説明

様々な病気の治療用のアディポネクチン

アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントを経口投与することにより様々な病気を治療する方法について述べる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は様々な病気の治療用のアディポネクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
母乳で育てられた子供は、調製乳で育てられた子供よりも健康でアレルギーおよび感染症の発病率が低い傾向にあり、またやせ型の傾向がある[1]。これらの保護的効果の理由は完全には分かっていないが、乳タンパク質は明らかに役割を果たしている。さらに、従来の研究から、人乳タンパク質が乳児において胃腸、神経、および免疫学上の発達に影響を及ぼすことが実証されている[2−6]。
【0003】
アディポネクチン(ACRP30、アディポQまたはGBP28とも呼ばれる)は、主として脂肪組織中で脂肪細胞によって産生されるタンパク質であり[7−10]、ヒトの発達に影響を与えるいくつかの生理学的プロセスに影響を及ぼす。循環血中のアディポネクチンが高濃度であると、炎症性サイトカインの減少[11、12]、インスリン感受性の改善[13]、および脂肪酸代謝の増大[14]を通じて健康上好ましい効果がある。
【0004】
人乳の組成は、授乳中の女性において、また授乳中の女性の間において、変動を示す。個体内での変動は、部分的には授乳期全体を通じての乳タンパク質濃度の変化に起因すると思われる[15−17]。乳タンパク質濃度の個体差は、遺伝的変異[18、19]および他の要因の中では母体の脂肪過多[20]に起因していた。
【0005】
ヒトでは、アディポネクチンのレベルは、脂肪過多とは無関係なインスリン抵抗性と逆相関し[21−23]、2型糖尿病の個体ではアディポネクチンのレベルが最も低い[24−26]。更に、アディポネクチンはインスリン抵抗性の発症に先行して低下し、アディポネクチンがインスリン感受性に直接影響することが示唆されている[27−33]。マウスの研究から、アディポネクチンがグルコース利用率を改善することが確認されている[34]。高濃度のアディポネクチンは抗動脈硬化性の脂質のプロファイルにも関連付けられてきた。アディポネクチンは、一貫して血漿中トリグリセリド(TG)と逆相関し、血漿中HDLコレステロールレベルとは正に相関する[35]。アディポネクチンは脂質の代謝および酸化に直接影響を及ぼす。さらに、アディポネクチンは強い抗炎症性を有している。アディポネクチンはTNF−α[11]およびIL−6[11、12]の産生を減少させ、マクロファージにおいて抗炎症性サイトカインの発現を増大させる[36]。アディポネクチンはまた、TNF−αの下流でも機能してTNF−αがNF−κB経路を活性化する能力を抑制する[37]。アディポネクチンは、in vitroで顆粒球マクロファージ・コロニーの形成を阻害し、成熟マクロファージの食細胞活動を阻害する[38]。
【0006】
アディポネクチンは、in vivoでは数種のオリゴマーの形態で存在し、そのうち最も多いのは、三量体、六量体または低分子量(LMW)の形態、ならびにいずれも高分子量(HMW)の形態とされる二重六量体および高次構造体である。
【0007】
アディポネクチンの特定のオリゴマーは、ヒトにおける重要な代謝結果に関係している。HMWの形態(HMW型)の循環血中アディポネクチンは、減量に応じて選択的に増大し[39、40]、インスリンの注入に応じて選択的に減少する[41]。このことは特に興味深い。というのも、HMW型のアディポネクチンが、肥満の影響を強く受けることが知られた生理学的プロセスの変化に関係しているからである:HMW複合体として結合
しているアディポネクチンの割合は、総アディポネクチンレベルよりも耐糖能とよく関係している[42]。抗糖尿病薬を用いた治療後の肝臓のインスリン感受性の改善も、総アディポネクチン濃度よりHMW複合体として存在するアディポネクチンの割合と関連する[43]。HMW複合体は、冠動脈疾患の成人では正常な対照と比較して総アディポネクチン中でより低い割合を占めており、またHMW型だけが血管内皮細胞をアポトーシスから防御する[39]。HMW複合体はまた、抗動脈硬化性の高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールとの相関が総アディポネクチンよりも高いが、三量体型はHDLと逆相関する[40]。
【0008】
アディポネクチンのオリゴマー構造体は、細胞内で組み立てられて分泌され、生理学的条件においては複合体間で自然に交換が生じることはほとんどないようである[41、44]。実際に、ワン(Wang)ら[45]により、特定のアミノ酸アディポネクチン遺伝子のヒドロキシル化およびグリコシル化が異なるオリゴマー形態の原因となることが示唆された。
(発明の開示)
本明細書に記載されるのは、乳幼児および小児における肥満およびある種の代謝性障害の治療またはリスク低減のための方法ならびに組成物である。該方法は、アディポネクチン、例えばグリコシル化された形態のアディポネクチンを含有する組成物を投与することを要する。ある実施形態では、アディポネクチンは、人乳中に見出されるアディポネクチンのアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、アディポネクチンは、人乳中に見出されるアディポネクチンのグリコシル化パターンを有する。
【0009】
ヒトのアディポネクチン前駆体タンパク質(GenBank(R)登録番号NP_004788.1 GI:4757760)は、以下の配列を有する(最初の14アミノ酸または最初の17アミノ酸がリーダー配列であり、残りの配列が成熟タンパク質の配列である)。
MLLLGAVLLLLALPGHDQETTTQGPGVLLPLPKGACTGWMAGIPGHPGHNGAPGRDGRDGTPGEKGEKGDPGLIGPKGDIGETGVPGAEGPRGFPGIQGRKGEPGEGAYVYRSAFSVGLETYVTIPNMPIRFTKIFYNQQNHYDGSTGKFHCNIPGLYYFAYHITVYMKDVKVSLFKKDKAMLFTYDQYQENNVDQASGSVLLHLEVGDQVWLQVYGEGERNGLYADNDNDSTFTGFLLYHDTN(配列番号1)
成熟型アディポネクチンは、次のアミノ酸配列:
GHDQETTTQGPGVLLPLPKGACTGWMAGIPGHPGHNGAPGRDGRDGTPGEKGEKGDPGLIGPKGDIGETGVPGAEGPRGFPGIQGRKGEPGEGAYVYRSAFSVGLETYVTIPNMPIRFTKIFYNQQNHYDGSTGKFHCNIPGLYYFAYHITVYMKDVKVSLFKKDKAMLFTYDQYQENNVDQASGSVLLHLEVGDQVWLQVYGEGERNGLYADNDNDSTFTGFLLYHDTN(配列番号2)を有するか、あるいは次のアミノ酸配列:
QETTTQGPGVLLPLPKGACTGWMAGIPGHPGHNGAPGRDGRDGTPGEKGEKGDPGLIGPKGDIGETGVPGAEGPRGFPGIQGRKGEPGEGAYVYRSAFSVGLETYVTIPNMPIRFTKIFYNQQNHYDGSTGKFHCNIPGLYYFAYHITVYMKDVKVSLFKKDKAMLFTYDQYQENNVDQASGSVLLHLEVGDQVWLQVYGEGERNGLYADNDNDSTFTGFLLYHDTN(配列番号3)を有する。
【0010】
ある場合には、アディポネクチンのいわゆる球状頭部のうち一部または全部を含んでいる、配列番号1のポリペプチドフラグメントを投与することが望ましい。例えば、配列番
号1(完全長のヒトアディポネクチン)のアミノ酸84−244、85−244、86−244、87−244、88−244、89−244、90−244、91−244、92−244、93−244、94−244、95−244、96−244、97−244、98−244、99−244、100−244、101−244、102−244、103−244、104−244、105244、106−244、107−244、108−244、109−244、110−244または111−244を含有する(で構成される、または、本質的に構成される)組成物を経口投与することができる。その他の場合には、配列番号1のポリペプチドフラグメントを含有する組成物であって、配列番号1(完全長のヒトアディポネクチン)のアミノ酸84−244、85−244、86−244、87−244、88−244、89−244、90−244、91−244、92−244、93−244、94−244、95−244、96−244、97−244、98−244、99−244、100−244、101−244、102−244、103−244 104−244、105−244、106−244、107−244、108−244、109−244、110−244または111−244のポリペプチドフラグメントを含有する、該ポリペプチドフラグメントで構成される、または該ポリペプチドフラグメントで本質的に構成される組成物を、経口投与することができる。
