説明

構造体の製造方法

【課題】 ナノインプリント用モールドとして使用可能な構造体を容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】 無電解めっき反応の触媒13を含む樹脂12に構造体14を圧着し剥離して該樹脂12に該構造体14の構造を転写する工程と、該樹脂12の転写された構造15にめっきを行いめっき物16を形成する工程と、該めっき物16と該樹脂12を分離する工程とを有する構造体の製造方法。前記触媒の主成分がイオンであり、樹脂に構造体を圧着した後からめっきを行なう間にイオンを還元させて金属としてもよい。前記触媒の主要元素がPdであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリントのモールドとして使用可能な微細構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来微細構造体の作製方法としてはフォトリソグラフィー法が用いられてきたが、プロセスが長くて複雑であるうえ、微細化にも限界がある。これに代わる技術の一つとしてナノインプリント法が用いられている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
ナノインプリント法は、作製したい構造体に応じた凹凸を持つモールドを作製し、これを基板に圧着することで圧痕を作製し、この圧痕を元にして構造を作製するものであり、簡便なプロセスでありながら微細な構造作製が可能である。ナノインプリントで用いられるモールドとしては、例えばリソグラフィー法を用いて形成しているSiC又はSiO2 製のものが報告されている(例えば特許文献1等参照)。
【0004】
しかし、リソグラフィー法を用いてモールドを作製する場合、描画工程やドライエッチングの工程などを経るため、モールド作製に必要な工程が複雑であり、作製する構造が微細になるほど、面積が広いほど、突起形状が高アスペクトであるほど、加工には長時間を要する。このため、モールドが複数個必要なときは、マスターとなるモールドを作製した後にめっき法などによりレプリカを作製する。
【0005】
例えば、マスターとなるモールドを電子線ビームリソグラフィーなどにより作製した後に、このモールドを樹脂に圧着し、樹脂を硬化したのちにモールドを剥離する。モールドを反映する凹凸をもつ樹脂表面に無電解めっきの触媒を吸着させた後に無電解めっきを行い、無電解めっき膜の上に電解めっきを行った後に、めっき物を剥離する。これにより得られためっき物をレプリカモールドとして使用する方法が提案されている。(特許文献2等参照)
【特許文献1】特開平10−121292号公報
【特許文献2】特開平16−71587号公報
【非特許文献1】S.Y.Chou,et.Al.,“Science”,vol.272,p.85−87,1996年4月5日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されている様に、マスターとなる構造体を樹脂に圧着し、これにめっきを行った後に剥離してレプリカを作製するプロセスにおいて、電解めっきを行う前に樹脂表面を導電化処理する必要がある。導電化処理の方法としては、スパッタや真空蒸着などの乾式プロセスと無電解めっきなどの湿式プロセスが用いられる。高アスペクト比を持つ構造体に対しては、樹脂に構造を転写した後に形成される凹部に対して付与する導電膜の膜厚の均一性を、更に向上することが求められる。
【0007】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、ナノインプリント用モールドとして使用可能な構造体を容易に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、無電解めっき反応の触媒を含む樹脂に構造体を圧着し剥離して該樹脂に該構造体の構造を転写する工程と、該構造の転写された樹脂にめっきを行いめっき物を形成する工程と、該めっき物と該樹脂を分離する工程とを有することを特徴とする構造体の製造方法である。
【0009】
前記無電解反応の触媒を含む樹脂の表面の少なくとも一部に、触媒を含有しない樹脂層を形成した後、該樹脂に構造体の構造を転写することが好ましい。
前記触媒の主成分がイオンであり、樹脂に構造体を圧着した後からめっきを行なう間にイオンを還元させて金属とすることが好ましい。
【0010】
前記無電解めっき反応の触媒が樹脂の表面に設けられ、該触媒面に構造体を圧着し剥離して該樹脂に該構造体の構造を転写することが好ましい。
