説明

検査装置

【課題】複数のマイクロチップを精度よく検査できる小型の検査装置を提供する。
【解決手段】マイクロチップに注入された試薬と検体を所定の温度に調節して反応させ反応結果をマイクロチップから測定する検査装置において、複数のマイクロチップをそれぞれ所定の温度に調節する複数の温度調節ユニットと、マイクロチップから反応結果を検出する検出ユニットと、複数のマイクロチップから反応結果を検出する複数の位置に順次検出ユニットを移動させる検出ユニット駆動手段と、検出ユニット駆動手段の駆動を制御する検出ユニット駆動制御手段と、を有し、検出ユニット駆動制御手段は、検出ユニットが反応結果を検出した後、検出ユニット駆動手段を駆動して検出ユニットを温度調節ユニットから離れた位置に移動させることを特徴とする検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。これは、μ−TAS(Micro total Analysis System:マイクロ総合分析システム)、バイオリアクタ、ラボ・オン・チップ(Lab−on−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。特に遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、μ−TASを用いることによりコスト、必要試料量、所要時間を削減できる。
【0003】
本出願人は、マイクロチップの微細流路内に試薬などを封入し、ポンプによって微細流路に液体を注入して試薬などを移動させ、反応部、次いで検出部へ流すことにより、血液など検体との反応結果を測定することができる検査装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。反応結果を検出する検出ユニットでは、ダイクロイックミラー等の光学フィルタを用いて光源の光を分離し、検体が発光する蛍光を検出している。
【0004】
一方、このような検査装置を用いても遺伝子診断等を行う際の検体と試薬の反応には時間がかかるため、複数のマイクロチップを並行して検査できる検査装置が望まれている。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2006−149379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、検体の反応を蛍光検出により測定し診断を行う検査装置では、蛍光を検出する光源や光学系を含む検出ユニットがマイクロチップより大きいので、マイクロチップ毎に検出ユニットを設けると検査装置が大型化してしまう。
【0006】
また、ダイクロイックミラー等の多層薄膜を用いた光学フィルタは温度によってフィルタ特性が変化するので、マイクロチップを加熱または吸熱する温度調節ユニットの近くに検出ユニットを長時間近づけるとフィルタ特性が変化し蛍光が検出できなくなることがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、複数のマイクロチップを精度よく検査できる小型の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0009】
1.
マイクロチップに注入された試薬と検体を所定の温度に調節して反応させ反応結果を測定する検査装置において、
複数の前記マイクロチップをそれぞれ所定の温度に調節する複数の温度調節ユニットと、
前記マイクロチップから前記反応結果を検出する検出ユニットと、
複数の前記マイクロチップから前記反応結果を検出する複数の位置に順次前記検出ユニットを移動させる検出ユニット駆動手段と、
前記検出ユニット駆動手段の駆動を制御する検出ユニット駆動制御手段と、
を有し、
前記検出ユニット駆動制御手段は、
前記検出ユニットが一つの前記マイクロチップから前記反応結果を検出した後、前記検出ユニット駆動手段を駆動して前記検出ユニットを前記温度調節ユニットから離れた位置に移動させることを特徴とする検査装置。
【0010】
2.
前記検出ユニット駆動制御手段は、
前記検出ユニットが前記反応結果を検出した後、前記検出ユニット駆動手段を駆動して前記検出ユニットを隣り合う前記温度調節ユニットの略中間位置に移動させることを特徴とする1に記載の検査装置。
【0011】
3.