【0011】
ある場合には、三量体(3個のポリペプチド鎖の複合体)、六量体(6個のポリペプチド鎖の複合体)、12量体(12個のポリペプチド鎖の複合体)または18量体(18個のポリペプチド鎖の複合体)を含有する組成物を経口投与することができる。
【0012】
該タンパク質中のいくつかのリシン残基は、グリコシル化される可能性を有し(例えば未成熟型タンパク質の番号付けで65、68、77および101位のリシン)、いくつかのプロリン残基はヒドロキシル化される可能性を有している。
【0013】
ある場合には、アディポネクチンを含有する有用な組成物は、人乳中に存在する成分のうち一部または全部と比べてアディポネクチンが相対的に豊富である。例えば、アディポネクチンは、人乳中の1以上のタンパク質および脂肪(または全ての成分)に比べて10%、20%、50%、70%、90%またはそれ以上豊富であってよい。
【0014】
本明細書中に記載されるのは、
精製アディポネクチンまたはそのフラグメントを含有する組成物を経口投与することを含む、患者において肥満症を治療またはリスク低減する方法;
精製アディポネクチンまたはそのフラグメントを含有する組成物を経口投与することを含む、患者においてメタボリック症候群を治療またはリスク低減する方法;
精製アディポネクチンまたはそのフラグメントを含有する組成物を経口投与することを含む、患者において炎症性腸疾患、高血糖症、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性を伴うメタボリック症候群、2型糖尿病、メタボリック症候群であって高血圧、アテローム性動脈硬化、冠性心疾患または虚血性心疾患を伴うもの、から選択される病気を治療またはリスク低減する方法;ならびに、
精製アディポネクチンまたはそのフラグメントを含有する組成物を経口投与することを含む、乳幼児において壊死性小腸大腸炎を治療またはリスク低減する方法;
である。
【0015】
ある場合には、アディポネクチンまたはそのフラグメントは、体重の低減、体重の増加速度の低減、耐糖能異常の治療、インスリン抵抗性の治療、2型糖尿病の治療、高脂血症の治療、高尿酸血症の治療、血糖のコントロール、糖尿病に罹患していないが空腹時グルコースの高い患者の治療、のために経口投与されうる。
【0016】
ある場合には、アディポネクチンまたはそのフラグメントは、インスリンまたはインス
リン増感剤(例えばメトホルミン)を投与されている患者に投与される。
様々な実施形態において、患者は18歳未満;患者は15歳未満;患者は10歳未満;患者は1歳未満;および患者は早産で生まれた乳幼児である。
【0017】
いくつかの例では、アディポネクチンまたはそのフラグメントはグリコシル化されている。他の例では、アディポネクチンまたはそのフラグメントはヒドロキシル化およびグリコシル化されている。様々な実施形態において、アディポネクチンまたはそのフラグメントの少なくとも1つのアミノ酸はグルコシルガラクトシル残基で置換され;アディポネクチンは、配列番号1、2または3のアミノ酸配列を有し、かつリシン残基65、68、77および101のうち1つ以上がグリコシル化されている。他の実施形態では、アディポネクチンは配列番号2のアミノ酸配列を有する。いくつかの場合には、配列番号2を有するポリペプチドはリシン51、54および87のうち1つ以上がグリコシル化されている。
【0018】
ある場合には、アディポネクチンは人乳中に見出される形態であり、例えば、精製アディポネクチンのグリコシル化は、人乳中に見出されるものと同じということである。
いくつかの状況では、精製アディポネクチンは、グルコシルガラクトシル部分、グルコシルグルコシル部分、ガラクトシルグルコシル部分またはガラクトシルガラクトシル部分から選択される少なくとも1つの部分を有している。
【0019】
精製アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントを含有する組成物は、人乳中に見出されるオリゴ糖をさらに含みうる。様々な場合において、組成物は、ラクト−N−フコペンタオースI[LNF−I]、2−フコシルラクトース[2’−FL]、ラクト−N−ジフコヘキサオースI[LDFH−I]、ラクトジフコテトラオース[LDFT]、ラクト−N−フコペンタオースII[LNF−II]、3−フコシルラクトース[3−FL]、ラクト−N−フコペンタオースIII[LNF−III]、ラクト−N−テトラオース[LNT]、およびラクト−N−ネオテトラオース[LNneoT]から選択される、少なくとも1つのα1,2−連結型フコシル化オリゴ糖または少なくとも1つのオリゴ糖を含有する。
【0020】
いくつかの場合において、精製アディポネクチンまたはそのフラグメントは、ラクト−N−フコペンタオースI;ラクト−N−フコペンタオースII;3’−フコシルラクトース;ラクト−N−フコペンタオースII;ラクト−N−ジフコヘキサオースI;ラクトジフコテトラオース;ラクトN−テトラオース;ラクトN−ネオテトラオース;3’−シアリルラクトース;3’−シアリルラクトサミン;6’−シアリルラクトース;6’−シアリルラクトサミン;シアリルラクト−N−ネオテトラオースc;モノシアリルラクト−N−ヘキサオース;ジシアリルラクト−N−ヘキサオースI;モノシアリルラクト−N−ネオヘキサオースI;モノシアリルラクト−N−ネオヘキサオースII;ジシアリルラクト−N−ネオヘキサオース;ジシアリルラクト−N−テトラオース;ジシアリルラクト−N−ヘキサオースII;シアリルラクト−N−テトラオースa;ジシアリルラクト−N−ヘ
キサオースI;シアリルラクト−N−テトラオースb;3’−シアリル−3−フコシルラ
クトース;ジシアロモノフコシルラクト−N−ネオヘキサオース;モノフコシルモノシアリルラクト−N−オクタオース(シアリルLea);シアリルラクト−N−フコヘキサオースII;ジシアリルラクト−N−フコペンタオースII;およびモノフコシルジシアリルラクト−N−テトラオース、から選択される1または複数の基を含むように修飾されている。
【0021】
いくつかの場合には、精製アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントは、グルコシルガラクトシル部分、グルコシルグルコシル部分、ガラクトシルグルコシル部分またはガラクトシルガラクトシル部分から選択される少なくとも1つの部分を有
する。
【0022】
様々な場合において、アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントは、10μg/ml〜100μg/ml;10μg/ml〜75μg/ml;20μg/ml〜60μg/ml;または1μg/ml〜100μg/mlの血漿中濃度を達成するように経口投与される。
【0023】
本明細書中に記載される方法の様々な態様において、アディポネクチンは、10μg/ml〜100μg/mlの血漿中アディポネクチン濃度を達成するように投与され;アディポネクチンは10μg/ml〜75μg/mlの血漿中アディポネクチン濃度を達成するように投与され;アディポネクチンは20μg/ml〜60μg/mlの血漿中アディポネクチン濃度を達成するように投与され;またアディポネクチンは1μg/ml〜100μg/mlの血漿中アディポネクチン濃度を達成するように投与される。
【0024】
さらに記載されるのは、精製アディポネクチンを含有する栄養補助剤、および精製アディポネクチンを含有する乳児用調製乳である。
「精製タンパク質」(例えば精製アディポネクチン)とは、本明細書中で使用されるように、天然において関係している他のタンパク質、脂質および核酸から分離済みのタンパク質を指す。該タンパク質は、乾燥重量で精製調製物の少なくとも10、20、50 70、80または95%を構成することができる。
【0025】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細について、添付の図面および以下の説明において述べる。本発明のその他の特徴、目的および利点は、該説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明白となろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