前記触媒の主要元素がPdであることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、無電解めっき反応の触媒となる金属より析出電位が卑な元素を含む樹脂に構造体を圧着し剥離して該樹脂に該構造体の構造を転写する工程と、該樹脂を無電解めっきの触媒となる金属イオンを含む溶液に浸漬し、触媒を該樹脂表面に析出させる工程と、該構造の転写された樹脂にめっきを行いめっき物を形成する工程と、該めっき物と該樹脂を分離する工程とを有することを特徴とする構造体の製造方法である。
【0012】
前記無電解めっき反応の触媒となる金属より析出電位が卑な元素を含む樹脂表面に、該元素を含有しない樹脂層を形成した後、該樹脂に構造体の構造を転写することが好ましい。
【0013】
前記無電解めっき反応の触媒となる金属より析出電位が卑な元素がイオンであり、樹脂に構造体を圧着した後からめっきを行なう間にイオンを還元させて金属とすることが好ましい。
【0014】
前記無電解めっき反応の触媒となる金属より析出電位が卑な元素が樹脂の表面に設けられ、該卑な元素面に構造体を圧着し剥離して該樹脂に該構造体の構造を転写することが好ましい。
【0015】
さらに、本発明は、上記の構造体の製造方法により作製され、めっき物がニッケル及びニッケル合金であるナノインプリント用モールドである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ナノインプリント用モールドとして使用可能な構造体を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について述べる。
ナノインプリント用モールドとして使用可能な突起を有する構造体を、無電解めっきの触媒を含む樹脂を用い、めっきにより製造する方法について示す。
【0018】
このため、無電解めっき反応の触媒を含有する樹脂に構造体を圧着し、樹脂表面に構造体の転写パターンを作製後、転写パターンを持つ樹脂表面に無電解めっきを行い、更に必要に応じて電解めっきを行った後にめっき物を樹脂より分離することで達成できる。
【0019】
無電解めっきは、金属塩、錯化剤、還元剤を主成分とする混合溶液において、還元剤の酸化還元反応により生じる電子を金属の析出反応に利用するものである。触媒活性な表面で選択的に反応が起こり、析出する金属が還元剤の酸化反応に触媒活性を示す場合には連続的に金属析出反応が進行する。
【0020】
本発明に使用できる突起を有する構造体の材質としては、Si,SiC,SiO2 や金属、セラミック、プラスチック、ガラスなどを用いることができる。構造体の高さは一定でなくても良い。構造体を樹脂へ圧着、剥離後に、構造転写部に触媒が露出可能なように樹脂厚を制御していれば無電解めっきは析出が可能であり、めっきによるレプリカ構造が作製できる。
【0021】
樹脂を表層にコートするために使用される基板は、シリコン等の半導体、アルミニウム等の導体、セラミック、プラスチック、ガラス等が挙げられるが、これに限定されるものではない。樹脂が十分厚い場合には基板は無くても良い。
【0022】
触媒を含有する樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリエステル、エポキシ、各種レジストなどが例として挙げられる。構造体を樹脂に熱圧着することで構造転写が可能である。また、石英の構造体を感光性樹脂に圧着後、露光により樹脂を硬化した後に構造体を剥離することで構造転写を行うことができる。
【0023】
樹脂は無電解めっきに対して活性を示す触媒を含有している。樹脂中に触媒を予め含有させることで、樹脂を基板上にコートした後に、粗化および触媒化を行うこと無く無電解めっきが可能である。
【0024】
触媒としては、金属微粒子、金属を担持した微粒子、コロイド、有機金属錯体などを用いることができる。樹脂に触媒となる金属を結合させても良い。また、触媒となる金属を、スパッタや蒸着などにより成膜しても良い。
【0025】
金属微粒子としては、Pd、Pt、Ag、Au、Fe、Ni等及びこれを主成分とする合金から成る微粒子を触媒として使用可能である。
金属を担持した微粒子としては、金属化合物や触媒金属イオン錯体などを表面に担持した微粒子があり、例えばアミノ基、カルボキシル基、クラウンエーテル基、イミダゾール基のような官能基を有するアルミナの表面に、パラジウムイオン、白金イオン、銀イオン、金イオン、鉄イオン、ニッケルイオン等をキレートさせた微粒子が挙げられる。これらの微粒子をめっき前に還元処理することで、無電解めっきに対して触媒活性を示す。
【0026】
コロイドや有機金属錯体としてはPdを含むものが無電解めっきに適しており、パラジウム−スズ混合溶液がある。めっき前に還元処理することで無電解めっきに対して活性を示す。
【0027】
