説明

検査装置

【課題】高価なシリンジポンプなどを用いることなく微小量の試薬を精度良く分注でき、検体、試薬の変更時に分注機構の洗浄作業を不要とした検査装置を提案すること。
【解決手段】検査装置1は、検体と試薬を反応させるための検査チップ4に試薬を分注する分注機構12を有している。分注機構12は、試薬が貯留されたインクカートリッジ15(1)〜15(3)と、当該インクカートリッジが着脱可能な状態で装着される装着穴14(1)〜14(3)を備えたカートリッジ装着部13(1)〜13(3)とを有している。使い捨てとされるノズルカートリッジには吐出ヘッド104と液体流路108が形成されている。吐出圧力発生用の圧電素子102はカートリッジ装着部の側に配置されているので繰り返し使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体(試料)に試薬を加え、反応させることで、定量・定性分析する検査装置、例えば、一般生化学検査、免疫検査などの臨床検査を行うための臨床検査装置に関するものである。さらに詳しくは、インクジェットヘッドと同様な機構の試薬あるいは検体の分注機構を用いて、試薬あるいは検体を分注する検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
臨床検査装置は、特許文献1に記載されているように、試薬容器から反応容器に試薬を分注する試薬分注機構と、検体容器から反応容器に検体を分注する検体分注機構と、反応容器内での検体と試薬の反応状態を測定する光学式などの測定部を備えている。生化学検査、臨床検査は比色反応、吸光度などにより検体中の被検出物の量を測定するので、検体および試薬の分注量を高精度に制御する必要がある。このため、試薬の分注および検体の分注には一般に高価なシリンジポンプ式のディスペンサが用いられている。ディスペンサは、検査対象の検体、あるいは使用する検査用の試薬が変わるごとに、綿密に洗浄し、洗浄によって発生した廃液を処理する必要がある。
【特許文献1】特開2002−311036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の分注機構では、微小な分注量を高い精度で制御するための高価なシリンジポンプ等が使用されており、臨床検査装置のコストダウンには不利である。シリンジポンプは内筒とピストンとが密封性を確保した状態で、ピストンを摺動させて、ポンプ内容積を変化させることで吸引・吐出を行うので、耐久性に大きな課題がある。また、試薬、検体などを変える度にディスペンサの洗浄作業などが必要であるので、検査作業効率が悪く、短時間で各種の検査を行うには適していない。
【0004】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、高価なシリンジポンプなどを用いることなく微小量の試薬などを精度良く分注でき、また、検体および試薬の変更時に分注機構の洗浄作業を不要とした検査装置の分注方法、および、検査装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の検査装置の分注方法は、
試薬あるいは検体を貯留した容器として、試薬あるいは検体の貯留部と、吐出ノズルと、前記貯留部に貯留されている前記試薬あるいは検体を当該吐出ノズルに供給する流路とを備えたノズルカートリッジを用意し、
検査装置に、前記ノズルカートリッジを着脱可能な状態で装着するためのカートリッジ装着部を配置し、
当該カートリッジ装着部には、当該カートリッジ装着部に装着された前記ノズルカートリッジの前記流路の内容積を変化させて前記吐出ノズルから液滴を吐出させるための圧力変動を発生させるアクチュエータを取り付け、
前記試薬あるいは検体の分注時には、前記ノズルカートリッジを前記カートリッジ装着部に装着し、前記アクチュエータを駆動して、前記ノズルカートリッジの前記吐出ノズルから、前記試薬あるいは検体の液滴を吐出させることを特徴としている。
【0006】
また、本発明の検査装置は、
試薬あるいは検体を分注する分注機構を有し、
当該分注機構は、吐出ノズル、前記試薬あるいは検体を貯留した貯留部、および、当該貯留部に貯留されている前記試薬あるいは検体を前記吐出ノズルに供給する流路を備えたノズルカートリッジと、当該ノズルカートリッジが着脱可能な状態で装着されるカートリッジ装着部とを有しており、