アディポネクチンが人乳中に存在し、その濃度が泌乳期間、民族性、および母体の脂肪過多に関係していることを実証する研究について以下に述べる。人乳中にアディポネクチンが存在すること、および母乳で育てられた子供が調製乳で育てられた子供よりやせ型であるという事実は、アディポネクチンが、肥満の治療またはリスク低減、および他の代謝性障害の治療またはリスク低減のために乳幼児を治療するのに有用であろうということを示唆している。
【実施例1】
【0027】
乳汁サンプル
本発明者らは、2つの別個の女性集団、すなわち1)オハイオ州シンシナティ所在のシンシナティ小児研究母乳バンク(Cincinnati Children's Research Human Milk Bank)(RHMB)への提供者、ならびに2)メキシコシティにおけるNICHDの資金提供による助成「乳幼児の栄養と健康における母乳の役割(The Role of Human Milk in Infant Nutrition and Health)」(P01 HD 13021; PI:モロー(Morrow))へ
の参加者、からの人乳サンプルを分析した。これら2つの集団は、一定の収集手順を使用している乳汁サンプルを入手可能であることから選択された。シンシナティ小児病院医療センター(Cincinnati Children's Hospital Medical Center)の施設内倫理委員会(I
RB)は、これらの研究両方について試験計画書および同意書を承認し、メキシコシティの国立医学栄養研究所(National Institute of Medical Sciences and Nutrition)のIRBもメキシコの集団に関する試験計画書を承認した。
【0028】
シンシナティ小児研究母乳バンク(RHMB)は、授乳中の女性は誰でも、一度だけの提供として(RHMB臨時コホート(RHMB-Ad hoc cohort))、または泌乳期間を通して定期的に(シンシナティ母乳育児コホート(Cincinnati Breastfeeding Cohort)もしく
はRHMB長期コホート(RHMB -longitudinal))、自由意志で母乳を提供しうる保存機関である[46]。
【0029】
RHMB臨時コホートについては、提供時に次の情報、すなわち分娩時における子供の妊娠期間、乳汁が絞り出されたのは授乳何日目か、提供された量、乳汁がバンクに提供される際に新鮮な状態であったか冷凍されていたか、が収集される。しかしながら、絞り出された乳汁を母親が用意するので、これは標準化されていない収集物である。RHMB臨時コホートからは、提供者である母親由来の横断的乳汁サンプル30件を、本分析用に無作為に選出した。
【0030】
長期的に提供する試験計画への参加を望む女性(RHMB長期コホート)については、より大規模な手順が含まれる。長期的提供者となるためには、母親は分娩後1週間以内に同意書を提供しなければならず、全ての乳児が、満期出産(少なくとも37週の妊娠期間)で、先天性もしくは内科的合併症のない単生児でなければならない。母親は、少なくとも6ヶ月の間、少なくともある程度は母乳で育児することを誓約し、英語を話し、かつ医療センターから半径25マイル以内に住んでいなければならない。すべての人種および民族集団の女性に資格がある。RHMB長期コホートにおける乳汁収集は標準化された手順に従う(下記の乳汁の収集を参照)。本分析用にRHMB長期コホートから選出されるには、母親は授乳7ヶ月までに少なくとも7つのサンプルを提供する必要があるものとした。本研究には、22名の母親由来の合計199件の乳汁サンプルが採用された。
【0031】
最初の訪問時に、研究看護師は広範囲な質問表に基づくインタビューを行なう。このインタビューの際に収集されるデータには、人口統計学的情報、妊娠歴、母乳による育児経験、出産以来の母親および乳児の健康状態、ならびに服薬および環境曝露が含まれる。その後の訪問時には、服薬、健康状態などについて最新情報を得るために簡略化した質問表が用いられる。家庭訪問の度に、定期的に較正された携帯用計測器を用いて母親の身体的な測定値を計測する。
【0032】
メキシコの人乳研究コホートは、シンシナティ小児科病院医療センターとメキシコシティの国立医学栄養研究所との間で協力した取り組みである。先天性奇形を伴わずに生まれた健康で満期出産の乳児を持つ母親であれば、かつ母乳で育てる予定の母親であれば、その母親は本研究に加えられた。母親は、完全母乳の育児を支援するピアカウンセラーによる3回の訪問を受けた。母親は、最初の月は毎週、およびその後は泌乳期間中毎月、乳汁サンプルを提供した。母親の身長や体重、または出生時の乳児の妊娠期間に関するデータは収集しなかった。メキシコのコホートからは、授乳期およそ1ヶ月で乳汁サンプルを提供した被験者から37名の母親が無作為に選出された。3つのコホートの選出された全参加者の特性を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
乳汁の収集
RHMB臨時コホートについては、乳汁の収集は、母親が自分の乳汁サンプルをシンシナティ小児科病院医療センターのRHMBに持参することが必要である。RHMB長期コホートおよびメキシコの母乳育児コホートについては、乳汁の収集は、泌乳期間中の研究看護婦の家庭訪問の際に行われた。乳汁の収集には、標準的な電気ポンプを使用した乳房全体からの採乳が用いられた。各コホートについて一人の調査看護師が、午前10時から午後1時の間に乳汁を収集した。収集した乳汁は、氷中に保管して支部機関へ輸送し、支部機関において小分けにして−80℃に凍結させた。
【0035】
母親の身体計測
RHMB長期コホートのみにおいては、一人の訓練された研究看護師が母体の身体計測を測定した(B.S.D.)。母親の体重は、E−Zキャリー携帯型デジタル体重計(E-Z Carry Portable Digital Scale)(米国メリーランド州バルチモア所在のHopkins Medical Products)を使用して毎月の訪問時に測定された。女性達は靴を脱ぎ外出着で計測を受けた。身長は、最初の訪問時に、対象者がソックスを着用し、かかとを合わせ、つま先を45度の角度に離し、頭をフランクフルト水平面にして、起立した状態で計測した。身長を壁に記録し、床との垂直距離を計測した。体容量指数(BMI)を、体重(kg)を伸長(メートル)の二乗で割ったものとして算出した(kg/m2)。
【0036】
アディポネクチンおよびレプチンのアッセイ
脂質はラジオイムノアッセイ(RIA)に干渉するので、スキムミルクを使用し、また同じ人物(W.B.)が3つのコホートの全サンプルをアッセイした。乳汁サンプルを融解し渦流混合した。遠心分離(1,500μg、20分、4℃)した後に脂肪層を取り除くことによって、スキムミルク(水相)を調製した。免疫反応性のアディポネクチンを、1:3に希釈したスキムミルク100μL(33.3μL相当)を使用して、市販のRIAキット(米国ミズーリ州セントチャールズ所在のLinco Research)を用いて二連で測定した。測定間および測定内のアッセイの変動係数はそれぞれ8.5%および3.9%であった。RHMB臨時コホートのサンプルでは、レプチンについても、Houseknechtらの試
験計画書[47]に従って市販のRIAキット(米国ミズーリ州セントチャールズ所在のLinco Research)を使用して、スキムミルク中にて二連でアッセイした。測定間および測定内のアッセイのCVはそれぞれ4.5%および5.0%であり、検出限界は0.3ng/mLであった。
【0037】
アディポネクチンのアッセイ方法は標準品を使用して検証し、またスキムミルクサンプルに5、20、および100ng/mLのヒトアディポネクチン標準品をスパイクして添加量の回収率を測定した。
【0038】
統計学的解析
統計学的解析は、SASのバージョン9.1.3.を使用して実施した。記述統計は、データが正規性でないためメジアンおよび範囲として報告される。統計学的モデルに使用される乳汁アディポネクチンの正規性を改善するために、データを自然対数(ln)に変形した。8つの乳汁レプチン濃度は検出限界(0.3ng/mL)未満であり、これらの値は0.2ng/mLに設定した。0に設定した検出限界未満の値でも分析を実施したが、結果は実質的に変化がなかったので報告しない。
【0039】
ln(乳汁アディポネクチン)濃度に対する泌乳の影響を検討するために、本発明者らはRHMB臨時データおよび長期的データを使用した。横断的解析(cross-sectional analysis)では、従属変数としてln(乳汁アディポネクチン)を使用して線形回帰モデルを構築した。縦断的解析(longitudinal analysis)では、各提供者についての切片をランダ
ムとして扱う、反復測定を伴う混合モデルを構築した。データに基づいて導かれたベイズ情報量規準(BIC)を使用して、最良の相関構造(この場合、様々な時点にわたって得られたln(乳汁アディポネクチン)の間で等価な相関)が選択される。従属変数はln(乳汁アディポネクチン)であり、独立変数は授乳日であった。
