016】
ウェハ5からの反射光は、対物レンズ7を通して平行な反射光Jとなり、プリズム8を透過して検出光学系15に達する。検出光学系15は、+Z方向に向けて配置順に、第2の偏光フィルター16と、リレーレンズ17と、2次元CCD等の撮像素子18とを有する。プリズム8を透過した反射光Jは、第2の偏光フィルター16を透過し、リレーレンズ17によって光路延長・拡大(ないし縮小)された後、撮像素子18に入射する。撮像素子18に入射した反射光は撮像素子18の複数の画素によりそれぞれ光電変換されて検出信号(画素信号)となり、この検出信号がコンピュータよりなる演算処理部20に出力される。演算処理部20は、その検出信号を処理してウェハ5の表面に形成されている繰り返しパターンの線幅を求め、求めた線幅の情報を主制御系3に出力する。
【0017】
第2の偏光フィルター16は、透過光がY方向に偏光するように、すなわち、第2の偏光フィルター16を透過して得られる直線偏光の光の偏光方向QがY方向となるよう配置する。このように、第1の偏光フィルター14を透過した光の偏光方向と、第2の偏光フィルター16を透過した光の偏光方向とが直交している状態は、クロスニコルと呼ばれている。対物レンズ7およびプリズム8を透過した反射光Jのうち、入射光I(直線偏光)の偏光方向と垂直な偏光成分を撮像素子18(検出光学系15)で検出することになる。なお、入射側の第1の偏光フィルター14をポラライザ(偏光子)と称し、受光側の第2の偏光フィルター16をアナライザ(検光子)と称することもある。
【0018】
なお、上述の実施形態では第1の偏光フィルター14と第2の偏光フィルター16を用い、偏光成分を含む光を通過させたが、偏光成分を含む光を通過させる方法は、これに限られない。
例えば、直線偏光器を利用し、直線偏光の光をウェハ5に照射しても構わない。直線偏光器としては、例えば、異方性結晶を利用したもの、反射を利用するものがある。このような直線偏光器としては、例えば、米国特許公開第2004−0201889号明細書に記載されているものを使用可能である。また、第1の偏光フィルター14と第2の偏光フィルター16との一方のみを、直線偏光器としても構わない。
【0019】
また、第1の偏光フィルター14の配置は、上述の実施形態に限られない。例えば、集光レンズ12よりも光源11側に設けても構わない。もちろん光源11に偏光フィルター14を設け、光源からの光を偏光成分を含む光としても構わない。
なお、偏光フィルター14,16をクロスニコル状態を維持して同じ角度だけ光軸の回りに回転する駆動部14d,16dを設けてもよい。この場合には、駆動部14d,16dを介して偏光フィルター14,16を回転することによって、入射光の偏光方向とウェハ5の方位角との関係を制御できる。
【0020】
なお、本実施形態では、第1の、第2の偏光フィルター14、16は、それぞれ透過光がX方向、Y方向に偏光するように配置されていたが、クロスニコル状態を維持していれば、方向はこれに限られない。例えば、第1の、第2の偏光フィルター14,16をそれぞれ透過する光の偏光方向が、Y方向、X方向でも構わない。
なお、クロスニコル状態とは異なる条件で測定しても構わない。例えば、偏光フィルター14を透過した光の偏光方向に対して、第2の偏光フィルター16を透過する光の偏光方向が直交とは異なる角度でも構わない。また、一方の偏光フィルターのみを介した光を撮像素子18で検出しても構わない。
【0021】
検出光学系15のリレーレンズ17の+Z方向側に、対物レンズ7を通過した反射光の光強度分布を測定するための測定面DPが設定されている。撮像素子18の受光面は、測定面DPに配置されている。
対物レンズ7の瞳面は、対物レンズ7の射出瞳である。本実施形態では、測定面DPは、対物レンズ7の瞳面またはこの面と共役な位置に設けられている。測定面DPは、対物レンズ7の瞳面またはこの面と共役な位置の近傍でも構わない。瞳面または共役な位置の近傍には、測定面DPとリレーレンズ17と接触するまでの光軸に沿った位置が含まれる。
【0022】
また、瞳面または共役な位置の近傍には、測定面DPとリレーレンズ17と接触するまでの光軸に沿った距離と、同じ距離を光軸に沿ってリレーレンズ17から離れる様に沿った位置も含む。また、本実施形態においては、対物レンズ7の瞳面は、対物レンズ7の後側焦点位置である。また、本実施形態においては、対物レンズ7の瞳面は、ウェハ5のパターンに対するフーリエ変換面になっている。したがって、ウェハ5からの反射光の角度成分が、測定面DPで位置情報に変換される。
以下では、ウェハ5からの反射光によって測定面DPに形成される光強度分布を瞳像とも呼ぶ。なお、撮像素子18に赤色、緑色、青色のそれぞれの光の検出信号を出力するカラーCCDを用いることにより、波長選択フィルター13を不要とすることも可能である。
【0023】
本実施形態においては、図1に示すように、入射光Iのうちの一部の入射光束I1は、入射角Kでウェハ5に入射し、反射光束J1として撮像素子18に達する。撮像素子18上の位置19は、入射光束I1の入射面の方位角および入射角Kによって決定される。
ここで、繰り返しパターンにおける構造性複屈折効果について図2を用いて説明する。なお、構造性複屈折の詳細は、例えばMax Born and Emil Wolf: “Principles of Optics: Sixth Edition”(光学の原理:第6版), (Pergamon Press, 1980)に記載されている。
【0024】
図1のウェハ5は、図2(a)に示すように、シリコン等の平板状部材からなる基材34と、この基材34の表面を被覆するように設けられた酸化膜等の単層または複数層の下地部32と、この下地部32の表面に形成された線状パターン(ライン・アンド・スペースパターン。以下、L&Sパターンという。)である繰り返しパターン30とを有する。繰り返しパターン30において、ライン部31Lの線幅をt1、ライン部31Lの屈折率をn1とし、スペース部31Sの線幅をt2、スペース部31Sの下地部32の屈折率をn2とする。そうすると、パターンピッチはt1+t2である。繰り返しパターン30は、互いに異なる第1の物質(ライン部31L)と第2の物質(スペース部31S内の下地部32)を有する一軸性結晶とみなすことができる。図2(b)に示すように、ライン部とスペース部との境界面に平行に振動する光に対する屈折率をno、境界面に垂直に振動する光に対する屈折率をneとして、繰り返しパターン30における複屈折を扱うことができる。
【0025】
図2(a)の繰り返しパターン30に対して光33が入射するとき、図1の構成に従い、光33の偏光方向(電場の振動方向)が図2(b)において方向R(X方向)である。また、繰り返しパターン30の方位角とは、繰り返しパターン30の周期方向(繰り返し方向)がX軸に対してなす角度であるとする。繰り返しパターン30が方位角θでX軸に対して傾いているとき、方向Rは、境界面に平行な成分Roと境界面に垂直な周期方向の成分Reに分解することができる。そして、屈折率no,neはそれぞれ、光33の入射する方向(繰り返しパターン30の周期方向と光33の入射面とがなす角度)、光33の入射角、屈折率n1,n2および線幅t1,t2の関数になる。
