説明

楽曲データおよび端末装置

【課題】 小さなデータサイズで、高品質の音声を記憶、配信可能な楽曲データを再生する楽曲再生システムを提供する。
【解決手段】 本発明は、楽曲を再生する機能およびネットワークに接続する機能を有する端末装置に、楽曲の再生を指示する楽曲データであって、データ内の所定の位置に、楽曲の少なくとも一部分に対応する楽曲素片データの前記ネットワーク内の所在を示す所在情報が記載された構造を有し、前記所在情報を読み込んだ端末装置に、前記所在情報により示される所在より前記楽曲素片データを取得させることを特徴とする楽曲データを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置において楽曲データから楽曲を再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯端末において、発音用シーケンスデータあるいはADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation)データのような発音データ等、様々なデータ形式(フォーマット)の発音データを再生する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。このようなデータ形式で記述された楽曲データを携帯電話機等の携帯端末にあらかじめ記憶、あるいは楽曲データ配信サーバ等に通信回線を介して楽曲データをダウンロードして記憶するようにして、これを用いて、携帯電話機等の携帯端末に、いわゆる着信メロディ等の楽曲を再生させることができる。
【特許文献1】特開2002−099541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで上述の形式の発音データを携帯端末で再生させようとする際には、携帯端末にあらかじめ再生させようとする発音データが記憶されている必要がある。ここで、この発音データのデータサイズが大きい場合には大きいサイズのままで記憶あるいはダウンロードされることになる。したがって、メモリの記憶容量やデータ通信の転送速度等のリソースが乏しい携帯端末においては、このような発音データは多くのリソースを消費し、場合によってはリソースが不足してしまうという問題があった。また、このようにリソースが制限された環境においては、転送できるデータサイズに制限があるため高品質の楽曲を再生させることは難しく、着信メロディ等のコンテンツ提供者が、再生される楽曲の高品質化を望むユーザの要求に応えられないという問題もあった。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、小さなデータサイズで、高品質の楽曲を記憶、配信可能な楽曲データを再生する楽曲再生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の課題を解決するため、本発明は、楽曲を再生する機能およびネットワークに接続する機能を有する端末装置に、楽曲の再生を指示する楽曲データであって、データ内の所定の位置に、楽曲の少なくとも一部分に対応する楽曲素片データの前記ネットワーク内の所在を示す所在情報が記載された構造を有する楽曲データを提供する。
好ましい態様において、前記楽曲データは複数チャンネルからなる構造を有し、前記データ内の所定の位置は、前記楽曲素片を再生すべきチャンネルと再生すべき時間に対応した位置である。
別の好ましい態様において、前記所在情報は、再生すべき楽曲素片を記憶するサーバのサーバ名とその楽曲素片のファイル名とを含む。
【0005】
また、本発明は、上記の楽曲データを記憶する第1の記憶手段と、前記所在情報により示される楽曲素片データの少なくとも1部分を、前記ネットワークを介して取得する通信手段と、前記通信手段により取得した楽曲素片データを記憶する第2の記憶手段と、前記第1の記憶手段に記憶されている楽曲データおよび前記第2の記憶手段に記憶されている楽曲素片データに従って楽曲を再生する楽曲再生手段とを有する端末装置を提供する。
好ましい態様において、この端末装置は、前記第2の記憶手段の空き容量を監視する監視手段と、前記監視手段により監視される空き容量があらかじめ決められた条件を満足したときに前記楽曲素片データの取得を指示するダウンロード要求を生成するダウンロード要求生成手段とをさらに有する。
別の好ましい態様において、前記通信手段は、前記楽曲データを送信または受信する機能を有する。
以上の態様において、前記端末装置は携帯可能な端末装置であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、楽曲の一部分の楽曲素片データがネットワークを介して取得されるので、記憶容量の限られた端末においても高品質の楽曲(音声)を再生することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
<1.構成>