前記検出ユニット駆動手段の駆動により前記検出ユニットを直線的に移動させる送りネジ手段と、
前記検出ユニット検知する前記送りネジ手段の一端に配置された第1位置検知手段と、
前記検出ユニット検知する前記送りネジ手段の他端に配置された第2位置検知手段と、
を有し、
前記第1位置検知手段と前記第2位置検知手段は前記温度調節ユニットの上下以外の位置に配置することを特徴とする1または2に記載の検査装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一つの検出ユニットを移動させて複数のマイクロチップを検査し、検査終了後は温度調節ユニットから離れた位置に検出ユニットを移動させるので、複数のマイクロチップを精度よく検査できる小型の検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態における検査装置80の外観図である。
【0014】
検査装置80はマイクロチップ1に予め注入された検体と、試薬との反応を自動的に検出し、表示部84に結果を表示する装置である。
【0015】
検査装置80の筐体82には2つの挿入口83a、83bがあり、それぞれマイクロチップ1a、1bを挿入口83a、83bに差し込んで筐体82の内部にセットするようになっている。本実施形態では2つの挿入口83a、83bに挿入するマイクロチップ1a、1b、および挿入口83a、83bに挿入されたマイクロチップ1a、1bを検査する機構にそれぞれa、bの符号を付けて区別する。マイクロチップ1a、1bで行う検査は同じ検査でも良いし、異なる検査でも良い。
【0016】
なお、挿入口83a、83bはマイクロチップ1a、1bを挿入時に挿入口83に接触しないように、マイクロチップ1a、1bの厚みより十分高さがある。85はメモリカードスロット、86はプリント出力口、87は操作パネル、88は入出力端子である。
【0017】
検査担当者は図1の矢印方向にマイクロチップ1a、1bのいずれか一方または両方を挿入し、操作パネル87を操作して検査を開始させる。検査装置80の内部では、マイクロチップ1a、1b内の反応の検査が自動的に行われ、検査が終了すると液晶パネルなどで構成される表示部84に結果が表示される。検査結果は操作パネル87の操作により、プリント出力口86よりプリントを出力したり、メモリカードスロット85に挿入されたメモリカードに記憶することができる。また、外部入出力端子88から例えばLANケーブルを使って、パソコンなどにデータを保存することができる。
【0018】
検査担当者は、検査終了後、マイクロチップ1a、1bを挿入口83a、83bから取り出す。
【0019】
次に、本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の一例について、図2を用いて説明する。
【0020】
図2(a)、図2(b)はマイクロチップ1の外観図である。図2(a)において矢印は、検査装置80にマイクロチップ1を挿入する挿入方向であり、図2(a)は挿入時にマイクロチップ1の下面となる面を図示している。図2(b)はマイクロチップ1の側面図である。
【0021】
図2(a)の窓111はマイクロチップ1内部の検出部19で行われる検体と蛍光物質を含む試薬の反応を光学的に検出するために設けられており、ガラスや樹脂などの透明な部材で構成されている。110a、110b、110c、110d、110eは内部の微細流路に連通する駆動液注入部であり、各駆動液注入部110から駆動液を注入し内部の試薬等を駆動する。113はマイクロチップ1に検体を注入するための検体注入部である。
【0022】
図2(b)に示すように、マイクロチップ1は溝形成基板108と、溝形成基板108を覆う被覆基板109から構成されている。
【0023】
マイクロチップ1を構成する溝形成基板108と被覆基板109に用いる材料について説明する。
【0024】
マイクロチップ1は、加工成形性、非吸水性、耐薬品性、耐候性、コストなどに優れていることが望まれており、マイクロチップ1の構造、用途、検出方法などを考慮して、マイクロチップ1の材料を選択する。その材料としては従来公知の様々なものが使用可能であり、個々の材料特性に応じて通常は1以上の材料を適宜組み合わせて、基板および流路エレメントが成形される。
【0025】
特に、多数の測定検体、とりわけ汚染、感染のリスクのある臨床検体を対象とするチップは、ディスポーザブルタイプであることが望ましい。そのため、量産可能であり、軽量で衝撃に強く、焼却廃棄が容易なプラステック樹脂、例えば、透明性、機械的特性および成型性に優れて微細加工がしやすいポリスチレンが好ましい。また、例えば分析においてチップを100℃近くまで加熱する必要がある場合には、耐熱性に優れる樹脂(例えばポリカーボネートなど)を用いることが好ましい。また、タンパク質の吸着が問題となる場合にはポリプロピレンを用いることが好ましい。樹脂やガラスなどは熱伝導率が小さく、マイクロチップの局所的に加熱される領域に、これらの材料を用いることにより、面方向への熱伝導が抑制され、加熱領域のみ選択的に加熱することができる。
