説明

検査装置、および、配線回路基板の製造方法

【課題】カバー絶縁層中の異物の有無を精度よく検査することのできる検査装置、および、配線回路基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】カバー絶縁層に入射する入射光31を発光する光源ユニット2と、入射光31がカバー絶縁層の表面で反射された反射光32を受光するカメラユニット3とを備える検査装置1において、光源ユニット2に、ベース絶縁層の表面との角度が25°以下となるように、入射光31を発光する環状の第1発光部6と、ベース絶縁層の表面との角度が35〜65°となるように、入射光31を発光する環状の第2発光部7とを設け、その検査装置1を用いて、カバー絶縁層中の異物の有無を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、および、配線回路基板の製造方法、詳しくは、配線回路基板のカバー絶縁層中の異物の有無を検査するための検査装置、および、その検査装置が用いられる配線回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路付サスペンション基板などの配線回路基板は、金属支持層と、その上に順次積層される、ベース絶縁層、導体パターンおよびカバー絶縁層とを備えている。このような配線回路基板では、カバー絶縁層の形成後に、配線回路基板の全体外観を検査する自動外観検査装置(AVI:Automatic Visual Inspection)を用いて、カバー絶縁層中の異物の有無を検査している。
【0003】
このようなAVI装置として、例えば、絶縁フィルム、その上に形成される配線パターンおよびそれを被覆するカバーレイ層を備える長尺状のフィルムキャリアテープの上に対向配置される、上部照射手段、水平照射手段および顕微鏡を備える検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この検査装置において、上部照射手段は、LEDを光源とするリングライトとして形成されており、フィルムキャリアテープに対して、鉛直方向に対する入射角が3〜45度となるように、光を照射している。
【0005】
また、水平照射手段は、上部照射手段の下側において、直線状に延び、互いに間隔を隔てて対向配置される1対の蛍光灯から形成されており、フィルムキャリアテープに対して、鉛直方向に対する入射角が45〜90度となるように、光を照射している。
【0006】
そして、上記した上部照射手段および水平照射手段からの光がフィルムキャリアテープで反射された反射光を、顕微鏡によって読み取り、フィルムキャリアテープを検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−42956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、上記した特許文献1に記載の検査装置では、フィルムキャリアテープに対して水平に近い光を照射する水平照射手段が、直線状の1対の蛍光灯から形成されている。
【0009】
そのため、両蛍光灯の対向方向に沿って、凹凸が交互に連続し、比較的大きな2つの凸部間に、比較的小さな凸部が存在する場合(具体的には、フィルムキャリアテープの配線パターンが複数並列配置され、2つの配線パターンの間に、小さな異物が存在する場合)に、小さな凸部が大きな2つの凸部の影に入り、小さな凸部を検知することが困難な場合がある。
【0010】
つまり、微細な異物の有無を精度よく検査することができないという不具合がある。
【0011】
そこで、本発明は、カバー絶縁層中の異物の有無を精度よく検査することのできる検査装置、および、配線回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した本発明の検査装置によれば、ベース絶縁層、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターン、および、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層を備える配線回路基板における、前記カバー絶縁層中の異物の有無を検査するための検査装置であって、前記カバー絶縁層に入射する入射光を発光する発光ユニットと、前記入射光が前記カバー絶縁層の表面で反射された反射光を受光する受光ユニットとを備え、前記発光ユニットは、前記ベース絶縁層の表面との角度が25°以下となるように、前記入射光を発光する環状の第1発光部と、前記ベース絶縁層の表面との角度が35〜65°となるように、前記入射光を発光する環状の第2発光部とを備えていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の検査装置によれば、前記発光ユニットは、前記ベース絶縁層の表面との角度が15〜45°となるように、前記入射光を発光する環状の第3発光部を、さらに備えていることが好適である。
