説明

極微量油剤供給式切削・研削加工用油剤組成物

【課題】 極微量油剤供給式の切削・研削加工を行うに際し、ミスト性と浮遊ミスト防止性との双方を高水準でバランスよく達成することができ、加工部位への到達量を十分に確保することが可能な油剤を提供すること。
【解決手段】 100℃における動粘度が0.5〜20mm/sであるエステル油と、100℃における動粘度が20mm/sを超え、且つ平均分子量が5,000〜10,000,000であるエステル系ポリマーと、を含有することを特徴とする極微量油剤供給式切削・研削加工用油剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は極微量油剤供給(MQL)式切削・研削加工用油剤組成物に関するものであり、詳しくは、極微量の油剤を圧縮流体と共に加工部位に供給しながら被加工部材を切削・研削加工する際に用いられる油剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切削・研削加工においては、加工に用いられるドリル、エンドミル、バイト、砥石等の工具の寿命延長や被加工物の表面粗さの向上、並びにそれによる加工能率の向上といった機械加工における生産性の向上を目的として、通常、切削・研削加工用油剤が使用されている。
【0003】
切削・研削加工用油剤は、界面活性剤及び潤滑成分を水に希釈して使用する水溶性切削・研削加工用油剤と、鉱物油を主成分として原液のままで使用する不水溶性切削・研削加工用油剤との2種類に大別される。そして従来の切削・研削加工においては、いずれの油剤を用いる場合であっても、比較的大量の切削・研削油剤が加工部位に供給される。
【0004】
切削・研削加工用油剤の最も基本的でかつ重要な機能としては潤滑作用と冷却作用が挙げられる。一般に、不水溶性切削・研削加工用油剤は潤滑性能に、水溶性切削・研削加工用油剤は冷却性能にそれぞれ優れている。不水溶性油剤の冷却効果は水溶性油剤に比べると劣るため、通常、1分間に数リットルから場合によっては数10リットルもの大量の不水溶性切削・研削油剤が必要になる。
【0005】
加工能率の向上に有効な切削・研削油剤も別の側面からみると好ましくない点があり、その代表的な問題点として環境への影響が挙げられる。不水溶性、水溶性にかかわらず油剤は使用中に徐々に劣化してついには使用不能な状態になる。例えば、水溶性油剤の場合には微生物の発生によって液の安定性が低下して成分の分離が生じたり、衛生環境を著しく低下させてその使用が不可能となる。また、不水溶性油剤の場合には酸化の進行によって生じる酸性成分が金属材料を腐食させたり、粘度の著しい変化が生じてその使用が不可能となる。更に、油剤が切りくず等に付着して消費されたりして廃棄物となる。
【0006】
このような場合には劣化した油剤を廃棄して新しい油剤が使用される。このときに廃棄物として排出される油剤は環境に影響を及ぼさないように様々な処理が必要になる。例えば、作業能率の向上を優先させて開発されてきた切削・研削油剤には、焼却処理時に有毒なダイオキシンを発生させる可能性のある塩素系化合物が多く用いられているが、これらの化合物の除去処理などが必要になる。このため、塩素系化合物を含まない切削・研削油剤も開発されているが、たとえかかる有害な成分を含まない切削・研削油剤であっても廃棄物の大量排出にともなう環境への影響という問題がある。また、水溶性油剤の場合には環境水域を汚染する可能性があるため、高いコストをかけて高度な処理を施す必要がある。
【0007】
上述のような問題点に対処するために最近では切削・研削箇所に冷風を吹きかけて冷却することにより切削・研削油剤の代用とする検討がなされつつあるが、この場合には、切削・研削油剤に求められている潤滑性という一方の性能は得られない。
【0008】
このような背景の下、通常の切削・研削加工における油剤の使用量に比べて1/100000〜1/1000000程度の極微量の油剤を圧縮流体(例えば圧縮空気)と共に加工部位に供給しながら切削・研削を行う極微量油剤供給式の切削・研削加工方法が開発されている。このシステムでは、圧縮空気による冷却効果が得られ、また極微量の油剤を用いるために廃棄物量を低減することができ、従って廃棄物の大量排出に伴う環境への影響も改善することができる(例えば、特許文献1、2を参照)。
【特許文献1】WO02/083823号公報
【特許文献2】WO02/081605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の極微量油剤供給式の切削・研削加工方法に使用される油剤には、その使用の態様から、ミスト化のしやすさ(以下、「ミスト性」という)が求められる。ミスト性の低い油剤を用いると、加工部位への油剤の到達量が不十分となり、十分な加工性能を確保できなくなる。
【0010】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、単にミスト性の高い油剤を用いるだけでは、ミスト化に伴い雰囲気中に浮遊して加工部位に到達しないミストや加工部位に到達したが加工部位にとどまることなく飛散してしまったミスト(以下、これらを浮遊ミストという)が発生してしまう。そのため、この場合も加工部位で効果的に機能する油剤の有効量が少なくなり、十分な加工性能を確保することができない。また、浮遊ミストの発生は、作業環境の点からも好ましくない。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、極微量油剤供給式の切削・研削加工を行うに際し、ミスト性と浮遊ミスト防止性との双方を高水準でバランスよく達成することができ、加工部位への到達量を十分に確保することが可能な油剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の極微量供給式切削・研削加工用油剤組成物は、100℃における動粘度が0.5〜20mm/sであるエステル油と、100℃における動粘度が20mm/sを超え、且つ平均分子量が5,000〜10,000,000であるエステル系ポリマーと、を含有することを特徴とする。
【0013】
ここで、100℃における動粘度が20mm/sを超えるエステル系ポリマーには、100℃における動粘度の測定値が20mm/sを超えるものに加えて、100℃における粘性が高すぎて動粘度を測定することができないもの(半固体、固体等)が包含される。
【0014】
本発明の極微量供給式切削研削加工用油剤組成物(以下、場合により単に「本発明の油剤組成物」という)によれば、100℃における動粘度が上記条件を満たすエステル油と、100℃における動粘度及び平均分子量が上記条件を満たすエステル系ポリマーとを併用することで、ミスト性と浮遊ミスト防止性との双方を高水準でバランスよく達成することができ、加工部位への到達量を十分に確保することが可能となる。そして、加工部位に到達した本発明の油剤組成物により、極微量供給式切削・研削加工における加工性能を十分に向上させることができる。
【0015】
なお、本発明により上述の効果が得られる原因は必ずしも明確でないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明にかかるエステル系ポリマーは、エステル油に対して高い親和性を有するため、本発明の油剤組成物においてエステル油を安定的に保持する機能を有しているものと考えられる。そのため、エステル油は単独では非常に高いミスト性を示すが、浮遊ミストとなり得るような微小な油滴はエステル系ポリマーに捕捉されて浮遊ミストとなることができないものと考えられる。一方、エステル系ポリマーから脱離できるサイズのエステル油の油滴、並びにエステル油とエステル系ポリマーとで構成される油滴は、高いミスト性を有するため、再凝集による粗大化が起こりにくく、加工部位に確実に到達できるものと考えられる。このようなエステル系ポリマーによるエステル油の油滴サイズの調整機能により、ミスト性と浮遊ミスト防止性との両立が達成できるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の極微量油剤供給式切削・研削加工用油剤によれば、極微量油剤供給式の切削・研削加工において、ミスト性と浮遊ミスト防止性との双方を高水準でバランスよく達成することができ、加工部位への到達量を十分に確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の油剤組成物は、極微量油剤供給式切削・研削加工に使用される油剤組成物であって、(A)100℃における動粘度が0.5〜20mm/sであるエステル油(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)100℃における動粘度が20mm/sを超え、且つ平均分子量が5,000〜10,000,000であるエステル系ポリマー(以下、場合により「(B)成分」という)とを含有する。
【0019】
ここで、極微量油剤供給式切削・研削加工とは、通常の切削・研削加工における油剤の使用量に比して1/100000〜1/1000000程度の極微量の油剤を圧縮流体(圧縮空気等)と共に切削・研削箇所に供給しながら行う切削・研削加工をいう。より具体的には、極微量油剤供給方式とは、0.001〜1ml/minの油剤を圧縮流体(例えば圧縮空気)と共に切削・研削部位に向けて供給する方式をいう。なお、圧縮空気以外に窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、水などの圧縮流体を単独で用いたり、あるいはこれらの流体を混合して用いることも可能である。
【0020】
極微量油剤供給式切削・研削加工における圧縮流体の圧力は、油剤が飛散して雰囲気を汚染させないような圧力、及び油剤と気体、あるいは液体との混合流体が切削・研削加工点に十分到達できるような圧力に調節される。また、圧縮流体の温度は冷却性の観点から、通常室温(25℃程度)又は室温から-−50℃に調節される。
【0021】
発明にかかる(A)成分は、100℃における動粘度が0.5〜20mm/sであるエステル油であれば特に制限されず、当該エステルは天然物(通常は動植物などの天然油脂に含まれるもの)であっても合成物であってもよい。本発明では、得られる油剤組成物の安定性やエステル成分の均一性などの点から合成エステルであることが好ましい。
【0022】
(A)成分としてのエステル油を構成するアルコールとしては、1価アルコールでも多価アルコールでもよく、また、エステル油を構成する酸としては一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
【0023】
1価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状又は分岐状のプロパノール、直鎖状又は分岐状のブタノール、直鎖状又は分岐状のペンタノール、直鎖状又は分岐状のヘキサノール、直鎖状又は分岐状のヘプタノール、直鎖状又は分岐状のオクタノール、直鎖状又は分岐状のノナノール、直鎖状又は分岐状のデカノール、直鎖状又は分岐状のウンデカノール、直鎖状又は分岐状のドデカノール、直鎖状又は分岐状のトリデカノール、直鎖状又は分岐状のテトラデカノール、直鎖状又は分岐状のペンタデカノール、直鎖状又は分岐状のヘキサデカノール、直鎖状又は分岐状のヘプタデカノール、直鎖状又は分岐状のオクタデカノール、直鎖状又は分岐状のノナデカノール、直鎖状又は分岐状のイコサノール、直鎖状又は分岐状のヘンイコサノール、直鎖状又は分岐状のトリコサノール、直鎖状又は分岐状のテトラコサノール及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0024】
多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトール及びこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0025】
これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコール及びこれらの混合物等が好ましい。さらにより好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、及びこれらの混合物等である。これらの中でも、より高い酸化安定性が得られることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びこれらの混合物等が最も好ましい。
【0026】