【0026】
本実施形態では、検出部19において、蛍光物質の検出を光学的に行うので、検出部の窓111は光透過性の材料が用いられている。
【0027】
本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1には、検査、試料の処理などを行うための、微小な溝状の流路(微細流路)および機能部品(流路エレメント)が、用途に応じた適当な態様で配設されている。本実施形態では、これらの微細流路および流路エレメントによってマイクロチップ1内で行われる特定の遺伝子の増幅およびその検出を行う処理の一例を図2(c)を用いて説明する。なお、本発明の適用は図2(c)で説明するマイクロチップ1の例に限定されるものでは無く、様々な用途のマイクロチップ1に適用できる。
【0028】
図2(c)はマイクロチップ1内部の微細流路および流路エレメントの機能を説明するための説明図である。
【0029】
微細流路には、例えば検体液を収容する検体収容部121、試薬類を収容する試薬収容部120などが設けられており、場所や時間を問わず迅速に検査ができるよう、試薬収容部120には必要とされる試薬類、洗浄液、変性処理液などがあらかじめ収容されている。図2(c)において、試薬収容部120、検体収容部121および流路エレメントは四角形で表し、その間の微細流路は実線と矢印で表す。
【0030】
マイクロチップ1は、微細流路を形成した溝形成基板108と溝状の流路を覆う被覆基板109から構成されている。微細流路はマイクロメーターオーダーで形成されており、例えば幅は数μm〜数百μm、好ましくは10〜200μmで、深さは25〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0031】
少なくともマイクロチップ1の溝形成基板108には、上記の微細流路が形成されている。被覆基板109は、少なくとも溝形成基板の微細流路を密着して覆う必要があり、溝形成基板の全面を覆っていても良い。なお、マイクロチップ1の微細流路には、例えば、図示せぬ送液制御部、逆流防止部(逆止弁、能動弁など)などの送液を制御するための部位が設けられ、逆流を防止し、所定の手順で送液が行われるようになっている。
【0032】
検体注入部113はマイクロチップ1に検体を注入するための注入部、駆動液注入部110はマイクロチップ1に駆動液11を注入するための注入部である。マイクロチップ1による検査を行うに先立って、検査担当者は検体を検体注入部113から注射器などを用いて注入する。図2(c)に示すように、検体注入部113から注入された検体は、連通する微細流路を通って検体収容部121に収容される。
【0033】
次に、駆動液注入部110aから駆動液11を注入すると、駆動液11は連通する微細流路を通って検体収容部121に収容されている検体を押し出し、増幅部122に検体を送り込む。
【0034】
一方、駆動液注入部110bから注入された駆動液11は、連通する微細流路を通って試薬収容部120aに収容されている蛍光物質を含む試薬を押し出す。試薬収容部120aから押し出された蛍光物質を含む試薬は増幅部122に駆動液11によって送り込まれる。このときの反応条件によっては、増幅部122の部分を所定の温度にする必要があり、後で説明するように検査装置80の内部で加熱または吸熱して所定の温度で反応させる。
【0035】
所定の反応時間の後、さらに駆動液11により増幅部122から送り出された反応後の検体を含む溶液は、検出部19に注入される。窓111から検出部19に励起光を照射すると、検体と反応した試薬が蛍光を発光するので蛍光の光量を測定することにより反応結果を計測することができる。
【0036】
図3は、検査装置80の内部構成を説明するための斜視図、図4は、検査装置80の内部構成の一例を示す断面図、である。なお、図3では説明を簡単にするためマイクロチップが1つの場合の内部構成を例示している。
【0037】
検査装置80は、温度調節ユニット152、温度調節ユニット153、検出ユニット15、駆動液ポンプ92、パッキン90、駆動液タンク91、送りネジ301、ジョイント302、モータ300などから構成される。図3、図4のようにマイクロチップ1の両面を温度調節ユニット152と温度調節ユニット153が密着している。また、図3、図4はマイクロチップ1をパッキン90bに密着させている状態を示している。
【0038】
以下、図3、図4を用いて検査装置80の内部構成の例を説明する。
【0039】
