説明

楽器収容ケース

【課題】楽器が落下することを抑制でき、かつ、軽量化を図ることができる楽器収容ケースを提供する。
【解決手段】この楽器収容ケース10は、一方向に長い楽器を収容するもので、幅広の上下面21,22と、幅狭の両側面23,24とで囲まれ、両端面25,26が閉塞されて、全体として筒状をなし、上面21及び両側面23,24の長手方向途中部分から一方の端面25近傍に至る部分が切り欠かれて開口部27をなす本体ケース20と、前記本体ケース20の開口部27に適合する形状をなし、前記本体ケース20の上面21の開口部27の、前記端面25から離れた方の縁部に、ヒンジ40を介して回動可能に取付けられた蓋体30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオリンやチェロ等の楽器を、狭い場所でも容易に出し入れすることができる楽器収容ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の楽器は所定のケースに収容されて持ち運びされている。楽器の中でも、弦が張られて一方向に長いバイオリンやチェロ等の楽器は、次のようなケースに収容されることが一般的である。
【0003】
すなわち、楽器の長手方向に沿って伸びる縦長箱状の本体ケースと、該ケースの長手方向に沿った一側辺にヒンジを介して開閉可能に取付けられた蓋体とを有するケースが広く用いられている。そして、本体ケースに対して、蓋体を横方向に開くことにより、本体ケースが開口して楽器を出し入れできるようになっている。
【0004】
上記の横開きのケースとして、例えば、下記特許文献1には、本体ケース(ケース本体)と蓋体とを備え、前記本体ケースは上方に開放する長方形の箱体に形成され、内部に前記弦楽器のボディを固定するボディ用仕切部材と弦楽器のネックを固定するネック用仕切部材を設けた弦楽器用ケースが開示されている。また、本体ケース及び蓋体との合わせ目には、本体ケースに対して蓋体を閉じた状態に保持するための、止め具(施錠装置)が設けられている。そして、前記止め具のロックを解除した後、本体ケースに対して蓋体を横方向に開いて、楽器が出し入れされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−61802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記引用文献1に示すように、楽器を出し入れするケースには、本体ケースに対して蓋体を閉じた状態に保持する止め具が設けられている。しかしながら、この止め具をロックし忘れた状態でケースを持ち上げたり、或いは、止め具のロックが搬送途中で解除されたりした場合、本体ケースに対して蓋体が大きく横開きして、本体ケースから楽器が落下してしまう虞れがあった。
【0007】
更に、上記ケースは、本体ケースに対して蓋体が大きく横開きし、本体ケースの開口部周縁に蓋体の周縁部が当接して閉じる構造となっている。しかし、本体ケース及び蓋体の、開閉して互いに当接する周壁部分は、比較的剛性が確保しにくいため、その部分の肉厚を厚くすることが多く、ケースの重量増加の原因となっていた。
【0008】
したがって、本発明の目的は、楽器が落下することを抑制でき、かつ、軽量化を図ることができる楽器収容ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の楽器収容ケースは、一方向に長い楽器を収容する楽器収容ケースであって、幅広の上下面と、幅狭の両側面とで囲まれ、両端面が閉塞されて、全体として筒状をなし、上面及び両側面の長手方向途中部分から一方の端面近傍に至る部分が切り欠かれて開口部をなす本体ケースと、前記本体ケースの開口部に適合する形状をなし、前記本体ケースの上面の開口部の、前記端面から離れた方の縁部に、ヒンジを介して回動可能に取付けられた蓋体とを備えていることを特徴とする。
【0010】
上記発明によれば、蓋体を開いて、本体ケースの開口部から楽器を出し入れすることができる。そして、蓋体を閉じて止め具を掛け忘れた状態でケースを持ち上げたり、止め具が搬送途中で外れたりしても、両端面が閉塞されていて全体として筒状をなす本体ケースに収容されているので、楽器が開口部から飛び出しにくく、楽器の落下を抑制することができる。
【0011】
また、本体ケースが全体として筒状をなし、本体ケースの上面及び両側面の一部を開口させて蓋体で覆うようにしているので、下ケースと上ケースとを開閉させる従来の楽器収容ケースに比べて、比較的軽量でも剛性を維持しやすい構造となり、軽量化を図ることができる。
【0012】
本発明の楽器収容ケースにおいては、炭素繊維の織布で補強された樹脂で形成されていることが好ましい。この態様によれば、軽量で剛性の高い楽器収容ケースを提供できる。
【0013】
本発明の楽器収容ケースにおいては、前記開口部は、前記本体ケースの上面の長さ方向途中部分と一方の端面近傍とで幅方向に沿って伸びる部分と、前記本体ケースの両側面の高さ方向中間部で長さ方向に伸びる部分と、前記上面の幅方向に伸びる部分の両端と前記両側面の長さ方向に伸びる部分の両端とを結ぶ斜めに傾斜した部分とで囲まれており、該斜めに傾斜した部分は、前記長さ方向に伸びる部分の中央に向けて傾斜していることが好ましい。この態様によれば、本体ケースの開口部をできるだけ広くとると共に、斜めに傾斜した部分によって強度を維持することができる。
【0014】
