説明

検査方法及び検査装置

【課題】色素増感太陽電池の製造途中において、色素増感太陽電池の品質を検査することができる検査方法及び検査装置を提供すること。
【解決手段】検査対象物11(電極工程後の色素増感太陽電池)は、透明基板21と、透明基板21上に形成された(1又は複数の)セル構造体10とを含む。セル構造体10は、透明電極層1と、多孔質半導体層2と、多孔質半導体層2と、対電極層4とを含む。作業者は、インピーダンス測定器30に接続されたプローブ31を透明電極層1に接触させて交流インピーダンス測定によりセル構造体10のインピーダンスを測定する。作業者は、測定されたインピーダンスと、基準インピーダンスとの差分が所定の閾値以下である場合は、検査対象物11は、良品であると判定する。一方、差分が閾値を超える場合、検査対象物11は、不良品であると判定し、不良の原因を分析し、前工程(電極工程)にフィードバックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池の品質を検査する検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感太陽電池は、現在主流のシリコン系太陽電池に比べて、安価なコストで製造できるというメリットを有している。このメッリトから、近年において、色素増感太陽電池は、シリコン系太陽電池に替わる次世代の太陽電池として注目されており、種々の形態の色素増感太陽電池が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
色素増感太陽電池としては、モノシリック型(特許文献1の図1、特許文献2の図1参照)、W型(特許文献1の図7参照)、Z型(特許文献1の図8参照)、対向型等のタイプの色素増感太陽電池が知られている。
【0004】
色素増感太陽電池の品質を検査する方法としては、一般的に、色素増感太陽電池(完成品)に太陽光や、疑似太陽光を照射し、光電変換特性を測定することで、品質を検査する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−236960号公報
【特許文献2】特開2009−110796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光電変換特性の測定による品質の検査方法の場合、完成品の色素増感太陽電池の品質は検査することはできるが、色素増感太陽電池の製造途中において、色素増感太陽電池の品質を検査することができない。
【0007】
従って、上記検査方法の場合、不良品が市場へ出回ることを防止することはできるが、プロセス変動による不良品の発生を抑制することができない。結果として、安価なコストで製造可能であるという色素増感太陽電池のメリットが生かしきれていないという問題がある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、色素増感太陽電池の製造途中において、色素増感太陽電池の品質を検査することができる検査方法及び検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る検査方法は、基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層上に形成された多孔質絶縁体層と、前記多孔質絶縁体層上に形成された対電極層とを有する1または、互いに直列接続された複数のセル構造体を有する検査対象物の、前記セル構造体のインピーダンスが測定される。
測定された前記セル構造体の前記インピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否が判定される。
【0010】
この検査方法によれば、モノリシック型の色素増感太陽電池の製造途中において、色素増感太陽電池(検査対象物)の品質を検査することができる。これにより、製造工程における前工程への迅速なフィードバックが可能となり、プロセス変動による不良品の発生を抑制することができる。これにより、歩留まりを向上させることができ、コスト削減が実現される。
【0011】
上記検査方法において、前記検査対象物の良否を判定するステップは、良否判断の基準となる前記セル構造体のインピーダンスである基準インピーダンスと、測定された前記セル構造体のインピーダンスとを比較し、前記基準インピーダンスと、前記インピーダンスとの差分が所定の閾値以下である場合に、前記検査対象物が良品であると判定してもよい。
【0012】
モノリシック型の色素増感太陽電電池の場合、セル構造体は、多孔質半導体層及び多孔質絶縁体層からなる誘電体層を、透明電極層と対電極層とで挟み込んだコンデンサとみなすことができる。基準のセル構造体の静電容量と、セル構造体の静電容量との間に差がある場合、基準インピーダンスと、インピーダンスとの間に差が発生する。従って、基準インピーダンスと、インピーダンスとの差が所定の閾値以下である場合には、検査対象物が良品であると判定することができる。
【0013】
上記検査方法において、前記インピーダンスを測定するステップは、2以上の異なる周波数で、前記セル構造体の2以上のインピーダンスを測定してもよい。
この場合、前記検査対象物の良否を判定するステップは、測定された2以上の前記インピーダンスの差分が所定の閾値以上である場合に、前記検査対象物が良品であると判定してもよい。
【0014】
セル構造体の透明電極層と対電極層との間で短絡が生じていないセル構造体の場合、周波数が大きくなるに従って、インピーダンスが小さくなる。一方、セル構造体の透明電極層と対電極層との間で短絡が生じた場合、所定の周波数(1MHz程度)よりも低い周波数範囲では、インピーダンスが略一定となるという特徴がある。
【0015】
上記検査方法では、この特徴が利用される。すなわち、2以上の異なる周波数で、セル構造体のインピーダンスが測定され、測定された2以上のインピーダンスの差分が所定の閾値以上である場合には、透明電極層と対電極層との間に短絡が生じていない(つまり、良品である)と判定することができる。
【0016】
上記検査方法において、前記インピーダンスを測定するステップは、10Hz以上の周波数で、前記セル構造体のインピーダンスを測定してもよい。
【0017】
10Hz以下の周波数で、セル構造体のインピーダンスを測定した場合、セル構造体のインピーダンスは、多孔質半導体層及び多孔質絶縁体層の粒子界面に依存したインピーダンスとなる。一方、10Hz以上の周波数で、セル構造体のインピーダンスを測定した場合、セル構造体のインピーダンスは、多孔質半導体及び多孔質絶縁体層の粒子(バルク)に依存したインピーダンスとなる。
【0018】
従って、上記のように、10Hz以上の周波数で、セル構造体のインピーダンスを測定することで、多孔質半導体及び多孔質絶縁体層の粒子(バルク)に依存したインピーダンスを測定することができる。
【0019】
上記検査方法において、前記インピーダンスを測定するステップは、1kHz以上の周波数で、前記セル構造体のインピーダンスを測定してもよい。
【0020】
1kHzよりも低い周波数でセル構造体のインピーダンスを測定した場合、インピーダンスが、高インピーダンスであるという特性、時間経過による変動が大きいという特性、外乱光の影響を受け易いという特性を有している。この場合、検査対象物の検査が困難になってしまう。
【0021】
一方、1kHz以上の周波数で、セル構造体のインピーダンスを測定した場合、インピーダンスは、比較的小さいという特性、時間経過による変動がほとんどないという特性、外乱光による影響がほとんどないという特性を有している。従って、1kHz以上の周波数でセル構造体のインピーダンスを測定することで、安定した品質検査が可能となる。
【0022】
上記検査方法において、前記インピーダンスを測定するステップは、1kHz以上、1MHz以下の周波数で、前記セル構造体のインピーダンスを測定してもよい。
【0023】
上記したように、セル構造体の透明電極層と対電極層との間で短絡が生じていないセル構造体の場合、周波数が大きくなるに従って、インピーダンスは小さくなる。一方、セル構造体の透明電極層と対電極層との間で短絡が生じた場合、周波数が1MHzよりも低い周波数範囲では、インピーダンスが略一定となる。
【0024】
1MHz以上の周波数でインピーダンスを測定した場合、短絡が生じていないセル構造体と短絡が生じたセル構造体とでインピーダンスに差があまりない。一方、1MHz以下の周波数でインピーダンスを測定した場合、短絡が生じたセル構造体のインピーダンスは一定であるので、短絡が生じていないセル構造体と短絡が生じたセル構造体との間でインピーダンスに差が生じる。従って、1MHz以下の周波数で、セル構造体のインピーダンスを測定することで、セル構造体の短絡を検査することができる。
【0025】