【0040】
乳汁アディポネクチン濃度に対する民族性の影響を測定するために、泌乳期およそ1ヶ月における、RHMB長期コホート中の非ヒスパニック系白人(範囲:26〜42日)およびメキシコのコホート中のヒスパニック(範囲:31〜40日)の、乳汁アディポネクチンのメジアンをウィルコクソンの順位和検定を使用して比較した。
【0041】
乳汁アディポネクチン濃度に対する母体の脂肪過多の影響を測定するために、RHMB長期コホートからの母親のBMIを、横断的および縦断的に調べた。横断的解析では、ln(乳汁アディポネクチン)を各時点における母親のBMIに対して回帰推定した。縦断的解析では、ln(乳汁アディポネクチン)の反復測定を、母親のBMI混合モデル手法の反復測定によって影響を受けるものとしてモデル化した。
【0042】
人乳に関するアディポネクチンアッセイの検証
スキムミルクの系列希釈物(10〜40μL)のアディポネクチン濃度は、標準曲線にパラレルであった。スキムミルクサンプルに、5、20、および100ng/mLのヒトアディポネクチン標準品をスパイクすると、添加量の回収率は平均109%であった。
【0043】
人乳中のアディポネクチンおよびレプチン
免疫反応性のアディポネクチンはすべてのサンプル中においてスキムミルク中で検出された(表2)。乳汁アディポネクチン濃度は妊娠期間には関係していなかった(p≧0.18)。
【0044】
【表2】

【0045】
RHMB臨時サンプルでは、レプチン濃度およびアディポネクチン濃度の両方が乳汁中でアッセイされた(図1)。アディポネクチン濃度のメジアンはレプチン濃度より40倍以上高かった(それぞれ16.6ng/mLと0.4ng/mL、ウィルコクソンの順位和検定によりp<0.0001)。乳汁アディポネクチンおよび乳汁レプチンの濃度は、互いに正に相関した(スピアマン r=0.37、p=0.046)。
【0046】
乳汁中のアディポネクチンの濃度は血清中よりもはるかに低い。新生児において、血清アディポネクチン濃度は20〜60ug/mLの範囲で変動すると報告されているが[48、49]、本発明者らは乳汁アディポネクチン濃度が4.2〜87.9ng/mLの範囲で変動することを見出した。しかしながら、乳汁アディポネクチン濃度は、腸間膜の脂肪組織から発現されたアディポネクチンmRNAの濃度と整合性があり[50]、恐らくは局所効果が示唆されている。
【0047】
レプチンは、人乳中で測定された他の唯一のアディポカインである[47、51−53]。本研究のRHMB臨時サンプルでは、乳汁のレプチン濃度はアディポネクチンよりも40倍低かった。本研究で測定された乳汁中のレプチン濃度は、他の研究におけるレプチンに関する報告[20、47、51]よりわずかに低かった。濃度が低いのは、本研究で検査された泌乳期間が広範囲であることによる。
【0048】
アディポネクチンは泌乳期間を通して減少する
RHMB臨時サンプル(n=30)では、授乳月はln(乳汁アディポネクチン)と負に相関し、β=−0.059±0.024、p=0.02であった。これらの結果はRHMB長期サンプルにおいて確認され、同サンプルでも授乳月がln(乳汁アディポネクチン)と負に相関した(β=−0.059±0.007、p<0.0001)(図2)。これらの結果に基づき、乳汁アディポネクチンは、授乳1週と比較して、授乳7ヶ月までに6.9ng/mL低くなると予測される。
【0049】
乳汁アディポネクチン濃度は泌乳期間全体を通して減少する。これは、泌乳期間全体を通して多くの乳汁タンパク質が減少することを実証する過去の研究[15−17]と一致している。本発明者らはさらに、アディポネクチン濃度に対する民族性の影響を検討した。メキシコ系ヒスパニックの母親は、授乳1ヶ月において、非ヒスパニックの白人の提供者より乳汁アディポネクチン濃度が著しく低かった。非ヒスパニックの白人およびヒスパニックの乳汁サンプルは、同じ試験計画書を使用して、同じ泌乳期間にわたって収集され、また同じ人物によってアッセイされることによって、サンプリング上およびアッセイ上
の誤差を最小限にしているので、上記の違いは生理的な根拠を有する可能性が最も高い。さらに、乳汁中のアディポネクチン濃度の人種差は、血清中のアディポネクチン濃度に類似している。いくつかの研究から、白人は、アジア人[54、55]、アメリカインディアン[29]、およびアフリカ系アメリカ人[56]より高い血清中アディポネクチン濃度を有していることが実証されている。非ヒスパニックの白人とヒスパニックとの間の血清中アディポネクチン濃度は直接比較されていないが、メキシコの集団は元来アメリカインディアン集団と白人集団との組み合わせであると考えられる[57]。したがって、メキシコ人の乳汁中のアディポネクチン濃度がより低いことが見出されると予想される。
【0050】
人乳アディポネクチンは妊娠後の母親の体重に関係している
RHMB長期コホートにおいて横断的には、妊娠後の母親のBMIは、ほとんどの時点においてln(乳汁アディポネクチン)濃度と有意に正の相関を有していた(表3)。統計学的に有意ではなかった時でも、その関係の程度は、授乳1〜7ヶ月において比較的一貫していた(β(範囲)=0.08〜0.13、p(範囲)=0.01〜0.16)。
【0051】
【表3】

【0052】
縦断的解析(図4)では、母親の妊娠後のBMIはln(乳汁アディポネクチン)と有意に相関していた(β=0.10±0.02、p<0.0001)。50ng/mLを越える外れ値の乳汁アディポネクチン濃度を除外(2個体由来の14個の縦断的数値を除外)した場合も、この関係は依然として高度に有意なままであった(β=0.08±0.02、p<0.0001)。
【0053】
脂肪過多がアディポネクチンと負に相関する血清中濃度[58]とは対照的に、乳汁中アディポネクチン濃度と母親の脂肪過多との間では正の相関が見出された。この発見について可能な1つの説明は、アディポネクチン、プロラクチンおよび脂肪過多の関係である。アディポネクチンは、授乳中の女性における乳腺発達の主要な決定因子であるプロラクチンによって、負に調節される[59、60]。プロラクチン分泌は肥満症においては低下する[61、62]。したがって、体重の重い母親においてはプロラクチンによる負の調節が低減されて、乳房組織で局所的に産生されるアディポネクチンの濃度と人乳中へのアディポネクチンの分泌に正方向の影響を及ぼす可能性がある。
【0054】
過去の研究から、一つには人乳の組成がタンパク質の保護環境を形成することにより[63]、また一つには乳幼児の胃の酸性度が低く[64]胃でのタンパク質分解が限定的であること[65]により、乳成分は胃の中では分解されない場合が多いことが実証されている。実際、経口インスリンは分解されず、よって腸管の成熟を刺激することができる
[63、66、67]。アディポネクチンはインスリン感受性を増大させることが実証されている[68、69]ので、乳幼児の腸管におけるインスリンの活動も増大させる可能性がある。過去の研究からアディポネクチン受容体1が胎児の小腸で発現されることが実証されている[70]ので、アディポネクチンは乳幼児の腸管に対しても直接的作用を有する可能性がある。
【0055】
人乳中のアディポネクチンは乳児の体重に関係している
上述のようなCBC由来の22セットの縦断的サンプルを使用して、人乳中のアディポネクチンと乳児の体重との縦断的関係を調査した。データと反復測定の相関構造を明らかにした後では、乳汁中のアディポネクチン濃度は、乳児の年齢および年齢に合わせて調節して、28週までの乳児において体重増加と負に相関する(β±SE:−0.20±0.12kg、p=0.082)。この関係は統計学的に有意ではないが、我々の小規模なサンプルサイズではこの結果を検出するための検出力がなかった。この関係を図5に示すが、図5では、年齢に合わせて調整された乳児の体重の残差に対して乳汁アディポネクチンの自然対数がプロットされている。人乳アディポネクチンと乳児の発育との関係をさらに検討するために、産後1ヶ月で集められた36サンプルを、306組のメキシコの母体・乳児ペアのコホートから無作為に選択した。メキシコの母親と米国の母親との間の全体的な乳汁アディポネクチンレベルの差にもかかわらず、1ヶ月の乳汁アディポネクチンの自然対数と、産後1ヶ月および4ヶ月の乳児の脂肪過多との関係は、メキシコのコホートとシンシナティのコホートにおいて程度が類似している(表4)。
【0056】
【表4】

【0057】
完全なデータを備えた11組の母体・乳児ペアにおける乳汁アディポネクチン曝露計量の解析から、乳児は産後24週までに123.2〜220.5ng/mlの範囲で乳汁アディポネクチンに累積的に曝露されていることが明らかとなった。この曝露計量(臨床上より意味のある解釈のために25で割ったもの)は、出生から24週の間における乳児の発育速度(体重増加)と負の関係にあった(発育速度/24週[kg]=5.76−0.28[APN曝露]、p=0.06、図6)。