本発明の楽器収容ケースにおいては、前記楽器が、本体部と、この本体部から延出されたネックと、前記本体部の表側に配置された駒部と、この駒部を介して前記本体部及び前記ネックの表側に張設された弦と、前記本体部のネックと反対側の端部にエンドピンを介して取付けられたあご当てとを有する擦弦楽器からなり、前記本体ケースの前記開口部から離れた端面内周に、前記エンドピン近傍を支持する第1保持部が設けられ、前記本体ケースの、前記蓋体に対向する内面と、前記蓋体の内面とに、前記ネックを挟持する第2保持部が設けられ、前記楽器の塗装面が楽器収容ケース内面に接触する面積が、塗装面全体の10%以下とされていることが好ましい。この態様によれば、楽器を、エンドピン近傍を支持する第1保持部と、ネックを挟持する第2保持部とで保持し、楽器の塗装面がケース内面にできるだけ接触しないようにしたので、塗装面に傷が付いたり、クッション材の付着痕が付いたりする不都合を回避できる。
【0015】
本発明の楽器収容ケースの1つの態様においては、前記第2保持部は、前記蓋体の内面に取付けられた、前記楽器のネック背面側を押える第1押え部材と、前記本体ケースの内面に取付けられ、前記楽器のネック表側の指板が当接する第2押え部材とからなり、同指板が前記本体ケースの内面に対してほぼ平行に支持されるように構成されていることが好ましい。この態様によれば、第1押え部材でネック背面側(塗装されていない部分)を押えると共に、第2押え部材で指板(傷や痕が付きにくい材質からなる部分)を押えることにより、塗装面に触らずに保持することができる。また、指板が本体ケースの内面に対してほぼ平行に支持されるようにすることにより、無駄な空間を少なくして、ケース内に擦弦楽器を効率よく収容できると共に、より安定して保持することができる。
【0016】
本発明の楽器収容ケースの別の態様においては、前記第2保持部は、前記蓋体の内面に取付けられた、前記楽器のネック表面側を押える第1押え部材と、前記本体ケースの内面に取付けられ、前記楽器のネック背面側を支持する第2押え部材とからなり、前記楽器のネック表面側が、前記本体ケースの開口部側に配置されるように構成されていることが好ましい。この態様によれば、第2押え部材でネック背面側が押えられると共に、第1押え部材でネック表面側が押えられて、楽器のネック表面側が、本体ケースの開口部側に配置されるように構成されていることにより、ケースに対する弦の位置を確認しやすくなるので、弦がケース内面等に接触しないように注意しながら、楽器をケース内に出し入れすることができる。
【0017】
本発明の楽器収容ケースにおいては、前記本体ケースの前記蓋体と対向する内面の、前記第1保持部と前記第2保持部との間には、前記擦弦楽器の駒部をケース内面に接触しないように配置させるための凹部が形成されていることが好ましい。この態様によれば、第1保持部及び第2保持部間に、擦弦楽器の駒部をケース内面に接触しないように配置させるための凹部が形成されているので、ケースに擦弦楽器を出し入れするときに、駒部をケース内面に接触しにくくすることができると共に、ケース収容時に、駒部がケース内面に接触しないように保持することができ、駒部を効果的に保護することができる。
【0018】
本発明の楽器収容ケースにおいては、前記本体ケースの下面の前記開口部から離れた端面近傍に、該端面に向けて次第に高くなり、前記第1保持部に至る斜面が設けられていることが好ましい。この態様によれば、ケース内に擦弦楽器をエンドピン側から収容していくときに、同擦弦楽器のエンドピン側が上記斜面により案内されて徐々にケース内方へと移動し、本体部から延出した細いネック側がケース本体内面にほぼ沿って配置されると共に、エンドピン側がネック側よりケース内方側に持ち上げられた状態となり、ケース内に擦弦楽器をバランス良く安定した姿勢で収容保持することができる。
【0019】
本発明の楽器収容ケースにおいては、前記蓋体を閉めるとき、前記第1押え部材が、前記楽器の本体部のエンドピンと反対側の縁部に背面側から当接して、該本体部を前記第1保持部に向けて押さえ付けるように構成されていることが好ましい。この態様によれば、楽器の本体部のエンドピン近傍が第1保持部で支持され、エンドピンと反対側の縁部が、第1押え部材で第1保持部に向けて押さえ付けられて保持されるようになっているので、楽器の本体部両端がしっかりと支持されて、ケース内において楽器をより安定して保持させることができる。
【0020】
本発明の楽器収容ケースにおいては、前記本体ケースの前記蓋体と対向する内面の両側に、弓の両側位置を規制するガイド壁部と、弓を前記内面に着脱可能に固定する固定具とからなる弓保持部が設けられ、前記ガイド壁部の少なくとも1つは、内部が空洞になっていて、そこに部品が収納できるように構成されていることが好ましい。この態様によれば、弓保持部により弓を保持することができると共に、ガイド壁部内部の空洞に、弦等の部品を収納することができるので、ケースの使用者の利便性を向上させることができる。
【0021】
本発明の楽器収容ケースにおいては、前記本体ケースの一方の側面中央部に設けられた、楽器収容ケースを横向きにして把持するための取っ手と、長手方向に離れた、本体ケースの2箇所、又は本体ケースと蓋体との2箇所に両端を固定された、本体ケースの長手方向を上下にして背負うための背負いバンドとを有していることが好ましい。この態様によれば、本体ケースの取っ手を持って楽器収容ケースを横向きにして保持できるだけでなく、背負いバンドを肩に掛けることによって楽器収容ケースを縦向きにして保持することもできる。また、楽器収容ケースを縦向きにして保持した場合には、ケース本体の一端部が上方に向くので、雨等が楽器収容ケース内部に入りにくくすることができる。
【0022】