上記検査方法において、前記インピーダンスを測定するステップは、1kHz以上、100kHz以下の周波数で、前記セル構造体のインピーダンスを測定してもよい。
【0026】
セル構造体のインピーダンスを100kHz以下の周波数で測定した場合、短絡が生じていないセル構造体のインピーダンスと、短絡が生じたセル構造体のインピーダンスの差が大きい。従って、100kHz以下の周波数で、セル構造体のインピーダンスを測定した場合、より大きな短絡抵抗を検出することができる。
【0027】
本発明の他の形態に係る検査方法は、基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層とを有する検査対象物の、前記多孔質半導体層上に、導体を接触させることを含む。
前記透明電極層と前記導体との間のインピーダンスが測定される。
測定された前記透明電極層と前記導体との間の前記インピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否が判定される。
【0028】
この検査方法によれば、W型、Z型、対向型等の色素増感太陽電池の製造途中において、検査対象物のセル構造体のインピーダンスを測定し、このインピーダンスに基づいて、検査対象物の良否を判定することができる。
【0029】
本発明の一形態に係る検査装置は、測定部と、制御部とを具備する。
前記測定部は、基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層上に形成された多孔質絶縁体層と、前記多孔質絶縁体層上に形成された対電極層とを有する1または、互いに直列接続された複数のセル構造体を有する検査対象物の、前記セル構造体のインピーダンスを測定する。
前記制御部は、測定された前記セル構造体の前記インピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否を判定する。
【0030】
本発明の他の形態に係る検査装置は、導体と、測定部と、制御部とを具備する。
前記導体は、基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層とを有する検査対象物の、前記多孔質半導体層上に接触される。
前記測定部は、前記導体が前記多孔質半導体層上に接触された状態で、前記透明電極層と前記導体との間のインピーダンスを測定する。
前記制御部は、測定された前記透明電極層と前記導体との間のインピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否を判定する。
【0031】
本発明のさらに別の形態に係る検査方法は、検査装置の測定部が、基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層上に形成された多孔質絶縁体層と、前記多孔質絶縁体層上に形成された対電極層とを有する1または、互いに直列接続された複数のセル構造体を有する検査対象物の、前記セル構造体のインピーダンスを測定することを含む。
前記検査装置の制御部が、測定された前記セル構造体の前記インピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否を判定する。
【0032】
本発明のさらに別の形態に係る検査方法は、検査装置の測定部が、基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層とを有する検査対象物の、前記多孔質半導体層上に導体が接触された状態で、前記透明電極層と前記導体との間のインピーダンスを測定することを含む。
前記検査装置の制御部が、測定された前記透明電極層と前記導体との間の前記インピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否を判定する。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、色素増感太陽電池の製造途中において、色素増感太陽電池の品質を検査することができる検査方法及び検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る検査方法により品質が検査される色素増感太陽電池を示す模式的な平面図である。
【図2】色素増感太陽電池の側方断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る検査方法を工程として含む、色素太陽電池の製造工程を示すフロー図である。
【図4】検査対象物を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る検査方法を説明するための模式図である。
【図6】検査対象物のセル構造体を、平板コンデンサとみなした場合の模式図である。
【図7】試験用として作成された検査対象物のセル構造体のインピーダンスZを示す図である。
【図8】検査対象物のセル構造体の等価回路を示す図である。
【図9】検査対象物のセル構造体をインピーダンス測定器により交流インピーダンス測定した結果を、ナイキスト線図で表した図である。
【図10】低周波数で検査対象物のセル構造体のインピーダンスZを測定した場合のインピーダンスZの特性と、高周波数で検査対象物のセル構造体のインピーダンスZを測定した場合のインピーダンスZの特性との違いを説明するための図である。
【図11】透明電極層と対電極層とが電気的に短絡した場合の、セル構造体の等価回路を示す図である。
【図12】電極層間で短絡が生じた試験用の検査対象物のインピーダンスZを交流インピーダンス測定によって測定した場合のボード線図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る検査装置を示す模式図である。
【図14】Z型の色素増感太陽電池の側方断面図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係る検査方法を工程として含む、色素増感太陽電池の製造工程を示すフロー図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係る検査方法を説明するための模式図である。
【図17】他の実施形態に係る検査装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
[色素増感太陽電池100の構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る検査方法により品質が検査される色素増感太陽電池100を示す模式的な平面図である。図2は、色素増感太陽電池100の側方断面図である。
【0036】
これらの図に示すように、第1実施形態の検査方法により品質が検査される色素増感太陽電池100は、モノリシック型の色素増感太陽電池100である。
【0037】
色素増感太陽電池100は、透明基板21(基材)と、透明基板21上に形成された複数のセル構造体10と、セル構造体10を封止する封止層22と、封止層22上に形成された外装材23とを含む。
【0038】
透明基板21は、例えば、ガラス基板や、アクリル系樹脂等の透明な樹脂基板により構成される。封止層22の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂や、ガラスフリット等が用いられる。外装材23の材料としては、例えば、アルミニウムやアルミナ等のガスバリア性の高い材料が積層されて構成されたガスバリア性フィルム等が用いられる。
【0039】
セル構造体10は、一方向(Y軸方向)に長い矩形の直方体形状を有している。セル構造体10は、X軸方向で互いに電気的に直列接続されている。図1に示す例では、セル構造体10が8個直列接続された例が示されている。なお、セル構造体10の個数は、特に限定されない。セル構造体10は、複数個に限られず、1つであっても構わない。
【0040】
セル構造体10は、透明基板21上に形成された透明電極層1と、透明電極層1上に形成された多孔質半導体層2と、多孔質半導体層2上に形成された多孔質絶縁体層3と、多孔質絶縁体層3上に形成された対電極層4とを有する。
【0041】
透明電極層1の材料しては、例えば、フッ素ドープSnO(FTO)や、イリジウム−スズ複合酸化物(ITO)等が用いられる。
【0042】
多孔質半導体層2は、増感色素を担持する微小な粒子(例えば、数10nm〜数100nm)を有する多孔質構造とされている。多孔質半導体層2の材料としては、例えば、酸化チタン等の金属酸化物が挙げられる。多孔質半導体層2の微小粒子に担持される増感色素としては、例えば、ルテリウム錯体、鉄錯体等の金属錯体や、エオシオン、ローダミンなどの有色色素が挙げられる。
【0043】
多孔質絶縁体層3は、多孔質半導体層2と同様に、微小な粒子(例えば、数10nm〜数100nm)を有する多孔質構造とされる。多孔質絶縁層としては、例えば、ジルコニア、アルミナ等の絶縁性の材料が用いられる。
