説明

検査条件の調整用パターン、およびそれを用いた検査条件の調整方法

【課題】周期性パターンが形成された基板は、周期性パターンの回折現象によって生じる擬似欠陥をスジ状ムラ欠陥として誤判断し易く、検査精度に問題が残る。本発明の課題は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、実欠陥と擬似欠陥とを高精度に弁別できる検査用パターン及び検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
ムラ欠陥検査装置に用いるムラ検査用パターンが、前記基板と同一の材料でかつ同一の製法でパターンが形成され、該パターンが互いに直行するX方向、Y方向において、それぞれ最小パターンピッチをMin、パターンピッチ増量分をΔ、最大パターンピッチをMaxとすると、Min,Min+Δ,Min+2Δ・・Min+nΔ,Maxの少なくとも1種類のパターンピッチでパターンが等間隔に配列していることを特徴とするムラ検査用パターン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にパターンが2次元的、周期的に形成された被検査基板に照明光を斜め入射し、パターンにより生じる回折光を、光学系を介し撮像素子上に結像させ画像取得を行い、ムラ欠陥検査を行う検査装置の撮像系における、光学倍率および焦点位置などの検査条件を調整するために使用する光学倍率調整用パターン、それを用いた調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周期性パターンとは、一定の間隔を有するパターンの集合体を称し、例えば、パターンが所定のピッチで配列したストライプ上の周期性パターン、または開口部のパターンが所定の周期で2次元的に配列したマトリクス状のパターン等が該当する。周期性パターンを有する基板としては特に、半導体装置、撮像デバイスおよび表示デバイス等を製造する際にフォトリソグラフィー処理の露光工程で用いられるフォトマスクが挙げられる。
【0003】
従来、半導体装置、撮像デバイスおよび表示デバイス等の製造工程で用いられるフォトマスクとしては、ガラス等の透明基板上にクロム等の遮光膜が一定のパターンに部分的に除去されて構成されたものが知られている。
【0004】
フォトマスクのような周期性パターンにおけるムラ欠陥は、通常微細なピッチズレや位置ズレが規則的に配列していることが原因であることが多いため、個々のパターン検査では発見することが困難であるが、周期性パターンを広い領域において観察した時に初めて認識される欠陥である。
【0005】
周期性のあるパターン、例えばCCD、CMOSデバイス製造用フォトマスクムラを安定的、高精度に撮像、検出可能な周期性パターンムラ検査装置を提供することを目的として、照明光が被検査体に照射され、周期性パターンによって生じる透過回折光を画像検査する、例えば特許文献1のような検査装置が提案された。周期性パターンの正常部では開口部の形状・ピッチが一定となるため互いに干渉し一定の方向に回折光を生じる。それに対し、ムラ部では開口部の形状、ピッチが不規則になるため、形状、ピッチに応じて、その次数毎に種々の方向に、種々の強さで回折光が生じる。この検査装置では、正常部とムラ部における回折光強度コントラストの違いから、ムラ部を検出する方式をとっている。
【0006】
特許文献1で紹介したようなCCD、CMOSデバイス製造用フォトマスクでは、パターンピッチは5μm〜30μm程度である。しかし、例えばLCD製造用フォトマスクでは、そのパターンピッチは20μm程度のものから1000μm程度のものまで幅広く存在し、割合としてはCCD、CMOSデバイス製造用フォトマスクよりもパターンピッチが大きいものが多い。パターンピッチが大きくなると、マクロ撮像を行った場合でも合焦点位置において被検査画像中でパターンが解像してしまう。このパターン解像と呼ばれる現象は、その発生様式が、代表的なムラ欠陥として知られるスジムラと酷似していることや、あるいは表示装置画素との干渉によるモアレを発生させるなどということから、被処理画像上にて所謂擬似欠陥として振舞ってしまう。検査画像上で実欠陥と擬似欠陥との弁別を行う事は極めて難しく、検査精度が低下してしまう問題がある。
【0007】
パターン解像影響を低減させる手法としては光学倍率調整およびデフォーカスを挙げることができる。光学倍率調整方法としては、例えば特許文献2として、発明者が先願しているモアレ発生を防ぐことを目的とした発明を挙げることが出来るが、これはパターン解像影響とムラ欠陥との弁別を考慮したものではない。またデフォーカスによるパターン解
