槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防及び治療用組成物
本発明は槐角抽出物を有効成分として含む更年期疾患の予防及び治療用組成物に関する。具体的に本発明は更年期疾患の予防及び治療効果を有する槐角抽出物、前記抽出物を含む組成物及び前記組成物を投与することにより、更年期疾患を予防又は治療する方法に関する。
本発明に伴う槐角抽出物は造骨細胞の増殖を促進する活性、骨吸収サイトカインの分泌抑制活性、骨再形成に関与する成長因子の分泌促進活性、造骨細胞の酸化窒素生成促進活性及び破骨細胞分化抑制活性を有していて、骨吸収指標の濃度を減少させ骨のカルシウム濃度及び骨密度の減少を抑制する活性を有しているので、骨粗しょう症を含む更年期疾患の予防又は治療に極めて有効に用いることができる。
本発明に伴う槐角抽出物は造骨細胞の増殖を促進する活性、骨吸収サイトカインの分泌抑制活性、骨再形成に関与する成長因子の分泌促進活性、造骨細胞の酸化窒素生成促進活性及び破骨細胞分化抑制活性を有していて、骨吸収指標の濃度を減少させ骨のカルシウム濃度及び骨密度の減少を抑制する活性を有しているので、骨粗しょう症を含む更年期疾患の予防又は治療に極めて有効に用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防及び治療用組成物に関する。具体的には本発明は更年期疾患の予防及び治療効果を有する槐角抽出物、これを含有する組成物及び前記組成物を投与することにより、更年期疾患を予防又は治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
更年期疾患とは男性ホルモン又は女性ホルモンの分泌減少により誘発される疾患を言う。特に、女性の場合、卵巣の老化に因るエストロゲンの分泌減少により、閉経を前後に約2〜10年に亘って現れる疾患であり、高熱、発汗、不眠症、憂鬱症、尿失禁、痛症、骨粗しょう症、心筋梗塞、脳卒中及び高血圧のような症状が誘発される。
前記更年期疾患の内最も代表的な骨粗しょう症は、破骨細胞の活性が造骨細胞に比べて増加することにより、総骨量が減少する症状を言う。骨粗しょう症が発生すると皮質骨の幅が減少し、骨髄の空洞が拡大し、網状組織骨柱が低くなり骨が継続して多孔質となる。骨粗しょう症が進むにつれて骨の物理的強度が低下して腰痛と関節痛が誘発され、若干の衝撃にも骨が容易に砕けてしまう。
【0003】
従来では、このような更年期疾患の予防及び治療の為に、ホルモン補充療法、非ステロイド系製剤及び骨粗しょう症治療の為の薬物治療法等が開発されている。この内で現在ホルモン補充療法が最も効果的な方法として用いられている。しかしながら、前記のような薬物を長期投与する場合には発癌の危険性、頭痛、体重増加のような副作用等が生じる短所がある。このことに因り、より安全で効果的な治療剤の開発が切実に要求されている。
【0004】
最近では、薬物を長期投与する場合にも前記のような副作用がなく、エストロゲンを代替できる程の優れた薬効を有する新たな物質開発の為の研究が活発に進められてきた。現在、エストロゲンの代替物質として関心の焦点となっているものの一つが、大豆等に含まれている植物エストロゲンである。前記植物エストロゲンは、人間のエストロゲンと構造が類似し、人体内でホルモン又は抗ホルモン作用により、ホルモンと関連した疾患に影響を及ぼすこともあって、さらに、ホルモン補充療法を代替し得る栄養補助食品としての利用が検討されてきた。今まで知られた代表的な植物エストロゲンにはダイゼイン(daidzein)、ゲニステイン(genistein)、フォルモノネチン(formononetin)、バイオカニンA(biochaninA)等のイソフラボン(isoflavone)系化合物、クメストロール(coumestrol)等のクメスタン(coumestan)系化合物、エンテロラクトン(enterolactone)等のリグナン(lignan)系化合物及びエンテロジオール(enterodiol)等のフェノール(phenol)系化合物等がある。
特許文献1には植物エストロゲンが多量含まれていて、骨粗しょう症予防及び治療効果を有する葛根抽出物が開示されており、植物エストロゲンの一種であるダイゼインが多量含まれた葛根抽出物の骨粗しょう症改善効果が報告されている(非特許文献1)。さらに、大豆粉末の骨粗しょう症改善効果が報告されている(非特許文献2)。
【0005】
一方、槐角(Sophorae Fructus)はエンジュ(学名:Sophora japonica Linne)の実を指す。前記エンジュはマメ科に属する落葉高木にして、韓国、日本及び中国等に分布し、その部位によりそれぞれ異なる成分を含んでいて、それぞれ異なる薬理作用を示すとして知られている。
【0006】
エンジュの花である槐花(Sophorae Flos)の薬理作用には、抗炎作用、抗潰瘍作用、血圧低下作用及び動脈硬化症に対する予防及び治療効果が知られている(非特許文献3)。
エンジュの粘液(ヤニ)は槐膠と言われ破傷風治療に用いられ、エンジュの葉(槐葉)、枝、樹皮及び根皮は抗菌活性があるとして報告されている(非特許文献4)。
エンジュの実である槐角は血糖上昇作用及び抗菌作用が知られており、痔疾、子宮出血、尿血、吐血、喀血及び脱肛の治療等に用いられてきた(非特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許第348148号
【非特許文献1】Kim C.S.et al.,Korean J.Food Sci.Technol.,34(4),710-718,2002
【非特許文献2】ヤン ソンボム他、大韓骨代謝学会誌、6(1),11-17,1999
【非特許文献3】キム チャン ミン他、中薬大辞典第1巻、図書出版 正潭、496-509,1998
【非特許文献4】Yook C.S.et al.,K. H.Pharma.Sci.,17, 75〜87,1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は更年期疾患の予防及び治療効果を有し、副作用のない新たな治療剤を見出だす為、研究を重ねる中でエンジュの実である槐角の抽出物が、骨粗しょう症を含む更年期疾患を極めて効果的に予防及び治療する作用があることを確認することにより本発明を完成した。
従って、本発明の目的は槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供することである。
本発明の他の目的は槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防及び改善用食品組成物を提供することである。
本発明の他の目的は槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより更年期疾患を予防又は治療する方法を提供することである。
本発明の他の目的は槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより体重の増加を抑制する方法を提供する。
本発明の他の目的は槐角抽出物を更年期疾患の予防又は治療の為の薬剤の製造に用いる用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような本発明の目的を達成する為に、本発明は槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
さらに、本発明は槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
さらに、本発明は槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより更年期疾患を予防又は治療する方法を提供する。
さらに、本発明は槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより体重の増加を抑制する方法を提供する。
さらに、本発明は槐角抽出物を更年期疾患の予防又は治療の為の薬剤の製造に用いる用途を提供する。
【0010】
より具体的にいうと、本発明は以下の事項を含む。
1 槐角抽出物を有効成分として含むことを特徴とする更年期疾患の予防及び治療用薬学的組成物。
2 前記槐角抽出物が
(a)槐角粉末の全体重量に対して3倍〜20倍の水を槐角粉末に添加する段階;及び
(b)前記(a)段階の組成物を1時間〜6時間加熱して抽出することにより製造されることを特徴とする第1項記載の薬学的組成物。
3 前記槐角抽出物が
(a)槐角粉末の全体重量に対して3倍〜20倍の水を槐角粉末に添加する段階;
(b)前記(a)段階の組成物を1時間〜6時間加熱して抽出することにより製造されるものである更年期疾患の予防及び治療用薬学的組成物;及び
(c)前記(b)段階の組成物にアミラーゼ又はペクチナーゼを0.01〜1%(v/v)で添加して4〜24時間反応させ製造されるものであることを特徴とする第1項記載の薬学的組成物。
4 前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病(Paget's disease of bone)を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする第1項記載の薬学的組成物。
5 第1項の槐角抽出物を有効成分として含む更年期疾患の予防及び改善用食品組成物。
6 前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする第5項記載の食品組成物。
7 槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより更年期疾患を予防又は治療することを特徴とする方法。
8 前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする第7項記載の方法。
9 前記更年期疾患が骨代謝性疾患であることを特徴とする第8項記載の方法。
10 槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与することにより、造骨細胞の増殖、骨再形成関連成長因子の分泌及び造骨細胞の一酸化窒素生成を促進して骨代謝性疾患を予防又は治療することを特徴とする第9項記載の方法。
11 前記骨再形成関連成長因子がIGF-1又はTGF-βであることを特徴とする第10項記載の方法。
12 槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与して、骨吸収サイトカインの分泌又は破骨細胞の分化を抑制することにより骨代謝性疾患を予防又は治療することを特徴とする第9項記載の方法。
13 前記骨吸収サイトカインがIL-1β又はIL-6であることを特徴とする第12項記載の方法。
14 槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより体重の増加を抑制する方法。
15 槐角抽出物を更年期疾患の予防又は治療の為の薬剤の製造に用いる用途。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で“槐角(Sophorae Fructus)”とは、マメ科植物のエンジュ(学名:Sophora japonica Linne)の実を指す。好ましくは前記槐角とはエンジュの完熟した実を言う。
本発明の槐角抽出物の製造の為に用いられる槐角は、完熟した実にして固有の色調及び香味を有し異味・異臭のないのが好ましい。さらに、槐皮は緑褐色乃至褐色であり実は黒色乃至黒褐色のものが好ましい。
【0012】
本発明の槐角抽出物はこれに限定されるものではないものの、熱水抽出方法により製造されるのが好ましい。熱水抽出時の槐角と水の比率は特に限定はされないものの、槐角粉末に水を3倍〜20倍(重量基準)に添加することができる。好ましくは、抽出効率を増加させる為に、槐角粉末に対して水を5倍〜10倍(重量基準)に添加することができる。
【0013】
抽出時の温度は常圧下の室温で行うことが好ましく、抽出時間は抽出温度により異なるものの、1時間乃至6時間、好ましくは2時間乃至4時間抽出する。さらに、抽出の際撹拌器で撹拌すると、さらに抽出効率を増大させ得る。
抽出に用いられる槐角は収穫後洗浄し、そのまま用いるか又は乾燥して用いられる。乾燥方法としては日干し、陰干し、熱風乾燥及び自然乾燥する方法等全てが用いられる。さらに、抽出効率を増大させる為に、槐角又はその乾体を粉砕機で粉砕して用いることができる。
好ましくは、本発明槐角抽出物は槐角を20〜40meshの大きさに粉砕し、前記槐角粉末に飲用水を3〜20倍、好ましくは5〜10倍に添加して100〜130℃、好ましくは120〜125℃で1時間〜3時間熱水抽出する。前記熱水抽出液を遠心分離して沈殿物を除去し、上澄液を回収することにより槐角抽出物を製造することができる。
【0014】
さらに、前記のような方法により得られた本発明の槐角の熱水抽出物をさらに酵素処理することにより、槐角の酵素分解抽出物を収得することができる。つまり、前記のような方法により得られた熱水抽出液に酵素を抽出液対比0.01〜1%(v/v)を処理して4〜24時間反応させ濃縮した後、凍結乾燥して製造することができる。前記酵素としてはα-及びβ-アミラーゼ、ペクチナーゼが用いられる。
【0015】
一方、本発明の槐角抽出物は更年期疾患を予防又は治療する効果を有している。前記にて“更年期疾患”とは、ホルモンの欠乏により誘発される疾患を言い、特に女性の場合卵巣機能の停止によるエストロゲンの欠乏により誘発される疾患を言う。代表的な更年期疾患には骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患等がある。前記骨代謝性疾患とは、生体内で破骨細胞と造骨細胞との平衡が破れることにより発生する疾患であり、骨粗しょう症が最も代表的である。本発明の槐角抽出物は骨粗しょう症の予防又は治療に極めて優れた効果がある。
【0016】
前記本発明の槐角抽出物の更年期疾患の予防又は治療効果は生体外(in vitro)及び生体内(in vivo)実験を通じて確認した。
本発明に伴う槐角抽出物の生体外実験において、本発明の槐角抽出物は造骨細胞の増殖を促進し(図1参照)、骨吸収サイトカインIL-1β(インターロイキン1-β)とIL-6(インターロイキン-6)の分泌を抑制する作用を有していることを確認した(図2a、図2b及び図3参照)。さらに、本発明の槐角抽出物は骨の再形成に関与する成長因子であるIGF-1(インスリン様成長因子-1)とTGF-β(形質転換成長因子-β)の発現を促進する作用を有していて(図4a、図4b及び図5参照)、一酸化窒素の生成を促進し(図6及び図7)、破骨細胞の分化を効果的に抑制する作用を有していることが確認できた(図8及び図9)。さらに、前記のような作用は本発明の槐角抽出物が低濃度である場合にも優れたものとして示された。
【0017】
本発明に伴う槐角抽出物の生体内実験は、卵巣が摘出されたラットを利用して行った。前記卵巣が摘出されエストロゲンホルモンが分泌されないラットに、本発明の槐角抽出物を供給し、これに伴うラットの体重の変化、血清内骨の交替率の指標として破骨細胞により骨のマトリックスが分解される場合、増加されるDpd(Deoxypyridinoline:デオキシピリジノリン)及び造骨細胞の活性化により増加されるカルシウム濃度を測定した。その結果、本発明の槐角抽出物はエストロゲンの代替物質として作用し、体重の増加を抑制し(図10参照)、Dpd増加抑制能があって(図12〜14参照)、血中のカルシウム濃度を増加させる作用を有することが確認できた(図15参照)。さらには、本発明の槐角抽出物は卵巣が摘出されたラットより骨密度の指標となる脛骨と腰椎骨の小柱骨(trabecular bone:骨梁)面積の減少を抑制する作用を有していることが確認できた(図16及び図17参照)。
【0018】
従って、本発明は前記槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。前記更年期疾患にはホルモン欠乏によって誘発される疾患を全て含み、特に、女性の場合エストロゲンの欠乏により誘発される疾患を含む。例えば、骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病のような骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症のような心血管疾患及びパーキンソン病のような退行性神経疾患等を含む。最も好ましくは前記更年期疾患には骨粗しょう症を含む。
【0019】
本発明に伴う薬学的組成物は薬学的に有効な量の槐角抽出物を単独で含むか、又は一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含むことができる。前記にて“薬学的に有効な量”とは、疾患を治療又は予防するのに充分な抽出物の量を言う。
本発明に伴う槐角抽出物の薬学的に有効な量としては1〜600mg/day/体重kg、好ましくは1〜100mg/day/体重kgである。しかしながら、前記薬学的に有効な量は疾患及びこれの重症程度、患者の年齢、体重、健康状態、性別、投与経路及び治療期間等により適宜変化されることもある。
【0020】
前記にて“薬学的に許容される”とは、生理学的に許容され、人間に投与される時、通常的に胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応又はこれと類似した反応を起こさない組成物を言う。前記担体、賦形剤及び希釈剤の例としてはラクトース、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギナート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油が挙げられる。
【0021】
前記薬学組成物は充填剤、抗凝縮剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等を追加して含め得る。さらに、本発明の薬学組成物は哺乳動物に投与された後、活性成分の吸収の速度を調節できるように当業界に公知された方法を用いて剤形化し得る。剤形は粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質又は硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射用液、滅菌粉末の形態であることも有り得る。本発明に伴う薬学組成物は経口、経皮、皮下、静脈又は筋肉を含む多くの経路を通じて投与できる。活性成分の投与量は投与経路、患者の年齢、性別、体重及び重症度等の種々の因子により適切に選択でき得る。
【0022】
本発明の薬学的組成物は更年期疾患を予防又は治療する効果を有する公知の化合物と併行して投与できる。前記化合物の例には天然ビタミンD3、エストロゲン、アレンドロン酸(alendronate)及びラロキシフェン(raloxifene)等がある。
【0023】
さらに、本発明に伴う槐角抽出物は更年期疾患の予防又は治療の目的で食品に添加することもできる。従って、本発明は槐角抽出物を有効成分とする食品組成物を提供する。本発明の食品組成物は機能性食品栄養補助剤、健康食品及び食品添加物等の全ての形態を含む。前記類型の食品組成物は当業界に公知された通常的な方法により多様な形態で製造できる。
例えば、健康食品としては本発明の槐角抽出物そのものを、茶、ジュース及びドリンク状に製造して飲用に供するか、又は顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取できる。さらに、本発明の槐角抽出物と、更年期疾患の改善及び予防効果があるとして知られた公知の活性成分と共に混合して組成物の形態で製造できる。
【0024】
さらに、機能性食品には飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例:果物缶詰、瓶詰、ジャム、マーマレード等)、魚類、肉類及びその加工食品(例:ハム、ソーセージ、コンビーフ等)、パン類及び麺類(例:うどん、そば、ラーメン、スパゲッティ、マカロニ等)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例:バター、チーズ等)、食用植物油脂、マーガリン、植物性蛋白質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例:味噌、醤油、ソース等)等に本発明の槐角抽出物を添加して製造することができる。
