説明

標的化され、そして高密度で薬物が負荷されるポリマー性物質

高負荷/高密度の送達される分子と、標的化の選択物とを組み合わせるポリマー性送達デバイスが、開発された。この方法は、ポリマー性物質の表面を改変することにおいて広範な有用性を有する。治療用化合物、細胞物質または細胞構成成分、および抗原をカプセル化し、そして微粒子表面に直接結合される標的性リガンドを有する、標的化ポリマー性微粒子もまた、開発された。好ましい用途としては、組織工学マトリックス、創傷包帯、骨修復物質または骨再生物質、およびこの微粒子が適用または移植の部位に保持される他の用途における使用が挙げられる。別の好ましい用途は、再狭窄を防止するか、または減少させる血管形成術、移植術またはバイパス手術後の血管の内張りに抗増殖剤を送達する微粒子の使用における用途、および癌治療における用途である。さらに別の用途において、黄斑変性を処置するか、または防止するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本願は、米国特許法の下で、米国特許出願番号第60/677,991号(2005年5月5日出願)、米国特許出願番号第60/628,778号(2004年11月17日出願)、米国特許出願番号第60/616,821号(2004年10月7日出願)、および米国特許出願番号第60/585,047号(2004年7月1日出願)に基づく優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府支援研究に関する陳述)
米国政府は、William Mark Saltzmanに対するNational Institutes of Healthからの助成金(EB00487およびCA52857)の効力に基づき、本研究において一定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、送達および/または標的化のための分子を結合するための高密度リガンドを有するポリマー微粒子、その製造のための方法、ならびに薬学的分野および栄養補助食品分野、医療用デバイス、組織工学、創傷包帯および医療用移植片における用途に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
生分解性ポリマーは、種々の治療剤を送達するために使用されてきた。代表的に、これらの治療剤は、生分解性ポリマー内にカプセル化され、100μm以下のサイズを有する粒子、フィルム、シート、ディスク、ペレット、またはインプラントに形成される。これらの生分解性ポリマーは、ヒトに投与され、そしてこのカプセル化された治療剤は、このポリマーが分解する際および/または水がこのポリマー中に拡散して、カプセル化された治療剤を浸出させる際に、患者の体内に放出される。生分解性ポリマー(合成および天然の両方)は、数日間または数週間にわたってカプセル化された薬剤を放出し得、このことは、薬物または他の薬剤の投与における利点を有し得る。
【0005】
これらのデバイスは、溶媒カプセル化(solvent encapsulation)、融解カプセル化(melt encapsulation)、相分離、およびポリマーの加工のための他の標準的な方法のような技術によって薬物を組み込むために改変された。これらのポリマー性デバイスの表面は、リガンドを組み込むために、通常、デバイス形成前またはデバイス形成後のいずれかにおけるこのポリマーの誘導体化によって、このポリマーに対する共有結合もしくはこのポリマーの荷電した部位に対するイオン結合を使用して、改変された。これらの技術の多くは、不利益を有する。デバイスを形成する前のこのポリマーの誘導体化は、このデバイス内にカプセル化される多くのリガンドを生じ、結合または標的化に利用可能なリガンドの有用な数を減少させ得る。形成後の共有結合は、これらのポリマーに損傷を与えて、特異性を減少させる交差反応を生じ得、そして代表的に、あまり効率的ではない。イオン結合は、非常に穏やかであるが、解離し易く、多くの場合、高密度になり得ず、そして多くの場合、特異性が低い。
【0006】
ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)から作られる生分解性ポリマーは、治療的に重要性でありかつ組織工学用途についての足場として重要である低分子ならびに高分子に対する非常に強力なキャリアとして出現した。この重要性は、以下に由来する:1)PLGAおよびそのホモポリマー(homopolymers)であるPGAおよびPLAの生理学的適合性(これらの全ては、30年後に、薬物送達システムを含む種々の生物医学的用途でヒトにおいて安全であることが確立された);2)最適な生理反応のために放出される分子の速度および持続時間を制御するための種々のPLGA処方物の商業的入手可能性(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3);3)容易に排出される非毒性の低分子量産物へと分解しながら、生理学的条件下においてこれらのカプセル化された分子の持続的放出を提供するPLGA物質の生分解性(非特許文献4;非特許文献5);4)免疫の食細胞系を有力に回避するためのPLGAのナノスケール粒子(500nm未満)の製造に対する制御、または薬物の標的化された送達のための細胞もしくは抗原提示システムとしての細胞の長さの規模に従った微粒子の製作に対する制御(非特許文献6;非特許文献7)。製作に対する柔軟性と組み合わせた性質のこの固有の組み合わせは、薬物送達用途および組織工学用途に関して、身体の中の細胞または器官に対する特異的な結合のためにPLGA表面を改変することへの関心をもたらした(非特許文献6;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。官能性のPLGA表面によって、細胞は、足場に特異的に結合されて最適な新しい組織(neotissue)の形成をもたらす相互作用の制御を可能にし得るか、または目的の部位に特異的に送達されるカプセル化された薬物もしくは抗原に特異的に結合されて、潜在的に薬物の有害な副作用を減少させ得、そしてワクチン用途のための抗原送達を向上させ得る。。
【0007】
リガンドのPLGA粒子に対してカップリングさせることに関する主な困難性は、標的リガンドに結合するための脂肪族ポリエステル骨格上の官能性化学基を欠くことであった。これは、このPLGA表面に対する従来の結合体化方法の適用を大きく妨げる。したがって、PLGA表面に官能性を導入するために、数種のアプローチが、研究されてきた。これらとしては、アミン末端基(非特許文献13;非特許文献14)、または酸末端基(非特許文献14)を有するPLGAコポリマーを合成し、その後、粒子を製作することが挙げられる。別のアプローチは、官能性ポリマー(例えば、ポリリジン(非特許文献15;非特許文献16)またはポリ(エチレン−alt−マレイン酸)(PEMA)(非特許文献17))もしくはPEG(非特許文献18)のPLGAへのブレンドまたは吸着、ならびにこれらのブレンドからの粒子およびマトリックスの形成(非特許文献16;非特許文献17;非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21)を含む。このPLGAマトリックスのプラズマ処理もまた、その表面の性質を改変する目的およびこのポリマーへ親水性官能基を導入する目的のために提案された(非特許文献22;非特許文献23)。
【0008】
標的性リガンドとしては、特定の細胞もしくは組織構成要素によって過剰発現されるか、または選択的に発現される標的抗原あるいは標的レセプターを認識し、そしてこれらに結合する任意の分子が挙げられる。これらとしては、抗体もしくはそれらのフラグメント、ペプチド、糖タンパク質、炭水化物または合成ポリマーが挙げられ得る。最も広く使用されるカップリング基は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)である。なぜなら基は、このナノ粒子の長い循環を容易にする親水性表面をもたらすからである。このストラテジーは、標的細胞に対して親和性を有する「ステルス(Stealth)」リポソームを首尾よく作製するのに使用されている。リポソームにおけるリガンドの組み込みは、リン脂質の頭部の基(ほとんどの場合において、ホスファチジルエタノールアミン(phosphotidylethanolamine)(PE))に対する結合体化によって容易に達成され、そしてこのストラテジーは、この官能化された脂質の、形成されたリポソーム中への事前挿入(preinsertion)または事後挿入(post insertion)のいずれかに依存する。官能性はまた、標的リガンドにカップリングするための官能性末端基を有するPEGを組み込むことによって導入され得る。
【0009】
これらのアプローチは、それらの特定の用途において十分な成功を収めているが、それらの一般的使用は、必要とされるコポリマーの調製に関連する困難性、官能基の密度の制限に関連する困難性、およびこの粒子または足場が徐々に破壊される際の吸着された基の脱着または分解に起因する時間に伴う標的する効果の減少に関連する困難性のような障害によって妨げられる。改良された薬物送達のために、その表面上のリガンドの密度の長時間にわたる制御によって、リガンドの機能を保持することが、最も所望される。コポリマーの調製、官能基の密度の制限、および時間とともに分解することに起因する標的する基に関連する多くの困難性はまた、未だに存在する。
【非特許文献1】Visscherら、「J Biomed Mater Res」、1985年、第19巻、第3号、p.349−65
【非特許文献2】Langer R、Folkman J、「Nature」、1976年、第263号、第5580号、p.797−800
【非特許文献3】Yamaguchi、「J.Controlled Rel.」、1993年、第24巻、第1−3号、p.81−93
【非特許文献4】Shiveら、「Adv Drug Deliv Rev」、1997年、第28巻、第1号、p.5−24
【非特許文献5】Johansenら、「Eur J Pharm Biopharm」、2000年、第50巻、第1号、p.129−46
【非特許文献6】Eniolaら、「J Control Release」、2003年、第87巻、第1−3号、p.15−22
【非特許文献7】Jain RA、「Biomaterials」、2000年、第21巻、第23号、p.2475−90
【非特許文献8】Keeganら、「Biomaterials」、2003年、第24巻、第24号、p.4435−4443
【非特許文献9】Lamprechtら、「J Pharmacol Exp Ther」、2001年、第299巻、第2号、p.775−81
【非特許文献10】Lathiaら、「Ultrasonics」、2004年、第42巻、第l−9号、p.763−8
【非特許文献11】Parkら、「J Biomed Mater Res」、2003年、第67A巻、第3号、p.751−60
【非特許文献12】Panyam、「Adv Drug Deliv Rev」、2003年、第55巻、第3号、p.329−47
【非特許文献13】Lavikら、「J Biomed Mater Res」、2001年、第58巻、第3号、p.291−4
【非特許文献14】Caponettiら、「J Pharm Sci」、1999年、第88巻、第1号、p.136−41
【非特許文献15】Faraasenら、「Pharm Res」、2003年、第20巻、第2号、p.237−46
【非特許文献16】Zhengら、「Biotechnology Progress」、1999年、第15巻、第4号、p.763−767
【非特許文献17】Keeganら、「Macromolecules」、2004年
【非特許文献18】Muller、「J Biomed Mater Res」、2003年、第66A巻、第1号、p.55−61
【非特許文献19】Parkら、「J Biomater Sci Polym Ed」、1998年、第9巻、第2号、p.89−110
【非特許文献20】Croll、「Biomacromolecules」、2004年、第5巻、第2号、p.463−73
【非特許文献21】Caoら、「Methods Mol Biol」、2004年、第238巻、p.87−l12
【非特許文献22】Yangら、「J Biomed Mater Res」、2003年、第67A巻、第4号、p.1139−47
【非特許文献23】Wanら、「Biomaterials」、2004年、第25巻、第19号、p.4777−83
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、選択された細胞もしくは組織に治療用組成物を優先的に送達し得るか、そして/または多量の治療分子を送達し得るポリマー送達システムを提供することが、本発明の目的である。
【0011】
強力な架橋またはコーティングを必要とせずに、高密度かつ、ポリマーに対する直接的な結合を提供することが、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
高負荷/高密度の送達される分子と、標的性(targeting)選択物とを組み合わせるポリマー性送達デバイスが、開発された。本明細書中で使用される場合、「高密度」とは、高密度のリガンドまたはカップリング剤を有する微粒子をいい、これは、微粒子の表面積1平方ミクロンあたり、好ましくは1,000個〜10,000,000個の範囲、より好ましくは10,000個〜1,000,000個の間の範囲のリガンドである。標的性分子はまた、このポリマーの表面に結合され得る。特異性は、この標的性分子の選択によって決定される。この効果はまた、密度および結合手段によって調節され得、この結合手段は、共有結合性であってもイオン性であってもよく、直接的であってもリンカーの手段を介してもよい。送達される薬物は、このポリマー内にカプセル化され得、そして/またはこのポリマーの表面に結合され得る。同じ送達される分子が、カプセル化されるかまたは結合されても、異なる送達される分子がカプセル化されるかまたは結合されてもよい。これは、2段階送達(two phase delivery)またはパルス送達(pulsed delivery)を提供し得る。
【0013】
10未満のHLBを有し、より好ましくは5未満のHLBを有する物質(例えば、脂肪酸)を使用して、生体適合性ポリマーの表面に分子を組み込むための一般的方法が、開発された。実施例によって示されるように、アビジン−脂肪酸結合体が、調製され、そしてポリ乳酸−グリコール酸(「PLGA」)中に効率的に組み込まれた。好ましい実施形態において、アビジンは、種々のビオチン化リガンドの結合を容易にするアダプター(adaptor)タンパク質として使用されるが、他の結合分子が、使用され得る。脂肪酸は、外部の水性環境よりもむしろ、疎水性ポリマー(例えば、PLGAマトリックス)と選択的に結合し、アビジンの数週間にわたる長期の存在を容易にする。実施例は、モデルタンパク質(ウシ血清アルブミン(BSA))をカプセル化する微粒子、および塩浸出法(salt leaching method)によって製作されたPLGAの足場の両方においてこのアプローチを示す。その容易さ、一般性および柔軟性に起因して、この方法は、薬物送達および組織工学、ならびに他の分野における用途のためにポリマー性物質の表面を改変することにおける広範な有用性を有する。この技術は、先行技術を超える以下の利益を提供する:高密度、化学的改変を伴わないポリマー物質に対するPLGAの直接的な結合、強力な架橋試薬の不要性、結合面を提供するためのコーティングの不必要性。
【0014】
治療用化合物(例えば、薬物)、細胞物質または細胞構成成分、および抗原をカプセル化し、そして微粒子表面に直接結合される標的性リガンドを有する、標的化ポリマー性微粒子もまた、開発された。これらの微粒子は、細胞性免疫応答を誘導するために使用され得るか、または治療薬として使用され得る。標的化は、DNAワクチン、薬物、ペプチド、タンパク質または抗原のような治療用の負荷(therapeutic load)を減少させずに、特異性を大きく増加させる。別の利点は、1種より多い物質がカプセル化され得、そして/またはこの微粒子の表面にカップリングされ得ることである。これは、治療薬および/または標的性物質であり得る。いくつかの場合において、この微粒子(食作用またはこの微粒子の分解後に送達される、第2のカプセル化された治療用の負荷を含む)の表面にカップリングされる分子の最初の送達を提供することは、有利であり得る。
【0015】
好ましい用途としては、組織工学マトリックス、創傷包帯、骨修復物質または骨再生物質、およびこの微粒子が適用または移植の部位に保持される他の用途における使用が挙げられる。別の好ましい用途は、再狭窄を防止するか、または減少させる血管形成術、移植術またはバイパス手術後の血管の内張りに抗増殖剤を送達する微粒子の使用における用途、および癌治療における用途である。さらに別の適用において、これらの微粒子は、眼に投与した場合(補体インヒビターのような薬剤が投与される場合)に、黄斑変性を処置するか、または防止するために使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(I.ポリマー性微粒子)
本明細書中で使用される場合、微粒子とは、一般的に、0.5ミクロンと1000ミクロンとの間の範囲にある微粒子および50nm〜0.5nm未満の間の範囲にあるナノ粒子の両方(好ましくは、それぞれ、1ミクロンと20ミクロンとの間である直径を有するか、または50ナノメートルと500ナノメートルとの間である直径を有する)をいう。微粒子およびナノ粒子はまた、より具体的に参照される。
【0017】
この微粒子の外部表面は、この微粒子の表面にカップリング剤またはリガンドを結合体化することによって改変され得る。以下に記載されるように、好ましい実施形態において、このカップリング剤は、この微粒子の表面上に高密度で存在する。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「高密度」とは、高密度のリガンドまたはカップリング剤を有する微粒子をいい、これは、微粒子の表面積1平方ミクロンあたり、好ましくは1,000個〜10,000,000個の範囲、より好ましくは10,000個〜1,000,000個の間の範囲のリガンドである。これは、溶解した粒子を蛍光染色し、そして溶液中の遊離蛍光分子の既知の量に対してこの蛍光を較正することによって測定され得る。
【0019】