(A)成分としてのエステル油を構成するアルコールは、上述したように1価アルコールであっても多価アルコールであってもよいが、切削及び研削加工においてより優れた潤滑性が得られ、加工物の仕上げ面精度の向上と工具刃先の摩耗防止効果がより大きくなる、流動点の低いものがより得やすく、冬季及び寒冷地での取り扱い性がより向上する等の点から多価アルコールであることが好ましい。
【0027】
また、(A)成分としてのエステル油を構成する酸のうち、一塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状又は分岐状のブタン酸、直鎖状又は分岐状のペンタン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン酸、直鎖状又は分岐状のオクタン酸、直鎖状又は分岐状のノナン酸、直鎖状又は分岐状のデカン酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン酸、直鎖状又は分岐状のドデカン酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のノナデカン酸、直鎖状又は分岐状のイコサン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコサン酸、直鎖状又は分岐状のドコサン酸、直鎖状又は分岐状のトリコサン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、直鎖状又は分岐状のブテン酸、直鎖状又は分岐状のペンテン酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン酸、直鎖状又は分岐状のオクテン酸、直鎖状又は分岐状のノネン酸、直鎖状又は分岐状のデセン酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン酸、直鎖状又は分岐状のドデセン酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のノナデセン酸、直鎖状又は分岐状のイコセン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコセン酸、直鎖状又は分岐状のドコセン酸、直鎖状又は分岐状のトリコセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、切削及び研削加工においてより優れた潤滑性が得られ、加工物の仕上げ面精度の向上と工具刃先の摩耗防止効果をより大きくすることができる等の点から特に炭素数3〜20の飽和脂肪酸、炭素数3〜22の不飽和脂肪酸及びこれらの混合物が好ましく、炭素数4〜18の飽和脂肪酸、炭素数4〜18の不飽和脂肪酸及びこれらの混合物がより好ましく、炭素数4〜18の不飽和脂肪酸がさらに好ましく、べたつき防止性の点からは炭素数4〜18の飽和脂肪酸がさらに好ましい。
【0028】
多塩基酸としては炭素数2〜16の二塩基酸及びトリメリット酸等が挙げられる。炭素数2〜16の二塩基酸としては、直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状又は分岐状のブタン二酸、直鎖状又は分岐状のペンタン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン二酸、直鎖状又は分岐状のオクタン二酸、直鎖状又は分岐状のノナン二酸、直鎖状又は分岐状のデカン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン二酸、直鎖状又は分岐状のドデカン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン二酸、直鎖状又は分岐状のオクテン二酸、直鎖状又は分岐状のノネン二酸、直鎖状又は分岐状のデセン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン二酸、直鎖状又は分岐状のドデセン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン二酸及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0029】
(A)成分としてのエステル油を構成する酸としては、上述したように一塩基酸であっても多塩基酸であってもよいが、一塩基酸を用いると、粘度指数の向上、ミスト性及びべたつき防止性の向上に寄与するエステルが得られやすくなるので好ましい。
【0030】
(A)成分としてのエステル油を構成するアルコールと酸との組み合わせは、エステル油の100℃における動粘度が0.5〜20mm/sとなる限りにおいて、例えば下記の組合せとすることができる。
(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
(iv)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(v)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
(vi)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
(vii)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合エステル。
【0031】
これらの中でも、切削及び研削加工においてより優れた潤滑性が得られ、加工物の仕上げ面精度の向上と工具刃先の摩耗防止効果がより大きくなる、流動点の低いものがより得やすく、冬季及び寒冷地での取り扱い性がより向上する、粘度指数の高いものがより得やすくミスト性がよりよくなる等の点から(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステルであることが好ましい。
【0032】
また、(A)成分としての天然物由来のエステルとしては、パーム油、パーム核油、菜種油、大豆油、サンフラワー油、並びに品種改良や遺伝子組換操作などによりグリセリドを構成する脂肪酸におけるオレイン酸の含有量が増加したハイオレイック菜種油、ハイオレイックサンフラワー油などの植物油、ラードなどの動物油などの天然油脂が挙げられる。
【0033】
本発明において、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合に得られるエステル油は、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルでもよく、水酸基の一部がエステル化されず水酸基のまま残存する部分エステルでもよい。また、酸成分として多塩基酸を用いた場合に得られる有機酸エステルは、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでもよく、あるいはカルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであってもよい。低温での取扱性及びミスト性の点からは、(A)成分は完全エステルであることが好ましい。
【0034】
(A)成分の100℃における動粘度は、前述の通り20mm/s以下であり、好ましくは17mm/s以下であり、より好ましくは15mm/s以下であり、更に好ましくは12mm/s以下である。(A)成分の100℃における動粘度が20mm/sを超えると、ミスト性が不十分となり、加工部位へのミストの到達量を確保することが困難となる。また、(A)成分の100℃における動粘度は、前述の通り0.5mm/s以上であり、より好ましくは0.7mm/s以上であり、更に好ましくは0.9mm/s以上である。エステル油の100℃における動粘度が0.5mm/s未満であると、(B)成分を併用しても浮遊ミストの発生を抑制できなくなり、また、加工部位における潤滑性が不十分となる。
【0035】
(A)成分の分子量は、100℃における動粘度が0.5〜20mm/sであれば特に制限されないが、5,000未満が好ましく、3,000以下がより好ましく、2,000以下が更に好ましい。(A)成分の分子量が前記上限値を超えると、ミスト性が低下する傾向にある。また、(A)成分の分子量は、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、200以上が更に好ましい。(A)成分の分子量が前記下限値未満であると、(B)成分と併用しても浮遊ミストの発生を抑制することが困難となる傾向にある。なお、ここでいう(A)成分の分子量とは、(A)成分が分子量の異なる2種以上のエステル油を含む場合にはそれらのエステル油の平均分子量を意味する。
【0036】
(A)成分の流動点および粘度指数には特に制限されないが、流動点は−10℃以下であることが好ましく、更に好ましくは−20℃以下である。また、粘度指数は100以上200以下であることが望ましい。
【0037】
(A)成分の沃素価は、好ましくは0〜80、より好ましくは0〜60、更に好ましくは0〜40、更により好ましくは0〜20、最も好ましくは0〜10である。また、本発明にかかるエステルの臭素価は、好ましくは0〜50gBr/100g、より好ましくは0〜30gBr/100g、更に好ましくは0〜20gBr/100g、最も好ましくは0〜10gBr/100gである。(A)成分の沃素価及び臭素価がそれぞれ前記の範囲内であると、得られる油剤組成物のべたつき防止性がより高められる傾向にある。なお、ここでいう沃素価とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、エステル価、沃素価、水酸基価及び不ケン化価物の測定方法」の指示薬滴定法により測定した値をいう。また臭素価とは、JIS K 2605「化学製品―臭素価試験方法−電気滴定法」により測定した値をいう。
【0038】
また、本発明の油剤組成物に更に良好な潤滑性能を付与するためには、(A)成分の水酸基価が0.01〜300mgKOH/gであり、ケン価が100〜500mgKOH/gであることが好ましい。本発明において更に高い潤滑性を得るための(A)成分の水酸基価の上限値は、より好ましくは200mgKOH/gであり、最も好ましくは150mgKOH/gであり、一方その下限値は、より好ましくは0.1mgKOH/gであり、更に好ましくは0.5mgKOH/gであり、更に好ましくは1mgKOH/gであり、更により好ましくは3mgKOH/gであり、最も好ましくは5mgKOH/gである。また、(A)成分のケン化価の上限値は更に好ましくは400mgKOH/gであり、一方その下限値は更に好ましくは200mgKOH/gである。なお、ここでいう水酸基価とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、エステル価、沃素価、水酸基価及び不ケン化価物の測定方法」の指示薬滴定法により測定した値をいう。またケン化価とは、JIS K 2503「航空潤滑油試験方法」の指示薬滴定法により測定した値をいう。
【0039】
本発明にかかる(B)成分は、100℃における動粘度が20mm/sを超え、且つ平均分子量が5,000〜10,000,000であるエステル系ポリマーである。なお、本発明でいう「エステル系ポリマー」には、(B−1)主鎖にエステル結合を有するポリマー、及び(B−2)側鎖にエステル結合を有するポリマーの双方が包含される。
【0040】
(B−1)主鎖にエステル結合を有するポリマーとは、いわゆるポリエステルであり、多塩基酸及び多価アルコールを必須のモノマー成分として含むポリマーである。かかるポリマーは、二塩基酸と2価アルコールとで構成される直鎖ポリエステルであってもよく、あるいは2価以上の多塩基酸と2価以上の多価アルコールとで構成され、3価以上の多塩基酸及び/又は3価以上の多価アルコールを必須のモノマー成分として含むコンプレックスエステルであってもよい。また、直鎖ポリエステル又はコンプレックスのいずれの場合も、一塩基酸及び/又は1価アルコールを更に含んで構成されていてもよい。必須のモノマー成分としての多塩基酸及び多価アルコール、並びに任意のモノマー成分としての一塩基酸及び1価アルコールとしては、それぞれ上記(A)成分の説明において例示された多塩基酸、多価アルコール、一塩基酸及び1価アルコールが挙げられ、これらの構成モノマーの種類及び比率を適宜選択することにより、(B)成分としてのエステル系ポリマーを得ることができる。
【0041】
(B−2)側鎖にエステル結合を有するポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合及びエステル結合を有する重合性モノマーを用いて得ることができる。かかる重合性モノマーとしては、下記一般式(B−2−1)、(B−2−2)又は(B−2−3)で表されるモノマーが好ましく使用される。
【0042】
【化1】