像影響低減方法としては、例えば特許文献3として、シャドウマスクにおけるムラ検査方法にて、意図的に焦点位置をずらした状態で撮像し画像取得を行っている例が挙げられるが、基板の被検査面に対して斜めから光を照射して回折光を捉える方法ではない。特許文献1でも示したように、やはり周期性パターンにおけるムラを安定して検出するためにはパターンにおける回折像を利用するのが有効であることが公知であるとされてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−275609号公報
【特許文献2】特願2009−224697号
【特許文献3】特開2007−271591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基板上にパターンが2次元的、周期的に形成された被検査基板に照明光を斜め入射し、パターンにより生じる回折光を、光学系を介し撮像素子上に結像させ画像取得を行いムラ欠陥検査を行う検査装置の撮像系における、検査条件の調整用パターン、それを用いた検査条件の調整方法を提供することである。
【0010】
すなわち、本発明の検査条件の調整用パターン、それを用いた検査条件の調整方法を用いれば、あらかじめ、様々なパターンピッチやサイズを有するパターンに対する適切な検査条件(光学倍率、焦点位置、デフォーカス量、証明条件)を効率よく決めることができる。さらに、実際の製品の検査条件を決める際に、調整用パターンのうち実際の製品に類似したパターンピッチやサイズのパターンの検査条件から検討を始めれば、手際よく検査条件を決めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、本発明の請求項1に係る発明は、周期性パターンが形成された基板のムラ欠陥検査を行うムラ欠陥検査装置の、光学系の調整を行う際に用いるムラ検査条件の調整用パターンであって、前記基板と同一の材料でかつ同一の製法でパターンが形成され、該パターンが互いに直行するX方向又は/及びY方向に配列した複数の矩形領域からなり、各矩形領域では、X方向がパターンピッチdxに対し、最小値をdx_min、最大値をdx_max、パターンピッチ増分量をΔdx、又は/及びY方向がパターンピッチdyに対し、最小値をdy_min、最大値をdy_max、パターンピッチ増分量をΔdy、とした場合、前記パターンはX方向に、dx_min、dx_min+Δdx、dx_min+2×Δdx、・・・、dx_min+N×Δdx(Nは自然数)、dx_max、のうち少なくとも1種類のパターンピッチにてパターンが配列し、又は/及びY方向に、dy_min、dy_min+Δdy、dy_min+2×Δdy、・・・、dy_min+M×Δdy(Mは自然数)、dy_max、のうち少なくとも1種類のパターンピッチにて、パターンがマトリクス状にX、又は/及びY方向に等間隔で配列していることを特徴とする検査条件の調整用パターン。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、前記パターン形状が、ライン、矩形、格子のいずれかの形状であることを特徴とする請求項1に記載の検査条件の調整用パターンである。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、前記基板が、波長365nm〜436nmの範囲内における所定の波長域の光を露光するためのフォトマスクであることを特徴とする請求項1または2に記載の検査条件の調整用パターンである。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1〜3いずれかに記載の検査条件の調整用パターンを用いる検査方法において、前記基板上に形成された周期性パターンの、ピッチ、サイズ等の情報を入力する被検査パターン情報入力工程と、前記調整用パターンの被撮像面内方向における位置を決める工程と、撮像倍率を決める工程と、前記調整用パターンに照明する照明光照射角度を決める工程と、焦点位置調整を行う工程と、デフォーカス工程と、前記調整用パターンを撮像し被処理画像を取得する撮像工程と、被処理画像からパターン解像による影響有無判定を行う工程と、を含むことを特徴とする検査条件の調整方法である。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、ムラ検査条件の調整用パターンに照明し、周期性パターンにより生じる回折光のうち、垂直な回折光のみを抽出する光学系を用いたことを特徴とする請求項4に記載のムラ検査条件の調整用パターンを用いた検査条件の調整方法である。