【0044】
多孔質半導体層2と、多孔質絶縁体層3とは、微小粒子間に、電解液を含んでいる。電解液としては、メトキシアセトニトリル、アソトニトリル、エトレンカーボネート等が挙げられる。電解液中には、酸化還元対が含まれる。酸化還元対としては、例えば、ヨウ素/ヨウ化物イオン、臭素/臭化物イオン等が用いられる。
【0045】
対電極層4の材料としては、フッ素ドープSnO(FTO)や、イリジウム−スズ複合酸化物(ITO)、金、白金、カーボン等が用いられる。
【0046】
対電極層4は、隣り合う位置に配置されたセル構造体10の透明電極層1に接続される。これにより、複数のセル構造体10が互いに直列接続される。
【0047】
なお、色素増感太陽電池100を構成する各部材の材料については、上記した例は、一例に過ぎず、適宜変更することができる。
【0048】
[色素増感太陽電池100の動作原理]
次に、色素増感太陽電池100の動作原理について説明する。
【0049】
透明基板21側から透明基板21を透過して入射した光は、多孔質半導体層2の微小粒子に担持された増感色素を励起して電子を発生させる。この電子は、増感色素から多孔質半導体層2の微小粒子に移動し、微粒子へ移動した電子は、透明電極層1へ移動する。一方、電子を失った増感色素は、多孔質半導体層2及び多孔質絶縁体層3内に含まれる電解液の酸化還元対から電子を受け取る。電子を失った酸化還元対は、対電極層4側に移動し、対電極層4の表面で電子を受け取る。この一連の反応により、透明電極層1と、対電極層4との間に起電力が発生する。
【0050】
色素増感太陽電池100が複数のセル構造体10を含む場合、一端側に配置されたセル構造体10の透明電極層1と、他端部側に配置されたセル構造体10の対電極層4との間に、複数のセル構造体10の合計の起電力が発生する。
【0051】
[色素増感太陽電池100の製造方法及び検査方法]
次に、色素増感太陽電池100の製造方法及び検査方法について説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る検査方法を工程として含む、色素太陽電池の製造工程を示すフロー図である。
【0052】
「電極工程」
電極工程では、透明電極層1が透明基板21上の全面に形成され、その後、透明電極層1がエッチングによりストライプ状にパターニングされる。次に、透明電極層1上に、多孔質半導体層2がスクリーン印刷により印刷され、仮乾燥後に、多孔質半導体層2が焼結される。次に、多孔質半導体層2上に多孔質絶縁体層3がスクリーン印刷により印刷され、仮乾燥後に焼結される。次に、多孔質絶縁体層3上に対電極層4がスクリーン印刷により印刷され、仮乾燥後に焼成される。
【0053】
これにより、電極工程では、透明基板21上に1又は複数のセル構造体10が形成される。なお、第1実施形態の説明において、電極工程後の色素増感太陽電池100、すなわち、透明基板21上に、1又は複数のセル構造体10が形成された状態での色素増感太陽電池100を検査対象物11(図4参照)と呼ぶ。
【0054】
「電極検査工程」
図4は、検査対象物11を示す側面図である。図5は、本発明の第1実施形態に係る検査方法を説明するための模式図である。
【0055】
図4に示すように、検査対象物11(電極工程後の色素増感太陽電池100)は、透明基板21と、透明基板21上に形成された(1又は複数の)セル構造体10とを含む。セル構造体10は、透明電極層1と、多孔質半導体層2(増感色素なし、電解液なし)と、多孔質絶縁体層3(電解液なし)と、対電極層4とを含む。
【0056】
図5に示すように、電極検査工程では、インピーダンス測定器30による交流インピーダンス測定により、セル構造体10のインピーダンスZが測定される。なお、図4、図5では、検査対象物11のセル構造体10が1つである場合が示されている。
【0057】
電極検査工程では、作業者により検査対象物11が一定間隔毎に抜き取り検査され、あるいは全数検査される。
【0058】
インピーダンス測定器30は、4つ端子(CE、RE1、WE、RE2)を有している。4つの端子には、プローブ31が接続されている。CE、RE1端子に接続されたプローブ31は、一方の透明電極層1に接触され、WE端子、RE2端子に接続されたプローブ31は、他方の透明電極層1に接触される。そして、4端子法により、セル構造体10のインピーダンスZが測定される。
【0059】
インピーダンス測定器30としては、周波数を自在に掃引可能なインピーダンス測定装置や、幾つかの固定された測定周波数でインピーダンスZを測定可能なLCRメータ等を用いることができる。LCRメータは、安価であるので、LCRメータが用いられた場合、コスト削減が実現される。
【0060】
図5では、セル構造体10が1つの場合が示されているが、検査対象物11が複数のセル構造体10を有する場合には、インピーダンス測定器30のCE、RE1端子が、一端部側に配置されたセル構造体10の透明電極層1に接触される。そして、インピーダンス測定器30のWE端子、RE2端子が、他端部側に配置されたセル構造体10の対電極層4と接続された透明電極層1に接触される。そして、4端子法により、直列接続された複数のセル構造体10全体のインピーダンスZが測定される。
【0061】
作業者は、測定されたインピーダンスZに基づいて、検査対象物11の良否を判定する。この場合、作業者は、良否判断の基準となるセル構造体10(良品のセル構造体10)のインピーダンスである基準インピーダンスZ’(図7参照)と、検査対象としてのセル構造体10のインピーダンスZとを比較することで、検査対象物11の良否を判定する。
【0062】
図6は、検査対象物11のセル構造体10を、平板コンデンサとみなした場合の模式図である。
図6に示すように、セル構造体10は、多孔質半導体層2及び多孔質絶縁体層3で構成された誘電体を透明電極層1と、対電極層4とで挟み込んだ平板コンデンサとみなすことができる。
【0063】
平板コンデンサの静電容量Cは、以下の式(1)により表される。
C=ε×ε×S/d・・・(1)
比誘電率ε、真空の誘電率ε、面積S、厚さd
【0064】
また、平板コンデンサのインピーダンスZは、以下の式(2)により表される。
Z=1/(j×ω×C)・・・(2)
【0065】
電極検査工程では、上記式(1)、(2)の関係が利用されて、検査対象物11のセル構造体10の品質の良否が判定される。
【0066】
すなわち、基準の(良品の)セル構造体10のインピーダンスである基準インピーダンスZ’と、検査対象としてのセル構造体10のインピーダンスZに差が生じている場合、基準のセル構造体10と検査対象としてのセル構造体10との間で静電容量Cに差が生じている。基準のセル構造体10と検査対象としてのセル構造体10との間で静電容量Cに差が生じている場合、基準のセル構造体10と検査対象としてのセル構造体10との間で、比誘電率ε、面積S、厚さdの何れかに差が生じている。
【0067】
従って、基準のセル構造体10のインピーダンスである基準インピーダンスZ’と、検査対象としてのセル構造体10のインピーダンスZとに差が生じている場合には、基準のセル構造体10と検査対象としてのセル構造体10との間で、比誘電率ε、面積S、厚さdの何れかに差が生じていることになる。
【0068】
これにより、作業者は、基準のセル構造体10の基準インピーダンスZ’と、検査対象としてのセル構造体10のインピーダンスZとを比較することで、比誘電率ε、面積S、厚さdのうち、何れかの変化を原因としたセル構造体10の不良を検知することができる。
【0069】
ここで、電極工程において、多孔質半導体層2、多孔質絶縁体層3、対電極層4の印刷時の位置ずれ、対電極層4の印刷のかすれ、多孔質半導体層2、多孔質絶縁体層3、対電極層4の剥離等が生じた場合、面積Sが基準のセル構造体10に対して変化する。
【0070】
また、電極工程において、各層2、3、4の印刷時のペースト粘度の変化、各層の印刷時のスキージ圧力の変化、印刷版の磨耗、各層の仮乾燥不足、各層の焼成時の焼成温度の変化等が生じた場合、厚さdが基準のセル構造体10に対して変化する。
【0071】
また、電極工程において、多孔質半導体層2に使用される材料(酸化チタン等)の分子構造が変化した場合(アナターゼ、ルチル)、比誘電率εが基準のセル構造体10に対して変化する。
【0072】
本発明者らは、基準とは異なる厚さの多孔質半導体層2、多孔質絶縁体層3を有する検査対象物11、及び基準の条件とは異なる焼成温度で形成された多孔質半導体層2、多孔質絶縁体層3を有する検査対象物11を試験用として作成した。そして、本発明者らは、試験用として作成された検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZをインピーダンス測定器30により1MHzの周波数で測定した。なお、試験用として作成された検査対象物11の多孔質半導体層2は、透明電極層1上に形成されたT層(Transparent層)と、T層上に形成されたD層(Diffusion層)とを有する2層構造とされた。
