説明

構造発色繊維集合体及びその製造方法

【課題】透過光を利用して発色させることができ、且つ、充分な発色強度を示す新規の構造発色繊維集合体、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】前記構造発色繊維集合体は、平均繊維径が0.7〜1.6μmであり、繊維表面に繊維軸方向に伸びる複数の溝を有する繊維から実質的になる。前記製造方法は、ポリマーと前記ポリマーに対する良溶媒及び貧溶媒とを含む紡糸原液を静電紡糸法により紡糸した繊維を直接集積させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電、家具、車、建材(壁、天井など)、衣類、スポーツ用品、包装材(包装紙、リボン、テープなど)、インテリア材(カーテン、アートフラワー材料など)などに使用できる、透過光によって発色する繊維集合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モルフォチョウや熱帯魚は色素を有していないにも拘らず、鮮やかに発色している。これは体表面の微細構造によって、特定の波長の光を反射することで生じている。このような発色は構造発色と言われている。
【0003】
このような構造発色を人工的に作る研究がなされている。例えば、特許文献1には、「エレクトロスプレーデポジション法により形成された、平均繊維径が100nm〜1μmの透明繊維の堆積物又は平均繊維径が100nm〜1μmの透明繊維と平均粒子径が100nm〜1μmの透明粒子との堆積物からなる光の反射・干渉機能によって可視光領域の波長の着色光を発する構造発色性材料」(請求項1)が提案されている。しかしながら、この構造発色性材料は光の反射・干渉機能を発揮させるために、実際には基体が必要である(請求項2、実施例など)ため、包装材やインテリア材など、意匠性として透過光を必要とする場合には、利用することができなかった。
【0004】
また、特許文献2には、「繊維の集合体で構成された材料であって、前記繊維はセラミックスからなり、かつ、平均繊維径が50nm以上1000nm以下であり、可視領域の波長の着色光を発する構造発色材料」(請求項1)が提案されている。この構造発色材料は可視光の透過によって発色するものである([0008]、実施例など)。しかしながら、この構造発色材料は実施例1において、波長約490nmの透過率が約3.1%であることを開示している(図3)ように、発色強度が弱く、実用的ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−22463号公報
【特許文献2】特開2008−75217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術のこれらの問題点を解決し、透過光を利用して発色させることができ、且つ、充分な発色強度を示す新規の構造発色繊維集合体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
[1]平均繊維径が0.7〜1.6μmであり、繊維表面に繊維軸方向に伸びる複数の溝を有する繊維から実質的になる構造発色繊維集合体、
[2]繊維が一方向に配向している、[1]の構造発色繊維集合体、
[3]ポリマーと前記ポリマーに対する良溶媒及び貧溶媒とを含む紡糸原液を静電紡糸法により紡糸した繊維を直接集積させることを特徴とする、[1]又は[2]の構造発色繊維集合体の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構造発色繊維集合体は、平均繊維径が0.7〜1.6μmであり、且つ、繊維表面に溝を有することにより、透過光により充分に発色することができる。
また、本発明の好適態様である、繊維が一方向に配向している構造発色繊維集合体では、繊維が一方向に配向していることによって、入射角度によって発色が異なる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例4で製造した本発明の構造発色繊維集合体シートの繊維表面の、図面に代わる、走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】実施例6で製造した本発明の構造発色繊維集合体シートの繊維表面の、図面に代わる、SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の構造発色繊維集合体は、平均繊維径が0.7〜1.6μmであり、繊維表面に繊維軸方向に伸びる複数の溝を有する繊維(以下、構造発色繊維と称する)から実質的になる。