【0016】
本発明の請求項6に係る発明は、前記撮像倍率決める工程が、電動式ズームレンズを用いたことを特徴とする請求項4または5に記載の検査条件の調整方法である。
【0017】
本発明の請求項7に係る発明は、前記照明光照射角度を決める工程が、回折格子方程式から決定される照明角度を用いることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の検査条件の調整方法である。
【0018】
本発明の請求項8に係る発明は、前記デフォーカス工程が前記合焦点位置を被撮像面に対して鉛直に遠ざける方向にずらすことを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の検査条件の調整方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の検査条件の調整用パターン、それを用いた検査条件の調整方法によれば、パターンが2次元的、周期的に形成された被検査基板に照明光を斜め入射し、パターンより生じる回折光を、光学系を介し撮像素子上に結像させ画像取得を行いムラ欠陥検査を行う検査装置において、実際の製品の検査条件を決める際に、パターン解像の影響が出にくい検査条件を効率よく決めることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るムラ検査条件の調整用パターンにおいて、マスターパターンとしてライン形状を用いた場合のパターン模式図。
【図2】本発明に係るムラ検査条件の調整用パターンにおいて、マスターパターンとして矩形形状を用いた場合のパターン模式図。
【図3】本発明に係るムラ検査条件の調整用パターンにおいて、マスターパターンとして格子形状を用いた場合のパターン模式図。
【図4】本発明に係る一実施形態の検査条件の調整方法を適用するムラ欠陥検査装置構成の一部を概略的に示した模式図である。
【図5】本発明に係る一実施形態の検査条件の調整方法を示すフローチャート図である。
【図6】本発明に係る一実施形態の検査条件の調整方法における、基板と投光方向θとの対応関係を示す図である。
【図7】本発明に係る一実施形態の検査条件の調整方法における、被処理画像に対する矩形計算領域の定義方法を模式的に示す図である。
【図8】本発明に係る一実施形態の検査条件の調整方法における、被処理画像からの積算値ΣIと比較基準値Σ0の算出方法を模式的に示す図である。
【図9】本発明に係る一実施形態の検査条件の調整方法における、パターン解像影響評価値Cに対する判定例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るムラ検査条件の調整用パターン及びそれを用いた検査条件の調整方法の一実施形態について説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るムラ検査条件の調整用パターンにおいて、マスターパターンとしてライン形状を用いた場合のパターン1の模式図である。なお、本実施形態のムラ検査条件の調整用パターンは、被検査測定物と同じ材質の基材2上に、被検査測定物と同じ製法でパターン部3を形成したものであり、例えばフォトマスクなど、エッチングにより製作されるものを挙げることができる。
【0023】
図1において、Y方向において適用すべきパターンピッチdyに対し、最小値をdy_min、最大値をdy_max、Y方向におけるパターンピッチ増分量をΔyとした場合、パターン部3は、線幅dのラインパターンが、dy_min、dy_min + Δdy、dy_min + 2 x Δdy、・・・、dy_min + M x Δdy(Mは自然数)、dy_max、というように、dy_min 〜 dy_maxの範囲でパターンピッチが異なる矩形領域をY方向に等間隔に配列させたものとする。また、アライメントマークなど装置機械軸位置調整に必要とされるアクセサリーパターンを適宜配置させても良い。
【0024】
図2は、本発明に係るムラ検査条件の調整用パターンにおいて、マスターパターンとして矩形形状を用いた場合のパターン4の模式図である。なお、本実施形態のムラ検査条件の調整用パターンは、図1にて示したパターンと同様に、被検査測定物と同じ材質の基材5上に、被検査測定物と同じ製法でパターン部6を形成したものである。
【0025】
