説明

検査装置および検査方法

【課題】基板に形成されているフォトデバイスの光励起キャリア発生領域を非接触で検査する技術を提供する。
【解決手段】検査装置100は、フォトデバイスが形成された太陽電池パネル90を検査する。検査装置100は、パルス光LP11を太陽電池パネル90の受光面91S側から照射する照射部12と、該パルス光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスTL1の電界強度を検出する検出部13(検出器132)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォトデバイスが形成されている基板を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトデバイスの1種である太陽電池の製造工程においては、いわゆる4端子測定法を利用して、太陽電池の電気特性を測定する検査装置が利用されている。具体的には、太陽電池の受光面と裏面に設けられた集電電極に、電流測定用のプローブピンと電圧測定用のプローブピンとが当てられる。この状態で、疑似太陽光が照射されながら、太陽電池に印加する電圧を変化させて電流電圧の関係を測定する。これにより、太陽電池のI−V特性が測定される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−182969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の太陽電池の検査装置の場合、電流測定用または電圧測定用のプローブピンを集電電極に接触する必要があった。このため、プローブピンのメッキが剥がれるなど、プローブピンが摺り減るという問題がある。また、太陽電池にプローブピンを当接させるため、検査中に太陽電池素子を傷付けてしまう虞があった。
【0005】
ところで、太陽電池などのフォトデバイスは、pn接合部の空乏層に光が照射されることで生じる自由電子と自由正孔を利用する素子として構成されている。この空乏層における電界強度または電界分布は、フォトデバイスの性能を決定する重要なパラメーターとなっている。したがって、空乏層を検査することによって、フォトダイオードの性能を評価することができる。しかしながら、フォトデバイスの空乏層を非接触で検査する技術はほとんど知られていない。
【0006】
また、フォトデバイスには、空乏層以外の部分にも様々な電界が存在し得る。電界の具体例としては、例えば、格子欠陥や金属と半導体の接触による内部電界、または、逆バイアス電圧印加による外部電界などが挙げられる。フォトデバイスにおいては、これらの電界に起因する光励起キャリア発生領域が存在し得るが、これらの領域を非接触で検査する技術はほとんど知られていない。また、光励起キャリア発生領域における光励起キャリアの拡散情報も、フォトデバイスの性能に関連するパラメーターである。しかしながら、この拡散情報を非接触で検査する技術はほとんど知られていない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、フォトデバイスの光励起キャリア発生領域を非接触で検査する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、フォトデバイスが形成された基板を検査する検査装置であって、パルス光を基板の検査位置に照射する照射部と、前記パルス光の照射に応じて前記フォトデバイスにて発生する電磁波パルスを検出する検出部とを備える。
【0009】
また、第2の態様は、第1の態様に係る検査装置において、前記検出部は、前記パルス光の光源から出射されるプローブ光の照射に応じて、前記電磁波パルスの電界強度を検出する検出器と、前記電磁波パルスが前記検出器へ到達する時間と、前記プローブ光が前記検出部へ到達する時間との時間差を変更することによって、前記検出器による前記電磁波パルスの検出タイミングを遅延させる遅延部とを備える。
【0010】
また、第3の態様は、第2の態様に係る検査装置において、前記検出タイミングが、前記電磁波パルスの電界強度が最大となる検出タイミングとなるように、前記遅延部を制御する制御部、をさらに備える。
【0011】
また、第4の態様は、第2または第3の態様に係る検査装置において、複数の前記検出タイミングにおいて前記検出器において検出される電磁パルスの電磁波強度から、時間波形を構築する時間波形構築部、をさらに備える。
【0012】
また、第5の態様は、第4の態様に係る検査装置において、前記時間波形構築部によって構築された前記電磁波パルスの時間波形に基づいてフーリエ変換を行うことにより、スペクトル解析を行うスペクトル解析部、をさらに備える。
【0013】
また、第6の態様は、第1から第5態様の態様までのいずれか1態様に係る検査装置において、二次元平面内において、前記基板を前記照射部に対して相対的に移動させる相対移動機構、をさらに備える。
【0014】
また、第7の態様は、第1から第6の態様までのいずれか1態様に係る検査装置において、基板に形成されているフォトデバイスに対して、逆バイアス電圧を印加する逆バイアス印加回路、をさらに備える。
【0015】
また、第8の態様は、第1から第7の態様までのいずれか1態様に係る検査装置において、前記パルス光の光軸が、前記基板の受光面側から前記受光面に対して斜めに入射する。
【0016】
また、第9の態様は、第1から第7の態様までのいずれか1態様に係る検査装置において、前記パルス光の光軸が前記基板の受光面側から前記受光面に対して垂直に入射する。
【0017】
また、第10の態様は、第9の態様に係る検査装置において、前記検出部は、前記受光面側に出射される電磁波パルスを検出する。
【0018】
また、第11の態様は、第1から第10の態様までのいずれか1態様に係る検査装置において、前記基板が、シリコン結晶系の太陽電池パネルであり、前記パルス光の波長が、1マイクロメートル以下である。
