説明

標的とする組織及び細胞の治療に有用なナノ粒子を含む薬剤組成物及び診断のための組成物

【課題】 化学的変更又は医薬品の共役の必要性がなく、治療剤の高い取り込み能力を有する、目的化された細胞(例えば、ガン細胞)の内在化の促進と共に、腫瘍を含む目的化された組織に対する治療活性剤の投与の効率性を改善する投与手段の必要性がある。
【解決手段】脂質の選択グループから生成されかつ随意的に治療に有効な物質を含むナノ粒子が薬剤組成物においてガンのような病気の治療もしくは診断で目標とする組織及び/または細胞へ搬送されるために採用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、治療及び診断目的のための標的とする組織及び細胞の治療に有用な薬剤組成及びその調製方法に関する。より詳細には、改良されたガン細胞を標的とする能力を有する、ガスを含まないナノメートルサイズの粒子及び、同様のものを含む組成物であり、随意に少なくとも1つの治療に有効なつまり治療に役立つ物質を伴う。
【背景技術】
【0002】
健康な組織及び細胞への損傷を避けると同時に、治療に有効な物質を病変組織及び細胞に搬送する能力すなわち、他の組織、細胞と区別して1つの組織タイプあるいは細胞タイプを薬理学的に選択する薬剤の識別は、医師が患者を治療する上で、困難かつ長年にわたる問題である。
このことは、特にガンに当てはまる。
【0003】
ガンは、異常細胞の急速かつ永久に続く分裂と、腫瘍を形成する集合細胞の成長の結果だと考えられる。悪性細胞は、原発腫瘍の塊から広がり、二次性全身腫瘍組織を形成するために体内の他の部分に留まる。
ガン細胞と健康な細胞の間の相違は微妙であり、伝統的に大部分のガン治療剤は、急速かつ広範囲な細胞分裂率特性又はガンに基づく腫瘍細胞を破壊することを追求してきた。
【0004】
標的細胞に関する分裂の例はDNA挿入又は物質の切断、複製、転写及び圧出又は、修復又はポリメラーゼ酵素活性抑制薬及び、マイクロスピンドル重合弊害である。
そのような薬剤は、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗物質、DNA挿入剤、トポイメラーゼ、抑制剤、タキサン、ビンカアルカロイド、細胞毒素、ホルモン、ポドフィロキシン派生物、ヒドラジン派生物、トリアジン派生物、放射性物質、レチノイド及びヌクレオシド類似物(特定の治療剤、例えば、パクリタクセル、カンプトセシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、窒素マスタード、シスプラチナム、5−フルオロウラシル及びこれらの類似物を含む)を含むがこれに限定されない。
しかしながら、骨髄及び内臓の上皮裏のような健康な組織は、急速な分割細胞集団及び典型的に健康及び異常な細胞を分類することができない化学治療剤が蓄積される。
結果として、投与量の制限とともに、化学ガン療法の特徴である命に関わる副作用が発生する。パクリタクセルのような水溶性に乏しい薬剤のために、クレマファーのような乳化剤の使用が提案されている。
【0005】
ガン細胞のためのより選択的な化学療法を編み出すための1つのアプローチは、近年発見された、ガン細胞と健康な細胞の間の生化学及び新陳代謝の相違に基づく医薬品の開発である。
この相違には、例えばレセプター、信号伝遠路及びガン遺伝子、及び成長と相違を制御し、又はアポトーシスを調節する遺伝子調整剤がある。
他の例は、腫瘍細胞が代謝時に行う特定のアミノ酸要求である。急性リンパ性白血病細胞は、例えばアミノ酸アスパラギンの外部源に依存する。酵素アスパラギンは、病気の治療のためにアスパラギンの循環レベルを低下させるために利用される。
チロシン・キナーゼ抑制剤のような医薬品のより新しい分類が研究され、有望な結果が得られている。チロシン・キナーゼ活動は、特定の腫瘍タイプにおいて促進することもできる表皮性の成長因子のようなレセプターに関連する。
やっかいな副作用、薬剤耐性出現と同様に毒性のために投与量の制限等の問題は、これらのよりガン細胞選択性の高い薬剤においても存続し、残っている問題である。
【0006】
ガン細胞と健康な細胞の更なる相違点は、細胞の表面抗原の発現において観察される。単クローン性の抗体及びその断片は、抗原に対する抗体の直接の結合、又はラジオアイソトープ又は抗体本体に結合する化学治療物質の投与のどちらかによるガンを特定する診断と治療のために広範囲に渡って研究されている。
典型的に単クローン性の抗体は、限られた数のガンのタイプで明らかとなっているだけで、まだパンカーシノマ(Pancarcinoma)は識別されていない。これまでの化学治療剤による細胞分裂は、薬剤と単一クローン抗体、又はその断片に導かれたより新しい形質導入、腫瘍の塊へ完全に浸透すること、及び最良の結果を達成するために腫瘍細胞に十分に蓄積することが失敗することもある(すなわち、有効な物質が十分に腫瘍細胞に内在化されない)。そのような失敗は、電荷、サイズ、溶解性、親水性、疎水性及び他の要因などの薬剤の物理的特性又は化学的特性から通常予測される。治癒率は、多くのソリッド型腫瘍においては依然として比較的低く、平均余命の小幅な改善でさえ、よく効いたとされる。
【0007】
化学的治療物質の腫瘍の塊への蓄積が、化学的治療物質の分子量の増加により促進することができると報告されている。リンパ排液の欠如、及び漏れのような脈管構造に関連する腫瘍の他の特性が、この現象において役割を果たすと信じられている。
分子量の増大は、脂質のアシル化、ポリエチレングリコール、ポリグルタミン酸、デキストラン等のポリマーを不活発にするための接合、薬剤のリポソーム又はいくつもの大きさのナノ粒子及び組成のカプセル化により達成することができる。
1ミクロン以下のサイズの粒子は、漏れ易い腫瘍の脈管構造を通り抜け、腫瘍の塊の細胞外液スペースに蓄積すると信じられている。ポリマー接合又はカプセル化は、水溶性の溶解度を改善し、健康な組織への結合及び蓄積を行う血漿タンパク質を減少するために利用することもできる。
【0008】
ドキソルビシンのようなリポソームがカプセルに包まれた医薬品は、目下、カボシ肉腫及び卵巣ガンに関連するAIDSの治療のために臨床応用がなされている。ポリエチレングリコール、又はパクリタクセルが結合したポリグルタミン酸やカンプトセシンが結合したポリエチレングリコールは、現在人体での臨床実験が行われている。
【0009】
通常、リポソーム又はナノ粒子のカプセル化及び共役ポリマーは、腫瘍の塊において医薬品の蓄積量が蓄積している間は、実質的に腫瘍細胞への医薬品の摂取又は内在化を遅くする又は妨げることもある。
医薬品は、分解性のリポソーム又はナノ粒子から分離して拡散する。共役ポリマーには、プロドラッグ・ストラテジーが採用される。これら形成物による血漿クリアランスの減少率が報告され、腫瘍の塊への蓄積の増加が示唆される。