【0026】
また、構造性複屈折による反射光の境界面に平行な成分と、境界面に垂直な成分との位相差をδとし、ライン部31Lの高さをhとしたとき、位相差δは、高さhおよび屈折率no,neを用いて次式で与えられる。
δ=h(no−ne) …(1)
露光および現像後においては、繰り返しパターン30のライン部31Lはフォトレジストであり、スペース部31Sの下地部32は、例えば金属膜または酸化膜等である。フォトレジストの厚さは、露光波長にもよるが、最先端の露光装置に用いられるArFレーザ光源用のレジストでは、厚さが100nm程度またはそれ以下である。繰り返しパターン30の別の例としては、例えばエッチング後においては、ライン部31Lは例えば金属膜である。
【0027】
本実施形態において、図1の入射光束I1の入射面の方位角および入射角Kによって反射光束J1の撮像素子18の受光面(測定面DP)上の位置19(瞳像上の位置)が決定される。光33が繰り返しパターン30に入射する際に、繰り返しパターン30に入射する光33の偏光成分(方向R)が図2(b)に示す2つの偏光成分ReとR0に分かれる。一方の偏光成分Reは繰り返し方向に垂直な成分である。他方の偏光成分R0は繰り返し方向に垂直な成分である。2つの偏光成分R0とReは、それぞれに独立に、異なる振幅変化と位相変化とを受ける。振幅変化と位相変化が異なるのは、繰り返しパターン30の異方性に起因して複素反射率(すなわち複素数の振幅反射率)が異なるからであり、構造性複屈折(form birefringence)と呼ばれる。その結果、2つの偏光成分ReとRoの反射光は互いに振幅と位相が異なり、これらの合成による反射光は楕円偏光となる。すなわち、ウェハ5(繰り返しパターン30)の方位角、入射光の入射面の方向、入射光の偏光方向(入射面に対する偏光角度)、および入射角Kに応じて屈折率no,neが変化して、式(1)の位相差δが変化する。そのため、反射光束J1の偏光状態が変化して、第2の偏光フィルター16を透過する光の強度が変化する。したがって、測定面DP(瞳像)上の位置によって、繰り返しパターン30のライン部31Lの線幅と検出信号との間の相関が高い部分、およびその相関が低い部分が生じるため、その検出信号から線幅を計算することが可能になる。
【0028】
図3は、撮像素子18の受光面(測定面DP)に形成される瞳像36を示す。測定面DP上のPx軸は、図1の偏光フィルター14(ポラライザ)を透過した光の偏光方向に平行なX軸に対応しており、Py軸は、偏光フィルター16(アナライザ)を透過した光の偏光方向に平行なY軸に対応している。Px軸とPy軸は直交しており、Px軸とPy軸の原点(交点)Oは対物レンズ7の光軸である。以下、座標(Px,Py)を瞳座標とも称し、瞳座標で表される直交座標系を瞳座標系(Px,Py)とも称する。瞳像36の各部分36cにおいては、階調凡例38にしたがって、光強度の階調値の高い部分(その部分から得られる検出信号の大きい部分)を濃い色(黒色系)で表し、光強度の階調値の低い部分(その部分から得られる検出信号の小さい部分)を淡い色(白色系)で表している。
【0029】
本実施形態の演算処理部20は、撮像素子18の画素ごとの信号を、図4に示すように、所定の画素単位でまとめて処理する。図4において、測定面DP上の瞳座標系内の領域(瞳像)は、Px方向にM列でPy方向にN行のM×N個の区画に分割され、そのうちの一つの区画40内の画素信号を合算したものをその区画40に入射する光を光電変換して得られる検出信号とする。検出信号は階調値で表される。MおよびNは自然数で、一例として10〜100程度である。瞳像は円形であることから、一例として区画40が正方形となるように自然数M,Nは決められる。瞳座標系内(瞳像)から任意の位置にある区画を選択することが可能である。また、光源11が白色光源で、撮像素子18がカラーCCDである場合には、各区画において、赤色、緑色、青色(RGB)の3色の光の検出信号を選択的に抽出することが可能である。
【0030】
以下、本実施形態において、撮像素子18からの各区画40の光強度に対応する検出信号を用いて繰り返しパターンの線幅を検出するための原理につき説明する。この検出は演算処理部20で行われる。本実施形態では、図5(a)に示すように、入射光の偏光方向がX軸に平行な方向Rである。この場合には、例えば米国特許出願公開第2006/0192953号明細書に開示されているように、繰り返しパターン30の方位角が45度であるときに、瞳座標系内の所定の区画から得られる検出信号の繰り返しパターン30の線幅に対する感度または相関が最大となり、繰り返しパターン30の方位角が0度および90度であるときに、瞳座標系内の所定の区画から得られる検出信号の線幅に対する感度または相関がほぼ無い。そこで、本実施形態では、繰り返しパターン30の方位角が0度から90度の範囲内の任意の角度であるときに線幅との相関が高い区画の検出信号を取得し、繰り返しパターン30の方位角が0度または90度であるときに線幅との相関がほとんど無い区画の検出信号を取得する。そして、線幅との相関がほとんど無い区画から得られる検出信号のうちで、繰り返しパターン30の下地部32の状態との相関が高い区画から得られる検出信号を用いて下地部32の状態に起因する測定誤差を補正する。
【0031】
この際に、瞳座標系(Px,Py)内で、繰り返しパターン30の線幅と相関のある2つの区画を第1および第2の区画とする。第2の区画は第1の区画と異なる位置であるか、あるいは、第1の区画と同じ位置であっても異なる波長の光を受光する部分である。
この場合、あらかじめ例えばCD−SEM(走査型電子顕微鏡)で線幅が測定されている種々の線幅の繰り返しパターンが形成された線幅基準となるウェハ(以下、基準ウェハという。)を表面検査装置1のステージ6に載置する。そして、基準ウェハからの反射光による瞳像を撮像素子18で撮像することによって、上記の第1および第2の区画での受光量に対応する検出信号(階調値)から繰り返しパターンの線幅を算出するための算出式(以下、検量線という)を決定する。なお、基準ウェハの代わりに、線幅が測定されている量産ウェハを用いてもよい。また、予め、基準ウェハからの反射光による瞳像を撮像素子18で撮像することによって、上記の第1および第2の区画での受光量に対応する検出信号がある場合には、その検出信号を用い、検量線を決定し、繰り返しパターンの線幅を算出しても構わない。
なお、線幅を測定する手法は、CD−SEMに限られず、AFMなどの手法でも構わない。もちろん、CD−SEMのように測長機能に特化してないSEMでも構わない。
【0032】
その検量線を決定する際には、CD−SEMで実測した値(CD−SEM値)とその2つの区画の検出信号から計算される線幅との乖離(差)が最小になるように、瞳座標系内の2つの区画の位置の組み合わせと検量線の係数とを決定する。その2つの区画からの検出信号をS1,S2として、k1,k2,k3を係数とすると、検出信号を繰り返しパターンの線幅であるCD(critical dimension)に換算した値(以下、CD換算値という)は、次のように表される。