【0014】
また、本発明の検査装置によれば、前記入射光の波長が、450〜750nmであることが好適である。
【0015】
また、本発明の検査装置によれば、前記カバー絶縁層に対する前記入射光の透過率が、30%以下であることが好適である。
【0016】
また、本発明の検査装置によれば、前記カバー絶縁層に対する前記入射光の反射率が、10〜30%であることが好適である。
【0017】
また、本発明の配線回路基板の製造方法によれば、ベース絶縁層を形成する工程と、前記ベース絶縁層の上に導体パターンを形成する工程と、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように、カバー絶縁層を形成する工程と、上記の検査装置を用いて、前記カバー絶縁層中の異物の有無を検査する工程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の検査装置によれば、カバー絶縁層に入射する入射光を発光する発光ユニットが、ベース絶縁層の表面との角度が25°以下となるように、入射光を発光する環状の第1発光部と、ベース絶縁層の表面との角度が35〜65°となるように、入射光を発光する環状の第2発光部とを備えている。
【0019】
そのため、第1発光部からカバー絶縁層に対して、浅い角度(ベース絶縁層の表面との角度が25°以下)で入射される入射光と、第2発光部からカバー絶縁層に対して、深い角度(ベース絶縁層の表面との角度が35〜65°)で入射される入射光とが、ともに環状に入射される。
【0020】
これにより、カバー絶縁層の微細な凸部に対して、浅い角度で入射される入射光と、深い角度で入射される入射光とを、全方位から入射させることができ、微細な凸部を精度よく検知することができる。
【0021】
その結果、カバー絶縁層中の異物の有無を精度よく検査することができる。
【0022】
そして、そのような検査装置を用いた配線回路基板の製造方法によれば、カバー絶縁層中に存在する異物を精度よく検知することができ、配線回路基板のファインピッチ化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の検査装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す検査装置の斜視図である。
【図3】本発明の配線回路基板の製造方法を説明するための工程図であって、(a)は、金属支持基板を準備する工程、(b)は、ベース絶縁層を形成する工程、(c)は、導体パターンを形成する工程、(d)は、カバー絶縁層を形成する工程を示す。
【図4】カバー絶縁層中の異物の有無を検査する工程を説明するための説明図であって、(a)は、2つの配線の間に異物が存在する状態を示す断面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図5】実施例1におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(大)の画像を示す。
【図6】実施例1におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(中)の画像を示す。
【図7】実施例1におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(小)の画像を示す。
【図8】実施例2におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(大)の画像を示す。
【図9】実施例2におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(中)の画像を示す。
【図10】実施例2におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(小)の画像を示す。
【図11】比較例1におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(大)の画像を示す。
【図12】比較例1におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(中)の画像を示す。
【図13】比較例1におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(小)の画像を示す。
【図14】比較例2におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(大)の画像を示す。