図2において、X方向において適用すべきパターンピッチdxに対し、最小値をdx_min、最大値をdx_max、X方向におけるパターンピッチ増分量をΔx、X方向におけるパターンサイズをx1とし、Y方向において適用すべきパターンピッチdyに対し、最小値をdy_min、最大値をdy_max、Y方向におけるパターンピッチ増分量をΔy、Y方向におけるパターンサイズをy1とした場合、パターン部6は、矩形形状パターンがX方向において、dx_min、dx_min + Δdx、dx_min + 2 x Δdx、dx_min + N x Δdx(Nは自然数)、dx_max、というように、dx_min 〜 dx_maxの範囲でパターンピッチが異なり、Y方向において、dy_min、dy_min + Δdy、dy_min + 2 x Δdy、・・・、dy_min + M x Δdy(Mは自然数)、dy_max、というように、dy_min 〜 dy_maxの範囲でパターンピッチが異なる矩形領域をX、Y方向にそれぞれ等間隔に配列させたものとする。また、アライメントマークなど装置機械軸位置調整に必要とされるアクセサリーパターンを適宜配置させても良い。
【0026】
図3は、本発明に係るムラ検査条件の調整用パターンにおいて、マスターパターンとして格子形状を用いた場合のパターン7の模式図である。なお、図1、図2で示した場合と同様、被検査測定物と同じ材質の基材8上に、被検査測定物と同じ製法でパターン部9を形成したものである。
【0027】
図3においても、図2の場合と同様に、X方向において適用すべきパターンピッチdxに対し、最小値をdx_min、最大値をdx_max、X方向におけるパターンピッチ増分量をΔx、X方向におけるパターンサイズをx1とし、Y方向において適用すべきパターンピッチdyに対し、最小値をdy_min、最大値をdy_max、Y方向におけるパターンピッチ増分量をΔy、Y方向におけるパターンサイズをy1とした場合、パタ
ーン部9は、矩形形状パターンがX方向において、dx_min、dx_min + Δdx、dx_min + 2 x Δdx、・・・、dx_min + N x Δdx(Nは自然数)、dx_max、というように、dx_min 〜 dx_maxの範囲でパターンピッチが異なり、Y方向において、dy_min、dy_min + Δdy、dy_min + 2 x Δdy、・・・、dy_min + M x Δdy(Mは自然数)、dy_max、というように、dy_min 〜 dy_maxの範囲でパターンピッチが異なる矩形領域をX、Y方向にそれぞれ等間隔に配列させたものとする。また、アライメントマークなど装置機械軸位置調整に必要とされるアクセサリーパターンを適宜配置させても良い。
【0028】
以上、ライン、矩形、格子の代表的な3種類のパターンをマスターパターンとした形態について上記の通り示したが、勿論検査対象となるパターン形状に応じ、同様の手法を用いて他形状のパターン部を有するムラ検査条件の調整用パターンを作成しても良い。
【0029】
また、本発明に係るムラ検査条件の調整用パターンの作成には、それ自体にムラ欠陥等の欠陥が発生することが無きよう、パターン部の寸法精度および位置精度が限りなく設計値に近くなるような高精度な製造装置を用いて作成する。例えばフォトマスクの場合には、寸法精度および位置精度としてそれぞれ±4nm程度が保証された描画装置を用いてパターン部を形成することが望ましい。
【0030】
図4は本発明に係る一実施形態の方法を適用するムラ欠陥検査装置の一部を概略的に示した構成図である。図4では透過回折光を得るための装置構成例を示している。なお、本装置は外乱光や迷光を極力低減させた暗環境かつ被検査基板60への異物付着を防止するクリーン環境で稼動されることが望ましい。
【0031】
図4に示すように、本装置は透過照明部10と、被検査基板60の位置決め動作および基板搬送動作が可能なX−Yステージ部20と、被検査基板60の位置決めを実施するためのアライメント用撮像部30と、被検査基板60からの回折像を撮像し、被処理画像取得を実施する撮像部40と、処理・制御部100から構成されている。
【0032】
透過照明部10では、円弧レール11がターンテーブル12上に設置されている。円弧レール11には照明ヘッド13が設けられており、光源14からはライトガイド15を用いて導光している。円弧レール11上で照明ヘッド13を駆動することによって被検査基板60の被撮像面に対して垂直方向の照射角度調整を可能としている(なお、この駆動軸をφ軸と定義する)。円弧レール11上のどの位置にあっても照明ヘッド13は、X−Yステージ部20上の被検査基板60の被撮像面に対して、様々な照射角度からの透過照明が可能となっている。またターンテーブル12により円弧レール11を被撮像面に対して水平方向に回転させることが可能であり(この駆動軸をθ軸と定義する)、水平方向における任意方向から照明光の照射が可能となっている。