【0019】
また、第12の態様は、第1から第11の態様までのいずれか1態様に係る検査装置において、前記フォトダイオードにおいて発生する前記電磁波パルスが、周波数0.01テラヘルツ以上10テラヘルツ以下の範囲のテラヘルツ波を含む。
【0020】
また、第13の態様は、フォトデバイスが形成された基板を検査する検査方法であって、パルス光を基板の検査位置に照射する照射工程と、前記パルス光の照射に応じて前記フォトダイオードにて発生する電磁波パルスを検出する検出工程とを含む。
【発明の効果】
【0021】
第1から第13の態様に係る検査装置によると、フォトデバイスのpn接合部の空乏層などの光励起キャリア発生領域にパルス光を照射することによって、光励起キャリア発生領域の特性に応じた電磁波パルスが外部に出射される。この電磁波パルスの電界強度を検出することによって、光励起キャリア発生領域の形成、欠陥または移動度などの状況を非接触状態にて検査することができる。
【0022】
第2の態様に係る検査装置によると、遅延部を設けることによって、テラヘルツ波の電界強度を任意のタイミングで検出することができる。
【0023】
第3の態様に係る検査装置によると、電磁波パルスの電界強度が最大となるタイミングで電界強度を検出することによって、光励起キャリア発生領域の特性を評価しやすくなる。
【0024】
第4の態様に係る検査装置によると、電磁波パルスの時間波形を構築することによって、光励起キャリア発生領域の特性を検査することができる。
【0025】
第5の態様に係る検査装置によると、時間波形をスペクトル解析することによって、不純物混入やその他の基板の異常を検出することができる。
【0026】
第6の態様に係る検査装置によると、基板の様々な領域について検査することができる。
【0027】
第7の態様に係る検査装置によると、逆バイアス電圧を印加することによって、パルス光を照射したときに発生する電磁波パルスの電界強度を高めることができる。
【0028】
第8および第9の態様に係る検査装置によると、受光面側からパルス光を照射することによって、空乏層などの光励起キャリア発生領域にパルス光が到達しやすくなる。したがって、電磁波パルスが発生しやすくなり、検査を行いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態に係る検査装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した照射部と検出部の概略構成図である。
【図3】太陽電池パネルの概略断面図である。
【図4】太陽電池パネルを受光面側から見た平面図である。
【図5】太陽電池パネルを裏面側から見た平面図である。
【図6】検査(1)における検査装置の動作の流れ図である。
【図7】時間波形構築部により構築されるテラヘルツ波パルスの時間波形を示す図である。
【図8】テラヘルツ波パルスのスペクトル分布を示す図である。
【図9】検査(2)における検査装置の動作の流れ図である。
【図10】モニターに表示される電界強度分布画像の一例である。
【図11】第2実施形態に係る検査装置の照射部と検出部の概略構成図である。
【図12】第3実施形態に係る検査装置の照射部と検出部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0031】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る検査装置100の概略構成図である。また、図2は、図1に示した照射部12と検出部13の概略構成図である。検査装置100は、フォトデバイスが形成された基板の一種である太陽電池パネル90の空乏層の特性を検査するのに適した構成を備えている。
【0032】
なお、検査装置100において、検査対象となる基板は、太陽電池パネル90に限定されるものではない。可視光を含む光を電流に変換するフォトデバイスを含む基板であれば、検査装置100の検査対象物となり得る。太陽電池パネル以外のフォトデバイスとしては、具体的には、CMOSセンサやCCDセンサなどのイメージセンサが想定される。なお、イメージセンサの中には、使用状態においてフォトデバイスが形成された基板の裏面側となる部分に受光素子が形成されているものが知られている。このような基板であっても、使用状態において受光する側の主面を受光面として検査装置100に設置すれば、良好にテラヘルツ波パルスLT1を検出することができる。
【0033】
上述したように、太陽電池などフォトデバイスは、p型とn型の半導体が接合されたpn接合部を有している。このpn接合部付近では電子と正孔とが互いに拡散して結びつく拡散電流が生じることによって、pn接合部付近に電子と正孔とが少ない空乏層が形成されている。この領域では、電子と正孔をそれぞれn型、p型領域に引き戻す力が生じるため、フォトデバイスの内部に電界が生じている。ある程度のエネルギー(禁制帯幅を超えるエネルギー)を持つ光をpn接合部に照射した場合、pn接合部において、内部の電界によって光電子がn型半導体側に移動し、取り残された正孔はp型半導体に移動する。フォトデバイスでは、この電流がn型半導体およびp型半導体のそれぞれに取り付けた電極を介して、外部に取り出される。このように、フォトデバイスにおいては、pn接合部の空乏層に光が照射されたときに生じる自由電子と自由正孔の移動が直流電力として利用される。
【0034】
発明者らは、フォトデバイスに所定波長のパルス光を照射したとき、特定波長の電磁波パルスが発生することを見出した。これは、空乏層などの光励起キャリア発生領域に光が照射されることで光励起キャリアが移動することにより、電磁波が発生すると考えられる。つまり発生する電磁波パルスは、空乏層などの光励起キャリア発生領域の特性を反映するものである。したがって、検出された電磁波パルスを解析することによって、pn接合部の空乏層の特性を検査することができる。検査装置100においては、この原理に基づき、太陽電池パネル90に向けて所定波長のパルス光を照射したときに発生する電磁波パルスを検出するように構成されている。