【0025】
さらに、本発明の槐角抽出物を食品添加剤の形態で使用するには、粉末又は濃縮液状に製造して使用できる。
本発明の食品組成物の内、本発明の槐角抽出物の好ましい含有量としては食品100g当り約30〜50gである。
好ましくは、本発明の槐角抽出物を有効成分として含む食品組成物は、特に、骨粗しょう症に効果があって、カルシウムの生体吸収を促進する公知の活性成分とともに混合して健康食品の形態で製造できる。
【0026】
最も好ましくは、本発明の槐角抽出物を有効成分として含む食品組成物は、槐角抽出物30〜50重量%、海藻カルシウム粉末30〜50重量%、結晶セルロース1〜10重量%、乳蛋白加水分解物0.1〜2重量%、緑茶エキス粉末0.1〜2重量%、鮫軟骨抽出物粉末0.1〜2重量%、キトオリゴ糖0.1〜2重量%、ビタミンC0.1〜2重量%、コラーゲンペプチド0.1〜2重量%、ブドウ種子抽出物粉末0.1〜2重量%、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ及びラクターゼ酵素混合物0.1〜2重量%、ビタミンD3粉末0.1〜0.3重量%及びステアリン酸マグネシウム0.1〜2重量%でなされ得る。
【0027】
前記にて海藻カルシウムは、海苔類、寒天類及びフノリ類のような紅藻類から抽出されたもので、骨成長に必要なカルシウムは勿論、マグネシウム、亜鉛、鉄、フッ素、マンガン、ヨウ素、セレニウムが豊富に含まれている。本発明の食品組成物に前記海藻カルシウム粉末をカルシウム供給源として30〜50重量%添加することにより、本発明の槐角抽出物の骨粗しょう症の予防及び改善効果が相乗作用を示すことができる。
【0028】
結晶セルロースは賦形剤として1〜10重量%の含量範囲で添加することができる。
乳蛋白加水分解物は乳蛋白を酵素又は酸で加水分解して食用に適するように加工したものであり、前記乳蛋白加水分解物にはカルシウムの体内吸収を促進するカゼインホスホペプチド(CPP)が含まれている。従って、本発明の組成物に前記乳蛋白加水分解物を0.1〜2重量%範囲で添加し、本発明の槐角抽出物の骨粗しょう症予防及び改善効果が相乗作用を示すようにすることができる。好ましくは、前記乳蛋白加水分解物はカゼインホスホペプチド(CPP)が12%以上のものを用いる。
【0029】
緑茶エキス粉末及びブドウ種子抽出物粉末には酸化を防止し、炎症を抑制して骨の消失を防いでくれるポリフェノール成分が多量含まれている。本発明の組成物に前記緑茶エキス粉末及びブドウ種子抽出物粉末をそれぞれ0.1〜2重量%ずつ添加することにより、本発明の槐角抽出物の骨粗しょう症予防及び改善効果の相乗作用を示すようにすることができる。
【0030】
鮫軟骨抽出物粉末は軟骨の構成成分であるコンドロイチンを含有していて、骨粗しょう症の予防に極めて有用である。従って、本発明の組成物に前記鮫軟骨抽出物粉末を0.1〜2重量%添加することにより、本発明の槐角抽出物の骨粗しょう症予防及び改善効果が相乗作用を示すようにすることができる。
【0031】
キトオリゴ糖は蟹や蝦、甲殻類の殻より得られるキチン、キトサンを分解して生体利用率を高めた天然低分子多糖類である。前記キトオリゴ糖は水溶性が高く体内吸収率が優れ、免疫増強作用、抗癌作用、抗菌作用、血糖値上昇抑制作用、カルシウム吸収促進作用等の広範囲の高機能性生理活性物質である。本発明では前記キトオリゴ糖を本発明の組成物に0.1〜2重量%の含量で添加することにより、カルシウムの吸収が促進されるようにする。前記キトオリゴ糖は含量が70%以上のものを用いるのが好ましい。
【0032】
ビタミンCとビタミンD3はカルシウムの吸収を促進するものとして知られていて、本発明の組成物に前記ビタミンC及びビタミンD3をそれぞれ0.1〜2重量%及び0.1〜0.3重量%ずつ添加することによりカルシウムの吸収を促進させる。
コラーゲンペプチドはコラーゲン蛋白質の骨格形成と成長に役立つ効果があり、本発明の組成物に0.1〜2重量%を添加する。
【0033】
アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ及びラクターぜ酵素混合物は、エネルジメ-P(Enerzyme-P)と言う商標名の複合酵素剤として市販されているもの用いる。前記エネルジメ-Pはなまものの食材に対して体内での消化吸収、エネルギー効率向上と新陳代謝を増進させる主な原料である。本発明の食品組成物に前記酵素混合物を0.1〜2重量%の含量で添加すると、本発明の組成物が体内に消化吸収されやすくなる。
【0034】
ステアリン酸マグネシウムはムコ多糖とコラーゲン、カルシウムの供給源として関節に有用な成分として知られている。本発明の食品組成物に前記ステアリン酸マグネシウムを0.1〜2重量%を添加し、本発明の槐角抽出物の骨粗しょう症予防及び改善効果が相乗作用を示す。
【0035】
本発明の槐角抽出物と前記のカルシウム供給源及びカルシウムの生体吸収を促進させる成分等を共に混合した食品組成物は更年期疾患、特に骨粗しょう症の予防及び治療に相乗効果がある。
さらに、本発明は前記槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与することにより、更年期疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0036】
本発明で個体とは、人間を含む哺乳動物を言う。本発明で“有効な量”とは、疾患を治療又は予防するに充分な量を言い、好ましい有効な量の範囲は1〜600mg/day/体重kg、好ましくは、1〜100mg/day/体重kgである。しかしながら、前記薬学的に有効な量は疾患及びその重症程度、患者の年齢、体重、健康状態、性別、投与経路及び治療期間等により適宜変化されることも有り得る。さらに、前記薬学的組成物を個体に投与する方法としては、特に限定されず当分野に公知された方法を使用できる。さらに、更年期疾患としては、前記記載の通りの疾患が含まれる。好ましくは、骨代謝性疾患が含まれる。
【0037】
前記骨代謝性疾患は、個体に本発明の槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与することにより、造骨細胞の増殖、骨再形成関連成長因子及び酸化窒素の生成が促進され予防又は治療が可能となる。
前記造骨細胞は骨の基質を合成して分泌し、カルシウムとリンの濃度を調節して骨格を形成する活性を有している。本発明の一実施例では槐角抽出物が造骨細胞の増殖を促進する効果があることを確認している。前記骨再形成関連成長因子には造骨細胞のIGF-1(Insulin like Growth Factor-1:インスリン様成長因子-1)及びTGF-β(transforming growth factor-β:形質転換成長因子-β)が含まれる。前記IGF-1とTGF-βは造骨細胞の複製を刺激してコラーゲン及び基質合成を向上させるものと知られている。特に、TGF-βは破骨細胞の機能を抑制し、破骨細胞のアポトーシスを促進するものと知られており、TGF-βが増加するにつれて、骨再吸収は減少するようになる (Spelsberg,T.C.et al.,J.Mol.Endocrinol,13,819-828,1999)。本発明の一実施例では槐角抽出物がIGF-1及びTGF-βの分泌を促進させる活性があることを確認している。
【0038】
前記造骨細胞より分泌される一酸化窒素は破骨細胞の活性を抑制し、骨の再吸収を抑制するとして報告されている。本発明の一実施例では槐角抽出物が一酸化窒素の生成を促進させる活性のあることを確認している。
さらに、前記骨代謝性疾患は個体に本発明の槐角抽出物を含む薬学的組成物を有効な量で投与することにより、骨吸収サイトカインの分泌又は破骨細胞の分化が抑制され予防又は治療が可能となる。
【0039】
前記骨吸収サイトカインではIL-1βとIL-6が含まれる。前記骨吸収サイトカインは造骨細胞から分泌され、破骨細胞の分化因子であるOPG-L(osteoprotegrin ligand)の発現を促進し、これにより破骨細胞の分化が促進する活性を有する(Spelsberg,T.C.et al.,J.Mol.Endocrinol,13,819-828,1999)。本発明の一実施例では槐角抽出物が前記骨吸収サイトカインであるIL-1β及びIL-6の分泌を抑制する活性のあることを確認している。前記破骨細胞は骨の表面に付着して酸と分解酵素を分泌することにより、骨を構成するリン灰石結晶及びコラーゲンのような骨基質を除去して骨を破壊する活性を有する。本発明の一実施例では槐角抽出物が破骨細胞の分化抑制効果を有していることを確認している。
【0040】
さらに、本発明の槐角抽出物は卵巣が摘出され、エストロゲンホルモンが分泌されない為おこる体重の増加を抑制する効果を有している。従って、本発明は槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与することにより、体重の増加を抑制する方法を提供する。
さらには、本発明は前記槐角抽出物を更年期疾患の予防又は治療の為の薬剤の製造に用いる用途を提供する。
以下、本発明の具体的な方法を実施例を挙げて詳細に説明しようとするものの、本発明の権利範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
〈実施例1〉
槐角抽出物の製造
槐角(チェソン薬業社、ソウル所在京東市場内)20kgを乾式粉砕機を利用して30meshの大きさに粉砕した。前記粉砕物に飲用水を添加して10倍に希釈した後(粉砕物:飲用水=9:1)100℃で4時間加熱した。その後、50℃に冷却し、100meshの濾過布を利用して濾過した後、再び200meshの濾過布で濾過して沈殿物を除去し濾過液を得た。前記上澄液を濃縮器を利用して1/5の嵩になるように濃縮することにより槐角抽出物を製造した。さらに、前記濃縮液を噴霧乾燥機を利用して噴霧乾燥し、粉末化することにより実験に用いた。
【0042】
〈実施例2〉
槐角の酵素分解抽出物の製造
前記実施例1の方法により製造された槐角の熱水抽出液を濾過布で濾過し、得られた濾過液に0.5%(v/v)の濃度になるようにアミラーゼを添加して50℃で16時間酵素反応を行った。前記反応液を濃縮器を利用して1/5の嵩になるように濃縮することにより槐角の酵素分解抽出物を製造した。さらに、前記濃縮液を噴霧乾燥機を利用して噴霧乾燥し、粉末化することにより実験に用いた。
【0043】
〈実施例3〉
槐角抽出物を含む食品組成物の製造
前記実施例2で製造した槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物を製造した。前記実施例2の槐角の酵素分解抽出物粉末235g、海藻カルシウム粉末200g(大徳薬業、京畿道所在)、結晶セルロース27.5g(大徳薬業、京畿道所在)、乳蛋白加水分解物5g(ダインナチュラル、ソウル所在)、緑茶エキス粉末5g(明食品、京畿道所在)、鮫軟骨抽出物粉末5g(信一商社、ソウル所在)、キトオリゴ糖4g(盈徳キトサン、ソウル所在)、ビタミンC5g(ロシュビタミン、ソウル所在)、コラーゲンペプチド2.5g(ダインナチュラル、ソウル所在)、ブドウ種子抽出物粉末2.5g(大徳薬業、京畿道所在)、エネルジメ-P2.5g(成志物産、京畿道所在)、ビタミンD3粉末1g(ロシュビタミン、ソウル所在)及びステアリン酸マグネシウム5g(ダインナチュラル、ソウル所在)を混合することにより、槐角抽出物を含む食品組成物を製造した。
【0044】
〈実施例4〉
生体外(in vitro)実験を通じた槐角抽出物の骨粗しょう症予防又は治療効果調査
槐角抽出物の骨粗しょう症予防又は治療効果を調査する為、ヒトの造骨細胞株の分譲を受けて使用し、ラットより骨髄細胞を採取し前記骨髄細胞より破骨細胞及び造骨細胞を分化させて用いた。
さらに、本発明の槐角抽出物がヒトの造骨細胞増殖に及ぼす影響、骨吸収サイトカインであるIL-1βとIL-6の分泌抑制活性、骨再形成に関与する成長因子であるIGF-1とTGF-βの分泌促進活性、造骨細胞の一酸化窒素生成量に及ぼす影響及び破骨細胞の分化抑制活性等を調査した。全ての実験群間の比較はANOVA検定を利用し、特定実験群間の比較はスチューデントT-検定(student T-test)を利用して統計処理後、有意差(p value)が0.05より小さい(P<0.05)場合、統計的な意義があるものと判定した。
【0045】
4-1) ヒトの造骨細胞の培養
MG-63ヒトの造骨細胞類似細胞株をソウル大学校医科大学の韓国細胞株銀行より分譲を受け継代培養後使用した。前記凍結MG-63ヒトの造骨細胞類似細胞は、37℃水浴で約1分間解凍させ、1300rpmで5分間遠心分離して上澄液を除去した。得られたペレットを10%FBSを添加したDMEM培地に再懸濁後、25cm3培養用フラスコに分株して培養した。細胞の安定化の為、約2週間の培養期間を置いて細胞が安定して単層を成すか否かを顕微鏡で確認後実験に供した。
【0046】
4-2) 破骨細胞(osteoclast cell)及び造骨細胞(osteoblast cell)の培養
12週令のSD系ラット(翰林実験動物研究所、京畿道所在)に過量のエーテルを吸込ませて麻酔し、1匹当り2個の大腿骨を直接脱取し、洗浄用培地(15%FBSα-MEM培地)で複数回洗浄し、最終洗浄を破骨細胞培地(0.28mM L-アスコルビン酸-2-リン酸が含まれた15%FBSα-MEM培地)で行ない、大腿骨の両端部位を除去し、25ケージの注射針を利用して約10mlの骨髄細胞を採取した。
前記にて採取した骨髄細胞に10mlの破骨細胞培地を追加して75cm3培養用フラスコに分株し、24時間37℃、5%CO2及び100%の湿度下で培養した。培養後新鮮な培地に移し10日間2回培地を再供給して培養し実験に供した。
【0047】
造骨細胞は前記破骨細胞と同一な方法で10mlの骨髄細胞を採取し、100μmの細胞濾過器で濾過、遠心分離して上澄液を除去し、大腿骨当り5mlになるように1次培養用培地 (0.28mM L-アスコルビン酸2-リン酸と10nMデキサメタゾンが含まれた15% FBSα-MEM培地)に再懸濁した。懸濁した骨髄細胞を75cm3培養用フラスコに大腿骨当り20mlになるように1次培養用培地を追加して37℃、5%CO2及び100%の湿度下で培養した後、培養2日目及び4日目に同じ培地に交換した。培養6日目にトリプシンを処理した後、造骨細胞培養用培地(0.28mM L-アスコルビン酸2-リン酸と10nMデキサメタゾンが含まれた15%FBSα-MEM培地)に培地を交換して培養した。
前記造骨細胞及び破骨細胞の培養状態は実験前に顕微鏡で確認し、トリパンブルー染色法で細胞の生存を確認して実験に供した。
【0048】
4-3) 槐角抽出物の処理に伴う造骨細胞の増殖程度
槐角抽出物の処理に伴う造骨細胞の増殖程度を調べる為、実施例1の槐角抽出物粉末(R-G)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物粉末(R-A)及び実施例3の槐角抽出物が含まれた食品組成物(R-P)を前記実施例 4-1)のMG-63ヒトの造骨細胞類似細胞に処理し、3日間培養した後、前記抽出物が細胞増殖に及ぼす影響をMTT分析で調査した。さらに、比較群としては大豆エキス粉末(新東邦)、骨粗しょう症の治療剤として用いられている17-βエストラジオール(estradiol,sigma)及びリポポリサッカライド(LPS lipopolysaccharide,sigma)を前記MG-63造骨細胞類似細胞にそれぞれ処理した後、細胞増殖に及ぼす影響を比較調査し、対照群としては前記の各試料の代わりに細胞培養用培地を処理した。各試料は細胞培養用培地に希釈して処理容量が10-4〜10-12%の範囲になるようにした。前記LPSは10μg/mlの濃度で添加した。
【0049】
細胞のミトコンドリア活性に比例するMTT分析は次のような方法で行った。前記1×104以上のMG-63造骨細胞類似細胞を、96ウェル組織培養プレートに100μlずつ分株した後、各試料を10-4、10-6、10-8、10-10及び10-12%の容量で処理し、72時間反応させた。反応が終了した後、10μlMTT(3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazolium bormide)原液を添加し混合して37℃で4時間培養した。培養が終了した後、100μlイソプロパノール/HClを各ウェルに添加し、完全に混合して色相の変化を確認、1時間内にELISAプレートリーダで570nmにおける吸光度を測定した。
【0050】
実験結果、実施例1の槐角抽出物(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物(R-A群)、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物(R-P群)及び大豆エキス粉末(S-S群)を処理した場合に、全ての処理濃度範囲において、類似した増殖効果を示した。さらに、前記増殖効果は対照群に比べては高い効果を示したものの、エストラジオール処理群(E群)に比べては低く示された。しかしながら、エストラジオール処理群の場合には、細胞増殖効果が濃度依存的に示され、エストラジオールを10-10及び10-12%の低濃度で処理する場合には増殖効果が減少した。反面、微々たることではあるが、R-G群、R-A群、R-S群及びS-S群の場合には、高い濃度よりは低い濃度(10-10%)において高い増殖効果を示した。従って、本発明の槐角抽出物の場合、濃度非依存的に造骨細胞の増殖を促進することが分かった(図1)。
前記実験結果から本発明に伴う槐角抽出物の造骨細胞増殖効果は、エストラジオール処理群に比べて低く示されたものの、低濃度(10-6%〜10-12%)においても造骨細胞の増殖を促進する効果のあることが分かった。
【0051】
4-4) 槐角抽出物が造骨細胞のIL-1β及びIL-6分泌活性に及ぼす影響
本発明の槐角抽出物が造骨細胞より分泌されるIL-1β及びIL-6の生成を抑制するか否かを調査した。前記骨吸収サイトカインIL-1βとIL-6は造骨細胞から分泌され、破骨細胞の分化因子であるOPG-Lの発現を促進し、これにより破骨細胞の分化が促進される(Spelsberg,T.C.et al.,J.Mol.Endocrinol,13,819-828,1999)、従って、前記槐角抽出物が造骨細胞に影響を与えて、骨吸収サイトカインIL-1βとIL-6の生成を抑制すれば、OPG-Lの発現が抑制されこれにより破骨細胞の分化が抑制できる。
【0052】
本発明の槐角抽出物が造骨細胞より分泌されるIL-1βとIL-6の生成を抑制する効果を有しているか否かを確認する為、前記実施例4-1)のMG-63ヒトの造骨細胞類似細胞に、実施例1の槐角抽出物(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物(R-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物(R-P群)を、細胞培養用培地に希釈して10-4〜10-10の濃度範囲に処理し、72時間経過後ELISA法及びRT-PCR法を通じてIL-1β及びIL-6の発現程度を測定した。この際、比較群としては大豆エキス粉末(S-S群)及びエストラジオールを同一な方法で処理し、対照群には細胞培養用培地を添加した。
【0053】
IL-1β及びIL-6の発現程度を測定する為のELISA法はELISAキット(Titerzyme ELISA kit,Assay designs)を用いて、提供されたプロトコールにより実施し、450nmで吸光度を測定した後、検量線を利用して各濃度を計算した。
【0054】
さらに、IL-1β及びIL-6の mRNA発現程度を測定する為にRT-PCR法を次のように実施した。前記にて各試料を10-8%の濃度で処理したMG-63ヒトの造骨細胞類似細胞から、総RNAをトリゾル法により抽出した。前記総 RNA 2μlを逆転写反応を行うことにより、各々の相補的DNAを製造した。DEPC蒸留水 12.85μlに総 RNA 5μl、10pMのプライマー各1μlずつを添加した後、72℃で10分間変性させ、ここに逆転写酵素(5U)0.15μlを添加し、42℃で10分間反応を行い相補的DNAを製造した。