温度調節ユニット152、温度調節ユニット153とマイクロチップ1は、図示せぬ駆動部材により駆動され、紙面上下方向に移動可能である。初期状態において、駆動部材により温度調節ユニット152を、図3の状態からマイクロチップ1の厚み以上上昇させる。すると、マイクロチップ1は図3の矢印A方向に挿抜可能であり、検査担当者は挿入口83から図示せぬ規制部材に当接するまでマイクロチップ1を挿入する。所定の位置までマイクロチップ1を挿入するとフォトインタラプタなどを用いたチップ検知部95がマイクロチップ1を検知し、オンになる。
【0040】
温度調節ユニット152、温度調節ユニット153は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行ってマイクロチップ1の面を所定の温度に調整するユニットである。
【0041】
次に、駆動部材により温度調節ユニット152とマイクロチップ1を下降させて、マイクロチップ1を温度調節ユニット152とパッキン90bに密着させる。
【0042】
マイクロチップ1の検出部19では、検体と前記マイクロチップ1内に貯蔵された蛍光物質を含む試薬が反応し、励起光を照射すると蛍光をおこす。本実施形態では検出部19でおこる試薬の反応結果を、窓111から光学的に検出する。
【0043】
図3に示すマイクロチップ1は、試薬の反応結果を測光する検出部19がマイクロチップ1の内部に4つ設けられている例である。
【0044】
4つの検出部19a、19b、19c、19dは、図3に示す直線Fに沿って配設されている。検出部19a、19b、19c、19dの図示せぬ窓111a、111b、111c、111dは被覆基板109の面にそれぞれ設けられており、窓111a、111b、111c、111dを介して反応結果を光学的に検出できる。
【0045】
検出ユニット15は送りネジ301と螺合するネジ部を有し、送りネジ301が回転することにより図3の矢印B方向または逆方向に移動する。送りネジ301は直線Fと平行に配設されており、検出ユニット15が送りネジ301によって移動すると、検出部19a、19b、19c、19dのそれぞれの中心部に、検出ユニット15の図示せぬ受光部161の光軸が一致するように配置されている。検出ユニット15は、所定の位置に移動した後、検出部19a、19b、19c、19dに順次励起光を照射し、蛍光物質が発光する蛍光を受光して電気信号を出力する。
【0046】
送りネジ301はモータ300によりジョイント302を介して駆動される。モータ300は例えばパルスモータであり、パルスにより所定量回転する。モータ300は本発明の検出ユニット駆動手段、送りネジ301は本発明の送りネジ手段である。
【0047】
なお、検出ユニット15には回転防止用に図3には図示せぬガイド穴が設けられており、ガイド穴を貫通するガイド棒に沿って移動する。ガイド棒は送りネジ301と平行に配設されている。
【0048】
なお、本実施形態ではマイクロチップ1に検出部19が4つ設けられている場合について説明したが、検出部19の数は1つ以上であればいくつでも良い。
【0049】
図4に示すように、駆動液ポンプ92の吸込側には、パッキン90cが接続され、駆動液タンク91に充填された駆動液を吸い込むようになっている。一方、駆動液ポンプ92の吐出側にはパッキン90bが接続されていて、パッキン90cから吸い込んだ駆動液を、パッキン90bを介してマイクロチップ1の駆動液注入部110からマイクロチップ1内に形成された微細流路6に注入する。パッキン90bは駆動液ポンプ92とマイクロチップ1の間に挟まれ、駆動液ポンプ92の駆動液出口とパッキン90bの開口部と駆動液注入部110とは連通している。このように、駆動液ポンプ92から、連通しているパッキン90bを介して駆動液注入部110より駆動液を注入する。
【0050】
次に図5、図6を用いて本発明の実施形態について説明する。図5、図6は、本発明の実施形態の検査装置80の内部構成の一例を示す断面図、である。
【0051】
図3で説明した検査装置80の内部構成との違いは、検出ユニット15が送りネジ301によって移動して2つのマイクロチップ1から順次反応結果を検出するように構成されている点である。今までに説明した構成要素には同番号を付し、2つのマイクロチップ1のそれぞれに対応する構成要素にはa、b符号を付けて区別する。
【0052】
図5、図6は、図3で説明したようにマイクロチップ1a、1bが所定の位置に配置され、温度調節ユニット152、温度調節ユニット153と密着している状態を示している。図5(a)は初期状態、図5(b)はマイクロチップ1aを検査中の状態、図6(a)は待機中の状態、図6(b)はマイクロチップ1bを検査中の状態である。
【0053】
図5、図6に示すマイクロチップ1a、1bは、図3で説明したマイクロチップ1と同じ構成であり、検出部19がマイクロチップ1a、1bの内部に4つ設けられている。