【図15】比較例2におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(中)の画像を示す。
【図16】比較例2におけるカバー絶縁層の検査画像であって、ボイド(小)の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の検査装置の一実施形態を示す概略構成図である。図2は、図1に示す検査装置の斜視図である。
【0025】
検査装置1は、図1および図2に示すように、回路付サスペンション基板21(後述)のカバー絶縁層26(後述)中の異物の有無を検査するためのAVI装置であって、いわゆるリング照明による検知方式が採用されている。
【0026】
検査装置1は、発光ユニットとしての光源ユニット2と、受光ユニットとしてのカメラユニット3とを備えている。
【0027】
光源ユニット2は、いわゆるリング照明であって、カバー絶縁層26に入射する入射光31を発光する。また、光源ユニット2は、フレーム5、第1発光部6、第2発光部7および第3発光部8を備えている。
【0028】
フレーム5は、ドーム状の内面を有する略円筒形状に形成されている。詳しくは、フレーム5には、回路付サスペンション基板21(後述)へ入射される入射光31を通過させるための入射側開口11と、回路付サスペンション基板21(後述)からの反射光32を通過させるための反射側開口12とが形成されている。
【0029】
入射側開口11は、フレーム5の軸方向一端部において、フレーム5と中心を共有する略円形状に形成されている。
【0030】
反射側開口12は、フレーム5の軸方向他端部において、フレーム5と中心を共有するように、入射側開口11よりも小径な略円形状に形成されている。
【0031】
また、フレーム5の内面は、入射側開口11から反射側開口12へ向かって、連続的に屈曲されながら縮径され、ドーム状に形成されている。
【0032】
詳しくは、フレーム5の内面には、入射側開口11に連続する第1面13、反射側開口12に連続する第2面14、および、第1面13と第2面14との間に連続される第3面15が形成されている。
【0033】
第1面13は、フレーム5の中心軸線に対して、約10°の角度を形成するように傾斜され、フレーム5の周方向に沿って形成されている。
【0034】
第2面14は、フレーム5の中心軸線に対して、約50°の角度を形成するように傾斜され、フレーム5の周方向に沿って形成されている。
【0035】
第3面15は、フレーム5の中心軸線に対して、約30°の角度を形成するように傾斜され、フレーム5の周方向に沿って形成されている。
【0036】
つまり、フレーム5の内面は、入射側開口11から反射側開口12へ向かって、第1面13、第3面15、第2面14が順次連続されるように屈曲されながら縮径され、ドーム状に形成されている。
【0037】
第1発光部6は、フレーム5と中心軸線を共有する略円環形状に形成され、フレーム5の第1面13に設けられている。また、第1発光部6は、光源として、例えば、LED(発光ダイオード)、蛍光灯、白熱灯、ハロゲン灯などを備え、好ましくは、入射光31の波長の観点から、LEDを備えている。第1発光部6は、より好ましくは、整列配置された複数のLEDを備えている。
【0038】
第1発光部6は、フレーム5の中心軸線と直交する面に対して、10±α°の角度を形成するように、入射光31を発光する。具体的には、第1発光部6は、フレーム5の中心軸線と直交する面に対して、25°以下、好ましくは、20°以下、より好ましくは、15°以下の角度を形成するように、入射光31を発光する。
【0039】
第2発光部7は、フレーム5と中心軸線を共有する略円環形状に形成され、フレーム5の第2面14に設けられている。また、第2発光部7は、第1発光部6と同様の光源を備えている。
【0040】
第2発光部7は、フレーム5の中心軸線と直交する面に対して、50±α°の角度を形成するように、入射光31を発光する。具体的には、第2発光部7は、フレーム5の中心軸線と直交する面に対して、35〜65°、好ましくは、40〜60°、より好ましくは、45〜55°の角度を形成するように、入射光31を発光する。
【0041】
第3発光部8は、フレーム5と中心軸線を共有する略円環形状に形成され、フレーム5の第3面15に設けられている。また、第3発光部8は、第1発光部6と同様の光源を備えている。
【0042】
第3発光部8は、フレーム5の中心軸線と直交する面に対して、30±α°の角度を形成するように、入射光31を発光する。具体的には、第3発光部8は、フレーム5の中心軸線と直交する面に対して、15〜45°、好ましくは、20〜40°、より好ましくは、25〜35°の角度を形成するように、入射光31を発光する。
【0043】