触媒となる金属を結合した樹脂としては、樹脂に含まれるアミノ基、カルボキシル基、クラウンエーテル基、イミダゾール基のような官能基によりパラジウムイオン、白金イオン、銀イオン、金イオン、鉄イオン、ニッケルイオン、等をキレート化させた樹脂が挙げられる。樹脂をコートした後に、キレート化されたイオンを還元処理することで金属微粒子を得ることができる。
【0028】
触媒としてPdは無電解めっきに対して活性が高いため、樹脂中に分散するのに特に適している。
触媒は樹脂全体に均一に分散していることが好ましいが、偏在しても良い。また、触媒含む樹脂上に、触媒を含まない樹脂をコートすることで、樹脂を2層化しても良い。2層化するときには、触媒を含まない樹脂層厚を、構造体突起部のうち最小の突起より薄くする。これにより、2層化した樹脂に構造体に加熱圧着時に、構造体の先端部のみが触媒を含む樹脂層に達することが可能となる。構造体の突起部は先鋭であることが好ましい。この後に樹脂より構造体を剥離すると、構造体の突起部に対応する孔や溝など樹脂凹部にのみ触媒が露出する。この後に無電解めっきに関する処理を行うことで、無電解めっきの初期段階では樹脂表面の凹部にのみめっきを行うことが可能である。その後、更に無電解めっきを継続することで凹部はめっき物で充填され、樹脂表層部でめっきが成長し連続膜となる。凹部がめっきにより充填されるまでは表層ではめっき反応が発生しないことから、凹部のアスペクト比が1を越えるような場合で、特に円柱又は円錐台状の孔構造をもつ構造体のレプリカ作製の場合においても、めっき未着の発生を抑制することができる。
【0029】
また、先端部が平坦な構造体を用いる場合には、触媒が樹脂の表面にのみ存在しても良い。樹脂表面にコートされた触媒は先端部が平坦な構造体により凹部底まで押し込まれ、先端部が平坦な構造体を剥離した後も凹部底に残留する。また、構造体を樹脂に圧着するときに表層に金属層が存在するため、圧着時に樹脂が構造体に付着しにくくなる。
【0030】
無電解めっき浴としてはとしては、Ni、Co、Cu、Au、Ag、Pd、Pt等及びこれを主成分とする各種合金を析出可能なめっき浴を用いることができる。ここでの合金の例としてNi合金としては、NiP、NiB、NiSnP、NiWP,NiFeP、NiWB,NiCuP,NiCoP等を挙げることができる。ただし、めっき後に樹脂として剥離することで得られる構造体をモールドとして使用することを考えた場合、硬度が高い圧着時に変形しにくいので、NiおよびNi合金を用いることが望ましい。無電解めっき液に含まれる還元剤としては析出させる金属や合金に応じて、次亜リン酸ナトリウム(NaH2 PO2 )、ホルムアルデヒド(HCHO)、テトラヒドロほう酸ナトリウム(NaBH4 )ジアルキルアミンボラン(DMAB DEAB)、ヒドラジン(N24 )等を用いる。
【0031】
構造体を厚くする必要がある場合には、無電解めっきの後に電解めっきを行っても良い。用いられる金属としては、Ni、Co、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Fe等及びこれを主成分とする合金等、電解めっき可能であればどのような金属でも良い。このとき、無電解めっき膜と異なる金属および合金を電解めっき膜として用いても良い。ただし、電解めっき膜の応力が大きいと、めっき中にめっき物の樹脂からの剥離の発生、樹脂からめっき物を分離した後に応力によりめっき物が変形する可能性などがあるため、めっき膜の応力はなるべく低いほど好ましい。低応力のめっき膜としては、例えばスルファミン酸Niを用いためっき浴から得られる電解Niめっき膜が挙げられる。スルファミン酸Niを用いためっき浴から得られる電解Niは硬度が比較的高いこともモールド作製のためのめっき浴としての使用に適している。
【0032】
次に、ナノインプリント用モールドとして使用可能な突起を有する構造体を、無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素を含む樹脂を用い、めっきにより製造する方法について示す。
【0033】
前記、無電解めっきの触媒を含む樹脂を用いめっきにより製造する方法と異なる点は、樹脂に含有する元素およびめっき前に触媒を樹脂表面に析出する工程が追加されることであり、基板材質、構造体材質、樹脂材質および構造体の圧着方法、めっき方法などの工程は同一である。
【0034】
実施形態として、無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素を含有する樹脂に構造体を圧着し、樹脂表面に構造体の転写パターンを作製後、無電解めっきの触媒となる金属イオンを含む溶液に該樹脂を浸漬して触媒を樹脂表面に析出させ、転写パターンを持つ樹脂表面に無電解めっきを行い、更に必要に応じて電解めっきを行った後にめっき物を樹脂より分離することで上記の目的が達成できる。
【0035】
