説明

検査治具

【課題】片手作業者であっても、使える検査治具を提供することを課題とする。
【解決手段】検査治具10は、ハーネス113、114を載せる検査台20と、移動可能に検査台20に取付けられるスライダ30とからなる。片方の手39でスライダ30を操作することができる。並行して、手の平41でスイッチボックス112をストッパ兼ワーク載せ台26に押さえることができる。結果、片手作業が可能となる。加えて、検査台20に、カプラー115を示す写真42を付ける。作業者はこの写真又イラストに合わせてカプラーをワーク挟持部に臨ませる。誤セットが無くなるため、作業能率の向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状又は紐状のワークの長手方向途中に特定部材が取付られ、この特定部材の取付位置が所定の位置にあるか否かを目視により調べるときに使用される検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状のワークの検査治具は、各種のものが知られている(例えば、特許文献1(図4)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図7は従来の検査治具の斜視図であり、検査治具100は、同軸ケーブル101の端末の形状の良否を判定する治具であり、V字溝102を有する固定側電極板103と、V字溝104を有し固定側電極板103に接離する可動側電極板105と、この可動側電極板105を移動させるエアシリンダ106と、可動側電極板105の位置を監視する位置検出センタ107とからなる。
【0004】
固定側電極板103と可動側電極板105とで同軸ケーブル101の端末を挟み、電気的なデータを取得し、内部絶縁被覆108の長さが適当であるか否かを調べることができる。
【0005】
ところで、類似した棒状のワークとして、図8に示す電装品がある。
図8に示すように、ワーク110は、シーソースイッチ111を有するスイッチボックス112と、このスイッチボックス112から延びる複数本(この例では2本)のハーネス113、114と、これらのハーネス113、114の先端に取付けられるカプラー115と、複数本のハーネス113、114を束ねる結束テープ116とからなる。
【0006】
カプラー115は、本体部より小径で角柱形状のネック部117を備え、このネック部117からハーネス113、114が延びる。後の説明に使用するので、ネック部117の厚さをD1、結束テープ116の長さをD2とする。
【0007】
車体フレームに沿って延ばされるメインハーネスにカプラー115を結合することで、シーソースイッチ111のオンオフ情報を、車載制御部へ送ることができる。そのため、自動二輪車等の車両では、上記形態のワーク110は、多数使用される。
【0008】
ところで、結束テープ116は、ハーネス113、114を効果的に結束させるには、自ずと最適位置が定まる。この最適位置から大きくずれている場合には、不合格となる。
【0009】
結束テープ116の位置を検査する検査治具は、図9に示される検査治具120が考えられる。すなわち、特許文献1の検査治具100に類似する検査治具120で、従来は、次のような検査が行われてきた。
検査治具120の固定側ブロック121と、エアシリンダ122で駆動される可動側ブロック123とで、カプラー115を挟持する。これで、カプラー115の位置決めもなされる。
【0010】
検査員は、例えば右手126でスイッチボックス112を引き、左手127でゲージプレート128を持ち、このゲージプレート128をネック部117の端部に当てながらハーネス113、114に沿わせる。結束テープ116が、合格範囲129に収まっていれば合格と判定する。
【0011】
しかし、検査治具120には次に述べる問題点がある。
先ず、エアシリンダ122が必要であるため、このエアシリンダ122に高圧空気を送る空気源が必要となり、高圧空気の供給停止を行う切替弁が必要となるため、検査治具120は大規模になり、重くなる。
【0012】
また、スイッチボックス112を引き、ゲージプレート128を持つには、所定以上の握力が必要である。
また、スイッチボックス112を引き、ゲージプレート128を持つには、両手作業が前提となる。
【0013】
近年、棒状又は紐状のワークの検査のような軽作業を、障がい者に委ねることが企画されている。障がい者の社会的自立を促すことが期待できるからである。
ところで、障がい者には、手指機能の弱い者(以下、弱手作業者と記す。)や片手のみ自由になる者(以下、片手作業者と記す。)が多く含まれる。
このような弱手作業者や片手作業者では、検査治具120は使いこなせない。
【0014】
そこで、弱手作業者や片手作業者であっても、使える検査治具が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−204115公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、弱手作業者や片手作業者であっても、使える検査治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に係る発明は、棒状又は紐状のワークの長手方向途中に特定部材が取付られ、この特定部材の取付位置が所定の位置にあるか否かを目視により調べるときに使用される検査治具であって、
この検査治具は、前記ワークを載せる検査台と、前記ワークの長手方向に移動可能に前記検査台に取付けられるスライダとからなり、
前記検査台は、前記ワークの一端部を位置決めしつつ挟むワーク挟持部を備えると共にこのワーク挟持部から所定距離だけ離れた部位に付され前記特定部材の中央位置の合格範囲を示す合格範囲表示部を備え、