【0035】
図1に示したように、検査装置100は、ステージ11、照射部12、検出部13、可視カメラ14、モーター15、制御部16、モニター17および操作入力部18を備えている。
【0036】
ステージ11は、図示を省略する固定手段によって、太陽電池パネル90をステージ11上に固定する。固定手段としては、基板を挟持する挟持具を利用したもの、粘着性シート、または、ステージ11表面に形成される吸着孔などが想定される。ただし、太陽電池パネル90を固定できるのであれば、どのような固定手段が適用されてもよい。本実施形態では、ステージ11は、太陽電池パネル90の受光面91S側に照射部12および検出部13が配置されるように太陽電池パネル90を保持する。
【0037】
図2に示したように、照射部12は、フェムト秒レーザー121を備えている。フェムト秒レーザー121は、例えば、360nm(ナノメートル)以上1μm(マイクロメートル)以下の可視光領域を含む波長のパルス光(パルス光LP1)を放射する。本実施形態では、中心波長が800nm付近であり、周期が数kHz〜数百MHz、パルス幅が10〜150フェムト秒程度の直線偏光のパルス光が放射される。なお、その他の波長領域(例えば、青色波長(450〜495nm)、緑色波長(495〜570nm)などの可視光波長)のパルス光が出射されるようにしてもよい。
【0038】
フェムト秒レーザー121から出射されたパルス光LP1は、ビームスプリッタB1により2つに分割される。分割された一方のパルス光(パルス光LP11)は、太陽電池パネル90に照射される。このとき、照射部12は、パルス光LP11の照射を、受光面91S側から行う。また、パルス光LP11の光軸が、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して斜めに入射するように、パルス光LP11が太陽電池パネル90に対して照射される。本実施形態では、入射角度が45度となるように照射角度が設定されている。ただし、入射角度はこのような角度に限定されるものではなく、0度から90度の範囲で適宜変更することができる。
【0039】
図3は、太陽電池パネル90の概略断面図である。また図4は、太陽電池パネル90を受光面91S側から見た平面図である。また図5は、太陽電池パネル90を裏面側から見た平面図である。太陽電池パネル90は、薄膜結晶シリコン系である太陽電池パネルとして構成されている。太陽電池パネル90は、下から順にアルミニウムなどで形成された平板状の裏面電極92と、p型シリコン層93と、n型シリコン層94と、反射防止膜95と、格子状の受光面電極96とで構成される積層構造を有する結晶シリコン系太陽電池として構成されている。反射防止膜95は、酸化シリコン、窒化シリコンまたは酸化チタンなどで形成されている。太陽電池パネル90の主面のうち、受光面電極96が設けられている側の主面が、受光面91Sとなっている。つまり、太陽電池パネル90は、受光面91S側から光を受けることで発電するように設計されている。受光面電極96には、透明電極が用いられていてもよい。なお、検査装置100は、結晶シリコン系以外の太陽電池(アモルファスシリコン系など)の検査に適用してもよい。アモルファスシリコン系太陽電池の場合、一般的に、エネルギーギャップが1.75eV〜1.8eVといったように、結晶シリコン系太陽電池のエネルギーギャップ1.2eVに比べて大きい。このような場合、フェムト秒レーザー121の波長を、例えば700μm以下とすることで、アモルファスシリコン系太陽電池において、テラヘルツ波を良好に発生させることができる。
【0040】
太陽電池パネル90の受光面91Sは、光の反射損失を抑えるために、所要のテクスチャー構造を有している。具体的には、異方性エッチングなどにより形成される数μm〜数十μmの凹凸、または機械的方法によるV字状の溝などが形成されている。このように、太陽電池パネル90の受光面91Sは、一般的に、できるだけ効率良く採光できるように形成されている。したがって、所定波長のパルス光が照射されたときに、該パルス光はpn接合部97に届きやすくなっている。例えば、太陽電池パネルの場合、主に可視光の波長領域を有する波長1μm以下の光であれば、pn接合部97に容易に到達し得る。
【0041】
また、p型シリコン層93とn型シリコン層94との接合部分は、空乏層が形成されるpn接合部97となっている。この部分にパルス光LP11が照射されることによって、電磁波パルスが発生し、外部に出射される。本実施形態において、検出部13において検出される電磁波パルスは、周波数0.01THz〜10THzの電磁波パルス(以下、テラヘルツ波パルスLT1と称する。)となっている。
【0042】
図2に戻って、ビームスプリッタB1によって分割された他方のパルス光は、プローブ光LP12として遅延部131およびミラーなどを経由して、検出器132に入射する。また、パルス光LP11の照射に応じて発生したテラヘルツ波パルスLT1は、放物面鏡M1,M2において集光されて検出器132に入射する。
【0043】
検出器132は、光伝導スイッチで構成されている。テラヘルツ波が検出器132に入射された状態で、プローブ光LP12が検出器132に照射されると、検出器132に瞬間的にテラヘルツ波パルスLT1の電界強度に応じた電流が生じる。この電界強度に応じた電流は、I/V変換回路、A/D変換回路などを介してデジタル量に変換される。このようにして、検出部13は、プローブ光の照射に応じて、太陽電池パネル90を透過したテラヘルツ波の電界強度を検出する。なお、検出器132として光伝導スイッチを利用しているが、その他の素子、例えば非線形光学結晶を利用してもよい。また、ショットキーバリアダイオードを使って、テラヘルツ波パルスLT1の電界強度を検出してもよい。