なお、以下の説明において、フレーム5の中心軸線と直交する面と、各発光部(第1発光部6、第2発光部7および第3発光部8)から発光される各入射光31とが形成する角度の中央値(第1発光部6では10°、第2発光部7では50°、第3発光部8では30°)を、各発光部の光軸角度と記載する場合がある。
【0044】
第1発光部6、第2発光部7および第3発光部8から発光される入射光31の波長は、例えば、450〜750nm、好ましくは、550〜750nmである。
【0045】
入射光31の波長が上記範囲内であると、光源ユニット2の光源として、発光量が多い光源を選択することができるとともに、カメラユニット3のカメラとして、受光量が多い(高感度な)カメラを選択することができる。これにより、明るい光源ユニット2によってカバー絶縁層26を照らしながら、高感度なカメラユニット3によって、カバー絶縁層26からの反射光を効率よく受光することができ、カバー絶縁層26の反射率が低い場合であっても、カバー絶縁層26の凹凸を精度よく検知することができる。
【0046】
そして、光源ユニット2は、フレーム5の中心軸線が回路付サスペンション基板21(後述)の厚み方向(後述)に沿うように、回路付サスペンション基板集合シート20(後述)の上側に間隔を隔てて設けられている。
【0047】
カメラユニット3は、光源ユニット2の反射側開口12に対向するように、フレーム5の軸方向他方側に配置されている。カメラユニット3は、例えば、近赤外線カメラ、CCDカメラなどのカメラを備え、好ましくは、汎用性の観点から、CCDカメラを備えている。
【0048】
なお、検査装置1は、回路付サスペンション基板集合シート20(後述)を、検査対象となる回路付サスペンション基板21(後述)に入射光31が照射されるように搬送可能に構成されている。
【0049】
図3は、本発明の配線回路基板の製造方法を説明するための工程図である。図4は、カバー絶縁層中の異物の有無を検査する工程を説明するための説明図であって、(a)は、2つの配線の間に異物が存在する状態を示す断面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。なお、図3において、紙面左右方向を、回路付サスペンション基板21の幅方向とし、紙面上下方向を、回路付サスペンション基板21の厚み方向とし、紙厚方向を、回路付サスペンション基板21の長手方向とする。
【0050】
次いで、図3を参照して、本発明の配線回路基板としての回路付サスペンション基板21の製造方法を説明する。なお、図3は、1つの回路付サスペンション基板21について示しているが、この実施形態では、回路付サスペンション基板21は、個別に製造されるのではなく、複数の回路付サスペンション基板21が同時に製造される。
【0051】
詳しくは、長尺な金属支持層22(後述)に、互いに間隔を隔てて並列配置されるように、複数の回路付サスペンション基板21がパターニングされることにより、複数の回路付サスペンション基板21を一体的に有する回路付サスペンション基板集合シート20が製造される。そして、例えば、回路付サスペンション基板21をハードディスクドライブに実装するときには、回路付サスペンション基板集合シート20から、回路付サスペンション基板21を個別に取り外して実装する。
【0052】
回路付サスペンション基板21を製造するには、図3(a)に示すように、まず、シート形状の金属支持層22を準備する。
【0053】
金属支持層22を形成する材料としては、例えば、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、銅−ベリリウム、りん青銅などの金属材料が挙げられ、好ましくは、ステンレスが挙げられる。
【0054】
金属支持層22の厚みは、例えば、10〜50μm、好ましくは、15〜35μmである。
【0055】
次いで、回路付サスペンション基板21を製造するには、図3(b)に示すように、導体パターン4が形成される部分において、金属支持層22の上にベース絶縁層23を形成する。
【0056】
ベース絶縁層23を形成する材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂が挙げられ、好ましくは、熱寸法安定性などの観点から、ポリイミドが挙げられる。
【0057】
また、ベース絶縁層23は、例えば、未硬化樹脂の硬化によって得られる合成樹脂から形成される。
【0058】
すなわち、まず、例えば、感光性ポリアミック酸樹脂などの感光性を有する未硬化樹脂の溶液を、金属支持層22の上に塗布して、乾燥させることにより、感光層を形成する。次いで、感光層を、フォトマスクを介して露光および現像し、乾燥させることにより、未硬化樹脂からなる未硬化樹脂層(図示せず)を、上記したパターンで形成する。
【0059】