上記微粒子は、このリガンドまたはカップリング剤(例えば、標的性分子、結合分子、および/または治療剤、栄養剤、診断剤もしくは予防剤)に対する1種以上の異なる分子の結合によって、さらに改変され得る。
【0020】
標的性分子は、上記微粒子を、選択された細胞型または組織型上のレセプター部位に指向させる物質であり、結合分子として作用し得るか、または別の分子にカップリングするか、もしくは結合するために作用してもよい。本明細書中で使用される場合、「指向させる(direct)」とは、分子を選択された細胞型または組織型に対して優先的に結合させることをいう。これは、以下で詳細に議論されるような、細胞物質、分子、または薬物を指向させるために使用され得る。
【0021】
改良された官能性は、この粒子からの徐放の経過(数週間)にわたって長期間、標的を提示する能力である。官能性は、標的分子が徐放の持続期間にわたって継続的な機能を促す粒子と結合し続けることに起因して改良される。
【0022】
本明細書中で言及される場合、表面改変マトリックスは、細胞、分子または標的に特異的な高分子もしくは粒子の結合を容易にする標的を提示する。
【0023】
領域性の改変に対する制御とは、全体を改変することなく生分解性の足場の一部を選択的に改変する能力をいう。
【0024】
粒子のポリマー組成、および形態を変化させることによって、長時間にわたる適度な一定の用量を可能にし、種々の徐放特性を効率的に調整し得る。表面の官能性を有するか、またはこれを有さない固体ナノ粒子を操作するために使用される種々の物質が、存在した(Briggerら、Adv Drug Deliv Rev 54、631−651、(2002)によって概説される)。おそらく、脂肪族ポリエステル(具体的には、疎水性のポリ(乳酸)(PLA)、より親水性のポリ(グリコール酸)PGAおよびこれらのコポリマー、ポリ(ラクチド−co−グリセリド)(PLGA))が、最も幅広く使用される。これらのポリマーの分解速度、および多くの場合では、対応する薬物の放出速度は、数日間(PGA)から数ヶ月間(PLA)まで変化し得、そしてPLA対PGAの比を変化させることによって容易に操作される。第2に、PLGAならびにそのホモポリマーであるPGAおよびPLAの生理学的適合性は、ヒトにおける安全な使用のために確立されている;これらの物質は、薬物送達システムを含む種々のヒトにおける臨床応用において30年を超える歴史を有する。最後に、PLGAナノ粒子は、受動的な標的化または能動的な標的化のいずれかによって、標的組織に対する薬物の薬物動態および体内分布を改善する種々の方法で処方され得る。
【0025】
(A.ポリマー)
非生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーが使用されて、上記微粒子が形成され得る。この好ましい実施形態において、この微粒子は、生分解性ポリマーから形成される。非生分解性ポリマーは、経口投与のために使用され得る。一般に、合成ポリマーが好ましいが、天然ポリマーは、使用され得、そしてこの天然ポリマー(特に、加水分解によって分解する天然の生体高分子のいくつか(例えば、ポリヒドロキシアルカノエートのいくつか))は、等価であるか、またはさらに良好な性質を有し得る。代表的な合成ポリマーは、以下である:ポリ(ヒドロキシ酸)(例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸−co−グリコール酸))、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリ(エチレングリコール))、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリ(エチレンオキシド))、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル(例えば、ポリ(塩化ビニル))、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリウレタンおよびそれらのコポリマー、誘導体化セルロース(例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシルエチルセルロース、セルローストリアセテート、および硫酸セルロースナトリウム塩(本明細書中で、まとめて「合成セルロース」といわれる))、アクリル酸もしくはメタクリル酸のポリマー、またはそのコポリマーもしくは誘導体(エステル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)(本明細書中で、まとめて「ポリアクリル酸」といわれる)が挙げられる)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ならびにそれらのコポリマーおよびブレンド。本明細書中で使用される場合、「誘導体」は、化学基の置換、付加および当業者によって慣用的に行われる他の改変を有するポリマーを含む。
【0026】
好ましい生分解性ポリマーの例としては、ヒドロキシ酸(例えば、乳酸およびグリコール酸)のポリマー、およびPEGとのコポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ならびにそれらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0027】
好ましい天然ポリマーの例としては、アルブミン、コラーゲン、ゼラチンおよびプロラミンのようなタンパク質(例えば、ゼイン)、ならびにアルギネート、セルロース誘導体およびポリヒドロキシアルカノエートのような多糖類(例えば、ポリヒドロキシブチレート)が挙げられる。上記微粒子のインビボでの安定性は、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)と共重合されたポリ(ラクチド−co−グリセリド))を使用することによって、生成の間に調整され得る。PEGが、外部表面上に曝される場合、PEGの親水性に起因して、これらの物質が循環する時間は、増加し得る。
【0028】
好ましい非生分解性ポリマーの例としては、酢酸エチレンビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、それらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
【0029】
好ましい実施形態において、PLGAは、生分解性ポリマーとして使用される。
【0030】
上記微粒子は、カプセル化されるかまたは結合される分子を、数日間〜数週間の期間にわたって放出するように設計される。放出の持続期間に影響する因子としては、周囲の媒体のpH(pH5以下における放出のより高い速度は、酸によってPLGAの加水分解が触媒されることに起因する)およびポリマーの組成が挙げられる。脂肪族ポリエステルは、疎水性の点で異なり、そしてそれもまた、分解速度に影響する。具体的に、疎水性のポリ(乳酸)(PLA)、より親水性のポリ(グリコール酸)PGAおよびそれらのコポリマー(ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA))は、種々の放出速度を有する。これらのポリマーの分解速度、および多くの場合に、対応する薬物の放出速度は数日間(PGA)から数ヶ月間(PLA)まで変化し得、そしてPLA対PGAの比を変化させることによって容易に操作される。
【0031】
(微粒子の処方)
高密度微粒子を作製するための実施例に記載される好ましい方法に加えて、微粒子が、異なる方法を使用して異なるポリマーから製作され得る応用が存在し得る。
【0032】
(a.溶媒蒸発)。この方法において、上記ポリマーは、塩化メチレンのような揮発性有機溶媒中に溶解される。薬物(可溶性であるか、または微細な粒子として分散されるかのいずれか)は、この溶液に添加され、そしてこの混合物は、界面活性剤(例えば、ポリ(ビニルアルコール))を含む水性溶液中に懸濁される。得られたエマルションは、大部分の有機溶媒が蒸発するまで攪拌され、固体微粒子を残す。得られた微粒子は、水で洗浄され、そして凍結乾燥器中で一晩乾燥される。異なるサイズ(0.5〜1000ミクロン)および形態を有する微粒子が、この方法によって得られ得る。この方法は、ポリエステルおよびポリスチレンのような比較的安定なポリマーに対して有用である。
【0033】
しかし、不安定なポリマー(例えば、ポリ無水物)は、水の存在に起因して製作プロセスの間に分解し得る。これらのポリマーのために、完全に無水の有機溶媒において行われる以下の2つの方法が、より有用である。
【0034】
(b.熱融解マイクロカプセル化(hot melt microencapsulation))。この方法において、このポリマーは、最初に融解され、次いで上記固体粒子と混合される。この混合物は、継続的な攪拌によって、(シリコーン油のような)非混和性溶媒中に懸濁され、そしてこのポリマーの融点より5℃高い温度まで加熱される。一旦このエマルションが安定化されると、これは、そのポリマー粒子が凝固するまで冷却される。得られた微粒子は、石油エーテルを用いたデカンテーションによって洗浄されて、流動性の高い(free−flowing)粉末を生じる。0.5ミクロン〜1000ミクロンの間のサイズを有する微粒子が、この方法によって得られる。この技術によって調製される球体の外部表面は、通常、滑らかであり、そして高密度である。この手順は、ポリエステルおよびポリ無水物から作製される微粒子を調製するために使用される。しかし、この方法は、1,000〜50,000の間の分子量を有するポリマーに限定される。
【0035】
(c.溶媒除去)。この技術は、主に、ポリ無水物に対して設計される。この方法において、上記薬物は、塩化メチレンのような揮発性有機溶媒における選択されたポリマーの溶液中に分散されるか、または溶解される。この混合物は、有機性油(例えば、シリコーン油)中で攪拌することによって懸濁されて、エマルションを形成する。溶媒蒸発とは異なり、この方法は、高い融点および異なる分子量を有するポリマーから微粒子を作製するために使用され得る。1ミクロン〜300ミクロンの間の範囲である微粒子が、この手順によって得られ得る。この技術によってもたらされる球体の外部の形態は、使用されるポリマーの型に大きく依存する。
【0036】
(d.噴霧乾燥)。この方法において、上記ポリマーは、有機溶媒中に溶解される。既知の量の活性な薬物は、このポリマー溶液中に、懸濁される(不溶性の薬物)か、または共に溶解される(可溶性の薬物)。その後、この溶液またはこの懸濁物は、噴霧乾燥される。小型噴霧乾燥器(Buchi)に関する代表的な処理パラメーターは、以下の通りである:ポリマー濃度=0.04g/mL、入口温度=−24℃、出口温度=13〜15℃、吸引器の設定=15、ポンプの設定=10mL/分、噴霧の流量=600Nl/時間、およびノズルの直径=0.5mm。1ミクロン〜10ミクロンの間の範囲である、使用されるポリマーの型に依存する形態を有する微粒子が、得られる。
【0037】
(e.ヒドロゲル微粒子)。ゲル様式のポリマー(例えば、アルギネート)から作製される微粒子は、従来のイオン性のゲル化技術によって生成される。これらのポリマーは、最初に水溶液中に溶解され、硫酸バリウムまたはいくつかの生物活性剤と混合され、次いで微小滴形成デバイスを通して押し出される。このデバイスは、いくつかの場合において、この液滴を断ち切るために窒素ガスの流れを利用する。ゆっくりと(約100〜170RPM)撹拌されるイオン性の硬化槽(hardening bath)が、形成した微小滴を捕らえるために押し出しデバイスの下に配置される。これらの微粒子は、ゲル化を起こさせるのに十分な時間を与えるために、この槽において20〜30分間インキュベートされ続ける。微粒子の粒子サイズは、種々のサイズの押し出し機を使用するか、または窒素ガスもしくはポリマー溶液のいずれかの流速を変化させることによって制御される。キトサン微粒子は、酸性溶液中にこのポリマーを溶解し、そしてトリポリリン酸を用いてそれを架橋することによって調製され得る。カルボキシメチルセルロース(CMC)微粒子は、酸性溶液中にこのポリマーを溶解し、そして鉛イオンを用いてこの微粒子を沈殿させることによって調製され得る。負に荷電したポリマー(例えば、アルギネート、CMC)の場合において、異なる分子量の正に荷電したリガンド(例えば、ポリリジン、ポリエチレンイミン)は、イオン性に結合され得る。
【0038】
(B.カプセル化されるか、または粒子の表面に結合される分子)
カプセル化されるか、または(直接的かまたはカップリング分子を介するかのいずれかによって)上記ポリマーに結合される分子の、以下の原則的な2つの群が存在する:標的性分子、結合分子、および治療剤、栄養剤、診断剤または予防剤。これらは、標準的な技術を使用してカップリングされ得る。送達される標的性分子または治療分子は、ポリマー、またはこのポリマーに組み込まれる物質(例えば、脂肪酸)に、直接カップリングされ得る。
【0039】
官能性とは、官能性化学基(カルボン酸、アルデヒド、アミン、スルフヒドリルおよびヒドロキシル)を介した、上記粒子の表面に対するリガンドの結合体化をいい、これらの基は、この粒子の表面上に存在し、そして結合されるリガンド上に存在する。官能性は、2つの手段でこの粒子に導入され得る。第1は、この微粒子の調製の間(例えば、官能性化学基を有する安定剤の組み込みによる微粒子のエマルション調製の間)である。実施例1は、この型の処理を示し、この処理によって、官能性の両親媒性分子が、エマルション調製の間にこの粒子中に挿入される。第2は、粒子の調製後であり、これは、直接的に架橋する粒子およびホモ二官能性架橋剤またはヘテロ二官能性架橋剤を有するリガンドによるものである。この第2の手順は、適切な化学および適切な種類の架橋剤(以下でより詳細に議論されるような、CDI、EDAC、グルタルアルデヒドなど)、または調製後に粒子表面の化学的改変を介してこの粒子表面にリガンドをカップリングする任意の他の架橋剤を使用し得る。この第2の種類はまた、両親媒性分子(例えば、脂肪酸、脂質)または官能性の安定剤が受動的にこの粒子表面に吸着され、そして付着させられ得、それによってリガンドに係留するための官能性末端基が導入される処理を含む。
【0040】
この好ましい実施形態において、上記表面は、以下の実施例に示されるように、ポリマー相のHLBもしくは親水親油バランスに一致する両親媒性ポリマーまたは界面活性剤を挿入するために改変される。HLBは、1〜15の範囲である。低いHLBを有する界面活性剤は、より脂質を好み、したがって油中水型エマルションをもたらす傾向があるが、高いHLBを有する界面活性剤は、より親水性であり、そして水中油型エマルションをもたらす傾向がある。脂肪酸および脂質は、10を下回る低いHLBを有する。標的基(例えば、親水性アビジン)との結合体化の後、HLBは、10を上回って増加する。この結合体は、エマルション調製において使用される。1〜10の範囲のHLB、より好ましくは1と6との間のHLB、最も好ましくは1から5までの間のHLBを有する任意の両親媒性ポリマーが、使用され得る。これとしては、全ての脂質、脂肪酸および界面活性剤が挙げられる。
【0041】
1つの有用なプロトコルは、薬剤(非プロトン溶媒(例えば、DMSO、アセトン、またはTHF)中のカルボニルジイミダゾール(CDI))による、ポリマー鎖上のヒドロキシル基の「活性化」を包含する。CDIは、リガンド(例えば、タンパク質)の自由なアミノ基を結合することによって置換され得るヒドロキシ基を有する、イミダゾリルカルバメート複合体を形成する。この反応は、N−求核置換反応であり、そしてこのリガンドのこのポリマーに対する安定なN−アルキルカルバメート結合を生じる。このリガンドのこの「活性化された」ポリマーマトリックスに対する「カップリング」は、9〜10の範囲のpHにおいて最大であり、そして通常は、少なくとも24時間を要する。この得られたリガンド−ポリマー複合体は、安定であり、そして加水分解に長時間抵抗する。
【0042】
別のカップリング方法は、N−ヒドロキシルスルホスクシンイミド(スルホNHS)による結合体化における1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)または「水溶性CDI」の使用を包含し、このスルホNHSは、7.0の生理的pHにおける全体的に水性の環境中で、ポリマーの曝されたカルボキシル基をリガンドの自由なアミノ基にカップリングする。簡単にいうと、EDACおよびスルホ−NHSは、このポリマーのカルボキシル基を有する活性化エステルを形成し、このカルボキシル基は、ペプチド結合を形成するリガンドのアミン末端と反応する。得られたペプチド結合は、加水分解に対して抵抗性である。この反応におけるスルホ−NHSの使用は、EDACカップリングの有効性を10倍の因数で増加させ、そして上記リガンド−ポリマー複合体の残存率(viability)を確保する特別に穏やかな条件を提供する。
【0043】
これらのプロトコルのいずれかを使用することによって、上記ポリマーマトリックスを溶解しない適切な溶媒系において、ヒドロキシル基またはカルボキシル基のいずれかを含むほぼ全てのポリマーを「活性化する」ことが可能である。
【0044】
自由なヒドロキシル基および自由なカルボキシル基を有するリガンドをポリマーに結合するための有用なカップリング手順は、架橋剤(ジビニルスルホン)の使用を包含する。この方法は、糖類または生体接着性を有する他のヒドロキシル化合物をヒドロキシルマトリックスに結合するために有用である。簡単にいうと、この活性化は、このポリマーのヒドロキシル基に対するジビニルスルホンの反応を包含し、この反応は、このポリマーのビニルスルホニルエチルエーテルを形成する。これらのビニル基は、アルコール、フェノールおよびアミンにさえもカップリングする。活性化およびカップリングは、pH11で行う。この結合は、1〜8の範囲のpHにおいて安定であり、そして腸を通して移行するのに適切である。
【0045】
二重結合によるリガンドとポリマーとのカップリングのための当業者に公知である任意の適切なカップリング方法(UV架橋の使用が挙げられる)は、上記ポリマーに対する分子の結合のために使用され得る。
【0046】
カップリングは、好ましくは共有結合によるものであるが、このカップリングはまた、間接的であってもよい(例えば、上記ポリマーに結合されたリンカーを介するか、または2つの分子(例えば、ストレプトアビジンおよびビオチン)間の相互作用を介する)。これはまた、浸漬コーティングを使用した静電気引力によるものであり得る。