プロドラッグ・ストラテジーにおいて、複合体が血液中を循環することから、活性のある薬物が担体から放出される。
【0010】
選択的な腫瘍破壊の問題点に対処するための試みは、特許文献1に開示されている。適度な疎水性の中性アミノ酸ポリマーが、金属イオンと有機性キレート配位子からなる常磁性複合体と共に標識化される。
標識化される試薬は、溶解状態で界面活性剤混合物と結合され、乳濁液又は超微粒気泡内で気体を形成するためにガス気体中で振られる。主として超音波イメージング及びMRIイメージングの強化のために採用されるが、腫瘍内にマイクロバブルを溜めあるいは濃縮することにより、ヒート・シンク及びキャビテーション核として働き、腫瘍構造の崩壊を引き起こすことが言及されている。
【0011】
徐放性又は経口投与フォーミュエーション(formuation)を含む、固形脂質のナノ粒子を、医薬品のための投与システムとして開発するための他のアプローチが行われている(例えば、ウルフギャング・メネテット等(Wolfgang Mehnetet al)による., 「本明細書中で参照として用いられる非特許文献1を参照せよ)。
しかしながら、対象となっている腫瘍標的に対して固形脂質ナノ粒子を採用した投与システムは、粒子が形成された後にも肝臓及び脾臓又は毒物のリーチングの不必要な蓄積と同様に、低い医薬品取り込み能力のため、少なくとも一部分が不確かである。
【0012】
健康な組織における蓄積を制限すると同時に、腫瘍の塊内での蓄積と細胞の内在化を促進し、適切な投与手段での治療に有効な物質の投与は、非常に望ましい。
より能率的な投与では、細胞傷害性要因とリンクする細胞分割の全身性及び健康な組織の濃度は、減らすことができると同時に副作用をより少なく又は減少して同等又はそれ以上の治療効果を達成する。腫瘍細胞の固有の度合いでの単一の腫瘍タイプに限定されない投与手段は、更なる有利さを提示する。
更に、単一の腫瘍タイプに限定されず、腫瘍の塊への選択的な蓄積、多様なガン細胞タイプへの細胞の内在化の促進を可能とする投与手段は、特に望ましく、より安全で効果的なガンの治療を可能とする。
治療薬のために取り込み能力の向上を可能とする投与手段は、技術分野において著しく有利となるだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,215,680号明細書
【非特許文献1】Solid Lipid Nanoparticles, Production Characterization and Applications: Adv. Drug. Del. Reviews, Vol. 47, pp. 165-196 (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、好ましくは化学的変更又は医薬品の共役の必要性がなく、治療剤の高い取り込み能力を有する、目的化された細胞(例えば、ガン細胞)の内在化の促進と共に、腫瘍を含む目的化された組織に対する治療活性剤の投与の効率性を改善する投与手段の必要性がある。
目的とする組織と細胞へ広範囲の治療に有効な物質を投与するための準備をし、使用する方法の更なる必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は一般的には、病気の予防、診断及び又は治療、健康状態、病理現象及び/又はその症状、特にガンの治療のために、人間を含む温血動物の目的とする組織、細胞の治療に有効な物質を含むことができる望ましい構造及び粒度分布を有する粒子の投与に有用な投与手段に関する。
本発明の1つの特徴として、薬学組成物がガスを含まず、随意に望ましい治療に有効な物質を含む粒子を組み込まれて準備され、従来の粒子投与システムを大幅に改善し、該治療に有効な物質は、特に腫瘍細胞が組成物を広範囲に内在化するガンの治療及び/又は診断のためのものである。
【0016】
本発明特有の特徴の1つとして、ナノメーターサイズの範囲であり、以下「ナノ粒子」と称される、脂質の選択群の混合物及び随意に1又はそれ以上の治療に有効な物質からなるとともに、ガスを含まない粒子からなる製薬組成物が提供される。治療に有効な物質の濃度は、選択的に目的とする組織及び/又は細胞内で治療に有効な物質の効果的な内在化を提供することに関してはナノ粒子内では十分である
【0017】
本発明のさらなる特徴として、以下のプロセスからなるガスを含まないナノ粒子が提供される。
(a)選ばれた群の脂質混合物と少なくとも1つの随意の治療薬を有機溶媒中で混合して溶液を形成し、
(b)前記溶液に水溶性の媒体を添加して水溶性懸濁液を形成し、
(c)前記水溶性懸濁液を摂動させて前記水溶性懸濁液中にナノ粒子を形成する。
【0018】
本発明の更なる側面は、標的とする組織及び/または細胞に、少なくとも一つの治療薬剤を任意に含有する粒子を選択的に投与するためのガスを含まないナノ粒子投与システムを提供することである。
ガスを含まないナノ粒子は、標的とする組織や細胞、特にガン細胞組織やガン細胞に効果的に内在化する。粒子は少なくとも一つの十分な濃度の治療薬剤を含有する。治療薬剤は、標的とする組織及び/又は細胞及び薬学的に受任可能な担体内で選択的に治療に対して効果を発揮する少なくとも一つの前記薬剤を含むものである。
【0019】
本発明の更なる側面は、標的とする組織及び/又は細胞に、治療薬剤を含むあるいは含まないナノ粒子を選択的に投与する方法を提供することである。
その方法は、前記標的とする組織及び/又は細胞に、効果的な量のガスを含まないナノ粒子を投与するものである。このガスを含まないナノ粒子は、ここで説明されるような前記治療に有効な物質を含む若しくは含まない脂質の混合物である。
【0020】
本発明の更なる側面は、人間を含む温血生物のガン腫瘍を含む選択された組織及び細胞を治療する方法である。該方法は、温血生物に上記説明のような本発明の薬剤組成物を、
前記温血生物に投与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】Aは、本発明に係るナノ粒子の粒度分布の実施形態を示すグラフである。Bは、培養された培養C6膠腫の顕微鏡写真であり、本発明の蛍光標識化されたナノ粒子の内在化を示している。
【図2】A−Dはナノ粒子の粒度分布を示すグラフであり、それぞれパクリタクセル、カンプトセシン、カルムスチン及びエトポサイドを示す。
【図3】C6膠腫細胞内における、図2A−Dに示されるナノ粒子の細胞内在化を示すグラフである。
【図4】A−Dは、本発明の治療に有効な物質を含まない状態において、水溶化剤のナノ粒子の粒度分布に対する作用を示すグラフである。
【図5】本発明の治療に有効な物質を含まない状態において、水溶化剤のナノ粒子の内在化に対する作用を示すグラフである。
【図6】A−Dは、水溶化剤を含有するナノ粒子とナノ粒子だけのものと比較可能なように示されるカンプトセシンとカンプトセシンのみを含有するナノ粒子を示すグラフである。