【0055】
前記相補的DNAを鋳型にして重合酵素連鎖反応を行った。この際実験の再現性及び一貫性の為、ワンストップRT-PCRプリミックス(Accupower,Bioneer)を用いた。前記反応液はPCRシステム(Dual-bay DyadTM thermal cycler system,MJ Research)を用いて95℃で5分間、95℃で 30秒、60℃で 60秒、72℃で 60秒を1サイクルにして総 35サイクルを実施した。標準対照群としてはGAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素)を用いた。増幅されたPCR産物はアガロースゲル電気泳動を利用して定量し、発現程度を対照群に対して相対的な%で示した。前記RT-PCR分析にて用いた各々のプライマーは下記の通りである。
【0056】
IL-1βのセンスプライマー(配列番号1)
5'-AGG CAC AAC AGG CTG CTC TG-3'
IL-1βのアンチセンスプライマー(配列番号2)
5'-TGG ACC AGA CAT CAC CAA GC-3'
IL-6のセンスプライマー(配列番号3)
5'-AGC GCC TTC GGT CCA GTT GC-3'
IL-6のアンチセンスプライマー(配列番号4)
5'-ACT CAT CTG CAC AGC TCT GG-3'
【0057】
ELISA分析結果、実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群(R-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P群)の場合、対照群に比べてIL-β及びIL-6の分泌を抑制するものとして表れた。
IL-1βの分泌抑制能は各試料を最高濃度である10-4%で処理した場合、R-P群が最も効果ありとして示され、R-G群及びR-A群も大豆エキス粉末処理群(S-S群)及びエストラジオール処理群に比べて効果的として表れた。さらに、本発明の槐角抽出物処理群は最低濃度の10-10 %で処理した場合にも、IL-1βの分泌を抑制するものとして表れ、比較群の大豆エキス粉末処理群(S-S群)及びエストラジオール処理群に比べてさらに低い濃度においても、IL-1βの分泌を抑制する効果を有していることが分かった。特にR-P群の場合全ての処理濃度において一定の量のIL-1β(60pg/ml)を分泌するものとして示された(図2a)。
【0058】
IL-6の分泌抑制能は各試料を最高濃度の10-4%で処理した場合、実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)が最も優れたものとして表れ、最低濃度の10-10%で処理した場合にもR-G群が最も優れたものとして表れた。特にR-P群の場合全ての処理濃度において、一定した濃度のIL-6(110pg/ml)を分泌するものとして表れ、これより本発明の槐角抽出物がS-S群及びエストラジオール処理群に比べて、さらに低い濃度でIL-6を抑制する活性のあることが分かった(図2b)。
【0059】
RT-PCR法の結果も前記ELISA法の結果と類似したパターンで表れた。IL-1βの発現抑制効果は、槐角抽出物を含む食品組成物群(R-P群)において、最も優れたものとして表れ、実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)及び実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群(R-A群)は、エストラジオール処理群(E群)と同様に表れた。大豆エキス粉末処理群(S-S群)の場合にはIL-1βの発現抑制能が最も低く表れた。IL-6の発現抑制効果はエストラジオール処理群が最も優れたものとして表れた。一方、R-P群の場合にもIL-6の発現抑制効果が優れたものとして表れ、S-S群に比べてその効果が優れたものとして示された(図3)。
【0060】
従って、本発明の槐角抽出物がIL-1β及びIL-6の分泌を抑制して破骨細胞の分化を抑制できることが分かり、かつ、このような活性が従来の骨粗しょう症治療用食品組成物や薬剤に比べてより低い濃度においても表れることが分かった。
【0061】
4-5) 槐角抽出物が造骨細胞のIGF-1及びTGF-βの分泌活性に及ぼす影響
本発明の槐角抽出物が造骨細胞のIGF-1及びTGF-βの分泌を促進するか否かを調査した。骨再形成に関与する成長因子である IGF-1とTGF-βは、造骨細胞の複製を刺激しコラーゲン及び基質合成を向上させるものとして知られている。特に、TGF-βは破骨細胞の機能を抑制し、破骨細胞のアポトーシスを促進するものとして知られていて、TGF-βが増殖するにつれて骨の再吸収は減少するようになる(Spelsberg,T.C.et al.,J.Mol.Endocrinol,13,819-828,1999)。
【0062】
本発明の槐角抽出物が造骨細胞におけるIGF-1とTGF-β分泌を促進するか否かを調査する為に、各試料を前記実施例4-4)と同一な方法でMG-63ヒトの造骨細胞類似細胞に処理し、ELISA法及びRT-PCR法を実施して IGF-1とTGF-βの分泌量及び発現量を測定した。IGF-1とTGF-βの発現程度は対照群に対して相対的な%で表わした。
ELISA測定はELISAキット(Quantikine,R&D system)を用いて製品使用説明書に記載されたプロトコルにより実施した。その後、前記実施例4-4)と同一な方法で吸光度を測定して定量した。RT-PCR法は前記実施例4-4)と同一な方法で実施し、下記に示した通りのプライマーを用いた。
【0063】
TGF-βのセンスプライマー(配列番号5)
5'-CGC CCT GTT CGC TCT GGG TAT-3'
TGF-βのアンチセンスプライマー(配列番号6)
5'-AGG AGG TCC GCA TGC TCA CAG-3'
IGF-1のセンスプライマー(配列番号7)
5'-ATG CTC TTC AGT TCG TGT GT-3'
IGF-1のアンチセンスプライマー(配列番号8)
5'-AGC TGA CTT GGC AGG CTT GT-3'
【0064】
ELISA分析結果、IGF-1の濃度は対照群に比べて全ての実験群において高く表れた。各試料を10-4%の高濃度で処理した場合、IGF-1の濃度はエストラジオール処理群(E群)において最も高く表れ、処理濃度が10-6%の場合には実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)が最も高く表れた。さらに、処理濃度が10-12%で低濃度の場合には、実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群(R-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P)において、エストラジオール処理群に比べて高く表れた(図4a)。
【0065】
TGF-β濃度は各試料を10-4〜10-10%範囲で処理した場合、エストラジオール処理群において均一に高い濃度で表れ、TGF-β促進活性の高いことがわかったものの、エストラジオールを10-12%の濃度で処理した場合には、TGF-β濃度が減少して対照群と似た水準を示した。反面、本発明の槐角抽出物を処理した処理群であるR-G及びR-A群の場合には、最低濃度の10-12%で処理した場合にもTGF-βの分泌を促進する活性が高く表れた(図4b)。
【0066】
従って、前記エストラジオール処理群の場合、処理濃度が低くなる程IGF-1及びTGF-βの分泌に及ぼす薬物学的影響が低く表れ、本発明の槐角抽出物処理群(R-G,R-A及びR-P群)の場合には、低濃度においても効果のあることが分かった。特に、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P群)の場合には、全ての処理濃度において均一にIGF-1及びTGF-βの分泌を促進させることが分かった。
【0067】
さらに、10-8%で処理した細胞からRNAを抽出してRT-PCR分析した結果、IGF-1の発現はエストラジオール処理群(E群)に比べて、実施例1の槐角抽出物を処理した群(R-G群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物を処理した群(R-P群)において、最も高く表れた。TGF-βの場合にもエストラジオール処理群(E群)に比べて、R-P群、R-A群、及びR-G群において極めて高い値を示した(図5)。
【0068】
従って、本発明の槐角抽出物はIGF-1及びTGF-βの発現を促進する効果があり、このような効果は濃度非依存的であることが分かった。つまり、本発明の槐角抽出物は低濃度においても、IGF-1及びTGF-βの発現を促進して破骨細胞の機能を抑制できることが分かった。
【0069】
4-6) 槐角抽出物が造骨細胞の酸化窒素生成に及ぼす影響
槐角抽出物の処理が一酸化窒素(NO)の生成に及ぼす影響を調査した。前記一酸化窒素は骨の血液への再吸収、つまり、骨損失の調節に重要な役割をするものとして知られている。つまり、造骨細胞より分泌される一酸化窒素は破骨細胞の活性を抑制して、骨の再吸収を抑制すると報告されたことがある(Ralston S.H.et al.,Endocrinology,135, 330〜336,1994;Vant Hof R.J.et al.,Immunol.,103, 255〜261,2001)。
従って、槐角抽出物の処理が一酸化窒素の生成に及ぼす影響を調査するために、一酸化窒素の生成量及び一酸化窒素生成酵素である ecNOS(endothelial nitric oxide synthase)の発現程度を測定した。ecNOSの発現程度は対照群に対して相対的な%で示された。
【0070】
前記実施例4-4)と同一な方法で各試料を10-4〜10-12%の濃度で MG-63ヒトの造骨細胞類似細胞に処理した後、ELISA分析を通じて生成された一酸化窒素の量を測定し、10-8%濃度で処理した細胞より、前記実施例4-4)と同一な方法で RNAを抽出してRT-PCR分析を通じて生成されたecNOSの量を測定した。RT-PCR分析に用いたプライマーは下記に表示した通りである。
【0071】
ecNOSのセンスプライマー(配列番号9)
5'-AAG CCG CAT ACG CAC CCA GAG-3'
ecNOSのアンチセンスプライマー(配列番号10)
5'-TGG GGT ACC GCT GCT GGG AGG-3'
【0072】
ELISA法の分析結果、各試料を10-4%の高濃度で処理した場合、大豆エキス粉末処理群(S-S群)の場合、一酸化窒素の生産量が最も高く表れた。しかしながら、10-6乃至10-10%で処理した場合には、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P群)が前記S-S群に比べて一酸化窒素の生成量が有意に高く表れた。さらに、各試料を10-10〜10-12%の低濃度で処理した場合には、本発明の槐角抽出物(R-G群及びR-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P群)の場合、エストラジオール処理群(E群)に比べて一酸化窒素の生成量が高く表れた(図6)。
【0073】
さらに、RT-PCR法の結果ecNOSの発現程度はR-P群が最も高いものとして示された(図7)。
従って、本発明の槐角抽出物及び前記槐角抽出物を含む食品組成物の場合、一酸化窒素の生成を促進し、ecNOSの発現を促進する活性を有していて、低濃度においても前記活性が表れることが分かった。さらに、このような活性がエストラジオールと同程度か又はそれより高い水準で表れることが分かった。
【0074】
4-7) 槐角抽出物の処理に伴う破骨細胞分化抑制効果
本発明の槐角抽出物の処理が破骨細胞の分化を抑制するか否かを調査した。この為、前記実施例4-2)において、分離及び培養した破骨細胞と造骨細胞を共培養した。24ウェル(multiwellTM 24well,Becton Dickinson)の細胞培養皿の各ウェルに破骨細胞を>1.5×105ずつ分株し、ここに造骨細胞を各ウェル当り1×103個になるように分株した。前記ウェルに分化促進因子であるM-CSF50ng/mlを各試料と共に処理して5日間培養した。前記各試料は実施例1の槐角抽出物(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物(R-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物(R-P群)を10-4、10-6、10-8、10-10及び10-12%になるように希釈して製造した。培養完了後、破骨細胞の分化程度をTRAP染色法で測定した。TRAP染色は酸リン酸加水分化酵素キット(Acid Phosphtase kit,Sigma)を用いて光学顕微鏡下でTRAP陽性となる細胞核を計数した。
【0075】
実験結果、本発明の槐角抽出物の破骨細胞分化抑制効果はエストラジオールに比べては低く示された。しかしながら、各試料を10-4%及び10-6%の高濃度で処理した場合、大豆エキス粉末(S-S群)処理群に比べて、実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P群)の破骨細胞分化抑制能が優れたものとして表れた。特に、10-8%〜10-12%の低濃度で処理した場合、本発明の槐角抽出物の処理群(R-G、R-A及びR-P群)は大豆エキス粉末処理群(S-S群)に比べて高く表れた。さらに、R-P群の破骨細胞分化抑制効果は全ての濃度範囲で一定して表れた(図8)従って、本発明の槐角抽出物及び前記槐角抽出物を含む食品組成物の場合、破骨細胞の分化を抑制する活性を有していることが分かった。
【0076】
〈実施例5〉
生体内(in vivo)実験を通じた槐角抽出物の骨粗しょう症予防又は治療効果調査
動物実験を通じて槐角抽出物の骨粗しょう症予防又は治療効果を調査した。実験用ラットの卵巣を摘出して骨粗しょう症を誘発させ、前記ラットに本発明の槐角抽出物を供給しながらこれに伴う体重,成長率、血液中における骨の吸収状態の指標であるDpd(Deoxypyridinoline:デオキシピリジノリン)及びカルシウムの濃度変化を測定した。さらに、本発明の槐角抽出物の供給に伴うラットの脛骨と腰椎骨の小柱骨面積の変化を測定した。全ての実験群間の比較は ANOVA検定を利用し、特定群間の比較はスチューデントT-検定(student-T test)を利用して統計処理し、有意差(p value)が0.05より小さい場合統計的な意義があるものと判定した。
【0077】
5-1) 実験動物の卵巣摘出
実験動物として、体重が230〜250gの雌のラット(Sprague-Dawley)を翰林実験動物園(京畿道)より購入して利用した。前記実験動物は温度23±1℃、湿度40〜60%及び明暗周期12時間の条件で飼育し、基本飼料(固形飼料、翰林実験動物研究所)と飲水は無制限で供給した。但し、採血前日には飲水のみを供給した。
卵巣摘出手術は12週令のラットをエーテル麻酔し、背中部位の毛を剃刀で除去し、70%アルコールで手術部位を消毒して無菌的に手術を行った。一側の側背部下端部位脊椎線に沿って皮膚組織を約2〜3cm程切開し、卵巣が位置した筋肉及び腹膜を1.5cm切開して卵巣を露出させた。卵管を絹糸で結紮し卵巣を切除して絹糸を用いて腹膜、筋肉及び皮膚を縫合した。反対側に対しても同一な方法で卵巣を摘出した。対照群としては腹膜までのみに同一に施術して卵巣は摘出しないまま、再び縫合する偽手術を施行した。手術後1週間の回復期を有した。
【0078】
5-2) 試料投与及び方法
実験動物は正常群(卵巣非摘出群)、対照群1(偽手術群)及び卵巣摘出群に区分し、卵巣摘出群は再び試料非投与群である対照群2、17-βエストラジオール投与群(E群)、実施例1の槐角抽出物投与群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群(R-A群)、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群(R-P群)及び大豆エキス粉末投与群(S-S群)に各10匹ずつ分けた(表1)。前記各実験群に下記のような投与量で試料を投与し、試料の投与期間は卵巣摘出手術後1週間が経過した13週令のラットを用いて22週令まで9週間とした。
【0079】
【表1】
【0080】
5-3) 体重及び成長率測定
前記実施例 5-2)の各群は電子天秤を利用して毎週体重を測定し、測定された体重から下記式により1日の体重増加率を計算した。
1日体重増加率=(最終体重―初期体重)/実験日数×100
【0081】
実験結果、卵巣摘出手術前の体重は各群間に統計的差はなかった。手術後、9週間試料を投与後の体重は各群間に僅かな統計的差を示した。一方、卵巣摘出後飲水を投与した対照群2では急激な体重増加を示したが、卵巣を摘出しない正常群、偽手術を行った対照群1及び槐角抽出物又はエストラジオールを投与した群では、体重増加程度が緩やかであった(図10及び表2)。これは卵巣が摘出されたラットの場合、卵巣除去後エストロゲンが分泌されず、脂肪細胞が増加したために体重が急激に増加したものと思われ、また卵巣が摘出されたが槐角抽出物及びエストラジオールを投与した場合には、前記のようなエストロゲンの補強効果を示す活性成分等により、脂肪細胞の増加が抑制され体重が緩慢に増加されたものと思われる。
【0082】
【表2】
【0083】
5-4) 槐角抽出物の供給に伴う血漿内Dpd濃度の変化
槐角抽出物の供給に伴う血漿内 Dpdの濃度変化を測定した。前記Dpdは骨の基質内で架橋することにより、I型コラーゲン鎖(Type I collagen chain)を安定化させる役割をし、(Seyedin SM.etal.,Curr.Opin.CellBiol.2,914-919,1990;Delmas PD.Biochemical markers for the assessment of bone turnover.In Riggs BL,MeltonLJ,Osteoporosis; etiology,diagnosis,and management.philadelphia;Lippincott-Raven Publisheres,319-333,1995)、破骨細胞により骨の基質が分解されると、Dpdは血液を通じて尿として排出される(EastellR.et al.,J.Bone Miner.Res.12,59-65,1997)。従って、Dpdの増加が抑制されるということは、骨代謝性疾患を予防又は治療する活性を有していることを意味する(Riggs BL.,West.J.Med.154,63-77,1991; Hesley RP.et al.,Osteoporosis int.8,159-164,1998)。
【0084】
槐角抽出物の供給により血漿内Dpdの増加が抑制されるか否かを測定する為に、前記実施例5-2)の実験動物から血漿を収得した。卵巣摘出手術前(12週令、実験0週目)から2週間隔でラットをエーテル麻酔し、眼窩静脈より1.7〜1.8mlを採血した。さらに、9週間試料を投与した後、屠殺前(22週令、実験10週目)に腹部の静脈を通じて採血し、直ちに遠心分離後血漿を採取した。
【0085】
前記採取した血漿中のDpd濃度は、抗-Dpd抗体が含まれたDpd濃度測定用キット(Pyrilinks-D,Quidel Corporation,USA)を利用して酵素免疫競合法(competitive enzyme immunoassay)で測定した。つまり抗-Dpd抗体を結合させたマイクロプレートに、血漿内のDpd酵素標識−アルカリフォスファターゼが競争的に反応するように添加し、ここに基質としてp-ニトロフェニルリン酸(pNPP)を添加して免疫複合体を形成させた後に、405nmにおける、吸光度を測定してDpd濃度と吸光度との検量線を求めた。そして採取した血漿中のDpd濃度を求めた(図11)。
【0086】