【0033】
CD換算値=k1×S1+k2×S2+k3 …(2)
この説明では、瞳像内の2つの区画の組合せを説明したが、検出信号を用いる区画は瞳座標系内で少なくとも1つあればよい。例えば、瞳座標系内の3つの区画からの検出信号を組み合わせる場合には、第3の区画は第1および第2の区画と異なるか、または第1もしくは第2の区画と同じで異なる波長の光を受光する部分である。さらに、瞳座標系内のn個(nは3以上の整数)の区画の組み合わせを用いてもよい。そのn個の区画の検出信号をSi(i=1〜n)として、k1,k2,…,k(n+1)を係数とすると、CD換算値は次の検量線(以下、式αと称する。)で表される。
【0034】
CD換算値=k1×S1+k2×S2+…+kn×Sn+k(n+1)
=α …(3)
式αで使用した瞳座標系内の位置に対応する検出信号S1〜Sn(階調値)は、少なからず繰り返しパターンの下地部と相関のある成分(下地成分)を含んでいる。そこで、本実施形態では下地成分を抽出するために、繰り返しパターンの方位角を0度または90度に設定した状態で、瞳座標系内の所定の区画の検出信号を用いて先ほど求めた検量線の式αを補正する。すなわち、式αから下地成分を除く。この段階の検量線を式βとする。式αとCD−SEM値との乖離値をΔとすると、式αと式βの関係は下記の式で表すことができる。
【0035】
β=α−Δ …(4)
乖離値Δは、下地成分を抽出するために所定の方位角(0度または90度)に設定された繰り返しパターンに関して、瞳座標系内の所定の位置の区画で所定の波長の光を受光して得られる検出信号X(階調値)と係数e,fを用いて下記の算出式で表すことができる。
【0036】
Δ=e×X+f …(5)
式(4)と式(5)より次の算出式(検量線)が得られる。
β=α−(e×X+f) …(6)
したがって、式(6)を用いることによって、下地成分の影響を除去して繰り返しパターンの線幅を高精度に求めることができる。なお、式(6)は線形の一次式で表したが、非線形の高次多項式でも良い。また、式(5)の乖離値Δを求める際にも、高次多項式を用いてもよく、さらに瞳座標系内の複数の区画の瞳像の検出信号の一次式または高次多項式を用いてもよい。
【0037】
次に、具体的に式(6)に対応する算出式を求める方法につき説明する。以下の説明では、簡単のために、CD換算値(式α)を計算するための瞳座標系内の区画を一つであるとする。
図4において、瞳座標系には、Py=Pxと、Py=−Pxという2つの対角線があるが、線幅以外の他の要因の影響を受けずに、線幅変化と最も高い相関のある位置は、これら2つのうちのいずれかの対角線上に存在する。この場合、繰り返しパターン30に入射する各光束の入射角、各光束の入射面の方位角、各光束の入射面に対する偏光方向(偏光角度)は、原点O(光軸)に関して対称であることは光学的に自明である。
【0038】
さらに、入射光の偏光方向はX方向であり、各光束の偏光特性は、対角線Py=PxおよびPy=−Pxに関して対称であることも明らかである。したがって、偏光特性は、光軸Oに関して対称であり、その2つの対角線に関しても対称である。対角線Py=PxおよびPy=−Pxのいずれの対角線を使用するかは、入射光の偏光方向と繰り返しパターン30の周期方向との関係によって決定される。
【0039】
図5(a)のように、繰り返しパターン30の方位角が時計回りに45度である場合には、瞳座標系内でPy=−Pxで示される対角線上に、線幅変化との相関が最も高い位置が存在する。図5(b)のように、繰り返しパターン30の方位角が反時計回りに45度である場合には、瞳座標系内でPy=Pxで示される対角線上に、線幅変化との相関が最も高い位置が存在する。ただし、瞳座標系の原点O(光軸)に近づくと、線幅以外の状態に影響を受けることが分かっており、線幅に対する相関は低下する傾向がある。
【0040】
まず、式αのCD換算値を算出するための検量線を作成する方法につき説明する。この作成にあたっては、上述のようにあらかじめ例えばCD−SEMで線幅が測定されている基準ウェハを使用する。CD−SEMは、一つの測定点の視野が狭いため、本実施形態の表面検査装置1の広い視野のなかで複数点測定し平均値を求めておくことが好ましい。こうして、CD−SEMで実測した線幅の値(CD−SEM値)と、表面検査装置1によって形成される瞳座標系内の所定位置の区画の検出信号(階調値)との相関関係を、多数の異なる線幅の繰り返しパターンに対して求める。
【0041】
一例として、繰り返しパターンの方位角は図5(a)のように設定され、CD−SEM値と、例えば図5(c)に示す瞳座標系内の位置の区画42の検出信号S(階調値)から計算される線幅(CD換算値)との乖離が最小になるように、検量線の係数k1,k2を決定する。CD−SEM値と検出信号Sとの関係が図6(a)のようになっている場合、その検量線は、直線39を表す下記の一次式である。下記の式が式(3)(式α)に対応している。
【0042】
CD換算値=k1×S+k2=α …(7)
また、図6(b)は、基準ウェハに関して、図5(c)の区画42の検出信号Sから式(7)を用いて計算された線幅(CD換算値)(縦軸)と、実測値であるCD−SEM値(横軸)との関係を表している。なお、瞳座標系内の複数の区画の検出信号を用いる場合には式(7)の代わりに式(3)を用いればよい。
【0043】
なお、構造性複屈折によるクロスニコル透過光量は、繰り返しパターンの線幅に対し、必ずしも1次式で階調変化するとは限らない。とくに、線幅変化範囲が広い場合は、直線からずれる傾向がある。その場合は、式(7)の代わりに2次式等の高次式で換算することが好ましい。
図6(b)において、直線44は、CD換算値がCD−SEM値と同じ値であることを示し、外側の点線の直線45,46は、CD−SEM値に対するCD換算値の許容範囲を示す。したがって、図6(b)は、CD換算値が規格値に入っていることを示している。
【0044】
一方、図6(c)のCD換算値(縦軸)は、検量線作成に用いた基準ウェハとは異なる量産ウェハ(ロット1〜6)に関して、瞳座標系内の区画42の検出信号Sから式(7)を用いて計算された線幅である。図6(c)のCD換算値は、いくつかのロットで直線45,46の範囲(規格)から外れている。これはCD−SEM値との乖離誤差(CD換算値からCD−SEM値を引いた後の誤差)が大きくなっているためである。この理由は、線幅以外のウェハの表面状態がウェハ面内で変化しているなかで、その変化の影響の程度が、CD−SEM値とCD換算値とで異なるからである。
【0045】
すなわち、CD−SEMは電子線を照射走査して、パターンエッジから生じる2次電子を収集し、2次電子の強弱信号から所定の閾値の部分を抽出してパターン線幅としている。CD−SEMでは、2次電子収集部の配置や、閾値の設定を最適化して、パターン断面の幅との相関のよい条件に設定しているものの、パターンの微妙な形状の影響は受ける。なお、基本的に電子線はウェハの繰り返しパターンの下地部(下層)にまでは達しないとしている。
【0046】