[式(B−2−1)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜24の炭化水素基を表し、pは0又は1を示す。]
【0043】
【化2】

[式(B−2−2)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜24の炭化水素基を表し、pは0又は1を示す。]
【0044】
【化3】

[式(B−2−3)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜18のアルキレン基を表し、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜24の炭化水素基を表し、p及びqは同一でも異なっていてもよく、それぞれ0又は1を示す。]
上記一般式(B−2−1)〜(B−2−3)中のR及びRは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。R及びRで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、直鎖状又は分岐状のプロピル基、直鎖状又は分岐状のブチル基等が挙げられる。R及びRとしては、水素原子、メチル基又はエチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。更に、一般式(B−2−1)、(B−2−3)で表される各化合物の場合、R及びRの双方が水素原子であることが特に好ましい。一方、一般式(B−2−2)で表されるモノマーの場合は、Rが水素原子であり、Rがメチル基であることが特に好ましい。
【0045】
また、R及びRで表される炭素数1〜18のアルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、直鎖状又は分岐状のプロピレン基、直鎖状又は分岐鎖状のブチレン基、直鎖状又は分岐鎖状のペンチル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘキシレン基、直鎖状又は分岐鎖状のヘプチレン基、直鎖状又は分岐鎖状のオクチレン基、直鎖状又は分岐鎖状のノニレン基、直鎖状又は分岐鎖状のデシレン基、直鎖状又は分岐鎖状のウンデシレン基、直鎖状又は分岐鎖状のドデシレン基、直鎖状又は分岐鎖状のトリデシレン基、直鎖状又は分岐鎖状のテトラデシレン基、直鎖状又は分岐鎖状のペンタデシレン基、直鎖状又は分岐鎖状のヘキサデシレン基、直鎖状又は分岐鎖状のヘプタデシレン基、直鎖状又は分岐鎖状のオクタデシレン基等が挙げられる。
【0046】
また、一般式(B−2−1)〜(B−2−3)中のp及び一般式(B−2−3)中のp、qはそれぞれ0又は1を示す。p、qが0の場合は二重結合炭素原子とエステル基の炭素原子とが直接結合した構造となる。
【0047】
一般式(B−2−1)〜(B−2−3)で表されるモノマーにおいては、p、qが0であるか又はp、qが1であり且つR及びRが炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、p、qが0であるか又はp、qが1であり且つR、Rが炭素数1〜4のアルキレン基であることがより好ましく、p、qが0であるか又はp、qが1であり且つR及びRがメチレン基もしくはエチレン基であることが更に好ましく、p、qが0であるか又はp、qが1であり且つR及びRがメチレン基であることが一層好ましく、p、qが0であることが特に好ましい。
【0048】
また、R及びRで表される炭素数1〜24の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0049】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
【0050】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)が挙げられる。
【0051】
アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)が挙げられる。
【0052】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)が挙げられる。
【0053】
アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
【0054】
上記R、Rで表される炭化水素基としては、炭素数1〜22の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜18の炭化水素基が更に好ましい。
【0055】
上記一般式(B−2−1)で表されるモノマーとしては、Rが炭素数1〜22(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜18)の炭化水素基である一価脂肪酸とビニルアルコールとのエステルが好ましい。
【0056】
また、上記一般式(B−2−2)で表されるモノマーとしては、Rが炭素数1〜22(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜18)の炭化水素基であるアクリル酸エステル、Rが炭素数1〜22(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜18)の炭化水素基であるメタクリル酸エステルが好ましく、Rが炭素数1〜22(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜18)の炭化水素基であるメタクリル酸エステルがより好ましい。
【0057】
また、上記一般式(B−2−3)で表されるモノマーとしては、R及びRがそれぞれ炭素数1〜22(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜18)の炭化水素基であるマレイン酸ジエステル又はフマル酸ジエステルが好ましく、中でもマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル等がより好ましい。
【0058】
上記一般式(B−2−1)〜(B−2−3)で表されるモノマーの中でも、安定性及び浮遊ミストの抑制の点から、一般式(B−2−2)で表されるモノマーが好ましい。
【0059】
また、(B)成分は、上記一般式(B−2−1)〜(B−2−3)で表されるモノマーの1種からなる単独重合体であってもよく、また、2種以上の共重合体であってもよい。更に、上記一般式(B−2−1)〜(B−2−3)で表されるモノマーに加えて、下記一般式(B−2−4)〜(B−2−7)で表されるモノマーを更に含んでいてもよい。
【0060】
【化4】

[式(B−2−4)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を示す。]
【0061】
【化5】

[式(B−2−5)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、X及びXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜18のモノアルキルアミノ基を示す。]
【0062】
【化6】

[式(B−2−6)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、rは0又は1を表し、Xは窒素原子を含有する炭素数1〜30の有機基を示す。]
【0063】
【化7】

[式(B−2−7)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは窒素原子を含有する炭素数1〜30の有機基を示す。]
上記一般式(B−2−4)〜(B−2−7)中のR及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。R及びRが炭素数1〜4のアルキル基である場合、当該アルキル基としては、上記(B−2−1)〜(B−2−3)中のR及びRの説明で例示された炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0064】
また、一般式(B−2−4)中のRは水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基である。Rが炭素数1〜24の炭化水素基である場合、当該炭化水素基としては、上記R及びRの説明において例示された炭素数1〜24の炭化水素基等が挙げられる。Rとしては、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜15の炭化水素基がより好ましく、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基が更に好ましく、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基が特に好ましい。
【0065】
また、一般式(B−2−5)中のX及びXはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜18のモノアルキルアミノ基を示す。X及びXで表される炭素数1〜18のモノアルキルアミノ基は、炭素数1〜18のモノアルキルアミンのアミノ基から水素原子を除いた残基(−NHR;Rは炭素数1〜18のアルキル基)である。Rで表される炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)などが挙げられる。
【0066】
一般式(B−2−6)中、Rで表される炭素数2〜18のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等のアルキレン基等(これらのアルキレン基は直鎖状でも分枝状でも良い)などが挙げられる。
【0067】
また、(B−2−6)中のrは0又は1を示す。rが0の場合はO(酸素原子)とXとが直接結合した構造となる。
【0068】
一般式(B−2−6)、(B−2−7)中のXは、窒素原子を含有する炭素数1〜30の有機基である。Xで表される有機基が有する窒素原子の数は特に制限されないが、好ましくは1個である。また、Xで表される有機基の炭素数は、前述の通り1〜30であり、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜16である。
【0069】
で表される有機基としては、酸素原子を含有する基であることが好ましく、また、環を有する基であることが好ましい。特に、安定性及び加工性能の点から、Xで表される有機基が酸素原子を含む環を有していることが好ましい。また、Xで表される有機基が環を有する基である場合、その環は脂肪族環又は芳香族環のいずれであってもよいが、脂肪族環であることが好ましい。更に、Xで表される有機基が有する環は、安定性及び加工性能の点から、6員環であることが好ましい。
【0070】
で表される有機基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、ピラジノ基などが挙げられ、これらの中でもモルホリノ基が特に好ましい。
【0071】
一般式(B−2−4)で表されるモノマーの好ましい例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、スチレン等が挙げられる。
【0072】
また、上記一般式(B−2−5)で表されるモノマーの好ましい例としては、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸アミド、フマル酸アミド及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0073】
また、上記一般式(B−2−6)又は(B−2−7)で表されるモノマーの好ましい例としては、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0074】
上記一般式(B−2−4)〜(B−2−7)で表されるモノマーの中でも、安定性及び加工性能の点から、一般式(B−2−4)、(B−2−6)、(B−2−7)で表されるモノマーが好ましい。特に、一般式(B−2−2)で表されるモノマーとの組合せにおいては、一般式(B−2−6)、(B−2−7)で表されるモノマーがより好ましい。また、一般式(B−2−3)で表されるモノマーとの組合せにおいては、一般式(B−2−4)で表されるモノマーがより好ましい。
【0075】
本発明にかかる(B)成分が、上記一般式(B−2−1)〜(B−2−3)で表されるモノマー、あるいは更に上記一般式(B−2−4)〜(B−2−7)で表されるモノマーの2種以上からなる共重合体である場合、その重合形式は特に制限されず、ブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよいが、安定性及び加工性能の点から、ランダム共重合体が好ましい。
【0076】
(B−2)側鎖にエステル結合を有するポリマーの好ましい例としては、具体的には、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルエステル、イソブチレン−フマル酸ジエステル共重合体、スチレン−フマル酸ジエステル共重合体、及び酢酸ビニル−フマル酸ジエステル共重合体が挙げられる。
【0077】
(B)成分としてのエステル系ポリマーは、100℃における動粘度が20mm/sを超えるものである。なお、100℃における動粘度が20mm/s以下のエステル系ポリマーは本発明にかかる(A)成分に包含されるが、このようなエステル系ポリマーを(B)成分の代わりに用いても、ミスト性と浮遊ミスト防止性とを両立することはできない。
【0078】
また、(B)成分の平均分子量は、前述の通り5,000以上であることが必要であり、好ましくは7,000以上、より好ましくは10,000以上である。エステル系ポリマーの平均分子量が5,000未満の場合、浮遊ミスト防止性が不十分となる。また、(B)成分の平均分子量は、前述の通り10,000,000以下であることが必要であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、更に好ましくは300,000以下、特に好ましくは150,000以下である。エステル系ポリマーの平均分子量が10,000,000を超えるとミスト性が不十分となる。
【0079】
また、(B)成分の含有量は特に制限されないが、組成物全量を基準として、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることが更に好ましい。(B)成分の含有量が0.001質量%未満の場合、(B)成分の使用による浮遊ミスト防止効果が十分に発揮されない傾向にある。また、(B)成分の含有量は、組成物全量を基準として、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましい。(B)成分の含有量が20質量%を超えると、ミスト性及び生分解性が低下する傾向にある。
【0080】
本発明の油剤組成物は、上記(A)、(B)成分のみからなるものであってもよいが、必要に応じて以下に示す基油及び添加剤を更に含有してもよい。
【0081】
(A)、(B)成分以外の基油としては、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油等の鉱油系基油;プロピレンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレン、炭素数5〜20のαオレフィンのオリゴマー、エチレンと炭素数5〜20のαオレフィンとのコオリゴマー等のポリオレフィン又はこれらの水素化物;モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールジエーテル、ポリプロピレングリコールジエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジエーテル等のポリグリコール;モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテル、ジアルキルトリフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル等のフェニルエーテル;シリコーン油;パーフルオロエーテル等のフルオロエーテルなどが挙げられる。
【0082】
これらの基油の含有量は、本発明の油剤組成物の性能が損なわれない限り特に制限されないが、組成物全量を基準として、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下であり、更により好ましくは50質量%以下であり、一層好ましくは30質量%以下であり、(A)、(B)成分以外の基油を含まないことが特に好ましい。
【0083】
また、本発明の油剤組成物は、加工効率及び工具寿命がより高められる点から、(C)油性剤(好ましくは分子量5,000未満の油性剤)を含有することが好ましい。
【0084】
(C)油性剤としては、アルコール油性剤、カルボン酸油性剤、不飽和カルボン酸の硫化物、下記一般式(C−1)で表される化合物、下記一般式(C−2)で表される化合物、ポリオキシアルキレン化合物、エステル油性剤、多価アルコールのハイドロカルビルエーテル、アミン油性剤などを挙げることができる。
【0085】
【化8】