【0073】
図7は、試験用として作成された検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを示す図である。
【0074】
図7に示すように、基準のセル構造体10よりも厚さが薄い多孔質半導体層2(T層、D層)、多孔質絶縁体層3を有するセル構造体10の場合、インピーダンスZが基準インピーダンスZ’(約1600Ω)よりも小さくなる。これは、厚さdが薄くなることで、静電容量Cが大きくなり、インピーダンスZが小さくなったためであると考えられる。
【0075】
一方、基準のセル構造体10よりも厚さが厚い多孔質半導体層2(T層、D層)、多孔質絶縁体層3を有するセル構造体10の場合、インピーダンスZが基準インピーダンスZ’よりも大きくなる。これは、厚さdが厚くなることで、静電容量Cが小さくなり、インピーダンスZが大きくなったためであると考えられる。
【0076】
また、図7に示すように、多孔質半導体層2、多孔質絶縁体層3の焼成温度が基準の条件よりも高い場合、セル構造体10のインピーダンスZが基準インピーダンスZ’よりも小さくなる。これは、多孔質半導体層2、多孔質絶縁体層3の焼成温度が高い場合、焼き締まりにより厚さdが薄くなり、これにより、静電容量Cが大きくなり、インピーダンスZが小さくなったためであると考えられる。
【0077】
一方、多孔質半導体層2、多孔質絶縁体層3の焼成温度が基準の条件よりも低い場合、セル構造体10のインピーダンスZが基準インピーダンスZ’よりも大きくなる。これは、多孔質半導体層2、多孔質絶縁体層3の焼成温度が低い場合、厚さdが厚いままであるので、静電容量Cが小さくなり、インピーダンスZが大きくなったためであると考えられる。
【0078】
電極検査工程では、作業者は、基準インピーダンスZ’(図7では、約1600Ω)と、測定されたインピーダンスZとを比較する。そして、作業者は、これらのインピーダンスZの差分が所定の閾値(例えば、±20Ω程度)以下である場合には、検査対象物11は、良品であると判定する。良品であると判定した場合には、作業者は、後の工程(色素吸着工程)へ検査対象物11を流す。なお、本実施形態に係る検査方法は、非破壊検査であるので、品質を検査した検査対象物11を後の工程へ流すことができる。
【0079】
一方、上記差分が所定の閾値を超える場合、作業者は、検査対象物11は、不良品であると判定する。そして、作業者は、不良の原因を分析し、前工程(電極工程)にフィードバックする。なお、不良品であると判定された場合、作業者は、検査対象物11を破棄し、電極検査工程以降の工程には、流さないようにする。
【0080】
以上のように、本実施形態の検査方法によれば、モノリシック型の色素増感太陽電池100の製造途中において、検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定し、このインピーダンスZに基づいて、検査対象物11の良否を判定することができる。これにより、製造工程における前工程への迅速なフィードバックが可能となり、プロセス変動による不良品の発生を抑制することができる。これにより、歩留まりを向上させることができ、コスト削減が実現される。
【0081】
(インピーダンスZの測定周波数)
次に、交流インピーダンス測定におけるインピーダンスZの測定周波数について説明する。
【0082】
《粒子(バルク)抵抗及び界面抵抗と、インピーダンスZの測定周波数との関係》
まず、粒子抵抗及び界面抵抗と、インピーダンスZの測定周波数との関係について説明する。
【0083】
上記したように、多孔質半導体層2及び多孔質絶縁体層3は、数10nm〜数100nmの微小な粒子(バルク)を有する多孔質構造とされている。
【0084】
図8は、検査対象物11のセル構造体10の等価回路を示す図である。
図8に示すように、多孔質半導体層及び多孔質絶縁体層3の粒子(バルク)抵抗は、抵抗成分Rbと、静電容量成分Cbとの並列回路とみなすことができる。また、多孔質半導体層2及び多孔質半導体層2の粒子界面の界面抵抗は、抵抗成分Rgbと静電容量成分Cgbの並列回路とみなすことができる。そして、セル構造体10の等価回路は、これらの並列回路が直列接続された回路とみなすことができる。
【0085】
図9は、検査対象物11のセル構造体10をインピーダンス測定器30により交流インピーダンス測定した結果を、ナイキスト線図で表した図である。
【0086】
図9に示すように、ナイキスト線図は、10Hzを境にして、2つの山に分離することが分かる。本発明者らは、測定したデータを基に、等価回路でフィッティングさせ、静電容量Cの値を求めた。その結果、多孔質半導体層2、多孔質半導体層2の比誘電率ε、面積S、厚さdから得られる静電容量Cと左側の山が一致することが分かった。従って、10Hz以上の周波数におけるセル構造体10のインピーダンスZは、粒子抵抗に依存し、10Hzよりも小さい周波数におけるセル構造体10のインピーダンスZは、界面抵抗に依存するといえる。
【0087】
従って、電極検査工程において、10Hz以上の周波数で、検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定することで、多孔質半導体層2及び多孔質絶縁体層3の粒子(バルク)に依存したインピーダンスZを測定することができる。
【0088】
《低周波数で検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合のインピーダンスZの特性と、高周波数で検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合のインピーダンスZの特性との違い》
【0089】
次に、低周波数で検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合のインピーダンスZの特性と、高周波数で検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合のインピーダンスZ特性との違いについて説明する。
【0090】
ここで、まず、比較例として、直流抵抗測定により、検査対象物11(電極工程後の色素増感太陽電池100)の品質を検査する場合について説明する。
【0091】
検査対象物11の品質を検査する場合において、直流抵抗測定により検査対象物11の品質を検査する方法も考えられる。そこで、本発明者らは、直流抵抗測定により、検査対象物11のセル構造体10の直流抵抗値を測定した。
【0092】
この場合、検査対象物11のセル構造体10の直流抵抗値は、10MΩ以上の高抵抗であるため、既存の直流抵抗測定器による直流抵抗測定では測定精度の確保が難しいという問題がある。
【0093】
また、直流抵抗測定の場合、測定環境によって直流抵抗値が大きく変化することと、直流抵抗値が時間の経過とともに緩やかに変化することが明らかとなった。このような現象が生じるのは、多孔質半導体層2が光半導体特性を有していることと、多孔質半導体層2及び多孔質半導体層2が多孔質構造であるために感湿性を有していることに起因すると考えられる。実際、直流抵抗値の変動率は、10分間で50%以上であり、1時間程度では直流抵抗値は安定しなかった。
【0094】
次に、交流インピーダンス測定によって検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合について具体的に説明する。
【0095】
図10は、低周波数で検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合のインピーダンスZの特性と、高周波数で検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合のインピーダンスZの特性との違いを説明するための図である。
【0096】
図10(A)には、インピーダンスZの測定周波数と、インピーダンスZ(絶対値)との関係が示されている。図10(B)には、1Hzで検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合の、インピーダンスZの10分間の変化が示されている。図10(C)には、1MHzで検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合の、インピーダンスZの10分間の変化が示されている。
【0097】
なお、図10(B)、(C)では、検査対象物11にAM1.5の疑似太陽光が照射された状態でインピーダンスZが測定され、外乱光の影響を評価するために、30s〜100sの間は、疑似太陽光が遮光された状態でインピーダンスZが測定された。