【0058】
したがって、本発明者らのデータは、人乳中のアディポネクチンが、年齢と無関係に、人生の最初の6ヶ月間に母乳で育てられた乳児の間で低い体重に関係していることを示唆している。これらの知見は、母乳で育った乳児がなぜ調製乳で育った乳児よりも一般にやせ型であるかについての、考えられる興味深い説明を提供している。
【0059】
マウス乳児における血清アディポネクチンレベルはマウス乳汁中のアディポネクチンレベルと相関する
マウス乳汁中の自然なアディポネクチンレベルを泌乳期間にわたって測定した。アディポネクチンレベルは泌乳期間の早期に最も高く、泌乳期間の後期に最も低いことが分かった(図7)。乳汁中のアディポネクチンが血清中へ吸収されるのであれば、乳児の血清中レベルは消費された乳汁中のアディポネクチンレベルの差によって影響を受けるはずである。乳児の血清をアディポネクチンレベルについて分析し、血清アディポネクチンが泌乳期間の最初の数日に最も高く泌乳期間の後期に最も低いことが分かった(図8)。これらのデータは、乳汁アディポネクチンが哺乳動物の乳児における血清アディポネクチンの供給源であることと一致している。
【0060】
経口投与されたアディポネクチンは血清中に吸収されうる
アディポネクチンが腸粘膜を横切り、若い哺乳動物の血清中に吸収される能力を測定するために、機能的な組換えヒトアディポネクチン(哺乳動物細胞において発現)を仔マウスの胃に経口投与した。対照として生理食塩水を投与した。ヒトアディポネクチンに特異的なELISAアッセイを使用して、管腔液、腸管および血清中のヒトアディポネクチンを計測した。図9に示されるように、ヒトアディポネクチンを経口投与されたマウスの腸管の管腔液は、投与されたヒトアディポネクチンの量に比例したヒトアディポネクチンレベルを含んでいた。図9に示されるように、最も高量のヒトアディポネクチンを投与されたマウスは腸管内腔中に最も高レベルのヒトアディポネクチンを有し、生理食塩水のみを投与されたものは腸管内腔にヒトアディポネクチンを全く有していなかった。したがって、経口投与の結果無傷のアディポネクチンがうまく腸の中に達した。ヒトアディポネクチンは腸の組織内に輸送され、この場合も最も高量のアディポネクチンを投与されたマウスにおいて腸組織で最も高レベルとなった。さらに、腸内に投与されたヒトアディポネクチンは、血清中に吸収された。図9に示されるように、最も高量のヒトアディポネクチンを投与されたマウスは、最も高い血清中アディポネクチンレベルを示した。したがって、ヒトアディポネクチンは若い哺乳動物において腸から血清中へ吸収可能であり、吸収されたアディポネクチンは、アディポネクチンの乳汁中レベルと乳児における生理学的結果との関係に関与している可能性が考えられる。
【0061】
アディポネクチン含有組成物
アディポネクチンは、薬学的に許容可能な担体、例えばリン酸緩衝生理食塩水、水中エタノール混合物、水、および油/水乳濁液もしくは水/油乳濁液のような乳濁液、ならびに様々な湿潤剤もしくは賦形剤を含んでいる組成物に含めて投与することができる。アディポネクチンは、患者に投与された時に副作用、アレルギー反応またはその他望ましくない反応を生じない材料と組み合わせることができる。使用される担体または媒体は、溶剤、分散剤、コーティング剤、吸収促進剤、制御放出剤、および1以上の不活性の賦形剤(デンプン、多価アルコール、造粒剤、微結晶セルロース、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などがある)、などを含むことができる。望ましい場合には、開示の組成物の錠剤投与量に標準的な水性または非水性の技術でコーティングを施してもよい。
【0062】
アディポネクチンは、例えば、錠剤、ペレット剤、ゲル剤、ペースト剤、シロップ剤、ボーラス剤、舐剤、スラリー、カプセル、散剤、顆粒剤として、水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁物として;水中油乳濁液もしくは油中水乳濁液、またはその他何らかの形態として、経口投与することができる。経口投与される組成物は、結合剤、滑沢剤、不活性の希釈剤、潤滑性の界面活性剤もしくは分散剤、香料、ならびに湿潤剤を含むことができる。錠剤のような経口投与製剤は、任意選択でコーティングされても分割錠とされてもよいし、製剤中の有効成分を持続放出、遅延放出もしくは制御放出するように製剤化されてもよい。アディポネクチンはまた、肛門坐剤、エアロゾル管、経鼻胃管、GI管もしくは胃の中への直接注入により、あるいは非経口的に、投与することもできる。
【0063】
アディポネクチンを含有する医薬組成物は、さらに抗ウイルス剤、抗生物質、プロバイ
オティクス、鎮痛剤および抗炎症剤のような治療薬も含むことができる。
適切な投与量は当業者によって決定され、例えば、患者の免疫状態、体重および年齢のような要因によって変化する。ある場合には、投与量は、ヒトの母乳中に存在するアディポネクチンについて見出される濃度と同じような濃度になるだろう。
【0064】
アディポネクチンを他の組成物に添加することもできる。例えば、アディポネクチンを乳児用調製乳または栄養組成物または母乳強化剤(例えばEnfamilTMのような人乳強化剤)に添加することができる。
【0065】
アディポネクチンは、食用脂、炭水化物およびタンパク質のような多量栄養素を含む組成物中に含めることができる。食用脂には例えば、やし油、大豆油、ならびにモノグリセリドおよびジグリセリドが挙げられる。炭水化物には例えば、グルコース、食用のラクトースおよび加水分解されたコーンスターチが挙げられる。タンパク質源に含まれるのは例えば、タンパク質源となりうるのは例えば、大豆タンパク質、乳清およびスキムミルクである。
【0066】
オリゴ糖剤を含有する、栄養組成物などの組成物はさらに、ビタミンおよびミネラル(例えばカルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、クロリド、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素、およびビタミンA、E、D、CおよびビタミンB複合体)を含むことができる。
【0067】
本発明の多くの実施形態について説明してきた。しかしながら、本発明の思想および範囲から逸脱することなく様々な改変がなされうることが理解されるであろう。従って、他の実施形態は特許請求の範囲の範囲内にある。

参考文献
1. Gartner, L. M., et al, Breastfeeding and the use of human milk. Pediatrics, 2005. 115(2): p. 496-506.
2. Walker, W. A., The dynamic effects of breastfeeding on intestinal development
and host defense. Adv Exp Med Biol, 2004. 554: p. 155-70.
3. Newburg, D. S., Innate immunity and human milk. J Nutr, 2005. 135(5): p. 1308-12.
4. Heird, W.C. and A. Lapillonne, The role of essential fatty acids in development. Annu Rev Nutr, 2005. 25: p. 549-71.
5. Jensen, CL. , et al., Effects of maternal docosahexaenoic acid intake on visual function and neurodevelopment in breastfed term infants. Am J Clin Nutr, 2005. 82(1): p. 125-32.
6. Khedr, E.M., et al., Neural maturation of breastfed and formula-fed infants. Acta Paediatr, 2004. 93(6): p. 734-8.
7. Scherer, P.E., et al, A novel serum protein similar to CIq, produced exclusively in adipocytes. J Biol Chem, 1995. 270(45): p. 26746-9.
8. Nakano, Y., et al., Isolation and characterization of GBP28, a novel gelatin-binding protein purified from human plasma. 1996. 120(4): p. 803-12.