本発明の楽器収容ケースにおいては、前記本体ケースの長手方向の端面の角部に、弾性樹脂からなる保護層が形成されていることが好ましい。この態様によれば、楽器収容ケースを落として、衝撃力が加わった場合等に、それを緩和してケースの破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蓋体を閉じて止め具を掛け忘れた状態でケースを持ち上げたり、止め具が搬送途中で外れたりしても、両端面が閉塞されていて全体として筒状をなす本体ケースに収容されているので、楽器が開口部から飛び出しにくく、楽器の落下を抑制することができる。また、本体ケースが全体として筒状をなし、本体ケースの上面及び両側面の一部を開口させて蓋体で覆うようにしているので、下ケースと上ケースとを開閉させる従来の楽器収容ケースに比べて、比較的軽量でも剛性を維持しやすい構造となり、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の楽器収容ケースの一実施形態を示す斜視図である、
【図2】同楽器収容ケースの透視斜視図である。
【図3】同楽器収容ケースの開口部を閉じた状態での斜視図である。
【図4】同楽器収容ケースの合わせ目近傍における部分拡大説明図である。
【図5】同楽器収容ケースにおいて、蓋体をほぼ180°水平に回動して開口部を完全に開き、楽器を収容した状態での側面説明図である。
【図6】同楽器収容ケースにおいて、ケース内から楽器を取り出す際の状態を示す側面説明図である。
【図7】図6の状態から楽器を更に引き出した状態での側面説明図である。
【図8】弓を取り出す際の状態を示す側面説明図である。
【図9】同楽器収容ケースに収容される楽器の一例を示す斜視図である。
【図10】同楽器収容ケースの持ち運び時の一例を示す説明図である。
【図11】本発明の楽器収容ケースの他の実施形態を示す斜視図である。
【図12】同楽器収容ケース内に楽器を収容した状態での側面説明図である。
【図13】同楽器収容ケースにおいて、ケース内から楽器を取り出す際の状態を示す側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜10を参照して、本発明の楽器収容ケースの一実施形態について説明する。
【0026】
この楽器収容ケースは、一方向に長い楽器を収容するもので、その長手方向を上下にして設置した状態で、楽器を出し入れできるようにしたものである。図1,2に示すように、この楽器収容ケース10は、開口部27を有する本体ケース20と、該本体ケース20にヒンジ40を介して回動可能に取付けられ、開口部27を開閉可能に覆う蓋体30とを備えている。
【0027】
また、この楽器収容ケース10に収容される一方向に長い楽器としては、例えば、バイオリン、チェロ、コントラバス等のいわゆる擦弦楽器や、ギター、琴、琵琶等のいわゆる撥弦楽器が挙げられる。この中でも図9に示すような、本体部2と、該本体部2の長手方向一側から延出されたネック3と、該ネック3の表面側及び本体部2の表面側に亘って所定長さで配設された指板4と、本体部2の表面側のほぼ中央に取付けられた駒部8と、該駒部8に支持されると共に、前記指板4の長手方向に沿って張設された複数の弦4aと、本体部2のネック3と反対側の端部にエンドピン5を介して取付けられたあご当て6とを有する、擦弦楽器であることが好ましい。また、擦弦楽器である楽器1は、スティック7aと、該スティック7aの長手方向に沿って平行に張設された弓毛7bとからなる弓7(図2,8参照)を備えている。
【0028】
まず、図1〜3及び図5を参照して本体ケース20について説明する。この本体ケース20は、所定長さで長く伸びる幅広の上下面21,22(図5参照)と、この上下面21,22の端部に直交して連結された幅狭の両側面23,24(図1,3参照)とで囲まれると共に、それらの長手方向両端に両端面25,26(図5参照)が連結されていて、全体として筒状をなしている。
【0029】
また、本体ケース20の上面21及び両側面23,24の長手方向途中部分から、一方の端面25の近傍に至る部分が切り欠かれて、開口部27が形成されている。この開口部27は、本体ケース20の上面21の長さ方向途中部分と一方の端面25近傍とで幅方向に沿って伸びる幅方向部分21a,21bと、本体ケース20の両側面23,24の高さ方向中間部で長さ方向に伸びる長さ方向部分23c,24cと、上面21の幅方向部分21a,21bの両端と両側面23,24の長さ方向部分23c,24cの両端とを結ぶ斜めに傾斜した傾斜部分23a,24a,23b,24bとで囲まれており、傾斜部分23a,24a,23b,24bは、対応する長さ方向部分23c,24cの中央に向けて傾斜している。
【0030】
このような開口部27を形成することにより、本体ケース20の開口部27をできるだけ広くして、楽器収容ケース10に対する楽器1の出し入れをスムーズに行うことができると共に、本体ケース20の強度を維持することができる。
【0031】
上記のように、この本体ケース20は、幅広の上下面21,22及びこれに直交する幅狭の両側面23,24を有する全体としてフラットな形状をなしているので、本体ケース20の剛性を損なわずに、開口部27の開口幅をできるだけ広くとって、楽器1の出し入れをしやすくすることができる。なお、全体としてフラットな形状をなしているとは、端面25又は26側から見て一方向に細長く伸びて平べったい形状をなすことを意味しており、例えば、両端面25,26を、横長の四角形状や、長径及び短径を有する楕円形状にし、それに対応して上下面及び両側面を形成した形状等を意味している。
【0032】
また、図8に示すように、本体ケース20の下面22に対する傾斜部分23a,24aの角度θ1は、0〜90°であることが好ましく、30〜90°であることがより好ましい。同じく、本体ケース20の下面22に対する傾斜部分23b,24bの角度θ2は、0〜90°であることが好ましく、30〜90°であることがより好ましい。上記角度θ1,θ2が直角に近いほど開口部27が大きくなるので、楽器を取出しやすくなるが、本体ケース20の強度が低下する傾向がある。逆に上記角度θ1,θ2が小さいほど、本体ケース20の強度は向上するが、楽器を取出しにくくなる。なお、傾斜部分23a,24a,23b,24bは、円弧状等の曲線をなしていてもよい。
