構造化充填物用の充填層
【課題】同じ数か又は少ない数の接触点を有する安定性を改善した構造化充填物の提供。
【解決手段】波形を有する構造化充填物用の充填層10は、複数の開放チャネル12、14、16が波形によって形成され、それらのチャネルが第1の波形谷22、第1の波形ピーク32、および第2の波形ピーク42を含む。第1の波形ピーク32及び第2の波形ピーク42は、第1の波形谷22を境界とし、第1及び第2の波形ピークは、それぞれ第1の頂部33及び第2の頂部43を有する。第1の頂部33の方向に延在するスペーサ要素34は、第1の波形ピーク32の第1の頂部33に形成される。第1の波形谷22は谷底23を有し、スペーサ要素34はエッジ35を有し、波形谷22の谷底23からの、エッジ35の鉛直方向間隔は、第1の波形ピーク32の頂部33の鉛直方向距離よりも大きい。
【解決手段】波形を有する構造化充填物用の充填層10は、複数の開放チャネル12、14、16が波形によって形成され、それらのチャネルが第1の波形谷22、第1の波形ピーク32、および第2の波形ピーク42を含む。第1の波形ピーク32及び第2の波形ピーク42は、第1の波形谷22を境界とし、第1及び第2の波形ピークは、それぞれ第1の頂部33及び第2の頂部43を有する。第1の頂部33の方向に延在するスペーサ要素34は、第1の波形ピーク32の第1の頂部33に形成される。第1の波形谷22は谷底23を有し、スペーサ要素34はエッジ35を有し、波形谷22の谷底23からの、エッジ35の鉛直方向間隔は、第1の波形ピーク32の頂部33の鉛直方向距離よりも大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造化充填物、及びこのような構造化充填物を収容する塔、具体的には吸収塔に関するものである。とりわけ、本発明は、圧力損失を低減させ、特に、煙道ガスからのCO2吸収などの、水性吸収剤を用いた吸収の用途に適した構造化充填物に係るものである。
【背景技術】
【0002】
構造化充填物の原理は、数十年にわたり吸収で用いられている(ザッター「熱分離プロセス」、VCH出版社、バインハイム、1995年(K.Satter「Thermische Trennverfahren」、VCH Verlag、Weinheim 1995)参照)。なぜならば、入力エネルギー、及び吸収塔の構築高さをそれよりも節減できるからである。
【0003】
構造化充填物は、具体例としては次々に配置した折り畳んだ金属薄板として商用に作製され、その構造は、互いに連続して交差する傾斜したチャネルを有する。これらのチャネルは、充填物内の気相及び液相の流れに好影響を与え、相間の物質移動を促進する。すなわち、気相及び液相が、充填物のチャネル内で接触し、相間の物質移動が促進される。
【0004】
通常、構造化充填物の分離能力を向上させるには、構造化充填物の表面を大きくする。これは、通常、層の数を増やし及び/又はチャネルの幾何形状を狭くすることによって実現される。充填層の幾何学上の合計表面を計算することにより全表面が得られる。しかし、これらの対策は、構造化充填物中の圧力降下を増大させることになる。しかし、圧力降下を減らすために充填物表面を小さくしなければならず、それにより、分離能力、すなわち充填物の効率が低下する。さらに、より開放した交差チャネルを設けることができる。より開放した交差チャネルとは、チャネルの傾斜角が流れの主方向に対して小さくなるように選択されることを意味する。これは、用途に応じて圧力降下と最良の可能な分離能力との間の最適条件を見つけなければならないことを意味する。
【0005】
しかし、交差チャネルは、多数の接触点を有し、それらの接触点は、いくつかの用途では好影響を与える可能性があるが、他の用途では悪影響を及ぼす虞がある。
【0006】
有機流体による精留プロセスなど、良好な濡れを伴う液体流の用途では、接触点は、衝突する液体流を分け、チャネルの側方に偏向させる効果がある。それにより、液体の横断方向への分布が増幅され、効率が改善される。さらに、接触点は、ガス流が主として、流れの主方向に平行でなく、チャネルの方向に走り、それによりガス側の物質移動を改善できる効果がある。
【0007】
デッド・ゾーンが接触点の周りに形成されることがある。そうしたデッド・ゾーンでは、液体は、構造化充填物上に位置する残りの液体よりも物質移動に関係する程度が低い。この現象は、米国特許第6,378,332号(B1)により既に知られており、この文献では、こうしたデッド・ゾーンの発生の低減を意図した極低温精留の充填物が記載されている。米国特許第6,378,332号による解決策は、個々の充填層のそれぞれの高い折り目及び平坦な折り目を交互に配置することによって、充填層間の接触点の数を減らすことにある。しかし、それでもその表面張力が小さいと、この点で全表面の理想的な濡れが生じ、すなわち接触点の背後のゾーンはまだ液体で濡れているようなシステムが考えられる。そのことから、実質的に利用可能な物質移動面積は、理想的な事例では接触点が必要とする接触面の分だけ単に異なることになる。その結果、接触点のみが、実質的に利用可能な物質移動面積の損失になる。その実質的に利用可能な物質移動面積は、全表面のうち、より揮発性の低い流体、ほとんどの場合液体によって濡れている部分である。
【0008】
このように、精留プロセスは、米国特許第6,378,332B1号により知られており、この文献では、交差チャネル構造を有し、すなわち互いに交差して配置された波状の又は折り畳んだ金属薄板から作製された構造化充填物が用いられている。隣接する金属薄板は、波形ピーク又はエッジに沿って互いに接触する。より揮発性の高い液体が、より揮発性の低い流体に対して逆流して折り畳んだ金属薄板間を流れることができ、物質移動が起きることが可能になる。米国特許第6,378,332号では、隣接する2つの金属薄板間の接触点の数を減らすプロセスが示される。そのために、各金属薄板の波形ピーク又はエッジの一部のみが最大高さを有するように、いろいろな波形ピーク又はエッジの高さを有する。したがって、金属薄板は、波形ピーク又はエッジに沿って最大高さのところでのみ互いに接触する。
【0009】
物質移動は、液体制御系の物質移動面積によって決定的に影響される。これは、特に、液相で化学反応が起きるときに当てはまる。そのために、欧州特許0671963号(EP0671963B1)は、単位体積当たり通常の慣例より多くの充填層を収容するために、さらに狭く充填層を組み合わせることを提案している。材料の消費が高く圧力損失が増えるためにこの点では不利になる。
【0010】
驚くべきことに、異なるように配置されたより少ない接触点を有し、一方でガス側で圧力損失を低減させ、他方で全表面を減らす充填物が、液体制御系で、特に液相で化学反応が起きる場合に、吸収能力に好影響をもたらすことが今や分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,378,332号明細書
【特許文献2】欧州特許0671963号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ザッター「熱分離プロセス」、VCH出版社、バイムハイム、1995年(K.Satter「Thermische Trennverfahren」、VCH Verlag、Weinheim 1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、このような充填物の構造は、好ましくは液体制御系で、ガス流からCO2を吸収するシステムで用いられることが有利である。この系では、物質移動は、液相での化学反応に決定的に影響を受ける。このCO2は、例えば発電所で生じる排気ガス中で発生するものである。CO2は、下流の吸収システムで吸収によって排ガス流から分離され、分離したCO2は圧縮され、例えばその後地下で保管される。生じる圧力降下ができるだけ小さく、さらに高い分離能力が可能になる、吸収のための構造化充填物が必要である。
【0014】
したがって、本発明の目的は、同じ数か又は少ない数の接触点を有する安定性を改善した構造化充填物を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、接触点による物質移動の微小変化があるように接触点の配置を選択することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、充填物内の圧力損失を低減することである。この理由は、ガス流を生じるエネルギーを節減することのできることであり、実現可能な分離能力の最適条件からできるだけ離れるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的は、スペーサ要素の使用、及び具体的には吸収の用途で全表面の液体による濡れを最大にできる接触点の配置によって実現される。構造化充填物の充填層は波形を有し、それらの波形によって複数の開放チャネルが形成される。チャネルは、第1の波形谷、第1の波形ピークおよび第2の波形ピークを含み、第1の波形ピーク及び第2の波形ピークは、第1の波形谷を境界とし、それぞれ第1の頂部及び第2の頂部を有する。第1の頂部の方向に延在するスペーサ要素が、第1の波形ピークの第1の頂部に形成され、第1の波形谷は谷底を有し、スペーサ要素はエッジを有し、波形谷の谷底からのエッジの鉛直方向間隔は、第1の波形ピークの第1の頂部の鉛直方向間隔よりも大きい。
【0018】
好ましい具体例によれば、第2のスペーサ要素が第2の頂部に配置される。或いは又はさらに、第3のスペーサ要素を第1の谷底に配置できる。当然、複数の第1、第2又は第3のスペーサ要素を充填層に設けることができる。
【0019】
各充填層は、第1の縁部境界及び第2の縁部境界を有することができ、第1の縁部境界は、第2の縁部境界に対して実質的に平行に配置される。具体的には、スペーサ要素を、第1の縁部境界の近傍及び/又は第2の縁部境界の近傍に配置できる。
【0020】
したがって、本発明のさらなる目的は、接触点の数が同じか又は少ない、安定性の改善された構造化充填物を提供することである。充填層は、安定性を改善するために波形を有し、波形の高さは実質的に一定である。
【0021】
好ましい実施例によれば、頂部の少なくとも一部分がエッジとして作製され、及び/又は波形谷の少なくとも一部がV字形に作製される。
【0022】
したがって、構造化充填物は、上記の具体例の1つによる第1の充填層、及び第2の充填層を含み、第2の充填層は第1の充填層のように波形を有し、第1の充填層及び第2の充填層は、第1の充填層のチャネルが第2の充填層のチャネルと交差するように配置される。第1の充填層は、第2の充填層とスペーサ要素を介して接触している。
【0023】
スペーサ要素を第1及び第2の充填層のそれぞれに配置することができる。第1の充填層のスペーサ要素は、第2の充填層のスペーサ要素と接触することができる。
【0024】
第1及び第2の充填層を上下(鉛直方向)に位置合わせすると、スペーサ要素を、具体的には互いの下に配置できる。
【0025】
第1及び第2の充填層を上下(鉛直方向)に位置合わせすると、スペーサ要素を互いに隣接して配置できる。
【0026】
本発明による充填層は構造化充填層から作製され、その折り目は全て高さが等しい。それにより、安定性の高い充填物が生産される。これは、特に大径の塔で重要である。個々の充填層間の交点の数は、本発明により充填層間にスペーサ要素を導入することによって実現される。
【0027】
これらのスペーサ要素を例えばワイヤ又は細いシート・メタル・ストリップ製の棒材として作製することができ、それらの棒材は、折り畳んだ充填層に特定の点に付けられる。したがって、定められた間隔で且つ定められた点で充填層を互いに分離させる。
【0028】
スペーサ要素を充填層と一体にし、したがって製造の際に実行しなければならないプロセス・ステップの数が少ないことがさらに有利であることが明らかである。そのために、スペーサ要素は、定められた点、例えば充填層の上側エッジ及び下側エッジで深絞りによって金属薄板から加工できる。個々の充填層が互いに上下に配置される場合は、チャネルは、充填層の上側エッジ及び下側エッジの縁部領域のスペーサ要素でのみ互いに接触する。したがって、接触点を大幅に減らし、且つ濡れる充填物表面を最大にし、同時に個々の充填層、したがって、複数の充填層から作製される充填物本体も安定化させる。
【0029】
上記の具体例のいずれかによる充填層は、具体的には水性吸収剤での吸収のために用いることができる。
【0030】
流体の精製のための装置は物質移動装置を含み、その物質移動装置は、より揮発性の高い流体及びより揮発性の低い流体を含み、構造化充填物を含み、その構造化充填物は、第1の充填層及び第2の充填層を含み、第1の充填層及び第2の充填層は、波形を有し、波形によって開放チャネルが形成され、第1の充填層のチャネルが、第2の充填層のチャネルと交差し、より揮発性の低い流体が、チャネル中を通ることができ、そのため膜としてのより揮発性の低い流体によってチャネルを濡らすことができ、より揮発性の高い流体は、膜内に位置し、より揮発性の高い流体とより揮発性の低い流体との間の物質移動によって、より揮発性の高い流体又はより揮発性の低い流体の精製を実行することができる。第1の充填層は、スペーサ要素を介して第2の充填層と接触する。
【0031】
スペーサ要素は、好ましくは棒材として作製される。今そのようなスペーサ要素が設けられる場合は、特に棒材が開放チャネルを境界とする頂部に位置する場合に、隣接する充填層の間隔を大きくすることができる。頂部は、波形ピーク又はエッジとして、すなわち、チャネルの隣接する2つの側面によって形成された先端部として理解できる。充填層間の間隔が大きくなると、充填物によって吸収される全体積を変更すべきではない場合は、より少ない充填層を物質移動装置に配置できる。しかし、そのことから、充填物の全表面が減少することになる。