【図7】カンプトセシンを含有するナノ粒子、ナノ粒子だけのものと比較可能なように示される界面活性剤、カンプトセシンのみを含有するナノ粒子の内在化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書の図面は、本発明の実施形態の説明図であり、明細書及び請求項全体に包含される本出願の主要部を限定するものではない。
本発明は全体として、ガスを含まないナノ粒子を効果的に投与する投与システムに関するものである。該ナノ粒子は、任意の治療薬剤を含有する。該治療薬剤は、標的とする組織及び/又は細胞に対して、病気、症状、症候群及び/又は兆候の予防、診断及び/又は治療に対して効果を発揮する。
【0023】
投与システムは主にガスを含まないナノ粒子を有するものである。該ガスを含まないナノ粒子は、腫瘍組織及び腫瘍細胞中への向上した受動的な蓄積及び積極的な内在化を達成するよう構成されている。標的組織及び標的細胞、特にガン性腫瘍に関連する組織及び細胞は、確実にナノ粒子を内在化する。任意の治療薬に対する粒子の高い装填容量とともにこのような向上した内在化は、ガンに関連する組織や細胞を含む標的組織及び標的細胞に対して強い効力を発揮する。
【0024】
ここで用いられる「治療に有効な物質」の用語は任意の物質を意味し、例えば、薬、ホルモン、ビタミン、染料、ラジオアイソトープ(即ち、P32、Tc99、F18、I131やこれらに類するもの)及び病気、状態、症候群及び兆候、更にはガンの予防、診断及び治療に役立つようなものが含まれるが、これに限定されるものではない。
「ナノサイズの粒子」あるいは「ナノ粒子」の用語は、ナノメータレンジ(1ミクロン以下から数ミクロンあるいはそれ以上)のガスを含まない粒子を意味する。ガスを含まない粒子はガスを有さず、したがって、米国特許5,215,680号に記載されるマイクロ泡とは区別されるものである。
【0025】
ナノ粒子にされる治療薬剤は全ての種類の薬を含む。本発明の特定の場面においては、ガン治療薬がこれに含まれる。例えば、パクリタクセル、カルムスチン、エトポサイドやカンプトセシンのようなものである。
【0026】
ナノサイズの粒子は、脂質の選択された群の混合物を最初に形成することによって準備される。脂質は、標的とする組織や細胞に適用されたときに、高い内在化水準を促す構造を該粒子に与える。脂質混合物は一般に以下のものからなる。
a)約10から18の炭素元素を含む飽和カルボン酸のグリセロール・モノエステルと約10から18の炭素元素を含む脂肪族のアルコールの群から選択された少なくとも1つの第1材料
b)ステロール芳香族酸の群から選択された少なくとも1つの第2材料
c)ステロール、テルペン、胆汁酸及び胆汁酸のアルカリ金属塩の群から選択された少なくとも1つの第3材料
d)約1から18の炭素元素を含む脂肪酸のステロール・エステル、約10から18の炭素元素を含む糖酸及び脂肪アルコールのエステル、約10から18の炭素元素を含む糖及び脂肪酸のエステル、糖酸、サポニン、サポゲニンの群から選択された少なくとも1つの任意の第4材料
e)グリセロール、約10から18の炭素元素を含む脂肪酸のグリセロール・ジ又はトリエステル、約10から18の炭素元素を含む脂肪アルコールの群から選択される少なくとも1つの任意の第5材料
【0027】
脂質混合物から作られる該5つの材料は、好ましくは次の重量比で混合されるのがよい。
(a):(b):(c):(d):(e)=1〜5:0.25〜3:0.25〜3:0〜3:0〜3
【0028】
本発明の特に好ましい形態において、脂質混合物が、グリセロール・モノラウリン酸エステル、コレステロール安息香酸エチル、コレステロール、コレステロール・アセテイト及び主にグリセロール・トリパルミチン酸塩であるグリセロール・パルミチン酸塩からなるものである。
【0029】
上記脂質混合物が第1、第2、第3材料のみを必須の構成としているが、第4及び/又は第5の材料が混合される方が好ましい。なぜなら、第4、第5の材料は、安定性を向上させ、及び/又は粒子の大きさを一定にするからである。
【0030】
本発明の脂質混合物から形成されるナノ粒子は標的とする組織や細胞(ガン性腫瘍を含む)に内在化する。そして、ナノ粒子は、腫瘍の成長を止め、腫瘍の分化を誘発し、あるいは細胞を殺すなど望ましい効果を十分に発揮する。望ましい効果は、組織や細胞に追跡可能なマーカを残すというような診断効果をも含む。ここで用いられる「内在化」という用語は、ナノ粒子が積極的に細胞内に侵入することを意味する。
【0031】
標的とする組織及び細胞にナノ粒子が選択的に内在化される因子は、脂質混合薬の構成及び結果として生ずるナノ粒子の構造だけではなく、後述するナノ粒子の大きさや分子量も該因子となる。
【0032】
上述の脂質混合物は、治療に有効な物質の望ましい濃度で任意に混合されてもよい。治療に有効な物質の典型的な濃度は、約1%から30%未満、あるいは重量によってはそれ以上の範囲にある。脂質混合薬と治療に効果を発揮する薬剤は、適切な溶剤中にて典型的に溶解される(例えば、アルカノールに対するエタノールのように)。
【0033】
治療に有効な物質を含む、あるいは含まない脂質溶液はナノ粒子を形成するために水と混合される。ナノ粒子の大きさの範囲は典型的には0.01から1.0ミクロンであるが、常にこの範囲にあるものと限られるものではない。この範囲は特にガン治療に対して適当である。より大きな粒子は他の用途にとって適切なものである。ここで示される該範囲は用いられる脂質混合物、脂質混合物に加えられる任意の治療に有効な物質の種類や量及び後述される界面活性剤のような水溶化剤の有無によって一部決定される。
【0034】
水媒体(即ち懸濁液)に形成されたナノ粒子は、必要に応じて、人間を含む温血動物に治療を施すために薬剤成分を投与するというような使用に適切な純度の高い懸濁液を作るために、脂質原料、余剰の治療に有効な物質、溶剤のような不純物の除去処理がなされる。本発明の好ましい形態として、未精製の懸濁液は不純物を除去するために透析され、透析物は薬剤使用のために保持される。
【0035】
本発明の一側面によれば、ナノ粒子は好ましい粒度分布で生成される。好ましくは、粒子の主要な部分は、0.01から1ミクロンの範囲の粒度であり、多様な少量の粒子が0.1から0.5ミクロンの範囲であり、また該範囲の上あるいは下に外れた僅かなナノ粒子の範囲が約200ミクロンまでである。
【0036】
実施例1及び2で説明される方法による本発明にしたがって生成されたナノ粒子の典型的な粒度分布を示す図1Aを参照する。特に図1Aに示されるように、少量のナノ粒子が約30ミクロンまでの範囲にあるけれども、この実施例のナノ粒子の大部分は0.1から1.0ミクロンの範囲にある。図1Bに示されるように、図1に示される粒度分布を有するナノ粒子は、細胞核内を除く細胞のいたるところにあるナノ粒子の存在によって明らかであり、共焦の顕微鏡を用いて細胞の二次元回転解析によって確認されているが、C6膠腫細胞内に内在化しているように見える。