【0033】
更に、この本体ケース20は、その長手方向両端面から見たときに、幅広の下面22の両側角部22d,22dが、所定角度で面取りされた形状となっている(図3参照)。その結果、本体ケース20全体を細くスマートな形状として、軽量化及びコンパクト化を図ることができる。一方、本体ケース20aの上面21の両側角部21d,21d、及び、後述する蓋体30の両側角部31d,31dは、丸みを帯びた円弧状をなしている。
【0034】
図1に示すように、本体ケース20の長手方向の端面角部には、ウレタン樹脂や、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の弾性樹脂からなる保護層70が形成されている。ここでは、本体ケース20の長手方向の両端面25,26の外周に、弾性樹脂からなる枠体71が装着され、この角部から各端面25,26の中央に向けて保護層70が延設されて、端面25,26の各角部が保護されるようになっている。このような保護層70を設けることにより、楽器収容ケース10を落下したり、何かがぶつかる等したりして、衝撃力が加わった場合に、それを緩和して楽器収容ケース10の破損を防止することができる。
【0035】
更に、本体ケース20の一方の側面23の長手方向中央部には、楽器収容ケース10を横向きにして把持するための取っ手44が取付けられている。それと共に、本体ケース20の長手方向を上下にして背負うための背負いバンド45の一端が、本体ケース20の側面23の端面26近傍に取付けられ、他端が、蓋体30の、上記一端の取付位置に対して斜めに対向する位置に取付けられている(図3参照)。なお、背負いバンド45は、例えば、下面22の長手方向両端に斜めに取付けてもよく、特に限定されるものではない。また、図1に示すように、本体ケース20の一方の端面25の中央には、引出し式の取っ手25aが取付けられており、楽器収容ケース10を縦向きでも把持可能となっている。
【0036】
一方、この実施形態における蓋体30は、本体ケース20の開口部27に適合する形状をなしている。この蓋体30は、本体ケース20の上面21を延長した面を形成する正面壁31と、本体ケース20の両側面23,24を延長した面を形成する両側壁33,34とを有しており、両側壁33,34は、正面壁31の幅方向両側縁から、丸みを帯びた両側角部31d、31dを介して、正面壁31に対して直交するように折り曲げられた形状をなしている。両側壁33,34の長さ方向の両端部は、前記本体ケース20の各傾斜部分23a,24a,23b,24bに整合するように、斜めに切欠かれた形状をなしている。
【0037】
そして、図3に示すように、この蓋体30は、蓋体30を回動させて開口部27を閉じたときに、正面壁31が前記本体ケース20の上面21に整合して段差のない平滑な同一面をなし、同じく両側壁33,34が同本体ケース20の両側面23,24に整合して段差のない平滑な同一面をなすようになっている。
【0038】
また、蓋体30の一方の端縁部と、本体ケース20の開口部27の端面25から離れた方の縁部(端面26寄りの縁部)とに、所定間隔を設けて2組のヒンジ40,40がそれぞれ固設されており、このヒンジ40を介して本体ケース20に対して蓋体30が上下方向に回動可能に取付けられている。なお、ヒンジ40は、蓋体30を下方に回動させて開口部27を閉じたときに、外部から見えないように、本体ケース20及び蓋体30の裏側に配置してもよく、その構造も特に限定されるものではない。
【0039】
そして、蓋体30を下方に回動させると、本体ケース20の開口部27の各傾斜部分23a,24a,23b,24bに、蓋体30の両側壁33,34の斜めに切欠かれた両端部が当接し、同じく本体ケース20の幅方向部分21a,21b及び長さ方向部分23c,24cに、蓋体30の対応する端部がそれぞれ当接して、開口部27が閉塞されるようになっている。
【0040】
上記のように本体ケース20の開口部27が蓋体30により閉塞されるのであるが、このときの本体ケース20の各端部と蓋体30の各端部とが互いに当接して、合わせ目41をなしている。
【0041】
また、上記合わせ目41には次の部材が装着されていることが好ましい。図4には、本体ケース20と蓋体30との合わせ目41の断面図が示されている。同図に示すように、本体ケース20の両側面23,24の長さ方向部分23c,24c、及び、蓋体30の両側壁33,34の対応する端部には、エラストマーやゴム等からなる弾性部材41a,41bが装着されている。弾性部材41aの当接面は凹んだ形状をなし、弾性部材41bの当接面は、弾性部材41aの凹み部分に適合する凸状をなしている。このような弾性部材41a、41bが、前記合わせ目41の全周に形成されている。
【0042】
したがって、蓋体30を下方に回動させると、弾性部材41aの凹み部分に弾性部材41bの凸部分が弾性的に嵌合し、合わせ目41が密接した状態で、本体ケース20の開口部27が閉塞されるようになっている(図3参照)。このように、2つの弾性部材41a,41bにより合わせ目41が密接した状態で、蓋体30が閉じられるので、開口部27の密閉性をより向上させることができ、外部からの水分等の侵入を防止できるようになっている。なお、弾性部材41a,41bの凹凸は逆であってよく、更に弾性部材の形状は図4に示すものに限定されるものでもなく、他の構造を採用することもできる。
【0043】