【0032】
このことは明らかに全表面に当てはまる。しかし、この記載は特定の用途の物質移動領域に移すことができないことが示される。より揮発性の高い流体、具体的には気体の精製のために連続して行う複数の部分ステップで物質移動が起きる。分離しなければならない気体に含まれる成分は、液体の界面に拡散によって運ばれる。その後、これらの成分は、界面を通り、液体に吸収されなければならない。具体的には液体中でも化学反応が起きることができ、そのため、成分が液体中で結合したままであり液体と共に排出することができる。今や液体中の拡散速度又は反応速度が前述の部分ステップと比べてより時間がかかる場合は、こうした拡散速度又は反応速度は、全物質移動に関する制限要因を表す。物質移動を改善できるようにできるだけ大きい液体の物質移動領域を提供することが必要である。交点の数が減ったことにより低下したガス側物質移動が、言及した液体制御用途では決定的な役割を果たさない。
【0033】
本発明のさらなる目的は、接触点による物質移動の好ましくない変化が最小であるように接触点の配置を選択することである。
【0034】
スペーサ要素は、具体的には、上記前述の具体例のいずれか1つによる装置の第1の充填層の縁部領域に配置される。今なお接触点の一様の分布が望まれる従来技術とは対照的に、接触点の数が減り、全表面にわたるこうした接触点の一様の分布は、本発明では完全に不要である。数個の接触点がより狭く一緒に配置される場合は、流れの制限により接触点の背後で逆流を生じ、それにより、接触点の背後の濡れない領域は大幅に減る。したがって、濡れない表面が少ない数個の接触点が生じ、すなわち全表面に対する物質移動領域の比が最大になる。
【0035】
この装置の有利な具体例によれば、スペーサ要素は、充填層のそれぞれに位置する。この場合は、全ての充填層は、製造の手間及び/又はコストを削減する同じ構造を有する。バンドが連続して折り畳まれ、その間にスペーサ要素も生産されるという点で、充填層をこの形態で連続して製造できる。スペーサ要素を備える折り畳んだバンドは、所望の寸法に切断される。バンドの寸法を切断した部分は、充填層を生産し、互いに隣接して配置される際に充填層の交差する配置が生じるように第2の充填層をそれぞれ回転する。
【0036】
スペーサ要素は、充填層を上下に位置合わせすると、互いの下に又は互いの隣に配置されることが有利である。スペーサ要素は、具体的には上下又は水平に延在する接触点の列を形成する。
【0037】
したがって、本発明のさらなる目的は、接触点の数が同じか又は少ない、安定性の改善された構造化充填物を提供することである。波形は、安定性を改善するために波高が一定である。
【0038】
この装置は、特に好ましくは、吸収塔又は脱着塔で用いられる。
【0039】
構造化充填物を含む物質移動装置における流体の精製方法は、より揮発性の低い流体を物質移動装置に供給するステップと、供給したより揮発性の低い流体を全表面にわたって分布させるステップと、より揮発性の高い流体を物質移動装置中に流体入口領域に供給するステップと、より揮発性の高い流体が液体の逆流中で流れて、ガス入口領域のより揮発性の高い流体を全表面にわたって分布させるステップと、流体出口領域の充填物から出るより揮発性の高い流体を収集するステップとを含む。構造化充填物が第1の充填層及び第2の充填層を含み、第1の充填層及び第2の充填層が、波高が一定の波形を有し、それらの波形によって開放チャネルが形成され、第1の充填層のチャネルが第2の充填層のチャネルと交差し、より揮発性の高い流体が、流体入口領域から流体出口領域の方向にチャネル中を通って流れ、より揮発性の低い流体が、チャネル中を通って流れるより揮発性の高い流体を囲み、チャネルの壁に沿って流れる。第1の充填層は、第2の充填層とスペーサ要素を介して接触して、チャネルによって形成された物質移動領域にわたってより揮発性の高い流体とより揮発性の低い流体との間で物質移動が起きる。
【0040】
精製は、物質移動によって起き、その物質移動は、より揮発性の高い流体が精製されるべきときには、より揮発性の高い流体の流れから除去する成分がより揮発性の低い流体によって吸収される速度に応じて変わるか、又はより揮発性の低い流体が精製されるべきとき、すなわち分離が起きるときには、より揮発性の低い流体から除去する成分がより揮発性の低い流体から解放される速度に応じて変わる。
【0041】
より揮発性の高い流体は、具体的には気体である。例えばCO2を含むガスの精製でそのプロセスを用いることができる。より揮発性の低い流体は、化学反応が起き得る液体である。
【0042】
スペーサ要素の使用及び接触点の配置によって、物質移動装置での全表面の最大の液体による濡れが可能になる。
【0043】
構造化充填物は、好ましくは、折り目が全て一定の高さである充填層から作製される。それにより充填物の高い安定性がもたらされる。これは、具体的には大径の塔で特に重要である。個々の充填層の間の接触点の数は、本発明によって充填層間にスペーサ要素を導入することによって実現される。これらのスペーサ要素を棒材として作製でき、その棒材は、例えばワイヤ又は細い金属薄板のストリップ製であり、特定の点で折り畳んだ充填層に用いられ、したがって、定められた間隔及び定められた点で充填層を互いから分離する。金属製の充填層から深絞り又は打抜き加工によって、又は折り目高さが低くなるようにスペーサ要素の所望の位置の間の波形層及び谷状のくぼみを変形して、スペーサ要素を生産することができる。
【0044】
スペーサ要素は、定められた点、例えば充填層の上側エッジ及び下側エッジに設けられる。個々の充填層が互いに上に配置される場合は、チャネルは、充填層の上側エッジ及び下側エッジの縁部領域でスペーサ要素の位置でのみ接触する。したがって、接触点が大幅に減り、物質移動領域が最大になり、同時に個々の充填層の安定性がもたらされる。
【0045】
以下で図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】複数の充填層を含む、本発明による装置の図。
【図2a】図1による、隣接する2つの充填層を通る断面図。
【図2b】波形を有する、隣接する2つの充填層の図。
【図3】より揮発性の低い流体の流路を示す、従来の充填層の図。
【図4】米国特許第6,378,332号の解決策による交点の図。
【図5】本発明の第1の実施例の交点の図。
【図6】本発明のさらなる実施例の交点の図。
【図7】本発明によるスペーサ要素の配置の変形形態の図。
【図8a】スペーサ要素の寸法に関する図。
【図8b】図8aの実施例に関する三角関数の図。
【図9a】横断方向の荷重下の、従来技術による充填物の変形の図。
【図9b】横断方向の荷重下の、本発明による充填物の変形の図。
【図10】吸収システムの図。
【図11】物質移動が液側で制御された吸収に関するスペーサ要素がある場合とない場合の充填物の比較。
【実施例】
【0047】
図1に、充填物本体を形成する構造化充填物7のいくつかの充填層を含む、本発明による装置1を示す。2つの流体相間の物質移動の手段は、構造化充填物7として理解される。構造化充填物7は、物質移動装置2で用いられる。具体的には、物質移動装置を塔5として作製できる。
【0048】
構造化充填物7は、複数の充填層から作製される。これらの充填層は、互いに規則的に反復する幾何形状の関係を有する。こうした幾何形状の関係に関する一例として、隣接する充填層の間隔を選択することができる。その幾何形状の関係によれば、隣接する充填層の互いの間隔に周期的に同じ値を用いることができ、そのため、同じか又は少なくとも周期的に同じ間隔によって特徴付けられる構造物が、充填層を合計することにより生じる。周期性は構造化充填物中で見られ、それにより、充填物には規則的な構造が付与される。具体的には、この構造を波形として作製できる。
【0049】
それとは対照的に、バルク充填体(bulk−fill)本体充填物は、バルク充填体本体から、すなわち同じ幾何形状構造の要素から作製される。バルク充填体本体はそれぞれ、隣接するバルク充填体本体から所望の間隔を有することができ、そのため間隔の周期性の見分けがつかない。バルク充填体本体は、充填体として塔中に導入される。それらは塔のベース上に山を形成する。その山は、個々のバルク充填体本体の不規則な配置によって特徴付けられる。
【0050】
図1による充填層は、波形を有する薄い壁の要素から作製される。波形部分は、周期的に反復する連続した隆起部分、すなわち波形ピークと、谷状のくぼみ、すなわち波形谷とによって特徴付けられる。これらの波形は、具体的には、エッジが鋭く集まるジグザグ部分を有する折り目として作製できる。充填層は、隣接する2つの充填層の波形が流れの主方向に対してある角度で傾斜するように互いに関して配置される。隣接する充填層の波形は、互いに交差するように配置される。
【0051】
図2aに、図1による構造化充填物7の隣接する2つの充填層10、100を示す。第1の充填層10は、第2の充填層100に隣接して配置される。第1の充填層10及び第2の充填層100は、具体的には、金属薄板又は金属構造物でできた要素を含むことができる。しかし、代わりにプラスチック又はセラミック材料製の要素を含むこともできる。この点において、要素が全充填層を含むことができるが、単に全充填層の一部を形成することもできる。この要素の形状はプレートとすることができ、そのプレートは、波形、具体的にはジグザグ部分、又は丸いピーク及び谷底を有する波形を含む。その要素は、腐食などの化学的影響、又は温度など熱の影響、又は圧力など、より長く続く機械的影響に対する充填層の抵抗をもたらすためにプラスチック又はセラミックの被覆を有することができる。
【0052】
図2aで、充填物7の第1の面8の詳細を示す図に、第1の充填層10及び第2の充填層100を示す。充填物7の第1の面8は、流れの主方向6に実質的に鉛直方向(上下)に位置する。流れの方向は流れの主方向6と呼ばれ、こうした流れの主方向6では、塔5のうち設置物のない部分で、より揮発性の高い流体、具体的には気体が、上方向、すなわち塔5の上部の方向に流れる。その代わりに、反対方向を流れの主方向として定義することもできる。その場合は、流れの主方向は、より揮発性の低い流体、すなわち通常液体が、塔のうち設置物のない部分を通って、すなわち自由落下して流れる方向に対応する。充填物中では、流れが充填物の充填層によって偏向するので、流れの方向は流れの主方向から局部的にずれる。
【0053】
構造化充填物7の第1の充填層10は波形を有し、それらの波形によって複数の開放チャネル12、14、16が形成される。それらのチャネルは、第1の波形谷22、第1の波形ピーク32、及び第2の波形ピーク42を含む。第1の波形ピーク32及び第2の波形ピーク42は、第1の波形谷22を境界としている。第1の波形ピーク32及び第2の波形ピーク42は、それぞれ第1の頂部33及び第2の頂部43を有する。第2の頂部43の方向に延在し棒材として作製されたスペーサ要素44が、第2の波形ピーク42の第2の頂部43に形成される。第1の波形谷22は谷底23を有する。スペーサ要素44はエッジ45を有し、波形谷22の谷底23からの、エッジ45の鉛直(上下)方向間隔27は、波形谷22の谷底23から第2の波形ピーク42の第2の頂部43よりも大きい。同じことがスペーサ要素34のエッジ35に当てはまる。
【0054】
第1の波形ピーク32の第1の頂部33と第1の波形谷22の谷底23との間の鉛直方向間隔は、波高28と呼ばれる。したがって、その波高28は鉛直方向間隔27よりも小さい。本発明の充填層では、谷の高さ28は、具体的には実質的に一定であり、すなわち通常の公差の範囲にあり、公差は0.5mmの範囲内である。
【0055】
棒材34を第1の頂部33に配置することもできる。棒材24を第1の谷底23に選択的に配置することもできる。
【0056】
構造化充填物7の第2の充填層100は波形を有し、それらの波形によって複数の開放チャネル112、114、116が形成される。チャネルは、第1の波形谷122と、第1の波形ピーク132と、第2の波形ピーク142とを含む。第1の波形ピーク132及び第2の波形ピーク142は、第1の波形谷122を境界としている。第1の波形ピーク132及び第2の波形ピーク142は、それぞれ第1の頂部133及び第2の頂部143を有する。第1の頂部133の方向に延在する棒材134が、第1の波形ピーク132の第1の頂部133に形成される。第2の頂部143の方向に延在する棒材144が、第2の波形ピーク142の第2の頂部143に形成される。第1の波形谷122は谷底123を有する。棒材134はエッジ133を有し、棒材144はエッジ145を有し、波形谷122の谷底123からの、エッジ145の鉛直方向間隔は、波形谷122の谷底123から第2の波形ピーク142の第2の頂部143よりも大きい。頂部の少なくとも一部分をエッジとして作製できる。波形谷の少なくとも一部分をV字形に作製できる。谷底と頂部との間の鉛直方向間隔は、図2aによる充填層の全ての波形ピークに関して本質的に同じである。
【0057】
図2bに、波形を有する構造化充填物の隣接する2つの充填層を示す。それらの充填層によれば、頂部は鋭角のエッジを形成しないが、その代わりに丸い部分として作製される。他の点は図2aの説明を参照されたい。
【0058】