【0047】
送達される分子はまた、Luoら、「Controlled DNA delivery system」、Phar.Res.、16:1300−1308(1999)に記載されるような、ダブルエマルジョン溶媒蒸発(double emulsion solvent evaporation)技術を使用して、上記ポリマー中にカプセル化され得る。
【0048】
(i.送達される分子)
送達される薬剤としては、治療用化合物、栄養用化合物、診断用化合物、および予防用化合物が挙げられる。タンパク質、ペプチド、炭水化物、多糖類、核酸分子、および有機分子、ならびに診断剤が、送達され得る。組み込まれる好ましい物質は、薬物および造影剤である。治療剤としては、抗生物質、抗ウイルス剤(特に、単独か、HIVまたはB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスの処置のためのヌクレオシドと組み合わせたプロテアーゼインヒビター)、抗寄生生物剤(蠕虫、原虫)、抗がん剤(本明細書中で、「化学療法剤」といわれ、ドキソルビシン、シクロスポリン、マイトマイシンC、シスプラチンおよびカルボプラチン、BCNU、5FU、メトトレキサート、アドリアマイシン、カンプトテシン、ならびにタキソールのような細胞傷害性薬物が挙げられる)、抗体およびその生物活性フラグメント(ヒト化抗体、単鎖抗体、およびキメラ抗体が挙げられる)、抗原およびワクチン処方物、ペプチド薬物、抗炎症剤、ビタミンのような栄養補助剤(nutraceuticals)、ならびにオリゴヌクレオチド薬物(DNA、RNA、アンチセンス、アプタマー、リボザイム、リボヌクレアーゼPに対する外部ガイド配列、および三重鎖形成剤が挙げられる)が挙げられる。
【0049】
送達される特に好ましい薬物としては、抗脈管形成剤、抗増殖剤および化学療法剤(例えば、ラパマイシン)が挙げられる。これらの薬剤は、微粒子に組み込まれて、癌または眼の疾患を処置するか、または血管への投与後の再狭窄を防止するために使用され得る。例示的な診断用物質としては、常磁性分子、蛍光化合物、磁性分子、および放射性核種が挙げられる。
【0050】
あるいは、上記生分解性ポリマーは、細胞物質(例えば、免疫学的応答を誘導するために、以下に記載されるような抗原提示細胞に送達される細胞物質のような)をカプセル化し得る。
【0051】
ペプチドベースのワクチン、タンパク質ベースのワクチン、およびDNAベースのワクチンは、種々の疾患または状態に対する免疫を誘導するために使用され得る。例えば、性感染病および望まない妊娠は、女性の健康および福祉に影響を及ぼす世界的な問題である。女性の生殖管内で特異免疫を誘導する有効なワクチンは、STDのリスクを大きく減少させ得、一方で、抗精子(anti−sperm)抗体を誘起するワクチンは、免疫性避妊薬(immunocontraceptive)として機能する。大規模な研究は、遠位部位(例えば、経口、経鼻、または直腸)におけるワクチン接種が女性の生殖管内で粘膜免疫を誘導し得ることを示した。これらの選択物の経口投与は、患者のコンプライアンス、容易な投与および広範な使用に対する適合性についてのその可能性に起因して、最も大きな関心を得てきた。タンパク質を使用する経口ワクチン接種は、可能であるが、通常は非能率的であるか、または非常に高用量を必要とする。DNAを使用する経口ワクチン接種は、より低い用量において潜在的に有効であるが、ほとんどの場合において、「むき出し(naked)のDNA」が、胃の酸性度および胃腸管における消化酵素の両方に対して感受性であるので、無効性であった。
【0052】
細胞媒介性免疫は、ウイルス感染細胞を検出し、そして破壊するのに必要とされる。ほとんどの従来のワクチン(例えば、タンパク質ベースのワクチン)は、体液性免疫のみを誘導し得る。DNAベースのワクチンは、ウイルスまたは寄生生物に対してワクチン接種するための固有の手段を示す。なぜなら、DNAベースのワクチンは、体液性免疫および細胞媒介性免疫の両方を誘導し得るからである。さらに、DNAベースのワクチンは、従来のワクチンより潜在的に安全である。DNAワクチンは、製造および保存に関して、相対的に、より安定であり、そしてより対費用効果が高い。DNAワクチンは、2つの主要な構成要素(DNAキャリア(または送達ビヒクル))および抗原をコードするDNA)からなる。DNAキャリアは、分解からDNAを保護し、そしてDNAの、特異的な組織または細胞への進入および効率的なレベルでの発現を容易にし得る。
【0053】
生分解性ポリマー粒子は、DNAベースのワクチン用のDNA送達ビヒクルとしての使用に対していくつかの利点を提供する。これらのポリマー粒子は、生分解性でありかつ生体適合性であり得、そしてこれらは、過去に、粘膜の免疫応答または体液性免疫応答を誘導する治療的な用途において、首尾よく使用されてきた。ポリマーの生分解産物は、代表的に、比較的ゆっくりとした速度で形成され、生物学的に適合性であり、そして代謝可能部分を生じる。生分解性ポリマー粒子は、数ミクロン(微粒子)の直径〜1ミクロン未満の直径(ナノ粒子)の粒子の範囲であるサイズで製造され得る。
【0054】
樹状細胞(DC)は、ヒトにおいて細胞免疫性の応答を誘導するための強力な抗原提示細胞であることが認識される。DCは、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)応答およびCD4+Tヘルパー(Th1)応答の両方を初回刺激する。DCは、抗原を捕捉し、そしてそれをプロセシングし得、そして捕捉した抗原を提示し、そしてT細胞応答を誘導するために局所(regional)リンパ節に移動し得る。未成熟のDCは、細胞物質(例えば、抗原をコードするDNA)を吸収し、そしてそれを加工し、そして疾患エフェクター(disease effector)に対して細胞免疫性の応答を誘導し得る。
【0055】
本明細書中で使用される場合、用語「疾患エフェクター因子」とは、被験体における疾患状態の因果関係の中心である因子をいう。特定の状況において、これらの疾患エフェクター因子は、血流中を循環し得る疾患を引き起こす細胞であり、したがってこれらの因子は、体外の操作および処置に容易に接触し得る。このような疾患を引き起こす細胞の例としては、悪性のT細胞、悪性のB細胞、自己免疫応答を媒介するT細胞およびB細胞、ならびに表面上にウイルス性もしくは細菌性のペプチドまたはタンパク質を発現する、ウイルスまたは細菌に感染した白血球が挙げられる。疾患を引き起こす細胞を増加させる例示的な疾患の分類としては、白血病、リンパ腫、自己免疫疾患、移植片対宿主病、および組織の拒絶が挙げられる。これらの疾患の状態を媒介し、そして疾患を引き起こす細胞に由来する、疾患に関連する抗原としては、MHCクラスI部位、MHCクラスII部位、またはMHC部位へのペプチドの輸送およびこの部位からのペプチドの輸送に関与する熱ショックタンパク質(すなわち、シャペロン)に結合するペプチドが挙げられる。疾患に関連する抗原としてはまた、通常、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子と結合して感染した白血球の表面上に発現される、ウイルスペプチドまたは細菌ペプチドが挙げられる。
【0056】
他の疾患を引き起こす細胞としては、固形腫瘍(例えば、肺癌、結腸癌、脳腫瘍、腎臓癌または皮膚癌)からの外科的に切除された標本から単離された細胞が挙げられる。これらの細胞は、それらが浮遊物にされるか、組織培養物において増殖させられた後に、血液の白血球と類似の様式において、体外で操作され得る。あるいは、いくつかの場合において、固形腫瘍を有する患者の循環血が、この腫瘍から離脱しかつこの循環中に進入した悪性の細胞を含み得ることが示された。これらの循環する腫瘍細胞は、容易に接触可能な癌細胞の供給源を提供し得、この癌細胞は、アポトーシスに至り得、そして抗原提示細胞に対して提示され得る。
【0057】
疾患を引き起こす細胞に加えて、疾患エフェクター因子としては、微生物(例えば、細胞、真菌、酵母、疾患に関連する抗原を発現するかまたはコードするウイルス、およびプリオン)が挙げられる。
【0058】
これらの疾患エフェクター因子は、送達ビヒクルとして生分解性ポリマー微粒子を使用して、抗原提示細胞に対して提示される。これらの負荷された微粒子は、これらの微粒子を吸収し、そしてこれらの微粒子内の物質を加工する未成熟の抗原提示細胞に曝される。これらの微粒子は、患者に投与され得、そしてこれらの微粒子と抗原提示細胞との間の相互作用は、インビボで起こり得る。好ましい実施形態において、これらの微粒子は、未成熟の抗原提示細胞を含むインキュベーションバッグ(incubation bag)中に配置され、そしてこれらの微粒子は、そのインキュベーション期間の間にこれらの抗原提示細胞によって貪食される。次いで、これらの得られた抗原提示細胞は、疾患を引き起こす因子に対する免疫応答を誘導するために、患者に投与される。
【0059】
(ii.標的性分子)
標的性分子は、標的化された細胞の表面上のレセプターまたは他の分子と結合するタンパク質、ペプチド、核酸分子、糖類または多糖類であり得る。特異性の程度は、標的性分子の選択によって調節され得る。例えば、抗体は、非常に特異的である。これらは、ポリクローナルであるか、モノクローナルであるか、フラグメントであるか、組換えであるか、または単鎖であり得、これらの多くは、市販されているか、または標準的な技術を使用して容易に得られる。表1は、リガンド標的化(ligand−targeted)ナノ粒子システムの一覧であり、この一覧は、有用なリガンドおよびそれらの標的の例を提供する。分子標的性細胞外マトリックス(「ECM」)の例としては、グリコサミノグリカン(「GAG」)およびコラーゲンが挙げられる。1つの実施形態において、ポリマー微粒子の外部表面は、これらの微粒子の、選択された細胞または組織と相互作用する能力を向上させるために改変され得る。脂肪酸結合体がこれらの微粒子中に挿入される、実施例1の方法が、好ましい。しかし、別の実施形態において、カルボキシ末端を有するポリマー微粒子の外側の表面は、自由なアミン末端を有するPAMPに結合され得る。PAMPは、細胞もしくは組織の表面上のToll様レセプター(TLR)を標的化するか、または内部的にこれらの細胞または組織に信号を送り、それによって強力に取り込みを増加させる。粒子表面に結合体化されるか、または同時にカプセル化されるPAMPとしては、以下が挙げられ得る:非メチル化CpG DNA(細菌)、二本鎖RNA(ウイルス)、リポ多糖(細菌)、ペプチドグリカン(細菌)、リポアラビノマンナン(lipoarabinomannin)(細菌)、ザイモサン(酵母)、MALP−2(細菌)のようなマイコプラズマのリポタンパク質、フラゲリン(細菌)、ポリ(イノシン−シチジン)酸(細菌)、リポテイコ酸(細菌)またはイミダゾキノリン(合成)。
【0060】
(表1:インビトロまたはインビボの治療送達について評価されたリガンド標的化ナノ粒子システムの選抜表)
【0061】
【表1】

別の実施形態において、この微粒子の外側の表面は、マンノースアミンを使用して処理され得、したがってこの微粒子の外側の表面はマンノシル化される。この処理は、その微粒子を、抗原提示細胞の表面上のマンノースレセプターにて標的細胞または標的組織に結合させ得る。あるいは、Fc部分を含む免疫グロブリン分子(標的性Fcレセプター)、熱ショックタンパク質部分(HSPレセプター)、ホスファチジルセリン(スカベンジャーレセプター)、およびリポ多糖(LPS)との表面の結合体化は、細胞または組織上のレセプターのさらなる標的である。
【0062】
微粒子に共有結合され得るレクチン(この微粒子は、ムチン層および粘膜細胞層に特異的な標的をこのレクチンに与える)としては、Abrus precatroius、Agaricus bisporus、Anguilla anguilla、Arachis hypogaea、Pandeiraea simplicifolia、Bauhinia purpurea、Caragan arobrescens、Cicer arietinum、Codium fragile、Datura stramonium、Dolichos biflorus、Erythrina corallodendron、Erythrina cristagalli、Euonymus europaeus、Glycine max、Helix aspersa、Helix pomatia、Lathyrus odoratus、Lens culinaris、Limulus polyphemus、Lysopersicon esculentum、Maclura pomifera、Momordica charantia、Mycoplasma gallisepticum、Naja mocambiqueから単離されたレクチン、ならびにレクチンコンカナバリンA、スクシニル−コンカナバリンA(Triticum vulgaris、Ulex europaeus I、Ulex europaeus II、Ulex europaeus III、Sambucus nigra、Maackia amurensis、Limax fluvus、Homarus americanus、Cancer antennarius、およびLotus tetragonolobus)が挙げられる。
【0063】
任意の正に荷電したリガンド(例えば、ポリエチレンイミンまたはポリリジン)の任意の微粒子に対する結合は、ビーズをコーティングするカチオン性基の、粘液の正味の負の電荷に対する静電気引力に起因して生体接着性を改善し得る。上記のムチン層(特に、シアル酸残基)のこれらのムコ多糖類およびムコタンパク質は、負電荷のコーティングを担う。ムチンに対する高い結合親和性を有する任意のリガンドはまた、適切な化学(例えば、実施例1の脂肪酸結合体またはCDI)を有するほとんどの微粒子に共有結合的に連結され得、そして腸に対する微粒子の結合に影響することが予期され得る。例えば、微粒子に共有結合的にカップリングされる場合、ムチンの構成成分あるいはインタクトなムチンに対して産生されるポリクローナル抗体は、増加した生体接着性を提供する。同様に、腸管の管腔表面上に露出した特異的な細胞表面レセプターを指向する抗体は、適切な化学を使用して微粒子とカップリングされる場合、ビーズの滞留時間を増加させる。リガンドの親和性は、帯電のみに基づく必要はないが、他の有用な物理的パラメーター(例えば、ムチンにおける溶解性あるいは炭水化物基に対する特異的親和性)に基づく必要がある。
【0064】
上記微粒子に対する、ムチン(純粋形態か、または部分的に精製された形態のいずれか)の天然の構成成分のいずれかの共有結合は、ビーズ−腸の界面の表面張力を減少させ、そしてムチン層におけるビーズの溶解性を増加させる。有用なリガンドの一覧としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:シアル酸、ノイラミン酸、n−アセチル−ノイラミン酸、n−グリコリルノイラミン酸、4−アセチル−n−アセチルノイラミン酸、ジアセチル−n−アセチルノイラミン酸、グルクロン酸、イズロン酸、ガラクトース、グルコース、マンノース、フコース、天然に存在するムチンの化学的処理によって調製される部分的に精製された画分のいずれか(例えば、ムコタンパク質、ムコ多糖類およびムコ多糖−タンパク質複合体、および粘膜表面上のタンパク質または糖構造に対して免疫反応性である抗体)。
【0065】
余分にペンダントのカルボン酸側鎖を含むポリアミノ酸(例えば、ポリアスパラギン酸およびポリグルタミン酸)の結合はまた、生体接着性を増加させる有用な方法を提供するはずである。15,000kDa〜50,000kDaの分子量範囲のポリアミノ酸の使用は、この微粒子の表面に結合される120個〜425個のアミノ酸残基の鎖を生じる。ポリアミノ鎖は、ムチン鎖における鎖のもつれ(entanglement)によって、およびカルボン酸の増加した電荷によって生体接着を増加させる。
【0066】
(リポソームによる表面の改変)
微粒子は、リポソーム内へのカプセル化によって、さらに改変され得る。
【0067】
(II.用途)
(A.薬物送達)
1μm以下のサイズのナノ粒子は、より大きいシステムを上回る明確な利益を提供する:第1に、小さいサイズは、この粒子が血管および組織を通って溢出することを可能にする。これは、腫瘍血管にとって特に重要であり、腫瘍血管は、多くの場合、正常な組織と比較して、拡張型であり、そしてミクロン未満の平均孔径の小穴を有する。第2に、生分解性ポリマーおよびカプセル化する薬物から作製される固体ナノ粒子は、持続的な細胞内薬物送達にとって(特に、標的が細胞質である薬物にとって)理想的である。血管平滑筋に対して局所的に送達されるデキサメタゾン−負荷ナノ粒子によるこの用途の例は、より大きく、そして持続的な抗増殖活性を示した。このことは、遊離の薬物と比較して、この薬物と細胞質の糖質コルチコイドレセプターとの、より効率的な相互作用を示す。この投薬負荷は、カプセル化の材料の性質に依存して変わる。最初の総量の80%までの組み込まれる薬剤が、これらの微粒子中にカプセル化され得る。
【0068】
上記微粒子は、静脈内か、皮下か、もしくは筋肉内に注射されるか、鼻の系もしくは肺の系に投与されるか、粘膜表面(膣、直腸、頬、舌下)に投与されるか、または経口送達のためにカプセル化されるかにかかわらず、薬物送達(本明細書中で使用される場合、「薬物」は、治療剤、栄養剤、診断剤および予防剤を含む)に有用である。上に記載されるように、用語「微粒子」は、他に明記されない限り、「ナノ粒子」を含む。この投薬量は、送達される薬物ならびに投与の方法および形態に基づく標準的な技術を使用して決定される。これらの微粒子は、乾燥粉末としてとして投与され得るか、(水、生理食塩水、緩衝生理食塩水などの中の)水性懸濁物として投与され得か、ヒドロゲル、有機ゲル、もしくはリポソーム中で投与され得るか、またはカプセル、錠剤、トローチ剤、もしくは他の標準的な薬学的賦形剤中で投与され得る。
【0069】
粘膜表面に対する送達のための好ましい実施形態において、上記微粒子は、上に記載されるような粘膜タンパク質または細胞外マトリックスに対するリガンドを含むために改変される。
【0070】
(i.再狭窄および移植術)
経皮的経管的冠状動脈形成術(PTCA)は、小さいバルーンが先端に付いた(balloon−tipped)カテーテルが狭冠状動脈を伝わり、次いでその動脈を再度開口するために膨らむ手順である。現在、これは、毎年約250,000〜300,000人の患者において行われる。この療法の主な利点は、この手順が成功した患者は、冠状動脈バイパス移植片の、より侵襲性の外科的手順を受ける必要がない点である。PTCAに伴う主な困難性は、血管形成術後の血管の閉鎖(PTCAの直後の血管の閉鎖(急性の再閉塞)および長期の血管の閉鎖(再狭窄)の両方)の血管の閉鎖の問題である。