【0054】
マイクロチップ1aの4つの検出部19aa、19ab、19ac、19adは、図3と同様に直線Fに沿って配設され、マイクロチップ1bの4つの検出部19ba、19bb、19bc、19bdも直線Fの延長線上に並ぶように配設されている。
【0055】
図3と同様に、検出ユニット15は送りネジ301と螺合するネジ部を有し、送りネジ301が回転することにより図5,図6の矢印B方向または逆方向に移動する。送りネジ301は直線Fと平行に配設されており、検出ユニット15が送りネジ301によって移動すると、検出部19aa、19ab、19ac、19ad、検出部19ba、19bb、19bc、19bdのそれぞれの中心部に、検出ユニット15の受光部161の光軸が一致するように構成されている。
【0056】
検出ユニット15は、例えばレンズ155、プリズム159、発光部160、励起光カットフィルタ156、受光部161、基板163、164などから構成される。
【0057】
発光部160から照射される励起光は、プリズム159で反射し、検出部19を照射する。検出部19で発生する蛍光は、プリズム159を透過して励起光カットフィルタ156を介して受光部161に入射する。プリズム159を透過した光には励起光が多く含まれているので、励起光カットフィルタ156により励起光をカットし、蛍光のみを受光部161に入射するようにしている。
【0058】
蛍光物質を励起する励起光と、蛍光の波長の差は数nm〜数10nmと非常に少ないため、励起光カットフィルタ156は、励起光と蛍光を分離するために急峻な遮断特性を持つ必要がある。励起光カットフィルタ156は10層以上の薄膜を蒸着したフィルタであり、周囲温度により遮断特性が変化しやすい。そのため、できるだけ一定の温度で使用する必要がある。
【0059】
第1位置検知部40、第2位置検知部41は検出ユニット15を検出するためのセンサであり、フォトインタラプタ、フォトリフレクタ、磁気センサなどを用いることができる。第1位置検知部40と第2位置検知部41は、送りネジ301の両端に検出ユニット15の初期位置を検出するために設けられている。第1位置検知部40と第2位置検知部41に用いるセンサは、周囲温度により誤検出するおそれがあるので、温度調節ユニット152、温度調節ユニット153による発熱、吸熱の影響を受けないよう温度調節ユニット152、温度調節ユニット153の上下以外の位置に配置する。
【0060】
検出ユニット15が反応結果を検出した後に移動する位置は、温度調節ユニット152、温度調節ユニット153による加熱または吸熱の影響を受けにくい位置である。図6(a)のように、隣り合う温度調節ユニット152a、温度調節ユニット153aと温度調節ユニット152b、温度調節ユニット153bの略中間位置であれば、温度調節ユニット152、温度調節ユニット153による加熱または吸熱の影響を受けにくい。
【0061】
送りネジ301はモータ300によりジョイント302を介して駆動される。モータ300は例えばパルスモータであり、パルスにより所定量回転する。モータ300は本発明の検出ユニット駆動手段、送りネジ301は本発明の送りネジ手段である。
【0062】
次に、検査の手順について説明する。
【0063】
図5(a)は、電源投入時など初期化時に、検出ユニット15が移動する位置である。図5(a)では、第1位置検知部40は検出ユニット15に当接しON状態になっている。
【0064】
図5(b)は検出部19adに励起光を照射し、反応結果を検出している状態を示している。マイクロチップ1aの検査時は、検出部19aa、19ab、19ac、19adの中心と光軸Lが一致する位置に順次検出ユニット15を移動させて励起光を照射し、検出ユニット15は蛍光物質が発光する蛍光を受光して電気信号を出力する。
【0065】
図6(a)は、検出ユニット15がマイクロチップ1aの反応結果を検出した後、次の検査のために待機中の状態である。図6(a)では、検出ユニット15は、隣り合う温度調節ユニット152a、温度調節ユニット153aと温度調節ユニット152b、温度調節ユニット153bの略中間位置に位置している。
【0066】
このようにすると、検出ユニット15は温度調節ユニット152、153の影響を受けにくく温度変化を少なくできるので、検出ユニット15の励起光カットフィルタ156の特性が変化して検出結果に影響を及ぼすことが無い。
【0067】
図6(b)は検出部19baに励起光を照射し、反応結果を検出している状態を示している。マイクロチップ1bの検査時も同様に、検出部19ba、19bb、19bc、19bdの中心と光軸Lが一致する位置に順次検出ユニット15を移動させて励起光を照射し、蛍光物質が発光する蛍光を受光して電気信号を出力する。
【0068】