図1は、本実施形態に係る楽曲配信システム1の構成を示すブロック図である。配信サーバ10は、mp3データ等のストリームオーディオデータを記録したデータベースDB1を有する。配信サーバ10はインターネット等のネットワーク70を介して他の機器と通信可能である。配信サーバ20はデータベースDB2を有し、配信サーバ10と同様の機能を有する。携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistance)等の携帯端末50は、基地局30、基地局40およびネットワーク70を介して他の機器と通信可能である。すなわち、携帯端末50は、基地局30(あるいは基地局40)およびネットワーク70を介して配信サーバ10あるいは配信サーバ20と通信することができる。携帯端末60も携帯端末50と同様の機能を有する。
【0008】
図2は、携帯端末50のハードウェア構成を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)51は、RAM(Random Access Memory)55を作業エリアとして、ROM(Read Only Memory)52に記憶されているプログラムを読み出して実行する。CPU51はまた、携帯端末50の各構成要素を制御する機能を有する。本実施形態に係る携帯端末50は携帯電話機であって、マイクから集音された音声を音声処理部54によってアナログ/デジタル変換し、デジタル変換された音声データを通信部53を介して無線送信する機能を有する。また、携帯端末50はネットワーク70を介して送信された音声データを通信部53により受信する。受信された音声データは音声処理部54によりデジタル/アナログ変換され、スピーカから音声として出力される。さらに、携帯端末50は、音声データだけでなく、mp3データ等のストリームオーディオデータや、SMF(Standard MIDI File)あるいはSMAF(Synthetic music Mobile Application Format)等の演奏制御データや、電子メールメッセージや、アプリケーションソフトウェア等のデータ(コンテンツ)を通信部53を介して通信することができる。これらのデータはRAM55に保存される。
【0009】
表示部56はLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置を有し、CPU51の制御下で文字や画像を表示する。携帯端末50の使用者は、表示部56に表示された文字や画像を見ながら、テンキーや十字キー等からなる入力部57を操作することにより携帯端末50に対し指示入力を行うことができる。バイブレータ58は、CPU51の制御下で振動し、使用者に着信等を通知する機能を有する。音源部100については以下で詳細に説明する。以上の各構成要素は、バス99を介して相互に接続されている。
【0010】
図3は、音源部100の構成を示すブロック図である。音源部100は、SMFあるいはSMAF等の演奏制御データおよびmp3データ等の波形圧縮データを再生する機能を有する。演奏制御データの再生が指示されると、CPU51はRAM55に記憶されている演奏制御データ(の一部)を音源部100に供給する。演奏制御データはI/F101を介してFIFO(First-In First-Out)102にそのデータの先頭から順次所定量が取り込まれ一時記憶される。FIFO102は、演奏制御データを限られた量だけ格納できる記憶手段であり、先に書き込まれた演奏制御データから順次読み出されるようにされている。シーケンサ103は、FIFO102から順次演奏制御データを読み出し、演奏制御データ中の時間情報(デュレーション)に従って音源制御データを随時生成する。シーケンサ103は、生成した音源制御データを音源104に出力する。音源104は、音源制御データに従ってデジタル音声データを出力する。音声データはDAC(Digital Analog Converter)120でアナログ音声信号に変換され、スピーカ59から音声として出力される。FIFO102内に記憶されている演奏制御データが読み出されてFIFO102内に設定された所定量の空き領域が発生すると、FIFO102は割込要求信号(Interrupt ReQuest、IRQ)を図示せぬ専用信号線を介してCPU51に送り、後続する演奏制御データの転送をCPU51に要求する。CPU51は、後続する演奏制御データを所定量FIFO102に供給する。
【0011】
一方、波形圧縮データの再生が指示されると、CPU51はRAM55に記憶されている波形圧縮データ(の一部)を音源部100に供給する。波形圧縮データはI/F111を介してFIFO112にそのデータの先頭から順次所定量が取り込まれ一時記憶される。FIFO112は、波形圧縮データを限られた量だけ格納できる記憶手段であり、先に書き込まれた波形圧縮データから順次読み出されるようにされている。デコーダ113は、mp3データ、ADPCMデータ等の波形圧縮データを伸張し、波形データ(デジタル音声データ)に変換する。デコーダ113は、変換した波形データを出力する。波形データはDAC120によりアナログ音声信号に変換され、スピーカ59から音声として出力される。FIFO112内に記憶されている波形圧縮データが読み出されてFIFO112内に設定された所定量の空き領域が発生すると、FIFO112は割込要求信号(IRQ)を図示せぬ専用信号線を介してCPU51に送り、後続する波形圧縮データの転送をCPU51に要求する。CPU51は、後続する波形圧縮データを所定量FIFO112に供給する。なお、本実施形態において、デコーダ113はmp3データおよびADPCMデータの2種類のフォーマットのデータをデコードできる機能を有している。別の態様において、音源部100が、mp3データをデコードするmp3デコーダとADPCMデータをデコードするADPCMデコーダとを別個に有する構成としてもよい。また、データフォーマットはmp3形式およびADPCM形式に限られず、wma形式等他のフォーマットの波形圧縮データを用いてもよい。なお、この場合は音源部100が、使用されるデータフォーマットに適したデコーダを有する必要がある。