一方、本実施形態のような偏光状態変化量をパターン線幅に置き換える方法の場合は、構造性複屈折による位相変化は、パターン線幅だけではなく、繰り返しパターンのライン部の形状や高さ等の影響を受けるとともに、入射光としての例えば可視光は下層まで達する場合がある。また、反射光の位相変化および反射光に対する下層の影響は波長によっても異なり、さらに、入射角、入射面と繰り返しパターンとの方位角、および偏光方向によっても異なる。このように、構造性複屈折を用いる検出方式は、CD−SEMとは異なる検出原理に基づく方式であるため、線幅以外の状態の影響を受けることはやむを得ない。
【0047】
しかしながら、CD−SEMで半導体デバイスの製造プロセスの管理をしてきた製造ラインでは、CD−SEM管理にあわせた線幅測定性能が求められるため、CD−SEM値との乖離誤差は小さくする必要がある。そこで、本実施形態では、既述した、入射光の入射角、入射光の入射面と繰り返しパターンとの方位角、入射光の偏光方向、および検出される光の波長等の条件を組み合わせる。すなわち、これらの条件の中で、繰り返しパターンの線幅および/または線幅以外の要素の影響を受ける条件を適切に組み合わせることによって、線幅測定精度を向上させる。
【0048】
まず、図7を参照して繰り返しパターンの線幅の影響を受けないための条件を説明する。図7において、入射光33と繰り返しパターン30との関係は以下の方位関係Aである。
(方位関係A):入射光33は、偏光方向49が入射面48と一致しているp偏光。さらに、入射面48は、繰り返しパターン30のライン部と平行。
【0049】
したがって、入射光33の偏光方向49の電気ベクトルは、繰り返しパターン30のライン部に平行な方向の成分のみを有し、繰り返しパターン30の周期方向の成分は0である。構造性複屈折は、繰り返しパターン30の周期方向とそれに垂直な方向との屈折率の差が位相差となり発生するが、入射光の偏光方向が、繰り返しパターンのライン部に平行な方向の成分しか有しない場合は、反射光に2方向間で位相差が生じることはない。すなわち、図7のような偏光方向49と繰り返しパターン30の方向との配置では、繰り返しパターン30の線幅が変化しても、反射光に2方向間での位相差の変化は生じず、わずかに反射率変化が生じるだけである。したがって、反射光は、線幅変化よりむしろ線幅以外の状態、すなわち下地部32の膜厚変動等の情報を多く検出することになるので、その反射光(第2の偏光フィルター16の透過光量)の検出信号を下地情報として用いることが可能である。
【0050】
また、以下の方位関係B,C,Dの場合にも、反射光は、線幅変化よりむしろ線幅以外の状態、すなわち下地部32の膜厚変動等の情報を多く検出することになるので、その反射光の検出信号を下地情報として用いることが可能である。
(方位関係B):入射光の偏光方向は入射面と垂直(s偏光状態)。入射面は繰り返しパターンのライン部と平行。
【0051】
(方位関係C):入射光の偏光方向は入射面と一致(p偏光状態)。入射面は繰り返しパターンのライン部に垂直(周期方向に平行)。
(方位関係D):入射光の偏光方向は入射面と垂直(s偏光状態)。入射面は繰り返しパターンのライン部に垂直。
そこで、下記の式により、下地の影響の補正を行うことができる。
【0052】
補正CD換算値=測定点のデータ(CD情報と下地情報)−補正点のデータ(下地情報) …(8)
式(8)において、測定点のデータとは、例えば図5(c)の瞳座標系内の区画42を測定点として、この測定点の瞳像から得られる検出信号を式(7)に代入して得られるCD換算値である。また、補正点のデータとは、入射光と繰り返しパターンとの関係が上記の方位関係A〜Dにあるときに、瞳座標系内の所定の区画を補正点として、この補正点の瞳像の検出信号を式(5)に対応する換算式に代入して得られる値である。
【0053】
その補正点を用いる場合の入射光と繰り返しパターンとの関係は、入射面が繰り返しパターンのライン部に平行または垂直で、かつ入射光の偏光状態がp偏光またはs偏光であるということである。式(8)は式(6)と等価である。
具体的に式(8)を適用する場合には、図8(a)に示すように、繰り返しパターン30の方位角θを0度〜90度間の偏光状態変化量と線幅とが相関を持つ任意の方位角(例えば45度)に設定し、図8(b)に示す瞳座標系内の所定の区画である測定点50から得られる検出信号および対応するCD−SEM値から式(7)の係数k1,k2を決定する。
【0054】
次に、繰り返しパターン30を図9(a)の0度または図9(b)の90度の方位角、すなわち下地情報のみを抽出することを目的とした方位角に設定する。そして、図9(a)の方位角では、入射光の入射面48を繰り返しパターン30のライン部に平行または垂直に設定し、入射光の偏光方向49をs偏光(状態0s)またはp偏光(状態0p)に設定する。そして、状態0sでは、瞳像52が形成されている瞳座標系のPy軸に沿った区画領域54内の所定の区画を補正点として、状態0pでは、瞳座標系のPx軸に沿った区画領域56内の所定の区画を補正点として、その補正点の検出信号から下地情報を求める。
【0055】
また、図9(b)の方位角では、入射光の入射面48を繰り返しパターン30のライン部に垂直または平行に設定し、入射光の偏光方向49をs偏光(状態90s)またはp偏光(状態90p)に設定する。そして、状態90sでは、瞳座標系の区画領域54内の所定の区画を補正点として、状態90pでは、瞳座標系の区画領域56内の所定の区画を補正点として、その補正点の検出信号から下地情報を求める。ここでは分かりやすくするために、図8(b)の測定点50(CD情報および下地情報を持つ区画)を決定する際に使用する標本を基準ウェハA、図9(a)および(b)の補正点(下地情報を持つ区画)を決定する際に使用する標本を基準ウェハBとして説明する。
【0056】
図10(a)は、数枚の基準ウェハBから瞳座標系内の補正点の検出信号X(階調値)(下地情報)を求めた結果を表す。図10(a)の横軸は検出信号X、縦軸は上記の測定点での検出信号(階調値)を式(7)に代入して計算したCD換算値とCD−SEM値との乖離値Δである。その補正点は、図9(a)または(b)の区画領域54,56内の複数の区画のうちで、その検出信号Xと乖離値Δとの相関が最も高い位置の区画である。一例として、図9(a)の区画領域54内の一つの区画が補正点59であるとする。図10(a)の検出信号Xと乖離値Δとの誤差が最小になる一次式(式(5))が直線58で表されている。その直線58の傾きおよびオフセットから式(5)の係数e,fが求められる。これ以降は補正点59の検出信号X(階調値)を式(5)に代入することによって乖離値Δが計算される。
【0057】
したがって、演算処理部20は、測定点50の検出信号Sを用いて式(7)から得られるCD換算値(CD情報および下地情報)から、補正点59の検出信号Xを用いて式(5)から得られる乖離値Δ(下地情報)を差し引くことによって、次のように式(6)および式(8)に対応する補正CD換算値を求めることができる。この補正CD換算値からは下地成分に起因する誤差が除去されている。式(9)(式(6)または式(8))を補正CD換算値を求めるための検量線とも呼ぶ。