マイクロチップ1bを検査する前に、検出ユニット15を第2位置検知部41が検出ユニット15を検知するまで移動させ、その位置を基準に所定のパルスをモータ300に送って各検出部19ba、19bb、19bc、19bdの位置に移動させる。このようにすると検出ユニット15の送り精度を高めることができる。
【0069】
図7は、本発明の実施形態における検査装置80の回路ブロック図である。
【0070】
制御部99は、CPU98(中央処理装置)とRAM97(Random Access Memory)、ROM96(Read Only Memory)等から構成され、不揮発性の記憶部であるROM96に記憶されているプログラムをRAM97に読み出し、当該プログラムに従って検査装置80の各部を集中制御する。
【0071】
以下、いままでに説明した機能と同一機能を有する機能ブロックには同番号を付し、説明を省略する。
【0072】
チップ検知部95はマイクロチップ1が規制部材に当接すると検知信号をCPU98に送信する。CPU98は検知信号を受信すると、機構駆動部32に指令し所定の手順でマイクロチップ1を下降または上昇させる。
【0073】
ポンプ駆動部500は各マイクロポンプの圧電素子を駆動する駆動部である。ポンプ駆動制御部412はプログラムに基づいて、所定量の駆動液を注入または吸入するようにポンプ駆動部500を制御する。ポンプ駆動部500はポンプ駆動制御部412の指令を受けて、圧電素子を駆動する。
【0074】
CPU98は所定のシーケンスで検査を行い、検査結果をRAM97に記憶する。検出ユニット駆動制御部411はモータ300を所定量回転させて、所定の検出部19を検査する位置まで検出ユニット15を移動させる。光量算出部410は受光部161の出力する電気信号から蛍光の光量を算出し検査結果とする。検出ユニット駆動制御部411は本発明の検出ユニット駆動制御手段である。
【0075】
検査結果は、操作部87の操作によりメモリカード501に記憶したり、プリンタ503によってプリントすることができる。
【0076】
図8は本発明の実施形態において、検査装置80による検査の手順を説明するフローチャートである。
【0077】
なお、温度調節ユニット152a、152b、温度調節ユニット153a、153bは検査装置80の電源投入時に通電され、所定の温度になっているものとする。また、検査に先立って、パッキン90b上端まで駆動液11が充填されているものとする。
【0078】
検査担当者は、最初に挿入口83からマイクロチップ1aを図示せぬ規制部材(図示せず)に当接するまで挿入する。すると、CPU98がチップ検知部95から検知信号を検知して、機構駆動部32を制御し、図4のようにパッキン90bと温度調節ユニット152a、153aがマイクロチップ1aに密着する。
【0079】
本実施形態では、この状態からポンプ駆動制御部412が駆動液を各駆動液注入部110から所定の手順で注入し、マイクロチップ1a内部の流路で所定の反応を行った後、試薬等と反応させた検体が検出部19aa、19ab、19ac、19adに注入され反応結果を検出可能な状態になっているものとする。
【0080】
この状態からCPU98が検査のために行う手順について説明する。本実施形態では図3に示すマイクロチップ1のように複数の検出部19が一列に並んでいるものとする。
【0081】
S101:測定回数をn=0とする。
【0082】
CPU98は、測定回数をn=0とする。
【0083】
S102:検出ユニット15の位置を初期化するステップである。
【0084】
検出ユニット駆動制御部411は、検出ユニット15が図5の矢印Bと反対方向に移動するようモータ300を回転させるとともに、第1位置検知部40の状態を検知する。検出ユニット15が第1位置検知部40に当接し、第1位置検知部40の備えるスイッチがオンになると検出ユニット駆動制御部411はモータ300の回転を停止する(図5(a)参照)。
【0085】
S103:検出ユニット15を所定量移動させる。
【0086】
検出ユニット駆動制御部411は、第1鏡胴170の光軸Lが、これから測定する検出部19の中心に略一致する位置に移動するまで所定のパルスをモータ300に与えて移動させる。例えば、検出部19adを測定する場合は、初期位置から図5(b)の矢印B方向に移動するよう所定の数のパルスを与えてモータ300を回転させ、図5(b)に示す位置に停止させる。
【0087】
S104:光量を測定するステップである。
【0088】
光量算出部410は、発光部160に発光を指令し、受光部161から出力される光量に比例した電気信号のデータをRAM97に一時記憶する。
【0089】
S105:n=n+1とする。
【0090】
CPU98は、測定回数をn=n+1とする。
【0091】
S106:n=Nか、否か、を判定するステップである。
【0092】