その後、未硬化樹脂層を硬化させて、合成樹脂からなるベース絶縁層23を形成する。未硬化樹脂層の硬化には、例えば、電子線、紫外線などによる光硬化、例えば、加熱硬化などが用いられ、好ましくは、加熱硬化が用いられる。加熱硬化における加熱温度は、例えば、300〜500℃、好ましくは、360〜440℃である。
【0060】
また、ベース絶縁層23は、例えば、合成樹脂を上記したパターンのフィルムに予め形成して、そのフィルムを、金属支持層22の表面に、公知の接着剤層を介して貼着することにより形成することもできる。
【0061】
ベース絶縁層23の厚みは、例えば、3〜20μm、好ましくは、3〜10μmである。
【0062】
次いで、回路付サスペンション基板21を製造するには、図3(c)に示すように、ベース絶縁層23の上に、所定のパターンで、導体パターン24を形成する。
【0063】
具体的には、幅方向に沿って互いに間隔を隔てて並列配置される複数(4つ)の配線25と、各配線25の長手方向一端部にそれぞれ設けられる各ヘッド側端子(図示せず)と、各配線25の長手方向他端部にそれぞれ設けられる各外部側端子(図示せず)とを備えるパターンで、導体パターン24を形成する。
【0064】
導体パターン24を形成する材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などの導体材料が挙げられ、好ましくは、銅が挙げられる。
【0065】
導体パターン24を形成するには、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法などの公知のパターンニング法が用いられ、好ましくは、アディティブ法が用いられる。
【0066】
アディティブ法では、具体的には、まず、ベース絶縁層23を含む金属支持層22の表面に、導体種膜を、スパッタリング法などにより形成する。次いで、その導体種膜の表面に、めっきレジストを、導体パターン24の反転パターンで形成する。その後、めっきレジストから露出する、ベース絶縁層23の導体種膜の表面に、電解めっきにより、導体パターン24を形成する。その後、めっきレジストおよびそのめっきレジストが積層されていた部分の導体種膜を除去する。
【0067】
導体パターン24の厚みは、例えば、3〜30μm、好ましくは、5〜20μmである。導体パターン24の厚みが上記した範囲に満たない場合には、配線側隆起部分34(後述)の隆起が不十分となる場合がある。
【0068】
また、各配線25の幅は、同一または相異なっていてもよく、例えば、5〜500μm、好ましくは、10〜200μmであり、各配線25間の間隔は、同一または相異なっていてもよく、例えば、5〜200μm、好ましくは、5〜100μmである。
【0069】
次いで、回路付サスペンション基板21を製造するには、図3(d)に示すように、ベース絶縁層23の上に、各配線25を被覆し、各ヘッド側端子(図示せず)および各外部側端子(図示せず)を露出するように、カバー絶縁層26を形成する。
【0070】
カバー絶縁層26を形成する材料としては、上記したベース絶縁層23を形成する材料と同様の材料が挙げられ、好ましくは、ポリイミドが挙げられる。
【0071】
また、カバー絶縁層26は、配線25に対応する部分においては、配線25の上面および幅方向両側面を被覆するように形成されている。これによって、カバー絶縁層26には、配線25の断面形状に対応して隆起する配線側隆起部分34が形成されている。なお、カバー絶縁層26のうち、各配線25の間に対応する部分は、配線側隆起部分34に対して凹むように形成されている。
【0072】
また、配線側隆起部分34は、配線25の幅方向両端面を被覆する第1平坦部36と、第1平坦部36に連続され、配線25の幅方向両端部の上側角部を被覆するように、上側へ湾曲される肩部37と、肩部37に連続され、配線25の上面を被覆する第2平坦部38とを備えている。
【0073】
また、カバー絶縁層26に対する入射光31の透過率T(厚み17μmのカバー絶縁層26に対する透過率)は、例えば、30%以下、好ましくは、15%以下であり、通常、0%以上である。なお、透過率Tは、分光光度計により測定される。
【0074】
カバー絶縁層26に対する入射光31の透過率Tが上記範囲内であると、入射光31がカバー絶縁層26を透過することを抑制することができる。これにより、カバー絶縁層26を透過した入射光31の影響(導体パターン24の表面で反射されて、カメラユニット3に受光されるなど)を低減しながら、カバー絶縁層26の表面で反射された反射光32を効率よくカメラユニット3に受光させることができる。
【0075】
また、カバー絶縁層26に対する入射光31の反射率(入射角0度)Rは、例えば、10〜30%、好ましくは、10〜15%である。
【0076】