前記スライダは、外から前記合格範囲表示部を透視することができる透視部を備え、この透視部に3本の平行な線を備え、
これらの3本の線は、前記ワークの長手軸に直角に引かれる第1の線と、前記第1の線から前記特定部材の長さだけ離した位置に引かれる第2の線と、この第2の線と前記第1の線との中間に引かれるセンターラインとからなり、
前記検査台に前記ワークを位置決めし、前記第1の線及び第2の線が前記特定部材の一端及び他端に重なるように前記スライダを移動させ、この移動後に前記センターラインが前記合格範囲表示部内にあるか否かで合否判定することができることを特徴とする。
【0018】
請求項2に係る発明では、ワークは、スイッチボックスと、このスイッチボックスから延びる複数本のハーネスと、これらのハーネスの先端に取付けられるカプラーとからなり、前記特定部材は、前記複数本のハーネスを束ねる結束テープであることを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る発明は、ワーク挟持部は、前記カプラーを挟む形態とされ、前記ワーク挟持部の近傍にて、前記検査台に、前記カプラーを示す写真又はイラストが付されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明では、ワークを検査台に載せるため、このワークの端部は、手の平で押さえる程度で止めることができる。スライダも検査台に移動可能に載せられているので、手で押し引きする程度で移動させることができる。
すなわち、本発明によれば、弱手作業者であっても、使用可能な検査治具が提供される。
【0021】
また、ワークが小形であれば、ワークの端部を押さえる手で、スライダをも移動させることが可能となる。結果、片手作業者であっても、使用可能な検査治具が提供される。
加えて、エアシリンダ等のアクチュエータが不要であるため、検査治具の小型、軽量化が容易に達成できる。
【0022】
請求項2に係る発明では、スイッチボックスと、複数本のハーネスと、これらのハーネスの先端に取付けられるカプラーと、複数本のハーネスを結束する結束テープからなる電送部品の検査を、弱者作業者や片手作業者に行わせることができる。
【0023】
請求項3に係る発明は、検査台のワーク挟持部近傍に、カプラーを示す写真又はイラストが付されている。ハーネスの一端にスイッチボックスが取付けられ、他端にカプラーが取付けられていると、ワーク挟持部にカプラーとスイッチボックスの何れを臨ませるかの選択が重要になる。ワーク挟持部に誤ってスイッチボックスを臨ませると、セットをやり直す必要があり、作業能率が低下する。
本発明では、検査台にカプラーを示す写真又はイラストが付されているため、作業者はこの写真又イラストに合わせてカプラーをワーク挟持部に臨ませる。
誤セットが無くなるため、作業能率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る検査治具の分解斜視図である。
【図2】検査治具の平面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】検査治具の作用説明図である。
【図6】片手作業の様子を示す図である。
【図7】従来の検査治具の斜視図である。
【図8】紐状のワークの斜視図である。
【図9】従来の検査方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、検査治具10は、ワーク(図8、符号110)を載せる検査台20と、ワークの長手方向に移動可能に検査台20に取付けられるスライダ30とからなる。
【0027】
検査台20は、カプラー(図8、符号115)の一部を収納する収納溝21を一端に有する矩形台板22と、この矩形台板22の下面に付した脚材23、23と、矩形台板22に設けられワークの一端部を位置決めしつつ挟むワーク挟持部24と、ワーク挟持部24から所定距離だけ離れた部位に付され特定部材(図8、符号116)の中央位置の合格範囲を示す合格範囲表示部25と、矩形台版22の他端に付されたストッパ兼ワーク載せ台26とからなる。
【0028】
スライダ30は、アクリル板などからなる透視部31と、この透視部31の両端に付属されるL字部材32、32とからなり、透視部31に3本の平行な線33、34、35を備えている。
【0029】
これらの3本の線33、34、35は、ワークの長手軸に直角に引かれる第1の線33と、第1の線33から特定部材(特定部材は、例えば図8に示される結束テープ116である。)の長さD2だけ離した位置に引かれる第2の線34と、この第2の線34と第1の線33との中間に引かれるセンターライン35とからなる。
【0030】
図2に示すように、スライダ30の透視部31を通して、合格範囲表示部25が見える。スライダ30は、ストッパ兼ワーク載せ台26に当たるまで、図上下に移動させることができる。
【0031】
図3に示すように、ワーク挟持部24は、矩形台板22から立てた支柱37と、この支柱37の上部から矩形台板22に平行に延ばしたアーム38とからなり、アーム38と矩形台板22との間隔D3は、図8に示すカプラー115のネック部117の厚さD1に0.5〜1.5mmを加えた値に設定される。
【0032】
図4に示されるように、スライダ30は、L字部材32、32で水平移動(図で左右の移動)及び垂直移動(図で上下の移動)が規制されているため、図面表裏方向へのみ移動する。
【0033】
以上の述べた検査治具10の作用を図5に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、収納溝21にカプラー115を嵌め、結束テープ116がスライダー30に載り、スイッチボックス112がストッパ兼ワーク載せ台26に載るようにして、ワーク110を検査治具10に載せる。