前記カートリッジ装着部は、当該カートリッジ装着部に装着された前記ノズルカートリッジの前記流路の内容積を変化させて前記吐出ノズルから前記試薬あるいは検体の液滴を吐出させるための圧力変動を発生させるアクチュエータを備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明では、試薬あるいは検体の分注機構としてインクジェトプリンタのインクジェットヘッドと同様な機構を採用している。また、使い捨てとされる試薬あるいは検体が収納されているノズルカートリッジに、吐出ヘッドおよび、吐出圧力発生用の流路のみを形成しておき、圧電素子などの高価なアクチュエータをカートリッジ装着部の側に配置してある。
【0008】
インクジェットヘッドと同様な機構を採用することにより、分注される試薬あるいは検体の微小量を高精度に管理することができ、検体の検査を精度良く行うことができる。また、試薬あるいは検体を変えて検査を行う場合には、ノズルカートリッジをカートリッジ装着部から抜き、別の試薬あるいは検体が収納されているノズルカートリッジに交換するだけでよく、分注機構の試薬あるいは検体の通路部分の洗浄作業が不要である。さらに、収納されている試薬あるいは検体が無くなると、インクカートリッジは廃棄されるが、高価なアクチュエータはカートリッジ装着ユニットの側に配置されているので繰り返し使用することができ、費用効率が良い。さらに、シリンジポンプの内筒とピストンのように摺動する部位がないため、耐久性にも優れている。
【0009】
ここで、前記カートリッジ装着部を、当該カートリッジ装着部に前記ノズルカートリッジを装着するためのカートリッジ装着位置および前記検査部に前記試薬あるいは検体を分注する分注位置に搬送するキャリッジを配置することが望ましい。
【0010】
また、複数の前記カートリッジ装着部が連結された構造の多連式装着部を用いることにより、異なる種類の試薬などを分注する作業を効率化できる。
【0011】
さらに、各種の試液および検体を用いて効率良く検査を行うためには、複数本の前記ノズルカートリッジが収納されるカートリッジマガジンと、ここから、必要本数の前記ノズルカートリッジを取り出して前記カートリッジ装着部に装着するカートリッジ搬送機構とを配置することが望ましい。
【0012】
次に、本発明において、前記ノズルカートリッジは、前記カートリッジ装着部に着脱可能に装着される装着部を備え、当該装着部に、前記流路および、当該流路の一部を規定している面外方向に振動可能な流路側振動板とが形成された構成とすることができる。また、前記カートリッジ装着部は、前記ノズルカートリッジの前記装着部が装着される装着穴と、この装着穴内に配置された面外方向に振動可能な駆動側振動板と、前記装着穴内において前記駆動側振動板に対向した位置に配置された弾性部材と、前記アクチュエータである圧電素子とを備えた構成とすることができる。この場合、前記駆動側振動板は、前記装着穴に挿入された前記装着部の前記流路側振動板に当接可能な位置に配置され、前記圧電素子によって振動するようになっており、前記弾性部材は、前記装着穴に挿入された前記装着部によって弾性変形して、当該装着部を弾性復帰力によって前記駆動側振動板に向けて付勢可能な位置に配置しておけばよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の検査装置では、試液あるいは検体の分注機構としてインクジェットヘッドと同様な機構を採用している。また、使い捨てとされる試液あるいは検体が収納されているノズルカートリッジには、吐出ヘッドおよび、吐出圧力発生用の流路のみを形成しておき、圧電素子などのアクチュエータをカートリッジ装着部の側に配置してある。
【0014】
したがって、分注される試液あるいは検体の微小量を高精度に管理することができ、検体の検査を精度良く行うことができる。また、試液あるいは検体を変えて検査を行う場合には、ノズルカートリッジをカートリッジ装着部から抜き、別の試液あるいは検体が収納されているノズルカートリッジに交換するだけでよく、従来必要とされていた、分注機構の試液あるいは検体の通路部分の洗浄作業などが不要になる。さらに、使い捨てとされるノズルカートリッジにはアクチュエータが搭載されていないので、製造コストおよびランニングコストを低減できる。さらに、アクチュエータが摺動する構成ではないので、耐久性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した検査装置の例として臨床検査装置の実施の形態を説明する。
【0016】
(全体構成)