【0012】
このように、音源部100は、演奏制御データを再生する処理系統(I/F101、FIFO102、シーケンサ103、音源104)と、mp3データ等の波形圧縮データを再生する処理系統(I/F111、FIFO112、デコーダ113)との2つの再生系統を有する。演奏制御データおよび波形圧縮データは、それぞれに対応する再生系統で処理され、デジタル音声データが生成される。2つの再生系統で生成された音声データは加算器105によって加算され、同期してスピーカ59から音声として出力される。
【0013】
図4は、本実施形態に係る楽曲データD1の構成を示す図である。楽曲データD1は、パート1〜5の5つのパート(チャンネル)から構成されるフォーマットとされている。各パートのデータは、デュレーションデータとイベントデータのペアを有するシーケンスデータである。あるイベントデータに対応するデュレーションデータは、1つ前のイベントの開始時刻から、そのイベントの開始時刻までのデュレーション(時間)を示すデータである。イベントデータは、音源部100等の出力デバイスに対する制御内容を示すデータである。図4において、パート1、3、5はイベントデータとしてMIDIイベントを有するMIDI(Musical Instruments Digital Interface)データである。パート2は、イベントデータとしてADPCM形式の発音データを有する埋め込みオーディオデータである。また、パート4は、イベントデータとしてmp3形式の音声データ等のストリームオーディオデータの記憶場所を示すURL(Uniform Resource Locator)を示すデータ(URLイベント)と、デュレーションデータとしてそのストリームオーディオデータの再生を開始すべき時間を示すデータとを有している。URLイベントは、例えば、「http://aaa.bbb.co.jp/sing-1.mp3」等、配信サーバ名と配信対象のファイル名の情報を含んでいる。携帯端末50は、このURLで指定される配信サーバから指定されるデータ(ストリームオーディオデータ)をダウンロードして再生する。
【0014】
携帯端末50は楽曲データD1をRAM55に記憶している。楽曲データD1は携帯端末50の出荷時にあらかじめ記憶されているものであってもよいし、出荷後にサーバから通信回線を介してダウンロードして記憶したものであってもよい。携帯端末50はRAM55から楽曲データD1を読み出し、音源部100に出力する。音源部100は、前述のように楽曲データD1に従って楽曲を再生する。楽曲データD1は、MIDIデータ、埋め込みオーディオデータ、サーバからダウンロードしたストリームオーディオデータが混在する楽曲データである。本実施形態に係る携帯端末50は、前述のようにMIDIデータ(演奏制御データ)と、埋め込みオーディオデータおよびストリームオーディオデータ(波形圧縮データ)とを同期して再生することができる。本実施形態においては、このようなデータ形式の楽曲データフォーマットを採用したことにより、異なる形式のデータを同期して再生することが可能である。
【0015】
図5は、配信サーバ10のハードウェア構成を示すブロック図である。配信サーバ10は、CPU11、ROM12、RAM13、I/F14、入力部15、表示部16、記憶部17を有するコンピュータ装置である。記憶部17はHDD等の記憶装置で構成され、上述のmp3形式の音声データ等のストリームオーディオデータを記録したデータベースDB1を記憶している。配信サーバ10はI/F14を介してインターネット等のネットワーク70に接続されており、ネットワーク70を介して受信したダウンロード要求に応じて、記憶部17に記憶しているストリームオーディオデータを送信する機能を有する。配信サーバ20も配信サーバ10と同様のハードウェア構成を有している。なお、配信サーバ10に記憶されるストリームオーディオデータはmp3形式のデータに限られず、ADPCM形式、wma形式等他のフォーマットで記述されたデータであってもよい。
【0016】
<2.動作>
続いて、楽曲配信システム1の動作について説明する。