図3に、物質移動面積、例えば図2a又は図2bに示す充填物の充填層10上の接触点の配置の影響を示す。この点で、図3の従来技術による配置を示す。充填層10は充填層100を覆い、充填層100は図面の平面では背後にあるので見えない。充填層10の第1の頂部33、第2の頂部43、並びにそれらの間に配置された谷底23を一例として示す。第1及び第2の頂部33、43、及び谷底23は、折り目のエッジを形成する。頂部33、43は、充填層100に属する谷底123にある。充填層10及び充填層100はそれぞれ、元々さらなる複数の頂部及び谷底をそれぞれ含み、それらの頂部及び谷底は、明示した頂部及び谷底と違いがないのでより詳細には示さない。図3では、波形ピークの頂部に属する線は、谷底に属する線よりも太くなっている。さらに、長い破線は、第2の充填層100の波形ピークの頂部に用いられる。短い一点鎖線は、充填層100の谷底に用いられる。接触点48は、図3では円によって印を付けており、充填層10の谷底と充填層100の頂部とが出合う点に生じる。接触点48は、図示の2つの充填層10、100の全体の表面にわたって一様に分布している。
【0059】
接触点が互いに非常に近接して配置されると、それにより、より揮発性の低い流体によって濡れない小さいゾーン46が非常に多くなり、したがって全表面に対する物質移動面積が比較的小さくなることが図3から理解することができる。図3では、ゾーン46を1つしか示していない。矢印47はより揮発性の低い流体の流れを表す。
【0060】
図4に、米国特許第6,378,332号で提案されているように、例えば充填層の折り目によって接触点を減らした事例を示す。矢印47で表したより揮発性の低い流体の流れにより、濡れないゾーン46は全体に、確かに大幅に減ったが、それと引替えに大きくもなった。要するに、全表面での物質移動面積が小さくなった。図4による充填層の幾何形状は図9で詳細に考察する。
【0061】
図5に、本発明による隣接する2つの充填層10と100との間の接触点48の配置を示す。充填層100は、充填層10の背後に配置される。この図に関して図3を参照する。充填層10の表面に関して接触点の数が減らされている。それらの接触点は、具体的には全表面にわたって一様に分布していない。
【0062】
充填層10は、第1の縁部境界50及び第2の縁部境界60を含み、第1の縁部境界50は、第2の縁部境界60に実質的に平行に配置される。充填層を鉛直方向(上下)に位置合わせすると、縁部境界50は上側の境界に及び、第2の縁部境界60は下側の境界に及ぶ。充填層10はさらに、第1の縁部境界51及び第2の縁部境界61を含む。第1の縁部境界51及び第2の縁部境界61は、充填物の充填層を鉛直方向(上下)に位置合わせすると、物質移動装置、具体的には塔の内壁に隣接するか、又はセグメントの境界に沿って延在し、大型の物質移動装置では、さらなる充填物のセグメントが、それに隣接する。直径の大きい、例えば1m以上の物質移動装置では、充填物を分割して充填物セグメントにすることが、生産及び組立ての単純化に関して成功することが証明されている。充填物セグメントが、単に物質移動装置の断面の一部分にわたって延在するだけである。これらの複数の充填物セグメントは、充填物セグメントの総数が物質移動装置の全断面を覆うように互いに隣に配置される。接触点48は、第1及び/又は第2の縁部境界50、51、60、61の近傍に配置される。接触点は、スペーサ要素を有することが好ましい。それらのスペーサ要素をへこみ又は棒材として作製することができる。図2a又は図2bによるスペーサ要素34、44の1つと同じ構造を有することのできる複数のスペーサ要素が、第1の縁部境界50、51の近傍に配置される。
【0063】
或いは又はさらに、複数のスペーサ要素24を第2の縁部境界60、61の近傍に配置することができる。スペーサ要素は、当然、少なくとも第1及び第2の縁部境界のいずれか1つの近傍に配置することもできる。
【0064】
図6ではさらに、接触点が互いに隣に配置されないが互いに上に配置された、さらなる変形形態を示す。ここでも、接触点に沿って下る液体の流れが、接触点間の濡れない領域を最小にする。
【0065】
図5による接触点の水平な配置は、互いの上に配置された2つの充填物間の境界に液体が保持されるので、縁部の近くのより低い接触点の背後に濡れないゾーンを形成できないという利点を有する。ここで、他の妨げとなる影響により、濡れることは既に好ましくないので、一般に、接触点を縁部境界50、60、51、61の近傍に配置することが有利である。対照的に、充填層の内側に接触点を配置する場合は、それにより、そうでなければ妨げのないままであったであろう全表面のさらなる部分の濡れが不十分になる。
【0066】
図7に、本発明による充填層10の図を示す。充填層10をさらに図7に投影して示す。関連の構造化充填物1は、第1の充填層10及び第2の充填層100を含み、第2の充填層100は好ましくは第1の充填層10のような波形を有する。第1の充填層10及び第2の充填層100は、第1の充填層10のチャネルが第2の充填層100のチャネルと交差するように配置される。第1の充填層10は、少なくとも1つの棒材24、44を介して第2の充填層100と接触する。棒材は、第1及び第2の充填層10、100のいずれかの上に配置される。それらの棒材は、好ましくは図5又は図6のように配置される。第2の充填層100は、単純にするために図7には示さない。第1の充填層10の棒材は、第2の充填層100の棒材と接触している。棒材44は、第2の縁部境界60の近傍に配置され、好ましくは、充填層10の第1の側面11に隆起部分として作製されるように配置される。棒材24は、第1の縁部境界50の近傍に配置され、充填層10の第2の側面の13に隆起部分として作製される。充填層10の第1の側面11は、第2の側面13の反対側に配置され、充填層のそれぞれの1つの面を形成する。
【0067】
第1及び第2の充填層10、100を鉛直方向(上下)に位置合わせすると、具体的には、棒材を互いの下に配置することができる。その代わりに、又はそれと組み合わせて、第1及び第2の充填層を鉛直方向(上下)に位置合わせすると、棒材を互いに隣に配置することができる。
【0068】
棒材として作製されていないか又は排他的に棒材として作製されていない他のスペーサ要素を、充填層10、100の頂部に沿って配置することもできる。鉛直方向の折り目高さを越えて突出する所望の隆起部分によってこうしたスペーサ要素を形成できる。折り目高さは、波形ピークと隣接する波形谷との間の間隔として理解される。波形谷の頂部の曲率が有限の場合は、間隔は、互いに平行に配置された2つの頂部点の接線の鉛直方向間隔として定義される。曲率が無限大の場合、すなわち頂部が鋭角であり従って高さの点が明確な接線で定義されない場合は、充填層の片側の全ての頂部点を含む最も高い点を通るように平面を配置する。同様に、波形谷及びさらなる波形谷の全ての点を含む波形谷の最も低い点を通るように平面を配置する。これらの2つの平面は、互いに平行になるはずである。そのことから、折り目の高さはそれら2つの平面間の鉛直方向間隔になる。こうしたスペーサ要素は、頂部又はエッジの一部分にわたって延在する。スペーサ要素は、充填層のブランクから、例えば充填物金属薄板から深絞りによって製造することもでき、上側エッジに沿って配置することによって、より糸状の要素、例えばワイヤ要素又は棒材要素の形状にすることができる。それらのスペーサ要素は、有利には、折り目の波形ピーク又は谷の頂部上の片側に付与される。スペーサ要素は、好ましくは、反対の又は同じ縁部領域50、60に沿って付与される。
【0069】
こうした配置の利点は、ブランクを際限なく長く製造できる点である。こうしたブランクを、帯状材料から、例えばプレート様の金属薄板として作製できる。その後、特定の長さの部分を帯状材料から切断する。これらの部分は、例えば曲げ加工によって波形に変えられる。その代わりに、既に波形を有する帯状材料が用いられる。次いで、長さを切断され波形を有する部分が充填層を形成する。曲げ加工中にこれらの波形に深絞り手順を併せて、曲げ加工中に深絞りによってスペーサ要素を製造できる。或いは、棒材の間の領域は、異なるように曲げられるか、又は棒材に対して異なる高さを有するように少し押し下げられる生産プロセスが可能である。次に、第1の充填層10及び第2の充填層100を、第2の波形を全て回転することによって適合するようにして互いの上に配置する。スペーサ要素の各列は、上側及び下側縁部境界の近傍並びに/又は横方向の縁部境界の近傍の全ての充填層の間に配置される。
【0070】
図8に、第1の充填層10の波形の頂部33、43の深絞りしたスペーサ要素の長さの決定を示す。頂部33、43は、流れの主方向6に対して角度Φ(ファイ)だけ傾斜して配置され、第1の頂部33から第2の頂部43までの間隔b0を有する。間隔b0は、具体的にはこの点で一定である。さらに、間隔b0は第1の谷底23と第2の谷底26との間であると分かっている。図8では、第1の谷底23は第1の波形谷22と一致し、第2の谷底26は第2の波形谷25と一致する。スペーサ要素24、34、44の長さを図8では「a」とする。長さ「a」は、関連する頂部の方向のスペーサ要素の長手方向の範囲である。長さ「a」は、好ましくは、第1の充填層10の各頂部が、スペーサ要素が配置された位置に正確に、隣接する第2の充填層100の頂部との交点を有するように選択される。充填層10のスペーサ要素は、第2の充填層100の頂部の接触点と接触している。接触点は、第2の充填層100のスペーサ要素の一部分とすることができるが、必ずしもそうである必要はない。
a=b0/sin(2Φ)
【0071】
この関係式は、第1の充填層の傾斜角ファイ(Φ)が第2の充填層の傾斜角と同じ大きさであるという仮定の下で得られた。
【0072】
図8はこの仮定に基づいている。スペーサ要素の長さaは、第2の充填層の1つのスペーサ要素又はその波形ピークと正確に交差する程度に単に大きくなければならない。したがって、交点Aが第1のスペーサ要素のまさに端点に配置される場合は、交点Bは第2のスペーサ要素の長さaの少し外側になる。こうした極めて小さい違いを図面に示すことができないので、2つの交点を図8bの第2の充填層の第1の波形ピークに関して描いた。
【0073】
第2の充填層が図8bの充填層の位置に関して水平に左に移動する場合は、交点Aは、スペーサ要素の長さaに沿って、スペーサ要素のうち点Aの反対側に位置する端部まで移動する。
【0074】
図示の場合では、第2の充填層は、スペーサ要素との交点が点Aに存在するが実際にスペーサ要素との交点が点Bには存在しないというボーダーラインの事例がちょうど生じるように配置される。隣接する2つの充填層10、100の傾斜角が同じ大きさなので、第2の充填層の波形ピークの頂部に沿った間隔ABは同様にスペーサ要素の長さaに対応する。
【0075】
したがって、辺の長さがx、a、aの三角形ABCは二等辺三角形である。さらに、2つの辺aの間の角度がちょうど2Φになる。b0、波長、すなわち第1の充填層の波形ピークの隣接する2つの頂部の間の鉛直方向間隔を同様に描く。この三角形は、直角を有しエッジBで角度2Φを含まなければならない。
【0076】
したがって、傾斜角Φ及び波長b0を用いる、aに関する所望の関係が得られる。
a=b0/sin(2Φ)
【0077】
スペーサ要素の高さは、好ましくは、層の高さの10〜30%であり、そのため、ちょうどこの値の範囲の隙間が個々の充填層の間に生じる。それらの隙間は、水系の場合、最小で1.5mmになる。隙間が狭いと、液体、具体的には水が、隣接する2つのエッジ間に捕捉され、そこに留まり、液体ブリッジを形成する可能性があるので、不利になる虞がある。
【0078】
図9aに、接触点を減らすために折り目の高さが異なる周知の構築形状による充填層を示す。この構築形状の欠点は、矢印20、21で力の方向を示す、充填層を圧縮する上側及び下側の荷重がないことである。折り目は、第1の頂部65及び第2の頂部85並びにそれらの間に配置された波形谷75を含む。第1及び第2の頂部65、85は、図示していない隣接する充填層と接触できる。中間の波形谷66及び中間の波形ピーク67が、折り目を形成し、これらは第1の頂部65と谷底75との間に配置される。中間の波形谷66は中間の谷底68を有し、中間の波形ピーク67は中間の頂部69を有する。中間の谷底68と中間の頂部69との間の鉛直方向間隔70は、頂部65と谷底75との間の鉛直方向間隔71よりも小さい。鉛直方向間隔70は、図9aに示す実施例の鉛直方向間隔71のほぼ半分の大きさである。したがって、半分の高さの折り目が、中間の波形谷66及び中間の波形ピーク67によって形成される。このような高さが半分の折り目は、クランプル・ゾーンとして働き、変形することができる。一方では、こうした変形により、安定した充填物本体を構築することができないが、他方では、充填物の固定した層の高さの実測は不可能である。層の高さは、前に定義した鉛直方向間隔71に対応する。
【0079】
本発明による構築形状によってこの問題を避けることができる。図9bに示すように、各折り目にスペーサ要素を有する充填層を圧縮してずっと小さくすることができる。したがって、充填層の上側及び下側により高い荷重を掛けることができる。これにより、安定した充填物本体の設計が可能になり、層の高さを確実に実質的に一定にする。
【0080】
図10に吸収システム90を示す。吸収システム90は、2つの物質移動装置、吸収装置91及び脱着装置92を含み、それらの吸収装置91及び脱着装置92は、具体的には塔として作製される。ガス流からの1つ又は複数の成分を、吸収システムの吸収装置91中で分離する。このために、液体溶剤又は吸収剤が用いられる。脱着装置92では、吸収した成分を除去して溶剤又は吸収剤を清浄にする。
【0081】