【0044】
遅延部131は、ビームスプリッタB1から検出器132までのプローブ光LP12の到達時間を連続的に変更するための光学素子である。遅延部131は、プローブ光LP12の入射方向に移動する移動ステージ(図示せず)に固定されている。遅延部131は、プローブ光LP12を入射方向に折り返させる折り返しミラー10Mを備えている。遅延部131は、制御部16の制御に基づいて移動ステージを駆動して折り返しミラー10Mを移動させることにより、プローブ光LP12の光路長を精密に変更する。これにより、遅延部131は、テラヘルツ波パルスLT1が検出部13に到達する時間と、プローブ光LP12が検出部13へ到達する時間との時間差を変更する。したがって、遅延部131により、プローブ光LP12の光路長を変化させることによって、検出部13(検出器132)においてテラヘルツ波パルスLT1の電界強度を検出するタイミング(検出タイミング)を遅延させることができる。
【0045】
なお、遅延部131は、その他の態様でテラヘルツ波パルスLT1とプローブ光の検出部13への到達時間を変更するようにしてもよい。例えば、電気光学効果を利用してもよい。すなわち、印加する電圧を変化させることで屈折率が変化する電気光学素子を、遅延素子として用いてもよい。具体的には、特開2009-175127号公報に開示されている電気光学素子を利用することができる。
【0046】
また、太陽電池パネル90には、検査時に裏面電極92と受光面電極96との間に逆バイアス電圧を印加する逆バイアス電圧印加回路99が接続される。逆バイアス電圧が電圧間に印加されることによって、pn接合部97の空乏層を大きくすることができる。これにより、検出器132において検出されるテラヘルツ波パルスLT1の電界強度を大きくすることができるため、検出部13におけるテラヘルツ波パルスLT1の検出感度を向上することができる。ただし、逆バイアス電圧印加回路99は省略することもできる。
【0047】
図1に戻って、可視カメラ14は、CCDカメラで構成されており、光源としてLEDやレーザーを備えている。可視カメラ14は、太陽電池パネル90の全体を撮影したり、パルス光LP11が照射される位置を撮影したりするのに用いられる。可視カメラ14によって取得された画像データは、制御部16へ送信される。
【0048】
モーター15は、ステージを二次元平面内で移動させるX−Yテーブル(図示せず)を駆動する。モーター15は、このX−Yテーブルを駆動することによって、ステージ11に保持された太陽電池パネル90を、照射部12に対して相対移動させる。検査装置100は、モーター15により、太陽電池パネル90を2次元平面内で任意の位置に移動させることができる。検査装置100は、モーター15により、太陽電池パネル90の広い範囲(検査対象領域)にパルス光LP11を照射して検査することができる。なお、太陽電池パネル90を移動させる代わりに、または、太陽電池パネル90を移動させると共に、照射部12を、検出部13を2次元平面内で移動させる移動手段を設けてもよい。これらの場合においても、太陽電池パネル90の各領域について、テラヘルツ波パルスLT1を検出することができる。なお、モーター15を省略して、ステージ11をオペレータによって手動で移動するようにしてもよい。
【0049】
制御部16は、制御部16は、図示を省略するCPUやRAM、補助記憶部(ハードディスク)などを備えた一般的なコンピュータの構成を備えている。制御部16は、照射部12のフェムト秒レーザー121、検出部13の遅延部131および検出器、並びにモーター15に接続されており、これらの動作を制御したり、これらからデータを受け取ったりする。具体的に、制御部16は、検出器132からテラヘルツ波パルスLT1の電界強度に関するデータを受け取る。また、制御部16は、遅延部131を移動させる移動ステージ(図示せず。)の移動を制御したり、該移動ステージに設けられたリニアスケールなどから折り返しミラー10Mの移動距離などの遅延部131の位置に関連するデータを受け取ったりする。
【0050】
また、制御部16は、時間波形構築部21、スペクトル解析部23および画像生成部25を備えており、これら各部に各種演算処理を行わせる。これら各部はCPUがプログラムにしたがって動作することにより実現される機能である。なお、これらの機能の一部または全部が、専用の演算回路によって実現されていてもよい。
【0051】
時間波形構築部21は、太陽電池パネル90において発生したテラヘルツ波パルスLT1について、検出部13(検出器132)にて検出される電界強度を元に、テラヘルツ波の時間波形を構築する。具体的には、遅延部131を移動させることによって、相互に異なる複数の検出タイミングでテラヘルツ波パルスLT1の電界強度が検出されることにより、時間波形が構築される。
【0052】
スペクトル解析部23は、テラヘルツ波パルスLT1の時間波形に基づいて、検査対象物である太陽電池パネル90に関するスペクトル解析を行う。詳細には、スペクトル解析部23は、パルス光LP11の照射に応じて発生したテラヘルツ波パルスLT1の時間波形をフーリエ変換することにより、周波数に関する振幅強度スペクトルを取得する。
【0053】
画像生成部25は、太陽電池パネル90の検査対象領域(太陽電池パネル90の一部または全部)に関して、パルス光LP1を照射したときに発生するテラヘルツ波パルスLT1の電界強度の分布を視覚化した画像を生成する。具体的には、可視カメラ14を介して取得される太陽電池パネル90の受光面91Sの可視光画像に、各測定位置の電界強度に応じた色や模様などを重ねることによって、電界強度分布画像が生成される。
【0054】