無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素は、金属微粒子、金属を担持した微粒子、コロイド、有機金属錯体などの状態で樹脂に含有される。無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素を樹脂と結合させても良い。また、スパッタや蒸着などにより成膜しても良い。
【0036】
金属微粒子としては、Sn及びこれを主成分とする合金から成る微粒子を使用可能である。
金属を担持した微粒子としては、金属化合物や触媒金属イオン錯体などを表面に担持した微粒子があり、例えばアミノ基、カルボキシル基、クラウンエーテル基、イミダゾール基のような官能基を有するアルミナの表面にスズイオンをキレートさせた微粒子が挙げられる。また、スズコロイド、有機スズ錯体を用いても良い。樹脂中に含まれるアミノ基、カルボキシル基、クラウンエーテル基、イミダゾール基のような官能基によりスズイオンをキレート化させ、樹脂表面に構造体の転写パターンを作製後に還元処理を行ったのち、触媒となる金属のイオンを含む溶液に樹脂を浸漬することで触媒を樹脂表面に析出させても良い。
【0037】
無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素は、樹脂全体に均一に分散していることが好ましいが、偏在しても良い。また、無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素含む樹脂上に、無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素を含まない樹脂をコートすることで、樹脂を2層化しても良い。また、先端部が平坦な構造体を用いる場合には、無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素が樹脂の表面にのみ存在しても良い。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて更に詳細に述べていくが、本発明の実施の形態に関しては以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
本実施例は、触媒を含む樹脂にモールドを圧着・剥離したのちにめっきを行い、めっき物を分離する製造方法を示す。図1に、本実施例の無電解めっきの触媒を含む樹脂を用いた構造体の製造方法の工程図を示す。
【0039】
Si基板11の表面にスズ−パラジウムコロイド触媒13を含むPMMAをスピンコートにより200nmの厚さに成膜して熱硬化し、触媒を含有する樹脂層12を形成する。その後、フォトリソグラフィーにて作製した、200nmピッチ、線幅100nm、深さ100nmのSiC製ナノインプリント用モールド14を、触媒を含有する樹脂12に圧着する。圧着時にはPMMAをガラス転移温度以上に加熱し、モールド剥離時には室温まで冷却し剥離する。これによりナノインプリントでモールドの転写パターンが凹状構造15として樹脂表面に形成される。このとき、圧着を行った部分を含めてPMMA表面全体にスズ−パラジウムコロイド微粒子の触媒13が露出する。
【0040】
圧着によりPMMA表面にパターン形成後に、基板を10%硫酸溶液に30秒間浸漬することでPdを触媒活性にして、下記の表1に示す無電解Ni−Pめっき液に浸漬する。これにより凹状構造15はめっき物で埋まり、PMMA表面に無電解めっき膜16が形成される。このときの無電解Ni−Pめっき厚を100nmとする。
【0041】
【表1】

【0042】
無電解めっき膜16を通電層として、下記の表2に示す電解ニッケルめっき液により1μm厚ニッケルめっきを行い電解めっき膜17を形成した後に、触媒を含有する樹脂12とめっき物16、17を剥離する。剥離後のめっき部16,17は、SiCで作製した200nmピッチで線幅100nm幅、深さ100nmの構造と同等の構造となっており、本構造体はナノインプリントのモールドとして使用可能である。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例2
本実施例は、触媒を含有する樹脂に表面に、触媒を含まない樹脂層を形成した後に、モールドを圧着・剥離し、めっきを行い、めっき物を分離する製造方法を示す。図2に、本実施例の無電解めっきの触媒を含む樹脂を用いた構造体の製造方法の工程図を示す。
【0045】
エポキシ樹脂に塩化パラジウム5wt%、N,N−ジメチルホルムアミド20wt%を混合し、Si基板21の表面にスピンコートにより200nmの厚さにコートする。この後100℃で熱硬化し、還元によりPd微粒子が樹脂中に析出し、触媒23を含有する樹脂22を形成する。
【0046】