【0033】
なお、照明ヘッド13には平行光学系が設けられている。光源14にはフィルターチェンジャー機構が設けられており、複数の波長選択フィルタを用いることが可能となっているが、本実施形態ではピーク波長540nmのバンドパスフィルタを用いている。また、光源14としては十分な照度を有しているものが望ましく、本実施形態では光源14にはメタルハライド光源装置を用いている。仮に照度が不足するという場合には、複数台の光源を用いても良い。
【0034】
被検査基板60は、X−Yステージ部20におけるワークストッパー21にてX及びY方向で固定される。なお、ワークストッパー21は基板サイズに応じて固定位置の調整が可能である。X−Yステージ部20は、被検査基板60を図7のX軸方向およびY軸方向
に平行移動する機能を有する。これによって、予め設定した動作手順に従って被検査基板60をX軸およびY軸方向に駆動する。
【0035】
アライメント用撮像部30は、カメラ31、レンズ32、照明33、そして照明制御装置34から構成される。被検査基板60上のアライメントマークを含む領域に対して同軸落射形式で照明光が照射され、その観察画像がカメラ31により撮像される。なお、照明制御装置34により、照明は点灯/消灯制御および照明光強度の調節ができるようになっており、実際の制御動作は処理・制御部100により実施される。なお、本実施形態ではカメラ31にはエリアセンサーカメラを、レンズ32には同軸落射形式の固定倍率テレセントリックレンズを、そして照明33には高輝度スポット型の白色LEDを用いている。
【0036】
撮像部40は、カメラ41と、平行光学系42と、Zステージ43から構成される。カメラ41としては、可視光域に分光感度特性を有している光電変換素子を具備していることが望ましい。本実施形態では、カメラ41としてエリアセンサーカメラを用いているが、ラインセンサーカメラを用いても良い。平行光学系42には電動式テレセントリックズームレンズを用いている。このとき、レンズのテレセントリシティとして0.5°以下を満足するようなものが望ましい。また、Zステージ43によりカメラ41とレンズ42が、被検査基板60上の被撮像面に対して鉛直方向に移動することができ、この動作によって焦点位置の調整が可能となる。
【0037】
処理・制御部100では、情報処理手段101にて透過照明部10、X−Yステージ部20、アライメント用撮像部30、および撮像部40の動作管理および制御を行う。
【0038】
図5は、本発明に係る一実施形態による検査条件の調整方法を示すフローチャート図である。本発明に係る一実施形態による検査条件の調整方法は、S1〜S10という一連のステップによって行われる。以下、光学倍率および焦点位置調整用パターンとして、図1に示したパターン1を用いた場合の実施例を、各ステップ順に説明する。なお、基板の着脱等のオペレーション操作についてはフローから割愛する。
【0039】
検査適用する製品におけるパターンピッチ、サイズ、パネルレイアウト等のパターン情報を、情報処理手段101へ入力する(S1)。またこの段階で、前述したθ軸の情報も入力する。本実施例ではθ=0゜のみである。ここで、図6に基板とθとの対応関係を示す(この場合は、例としてθ=0゜、90゜の2種類について定義した)。
【0040】
X−Yステージ部20とアライメント用撮像部30により、パターン1に対するアライメント動作を実施する(S2)。
【0041】
平行光学系42におけるレンズ倍率を設定する(S3)。本実施例では、カメラ41における撮像素子サイズとレンズ倍率によって決まる撮像分解能 r と、パターンピッチdyとの関係が、次式を満たすようなレンズ倍率を設定する。

r = h × dy (1)

ここでhは相対比を表し、正の整数であることとする。
【0042】
10°≦φ≦60°の範囲で、照明照射角度φを設定する(S4)。このとき、以下の回折格子方程式により得られるφ(m)のうち、いずれかの角度に設定することとする。

φ(m)=Sin−1(mλ/dy) (2)
【0043】