【0037】
前述の如く、ナノ粒子の粒度分布は、治療に有効な物質が存在しているか否か、混合される治療に有効な物質の種類によって一部依存する。図2A−Dを参照すると、パクリタクセル、カンプトセシン、カルムスチン及びエトポサイドがそれぞれ含まれる本発明によるナノ粒子の粒度分布が示されている。それぞれの場合において、ナノ粒子の大部分が0.1から約1.0ミクロンの範囲にあり、多様な少量のナノ粒子が200ミクロンまでの範囲にある。
【0038】
上記された如く、治療に有効な物質の脂質混合物溶液は、水と結合されて、水性媒体内にナノ粒子が生成されるために撹拌される。水性懸濁液は、温血動物に投与されるために使用されるナノ粒子を含有する精製された液体媒体を生成するために治療に利用される。ある場合では、所望する範囲内に於いて粒度分布がより好適に制御されるために、過度に大きい粒子が除去されることが望ましい。例えば、マサチューセッツ州ウォルサム(Massachusetts Waltham)にあるミルポア・コーポレーション(Millipore Corporation)等の適応する濾過作用システムはこの目的に適っている。これ故に、適応する濾過システムを選択することは、ナノ粒子の所望する範囲内に於いて粒度分布が制御されることが一の要素となる。
【0039】
本発明の一の側面に従うと、ナノ粒子は、粒子をガン性の組織及び細胞内に於いて、選択的な搬送に特に好適であり効果的な濃度とすることを可能にする治療効果を発揮する物資を受取るための高められた能力(例えば、積載能力)を有している。
【0040】
上述された生成されたナノ粒子は、非粒子形状の薬を除去する透析法等によって精製された際に於いて、ナノ粒子が、例えばC6神経膠腫細胞等の標的とする細胞内に内在化されることができる限界を決定することを特徴付けることができる。
【0041】
図3を参照すると、パクリタクセル、カルムスチン、エトポサイド及び、カンプトセシンの4つの薬剤の中から1つを含有する実施例2に於いて述べた本発明に従って生成されるナノ粒子は、上記した如く、蒸留水に対する透析法を利用して除去された非結合薬を準備した。そして、ナノ粒子は、実施例4に従ってウェル毎に104細胞数の植種密度で96ウェル・プレートに於いて培養されたC6神経膠腫細胞で培養した。適切な培養時間経過後、ナノ粒子のサンプルは、各ウェルから吸引され、細胞の摂取(すなわち、内在化)の限界まで行われた。
【0042】
図3に示す如く、薬が添加されていないサンプルを含有する各サンプルはC6神経膠腫細胞内に内在化しており、それ故に、標的とされる細胞が崩壊及び可能な限り死滅するために、標的とする細胞内に存在していた。
【0043】
ナノ粒子が治療に有効な物質を準備している際には、粒子内へ搬送される物資の総量は、標的とされる組織及び/又は細胞に於いて、所望する効果を達成することができる付加的な要素となる。
【0044】
表I〜IVを参照にすると、脂質混合物へ付加されるパクリタクセル、カルムスチン、エトポサイド及び、カンプトセシンの各総量と、上記する準備後の(積載能力を)保持される総量とが、実施例3で詳述される方法に従って、脂質混合物の重量の機能として計算される。これら結果から、従来技術に於ける既知なる搬送システムと好適に比較することが可能となる。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
上記する如く準備され且つ、表I〜IVに於いて示される薬積載能力の決定の後に細胞は、薬が結合されていないナノ粒子と関連するナノ粒子の細胞の内在化を決定するために、測定されている。
【0050】
図3に示される如く、薬が結合されていない場合に於ける制御を比較することによって、C6神経膠腫細胞内へ内在化されるナノ粒子の総量は、薬(すなわち、パクリタクセルやカンプトセシン)が結合されていないナノ粒子の内在化と比べると、類似か又は実質的には超過していた。このようにして、本発明のナノ粒子は、薬が積載される際に於いて劇的に改善された内在化を提供するとともに、腫瘍組織及び腫瘍細胞等の標的とする組織の治療に有効な物質の搬送を行う効果的なシステムを提供することを示す。
【0051】
本発明の好適な形態に於いて、水性媒体に分散される脂質混合物が不適切な沈殿を確実に生じさせないために、ナノ粒子を準備する過程へ、水溶化剤及び/又は溶媒へ取り入れることが好適である。このようにして、沈殿量を減らし、治療に有効な物質の有効性を奏することができる。
【0052】
治療に有効な物質を含むナノ粒子が生成される際に於いて、沈殿の形成を防止又は最小化するために、水溶化剤は、脂質混合物が治療に有効な物質と合成される際に、結合される。この結果、治療に有効な物質が沈殿することによって失われることを少なくすることができる。更に、水溶性を最大限に高めることによって、患部に於いて結果的に生じる生成物が有する所望する腫瘍を標的とする能力を維持する間、脂質混合物の積載能力を高めることができる。
【0053】
随意的な水溶性剤は、例えば、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、クロロフォルム、テトラヒドロフラン、エーテル、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル及びこれらの混合物から選択されることができる。他の水溶性剤は、(非イオン、陰イオン及び陽イオン)の界面活性剤、ポリオキシエチレン・ソルビタン脂肪酸エステル又は、ポリエチレン酸化ソルビタン・モノ・オレアート等のポリスチレンソルベート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリン等のリン酸脂質を含んでいる。他の適当な水溶性剤は、ポリオキシエチレン・アルコール、ポリオキシエチレン・脂肪酸エステル、ポリエチレン・グリコール、疎水部分が共役結合しているポリエチレン・グリコール、脂質が共役結合しているポリエチレン・グリコール、セラミド、デキストラン、コール酸塩、デオキシコール酸塩及びこれらに類似物又はこれら化合物を含んでいる。
【0054】
本発明が、典型的にナノ粒子の粒度分布に影響を与える際に、水溶性剤が、必ずしも必要とされないが、粒度分布が増加する。図4A〜4Dを参照すると、ナノ粒子は、実施例5(治療に有効な物質なし)において上記される方法によって、本発明に従って準備される。図4B〜4Dに於いて示されるナノ粒子が特定の水溶性剤(つまり、界面活性剤;デオキシコール、ドデシル硫酸ナトリウム及びトゥイーン80をそれぞれ)を含有する一方で、図4Aにおいて示されるナノ粒子は、水溶性剤を使用せずに準備されている。
【0055】
図4Aで示される如く、界面活性剤なしで準備されたナノ粒子の粒径の平均サイズは、0.29ミクロンであった。界面活性剤を添加した際のナノ粒子の平均の粒径サイズは、0.43〜0.46ミクロンの範囲で増加した。