実験結果、正常群(卵巣非摘出群)及び対照群1(偽手術群)の場合、血漿内Dpd濃度が10週間の間殆ど変化がなかった。卵巣摘出後飲水を投与した対照群2の場合には、血漿内Dpd濃度が継続的に急激に増加して、卵巣を摘出しない正常群に比べて60%程度が増加したものと示された。このような結果は卵巣摘出によりエストロゲンホルモン分泌が減少して骨粗しょう症が進行したためと考えられる。エストラジオール投与群(E群)、実施例1の槐角抽出物投与群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群(R-A群)、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群(R-P群)及び大豆エキス粉末投与群(S-S群)の場合には、卵巣摘出手術後各試料を投与する前の実験1週まではDpd濃度が増加したが、各試料を投与し始めて9週後(実験10週目)にはその値が減少した。特に、R-G群及びエストラジオール投与群(E群)の場合には、Dpd濃度が急激に減少した(図12)。
従って、本発明の槐角抽出物はDpd濃度の増加を抑制する活性を有していることが分かった。
【0087】
5-5) 槐角抽出物のDpd増加抑制能確認
前記実施例5-4)の結果をもとに各試料を9週間投与後Dpd値の変化を下記の式により定量した。ΔDpdの値がマイナスであればDpd濃度が減少したことを意味し、プラスであればDpd濃度が増加したことを意味する。
ΔDpd=各個別動物のΔDpdの和/n
前記式において各個別動物のΔDpdは実験動物に試料を投与する前のDpdと9週間試料を投与した後のDpdの差を意味し、nは実験動物の数を指す。
【0088】
ΔDpdの値を計算した結果、卵巣を摘出した後飲水のみを投与した対照群2の場合ΔDpdの値が高いプラスの値を示して骨粗しょう症がかなり進行したことが分かった。反面、本発明の槐角抽出物投与群であるR-G群及びR-A群、槐角抽出物を含む食品組成物投与群(R-P群)、エストラジオール投与群(E群)及び大豆エキス粉末投与群(S-S群)の場合には、全てマイナスの値を示して、それらにDpd抑制能のあることが分かった。この内でエストラジオール投与群(E群)の場合、最も大きいDpd抑制能を示し、エストラジオール投与群のDpd減少量を100%とした場合、R-G群の場合60%、S-S群の場合14.5%、R-P群の場合1.2%及びR-A群の場合0.7%程度の減少量を示した(図13)。従って、R-G群の場合S-S群に比べてDpd減少能が一層優れていることが分かった。
【0089】
さらに、本発明の槐角抽出物の効能を確認する為に、実際に骨粗しょう症が進行した対照群2(卵巣摘出群)のDpd量に対する本発明の槐角抽出物を処理した群のDpd量を下記の式により計算した。
槐角抽出物の効能=(ΔDpd対照群2―ΔDpd実験群 )/ΔDpd対照群2
前記式でΔDpd対照群は対照群2の試料投与前Dpd濃度と最終Dpd濃度の差を示す。
ΔDpd実験群は各試料を処理した実験群の試料投与前Dpd濃度と最終Dpd濃度の差を示す。
【0090】
この結果、本発明の槐角抽出物の効能値が1より大きい場合、Dpd抑制効能があると判断することができ、その値が大きい程効能が優れたものと判断することができる。計算された値をp=0.05でANOVA検定により有意性を検証した。
その結果、R-G群の場合、エストラジオールと殆ど類似した効能を示し、残りの群の場合にはエストラジオールより低い効能を示した(図14)。
【0091】
5-6) 槐角抽出物の供給に伴う血漿内カルシウム濃度の変化
一般的に、骨形成指標としてカルシウム濃度の増加は骨が形成されたことを意味する。従って、槐角抽出物の供給に伴う血漿内カルシウム濃度の変化を、OCPC法を利用して測定した(J.P.Riley,Analytica Chimica Acta,21,317-323,1959)。実験動物の血漿は前記実施例5-4)と同一な方法で採取した。血漿中のカルシウムはアルカリ性条件下でOCPC(オルトクレゾールフタレインコンプレクソン)と結合して紫紅色を呈する。従って、前記紫紅色の吸光度を測定することにより、試料中のカルシウム濃度を定量することができる。本実施例では緩衝液として0.88mol/lモノエタノールアミン緩衝液(pH 11.0)を用い、発色試薬としてはOCPC 0.1mmol/lと 8-ピノリノロン11mmol/lを用いた。
【0092】
実験結果、正常群(卵巣非摘出群)と対照群1(偽手術群)場合には、時間の経過に伴いカルシウム濃度が少しずつ増加する傾向を示した。これは実験動物の成長に伴う結果と考えられた。卵巣摘出後飲水のみを投与した対照群2の場合には、持続的にカルシウム濃度が減少し、実施例1の槐角抽出物投与群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群(R-A群)、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群(R-P群)、エストラジオール投与群(E群)及び大豆エキス粉末投与群(S-S群)の場合には、卵巣摘出手術後各試料を投与する前まではカルシウム濃度が減少したが(実験1週目)、各試料を投与した以後からはカルシウム濃度が持続的に増加する傾向を示した。特に、エストラジオール投与群(E群)とR-G群の場合には、カルシウム濃度の急激な増加が見られた(図15及び表3)。
【0093】
【表3】
【0094】
5-7) 槐角抽出物の供給に伴う脛骨及び腰椎骨の小柱骨面積測定
槐角抽出物が骨の骨密度に及ぼす影響を調査する為に、脛骨及び腰椎骨の小柱骨面積を測定した。前記小柱骨(trabecular bone)は骨代謝作用が最も活発に行われる箇所であり、外部効果による骨の生成及び骨吸収作用が最も早く反応して表れる箇所である。従って、小柱骨の面積を測定し、その増減により骨粗しょう症や骨粗しょう症誘発抑制効果を判断できる (Faugere MC.et al.,American Physiological Society,E35-E38,1986)。
【0095】
槐角抽出物の供給に伴う脛骨及び腰椎骨の小柱骨面積を測定する為に、前記実施例5-2)の各実験群のラットより脛骨及び腰椎骨を採り10%ホルマリン溶液に固定した。ギ酸内で脱灰を行い骨組織の中で観察する部位をメスで切断した。70%のアルコールから100%のアルコールとアセトンに至る段階別脱水過程後、キシレンで洗浄し、パラフィン包埋を実施した。包埋された骨組織をミクロトームで5ミクロンに切断して、ヘマトキシリンエオシン(Hematoxyline eosin,H&E)染色を実施して光学顕微鏡(Olympus BH-2)で観察し、腰椎骨と脛骨の骨端部を定量的及び形態計測学的に測定した。
計測方法はポラロイドデジタルカメラで光学顕微鏡(Olympus BH-2)の1X対物レンズを通じて映像を得た後、コンピュータ上で各小柱骨の輪郭線を描けば自動的に計算されるプログラムを使用し、骨の骨端部の内成長板の直下部2次骨化部位内にある小柱骨を全て測定した。面積はコンピュータで算出された面積を自動的に計算し、映像分析システム(Optimas ver 6.2,Media Cybernetics.Inc.)を用いて分析した。これらの数値の平均を統計処理して測定部位の全体面積から小柱骨が占める面積を%で定量化して分析した。
【0096】
実験結果、脛骨の場合、飲水を投与した対照群2(卵巣摘出群)に比べて実施例1の槐角抽出物投与群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群(R-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群(R-P群)の小柱骨面積の減少程度が小さく現れ、エストラジオール投与群(E群)と同様、若しくは、より高い骨密度を維持するものとして表れた。特に、R-P群において小柱骨面積の減少が少なく、骨粗しょう症誘発抑制効果が優れていることが分かった(図16a及び図16b)。さらに、腰椎骨の場合にも対照群に比べて本発明の槐角抽出物(R-A群及びR-P群)投与群において小柱骨面積の減少程度が小さく現れた(図17a及び図17b)。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上、前記実施例を通じて説明した通り、本発明に伴う槐角抽出物は造骨細胞の増殖を促進する活性、骨吸収サイトカインの分泌抑制活性、骨再形成に関与する成長因子の分泌促進活性、造骨細胞の酸化窒素生成促進活性及び破骨細胞分化抑制活性を有し、骨吸収指標の濃度を減少させ骨のカルシウム濃度減少を抑制し、骨密度の減少を抑制する活性を有していて、骨粗しょう症を含む更年期疾患の予防又は治療に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に伴う槐角抽出物が造骨細胞の増殖に及ぼす影響をMTT法で分析した結果である(R-G: 実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール(estradiol)、対照群:細胞培養用培地処理群、LPS:リポポリッサカライド(lipopolysaccharide)処理群)。
【図2a】本発明に伴う槐角抽出物のIL-1βの分泌抑制効果をELISA法で分析した結果である(R-G: 実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、対照群:細胞培養用培地処理群)。
【図2b】本発明に伴う槐角抽出物のIL-6分泌抑制効果をELISA法で分析した結果である(R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、対照群:細胞培養用培地処理群)。
【図3】本発明の槐角抽出物の処理に伴うIL-1β及びIL-6の発現程度をRT-PCR法で分析した結果である(R-G: 実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群)。
【図4a】本発明に伴う槐角抽出物のIGF-1の分泌促進効果をELISA法で分析した結果である(R-G: 実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、対照群:細胞培養用培地処理群)。
【図4b】本発明に伴う槐角抽出物のTGF-βの分泌促進効果をELISA法で分析した結果である(R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、対照群:細胞培養用培地処理群)。
【図5】本発明の槐角抽出物の処理に伴うIGF-1及びTGF-βの発現程度をRT-PCR法で分析した結果である(R-G: 実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群)。
【図6】本発明に伴う槐角抽出物の酸化窒素生成促進効果をELISA法で分析した結果である(R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、対照群:細胞培養用培地処理群)。
【図7】本発明の槐角抽出物の処理に伴う一酸化窒素生成酵素(endothelial nitric oxide synthase;ecNOS)の発現程度をRT-PCR法で分析した結果である。GAPDH はローディング対照群として用いた(R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、*:R-P、E vs S-S,p<0.05において有意的な差がある)。
【図8】本発明に伴う槐角抽出物の破骨細胞分化抑制能を測定する為にTRAP染色後光学顕微鏡で観察して陽性を示す破骨細胞の数を計数した結果である(R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群)。
【図9】本発明に伴う槐角抽出物の破骨細胞分化抑制能をTRAP染色後、吸光度を測定して分析した結果である (対照群:細胞培養用培地処理群、R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E:17-βエストラジオール処理群)。
【図10】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの体重変化を示したグラフである(E:17-βエストラジオール投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群)。
【図11】本発明の槐角抽出物を供給した卵巣が摘出されたラットの血漿内Dpd(Deoxypyridinoline:デオキシピリジノリン)の濃度を測定する為、Dpd濃度と吸光度との相関関係を確立した検量線である(Y=-0.1128X+1.6102,R=0.9902)。
【図12】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの血漿内Dpd濃度変化を示したグラフである(E:17-βエストラジオール投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群)。
【図13】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの実験前と実験後の血漿内Dpd濃度差を示したグラフである(対照群:卵巣摘出後飲水投与群、E: 17-βエストラジオール投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群)。
【図14】本発明の槐角抽出物のDpd増加抑制効能を比較したグラフである(E:17-βエストラジオール投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、*:p<0.05で有意差無し、**:p<0.05で有意差有り)。
【図15】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの血漿内カルシウムの濃度変化を示したグラフである (E:エストラジオール投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群)。
【図16a】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの脛骨を光学顕微鏡で観察した写真である(倍率X16,A:正常群(卵巣非摘出群)、B:対照群1(仮装手術群)、C:対照群2(卵巣摘出群)、D: 17-βエストラジオール投与群、E:実施例1の槐角抽出物投与群、F:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、G:実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群、H:大豆エキス粉末投与群)。
【図16b】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの脛骨の小柱骨面積を測定した結果である(E: 17-βエストラジオール投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-P:実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群、*:p<0.05で有意差あり)。
【図17a】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの腰椎骨を光学顕微鏡で観察した写真である(倍率X16,A:正常群(卵巣非摘出群)、B:対照群1(仮装手術群)、C:対照群2(卵巣摘出群)、D: 17-βエストラジオール投与群、E:実施例1の槐角抽出物投与群、F:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、G:実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群、H:大豆エキス粉末投与群)。
【図17b】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの腰椎骨の小柱骨面積を測定した結果である(E: 17-βエストラジオール投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-P:実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群、*:p<0.05で有意差あり)。
【技術分野】
【0001】
本発明は槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防及び治療用組成物に関する。具体的には本発明は更年期疾患の予防及び治療効果を有する槐角抽出物、これを含有する組成物及び前記組成物を投与することにより、更年期疾患を予防又は治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
更年期疾患とは男性ホルモン又は女性ホルモンの分泌減少により誘発される疾患を言う。特に、女性の場合、卵巣の老化に因るエストロゲンの分泌減少により、閉経を前後に約2〜10年に亘って現れる疾患であり、高熱、発汗、不眠症、憂鬱症、尿失禁、痛症、骨粗しょう症、心筋梗塞、脳卒中及び高血圧のような症状が誘発される。
前記更年期疾患の内最も代表的な骨粗しょう症は、破骨細胞の活性が造骨細胞に比べて増加することにより、総骨量が減少する症状を言う。骨粗しょう症が発生すると皮質骨の幅が減少し、骨髄の空洞が拡大し、網状組織骨柱が低くなり骨が継続して多孔質となる。骨粗しょう症が進むにつれて骨の物理的強度が低下して腰痛と関節痛が誘発され、若干の衝撃にも骨が容易に砕けてしまう。
【0003】
従来では、このような更年期疾患の予防及び治療の為に、ホルモン補充療法、非ステロイド系製剤及び骨粗しょう症治療の為の薬物治療法等が開発されている。この内で現在ホルモン補充療法が最も効果的な方法として用いられている。しかしながら、前記のような薬物を長期投与する場合には発癌の危険性、頭痛、体重増加のような副作用等が生じる短所がある。このことに因り、より安全で効果的な治療剤の開発が切実に要求されている。
【0004】
最近では、薬物を長期投与する場合にも前記のような副作用がなく、エストロゲンを代替できる程の優れた薬効を有する新たな物質開発の為の研究が活発に進められてきた。現在、エストロゲンの代替物質として関心の焦点となっているものの一つが、大豆等に含まれている植物エストロゲンである。前記植物エストロゲンは、人間のエストロゲンと構造が類似し、人体内でホルモン又は抗ホルモン作用により、ホルモンと関連した疾患に影響を及ぼすこともあって、さらに、ホルモン補充療法を代替し得る栄養補助食品としての利用が検討されてきた。今まで知られた代表的な植物エストロゲンにはダイゼイン(daidzein)、ゲニステイン(genistein)、フォルモノネチン(formononetin)、バイオカニンA(biochaninA)等のイソフラボン(isoflavone)系化合物、クメストロール(coumestrol)等のクメスタン(coumestan)系化合物、エンテロラクトン(enterolactone)等のリグナン(lignan)系化合物及びエンテロジオール(enterodiol)等のフェノール(phenol)系化合物等がある。
特許文献1には植物エストロゲンが多量含まれていて、骨粗しょう症予防及び治療効果を有する葛根抽出物が開示されており、植物エストロゲンの一種であるダイゼインが多量含まれた葛根抽出物の骨粗しょう症改善効果が報告されている(非特許文献1)。さらに、大豆粉末の骨粗しょう症改善効果が報告されている(非特許文献2)。
【0005】
一方、槐角(Sophorae Fructus)はエンジュ(学名:Sophora japonica Linne)の実を指す。前記エンジュはマメ科に属する落葉高木にして、韓国、日本及び中国等に分布し、その部位によりそれぞれ異なる成分を含んでいて、それぞれ異なる薬理作用を示すとして知られている。
【0006】
エンジュの花である槐花(Sophorae Flos)の薬理作用には、抗炎作用、抗潰瘍作用、血圧低下作用及び動脈硬化症に対する予防及び治療効果が知られている(非特許文献3)。
エンジュの粘液(ヤニ)は槐膠と言われ破傷風治療に用いられ、エンジュの葉(槐葉)、枝、樹皮及び根皮は抗菌活性があるとして報告されている(非特許文献4)。