図6は、楽曲配信システム1の動作を示すフローチャートである。携帯端末50において楽曲データD1の再生が指示されると(ステップS101:YES)、CPU51は、楽曲データD1の再生に先立って、楽曲データD1がURLイベントデータを有するか否か検索する(ステップS102)。楽曲データD1がURLイベントデータを有する場合(ステップS103:YES)、CPU51は、URLイベントデータにより示されるデータ(URLイベントデータが複数ある場合は、楽曲データD1の再生において最も早く現れるデータ)をダウンロードする旨を指示するダウンロード要求を生成する。CPU51は、URLイベントデータにより示される配信サーバを宛先として、生成したダウンロード要求を、通信部53を介して送信する(ステップS104)。本実施形態において、URLイベントデータは、配信サーバ10に記憶されているmp3形式のストリームオーディオデータD2(以下、mp3データD2)を示している。したがって、CPU51は、配信サーバ10に対しmp3データD2のダウンロード要求を送信する。ここで、ダウンロード要求は、携帯端末50が受信可能なデータのサイズを示すデータサイズ情報DS1を含んでいる。
なお、楽曲データD1がURLイベントデータを有さない場合(ステップS103:NO)、CPU51はステップS104および後述するS105の処理を行わずに、後述するステップS106へ処理を移行する。
【0017】
ダウンロード要求を受信すると、配信サーバ10のCPU11は、データベースDB1からmp3データD2を検索する。mp3データD2を発見すると、CPU11は、データベースDB1からmp3データD2を抽出する。CPU11は、抽出したmp3データD2の先頭から、ダウンロード要求に含まれるデータサイズ情報DS1により指定されるサイズのデータとなるように、mp3データD2の一部のデータを抽出する。以下、このmp3データD2のうち一部分のデータを楽曲素片データD3という。
CPU11は、抽出した楽曲素片データD3を、I/F14およびネットワーク70を介して、ダウンロード要求の送信元である携帯端末50に送信する。
【0018】
楽曲素片データD3を受信すると、携帯端末50のCPU51は、受信した楽曲素片データD3をRAM55に記憶する。RAM55には、楽曲素片データ用の記憶領域M1が確保されている。CPU51は、記憶領域M1に楽曲素片データD3を記憶する。また、CPU51は、mp3データD2のうち、ダウンロード済みのデータの位置(すなわち、次にダウンロードを開始するデータの先頭位置)を示す情報であるアドレスP3をRAM55に記憶させる。記憶領域M1に楽曲素片データD3が記憶されると(ステップS105:YES)、CPU51は、楽曲データD1を順次音源部100に出力する。こうして楽曲データD1の再生が開始される(ステップS106)。なお、以下で説明するように処理はステップS107〜S109へと進行するが、楽曲の再生が終了するまで、これらのステップにおいても楽曲は再生され続けている。
【0019】
音源部100は、図4に示される各パートのデータを時間情報(デュレーション)に従って順次再生して音声として出力する。パート1、3、5に関しては、MIDIデータ(演奏制御データ)が順次FIFO102に供給され、各パートのMIDIデータに対応する音声が再生される。パート2に関しては、ADPCMデータ(圧縮波形データ)が順次FIFO112に供給され、それに対応する音声が再生される。そしてパート4においてURLイベントに到達すると、音源部100はCPU51に対して楽曲素片データD3の転送を要求する。CPU51は、その要求に従って記憶領域M1から楽曲素片データD3を順次音源部100へ出力する。楽曲素片データD3はmp3形式の圧縮波形データであるから、音源部100において圧縮波形データの再生系統(I/F111、FIFO112、デコーダ113)により再生される。こうして、楽曲素片データD3に応じたストリームオーディオが再生される。楽曲素片データD3は、音源部100のFIFO112の記憶容量に応じて順次供給される。ここで、CPU51は、記憶領域M1の残存容量を監視している。
図7は、記憶領域M1の残存容量の監視方法を説明する図である。CPU51は、記憶領域M1においてまだ音源部100に出力されていないデータの先頭アドレス(以下、アドレスP1という)および、まだ音源部100に出力されていないデータの最後尾アドレス(以下、アドレスP2という)を変数としてRAM55に記憶している(図7(a))。ここで、アドレスP1はいわばデータの読み込み点であり、アドレスP2はいわばデータの書き込み点である。
【0020】
楽曲素片データD3が音源部100に出力されるにつれ、アドレスP1は順次後部に移動する。ここで、記憶領域M1の先頭からアドレスP1までの領域(図7(b)の白い部分)は、既にデータが転送済みであるので空き領域となっている。CPU51は、一定の時間間隔で、アドレスP1およびアドレスP2からこの空き領域の容量すなわち記憶領域M1の残存容量を算出する。
再び図6を参照して説明すると、CPU51は、算出した記憶領域M1の残存容量があらかじめ決められた値(例えば、記憶領域M1の記憶容量の半分の値)を超えたか否か監視している(ステップS107)。残存容量があらかじめ決められた値を超えていない場合(ステップS107:NO)、CPU51は、次に説明するステップS108の処理を行わずに、後述するステップS109の処理を行う。
【0021】