制御部16には、モニター17および操作入力部18が接続されている。モニター17は、液晶ディスプレイなどの表示装置であり、オペレータに対して各種画像情報を表示する。モニター17には、可視カメラ14で撮影された太陽電池パネル90の受光面91Sの画像、時間波形構築部21によって構築されたテラヘルツ波パルスLT1の時間波形、スペクトル解析部23による解析結果、または画像生成部25が生成した電界強度分布画像などが表示される。また、モニター17には、検査の条件設定などをするために必要なGUI(Graphycal User Interface)画面を表示する。
【0055】
操作入力部18は、マウスおよびキーボードなどの各種入力デバイスで構成されている。オペレータは操作入力部18を介して所定の操作入力を行うことができる。なお、モニター17がタッチパネルとして構成されることによって、モニター17が操作入力部18として機能するようにしてもよい。
【0056】
以上が、検査装置100の構成についての説明である。次に、検査装置100を使って、太陽電池パネル90を検査するときの検査装置100の具体的な動作について説明する。
【0057】
本実施形態に係る検査装置100では、大きく分けて2種類の検査を行うことができルように構成されている。まず第1の検査は、(1)テラヘルツ波パルスLT1の時間波形に基づく検査(以下、検査(1)と称する。)である。この検査(1)では、特定の領域(検査位置)にパルス光LP11が照射したときに発生するテラヘルツ波パルスLT1の時間波形が構築される。また、この構築された時間波形に基づいたスペクトル解析が行われる。これらの解析により、太陽電池パネル90の特定領域における空乏層形成に関する検査や、不純物に関する検査を行うことができる。
【0058】
また、第2の検査は(2)太陽電池パネル90全体についてのテラヘルツ波パルスLT1の電界強度分布に基づく検査(以下、検査(2)と称する。)である。この検査(2)では、太陽電池パネル90上の各領域のそれぞれについて、パルス光LP11が照射したときに発生するテラヘルツ波パルスLT1の電界強度がそれぞれ測定される。これにより、太陽電池パネル90の検査対象領域内における空乏層の形成不良部分や、または多結晶シリコンの格子欠陥を特定することができる。以下においては、まず検査(1)について説明し、次に検査(2)について説明する。
【0059】
<検査(1)>
図6は、検査(1)における検査装置100の動作の流れ図である。なお、以下の説明において、検査装置100の各動作は、特に断らない限り制御部16により制御されるものとする。また、図6に示した流れ図は、一例である。したがって、動作内容によっては、複数の工程を並列に実行したり、もしくは、複数の工程の実行順序を適宜変更したりしてもよい。
【0060】
まず、ステージ11に検査対象となる太陽電池パネル90が固定される(ステップS11)。このステップS11においては、オペレータによって太陽電池パネル90がステージ11に搬入されるようにしてもよいし、図示を省略する搬送装置などによって太陽電池パネル90がステージ11に搬入されるようにしてもよい。このとき、上述したように、太陽電池パネル90の受光面91Sに向けて、パルス光LP11が照射されるように太陽電池パネル90が設置される。
【0061】
太陽電池パネル90がステージ11に固定されると、検査装置100は、検査位置に合わせて太陽電池パネル90を移動させる(ステップS12)。この検査位置は、あらかじめ、検査を行うべき太陽電池パネル90上の位置に関するデータ(座標データ)として、オペレータが操作入力部18を介して入力したものである。制御部16は、この座標データに基づいて、モーター15を駆動することにより、該検査位置にパルス光LP11が照射されるように、ステージ11を移動させる。なお、オペレータ自身が、ステージ11を移動させることによって、太陽電池パネル90を検査位置に合わせて移動させるようにしてもよい。
【0062】
太陽電池パネル90の移動が完了すると、検査装置100は、太陽電池パネル90の検査位置に向けてパルス光LP11の照射を開始する(ステップS13)。また検査装置100は、パルス光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスLT1の電界強度を検出する(ステップS14)。ステップS14においてテラヘルツ波パルスLT1の電界強度が検出される際、制御部16は、遅延部131を制御することによって、検出器132にプローブ光LP12が到達するタイミングを遅延させる。これにより、相互に異なる複数の検出タイミングで、テラヘルツ波パルスLT1の電界強度が検出される。なお、テラヘルツ波パルスLT1の検出を行う際に、逆バイアス電圧印加回路99を駆動して、太陽電池パネル90の電極間に逆バイアス電圧を印加するようにしてもよい。
【0063】
検出が完了すると、検査装置100は、ステップS14において取得された電界強度の検出結果に基づいて、テラヘルツ波パルスLT1の時間波形の構築を行う。具体的には、時間波形構築部21が、ステップS14において検出された電界強度の値をグラフ上にプロットすることにより時間波形を構築する。
【0064】
図7は、時間波形構築部21により構築されるテラヘルツ波パルスLT1の時間波形を示す図である。図7中、横軸は時間を示し、縦軸は電界強度を示している。また、下段には、遅延部131によって、検出器132に到達するタイミング(検出タイミングt1〜t8)の異なる複数のプローブ光LP12が概念的に示されている。また、図7中、実線で示した時間波形41は、図3に示した検査位置P1において検出されるテラヘルツ波パルスLT1に相当し、破線で示した時間波形42は、図3に示した検査位置P2において検出されるテラヘルツ波パルスLT1に相当する。
【0065】