吸収と精留は両方とも、現在の供給流93から1つ又は複数の成分を分離するための別々のプロセスである。精留は、個々の成分の異なる沸点に基づいて液体混合物を分離するために用いられる。精留とは、具体的には別々の複数の段を含む連続蒸留として理解すべきである。対照的に、吸収では、1つ又は複数の成分を、適切な溶剤又は吸収剤94の助けでガス流から分離する。したがって、吸収装置91の塔頂生成物は精製したガス流95である。吸収装置91の塔底生成物96は、1つ又は複数の成分を担持する吸収剤又は溶剤である。経済的、エネルギー的又は環境学的理由から、吸収剤又は溶剤を清浄にし、精製した溶剤又は吸収剤94としてそれを再度吸収装置に供給することが賢明なことがある。吸収剤又は溶剤の精製は、脱着装置92で行われる。担持吸収剤又は溶剤、すなわち吸収装置の塔底生成物96は、脱着装置の供給流を成す。この供給流は、図10によれば液体として脱着装置に供給される。脱着装置92は、上記の実施例のいずれか1つによる1つ又は複数の充填物を含むことができる。担持溶剤又は吸収剤は、水溜め97の方向に流れる。吸収剤又は溶剤は、少なくとも部分的に水溜め中で蒸発し、そのために、水溜め蒸発装置98が設けられる。水溜め蒸発装置で蒸発した吸収剤又は溶剤は、水溜めの方向に流れる担持吸収剤又は溶剤の供給流から塔の中で上昇する間に、分離する成分を含み、分離する成分を吸収する。したがって、分離する成分が濃縮したガス状部分の流れ99が、脱着装置中で上昇する。熱によって、すなわち凝縮によって、又は他の下流の分離ステップによって、ガス状部分の流れ99からこれらの分離する成分を分離することができる。
【0082】
その代わりに又はそれに加えて、吸収装置よりも低い圧力で脱着装置を動作させなければならない場合は膨張装置を設けることもでき、吸収装置より高い圧力で脱着装置を動作させなければならない場合は圧縮装置を設けることもできる。
【0083】
気液間の物質移動は、一般に、水溜めから塔頂まで精留の両方向での温度降下に基づいて起きる。沸点がより高い流体は、気相から凝縮し液体に吸収され、沸点がより低い流体は、液相から蒸発して気相になる。吸収の際には、物質移動は1方向にしか起きず、ここでは気体が液体によって吸収される。
【0084】
精留と吸収との違いは、精留ではガス流と液体流が互いに結合し、対照的に吸収では両方の流れを互いから独立させることができ、精留では特定の量の液体が蒸発し塔を塔頂の方向に上昇することである。全ての蒸気が塔頂で凝縮され、やはり少なくとも部分的に液体の流れとして塔中に戻るように案内される。したがって、考えられる液体の最大量は、塔頂に到達する蒸気の全凝縮量になるはずである。水溜め中でより多くの液体が蒸発する場合は、やはりより多くの液体が戻るように流れることができる。この点で両方の流れが互いに結合し、物質移動は、蒸気の流れに決定的に依存する。したがって、精留の用途は一般にガス側で制御される。
【0085】
これとは対照的に、ポンプ及びファンの助けで、吸収の用途で異なる動作条件を設定することができる。大きい吸収剤の流れを比較的小さいガス流に接触させることもでき、その逆も可能である。さらに、吸収剤は、それらにガス成分を、様々な形で、物理的に、化学反応によって、又は物理的にも化学的にも結合させることができる。この点で、特定のガス成分、及びガスの濃度、並びに液体に関する吸収剤又は溶剤の選択は、物質移動が制御されるのはガス側か又は液側かに対して決め手となる。
【0086】
スペーサ要素を含む充填物のプロトタイプを製造して、本発明による充填物の実用性をチェックした。従来の充填物からいくつかの充填層を取り除き、他の充填層間の厚さと同じ厚さのスペーサ要素を挿入して、空いた空間を均一化した。したがって、各充填層は、隣接する2つの充填層までの、固定的に規定された間隔を含み、それにより幅の規定された隙間が全ての充填層の間に生じることになる。試験した事例では、幅は1.5mmである。さらに、このプロトタイプの接触点の数は、79,500m−3から18,000m−3まで減り、全表面は205m2/m3から190m2/m3まで減った。他の対策が重ねてこうした損失を生じることがない場合は、分離能力又は充填物の効率を低減することによって全表面を減少させなければならない。米国特許第6,378,322号によれば、全表面が減少しても精留で有利な分離効果を示す実施例は可能である。
【0087】
上記で説明したプロトタイプは、精留の用途で最初に試験したものである。そのために、内径250mmの試験用の塔に充填物を設置し、試験系のクロロベンゼン/エチルベンゼンを用いて測定した。これらの試験は、あらかじめ想定したものを記録する。隙間が原因で生じるより開放した断面により、充填物全体にわたる圧力損失はスペーサ要素なしの充填物と比較してわずかに減る。対照的に、全表面の減少により分離能力が低下する。スペーサ要素を有する充填物は、スペーサ要素なしのものよりも、1メートル当たりの分離段(NTSM(number of theoretical stages per meter):1メートル当たりの理論段数)が少ない。装填する点よりも下、この例ではF因子が3Pa0.5よりも下の点は比較に対して決め手となる。F因子は、気体密度の根を乗じた、空の塔の平均気体速度の尺度である。F因子は、気体の運動エネルギーに比例する。装填する点は、気液相互作用が増大する点として理解される。
【0088】
対応するNTSM値は、スペーサ要素のある充填物では1.6/mであり、スペーサ要素のない充填物では1.7/mである。NTSM値は分離能力に関する指標である。NTSM値が高いと、充填物の分離能力が高い。したがって、分離能力は全表面に関して改善されなかった。
【0089】
したがって、これらの現在の所見によると、接触点を減らし充填層間の間隔を大きくした本発明による充填物は明らかに圧力損失を低減するが、さらに精留では分離能力も低下する。その結果、このような充填物は、精留では用いず、したがって、精留の場合に明らかに有利な米国特許第6,378,322B1号で提供された充填物とは根本的に異なるものである。
【0090】
驚くべきことに、本発明による充填物により全表面当たりの分離能力が改善される物質系(mass system)があることがさらなる実験で分かった。この点の主な焦点は、一般に全表面の濡れが不十分な傾向がある、表面張力が大きい系、通常水系である。水溶液は、表面張力が高いため、利用可能な表面を非常に大量の流れで液膜として完全に濡らすだけなので、とりわけますます吸収で用いられている。対照的に、充填物の全表面の濡れが不十分だと、分離能力が低下することになる。したがって、構造化充填物は、吸収剤の用途では、充填物に対する圧力損失が小さいこと、及び液体によってできるだけ完全に濡らさなければならない全表面をできるだけ大きくすることという特性を有するべきである。
【0091】
したがって、接触点を減らすと吸収能力が改善される理由の仮説によると、使用する液体の不十分な濡れの特性により、液体によって全く濡れないゾーンが充填層上の接触点の背後に形成される。したがって、全表面を全範囲にわたって液体によって濡らすことはできない。液体は、接触点で流れることが防止され、保持され、偏向する。水が膜のような平面を流れ落ちるときに同様の現象を確認することもでき、その流れは、導入した物体(例えばその平面上に置いた指)によって突然乱される。膜状の流れは、その物体の背後で開き、乾いた、濡れていない表面が生じ、その物体を流れから取り除いて初めて濡れる。
【0092】
検査した物質系は、液側で制御される水系である。周囲空気にあるCO2は、吸収され、苛性アルカリ液によって化学結合する。液体中の化学反応がこの点で非常に速く起きるので、吸収は、原則的に気相と液相との間の界面に限定される。これは、全表面の物質移動面積の部分がここでは決定的に重要であることを意味する。他の全ての機構は副次的な役割を果たすに過ぎない。
【0093】
適切な対応関係(ダス他「液負荷の大きいNutterリングの有効界面および液体貯蔵」ケミカル・エンジニアリング・アンド・テクノロジー、第24巻第7号、2001年、第716〜723頁(Duss et al:「Effective Interfacial Area and Liquid Hold−up of Nutter Rings at High Liquid Loads」、Chemical Engineering & Technology 24(7)、2001、716〜723)で、実質的に利用可能な物質移動面積を、得られた測定結果から直接決定することができる。図11に示すように、スペーサ要素を有し接触点を減らした充填物は、スペーサ要素がなく全表面がより小さいにもかかわらず多数の接触点を有する充填物よりも物質移動面積が大きくなる。これは、接触点を減らし接触点を適切に配置することによって、液側で制御される物質系の分離能力を実際に改善できることを意味する。スペーサ要素を使用して圧力損失を同様に低減することができ、より少ない数の充填層しか必要ないので材料の量を減らすことができる。図11の下側の曲線は、市販の構造化充填物、タイプMellapak(商標)の場合の物質移動面積を示し、より揮発性の低い流体に関する物質移動装置の荷重を増大し、荷重Lをx軸上に単位m3/m2hで示す。図11の上側の曲線は、それに対して、本発明による構造化充填物の場合の全表面に対する物質移動面積の比較を示す。その結果、全ての測定点で、スペーサ要素を有する充填物用いる方がスペーサ要素のない充填物よりも上記の比が大きいと考えられる。
【0094】
こうした系は主に、問題となる成分を反応性水溶液の助けで排ガス流から除去しなければならない排気ガスの吸収剤供給で用いられる。MEA又はカリなど、有機又は無機の塩基性物質を含むことのできる水性吸収剤の助けで発電所の排気ガスから環境に有害なCO2を吸収することが、本明細書での一例である。
【0095】
こうした物質系では、接触点を減らした充填物によると、多数の接触点を有し充填層間に隙間がない類似の充填物に関して圧力降下が大幅に低減され、同様に分離能力が非常に増大される。
【0096】
このように、この充填物は、基本的な水溶液を用いて特に発電所の排気ガスからCO2吸収で用いるのに非常に適している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造化充填物、及びこのような構造化充填物を収容する塔、具体的には吸収塔に関するものである。とりわけ、本発明は、圧力損失を低減させ、特に、煙道ガスからのCO2吸収などの、水性吸収剤を用いた吸収の用途に適した構造化充填物に係るものである。
【背景技術】
【0002】
構造化充填物の原理は、数十年にわたり吸収で用いられている(ザッター「熱分離プロセス」、VCH出版社、バインハイム、1995年(K.Satter「Thermische Trennverfahren」、VCH Verlag、Weinheim 1995)参照)。なぜならば、入力エネルギー、及び吸収塔の構築高さをそれよりも節減できるからである。
【0003】
構造化充填物は、具体例としては次々に配置した折り畳んだ金属薄板として商用に作製され、その構造は、互いに連続して交差する傾斜したチャネルを有する。これらのチャネルは、充填物内の気相及び液相の流れに好影響を与え、相間の物質移動を促進する。すなわち、気相及び液相が、充填物のチャネル内で接触し、相間の物質移動が促進される。
【0004】
通常、構造化充填物の分離能力を向上させるには、構造化充填物の表面を大きくする。これは、通常、層の数を増やし及び/又はチャネルの幾何形状を狭くすることによって実現される。充填層の幾何学上の合計表面を計算することにより全表面が得られる。しかし、これらの対策は、構造化充填物中の圧力降下を増大させることになる。しかし、圧力降下を減らすために充填物表面を小さくしなければならず、それにより、分離能力、すなわち充填物の効率が低下する。さらに、より開放した交差チャネルを設けることができる。より開放した交差チャネルとは、チャネルの傾斜角が流れの主方向に対して小さくなるように選択されることを意味する。これは、用途に応じて圧力降下と最良の可能な分離能力との間の最適条件を見つけなければならないことを意味する。
【0005】
しかし、交差チャネルは、多数の接触点を有し、それらの接触点は、いくつかの用途では好影響を与える可能性があるが、他の用途では悪影響を及ぼす虞がある。
【0006】
有機流体による精留プロセスなど、良好な濡れを伴う液体流の用途では、接触点は、衝突する液体流を分け、チャネルの側方に偏向させる効果がある。それにより、液体の横断方向への分布が増幅され、効率が改善される。さらに、接触点は、ガス流が主として、流れの主方向に平行でなく、チャネルの方向に走り、それによりガス側の物質移動を改善できる効果がある。
【0007】
デッド・ゾーンが接触点の周りに形成されることがある。そうしたデッド・ゾーンでは、液体は、構造化充填物上に位置する残りの液体よりも物質移動に関係する程度が低い。この現象は、米国特許第6,378,332号(B1)により既に知られており、この文献では、こうしたデッド・ゾーンの発生の低減を意図した極低温精留の充填物が記載されている。米国特許第6,378,332号による解決策は、個々の充填層のそれぞれの高い折り目及び平坦な折り目を交互に配置することによって、充填層間の接触点の数を減らすことにある。しかし、それでもその表面張力が小さいと、この点で全表面の理想的な濡れが生じ、すなわち接触点の背後のゾーンはまだ液体で濡れているようなシステムが考えられる。そのことから、実質的に利用可能な物質移動面積は、理想的な事例では接触点が必要とする接触面の分だけ単に異なることになる。その結果、接触点のみが、実質的に利用可能な物質移動面積の損失になる。その実質的に利用可能な物質移動面積は、全表面のうち、より揮発性の低い流体、ほとんどの場合液体によって濡れている部分である。
【0008】
このように、精留プロセスは、米国特許第6,378,332B1号により知られており、この文献では、交差チャネル構造を有し、すなわち互いに交差して配置された波状の又は折り畳んだ金属薄板から作製された構造化充填物が用いられている。隣接する金属薄板は、波形ピーク又はエッジに沿って互いに接触する。より揮発性の高い液体が、より揮発性の低い流体に対して逆流して折り畳んだ金属薄板間を流れることができ、物質移動が起きることが可能になる。米国特許第6,378,332号では、隣接する2つの金属薄板間の接触点の数を減らすプロセスが示される。そのために、各金属薄板の波形ピーク又はエッジの一部のみが最大高さを有するように、いろいろな波形ピーク又はエッジの高さを有する。したがって、金属薄板は、波形ピーク又はエッジに沿って最大高さのところでのみ互いに接触する。