図1は本実施の形態に係る臨床検査装置の主要部分の概略構成図である。臨床検査装置1は、矩形枠状の装置フレーム2の底面中央部分に取り付けた前後方向(Y方向)に出し入れ可能な検査テーブル3を有している。検査テーブル3には、検体が予め供給されている1枚の検査チップ4が載置されるようになっている。検査チップ4は、装置フレーム2の後側中央部分に取り付けられているチップマガジン5に収納されている。チップマガジン5に収納されている検査チップ4は、一点鎖線で示す搬送経路によって不図示のチップ搬送機構によって装置前方に搬送され、想像線で示すように、前方に引き出されている検査テーブル3に乗せられるようになっている。
【0017】
検査テーブル3の側方には、装置フレーム2の底面部分にメンテナンスユニット6が配置されている。これら検査テーブル3およびメンテナンスユニット6の上方には、キャリッジ7が左右方向(X方向)に移動可能な状態で配置されている。キャリッジ7は、装置フレーム2の幅方向に掛け渡したキャリッジガイド軸8に沿って、キャリッジモータ9、タイミングベルト10、プーリ11などからなるキャリッジ駆動機構によってX方向に移動する。
【0018】
キャリッジ7にはインクジェット方式の分注機構12が搭載されている。分注機構12は、キャリッジ7に搭載されている3連式のカートリッジ装着部13(1)〜13(3)と、当該3連式のカートリッジ装着部のそれぞれに形成されている装着穴14(1)〜14(3)にそれぞれ着脱可能に装着される3本のノズルカートリッジ15(1)〜15(3)とを有している。ノズルカートリッジ15(1)〜15(3)は、太線で示す搬送経路に沿って、不図示のカートリッジ搬送機構によって、各種類の試薬が貯留された多数本のノズルカートリッジが収納されているカートリッジマガジン16から各カートリッジ装着部13(1)〜13(3)に供給されるようになっている。
【0019】
検査テーブル3における検査チップ4を載せる面の下側の部位には、後述のように光学式の測定部17が内蔵されている。また、検査テーブル3の側方には液送ポンプユニット18が装置フレーム2の底面部分に取り付けられている。
【0020】
図2(a)および(b)は、検査チップ4を示す斜視図および検査テーブル3に載せた状態を示す概略断面図である。図3(a)〜(c)は検査チップ4の平面図、正面図および縦断面図である。検査チップ4は扁平な矩形状の基板21を備えており、この基板21の平坦な表面22には、円形の検体および緩衝薬の導入孔23と、円形の指標液導入孔24と、円形の反応薬導入孔25と、長円形の反応チャンバ26とが形成されている。導入孔23、24、25にはそれぞれ連通溝27、28、29が繋がっており、これらの連通溝27〜29は途中位置で合流して反応チャンバ26に繋がっている。反応チャンバ26は連通溝30を介して測定セル31に繋がっている。
【0021】
検査テーブル3に載せた検査チップ4の各導入孔23〜25には、分注機構12によって、緩衝薬、指標薬および反応薬がそれぞれ分注される。これらに分注された薬液は、毛細管力によって各連通溝27〜29に沿って反応チャンバ26に移動する。緩衝薬と共に反応チャンバ26に移動した検体(例えば血しょう)がここで反応薬と反応する。
【0022】
次に、測定セル31は、基板21の裏面から垂直に突出している光透過性の突出板部分32の内部に形成された微小幅の通路である。測定セル31は、突出板部分32の端面に開けた接続孔33に連通している。接続孔33は気体透過性および液体不透過性のフィルム34で封鎖されている。フィルム34としては、例えば、ゴアテックス(商品名)を用いることができる。
【0023】
図2(b)に示すように、検査テーブル3の上面には、検査チップ4の装着用凹部35が形成されており、この凹部35の底中央には検査チップ4の突出板部分32が差し込まれる溝36が形成されている。検査テーブル3には、この溝36の両側に配置された白色レーザ光源37および受光部38を備えた光学式の測定部17が配置されている。例えば、測定部17は吸光度計である。
【0024】
検査テーブル3に検査チップ4を装着すると、検査チップ4の測定セル31に連通している接続孔33が、フィルム34を介して、液送ポンプユニット18の吸引ポート(図示せず)に接続された状態になる。液送ポンプユニット18を駆動して測定セル31を負圧状態にすると、連通溝30を介して測定セル31に連通している反応チャンバ26に溜まっている検体および薬液が当該測定セル31に導入される。導入された検体の反応状態が、測定部17によって吸光度として検出される。