エンジュの実である槐角は血糖上昇作用及び抗菌作用が知られており、痔疾、子宮出血、尿血、吐血、喀血及び脱肛の治療等に用いられてきた(非特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許第348148号
【非特許文献1】Kim C.S.et al.,Korean J.Food Sci.Technol.,34(4),710-718,2002
【非特許文献2】ヤン ソンボム他、大韓骨代謝学会誌、6(1),11-17,1999
【非特許文献3】キム チャン ミン他、中薬大辞典第1巻、図書出版 正潭、496-509,1998
【非特許文献4】Yook C.S.et al.,K. H.Pharma.Sci.,17, 75〜87,1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は更年期疾患の予防及び治療効果を有し、副作用のない新たな治療剤を見出だす為、研究を重ねる中でエンジュの実である槐角の抽出物が、骨粗しょう症を含む更年期疾患を極めて効果的に予防及び治療する作用があることを確認することにより本発明を完成した。
従って、本発明の目的は槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供することである。
本発明の他の目的は槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防及び改善用食品組成物を提供することである。
本発明の他の目的は槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより更年期疾患を予防又は治療する方法を提供することである。
本発明の他の目的は槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより体重の増加を抑制する方法を提供する。
本発明の他の目的は槐角抽出物を更年期疾患の予防又は治療の為の薬剤の製造に用いる用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような本発明の目的を達成する為に、本発明は槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
さらに、本発明は槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
さらに、本発明は槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより更年期疾患を予防又は治療する方法を提供する。
さらに、本発明は槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより体重の増加を抑制する方法を提供する。
さらに、本発明は槐角抽出物を更年期疾患の予防又は治療の為の薬剤の製造に用いる用途を提供する。
【0010】
より具体的にいうと、本発明は以下の事項を含む。
1 槐角抽出物を有効成分として含むことを特徴とする更年期疾患の予防及び治療用薬学的組成物。
2 前記槐角抽出物が
(a)槐角粉末の全体重量に対して3倍〜20倍の水を槐角粉末に添加する段階;及び
(b)前記(a)段階の組成物を1時間〜6時間加熱して抽出することにより製造されることを特徴とする第1項記載の薬学的組成物。
3 前記槐角抽出物が
(a)槐角粉末の全体重量に対して3倍〜20倍の水を槐角粉末に添加する段階;
(b)前記(a)段階の組成物を1時間〜6時間加熱して抽出することにより製造されるものである更年期疾患の予防及び治療用薬学的組成物;及び
(c)前記(b)段階の組成物にアミラーゼ又はペクチナーゼを0.01〜1%(v/v)で添加して4〜24時間反応させ製造されるものであることを特徴とする第1項記載の薬学的組成物。
4 前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病(Paget's disease of bone)を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする第1項記載の薬学的組成物。
5 第1項の槐角抽出物を有効成分として含む更年期疾患の予防及び改善用食品組成物。
6 前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする第5項記載の食品組成物。
7 槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより更年期疾患を予防又は治療することを特徴とする方法。
8 前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする第7項記載の方法。
9 前記更年期疾患が骨代謝性疾患であることを特徴とする第8項記載の方法。
10 槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与することにより、造骨細胞の増殖、骨再形成関連成長因子の分泌及び造骨細胞の一酸化窒素生成を促進して骨代謝性疾患を予防又は治療することを特徴とする第9項記載の方法。
11 前記骨再形成関連成長因子がIGF-1又はTGF-βであることを特徴とする第10項記載の方法。
12 槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与して、骨吸収サイトカインの分泌又は破骨細胞の分化を抑制することにより骨代謝性疾患を予防又は治療することを特徴とする第9項記載の方法。
13 前記骨吸収サイトカインがIL-1β又はIL-6であることを特徴とする第12項記載の方法。
14 槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより体重の増加を抑制する方法。
15 槐角抽出物を更年期疾患の予防又は治療の為の薬剤の製造に用いる用途。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で“槐角(Sophorae Fructus)”とは、マメ科植物のエンジュ(学名:Sophora japonica Linne)の実を指す。好ましくは前記槐角とはエンジュの完熟した実を言う。
本発明の槐角抽出物の製造の為に用いられる槐角は、完熟した実にして固有の色調及び香味を有し異味・異臭のないのが好ましい。さらに、槐皮は緑褐色乃至褐色であり実は黒色乃至黒褐色のものが好ましい。
【0012】
本発明の槐角抽出物はこれに限定されるものではないものの、熱水抽出方法により製造されるのが好ましい。熱水抽出時の槐角と水の比率は特に限定はされないものの、槐角粉末に水を3倍〜20倍(重量基準)に添加することができる。好ましくは、抽出効率を増加させる為に、槐角粉末に対して水を5倍〜10倍(重量基準)に添加することができる。
【0013】
抽出時の温度は常圧下の室温で行うことが好ましく、抽出時間は抽出温度により異なるものの、1時間乃至6時間、好ましくは2時間乃至4時間抽出する。さらに、抽出の際撹拌器で撹拌すると、さらに抽出効率を増大させ得る。
抽出に用いられる槐角は収穫後洗浄し、そのまま用いるか又は乾燥して用いられる。乾燥方法としては日干し、陰干し、熱風乾燥及び自然乾燥する方法等全てが用いられる。さらに、抽出効率を増大させる為に、槐角又はその乾体を粉砕機で粉砕して用いることができる。
好ましくは、本発明槐角抽出物は槐角を20〜40meshの大きさに粉砕し、前記槐角粉末に飲用水を3〜20倍、好ましくは5〜10倍に添加して100〜130℃、好ましくは120〜125℃で1時間〜3時間熱水抽出する。前記熱水抽出液を遠心分離して沈殿物を除去し、上澄液を回収することにより槐角抽出物を製造することができる。
【0014】
さらに、前記のような方法により得られた本発明の槐角の熱水抽出物をさらに酵素処理することにより、槐角の酵素分解抽出物を収得することができる。つまり、前記のような方法により得られた熱水抽出液に酵素を抽出液対比0.01〜1%(v/v)を処理して4〜24時間反応させ濃縮した後、凍結乾燥して製造することができる。前記酵素としてはα-及びβ-アミラーゼ、ペクチナーゼが用いられる。
【0015】
一方、本発明の槐角抽出物は更年期疾患を予防又は治療する効果を有している。前記にて“更年期疾患”とは、ホルモンの欠乏により誘発される疾患を言い、特に女性の場合卵巣機能の停止によるエストロゲンの欠乏により誘発される疾患を言う。代表的な更年期疾患には骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患等がある。前記骨代謝性疾患とは、生体内で破骨細胞と造骨細胞との平衡が破れることにより発生する疾患であり、骨粗しょう症が最も代表的である。本発明の槐角抽出物は骨粗しょう症の予防又は治療に極めて優れた効果がある。
【0016】
前記本発明の槐角抽出物の更年期疾患の予防又は治療効果は生体外(in vitro)及び生体内(in vivo)実験を通じて確認した。
本発明に伴う槐角抽出物の生体外実験において、本発明の槐角抽出物は造骨細胞の増殖を促進し(図1参照)、骨吸収サイトカインIL-1β(インターロイキン1-β)とIL-6(インターロイキン-6)の分泌を抑制する作用を有していることを確認した(図2a、図2b及び図3参照)。さらに、本発明の槐角抽出物は骨の再形成に関与する成長因子であるIGF-1(インスリン様成長因子-1)とTGF-β(形質転換成長因子-β)の発現を促進する作用を有していて(図4a、図4b及び図5参照)、一酸化窒素の生成を促進し(図6及び図7)、破骨細胞の分化を効果的に抑制する作用を有していることが確認できた(図8及び図9)。さらに、前記のような作用は本発明の槐角抽出物が低濃度である場合にも優れたものとして示された。
【0017】
本発明に伴う槐角抽出物の生体内実験は、卵巣が摘出されたラットを利用して行った。前記卵巣が摘出されエストロゲンホルモンが分泌されないラットに、本発明の槐角抽出物を供給し、これに伴うラットの体重の変化、血清内骨の交替率の指標として破骨細胞により骨のマトリックスが分解される場合、増加されるDpd(Deoxypyridinoline:デオキシピリジノリン)及び造骨細胞の活性化により増加されるカルシウム濃度を測定した。その結果、本発明の槐角抽出物はエストロゲンの代替物質として作用し、体重の増加を抑制し(図10参照)、Dpd増加抑制能があって(図12〜14参照)、血中のカルシウム濃度を増加させる作用を有することが確認できた(図15参照)。さらには、本発明の槐角抽出物は卵巣が摘出されたラットより骨密度の指標となる脛骨と腰椎骨の小柱骨(trabecular bone:骨梁)面積の減少を抑制する作用を有していることが確認できた(図16及び図17参照)。
【0018】
従って、本発明は前記槐角抽出物を有効成分として含有する更年期疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。前記更年期疾患にはホルモン欠乏によって誘発される疾患を全て含み、特に、女性の場合エストロゲンの欠乏により誘発される疾患を含む。例えば、骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病のような骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症のような心血管疾患及びパーキンソン病のような退行性神経疾患等を含む。最も好ましくは前記更年期疾患には骨粗しょう症を含む。
【0019】
本発明に伴う薬学的組成物は薬学的に有効な量の槐角抽出物を単独で含むか、又は一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含むことができる。前記にて“薬学的に有効な量”とは、疾患を治療又は予防するのに充分な抽出物の量を言う。
本発明に伴う槐角抽出物の薬学的に有効な量としては1〜600mg/day/体重kg、好ましくは1〜100mg/day/体重kgである。しかしながら、前記薬学的に有効な量は疾患及びこれの重症程度、患者の年齢、体重、健康状態、性別、投与経路及び治療期間等により適宜変化されることもある。
【0020】
前記にて“薬学的に許容される”とは、生理学的に許容され、人間に投与される時、通常的に胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応又はこれと類似した反応を起こさない組成物を言う。前記担体、賦形剤及び希釈剤の例としてはラクトース、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギナート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油が挙げられる。
【0021】
前記薬学組成物は充填剤、抗凝縮剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等を追加して含め得る。さらに、本発明の薬学組成物は哺乳動物に投与された後、活性成分の吸収の速度を調節できるように当業界に公知された方法を用いて剤形化し得る。剤形は粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質又は硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射用液、滅菌粉末の形態であることも有り得る。本発明に伴う薬学組成物は経口、経皮、皮下、静脈又は筋肉を含む多くの経路を通じて投与できる。活性成分の投与量は投与経路、患者の年齢、性別、体重及び重症度等の種々の因子により適切に選択でき得る。
【0022】
本発明の薬学的組成物は更年期疾患を予防又は治療する効果を有する公知の化合物と併行して投与できる。前記化合物の例には天然ビタミンD3、エストロゲン、アレンドロン酸(alendronate)及びラロキシフェン(raloxifene)等がある。
【0023】
さらに、本発明に伴う槐角抽出物は更年期疾患の予防又は治療の目的で食品に添加することもできる。従って、本発明は槐角抽出物を有効成分とする食品組成物を提供する。本発明の食品組成物は機能性食品栄養補助剤、健康食品及び食品添加物等の全ての形態を含む。前記類型の食品組成物は当業界に公知された通常的な方法により多様な形態で製造できる。
例えば、健康食品としては本発明の槐角抽出物そのものを、茶、ジュース及びドリンク状に製造して飲用に供するか、又は顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取できる。さらに、本発明の槐角抽出物と、更年期疾患の改善及び予防効果があるとして知られた公知の活性成分と共に混合して組成物の形態で製造できる。
【0024】
さらに、機能性食品には飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例:果物缶詰、瓶詰、ジャム、マーマレード等)、魚類、肉類及びその加工食品(例:ハム、ソーセージ、コンビーフ等)、パン類及び麺類(例:うどん、そば、ラーメン、スパゲッティ、マカロニ等)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例:バター、チーズ等)、食用植物油脂、マーガリン、植物性蛋白質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例:味噌、醤油、ソース等)等に本発明の槐角抽出物を添加して製造することができる。
【0025】
さらに、本発明の槐角抽出物を食品添加剤の形態で使用するには、粉末又は濃縮液状に製造して使用できる。
本発明の食品組成物の内、本発明の槐角抽出物の好ましい含有量としては食品100g当り約30〜50gである。
好ましくは、本発明の槐角抽出物を有効成分として含む食品組成物は、特に、骨粗しょう症に効果があって、カルシウムの生体吸収を促進する公知の活性成分とともに混合して健康食品の形態で製造できる。
【0026】
最も好ましくは、本発明の槐角抽出物を有効成分として含む食品組成物は、槐角抽出物30〜50重量%、海藻カルシウム粉末30〜50重量%、結晶セルロース1〜10重量%、乳蛋白加水分解物0.1〜2重量%、緑茶エキス粉末0.1〜2重量%、鮫軟骨抽出物粉末0.1〜2重量%、キトオリゴ糖0.1〜2重量%、ビタミンC0.1〜2重量%、コラーゲンペプチド0.1〜2重量%、ブドウ種子抽出物粉末0.1〜2重量%、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ及びラクターゼ酵素混合物0.1〜2重量%、ビタミンD3粉末0.1〜0.3重量%及びステアリン酸マグネシウム0.1〜2重量%でなされ得る。
【0027】
前記にて海藻カルシウムは、海苔類、寒天類及びフノリ類のような紅藻類から抽出されたもので、骨成長に必要なカルシウムは勿論、マグネシウム、亜鉛、鉄、フッ素、マンガン、ヨウ素、セレニウムが豊富に含まれている。本発明の食品組成物に前記海藻カルシウム粉末をカルシウム供給源として30〜50重量%添加することにより、本発明の槐角抽出物の骨粗しょう症の予防及び改善効果が相乗作用を示すことができる。
【0028】
結晶セルロースは賦形剤として1〜10重量%の含量範囲で添加することができる。
乳蛋白加水分解物は乳蛋白を酵素又は酸で加水分解して食用に適するように加工したものであり、前記乳蛋白加水分解物にはカルシウムの体内吸収を促進するカゼインホスホペプチド(CPP)が含まれている。従って、本発明の組成物に前記乳蛋白加水分解物を0.1〜2重量%範囲で添加し、本発明の槐角抽出物の骨粗しょう症予防及び改善効果が相乗作用を示すようにすることができる。好ましくは、前記乳蛋白加水分解物はカゼインホスホペプチド(CPP)が12%以上のものを用いる。
【0029】
緑茶エキス粉末及びブドウ種子抽出物粉末には酸化を防止し、炎症を抑制して骨の消失を防いでくれるポリフェノール成分が多量含まれている。本発明の組成物に前記緑茶エキス粉末及びブドウ種子抽出物粉末をそれぞれ0.1〜2重量%ずつ添加することにより、本発明の槐角抽出物の骨粗しょう症予防及び改善効果の相乗作用を示すようにすることができる。
【0030】
鮫軟骨抽出物粉末は軟骨の構成成分であるコンドロイチンを含有していて、骨粗しょう症の予防に極めて有用である。従って、本発明の組成物に前記鮫軟骨抽出物粉末を0.1〜2重量%添加することにより、本発明の槐角抽出物の骨粗しょう症予防及び改善効果が相乗作用を示すようにすることができる。
【0031】
キトオリゴ糖は蟹や蝦、甲殻類の殻より得られるキチン、キトサンを分解して生体利用率を高めた天然低分子多糖類である。前記キトオリゴ糖は水溶性が高く体内吸収率が優れ、免疫増強作用、抗癌作用、抗菌作用、血糖値上昇抑制作用、カルシウム吸収促進作用等の広範囲の高機能性生理活性物質である。本発明では前記キトオリゴ糖を本発明の組成物に0.1〜2重量%の含量で添加することにより、カルシウムの吸収が促進されるようにする。前記キトオリゴ糖は含量が70%以上のものを用いるのが好ましい。
【0032】
ビタミンCとビタミンD3はカルシウムの吸収を促進するものとして知られていて、本発明の組成物に前記ビタミンC及びビタミンD3をそれぞれ0.1〜2重量%及び0.1〜0.3重量%ずつ添加することによりカルシウムの吸収を促進させる。
コラーゲンペプチドはコラーゲン蛋白質の骨格形成と成長に役立つ効果があり、本発明の組成物に0.1〜2重量%を添加する。
【0033】
アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ及びラクターぜ酵素混合物は、エネルジメ-P(Enerzyme-P)と言う商標名の複合酵素剤として市販されているもの用いる。前記エネルジメ-Pはなまものの食材に対して体内での消化吸収、エネルギー効率向上と新陳代謝を増進させる主な原料である。本発明の食品組成物に前記酵素混合物を0.1〜2重量%の含量で添加すると、本発明の組成物が体内に消化吸収されやすくなる。
【0034】
ステアリン酸マグネシウムはムコ多糖とコラーゲン、カルシウムの供給源として関節に有用な成分として知られている。本発明の食品組成物に前記ステアリン酸マグネシウムを0.1〜2重量%を添加し、本発明の槐角抽出物の骨粗しょう症予防及び改善効果が相乗作用を示す。
【0035】
本発明の槐角抽出物と前記のカルシウム供給源及びカルシウムの生体吸収を促進させる成分等を共に混合した食品組成物は更年期疾患、特に骨粗しょう症の予防及び治療に相乗効果がある。