本明細書において、「構造発色繊維から実質的になる」とは、構造発色繊維集合体を形成する構成繊維の主体が構造発色繊維であって、且つ、構造発色繊維集合体が所望の構造発色を示す限り、特に限定されるものではないが、例えば、構造発色繊維集合体の構成繊維の60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%を占めることを意味する。
【0011】
本明細書における用語「平均繊維径」とは、40点における繊維径の算術平均値を意味する。また、「繊維径」とは、顕微鏡写真を元に計測した値を意味する。なお、構造発色繊維は、繊維表面に溝を有するため、写真上、凹凸が観察されるが、写真における最外周部間の長さを繊維径とする。
【0012】
本発明の構造発色繊維集合体を構成する構造発色繊維の平均繊維径は、0.7〜1.6μmである。後述する実施例のデータから、本発明の構造発色繊維集合体は、透過スペクトルに関して平均繊維径の約51〜54%の波長にピークをもち、発色する。可視光の波長は380〜800nm程度であるため、平均繊維径は0.7μm(=0.38/0.54)〜1.6μm(=0.8/0.51)であれば、発色する。
【0013】
構造発色繊維の材料としては、前記特定範囲の平均繊維径を与えることができ、且つ、繊維表面に繊維軸方向に伸びる複数の溝を形成することができるポリマー材料である限り、特に限定されるものではなく、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素化ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ナイロン6などのナイロン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系ポリマー;ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリルアミドなどのアクリル系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリウレタン、これらの共重合体や混合物なども使用可能である。
【0014】
構造発色繊維の繊維表面の溝は、繊維軸方向に伸びていれば良く、幅、深さ等は特に限定しない。また、繊維軸に平行である必要はない。
【0015】
本発明の構造発色繊維集合体では、構造発色繊維が一方向に配向していると、入射角度によって発色が異なる。
本明細書において「一方向に配向している」とは、下記の測定及び算出により決定される「繊維配向の標準偏差値」が30以下であることを意味する。前記「繊維配向の標準偏差値」の測定・算出方法は、例えば、特開2004−183131号公報に記載されており、具体的には、繊維集合体の電子顕微鏡写真上に直線を引いた場合に形成される、繊維と前記直線とのなす角度(同じ回転方向にて測定)を100点について測定し、その測定の結果得られる角度の標準偏差値を「繊維配向の標準偏差値」とする。
【0016】
このような一方向に配向した構造発色繊維集合体は、例えば、特開2004−183131号公報に記載されているように、繊維の集積体を200m/min.以上の速さで移動させることにより製造できる。
【0017】
本発明の構造発色繊維集合体は、これに限定されるものではないが、本発明の製造方法により製造することができる。
本発明の製造方法では、ポリマーと前記ポリマーに対する良溶媒及び貧溶媒とを含む紡糸原液を用いること以外は、周知の静電紡糸法に従って、静電紡糸法により紡糸した繊維を直接集積させる。例えば、特開2005−194675号公報、特開2003−073964号公報、特開2006−112023号公報等に記載されているように、1つ又は2つ以上のノズルから紡糸原液を吐出するとともに、電界を作用させ、繊維化した後にシリンダ、コンベア等に集積する方法によって実施できる。
【0018】
本発明の製造方法で用いる良溶媒は、構造発色繊維の材料として使用するポリマーを溶解することができる溶媒であれば良く、特に限定されるものではない。より具体的には、ポリマーとしてポリアクリルアミドを用いる場合には、良溶媒として、例えば、水を用いることができる。
【0019】
本発明の製造方法で用いる貧溶媒は、良溶媒よりもポリマーの溶解性が悪く、良溶媒と混和し、かつ良溶媒よりも沸点の高い溶媒であれば良く、特に限定されるものではない。貧溶媒は良溶媒よりも沸点が高いことによって、良溶媒が揮発しても残存し、貧溶媒が揮発する際に繊維の体積を収縮させ、繊維表面に皺を発生させやすい。