触媒を含有する樹脂22表面に、PMMAを30nmスピンコートにより成膜した後に熱硬化して触媒を含有しない樹脂24を形成する。これにより樹脂表面に無電解めっきに対して活性を示さない層が形成される。
【0047】
この後に、電子線ビームリソグラフィーにより作製した160nmピッチ、直径80nm、高さ100nmの円錐状構造を持つSiモールド25を、触媒を含有しない樹脂24に圧着する。これにより、PMMA表面に構造が転写され、160nmピッチ、直径80nm、深さ100nmのすり鉢状の凹状構造26が作製される。このときモールド25の突起は、触媒を含有しない樹脂24を貫通し、触媒を含有する樹脂22まで達することで、モールド25を剥離した後に触媒23が露出する。
【0048】
その後、無電解Ni−Pめっき液に浸漬し、Ni−Pめっきを100nmの厚さに行い無電解めっき膜27を形成する。この後にスルファミン酸ニッケルめっき液により1μm厚のNiめっきを行い電解めっき膜28を形成したのち、樹脂22,24と被めっき物27,28を剥離する。剥離後のめっき物27,28は、Siモールドと同等の構造となっており、本構造体はナノインプリントのモールドとして使用可能である。
【0049】
実施例3
本実施例は、無電解めっきに対して活性を示す触媒が表層にのみ存在する樹脂を形成した後に、モールドを圧着・剥離し、めっきを行い、めっき物を分離する製造方法を示す。図3に本実施例の構造体の製造方法の工程図を示す。
【0050】
Si基板31の表面にPMMAをスピンコートにより200nmの厚さに成膜して熱硬化を行い樹脂32を形成する。樹脂32の表面にPdをスパッタにより5nmの厚さに成膜し、触媒33を形成する。この後に、電子線ビームリソグラフィーにより作製した160nmピッチ、直径80nm、高さ100nmの円柱状構造を持つSiモールド34を、触媒33を表面に付与した樹脂32に熱圧着する。これにより、Siモールド34の剥離後には、触媒33を表面に付与した樹脂32の表面にモールド34の構造が転写され160nmピッチ、直径80nm、深さ100nmの凹状構造36が、触媒を表面に付与した樹脂32に作製される。
【0051】
その後、無電解Ni−Pめっき液に浸漬し、Ni−Pめっきを100nmの厚さに行い無電解めっき膜37を形成する。この後にスルファミン酸ニッケルめっき液により1μm厚のNiめっきを行うことで電解めっき膜38を形成した後、樹脂32と被めっき物37,38を剥離する。剥離後のめっき部37,38は、Siで作製した、160nmピッチ、直径80nm、高さ80nmのモールド34の構造と同等の構造となっており、本構造体はナノインプリントのモールドとして使用可能である。
【0052】
実施例4
本実施例は、無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素を含有する樹脂にモールドを圧着・剥離した後にめっきを行い、めっき物を分離する製造方法を示す。図4に本実施例の構造体の製造方法の工程図を示す。
【0053】
Si基板41の表面に、Sn粒子を無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な金属粒子43として含むPMMAをスピンコートにより200nmの厚さに成膜して熱硬化し、無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素を含有する樹脂42を形成する。
【0054】
その後、フォトリソグラフィーで作製した、300nmピッチ、線幅150nm、深さ100nmのSiC製ナノインプリント用モールド44を、樹脂層42に圧着した後に剥離する。これによりナノインプリントでモールドの転写パターンが凹状構造45として樹脂表面に形成される。このとき、PMMA表面全体にSn粒子43が露出する。圧着によりPMMA表面にパターン形成後に、基板を100mg/L塩化パラジウム、1mL/L塩酸溶液に浸漬し、Sn粒子43表面に触媒46としてPdを析出させた後に、無電解Ni−Pめっき液に浸漬する。これにより凹状構造45はめっき物で埋まり、PMMA表面に無電解めっき膜47が形成される。このときの無電解Ni−Pめっき厚を100nmとする。
【0055】
この後にスルファミン酸ニッケルめっき液により1μm厚のNiめっきを行うことで電解めっき膜48を形成した後、樹脂42と被めっき物47,48を剥離した。剥離後のめっき部47,48は、SiCで作製した300nmピッチで線幅100nm幅、深さ100nmの構造と同等の構造となっており、本構造体はナノインプリントのモールドとして使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、ナノインプリント用モールドとして使用可能な構造体を容易に製造することができるので、高密度磁気記録媒体や高集積化電子部品、フィルターの作製等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の無電解めっきの触媒を含む樹脂を用いた構造体の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の無電解めっきの触媒を含む樹脂を用いた構造体のその他の製造方法を示す工程図である。