9. Hu, E., P. Liang, and B. M. Spiegelman, AdipoQ is a novel adipose- specific gene dysregulated in obesity. The Journal of Biological Chemistry, 1996. 271(18):
p. 10697-703.
10. Maeda, K., et al., cDNA cloning and expression of a novel adipose specific collagen-like factor, apMl (AdiPose Most abundant Gene transcript 1). Biochem Biophys Res Commun, 1996. 221(2): p. 286-9.
11. Wulster-Radcliffe, M. C, et al., Adiponectin differentially regulates cytoki
nes in porcine macrophages. Biochem Biophys Res Commun, 2004. 316(3): p. 924-9.
12. Kumada, M., et al., Association of hypoadiponectinemia with coronary artery disease in men. Arterioscler Thromb Vase Biol, 2003. 23(1): p. 85-9.
13. Combs, T.P., et al., Endogenous glucose production is inhibited by the adipose-derived protein Acrp30., in The Journal of Clinical Investigation. 2001 : placecountry-regionUnited States, p. 1875-81.
14. Yamauchi, T., et al., Adiponectin stimulates glucose utilization and fatty-acid oxidation by activating AMP-activated protein kinase., in Nature Medicine. 2002: placecountry-regionUnited States, p. 1288-95.
15. Tregoat, V., et al., Changes in the mannan binding lectin (MBL) concentration in human milk during lactation. J Clin Lab Anal, 2002. 16(6): p. 304-7.
16. Takahata, Y., et al., Detection of interferon-gamma-inducible chemokines in human milk. Acta Paediatr, 2003. 92(6): p. 659-65.
17. Itoh, H., et al., Hepatocyte growth factor in human breast milk acts as a trophic factor. Horm Metab Res, 2002. 34(1): p. 16-20.
18. Chowanadisai, W., et al., Detection of a single nucleotide polymorphism in the human alpha-lactalbumin gene: implications for human milk proteins. J Nutr Biochem, 2005. 16(5): p. 272-8.
19. Guerra, S., et al., The differential effect of genetic variation on soluble CD14 levels in human plasma and milk. Am J Reprod Immunol, 2004. 52(3): p. 204- 11.
20. Uysal, F.K., et al., Breast milk leptin: its relationship to maternal and infant adiposity. Clin Nutr, 2002. 21(2): p. 157-60.
21. Hotta, K., et al., Plasma concentrations of a novel, adipose-specific protein, adiponectin, in type 2 diabetic patients., in Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology (Online). 2000: UNITED STATES, p. 1595-9.
22. Weyer, C, et al., Hypoadiponectinemia in obesity and Type 2 diabetes: Close association with insulin resistance and hyperinsulinemia, in Endocrinology and Metabolism. 2001. p. 1930-1935.
23. Cruz, M.L., et al., The metabolic syndrome in overweight Hispanic youth and the role of insulin sensitivity., in The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 2004: placecountry-regionUn ited States, p. 108-13.
24. Stefan, N., et al., Plasma adiponectin concentration is associated with skeletal muscle insulin receptor tyrosine phosphorylation, and low plasma concentration precedes a decrease in whole-body insulin sensitivity in humans., in Diabetes. 2002: placecountry-regionUnited States, p. 1884-8.
25. Yamamoto, Y., et al., Adiponectin, an adipocyte-derived protein, predicts future insulin resistance: two-year follow-up study in Japanese population., in The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 2004: placecountry-regionUnited States, p. 87- 90.
26. Hanley, A.J., et al., Adiponectin in a native Canadian population experiencing rapid epidemiological transition., in Diabetes Care. 2003: placecountry-regionUnited States. p. 3219-25.
27. Fumeron, F., et al., Adiponectin gene polymorphisms and adiponectin levels are independently associated with the development of hyperglycemia during a 3-year period: the epidemiologic data on the insulin resistance syndrome prospective study., in Diabetes. 2004: placecountry-regionUnited States, p. 1150-7.
28. Spranger, J., et al., Adiponectin and protection against type 2 diabetes mellitus., in Lancet. 2003: placecountry-regionEngland, p. 226-8.