[式(C−1)中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を表し、aは1〜6の整数を表し、bは0〜5の整数を表す。]
【0086】
【化9】

[式(C−2)中、R10は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、cは1〜6の整数を表し、dは0〜5の整数を表す。]
アルコール油性剤は、1価アルコールでも多価アルコールでもよい。より高い加工効率及び工具寿命が得られる点から、炭素数1〜40の1価アルコールが好ましく、更に好ましくは炭素数1〜25のアルコールであり、最も好ましくは炭素数8〜18のアルコールである。具体的には、上記基油のエステルを構成するアルコールの例を挙げることができる。これらのアルコールは直鎖状でも分岐を有していてもよく、また飽和でも不飽和でもよいが、べたつき防止性の点から飽和であることが好ましい。
【0087】
カルボン酸油性剤は一塩基酸でも多塩基酸でもよい。より高い加工効率及び工具寿命が得られる点から、炭素数1〜40の1価のカルボン酸が好ましく、更に好ましくは炭素数5〜25のカルボン酸であり、最も好ましくは炭素数5〜20のカルボン酸である。具体的には、上記基油としてのエステルを構成するカルボン酸の例を挙げることできる。これらのカルボン酸は、直鎖状でも分岐を有していてもよく、飽和でも不飽和でもよいが、べたつき防止性の点から飽和カルボン酸であることが好ましい。
【0088】
不飽和カルボン酸の硫化物としては、例えば、上記カルボン酸油性剤のうち、不飽和のものの硫化物を挙げることができる。具体的には例えば、オレイン酸の硫化物を挙げることができる。
【0089】
上記一般式(C−1)で表される化合物において、Rで表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、例えば炭素数1〜30の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアルキルシクロアルキル基、炭素数2〜30の直鎖又は分岐アルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、及び炭素数7〜30のアリールアルキル基を挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜30の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基であり、最も好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基である。炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐のプロピル基及び直鎖又は分岐のブチル基を挙げることができる。
【0090】
水酸基の置換位置は任意であるが、2個以上の水酸基を有する場合には隣接する炭素原子に置換していることが好ましい。aは好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは2である。bは好ましくは0〜3の整数であり、更に好ましくは1又は2である。一般式(1)で表される化合物の例としては、p−tert−ブチルカテコールを挙げることができる。
【0091】
上記一般式(C−2)で表される化合物において、R10で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、前記一般式(C−1)中のRで表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。水酸基の置換位置は任意であるが、2個以上の水酸基を有する場合には隣接する炭素原子に置換していることが好ましい。cは好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは2である。dは好ましくは0〜3の整数であり、更に好ましくは1又は2である。一般式(2)で表される化合物の例としては、2,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンを挙げることができる。
【0092】
ポリオキシアルキレン化合物としては、例えば下記一般式(C−3)又は(C−4)で表される化合物を挙げることができる。
11O−(R12O)−R13 (C−3)
[式(C−3)中、R11及びR13は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、R12は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、eは数平均分子量が100〜3500となるような整数を表す。]
A−[(R14O)−R15] (C−4)
[式(C−4)中、Aは水酸基を3〜10個有する多価アルコールの水酸基の水素原子の一部又は全てを取り除いた残基を表し、R14は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R15は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、fは数平均分子量が100〜3500となるような整数を表し、gはAの水酸基から取り除かれた水素原子の個数と同じ数を表す。]
上記一般式(C−3)中、R11及びR13の少なくとも一方は水素原子であることが好ましい。R11及びR13で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば上記一般式(C−1)のRで表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。R12で表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、ブチレン基(エチルエチレン基)を挙げることができる。eは、好ましくは数平均分子量が300〜2000となるような整数であり、更好ましくは数平均分子量が500〜1500となるような整数である。
【0093】
また、上記一般式(C−4)中、Aを構成する3〜10の水酸基を有する多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜4量体、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン)及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロ−ル、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、イジリトール、タリトール、ズルシトール、アリトールなどの多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マントース、イソマントース、トレハロース、及びシュクロースなどの糖類を挙げることができる。これらの中でもグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールアルカン、およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、又はソルビタンが好ましい。
【0094】
14で表される炭素数2〜4のアルキレン基の例としては、上記一般式(C−3)のR12で表される炭素数2〜4のアルキレン基の例と同じものを挙げることができる。またR15で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、前記一般式(C−1)のRで表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。g個のR15のうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましく、全て水素原子であることが更に好ましい。fは、好ましくは数平均分子量が300〜2000となるような整数であり、更に好ましくは数平均分子量が500〜1500となるような整数である。
【0095】
エステル油性剤としては、これを構成するアルコールが1価アルコールでも多価アルコールでもよく、またカルボン酸は一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
【0096】
エステル油性剤を構成する1価アルコール及び多価アルコールの例としては、1価アルコールでも多価アルコールでもよく、また、エステル油性剤を構成する酸としては一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
【0097】
1価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状又は分岐状のプロパノール、直鎖状又は分岐状のブタノール、直鎖状又は分岐状のペンタノール、直鎖状又は分岐状のヘキサノール、直鎖状又は分岐状のヘプタノール、直鎖状又は分岐状のオクタノール、直鎖状又は分岐状のノナノール、直鎖状又は分岐状のデカノール、直鎖状又は分岐状のウンデカノール、直鎖状又は分岐状のドデカノール、直鎖状又は分岐状のトリデカノール、直鎖状又は分岐状のテトラデカノール、直鎖状又は分岐状のペンタデカノール、直鎖状又は分岐状のヘキサデカノール、直鎖状又は分岐状のヘプタデカノール、直鎖状又は分岐状のオクタデカノール、直鎖状又は分岐状のノナデカノール、直鎖状又は分岐状のイコサノール、直鎖状又は分岐状のヘンイコサノール、直鎖状又は分岐状のトリコサノール、直鎖状又は分岐状のテトラコサノール及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0098】
多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトール及びこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0099】
これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコール及びこれらの混合物等が好ましい。さらにより好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、及びこれらの混合物等である。これらの中でも、より高い熱・酸化安定性が得られることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びこれらの混合物等が最も好ましい。
【0100】
エステル油性剤を構成するアルコールは、上述したように1価アルコールであっても多価アルコールであってもよいが、加工効率及び工具寿命を達成できる点、並びに流動点の低いものがより得やすく、冬季及び寒冷地での取り扱い性がより向上する等の点から、多価アルコールであることが好ましい。また、多価アルコールのエステルを用いると、切削・研削加工において、加工物の仕上げ面精度の向上と工具刃先の摩耗防止効果がより大きくなる。
【0101】
また、エステル油性剤を構成する酸のうち、一塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状又は分岐状のブタン酸、直鎖状又は分岐状のペンタン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン酸、直鎖状又は分岐状のオクタン酸、直鎖状又は分岐状のノナン酸、直鎖状又は分岐状のデカン酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン酸、直鎖状又は分岐状のドデカン酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のノナデカン酸、直鎖状又は分岐状のイコサン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコサン酸、直鎖状又は分岐状のドコサン酸、直鎖状又は分岐状のトリコサン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、直鎖状又は分岐状のブテン酸、直鎖状又は分岐状のペンテン酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン酸、直鎖状又は分岐状のオクテン酸、直鎖状又は分岐状のノネン酸、直鎖状又は分岐状のデセン酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン酸、直鎖状又は分岐状のドデセン酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のノナデセン酸、直鎖状又は分岐状のイコセン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコセン酸、直鎖状又は分岐状のドコセン酸、直鎖状又は分岐状のトリコセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点、並びに取扱性の点から、特に炭素数3〜20の飽和脂肪酸、炭素数3〜22の不飽和脂肪酸及びこれらの混合物が好ましく、炭素数4〜18の飽和脂肪酸、炭素数4〜18の不飽和脂肪酸及びこれらの混合物がより好ましく、炭素数4〜18の不飽和脂肪酸がさらに好ましく、べたつき防止性の点からは炭素数4〜18の飽和脂肪酸がさらに好ましい。
【0102】
多塩基酸としては炭素数2〜16の二塩基酸及びトリメリット酸等が挙げられる。炭素数2〜16の二塩基酸としては、直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状又は分岐状のブタン二酸、直鎖状又は分岐状のペンタン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン二酸、直鎖状又は分岐状のオクタン二酸、直鎖状又は分岐状のノナン二酸、直鎖状又は分岐状のデカン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン二酸、直鎖状又は分岐状のドデカン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン二酸、直鎖状又は分岐状のオクテン二酸、直鎖状又は分岐状のノネン二酸、直鎖状又は分岐状のデセン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン二酸、直鎖状又は分岐状のドデセン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン二酸及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0103】
エステル油性剤におけるアルコールと酸との組み合わせは任意であって特に制限されないが、本発明で使用可能なエステル油性剤としては、例えば下記のエステルを挙げることができる。
(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
(iv)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(v)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
(vi)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
(vii)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合エステル。
【0104】
なお、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルでもよく、あるいは水酸基の一部がエステル化されず水酸基のままで残っている部分エステルでもよい。また、カルボン酸成分として多塩基酸を用いた場合、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでもよく、あるいはカルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであってもよい。加工性能の点からは、エステル油性剤は部分エステルであることが好ましい。
【0105】
エステル油性剤の合計炭素数には特に制限はないが、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、合計炭素数が7以上のエステルが好ましく、9以上のエステルが更に好ましく、11以上のエステルが最も好ましい。また、ステインや腐食の発生を増大させない点、並びに有機材料との適合性の点から、合計炭素数が60以下のエステルが好ましく、45以下のエステルがより好ましく、26以下のエステルが更に好ましく、24以下のエステルが一層好ましく、22以下のエステルが最も好ましい。
【0106】
多価アルコールのハイドロカルビルエーテルを構成する多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトール及びこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0107】
これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコール及びこれらの混合物等が好ましい。さらにより好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、及びこれらの混合物等である。これらの中でも、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、グリセリンが最も好ましい。
【0108】
多価アルコールのハイドロカルビルエーテルとしては、上記多価アルコールの水酸基の一部又は全部をハイドロカルビルエーテル化したものが使用できる。優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点からは、多価アルコールの水酸基の一部をハイドロカルビルエーテル化したもの(部分エーテル化物)が好ましい。ここでいうハイドロカルビル基とは、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基、炭素数7〜18のアリールアルキル基等の炭素数1〜24の炭化水素基を表す。
【0109】
炭素数1〜24のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝のペンチル基、直鎖又は分枝のヘキシル基、直鎖又は分枝のヘプチル基、直鎖又は分枝のオクチル基、直鎖又は分枝のノニル基、直鎖又は分枝のデシル基、直鎖又は分枝のウンデシル基、直鎖又は分枝のドデシル基、直鎖又は分枝のトリデシル基、直鎖又は分枝のテトラデシル基、直鎖又は分枝のペンタデシル基、直鎖又は分枝のヘキサデシル基、直鎖又は分枝のヘプタデシル基、直鎖又は分枝のオクタデシル基、直鎖又は分枝のノナデシル基、直鎖又は分枝のイコシル基、直鎖又は分枝のヘンイコシル基、直鎖又は分枝のドコシル基、直鎖又は分枝のトリコシル基、直鎖又は分枝のテトラコシル基等が挙げられる。
【0110】
炭素数2〜24のアルケニル基としては、ビニル基、直鎖又は分枝のプロペニル基、直鎖又は分枝のブテニル基、直鎖又は分枝のペンテニル基、直鎖又は分枝のへキセニル基、直鎖又は分枝のヘプテニル基、直鎖又は分枝のオクテニル基、直鎖又は分枝のノネニル基、直鎖又は分枝のデセニル基、直鎖又は分枝のウンデセニル基、直鎖又は分枝のドデセニル基、直鎖又は分枝のトリデセニル基、直鎖又は分枝のテトラデセニル基、直鎖又は分枝のペンタデセニル基、直鎖又は分枝のヘキサデセニル基、直鎖又は分枝のヘプタデセニル基、直鎖又は分枝のオクタデセニル基、直鎖又は分枝のノナデセニル基、直鎖又は分枝のイコセニル基、直鎖又は分枝のヘンイコセニル基、直鎖又は分枝のドコセニル基、直鎖又は分枝のトリコセニル基、直鎖又は分枝のテトラコセニル基等が挙げられる。
【0111】
炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクリペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基としては、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)等が挙げられる。
【0112】
炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数7〜18のアルキルアリール基としては、トリル基(全ての構造異性体を含む。)、キシリル基(全ての構造異性体を含む。)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖又は分枝のプロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖又は分枝のブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖又は分枝のペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖又は分枝のヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖又は分枝のヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖又は分枝のオクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖又は分枝のノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖又は分枝のデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖又は分枝のウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖又は分枝のドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)等が挙げられる。
【0113】
炭素数7〜12のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基(プロピル基の異性体を含む。)フェニルブチル基(ブチル基の異性体を含む。)、フェニルペンチル基(ペンチル基の異性体を含む。)、フェニルヘキシル基(ヘキシル基の異性体を含む。)等が挙げられる。
【0114】
これらの中では、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、炭素数2〜18の直鎖又は分枝のアルキル基、炭素数2〜18の直鎖又は分枝のアルケニル基が好ましく、炭素数3〜12の直鎖又は分枝のアルキル基、オレイル基(オレイルアルコールから水酸基を除いた残基)がより好ましい。
【0115】
アミン油性剤としては、モノアミンが好ましく使用される。モノアミンの炭素数は、好ましくは6〜24であり、より好ましくは12〜24である。ここでいう炭素数とはモノアミンに含まれる総炭素数の意味であり、モノアミンが2個以上の炭化水素基を有する場合にはその合計炭素数を表す。
【0116】
本発明で用いられるモノアミンとしては、第1級モノアミン、第2級モノアミン、第3級モノアミンの何れもが使用可能であるが、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、第1級モノアミンが好ましい。
【0117】
モノアミンの窒素原子に結合する炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等の何れもが使用可能であるが、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、アルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。アルキル基、アルケニル基としては、直鎖状のものであっても分岐鎖状のものであっても良いが、加工効率及び工具寿命の向上の点から、直鎖状のものが好ましい。
【0118】
本発明で用いられるモノアミンの好ましいものとしては、具体的には例えば、ヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、オクチルアミン(全ての異性体を含む)、ノニルアミン(全ての異性体を含む)、デシルアミン(全ての異性体を含む)、ウンデシルアミン(全ての異性体を含む)、ドデシルアミン(全ての異性体を含む)、トリデシルアミン(全ての異性体を含む)、テトラデシルアミン(全ての異性体を含む)、ペンタデシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘキサデシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘプタデシルアミン(全ての異性体を含む)、オクタデシルアミン(全ての異性体を含む)、ノナデシルアミン(全ての異性体を含む)、イコシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘンイコシルアミン(全ての異性体を含む)、ドコシルアミン(全ての異性体を含む)、トリコシルアミン(全ての異性体を含む)、テトラコシルアミン(全ての異性体を含む)、オクタデセニルアミン(全ての異性体を含む)(オレイルアミン等を含む)及びこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの中でも、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、炭素数12〜24の第1級モノアミンが好ましく、炭素数14〜20の第1級モノアミンがより好ましく、炭素数16〜18の第1級モノアミンがさらに好ましい。
【0119】
本発明においては、上記油性剤の中から選ばれる1種のみを用いてもよく、また2種以上の混合物を用いてもよい。これらの中でも、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、カルボン酸油性剤及びアミン油性剤から選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましい。
【0120】
(C)油性剤の含有量は特に制限はないが、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また、安定性の点から、油性剤の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0121】
また、本発明の油剤組成物は、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、(D)極圧剤を更に含有することが好ましい。特に、(D)極圧剤を上記した(C)油性剤と併用すると、これらの相乗作用により、一層優れた加工効率及び工具寿命を達成することが可能となる。また、本発明の油剤組成物は、後述するように、工作機械の加工部以外の潤滑油として使用することが可能であるが、この場合には(C)油性剤を含有することが望ましい。
【0122】
(D)極圧剤としては、後述する硫黄化合物及びリン化合物が挙げられる。
【0123】
硫黄化合物としては、本発明油剤組成物の特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、ジハイドロカルビルポリサルファイド、硫化エステル、硫化鉱油、ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物及びジチオカルバミン酸モリブデンが好ましく用いられる。
【0124】
ジハイドロカルビルポリサルファイドとは、一般的にポリサルファイド又は硫化オレフィンと呼ばれる硫黄系化合物であり、具体的には下記一般式(D−1)で表される化合物を意味する。
【0125】
16−S−R17 (D−1)
[式(D−1)中、R16及びR17は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数3〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアルキルアリール基あるいは炭素数6〜20のアリールアルキル基を表し、hは2〜6、好ましくは2〜5の整数を表す。]
上記一般式(D−1)中のR16及びR17としては、具体的には、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝ペンチル基、直鎖又は分枝ヘキシル基、直鎖又は分枝ヘプチル基、直鎖又は分枝オクチル基、直鎖又は分枝ノニル基、直鎖又は分枝デシル基、直鎖又は分枝ウンデシル基、直鎖又は分枝ドデシル基、直鎖又は分枝トリデシル基、直鎖又は分枝テトラデシル基、直鎖又は分枝ペンタデシル基、直鎖又は分枝ヘキサデシル基、直鎖又は分枝ヘプタデシル基、直鎖又は分枝オクタデシル基、直鎖又は分枝ノナデシル基、直鎖又は分枝イコシル基などの直鎖状又は分枝状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝オクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝デシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分枝)プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分枝)ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、メチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分枝)プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分枝)ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)などのアルキルアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)、フェニルプロピル基(全ての異性体を含む)などのアリールアルキル基;などを挙げることができる。これらの中でも、一般式(D−1)中のR16及びR17としては、プロピレン、1−ブテン又はイソブチレンから誘導された炭素数3〜18のアルキル基、又は炭素数6〜8のアリール基、アルキルアリール基あるいはアリールアルキル基であることが好ましく、これらの基としては例えば、イソプロピル基、プロピレン2量体から誘導される分枝状ヘキシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン3量体から誘導される分枝状ノニル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン4量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン5量体から誘導される分枝状ペンタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン6量体から誘導される分枝状オクタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−ブテン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)などのアルキル基;フェニル基、トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)などのアルキルアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)などのアリールアルキル基が挙げられる。
【0126】
さらに、上記一般式(D−1)中のR16及びR17としては、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、別個に、エチレン又はプロピレンから誘導された炭素数3〜18の分枝状アルキル基であることがより好ましく、エチレン又はプロピレンから誘導された炭素数6〜15の分枝状アルキル基であることが特に好ましい。
【0127】
硫化エステルとしては、具体的には例えば、牛脂、豚脂、魚脂、菜種油、大豆油などの動植物油脂;不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸又は上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸類などを含む)と各種アルコールとを反応させて得られる不飽和脂肪酸エステル;及びこれらの混合物などを任意の方法で硫化することにより得られるものが挙げられる。
【0128】
硫化鉱油とは、鉱油に単体硫黄を溶解させたものをいう。ここで、本発明にかかる硫化鉱油に用いられる鉱油としては特に制限されないが、具体的には、具体的には、原油に常圧蒸留及び減圧蒸留を施して得られる潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などが挙げられる。また、単体硫黄としては、塊状、粉末状、溶融液体状等いずれの形態のものを用いてもよいが、粉末状又は溶融液体状の単体硫黄を用いると基油への溶解を効率よく行うことができるので好ましい。なお、溶融液体状の単体硫黄は液体同士を混合するので溶解作業を非常に短時間で行うことができるという利点を有しているが、単体硫黄の融点以上で取り扱わねばならず、加熱設備などの特別な装置を必要としたり、高温雰囲気下での取り扱いとなるため危険を伴うなど取り扱いが必ずしも容易ではない。これに対して、粉末状の単体硫黄は、安価で取り扱いが容易であり、しかも溶解に要する時間が十分に短いので特に好ましい。また、本発明にかかる硫化鉱油における硫黄含有量に特に制限はないが、通常、硫化鉱油全量を基準として好ましくは0.05〜1.0質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0129】
ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物及びジチオカルバミン酸モリブデン化合物とは、それぞれ下記一般式(D−2)〜(D−5)で表される化合物を意味する。
【0130】
【化10】