ポリマーとしてポリアクリルアミドを使用し、良溶媒として水(沸点:100℃)を用いる場合には、貧溶媒として、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF、沸点:152℃)、ジメチルアセトアミド(沸点:165℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)を用いることができる。
【0020】
本発明の製造方法により、本発明の構造発色繊維集合体を製造できる理由について、本発明者は、次のように推測している。なお、本発明は、以下の推測に限定されるものではない。
まず、紡糸原液が紡糸されると、まず、良溶媒が揮発し、主としてポリマーと貧溶媒から構成されることになる。この主としてポリマーと貧溶媒からなる繊維は貧溶媒であるが故に繊維表面が固化しやすい。
この繊維表面が固化した状態で飛翔を続け、繊維内部に残っている貧溶媒が揮発する際に繊維の体積が小さくなるように収縮するが、既に繊維表面が固化しているため、繊維表面に皺が発生する。
この繊維が飛翔している時には電界の作用を受けているため、収縮の際に、電界方向、つまり、繊維軸方向に延伸力が働き、繊維表面に繊維軸方向に伸びる複数の溝が形成される。
【0021】
本発明の製造方法では、良溶媒と貧溶媒との沸点差は10℃以上あるのが好ましい。貧溶媒による繊維表面固化効果が得られやすいためである。また、貧溶媒の沸点が高すぎると、繊維の飛翔中に揮発しないため、210℃以下であるのが好ましい。
【0022】
貧溶媒の混合溶媒中における重量比率は良溶媒と貧溶媒との組み合わせによって異なるため、特に限定するものではないが、1〜50wt%であるのが好ましい。例えば、ポリアクリルアミドを水(良溶媒)とDMF(貧溶媒)に溶解させる場合、貧溶媒であるDMFは混合溶媒中、30〜45wt%であるのが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0024】
《実施例1》
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を付した1リットル四つ口フラスコに水507.4g、50%アクリルアミド水溶液184.3g、5%メタリルスルホン酸ナトリウム水溶液2.9gを仕込み、30%硫酸水溶液でpH2.5に調整した。次いで、窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温し、5%2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製、V−50)水溶液3.5gを加え、85℃まで昇温した。昇温から1時間後に更に5%2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製、V−50)水溶液4.7gを加え、その1時間30分後に水220.1gを加え反応を停止した。固形分10.2%、pH3.4、粘度(25℃、ブルックフィールド回転粘度計使用)2,300mPa・sのポリアクリルアミド水溶液を得た。
重量平均分子量をGPC−MALLSで測定したところ、50万であった。
このポリアクリルアミド水溶液はそのまま、若しくは水を減圧下で留去し高濃度化してから使用した。
【0025】
10wt%に調整したポリアクリルアミド(重量平均分子量50万)水溶液に、貧溶媒としてDMF(沸点:152℃)を加え、ポリマー濃度が6wt%となるように紡糸原液を調製した。DMFの混合溶媒中における重量比率[{DMF/(水+DMF)}×100(%)]は42.5wt%であった。
特開2005−194675号公報に開示の静電紡糸装置と同じ装置にて、吐出量0.5g/hr、ノズルとドラムの距離10cm、ドラムの周速:1m/min.、印加電圧+13kV、紡糸雰囲気の温湿度25℃/15%RHの条件で静電紡糸を行い、目付1g/mの構造発色繊維集合体シートを作製した。
【0026】
平均繊維径は770nmであり、走査型電子顕微鏡(SEM)により繊維表面の観察を行ったところ、繊維の表面には繊維軸方向に伸びる溝が多数形成されていた。
構造発色繊維集合体シートの透過スペクトルを測定(島津製作所製、分光光度計UV−3100Sを使用、試料を2cm×6cmとなるように枠に貼り付け、光の入射角90°で測定)したところ、波長410nmにピークを持ち、ピークトップの透過率は24%であった。構造発色繊維集合体シートの透過光は、強い青色の構造色を示した。
【0027】
《実施例2》
ポリマー濃度が6.5wt%となるようにDMFを加えたこと以外は、実施例1と同様にして目付1g/mの構造発色繊維集合体シートを作製した。DMFの混合溶媒中における重量比率は37.5wt%であった。
【0028】