さらに、本発明は前記槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与することにより、更年期疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0036】
本発明で個体とは、人間を含む哺乳動物を言う。本発明で“有効な量”とは、疾患を治療又は予防するに充分な量を言い、好ましい有効な量の範囲は1〜600mg/day/体重kg、好ましくは、1〜100mg/day/体重kgである。しかしながら、前記薬学的に有効な量は疾患及びその重症程度、患者の年齢、体重、健康状態、性別、投与経路及び治療期間等により適宜変化されることも有り得る。さらに、前記薬学的組成物を個体に投与する方法としては、特に限定されず当分野に公知された方法を使用できる。さらに、更年期疾患としては、前記記載の通りの疾患が含まれる。好ましくは、骨代謝性疾患が含まれる。
【0037】
前記骨代謝性疾患は、個体に本発明の槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与することにより、造骨細胞の増殖、骨再形成関連成長因子及び酸化窒素の生成が促進され予防又は治療が可能となる。
前記造骨細胞は骨の基質を合成して分泌し、カルシウムとリンの濃度を調節して骨格を形成する活性を有している。本発明の一実施例では槐角抽出物が造骨細胞の増殖を促進する効果があることを確認している。前記骨再形成関連成長因子には造骨細胞のIGF-1(Insulin like Growth Factor-1:インスリン様成長因子-1)及びTGF-β(transforming growth factor-β:形質転換成長因子-β)が含まれる。前記IGF-1とTGF-βは造骨細胞の複製を刺激してコラーゲン及び基質合成を向上させるものと知られている。特に、TGF-βは破骨細胞の機能を抑制し、破骨細胞のアポトーシスを促進するものと知られており、TGF-βが増加するにつれて、骨再吸収は減少するようになる (Spelsberg,T.C.et al.,J.Mol.Endocrinol,13,819-828,1999)。本発明の一実施例では槐角抽出物がIGF-1及びTGF-βの分泌を促進させる活性があることを確認している。
【0038】
前記造骨細胞より分泌される一酸化窒素は破骨細胞の活性を抑制し、骨の再吸収を抑制するとして報告されている。本発明の一実施例では槐角抽出物が一酸化窒素の生成を促進させる活性のあることを確認している。
さらに、前記骨代謝性疾患は個体に本発明の槐角抽出物を含む薬学的組成物を有効な量で投与することにより、骨吸収サイトカインの分泌又は破骨細胞の分化が抑制され予防又は治療が可能となる。
【0039】
前記骨吸収サイトカインではIL-1βとIL-6が含まれる。前記骨吸収サイトカインは造骨細胞から分泌され、破骨細胞の分化因子であるOPG-L(osteoprotegrin ligand)の発現を促進し、これにより破骨細胞の分化が促進する活性を有する(Spelsberg,T.C.et al.,J.Mol.Endocrinol,13,819-828,1999)。本発明の一実施例では槐角抽出物が前記骨吸収サイトカインであるIL-1β及びIL-6の分泌を抑制する活性のあることを確認している。前記破骨細胞は骨の表面に付着して酸と分解酵素を分泌することにより、骨を構成するリン灰石結晶及びコラーゲンのような骨基質を除去して骨を破壊する活性を有する。本発明の一実施例では槐角抽出物が破骨細胞の分化抑制効果を有していることを確認している。
【0040】
さらに、本発明の槐角抽出物は卵巣が摘出され、エストロゲンホルモンが分泌されない為おこる体重の増加を抑制する効果を有している。従って、本発明は槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与することにより、体重の増加を抑制する方法を提供する。
さらには、本発明は前記槐角抽出物を更年期疾患の予防又は治療の為の薬剤の製造に用いる用途を提供する。
以下、本発明の具体的な方法を実施例を挙げて詳細に説明しようとするものの、本発明の権利範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
〈実施例1〉
槐角抽出物の製造
槐角(チェソン薬業社、ソウル所在京東市場内)20kgを乾式粉砕機を利用して30meshの大きさに粉砕した。前記粉砕物に飲用水を添加して10倍に希釈した後(粉砕物:飲用水=9:1)100℃で4時間加熱した。その後、50℃に冷却し、100meshの濾過布を利用して濾過した後、再び200meshの濾過布で濾過して沈殿物を除去し濾過液を得た。前記上澄液を濃縮器を利用して1/5の嵩になるように濃縮することにより槐角抽出物を製造した。さらに、前記濃縮液を噴霧乾燥機を利用して噴霧乾燥し、粉末化することにより実験に用いた。
【0042】
〈実施例2〉
槐角の酵素分解抽出物の製造
前記実施例1の方法により製造された槐角の熱水抽出液を濾過布で濾過し、得られた濾過液に0.5%(v/v)の濃度になるようにアミラーゼを添加して50℃で16時間酵素反応を行った。前記反応液を濃縮器を利用して1/5の嵩になるように濃縮することにより槐角の酵素分解抽出物を製造した。さらに、前記濃縮液を噴霧乾燥機を利用して噴霧乾燥し、粉末化することにより実験に用いた。
【0043】
〈実施例3〉
槐角抽出物を含む食品組成物の製造
前記実施例2で製造した槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物を製造した。前記実施例2の槐角の酵素分解抽出物粉末235g、海藻カルシウム粉末200g(大徳薬業、京畿道所在)、結晶セルロース27.5g(大徳薬業、京畿道所在)、乳蛋白加水分解物5g(ダインナチュラル、ソウル所在)、緑茶エキス粉末5g(明食品、京畿道所在)、鮫軟骨抽出物粉末5g(信一商社、ソウル所在)、キトオリゴ糖4g(盈徳キトサン、ソウル所在)、ビタミンC5g(ロシュビタミン、ソウル所在)、コラーゲンペプチド2.5g(ダインナチュラル、ソウル所在)、ブドウ種子抽出物粉末2.5g(大徳薬業、京畿道所在)、エネルジメ-P2.5g(成志物産、京畿道所在)、ビタミンD3粉末1g(ロシュビタミン、ソウル所在)及びステアリン酸マグネシウム5g(ダインナチュラル、ソウル所在)を混合することにより、槐角抽出物を含む食品組成物を製造した。
【0044】
〈実施例4〉
生体外(in vitro)実験を通じた槐角抽出物の骨粗しょう症予防又は治療効果調査
槐角抽出物の骨粗しょう症予防又は治療効果を調査する為、ヒトの造骨細胞株の分譲を受けて使用し、ラットより骨髄細胞を採取し前記骨髄細胞より破骨細胞及び造骨細胞を分化させて用いた。
さらに、本発明の槐角抽出物がヒトの造骨細胞増殖に及ぼす影響、骨吸収サイトカインであるIL-1βとIL-6の分泌抑制活性、骨再形成に関与する成長因子であるIGF-1とTGF-βの分泌促進活性、造骨細胞の一酸化窒素生成量に及ぼす影響及び破骨細胞の分化抑制活性等を調査した。全ての実験群間の比較はANOVA検定を利用し、特定実験群間の比較はスチューデントT-検定(student T-test)を利用して統計処理後、有意差(p value)が0.05より小さい(P<0.05)場合、統計的な意義があるものと判定した。
【0045】
4-1) ヒトの造骨細胞の培養
MG-63ヒトの造骨細胞類似細胞株をソウル大学校医科大学の韓国細胞株銀行より分譲を受け継代培養後使用した。前記凍結MG-63ヒトの造骨細胞類似細胞は、37℃水浴で約1分間解凍させ、1300rpmで5分間遠心分離して上澄液を除去した。得られたペレットを10%FBSを添加したDMEM培地に再懸濁後、25cm3培養用フラスコに分株して培養した。細胞の安定化の為、約2週間の培養期間を置いて細胞が安定して単層を成すか否かを顕微鏡で確認後実験に供した。
【0046】
4-2) 破骨細胞(osteoclast cell)及び造骨細胞(osteoblast cell)の培養
12週令のSD系ラット(翰林実験動物研究所、京畿道所在)に過量のエーテルを吸込ませて麻酔し、1匹当り2個の大腿骨を直接脱取し、洗浄用培地(15%FBSα-MEM培地)で複数回洗浄し、最終洗浄を破骨細胞培地(0.28mM L-アスコルビン酸-2-リン酸が含まれた15%FBSα-MEM培地)で行ない、大腿骨の両端部位を除去し、25ケージの注射針を利用して約10mlの骨髄細胞を採取した。
前記にて採取した骨髄細胞に10mlの破骨細胞培地を追加して75cm3培養用フラスコに分株し、24時間37℃、5%CO2及び100%の湿度下で培養した。培養後新鮮な培地に移し10日間2回培地を再供給して培養し実験に供した。
【0047】
造骨細胞は前記破骨細胞と同一な方法で10mlの骨髄細胞を採取し、100μmの細胞濾過器で濾過、遠心分離して上澄液を除去し、大腿骨当り5mlになるように1次培養用培地 (0.28mM L-アスコルビン酸2-リン酸と10nMデキサメタゾンが含まれた15% FBSα-MEM培地)に再懸濁した。懸濁した骨髄細胞を75cm3培養用フラスコに大腿骨当り20mlになるように1次培養用培地を追加して37℃、5%CO2及び100%の湿度下で培養した後、培養2日目及び4日目に同じ培地に交換した。培養6日目にトリプシンを処理した後、造骨細胞培養用培地(0.28mM L-アスコルビン酸2-リン酸と10nMデキサメタゾンが含まれた15%FBSα-MEM培地)に培地を交換して培養した。
前記造骨細胞及び破骨細胞の培養状態は実験前に顕微鏡で確認し、トリパンブルー染色法で細胞の生存を確認して実験に供した。
【0048】
4-3) 槐角抽出物の処理に伴う造骨細胞の増殖程度
槐角抽出物の処理に伴う造骨細胞の増殖程度を調べる為、実施例1の槐角抽出物粉末(R-G)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物粉末(R-A)及び実施例3の槐角抽出物が含まれた食品組成物(R-P)を前記実施例 4-1)のMG-63ヒトの造骨細胞類似細胞に処理し、3日間培養した後、前記抽出物が細胞増殖に及ぼす影響をMTT分析で調査した。さらに、比較群としては大豆エキス粉末(新東邦)、骨粗しょう症の治療剤として用いられている17-βエストラジオール(estradiol,sigma)及びリポポリサッカライド(LPS lipopolysaccharide,sigma)を前記MG-63造骨細胞類似細胞にそれぞれ処理した後、細胞増殖に及ぼす影響を比較調査し、対照群としては前記の各試料の代わりに細胞培養用培地を処理した。各試料は細胞培養用培地に希釈して処理容量が10-4〜10-12%の範囲になるようにした。前記LPSは10μg/mlの濃度で添加した。
【0049】
細胞のミトコンドリア活性に比例するMTT分析は次のような方法で行った。前記1×104以上のMG-63造骨細胞類似細胞を、96ウェル組織培養プレートに100μlずつ分株した後、各試料を10-4、10-6、10-8、10-10及び10-12%の容量で処理し、72時間反応させた。反応が終了した後、10μlMTT(3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazolium bormide)原液を添加し混合して37℃で4時間培養した。培養が終了した後、100μlイソプロパノール/HClを各ウェルに添加し、完全に混合して色相の変化を確認、1時間内にELISAプレートリーダで570nmにおける吸光度を測定した。
【0050】
実験結果、実施例1の槐角抽出物(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物(R-A群)、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物(R-P群)及び大豆エキス粉末(S-S群)を処理した場合に、全ての処理濃度範囲において、類似した増殖効果を示した。さらに、前記増殖効果は対照群に比べては高い効果を示したものの、エストラジオール処理群(E群)に比べては低く示された。しかしながら、エストラジオール処理群の場合には、細胞増殖効果が濃度依存的に示され、エストラジオールを10-10及び10-12%の低濃度で処理する場合には増殖効果が減少した。反面、微々たることではあるが、R-G群、R-A群、R-S群及びS-S群の場合には、高い濃度よりは低い濃度(10-10%)において高い増殖効果を示した。従って、本発明の槐角抽出物の場合、濃度非依存的に造骨細胞の増殖を促進することが分かった(図1)。
前記実験結果から本発明に伴う槐角抽出物の造骨細胞増殖効果は、エストラジオール処理群に比べて低く示されたものの、低濃度(10-6%〜10-12%)においても造骨細胞の増殖を促進する効果のあることが分かった。
【0051】
4-4) 槐角抽出物が造骨細胞のIL-1β及びIL-6分泌活性に及ぼす影響
本発明の槐角抽出物が造骨細胞より分泌されるIL-1β及びIL-6の生成を抑制するか否かを調査した。前記骨吸収サイトカインIL-1βとIL-6は造骨細胞から分泌され、破骨細胞の分化因子であるOPG-Lの発現を促進し、これにより破骨細胞の分化が促進される(Spelsberg,T.C.et al.,J.Mol.Endocrinol,13,819-828,1999)、従って、前記槐角抽出物が造骨細胞に影響を与えて、骨吸収サイトカインIL-1βとIL-6の生成を抑制すれば、OPG-Lの発現が抑制されこれにより破骨細胞の分化が抑制できる。
【0052】
本発明の槐角抽出物が造骨細胞より分泌されるIL-1βとIL-6の生成を抑制する効果を有しているか否かを確認する為、前記実施例4-1)のMG-63ヒトの造骨細胞類似細胞に、実施例1の槐角抽出物(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物(R-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物(R-P群)を、細胞培養用培地に希釈して10-4〜10-10の濃度範囲に処理し、72時間経過後ELISA法及びRT-PCR法を通じてIL-1β及びIL-6の発現程度を測定した。この際、比較群としては大豆エキス粉末(S-S群)及びエストラジオールを同一な方法で処理し、対照群には細胞培養用培地を添加した。
【0053】
IL-1β及びIL-6の発現程度を測定する為のELISA法はELISAキット(Titerzyme ELISA kit,Assay designs)を用いて、提供されたプロトコールにより実施し、450nmで吸光度を測定した後、検量線を利用して各濃度を計算した。
【0054】
さらに、IL-1β及びIL-6の mRNA発現程度を測定する為にRT-PCR法を次のように実施した。前記にて各試料を10-8%の濃度で処理したMG-63ヒトの造骨細胞類似細胞から、総RNAをトリゾル法により抽出した。前記総 RNA 2μlを逆転写反応を行うことにより、各々の相補的DNAを製造した。DEPC蒸留水 12.85μlに総 RNA 5μl、10pMのプライマー各1μlずつを添加した後、72℃で10分間変性させ、ここに逆転写酵素(5U)0.15μlを添加し、42℃で10分間反応を行い相補的DNAを製造した。
【0055】
前記相補的DNAを鋳型にして重合酵素連鎖反応を行った。この際実験の再現性及び一貫性の為、ワンストップRT-PCRプリミックス(Accupower,Bioneer)を用いた。前記反応液はPCRシステム(Dual-bay DyadTM thermal cycler system,MJ Research)を用いて95℃で5分間、95℃で 30秒、60℃で 60秒、72℃で 60秒を1サイクルにして総 35サイクルを実施した。標準対照群としてはGAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素)を用いた。増幅されたPCR産物はアガロースゲル電気泳動を利用して定量し、発現程度を対照群に対して相対的な%で示した。前記RT-PCR分析にて用いた各々のプライマーは下記の通りである。
【0056】
IL-1βのセンスプライマー(配列番号1)
5'-AGG CAC AAC AGG CTG CTC TG-3'
IL-1βのアンチセンスプライマー(配列番号2)
5'-TGG ACC AGA CAT CAC CAA GC-3'
IL-6のセンスプライマー(配列番号3)
5'-AGC GCC TTC GGT CCA GTT GC-3'
IL-6のアンチセンスプライマー(配列番号4)
5'-ACT CAT CTG CAC AGC TCT GG-3'
【0057】
ELISA分析結果、実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群(R-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P群)の場合、対照群に比べてIL-β及びIL-6の分泌を抑制するものとして表れた。
IL-1βの分泌抑制能は各試料を最高濃度である10-4%で処理した場合、R-P群が最も効果ありとして示され、R-G群及びR-A群も大豆エキス粉末処理群(S-S群)及びエストラジオール処理群に比べて効果的として表れた。さらに、本発明の槐角抽出物処理群は最低濃度の10-10 %で処理した場合にも、IL-1βの分泌を抑制するものとして表れ、比較群の大豆エキス粉末処理群(S-S群)及びエストラジオール処理群に比べてさらに低い濃度においても、IL-1βの分泌を抑制する効果を有していることが分かった。特にR-P群の場合全ての処理濃度において一定の量のIL-1β(60pg/ml)を分泌するものとして示された(図2a)。
【0058】
IL-6の分泌抑制能は各試料を最高濃度の10-4%で処理した場合、実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)が最も優れたものとして表れ、最低濃度の10-10%で処理した場合にもR-G群が最も優れたものとして表れた。特にR-P群の場合全ての処理濃度において、一定した濃度のIL-6(110pg/ml)を分泌するものとして表れ、これより本発明の槐角抽出物がS-S群及びエストラジオール処理群に比べて、さらに低い濃度でIL-6を抑制する活性のあることが分かった(図2b)。
【0059】
RT-PCR法の結果も前記ELISA法の結果と類似したパターンで表れた。IL-1βの発現抑制効果は、槐角抽出物を含む食品組成物群(R-P群)において、最も優れたものとして表れ、実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)及び実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群(R-A群)は、エストラジオール処理群(E群)と同様に表れた。大豆エキス粉末処理群(S-S群)の場合にはIL-1βの発現抑制能が最も低く表れた。IL-6の発現抑制効果はエストラジオール処理群が最も優れたものとして表れた。一方、R-P群の場合にもIL-6の発現抑制効果が優れたものとして表れ、S-S群に比べてその効果が優れたものとして示された(図3)。
【0060】
従って、本発明の槐角抽出物がIL-1β及びIL-6の分泌を抑制して破骨細胞の分化を抑制できることが分かり、かつ、このような活性が従来の骨粗しょう症治療用食品組成物や薬剤に比べてより低い濃度においても表れることが分かった。
【0061】
4-5) 槐角抽出物が造骨細胞のIGF-1及びTGF-βの分泌活性に及ぼす影響
本発明の槐角抽出物が造骨細胞のIGF-1及びTGF-βの分泌を促進するか否かを調査した。骨再形成に関与する成長因子である IGF-1とTGF-βは、造骨細胞の複製を刺激しコラーゲン及び基質合成を向上させるものとして知られている。特に、TGF-βは破骨細胞の機能を抑制し、破骨細胞のアポトーシスを促進するものとして知られていて、TGF-βが増殖するにつれて骨の再吸収は減少するようになる(Spelsberg,T.C.et al.,J.Mol.Endocrinol,13,819-828,1999)。
【0062】