【0131】
【化11】

【0132】
【化12】

【0133】
【化13】

[式(D−2)〜(D−5)中、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32及びR33は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上の炭化水素基を表し、Y及びYはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表す。]
ここで、R18〜R33で表される炭化水素基の具体例を例示すれば、メチル基、エチル基、プロピル基(すべての分枝異性体を含む)、ブチル基(すべての分枝異性体を含む)、ペンチル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘキシル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘプチル基(すべての分枝異性体を含む)、オクチル基(すべての分枝異性体を含む)、ノニル基(すべての分枝異性体を含む)、デシル基(すべての分枝異性対を含む)、ウンデシル基(すべての分枝異性対を含む)、ドデシル基(すべての分枝異性対を含む)、トリデシル基(すべての分枝異性対を含む)、テトラデシル基(すべての分枝異性対を含む)、ペンタデシル基(すべての分枝異性対を含む)、ヘキサデシル基(すべての分枝異性対を含む)、ヘプタデシル基(すべての分枝異性対を含む)、オクタデシル基(すべての分枝異性対を含む)、ノナデシル基(すべての分枝異性対を含む)、イコシル基(すべての分枝異性対を含む)、ヘンイコシル基(すべての分枝異性対を含む)、ドコシル基(すべての分枝異性対を含む)、トリコシル基(すべての分枝異性対を含む)、テトラコシル基(すべての分枝異性対を含む)などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)などのアルキルシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;トリル基(すべての置換異性体を含む)、キシリル基(すべての置換異性体を含む)、エチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ペンチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘキシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘプチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、オクチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ノニルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、デシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ウンデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ドデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、トリデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、テトラデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ペンタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘキサデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘプタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、オクタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)などのアルキルアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基(すべての分枝異性体を含む)、フェニルブチル基(すべての分枝異性体を含む)などのアリールアルキル基などが挙げられる。
【0134】
本発明においては、上記硫黄化合物の中でも、ジハイドロカルビルポリサルファイド及び硫化エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いると、一層高水準の加工効率及び工具寿命を達成できるので好ましい。
【0135】
また、リン化合物としては、具体的には例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステル及びフォスフォロチオネート、下記一般式(D−6)又は(D−7)で表されるリン化合物の金属塩等が挙げられる。これらのリン化合物は、リン酸、亜リン酸又はチオリン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体が挙げられる。
【0136】
【化14】

[式(D−6)中、Y、Y及びYは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を表し、Y、Y又はYの少なくとも2つは酸素原子であり、R34、R35及びR36は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。]
【0137】
【化15】

[式(D−7)中、Y、Y、Y及びYは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を表し、Y、Y、Y又はYの少なくとも3つは酸素原子であり、R37、R38及びR39は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。]
より具体的には、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等;
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等;
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等;
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等;
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等;
フォスフォロチオネートとしては、トリブチルフォスフォロチオネート、トリペンチルフォスフォロチオネート、トリヘキシルフォスフォロチオネート、トリヘプチルフォスフォロチオネート、トリオクチルフォスフォロチオネート、トリノニルフォスフォロチオネート、トリデシルフォスフォロチオネート、トリウンデシルフォスフォロチオネート、トリドデシルフォスフォロチオネート、トリトリデシルフォスフォロチオネート、トリテトラデシルフォスフォロチオネート、トリペンタデシルフォスフォロチオネート、トリヘキサデシルフォスフォロチオネート、トリヘプタデシルフォスフォロチオネート、トリオクタデシルフォスフォロチオネート、トリオレイルフォスフォロチオネート、トリフェニルフォスフォロチオネート、トリクレジルフォスフォロチオネート、トリキシレニルフォスフォロチオネート、クレジルジフェニルフォスフォロチオネート、キシレニルジフェニルフォスフォロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)フォスフォロチオネート等
が挙げられる。
【0138】
また、上記一般式(D−6)又は(D−7)で表されるリン化合物の金属塩に関し、式中のR34〜R39で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0139】
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
【0140】
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)が挙げられる。
【0141】
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)が挙げられる。
【0142】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)が挙げられる。
【0143】
上記アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
【0144】
34〜R39で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18のアルキル基、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
【0145】
34、R35及びR36は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は上記炭化水素基を表すが、R34、R35及びR36のうち、1〜3個が上記炭化水素基であることが好ましく、1〜2個が上記炭化水素基であることがより好ましく、2個が上記炭化水素基であることがさらに好ましい。
【0146】
また、R37、R38及びR39は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は上記炭化水素基を表すが、R37、R38及びR39のうち、1〜3個が上記炭化水素基であることが好ましく、1〜2個が上記炭化水素基であることがより好ましく、2個が上記炭化水素基であることがさらに好ましい。
【0147】
一般式(D−6)で表されるリン化合物において、Y〜Yのうちの少なくとも2つは酸素原子であることが必要であるが、Y〜Yの全てが酸素原子であることが好ましい。
【0148】
また、一般式(D−7)で表されるリン化合物において、Y〜Yのうちの少なくとも3つは酸素原子であることが必要であるが、Y〜Yの全てが酸素原子であることが好ましい。
【0149】
一般式(D−6)で表されるリン化合物としては、例えば、亜リン酸、モノチオ亜リン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル;及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステルが好ましく、亜リン酸ジエステルがより好ましい。
【0150】
また、一般式(D−7)で表されるリン化合物としては、例えば、リン酸、モノチオリン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル;及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルが好ましく、リン酸ジエステルがより好ましい。
【0151】
一般式(D−6)又は(D−7)で表されるリン化合物の金属塩としては、当該リン化合物の酸性水素の一部又は全部を金属塩基で中和した塩が挙げられる。かかる金属塩基としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等が挙げられ、その金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属及び亜鉛が好ましい。
【0152】
上記リン化合物の金属塩は、金属の価数やリン化合物のOH基あるいはSH基の数に応じその構造が異なり、従ってその構造については何ら限定されないが、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸ジエステル(OH基が1つ)2molを反応させた場合、下記式(D−8)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
【0153】
【化16】