【0071】
急性の再閉塞の機構は、数種の要因が関与すると考えられ、そして結果的に起こる動脈の閉鎖を伴う血管の萎縮(recoil)、および/または新たに開いた血管の損傷距離に沿った血小板の沈着から生じ得る。この血小板の沈着は、その後、フィブリン/赤血球の血栓を形成する。血管形成術後の再狭窄(慢性的な再閉鎖)は、急性の再閉塞より、ずっとゆっくりとしたプロセスであり:部分的な病変を有する患者の30%および慢性的で全体的な病変を有する患者の50%は、血管形成術後に再狭窄へ進む。再狭窄を促進する正確なホルモンのプロセスおよび細胞のプロセスは、まだ研究中であるが、現在、動脈硬化的(artherosclerotically)に塞がれた動脈を開く工程に加えて、PTCAのプロセスがまた、常在性の冠状動脈の平滑筋細胞(SMC)を損傷することが理解される。この傷害に対する応答において、血小板が接着する工程、マクロファージ、白血球、または平滑筋細胞(SMC)自体が浸潤する工程は、その後の内側のSMCの次なる増殖、および内弾性板から血管内膜の領域を通る移動を伴って、細胞由来の成長因子を放出する。内膜のSMCのさらなる増殖および過形成、ならびに最も著しくは、3〜6ヶ月間にわたる大量の細胞外マトリックスの産生は、冠血流を顕著に遮断するのに十分な、血管の空間の充填および狭窄化を生じる。
【0072】
再狭窄の処置は、一般に、重症例における冠状動脈バイパス移植片(CABG)を含む、さらなるより侵襲性の手順を必要とする。したがって、再狭窄を防止するための方法、または初発性の形態を処置するための方法は、積極的に取り組まれている。再狭窄を防止するための1つの可能性のある方法は、単球の局所的な浸潤/活性化をブロックし、それによってSMCの増殖および移動を引き起こす成長因子の分泌を防止する、抗炎症化合物の投与である。他の有力な抗再狭窄化合物としては、SMCの増殖を阻害し得る抗増殖剤(例えば、ラパマイシンおよびパクリタキセル)が挙げられる。一般に、ラパマイシンは、器官移植拒絶のインヒビターとして最も知られる免疫抑制剤と見なされる。しかし、ラパマイシンはまた、数種の酵母感染および癌の特定の形態を処置するためにも使用される。商品名Taxol(登録商標)で公知であるパクリタキセルは、種々の癌(最も明白には、乳癌)を処置するのに使用される。
【0073】
しかし、抗炎症化合物および抗増殖化合物は、抗再狭窄の有効量で全身的に投与される場合、毒性であり得る。さらに、阻害されなければならない正確な細胞の機能、および長期の血管の開存性(6ヶ月間より長い)を達成するのに必要な阻害の持続期間は、現在、知られていない。さらに、各薬物はそれぞれの処置の持続期間および送達速度を必要とし得ることが、考えられる。したがって、インサイチュ、すなわち抗再狭窄剤でコーティングしたステントを使用する部位特異的薬物送達は、熱心な臨床調査の焦点となってきた。ラパマイシンおよびパクリタキセルのステントベースの送達における最近のヒトの臨床研究は、優れた短期の抗再狭窄の有効性を示した。しかし、ステントは、非常に高い機械的ストレスに起因する欠点、ステント留置のための複雑な手順の必要性、ならびに拡張および収縮に関する製造上の問題を有する。
【0074】
ナノ粒子を使用する標的化薬物送達についての最も有望な用途の1つは、カテーテルのような介入性の手順を使用した局所適用における用途である。潜在的な用途は、治療剤を動脈壁に局在化させて再狭窄を阻害するための動脈内薬物送達に集中してきた(Labhasetwarら、J Pharm Sci 87、1229−1234(1998);Songら、J Control Release 54、201−211(1998))。再狭窄は、上に記載されるように、介入性の手順(例えば、バルーン血管形成術またはステント術)後の、動脈の再閉塞である。薬物負荷したナノ粒子は、カテーテルを介して動脈の管腔に送達され、そしてそれらのサイズのおかげで保持されるか、またはこれらの粒子は、荷電した粒子または細胞外マトリックスを標的化する粒子のような、非特異的相互作用によって、動脈壁を能動的に標的化し得る。全体的に正の電荷を提示するように操作された表面改変ナノ粒子は、負に荷電した動脈壁に対する接着を容易にし、そして異なるモデルにおける未改変ナノ粒子と比較して、7〜10倍より大きい動脈局在化薬物レベルを示した。これは、イヌおよびブタにおいて、冠状動脈の再狭窄を防止する効力を有することを示した(Labhasetwarら、J Pharm Sci 87、1229−1234(1998))。デキサメタゾンを負荷され、そして動脈中で受動的に保持されたナノ粒子は、血管の傷害後の新生内膜形成(neointimal formation)の減少を示した(Guzmanら、Circulation 94、1441−1448(1996))。
【0075】
上記微粒子(および/またはナノ粒子)は、再狭窄を防止するか、または減少させるために、これらの手順において使用され得る。微粒子は、再狭窄を防止するか、または最小化するために、バイパス手術、移植手術または血管形成術の際に送達され得る。これらの微粒子は、血管形成術の間、またはその後に、粉末もしくは懸濁物として内皮の表面に直接投与され得るか、または処置の際に適用されるステント上にコーティングされるか、もしくはそのステントの構成要素としてコーティングされる。これらの微粒子はまた、冠状動脈バイパス手術と組み合わせて投与され得る。この用途において、粒子は、適切な薬剤(例えば、抗炎症剤または抗増殖剤)と一緒に調製される。これらの粒子は、上に記載されるように、接着性リガンドの添加によって、血管移植片の外側に接着するように作製される。同様のアプローチは、抗炎症剤または免疫抑制剤を負荷した粒子を、任意の移植された器官または組織に加えるために使用され得る。
【0076】
この実施形態において、送達される薬物は、好ましくは、単独か、または抗炎症剤(例えば、ステロイド性抗炎症剤デキサメタゾン)と組み合わせた、抗増殖剤(例えば、タキソール、ラパマイシン、シルリムス(sirulimus)、または平滑筋細胞の増殖を阻害する他の抗生物質)である。この薬物は、上記微粒子内にカプセル化され、そしてまた、必要に応じて、この微粒子に結合される。これらの微粒子の好ましいサイズは、直径1ミクロン未満であり、より好ましくは直径約100nmである。上記ポリマーは、好ましくは、数週間〜数ヶ月間にわたって分解するポリマー(例えば、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)またはポリヒドロキシアルカノエート)である。好ましくは、これらの微粒子は、表面上に高密度の接着性分子(例えば、静電気的な接着のために電荷を付加する分子、または細胞外マトリックスもしくは細胞物質に結合する分子)、または他の不活性な分子(例えば、細胞外マトリックス構成成分に対する抗体)を有する。ビオチン化粒子は、組織に対する、より高いレベルの接着を有する。
【0077】
(ii.腫瘍の処置)
受動的な送達は、腫瘍を標的化し得る。活動的な腫瘍は、急成長する腫瘍に寄与する脈管の迅速な形成に起因して、100〜800nmの細孔を有する漏出性の脈管構造を固有に発達させる。この脈管構造における欠陥とリンパ排出(drainage)の悪さとの組み合わせは、腫瘍領域内のナノ粒子の浸透および保持を向上させるのに役立つ。これは、多くの場合、EPR効果と称される。この現象は、「受動的な標的化」の形態である。上昇した腫瘍の特異性についての基盤は、腫瘍組織 対 正常細胞における、薬物負荷ナノ粒子の差次的な蓄積であり、これは、結合よりもむしろ、粒子サイズからもたらされる。正常組織は、ナノサイズの粒子に対して、より浸透性が低い密接した接合部を有する毛細管を含む。したがって、受動的な標的化は、遊離の薬物によって得られる固形腫瘍における薬物濃度に対して、数倍の固形腫瘍における薬物濃度の増加を生じ得る。
【0078】
受動的な送達はまた、哺乳動物の免疫系のリンパ器官(例えば、リンパ管および脾臓)に関し得る。これらの器官は、精細な構造を有し、そして組織液に入り込んだ侵入物(invader)を排除することに特化される。ナノ粒子は、リンパ微小管の薄い壁および小穴を有する構造の利点を利用して、リンパ管に容易に浸透し得る。脾臓に対する受動的な標的化は、濾過のプロセスを介する。実際に、脾臓は、血液の200nmより大きい外来性粒子を濾過する。この機能は、数種の血液病に対する有効な処置のための、薬物をカプセル化していナノ粒子による脾臓の標的化を容易にする。
【0079】
リポソームナノ粒子処方物および固体ナノ粒子処方物の両方は、抗癌薬物の送達についての臨床上の認可を受けている。リポソーム処方物としては、ドキソルビシンの処方物(Doxill/CaelyxlおよびMyocetl)およびダウノルビシンの処方物(Daunosome1)が挙げられる。リポソームからの薬物放出の機構は、明白でないが、キャリアから腫瘍の間質への薬物の拡散に依存すると考えられる。この拡散に続いて、腫瘍細胞による、放出された薬物の次なる取り込みが起きる。放出の機構は、未だあまり理解されておらず、このことは、インビボでの細胞の標的化のための、活性なリガンドの付加に関与する用途の進歩を妨げる。最近、FDAは、転移性乳癌を処置するための注射用懸濁物として、Abraxane(アルブミンが結合したパクリタキセルのナノ粒子処方物)を認可した。さらに、他の固体ナノ粒子ベースの癌治療は、臨床試験について認可されている(例えば、REXIN−GTM(自己の細胞周期制御遺伝子(すなわち、抗癌遺伝子)の変異型を有する標的化ナノ粒子ベクターシステム)の、結腸直腸癌に対する介入としての肝動脈への注入の安全性を評価する第1相臨床試験が、認可されている)。
【0080】
本明細書中に記載される粒子は、腫瘍の処置(特に、標的化が、有益であり、そして高用量の望ましい化学療法剤の送達である処置)に有効であるべきである。標的化粒子送達の重要な特徴は、その粒子の表面上にリガンドを提示しつつ、同時に、高密度の薬物を保有する能力である。薬物分子を抗体または合成ポリマーに係留することによって作製される他の薬物キャリアシステム(例えば、免疫毒素または薬物−免疫複合体)が、通常、標的細胞に対して、1つのキャリアあたり10個未満の薬物分子を送達することは、周知である。一方で、標的化高密度ナノ粒子は、その表面上の数千個の薬物分子、およびそれらの内部の数百万個の分子を送達し得る。
【0081】
1つの重要な標的は、E−セクレチンであり、これは、免疫系細胞の循環の抑止に関与し、そして炎症プロセスおよび免疫プロセスによって差次的にアップレギュレーションされ、選択的標的化によって腫瘍の血管を含む脈管構造に対する治療剤の送達を増強させるのに有用であるべきである。標的の第2の重要な分類は、ビタミンB12、葉酸、ビオチンおよびチアミンの取り込みに関与するレセプターである。これらは、癌細胞の表面上に差次的に過剰発現され、数種の型の癌(卵巣癌、乳癌、肺癌、腎臓癌および結腸直腸癌が挙げられる)に対して潜在的な標的を生成する。活性な免疫療法を増強させ、そして強力なワクチン接種を誘導するための最も有望なストラテジーの1つは、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞(DC))に対する抗原負荷ナノ粒子の標的化である。生分解性PLGA中にtoll様レセプター(TLR)を組み込んでいるナノ粒子は、DCに対する抗原の効率的な送達およびT細胞免疫応答の強力な活性化を示した。
【0082】
標的に結合するナノ粒子の全体的な強度は、リガンド−標的相互作用の親和性および粒子表面上に提示される標的性リガンドの数の両方の関数である。本発明の技術によって生成されるナノ粒子は、それらの表面上に何千ものリガンドを有する。これは、リガンドのモノマー形態がそれらの標的レセプター(例えば、単鎖可変フラグメント(scFv))に対して弱い親和性を有するリガンドについての、特に有用な特徴である。ほとんどの場合において、これらのリガンドは、マルチマーへと再操作されて標的細胞またはペプチド/主要組織適合性複合体(ペプチド/MHC)に対する相互作用アビディティーを増加させなければならない(ペプチド/MHCは、標的T細胞レセプターに対して弱い親和性を有する)。例えば、多価性は、T細胞に対するペプチド/MHCの相互作用アビディティーを最大で100倍まで増加させ、抗原特異的な標的T細胞に対する、増強した相互作用および有効な薬物送達を容易にする。
【0083】
(iii.黄斑変性)
黄斑変性(MD)は、斑内の組織(中心視覚を担う網膜の一部)が変性する場合に生じる、慢性の眼疾患である。斑の変性は、中心視覚のぼやけまたは視野の中心における盲点を引き起こす。黄斑変性は60歳より高齢の人において最も頻繁に生じ、この場合、これは、加齢性黄斑変性(ARMD)または(AMD)と呼ばれる。AMDは、米国および多くの欧州諸国において、失明の主な原因である。AMD症例のうちの約85%〜90%は、乾燥形態、萎縮性形態または非滲出性形態であり、ドルーゼンと呼ばれる脂肪沈着物の黄ばんだスポットが斑上に現れる。残りのAMD症例は、湿潤形態(脈絡膜(網膜の裏側の眼の一部)内で新規に形成する血管から網膜への漏出のため、そのように呼ばれる)である。通常、脈絡膜内の血管は、網膜に栄養素を搬入し、網膜から老廃物を搬出する。時折、斑の下にある脈絡膜内の微細な血管が増殖し始める(脈絡膜新生血管形成(CNV)と称されるプロセス)。これらの血管が増殖する場合、これらは漏出し、斑内の細胞に損傷を生じ、しばしば、このような細胞の死を導く。AMDの血管新生「湿潤」形態は、視覚の重篤な喪失の大半(90%)の原因である。「湿潤」AMDまたは「乾燥」AMDに利用可能な治療は存在しない。
【0084】
AMDの正確な原因は未知であるが、寄与する因子は同定されている。AMDに寄与する因子としては、網膜および斑の細胞に酸化性の損傷を生じる反応性酸化剤、低密度コレステロールリポタンパク質(LDL)の高い血清濃度および斑内の光受容細胞の下にある脈絡膜組織の新生血管形成が挙げられる。
【0085】
湿潤AMDのための処置としては、光凝固療法、光ダイナミック療法および経瞳孔的温熱療法が挙げられる。経瞳孔的温熱療法(TTT)光凝固によるAMD処置は、810nmの赤外レーザーを使用して、患者の眼の背部に熱を送達する方法であり、これは、脈絡膜の脈管の閉鎖をもたらす。光凝固療法によるAMD処置は、網膜の裏側の新生血管形成の漏出地点にねらいを付けたレーザーを伴い、血管の漏出を防止する。光ダイナミック療法(PDT)は、ベルテポルフィン(verteporphin)またはビスダイン(Visudyne)と称されるポルフィリン型の分子の光反応性(photoreactivity)を使用し、これは、漏出性の中心窩下(subfoveal)の新生血管形成または傍中心窩(juxtafoveal)の新生血管形成に対して実施され得る。マクゲン(macugen)は、異常な血管増殖を引き起こすタンパク質を攻撃することにより異常な血管増殖を阻害するFDAに認可された薬物である。
【0086】
研究中の「湿潤」AMDのための他の可能性のある処置としては、新脈管形成インヒビター(例えば、抗VEGF抗体および抗VEGFアプタマー(NX−1838))、やはり新脈管新生を阻害することが提唱されているインテグリンアンタゴニストおよびPKC412(プロテインキナーゼCのインヒビター)が挙げられる。サイトカラシンE(Cyto E)(新規の血管の増殖を阻害する真菌種の天然産物)もまた、ヒトにおいて、異常な血管の増殖をブロックするか否か決定するために研究されている。ホルモン補充療法の役割は、女性におけるAMDの処置のために研究されている。
【0087】
「乾燥」AMDを逆転するのに利用可能な処置は存在しない。AMDの進行を阻害することを示す処置としては、抗酸化物質を含むサプリメントが挙げられる。網膜への損傷を最小限にする、穏やかな「閾値下の」ダイオードレーザー処置の使用は、「乾燥」AMDの処置のために、研究されている。AMDに対する別の可能性のある処置としては、レオフェレシス(rheopheresis)が挙げられる。これは、「血管危険因子」(LDLコレステロール、フィブリノゲンおよびリポタンパク質Aが挙げられる)を除去する治療用血液濾過の形態である。レオフェレシスは、未だにFDAの認可を受けていないが、カナダおよび欧州において利用可能である。研究中の、AMDに対する他の処置としては、網膜色素上皮(RPE)の細胞の培養および移植、メタロプロテアーゼ調節因子、A2Eのインヒビター、ビタミンA誘導体(年齢とともにヒトの眼に蓄積する)およびカロチノイド、ゼアキサンチンならびにルテインが挙げられる。
【0088】
黄斑変性が補体因子Hの欠損により引き起こされるか、またはそれに関連することを示す多くの最近の研究が存在している(Hainesら、Science.2005 Apr 15;308(5720):419−21;Edwardsら、Science.2005 Apr 15;308(5720):421−4;Kleinら、Science.2005 Apr 15;308(5720):385−9)。このことは、1種類の公知の補体インヒビター(例えば、C3bまたはその成分に対する抗体(抗体フラグメント、組換え抗体、単鎖抗体、ヒト化抗体およびキメラ抗体))の投与による、黄斑変性の処置法または予防法をもたらす。一例は、ヒト化、モノクローナル単鎖抗体フラグメントであるPexelizumabTM(Alexion Pharmaceuticals,Inc.,Cheshire,CT,USA)であり、これは、C5を阻害し、それにより、C5が切断されて活性形態になることをブロックする。可能性のあるインヒビターは、Nunnら、J Immunol.2005 Feb 15;174(4):2084−91により記載される、比較的小さく、広範に作用するC阻害性タンパク質(OmCIと称される)である。
【0089】
硝子体内投与による、薬物を負荷させた、徐放性の、そして必要に応じて標的化されるナノ粒子の眼への送達は、眼疾患に対する有望な経路である。なぜなら、眼への薬物の複数回の注射に対する必要性を排除するからである。前角膜領域での治療剤の適切な濃度の保持の問題(Mainardesら、Curr Drug Targets 6,363−371(2005))と合わせて、硝子体内に送達された生分解性ナノ粒子が、網膜色素上皮に局在(Bourgesら、Invest Ophthalmol Vis Sci 44,3562−3569(2003))し、そして眼疾患(例えば、自己免疫性ブドウ膜網膜炎)においてより高い治療効力を有する(de Kozakら、Eur J Immunol 34,3702−3712(2004))ことが示された。