29. Lindsay, R.S., et al, Adiponectin and development of type 2 diabetes in the
Pima Indian population. Lancet, 2002. 360(9326): p. 57-8.
30. Daimon, M., et al., Decreased serum levels of adiponectin are a risk factor for the progression to type 2 diabetes in the Japanese Population: the Funagata study., in Diabetes Care. 2003: placecountry-regionUnited States, p. 2015-20.
31. Snehalatha, C, et al., Plasma adiponectin is an independent predictor of type 2 diabetes in Asian indians., in Diabetes Care. 2003: placecountry-regionUnited States, p. 3226-9.
32. Choi, K.M., et al., Serum adiponectin concentrations predict the developments of type 2 diabetes and the metabolic syndrome in elderly Koreans. Clin Endocrinol (Oxf), 2004. 61(1): p. 75-80.
33. Kubota, N., et al., Disruption of Adiponectin Causes Insulin Resistance and Neointimal Formation., in Journal of Biological Chemistry. 2002.
34. Berg, A.H., T.P. Combs, and P.E. Scherer, ACRP30/adiponectin: an adipokine regulating glucose and lipid metabolism. Trends Endocrinol Metab, 2002. 13(2): p.
84-9.
35. Fruebis, J., et al., Proteolytic cleavage product of 30-kDa adipocyte complement-related protein increases fatty acid oxidation in muscle and causes weight loss in mice, in PNAS. 2001. p. 2005-2010.
36. Ouchi, N., et al., Adiponectin, an adipocyte-derived plasma protein, inhibits endothelial NF-kappaB signaling through a cAMP-dependent pathway. Circulation,
2000. 102(11): p. 1296-301.
37. Yokota, T., et al., Adiponectin, a fat cell product, influences the earliest
lymphocyte precursors in bone marrow cultures by activation of the cyclooxygenase-prostaglandin pathway in stromal cells. J Immunol, 2003. 171(10): p. 5091-9.
38. Chinetti, G., et al., Expression of adiponectin receptors in human macrophages and regulation by agonists of the nuclear receptors PPARalpha, PPARgamma, and
LXR. Biochem Biophys Res Commun, 2004. 314(1): p. 151-8.
39. Kobayashi, H., et al., Selective suppression of endothelial cell apoptosis by the high molecular weight form of adiponectin. Circ Res, 2004. 94(4): p. e27-31.
40. Bobbert, T., et al., Changes of adiponectin oligomer composition by moderate
weight reduction. Diabetes, 2005. 54(9): p. 2712-9.
41. Pajvani, U.B., et al., Structure-function studies of the adipocyte- secreted
hormone Acrp30/adiponectin. Implications fpr metabolic regulation and bioactivity. J Biol Chem, 2003. 278(11): p. 9073-85.
42. Fisher, F.F., et al., Serum high molecular weight complex of adiponectin correlates better with glucose tolerance than total serum adiponectin in Indo-Asian
males. Diabetologia, 2005. 48(6): p. 1084-7.
43. Pajvani, U.B., et al., Complex distribution, not absolute amount of adiponectin, correlates with thiazolidinedione-mediated improvement in insulin sensitivity. J Biol Chem, 2004. 279(13): p. 12152-62.
44. Tsao, T. S., et al., Oligomerization state-dependent activation of NF-kB signaling pathway by Acrp30. J Biol Chem, 2002.
45. Wang, Y., et al., Hydroxylation and glycosylation of the four conserved lysine residues in the collagenous domain of adiponectin. Potential role in the modulation of its insulin-sensitizing activity. J Biol Chem, 2002. 277(22): p. 19521-9.
46. Geraghty, S.R., et al., The development of a research human milk bank. J Hum
Lact, 2005. 21(1): p. 59-66.
47. Houseknecht, K.L., et al., Leptin is present in human milk and is related to
maternal plasma leptin concentration and adiposity. Biochem Biophys Res Commun,
1997. 240(3): p. 742-7.
48. Sivan, E., et al., Adiponectin in human cord blood: relation to fetal birth weight and gender. J Clin Endocrinol Metab, 2003. 88(12): p. 5656-60.
49. Lindsay, R.S., et al, Adiponectin is present in cord blood but is unrelated to birth weight. Diabetes Care, 2003. 26(8): p. 2244-9.
50. Yamamoto, K., et al., Production of adiponectin, an anti-inflammatory protein, in mesenteric adipose tissue in Crohn's disease. Gut, 2005. 54(6): p. 789-96.51. Casabiell, X., et al., Presence of leptin in colostrum and/or breast milk from lactating mothers: a potential role in the regulation of neonatal food intake. J Clin Endocrinol Metab, 1997. 82(12): p. 4270-3.
52. LyIe, R.E., et al., Human milk contains detectable levels of immunoreactive leptin. Adv Exp Med Biol, 2001. 501 : p. 87-92.
53. Smith-Kirwin, S. M., et al., Leptin expression in human mammary epithelial cells and breast milk. J Clin Endocrinol Metab, 1998. 83(5): p. 1810-3.
54. Abate, N., et al., Adipose tissue metabolites and insulin resistance in nondiabetic Asian Indian men. J Clin Endocrinol Metab, 2004. 89(6): p. 2750-5.
55. Raji, A., et al., Insulin resistance and vascular dysfunction in nondiabetic
Asian Indians. J Clin Endocrinol Metab, 2004. 89(8): p. 3965-72.
56. Bacha, F., et al., Does adiponectin explain the lower insulin sensitivity and hyperinsulinemia of African- American children? Pediatr Diabetes, 2005. 6(2): p.100-2.
57. Gorodezky, C, Genetic difference between Europeans and Indians: tissue and blood types. Allergy Proc, 1992. 13(5): p. 243-50.
58. Arita, Y., et al., Paradoxical decrease of an adipose-specific protein, adiponectin, in obesity. Biochem Biophys Res Commun, 1999. 257(1): p. 79-83.
59. Nilsson, L., et al., Prolactin and growth hormone regulate adiponectin secretion and receptor expression in adipose tissue, in Biochem Biophys Res Commun. 2005. p. 1120-6.
60. Combs, T. P., et al., Sexual differentiation, pregnancy, calorie restriction, and aging affect the adipocyte-specific secretory protein adiponectin., in Diabetes. 2003: United States, p. 268-76.
61. Kopelman, P. G., Physiopathology of prolactin secretion in obesity, in Int J
Obes Relat Metab Disord. 2000. p. S104-8.
62. Kumar, A., et al., Reproductive functions in obese women, in Prog Food Nutr Sci. 1993. p. 89-98.
63. Lonnerdal, B., Nutritional and physiologic significance of human milk proteins. Am J Clin Nutr, 2003. 77(6): p. 1537S-1543S.
64. Henderson, T. R., et al., Gastric proteolysis in preterm infants fed mother's milk or formula. Adv Exp Med Biol, 2001. 501 : p. 403-8. 65. Hamosh, M., Digestion in the newborn. Clin Perinatol, 1996. 23(2): p.191-209.
66. Shehadeh, N., et al., Insulin in human milk: postpartum changes and effect of gestational age. Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed, 2003. 88(3): p. F214-6.
67. Shulman, R.J., Oral insulin increases small intestinal mass and disaccharidase activity in the newborn miniature pig. Pediatr Res, 1990. 28(2): p. 171- 5.
68. Yamauchi, T., et al., The fat-derived hormone adiponectin reverses insulin resistance associated with both lipoatrophy and obesity. Nat Med, 2001. 7(8): p. 941-6.