【0025】
(分注機構)
次に、図4〜図10を参照して、分注機構12の構造を詳細に説明する。
【0026】
図4は分注機構12のみを取り出して示す斜視図である。分注機構12は、3連式のカートリッジ装着部13(1)〜13(3)と、これらに着脱可能に装着されるノズルカートリッジ15(1)〜15(3)から構成されている。ノズルカートリッジ15(1)は緩衝薬用のノズルカートリッジであり、ノズルカートリッジ15(2)は反応薬用のノズルカートリッジであり、ノズルカートリッジ15(3)は指標薬用のノズルカートリッジである。各カートリッジ装着部および各ノズルカートリッジの構造は同一であるので、中央の反応薬用のノズルカートリッジ15(2)およびカートリッジ装着部13(2)から構成される反応薬分注機構を以下に説明する。
【0027】
図5(a)および(b)は反応薬分注機構を後側および前側から見た場合の斜視図である。図6は反応薬分注機構を分離した状態の斜視図である。図7(a)および(b)は反応薬分注機構の正面図および縦断面図である。まず、これらの図を参照して反応薬分注機構の主要構成を説明する。
【0028】
反応薬分注機構100は、アクチュエータとして圧電素子102が内蔵されているカートリッジ装着部13(2)と、先端に吐出ノズル104が形成されているノズルカートリッジ15(2)とを有している。ノズルカートリッジ15(2)は、円筒状の液体容器106(貯留部)と、この液体容器106の先端面から同軸状に突出している装着部107とを備えている。装着部107の先端面の中心に液滴吐出ノズル104が形成されており、装着部107の内部には液滴吐出ノズル104に連通した液体流路108が形成されている。この液体流路108の一方の側面は面外方向に振動可能な流路側振動板109によって規定されている。
【0029】
カートリッジ装着部13(2)は、ノズルカートリッジ15(2)の装着部107が着脱可能な状態で挿入されている装着穴14(2)を備えている。この装着穴14(2)の内周面の一部は面外方向に振動可能な駆動側振動板112によって規定されている。この駆動側振動板112の背面側に積層型のピエゾ素子からなる圧電素子102が配置されており、圧電素子102が変位すると駆動側振動板112が振動する。また、駆動側振動板112に対向している装着穴14(2)の内周面部分は弾性部材113によって規定されている。
【0030】
駆動側振動板112は、装着穴14(2)に挿入されたノズルカートリッジ15(2)の装着部107の流路側振動板109に当接可能な位置に配置されている。また、弾性部材113は、挿入された装着部107によって装着穴14(2)の外方に弾性変形させられ、その弾性復帰力によって装着部107を駆動側振動板112に向けて付勢した状態となっている。したがって、装着部107を弾性部材113による付勢力に逆らって装着穴14(2)から引き抜くことができ、装着部107を引き抜くことにより、図6に示すように、カートリッジ装着部13(2)からノズルカートリッジ15(2)を分離させることができる。
【0031】
次に、図8はカートリッジ装着部13(2)とノズルカートリッジ15(2)が分離した状態を縦断面と共に示す斜視図であり、図9はノズルカートリッジ15(2)の分解斜視図であり、図10はカートリッジ装着部13(2)の分解斜視図である。これらの図も参照して、ノズルカートリッジ15(2)およびカートリッジ装着部13(2)の構造を更に詳細に説明する。
【0032】
まず、ノズルカートリッジ15(2)の液体容器106は、その後端が開口部121となっており、当該液体容器106の中空部122と、開口部121から挿入された扁平なカップ状のピストン123によって液密状態の液体貯留部124が形成されており、ここに反応薬125が充填されている。開口部121はキャップ126で封鎖されているが、当該キャップ126とピストン123の間は、キャップ126に形成した不図示の大気連通孔を介して大気開放されており、ピストン123は反応薬125の消費に伴って、液密状態を保持したまま、液体容器106の先端面127の側に移動するようになっている。
【0033】