カバー絶縁層26の厚み(つまり、配線25を被覆する部分では、配線25の表面(上面および側面)からカバー絶縁層26の表面(上面および側面)までの長さであり、配線25から露出するベース絶縁層23を被覆する部分では、ベース絶縁層23の表面(上面)からカバー絶縁層26の表面(上面)までの長さである。)は、例えば、50μm以下、好ましくは、20μm以下であり、通常、1μm以上、好ましくは、3μm以上である。カバー絶縁層26の厚みが上記した範囲を超える場合には、配線側隆起部分34を精度よく検知することが困難な場合がある。
【0077】
次いで、回路付サスペンション基板21を製造するには、上記した検査装置1を用いて、カバー絶縁層26中の異物の有無を検査する。
【0078】
カバー絶縁層26の検査は、図1に示すように、検査装置1を用いて、回路付サスペンション基板集合シート20を回路付サスペンション基板21に入射光31が照射されるように搬送しながら、実施する。
【0079】
第1発光部6から発光された入射光31は、ベース絶縁層23の表面との角度が、30±α°となるように、カバー絶縁層26に入射される。具体的には、第1発光部6から発光された入射光31は、ベース絶縁層23の表面との角度が、25°以下、好ましくは、20°以下、より好ましくは、15°以下となるように、カバー絶縁層26に入射される。
【0080】
第2発光部7から発光された入射光31は、ベース絶縁層23の表面との角度が、50±α°となるように、カバー絶縁層26に入射される。具体的には、第2発光部7から発光された入射光31は、ベース絶縁層23の表面との角度が、35〜65°、好ましくは、40〜60°、より好ましくは、35〜55°となるように、カバー絶縁層26に入射される。
【0081】
第3発光部8から発光された入射光31は、ベース絶縁層23の表面との角度が、50±α°となるように、カバー絶縁層26に入射される。具体的には、第3発光部8から発光された入射光31は、ベース絶縁層23の表面との角度が、15〜45°、好ましくは、20〜40°、より好ましくは、25〜35°となるように、カバー絶縁層26に入射される。
【0082】
そして、入射光31は、カバー絶縁層26の表面において反射され、その反射光32のうち、主として、配線側隆起部分34の肩部37において反射された反射光32が、カメラユニット3によって検知される。
【0083】
詳しくは、第1発光部6からの入射光31のうち、図4(a)に拡大して示すように、肩部37の下端部近傍に入射された入射光31が、カメラユニット3に向かって上側に反射され、その反射光32がカメラユニット3によって検知される。
【0084】
また、第2発光部7からの入射光31のうち、肩部37の上端部近傍に入射された入射光31が、カメラユニット3に向かって上側に反射され、その反射光32がカメラユニット3によって検知される。
【0085】
また、第3発光部8からの入射光31のうち、肩部37の上下方向中央付近に入射された入射光31が、カメラユニット3に向かって上側に反射され、その反射光32がカメラユニット3によって検知される。
【0086】
一方、入射光31のうち、カバー絶縁層26の平坦な部分(肩部37以外の部分)に入射された入射光31は、カメラユニット3に向かって反射されることなく、その入射方向と反対方向へ反射され、その反射光32は、カメラユニット3に検知されない。
【0087】
これにより、カメラユニット3によって回路付サスペンション基板21のカバー絶縁層26を撮影したときには、配線側隆起部分34の肩部37が明るく撮影されるのに対して、肩部37以外の部分が暗く撮影される。
【0088】
ここで、カバー絶縁層26中に、金属粉、樹脂粉、空気などの異物33が混入している場合には、異物33が混入している部分においても、カバー絶縁層26が隆起され、異物33に対応する異物側隆起部分35が形成される。
【0089】
すると、入射光31は、異物側隆起部分35においても、上記した配線側隆起部分34と同様に、カメラユニット3に向かって上側に反射され、その反射光32がカメラユニット3によって検知される。
【0090】
これにより、カメラユニット3によって、異物側隆起部分35も明るく撮影され、異物33を検知することができる。
【0091】
具体的には、2つの配線25の間に、配線25の厚みよりも短い厚み方向長さを有する異物33が存在する場合には、図4(b)に示すように、配線25が延びる方向(本実施形態では、回路付サスペンション基板21の長手方向と同じ方向)から異物側隆起部分35に入射された入射光31により、異物33を検知することができる。
【0092】
そして、異物33が検知された回路付サスペンション基板21を不良品と判断して排除するとともに、異物33が検知されなかった回路付サスペンション基板21を良品と判断して製品とする。
【0093】
このようにして、回路付サスペンション基板21を得る。
【0094】