【0090】
この実施形態において、薬物は、微粒子によりカプセル化され、そしてまた必要に応じて微粒子と結合される。微粒子の好ましいサイズは、直径約100nmである。ポリマーは、好ましくは、数週間〜数ヶ月の期間をかけて分解する、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)またはポリヒドロキシアルカノエートのようなポリマーである。
【0091】
好ましい実施形態において、直径1ミクロン未満の分解性粒子(好ましくは、直径約100nmの粒子)は、網膜下注射または硝子体内注射により眼内に分布され、これらは数週間〜数ヶ月の期間をかけて分解する。最も好ましい場合において、微粒子は、網膜上皮細胞へ付着性である、高密度の分子を有する。
【0092】
(B.組織工学マトリクスおよび創傷治癒包帯)
微粒子は、実施例に示されるように、増殖因子または調節性化合物の送達のために組織工学マトリクス上またはその内部に分散され得る。多くの型の材料が、組織工学における使用について公知であり、それらとしては、合成ポリマー、区画をなくした(decellularized)マトリクス、コラーゲンおよび区画をなくした組織から形成された材料が挙げられる。これらは、繊維性マトリクスまたは繊維性材料(例えば、骨修復または骨置換において使用されるもの)の形態であり得、これらは、主にヒドロキシアパタイトのような物質から構成される。別の実施形態において、創傷治癒を増強するために使用される分子(例えば、抗生物質、増殖刺激分子、新脈管形成刺激分子および他の型の薬物)を送達するナノ粒子は、創傷治癒マトリクス、移植物、包帯、骨セメントおよび外傷部位に適用される他のデバイスに適用され得る。好ましい抗生物質としては、バンコマイシン、シプロフロキサシンおよび抗感染ペプチド(例えば、ディフェンシン分子)が挙げられる。さらに、これらの移植片の血管再生が問題であり得、したがってVEGF、FGFおよびPDGFが、これらの粒子に含まれ得る。
【0093】
これらの粒子の利点は、これらが移植/適用された物質に付着し、これらが外傷部位に保持され、持続性の処置を提供することである。異なる時間に異なる量または異なる薬物を放出する混合物は、創傷(例えば、糖尿病の創傷潰瘍)の処置のために、特に有利である。リガンドは、これらの粒子がこの部位に保持されることを、細胞外マトリクスに結合することによってか、または非特異的な静電結合を介して増強するように選択され得る。さらに、他のリガンドが、細胞と粒子またはマトリクスとの相互作用を増強するように選択され得、このリガンドは、移植前に物質に添加され得るか、または移植後に添加されて物質に移動し得る。
【0094】
以下の実施例は、本発明の微粒子を使用して実施された試験を説明する。これらの実施例は、範囲を限定するとは意図されず、例示的な実施形態を示すためのみに提供されることが理解されるべきである。
【実施例】
【0095】
(実施例1:薬物標的化の改善および組織工学物質の改変のための、脂肪酸結合体による生分解性ポリエステルの表面改変)
(材料)
固有の粘度0.59dL/gを有するPLGA(lot D02022)を、Birmingham Polymers,Inc.から得た。ポリビニルアルコール(M平均値30〜70Kd)、パルミチン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS−パルミチン酸塩)、卵白由来のアビジン(アフィニティ精製された)およびビオチン−B−フィコエリトリン、アガロース上で固定化されたビオチンを、全てSigma Chemical Co.から取得した。クロマトグラフィー等級の塩化メチレンおよびトリフルオロエタノールを、Fischer Chemicalsから得た。全ての他の試薬は、試薬等級であり、得たものをそのまま使用した。
【0096】
(アビジン−パルミチン酸結合体の調製)
2%デオキシコール酸塩緩衝液を含むPBS中で、10mg/mlのアビジンと10倍の過剰量のNHS−パルミチン酸とを反応させた。この混合物を、軽く超音波処理し、そして37℃で12時間、穏やかに混合させた。過剰な脂肪酸と加水分解されたエステルとを除去するために、反応物を、0.15%デオキシコール酸塩を含むPBSに対して透析した。移動相としてのPBSによる線形メタノール勾配を使用するPrevail(登録商標)C18カラムによる逆相HPLCおよび280nmにおけるUV検出によって、生じたアビジン−パルミチン酸塩結合体を確かめた。
【0097】
(表面改変および特徴づけ)
改変された水中油中水(W/O/W)エマルジョン方法を、脂肪酸PLGA粒子の調製のために使用した。第一のエマルジョンにおいて、100μLのPBS中の蛍光ウシ血清アルブミン(BSA−FITC)を、塩化メチレンおよびトリフルオロエタノール(4:1)%V/Vに溶解させた、ボルテックス中のPLGA溶液(5ml)に滴下した。この第一のエマルジョン(W/O)を、調べたアビジン−パルミチン酸の種々の濃度を含む200mlの5%PVAに急速に添加した。この外相を、一定の室温で4時間、激しく攪拌し、塩化メチレンとトリフルオロエタノールとをエバポレートさせた。次に、生じたエマルジョンを、12,000gで15分間、遠心分離により精製し、続いて、DI水で3回洗浄した。この研究において、この後に、粒子の濾過も分類も行わなかった。粒子を凍結乾燥させ、それから−20℃で保存した。サンプルを、走査型電子顕微鏡(SEM)により特徴付けた。サンプルを、アルゴン雰囲気中、陰圧下で40mAのスパッタ電流を使用して、金でスパッタコーティングした(Dynavac Mini Coater、Dynavac USA)。SEM分析を、5〜10kVの加速電圧によるLaB電子銃を使用するPhilips XL30 SEMによって実行した。
【0098】
(表面密度および官能性特異性)
2−ヒドロキシアゾベンゼン−4’−カルボン酸(HABA)による比色アッセイを使用して、PLGA粒子上の表面アビジン基の密度を定量化した。HABAはアビジンに結合し、500nmで吸する黄橙に呈色される複合体を生成する。まず、溶液中のアビジンとHABA吸収との間の線形相関を、500nmでの吸光度を測定することにより取得した。続いて、この標準化された相関を使用して、表面アビジン基の密度を定量化した。このアッセイにおいて、乾燥粒子のうちの3mgのアリコートを、1mlの10mM HABA(10mM NaOH中の24.2mg HABA)中に懸濁した。ビオチン−フィコエリトリン(ビオチン−PE)(赤色蛍光タンパク質(PE)のビオチン結合体(240kD))を使用して、表面官能性をモニタリングした。回転振盪機上で、PBS中の示された量のビオチン−PEを、10mgの未処理の粒子および10mgの表面改変された粒子に添加した。これらの溶液を、15分間インキュベートし、それから遠心分離(10分間/11,000g)し、そしてDI水で3回洗浄した。粒子の蛍光を、フローサイトメトリーにより測定した。
【0099】
(動的条件(dynamic condition)下での標的に対する親和性)
ビオチン化アガロースビーズ(2mlの4%架橋されたアガロース)を、フリット状(fritted)ガラス製カラムに入れ、未処理粒子または改変粒子の添加前に静置させた。ベッド(bed)を軽く超音波処理し、捕捉されていた気泡を除いた。PBSでの溶出の前に、PBS中に懸濁した粒子を、この充填物の頂部に穏やかに加え、充填されたベッド中に静置させた。ベッドに添加した粒子の体積は、充填されたベッドの体積の10分の1を超えなかった。続いて、カラムを、緩衝液で注意深く満たし、そして緩衝液の一定した流れ(0.2ml/分)を、Jascoポンプにより維持した。画分を、0.5ml毎にポリスチレンUVキュベットに集め、サンプルの濁度を、600nmでのUV分光測定により分析した。混合物の濁度は、カラムからの粒子の溶出の指標であった。改変粒子については、濁度が下がった場合に、6Mグアニジン塩酸塩をカラムに添加し、記載されるように、画分を集めた。
【0100】
(表面安定性およびBSA放出の速度論)
カプセル化BSA−FITCおよび表面結合ビオチン−PEの放出を、37℃においてリン酸緩衝化生理食塩水中で行った。示される時点において、サンプルを11,000gで10分間遠心分離し、サンプルの1mlの上清を除去し、37℃で事前にインキュベートした新しい緩衝液と置き換えた。FITC含量およびPE含量を、蛍光により測定した(BSA−FITCについて(λ励起=480、λ放出=520)およびビオチン−PEについて(λ励起=529、λ放出=576))。示される時点におけるBSA−FITCの量またはビオチン−PEの量を、粒子の同一のストック10mg中の両方のタンパク質の総含量で割ることにより、放出されたタンパク質の画分を計算した。10mgの粒子を1N NaOH中に一晩溶解させることにより、BSA−FITCの総含量を測定した。1N NaOH中でBSA−FITCを滴定することにより、標準を調製した。ビオチン−PEは、粒子の表面に局在していたので、粒子のアリコート(5mg)の赤色の蛍光を、溶解させる必要なく直接測定した。
【0101】
(PLGAの足場の表面改変)
PLGA50/50足場を、塩浸出方法(25)により調製した。PLGAを、塩化メチレン中に溶解させた(500μl中、10mg)。塩化ナトリウム粒子(100mg、平均直径100<d<250を有する)を、円形PVDF容器(Cole Parmer #H−08936−00)に撒き、続いてPLGA溶液を添加した。溶媒の蒸発後(室温で24時間)、足場を、DI水で3日間、徹底的に洗浄した。足場を凍結乾燥させ、以後の使用のために−20℃で保存した。アビジン−パルミチン酸の取り込みは単純な析出手順であった。100μlの一滴を、乾燥足場の頂部に局部的に置き、RTで15分間浸漬させ、続いて1×PBS+1%BSAで5回洗浄した。表面染色のために、足場全体を、室温で10分間、ビオチン−PE溶液中でインキュベートし、続いてDI水で二回目の洗浄を行った。
【0102】
(結果および考察)
(アビジンのパルミトイル化)
パルミチン酸によりタンパク質を改変するための全体的なスキームを、図1Aに示す。NHS−パルミチン酸を、10倍過剰なモル濃度でアビジンに添加し、2%デオキシコール酸塩界面活性剤の存在下で反応させる。NHSエステルは、アビジンのアミン基と反応して、安定なアミド結合を生成し、タンパク質を疎水性にする。反応工程および精製工程の両方は、パルミチン酸塩のベシクル形成を防止するために界面活性剤の存在下であった(Huang J Biol Chem 1980;255(17):8015〜8)。緩衝液単独により単一の均一なピークとして溶出される遊離のアビジンと比較して、アビジン−パルミチン酸は、ある程度の凝集を示し、メタノールにより移動相に溶出された。このことは、結合体の疎水性の増大を反映する。移動相中のメタノールのより高い濃度において、発明者らは、カラムとの結合体の結合が種々の程度であることを示す数個の溶出ピークを観察した。可能性のある説明は、NHS−パルミチン酸が、結合体化のために、タンパク質の個々のリジン残基およびアミノ末端を標的化するということである。この結合体化は、疎水性固定相と別々に結合するパルミトイル化アビジンの不均一な集団を生じ得るプロセスである。
【0103】
(粒子の形態学に与える表面改変の影響)
未処理のアビジン粒子およびパルミトイル化アビジン粒子の両方が、不均一なサイズ分布を示した。未処理粒子および表面改変粒子の平均直径は、4μm〜7μmの範囲であった。したがって、この研究で使用されるエマルジョン中、そしてこの研究で使用される濃度でのアビジン−パルミチン酸塩の存在は、粒子のサイズ分布に有意な影響を与えなかった。驚くべきことに、エマルジョン中で結合体により調製された微粒子は、SEMにより特有なきめおよび表面の粗さを示した。この特徴は、エマルジョン中のアビジン−パルミチン酸の濃度とともに変動した。これらの画像は、ベシクルまたはラメラの形態でのパルミチン酸が、粒子の形成中にPLGAの表面上に広がることを示す。表面の拡散は、最終的なエマルジョン中、および粒子の形成中での、機械的分散または溶媒の存在(溶媒の蒸発工程の間の塩化メチレンおよびトリフルオロエタノール)または低濃度の界面活性剤の存在(0.15%デオキシコール酸塩)により促進される。
【0104】
脂質または他の両親媒性の共安定剤(co−stablizer)の添加に際して、PLGAの表面形態学において観察された特有の変化は、以前に類似の系で観察された。例えば、1,2−ジパルミトイルホスファチジコリン(dipalmitoylphosphatidycholine)(DPPC)を使用して、PLGAエマルジョンを安定化させた場合、X線光電子分光法により、表面化学において有意な変化を観察した(Evoraら、J Control Release 1998;51(2−3):143−52)。本研究は、この観察と一致し、PVAの高い表面エネルギーとは対照的に、脂質(DPPC)またはパルミチン酸の低い表面エネルギーがPLGAの表面化学を支配し、観察された形態学的変化に寄与するという事実を支持する。しかしながら、本研究は、これらの変化がまた、タンパク質へのカップリングのための表面官能基の提示を促進し得ることを明らかにする。
【0105】
(PLGA粒子上のアビジン−パルミチン酸の表面密度および官能性)
500nmにおけるHABAの吸光度の上昇は、溶液中のアビジンの存在と関連する。この関連性を使用して、PLGA粒子上の表面アビジン基の密度を確認および定量化した(表1)。エマルジョン中のPLGA1mgあたり、0.25mgの結合体に、表面密度の明らかな最大値を観察した。粒子へのアビジン−パルミチン酸塩取り込みの効率は14%〜24%の範囲であり、エマルジョン中のより低い濃度のアビジン−パルミチン酸塩において、より高い効率の取り込みを観察した。それゆえ、明らかな最大値の存在は、より高い濃度において、脂肪酸が凝集する天然の傾向を反映し得る(PLGA相に形成される脂肪酸の分配を制限する)。
【0106】
標的ビオチン化リガンドに対する、取り込まれたアビジンの官能性および特異性を確かめるために、未処理粒子およびビオチン−PEで処理された改変粒子の蛍光を、フローサイトメトリーにより比較した。表面改変粒子の平均チャネル蛍光は、コントロールの微粒子よりもおよそ3桁大きい大きさであった。この官能特異性をまた、蛍光顕微鏡検査により定性的に確かめた。蛍光画像は、結合体が局在し得る粒子上の局所的な高密度の結合領域を示す、より明るい蛍光の領域を示した。
【0107】
処理粒子の表面上の分子叢生(molecular crowding)の程度を決定するために、ビオチン−PEを、種々の濃度のアビジン−パルミチン酸により調製された微粒子に滴定した(図2)。増加量(0、0.025wt/v、0.05wt/v、0.15wt/v、0.25wt/v)の結合体により改変された表面は、より高い平均チャネル蛍光(MCF)により反映されるように、より多くのビオチン化フルオロフォアを結合した。粒子に添加されたより高い濃度のビオチン−PEにより、PEの自己クエンチングを観察した。フルオロフォアの濃度の増加に伴いMCFのわずかな減少をもたらす自己クエンチングは、局所的な領域において50Å〜100Åで近接するフルオロフォアの「叢生(crowding)」により生じ(Lakowicz JR.Principles of Fluorescence Spectroscopy.New York:Plenum Press;1986)、粒子の表面における分子叢生および高密度のビオチン−PEの指標である。
【0108】
(動的条件下での表面改変微粒子の機能性アビディティ)
生理的環境において、注射された粒子は、ほとんど静的なままではないが、流れに起因して剪断を受け、そして細胞および組織に遭遇する。これらの環境において、表面活性粒子の機能に重要な点は、表面活性粒子がそれらの標的に結合する能力である(Hammerら、Annu.Rev.Mater.Res.2001;31:387−40)。動的条件下での機能性アビディティを評価するために、未処理微粒子および表面改変微粒子を、ビオチン化アガロースビーズで充填したカラムに注入し、続いて生理食塩緩衝液で溶出した。未処理微粒子を、PBSによりカラムから迅速に溶出したが、改変微粒子は、目に見えて充填物に付着し、充填物を物理的に乱す高い流速の緩衝液によっても溶出しなかった。改変粒子の溶出には、6Mグアニジン塩酸塩(GuHCl)(ビオチン−アビジン結合を破壊することが公知である強力なタンパク質変性剤)の添加を必要とした。質量収支は、緩衝液での溶出後に1%wt〜3%wtの未処理微粒子がカラム充填物に非特異的に付着していたが、GuHCl溶出前に表面改変粒子のうちの80%−90%がカラムに結合したままであったことを示した。
【0109】
(BSAのカプセル化効率に対する表面改変の効果)
ストラテジーは、エマルジョン段階での粒子の同時カプセル化および表面改変を包含しため、アビジン−パルミチン酸の添加は、BSAのカプセル化効率に影響し得た。したがって、エマルジョン中の種々の濃度のアビジン−パルミチン酸塩で改変されたPLGA粒子中にカプセル化されるBSAの量を測定した(表2)。
【0110】
【表2】

結果は、微粒子のパルミトイル化が、濃度依存的な様式でBSAのカプセル化を増強したことを示した。0.25(wt/vol)アビジン−パルミチン酸塩で改変された粒子のカプセル化効率は、未改変粒子よりも4(fthe)倍高かった。エマルジョン中のより高い濃度のアビジン−パルミチン酸塩により、粒子の収量における増加があった(表2)。他でも、PLGAエマルジョンへのPEG化ビタミンEまたは脂質DPPCの添加によるカプセル化効率および粒子の収量に対する類似の効果が見出されている(Muら、J Control Release 2003;86(1):33−48;Muら、J Control Release 2002;80(1−3):129−44)。この一般的な効果についての可能性のある機構は、PLGA粒子形成およびカプセル化効率の増大を促進する共安定化性(co−stabilizing)両親媒性分子(例えば、脂肪酸または脂質)の存在に起因する、疎水性の安定化の増加に関連し得る。(Thomas inら、J Pharm Sci 1998;87(3):259−68)。
【0111】
(BSA放出の速度論およびアビジン−パルミチン酸塩層の安定性)