【0058】
補正CD換算値=CD換算値−乖離値Δ
=(k1×S+k2)−(e×X+f) …(9)
図10(b)は、量産ウェハ(ロット1〜6)に関して、測定点の検出信号Sおよび補正点の検出信号Xを式(9)に代入して求めた補正CD換算値とCD−SEM値との関係を示す。測定点の検出信号(CD情報と下地情報)だけで求めた結果である図6(c)と比較すると、図10(b)は明らかに改善しており、補正CD換算値が直線45,46間の規格内に入ることが分かる。
【0059】
また、図11(a)は、各ロット1〜6の量産ウェハに関して、測定点の検出信号(CD情報と下地情報)だけで求めたCD換算値とCD−SEM値との乖離値Δを示す。図11(b)は、それらの量産ウェハに関して、測定点の検出信号および補正点の検出信号から求めた補正CD換算値とCD−SEM値との乖離値を示す。図11(a)では全ロットに関する各測定点の乖離値Δの点線で示す平均値が0より大きい値を示しており、各ロット内の乖離値Δのばらつきも大きいことが分かる。一方、図11(b)は全ロットの乖離値の平均値がほぼ0の位置に重なっており、各ロット内の乖離値のばらつきも改善が見られるものが多い。したがって、式(9)によって、下地成分が補正され、より正確に繰り返しパターンの線幅を測定できることが分かる。
【0060】
次に、本実施形態において瞳座標系内の測定点および式(9)(式(6)または式(8))の係数k1,k2を決定する方法の一例につき図12(a)のフローチャートを参照して説明する。また、瞳座標系内の補正点および式(9)の係数e,fを決定し、式(9)(検量線)を決定する方法の一例につき図12(b)のフローチャートを参照して説明する。なお、測定点および補正点が1点の場合につき説明するが、測定点および補正点は複数でもよい。
【0061】
まず、図12(a)のステップ102において、瞳座標系内の測定点(CD情報および下地情報を持つ区画)を決定するための標本である1枚または複数枚の基準ウェハAを決定する。具体的に、表面検査装置1で測定対象となる繰り返しパターンの線幅の範囲を含む種々の線幅の繰り返しパターンが形成されるとともに、それら繰り返しパターンの線幅(CD−SEM値)がCD−SEMによって測定されている図13(a)の基準ウェハ5Aが基準ウェハAである。図13(a)において、基準ウェハ5Aの多数のショット領域SAi(i=1〜N:Nは例えば数10から数100の整数)のうちの複数のショット領域に、互いに異なる線幅のL&Sパターンよりなる繰り返しパターンLSiが形成されている。基準ウェハ5Aは図1のステージ6に載置される。
【0062】
次いで、ステップ104において、回転ステージ6Bを駆動して、図13(a)の基準ウェハ5Aの方位角θを0度〜90度内の任意の値に設定し、光源11からの光をX方向(方向R)に直線偏光した状態で基準ウェハ5Aに照射し、基準ウェハ5Aからの反射光の瞳像を撮像素子18で撮像する。そして、測定面DP上の瞳座標系内の複数の区画(図4の区画40)ごとに、異なる線幅の繰り返しパターンから得られる検出信号S(階調値)を用いて計算式(CD換算値=k1×S+k2)から得られるCD換算値と、対応するCD−SEM値との誤差の二乗和(乖離誤差)が最小になるように、最小二乗法で係数k1,k2を決定する。さらに、その複数の区画のうちで、その乖離誤差が最小になる区画を測定点MP1(たとえば図8(a)の測定点50)とする。
【0063】
なお、その乖離誤差が最小になる位置は、波長によっても変わるため、複数の波長の光の検出信号を用いてCD換算値および乖離誤差を計算し、乖離誤差が最小になる光の波長を測定点MP1の検出信号を得るときの光の波長とする。さらに、必要に応じて、基準ウェハ5Aの方位角θを0度〜90度の範囲内で変化させて、乖離誤差が最小となるときの方位角を決定してもよい。
【0064】
次いでステップ106において、瞳座標系内で乖離値が最小であった測定点MP1の座標を決定し、その測定点MP1で使用された光の波長、および係数k1,k2を式(9)の計算に際して使用する光の波長および係数として決定する。これらの基準ウェハ5Aの方位角、測定点MP1の座標、波長、および係数k1,k2は演算処理部20内の記憶部に記憶される。さらに、基準ウェハ5Aにおいて線幅情報が測定された繰り返しパターンごとに、CD−SEM値と係数k1,k2を用いて計算されるCD換算値との乖離値Δを計算し、計算結果を記憶部に記憶する。
【0065】
次に、図12(b)のステップ112において、瞳座標系内の補正点(下地情報を持つ区画)を決定するための標本である1枚または複数枚の基準ウェハBを決定する。基準ウェハ5Bは、例えば表面検査装置1で測定対象となる量産ウェハの下地と同じ下地の上に基準ウェハ5Aと同じ種々の線幅の繰り返しパターンが形成されたものである。なお、基準ウェハ5Bは基準ウェハ5Aと同じでもよい。図13(b)の基準ウェハ5Bが基準ウェハBであるとする。基準ウェハ5Bも図1のステージ6に載置される。
【0066】
次いで、ステップ114において、回転ステージ6Bを駆動して、図13(b)の基準ウェハ5Bの方位角θを0度または90度に設定し、光源11からの光をX方向(方向R)に直線偏光した状態で基準ウェハ5Bに照射し、基準ウェハ5Bからの反射光の瞳像を撮像素子18で撮像する。そして、図9(a)または(b)の測定面DP上の瞳座標系内の区画領域54(s偏光領域)および区画領域56(p偏光領域)内の複数の区画ごとに、繰り返しパターンの反射光から得られる検出信号X(階調値)を用いて計算式(e×X+f)から計算される乖離値と、これに対応するステップ106で記憶された乖離値Δとの誤差の二乗和が最小になるように、最小二乗法で係数e,fを決定する。さらに、その複数の区画のうちで、その誤差の二乗和が最小になる区画を補正点AP1(たとえば図9(a)の補正点59)とする。なお、ステップ114で設定する基準ウェハ5Bの方位角θは略0度または略90度でもよい。略0度または略90度とは、その係数e,fを決定できる範囲であれば、0度または90度からずれてもよいことを意味している。
【0067】
なお、その誤差の二乗和が最小になる位置は、波長によっても変わるため、複数の波長の光の検出信号を用いて乖離誤差を計算し、その誤差の二乗和が最小になる波長の光を補正点AP1の検出信号を得るときの光とする。さらに、基準ウェハ5Bの方位角を0度または90度に設定し、その誤差の二乗和がより小さくなるときの方位角を下地情報を取得する際のウェハの方位角とする。
【0068】
そして、瞳座標系内でその誤差の二乗和が最小であった補正点AP1の座標を決定し、その補正点AP1で使用された光の波長、および係数e,fを式(9)の計算に際して使用する光の波長および係数として決定する。これらの基準ウェハ5Bの方位角、補正点AP1の座標、波長、および係数e,fは演算処理部20内の記憶部に記憶される。
次のステップ116において、ステップ106で求められた係数k1,k2を用いてCD換算値を計算する式αから、ステップ114で求められた係数e,fを用いて計算されるCD換算値とCD−SEM値との乖離値Δを差し引く形の式β(式(6)または式(9))が、下地の影響を補正して繰り返しパターンの線幅を求めるための検量線として演算処理部20内の記憶部に記憶される。