例えば検査位置P1に対してパルス光LP11を照射した場合、検出器132には、図7に示したような時間波形41を示すテラヘルツ波パルスLT1が所定の周期で繰り返し到来する。ここで、検出器132に対して、検出タイミングt1でプローブ光が到達するように遅延部131を調整した場合、132では、値E1の電界強度が検出される。また、遅延部131を調整することによって、検出タイミングをt2〜t8にそれぞれ遅延させた場合、それぞれ値E2〜E8の電界強度が検出部13において検出される。このような要領で、検出タイミングを細かく変更しながらテラヘルツ波パルスLT1の電界強度を測定し、取得された電界強度値を時間軸に沿ってグラフにプロットしていくことによって、テラヘルツ波パルスLT1の時間波形41が構築される。なお、検査位置P2において測定されるテラヘルツ波パルスLT1についても、同じ要領で時間波形42が構築される。
【0066】
以上のようにして、時間波形41,42を構築することにより、各検査位置P1,P2におけるpn接合部97の空乏層の特性について検査することができる。例えば、テラヘルツ波パルスの検出の有無を検査したり、構築された時間波形の電界強度の振幅を標準値と比較したりすることで、空乏層の形成不良を検出することができる。また、同様の処理で太陽電池の様々な光励起キャリア発生領域の形成不良を検出することができる。
【0067】
図6に戻って、時間波形が取得されると、検査装置100はスペクトル解析を行う(ステップS16)。具体的には、スペクトル解析部23によって、ステップS15において取得された時間波形に基づいて、フーリエ変換が実行されることによって、テラヘルツ波パルスLT1のスペクトル分布が取得される。
【0068】
図8は、テラヘルツ波パルスLT1のスペクトル分布を示す図である。図8中、縦軸ははスペクトル強度を示し、横軸は周波数を示している。また、図8においては、図4に示した検査位置P1において検出されるテラヘルツ波パルスLT1のスペクトル分布51が実線で示されている。さらに図4に示した検査位置P2において検出されるテラヘルツ波パルスLT1のスペクトル分布52が破線で示されている。本実施形態では、0.1THz〜1THzの範囲の周波数においてスペクトル強度が強く検出される。
【0069】
スペクトル分布51,52を取得することにより、各検査位置P1,P2に形成されているpn接合部97の空乏層の特性を検査することができる。例えば、スペクトル分布52において、矢印で示した特定周波数のスペクトル強度が、基準となる参照値(図示せず)よりも有意に低くなっているような場合に、該特定周波数を吸収する不純物が検査位置P2に形成されている空乏層に含まれていることを検出することができる。また、吸収された周波数から、不純物の種類や濃度などを推定することも可能である。
【0070】
図6に戻って、スペクトル解析が完了すると、検査装置100は、モニター17に検査結果を示す画像を表示する(ステップS17)。具体的には、ステップS15において取得されたテラヘルツ波パルスLT1の時間波形(図7参照)や、ステップS16において取得されたスペクトル分布(図8参照)などが解析結果としてモニター17に表示される。以上が検査(1)の説明である。なお、ステップS16のスペクトル解析は省略することも可能である。
【0071】
<検査(2)>
図9は、検査(2)における検査装置100の動作の流れ図である。上記検査(1)では、太陽電池パネル90上の特定の領域について、パルス光LP11を照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスLT1の時間波形とスペクトル解析が行われる。これに対して、検査(2)では、太陽電池パネル90の全面について、光励起キャリア発生領域の状態を検査する。
【0072】
まず、太陽電池パネル90がステージ11に固定される(ステップS21)。この工程は、図6に示した検査(1)のステップS11と同様である。次に、太陽電池パネル90の裏面電極92と受光面電極96との間に、逆バイアス電圧が印加される(ステップS22)。なお、逆バイアス電圧の印加は必ずしも行われる必要はなく、省略することもできる。
【0073】
次に検査装置100は、検出器132において検出されるテラヘルツ波パルスの電界強度が最大となるように、遅延部131が調整される(ステップS23)。具体的には、制御部16が遅延部131を調整して、プローブ光LP12が検出器132に到達するタイミングを変更する。このとき、検出器132において検出されるテラヘルツ波パルスLT1の電界強度が最大となるように、検出タイミングが調整される。
【0074】
例えば図7に示すように、時間波形41を示すテラヘルツ波パルスLT1では、検出タイミングt3のときに、テラヘルツ波パルスLT1の電界強度が最大となっている。つまり、検出タイミングt3に合わせて遅延部131を調整することにより、テラヘルツ波パルスLT1の電界強度の最大値を取得することができる。太陽電池パネル90上の他の部分にパルス光LP1を照射した場合であっても、検出タイミングt3で検出する限り、各テラヘルツ波パルスLT1の電界強度値が最大となる。このようにテラヘルツ波パルスLT1の電界強度の最大値を検出するようにすることで、電界強度を検出しやすくなるため、テラヘルツ波パルスLT1の検出感度を向上することができる。
【0075】
次に、検査装置100は、モーター15を駆動することにより、太陽電池パネル90を2次元平面内で移動させる(ステップS24)。このとき、パルス光LP11が太陽電池パネル90に向けて照射され、発生するテラヘルツ波パルスLT1の電界強度が検出される。これにより、太陽電池パネル90上の検査対象領域についての電界強度分布が取得される。なお、太陽電池パネル90の移動は、例えば主走査方向に移動させて、検査対象領域の端部から端部まで検査した後、副走査方向に所要距離分移動させて(ずらして)再び主走査方向に移動させる。これを繰り返すことによって、太陽電池パネル90の検査対象領域についてテラヘルツ波パルスLT1の電界強度が取得される。
【0076】
テラヘルツ波パルスLT1の電界強度を取得すると、検査装置100は、電界強度分布を示す画像を生成し、モニター17に表示する(ステップS25)。
【0077】
