説明

楕円触媒コンバータの製造方法

【課題】楕円触媒コンバータの製造コストを低減することができる製造技術を提供することを課題とする。
【解決手段】図(c)において、楕円管17は弾性領域で楕円化されており、プレス機16に掛けたままの楕円管17へ、マット12が巻付けられている触媒13を挿入する。
【効果】丸管を、塑性領域で楕円化するのではなく、弾性領域で楕円化する。この状態でマットが巻かれた触媒を挿入する。圧縮操作を解除すると楕円管は丸管に戻ろうとするが、この荷重は低く、触媒が内蔵されているため、楕円形状の位相が保たれる。丸管を楕円化する際に使用するプレス機は、弾性領域で丸管を楕円化するだけであるから、例えば廉価な0.3トンプレスで十分である。この結果、楕円触媒コンバータの製造コストを十分に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楕円触媒コンバータの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガスのエミッション対策として、触媒コンバータが車両の排気管に装着される。触媒コンバータは、排気管に装着する関係から、セラミックス製の触媒を金属ケースに収めたものが主に採用される。金属ケースであれば排気管に溶接で簡単に接続することができるからである。
【0003】
触媒は、排気管に装着する関係上、円柱形状とされる。さらに、エンジン直下や、車両の床下に配置する関係で、前後幅や、高さ寸法が小さくなる楕円柱形状の触媒が採用される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−97944公報(図6)
【0004】
特許文献1の図6に示されている縮径装置を使用することを前提に、従来実施されている楕円触媒コンバータの製造方法を次図に基づいて説明する。
図3は従来の楕円管の製造方法を説明する図であり、(a)に示すように、丸管101を準備する。この丸管101は、(b)に示すように、半楕円面102が設けられているプレス下型103と、半楕円面104が設けられているプレス上型105とからなるプレス機106で、塑性加工される。プレス機106から外すと、(c)に示す楕円管107が得られる。
【0005】
なお、(b)での塑性加工の際に外周の一部が型103、105の合わせ部分に、はみ出し勝ちである。このはみ出し現象は、製品の外観性に影響するので好ましいことではない。
【0006】
図4は従来の触媒コンバータの製造工程図であり、(a)に示すように、クランプ111、112でクランプした楕円管107に、マット108が巻かれている楕円触媒109を挿入する。
次に、(b)に示すように、複数個の押圧片113が楕円環状に配置されている縮径装置110に楕円管107をセットし、矢印のように押すことで塑性変形領域まで縮径する。縮径装置110から外すと、(c)に示す楕円触媒コンバータ115が得られる。
【0007】
以上に説明した製造工程では、楕円管107を製造するプレス機106(図3(b))が必須である。プレス機106としては、丸管101を塑性領域までプレス下型103及びプレス上型105でプレスするため、例えば20トンプレスが必要となり、結果、プレス機106は、高価なものとなる。プレス機106が高価であるため、製造コストが押し上げられ、楕円触媒コンバータ115の製造コストが嵩む。
【0008】
車両用触媒として、楕円触媒コンバータの普及を考えると、製造コストの低減が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、楕円触媒コンバータの製造コストを低減することができる製造技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、楕円柱状の触媒と、この触媒に巻付けたマットと、このマット及び前記触媒を挿入する金属製の楕円ケースとからなる楕円触媒コンバータの製造方法であって、
金属製の丸管と、前記マットが巻かれている楕円柱状の触媒とを準備する工程と、前記丸管の外周を圧縮操作することで、前記丸管を弾性限度で楕円化する工程と、前記圧縮操作を維持しながら楕円管へ、前記マットが巻付けられている触媒を挿入する工程と、圧縮操作を解除することで、コンバータ中間製品を得る工程と、このコンバータ中間製品の楕円管を縮径することで、縮径された楕円ケースとこの楕円ケースに内蔵されたマット及び触媒からなる楕円触媒コンバータを得る縮径工程と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、丸管を、塑性領域で楕円化するのではなく、弾性領域で楕円化する。尚、弾性変形は周長の変化がなく、塑性変形のようにかみ込み(図3(b)参照。)の発生が防止できる。弾性領域であっても、クランプ状態であれば金型と同様の精度が得られ、塑性変形より精度がよい。
【0012】
この状態でマットが巻かれた触媒を挿入する。圧縮操作を解除すると楕円管は丸管に戻ろうとするが、この荷重は低く、触媒が内蔵されているため、楕円形状の位相が保たれる。そのため、触媒が破損することなく、後の縮径工程は円滑に進めることができる。