【0069】
ここで、ステップ114において、瞳座標系内の補正点を決定する方法の別の例につき図14(a),(b)を参照して説明する。この例は、図4の第2象限の瞳座標に着目して、測定点と補正点の瞳座標を求めたものである。
図14(a)の横軸は、図9(a)および(b)で説明した入射光の偏光方向(p偏光、s偏光)と、基準ウェハの方位角(0度、90度)と、検出する光の波長(赤色R、緑色G、青色B)とを表している。図14(a)の横軸の(PxPy)は、瞳座標系のPx軸の値とPy軸の値とを連続表記したものである。ここでは測定面DP上の瞳座標系(Px,Py)を図14(b)に示すように設定している。
【0070】
図14(b)において、瞳座標系はPx方向に45列で、Py方向に45行の45×45個の区画に分割され、測定点64がある象限および光軸を通る区画領域60,62のみが使用される。入射光がp偏光時に使用される区画領域60の(PxPy)は(123)〜(2323)であり、入射光がs偏光時に使用される区画領域62の(PxPy)は(2301)〜(2323)であり、(2323)は光軸上にある。本実施形態では、補正点は区画領域60,62内にある。
【0071】
また、図14(a)の縦軸は、図14(b)の区画領域60,64内の各区画の検出信号Xと、図12(a)のステップ106で決定された係数k1,k2と瞳座標系内の測定点64の検出信号Sとを用いて計算されたCD換算値とCD−SEM値との乖離値Δとの相関係数を示している。この例では、入射光がp偏光、基準ウェハ5Bの方位角が90度、使用する光の波長が赤色(R)のときの領域66で、相関が高くなっている。したがって、領域66に対応する図14(b)の区画領域60内の補正点68が図12(b)のステップ114における補正点AP1として決定される。
【0072】
この例では、測定点64で使用する光の波長は緑色(G)および/または青色(B)が、線幅との相関が赤色よりも高い傾向があった。
したがって、補正点68で使用する乖離値Δとの相関が高い光の波長(ここでは赤色)は、測定点64で使用する光の波長よりも長い傾向がある。これは、測定点で使用する光は、繰り返しパターンの下地情報を含むため、下地をある程度透過する波長域、すなわち青色および緑色よりも長い赤色等の波長域の光の方が好ましいためであると考えられる。したがって、この場合には、測定点64で使用する光の波長を緑色および/又は青色として、補正点68で使用する光の波長を赤色とすることが好ましい。これによって、繰り返しパターンのピッチの測定精度を向上できる。
【0073】
次に、本実施形態の表面検査装置1において、図12(b)のステップ116で決定した検量線を用いて、量産ウェハの繰り返しパターンの線幅を測定する方法の一例につき図15のフローチャートを参照して説明する。この測定動作は主制御系3によって制御される。また、この測定方法は、たとえば露光および現像工程の後で、またはエッチング工程後に繰り返しパターンの線幅が許容範囲内に入っているかどうかを確認するために実行される。また、この測定方法は、たとえばウェハの下地部の状態がそれまでのロットとは変化した所定のロットの先頭の量産ウェハ等に対して実行される。
【0074】
まず、図15のステップ122において、被検物としての量産ウェハを表面検査装置1のステージ6に載置する。量産ウェハは図16(a)のウェハ5であるとする。ウェハ5の表面の多数のショット領域SBj(j=1〜M:Mは数10〜数100の整数)には互いに設計上では同じ線幅のL&Sパターンよりなる繰り返しパターン30が形成されている。なお、ショット領域SBjには、互いに異なる線幅の繰り返しパターンが形成されていてもよい。また、実際にはショット領域SBjには、種々の線幅のパターンが形成されており、繰り返しパターン30はそのうちの測定対象のパターンを示している。
【0075】
次のステップ124において、回転ステージ6Bを介してウェハ5の方位角θを図12(a)のステップ104で決定された基準ウェハAの方位角に設定する。次のステップ126において、光源11からの光をX方向(方向R)に直線偏光した状態でウェハ5の測定対象のショット領域SBjの複数の測定領域MAに順次照射する。次のステップ128で、ウェハ5からの反射光の瞳像を撮像素子18で撮像する。瞳像は複数の測定領域MAにつきそれぞれ撮像される。
【0076】
次のステップ130において、演算処理部20は、ステップ104で決定された瞳座標系内の測定点MP1において、各瞳像から決定された波長の光の検出信号S(階調値)を取得する。なお、この際に、検出信号Sを用いて式(9)のCD換算値(測定点データ)を算出しておいてもよい。
次のステップ132において、回転ステージ6Bを介してウェハ5の方位角を図12(b)のステップ114で決定された基準ウェハBの方位角(0度または90度)に設定する。なお、ステップ114で、方位角が略0度または略90度の角度に設定された場合には、このステップ132でも、基準ウェハBの方位角はその略0度または略90度の角度に設定される。一例として、ウェハ5の方位角は図16(b)に示すように設定される。次のステップ134において、光源11からの光をX方向(方向R)に直線偏光した状態でウェハ5の測定対象のショット領域SBjの複数の測定領域MBに順次照射する。次のステップ136で、ウェハ5からの反射光の瞳像を撮像素子18で撮像する。瞳像は複数の測定領域MBに対してそれぞれ撮像される。
【0077】
次のステップ138において、演算処理部20は、ステップ114で決定された瞳座標系内の補正点AP1において、各瞳像から決定された波長の光の検出信号X(階調値)を取得する。なお、この際に、検出信号Xを用いて式(9)の乖離値Δ(補正点データ)を算出しておいてもよい。
次のステップ140において、演算処理部20は、測定点MP1の検出信号Sおよび補正点AP1の検出信号Xを用いて、ステップ116で決定した検量線(式(9))より、ウェハ5の繰り返しパターン30の線幅である補正CD換算値を算出する。次のステップ142において、演算処理部20は計算された補正CD換算値を主制御系3に出力する。主制御系3は、補正CD換算値(線幅の測定値)が許容範囲内かどうかを判定し、許容範囲内である場合には、ステップ146に移行して、次の被検物の検査を行う。一方、ステップ142で線幅の測定値が許容範囲外である場合には、ステップ144の対策工程に移行する。例えば量産ウェハで測定された線幅がレジストパターンの線幅である場合には、量産ウェハはリワーク工程に戻される。リワーク工程とは、例えば、レジストパターンを取り除き再度、レジストを塗布し、露光する工程である。また、線幅の測定値が許容範囲外であるならば、そのウェハを廃棄する場合もある。また、許容範囲外となった原因(例えば、露光装置の露光条件)を改善し、許容範囲内になるように、デバイスの製造工程におけるウェハ処理を補正しても構わない。
【0078】
このようにして、表面検査装置1を用いて、測定対象の量産ウェハに対して測定対象の任意のショット領域の任意の測定領域内の繰り返しパターンの線幅を効率的に測定できる。