図10は、モニター17に表示される電界強度分布画像I1の一例である。電界強度分布画像I1は、可視カメラ14によって撮影された太陽電池パネル90を示す画像に対して、各検査位置で検出された電界強度の大きさに応じて着色される。なお、図10では、説明の都合上、ハッチングを変えることで電界強度の大きさの分布を示している。また電界強度の値(10、7または4)は、相対的な値である。また、図10では、3段階の電界強度のみで電界強度分布を示しているが、電界強度をより細かく区切って、電界強度分布を示すようにしてもよい。
【0078】
図10に示したように、太陽電池パネル90では、受光面電極96の周囲において最も電界強度が強くなっており、受光面電極96から離間する程、電界強度が弱まっている。このような電界強度分布画像I1を生成および表示することによって、太陽電池パネル90の検査対象領域について、光励起キャリア発生領域の形成状況を一度に把握することができる。さらに、検出される電界強度の異常から、多結晶シリコンの格子欠陥なども推定することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、テラヘルツ波パルスLT1の電界強度が最大となる検出タイミングで検出器132が電界強度を検出するようにしている。しかしながら、その他の検出タイミングで検出するようにしてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、最大電界強度の分布を画像化しているが、複数の波長領域のパルス光をそれぞれ照射したときに検出される電界強度の分布を画像化するようにしてもよい。このとき、それぞれの波長領域毎に色分けして、同一画像内で波長領域毎の分布が認識できるようにすることも可能である。
【0081】
また、本実施形態では、テラヘルツ波パルスLT1の一時点の電界強度のみを検出するようにしているが、例えば検査(1)で説明したように、遅延部131を制御することで、検査対象領域内の各検査位置において発生したテラヘルツ波パルスLT1の時間波形を構築するようにしてもよい。取得された時間波形をフーリエ変化して、スペクトル分布を取得することによって、特定の周波数空間毎の電界強度分布を得ることができる。この電界強度分布を色分けなどによって視覚化した画像を生成するようにしてもよい。
【0082】
以上のように、本実施形態に係る検査装置100によると、太陽電池パネル90に形成された光励起キャリア発生領域にパルス光を照射して、それに応じて発生するテラヘルツ波パルスを検出することで、空乏層の特性を検査することができる。したがって、非接触状態で検査を行うことが可能であるため、太陽電池パネル90の故障、不良判定の効率化や、接触などによる損傷事故の防止を図ることができる。
【0083】
<2. 第2実施形態>
上記実施形態では、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して、パルス光LP11の光軸が斜め(入射角度45°)に入射するようにしているが、入射角度はこのようなものに限定されるものではない。
【0084】
図11は、第2実施形態に係る検査装置100Aの照射部12Aと検出部13Aの概略構成図である。なお、以下の説明において、第1実施形態に係る検査装置100の構成要素と同様の機能を有する要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0085】
検査装置100Aにおいても、フェムト秒レーザー121から出射されたパルス光LP1がビームスプリッタB1によってパルス光LP11とプローブ光LP12に分割される。ただし、本実施形態では、分割されたパルス光LP11は、透明導電膜基板(ITO)19を透過して、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して垂直にパルス光LP11に入射する。そして、パルス光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスLT1のうち、受光面91S側に出射されるテラヘルツ波パルスLT1が、透明導電性基板19を反射して、レンズなどを介して検出器132に入射する。
【0086】
このような照射部12Aおよび検出部13Aを備える検査装置100Aにおいても、パルス光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスLT1を検出することができる。したがって、第1実施形態に係る検査装置100と同様に、検査装置100Aは、太陽電池パネル90の空乏層などの光励起キャリア発生領域の特性を非接触状態で検査することができる。
【0087】
<3. 第3実施形態>
第2実施形態では、受光面91S側に出射されるテラヘルツ波パルスLT1を検出するようにしているが、太陽電池パネル90の裏面側に透過するテラヘルツ波パルスLT1を検出するようにしてもよい。
【0088】
図12は、第3実施形態に係る検査装置100Bの照射部12Bと検出部13Bの概略構成図である。検査装置100Bにおいても、フェムト秒レーザー121から出射されたパルス光LP1がビームスプリッタB1によってパルス光LP11とプローブ光LP12に分割される。本実施形態では、分割されたパルス光LP11は、太陽電池パネル90の受光面91Sに対して垂直にパルス光LP11に入射する。そして、パルス光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスLT1のうち、太陽電池パネル90の裏面側に出射される(透過する)テラヘルツ波パルスLT1が放物面鏡M1,M2などを介して検出器132に入射する。
【0089】
このような照射部12Bおよび検出部13Bを備える検査装置100Bにおいても、パルス光LP11の照射に応じて発生するテラヘルツ波パルスLT1を検出することができる。したがって、第1実施形態に係る検査装置100と同様に、検査装置100Bは太陽電池パネル90の光励起キャリア発生領域の特性を非接触状態で検査することができる。