液体容器106の先端面127から同軸状に突出している装着部107は、液体容器106と一体形成されている一定厚さ、および一定幅の突出板128と、この突出板128の表面に装着した流路基板129と、この流路基板129の表面に貼り付けられている流路側振動板109とを備えている。突出板128には、裏面中央から垂直に突出している突条部131が一体形成されている。図9に示すように、当該突出板128の表面には流路基板129を装着するための凹部132が形成されている。流路基板129の表面には液体流路108を形成するための流路溝133が形成されており、この流路溝133の先端は液滴吐出ノズル104を形成するためのノズル溝134に連通している。流路溝133の後端には細い連通溝135が形成されており、この連通溝135は、液体容器106の先端面127を貫通して液体貯留部124に繋がっている液体供給穴136に連通している。
【0034】
この流路基板129の表面に貼り付けられている流路側振動板109は、流路基板129に対応する輪郭形状をした薄い外周縁部分137と、この外周縁部分137によって取り囲まれている厚い中央部分138とを備えている。中央部分138は流路溝133の開口形状よりも一回り小さな領域に形成されている。この構成の流路基板129の裏面側はほぼ平坦面とされ、その中央部分138の上面部分は細長い長方形の平坦面とされ、この平坦面が駆動側振動板112に当接する当接面139となっている。
【0035】
流路基板129の表面に流路側振動板109を貼り合わせることにより、これらの間に、液滴吐出ノズル104、液体流路106、液体供給穴136に連通した連通路140が形成される。
【0036】
この構成のノズルカートリッジ15(2)の液体容器106および突出板128からなる部品、流路基板129、流路側振動板109は、ステンレススチール、ガラス、シリコン、プラスチックなどの各種の素材から形成することができる。使い捨ての場合には、少なくとも液体容器106および突出板128からなる部品を廉価なプラスチック素材から形成することが望ましい。
【0037】
次に、カートリッジ装着部13(2)の構造を説明する。カートリッジ装着部13(2)は、装着穴14(2)が形成されているユニットケース141を備えている。このユニットケース141における装着穴14(2)の挿入側の開口部142の形状は、ノズルカートリッジ15(2)の装着部107の輪郭形状と相補的な形状をしており、これらの輪郭形状によって装着部107を装着穴14(2)に挿入する際の向きが規定されている。
【0038】
装着穴14(2)に挿入された装着部107における流路側振動板109に対峙する装着穴内周面部分は、ユニットケース141に取り付けた駆動側振動板112によって規定されている。この駆動側振動板112は、流路側振動板109の平坦な当接面139に対峙する平坦な対峙面143を備えている。この対峙面143における当接面139に対峙する領域内の部位には、その上端部分に1個の突起144、その下端部分に2個の突起145、146が形成されており、これらの3個の突起144ないし146が流路側振動板109の当接面139に当接するようになっている。
【0039】
この駆動側振動板112の対峙面143の裏面側には圧電素子102が配置されている。圧電素子102はセラミック製などの固定板147に取り付けられており、固定板147はユニットケース141に取り付けられている。圧電素子102の変位面102aが駆動側振動板112の対峙面143の裏面に当接状態に保持されている。したがって、駆動側振動板112は圧電素子102の変位に伴って振動する。
【0040】
一方、装着穴14(2)における駆動側振動板112とは反対側の内周面部分、すなわち、装着部107における突条部131に対峙する部位には細長い直方体形状の弾性部材113が配置されている。この弾性部材113の表面は僅かに装着穴14(2)の内方に突出しており、挿入された突条部131によって外方に押し潰され、これによって発生する弾性復帰力によって装着部107を反対側の駆動側振動板112に向けて付勢している。
【0041】
したがって、装着部107の流路側振動板109の当接面139は所定の付勢力で駆動側振動板112の対峙面143に形成されている3個の突起144ないし146に押し付けられている。この結果、圧電素子102によって駆動側振動板112が振動すると、これに追従して、流路側振動板109における剛性の高い中央部分138が撓むことなく全体として振動し、液体流路108の容積が増減してその内圧が変動する。
【0042】