上記の測定点MP1と補正点AP1を取得する際に、ウェハ5のショット領域内の測定領域MAの個数と測定領域MBの個数とを同じ数に設定すれば測定精度は向上する。しかしながら、取得する瞳像(データ量)が多くなるため測定のスループットは低下する。そこで、補正点AP1に関しては、測定点MP1に1対1で対応した測定領域MBで瞳像を取得することなく、たとえば図16(b)のショット領域SBj内の中心の一つの測定領域MBCのみで瞳像を取得し、この瞳像の補正点AP1の検出信号から計算される乖離値Δを、図16(a)の複数の測定領域MAに関して取得されるCD換算値に対して共通に使用してもよい。
【0079】
さらに、ショット領域SBj内の一部の複数の測定領域MBに関して取得される乖離値Δの平均値を共通に使用するなどして、取得する瞳像の数を減少することで、測定のスループットを向上できる。
上述のように本実施形態の表面検査装置1は、繰り返しパターンLSBが形成されたウェハ5(基板)の表面に直線偏光の光を照射する照明光学系10と、ウェハ5の表面からの反射光を受光する対物レンズ7と、対物レンズ7を介した反射光の光強度分布を測定する測定面DPにおいて、その直線偏光の方向と垂直な偏光成分(略垂直でもよい)の光強度情報を検出する検出光学系15と、検出光学系15内の撮像素子18で検出された光強度情報の検出信号から繰り返しパターンLSBの線幅の情報を求める演算処理部20とを備えている。そして、演算処理部20は、測定面DPにおいて、その線幅との相関がある測定点MP1での光強度に対応する検出信号Sを求め、測定面DPにおいて、その線幅との相関が測定点MP1よりも低い補正点AP1での光強度に対応する検出信号Xを求め、検出信号S,Xを用いて繰り返しパターンLSBの線幅の情報(式(9)の補正CD換算値)を求めている(ステップ130,138,140)。
【0080】
以上、本実施形態によれば、繰り返しパターンの線幅との相関が高い測定点の光強度と、その線幅との相関が測定点よりも低い補正点の光強度とを用いることによって、繰り返しパターンの線幅以外の要因(例えば下地の状態)に起因する誤差を低減できるため、線幅情報の測定精度を向上できる。したがって、線幅情報の測定の不良を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、ステップ130において、瞳座標系内の測定点の瞳像から検出信号S(CD情報及び下地情報)を求め、ステップ138において、補正点の瞳像から検出信号X(下地情報)を求めている。そして、ステップ140で、その検出信号Sから算出されるCD換算値からその検出信号Xから算出される乖離値Δを差し引くことによって、下地情報が除かれたCD情報を求めている。
【0081】
この結果、CD−SEM等の別の線幅測定装置(表面検査装置)で測定した繰り返しパターンの線幅値との乖離誤差を大幅に低減することができる。
また、本実施形態によれば、基準ウェハの面内の位置によって、換算式から計算した線幅値とあらかじめCD−SEM等によって測定してある線幅値との乖離が異なることに基づく誤差であるウェハ面内誤差を低減できる。
【0082】
さらに、基準ウェハで決定した換算式を使って、例えば半導体デバイスの製造工程で使用される量産ウェハ等の別のウェハを測定したときに換算される線幅値と、CD−SEM等で実測した線幅値との間に生じる乖離に基づく誤差であるウェハ間誤差を低減できる。
また、CD−SEMでは、測定精度を上げようと電子線の加速電圧を上げるほど、被検物としてのウェハのダメージは大きくなる。本実施形態の表面検査装置1では、電子線を用いず、例えば可視光(紫外光または赤外光でもよい)を使っているので、ウェハへのダメージが少ない。ウェハのダメージとは、例えば、ウェハ上のパターンが破壊され、所定の性能を有しないことをいう。
【0083】
また、表面検査装置1の測定視野は、CD−SEMに比べて数万倍大きく設定することが可能であり、かつ一つの測定領域をほぼ1秒以内で測定可能である。したがって、ウェハの広範囲を高速に測定することができる。
また、上記の実施形態では、被検ウェハからの反射光の光強度分布を測定する測定面DPは、対物レンズ7の瞳面またはこの共役面に設けられている。しかしながら、測定面DPは、対物レンズ7の瞳面の近傍、またはその瞳面と共役な面の近傍に配置してもよい。その近傍の面とは、ウェハに入射する光の入射角Kが異なるときに、ウェハからの反射光が通過する位置が互いにほぼ異なる位置になるような面である。
【0084】
また、CD情報および下地情報を求める測定点は複数点でもよく、下地情報を求める補正点も複数点でもよい。さらに、式(9)の代わりに高次多項式または指数関数等を用いてもよい。
また、上記の実施形態では、ステップ132,134,136で検出した瞳座標系内の補正点の検出信号から繰り返しパターンの下地情報を求めている。しかしながら、たとえばあらかじめウェハの種々の下地の状態(半導体デバイスの製造プロセスに応じた状態)と、式(5)の乖離値Δとの関係を求めて記憶しておいてもよい。この場合、ウェハの繰り返しパターンの線幅を測定する際に、ステップ132,134,136の代わりに、記憶してある種々の乖離値からその下地の状態に応じた乖離値Δを読み出してきてもよい。これによって、ウェハの方位角を変えて瞳座標系内の所定の補正点の検出信号を取得する工程を省略できる。
【0085】
また、本実施形態では、ウェハ上の繰り返しパターンを測定したが、ウェハとは異なる物体でも構わない。例えば、プリント基板でも構わない。さらに、本実施形態では繰り返しパターンを測定対象としたが、測定対象はパターンが繰り返していない孤立線でも構わない。また、繰り返しパターンの間隔は単一でなく、繰り返しのそれぞれで異なっていても構わない。また、パターンの形状は、ライン形状以外の例えばL字形状、またコンタクトホールの形状でも構わない。
【0086】
また、本実施形態では、直線偏光の光をウェハ5に照射したが、偏光成分を含む光であれば直線偏光に限られず、楕円偏光、円偏光でも構わない。また、ウェハ5に照射される光は、特定の偏光だけを含む完全偏光ではなく、特定以外の偏光を含む非偏光との混合状態である部分偏光でも構わない。
また、表面検査装置1によれば、偏光成分を含む光が、ウェハ上のパターンにより変化する場合に、下地状態に起因する誤差を低減することが可能である。この場合には、偏光成分を含む光を波長毎に分けて照射し、波長毎のパターンによる偏光の変化を検出しても構わない。また、複数の波長を含む光を、ウェハ上に照射し、パターンによる偏光の変化を波長毎に検出しても構わない。この場合においても、下地の状態に起因する誤差を低減することが可能である。これらの方法としては、スキャトロメトリ法、もしくはスキャトロメータがある。これらの方法を記載した文献としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0074666号明細書、米国特許出願公開第2008/259343号、米国特許出願公開第2006/0274310号明細書が挙げられる。
【0087】