【0090】
<4. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0091】
例えば、上記実施形態では、波長が800nm付近のパルス光を使って太陽電池パネル90を検査するようにしている。しかしながら、1.5μm並びに1.0μmの第二高超波のパルス光を使って、太陽電池パネル90またはその他のフォトデバイスが形成された基板を検査するようにしてもよい。例えば、ウェハーに形成されたフォトデバイスを検査するようにしてもよい。
【0092】
なお、上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0093】
100,100A,100B 検査装置
11 ステージ
12,12A,12B 照射部
121 フェムト秒レーザー
13,13A,13B 検出部
131 遅延部
132 検出器
14 可視カメラ
15 モーター
16 制御部
17 モニター
18 操作入力部
19 透明導電性基板
21 時間波形構築部
23 スペクトル解析部
25 画像生成部
41,42 時間波形
51,52 スペクトル分布
90 太陽電池パネル
91S 受光面側
92 裏面電極
93 p型シリコン層
94 n型シリコン層
95 反射防止膜
96 受光面電極
97 pn接合部
99 逆バイアス電圧印加回路
I1 電界強度分布画像
LP1,LP11 パルス光
LP12 プローブ光
LT1 テラヘルツ波パルス
t1〜t8 検出タイミング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトデバイスが形成された基板を検査する検査装置であって、
パルス光を基板の検査位置に照射する照射部と、
前記パルス光の照射に応じて前記フォトデバイスにて発生する電磁波パルスを検出する検出部と、
を備える検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記検出部は、
前記パルス光の光源から出射されるプローブ光の照射に応じて、前記電磁波パルスの電界強度を検出する検出器と、
前記電磁波パルスが前記検出器へ到達する時間と、前記プローブ光が前記検出部へ到達する時間との時間差を変更することによって、前記検出器による前記電磁波パルスの検出タイミングを遅延させる遅延部と、
を備える検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、
前記検出タイミングが、前記電磁波パルスの電界強度が最大となる検出タイミングとなるように、前記遅延部を制御する制御部、をさらに備える検査装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の検査装置において、
複数の前記検出タイミングにおいて前記検出器において検出される電磁パルスの電磁波強度から、時間波形を構築する時間波形構築部、をさらに備える検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の検査装置において、
前記時間波形構築部によって構築された前記電磁波パルスの時間波形に基づいてフーリエ変換を行うことにより、スペクトル解析を行うスペクトル解析部、をさらに備える検査装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の検査装置において、
二次元平面内において、前記基板を前記照射部に対して相対的に移動させる相対移動機構、をさらに備える検査装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の検査装置において、
基板に形成されているフォトデバイスに対して、逆バイアス電圧を印加する逆バイアス印加回路、をさらに備える検査装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の検査装置において、
前記パルス光の光軸が、前記基板の受光面側から前記受光面に対して斜めに入射する検査装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の検査装置において、
前記パルス光の光軸が前記基板の受光面側から前記受光面に対して垂直に入射する検査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の検査装置において、
前記検出部は、前記受光面側に出射される電磁波パルスを検出する検査装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の検査装置において、
前記基板が、シリコン結晶系の太陽電池パネルであり、前記パルス光の波長が、1マイクロメートル以下である検査装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の検査装置において、
前記フォトデバイスにおいて発生する前記電磁波パルスが、周波数0.01テラヘルツ以上10テラヘルツ以下の範囲のテラヘルツ波を含む検査装置。
【請求項13】
フォトデバイスが形成された基板を検査する検査方法であって、
パルス光を基板の検査位置に照射する照射工程と、
前記パルス光の照射に応じて前記フォトデバイスにて発生する電磁波パルスを検出する検出工程と、
を含む検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−19861(P2013−19861A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155665(P2011−155665)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】