この検査装置1によれば、図1および図4に示すように、カバー絶縁層26に入射する入射光31を発光する光源ユニット2が、ベース絶縁層23の表面との角度が25°以下となるように、入射光31を発光する環状の第1発光部6と、ベース絶縁層23の表面との角度が35〜65°となるように、入射光31を発光する環状の第2発光部7とを備えている。
【0095】
そのため、第1発光部6からカバー絶縁層26に対して、浅い角度(ベース絶縁層23の表面との角度が25°以下)で入射される入射光31と、第2発光部7からカバー絶縁層26に対して、深い角度(ベース絶縁層23の表面との角度が35〜65°)で入射される入射光31とが、ともに環状に入射される。
【0096】
これにより、カバー絶縁層26の微細な異物側隆起部分35に対して、浅い角度で入射される入射光31と、深い角度で入射される入射光31とを、全方位から入射させることができ、微細な異物側隆起部分35を精度よく検知することができる。
【0097】
その結果、カバー絶縁層26中の異物33の有無を精度よく検査することができる。
【0098】
また、この検査装置1によれば、図1および図4に示すように、光源ユニット2は、ベース絶縁層23の表面との角度が15〜45°となるように、入射光31を発光する環状の第3発光部8を、さらに備えている。
【0099】
そのため、微細な異物側隆起部分35をより精度よく検知することができ、カバー絶縁層26中の異物33の有無をより精度よく検査することができる。
【0100】
そして、そのような検査装置1を用いた回路付サスペンション基板21の製造方法によれば、カバー絶縁層26中に存在する異物を精度よく検知することができ、回路付サスペンション基板21のファインピッチ化を図ることができる。
【実施例】
【0101】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されることはない。
【0102】
実施例1
まず、厚み18μmのステンレスからなる金属支持層を用意し(図3(a)参照)、次いで、金属支持層の表面に、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを塗布し、乾燥後、露光および現像し、さらに加熱硬化することにより、厚み10μmのポリイミドからなるベース絶縁層を、上記したパターンで形成した(図3(b)参照)。
【0103】
次いで、金属支持層を含むベース絶縁層の表面に、導体薄膜として厚み0.03μmのクロム薄膜と厚み0.07μmの銅薄膜とを、クロムスパッタリングと銅スパッタリングとによって順次形成した。続いて、導体パターンと反転パターンのめっきレジストを、導体薄膜の表面に形成し、その後、めっきレジストから露出する導体薄膜の表面に、厚み12μmの導体パターンを、電解銅めっきにより形成した。次いで、めっきレジストおよびめっきレジストが形成されていた部分の導体薄膜を、化学エッチングにより除去した(図3(c)参照)。
【0104】
次いで、導体パターンを含むベース絶縁層の表面に、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを塗布し、乾燥後、露光および現像し、さらに加熱硬化することにより、厚み17μmのポリイミドからなるカバー絶縁層を、配線を被覆し、ヘッド側端子および外部側端子を露出するパターンで形成した(図3(d)参照)。カバー絶縁層において、配線を被覆している部分が隆起されることにより、配線側隆起部分が形成された。
【0105】
カバー絶縁層に対する波長620nmの光の透過率Tは、12%であり、カバー絶縁層に対する波長620nmの光の反射率R(入射角0°)は、10%であった。なお、透過率Tおよび反射率Rは、分光光度計(V−670、紫外可視赤外分光光度計、日本分光社製)により測定した。
【0106】
また、カバー絶縁層を形成するときに、2つの配線の間において、カバー絶縁層中に空気を混入させ、大中小3つの異なるサイズのボイドを形成した。カバー絶縁層において、各ボイドが形成された部分が隆起されることにより、異物側隆起部分が形成された。
【0107】
形成されたボイド(大)のサイズは、厚み方向長さ20μm、幅方向長さ15μm、長手方向長さ100μmであった。
【0108】
形成されたボイド(中)のサイズは、厚み方向長さ10μm、幅方向長さ10μm、長手方向長さ20μmであった。
【0109】
形成されたボイド(小)のサイズは、厚み方向長さ5μm、幅方向長さ5μm、長手方向長さ10μmであった。
【0110】
次いで、上記した検査装置により、光源ユニットの第1発光部および第2発光部から、波長620nmの入射光を、カバー絶縁層に照射し、その反射光をCCDカメラによって受光して検査画像を得た。得られた検査画像を解析することにより、カバー絶縁層の良否を検査した。ボイド(大)の画像を図5に、ボイド(中)の画像を図6に、ボイド(小)の画像を図7に示す。また、検査画像の評価を下記表1に示す。