CPU98は、測定回数が所定の回数Nか、否かを判定する。例えば、検出部19の数が4つの場合はN=4である。
【0093】
n=Nではない場合、(ステップS106;No)、ステップS103に戻る。
【0094】
n=Nの場合、(ステップS106;Yes)、ステップS107に進む。
【0095】
S107:待機位置に検出ユニット15を移動させるステップである。
【0096】
検出ユニット駆動制御部411は、図5(b)の矢印B方向に移動するよう所定の数のパルスを与えてモータ300を回転させ、図6(a)に示す位置に停止させる。
【0097】
このように検出ユニット15は図6(a)の位置で停止し、マイクロチップ1bが反応結果を検出可能な状態になるまで待機する。
【0098】
以上で、マイクロチップ1aの光量測定の手順は終了である。
【0099】
次に検査するマイクロチップ1bが反応結果を検出可能な状態になると、同様の手順で検出ユニット15を移動させて反応結果を検出する。本実施形態では2つのマイクロチップを同時に検査できる検査装置80を例に説明したが、3つ以上のマイクロチップ1を同時に検査できる検査装置の場合も同様の手順で反応結果を測定することができる。
【0100】
以上このように、本発明によれば、複数のマイクロチップを精度よく検査できる小型の検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態における検査装置80の外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の説明図である。
【図3】検査装置80の内部構成を説明するための斜視図である。
【図4】検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態の検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態の検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態における検査装置80の回路ブロック図である。
【図8】本発明の実施形態における検査装置80による検査の手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 マイクロチップ
15 検出ユニット
19 検出部
40 第1位置検知部
41 第2位置検知部
80 検査装置
82 筐体
83 挿入口
84 表示部
90 パッキン
91 駆動液タンク
92 ポンプユニット
110 流体注入部
152、153 温度調節ユニット
160 発光部
161 受光部
301 送りネジ
302 モータ
411 検出ユニット駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチップに注入された試薬と検体を所定の温度に調節して反応させ反応結果を測定する検査装置において、
複数の前記マイクロチップをそれぞれ所定の温度に調節する複数の温度調節ユニットと、
前記マイクロチップから前記反応結果を検出する検出ユニットと、
複数の前記マイクロチップから前記反応結果を検出する複数の位置に順次前記検出ユニットを移動させる検出ユニット駆動手段と、
前記検出ユニット駆動手段の駆動を制御する検出ユニット駆動制御手段と、
を有し、
前記検出ユニット駆動制御手段は、
前記検出ユニットが一つの前記マイクロチップから前記反応結果を検出した後、前記検出ユニット駆動手段を駆動して前記検出ユニットを前記温度調節ユニットから離れた位置に移動させることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記検出ユニット駆動制御手段は、
前記検出ユニットが前記反応結果を検出した後、前記検出ユニット駆動手段を駆動して前記検出ユニットを隣り合う前記温度調節ユニットの略中間位置に移動させることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検出ユニット駆動手段の駆動により前記検出ユニットを直線的に移動させる送りネジ手段と、
前記検出ユニット検知する前記送りネジ手段の一端に配置された第1位置検知手段と、
前記検出ユニット検知する前記送りネジ手段の他端に配置された第2位置検知手段と、
を有し、
前記第1位置検知手段と前記第2位置検知手段は前記温度調節ユニットの上下以外の位置に配置することを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−103641(P2009−103641A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277384(P2007−277384)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】