【0098】
図10(A)に示すように、インピーダンスZの測定周波数が1kHz未満の低周波数である場合、検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZは、1MΩ近傍の値を示しており、高インピーダンスであることが分かる。
【0099】
また、図10(B)に示すように、1kHz未満の低周波数(1Hz)で、検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合、時間経過とともにインピーダンスZが大きく変動することが分かる。図10(B)に示す例では、10分間でのインピーダンスZの変化率は、+47%であった。
【0100】
また、図10(B)に示すように、1kHz未満の低周波数(1Hz)で、検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定した場合、30s〜100sの疑似太陽光の遮光時において、インピーダンスZが大きく変動することが分かる。つまり、低周波数でのインピーダンス測定では、外乱光の影響を受けやすいことが分かる。
【0101】
このように、1kHz未満の低周波数での交流インピーダンス測定の場合、検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZは、高インピーダンスであるという特性、時間経過による変動が大きいという特性、外乱光の影響を受け易いという特性を有している。これらの特性は、上記した直流抵抗測定における直流抵抗値の特性と一致する。
【0102】
一方、図10(A)に示すように、インピーダンスZの測定周波数が1kHz以上の高周波数である場合、検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZは、周波数が大きくなるに従って、インピーダンスZが小さくなることが分かる。
【0103】
また、図10(C)に示すように、インピーダンスZの測定周波数が1kHz以上の高周波数(1MHz)である場合、時間が経過してもほとんど変動しないことが分かる。図10(C)に示す例では、10分間でのインピーダンスZの変化率は、+0.3%であった。
【0104】
また、図10(C)に示すように、インピーダンスZの測定周波数が1kHz以上の高周波数(1MHz)である場合、30s〜100sの疑似太陽光の遮光時においても、インピーダンスZは、ほとんど変動しないことが分かる。
【0105】
すなわち、インピーダンスZの測定周波数が1kHz以上の高周波数である場合、セル構造体10のインピーダンスZは、比較的小さいという特性、時間経過による変動がほとんどないという特性、外乱光による影響がほとんどないという特性を有している。
【0106】
従って、1kHz以上の周波数でセル構造体10のインピーダンスZを測定することで、測定されるインピーダンスZが比較的小さくなり、かつ、時間経過によるインピーダンスZの変動及び外乱光によるインピーダンスZの変動を排除することができる。これにより、電極検査工程において、1kHz以上の周波数でインピーダンスZ測定を行うことで、安定した精度の高い検査対象物11の品質検査が可能となる。なお、インピーダンスZの測定周波数が1kHz以上の場合、10Hz以上のインピーダンス測定となるので、上記したように、多孔質半導体層及び多孔質絶縁体層3の粒子(バルク)に依存したインピーダンスZを測定することができる。
【0107】
ここで、検査対象物11のセル構造体10を、図8に示す等価回路で考えた場合、セル構造体10のインピーダンスZは、低周波数では、抵抗成分に依存し、高周波数では、静電容量成分に依存する。この関係と、上記図10(B)、(C)の結果から、抵抗成分は、時間経過及び外乱光による変動が大きく、静電容量成分は、時間経過及び外乱光による変動が小さく、比較的安定していると言える。つまり、1kHz以上の高周波数によるインピーダンスZ測定において、インピーダンスZが安定しているのは、時間経過及び外乱光の影響を受けやすい抵抗成分が排除され、時間経過及び外乱光の影響を受けにくい静電容量成分に特化したインピーダンスZ測定が可能となったためであると考えられる。
【0108】
「色素吸着工程〜最終検査工程」
再び図3を参照して、電極検査工程後の色素吸着工程では、検査対象物11が色素溶液に浸漬される。これにより、多孔質半導体層2の微粒子に増感色素が担持される。
【0109】
次の組立工程では、セル構造体10上に封止層22が塗布されて、封止層22が形成される。そして、封止層22上に、外装材23が接着される。
【0110】
次の電解液注入工程では、あらかじめ色素増感電池に設けられた図示しない注入口を介して、酸化還元対を含む電解液が注入される。注入口は、各セル構造体10毎に設けられている。電解液が注入されると、多孔質半導体層2及び多孔質絶縁体層3の微粒子の間に電解液が注入され、微粒子の間が電解液により満たされる。その後、注入口が封止される。
【0111】
次の最終検査工程では、太陽光や、ソーラシュミレータによる疑似太陽光等により、色素増感太陽電池100(完成品)の光電変換特性等が検査される。
【0112】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態以降の説明では、上記第1実施形態と同様の構成及び機能を有する部材等については、説明を簡略又は省略する。
【0113】
第2実施形態では、セル構造体10の短絡の検出について説明する。
【0114】
電極工程(図3参照)において、透明電極層1と対電極層4との間に何らかの異物が挟まってしまった場合、透明電極層1と対電極層4とが電気的に短絡に至る不良が発生する場合がある。
【0115】
図11は、透明電極層1と対電極層4とが電気的に短絡した場合の、セル構造体10の等価回路を示す図である。
【0116】
ここで、まず、比較例として、直流抵抗測定により、透明電極層1と対電極層4との短絡を検出する場合について説明する。
【0117】
検査対象物11(電極工程後の色素増感太陽電池100)が1つのセル構造体10を有する形態であり、かつ、短絡抵抗Rgtがバルク抵抗と界面抵抗との直列接続による合成抵抗よりも十分小さい場合を想定する。この場合、短絡が生じていない検査対象物11(1セル)の直流抵抗値が、例えば、数10MΩのオーダーであるのに対して、短絡が生じた検査対象物11(1セル)の直流抵抗値が例えば、数kΩのオーダーとなる。従って、このような場合には、直流抵抗測定において短絡を検出することができる。
【0118】
しかしながら、検査対象物11が複数のセル構造体10を有する形態である場合や、短絡抵抗Rgtがバルク抵抗と界面抵抗との直列接続による合成抵抗に比して十分に小さくないような場合には、直流抵抗測定によって短絡を検出することは困難である。
【0119】
例えば、8つのセル構造体10を有する検査対象物11の短絡を直流抵抗測定において検査する場合を想定する。この場合、8つのセル構造体10うちの1つのセル構造体10に電極間の短絡が生じ、短絡が生じたセル構造体10の直流抵抗値が0になったとする。
【0120】
短絡したセル構造体10(直流抵抗値0)を含む8つのセル構造体10全体の直流抵抗値は、8つのセル構造体10全てに短絡が生じていない場合の直流抵抗値に比べて下がることになる。しかし、その低下率は、1/8=12.5%であり、この低下率は、多孔質半導体層2及び多孔質半導体層2の感湿性等に起因した直流抵抗値の変動率(10分間で50%以上)よりも小さい。このように、上記低下率が直流抵抗値の変動率よりも小さいため、複数のセル構造体10のうちの1つのセル構造体10の短絡を検出することは、困難であるといった問題がある。
【0121】
次に、第2実施形態に係る色素増感太陽電池100の品質の検査方法について具体的に説明する。
【0122】
本発明者らは、試験用の検査対象物11として、透明電極層1及び対電極層4が短絡した1セル構造の検査対象物11を作成した。
【0123】
図12は、この試験用の検査対象物11のインピーダンスZを交流インピーダンス測定によって測定した場合のボード線図である。なお、図12には、短絡が生じていない1セル構造の検査対象物11のインピーダンスZの測定結果も示されている。
【0124】
図12に示すように、インピーダンスZの測定周波数が1MHzを超える場合、電極間で短絡が生じたセル構造体10のインピーダンスZと、短絡が生じていないセル構造体10のインピーダンスZ(基準インピーダンスZ’)では、ほとんど差がない。
【0125】