【0111】
これにより、回路付サスペンション基板を得た。
【0112】
実施例2
光源ユニットの第1発光部、第2発光部および第3発光部から、波長620nmの入射光を、カバー絶縁層に照射し、その反射光をCCDカメラによって受光して検査画像を得た以外は、実施例1と同様にして、カバー絶縁層の良否を検査した。ボイド(大)の画像を図8に、ボイド(中)の画像を図9に、ボイド(小)の画像を図10に示す。また、検査画像の評価を下記表1に示す。
【0113】
比較例1
光軸角度20°の光源を用意し、その光源から、波長620nmの入射光を、カバー絶縁層に照射して、その反射光をCCDカメラによって受光して検査画像を得た以外は、実施例1と同様にして、カバー絶縁層の良否を検査した。ボイド(大)の画像を図11に、ボイド(中)の画像を図12に、ボイド(小)の画像を図13に示す。また、検査画像の評価を下記表1に示す。
【0114】
比較例2
光軸角度60°の光源を用意し、その光源から、波長620nmの入射光を、カバー絶縁層に照射して、その反射光をCCDカメラによって受光して検査画像を得た以外は、実施例1と同様にして、カバー絶縁層の良否を検査した。ボイド(大)の画像を図14に、ボイド(中)の画像を図15に、ボイド(小)の画像を図16に示す。また、検査画像の評価を下記表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
<画質の評価基準>
各実施例および各比較例で得られた検査画像を観察し、カバー絶縁層中のボイドが鮮明に撮影されているか評価した。
○:カバー絶縁層中のボイドを鮮明に判別できた。
×:カバー絶縁層中のボイドを判別することが困難であった。
【符号の説明】
【0117】
1 検査装置
2 光源ユニット
3 カメラユニット
6 第1発光部
7 第2発光部
8 第3発光部
21 回路付サスペンション基板
23 ベース絶縁層
24 導体パターン
26 カバー絶縁層
31 入射光
32 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース絶縁層、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターン、および、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層を備える配線回路基板における、前記カバー絶縁層中の異物の有無を検査するための検査装置であって、
前記カバー絶縁層に入射する入射光を発光する発光ユニットと、
前記入射光が前記カバー絶縁層の表面で反射された反射光を受光する受光ユニットと
を備え、
前記発光ユニットは、
前記ベース絶縁層の表面との角度が25°以下となるように、前記入射光を発光する環状の第1発光部と、
前記ベース絶縁層の表面との角度が35〜65°となるように、前記入射光を発光する環状の第2発光部と
を備えていることを特徴とする、検査装置。
【請求項2】
前記発光ユニットは、前記ベース絶縁層の表面との角度が15〜45°となるように、前記入射光を発光する環状の第3発光部を、さらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記入射光の波長が、450〜750nmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記カバー絶縁層に対する前記入射光の透過率が、30%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記カバー絶縁層に対する前記入射光の反射率が、10〜30%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
ベース絶縁層を形成する工程と、
前記ベース絶縁層の上に導体パターンを形成する工程と、
前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように、カバー絶縁層を形成する工程と、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の検査装置を用いて、前記カバー絶縁層中の異物の有無を検査する工程と
を含むことを特徴とする、配線回路基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−63245(P2012−63245A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207563(P2010−207563)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】