また、上記本体ケース20及び蓋体30には、蓋体30を回動させて開口部27を閉じたときに、蓋体30を閉じた状態にロックするための止め具43が設けられている。この実施形態では、楽器収容ケース10の両側面23,24に沿った合わせ目41,41の、端面25寄りの位置に止め具43,43がそれぞれ取付けられている(図1,3参照)。
【0044】
上記本体ケース20及び蓋体30は、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ナイロン、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂等で形成することができる。この場合、補強繊維で強化された樹脂で形成することが好ましく、炭素繊維からなる織布で補強された樹脂で形成することがより好ましい。上記のような繊維強化樹脂を用いることにより、軽量で剛性の高い楽器収容ケース10を提供することができる。
【0045】
上記構造をなした楽器収容ケース10には、図8に示すような擦弦楽器である楽器1を収容できるようになっている。このような楽器1には、音響特性を改善したり、湿気から保護したりすることを目的として、ニスやポリウレタン等の塗料が多重に塗られている。このような塗料は、完全に乾くのに少なくとも数ヶ月は必要とされており、それまでの間、塗装面に他の部材が接触しないように収容することが望まれる。
【0046】
上記問題を解決するため、この実施形態の楽器収容ケース10においては、次のような内部構造を採用している。以下、この楽器収容ケース10の内部構造について説明する。
【0047】
図2及び図5〜8に示すように、本体ケース20の端面26側の内面であって、幅広の上下面21,22の幅方向中央には、楽器1のエンドピン5近傍を支持する第1保持部50が設けられている。
【0048】
本体ケース20の下面22における端面26に近接した部分には、該端面26に向けて次第に高くなり、第1保持部50の下方部分50aに至る斜面50bが設けられている。また、第1保持部50の上面21側の端部から、リブ状の係合部50cが突設されており、楽器1のエンドピン5の裏側に係合する部分となっている(図5参照)。
【0049】
図2及び図5に示すように、本体ケース20の蓋体30と対向する内面と、蓋体30の内面とに、楽器1のネック3を挟持する第2保持部52が設けられている。この第2保持部52は、蓋体30の内面に取付けられた、楽器1のネック背面側を押える第1押え部材53と、本体ケース20の内面に取付けられ、楽器1のネック表側の指板4が当接する第2押え部材54とからなり、指板4が本体ケース20の内面に対してほぼ平行に支持されるように構成されている。
【0050】
図1に示すように、前記第1押え部材53は、その基部が蓋体30の両側壁33,34に固定されていると共に、ケース内方に向けて所定高さで突出し、その突出端部にネック形状に対応した保持凹部53aが形成され、同保持凹部53aの両側は、円弧状に丸みを帯びた肩部53b,53bをなしている。この第1押え部材53は、蓋体30を閉めるときに、楽器1の本体部2のエンドピン5と反対側の縁部に背面側から当接して、該本体部2を第1保持部50に向けて押さえ付けるようにするものである。
【0051】
一方、第2押え部材54は、図2に示すように、本体ケース20の下面22の、前記蓋体30の第1押え部材53と対応する位置に設けられている。第2押え部材54は、下面22の幅方向中央に配置されており、前記第1保持部50と同一幅の板状をなして長さ方向に伸びている。また、第2押え部材54の端面26側は、端面26に向けて次第に低くなるテーパ状をなしており、それによって、本体ケース20の下面22の、第2押え部材54と第1保持部50との間に、凹部56が形成されている。この凹部56により、ケースに擦弦楽器を出し入れするとき、或いは、ケース内に擦弦楽器を収容保持したときに、その駒部8がケース内面に接触しないようになっている(図2,5参照)。
【0052】
更に、第2押え部材54上面の凹部56側の両側縁部には、一対のネック保持部55,55が突設されている(図2参照)。これら一対のネック保持部55,55が、ケース収容時における楽器1のネック3の両側部を保持して、ネック3の横ずれ等を防止できるようになっている。なお、各ネック保持部55の内面はテーパ状をなし、一対のネック保持部55,55内にネック3を受け入れやすくなっている。
【0053】
また、図2に示すように、本体ケース20の下面22内面の両側部には、楽器1の付属品である弓7の両側位置を規制するガイド壁部60が取付けられており、このガイド壁部60の内側が弓7を収容する収容部48をなしている。各ガイド壁部60は、内部が空洞61となった角柱状をなしており、前記第1保持部50から第2保持部52に至るまで伸びている。各ガイド壁部60の第1保持部50側の端部と、第1保持部50との間には、弓支持部62,62が配置されている。
【0054】
また、板状の第2押え部材54の、本体ケース20の端面25近傍の両側には、ケース内方側に向けて開口した凹部を有する弓支持部63,63が取付けられている。これらの弓支持部63,63よりもケース奥方(端面26側)には、弓7をケース内に着脱可能に固定するための固定具49が取付けられている。図2に示すように、この固定具49は、本体ケース20の下面22に固設された板状の基部49aと、該基部49aに対して回転可能に取付けられた板状の回転引掛部49bとからなる。そして、常時は基部49aに対して回転引掛部49bを同じ向きに回転させておき、収容部48に収容された弓7を保持する際には、弓7のスティック7aと弓毛7bとの間に回転引掛部49bを挿入した後、同回転引掛部49bを基部49aに対して90°回転させることにより、弓7を保持固定できるようになっている(図2参照)。この固定具49及び上記ガイド壁部60により、本発明における弓保持部が構成されている。