一方、1MHz以下である場合、電極間で短絡が生じた検査対象物11では、短絡抵抗Rgtで一定となり、電極間で短絡が生じた検査対象物11と、短絡が生じていない検査対象物11とでインピーダンスZに差が生じる。このように、測定周波数が1MHz以下である場合には、短絡が生じた検査対象物11と、短絡が生じていない検査対象物11とでインピーダンスZに差が生じるので、1MHz以下の周波数で検査対象物11のインピーダンスZを測定することで短絡を検出することができる。
【0126】
この場合、作業者は、電極工程において、1MHz以下の周波数で、1又は複数のセル構造体10を有する検査対象物11のインピーダンスZを測定する。そして、作業者は、測定されたインピーダンスZと、短絡が生じていない検査対象物11(良品の検査対象物11)の基準インピーダンスZ’と比較する。
【0127】
作業者は、インピーダンスZと基準インピーダンスZ’との差分が所定の閾値以下である場合には、検査対象物11は良品である、つまり、短絡が生じていないと判定し、後の工程に流す。一方、上記差分が所定の閾値を超える場合には、検査対象物11は不良品である、つまり短絡が生じていると判定し、後の工程には流さないようにする。
【0128】
ここで、上記したように、インピーダンスZの測定周波数が1kHz未満の低周波数である場合、インピーダンスZは、直流抵抗測定による直流抵抗値と同様に、時間経過による変動が大きいという特性、外乱光の影響を受け易いという特性を有している。一方、インピーダンスZの測定周波数が1kHz以上である場合には、インピーダンスZは、時間経過により変動しにくいという特性、及び外乱光の影響をほとんど受けないという特性を有している。
【0129】
従って、インピーダンスZの測定周波数は、典型的には、1kHz以上(1MHz以下)の範囲とされる。1kHz以上の交流インピーダンス測定により、時間経過による変動及び外乱光の影響を排除しつつ、適切に検査対象物11のセル構造体10の短絡を検出することができる。
【0130】
この場合、安定したインピーダンスZ測定が可能になるので、上記直流抵抗測定において、短絡の検出が困難であった、複数のセル構造体10のうちの1つのセル構造体10の短絡の検出等も容易に行うことができる。
【0131】
一方、上記したように、インピーダンスZの測定周波数が1MHz以下であれば、短絡が生じた場合と短絡が生じていない場合とでインピーダンスZに差が生じるので、短絡を検出することができる。ただ、インピーダンスZの測定周波数が1MHz近傍の値の場合、短絡が生じた場合と短絡が生じていない場合とでインピーダンスZの差が小さい。インピーダンスZの差が小さい場合、検出できる短絡抵抗の値が小さくなってしまう。
【0132】
従って、より大きな短絡抵抗の検出を考慮した場合、インピーダンスZの測定周波数は、典型的には、(1kHz以上)100kHz以下の周波数とされる。
【0133】
[第2実施形態変形例]
上記した例では、測定したインピーダンスZと、短絡が生じていないセル構造体10のインピーダンスである基準インピーダンスZ’との比較によって、セル構造体10の短絡を検出する方法について説明した。しかし、セル構造体10の短絡は、他の方法によっても検出可能である。
【0134】
図12に示すように、透明電極層1と対電極層4との間で短絡が生じていないセル構造体10の場合、周波数が大きくなるに従って、インピーダンスZが小さくなる。一方、セル構造体10の透明電極層1と対電極層4との間で短絡が生じた場合、1MHzよりも低い周波数範囲では、インピーダンスZが略一定となるという特徴がある。
【0135】
すなわち、1MHz以下の周波数では、短絡が生じていないセル構造体10のインピーダンスZは、短絡が生じたセル構造体10に比べて、周波数の異なる2点間でのインピーダンスZの差が大きいという特徴がある。逆に、短絡が生じたセル構造体10は、短絡が生じていないセル構造体10に比べて、周波数の異なる2点間でのインピーダンスZの差がほとんどない特徴がある。
【0136】
この関係を利用することで、セル構造体10の短絡を検出することができる。
【0137】
この場合、作業者は、電極工程において、1MHz以下の異なる2以上の周波数でセル構造体10のインピーダンスZを測定する。そして、作業者は、測定された2以上のインピーダンスZの差分が所定の閾値以上である場合には、検査対象部物は短絡が生じていない、つまり、良品であると判定し、後の工程に流す。
【0138】
一方、作業者は、測定された2以上のインピーダンスZの差分が所定の閾値未満である場合には、検査対象部物は、短絡が生じている、つまり、不良品であると判定し、後の工程には流さないようにする。
【0139】
以上のような方法においても、適切にセル構造体10の短絡を検出することができる。
【0140】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
上述の各実施形態では、作業者がインピーダンス測定器30を用いて検査対象物11のインピーダンスZを測定し、作業者がその測定結果から検査対象物11の良否を判定する場合について説明した。すなわち、作業者による検査対象物11の品質の検査方法について説明した。
【0141】
一方、検査対象物11の品質の検査は、自動化することも可能である。第3実施形態では、自動的に検査対象物11のインピーダンスZを測定し、測定結果から自動的に検査対象物11の良否を判定する検査装置40について説明する。
【0142】
[検査装置40の構成]
図13は、検査装置40を示す模式図である。
図13に示すように、検査装置40は、検査対象物11を載置する載置台41と、載置台41をXYZ方向へ移動させるXYZステージ44と、検査対象物11のセル構造体10のインピーダンスZを測定するインピーダンス測定部45とを有する。また、検査装置40は、検査装置40を統括的に制御する制御部47と、制御部47の制御に必要な各種のプログラム等が記憶される記憶部48とを有する。
【0143】
XYZステージ44は、載置台41を上下方向に移動させる昇降機構42と、昇降機構42をXY方向に移動させるXYステージ43とを有する。昇降機構42、XYステージ43には、例えば、流体圧シリンダ、ラックアンドピニオン、ベルトアンドチェーン、ボールネジ等が用いられる。
【0144】
インピーダンス測定部45は、4つ端子(CE、RE1、WE、RE2)を有している。4つの端子には、プローブ46が接続されている。プローブ46は、図示しない固定部材により、所定の位置に固定されている。インピーダンス測定部45としては、周波数を自在に掃引可能なインピーダンス測定装置や、幾つかの固定された測定周波数でインピーダンスZを測定可能なLCRメータ等を用いることができる。
【0145】
制御部47は、例えば、CPUであり、記憶部48に記憶されたプログラムに従い、所定の処理を実行する。例えば、制御部47は、XYZステージ44を駆動させたり、インピーダンス測定部45に測定された検査対象物11のインピーダンスZに基づいて、検査対象物11の良否を判定したりする。
【0146】
[動作説明]
次に、検査装置40の動作について説明する。
まず、検査装置40の制御部47は、XYステージ43を駆動させることで、載置台41をXY方向へ移動させ、載置台41を検査対象物11(電極工程後の色素増感太陽電池100)の受け取り位置まで移動させる。そして、検査装置40は、図示しない供給装置から検査対象物11を受け取り、載置台41上に載置させる。
【0147】
次に、制御部47は、XYステージ43を駆動させて載置台41をXY方向へ移動させ、検査対象物11をインピーダンスZの測定位置に移動させる。次に、制御部47は、昇降装置を駆動させて、載置台41を上方へ移動させる。これにより、インピーダンス測定部45の4つの端子に接続されたプローブ46がセル構造体10の透明電極層1に接触する。
【0148】
このとき、CE、RE1端子に接続されたプローブ46は、一方の透明電極層1に接触され、WE端子、RE2端子に接続されたプローブ46は、他方の透明電極層1に接触される。そして、4端子法により、セル構造体10のインピーダンスZが所定の周波数で測定される。
【0149】
なお、プローブ46と、セル構造体10の透明電極層1との接触については、載置台41を上下方向に移動させる方法の代わりに、プローブ46を上下方向に移動させる方法が用いられても構わない。あるいは、載置台41と、プローブ46の両方を上下方向に移動させる方法が用いられてもよい。
【0150】
インピーダンスZが測定されると、制御部47は、測定されたインピーダンスZと、基準インピーダンスZ’(図7、図12参照)との差分を算出する。そして、制御部47は、これらのインピーダンスZの差分が所定の閾値以下である場合には、検査対象物11は良品である、すなわち、検査対象物11は、印刷の位置ずれ、短絡等が生じていないと判定する。良品であると判定した場合、制御部47は、昇降機構42、XYステージ43を駆動させ、次の色素吸着工程において色素吸着処理を実行する色素吸着装置に検査対象物11を渡す。