【0056】
界面活性剤のような水溶性剤が存在する場合には、ナノ粒子の内在化に悪影響を与えない。図5で示される如く、実施例6に於いて上述される方法に従う界面活性剤を使用するC6神経膠腫細胞内のナノ粒子の内在化は、界面活性剤が存在しない場合に於いて準備されたナノ粒子と同じ又は類似していた。
【0057】
本発明に従って生成されたナノ粒子の積載能力は、水溶性剤の存在によって悪影響を受けることはない。表Vで示される如く、ナノ粒子は、カンプトセシン重量差の30%で、単体又は界面活性剤(つまり、0.1%のデオキシコール及び0.1%のトゥイーン80)の存在下に於いて結合されて準備された。表Vに示される如く、積載能力は、界面活性剤が含有されていないナノ粒子と比較すると、ナノ粒子を含有する界面活性剤のために高まった。
【0058】
【表5】

界面活性剤の存在下に於ける脂質ナノ粒子のカプトサイシンの積載
【0059】
水溶性剤(例えば、界面活性剤)を伴い生成されるナノ粒子は、標的とする組織及び細胞内に於いて効果的な内在化を提供する粒度分布を有している。
【0060】
図6A〜6Dに、実施例5に従って合成したナノ粒子の粒度分布を示した。特に、図6Cと6Dから判るように、治療に有効な物質(カンプトセシン)と界面活性剤(デオキシコール酸塩又は、トゥイーン80)を共に含むナノ粒子の大半は、0.1から1.0ミクロンの範囲内の大きさである。0.1から1.0ミクロンの範囲外の粒子は、最大80から100ミクロンの範囲の大きさをしている。この結果は、図6A(界面活性剤無しで、カンプトセシンも無し)や図6B(界面活性剤無し)に示した粒度分布と似ている。
【0061】
図6A〜6Dに述べたナノ粒子は実施例6で述べた方法に従ってC6神経膠腫細胞と共に培養した。カンプトセシンと界面活性剤を含むナノ粒子が、効率良くC6神経膠腫細胞に内在化した。
【0062】
本発明においては、ガスを含まないナノ粒子を水性溶媒に乳化させ、懸濁を理想的に行うために乳化剤を用いる。これらの乳化剤は、例えば、特に限定されないが、トリカプリン、トリラウリン、トリミルスチン(trimyrstin)、トリパルチミン、トリステアリン、ソフィスタン142(Sofistan142)のような固形脂肪(hard fats)、グリセロール、モノステアレート、グリセロールベヘネート、グリセロールパルミトステアリン酸塩、セチールパルミチン酸塩、デカン酸、ベヘン酸や、アシジン12である。他の乳化促進剤としては、大豆レシチン、卵レシチン、ポロキシマー化合物(188、182,407,908),チロキサポール、ポリソルベート(20,60や80)、グリコール酸ナトリウム、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、ブタノール、酪酸、ジオクチル硫酸ナトリウム、モノオクチルリン酸及び、ドデシル硫酸ナトリウムがある。
【0063】
乳化剤を用いると、ナノ粒子の調製の第一段階で、乳化剤と脂質混合物や任意に入れた治療に有効な物質との混和に都合が良い。特に脂質混合物を、エタノールのような任意の水溶化剤によって溶媒と混ぜ、超音波や加熱により攪拌する。そして、治療に有効な物質を、この乳液に加える。このとき乳液を溶解つまり溶媒化が完全になるまで更に撹拌して、乳濁質が乳化剤と結合している状態にしておく。
【0064】
前述のとおり、本発明の薬剤組成物は、透析法などで不純物を取り除いて得られたものである。そこで得られた溶液(例えば、血液透析液)は、温血動物へのナノ粒子の投薬に対して好ましい方法を提供する。透析法を利用すると、非粒子脂質や薬及び/又は溶媒を取り除くことができ、望ましい緩衝作用又は濃縮作用を達成できるので好ましい。透析膜は公称分画分子量が5,000〜500,000のものを用い、更には10,000〜300,000のものを用いるのが好ましい。
【0065】
注射可能な溶媒や乳液や、治療として受け入れられる方法での投与に適したその他の液体溶媒を液体溶媒として利用するのが好ましい。治療として受け入れられる方法での投与に適したその他の溶媒とは、例えば、適当な毒性の無い又は条件に合った希釈剤、つまり溶媒であり、具体的には、マンニトール、1,3−ブタンジオール、水、緩衝液、低級アルコール、水溶液、リンガー液、ブドウ糖、蔗糖、生理食塩水、又は塩類を含有できる溶液で、例えば、ベンジルアルコールやその他の適当な保存溶液、生体利用率を高めるための吸収促進剤、及び/又はその他の可溶化剤や分散化剤を含む。
【0066】
本発明の薬剤組成物は概して、脂質に良く溶ける治療に有効な物質と混和して搬送する物質として有効である。
従って、より改善されたガン治療が提供できる。より改善されたガン治療とは、例えば、腫瘍細胞の増殖や、脈官形成や、転移の進行、アポトーシスをコントロールすることによる初期の腫瘍の治療や、外科的切除や、初期腫瘍に対する放射療法や化学療法の後、又はこれらの療法に伴う微小転移の進行の治療である。
【0067】
本発明の製薬用化合物は、腫瘍の塊に対する治療に有効な物質を搬送する選択性や特定性を増加させるものである。このとき、治療に有効な物質は、ガン化していない部分をとおって、腫瘍の脈管構造に入って腫瘍の塊に届き、腫瘍細胞に内在化して作用する。
【0068】
本発明は、治療に有効な物質で患者を治療する方法や、治療に有効な物質を細胞に搬送するための方法である。治療に有効な物質を細胞に搬送する目的は、病気や体調不良、症候群及び/又はこの症状、の予防をしたり診断及び/又は、治療をするためである。
本発明で用いられる治療に有効な物質とは、電荷を帯びていないもの、電荷を帯びたもの、無極性のもの、極性のもの、天然物、合成物、及びそれらに類似のものである。
本発明の好ましい実施形態は、治療に有効な物質は親油性のペプチドや、サイトトキシン、オリゴヌクレオチド、細胞傷害性の抗腫瘍剤、代謝拮抗物質、ホルモン、放射性物質、及びこの類似物である。
【0069】
前記オリゴヌクレオチドは、アンチセンスヌクレオチドと、センスヌクレヲチドの両方を含む(例えば、核酸は、ベクターとして従来より知られている)。オリゴヌクレオチドは、サブユニット又は、サブユニット同士の結合に関して、“天然”あるいは、“合成”のものである。オリゴヌクレオチドは、治療に効果をもたらすことができるものが好ましい。
【0070】
抗腫瘍剤は、良く知られており、次のような物質やこの合成物質及び類似物質がある;カンプトセシンとこの誘導体、例えば、トポテカンやイリノテカン、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アゾチオプリン、シクロスポリン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタクセル、ドクソルビシン、ジェムシタビン、エトポサイド、ハイドロキシウレア、イリノテカン、メチルメラミン、ミトタンであり、パクリタクセルとこの誘導体、例えば、ドセタクセル、塩酸プロカルバジン、テニポシド、トポテカン、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、そしてビノレルビンである。