【0055】
そして、楽器1は、その底部が第1保持部50に支持されると共に、ネック3が第1押え部材53及び第2押え部材54からなる第2保持部52により挟持され、楽器1の塗装面が楽器収容ケース10の内面に接触する面積が、塗装面全体の好ましくは10%以下、より好ましくは3%以下となるように、楽器収容ケース10内に楽器1が収容保持されるようになっている(図5参照)。また、各保持部50,52は、発泡ポリウレタン等の柔軟でクッション性を有する材料で形成されている。
【0056】
次に、上記構造からなる本発明の楽器収容ケース10の使用方法について説明する。
【0057】
楽器1を楽器収容ケース10内に収容する際には、蓋体30を上方に回動させて、開口部27を開く(図1参照)。
【0058】
そして、図2に示すように、弓保持部内に弓7を挿入して、その下端部を弓支持部62に突き当たるまで挿入すると共に、弓7のスティック7aの上端部を弓支持部63の凹部に嵌入し、その後、固定具49の回転引掛部49bを基部49aに対して90°回転させることにより、弓保持部内に弓7が保持される。このように、弓保持部により弓7を保持することができる共に、弓保持部を構成するガイド壁部60の空洞61内に、弓7の予備の弦等の部品を収容することができるので、ケース使用者の利便性を向上させることができる。
【0059】
その後、本体ケース20内に楽器1を、その背面を開口部側に向けて、その本体部2側から開口部27に挿入していく。すると、第1保持部50の手前に設けた斜面50bにより、楽器1のエンドピン5側が案内されて、徐々にケース内方へと移動していき、第1保持部50にエンドピン5が当接するまで押し込むと、図5に示すように、斜面50bに沿って楽器1のエンドピン5側が持ち上げられた状態で、エンドピン5近傍が第1保持部50に支持される。それと共に、楽器1のネック3を、第2押え部材54上の一対のネック保持部55,55内に挿入して、同楽器1の指板4を板状の第2押え部材54に当接させる。
【0060】
このように、この実施形態においては、上記のような斜面50bを設けたことにより、本体部2から延出した細いネック3側がケース本体内面にほぼ沿って配置されると共に、エンドピン5側がネック3側よりケース内方側に持ち上げられた状態となり、ケース内に楽器1をバランス良く安定した姿勢で収容保持することができる。また、上記状態では、リブ状の係合部50cが、楽器1のエンドピン5の裏側に係合して、楽器1の浮き上がりが防止されるようになっている(図5参照)。
【0061】
次いで、蓋体30を下方に回動すると、第1押え部材53の保持凹部53a内に、楽器1のネック3が入り込むと共に、同第1押え部材53の両肩部53b,53bが、楽器1の本体部2の、エンドピン5と反対側の縁部に背面側から当接して、本体部2が第1保持部50に向けて押し込まれて、第1押え部材53及び第2押え部材54によりネック3が挟持された状態で、本体ケース20の開口部27が閉塞されて、ケース内に楽器1が収容保持される(図1参照)。このように、エンドピン5と反対側の縁部が、第1押え部材53で第1保持部50に向けて押されて挿入されるようになっているので、ケース10内に楽器1を容易かつ確実に挿入することができる。
【0062】
こうして蓋体30を閉じることにより、本体ケース20の開口部27内周に、蓋体30の外周が、弾性部材41a,41bを介して当接し、開口部27が閉塞される(図2参照)。このとき、本体ケース20及び蓋体30にそれぞれ装着された弾性部材41a,41b(図4参照)が互いに嵌合し、合わせ目41がシールされる。
【0063】
また、この実施形態においては、楽器1の塗装面が楽器収容ケース10内面に接触する面積が、塗装面全体の10%以下とされているので、第1保持部50及び第2保持部52で楽器1を保持したときに、楽器1の塗装面がケース内面にできるだけ接触しないようにすることができ、塗装面に傷が付いたり、クッション材の付着痕が付いたりする不都合を回避することができる。
【0064】
更に、前記第2保持部52は、ネック背面側を押える第1押え部材53と、ネック3表側の指板4が当接する第2押え部材54とからなり、該指板4が本体ケース20の内面に対してほぼ平行に支持されるように構成されているので、第1押え部材53でネック3の背面部(塗装されていない部分)を押えると共に、第2押え部材54で指板4(傷や痕が付きにくい材質からなる部分)を押えることにより、塗装面に触らずに保持することができる。また、指板4が本体ケース20の内面に対してほぼ平行に支持されるようにすることにより、無駄な空間を少なくして、楽器収容ケース10内に楽器1を効率よく収容できると共に、より安定して保持することができる。
【0065】
図5に示すように、ケース内に楽器1が収容保持された状態では、楽器1のネック3背面側が第1押え部材53により押えられ、ネック表側の指板4が第2押え部材54に当接するので、ネック表側に張設された弦4aの表側が、第2押え部材54に弾性的に当接するようになっている。そのため、例えば、ケース外部から衝撃や振動等が作用しても、第2押え部材54に弾性的に当接した弦4aの弾性力によって、それらが吸収されるので、楽器1の本体部2等に悪影響を与えることを最大限抑制することができる。
【0066】
また、この実施形態では、第1保持部50及び第2保持部52の間に、楽器1の駒部8をケース内面に接触しないように配置させるための凹部56が形成されていることにより、ケース内に楽器1を収容保持した状態では、凹部56内に駒部8が位置することによって、駒部8をケース内面に接触しないように保持することができる(図5参照)。更に、この凹部56を設けたことにより、楽器収容ケース10aから楽器1を出し入れするときにも、駒部8をケース内面に接触しにくくすることができる。このように、凹部56を設けたことにより、ケース内に楽器1を収容したときや、ケース内に楽器1を出し入れするときに、駒部8がケース内部に強く接触することを防止して、駒部8を効果的に保護することができる。