本発明の槐角抽出物が造骨細胞におけるIGF-1とTGF-β分泌を促進するか否かを調査する為に、各試料を前記実施例4-4)と同一な方法でMG-63ヒトの造骨細胞類似細胞に処理し、ELISA法及びRT-PCR法を実施して IGF-1とTGF-βの分泌量及び発現量を測定した。IGF-1とTGF-βの発現程度は対照群に対して相対的な%で表わした。
ELISA測定はELISAキット(Quantikine,R&D system)を用いて製品使用説明書に記載されたプロトコルにより実施した。その後、前記実施例4-4)と同一な方法で吸光度を測定して定量した。RT-PCR法は前記実施例4-4)と同一な方法で実施し、下記に示した通りのプライマーを用いた。
【0063】
TGF-βのセンスプライマー(配列番号5)
5'-CGC CCT GTT CGC TCT GGG TAT-3'
TGF-βのアンチセンスプライマー(配列番号6)
5'-AGG AGG TCC GCA TGC TCA CAG-3'
IGF-1のセンスプライマー(配列番号7)
5'-ATG CTC TTC AGT TCG TGT GT-3'
IGF-1のアンチセンスプライマー(配列番号8)
5'-AGC TGA CTT GGC AGG CTT GT-3'
【0064】
ELISA分析結果、IGF-1の濃度は対照群に比べて全ての実験群において高く表れた。各試料を10-4%の高濃度で処理した場合、IGF-1の濃度はエストラジオール処理群(E群)において最も高く表れ、処理濃度が10-6%の場合には実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)が最も高く表れた。さらに、処理濃度が10-12%で低濃度の場合には、実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群(R-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P)において、エストラジオール処理群に比べて高く表れた(図4a)。
【0065】
TGF-β濃度は各試料を10-4〜10-10%範囲で処理した場合、エストラジオール処理群において均一に高い濃度で表れ、TGF-β促進活性の高いことがわかったものの、エストラジオールを10-12%の濃度で処理した場合には、TGF-β濃度が減少して対照群と似た水準を示した。反面、本発明の槐角抽出物を処理した処理群であるR-G及びR-A群の場合には、最低濃度の10-12%で処理した場合にもTGF-βの分泌を促進する活性が高く表れた(図4b)。
【0066】
従って、前記エストラジオール処理群の場合、処理濃度が低くなる程IGF-1及びTGF-βの分泌に及ぼす薬物学的影響が低く表れ、本発明の槐角抽出物処理群(R-G,R-A及びR-P群)の場合には、低濃度においても効果のあることが分かった。特に、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P群)の場合には、全ての処理濃度において均一にIGF-1及びTGF-βの分泌を促進させることが分かった。
【0067】
さらに、10-8%で処理した細胞からRNAを抽出してRT-PCR分析した結果、IGF-1の発現はエストラジオール処理群(E群)に比べて、実施例1の槐角抽出物を処理した群(R-G群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物を処理した群(R-P群)において、最も高く表れた。TGF-βの場合にもエストラジオール処理群(E群)に比べて、R-P群、R-A群、及びR-G群において極めて高い値を示した(図5)。
【0068】
従って、本発明の槐角抽出物はIGF-1及びTGF-βの発現を促進する効果があり、このような効果は濃度非依存的であることが分かった。つまり、本発明の槐角抽出物は低濃度においても、IGF-1及びTGF-βの発現を促進して破骨細胞の機能を抑制できることが分かった。
【0069】
4-6) 槐角抽出物が造骨細胞の酸化窒素生成に及ぼす影響
槐角抽出物の処理が一酸化窒素(NO)の生成に及ぼす影響を調査した。前記一酸化窒素は骨の血液への再吸収、つまり、骨損失の調節に重要な役割をするものとして知られている。つまり、造骨細胞より分泌される一酸化窒素は破骨細胞の活性を抑制して、骨の再吸収を抑制すると報告されたことがある(Ralston S.H.et al.,Endocrinology,135, 330〜336,1994;Vant Hof R.J.et al.,Immunol.,103, 255〜261,2001)。
従って、槐角抽出物の処理が一酸化窒素の生成に及ぼす影響を調査するために、一酸化窒素の生成量及び一酸化窒素生成酵素である ecNOS(endothelial nitric oxide synthase)の発現程度を測定した。ecNOSの発現程度は対照群に対して相対的な%で示された。
【0070】
前記実施例4-4)と同一な方法で各試料を10-4〜10-12%の濃度で MG-63ヒトの造骨細胞類似細胞に処理した後、ELISA分析を通じて生成された一酸化窒素の量を測定し、10-8%濃度で処理した細胞より、前記実施例4-4)と同一な方法で RNAを抽出してRT-PCR分析を通じて生成されたecNOSの量を測定した。RT-PCR分析に用いたプライマーは下記に表示した通りである。
【0071】
ecNOSのセンスプライマー(配列番号9)
5'-AAG CCG CAT ACG CAC CCA GAG-3'
ecNOSのアンチセンスプライマー(配列番号10)
5'-TGG GGT ACC GCT GCT GGG AGG-3'
【0072】
ELISA法の分析結果、各試料を10-4%の高濃度で処理した場合、大豆エキス粉末処理群(S-S群)の場合、一酸化窒素の生産量が最も高く表れた。しかしながら、10-6乃至10-10%で処理した場合には、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P群)が前記S-S群に比べて一酸化窒素の生成量が有意に高く表れた。さらに、各試料を10-10〜10-12%の低濃度で処理した場合には、本発明の槐角抽出物(R-G群及びR-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P群)の場合、エストラジオール処理群(E群)に比べて一酸化窒素の生成量が高く表れた(図6)。
【0073】
さらに、RT-PCR法の結果ecNOSの発現程度はR-P群が最も高いものとして示された(図7)。
従って、本発明の槐角抽出物及び前記槐角抽出物を含む食品組成物の場合、一酸化窒素の生成を促進し、ecNOSの発現を促進する活性を有していて、低濃度においても前記活性が表れることが分かった。さらに、このような活性がエストラジオールと同程度か又はそれより高い水準で表れることが分かった。
【0074】
4-7) 槐角抽出物の処理に伴う破骨細胞分化抑制効果
本発明の槐角抽出物の処理が破骨細胞の分化を抑制するか否かを調査した。この為、前記実施例4-2)において、分離及び培養した破骨細胞と造骨細胞を共培養した。24ウェル(multiwellTM 24well,Becton Dickinson)の細胞培養皿の各ウェルに破骨細胞を>1.5×105ずつ分株し、ここに造骨細胞を各ウェル当り1×103個になるように分株した。前記ウェルに分化促進因子であるM-CSF50ng/mlを各試料と共に処理して5日間培養した。前記各試料は実施例1の槐角抽出物(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物(R-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物(R-P群)を10-4、10-6、10-8、10-10及び10-12%になるように希釈して製造した。培養完了後、破骨細胞の分化程度をTRAP染色法で測定した。TRAP染色は酸リン酸加水分化酵素キット(Acid Phosphtase kit,Sigma)を用いて光学顕微鏡下でTRAP陽性となる細胞核を計数した。
【0075】
実験結果、本発明の槐角抽出物の破骨細胞分化抑制効果はエストラジオールに比べては低く示された。しかしながら、各試料を10-4%及び10-6%の高濃度で処理した場合、大豆エキス粉末(S-S群)処理群に比べて、実施例1の槐角抽出物処理群(R-G群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物処理群(R-P群)の破骨細胞分化抑制能が優れたものとして表れた。特に、10-8%〜10-12%の低濃度で処理した場合、本発明の槐角抽出物の処理群(R-G、R-A及びR-P群)は大豆エキス粉末処理群(S-S群)に比べて高く表れた。さらに、R-P群の破骨細胞分化抑制効果は全ての濃度範囲で一定して表れた(図8)従って、本発明の槐角抽出物及び前記槐角抽出物を含む食品組成物の場合、破骨細胞の分化を抑制する活性を有していることが分かった。
【0076】
〈実施例5〉
生体内(in vivo)実験を通じた槐角抽出物の骨粗しょう症予防又は治療効果調査
動物実験を通じて槐角抽出物の骨粗しょう症予防又は治療効果を調査した。実験用ラットの卵巣を摘出して骨粗しょう症を誘発させ、前記ラットに本発明の槐角抽出物を供給しながらこれに伴う体重,成長率、血液中における骨の吸収状態の指標であるDpd(Deoxypyridinoline:デオキシピリジノリン)及びカルシウムの濃度変化を測定した。さらに、本発明の槐角抽出物の供給に伴うラットの脛骨と腰椎骨の小柱骨面積の変化を測定した。全ての実験群間の比較は ANOVA検定を利用し、特定群間の比較はスチューデントT-検定(student-T test)を利用して統計処理し、有意差(p value)が0.05より小さい場合統計的な意義があるものと判定した。
【0077】
5-1) 実験動物の卵巣摘出
実験動物として、体重が230〜250gの雌のラット(Sprague-Dawley)を翰林実験動物園(京畿道)より購入して利用した。前記実験動物は温度23±1℃、湿度40〜60%及び明暗周期12時間の条件で飼育し、基本飼料(固形飼料、翰林実験動物研究所)と飲水は無制限で供給した。但し、採血前日には飲水のみを供給した。
卵巣摘出手術は12週令のラットをエーテル麻酔し、背中部位の毛を剃刀で除去し、70%アルコールで手術部位を消毒して無菌的に手術を行った。一側の側背部下端部位脊椎線に沿って皮膚組織を約2〜3cm程切開し、卵巣が位置した筋肉及び腹膜を1.5cm切開して卵巣を露出させた。卵管を絹糸で結紮し卵巣を切除して絹糸を用いて腹膜、筋肉及び皮膚を縫合した。反対側に対しても同一な方法で卵巣を摘出した。対照群としては腹膜までのみに同一に施術して卵巣は摘出しないまま、再び縫合する偽手術を施行した。手術後1週間の回復期を有した。
【0078】
5-2) 試料投与及び方法
実験動物は正常群(卵巣非摘出群)、対照群1(偽手術群)及び卵巣摘出群に区分し、卵巣摘出群は再び試料非投与群である対照群2、17-βエストラジオール投与群(E群)、実施例1の槐角抽出物投与群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群(R-A群)、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群(R-P群)及び大豆エキス粉末投与群(S-S群)に各10匹ずつ分けた(表1)。前記各実験群に下記のような投与量で試料を投与し、試料の投与期間は卵巣摘出手術後1週間が経過した13週令のラットを用いて22週令まで9週間とした。
【0079】
【表1】
【0080】
5-3) 体重及び成長率測定
前記実施例 5-2)の各群は電子天秤を利用して毎週体重を測定し、測定された体重から下記式により1日の体重増加率を計算した。
1日体重増加率=(最終体重―初期体重)/実験日数×100
【0081】
実験結果、卵巣摘出手術前の体重は各群間に統計的差はなかった。手術後、9週間試料を投与後の体重は各群間に僅かな統計的差を示した。一方、卵巣摘出後飲水を投与した対照群2では急激な体重増加を示したが、卵巣を摘出しない正常群、偽手術を行った対照群1及び槐角抽出物又はエストラジオールを投与した群では、体重増加程度が緩やかであった(図10及び表2)。これは卵巣が摘出されたラットの場合、卵巣除去後エストロゲンが分泌されず、脂肪細胞が増加したために体重が急激に増加したものと思われ、また卵巣が摘出されたが槐角抽出物及びエストラジオールを投与した場合には、前記のようなエストロゲンの補強効果を示す活性成分等により、脂肪細胞の増加が抑制され体重が緩慢に増加されたものと思われる。
【0082】
【表2】
【0083】
5-4) 槐角抽出物の供給に伴う血漿内Dpd濃度の変化
槐角抽出物の供給に伴う血漿内 Dpdの濃度変化を測定した。前記Dpdは骨の基質内で架橋することにより、I型コラーゲン鎖(Type I collagen chain)を安定化させる役割をし、(Seyedin SM.etal.,Curr.Opin.CellBiol.2,914-919,1990;Delmas PD.Biochemical markers for the assessment of bone turnover.In Riggs BL,MeltonLJ,Osteoporosis; etiology,diagnosis,and management.philadelphia;Lippincott-Raven Publisheres,319-333,1995)、破骨細胞により骨の基質が分解されると、Dpdは血液を通じて尿として排出される(EastellR.et al.,J.Bone Miner.Res.12,59-65,1997)。従って、Dpdの増加が抑制されるということは、骨代謝性疾患を予防又は治療する活性を有していることを意味する(Riggs BL.,West.J.Med.154,63-77,1991; Hesley RP.et al.,Osteoporosis int.8,159-164,1998)。
【0084】
槐角抽出物の供給により血漿内Dpdの増加が抑制されるか否かを測定する為に、前記実施例5-2)の実験動物から血漿を収得した。卵巣摘出手術前(12週令、実験0週目)から2週間隔でラットをエーテル麻酔し、眼窩静脈より1.7〜1.8mlを採血した。さらに、9週間試料を投与した後、屠殺前(22週令、実験10週目)に腹部の静脈を通じて採血し、直ちに遠心分離後血漿を採取した。
【0085】
前記採取した血漿中のDpd濃度は、抗-Dpd抗体が含まれたDpd濃度測定用キット(Pyrilinks-D,Quidel Corporation,USA)を利用して酵素免疫競合法(competitive enzyme immunoassay)で測定した。つまり抗-Dpd抗体を結合させたマイクロプレートに、血漿内のDpd酵素標識−アルカリフォスファターゼが競争的に反応するように添加し、ここに基質としてp-ニトロフェニルリン酸(pNPP)を添加して免疫複合体を形成させた後に、405nmにおける、吸光度を測定してDpd濃度と吸光度との検量線を求めた。そして採取した血漿中のDpd濃度を求めた(図11)。
【0086】
実験結果、正常群(卵巣非摘出群)及び対照群1(偽手術群)の場合、血漿内Dpd濃度が10週間の間殆ど変化がなかった。卵巣摘出後飲水を投与した対照群2の場合には、血漿内Dpd濃度が継続的に急激に増加して、卵巣を摘出しない正常群に比べて60%程度が増加したものと示された。このような結果は卵巣摘出によりエストロゲンホルモン分泌が減少して骨粗しょう症が進行したためと考えられる。エストラジオール投与群(E群)、実施例1の槐角抽出物投与群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群(R-A群)、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群(R-P群)及び大豆エキス粉末投与群(S-S群)の場合には、卵巣摘出手術後各試料を投与する前の実験1週まではDpd濃度が増加したが、各試料を投与し始めて9週後(実験10週目)にはその値が減少した。特に、R-G群及びエストラジオール投与群(E群)の場合には、Dpd濃度が急激に減少した(図12)。
従って、本発明の槐角抽出物はDpd濃度の増加を抑制する活性を有していることが分かった。
【0087】
5-5) 槐角抽出物のDpd増加抑制能確認
前記実施例5-4)の結果をもとに各試料を9週間投与後Dpd値の変化を下記の式により定量した。ΔDpdの値がマイナスであればDpd濃度が減少したことを意味し、プラスであればDpd濃度が増加したことを意味する。
ΔDpd=各個別動物のΔDpdの和/n
前記式において各個別動物のΔDpdは実験動物に試料を投与する前のDpdと9週間試料を投与した後のDpdの差を意味し、nは実験動物の数を指す。
【0088】
ΔDpdの値を計算した結果、卵巣を摘出した後飲水のみを投与した対照群2の場合ΔDpdの値が高いプラスの値を示して骨粗しょう症がかなり進行したことが分かった。反面、本発明の槐角抽出物投与群であるR-G群及びR-A群、槐角抽出物を含む食品組成物投与群(R-P群)、エストラジオール投与群(E群)及び大豆エキス粉末投与群(S-S群)の場合には、全てマイナスの値を示して、それらにDpd抑制能のあることが分かった。この内でエストラジオール投与群(E群)の場合、最も大きいDpd抑制能を示し、エストラジオール投与群のDpd減少量を100%とした場合、R-G群の場合60%、S-S群の場合14.5%、R-P群の場合1.2%及びR-A群の場合0.7%程度の減少量を示した(図13)。従って、R-G群の場合S-S群に比べてDpd減少能が一層優れていることが分かった。
【0089】
さらに、本発明の槐角抽出物の効能を確認する為に、実際に骨粗しょう症が進行した対照群2(卵巣摘出群)のDpd量に対する本発明の槐角抽出物を処理した群のDpd量を下記の式により計算した。
槐角抽出物の効能=(ΔDpd対照群2―ΔDpd実験群 )/ΔDpd対照群2
前記式でΔDpd対照群は対照群2の試料投与前Dpd濃度と最終Dpd濃度の差を示す。
ΔDpd実験群は各試料を処理した実験群の試料投与前Dpd濃度と最終Dpd濃度の差を示す。
【0090】
この結果、本発明の槐角抽出物の効能値が1より大きい場合、Dpd抑制効能があると判断することができ、その値が大きい程効能が優れたものと判断することができる。計算された値をp=0.05でANOVA検定により有意性を検証した。
その結果、R-G群の場合、エストラジオールと殆ど類似した効能を示し、残りの群の場合にはエストラジオールより低い効能を示した(図14)。
【0091】
5-6) 槐角抽出物の供給に伴う血漿内カルシウム濃度の変化
一般的に、骨形成指標としてカルシウム濃度の増加は骨が形成されたことを意味する。従って、槐角抽出物の供給に伴う血漿内カルシウム濃度の変化を、OCPC法を利用して測定した(J.P.Riley,Analytica Chimica Acta,21,317-323,1959)。実験動物の血漿は前記実施例5-4)と同一な方法で採取した。血漿中のカルシウムはアルカリ性条件下でOCPC(オルトクレゾールフタレインコンプレクソン)と結合して紫紅色を呈する。従って、前記紫紅色の吸光度を測定することにより、試料中のカルシウム濃度を定量することができる。本実施例では緩衝液として0.88mol/lモノエタノールアミン緩衝液(pH 11.0)を用い、発色試薬としてはOCPC 0.1mmol/lと 8-ピノリノロン11mmol/lを用いた。
【0092】
実験結果、正常群(卵巣非摘出群)と対照群1(偽手術群)場合には、時間の経過に伴いカルシウム濃度が少しずつ増加する傾向を示した。これは実験動物の成長に伴う結果と考えられた。卵巣摘出後飲水のみを投与した対照群2の場合には、持続的にカルシウム濃度が減少し、実施例1の槐角抽出物投与群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群(R-A群)、実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群(R-P群)、エストラジオール投与群(E群)及び大豆エキス粉末投与群(S-S群)の場合には、卵巣摘出手術後各試料を投与する前まではカルシウム濃度が減少したが(実験1週目)、各試料を投与した以後からはカルシウム濃度が持続的に増加する傾向を示した。特に、エストラジオール投与群(E群)とR-G群の場合には、カルシウム濃度の急激な増加が見られた(図15及び表3)。