【0071】
他の抗腫瘍剤としては、更に抗生物質とこの合成物及び誘導体があり、例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシン硫酸塩、イダルビシン、プリカマイシン、ミトマイシンC、ペントスタチン、そしてミトキサントロンであり、代謝拮抗剤としては、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、クラドリビン、メソトレキサート、メルカプトプリン、そしてチオグアニンである。アルキル化剤としては、例えば、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、チオテパである。窒素マスタードとしては、メルファラン、シクロフォスファミド、イフォスファミド、クロラムブシル及びメクロレタミンである。ニトロスレアとしては、カルミスチン、ロムスチン、ストレプトゾトシン、そしてリシンなどの毒素である。
【0072】
本明細書中で使用される「治療に有効な物質の効果的な量」とは、望ましい治療もしくは診断効果を達成するための1回もしくは複数回投与を意味する。概して、治療に有効な物質の効果的な量は、治療される条件や使用される薬の能力だけではなく被験対象の年齢、条件、食習慣、体重及び性別によっても異なる。的確な投与量は当業者によって決定することができる。合併症の場合、投与量は投与実行者によって調整することも可能である。概して、ナノ粒子は患者にとって十分な方法及び効果的な量で投与される。投与量は単回投与、もしくは1日当たり1回から4回もしくはそれ以上のような分割投与で行われる。
【0073】
望ましい治療効果を得るために、投薬量は適切に調整される。任意の特定被験対象のための投薬レベル及び投与間隔は調節でき、そして採用されている特定の治療に有効な物質の活動、代謝の安定性及び物質の活動期間、被験対象の種、年齢、体重、身体全体の健康、食習慣、性別及び食事内容、投与方法及び期間、排泄率、薬の組み合わせ、特定条件での深刻性を含めた多様な要因に依存する。概して、活性の治療に有効な物質の1日の投薬量は、望ましい結果を得るために、1日あたりの1もしくは複数の投与において、必要以上の実験を行うことなく一般先行技術の1つによって決定される。
【0074】
被験対象における反応が一定の投薬量で不十分な場合には、さらに高用量の投薬が(すなわち異なる、さらに局部集中した搬送ルートによる効果的な高用量の投薬)、患者の耐性の許容範囲で採用される。1日あたりの複数回投与が適切な治療用化合物の組織もしくは目標レベルを達成するために提案される。
治療のために望ましい被験対象は、動物、最も望ましくは、例えば人間、及び犬、猫などの家畜のような、病気及び他の病理学的条件に影響を受けやすい哺乳類を含む。
本発明の薬剤組成物のために多様な投与ルートが利用可能である。選択された特定の方法は特定の治療に有効な物質、投与が病気の予防、診断、もしくは治療のうちどれのためであるのか、治療される内科的疾患の深刻性、治療の有効性のために必要とされる投与量に依存している。本発明の方法は、医学的に容認でき、かつ臨床上容認しがたい副作用を引き起こすことなく活性化合物の効果的なレベルを生み出す任意の投与方法を用いて実行される。このような投与方法は、口、吸収、粘膜、直腸、局所的な鼻、経皮、皮下、静脈、筋肉からの導入方法を含むが、これらに制限されることはない。
【0075】
本発明の薬剤組成物は通常、塩、緩衝剤、防腐剤、相性の良いキャリア、そして随意的に他の治療用材料を含む。薬に用いられる時、塩は製薬とすべきであるが、製薬として容認されていない塩も製薬として容認可能な塩を用意するために都合よく用いられ、かつ本発明の範囲から除外されることはない。このように薬理学的に及び製薬として容認可能な塩は、以下の酸、すなわち塩酸、臭酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、パリシリック酸、Pトルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、蟻酸、マロン酸、琥珀酸、ナフタリン2スルホン酸及びベンゼンスルホン酸から用意された塩を含むがこれらに制限されることはない。また、製薬として容認可能な塩は、アルカリ金属、または、例えばカルボン酸グループのナトリウム、カリウム塩のようなアルカリ土類金属塩として用意される。
従来の議論は本発明の実施例をほとんど開示及び説明していない。当業者は、このような議論及び添付の請求項から、多様な変化、修正、及び変形が、請求項中に定義されたような本発明の精神と範囲から離れることなく、行われることを容易に理解するだろう。
【実施例1】
【0076】
治療用物質なしのナノ粒子
脂質混合物の10mgが、1mLの無水エタノールに懸濁される。この脂質混合物は、明細書中に特定されたそれぞれの脂質を、明細書中の重量比条件に見合う量で含有する。得られた懸濁液は、50mLの蒸留水に加えられ、25℃、85psiの空気圧にセットされた110Yマイクロフルイディクス・マイクロフルイダイザ(マイクロフルイディクス・インク、ニュートン、マサチューセッツ)を4回通して処理される。
このナノ粒子が収集され、一部は、粒径分布のためにホリバLA−910レーザ・スキャタリング粒径分布分析器を用いて検査される。
【実施例2】
【0077】
治療用物質を有するナノ粒子
脂質混合物の10mgが、1mLの無水エタノールに懸濁される。この脂質混合物は、明細書中に特定されたそれぞれの脂質を、明細書中の重量比条件に見合う量で含有する。4種類の薬パクリタクセル、カルムスチン、カンプトセシン、及びエトポサイドの内の1種類と無水エタノールを含む原液が用意され、脂質混合物と組み合わされる。得られた懸濁液は、50mLの蒸留水に加えられ、25℃、85psiの気圧にセットされた110Yマイクロフルイディクス・マイクロフルイダイザ(マイクロフルイディクス・インク、ニュートン、マサチューセッツ)を4回通して処理される。
このナノ粒子が収集され、一部は、粒径分布のためにホリバLA−910レーザ・スキャタリング粒径分布分析器を用いて検査される。
【実施例3】
【0078】
ナノ粒子の積載能力
実施例2に従って生成されたナノ粒子は以下の方法で薬の積載能力を測定された。