【0067】
以上のように、蓋体30を下方に回動させて、開口部27を閉じた後、止め具43,43により蓋体30を閉じた状態にロックする。その結果、本体ケース20に対して蓋体30が開かないように保持されるので、取っ手44を把持して、楽器収容ケース10を横向きにした状態で持ち運ぶことができる。或いは、図10に示すように、背負いバンド45をたすき掛けのように肩に引き掛けて、楽器収容ケース10の長手方向を上下にして背負った状態で持ち運んだりすることができる。
【0068】
このように、この楽器収容ケース10では、本体ケース20の取っ手44を持って、楽器収容ケース10を横向きにして保持できるだけでなく、背負いバンド45を肩に掛けることによって、楽器収容ケース10を縦向きにして保持することもでき、2つの持ち運び方法を適宜用いることができるので、使用者の利便性を向上させることができる。また、楽器収容ケース10を縦向きにして保持した場合には、蓋体30の一方の端面25が上方に向くので、雨等が楽器収容ケース内部に入りにくくすることができる。
【0069】
そして、楽器収容ケース10から楽器1を取り出す際には、本体ケース20を所定箇所に配置する。次いで、前記止め具43のロックを解除し、蓋体30を上方に回動させて縦方向に開く。その後、楽器1のネック3を把持し、楽器1を斜め上方に持ち上げるようにして、開口部27から楽器1を引き出すことにより、楽器1をケース内から取り出すことができる(図6,7参照)。そして、固定具49の回転引掛部49bを基部49aに対して回動することにより、弓7に対するロックを解除して、弓支持部63からスティック7aを抜き出し、開口部27から弓7を取り出すことができる(図8参照)。
【0070】
そして、この楽器収容ケース10においては、蓋体30を閉じて止め具43を掛け忘れた状態で持ち上げたり、止め具43が搬送途中で外れたりしても、両端面が閉塞されていて全体として筒状をなす本体ケース20に収容されているので、楽器1が開口部27から飛び出しにくく、楽器1の落下を抑制することができる。また、本体ケース20が全体として筒状をなし、本体ケース20の上面21及び両側面23,24の一部を開口させて、その開口部27を蓋体30で覆うようにしているので、下ケースと上ケースとを開閉させる従来の楽器収容ケースに比べて、比較的軽量でも剛性を維持しやすい構造となり、軽量化を図ることができる。
【0071】
図11〜13には、本発明の楽器収容ケースの他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0072】
この実施形態の楽器収容ケース10aは、楽器1のネック表側に張設された弦4aが、開口部27側に配置されるように構成されている点で、弦4aが本体ケース内面側に配置される前記実施形態と異なっている。
【0073】
図11に示すように、この実施形態における楽器1のネック3を挟持する第2保持部57は、蓋体30の内面に取付けられ、楽器1のネック表側を押える第1押え部材58と、本体ケース20の内面に取付けられ、楽器1のネック背面側を支持する第2押え部材59とからなり、楽器1のネック表側の弦4aが、本体ケース20の開口部27側に配置されるように構成されている。
【0074】
前記第1押え部材58は板状をなしており、蓋体30の正面壁31の内面から、ケース内方に向けて所定高さで突出している。一方、前記第2押え部材59は、本体ケース20の下面22内面の第1押え部材58に整合する位置から、蓋体30で開口部27を閉じたときに、ケース内方に向けて第1押え部材58に突き当たる高さで突出した幅広の柱状をなしている。この第2押え部材59の突出端面には、楽器1のネック形状に対応した保持凹部59aが形成されている。なお、第1保持部50は、前記実施形態のものよりも、ケース内方側に向けて高く突出した形状をなしている。
【0075】
そして、蓋体30を上方に回動した状態で、楽器1のネック側を開口部側に向けて、本体部2を開口部27に挿入し、エンドピン5を第1保持部50に支持させると共に、ネック3を第2押え部材59の保持凹部59a内に嵌入する(図12,13参照)。その状態で、蓋体30を下方に回動して開口部27を閉じると、前記第2押え部材59に第1押え部材58に当接して、両者によりネック3が挟持されると共に、第1保持部50によりエンドピン5近傍が支持されて、ケース内に楽器1を収容することができる。一方、ケース内から楽器1を取り出す際には、蓋体30を上方に回動して開口部27を開き、ネック3を把持して、開口部27から楽器1を引き出すことにより(図13参照)、楽器1をケース内から取り出すことができる。
【0076】
この態様によれば、第2押え部材59でネック背面側が押えられると共に、第1押え部材58でネック正面側が押えられて、楽器1のネック表側の弦4aを、本体ケース20の開口部27側に配置されるように構成されている。その結果、ケースに対する弦4aの位置を確認しやすくなるので、弦4aがケース内面等に接触しないように注意しながら、楽器1をケース内に出し入れすることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 楽器
2 本体部
3 ネック
4 指板
4a 弦
5 エンドピン
7 弓
7a スティック
7b 弓毛
8 駒部
10,10a 楽器収容ケース
20,20a 本体ケース
21 上面
21a,21b 幅方向部分
21d,21d 両側角部
22 下面
22d,22d 両側角部