【0093】
【表3】
【0094】
5-7) 槐角抽出物の供給に伴う脛骨及び腰椎骨の小柱骨面積測定
槐角抽出物が骨の骨密度に及ぼす影響を調査する為に、脛骨及び腰椎骨の小柱骨面積を測定した。前記小柱骨(trabecular bone)は骨代謝作用が最も活発に行われる箇所であり、外部効果による骨の生成及び骨吸収作用が最も早く反応して表れる箇所である。従って、小柱骨の面積を測定し、その増減により骨粗しょう症や骨粗しょう症誘発抑制効果を判断できる (Faugere MC.et al.,American Physiological Society,E35-E38,1986)。
【0095】
槐角抽出物の供給に伴う脛骨及び腰椎骨の小柱骨面積を測定する為に、前記実施例5-2)の各実験群のラットより脛骨及び腰椎骨を採り10%ホルマリン溶液に固定した。ギ酸内で脱灰を行い骨組織の中で観察する部位をメスで切断した。70%のアルコールから100%のアルコールとアセトンに至る段階別脱水過程後、キシレンで洗浄し、パラフィン包埋を実施した。包埋された骨組織をミクロトームで5ミクロンに切断して、ヘマトキシリンエオシン(Hematoxyline eosin,H&E)染色を実施して光学顕微鏡(Olympus BH-2)で観察し、腰椎骨と脛骨の骨端部を定量的及び形態計測学的に測定した。
計測方法はポラロイドデジタルカメラで光学顕微鏡(Olympus BH-2)の1X対物レンズを通じて映像を得た後、コンピュータ上で各小柱骨の輪郭線を描けば自動的に計算されるプログラムを使用し、骨の骨端部の内成長板の直下部2次骨化部位内にある小柱骨を全て測定した。面積はコンピュータで算出された面積を自動的に計算し、映像分析システム(Optimas ver 6.2,Media Cybernetics.Inc.)を用いて分析した。これらの数値の平均を統計処理して測定部位の全体面積から小柱骨が占める面積を%で定量化して分析した。
【0096】
実験結果、脛骨の場合、飲水を投与した対照群2(卵巣摘出群)に比べて実施例1の槐角抽出物投与群(R-G群)、実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群(R-A群)及び実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群(R-P群)の小柱骨面積の減少程度が小さく現れ、エストラジオール投与群(E群)と同様、若しくは、より高い骨密度を維持するものとして表れた。特に、R-P群において小柱骨面積の減少が少なく、骨粗しょう症誘発抑制効果が優れていることが分かった(図16a及び図16b)。さらに、腰椎骨の場合にも対照群に比べて本発明の槐角抽出物(R-A群及びR-P群)投与群において小柱骨面積の減少程度が小さく現れた(図17a及び図17b)。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上、前記実施例を通じて説明した通り、本発明に伴う槐角抽出物は造骨細胞の増殖を促進する活性、骨吸収サイトカインの分泌抑制活性、骨再形成に関与する成長因子の分泌促進活性、造骨細胞の酸化窒素生成促進活性及び破骨細胞分化抑制活性を有し、骨吸収指標の濃度を減少させ骨のカルシウム濃度減少を抑制し、骨密度の減少を抑制する活性を有していて、骨粗しょう症を含む更年期疾患の予防又は治療に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に伴う槐角抽出物が造骨細胞の増殖に及ぼす影響をMTT法で分析した結果である(R-G: 実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール(estradiol)、対照群:細胞培養用培地処理群、LPS:リポポリッサカライド(lipopolysaccharide)処理群)。
【図2a】本発明に伴う槐角抽出物のIL-1βの分泌抑制効果をELISA法で分析した結果である(R-G: 実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、対照群:細胞培養用培地処理群)。
【図2b】本発明に伴う槐角抽出物のIL-6分泌抑制効果をELISA法で分析した結果である(R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、対照群:細胞培養用培地処理群)。
【図3】本発明の槐角抽出物の処理に伴うIL-1β及びIL-6の発現程度をRT-PCR法で分析した結果である(R-G: 実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群)。
【図4a】本発明に伴う槐角抽出物のIGF-1の分泌促進効果をELISA法で分析した結果である(R-G: 実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、対照群:細胞培養用培地処理群)。
【図4b】本発明に伴う槐角抽出物のTGF-βの分泌促進効果をELISA法で分析した結果である(R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、対照群:細胞培養用培地処理群)。
【図5】本発明の槐角抽出物の処理に伴うIGF-1及びTGF-βの発現程度をRT-PCR法で分析した結果である(R-G: 実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群)。
【図6】本発明に伴う槐角抽出物の酸化窒素生成促進効果をELISA法で分析した結果である(R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、対照群:細胞培養用培地処理群)。
【図7】本発明の槐角抽出物の処理に伴う一酸化窒素生成酵素(endothelial nitric oxide synthase;ecNOS)の発現程度をRT-PCR法で分析した結果である。GAPDH はローディング対照群として用いた(R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、*:R-P、E vs S-S,p<0.05において有意的な差がある)。
【図8】本発明に伴う槐角抽出物の破骨細胞分化抑制能を測定する為にTRAP染色後光学顕微鏡で観察して陽性を示す破骨細胞の数を計数した結果である(R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、E: 17-βエストラジオール処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群)。
【図9】本発明に伴う槐角抽出物の破骨細胞分化抑制能をTRAP染色後、吸光度を測定して分析した結果である (対照群:細胞培養用培地処理群、R-G:実施例1の槐角抽出物処理群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物処理群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物処理群、S-S:大豆エキス粉末処理群、E:17-βエストラジオール処理群)。
【図10】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの体重変化を示したグラフである(E:17-βエストラジオール投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群)。
【図11】本発明の槐角抽出物を供給した卵巣が摘出されたラットの血漿内Dpd(Deoxypyridinoline:デオキシピリジノリン)の濃度を測定する為、Dpd濃度と吸光度との相関関係を確立した検量線である(Y=-0.1128X+1.6102,R=0.9902)。
【図12】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの血漿内Dpd濃度変化を示したグラフである(E:17-βエストラジオール投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群)。
【図13】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの実験前と実験後の血漿内Dpd濃度差を示したグラフである(対照群:卵巣摘出後飲水投与群、E: 17-βエストラジオール投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群)。
【図14】本発明の槐角抽出物のDpd増加抑制効能を比較したグラフである(E:17-βエストラジオール投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、*:p<0.05で有意差無し、**:p<0.05で有意差有り)。
【図15】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの血漿内カルシウムの濃度変化を示したグラフである (E:エストラジオール投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-P:実施例3の槐角の酵素分解抽出物を含む食品組成物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群)。
【図16a】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの脛骨を光学顕微鏡で観察した写真である(倍率X16,A:正常群(卵巣非摘出群)、B:対照群1(仮装手術群)、C:対照群2(卵巣摘出群)、D: 17-βエストラジオール投与群、E:実施例1の槐角抽出物投与群、F:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、G:実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群、H:大豆エキス粉末投与群)。
【図16b】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの脛骨の小柱骨面積を測定した結果である(E: 17-βエストラジオール投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-P:実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群、*:p<0.05で有意差あり)。
【図17a】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの腰椎骨を光学顕微鏡で観察した写真である(倍率X16,A:正常群(卵巣非摘出群)、B:対照群1(仮装手術群)、C:対照群2(卵巣摘出群)、D: 17-βエストラジオール投与群、E:実施例1の槐角抽出物投与群、F:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、G:実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群、H:大豆エキス粉末投与群)。
【図17b】本発明の槐角抽出物を投与し、卵巣が摘出されたラットの腰椎骨の小柱骨面積を測定した結果である(E: 17-βエストラジオール投与群、R-A:実施例2の槐角の酵素分解抽出物投与群、R-G:実施例1の槐角抽出物投与群、R-P:実施例3の槐角抽出物を含む食品組成物投与群、S-S:大豆エキス粉末投与群、*:p<0.05で有意差あり)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槐角抽出物を有効成分として含むことを特徴とする更年期疾患の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記槐角抽出物が
(a)槐角粉末の全体重量に対して3倍〜20倍の水を槐角粉末に添加する段階;及び
(b)前記(a)段階の組成物を1時間〜6時間加熱して抽出することにより製造されることを特徴とする請求項1項記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記槐角抽出物が
(a)槐角粉末の全体重量に対して3倍〜20倍の水を槐角粉末に添加する段階;
(b)前記(a)段階の組成物を1時間〜6時間加熱して抽出することにより製造されたものである更年期疾患の予防及び治療用薬学的組成物;及び
(c)前記(b)段階の組成物にアミラーゼ又はペクチナーゼを0.01〜1%(v/v)で添加して4〜24時間反応させ製造されるものであることを特徴とする請求項1項記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病(Paget's disease of bone)を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1項記載の薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1項の槐角抽出物を有効成分として含む更年期疾患の予防及び改善用食品組成物。
【請求項6】
前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする請求項5項記載の食品組成物。
【請求項7】
槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより更年期疾患を予防又は治療することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする請求項7項記載の方法。
【請求項9】
前記更年期疾患が骨代謝性疾患であることを特徴とする請求項8項記載の方法。
【請求項10】
槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与することにより、造骨細胞の増殖、骨再形成関連成長因子の分泌及び造骨細胞の一酸化窒素生成を促進して骨代謝性疾患を予防又は治療することを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項11】
前記骨再形成関連成長因子がIGF-1又はTGF-βであることを特徴とする請求項10項記載の方法。
【請求項12】
槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与して、骨吸収サイトカインの分泌又は破骨細胞の分化を抑制することにより骨代謝性疾患を予防又は治療することを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項13】
前記骨吸収サイトカインがIL-1β又はIL-6であることを特徴とする請求項12項記載の方法。
【請求項14】
槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより体重の増加を抑制する方法。
【請求項15】
槐角抽出物を更年期疾患の予防又は治療の為の薬剤の製造に用いる用途。
【請求項1】
槐角抽出物を有効成分として含むことを特徴とする更年期疾患の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記槐角抽出物が
(a)槐角粉末の全体重量に対して3倍〜20倍の水を槐角粉末に添加する段階;及び
(b)前記(a)段階の組成物を1時間〜6時間加熱して抽出することにより製造されることを特徴とする請求項1項記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記槐角抽出物が
(a)槐角粉末の全体重量に対して3倍〜20倍の水を槐角粉末に添加する段階;
(b)前記(a)段階の組成物を1時間〜6時間加熱して抽出することにより製造されたものである更年期疾患の予防及び治療用薬学的組成物;及び
(c)前記(b)段階の組成物にアミラーゼ又はペクチナーゼを0.01〜1%(v/v)で添加して4〜24時間反応させ製造されるものであることを特徴とする請求項1項記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病(Paget's disease of bone)を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1項記載の薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1項の槐角抽出物を有効成分として含む更年期疾患の予防及び改善用食品組成物。
【請求項6】
前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする請求項5項記載の食品組成物。
【請求項7】
槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより更年期疾患を予防又は治療することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記更年期疾患が骨粗しょう症、腰痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、くる病、骨軟化症及び骨パジェット病を含む骨代謝性疾患、狭心症及び動脈硬化症を含む心血管疾患及びパーキンソン病を含む退行性神経疾患からなる群より選ばれることを特徴とする請求項7項記載の方法。
【請求項9】
前記更年期疾患が骨代謝性疾患であることを特徴とする請求項8項記載の方法。
【請求項10】
槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与することにより、造骨細胞の増殖、骨再形成関連成長因子の分泌及び造骨細胞の一酸化窒素生成を促進して骨代謝性疾患を予防又は治療することを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項11】
前記骨再形成関連成長因子がIGF-1又はTGF-βであることを特徴とする請求項10項記載の方法。
【請求項12】
槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に有効な量で投与して、骨吸収サイトカインの分泌又は破骨細胞の分化を抑制することにより骨代謝性疾患を予防又は治療することを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項13】
前記骨吸収サイトカインがIL-1β又はIL-6であることを特徴とする請求項12項記載の方法。
【請求項14】
槐角抽出物を含む薬学的組成物を個体に投与することにより体重の増加を抑制する方法。
【請求項15】
槐角抽出物を更年期疾患の予防又は治療の為の薬剤の製造に用いる用途。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図17a】
【図17b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図17a】
【図17b】
【公表番号】特表2007−512320(P2007−512320A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541010(P2006−541010)
【出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000251
【国際公開番号】WO2005/051407
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(506149003)レックスジーンバイオテック・カンパニー・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000251
【国際公開番号】WO2005/051407
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(506149003)レックスジーンバイオテック・カンパニー・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]