平均繊維径は650nmであり、SEMにより繊維表面の観察を行ったところ、繊維の表面には繊維軸方向に伸びる溝が多数形成されていた。
構造発色繊維集合体シートの透過スペクトルを測定したところ、波長350nmにピークを持ち、ピークトップの透過率は20%であった。構造発色繊維集合体シートの透過光は、強い紫色の構造色を示した。
【0029】
《実施例3》
DMFに代えて、ポリマー濃度が6.5wt%となるようにジメチルアセトアミド(沸点:165℃)を加えたこと以外は、実施例2と同様にして目付1g/mの構造発色繊維集合体シートを作製した。ジメチルアセトアミドの混合溶媒中における重量比率は37.5wt%であった。
【0030】
平均繊維径は660nmであり、SEMにより繊維表面の観察を行ったところ、繊維の表面には繊維軸方向に伸びる溝が多数形成されていた。
構造発色繊維集合体シートの透過スペクトルを測定したところ、波長345nmにピークを持ち、ピークトップの透過率は21%であった。構造発色繊維集合体シートの透過光は、強い紫色の構造色を示した。
【0031】
《実施例4》
実施例1で合成したポリアクリルアミド(重量平均分子量50万)に代えて、以下の手順に従って合成したポリアクリルアミド(重量平均分子量360万)の10wt%水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、目付1g/mの構造発色繊維集合体シートを作製した。
【0032】
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を付した1リットル四つ口フラスコに水512.1g、50%アクリルアミド水溶液184.3g、1%メチレンビスアクリルアミド水溶液5.0g、5%メタリルスルホン酸ナトリウム水溶液9.9gを仕込み、30%硫酸水溶液でpH2.5に調整した。次いで、窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液3.0gを加え、85℃まで昇温した。昇温から1時間後に更に5%過硫酸アンモニウム水溶液4.0gを加え、その2時間後に水214.7gを加え反応を停止した。固形分10.5%、pH3.5、粘度(25℃、ブルックフィールド回転粘度計使用)1,400mPa・sのポリマー溶液を得た。
重量平均分子量をGPC−MALLSで測定したところ、360万であった。
【0033】
得られた構造発色繊維集合体シートの平均繊維径は720nmであり、SEMにより繊維表面の観察を行ったところ、図1に示すように、繊維の表面には繊維軸方向に伸びる溝が多数形成されていた。
構造発色繊維集合体シートの透過スペクトルを測定したところ、波長380nmにピークを持ち、ピークトップの透過率は31%であった。構造発色繊維集合体シートの透過光は、強い紫色の構造色を示した。
【0034】
《実施例5》
実施例1で合成したポリアクリルアミド(重量平均分子量50万)の13wt%水溶液に、貧溶媒としてDMFを加え、ポリマー濃度が8wt%となるように紡糸原液を調製した。DMFの混合溶媒中における重量比率は41.9wt%であった。
特開2005−194675号公報に開示の静電紡糸装置と同じ装置にて、吐出量0.5g/hr、ノズルとドラムの距離12cm、ドラムの周速:1m/min.、印加電圧+13kV、紡糸雰囲気の温湿度25℃/15%RHの条件で静電紡糸を行い、目付1g/mの構造発色繊維集合体シートを作製した。
【0035】
平均繊維径は980nmであり、SEMにより繊維表面の観察を行ったところ、繊維の表面には繊維軸方向に伸びる溝が多数形成されていた。
構造発色繊維集合体シートの透過スペクトルを測定したところ、波長500nmにピークを持ち、ピークトップの透過率は22%であった。構造発色繊維集合体シートの透過光は、強い緑色の構造色を示した。
【0036】
《実施例6》
実施例1で合成したポリアクリルアミド(重量平均分子量50万)の15wt%水溶液に、貧溶媒としてDMFを加え、ポリマー濃度が9.5wt%となるように紡糸原液を調製した。DMFの混合溶媒中における重量比率は40.5wt%であった。
特開2005−194675号公報に開示の静電紡糸装置と同じ装置にて、吐出量0.5g/hr、ノズルとドラムの距離13cm、ドラムの周速:1m/min.、印加電圧+13kV、紡糸雰囲気の温湿度25℃/15%RHの条件で静電紡糸を行い、目付1g/mの構造発色繊維集合体シートを作製した。
【0037】
平均繊維径は1150nmであり、SEMにより繊維表面の観察を行ったところ、図2に示すように、繊維の表面には繊維軸方向に伸びる溝が多数形成されていた。