図3は、37℃、25日間の制御放出実験の期間にわたっての、未処理微粒子および表面改変微粒子の放出プロフィールを示す。未処理粒子および改変粒子の両方は、酷似したBSA放出速度論を有した(最初の24時間の間にイニシャル放出バーストがあり、その後、緩やかな放出が続き、そしてバルク侵食段階(12日目)が表面改変粒子および未改変粒子についてほぼ同時に生じた)。PE蛍光は、上清においてほとんど無視できた。遠心分離された粒子は、実験の全時間経過の間、目に見えて、明るい赤色を呈した。この時間の期間をわたって、10%未満のPE蛍光の累積的な損失を検出し、この実験の時間を通しての安定な表面官能性を示した。
【0112】
SEMを使用して、21日後の未処理粒子および改変粒子の両方の形態学を調べた。驚くべきことに、未処理微粒子は、終点において実質的な形態学的変化を示したが、改変粒子は、比較的球状の形態であった。SEMにより、より劇的ではない形態学的変化を示したことに加えて、調べた大半の微粒子において、異なるキャッピング層を観察した。これらの実験の時間経過にわたる持続的な結合アビディティと合わせて、表面改変に関連する異なる表面トポロジーゆえに、侵食された改変微粒子で観察されたさらなる表面層が、球体の分解の間のアビジン−パルミチン酸基の表面再配列および再構築に起因し得ることを仮定した。
【0113】
制御放出の間の、形態学における変化の大幅な減少および標的化する基の再構築の可能性と合わせて、表面活性(>90%)が数週間持続したという事実は、パルミトイル化アビジン表面の顕著な堅牢性および弾力性を示唆する。観察から鑑みて、これは、表面がポリマーの加水分解に起因して酸性の微気候(microclimate)を経験する可能性がある(Maderら、Pharm Res 1998;15(5):787−93;Brunnerら、Pharm Res 1999;16(6):847−53;Shenderovaら、Pharm Res 1999;16(2):241−8)。
【0114】
(PLGA足場の表面改変)
PLGA粒子の表面改変へのアプローチを、組織工学適用のための合成マトリクスを改変するための有効なストラテジーに変えた。ビオチン−PEとともにインキュベートした場合、局部的にアビジン−パルミチン酸により処理した足場は明るい赤色の蛍光を呈し、処理した領域のみに表面官能性を示した。さらに、これらの足場は、37℃、PBS中において3週間後に、依然としてその赤色を維持していた。このアプローチは単純であり、かつ組織の首尾よい増殖のための以下の3つの重要な局面を促進する:1)選択的な細胞の付着に対して、マトリクスが確実かつ容易に官能性になる能力、2)種々のリガンドを付着する点に関しての柔軟性、および3)マトリクス上に付着した細胞の長期間の増殖および分化のための、リガンドの持続的な提示。
【0115】
PLGAの表面改変のためのストラテジーは、PLGA粒子のエマルジョンの調製の間に、目的のリガンド(アビジン)に結合した機能的に活性な両親媒性脂肪酸(パルミチン酸)を導入することによる。このストラテジーはまた、組織工学適用のためのPLGA足場の局所的改変に変換された。この系の一般性およびその適応性に起因して、異なるリガンドがパルミチン酸に付着され得、種々のリガンドによる表面改変を促進し得、そしてインビボでの粒子の標的化またはクリアランスを改善し得る。例えば、同一の粒子に取り込まれたパルミトイル化PEGとパルミトイル化アビジンとの併用は、インビボ適用のための長い循環半減期と長期間の標的化薬物送達とを組み合わせる理想的なビヒクルとして役立ち得る。さらに、PLGA足場上の局所的な改変ならびにリガンドの密度および型の調整の容易さの組み合わせは、種々の適用(例えば、数種の細胞型からなる機能性組織の同時培養(co−culture)および増殖)のための異なる細胞型の比を調整する強力なストラテジーに寄与する(Quirkら、Biotech.Bioeng.2003;81(5):625−628)。
【0116】
(実施例2:タンパク質の送達のための、LPSによる非特異的な標的化)
リポ多糖類(LPS)はグラム陰性細菌の主要な外膜成分を代表し、重篤なグラム陰性感染の間に重要な役割を果たす。LPSは、TOLL様レセプター4により認識され、これは、先天免疫(非特異的な免疫)と関連するTOLLレセプターに標的化するPAMPS(病原体関連分子パターン)と称されるリガンドのクラスのうちの一つである。これらは、ワクチン接種のための抗原に対する先天免疫の応答を初回刺激するのに役立つアジュバントの非常に有効な成分である。結果として、これらは、アジュバント(例えば、活発な免疫応答を刺激する完全フロイントアジュバント)の重要な成分である。LPSは、ペンダント脂肪酸を有する多糖類バックボーンである。
【0117】
(A.皮下投与によるワクチン接種)
この特定の適用において、オボアルブミン抗原をカプセル化し、そしてマウスを、LPSで改変した粒子を使用して、皮下投与によりワクチン接種する。そして結果を、同一の抗原をカプセル化した未改変粒子によりワクチン接種したマウスと比較する。
【0118】
改変LPS粒子は、オボアルブミン抗原に対する強力な応答を誘導する一方で、未改変粒子は、非常に弱い応答を示した。またブランクの粒子は、応答を誘導しなかった。
【0119】
(方法および材料)
LPSを、微粒子の形成中、好ましくはエマルジョンの形成中に、200mgのポリマーあたり1mg〜10mgのLPSの比で添加する。オボアルブミンのカプセル化は、エマルジョンの形成中、200mgのポリマーあたり100μg〜10mgである。
【0120】
マウスを、LPS/OVA粒子、LPSを含まないOVA粒子およびブランクの粒子により皮下でワクチン接種した。3日後、マウスを屠殺し、脾細胞を単離した。脾細胞を、免疫応答について調べるために、インビトロでOVA抗原により刺激した。首尾よいワクチン接種を行った場合、脾細胞は、用量依存的な様式でOVA抗原に応答し得る。ワクチン接種を行わなかった場合、脾細胞は、応答し得ない。
【0121】
(結果)
図4Aおよび4Bは、オボアルブミンをカプセル化したLPS標的化微粒子(黒塗りの円)またはコントロールの微粒子(オボアルブミンを含まない(黒塗りのひし形)、LPSに標的化しない(白抜きの円))の皮下投与により、ワクチン接種したマウス由来の脾細胞の刺激のグラフである。図4Aは、ワクチン接種したマウス由来の脾細胞の刺激であり、図4Bは、オボアルブミン抗原の非存在下でワクチン接種したマウスの刺激である。
【0122】
(B.経口ワクチン接種)
粒子を飢餓マウスにおいて経口栄養法(oral gavage)により経口投与した場合に、同様な結果を得た。単回用量の粒子を飢餓マウスに給餌して2週間後に、良好な免疫化応答を観察した。ブースター投与を与えなかった。結果を、図5Aおよび5Bに示す。図5Aおよび5Bは、オボアルブミンをカプセル化したLPS標的化微粒子(黒塗りの円)またはコントロール(リン酸緩衝化生理食塩水(黒塗りの四角)、LPSに標的化しない(白抜きの円))の経口投与により、ワクチン接種したマウス由来の脾細胞の刺激のグラフである。図5Aは、ワクチン接種したマウス由来の脾細胞の刺激であり、図5Bは、オボアルブミン抗原の非存在下でワクチン接種したマウスの刺激である。
【0123】
(実施例3:星型PEGリンカーまたは分枝PEGリンカーの使用による微粒子の標的化の増大)
高密度の免疫調節性薬物をカプセル化する高分子キャリアへのT細胞抗原の単純な付着を促進する有効な方法を、開発した。抗原提示薬物キャリアを、無毒性、多分枝のポリエチレングリコール/ポリアミドアミン(PEG/PAMAM)樹状ビヒクルから構築した。T細胞抗原を、このビヒクルの分枝に係留した一方、薬物を、コアPAMAM(薬物の「ナノレザバ(nanoreservoir)」として作用する)中に効率的にカプセル化した。特定のT細胞集団に対する抗体および主要組織適合リガンドによるT細胞応答を調節することにおける、これらのビヒクルの効力を実証した。抗有糸分裂薬(ドキソルビシン)をカプセル化する抗原提示キャリアは、遊離の抗原よりも10倍〜100倍大きいアビディティで、その標的T細胞に結合し、一貫してT細胞応答をダウンレギュレートした。その一方で、薬物を含まない構築物は、この標的集団に強力な刺激を誘発した。提示される抗原の性質および密度ならびに薬物取り込みにわたる適応性に起因して、これらの高アビディティの人工抗原提示ビヒクルは、強力な免疫刺激手段または免疫抑制手段としての二重の役割で、臨床上の広範な使用を有する。
【0124】
T細胞免疫応答を定義付ける特徴は、その抗原の精巧な特異的な認識である。T細胞におけるこの特異的な認識は、クローン的に分布したT細胞レセプター(TCR)と抗原提示細胞上のリガンドとの相互作用により支配され、このリガンドは、内在化したタンパク質抗原に由来する短いペプチドからなり、主要組織適合(MHC)クラスI分子またはクラスII分子に結合する。ウイルスにより感染されたか、形質転換されたか、またはその他の方法により変更された細胞の認識の欠如あるいは自己抗原の誤認識は、悪性疾患および自己免疫疾患の病因を媒介し得る。したがって、T細胞レセプター複合体は、これらの疾患状態を調節するための重要な標的である。
【0125】
抗原特異的T細胞応答の強度と範囲(breadth)とを追跡する能力は疾患の診断に明らかに有用であるが、この応答を標的化し、そしてそれを調節するさらなる能力は、免疫系の欠陥を修復し、免疫能力を回復させるために使用され得る。抗原特異的応答を調節するための一つのアプローチは、抗原特異的T細胞に対する抗体またはペプチド/主要組織適合リガンド(ペプチド/MHC)の制御用量への曝露による抗原特異的T細胞の不応答またはアネルギーの誘導を包含する。第二のアプローチは、標的T細胞への直接送達のための免疫抑制薬物へのこれらの試薬の結合体化を包含する。しかしながら、キャリア抗原への薬物の結合体化は、有効な薬物送達を達成することと合わせて妨害されない抗原提示を達成するために、間接的かつしばしば困難な化学反応を必要とする。さらに、大半の抗原特異的T細胞の部分集合は通常少数で循環するという事実と合わせて、低親和性のペプチド/MHC−TCR(1μm〜100μm)は、抗原特異的T細胞への持続性の相互作用のための可溶性ペプチド/MHCモノマーの使用を妨げる。したがって、ペプチド/MHCの多量体化が、標的T細胞に対する親和性の増大のために、しばしば必要とされる。T細胞の標的化は、増大したアビディティで、かつ有意により低い解離速度でT細胞に結合することを可能にする、複数のT細胞抗原を含む構築物の使用により改善され得ることが仮定された。そのような構築物が薬物分子を負荷するさらなる能力とともに作製され得る場合、それらは、抗原特異的T細胞への薬物送達に必要な相互作用を持続する魅力的な試薬であり得る。
【0126】
可溶性多価分子を、高密度の薬物を細胞標的に送達する技術と組み合わせ、それにより、高アビディティ相互作用とT細胞の部分集合への標的化薬物送達とを組み合わせる、多用途の、生理的に適合性の多官能性システムを得た。高容量薬物キャリアとして機能する「ナノレザバ」ポリ(アミドアミン)球状コア(PAMAM)へ、ポリ(エチレングリコール)鎖(PEG)を連結することにより、堅牢な無毒性抗原提示キャリアを作製した。ドキソルビシンを、PAMAMコア中に効率的にカプセル化した(構築物1molあたり、32molのドキソルビシン)。ビオチン化抗体またはビオチン化MHCを、ストレプトアビジンリンカー(これは、PEGに共有結合している)を介してPEG鎖に非共有結合的に結合させた。構築物1つあたり、およそ13個のストレプトアビジン分子を結合させた。構築物は、T細胞に特異的であり、かつ増大したアビディティ(遊離の抗体またはペプチド/MHCキメラよりも10倍〜100倍高いアビディティ)でT細胞に結合する。この複合体は小さく(20nm〜50nmの範囲の流体力学的直径を有する)、有効な内在化および同時の蛍光検出を可能にする。ドキソルビシンを負荷させた構築物をカップリングさせたT細胞特異的抗体(抗CD3ε)によるインビトロ実験は、刺激の存在にもかかわらず、増殖の強力な阻害を明らかにした。ペプチド−特異的MHCによる実験は、同様にT細胞のIL−2応答の顕著な調節および終点増殖を明らかにした。
【0127】
(方法および材料)
マウス:Balb/Cマウス(6週齢〜8週齢)を、Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME)から取得した。2C TCRトランスジェニックマウス交配ペアは、Dr.Fadi Lakkis(Yale University School of Medicine)から好意的に提供された。動物施設内で、C57BL6バックグラウンドで交配することにより、2Cマウスをヘテロ接合性として維持した。表現型を、クローン型1B2抗体(Dr.Jonathan Schneck(Johns Hopkins School of Medicine)により提供された)により試験した。
【0128】
細胞:使用した全ての細胞を、ホモジェナイズしたナイーブなマウス脾臓から、低張性溶解によるRBCの除去後に取得した。CD8+細胞を、CD8+T細胞サブセット富化カラム(R&D systems)を使用した2C脾細胞からのネガティブセレクションにより単離した。純度>95%を、慣用的に得た。
【0129】
PEG/PAMAM:メタノール中の10wt% PAMAM Generation 6(Aldrich)を、窒素の穏やかな流れ下でエバポレートさせ、そしてさらなる操作の前に、高真空下に一晩置いた。蛍光標識された構築物を調製するために、0.2Mホウ酸塩緩衝液pH 8.0中で、24倍過剰なモル濃度のBoc−NH−PEG3400−NHSと6倍過剰なモル濃度のフルオレセイン−PEG5000−NHS(Nektar Pharmaceuticals、Huntsville AL)とをPAMAMに添加した。未標識の構築物のために、30倍過剰なモル濃度のPEG3400を使用した。混合物を穏やかにボルテックスし、回転振盪機上に24時間置いた。透析緩衝液としてホウ酸塩を使用する10,000MWCO Slide−a−Lyser(Pierce Chemical,Rockford IL)による透析によって、未反応のPEGを除去した。tBoc保護基を除去するために、複合体を48時間凍結乾燥させ、一定に攪拌しながら、室温で30分間、トリフルオロ酢酸中で再溶解させた。トリフルオロ酢酸を、真空下で1時間、除去した。残った産物をホウ酸塩緩衝液中に溶解させ、次に水中で透析した。最終的なPEG/PAMAM複合体をもう一度凍結乾燥させ、−20℃で保存した。これらの複合体の性質決定は、先の報告12に詳細に考察されている。
【0130】
ストレプトアビジン−PEG/PAMAM:ストレプトアビジン(Sigma)を、0.1M MES、0.5M NaCl緩衝液pH 5.1中に1mg/mlで溶解させることにより、アミンカップリングのために活性化させた。カップリングのための活性エステル官能基を形成するために、NHSおよびEDC(Pierce Chemical Co.)を、それぞれ5mMおよび2mMの濃度で添加し、そして室温で15分間反応させた。未反応のEDCを、終濃度20mMの2−メルカプトエタノールによりクエンチした。PEG/PAMAMへのアミンカップリングのために、100倍過剰なモル濃度の活性化ストレプトアビジンを、PEG/PAMAMに添加し、室温で2時間反応させた。200K MWCO CEエステルメンブレン(Spectrum Laboratories,Rancho Domingeuz CA)による広範な透析によって、過剰な反応物および結合体化されなかったストレプトアビジンを除去した。複合体の均質性を、移動相として30%アセトニトリルを使用する逆相HPLCによって評価した。
【0131】
動的光散乱:サイズを、動的光散乱(DLS)により測定した。装置は、532nmで作動するダイオードポンピング(pumped)レーザー(Verdi V−2/V−5,Coherent)、二重濾過された(0.1mm)トルエンで満たされた屈折率適合バットを使用するALV−SP S/N 30角度計(ALV−GmbH,Langen,Germany)およびALV−500相関器(correlator)から構成された。低濃度の構築物(<5μg/mL)を、きれいなホウケイ酸塩培養チューブにピペットで入れ、その後、90°散乱角度での自己相関関数の強度を測定した。流体力学的半径(RH)を、結果の二次キュムラント(cumulant)の非線形最小2乗フィッティング(ALV software)により決定した。
【0132】
抗体およびMHCのカップリング:ビオチン化抗体(ビオチン結合体化ハムスター抗マウスCD3εおよびビオチン結合体化ラット抗マウスCD45R/B220)(BD Biosciences Pharmingen)を、さらなる精製を行わずに使用した。可溶性MHC−IgダイマーL−Igは、Dr.Jonathan Schneck(Johns Hopkins School of Medicine)により提供された。MHCモノマーを、MHC−Igのパパイン処理により、結合実験に使用した同一のダイマーストックから調製し、そして記載されるように精製した(Pierce Immunopure Fab調製キット)。パパイン処理によるMHC−Ig Fabフラグメントの調製により、機能的に活性なタンパク質を得、これはバイオセンサー(Biacore)の表面に固定化したTCRに特異的に結合した(データは示していない)。MHC LモノマーおよびMHC Lダイマーを、pH7.4において、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(Molecular probes)により蛍光標識し、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。タンパク質濃度を、280nmでの吸光度を測定する分光測定法により決定した。穏やかな酸性条件(pH6.5)下で剥離させ、そして40倍過剰なモル濃度のペプチドおよび2倍過剰なモル濃度のb2−ミクログロブリンの存在下で再折りたたみすることにより、LモノマーおよびLダイマーの両方にペプチドを負荷させた。高次構造感受性ELISAを使用して、85%を超えるLモノマーが適切に折りたたまれたことが推定された。ビオチン化抗体またはLモノマーを、50倍過剰なモル濃度でストレプトアビジン−カップリングPEG/PAMAMに添加し、4℃で一晩インキュベートし、その後、300K MWCO CEメンブレン(Spectrum Laboratories)により透析した。
【0133】