残存容量があらかじめ決められた値を超えた場合(ステップS107:YES)、楽曲素片データの転送が行われる(ステップS108)。具体的には次のとおりである。CPU51は、mp3データD2のうち楽曲素片データD3に後続するデータのダウンロード要求を生成する。このダウンロード要求は、記憶領域M1の残存容量(すなわち記憶領域M1の記憶容量の半分の値)を示すデータサイズ情報DS2を含んでいる。このダウンロード要求はまた、mp3データD2のうち、ダウンロードを開始する位置を示す情報であるアドレスP3も含んでいる。CPU51は、生成したダウンロード要求を、URLイベントデータが示す配信サーバ10に送信する。
【0022】
ダウンロード要求を受信すると、配信サーバ10のCPU11は、mp3データD2のうち、アドレスP3で指定される位置から、データサイズ情報DS2で指定されるサイズのデータを抽出する(以下、楽曲素片データD4という)。CPU11は、抽出した楽曲素片データD4を、ダウンロード要求の送信元である携帯端末50に送信する。
【0023】
楽曲素片データD3に後続する楽曲素片データである楽曲素片データD4を受信すると、携帯端末50のCPU51は、楽曲素片データD4を記憶領域M1のうち、アドレスP2の次の位置から始まる空き領域に記憶する。図7(b)に示されるように、アドレスP2が記憶領域M1の最後尾に位置していた場合は、記憶領域M1の先頭から楽曲素片データD4を記憶する(図7(c))。この際、CPU51は、RAM55に記憶されているアドレスP3の値を更新する。なお、このダウンロード処理の間も楽曲素片データD3の再生処理は継続しているので、アドレスP1は後部に進んでいる。
【0024】
楽曲素片データD3の再生処理がさらに進行し、記憶領域M1の空き容量が再びあらかじめ決められた値に達した場合(図7(d))、CPU51は、楽曲素片データD4をダウンロードしたときと同じように、楽曲素片データD4に後続するデータのダウンロード要求を生成し、配信サーバ10からデータ(楽曲素片データD5)をダウンロードする。CPU51は、ダウンロードした楽曲素片データD5を記憶領域M1の空き領域に記憶する(図7(e))。楽曲素片データD5を記憶領域M1に記憶すると、CPU51は、楽曲の再生が終了したか否か判断する(ステップS109)。楽曲の再生が終了した場合(ステップS109:YES)、CPU51は、楽曲配信システム1の動作を終了する。楽曲の再生が終了していない場合(ステップS109:NO)、CPU51は、ステップS107、108の処理を繰り返し実行する。なお、前述のように、ステップS107〜S109においてはURLイベントを有するパート4だけでなく他のパートも、楽曲の再生が終了するまで再生され続けている。
【0025】
CPU51は、以上の処理を、mp3データD2の先頭から最後尾までの再生が完了するまで繰り返し実行する。mp3データD2の再生が完了したら、CPU51は、楽曲データD1内のさらに別のURLイベントデータに到達するまで待つ。別のURLイベントデータに到達した場合は、CPU51は、mp3データD2の場合と同様にダウンロードおよび再生処理を行う。
【0026】
以上のようにして、mp3データD2は、記憶領域M1の記憶容量に応じて楽曲素片データに分割され、一部ずつダウンロードされる。ダウンロード処理の間も再生処理は並列して行われているので、携帯端末50は、楽曲を途切れさせることなくmp3データD2を再生することができる。また、パート1〜3、5のMIDIデータ、ADPCMデータも並列して再生される。したがって、本実施形態に係る携帯端末50は、MIDI等の演奏制御データ、ADPCM等の埋め込みオーディオデータ、およびサーバからダウンロードしたストリームオーディオデータが混在した楽曲データを再生可能である。
すなわち、携帯電話機のように使用可能なリソースが限られた環境において、例えば伴奏部分はMIDI等の演奏制御データによって再生し、ヴォーカル等の演奏制御データでは再生が困難なパートはサーバからダウンロードするストリームデータによって再生することができる。これにより、携帯端末50において、限られたリソースで高品質な楽曲を再生することができる。
【0027】
<3.変形例>
本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、種々の変形実施が可能である。
上述の実施形態においては、楽曲素片データのダウンロードの際に、記憶領域M1の残存記憶容量に関する情報を配信サーバ10に送信し、配信サーバ10が残存容量に応じたサイズのデータを携帯端末50に送信する態様について説明したが、楽曲素片データのダウンロード方法はこれに限定されるものではない。例えば、以下のような方法によって楽曲素片データのダウンロードを行ってもよい。携帯端末50は、ダウンロード開始位置を示す情報(アドレスP3)のみを配信サーバ10に送信する。配信サーバ10は、アドレスP3で示される位置からデータを送信する。携帯端末50のCPU51は、記憶領域M1の容量を監視し、記憶領域M1が楽曲素片データで満たされたらダウンロード停止要求を配信サーバ10に送信する。
【0028】