校正曲線は、ナノ粒子の溶けたエタノールが含有されていない薬の紫外線吸収度もしくは蛍光放射に基づいて作成された。より具体的には、エトポサイド、パクリタクセル、カルムスチンが254nm、230nm、及び237nmでかつそれぞれスペクトロニック・ジェネシス5・フォトスペクトロフォトメータを用いる紫外線吸収度によって監視された。カンプトセシン・レベルは390の励起と460の放射でマイクロプレート・フルオリメータ(フルオスター・オプティマ、BMラボ・テクノロジーズ、デュラム、NC)を用いる蛍光監視によって決定された。
ナノ粒子は、薬剤を含み調製されるとともに、脱塩遠心分離法及びミリポア・ウルトラフリー・2BHK40を用いる洗浄によって任意の非粒子薬剤の除去後エタノール中に溶解された。
【実施例4】
【0079】
C6神経膠腫細胞におけるナノ粒子の内在化
実施例2に従って用意されたナノ粒子にさらに0.01%w/wの脂質コレステロールBoPy FL C12(モレキュラ・プローブズ、ユージーン、オレゴン)が供給された。
サンプル(5mL)は、2つの変化をもって蒸留水(1.2L)に対抗する任意の結合しない薬及び色素を除去するために透析された(30分)。1つのウェルにつき104細胞の植種密度で96ウェル・プレートで培養されたC6神経膠腫細胞はそれぞれの実験に先立ち1日で植種され、DMEM及び10%のウシ胎仔血清からなる完全培地で育てられた。
サンプルは完全培地で50ug/mLに希釈され、C6神経膠腫細胞に加えられた。細胞は37℃で30分の間、希釈されたサンプルで培養された。適切な培養時間を経て、ナノ粒子サンプルはそれぞれのウェルから吸引される。ウェルはその後100μLのPBSを加え、その後同量のPBSの吸引及び交換をして1度洗浄される。
細胞の蛍光強度はマイクロプレート蛍光測定器(フルオスター・オプティマBMGラボテクノロジーズ・インク、デュラム、NC)を用いて計量された。
【実施例5】
【0080】
界面活性剤を含むナノ粒子の用意
ナノ粒子は、カンプトセシンが凝縮した200μg/mLの脂質を除いて実施例2の手続きに従って用意され、また図6に示される界面活性剤は蒸留水内で50mLの総量で結合した。サンプルは、混合物を4回マイクロフルイダイザ(モデル110Y、マイクロフルイディクス・インク、ニュートン、マサチューセッツ)に通すことによって調製された。収集された生成物は、レーザ・スキャタリング粒径分布分析器(モデルLA−910、ホリバ・インク、アン・アーバ、ML)で分析された。
【実施例6】
【0081】
C6神経膠腫細胞の内在化
ナノ粒子のサンプルは50mLの蒸留水で、200μg/mLの脂質、カンプトセシン、界面活性剤の適切な濃縮及び0.01%のコレステロール BODIP Y−FL C12(脂質のw/w)とともにそれぞれ調製された。サンプルは混合物を4回マイクロフルイダイザ(モデル110Y、マイクロフルイディクス・インク、ニュートン、マサチューセッツ)に通すことによって調製された。収集された生成物はレーザ・スキャタリング粒径分布分析器(モデルLA−910、ホリバ・インク、アン・アーバ、ミシガン)で分析された。蛍光脂質ナノ粒子サンプルは、C6神経膠腫細胞に加えられ、完全培地の50μg/mLの濃縮された96ウェル・プレートで培養され、37℃で30分の間、培養された。サンプルはその後除去され、そして細胞単層はPBSで1度洗浄された。100μLのPBSがそれぞれのウェルに加えられ、そしてナノ粒子摂取は、それぞれのウェルの蛍光強度をマイクロプレート蛍光測定器(フルオスター・オプティマBMGラボテクノロジーズ・インク、デュラム、ノースカロライナ)を測定することによって計量される。それぞれのサンプルは、6つの個別のウェルで読み取られ、その結果は平均であった。界面活性剤を含む各サンプルの平均値は界面活性剤を含まないサンプルの平均値に標準化された。蛍光強度によって計量された界面活性剤を含む各サンプルの細胞摂取は、界面活性剤を含まない各サンプルの細胞摂取と比較されて表示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを含まないナノ粒子であって、
該ガスを含まないナノ粒子が、所望の効果を十分達成するために標的組織あるいは標的細胞中に内在化し得る選択された脂質の混合物を包含し、
該選択された脂質の混合物が、
(a)炭素数が10から18の飽和カルボン酸と炭素数が10から18の脂肪族アルコールのグリセロール・モノエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第1材料と、
(b)ステロール芳香族酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第2材料と、
(c)ステロール及び炭素数が1から18の脂肪酸のステロールエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第3材料と、
(d)炭素数が10から18の脂肪族酸と炭素数が10から18の脂肪族アルコールのグリセロール及びジ−グリセロール又はトリエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第4の材料とからなることを特徴とするガスを含まないナノ粒子。
【請求項2】
前記脂質の混合物が、(a):(b):(c):(d)=1−5.0:0.25−3.0:0.25−3.0:0.25−3.0の重量比であることを特徴とする請求項1記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項3】
前記ガスを含まないナノ粒子の大半が、0.01〜10ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項1記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項4】
前記ガスを含まないナノ粒子の大半が、0.1〜5ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項3記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項5】
前記ガスを含まないナノ粒子の大半が、0.01〜1ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項1記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項6】
さらに少なくとも1種類の水溶性向上剤が含まれることを特徴とする請求項1記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項7】
前記水溶性向上剤が界面活性剤であることを特徴とする請求項記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項8】
さらに少なくとも1種類の乳化剤が含まれることを特徴とする請求項1記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項9】