X―Yステージ部20を駆動させ、パターン1において、S1にて入力された製品のパターンピッチdyに最も近い値のパターンピッチを有するパターン部3を撮像位置へ移動する(S5)。なお、照明ヘッド13は、S4で設定したφ位置へ駆動させる。
【0044】
カメラ41にてパターン部3の画像取込を行いながら、Zステージ43によりZ軸方向への調整を行い、パターン部3表面に焦点位置が合うように調整する(S6)。
【0045】
カメラ42にて画像取込を行いながら、画像処理を実施するのに十分な画像輝度が確保されるように、光源14からの出力を調節し取込画像輝度レベルの調整を行う(S7)。
【0046】
カメラ41にて画像取込を行いながら、Zステージ43によりZ軸方向への微調整を行い、焦点位置からのデフォーカスを実施する(S8)。このとき、被撮像面に対してZ軸は鉛直に遠ざける方向に駆動させる。
【0047】
S3〜S8までのステップにて設定された条件に基づき、パターン部3における被処理画像取込を実施する(S9)。
【0048】
S9にて得られた被処理画像に対し、パターン解像影響評価値Cの算出を実施する(S10)。ここで、本実施形態におけるS10でのパターン解像影響評価値C算出方法について、以下C1〜C3のステップ順に簡単に説明する。
【0049】
図7に示すように、S9にて得られた被処理画像に対して矩形計算領域を定義し、計算領域内の各画素における輝度値をXおよびY方向に別個に積算し、積算値ΣIを計算する(C1)。なお、積算値は、積算した画素数で割った平均値を取り扱う。図7では矩形計算領域を被処理画像内側へ内挿した状態を示したが、矩形計算領域は被処理画像前面に設定しても良い。
【0050】
C1にて計算した積算値に対する比較基準値Σ0を計算する(C2)。積算値からの比較基準値導出について図8に模式的に示す。本一実施形態では比較基準値の導出方法として移動平均処理を利用する。
【0051】
以下の演算により、評価値Cを算出する(C3)。

C=|ΣI − Σ0| (3)

なお、本演算についてはX方向、Y方向それぞれについて行うものとするが、本一実施形態ではX方向のみについて行った。以上C1〜C3を、パターン解像影響評価値Cの算出方法に関する説明とする。
【0052】
S10により得られた結果を基に、以下の条件に基づいて状態判定を行い、撮像部40におけるデフォーカス量が適正かどうかの判定を行う。パターン解像影響評価値Cに対する判定用閾値をC_Thと定義しておき、

C < C_Th (4)

という条件を満たした場合、デフォーカス量が適正であると判定する。図9に、パターン解像影響評価値Cに対する判定例として、ライン形状パターンにおいてデフォーカスが不十分な例(a)、および十分な例(b)について模式的に示す。(a)では画像Y方向において、全域でC > C_Thとなっているのに対し、(b)では全域でC < C_Thが成立している。
【0053】
デフォーカスは、パターン解像の影響を低減させるために行うものであるが、デフォーカス量が不十分だと図9(a)の例のようにパターン解像の影響を消すことができないことがわかる。一方、デフォーカス量が適正だと、図9(b)の例のようにパターン解像の影響を十分低減できることがわかる。
【0054】
このようにして、ある値のパターンピッチやサイズを有するパターン部3について、パターン解像影響を排除するためのデフォーカス量を定量的に決定することが可能となる。
【0055】
以上のような本発明の方法により、ある値のパターンピッチやサイズを有するパターン部3について、検査条件(撮像分解能、レンズ倍率、照明照射角度、焦点位置、デフォーカス量など)を関連付けて記録しておく。さらに、基材2上の他のパターン部3についても同様にして検査条件に決定して記録しておく。
【0056】
実際の製品の検査条件を決める際には、実際の製品と類似したパターンピッチやサイズを有するパターン部3の検査条件を選択し、そこから検査条件の検討を始めれば、手際よく検査条件を決めることができる。
【0057】
実際の製品のパターン部を用いて、本発明に係る方法を採用した場合、実際の製品のパターン部においては既にムラ欠陥が内在している可能性があるため、被処理画像中に解像してしまったパターンとムラ欠陥との弁証が非常に困難となる。よって、正確なムラ検査を行うのに適切なデフォーカス量を導出することが難しい。したがって、本発明に係る一実施形態の方法のように、ムラ欠陥が存在しないように作り込みを行ってマスターパターン上で事前に最適なデフォーカス量を設定することは、実製品パターン部に対して正確なムラ検査を実施する上で非常に有効な手段となる。
【0058】