【0151】
一方、上記差分が所定の閾値を超える場合、制御部47は、検査対象物11は、不良品である、すなわち、印刷の位置ずれ、短絡等が生じていると判定する。この場合、制御部47は、昇降機構42、XYステージ43を駆動させ、検査対象物11を破棄する。
【0152】
判定が終了すると、制御部47は、判定結果を記憶部48に記憶し、再び載置台41を検査対象物11の受け渡し位置まで移動させる。
【0153】
この検査装置40では、自動的に検査対象物11の品質を検査することができるので、検査対象物11についての全数検査も容易に実行することができる。
【0154】
上記した例では、インピーダンス測定部45により測定されたインピーダンスZと、基準インピーダンスZ’の差分に基づいて、検査対象物11の良否が判定される場合について説明した。しかし、検査対象物11の良否の判定方法は、これに限られない。上記第2実形態の変形例において説明したように、2以上の異なる周波数の検査対象物11のインピーダンスZが測定され、そのインピーダンスZに基づいて、検査対象物11の良否が判定されてもよい。
【0155】
この場合、制御部47は、インピーダンス測定部45を制御し、載置台41に載置された検査対象物11について異なる2つの周波数でインピーダンスZを測定し、2つのインピーダンスZの差分を算出する。そして、制御部47は、測定された2つのインピーダンスZの差分が所定の閾値以上である場合に、検査対象物11は良品である、つまり、短絡が生じていないと判定する。この場合、制御部47は、昇降機構42、XYステージ43を駆動させて、次の色素吸着工程において色素吸着処理を実行する色素吸着装置に検査対象物11を渡す。
【0156】
一方、制御部47は、上記差分が所定の閾値未満である場合には、検査対象物11は不良品である、つまり、短絡が生じていると判定する。この場合、制御部47は、昇降機構42、XYステージ43を駆動させ、検査対象物11を破棄する。
【0157】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
上述の各実施形態では、モノリシック構造の色素増感太陽電池100の品質を製造途中において検査する方法について説明した。一方、第4実施形態では、Z型、W型、対向型等の構造を有する色素増感太陽電池200の品質を製造途中において検査する方法について説明する。なお、Z型、W型、対向型等の色素増感太陽電池200のうち、Z型の色素増感太陽電池200の品質を検査する方法について、代表的に説明する。
【0158】
[色素増感太陽電池200の構成]
図14は、Z型の色素増感太陽電池200の側方断面図である。
【0159】
図14に示すように、Z型の色素増感太陽電池200は、透明基板221と、対向基板222と、透明基板21及び対向基板222に挟み込まれるように設けられた複数のセル210と、セル210を分離する壁部205と有する。
【0160】
複数のセル210は、一方向(Y軸方向)に長い直方体形状を有しており、X軸方向で互いに電気的に直列接続されている。セル210は、透明基板21上に設けられた透明電極層201と、透明電極層201上に形成された多孔質半導体層202と、対向基板222上で多孔質半導体層202に対向する位置に形成された対電極層204とを有する。セル210は、酸化還元対を含む電解液を内部に有している。
【0161】
透明電極層201は、隣り合う位置に配置されたセル210の対電極層204と、壁部205の内部に設けられた導電部材206によって電気的に接続されている。これにより、複数のセル210は、互いに電気的に直列接続される。
【0162】
[色素増感太陽電池200の製造方法及び検査方法]
図15は、本実施形態に係る検査方法を工程として含む、色素増感太陽電池200の製造工程を示すフロー図である。
【0163】
「電極工程」
電極工程では、透明電極層201が透明基板221上の全面に形成され、その後、透明電極層201がエッチングによりストライプ状にパターニングされる。次に、透明電極層201上に、多孔質半導体層202がスクリーン印刷により印刷され、仮乾燥後に、多孔質半導体層202が焼結される。
【0164】
次に、対向基板222上に対電極層204がスクリーン印刷により印刷され、仮乾燥後に焼成される。その後、対電極層204上に、導電部材206を内部に有する壁部205が形成される。
【0165】
なお、第4実施形態の説明では、透明基板221上に、1又は複数の透明電極層201及び多孔質半導体層202が形成された状態での色素増感太陽電池200を検査対象物211(図16参照)と呼ぶ。
【0166】
「電極検査工程」
図16は、本発明の第4実施形態に係る検査方法を説明するための模式図である。
図16に示すように、検査対象物211は、透明基板221と、透明基板221上に形成された(1又は複数)の透明電極層201(増感色素なし)及び多孔質半導体層202とを含む。
【0167】
電極検査工程では、作業者により検査対象物11が一定間隔毎(例えば、100個に1個程度)に抜き取り検査される。
【0168】
作業者は、バネ53により支持されたアルミ、銅等の金属で構成された導体52に荷重を印加し、導体52を多孔質半導体層202上に接触させる。そして、作業者は、インピーダンス測定器30のCE、RE1端子に接続されたプローブ46を導体52に接触させ、WE端子、RE2端子に接続されたプローブ46を透明電極層201に接触させる。これにより、透明電極層201と導体52との間のインピーダンスZが測定される。
【0169】
多孔質半導体層202上に導体52が接触された状態では、多孔質半導体層202で構成された誘電体を、透明電極層201と、導体52とで挟み込んだ平板コンデンサとみなすことができる。従って、第1実施形態において説明した、色素増感太陽電池100の品質の検査方法と同様の品質の検査が可能となる。
【0170】
作業者は、測定したインピーダンスZと、基準インピーダンスZ’(良品の検査対象物211の多孔質半導体層202に導体52を接触させて測定されたインピーダンス)との差分が所定の閾値以下であるかを判定する。作業者は、差分が所定の閾値以下である場合には、検査対象物211は良品であると判定する。なお、第4実施形態では、多孔質半導体層202と導体52の接触によって、破壊検査となってしまうので、良品であっても検査対象物211は、後の工程には流さず破棄する。
【0171】
一方、上記差分が上記所定の閾値を超える場合、作業者は、検査対象物211は不良品であると判定する。そして、作業者は、不良の原因を分析し、前工程(電極工程)にフィードバックする。不良品であると判定された検査対象物211は、破棄される。
【0172】
第4実施形態においても上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、色素増感太陽電池200の製造途中において、検査対象物211の良否を判定することができるので、製造工程における前工程への迅速なフィードバックが可能となる。これにより、プロセス変動による不良品の発生を抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。結果として、コスト削減が実現される。
【0173】
「色素吸着工程〜最終検査工程」
再び図15を参照して、色素吸着工程では、検査対象物211が色素溶液に浸漬される。これにより、多孔質半導体層202の微粒子に増感色素が担持される。次の組立工程では、透明基板221側と、対向基板222側が接続される。次の電解液注入工程では、図示しない注入口を介して、酸化還元対を含む電解液がセル210に注入される。その後、注入口が封止される。
【0174】
次の最終検査工程では、太陽光や、ソーラシュミレータによる疑似太陽光等により、色素増感太陽電池200(完成品)の光電変換特性等が検査される。
【0175】
上述の説明では、Z型の色素増感太陽電池200についての品質の検査方法について説明したが、上記した検査方法と同様の検査方法で、W型、対向型等の他のタイプの色素増感太陽電池200の品質を製造途中において検査することができる。
【0176】
[検査装置]
上記した例では、作業者による検査対象物211の品質の検査方法について説明したが、検査装置60によって、自動的に検査対象物211の品質を検査しても構わない。
【0177】
図17は、検査装置60を示す模式図である。
この検査装置60は、導体52が用いられている点と、インピーダンス測定部45のCE、RE1端子に接続されたプローブ46が導体52に接触されている点以外については、第3実施形態において説明した検査装置40(図13参照)と同様の構成である。
【0178】
導体52とプローブ46とは、図示しない固定部材により、所定の位置に固定されている。
【0179】