【0013】
丸管を楕円化する際に使用するプレス機は、弾性領域で丸管を楕円化するだけであるから、例えば廉価な0.3トンプレスで十分である。この結果、楕円触媒コンバータの製造コストを十分に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る準備工程から触媒を挿入する工程までを説明する図であり、(a)に示すように、金属製の丸管11と、マット12が巻かれている楕円柱状の触媒13とを準備する(準備工程)。
【0015】
次に、(b)に示すように、下プレス型14と上プレス型15とからなる、例えば0.3トンプレス機16で、丸管11を弾性領域で楕円化し楕円管17を得る(楕円化工程)。塑性変形させる必要がないので、プレス機16はプレス力が小さくて廉価なプレス機でよい。下プレス型14及び上プレス型15の当り面18、18は凹面で良く、廉価な上下2分割の廉価な金型を使用することができる。 また、当たり面18、18はフラット面でも良く、より廉価な金型を使用することができる。
【0016】
続いて、(c)に示すように、プレス機16に掛けたままの楕円管17へ、マット12が巻付けられている触媒13を挿入する(挿入工程)。
【0017】
図2は本発明に係る縮径工程を説明する図であり、(a)に示すように、下プレス型14と上プレス型15とを開放することで、コンバータ中間製品20を得る(プレス開放工程)。圧縮操作が解除されたことにより、楕円管17は丸管に戻ろうとして、矢印(1)、(1)のように触媒13の長径に沿って、触媒13を挟む。すなわち、矢印(1)、(1)の圧縮力が作用し、触媒13に圧縮応力が発生する。
【0018】
しかし、この圧縮応力は、触媒13が有している圧縮強度より小さいため、触媒13が圧潰される心配はない。結果、触媒13の短径に沿って隙間21、21が発生するものの、楕円管17は楕円形状が維持される。すなわち、触媒13が楕円形状を維持する詰め物または支えの役割を果たす。
【0019】
次に、(b)に示すように、コンバータ中間製品20を、複数の押圧片23が楕円環状に配置されている縮径装置24へ移し、押圧片23を矢印のように前進させることで、縮径を行う(縮径工程)。この縮径は塑性領域まで行われる。
【0020】
結果、(c)に示すように、楕円ケース25に内蔵されたマット12及び触媒13からなる楕円触媒コンバータ26を得ることができる。
なお、楕円管17は塑性加工前の部材であり、丸管11と周長は変わらない。一方、楕円ケース25は塑性加工後、すなわち縮径加工後の部材であるため、丸管11より周長が小さくなっている。そのため、楕円管17と楕円ケース25とは、呼称及び符号を変えた。
【0021】
尚、本発明は、車両、特にエンジン直下や、車両の床下に配置される楕円触媒コンバータの製造に好適であるが、発電用内燃機関など、その他の設備に付設される楕円触媒コンバータの製造に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、車両のエンジン直下や車両の床下に配置される楕円触媒コンバータの製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る準備工程から触媒を挿入する工程までを説明する図である。
【図2】本発明に係る縮径工程を説明する図である。
【図3】従来の楕円管の製造方法を説明する図である。
【図4】従来の触媒コンバータの製造工程図である。
【符号の説明】
【0024】
11…丸管、12…マット、13…触媒、16…プレス機、17…楕円管、20…コンバータ中間製品、24…縮径装置、25…楕円ケース、26…楕円触媒コンバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楕円柱状の触媒と、この触媒に巻付けたマットと、このマット及び前記触媒を挿入する金属製の楕円ケースとからなる楕円触媒コンバータの製造方法であって、
金属製の丸管と、前記マットが巻かれている楕円柱状の触媒とを準備する工程と、
前記丸管の外周を圧縮操作することで、前記丸管を弾性限度で楕円化する工程と、
前記圧縮操作を維持しながら楕円管へ、前記マットが巻付けられている触媒を挿入する工程と、
圧縮操作を解除することで、コンバータ中間製品を得る工程と、
このコンバータ中間製品の楕円管を縮径することで、縮径された楕円ケースとこの楕円ケースに内蔵されたマット及び触媒からなる楕円触媒コンバータを得る縮径工程と、からなることを特徴とする楕円触媒コンバータの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−131484(P2010−131484A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307783(P2008−307783)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000138521)株式会社ユタカ技研 (134)
【Fターム(参考)】