なお、ユニットケース141における挿入側の開口部142が形成されている端面部分148からはほぼ180度の弧を張る円弧状支持板149が突出している。装着穴14(2)に装着部107が挿入された状態のノズルカートリッジ15(2)における液体容器106の先端側の外周面部分が当該円弧状支持板149によって保持され、ノズルカートリッジ15(2)のガタツキが防止される。また、ユニットケース141の側面にはフレキシブルケーブル150が取り付けられており、ここを介して圧電素子102の電極に駆動電圧が供給される。
【0043】
なお、ユニットケース141もステンレススチール、ガラス、シリコン、プラスチックなどの各種の素材から形成することができる。製造コストを低減するためには、プラスチック製の射出成形品とすることが望ましい。
【0044】
このように構成した反応薬分注機構100では、ノズルカートリッジ15(2)の装着部107がカートリッジ装着部13(2)の装着穴14(2)に挿入された状態においては、装着部107によって弾性部材113が弾性変形させられており、当該弾性部材113の弾性復帰力によって装着部107の流路側振動板109がカートリッジ装着部13(2)の側の駆動側振動板112の3個の突起144ないし146に当接した状態に保持される。
【0045】
圧電素子102によって駆動側振動板112を振動させると、この駆動側振動板112に当接状態に保持されている流路側振動板109も一緒に振動する。すなわち、その剛性の高い中央部分138が平板状態のまま全体として面外方向に振動し、液体流路108の容積が変動する。本例では引き打ちにより液滴を吐出させるようにしている。そのために、まず、圧電素子102を収縮させる。これにより駆動側振動板112が流路側振動板109から後退する方向に変位する。流路側振動板109は駆動側振動板112に押し付けられているので、駆動側振動板112に追従して駆動側振動板112の側に変位する。この結果、液体流路108の容積が一時的に増加する。しかる後は圧電素子102が伸長し、流路側振動板109が押し戻され、液体流路108の容積が減少し内圧が一時的に増加し、これによって、液滴吐出ノズル104から反応薬が吐出する。
【0046】
ここで、ノズルカートリッジ15(2)の装着部107は弾性部材113の弾性復帰力によってカートリッジ装着部13(2)の装着穴14(2)に保持されており、その弾性復帰力による付勢力に逆らって装着部107を装着穴14(2)から引き抜くという簡単な操作により、ノズルカートリッジ15(2)をカートリッジ装着部13(2)から取り外すことができる。したがって、液滴吐出ノズル104に目詰まりが発生した場合には、ノズルカートリッジ15(2)のみを交換すればよく、圧電素子102を備えたカートリッジ装着部13(2)はそのまま継続して用いることができるので経済的である。
【0047】
(臨床検査装置の動作説明)
次に、図1、図11〜図13を参照して、本例の臨床検査装置1の動作を纏めて説明する。
【0048】
まず、図1に示すように、臨床検査装置1のチップマガジン5に検体(例えば、血しょう)が供給された検査チップ4を装着する。次に、カートリッジマガジン16から、緩衝薬、反応薬および指標薬がそれぞれ収納されている3本のノズルカートリッジ15(1)〜13(3)を取り出して、3連式のカートリッジ装着部13(1)〜13(3)の各装着穴14(1)〜14(3)に装着する。
【0049】
次に、図11に示すように、検査テーブル3を前方に引き出し、検査チップ4をチップマガジン5から取り出して検査テーブル3の上面に装着する。装着後には検査テーブル3を元の位置に引き戻す。図12には、このようにして、ノズルカートリッジ15(1)〜15(3)および検査チップ4が装着された後の状態を示してある。
【0050】
この後は、図13に示すように、キャリッジ7によって分注機構12をX方向に移動して、検査テーブル3の検査チップ4の真上に位置決めする。例えば、分注機構12を検査チップ4の真上に位置決めした状態において、分注機構12の指標薬のノズルカートリッジ15(3)の吐出ノズル104が、検査チップ4の指標薬導入孔24の真上に位置するものとする。この場合には、まず、カートリッジ装着部13(3)の圧電素子102を駆動して、指標薬を吐出させて導入孔24に分注する。
【0051】
次に、検査テーブル3をY方向(前後方向)に微小移動させると共に、キャリッジ7をX方向(左右方向)に微小移動させ、例えば、検査チップ4の導入孔23の真上に、緩衝薬のノズルカートリッジ15(1)の吐出ノズル104を位置決めする。そして、緩衝薬を吐出して導入孔23に分注する。同様にして、残りの導入孔25に反応薬を分注する。このように、インクジェット方式の分注機構12を用いて各薬液を分注しているので、微小量の薬液を精度良く分注できる。