【0034】
次に、矢印(1)のように、ワーク110を横移動させ、ネック部117をワーク挟持部24へ挿入する。次に、第1の線33が結束テープ116の一端116aに重なり、第2の線34が結束テープ116の他端116bに重なるように、スライダ30を移動する(矢印(2))。
【0035】
結果、図5(b)に示すように、ワーク挟持部24でカプラー115のネック部117が挟まれる。また、第1の線33が結束テープ116の一端116aに重なり、第2の線34が結束テープ116の他端116bに重なっている。この状態で、センターライン35が合格範囲表示部25に収まっているか否かを目視で確認する。図では収まっているので合格である。
【0036】
ワーク110を検査治具10に載せるため、このワーク110の端部(この例ではスイッチボックス112)は、手の平で押さえる程度で止めることができる。スライダ30も検査治具10に移動可能に載せられているので、手で押し引きする程度で移動させることができる。
すなわち、本発明によれば、弱手作業者であっても、使用可能な検査治具が提供される。
【0037】
次に、片手作業の形態を説明する。
ワークが小形で、検査治具10が小型であれば、図6に示すように、片方の手39でスライダ30を操作することができる。並行して、手の平41でスイッチボックス112をストッパ兼ワーク載せ台26に押さえることができる。結果、片手作業が可能となる。
【0038】
また、好ましくは、ワーク挟持部24の近傍にて、検査台20に、カプラー115を示す写真(又はイラスト)42を付すことが推奨される。写真42等は、貼り付け、焼き付け、プリントの何れの方法でも簡単に付すことができる。
【0039】
ハーネス113、114の一端にスイッチボックス112が取付けられ、他端にカプラー115が取付けられていると、ワーク挟持部24にカプラー115とスイッチボックス112の何れを臨ませるかの選択が重要になる。ワーク挟持部24に誤ってスイッチボックス112を臨ませると、セットをやり直す必要があり、作業能率が低下する。
本発明では、検査台20にカプラー115を示す写真(又はイラスト)42が付されているため、作業者はこの写真(又イラスト)42に合わせてカプラー115をワーク挟持部24に臨ませる。誤セットが無くなるため、作業能率の向上が図れる。
【0040】
尚、本発明の検査治具は、カプラーからハーネスが延び、このハーネスの途中にテープが巻かれている電装品の検査に好適であるが、検査対象物は、棒状のワーク又は紐状のワークであって、長手方向の途中に突起や瘤や分岐や小部品(これらは全て特定部材となる。)などが付されているときに、特定部材の位置が所定の位置にあるか否を確かめる必要があるワークであれば良く、ワークの種類は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の検査治具は、カプラーからハーネスが延び、このハーネスの途中にテープが巻かれている電装品の検査に好適である。
【符号の説明】
【0042】
10…検査治具、20…検査台、24…ワーク挟持部、25…合格範囲表示部、30…スライダー、31…透視部、33…第1の線、34…第2の線、35…センターライン、42…写真、110…ワーク、112…スイッチボックス、113、114…ハーネス、115…カプラー、116…特定部材(結束テープ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状又は紐状のワークの長手方向途中に特定部材が取付られ、この特定部材の取付位置が所定の位置にあるか否かを目視により調べるときに使用される検査治具であって、
この検査治具は、前記ワークを載せる検査台と、前記ワークの長手方向に移動可能に前記検査台に取付けられるスライダとからなり、
前記検査台は、前記ワークの一端部を位置決めしつつ挟むワーク挟持部を備えると共にこのワーク挟持部から所定距離だけ離れた部位に付され前記特定部材の中央位置の合格範囲を示す合格範囲表示部を備え、
前記スライダは、外から前記合格範囲表示部を透視することができる透視部を備え、この透視部に3本の平行な線を備え、
これらの3本の線は、前記ワークの長手軸に直角に引かれる第1の線と、前記第1の線から前記特定部材の長さだけ離した位置に引かれる第2の線と、この第2の線と前記第1の線との中間に引かれるセンターラインとからなり、
前記検査台に前記ワークを位置決めし、前記第1の線及び第2の線が前記特定部材の一端及び他端に重なるように前記スライダを移動させ、この移動後に前記センターラインが前記合格範囲表示部内にあるか否かで合否判定することができることを特徴とする検査治具。
【請求項2】
前記ワークは、スイッチボックスと、このスイッチボックスから延びる複数本のハーネスと、これらのハーネスの先端に取付けられるカプラーとからなり、
前記特定部材は、前記複数本のハーネスを束ねる結束テープであることを特徴とする請求項1記載の検査治具。
【請求項3】
前記ワーク挟持部は、前記カプラーを挟む形態とされ、前記ワーク挟持部の近傍にて、前記検査台に、前記カプラーを示す写真又はイラストが付されていることを特徴とする請求項2記載の検査治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−180035(P2011−180035A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45828(P2010−45828)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(507369936)ホンダ太陽株式会社 (17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】