23 (一方の)側面
23a,23b 傾斜部分
23c 長さ方向部分
24 (他方の)側面
24a,24b 傾斜部分
24c 長さ方向部分
25 (一方の)端面
25a 取っ手
26 (他方の)端面
27 開口部
30 蓋体
31 正面壁
31d,31d 両側角部
33 (一方の)側壁
34 (他方の)側壁
40 ヒンジ
41 合わせ目
41a,41b 弾性部材
43 止め具
44 取っ手
45 背負いバンド
48 収容部
49 固定具
49a 基部
49b 回転引掛部
50 第1保持部
50a 下方部分
50b 斜面
50c 係合部
52 第2保持部
53 第1押え部材
53a 凹部
53b,53b 肩部
54 第2押え部材
54a 基端部
55,55 ネック保持部
56 凹部
57 第2保持部
58 第1押え部材
59 第2押え部材
59a 保持凹部
60 ガイド壁部
61 空洞
62 弓支持部
63 弓支持部
70 保護層
71 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長い楽器を収容する楽器収容ケースであって、
幅広の上下面と、幅狭の両側面とで囲まれ、両端面が閉塞されて、全体として筒状をなし、上面及び両側面の長手方向途中部分から一方の端面近傍に至る部分が切り欠かれて開口部をなす本体ケースと、
前記本体ケースの開口部に適合する形状をなし、前記本体ケースの上面の開口部の、前記端面から離れた方の縁部に、ヒンジを介して回動可能に取付けられた蓋体とを備えていることを特徴とする楽器収容ケース。
【請求項2】
炭素繊維の織布で補強された樹脂で形成されている請求項1に記載の楽器収容ケース。
【請求項3】
前記開口部は、前記本体ケースの上面の長さ方向途中部分と一方の端面近傍とで幅方向に沿って伸びる部分と、前記本体ケースの両側面の高さ方向中間部で長さ方向に伸びる部分と、前記上面の幅方向に伸びる部分の両端と前記両側面の長さ方向に伸びる部分の両端とを結ぶ斜めに傾斜した部分とで囲まれており、該斜めに傾斜した部分は、前記長さ方向に伸びる部分の中央に向けて傾斜している請求項1又は2記載の楽器収容ケース。
【請求項4】
前記楽器が、本体部と、この本体部から延出されたネックと、前記本体部の表側に配置された駒部と、この駒部を介して前記本体部及び前記ネックの表側に張設された弦と、前記本体部のネックと反対側の端部にエンドピンを介して取付けられたあご当てとを有する擦弦楽器からなり、
前記本体ケースの前記開口部から離れた端面内周に、前記エンドピン近傍を支持する第1保持部が設けられ、前記本体ケースの、前記蓋体に対向する内面と、前記蓋体の内面とに、前記ネックを挟持する第2保持部が設けられ、前記楽器の塗装面が楽器収容ケース内面に接触する面積が、塗装面全体の10%以下とされている請求項1〜3のいずれか1つに記載の楽器収容ケース。
【請求項5】
前記第2保持部は、前記蓋体の内面に取付けられた、前記楽器のネック背面側を押える第1押え部材と、前記本体ケースの内面に取付けられ、前記楽器のネック表側の指板が当接する第2押え部材とからなり、同指板が前記本体ケースの内面に対してほぼ平行に支持されるように構成されている請求項4記載の楽器収容ケース。
【請求項6】
前記第2保持部は、前記蓋体の内面に取付けられた、前記楽器のネック表面側を押える第1押え部材と、前記本体ケースの内面に取付けられ、前記楽器のネック背面側を支持する第2押え部材とからなり、前記楽器のネック表面側が、前記本体ケースの開口部側に配置されるように構成されている請求項4記載の楽器収容ケース。
【請求項7】
前記本体ケースの前記蓋体と対向する内面の、前記第1保持部と前記第2保持部との間には、前記擦弦楽器の駒部をケース内面に接触しないように配置させるための凹部が形成されている請求項5記載の楽器収容ケース。
【請求項8】
前記本体ケースの下面の前記開口部から離れた端面近傍に、該端面に向けて次第に高くなり、前記第1保持部に至る斜面が設けられている請求項4〜7のいずれか1つに記載の楽器収容ケース。
【請求項9】
前記蓋体を閉めるとき、前記第1押え部材が、前記楽器の本体部のエンドピンと反対側の縁部に背面側から当接して、該本体部を前記第1保持部に向けて押さえ付けるように構成されている請求項5〜7のいずれか1つに記載の楽器収容ケース。
【請求項10】
前記本体ケースの前記蓋体と対向する内面の両側に、弓の両側位置を規制するガイド壁部と、弓を前記内面に着脱可能に固定する固定具とからなる弓保持部が設けられ、前記ガイド壁部の少なくとも1つは、内部が空洞になっていて、そこに部品が収納できるように構成されている請求項1〜9のいずれか1つに記載の楽器収容ケース。
【請求項11】
前記本体ケースの一方の側面中央部に設けられた、楽器収容ケースを横向きにして把持するための取っ手と、本体ケースの長手方向に離れた2箇所、又は本体ケースと蓋体との長手方向に離れた2箇所に両端を固定された、本体ケースの長手方向を上下にして背負うための背負いバンドとを有している請求項1〜10のいずれか1つに記載の楽器収容ケース。
【請求項12】
前記本体ケースの長手方向の端面の角部に、弾性樹脂からなる保護層が形成されている請求項1〜11のいずれか1つに記載の楽器収容ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−191527(P2011−191527A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57656(P2010−57656)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000105899)サカイ・コンポジット株式会社 (11)
【Fターム(参考)】