検査装置60の制御部47は、XYステージ43を駆動させることで、載置台41をXY方向へ移動させ、検査対象物211の受け取り位置まで移動させる。そして、図示しない供給装置から検査対象物211を受け取る。ここで、供給装置は、一定の間隔毎(例えば、100個に1個程度)に検査対象物211を検査装置40に渡す。
【0180】
次に、制御部47は、XYステージ43を駆動させて載置台41をXY方向へ移動させ、検査対象物211をインピーダンスZの測定位置に移動させる。次に、制御部47は、昇降機構42を駆動させて、載置台41を上方へ移動させる。
【0181】
載置台41が上方へ移動されると、導体52の底面が多孔質半導体層2の上面に接触する。また、インピーダンス測定部45のWE、RE2端子に接続されたプローブ46が透明電極層201に接触する。
【0182】
次に、制御部47は、インピーダンス測定部45を制御し、検査対象物11の透明電極層201と導体52との間のインピーダンスZを測定する。制御部47は、測定したインピーダンスZと、基準インピーダンスZ’との差分を算出し、差分が所定の閾値以下であるかを判定する。差分が所定の閾値以下である場合、制御部47は、検査対象物211が良品である、すなわち、検査対象物211に印刷ずれ等が生じていないと判定する。一方、差分が所定の閾値を超える場合、制御部47は、検査対象物211が不良品である、すなわち、検査対象物211に印刷ずれ等が生じていると判定する。
【0183】
制御部47は、判定が終了すると、判定結果を記憶部48に記憶する。そして、制御部47は、昇降機構42、XYステージ43を駆動させ、検査対象物11の良否にかかわらず、検査対象物11を破棄する。
【0184】
図17に示す検査装置60により、Z型、W型、対向型等の色素増感太陽電池200の品質を製造途中において、自動的に検査することができる。
【0185】
<各種変形例>
上述の説明では、検査対象物11、211のインピーダンスZに基づいて、印刷ずれや、短絡等の不良を検知することで、検査対象物11、211の品質を検査する方法について説明した。一方、検査対象物11、211のインピーダンスZを色素吸着工程前、増感色素吸着工程後で測定し、そのインピーダンスの変化量から多孔質半導体層2、202の増感色素の吸着量を判定することで、検査対象物11、211の品質を検査する方法も考えられる。
【0186】
この場合、作業者がインピーダンス測定器30を用いて、増感色素の吸着の前後で検査対象物11、211のインピーダンスZを測定し、その測定値の変化量から検査対象物11の良否を判定してもよい。あるいは、検査装置40、60が自動的に検査対象物11、211のインピーダンスZを測定し、その測定値の変化量から検査対象物11、211の良否を判定してもよい。
【符号の説明】
【0187】
1、201…透明電極層
2、202…多孔質半導体層
3…多孔質絶縁体層
4、204…対電極層
10…セル構造体
11、211…検査対象物
21、221…透明基板
22…封止層
23…外装材
30…インピーダンス測定器
31…プローブ
40、60…検査装置
41…載置台
44…XYZステージ
45…インピーダンス測定部
46…プローブ
47…制御部
52…導体
100、200…色素増感太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層上に形成された多孔質絶縁体層と、前記多孔質絶縁体層上に形成された対電極層とを有する1または、互いに直列接続された複数のセル構造体を有する検査対象物の、前記セル構造体のインピーダンスを測定し、
測定された前記セル構造体の前記インピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否を判定する
検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記検査対象物の良否を判定するステップは、良否判断の基準となる前記セル構造体のインピーダンスである基準インピーダンスと、測定された前記セル構造体のインピーダンスとを比較し、前記基準インピーダンスと、前記インピーダンスとの差分が所定の閾値以下である場合に、前記検査対象物が良品であると判定する
検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記インピーダンスを測定するステップは、2以上の異なる周波数で、前記セル構造体の2以上のインピーダンスを測定し、
前記検査対象物の良否を判定するステップは、測定された2以上の前記インピーダンスの差分が所定の閾値以上である場合に、前記検査対象物が良品であると判定する
検査方法。
【請求項4】
請求項2に記載の検査方法であって、
前記インピーダンスを測定するステップは、10Hz以上の周波数で、前記セル構造体のインピーダンスを測定する
検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の検査方法であって、
前記インピーダンスを測定するステップは、1kHz以上の周波数で、前記セル構造体のインピーダンスを測定する
検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載の検査方法であって、
前記インピーダンスを測定するステップは、1kHz以上、1MHz以下の周波数で、前記セル構造体のインピーダンスを測定する
検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の検査方法であって、
前記インピーダンスを測定するステップは、1kHz以上、100kHz以下の周波数で、前記セル構造体のインピーダンスを測定する
検査方法。
【請求項8】
基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層とを有する検査対象物の、前記多孔質半導体層上に、導体を接触させ、
前記透明電極層と前記導体との間のインピーダンスを測定し、
測定された前記透明電極層と前記導体との間の前記インピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否を判定する
検査方法。
【請求項9】
基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層上に形成された多孔質絶縁体層と、前記多孔質絶縁体層上に形成された対電極層とを有する1または、互いに直列接続された複数のセル構造体を有する検査対象物の、前記セル構造体のインピーダンスを測定する測定部と、
測定された前記セル構造体の前記インピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否を判定する制御部と
を具備する検査装置。
【請求項10】
基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層とを有する検査対象物の、前記多孔質半導体層上に接触される導体と、
前記導体が前記多孔質半導体層上に接触された状態で、前記透明電極層と前記導体との間のインピーダンスを測定する測定部と、
測定された前記透明電極層と前記導体との間のインピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否を判定する制御部と
を具備する検査装置。
【請求項11】
検査装置の測定部が、基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層上に形成された多孔質絶縁体層と、前記多孔質絶縁体層上に形成された対電極層とを有する1または、互いに直列接続された複数のセル構造体を有する検査対象物の、前記セル構造体のインピーダンスを測定し、
前記検査装置の制御部が、測定された前記セル構造体の前記インピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否を判定する
検査方法。
【請求項12】
検査装置の測定部が、基材上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成された多孔質半導体層とを有する検査対象物の、前記多孔質半導体層上に導体が接触された状態で、前記透明電極層と前記導体との間のインピーダンスを測定し、
前記検査装置の制御部が、測定された前記透明電極層と前記導体との間の前記インピーダンスに基づいて、前記検査対象物の良否を判定する
検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−42283(P2012−42283A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182429(P2010−182429)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】