前記標的組織あるいは標的細胞が、ガン組織あるいはガン細胞であることを特徴とする請求項1記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項10】
さらに少なくとも1種類の治療薬を含有することを特徴とする請求項1記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項11】
少なくとも1種類の前記治療薬がガン治療薬であることを特徴とする請求項10記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項12】
前記ガン治療薬がパクリタクセル、カルムスチン、エトポサイド及びカンプトセシンあるいはこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項11記載のガスを含まないナノ粒子。
【請求項13】
ガスを含まないナノ粒子を含む薬剤組成物であって、
該ガスを含まないナノ粒子が、標的組織あるいは標的細胞中の所望の効果を十分達成するために標的組織あるいは標的細胞中で内在化し得る選択された脂質の混合物と薬学的に使用可能な担体を包含し、
該選択された脂質の混合物が、
(a)炭素数が10から18の飽和カルボン酸と炭素数が10から18の脂肪族アルコールのグリセロール・モノエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第1材料と、
(b)ステロール芳香族酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第2材料と、
(c)ステロール及び炭素数が1から18の脂肪酸のステロールエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第3材料と、
(d)炭素数が10から18の脂肪族酸と炭素数が10から18の脂肪族アルコールのグリセロール及びジ−グリセロール又はトリエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第4の材料とからなることを特徴とする薬剤組成物。
【請求項14】
前記脂質の混合物が、(a):(b):(c):(d)=1−5:0.25−3:0.25−3:0.25−3の重量比であることを特徴とする請求項13記載の薬剤組成物。
【請求項15】
前記ガスを含まないナノ粒子の大半が、0.01〜10ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項13記載の薬剤組成物。
【請求項16】
前記ガスを含まないナノ粒子の大半が、0.1〜5ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項15記載の薬剤組成物。
【請求項17】
前記ガスを含まないナノ粒子の大半が、0.01〜1ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項13記載の薬剤組成物。
【請求項18】
さらに少なくとも1種類の水溶性向上剤が含まれることを特徴とする請求項13記載の薬剤組成物。
【請求項19】
前記水溶性向上剤が界面活性剤であることを特徴とする請求項18記載の薬剤組成物。
【請求項20】
さらに少なくとも1種類の乳化剤が含まれることを特徴とする請求項13記載の薬剤組成物。
【請求項21】
請求項13に記載の薬剤組成物が、乳化状態であることを特徴とする薬剤組成物。
【請求項22】
前記標的組織あるいは標的細胞が、ガン組織あるいはガン細胞であることを特徴とする請求項13記載の薬剤組成物。
【請求項23】
さらに少なくとも1種類の治療薬を含有することを特徴とする請求項13記載の薬剤組成物。
【請求項24】
少なくとも1種類の前記治療薬がガン治療薬であることを特徴とする請求項23記載の薬剤組成物。
【請求項25】
前記ガン治療薬がパクリタクセル、カルムスチン、エトポサイド及びカンプトセシンあるいはこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項24記載の薬剤組成物。
【請求項26】
(a)溶液を形成するために脂質混合物を混和し、
(b)ステップ(a)において形成された溶液を水溶性媒体と混和し、水溶性懸濁液を形成し、そして
(c)水溶性懸濁液を摂動させ前記水溶性懸濁液内でナノ粒子を形成する工程を備える個体で且つガスを含まないナノ粒子を生成する方法であって、
前記脂質混合物が
炭素数が10から18の飽和カルボン酸と炭素数が10から18の脂肪族アルコールのグリセロール・モノエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第1材料と、
ステロール芳香族酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第2材料と、
ステロール及び炭素数が1から18の脂肪酸のステロールエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の第3材料と、
炭素数が10から18の脂肪族酸と炭素数が10から18の脂肪族アルコールのグリセロール及びジ−グリセロール又はトリ−グリセロールからなる群から選択される少なくとも1種類の第4の材料とからなることを特徴とする固体で且つガスを含まないナノ粒子を生成する方法。
【請求項27】
さらにステップ(c)の前記ナノ粒子を含む水溶性媒体から不純物を除去する工程を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記不純物の1つが、望ましくない粒子であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項26に記載の方法により生産された生産物。
【請求項30】
請求項27に記載の方法により生産された生産物。
【請求項31】
マイクロフルイダイザで水溶性懸濁液を摂動させる工程を備えることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項32】
請求項31のプロセスにより生産された生産物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−248269(P2010−248269A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176721(P2010−176721)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【分割の表示】特願2003−504900(P2003−504900)の分割
【原出願日】平成14年6月14日(2002.6.14)
【出願人】(503459475)コーナーストーン ファーマシューティカルズ (1)
【Fターム(参考)】