また、表面検査装置1としては、例えば、ウェハ5に照射した光の回折された光を検出する方式の検査装置も使用できる。なお、表面検査装置1としては、例えば、米国特許出願公開第2006/0192953号明細書に記載されているように、直線偏光の光をウェハに照射して、ウェハから正反射方向に発生した光を抽出し、ウェハの繰り返しパターンの欠陥を検出する方式の検査装置も使用できる。上述の検査装置においても、下地の状態に起因する誤差を低減することができる。
【0088】
このように、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した検査装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0089】
1…表面検査装置、5…ウェハ、5A,5B…基準ウェハ、7…対物レンズ、8…プリズム、10…照明光学系、14…第1の偏光フィルター、15…検出光学系、16…第2の偏光フィルター、18…撮像素子、20…演算処理部、50…測定点、59…補正点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面を被覆し、かつパターンが形成された被覆材とを含む基板の表面に偏光成分を含む光を照射し、前記光が照射された前記基板の表面からの反射光の光強度情報を、受光光学系の測定面で検出することと、
前記測定面において、第1位置での第1光強度を求めることと、
前記被覆材の情報と前記第1光強度とを用いて、前記パターンの線幅の情報を求めることと、
を含む検査方法。
【請求項2】
前記反射光の光強度情報を前記受光光学系の前記測定面で検出することは、
前記基板の表面に直線偏光の光を照射し、前記光が照射された前記基板の表面からの反射光のうち、前記直線偏光の方向と略垂直な偏光成分の光強度情報を、前記受光光学系の前記測定面で検出することを含む請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記測定面において、第2位置での第2光強度を求めることを、さらに含み、
前記第2光強度を用いて、前記被覆材の情報を求める請求項2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記被覆材の状態の変化に基づいて、前記第2位置での測定を行う請求項3に記載の検査方法。
【請求項5】
前記測定面において、前記第2位置での光強度と前記被覆材の状態との相関が、前記第1位置での光強度と前記線幅との相関よりも高い請求項3または4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記測定面において、前記第1位置は、前記直線偏光の光の偏光方向に対して0度〜90度の範囲内の任意の角度で交差する方向に対応する位置にあり、前記第2位置は、前記直線偏光の光の偏光方向に対して0度または90度の近傍に対応する位置にある請求項3から5のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項7】
前記基板の表面に照射される光は、青色光、緑色光および赤色光を含み、
前記第1位置で求められる前記第1光強度は、青色光および緑色光の少なくとも一方の光強度であり、
前記第2位置で求められる前記第2光強度は、赤色光の光強度である請求項3から6のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項8】
前記測定面において、前記第1位置および前記第2位置の少なくとも一方は複数箇所に設定される請求項3から7のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項9】
前記測定面は、設定された複数の位置を含み、
前記複数の位置の中から、
前記第1位置を特定するために、
既知の線幅を持つパターンが形成された第1基準基板を用いて、前記複数の位置での、前記偏光成分の光強度と前記既知の線幅との相関情報をそれぞれ求めることと、
前記複数の位置において前記光強度から求められる線幅と前記既知の線幅との乖離情報を求めることと、
前記複数の位置の中から前記第2位置を特定するために、
既知の線幅を持つパターンが形成された第2基準基板を用いて、前記複数の位置での、前記偏光成分の光強度と前記乖離情報との相関情報をそれぞれ求めることと、
前記複数の位置から、前記偏光成分の光強度と前記乖離情報との相関が高い位置を特定することと、を含む請求項3から8のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項10】
前記受光光学系の前記測定面は、前記受光光学系の瞳面もしくはこの共役面、またはこれらの面の近傍の面である請求項1から9のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項11】
パターンが形成された基板の表面に偏光成分を含む光を照射する照射部と、
前記光が照射された前記基板の表面からの反射光を受光する受光光学系と、
前記受光光学系の測定面において、前記反射光の光強度情報を検出する検出部と、
前記検出部で検出された光強度情報から前記パターンの線幅の情報を求める演算部とを備え、
前記基板は、基材と、前記基材の表面を被覆し、かつ前記パターンが形成された被覆材とを含み、
前記演算部は、前記測定面において、第1位置での第1光強度を求め、前記被覆材の情報と前記第1光強度とを用いて、前記パターンの線幅の情報を求める検査装置。
【請求項12】
前記照射部は、前記基板の表面に直線偏光の光を照射し、前記検出部は、前記直線偏光の方向と略垂直な偏光成分の光強度情報を検出する請求項11に記載の検査装置。
【請求項13】
前記基板に照射される前記直線偏光の光の偏光方向と前記基板の前記パターンの周期方向との相対角度を制御する相対回転機構を備える請求項12に記載の検査装置。
【請求項14】
前記演算部は、前記測定面において、第2位置での第2光強度を求め、前記第2光強度を用いて、前記被覆材の情報を求める請求項11から13のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項15】
前記検出部は、前記測定面に受光面が配置された撮像素子を備える請求項11から14のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項16】
前記照射部は、前記基板の表面に青色光、緑色光および赤色光を含む光を照射し、
前記第1位置で求められる前記第1光強度は、青色光および緑色光の少なくとも一方の光強度であり、
前記第2位置で求められる前記第2光強度は、赤色光の光強度である請求項14に記載の検査装置。
【請求項17】
前記受光光学系の前記測定面は、前記受光光学系の瞳面もしくはこの共役面、またはこれらの面の近傍の面である請求項11から16のいずれか一項に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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