PEG/PAMAM構築物のドキソルビシン負荷:ドキソルビシンを、2.5mg/mlの終濃度で水に溶解させ、100nMの終濃度でpH7.4のPBS中のPEG/PAMAM構築物に添加した。この溶液を、37℃で2時間、続いて4℃で24時間、穏やかに混合し、その後、7000 MWCOメンブレン(Pierce Chemical)により透析を行った。カプセル化効率を、488nmの励起による570nmでの蛍光放出により評価した。負荷したドキソルビシンの量を、ドキソルビシン較正標準から推定した。PEG/PAMAM構築物の存在下でのドキソルビシンの蛍光の増大の強さを評価するために、水中で2.5mg/mlのドキソルビシンを、PEG/PAMAM構築物存在下または非存在下で、蛍光計キュベット中0.1μL体積で滴定した。488nmでの励起による差スペクトルを、500nm〜600nmの範囲で集めた。
【0134】
インビトロ増殖アッセイ:細胞を、完全培地中で1×10細胞/mlの濃度に調整した。確立されたプロトコールにしたがって、プレートを種々の濃度の抗CD3ε抗体によりコーティングした。1ウェルあたり2×10細胞をプレートした。細胞を、ドキソルビシンを負荷した複合体20nMまたはドキソルビシンを負荷させない複合体20nMのいずれかで処理し、37℃、5%COでインキュベートした。IL−2産生の速度論を分析するために、示される時点での上清を集め、製造者(BD Biosciences、San Diego、CA)の説明書にしたがって、IL−2についてのELISAにより分析した。3日目、T細胞の増殖を、製造者(Roche Diagnostics GmbH、Pennsburg、Germany)の説明書にしたがって、細胞増殖および生存度の定量化についての比色アッセイ(WST−1)により分析した。
【0135】
T細胞結合アッセイ:1×10細胞を、種々の濃度の試薬(上で検討した構築物)とともに、平衡結合が達成されるまでインキュベートした(2時間、4℃)。細胞を、1%ウシ胎仔血清と0.1%アジ化ナトリウムを含むPBSで3回洗浄し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。平均チャネル蛍光(MCF)は、結合した試薬の量の尺度であった。特異的な結合を、最大平均チャネル蛍光に対して正規化した。
【0136】
FRET測定:5mg/mlのPEG/PAMAM構築物を、pH8.3の炭酸塩緩衝液中で、2.5μMの終濃度のAlex Fluor(登録商標)色素546(ドナー)またはAlex Fluor(登録商標)568(アクセプター)(Molecular Probes、Eugene、OR)あるいは両方のフルオロフォアの等モルの混合物により標識した。過剰な色素の透析による除去後、複合体を540nmで励起し、放出スペクトルを、範囲(550nm〜650nm)で集めた。エネルギー移動効率(E)を、(Fda)の存在下およびアクセプター(F43、44の非存在下での相対蛍光収量から計算し、これを以下の式からエネルギー移動距離Rを計算するために使用した。
【0137】
【化1】

(結果)
分枝した生体適合性(24〜30アーム(arm))人工抗原提示ポリマーを、Luo、Macromolecules 35、3456〜3462(2002)により報告される方法により、ポリエチレングリコールおよびgeneration 6(G6)ポリアミドアミンデンドリマー(PEG−PAMAM)から構築した。PAMAMスターバースト(Starburst)デンドリマーは、分枝した樹様構造を有する特有な合成高分子である(Tomaliaら、Angewandte Chemie−International Edition in English 29、138〜175(1990);Naylorら、Journal of the American Chemical Society 111、2339〜2341(1989))。G6 PAMAMのつるは、中心の疎水性コアから放射状に延び、表面に128個の官能性アミン基を有する明確な球状構造を生成する。保護アミン末端(HOOC−PEG3400−NH−tBoc)を有するヘテロ二重官能性(heterobifunctional)PEG M3400を、PAMAMのつる(tendril)に共有結合させ、そして結合後に、このアミン末端を脱保護した。作業用構築物は、疎水性コア(6.7nm)に結合させた放射状アミン末端のPEG鎖(4.2nm)を有するポリマーであった。構築物の検出を促進するために、フルオレセイン末端のPEG鎖を、アミン末端のPEG鎖に対して1:5のモル比でデンドリマーのコアに共有結合させた。構築物のPAMAMコアは、以下のためのビヒクルとして理想的に適合された薬物レザバとして機能し得る:小さな(small)薬物(Liuら、Abstracts of Papers of the American Chemical Society 216,U875−U875(1998);Konoら、Abstracts of Papers of the American Chemical Society 221、U377−U377(2001);Jansenら、Journal of the American Chemical Society 117、4417−4418(1995);Jansenら、Science 266、1226−1229(1994))、磁気共鳴画像法でのコントラスト増強ための常磁性分子(Kobayashiら、Mol Imaging 2、1−10(2003))、オリゴヌクレオチド(Yooら、Pharm Res 16、1799−804(1999))、導入遺伝子(Kobayashi,H.ら、Bioconjug Chem 10、103−11(1999))および放射性核種(Kobayashi、Bioconjug Chem 10、103−11(1999))。構築物上のPEG鎖の空間的柔軟性の強度は、PEGのアミン末端に結合したタンパク質の立体的な制限の程度を決定するので、分枝PEGの空間的柔軟性を共鳴エネルギー移動により評価した。アミン反応性ドナー色素(Alexa fluor 546(登録商標)(Molecular Probes))およびアクセプター色素(Alexa Fluor 568(登録商標))を、未標識の構築物のアミン末端へ結合体化し、その後透析により、この構築物を精製した。ドナー色素からアクセプター色素への蛍光エネルギー移動が50%である距離Rは、7.0nmである(Molecular Probes)。構築物に結合体化された1:1モル比の両方の色素の飽和濃度は、ドナー蛍光の明らかな減少およびアクセプターの蛍光の増感をもたらした。アクセプターの存在下および非存在下でのドナーの相対蛍光収量から計算した移動効率は、50%〜57%であった。この効率を使用して、6±1nmの色素間の近接距離を推定した。これは、ストレプトアビジンのサイズ(3nm〜4nm)の範囲内のタンパク質のカップリングのために十分な距離である。ストレプトアビジンカップリングは、広範な種類のビオチン化リガンドの結合を促進する。さらに、本研究で使用されたT細胞リガンドを、2.2nm ビオチンスペーサアーム(NHS−LC−ビオチン(登録商標))(Pierce Chemicals)によりビオチン化したので、ストレプトアビジンカップリングしたT細胞リガンドとT細胞上のその標的レセプターとの間に十分に柔軟な空間的相互作用が存在することを推定した。構築物の分析は、この推定と一致する:カップリング効率は、5〜10個のフルオレセイン末端のペンダント鎖を含む1個の構築物あたり、約13個のストレプトアビジン分子であった。
【0138】
構築物の均質性を、逆相HPLCにより確かめ、PEG/PAMAMの分布は狭く、そしてストレプトアビジン−PEG/PAMAM(SA−PEG/PAMAM)構築物の分布はわずかに広いことを明らかにした。ストレプトアビジン結合体化により生じた疎水性の低下および構築物の分子サイズの増加におそらく起因して、SA−PEG/PAMAMは、C18カラム上でより早く溶出した。構築物のサイズもまた、動的光散乱により測定し、PEG/PAMAMは17.1nm、SA−PEG/PAMAMは26.4nmであると推定した。
【0139】
抗原提示構築物は、特異性および高アビディティで、その標的に結合する:T細胞リガンドに対する多価の足場としてのSA−PEG/PAMAMの特異性を評価するために、SA−PEG/PAMAMを、T細胞CD3複合体を認識するビオチン化抗体およびB細胞上のCD45R抗原を認識する抗B220(ネガティブコントロール)にカップリングした。精製多価複合体を、飽和用量で、Balb/Cマウス由来の脾細胞のT細胞を富化させた(B細胞を欠乏させた)集団と共に4℃で2時間インキュベートした。次に、T細胞を洗浄し、結合した複合体を、フローサイトメトリーにより分析した。本研究で使用した飽和用量で、コントロールの抗B220複合体の結合は実質的に観察されなかったが、同じ用量で、特異的な抗CD3複合体は、強力に結合した。抗CD3複合体を、種々の濃度でT細胞とインキュベートした場合、ネイティブの蛍光標識した抗CD3抗体と比較して、構築物の結合アビディティに著しい増大が存在した。アビディティは、結合の価数の増加とともに増加し、PEG/PAMAM構築物は、抗体よりも高い価数(>13)を有するので、一定のリガンド濃度で、ネイティブの抗体と比べると、より多くの抗CD3複合体が結合した。したがって、これらの多価構築物は、試薬のより低い濃度において、T細胞の検出のより高い感度を提供する。
【0140】
ペプチド/MHC−T細胞の相互作用の親和性は、抗原−抗体の相互作用よりも低いので、クローン性の抗原特異的T細胞の検出の感度の増大におけるSA−PEG/PAMAM複合体の効力を、類似の結合アッセイにより評価した。ビオチン化MHCクラスIを構築物にカップリングし、そしてその精製マウスCD8+ T細胞集団に対する結合を、ダイマーのMHC構築物のものと比較した。使用したモデル系は、CD8+ 2C T細胞系に限られたマウス同種反応性クラスIであって、これは、同種抗原クラスIMHC H−2L、(Q19)(Sykulev,Y.ら、Proc Natl Acad Sci USA 91、11487−91(1994))との関連で提示される自己由来のミトコンドリアペプチド(QLSPFPFDL(QL9))を認識し、ネガティブコントロールペプチド(YPHFMPNTL(MCMV)、(MCMV))で負荷させた同一のMHCに対して親和性をほとんど有さないか、または全く有さない。モノマーのH−2Lを、そのアミノ末端でビオチン化し、そしてFahmy、Immunity 14、135〜43(2001)で検討された方法を使用して、外因的にペプチドQL9およびペプチドMCMVで負荷した。本明細書で検討されるものと類似するMHCへの改変は、インビトロバイオセンサーアッセイによるMHC−T細胞レセプター相互作用に対してほとんど影響しないか、または全く影響しないことが示されている(Fahmyら、Immunity 14、135〜43(2001))。抗CD3構築物により観察された結合プロフィールと同様に、QL9構築物は、増大したアビディティで2C T細胞に結合した。アビディティの増大は、MHC(QL9−Ig)のダイマー形態と比較すると、最大量の半分の用量で2桁大きい強さであった(Schneck、Immunol Invest 29、163〜9(2000))。
【0141】
薬物を保有するための、PAMAMの潜在的な容量と組み合わせた場合、これらの複合体のアビディティの増大は、特定のT細胞集団への薬物送達の強力な手段となることを仮定した。この仮定を試験するために、構築物が抗有糸分裂薬物(ドキソルビシン)をカプセル化する能力を、まず評価した。
【0142】
抗原提示構築物のPAMAM樹状コアによるドキソルビシンの高密度のカプセル化。以前の研究は、ドキソルビシン(Dox)(DNAに介入するアントラサイクリン)が抗増殖効果を示し得、そして増殖中のT細胞において増殖停止およびアポトーシスを誘導し得ることを示している。Doxは、本質的に蛍光性であり、したがってこの薬物の検出は、水溶液中での488nmでの励起および570nmでのピーク放出による蛍光検出によって容易にされる。Doxは、水性環境で溶解性が限られた弱い塩基性(pKa=7.6)の薬物である。薬物キャリアとしての疎水性デンドリマーコアの潜在的な有用性および疎水性の微小環境とのDoxの優先的な結合(Doxオクタノール/水の分配係数は2である)に動機付けられて、ドキソルビシンの受動的な負荷のための構築物の容量を調べた。構築物を、4℃で24時間、10倍過剰なモル濃度のDoxとインキュベートし、次に7000 MWCOによる広範な透析を行い、その後複合体の蛍光測定を行った。ドキソルビシンの蛍光較正標準を使用して、構築物1モルあたり、約55±10モルのDoxが結合することを推定した。結合したDoxがデンドリマーコア内にカプセル化されることを確かめるために、PEG/PAMAM構築物の微小環境を擬態する有機性水性溶液中のDoxが蛍光の増大を示したことに留意した。この蛍光の増大を使用して、SA−PEG/PAMAMとのDoxの結合の強さを評価した。構築物の存在下でのリン酸緩衝化生理食塩水中のDoxの蛍光と比較した場合、類似の増大を観察した。PAMAMは、複合体の中で最も大きい疎水性画分を構成するので、このデータは、有機性水性媒体での結合と類似する、SA−PEG/PAMAMとのDoxの結合を示した。蛍光増大アッセイに基づくこの結合の強さを使用して、構築物1モルあたりの結合した薬物のモル数を推定した。データは、より初期の平衡測定から推定された量よりも低い値で最大になった。このことは、透析チャンバー中でのドキソルビシン凝集体の形成(構築物に結合する量の過大評価に寄与する)に起因し得た。
【0143】
データは、Doxが抗原提示構築物の樹状コア中に効率的にカプセル化されることを示す。ドキソルビシンは、低いpHで効率的に樹状コアから放出される。薬物負荷した構築物は小さい(<100nm)ので、これらは、その標的により効率的に内在化される。エンドサイトーシス小胞の酸性微小環境における構築物とのDoxの結合のレベルを調べるために、pH5での薬物−構築物相互作用をモニタリングした。Dox負荷したアビジンカップリング構築物を、ビオチン化アガロースカラム上に固定化し、pH7.4のリン酸緩衝化生理食塩水で洗浄し、その後リソソームのpHを擬態する低緩衝環境に曝した。カラムのpHを低下させると、薬物の赤色蛍光によりモニタリングされる、溶離液中のDox濃度の顕著な増加を観察した。質量収支は、移動相のpHの低下に際して、90%を超えるDoxが効率的に構築物から放出されたことを明らかにした。このデータは、疎水性特徴を有する弱い塩基(例えば、ドキソルビシン)がより低いpHで荷電が強まり、そして酸性区画に優先的に分配される「イオン捕捉仮説」として公知な現象と一致する。引き続く研究における全ての実験を、構築物1molあたり推定32mol量のDoxでドキソルビシンで飽和させた構築物を使用して行った。
【0144】
培養物中のT細胞の増殖性応答をダウンレギュレートすることにおける、Dox負荷させた抗CD3構築物の効力を試験するために、マウスBalb/C脾細胞を、Dox負荷させた抗CD3構築物およびDox負荷させた抗B220構築物(ネガティブコントロール)の存在下および非存在下で、プレートに結合した抗CD3の種々の容量により刺激し、そして3日後にT細胞の増殖を測定した。抗B220−dox構築物(増殖中のT細胞にほとんど影響しないか、または全く影響しないことが示された)とは対照的に、抗CD3Dox構築物は、増殖の強力なインヒビターであった。これらの実験において、増殖は、以下の2つの競合する機構により影響された:抗CD3構築物の提示により提供されたさらなる刺激に起因する増殖の増大、および標的T細胞への特異的な薬物送達に起因する増殖の阻害。
【0145】
同種反応性抗原特異的T細胞の部分集合の応答および増殖を調節することにおける、薬物負荷した抗原提示構築物の有用性を調べるために、Doxで負荷したQL9−構築物(Ql9Dox)およびMCMVDox(ネガティブコントロール)を、2Cマウス脾細胞由来の細胞障害性T細胞、CD8+ T細胞の精製したナイーブな集団とともにインキュベートした。T細胞を、構築物の存在下または非存在下で、抗CD3コーティングしたプレートでの培養物中で、3日間刺激した。抗原特異的T細胞の培養物の応答をモニタリングするために、培養の最初の3日間の間に産生されたIL−2の量および3日後の全てのT細胞の増殖を測定した。IL−2は、T細胞の増殖刺激および増殖に必要とされるオートクラインサイトカインであり、したがって、これはT細胞刺激の進行の重要な指標である。1日後の、MCMVDoxとQl9Doxとの間のIL−2産生における相対的な差は小さく、未処理細胞により産生されたIL−2の量と匹敵した。このことは予期された知見である。なぜなら、ナイーブなT細胞は、活発な増殖応答を実行するのに少なくとも20時間の持続的なシグナル伝達を必要とするからである。本発明者らは、2日後におけるIL−2の特異的な阻害とIL−2の非特異的な阻害との間の識別可能な変化に注目した。3日目に、本発明者らは、未処理細胞またはMCMVDoxで処理した細胞と比べて、Ql9Doxで処理した細胞からのIL−2放出において顕著な阻害を観察した。未処理細胞と比較してMCMVDoxが阻害効果を示したことの知見は、T細胞機能のインビトロアッセイで、H−2lに関連してMCMVペプチドが精製2C T細胞に全く非特異的であるわけではないという事実と一致する。
【0146】
低濃度のプレートに結合した抗CD3、およびDox負荷させた構築物の非存在下において、T細胞は、IL−2の明らかな放出および同時の増殖(より強いレベルの刺激により迅速に低下する)を示した。MCMVDoxのIL−2放出および増殖プロフィールは、おそらくT細胞との非特異的な相互作用に起因して未処理細胞のものより低いが、Ql9Doxが、抗原特異的T細胞のIL−2の産生および増殖能力を大幅(60%より多く)に阻害したことを、比較により見出した。さらに、IL−2放出のQl9Dox阻害は、調べた全用量範囲にわたって有効だった。これらの結果を合わせて、T細胞のポリクローナル集団および抗原特異的な集団の増殖を選択的に阻害する能力を実証する。
【0147】
(考察)