以上説明したように、本発明によれば、パターンが2次元的、周期的に形成された被検査基板に証明光を斜め入射し、パターンより生じる回折光を、光学系を介し撮像素子上に結像させ画像取得を行いムラ欠陥検査を行う検査装置において、実際の製品の検査条件を決める際に、パターン解像の影響が出にくい検査条件を効率よく決めることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 パターン
2 基材
3 パターン部
4 パターン
5 基材
6 パターン部
7 パターン
8 基材
9 パターン部
10 透過照明部
11 円弧レール
12 ターンテーブル
13 照明ヘッド
14 光源
15 ライトガイド
20 X−Yステージ部
21 ワークストッパー
30 アライメント用撮像部
31 カメラ
32 レンズ
33 照明
34 照明制御装置
40 撮像部
41 カメラ
42 平行光学系
43 Zステージ
60 基板
100 処理・制御部
101 情報処理手段
102 信号入力装置
103 信号入力装置
104 表示手段
105 対人操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期性パターンが形成された基板のムラ欠陥検査を行うムラ欠陥検査装置の、光学系の調整を行う際に用いる検査条件の調整用パターンであって、前記基板と同一の材料でかつ同一の製法でパターンが形成され、該パターンが互いに直行するX方向又は/及びY方向に配列した複数の矩形領域からなり、各矩形領域では、X方向がパターンピッチdxに対し、最小値をdx_min、最大値をdx_max、パターンピッチ増分量をΔdx、又は/及びY方向がパターンピッチdyに対し、最小値をdy_min、最大値をdy_max、パターンピッチ増分量をΔdy、とした場合、前記パターンはX方向に、dx_min、dx_min+Δdx、dx_min+2×Δdx、・・・、dx_min+N×Δdx(Nは自然数)、dx_max、のうち少なくとも1種類のパターンピッチにてパターンが配列し、又は/及びY方向に、dy_min、dy_min+Δdy、dy_min+2×Δdy、・・・、dy_min+M×Δdy(Mは自然数)、dy_max、のうち少なくとも1種類のパターンピッチにて、パターンがマトリクス状にX、又は/及びY方向に等間隔で配列していることを特徴とする検査条件の調整用パターン。
【請求項2】
前記パターンの形状が、ライン、矩形、格子のいずれかの形状であることを特徴とする請求項1に記載の検査条件の調整用パターン。
【請求項3】
前記基板が、波長365nm〜436nmの範囲内における所定の波長域の光を露光するためのフォトマスクであることを特徴とする、請求項1または2に記載の検査条件の調整用パターン。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の検査条件の調整用パターンを用いる検査方法において、前記基板上に形成された周期性パターンの、ピッチ、サイズ等の情報を入力する被検査パターン情報入力工程と、前記調整用パターンの被撮像面内方向における位置を決める工程と、撮像倍率を決める工程と、前記調整用パターンに照明する照明光照射角度を決める工程と、焦点位置調整を行う工程と、デフォーカス工程と、前記調整用パターンを撮像し被処理画像を取得する撮像工程と、被処理画像からパターン解像による影響有無判定を行う工程と、を含むことを特徴とする検査条件の調整方法。
【請求項5】
前記調整用パターンに照明し、周期性パターンにより生じる回折光のうち、垂直な回折光のみを抽出する光学系を用いたことを特徴とする請求項4に記載の検査条件の調整方法。
【請求項6】
前記撮像倍率を決める工程が、電動式ズームレンズを用いたことを特徴とする請求項4または5に記載の検査条件の調整方法。
【請求項7】
前記照明光照射角度を決める工程が、回折格子方程式から決定される照明角度を用いることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の検査条件の調整方法。
【請求項8】
前記デフォーカス工程が、焦点位置を被撮像面に対して鉛直に遠ざける方向にずらすことを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の検査条件の調整方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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