【0052】
分注動作が終了した後は、キャリッジ7を再びメンテナンスユニット6の真上に対峙した待機位置に戻す。メンテナンスユニット6は、インクジェットプリンタのインクジェットヘッドのメンテナンスユニットと同様に、各ノズルカートリッジ15(1)〜15(3)の液滴吐出ノズル104の乾燥、異物付着、異物混入などを防止するためのものである。
【0053】
この後は、検査チップ4において、そこに分注された薬液が毛細管力によって各連通溝27〜29に沿って反応チャンバ26に移動し、緩衝薬と共に反応チャンバ26に移動した検体(例えば血しょう)がここで反応薬と反応する。所定時間経過後に、液送ポンプユニット18が駆動され、その吸引ポートに連通している検査チップ4の測定セル31が負圧状態になる。この結果、反応チャンバ26から検体を含む薬液が測定セル31に導入される。本例では、導入された検体の反応状態を表す吸光度が、検体テーブル3に内蔵されている測定部17によって測定される。
【0054】
ここで、異なる種類の試薬などを用いて検体の検査を行う場合には、各ノズルカートリッジ15(1)〜15(3)を引き抜き、別のカートリッジに交換するだけでよい。したがって、分注機構12の洗浄作業などは不要である。
【0055】
また、ノズルカートリッジ15が空になった場合には廃棄される。この場合、ノズルカートリッジ15にはアクチュエータ(圧電素子)が搭載されていないので、ノズルカートリッジ15を安価に製造でき、使い捨てとしても費用効率が低下することがない。
【0056】
(その他の実施の形態)
なお、上記の例では、インクジェット方式の分注機構12を用いて、指標薬、反応薬などの薬液を分注している。検体を同様な分注機構を用いて検体チップ4に分注することも可能である。
【0057】
また、上記の例では、分注機構12は3連式であるが、2連、1連あるいは4連以上の構造としてもよいことは勿論である。
【0058】
さらに、上記の説明は、本発明を臨床検査装置に適用したものであるが、本発明は臨床検査装置以外の検査装置にも同様に適用することができる。例えば、試料または試薬を一定量正確に注入する検査装置の例として、ガスクロマトグラフィや高速液体クロマトグラフィ(HPLC)などがあり、これらにも本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明を適用した臨床検査装置の主要部分の概略構成図である。
【図2】検査チップの斜視図および検査テーブルに装着した状態の断面図である。
【図3】検査チップの平面図、正面図および断面図である。
【図4】3連式分注機構を示す斜視図である。
【図5】分注機構を異なる方向から見た場合の斜視図である。
【図6】分注機構の分離状態を示す斜視図である。
【図7】分注機構の正面図および縦断面図である。
【図8】分注機構の分離状態を縦断面と共に示す斜視図である。
【図9】ノズルカートリッジの分解斜視図である。
【図10】カートリッジ装着部の分解斜視図である。
【図11】検査テーブルが引き出された状態の臨床検査装置を示す概略説明図である。
【図12】検査チップとノズルカートリッジが装着された後の臨床検査装置の概略説明図である。
【図13】分注動作を行っている臨床検査装置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 臨床検査装置、2 装置フレーム、3 検査テーブル、4 検査チップ、5 チップマガジン、6 メンテナンスユニット、7 キャリッジ、8 キャリッジガイド軸、9 キャリッジモータ、10 タイミングベルト、11 プーリ、12 分注機構、13(1)〜13(3) カートリッジ装着部、14(1)〜14(3) 装着穴、15(1)〜15(3) ノズルカートリッジ、16 カートリッジマガジン、17 測定部、18 液送ポンプユニット、21 基板、22 表面、23〜25 導入孔、26 反応チャンバ、27〜30 連通溝、31 測定セル、32 突出板部分、33 接続孔、34 フィルム、35 装着用凹部、36 溝、37 レーザ光源、38 受光部、100 分注機構、102 圧電素子、104 液滴吐出ノズル、106 液体容器、107 装着部、108 液体流路、109 流路側振動板、112 駆動側振動板、113 弾性部材、121 開口部、122 中空部、123 ピストン、124 液体貯留部、125 液体、126 キャップ、127 先端面、128 