上述の実施形態においては、記憶領域M1の空き容量が、記憶領域M1の記憶容量の半分になったときに後続する楽曲素片データのダウンロード要求を生成する構成としたが、ダウンロード要求を生成するタイミング、空き容量のしきい値はこれに限定されるものではない。記憶領域M1の記憶容量の1/3、1/4等、記憶容量と通信回線の環境に応じて任意に設定することができる。また、CPU51が、通信回線の速度等の通信環境情報に基づき、空き容量のしきい値を決定する構成としてもよい。あるいは、ユーザに空き容量のしきい値を指定させる構成としてもよい。
【0029】
楽曲データは上述の実施形態で示した形式のものに限られない。例えば、演奏制御データとしてSMF形式あるいはSMAF形式のデータを用いてもよいし、埋め込みオーディオデータ、ストリームオーディオデータとして、wma形式等他の形式のデータを用いてもよい。また、演奏制御データや埋め込みオーディオデータのパートを持たず、URLイベントのパートだけで楽曲データを構成してもよいし、楽曲データがURLイベントのパートを複数有してもよい。さらに、URLイベントのパートがデュレーションを持たずに(またはデュレーションの時間が0)、1つのURLイベントだけで構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る楽曲配信システム1の構成を示すブロック図である。
【図2】携帯端末50のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】音源部100の構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態に係る楽曲データD1の構成を示す図である。
【図5】配信サーバ10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図6】楽曲配信システム1の動作を示すフローチャートである。
【図7】記憶領域M1の残存容量の監視方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0031】
1…楽曲配信システム、10…配信サーバ、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…I/F、15…入力部、16…表示部、17…記憶部、20…配信サーバ、30…基地局、50…携帯端末、51…CPU、52…ROM、53…通信部、54…音声処理部、55…RAM、56…表示部、57…入力部、58…バイブレータ、59…スピーカ、60…携帯端末、70…ネットワーク、99…バス、100…音源部、101…I/F、102…FIFO、103…シーケンサ、104…音源、105…加算器、111…I/F、112…FIFO、113…デコーダ、120…DAC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲を再生する機能およびネットワークに接続する機能を有する端末装置に、楽曲の再生を指示する楽曲データであって、
データ内の所定の位置に、楽曲の少なくとも一部分に対応する楽曲素片データの前記ネットワーク内の所在を示す所在情報が記載された構造を有する楽曲データ。
【請求項2】
前記楽曲データが複数チャンネルからなる構造を有し、
前記データ内の所定の位置は、前記楽曲素片を再生すべきチャンネルと再生すべき時間に対応した位置であることを特徴とする請求項1に記載の楽曲データ。
【請求項3】
前記所在情報が、再生すべき楽曲素片を記憶するサーバのサーバ名とその楽曲素片のファイル名とを含むことを特徴とする請求項1に記載の楽曲データ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の楽曲データを記憶する第1の記憶手段と、
前記所在情報により示される楽曲素片データの少なくとも1部分を、前記ネットワークを介して取得する通信手段と、
前記通信手段により取得した楽曲素片データを記憶する第2の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に記憶されている楽曲データおよび前記第2の記憶手段に記憶されている楽曲素片データに従って楽曲を再生する楽曲再生手段と
を有する端末装置。
【請求項5】
前記第2の記憶手段の空き容量を監視する監視手段と、
前記監視手段により監視される空き容量があらかじめ決められた条件を満足したときに前記楽曲素片データの取得を指示するダウンロード要求を生成するダウンロード要求生成手段と
をさらに有する請求項4に記載の端末装置。
【請求項6】
前記通信手段が、前記楽曲データを送信または受信する機能を有することを特徴とする請求項4に記載の端末装置。
【請求項7】
前記端末装置が携帯可能であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかの項に記載の端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−163280(P2006−163280A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358444(P2004−358444)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】