【0009】
物質移動は、液体制御系の物質移動面積によって決定的に影響される。これは、特に、液相で化学反応が起きるときに当てはまる。そのために、欧州特許0671963号(EP0671963B1)は、単位体積当たり通常の慣例より多くの充填層を収容するために、さらに狭く充填層を組み合わせることを提案している。材料の消費が高く圧力損失が増えるためにこの点では不利になる。
【0010】
驚くべきことに、異なるように配置されたより少ない接触点を有し、一方でガス側で圧力損失を低減させ、他方で全表面を減らす充填物が、液体制御系で、特に液相で化学反応が起きる場合に、吸収能力に好影響をもたらすことが今や分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,378,332号明細書
【特許文献2】欧州特許0671963号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ザッター「熱分離プロセス」、VCH出版社、バイムハイム、1995年(K.Satter「Thermische Trennverfahren」、VCH Verlag、Weinheim 1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、このような充填物の構造は、好ましくは液体制御系で、ガス流からCO2を吸収するシステムで用いられることが有利である。この系では、物質移動は、液相での化学反応に決定的に影響を受ける。このCO2は、例えば発電所で生じる排気ガス中で発生するものである。CO2は、下流の吸収システムで吸収によって排ガス流から分離され、分離したCO2は圧縮され、例えばその後地下で保管される。生じる圧力降下ができるだけ小さく、さらに高い分離能力が可能になる、吸収のための構造化充填物が必要である。
【0014】
したがって、本発明の目的は、同じ数か又は少ない数の接触点を有する安定性を改善した構造化充填物を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、接触点による物質移動の微小変化があるように接触点の配置を選択することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、充填物内の圧力損失を低減することである。この理由は、ガス流を生じるエネルギーを節減することのできることであり、実現可能な分離能力の最適条件からできるだけ離れるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的は、スペーサ要素の使用、及び具体的には吸収の用途で全表面の液体による濡れを最大にできる接触点の配置によって実現される。構造化充填物の充填層は波形を有し、それらの波形によって複数の開放チャネルが形成される。チャネルは、第1の波形谷、第1の波形ピークおよび第2の波形ピークを含み、第1の波形ピーク及び第2の波形ピークは、第1の波形谷を境界とし、それぞれ第1の頂部及び第2の頂部を有する。第1の頂部の方向に延在するスペーサ要素が、第1の波形ピークの第1の頂部に形成され、第1の波形谷は谷底を有し、スペーサ要素はエッジを有し、波形谷の谷底からのエッジの鉛直方向間隔は、第1の波形ピークの第1の頂部の鉛直方向間隔よりも大きい。
【0018】
好ましい具体例によれば、第2のスペーサ要素が第2の頂部に配置される。或いは又はさらに、第3のスペーサ要素を第1の谷底に配置できる。当然、複数の第1、第2又は第3のスペーサ要素を充填層に設けることができる。
【0019】
各充填層は、第1の縁部境界及び第2の縁部境界を有することができ、第1の縁部境界は、第2の縁部境界に対して実質的に平行に配置される。具体的には、スペーサ要素を、第1の縁部境界の近傍及び/又は第2の縁部境界の近傍に配置できる。
【0020】
したがって、本発明のさらなる目的は、接触点の数が同じか又は少ない、安定性の改善された構造化充填物を提供することである。充填層は、安定性を改善するために波形を有し、波形の高さは実質的に一定である。
【0021】
好ましい実施例によれば、頂部の少なくとも一部分がエッジとして作製され、及び/又は波形谷の少なくとも一部がV字形に作製される。
【0022】
したがって、構造化充填物は、上記の具体例の1つによる第1の充填層、及び第2の充填層を含み、第2の充填層は第1の充填層のように波形を有し、第1の充填層及び第2の充填層は、第1の充填層のチャネルが第2の充填層のチャネルと交差するように配置される。第1の充填層は、第2の充填層とスペーサ要素を介して接触している。
【0023】
スペーサ要素を第1及び第2の充填層のそれぞれに配置することができる。第1の充填層のスペーサ要素は、第2の充填層のスペーサ要素と接触することができる。
【0024】
第1及び第2の充填層を上下(鉛直方向)に位置合わせすると、スペーサ要素を、具体的には互いの下に配置できる。
【0025】
第1及び第2の充填層を上下(鉛直方向)に位置合わせすると、スペーサ要素を互いに隣接して配置できる。
【0026】
本発明による充填層は構造化充填層から作製され、その折り目は全て高さが等しい。それにより、安定性の高い充填物が生産される。これは、特に大径の塔で重要である。個々の充填層間の交点の数は、本発明により充填層間にスペーサ要素を導入することによって実現される。
【0027】
これらのスペーサ要素を例えばワイヤ又は細いシート・メタル・ストリップ製の棒材として作製することができ、それらの棒材は、折り畳んだ充填層に特定の点に付けられる。したがって、定められた間隔で且つ定められた点で充填層を互いに分離させる。
【0028】
スペーサ要素を充填層と一体にし、したがって製造の際に実行しなければならないプロセス・ステップの数が少ないことがさらに有利であることが明らかである。そのために、スペーサ要素は、定められた点、例えば充填層の上側エッジ及び下側エッジで深絞りによって金属薄板から加工できる。個々の充填層が互いに上下に配置される場合は、チャネルは、充填層の上側エッジ及び下側エッジの縁部領域のスペーサ要素でのみ互いに接触する。したがって、接触点を大幅に減らし、且つ濡れる充填物表面を最大にし、同時に個々の充填層、したがって、複数の充填層から作製される充填物本体も安定化させる。
【0029】
上記の具体例のいずれかによる充填層は、具体的には水性吸収剤での吸収のために用いることができる。
【0030】
流体の精製のための装置は物質移動装置を含み、その物質移動装置は、より揮発性の高い流体及びより揮発性の低い流体を含み、構造化充填物を含み、その構造化充填物は、第1の充填層及び第2の充填層を含み、第1の充填層及び第2の充填層は、波形を有し、波形によって開放チャネルが形成され、第1の充填層のチャネルが、第2の充填層のチャネルと交差し、より揮発性の低い流体が、チャネル中を通ることができ、そのため膜としてのより揮発性の低い流体によってチャネルを濡らすことができ、より揮発性の高い流体は、膜内に位置し、より揮発性の高い流体とより揮発性の低い流体との間の物質移動によって、より揮発性の高い流体又はより揮発性の低い流体の精製を実行することができる。第1の充填層は、スペーサ要素を介して第2の充填層と接触する。
【0031】
スペーサ要素は、好ましくは棒材として作製される。今そのようなスペーサ要素が設けられる場合は、特に棒材が開放チャネルを境界とする頂部に位置する場合に、隣接する充填層の間隔を大きくすることができる。頂部は、波形ピーク又はエッジとして、すなわち、チャネルの隣接する2つの側面によって形成された先端部として理解できる。充填層間の間隔が大きくなると、充填物によって吸収される全体積を変更すべきではない場合は、より少ない充填層を物質移動装置に配置できる。しかし、そのことから、充填物の全表面が減少することになる。
【0032】
このことは明らかに全表面に当てはまる。しかし、この記載は特定の用途の物質移動領域に移すことができないことが示される。より揮発性の高い流体、具体的には気体の精製のために連続して行う複数の部分ステップで物質移動が起きる。分離しなければならない気体に含まれる成分は、液体の界面に拡散によって運ばれる。その後、これらの成分は、界面を通り、液体に吸収されなければならない。具体的には液体中でも化学反応が起きることができ、そのため、成分が液体中で結合したままであり液体と共に排出することができる。今や液体中の拡散速度又は反応速度が前述の部分ステップと比べてより時間がかかる場合は、こうした拡散速度又は反応速度は、全物質移動に関する制限要因を表す。物質移動を改善できるようにできるだけ大きい液体の物質移動領域を提供することが必要である。交点の数が減ったことにより低下したガス側物質移動が、言及した液体制御用途では決定的な役割を果たさない。
【0033】
本発明のさらなる目的は、接触点による物質移動の好ましくない変化が最小であるように接触点の配置を選択することである。
【0034】
スペーサ要素は、具体的には、上記前述の具体例のいずれか1つによる装置の第1の充填層の縁部領域に配置される。今なお接触点の一様の分布が望まれる従来技術とは対照的に、接触点の数が減り、全表面にわたるこうした接触点の一様の分布は、本発明では完全に不要である。数個の接触点がより狭く一緒に配置される場合は、流れの制限により接触点の背後で逆流を生じ、それにより、接触点の背後の濡れない領域は大幅に減る。したがって、濡れない表面が少ない数個の接触点が生じ、すなわち全表面に対する物質移動領域の比が最大になる。
【0035】
この装置の有利な具体例によれば、スペーサ要素は、充填層のそれぞれに位置する。この場合は、全ての充填層は、製造の手間及び/又はコストを削減する同じ構造を有する。バンドが連続して折り畳まれ、その間にスペーサ要素も生産されるという点で、充填層をこの形態で連続して製造できる。スペーサ要素を備える折り畳んだバンドは、所望の寸法に切断される。バンドの寸法を切断した部分は、充填層を生産し、互いに隣接して配置される際に充填層の交差する配置が生じるように第2の充填層をそれぞれ回転する。
【0036】
スペーサ要素は、充填層を上下に位置合わせすると、互いの下に又は互いの隣に配置されることが有利である。スペーサ要素は、具体的には上下又は水平に延在する接触点の列を形成する。
【0037】
したがって、本発明のさらなる目的は、接触点の数が同じか又は少ない、安定性の改善された構造化充填物を提供することである。波形は、安定性を改善するために波高が一定である。
【0038】
この装置は、特に好ましくは、吸収塔又は脱着塔で用いられる。
【0039】
構造化充填物を含む物質移動装置における流体の精製方法は、より揮発性の低い流体を物質移動装置に供給するステップと、供給したより揮発性の低い流体を全表面にわたって分布させるステップと、より揮発性の高い流体を物質移動装置中に流体入口領域に供給するステップと、より揮発性の高い流体が液体の逆流中で流れて、ガス入口領域のより揮発性の高い流体を全表面にわたって分布させるステップと、流体出口領域の充填物から出るより揮発性の高い流体を収集するステップとを含む。構造化充填物が第1の充填層及び第2の充填層を含み、第1の充填層及び第2の充填層が、波高が一定の波形を有し、それらの波形によって開放チャネルが形成され、第1の充填層のチャネルが第2の充填層のチャネルと交差し、より揮発性の高い流体が、流体入口領域から流体出口領域の方向にチャネル中を通って流れ、より揮発性の低い流体が、チャネル中を通って流れるより揮発性の高い流体を囲み、チャネルの壁に沿って流れる。第1の充填層は、第2の充填層とスペーサ要素を介して接触して、チャネルによって形成された物質移動領域にわたってより揮発性の高い流体とより揮発性の低い流体との間で物質移動が起きる。
【0040】
精製は、物質移動によって起き、その物質移動は、より揮発性の高い流体が精製されるべきときには、より揮発性の高い流体の流れから除去する成分がより揮発性の低い流体によって吸収される速度に応じて変わるか、又はより揮発性の低い流体が精製されるべきとき、すなわち分離が起きるときには、より揮発性の低い流体から除去する成分がより揮発性の低い流体から解放される速度に応じて変わる。
【0041】
より揮発性の高い流体は、具体的には気体である。例えばCO2を含むガスの精製でそのプロセスを用いることができる。より揮発性の低い流体は、化学反応が起き得る液体である。
【0042】
スペーサ要素の使用及び接触点の配置によって、物質移動装置での全表面の最大の液体による濡れが可能になる。
【0043】
構造化充填物は、好ましくは、折り目が全て一定の高さである充填層から作製される。それにより充填物の高い安定性がもたらされる。これは、具体的には大径の塔で特に重要である。個々の充填層の間の接触点の数は、本発明によって充填層間にスペーサ要素を導入することによって実現される。これらのスペーサ要素を棒材として作製でき、その棒材は、例えばワイヤ又は細い金属薄板のストリップ製であり、特定の点で折り畳んだ充填層に用いられ、したがって、定められた間隔及び定められた点で充填層を互いから分離する。金属製の充填層から深絞り又は打抜き加工によって、又は折り目高さが低くなるようにスペーサ要素の所望の位置の間の波形層及び谷状のくぼみを変形して、スペーサ要素を生産することができる。
【0044】