突出板、129 流路基板、131 突条部、132 凹部、133 流路溝、134 ノズル溝、135 連通溝、136 液体供給穴、137 外周縁部分、138 中央部分、139 当接面、140連通路、141 ユニットケース、142 開口部、143 対峙面、144,145,146 突起、147 固定板、148 端面部分、149 円弧状支持板、150 フレキシブルケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬あるいは検体を貯留した容器として、試薬あるいは検体の貯留部と、吐出ノズルと、前記貯留部に貯留されている前記試薬あるいは検体を当該吐出ノズルに供給する流路とを備えたノズルカートリッジを用意し、
検査装置に、前記ノズルカートリッジを着脱可能な状態で装着するためのカートリッジ装着部を配置し、
当該カートリッジ装着部には、当該カートリッジ装着部に装着された前記ノズルカートリッジの前記流路の内容積を変化させて前記吐出ノズルから液滴を吐出させるための圧力変動を発生させるアクチュエータを取り付け、
前記試薬あるいは検体の分注時には、前記ノズルカートリッジを前記カートリッジ装着部に装着し、前記アクチュエータを駆動して、前記ノズルカートリッジの前記吐出ノズルから、前記試薬あるいは検体の液滴を吐出させることを特徴とする検査装置の分注方法。
【請求項2】
試薬あるいは検体を分注する分注機構を有し、
当該分注機構は、吐出ノズル、前記試薬あるいは検体を貯留した貯留部、および、当該貯留部に貯留されている前記試薬あるいは検体を前記吐出ノズルに供給する流路を備えたノズルカートリッジと、当該ノズルカートリッジが着脱可能な状態で装着されるカートリッジ装着部とを有しており、
前記カートリッジ装着部は、当該カートリッジ装着部に装着された前記ノズルカートリッジの前記流路の内容積を変化させて前記吐出ノズルから前記試薬あるいは検体の液滴を吐出させるための圧力変動を発生させるアクチュエータを備えていることを特徴とする検査装置。
【請求項3】
前記カートリッジ装着部を、当該カートリッジ装着部に前記ノズルカートリッジを装着するためのカートリッジ装着位置および前記ノズルから前記試薬あるいは検体を吐出する分注位置に搬送するキャリッジを有していることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記カートリッジ装着部が複数連結された構造の多連式装着部を有していることを特徴とする請求項2または3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記ノズルカートリッジが収納されているカートリッジマガジンと、
当該カートリッジマガジンから1本あるいは複数本の前記カートリッジを取り出して前記カートリッジ装着部に装着するカートリッジ搬送機構とを有していることを特徴とする請求項2ないし4のうちのいずれかの項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記ノズルカートリッジは、前記カートリッジ装着部に着脱可能に装着される装着部を備え、当該装着部に、前記流路および、当該流路の一部を規定している面外方向に振動可能な流路側振動板とが形成されており、
前記カートリッジ装着部は、前記ノズルカートリッジの前記装着部が装着される装着穴と、この装着穴内に配置された面外方向に振動可能な駆動側振動板と、前記装着穴内において前記駆動側振動板に対向した位置に配置された弾性部材と、前記アクチュエータである圧電素子とを備えており、
前記駆動側振動板は、前記装着穴に挿入された前記装着部の前記流路側振動板に当接可能な位置に配置され、前記圧電素子によって振動するようになっており、
前記弾性部材は、前記装着穴に挿入された前記装着部によって弾性変形して、当該装着部を弾性復帰力によって前記駆動側振動板に向けて付勢可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項2ないし5のうちのいずれかの項に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−185504(P2008−185504A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20555(P2007−20555)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】