69. Berg, A.H., et al., The adipocyte-secreted protein Acrp30 enhances hepatic insulin action. Nat Med, 2001. 7(8): p. 947-53.
70. Zhou, Y., et al., Expression profiles of adiponectin receptors in mouse embryos. Gene Expr Patterns, 2005. 5(5): p. 711-5.
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】RHMB臨時コホートからの30件の横断的乳汁サンプルにおける、乳汁のアディポネクチンおよびレプチンの濃度の比較、ならびに(挿入図として)乳汁レプチン分布の詳細を示すグラフ。四分位範囲はボックスで規定され;メジアンは水平線で表わされている。ヒゲは分布の第95百分位数および第5百分位数を表わす。メジアン間の差は、ウィルコクソン符号付順位検定によりp<0.0001である。
【図2】乳汁アディポネクチンと泌乳期間との関係を示すグラフ。実線は、授乳月およびln(乳汁アディポネクチン)の反復測定解析から測定された、予測される回帰直線、β±SE:−0.059±0.007である。乳汁アディポネクチン濃度が45〜60ng/mLである2個体からの合計3つのデータポイントは示されていない。
【図3】乳汁アディポネクチンと民族性との関係を示すグラフ。乳汁サンプルは、37名のメキシコ人女性およびシンシナティ地域の女性のうち19名の非ヒスパニック系白人の、泌乳期およそ1ヶ月のものである。四分位範囲はボックスで規定され;メジアンは水平線で表わされている。ヒゲは分布の第95百分位数および第5百分位数を表わす。メジアン間の差は、ウィルコクソン符号付順位検定によりp=0.003である。
【図4】乳汁アディポネクチン濃度と母親のBMIとの関係を示すグラフ。実線は、母親のBMIおよびln(乳汁アディポネクチン)の反復測定解析から測定された、予測される回帰直線であり、50ng/mLを超える乳汁アディポネクチン濃度の2人の女性(n=14、長期サンプル)は除かれている(β±SE:0.08±0.02)。点線は、これらの外れ値を含めて予測される回帰直線である(β±SE:0.10±0.02)。乳汁アディポネクチン濃度が45〜60ng/mLである2個体からの合計3つのデータポイントは示されていない。
【図5】乳汁アディポネクチン濃度と乳児の体重との関係を示すグラフ。
【図6】アディポネクチン曝露量と乳児の発育速度との関係を示すグラフ。
【図7】数日間にわたるマウス乳汁中のアディポネクチンレベルを示すグラフ。
【図8】数日間にわたる乳児マウスの血清アディポネクチンレベルを示すグラフ。
【図9】ヒトアディポネクチンを経口投与されたマウスの管腔液、腸管および血清中のヒトアディポネクチンレベルを示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントを含有する組成物を経口投与することを含む、患者において肥満症を治療またはリスク低減する方法。
【請求項2】
精製アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントを含有する組成物を経口投与することを含む、患者においてメタボリック症候群を治療またはリスク低減する方法。
【請求項3】
精製アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントを含有する組成物を経口投与することを含む、患者において炎症性腸疾患、高血糖症、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性を伴うメタボリック症候群、2型糖尿病、メタボリック症候群であって高血圧、アテローム性動脈硬化、冠性心疾患または虚血性心疾患を伴うもの、から選択される病気を治療またはリスク低減する方法。
【請求項4】
精製アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントを含有する組成物を経口投与することを含む、乳幼児において壊死性小腸大腸炎を治療またはリスク低減する方法。
【請求項5】
患者は18歳未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
患者は15歳未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
患者は10歳未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
患者は1歳未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
乳幼児は早産で生まれたことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントはグリコシル化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントはヒドロキシル化およびグリコシル化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アディポネクチンの少なくとも1つのアミノ酸はグルコシルガラクトシル残基で置換されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントは、配列番号1のリシン残基65、68、77および101のうち1つ以上がグリコシル化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
精製アディポネクチンまたはその生物学的活性を有するフラグメントは、人乳中に見出される形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
組成物はラクトースを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
組成物は人乳中に見出されるオリゴ糖を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
組成物は少なくとも1つのα1,2−連結型フコシル化オリゴ糖を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組成物は、ラクト−N−フコペンタオースI[LNF−I]、2−フコシルラクトース[2’−FL]、ラクト−N−ジフコヘキサオースI[LDFH−I]、ラクトジフコテトラオース[LDFT]、ラクト−N−フコペンタオースII[LNF−II]、3−フコシルラクトース[3−FL]、ラクト−N−フコペンタオースIII[LNF−III]、ラクト−N−テトラオース[LNT]、およびラクト−N−ネオテトラオース[LNneoT]から選択される少なくとも1つのオリゴ糖を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
精製アディポネクチンは、ラクト−N−フコペンタオースI;ラクト−N−フコペンタオースII;3’−フコシルラクトース;ラクト−N−フコペンタオースII;ラクト−N−ジフコヘキサオースI;ラクトジフコテトラオース;ラクトN−テトラオース;ラクトN−ネオテトラオース;3’−シアリルラクトース;3’−シアリルラクトサミン;6’−シアリルラクトース;6’−シアリルラクトサミン;シアリルラクト−N−ネオテトラオースc;モノシアリルラクト−N−ヘキサオース;ジシアリルラクト−N−ヘキサオースI;モノシアリルラクト−N−ネオヘキサオースI;モノシアリルラクト−N−ネオヘキサオースII;ジシアリルラクト−N−ネオヘキサオース;ジシアリルラクト−N−テトラオース;ジシアリルラクト−N−ヘキサオースII;シアリルラクト−N−テトラオースa;ジシアリルラクト−N−ヘキサオースI;シアリルラクト−N−テトラオースb;3’−シアリル−3−フコシルラクトース;ジシアロモノフコシルラクト−N−ネオヘキサオース;モノフコシルモノシアリルラクト−N−オクタオース(シアリルLea);シアリルラクト−N−フコヘキサオースII;ジシアリルラクト−N−フコペンタオースII;およびモノフコシルジシアリルラクト−N−テトラオース、から選択される1または複数の基を含むように修飾されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
精製アディポネクチンは、グルコシルガラクトシル部分、グルコシルグルコシル部分、ガラクトシルグルコシル部分、またはガラクトシルガラクトシル部分から選択される少なくとも1つの部分を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
アディポネクチンは、10μg/ml〜100μg/mlの血漿中アディポネクチン濃度を達成するように投与される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
アディポネクチンは、10μg/ml〜75μg/mlの血漿中アディポネクチン濃度を達成するように投与される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
アディポネクチンは、20μg/ml〜60μg/mlの血漿中アディポネクチン濃度を達成するように投与される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
アディポネクチンは、1μg/ml〜100μg/mlの血漿中アディポネクチン濃度を達成するように投与される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
アディポネクチンは、成熟型アディポネクチンのサブユニットを少なくとも2つ有するオリゴマーの形態である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
アディポネクチンは三量体の形態である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
アディポネクチンは六量体の形態である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
アディポネクチンは少なくとも6個のサブユニットを有するオリゴマーの形態である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
アディポネクチンは少なくとも12個のサブユニットを有するオリゴマーの形態である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
精製アディポネクチンを含有する栄養補助剤。
【請求項31】
精製アディポネクチンを含有する乳児用調製乳。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2009−523173(P2009−523173A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550478(P2008−550478)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/060270
【国際公開番号】WO2007/087468
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(500469235)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (40)
【Fターム(参考)】