また、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸モノエステル(OH基が2つ)1molとを反応させた場合、下記式(D−9)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
【0154】
【化17】

また、これらの2種以上の混合物も使用できる。
【0155】
本発明においては、上記リン化合物の中でも、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び酸性リン酸エステルのアミン塩が好ましい。
【0156】
また、本発明の油剤組成物は、後述するように、金属加工以外の用途に適用可能であるが、本発明の油剤組成物を工作機械の摺動面用油として使用する場合には、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩を含有することが好ましい。また、本発明の油剤組成物を油圧作動油として使用する場合には、リン酸エステルが好ましい。さらに、摺動面用油と油圧作動油との兼用油として用いる場合には、酸性リン酸エステル及び酸性リン酸エステルのアミン塩から選ばれる少なくとも1種と、リン酸エステルと、を組み合わせて用いることが好ましい。
【0157】
本発明の油剤組成物は、硫黄化合物又はリン化合物の一方のみを含有するものであってもよく、双方を含有するものであってもよい。優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点からは、リン化合物、あるいは硫黄化合物とリン化合物との双方を含有することが好ましく、硫黄化合物とリン化合物との双方を含有することがより好ましい。
【0158】
(D)極圧剤の含有量は任意であるが、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、組成物全量基準で、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらにより好ましい。また、異常摩耗の防止の点から、極圧剤の含有量は、組成物全量基準で、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0159】
本発明においては、上述の(C)油性剤又は(D)極圧剤の一方のみを用いてもよいが、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、(C)油性剤と(D)極圧剤とを併用することが好ましい。
【0160】
また、本発明の油剤組成物においては、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点から、(E)有機酸塩を含有することが好ましい。有機酸塩としては、スルフォネート、フェネート、サリシレート、並びにこれらの混合物が好ましく用いられる。これらの有機酸塩の陽性成分としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;アンモニア、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアミン(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミンなど)、炭素数1〜3のアルカノール基を有するアルカノールアミン(モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなど)などのアミン、亜鉛などが挙げられるが、これらの中でもアルカリ金属又はアルカリ土類金属が好ましく、カルシウムが特に好ましい。有機酸塩の陽性成分がアルカリ金属又はアルカリ土類金属であると、より高い潤滑性が得られる傾向にある。
【0161】
スルフォネートは、任意の方法によって製造されたものが使用可能である。例えば、分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルフォン化することによって得られるアルキル芳香族スルフォン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩及びこれらの混合物などが使用できる。ここでいうアルキル芳香族スルフォン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルフォン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸などの石油スルフォン酸や、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる直鎖状又は分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルフォン化したもの、あるいはジノニルナフタレンなどのアルキルナフタレンをスルフォン化したものなどの合成スルフォン酸などが挙げられる。また、上記のアルキル芳香族スルフォン酸と、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物など)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物など)又は上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミンなど)とを反応させて得られるいわゆる中性(正塩)スルフォネート;中性(正塩)スルフォネートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンを水の存在下で加熱することにより得られるいわゆる塩基性スルフォネート;炭酸ガスの存在下で中性(正塩)スルフォネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンと反応させることにより得られるいわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルフォネート;中性(正塩)スルフォネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンならびにホウ酸又は無水ホウ酸などのホウ酸化合物と反応させたり、又は炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルフォネートとホウ酸又は無水ホウ酸などのホウ酸化合物を反応させることによって製造されるいわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)スルフォネート;及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0162】
また、フェネートとしては、具体的には、元素硫黄の存在下又は不存在下で、炭素数4〜20のアルキル基を1〜2個有するアルキルフェノールと、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物など)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物など)又は上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミンなど)とを反応させることにより得られる中性フェネート;中性フェネートと過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンを水の存在下で加熱することにより得られる、いわゆる塩基性フェネート;炭酸ガスの存在下で中性フェネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンと反応させることにより得られる、いわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)フェネート;中性フェネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンならびにホウ酸又は無水ホウ酸などのホウ酸化合物と反応させたり、又は炭酸塩過塩基性(超塩基性)フェネートとホウ酸又は無水ホウ酸などのホウ酸化合物を反応させることによって製造される、いわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)フェネート;及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0163】
さらに、サリシレートとしては、具体的には、元素硫黄の存在下又は不存在下で、炭素数4〜20のアルキル基を1〜2個有するアルキルサリチル酸と、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物など)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物など)又は上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミンなど)とを反応させることにより得られる中性サリシレート;中性サリシレートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンを水の存在下で加熱することにより得られるいわゆる塩基性サリシレート;炭酸ガスの存在下で中性サリシレートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンと反応させることにより得られるいわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)サリシレート;中性サリシレートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンならびにホウ酸又は無水ホウ酸などのホウ酸化合物と反応させたり、又は炭酸塩過塩基性(超塩基性)金属サリシレートとホウ酸又は無水ホウ酸などのホウ酸化合物を反応させることによって製造されるいわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)サリシレート;及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0164】
(E)有機酸塩の塩基価は、好ましくは50〜500mgKOH/gであり、より好ましくは100〜450mgKOH/gである。有機酸塩の塩基価が100mgKOH/g未満の場合は有機酸塩の添加による潤滑性向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、塩基価が500mgKOH/gを超える有機酸塩は、通常、製造が非常に難しく入手が困難であるため、それぞれ好ましくない。なお、ここでいう塩基価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価[mgKOH/g]をいう。
【0165】
また、(E)有機酸塩の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜25質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%である。(E)有機酸塩の含有量が前記下限値未満の場合、その添加による加工効率及び工具寿命の向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると油剤組成物の安定性が低下して析出物が生じやすくなる傾向にある。
【0166】
本発明においては、(E)有機酸塩を単独で用いてもよく、あるいは有機酸塩と他の添加剤とを組み合わせて用いてもよい。優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点からは、有機酸塩を上記の極圧剤と組み合わせて用いることが好ましく、硫黄化合物、リン化合物及び有機酸塩の3種を組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0167】
また、本発明の油剤組成物は(F)酸化防止剤を更に含有していることが好ましい。酸化防止剤の添加により、構成成分の変質によるべたつきを防止することができ、また、熱・酸化安定性を向上させることができる。
【0168】
(F)酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤、その他食品添加剤として使用されているものなどが挙げられる。
【0169】
フェノール系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のフェノール系化合物が使用可能であり、特に制限されるものでないが、例えば下記の一般式(F−1)及び一般式(F−2)で表される化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のアルキルフェノール化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0170】
【化18】

[式(F−1)中、R40は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R41は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R42は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、下記一般式(i)又は(ii):
【0171】
【化19】

(一般式(i)中、R43は炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R44は炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【0172】
【化20】

(一般式(ii)中、R45は炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R46は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R47は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、kは0又は1を表す。)
で表される基を表す。]
【0173】
【化21】

[一般式(F−2)中、R48及びR50は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を表し、R49及びR51は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R52及びR53は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Bは炭素数1〜18のアルキレン基又は下記の一般式(iii):
−R55−S−R56− (iii)
(一般式(iii)中、R55及びR56は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を表す)
で表される基を表す。]
本発明に使用されるアミン系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のアミン系化合物が使用可能であり、特に限定されるものではないが、例えば、下記の一般式(F−3)で表されるフェニル−α−ナフチルアミン又はN−p−アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、並びに下記一般式(F−4)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンの中から選ばれる1種又は2種以上の芳香族アミンが好ましいものとして挙げられる。
【0174】
【化22】