スペーサ要素は、定められた点、例えば充填層の上側エッジ及び下側エッジに設けられる。個々の充填層が互いに上に配置される場合は、チャネルは、充填層の上側エッジ及び下側エッジの縁部領域でスペーサ要素の位置でのみ接触する。したがって、接触点が大幅に減り、物質移動領域が最大になり、同時に個々の充填層の安定性がもたらされる。
【0045】
以下で図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】複数の充填層を含む、本発明による装置の図。
【図2a】図1による、隣接する2つの充填層を通る断面図。
【図2b】波形を有する、隣接する2つの充填層の図。
【図3】より揮発性の低い流体の流路を示す、従来の充填層の図。
【図4】米国特許第6,378,332号の解決策による交点の図。
【図5】本発明の第1の実施例の交点の図。
【図6】本発明のさらなる実施例の交点の図。
【図7】本発明によるスペーサ要素の配置の変形形態の図。
【図8a】スペーサ要素の寸法に関する図。
【図8b】図8aの実施例に関する三角関数の図。
【図9a】横断方向の荷重下の、従来技術による充填物の変形の図。
【図9b】横断方向の荷重下の、本発明による充填物の変形の図。
【図10】吸収システムの図。
【図11】物質移動が液側で制御された吸収に関するスペーサ要素がある場合とない場合の充填物の比較。
【実施例】
【0047】
図1に、充填物本体を形成する構造化充填物7のいくつかの充填層を含む、本発明による装置1を示す。2つの流体相間の物質移動の手段は、構造化充填物7として理解される。構造化充填物7は、物質移動装置2で用いられる。具体的には、物質移動装置を塔5として作製できる。
【0048】
構造化充填物7は、複数の充填層から作製される。これらの充填層は、互いに規則的に反復する幾何形状の関係を有する。こうした幾何形状の関係に関する一例として、隣接する充填層の間隔を選択することができる。その幾何形状の関係によれば、隣接する充填層の互いの間隔に周期的に同じ値を用いることができ、そのため、同じか又は少なくとも周期的に同じ間隔によって特徴付けられる構造物が、充填層を合計することにより生じる。周期性は構造化充填物中で見られ、それにより、充填物には規則的な構造が付与される。具体的には、この構造を波形として作製できる。
【0049】
それとは対照的に、バルク充填体(bulk−fill)本体充填物は、バルク充填体本体から、すなわち同じ幾何形状構造の要素から作製される。バルク充填体本体はそれぞれ、隣接するバルク充填体本体から所望の間隔を有することができ、そのため間隔の周期性の見分けがつかない。バルク充填体本体は、充填体として塔中に導入される。それらは塔のベース上に山を形成する。その山は、個々のバルク充填体本体の不規則な配置によって特徴付けられる。
【0050】
図1による充填層は、波形を有する薄い壁の要素から作製される。波形部分は、周期的に反復する連続した隆起部分、すなわち波形ピークと、谷状のくぼみ、すなわち波形谷とによって特徴付けられる。これらの波形は、具体的には、エッジが鋭く集まるジグザグ部分を有する折り目として作製できる。充填層は、隣接する2つの充填層の波形が流れの主方向に対してある角度で傾斜するように互いに関して配置される。隣接する充填層の波形は、互いに交差するように配置される。
【0051】
図2aに、図1による構造化充填物7の隣接する2つの充填層10、100を示す。第1の充填層10は、第2の充填層100に隣接して配置される。第1の充填層10及び第2の充填層100は、具体的には、金属薄板又は金属構造物でできた要素を含むことができる。しかし、代わりにプラスチック又はセラミック材料製の要素を含むこともできる。この点において、要素が全充填層を含むことができるが、単に全充填層の一部を形成することもできる。この要素の形状はプレートとすることができ、そのプレートは、波形、具体的にはジグザグ部分、又は丸いピーク及び谷底を有する波形を含む。その要素は、腐食などの化学的影響、又は温度など熱の影響、又は圧力など、より長く続く機械的影響に対する充填層の抵抗をもたらすためにプラスチック又はセラミックの被覆を有することができる。
【0052】
図2aで、充填物7の第1の面8の詳細を示す図に、第1の充填層10及び第2の充填層100を示す。充填物7の第1の面8は、流れの主方向6に実質的に鉛直方向(上下)に位置する。流れの方向は流れの主方向6と呼ばれ、こうした流れの主方向6では、塔5のうち設置物のない部分で、より揮発性の高い流体、具体的には気体が、上方向、すなわち塔5の上部の方向に流れる。その代わりに、反対方向を流れの主方向として定義することもできる。その場合は、流れの主方向は、より揮発性の低い流体、すなわち通常液体が、塔のうち設置物のない部分を通って、すなわち自由落下して流れる方向に対応する。充填物中では、流れが充填物の充填層によって偏向するので、流れの方向は流れの主方向から局部的にずれる。
【0053】
構造化充填物7の第1の充填層10は波形を有し、それらの波形によって複数の開放チャネル12、14、16が形成される。それらのチャネルは、第1の波形谷22、第1の波形ピーク32、及び第2の波形ピーク42を含む。第1の波形ピーク32及び第2の波形ピーク42は、第1の波形谷22を境界としている。第1の波形ピーク32及び第2の波形ピーク42は、それぞれ第1の頂部33及び第2の頂部43を有する。第2の頂部43の方向に延在し棒材として作製されたスペーサ要素44が、第2の波形ピーク42の第2の頂部43に形成される。第1の波形谷22は谷底23を有する。スペーサ要素44はエッジ45を有し、波形谷22の谷底23からの、エッジ45の鉛直(上下)方向間隔27は、波形谷22の谷底23から第2の波形ピーク42の第2の頂部43よりも大きい。同じことがスペーサ要素34のエッジ35に当てはまる。
【0054】
第1の波形ピーク32の第1の頂部33と第1の波形谷22の谷底23との間の鉛直方向間隔は、波高28と呼ばれる。したがって、その波高28は鉛直方向間隔27よりも小さい。本発明の充填層では、谷の高さ28は、具体的には実質的に一定であり、すなわち通常の公差の範囲にあり、公差は0.5mmの範囲内である。
【0055】
棒材34を第1の頂部33に配置することもできる。棒材24を第1の谷底23に選択的に配置することもできる。
【0056】
構造化充填物7の第2の充填層100は波形を有し、それらの波形によって複数の開放チャネル112、114、116が形成される。チャネルは、第1の波形谷122と、第1の波形ピーク132と、第2の波形ピーク142とを含む。第1の波形ピーク132及び第2の波形ピーク142は、第1の波形谷122を境界としている。第1の波形ピーク132及び第2の波形ピーク142は、それぞれ第1の頂部133及び第2の頂部143を有する。第1の頂部133の方向に延在する棒材134が、第1の波形ピーク132の第1の頂部133に形成される。第2の頂部143の方向に延在する棒材144が、第2の波形ピーク142の第2の頂部143に形成される。第1の波形谷122は谷底123を有する。棒材134はエッジ133を有し、棒材144はエッジ145を有し、波形谷122の谷底123からの、エッジ145の鉛直方向間隔は、波形谷122の谷底123から第2の波形ピーク142の第2の頂部143よりも大きい。頂部の少なくとも一部分をエッジとして作製できる。波形谷の少なくとも一部分をV字形に作製できる。谷底と頂部との間の鉛直方向間隔は、図2aによる充填層の全ての波形ピークに関して本質的に同じである。
【0057】
図2bに、波形を有する構造化充填物の隣接する2つの充填層を示す。それらの充填層によれば、頂部は鋭角のエッジを形成しないが、その代わりに丸い部分として作製される。他の点は図2aの説明を参照されたい。
【0058】
図3に、物質移動面積、例えば図2a又は図2bに示す充填物の充填層10上の接触点の配置の影響を示す。この点で、図3の従来技術による配置を示す。充填層10は充填層100を覆い、充填層100は図面の平面では背後にあるので見えない。充填層10の第1の頂部33、第2の頂部43、並びにそれらの間に配置された谷底23を一例として示す。第1及び第2の頂部33、43、及び谷底23は、折り目のエッジを形成する。頂部33、43は、充填層100に属する谷底123にある。充填層10及び充填層100はそれぞれ、元々さらなる複数の頂部及び谷底をそれぞれ含み、それらの頂部及び谷底は、明示した頂部及び谷底と違いがないのでより詳細には示さない。図3では、波形ピークの頂部に属する線は、谷底に属する線よりも太くなっている。さらに、長い破線は、第2の充填層100の波形ピークの頂部に用いられる。短い一点鎖線は、充填層100の谷底に用いられる。接触点48は、図3では円によって印を付けており、充填層10の谷底と充填層100の頂部とが出合う点に生じる。接触点48は、図示の2つの充填層10、100の全体の表面にわたって一様に分布している。
【0059】
接触点が互いに非常に近接して配置されると、それにより、より揮発性の低い流体によって濡れない小さいゾーン46が非常に多くなり、したがって全表面に対する物質移動面積が比較的小さくなることが図3から理解することができる。図3では、ゾーン46を1つしか示していない。矢印47はより揮発性の低い流体の流れを表す。
【0060】
図4に、米国特許第6,378,332号で提案されているように、例えば充填層の折り目によって接触点を減らした事例を示す。矢印47で表したより揮発性の低い流体の流れにより、濡れないゾーン46は全体に、確かに大幅に減ったが、それと引替えに大きくもなった。要するに、全表面での物質移動面積が小さくなった。図4による充填層の幾何形状は図9で詳細に考察する。
【0061】
図5に、本発明による隣接する2つの充填層10と100との間の接触点48の配置を示す。充填層100は、充填層10の背後に配置される。この図に関して図3を参照する。充填層10の表面に関して接触点の数が減らされている。それらの接触点は、具体的には全表面にわたって一様に分布していない。
【0062】
充填層10は、第1の縁部境界50及び第2の縁部境界60を含み、第1の縁部境界50は、第2の縁部境界60に実質的に平行に配置される。充填層を鉛直方向(上下)に位置合わせすると、縁部境界50は上側の境界に及び、第2の縁部境界60は下側の境界に及ぶ。充填層10はさらに、第1の縁部境界51及び第2の縁部境界61を含む。第1の縁部境界51及び第2の縁部境界61は、充填物の充填層を鉛直方向(上下)に位置合わせすると、物質移動装置、具体的には塔の内壁に隣接するか、又はセグメントの境界に沿って延在し、大型の物質移動装置では、さらなる充填物のセグメントが、それに隣接する。直径の大きい、例えば1m以上の物質移動装置では、充填物を分割して充填物セグメントにすることが、生産及び組立ての単純化に関して成功することが証明されている。充填物セグメントが、単に物質移動装置の断面の一部分にわたって延在するだけである。これらの複数の充填物セグメントは、充填物セグメントの総数が物質移動装置の全断面を覆うように互いに隣に配置される。接触点48は、第1及び/又は第2の縁部境界50、51、60、61の近傍に配置される。接触点は、スペーサ要素を有することが好ましい。それらのスペーサ要素をへこみ又は棒材として作製することができる。図2a又は図2bによるスペーサ要素34、44の1つと同じ構造を有することのできる複数のスペーサ要素が、第1の縁部境界50、51の近傍に配置される。
【0063】
或いは又はさらに、複数のスペーサ要素24を第2の縁部境界60、61の近傍に配置することができる。スペーサ要素は、当然、少なくとも第1及び第2の縁部境界のいずれか1つの近傍に配置することもできる。
【0064】
図6ではさらに、接触点が互いに隣に配置されないが互いに上に配置された、さらなる変形形態を示す。ここでも、接触点に沿って下る液体の流れが、接触点間の濡れない領域を最小にする。
【0065】
図5による接触点の水平な配置は、互いの上に配置された2つの充填物間の境界に液体が保持されるので、縁部の近くのより低い接触点の背後に濡れないゾーンを形成できないという利点を有する。ここで、他の妨げとなる影響により、濡れることは既に好ましくないので、一般に、接触点を縁部境界50、60、51、61の近傍に配置することが有利である。対照的に、充填層の内側に接触点を配置する場合は、それにより、そうでなければ妨げのないままであったであろう全表面のさらなる部分の濡れが不十分になる。
【0066】
図7に、本発明による充填層10の図を示す。充填層10をさらに図7に投影して示す。関連の構造化充填物1は、第1の充填層10及び第2の充填層100を含み、第2の充填層100は好ましくは第1の充填層10のような波形を有する。第1の充填層10及び第2の充填層100は、第1の充填層10のチャネルが第2の充填層100のチャネルと交差するように配置される。第1の充填層10は、少なくとも1つの棒材24、44を介して第2の充填層100と接触する。棒材は、第1及び第2の充填層10、100のいずれかの上に配置される。それらの棒材は、好ましくは図5又は図6のように配置される。第2の充填層100は、単純にするために図7には示さない。第1の充填層10の棒材は、第2の充填層100の棒材と接触している。棒材44は、第2の縁部境界60の近傍に配置され、好ましくは、充填層10の第1の側面11に隆起部分として作製されるように配置される。棒材24は、第1の縁部境界50の近傍に配置され、充填層10の第2の側面の13に隆起部分として作製される。充填層10の第1の側面11は、第2の側面13の反対側に配置され、充填層のそれぞれの1つの面を形成する。
【0067】
第1及び第2の充填層10、100を鉛直方向(上下)に位置合わせすると、具体的には、棒材を互いの下に配置することができる。その代わりに、又はそれと組み合わせて、第1及び第2の充填層を鉛直方向(上下)に位置合わせすると、棒材を互いに隣に配置することができる。
【0068】