構造発色繊維集合体シートの透過スペクトルを測定したところ、波長570nmにピークを持ち、ピークトップの透過率は23%であった。構造発色繊維集合体シートの透過光は、強い黄色の構造色を示した。
【0038】
《実施例7》
ドラムの周速を1000m/minとしたこと以外は、実施例1と同様に静電紡糸を行い、繊維が1方向に配向した構造発色繊維集合体シートを作製した。
【0039】
平均繊維径は750nmであり、SEMにより繊維表面の観察を行ったところ、繊維の表面には繊維軸方向に伸びる溝が多数形成されていた。
この構造発色繊維集合体シートを構成する繊維の長軸方向に対する光の入射角を90°、60°、45°、30°と変化させて、構造発色繊維集合体シートの透過スペクトルを測定したところ、透過光のピーク波長はそれぞれ400、430、490、560nmであった。また、光の入射角を変えるにしたがって、構造色は青−緑−黄色に変化した。
【0040】
《比較例1》
実施例1で合成したポリアクリルアミド(重量平均分子量50万)の10wt%水溶液を用いて、特開2005−194675号公報に開示の静電紡糸装置と同じ装置にて、吐出量0.5g/hr、ノズルとドラムの距離10cm、ドラムの周速:1m/min.、印加電圧+13kV、紡糸雰囲気の温湿度25℃/15%RHの条件で静電紡糸を行い、目付1g/mの繊維集合体シートを作製した。
【0041】
平均繊維径は150nmであり、SEMにより繊維表面の観察を行ったところ、繊維表面に溝は観察されなかった。
繊維集合体シートの透過スペクトルを測定したところ、可視部にピークは見られず、構造色は観察されなかった。
【0042】
《比較例2》
ポリマー濃度が7.5wt%となるようにDMFを加えたこと以外は、実施例1と同様にして繊維集合体シートを作製した。DMFの混合溶媒中における重量比率は27wt%であった。
【0043】
平均繊維径は400nmであり、SEMにより繊維表面の観察を行ったところ、繊維の表面には繊維軸方向に伸びる溝が多数形成されていた。
繊維集合体シートの透過スペクトルを測定したところ、可視部にピークは見られず、構造色は観察されなかった。
【0044】
《比較例3》
実施例1で合成したポリアクリルアミド(重量平均分子量50万)の10wt%水溶液に、ポリマー濃度が5.5wt%となるようにDMFを加えたところ、液が白濁し、静電紡糸法により繊維化することができなかった。DMFの混合溶媒中における重量比率は47.6wt%であった。
【0045】
《比較例4》
実施例4で合成したポリアクリルアミド(重量平均分子量360万)の10wt%水溶液に、貧溶媒としてエタノール(沸点:78℃)を加え、ポリマー濃度が6wt%となるように紡糸原液を調製した。エタノールの混合溶媒中における重量比率は42.5wt%であった。
実施例1と同じ条件で静電紡糸を行ったが、紡糸原液が固化されないままドラムに捕集され、繊維を作製することができなかった。
【0046】
《比較例5》
実施例1で作製した構造発色繊維集合体シートを温度60℃に加熱した湯浴上で30秒間保持し、水蒸気処理を行った。
水蒸気処理後の繊維集合体シート構成繊維の繊維径は840nmであり、SEMにより繊維表面の観察を行ったところ、繊維表面に溝は観察されなかった。また、繊維集合体シートの透過スペクトルを測定したところ、可視部にピークは観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の構造発色繊維集合体は、例えば、家電、家具、車、建材(壁、天井など)、衣類、スポーツ用品、包装材(包装紙、リボン、テープなど)、インテリア材(カーテン、アートフラワー材料など)などの用途に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が0.7〜1.6μmであり、繊維表面に繊維軸方向に伸びる複数の溝を有する繊維から実質的になる構造発色繊維集合体。
【請求項2】
繊維が一方向に配向している、請求項1に記載の構造発色繊維集合体。
【請求項3】
ポリマーと前記ポリマーに対する良溶媒及び貧溶媒とを含む紡糸原液を静電紡糸法により紡糸した繊維を直接集積させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の構造発色繊維集合体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−185146(P2010−185146A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28067(P2009−28067)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】