[式(F−3)中、R57は水素原子又はアルキル基を表す。]
【0175】
【化23】

[式(F−4)中、R58及びR59は同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基を表す。]
アミン系酸化防止剤の具体例としては、4−ブチル−4’−オクチルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ドデシルフェニル−α−ナフチルアミン及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0176】
また、ジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤としては、上記一般式(D−2)で表されるジチオリン酸亜鉛化合物が挙げられる。
【0177】
また、食品添加剤として使用されている酸化防止剤も使用可能であり、上述したフェノール系酸化防止剤と一部重複するが、例えば、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,2−ジハイドロ−6−エトキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)、2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオール(TBHQ)、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン(THBP)を挙げることができる。
【0178】
これらの酸化防止剤の中でも、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、並びに上記食品添加剤として使用されているものが好ましい。さらに、生分解性を重視する場合には、上記食品添加剤として使用されているものがより好ましく、中でもアスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,2−ジハイドロ−6−エトキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)、2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオール(TBHQ)、又は2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン(THBP)が好ましく、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、又は3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールがより好ましい。
【0179】
(F)酸化防止剤の含有量は特に制限はないが、良好な熱・酸化安定性を維持させるためにその含有量は、組成物全量基準で0.01質量%以上が好ましく、更に好ましくは0.05質量%以上、最も好ましくは0.1質量%以上である。一方それ以上添加しても効果の向上が期待できないことからその含有量は10質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは3質量%以下である。
【0180】
また、本発明の油剤組成物には、上記した以外の従来公知の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、上記したリン化合物、硫黄化合物以外の極圧剤(塩素系極圧剤を含む);ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の湿潤剤;アクリルポリマー、パラフィンワックス、マイクロワックス、スラックワックス、ポリオレフィンワックス等の造膜剤;脂肪酸アミン塩等の水置換剤;グラファイト、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、ポリエチレン粉末等の固体潤滑剤;アミン、アルカノールアミン、アミド、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、多価アルコールの部分エステル等の腐食防止剤;ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等の金属不活性化剤;メチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等の消泡剤;アルケニルコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアルケニルアミンアミノアミド等の無灰分散剤;等が挙げられる。これらの公知の添加剤を併用する場合の含有量は特に制限されないが、これらの公知の添加剤の合計含有量が組成物全量基準で0.1〜10質量%となるような量で添加するのが一般的である。
【0181】
なお、本発明の油剤組成物は、上述のように塩素系極圧剤などの塩素系添加剤を含有してもよいが、安全性の向上及び環境に対する負荷の低減の点からは、塩素系添加剤を含有しないことが好ましい。また、塩素濃度は、組成物全量基準で、1000質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppm以下であることがより好ましく、200質量ppm以下であることが更に好ましく、100質量ppm以下であることが特に好ましい。
【0182】
本発明の油剤組成物の動粘度は特に制限されないが、加工部位への供給容易性の点から、100℃における動粘度は20mm/s以下であることが好ましく、更に好ましくは17mm/s以下であり、更に好ましくは15mm/s以下であり、特に好ましくは12mm/s以下である。一方、本発明の油剤組成物の100℃における動粘度は、0.5mm/s以上であることが好ましく、更に好ましくは0.7mm/s以上であり、特に好ましくは0.9mm/s以上である。
【0183】
また、本発明の油剤組成物の水分含有量は、貯蔵安定性及びさび止め性の点から、好ましくは20000ppm以下、より好ましくは10000ppm以下、更に好ましくは5000ppm以下である。また、優れた加工効率及び工具寿命を達成できる点からは、水分含有量は、好ましくは200ppm以上、より好ましくは300ppm以上、更に好ましくは400ppm以上、一層好ましくは500ppm以上である。
【0184】
なお、本発明でいう水分含有量とは、JIS K 2275に準拠してカールフィッシャー式電量滴定法により測定される水分含有量を意味する。
【0185】
また、本発明の油剤組成物に水を添加して水分含有量を調整する場合、添加する水は硬水又は軟水のいずれであってもよく、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水、アルカリイオン水などを任意に使用することができる。
【0186】
上記構成を有する本発明の油剤組成物によれば、極微量油剤供給式切削・研削加工において、従来では達成が困難であったミスト性と浮遊ミスト性との両立を達成することができる。したがって、本発明の油剤組成物は、加工性能の向上及び作業環境の改善の点で非常に有用である。
【実施例】
【0187】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜14、比較例1]
実施例1〜14及び比較例1においては、それぞれ以下に示すエステル油及びエステル系ポリマーを用いて、表1〜表3に示す組成を有する油剤組成物を調製した。
(エステル油)
A1:オレイン酸メチル(100℃における動粘度:1.8mm/s)
A2:アジピン酸ジイソデシル(100℃における動粘度:3.7mm/s)
A3:トリメチロールプロパンと、n−オクタン酸及びn−デカン酸の混合酸とのトリエステル(100℃における動粘度:4.4mm/s)
A4:ネオペンチルグリコールとオレイン酸とのジエステル(100℃における動粘度:5.8mm/s)
A5:ハイオレイック菜種油(100℃における動粘度:8.5mm/s)
A6:トリメチロールプロパンとオレイン酸とのトリエステル(100℃における動粘度:9.8mm/s)
(エステル系ポリマー)
B1:ポリメタクリレート(一般式(B−2−2)で表され、Rが水素原子、Rがメチル基、Rが炭素数1〜18のアルキル基であるモノマー混合物の重合体、100℃における動粘度:400mm/s、平均分子量:10,000)
B2:ポリメタクリレート(一般式(B−2−2)で表され、Rが水素原子、Rがメチル基、Rが炭素数1〜18のアルキル基であるモノマー混合物の重合体、100℃における動粘度:1,200mm/s、平均分子量:50,000)
B3:ポリメタクリレート(一般式(B−2−2)で表され、Rが水素原子、Rがメチル基、Rが炭素数1〜18のアルキル基であるモノマー混合物の重合体、100℃における動粘度:1,700mm/s、平均分子量:150,000)
B4:ポリメタクリレート(一般式(B−2−2)で表され、Rが水素原子、Rがメチル基、Rが炭素数1〜18のアルキル基であるモノマー混合物の重合体、100℃における動粘度:2,500mm/s、平均分子量:500,000)
B5:ネオペンチルグリコールとダイマー酸とのコンプレックスエステル(100℃における動粘度:2,000mm/s、平均分子量:100,000)。
【0188】
次に、実施例1〜14及び比較例1の油剤組成物について以下の試験を実施した。
[浮遊ミスト量測定試験]
図1及び図2はそれぞれ浮遊ミスト量測定試験で用いた試験装置の要部を示す側面図及び上面図である。図1及び図2に示した試験装置は極微量油剤供給式切削・研削加工対応のマシニングセンター(オークマ製、MB−46V)にMQL装置(フジBC技研製、EB−3)及びミストカウンターを配設したものである。すなわち、図1及び図2に示した試験装置は、被加工物10を支持するテーブル1と、テーブル1の上面に対向して配置された工具2(NACHIストレートドリルSGOH3D(5.0mm×82mm×28mm)、以下、「ドリル2」という。)と、ドリル2をその回転軸を中心として回転可能に支持する軸部3と、テーブル1上面の周縁部に配置されたミストカウンター5(柴田科学製、携帯型粉塵計P−5L)とを備えている。
【0189】
なお、詳細は図示していないが、ドリル2はらせん状の溝部を有するもので、当該溝部の切れ刃逃げ面の所定位置には2個の吐出口(オイルホール、φ1.0mm)が設けられている。また、ドリル2及び軸部3の内部にはドリル2の吐出口それぞれに連通する流路が設けられており、軸部3の流路のドリル2と反対側の開口部には油剤供給ライン5が連結されている。これにより、油剤供給ライン5から圧縮空気と共に送られる油剤組成物を、ドリル2及び軸部3の流路を経て、ドリル2の吐出口から被加工物10に向けてミスト化することが可能となっている。
【0190】
上記の構成を有する試験装置において、ドリルの回転数を1,000rpmとし、ミスト化の際の差圧を0.12MPa(導入圧:0.38MPa、吐出圧:0.26MPa)、ミスト装置からの吐出圧を0.26MPaとして、180ショット/分で被加工物に向けて吹き付け、極微量油剤供給式切削・研削加工を実施した。そして、加工開始後3分経過時から4分経過時までの1分間に発生する浮遊ミストの量をミストカウンター5にて測定した。得られた結果を表1〜表3に示す。
[加工点到達油量測定試験]
図1及び図2に示した試験装置において、被加工物10の代わりにガラス製シャーレ(内径:95mm)を配置し、このシャーレの底面とドリル2の先端との距離が50mmとなるようにドリル2及び軸部3を配置した。そして、浮遊ミスト量測定試験の場合と同様の条件で、ドリル2の吐出口からシャーレに向けてミスト化した油剤組成物を吹きつけ、シャーレに捕集された油剤組成物の量(単位時間当たりの到達油量)を測定した。得られた結果を表1〜表3に示す。
[潤滑性評価試験(タッピング試験)]
各油剤組成物について、以下に示す条件でタッピング試験を実施した。油剤組成物の加工部位への供給は、MQL装置(TACO製、MCA)を用い、ミスト化の際の差圧を0.20MPa(導入圧:0.42MPa、吐出圧:0.22MPa)、ミスト装置からの吐出圧を0.22MPaとして、2cm/分で加工部位に吹き付けることにより行った。この試験を各油剤組成物について9回ずつ行い、タッピングエネルギーの平均値を求めた。得られた結果を表1〜表3に示す。
(タッピング条件)
工具:ナットタップM8(P=1.25mm)
下穴径:φ6.8mm
ワーク:S25C(t=10mm)
切削速度:9.0m/min。
【0191】
【表1】

【0192】
【表2】

【0193】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】実施例で用いた試験装置の要部を示す側面図である。
【図2】実施例で用いた試験装置の要部を示す上面図である。
【符号の説明】
【0195】
1…テーブル、2…工具(ドリル)、3…軸部、4…ミストコレクター、5…油剤供給ライン、10…被加工物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃における動粘度が0.5〜20mm/sであるエステル油と、100℃における動粘度が20mm/sを超え、且つ平均分子量が5,000〜10,000,000であるエステル系ポリマーと、を含有することを特徴とする極微量油剤供給式切削・研削加工用油剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−124609(P2006−124609A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318251(P2004−318251)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】