棒材として作製されていないか又は排他的に棒材として作製されていない他のスペーサ要素を、充填層10、100の頂部に沿って配置することもできる。鉛直方向の折り目高さを越えて突出する所望の隆起部分によってこうしたスペーサ要素を形成できる。折り目高さは、波形ピークと隣接する波形谷との間の間隔として理解される。波形谷の頂部の曲率が有限の場合は、間隔は、互いに平行に配置された2つの頂部点の接線の鉛直方向間隔として定義される。曲率が無限大の場合、すなわち頂部が鋭角であり従って高さの点が明確な接線で定義されない場合は、充填層の片側の全ての頂部点を含む最も高い点を通るように平面を配置する。同様に、波形谷及びさらなる波形谷の全ての点を含む波形谷の最も低い点を通るように平面を配置する。これらの2つの平面は、互いに平行になるはずである。そのことから、折り目の高さはそれら2つの平面間の鉛直方向間隔になる。こうしたスペーサ要素は、頂部又はエッジの一部分にわたって延在する。スペーサ要素は、充填層のブランクから、例えば充填物金属薄板から深絞りによって製造することもでき、上側エッジに沿って配置することによって、より糸状の要素、例えばワイヤ要素又は棒材要素の形状にすることができる。それらのスペーサ要素は、有利には、折り目の波形ピーク又は谷の頂部上の片側に付与される。スペーサ要素は、好ましくは、反対の又は同じ縁部領域50、60に沿って付与される。
【0069】
こうした配置の利点は、ブランクを際限なく長く製造できる点である。こうしたブランクを、帯状材料から、例えばプレート様の金属薄板として作製できる。その後、特定の長さの部分を帯状材料から切断する。これらの部分は、例えば曲げ加工によって波形に変えられる。その代わりに、既に波形を有する帯状材料が用いられる。次いで、長さを切断され波形を有する部分が充填層を形成する。曲げ加工中にこれらの波形に深絞り手順を併せて、曲げ加工中に深絞りによってスペーサ要素を製造できる。或いは、棒材の間の領域は、異なるように曲げられるか、又は棒材に対して異なる高さを有するように少し押し下げられる生産プロセスが可能である。次に、第1の充填層10及び第2の充填層100を、第2の波形を全て回転することによって適合するようにして互いの上に配置する。スペーサ要素の各列は、上側及び下側縁部境界の近傍並びに/又は横方向の縁部境界の近傍の全ての充填層の間に配置される。
【0070】
図8に、第1の充填層10の波形の頂部33、43の深絞りしたスペーサ要素の長さの決定を示す。頂部33、43は、流れの主方向6に対して角度Φ(ファイ)だけ傾斜して配置され、第1の頂部33から第2の頂部43までの間隔b0を有する。間隔b0は、具体的にはこの点で一定である。さらに、間隔b0は第1の谷底23と第2の谷底26との間であると分かっている。図8では、第1の谷底23は第1の波形谷22と一致し、第2の谷底26は第2の波形谷25と一致する。スペーサ要素24、34、44の長さを図8では「a」とする。長さ「a」は、関連する頂部の方向のスペーサ要素の長手方向の範囲である。長さ「a」は、好ましくは、第1の充填層10の各頂部が、スペーサ要素が配置された位置に正確に、隣接する第2の充填層100の頂部との交点を有するように選択される。充填層10のスペーサ要素は、第2の充填層100の頂部の接触点と接触している。接触点は、第2の充填層100のスペーサ要素の一部分とすることができるが、必ずしもそうである必要はない。
a=b0/sin(2Φ)
【0071】
この関係式は、第1の充填層の傾斜角ファイ(Φ)が第2の充填層の傾斜角と同じ大きさであるという仮定の下で得られた。
【0072】
図8はこの仮定に基づいている。スペーサ要素の長さaは、第2の充填層の1つのスペーサ要素又はその波形ピークと正確に交差する程度に単に大きくなければならない。したがって、交点Aが第1のスペーサ要素のまさに端点に配置される場合は、交点Bは第2のスペーサ要素の長さaの少し外側になる。こうした極めて小さい違いを図面に示すことができないので、2つの交点を図8bの第2の充填層の第1の波形ピークに関して描いた。
【0073】
第2の充填層が図8bの充填層の位置に関して水平に左に移動する場合は、交点Aは、スペーサ要素の長さaに沿って、スペーサ要素のうち点Aの反対側に位置する端部まで移動する。
【0074】
図示の場合では、第2の充填層は、スペーサ要素との交点が点Aに存在するが実際にスペーサ要素との交点が点Bには存在しないというボーダーラインの事例がちょうど生じるように配置される。隣接する2つの充填層10、100の傾斜角が同じ大きさなので、第2の充填層の波形ピークの頂部に沿った間隔ABは同様にスペーサ要素の長さaに対応する。
【0075】
したがって、辺の長さがx、a、aの三角形ABCは二等辺三角形である。さらに、2つの辺aの間の角度がちょうど2Φになる。b0、波長、すなわち第1の充填層の波形ピークの隣接する2つの頂部の間の鉛直方向間隔を同様に描く。この三角形は、直角を有しエッジBで角度2Φを含まなければならない。
【0076】
したがって、傾斜角Φ及び波長b0を用いる、aに関する所望の関係が得られる。
a=b0/sin(2Φ)
【0077】
スペーサ要素の高さは、好ましくは、層の高さの10〜30%であり、そのため、ちょうどこの値の範囲の隙間が個々の充填層の間に生じる。それらの隙間は、水系の場合、最小で1.5mmになる。隙間が狭いと、液体、具体的には水が、隣接する2つのエッジ間に捕捉され、そこに留まり、液体ブリッジを形成する可能性があるので、不利になる虞がある。
【0078】
図9aに、接触点を減らすために折り目の高さが異なる周知の構築形状による充填層を示す。この構築形状の欠点は、矢印20、21で力の方向を示す、充填層を圧縮する上側及び下側の荷重がないことである。折り目は、第1の頂部65及び第2の頂部85並びにそれらの間に配置された波形谷75を含む。第1及び第2の頂部65、85は、図示していない隣接する充填層と接触できる。中間の波形谷66及び中間の波形ピーク67が、折り目を形成し、これらは第1の頂部65と谷底75との間に配置される。中間の波形谷66は中間の谷底68を有し、中間の波形ピーク67は中間の頂部69を有する。中間の谷底68と中間の頂部69との間の鉛直方向間隔70は、頂部65と谷底75との間の鉛直方向間隔71よりも小さい。鉛直方向間隔70は、図9aに示す実施例の鉛直方向間隔71のほぼ半分の大きさである。したがって、半分の高さの折り目が、中間の波形谷66及び中間の波形ピーク67によって形成される。このような高さが半分の折り目は、クランプル・ゾーンとして働き、変形することができる。一方では、こうした変形により、安定した充填物本体を構築することができないが、他方では、充填物の固定した層の高さの実測は不可能である。層の高さは、前に定義した鉛直方向間隔71に対応する。
【0079】
本発明による構築形状によってこの問題を避けることができる。図9bに示すように、各折り目にスペーサ要素を有する充填層を圧縮してずっと小さくすることができる。したがって、充填層の上側及び下側により高い荷重を掛けることができる。これにより、安定した充填物本体の設計が可能になり、層の高さを確実に実質的に一定にする。
【0080】
図10に吸収システム90を示す。吸収システム90は、2つの物質移動装置、吸収装置91及び脱着装置92を含み、それらの吸収装置91及び脱着装置92は、具体的には塔として作製される。ガス流からの1つ又は複数の成分を、吸収システムの吸収装置91中で分離する。このために、液体溶剤又は吸収剤が用いられる。脱着装置92では、吸収した成分を除去して溶剤又は吸収剤を清浄にする。
【0081】
吸収と精留は両方とも、現在の供給流93から1つ又は複数の成分を分離するための別々のプロセスである。精留は、個々の成分の異なる沸点に基づいて液体混合物を分離するために用いられる。精留とは、具体的には別々の複数の段を含む連続蒸留として理解すべきである。対照的に、吸収では、1つ又は複数の成分を、適切な溶剤又は吸収剤94の助けでガス流から分離する。したがって、吸収装置91の塔頂生成物は精製したガス流95である。吸収装置91の塔底生成物96は、1つ又は複数の成分を担持する吸収剤又は溶剤である。経済的、エネルギー的又は環境学的理由から、吸収剤又は溶剤を清浄にし、精製した溶剤又は吸収剤94としてそれを再度吸収装置に供給することが賢明なことがある。吸収剤又は溶剤の精製は、脱着装置92で行われる。担持吸収剤又は溶剤、すなわち吸収装置の塔底生成物96は、脱着装置の供給流を成す。この供給流は、図10によれば液体として脱着装置に供給される。脱着装置92は、上記の実施例のいずれか1つによる1つ又は複数の充填物を含むことができる。担持溶剤又は吸収剤は、水溜め97の方向に流れる。吸収剤又は溶剤は、少なくとも部分的に水溜め中で蒸発し、そのために、水溜め蒸発装置98が設けられる。水溜め蒸発装置で蒸発した吸収剤又は溶剤は、水溜めの方向に流れる担持吸収剤又は溶剤の供給流から塔の中で上昇する間に、分離する成分を含み、分離する成分を吸収する。したがって、分離する成分が濃縮したガス状部分の流れ99が、脱着装置中で上昇する。熱によって、すなわち凝縮によって、又は他の下流の分離ステップによって、ガス状部分の流れ99からこれらの分離する成分を分離することができる。
【0082】
その代わりに又はそれに加えて、吸収装置よりも低い圧力で脱着装置を動作させなければならない場合は膨張装置を設けることもでき、吸収装置より高い圧力で脱着装置を動作させなければならない場合は圧縮装置を設けることもできる。
【0083】
気液間の物質移動は、一般に、水溜めから塔頂まで精留の両方向での温度降下に基づいて起きる。沸点がより高い流体は、気相から凝縮し液体に吸収され、沸点がより低い流体は、液相から蒸発して気相になる。吸収の際には、物質移動は1方向にしか起きず、ここでは気体が液体によって吸収される。
【0084】
精留と吸収との違いは、精留ではガス流と液体流が互いに結合し、対照的に吸収では両方の流れを互いから独立させることができ、精留では特定の量の液体が蒸発し塔を塔頂の方向に上昇することである。全ての蒸気が塔頂で凝縮され、やはり少なくとも部分的に液体の流れとして塔中に戻るように案内される。したがって、考えられる液体の最大量は、塔頂に到達する蒸気の全凝縮量になるはずである。水溜め中でより多くの液体が蒸発する場合は、やはりより多くの液体が戻るように流れることができる。この点で両方の流れが互いに結合し、物質移動は、蒸気の流れに決定的に依存する。したがって、精留の用途は一般にガス側で制御される。
【0085】
これとは対照的に、ポンプ及びファンの助けで、吸収の用途で異なる動作条件を設定することができる。大きい吸収剤の流れを比較的小さいガス流に接触させることもでき、その逆も可能である。さらに、吸収剤は、それらにガス成分を、様々な形で、物理的に、化学反応によって、又は物理的にも化学的にも結合させることができる。この点で、特定のガス成分、及びガスの濃度、並びに液体に関する吸収剤又は溶剤の選択は、物質移動が制御されるのはガス側か又は液側かに対して決め手となる。
【0086】
スペーサ要素を含む充填物のプロトタイプを製造して、本発明による充填物の実用性をチェックした。従来の充填物からいくつかの充填層を取り除き、他の充填層間の厚さと同じ厚さのスペーサ要素を挿入して、空いた空間を均一化した。したがって、各充填層は、隣接する2つの充填層までの、固定的に規定された間隔を含み、それにより幅の規定された隙間が全ての充填層の間に生じることになる。試験した事例では、幅は1.5mmである。さらに、このプロトタイプの接触点の数は、79,500m−3から18,000m−3まで減り、全表面は205m2/m3から190m2/m3まで減った。他の対策が重ねてこうした損失を生じることがない場合は、分離能力又は充填物の効率を低減することによって全表面を減少させなければならない。米国特許第6,378,322号によれば、全表面が減少しても精留で有利な分離効果を示す実施例は可能である。
【0087】
上記で説明したプロトタイプは、精留の用途で最初に試験したものである。そのために、内径250mmの試験用の塔に充填物を設置し、試験系のクロロベンゼン/エチルベンゼンを用いて測定した。これらの試験は、あらかじめ想定したものを記録する。隙間が原因で生じるより開放した断面により、充填物全体にわたる圧力損失はスペーサ要素なしの充填物と比較してわずかに減る。対照的に、全表面の減少により分離能力が低下する。スペーサ要素を有する充填物は、スペーサ要素なしのものよりも、1メートル当たりの分離段(NTSM(number of theoretical stages per meter):1メートル当たりの理論段数)が少ない。装填する点よりも下、この例ではF因子が3Pa0.5よりも下の点は比較に対して決め手となる。F因子は、気体密度の根を乗じた、空の塔の平均気体速度の尺度である。F因子は、気体の運動エネルギーに比例する。装填する点は、気液相互作用が増大する点として理解される。
【0088】
対応するNTSM値は、スペーサ要素のある充填物では1.6/mであり、スペーサ要素のない充填物では1.7/mである。NTSM値は分離能力に関する指標である。NTSM値が高いと、充填物の分離能力が高い。したがって、分離能力は全表面に関して改善されなかった。
【0089】
したがって、これらの現在の所見によると、接触点を減らし充填層間の間隔を大きくした本発明による充填物は明らかに圧力損失を低減するが、さらに精留では分離能力も低下する。その結果、このような充填物は、精留では用いず、したがって、精留の場合に明らかに有利な米国特許第6,378,322B1号で提供された充填物とは根本的に異なるものである。
【0090】