【図3】本発明の無電解めっきの触媒を表層にのみ付与した樹脂を用いた構造体の製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素樹脂を含有する樹脂を用いた構造体の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0058】
11、21、31、41 基板
12、22 触媒を含有する樹脂
13、23、33、46 触媒
14、25、34、44 モールド
15、26、36、45 凹状構造
16、27、37、47 無電解めっき膜
17、28、38、48 電解めっき膜
24、32 触媒を含まない樹脂
35 モールド圧着により凹部内に押し込まれた触媒
42 無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な元素を含有する樹脂 43 無電解めっきの触媒となる金属より析出電位が卑な金属粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解めっき反応の触媒を含む樹脂に構造体を圧着し剥離して該樹脂に該構造体の構造を転写する工程と、該構造の転写された樹脂にめっきを行いめっき物を形成する工程と、該めっき物と該樹脂を分離する工程とを有することを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項2】
前記無電解反応の触媒を含む樹脂の表面の少なくとも一部に、触媒を含有しない樹脂層を形成した後、該樹脂に構造体の構造を転写することを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項3】
前記触媒の主成分がイオンであり、樹脂に構造体を圧着した後からめっきを行なう間にイオンを還元させて金属とすることを特徴とする請求項1または2に記載の構造体の製造方法。
【請求項4】
前記無電解めっき反応の触媒が樹脂の表面に設けられ、該触媒面に構造体を圧着し剥離して該樹脂に該構造体の構造を転写することを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項5】
前記触媒の主要元素がPdであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載の構造体の製造方法。
【請求項6】
無電解めっき反応の触媒となる金属より析出電位が卑な元素を含む樹脂に構造体を圧着し剥離して該樹脂に該構造体の構造を転写する工程と、該樹脂を無電解めっきの触媒となる金属イオンを含む溶液に浸漬し、触媒を該樹脂表面に析出させる工程と、該構造の転写された樹脂にめっきを行いめっき物を形成する工程と、該めっき物と該樹脂を分離する工程とを有することを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項7】
前記無電解めっき反応の触媒となる金属より析出電位が卑な元素を含む樹脂表面に、該元素を含有しない樹脂層を形成した後、該樹脂に構造体の構造を転写することを特徴とする請求項6に記載の構造体の製造方法。
【請求項8】
前記無電解めっき反応の触媒となる金属より析出電位が卑な元素がイオンであり、樹脂に構造体を圧着した後からめっきを行なう間にイオンを還元させて金属とすることを特徴とする請求項6または7に記載の構造体の製造方法。
【請求項9】
前記無電解めっき反応の触媒となる金属より析出電位が卑な元素が樹脂の表面に設けられ、該卑な元素面に構造体を圧着し剥離して該樹脂に該構造体の構造を転写することを特徴とする請求項6に記載の構造体の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の構造体の製造方法により作製され、めっき物がニッケル及びニッケル合金であるナノインプリント用モールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−219752(P2006−219752A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36791(P2005−36791)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】