驚くべきことに、本発明による充填物により全表面当たりの分離能力が改善される物質系(mass system)があることがさらなる実験で分かった。この点の主な焦点は、一般に全表面の濡れが不十分な傾向がある、表面張力が大きい系、通常水系である。水溶液は、表面張力が高いため、利用可能な表面を非常に大量の流れで液膜として完全に濡らすだけなので、とりわけますます吸収で用いられている。対照的に、充填物の全表面の濡れが不十分だと、分離能力が低下することになる。したがって、構造化充填物は、吸収剤の用途では、充填物に対する圧力損失が小さいこと、及び液体によってできるだけ完全に濡らさなければならない全表面をできるだけ大きくすることという特性を有するべきである。
【0091】
したがって、接触点を減らすと吸収能力が改善される理由の仮説によると、使用する液体の不十分な濡れの特性により、液体によって全く濡れないゾーンが充填層上の接触点の背後に形成される。したがって、全表面を全範囲にわたって液体によって濡らすことはできない。液体は、接触点で流れることが防止され、保持され、偏向する。水が膜のような平面を流れ落ちるときに同様の現象を確認することもでき、その流れは、導入した物体(例えばその平面上に置いた指)によって突然乱される。膜状の流れは、その物体の背後で開き、乾いた、濡れていない表面が生じ、その物体を流れから取り除いて初めて濡れる。
【0092】
検査した物質系は、液側で制御される水系である。周囲空気にあるCO2は、吸収され、苛性アルカリ液によって化学結合する。液体中の化学反応がこの点で非常に速く起きるので、吸収は、原則的に気相と液相との間の界面に限定される。これは、全表面の物質移動面積の部分がここでは決定的に重要であることを意味する。他の全ての機構は副次的な役割を果たすに過ぎない。
【0093】
適切な対応関係(ダス他「液負荷の大きいNutterリングの有効界面および液体貯蔵」ケミカル・エンジニアリング・アンド・テクノロジー、第24巻第7号、2001年、第716〜723頁(Duss et al:「Effective Interfacial Area and Liquid Hold−up of Nutter Rings at High Liquid Loads」、Chemical Engineering & Technology 24(7)、2001、716〜723)で、実質的に利用可能な物質移動面積を、得られた測定結果から直接決定することができる。図11に示すように、スペーサ要素を有し接触点を減らした充填物は、スペーサ要素がなく全表面がより小さいにもかかわらず多数の接触点を有する充填物よりも物質移動面積が大きくなる。これは、接触点を減らし接触点を適切に配置することによって、液側で制御される物質系の分離能力を実際に改善できることを意味する。スペーサ要素を使用して圧力損失を同様に低減することができ、より少ない数の充填層しか必要ないので材料の量を減らすことができる。図11の下側の曲線は、市販の構造化充填物、タイプMellapak(商標)の場合の物質移動面積を示し、より揮発性の低い流体に関する物質移動装置の荷重を増大し、荷重Lをx軸上に単位m3/m2hで示す。図11の上側の曲線は、それに対して、本発明による構造化充填物の場合の全表面に対する物質移動面積の比較を示す。その結果、全ての測定点で、スペーサ要素を有する充填物用いる方がスペーサ要素のない充填物よりも上記の比が大きいと考えられる。
【0094】
こうした系は主に、問題となる成分を反応性水溶液の助けで排ガス流から除去しなければならない排気ガスの吸収剤供給で用いられる。MEA又はカリなど、有機又は無機の塩基性物質を含むことのできる水性吸収剤の助けで発電所の排気ガスから環境に有害なCO2を吸収することが、本明細書での一例である。
【0095】
こうした物質系では、接触点を減らした充填物によると、多数の接触点を有し充填層間に隙間がない類似の充填物に関して圧力降下が大幅に低減され、同様に分離能力が非常に増大される。
【0096】
このように、この充填物は、基本的な水溶液を用いて特に発電所の排気ガスからCO2吸収で用いるのに非常に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の波形を有する第1の充填層(10)を有する構造化充填物(1)であって、複数の開放チャネル(12、14、16)が、前記第1の波形によって形成され、前記チャネルが、第1の波形谷(22)、第1の波形ピーク(32)及び第2の波形ピーク(42)を含み、前記第1の波形ピーク(32)と前記第2の波形ピーク(42)が、前記第1の波形谷(22)を境界とし、前記第1の波形ピーク及び前記第2の波形ピークが、それぞれ第1の頂部(33)及び第2の頂部(43)を有する、構造化充填物(7)において、
前記第1の頂部(33)の方向に延在するスペーサ要素(34)が、前記第1の波形ピーク(32)の前記第1の頂部(33)に形成され、前記第1の波形谷(22)が谷底(23)を有し、前記スペーサ要素(34)がエッジ(35)を有し、前記波形谷(22)の前記谷底(23)からの、前記エッジ(35)の鉛直方向間隔が、前記第1の波形ピーク(32)の前記第1の頂部(33)よりも大きく、
それにより、前記構造化充填物が、第2の波形を有する第2の充填層(100)を有し、
それにより、前記第1の充填層(10)の前記第1の波形が、前記第2の充填層(100)の前記第2の波形と交差する配置が生じるように位置付けられていることを特徴とする、構造化充填物。
【請求項2】
第2のスペーサ要素(44)が前記第2の頂部(43)に配置される、請求項1に記載された構造化充填物。
【請求項3】
第3のスペーサ要素(24)が前記第1の谷底(23)に配置される、請求項1又は請求項2に記載された構造化充填物。
【請求項4】
前記構造化充填物(1)が第1の縁部境界(50、51)及び第2の縁部境界(60、61)を含み、前記第1の縁部境界(50、51)が、前記第2の縁部境界(60、61)に対して実質的に平行に配置される、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項5】
前記スペーサ要素(44)が、前記第1の縁部境界(50、51)の近傍に配置され、及び/又は前記スペーサ要素(24)が、前記第2の縁部境界(60、61)の近傍に配置される、請求項4に記載された構造化充填物。
【請求項6】
波高(28)が実質的に一定である、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項7】
前記頂部の少なくとも一部分がエッジになっている、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項8】
前記波形谷の少なくとも一部がV字形になっている、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項9】
前記第1の充填層(10)及び前記第2の充填層(100)が、前記第1の充填層(10)の前記チャネルが前記第2の充填層(100)の前記チャネルと交差するように配置され、前記第1の充填層(10)が前記スペーサ要素(24、44)を介して前記第2の充填層(100)と接触することを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項10】
前記スペーサ要素が、前記第1及び第2の充填層(10、100)のそれぞれに配置される、請求項9に記載された構造化充填物。
【請求項11】
前記第1の充填層(10)の前記スペーサ要素が、前記第2の充填層(100)の前記スペーサ要素と接触する、請求項10に記載された構造化充填物。
【請求項12】
前記第1及び第2の充填層(10、100)が上下に配置され、前記スペーサ要素が互いの下に配置される、請求項9から請求項11までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項13】
前記スペーサ要素が互いに隣接するか、又は前記第1及び第2の充填層(10、100)が上下に配置されて前記スペーサ要素が互いに隣接して配置される、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項14】
請求項9から請求項13までのいずれか一項に記載された構造化充填物(1)を含む、具体的には塔である、物質移動装置。
【請求項15】
水性吸収剤を用いる吸収のための、請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載された構造化充填物(1)の使用。
【請求項1】
少なくとも第1の波形を有する第1の充填層(10)を有する構造化充填物(1)であって、複数の開放チャネル(12、14、16)が、前記第1の波形によって形成され、前記チャネルが、第1の波形谷(22)、第1の波形ピーク(32)及び第2の波形ピーク(42)を含み、前記第1の波形ピーク(32)と前記第2の波形ピーク(42)が、前記第1の波形谷(22)を境界とし、前記第1の波形ピーク及び前記第2の波形ピークが、それぞれ第1の頂部(33)及び第2の頂部(43)を有する、構造化充填物(7)において、
前記第1の頂部(33)の方向に延在するスペーサ要素(34)が、前記第1の波形ピーク(32)の前記第1の頂部(33)に形成され、前記第1の波形谷(22)が谷底(23)を有し、前記スペーサ要素(34)がエッジ(35)を有し、前記波形谷(22)の前記谷底(23)からの、前記エッジ(35)の鉛直方向間隔が、前記第1の波形ピーク(32)の前記第1の頂部(33)よりも大きく、
それにより、前記構造化充填物が、第2の波形を有する第2の充填層(100)を有し、
それにより、前記第1の充填層(10)の前記第1の波形が、前記第2の充填層(100)の前記第2の波形と交差する配置が生じるように位置付けられていることを特徴とする、構造化充填物。
【請求項2】
第2のスペーサ要素(44)が前記第2の頂部(43)に配置される、請求項1に記載された構造化充填物。
【請求項3】
第3のスペーサ要素(24)が前記第1の谷底(23)に配置される、請求項1又は請求項2に記載された構造化充填物。
【請求項4】
前記構造化充填物(1)が第1の縁部境界(50、51)及び第2の縁部境界(60、61)を含み、前記第1の縁部境界(50、51)が、前記第2の縁部境界(60、61)に対して実質的に平行に配置される、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項5】
前記スペーサ要素(44)が、前記第1の縁部境界(50、51)の近傍に配置され、及び/又は前記スペーサ要素(24)が、前記第2の縁部境界(60、61)の近傍に配置される、請求項4に記載された構造化充填物。
【請求項6】
波高(28)が実質的に一定である、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項7】
前記頂部の少なくとも一部分がエッジになっている、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項8】
前記波形谷の少なくとも一部がV字形になっている、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項9】
前記第1の充填層(10)及び前記第2の充填層(100)が、前記第1の充填層(10)の前記チャネルが前記第2の充填層(100)の前記チャネルと交差するように配置され、前記第1の充填層(10)が前記スペーサ要素(24、44)を介して前記第2の充填層(100)と接触することを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項10】
前記スペーサ要素が、前記第1及び第2の充填層(10、100)のそれぞれに配置される、請求項9に記載された構造化充填物。
【請求項11】
前記第1の充填層(10)の前記スペーサ要素が、前記第2の充填層(100)の前記スペーサ要素と接触する、請求項10に記載された構造化充填物。
【請求項12】
前記第1及び第2の充填層(10、100)が上下に配置され、前記スペーサ要素が互いの下に配置される、請求項9から請求項11までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項13】
前記スペーサ要素が互いに隣接するか、又は前記第1及び第2の充填層(10、100)が上下に配置されて前記スペーサ要素が互いに隣接して配置される、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載された構造化充填物。
【請求項14】
請求項9から請求項13までのいずれか一項に記載された構造化充填物(1)を含む、具体的には塔である、物質移動装置。
【請求項15】
水性吸収剤を用いる吸収のための、請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載された構造化充填物(1)の使用。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−214369(P2010−214369A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60886(P2010−60886)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(505150095)スルザー ケムテック アクチェンゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(505150095)スルザー ケムテック アクチェンゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】
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