この目的は、高アビディティ相互作用によりT細胞の特定の集団を追跡することおよびT細胞の特定の集団に薬物を送達することを促進し得る多官能性システムを設計することである。薬物送達における無毒性かつナノスケールのポリマーとしてのPAMAMデンドリマーの官能性および実証された有用性に起因して、これらのポリマーを、多官能性抗原提示構築物の設計のための起点およびコアとして選択した。以下の二つの理由のために、ポリエチレングリコール(PEG)を、デンドリマーコアに係留した:第一に、PEGは直鎖状ポリマーであり、それは構築物に結合したタンパク質に柔軟性を与え、そして結合したタンパク質が、細胞表面レセプターへの結合のために数ナノメートルの表面領域を走査することを可能にする。平面状の膜に固定化したMHCによる研究は、個々のMHC分子が20nm未満で離れている場合に、最も効率的に、T細胞が結合し、そして応答したことを実証した。第二に、PEGに結合したタンパク質は、独特な特性(例えば、溶解性の増大、生体適合性、より低い免疫抗原性および望ましい薬物速度論)を帯びるが、主要な生物学的機能(例えば、レセプター認識)は、しばしば維持され得る。これらは、この技術の長期間の使用および臨床設定における最終的な有用性のために、重要な特性である。
【0148】
調製するのが高価かつ困難な広範な種類のリガンドの結合を提供するために、中間カップリングタンパク質として、ストレプトアビジンをPEG鎖に結合させた。ストレプトアビジンは、より少量のビオチン化試薬のカップリングを促進し、そして広い範囲の標的への足場の適用を拡大する。全T細胞集団または抗原特異的T細胞集団を標的化するビオチン化試薬を用いるこの使用の範囲を実証した。この報告における抗原特異的T細胞研究を、同種反応性の設定でクラスI MHCタンパク質により実行したが、記載される系は、他のモデル系に適用可能なあらゆるビオチン化MHCと組み合わせて使用され得る。
【0149】
デノボで調製されなければならず、かつ薬物を保有するための容量が制限されるタンパク質ベースの送達系とは違って、本明細書に記載のPEG/PAMAM複合体は、構築物1molあたり32molまでのドキソルビシンを保有する容量を有する。したがって、この系は、用量−密度フリーの(dose−dense free)薬物治療に匹敵する治療上の可能性を、より低い濃度で提供する。構築物のサイズ、結合体化に利用可能な部位の数および種々の部位の反応性を全て制御することは、ペプチド/MHCと補助的なリガンドとの混合物の提示を制御することを可能にする。検討される技術は、この汎用性ゆえに独特である。この特徴は、提示されたリガンドの性質および密度に依存する特定の問題(例えば、提示された抗原の密度および同時刺激により影響されるT細胞寛容)に取り組むために重要である。
【0150】
(実施例4:心臓血管組織工学における薬物送達のための区画をなくした足場へのポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)微粒子の結合)
心臓血管組織工学における区画をなくした足場の使用は、生来の組織と類似するその生体力学的特性に起因して一般的である。不都合なことに、これらのマトリクスは、加速されたカルシウム沈着を受ける。リンタンパク質であるオステオポンチンはカルシウム沈着を阻害し、そして微粒子送達による鉱化作用を減少させるために使用され得る。さらに、心臓血管組織は公知の幾何学で石灰化するので、オステオポンチンがマトリクスの特定の場所に送達され得る場合に、このことは顕著に有用であり得る。
【0151】
(方法)
オステオポンチン微粒子(125μg OPN/g PLGA)を、自発的な乳化により生成し、遠心分離により洗浄し、そして24時間凍結乾燥させた。ブタ心臓弁の切片を集め、化学的に区画をなくし、そしてマウス(n=3)に皮下移植した。一切片を、オステオポンチン微粒子とともに同時移植する一方で、別の切片をコントロールとして、単体で移植した。7日後、組織を切除し、原子吸光分析によりカルシウム沈着について評価した。別々の実験において、微粒子の結合を実証するために、区画をなくしたウシ中足動脈をビオチン化し、続いてアビジンコーティングされたPLGA微粒子とともにインキュベートした。
【0152】
(結果)
オステオポンチン微粒子により処理した組織は、未処理組織と比較すると、カルシウム沈着において45.1%の減少を示した。PLGA微粒子は、区画をなくしたウシ足場の線維に首尾よく結合した。
【0153】
(結論)
これらの結果は、オステオポンチン微粒子が、外科的な置換手順の間/後に心臓血管構造のカルシウム沈着を阻害するのに役立ち得、そしてマトリクス送達のために局所的に結合し得ることを実証する。その上、これらの粒子は、他の型の生物学的な血管移植片(すなわち、心臓弁置換のための異種移植片)に奏功し得る。
【0154】
(実施例5:再狭窄を予防するためにラパマイシンを送達するナノ粒子)
ラパマイシンは、ステントの一部としてのポリマーレザバまたはコーティングにおける適用によって再狭窄を予防するために、現在使用されている。これらのデバイスの制限は、手順(例えば、血管形成術、血管移植術、人工血管インプラント、人工関節インプラントまたは他の医療用インプラント)と同時か、もしくはその直後またはバイパス手術時でのナノ粒子の別々の適用により回避される。移植時のラパマイシンの短期間の適用が、再狭窄に対して有意に長期間の効果を有し得ることが実証されている。ナノ粒子の利点は、全身送達が存在せず、有効な抗増殖性の量の放出が、数週間の期間を越え、処置に最も重要な時間の間達成され得ることである。
【0155】
バイパス手術の一般的な形態は、冠状動脈への自家移植のために、肢から伏在静脈を切除する工程を伴う。この症例の50%において、これらの移植片は、大半は再狭窄に起因して5年以内に脱落する。ナノ粒子は、自己移植片へのラパマイシンまたは他の抗増殖剤の局所的かつ持続的な送達のために使用され得る。伏在静脈の切除後、組織は、懸濁されてもよく、そしてしばしば1時間以上、生理食塩水中で懸濁される時に、患者の胸が移植片の移植のために開胸される。この時点で、ナノ粒子が投与され得る。生理食塩水中での粒子結合時間は、1時間で十分であり得る。
【0156】
(アビジンコーティングされたラパマイシンナノスフェアの調製)
10mg/mlのアビジンを、2%デオキシコール酸塩緩衝液を含むPBS中で、10倍過剰なNHS−パルミチン酸と反応させた。混合物を軽く超音波処理し、37℃で12時間、穏やかに混合した。過剰な脂肪酸と加水分解されたエステルとを除去するために、反応物を、0.15%デオキシコール酸塩を含むPBSに対して透析した。
【0157】
改変二重エマルジョン方法を、脂肪酸PLGA粒子の調製のために使用した。この手順において、100μLのPBS中の1mgのローダミンBを、ボルテックス中のPLGA溶液(2mlのMeCl中100mgのPLGA)に滴下した。次に、この混合物を氷上で3回、10秒の間隔で超音波処理した。この時点で、4mlのアビジン−パルミチン酸塩/PVA混合物(2mlの5%PVA中2mlのアビジン−パルミチン酸塩)をゆっくりとPLGA溶液に添加した。その後、これを氷上で3回、10秒の間隔で超音波処理した。超音波処理後、この物質を、攪拌中の100mlの0.3%PVAに滴下した。これを、一定の室温で4時間、激しく攪拌し、塩化メチレンをエバポレートさせた。次に、生じたエマルジョンを、12,000gで15分間、遠心分離により精製し、続いてDI水で3回洗浄した。粒子を凍結乾燥させ、それから−20℃で保存した。サンプルを、走査型電子顕微鏡(SEM)により性質決定した。サンプルを、アルゴン雰囲気中、陰圧下で40mAのスパッタ電流を使用して、金でスパッタコーティングした(Dynavac Mini Coater、Dynavac USA)。SEM分析を、5〜10kVの加速電圧によるLaB電子銃を使用するPhilips XL30 SEMによって実行した。
【0158】
(ヒツジ頚動脈へのナノ粒子の付着)
ヒツジ由来の頚動脈の3つの1×1cm小片を、上記のように調製した、(ラパマイシンのカプセル化および放出を予測するマーカーとして)ローダミンで負荷したPLGAアビジン標識ナノスフェア中でインキュベートした。インキュベーションを、25℃のハイブリダイゼーションオーブンで行い、これらをバイアル中に置き、垂直に回転する回転台(carousel)にこのバイアルを吊るすことによる攪拌によって、ナノスフェアの付着を促進させた。
【0159】
未処理(アビジン微粒子中でインキュベートしなかった)ヒツジ頚動脈の10倍の倍率での蛍光顕微鏡写真を、処理した(アビジン微粒子中でインキュベートした)ヒツジ頚動脈の10倍の倍率での蛍光顕微鏡写真と比較した。顕微鏡写真により明確に見えるように、未処理組織と比較して処理した組織において、(ローダミンナノスフェアの付着を示す)高い程度の蛍光が存在する。
【0160】
(剪断ストレス環境中での付着の安定性)
ヒツジ動脈の管状部分を、ナノスフェアコーティングした。ナノスフェアの付着後に、この管を、1時間、リン酸緩衝化生理食塩水(「PBS」)流を支持するバイオリアクターに接続した。この時間の後、組織をバイオリアクターから取り外し、エッペンドルフチューブに入れ、そして新しいPBS中でインキュベートして、この導管から放出されたローダミンの量を測定した。1時間後、この導管を、新しいPBSが入った新しいチューブに入れ、古いPBSを、蛍光について測定した。4つの画分を、この様式で測定した。これは、ナノスフェアコーティングされた導管が、剪断ストレスの後に粒子が全て流失することなく、制御された様式で薬物を送達し得たことを実証した。
【0161】
(粒子サイズの選択)
ナノ粒子(50nm〜500nm)を、カップリング系に使用した。粒子の単位質量に対する表面積を最大化することは、血管組織への粒子の結合を改善するはずである。また、粒子の流失がより小さな脈管(毛細管は、5ミクロンの小ささであり得る)の下流の閉塞を生じる点に関して、ナノ粒子はより良い。
【0162】
(ラパマイシンのカプセル化)
ラパマイシンを、PLGAナノ粒子中にカプセル化し、そしてPBMCアッセイを使用して、生物活性を確認した。簡潔に述べると、PBMC細胞を、IL 12およびIL 18により刺激した。ラパマイシンの存在下で、インターフェロンの分泌は阻害され、ラパマイシン濃度とインターフェロンレベルとの間に逆相関をもたらす。この特定の実験において、10mgのラパマイシン粒子を、10mlのPBS中に懸濁した。種々の時点において、100μlのPBSを、引き続くPBMCの処理のために、この10mlから採取した。このデータは、ナノ粒子から放出されたラパマイシンが生物的に活性であることを示す。
【0163】
(ラパマイシン投薬)
ステントのデータに基づく、自家移植片へのラパマイシンの望ましい投薬は、1mm移植片あたり1μg〜500μg、より好ましくは1mm移植片あたり200μg〜2mgの標的コーティング量のラパマイシンとして計算され、28日目に約75%のラパマイシンが溶出した。放出は、移植時から移植後3日〜6ヶ月までの投薬量の範囲にわたって発生し得る。
【0164】
(実施例6:組織工学マトリクスであるINTEGRATMにおける抗生物質の送達のための微粒子)
(材料および方法)
IntegraTM(合成皮膚として熱傷を処置するために使用される組織工学製品)を、組織様マトリクスに接着するよう設計したナノ粒子により処理した。3つの1×1cmのINTEGRATM小片を、実施例5に上記されるように調製した、(ラパマイシンのカプセル化および放出を予測するマーカーとして)ローダミンで負荷したPLGAアビジン標識ナノスフェア中でインキュベートした。インキュベーションを、25℃のハイブリダイゼーションオーブンで行い、これらをバイアル中に置き、垂直に回転する回転台にこのバイアルを吊るすことによる攪拌によって、ナノスフェアの付着を促進させた。
【0165】
(結果)
未処理(アビジン微粒子中でインキュベートしなかった)INTEGRATMの10倍の倍率での蛍光顕微鏡写真を、処理した(アビジン微粒子中でインキュベートした)INTEGRATMの10倍の倍率での蛍光顕微鏡写真と比較した。顕微鏡写真により明確に見えるように、未処理組織と比較して、処理した組織において(ローダミンナノスフェアの付着を示す)高い程度の蛍光が存在する。
【0166】
INTEGRATMは、熱傷被害者のための皮膚移植片として使用される。代表的にII度またはIII度の熱傷を有する患者は、2、3週間INTEGRATMにより処置され、その後、自己皮膚移植片が適用される。不都合なことに、感染が、この型の処置に伴う主要な問題である。この研究は、これらのナノ粒子が、外傷への適用前2、3週間の間、INTEGRATMに付着し、そしてINTEGRATMに薬剤を送達するように、この粒子がINTEGRATMを「浸漬コーティングする(dip−coat)」ために使用され得ることを実証する。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1Aは、パルミチン酸を使用してタンパク質を改変するスキームである。NHS−パルミチン酸は、10倍過剰なモル濃度でアビジンに添加され、そして2%のデオキシコール酸界面活性剤の存在下において反応する。このNHSエステルは、アビジンのアミン基と反応して、安定なアミド結合をもたらし、そしてタンパク質に疎水性を付与する。反応工程および精製工程の両方は、パルミテートの小胞形成を防止する界面活性剤の存在下にあった。図1Bは、この表面上の標的化分子(抗体)およびカップリング剤(アビジン)およびリンカー(ポリエチレングリコール、PEG)を示す微粒子のスキームである。
【図2】図2は、処理した粒子の表面上に分子が集まる程度のグラフであり、この程度は、種々の濃度(マイクログラム)のアビジン−パルミチン酸によって調製される微粒子にビオチン−フィコエリトリン(「PE」)を滴定することによって測定される。より多い量の結合体によって改変された表面は、より多くのビオチン化フルオロフォアを結合し、このことは、より高い平均チャネル蛍光(mean channel fluorescence)(MCF)に反映される。
【図3】図3は、アビジン−パルミテート微粒子 対 未改変微粒子および表面改変微粒子の、時間(time)(時間(hour))に対するタンパク質放出の画分のグラフである。
【図4】図4Aおよび図4Bは、オボアルブミンをカプセル化したLPS標的化微粒子(黒塗り(closed)の円)の皮下投与によってワクチン接種されたマウスか、またはコントロールの微粒子(オボアルブミンなし(黒塗りの菱形)、LPS標的化なし(白抜き(open)の円))を使用してワクチン接種されたマウスから得た脾細胞の刺激のグラフである。図4Aは、ワクチン接種されたマウスから得た脾細胞の刺激であり;図4Bは、オボアルブミン抗原の非存在下においてワクチン接種されたマウスの刺激である。
【図5】図5Aおよび図5Bは、オボアルブミンをカプセル化したLPS標的化微粒子(黒塗り(closed)の円)の経口投与によってワクチン接種されたマウスか、またはコントロール(リン酸緩衝化生理食塩水(黒塗りの四角)、LPS標的化なし(白抜きの円))を使用してワクチン接種されたマウスから得た脾細胞の刺激のグラフである。図5Aは、ワクチン接種されたマウスから得た脾細胞の刺激であり;図5Bは、オボアルブミン抗原の非存在下においてワクチン接種されたマウスの刺激である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子上または該微粒子内に高密度で組み込まれた治療剤、栄養剤、診断剤または予防剤を送達するためのポリマー性微粒子であって、該微粒子は、微粒子の表面積1平方ミクロンあたり、好ましくは約1,000個〜約10,000,000個の間の範囲であり、より好ましくは約10,000個〜約1,000,000個の間の範囲であるリガンドの密度で存在するリガンドを含む、微粒子。
【請求項2】
前記リガンドは、前記微粒子の表面に組み込まれた第1の末端、および該微粒子の表面から外向きに向かう第2の末端を有する、請求項1に記載の微粒子。
【請求項3】
前記ポリマーは、疎水性ポリマーであり、そして前記リガンドは、前記微粒子の表面に挿入される、10未満のHLBを有し、より好ましくは5未満のHLBを有する物質である、請求項2に記載の微粒子。
【請求項4】
疎水性ポリマーを含む請求項3に記載の微粒子であって、該疎水性ポリマーは、該微粒子中に挿入されかつ該ポリマー性表面から外向きに伸びる脂肪酸結合体を有する、微粒子。
【請求項5】
前記リガンドは、送達される薬剤であるか、または送達される薬剤に結合され、該薬剤は、治療剤、栄養剤、診断剤および予防剤、結合分子、標的化分子、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の微粒子。
【請求項6】
請求項5に記載の微粒子であって、該微粒子は、該微粒子に結合される標的化分子を有する、微粒子。
【請求項7】
前記標的化分子は、前記リガンドに、物理学的に結合されるか、または化学的に結合される、請求項6に記載の微粒子。
【請求項8】
前記ポリマー内にカプセル化される薬剤をさらに含む、請求項5に記載の微粒子。
【請求項9】
2段階送達もしくはパルス送達の形態で、同じ薬剤または異なる薬剤を送達するための、請求項8に記載の微粒子。
【請求項10】
標的化分子は、前記微粒子の表面または前記リガンドに結合される、請求項5に記載の微粒子。
【請求項11】
前記標的化分子は、特異的な標的化分子および非特異的な標的化分子からなる群より選択される、請求項10に記載の微粒子。
【請求項12】
前記リガンドの前記密度、および該リガンドの結合手段は、前記微粒子の標的化を調節するために使用され、該結合手段は、共有結合性であってもイオン性であってもよく、直接的であってもリンカーの手段を介してもよい、請求項10に記載の微粒子。
【請求項13】
前記標的化分子は、抗体およびそのフラグメント、糖類、ペプチド、ならびに細胞表面レセプターに対するリガンドからなる群より選択される、請求項10に記載の微粒子。
【請求項14】
前記リガンドは、結合分子である、請求項5に記載の微粒子。
【請求項15】
前記リガンドは、結合分子であるか、または結合分子に結合され、該結合分子は、ストレプトアビジンおよびビオチンからなる群より選択される、請求項14に記載の微粒子。
【請求項16】
前記リガンドに結合されたリンカーをさらに含む、請求項1に記載の微粒子。
【請求項17】
前記リンカーは、分枝状であり、そして多数の送達される薬剤または多数の結合分子は、該リンカーを介して前記リガンドの各々に結合される、請求項16に記載の微粒子。
【請求項18】
前記リンカーは、ポリエチレングリコール星型ポリマーである、請求項16に記載の微粒子。
【請求項19】
前記送達される薬剤は、薬物、タンパク質、ペプチド、糖類、多糖類、ヌクレオチド分子、および核酸分子からなる群より選択される治療剤または栄養剤である、請求項5に記載の微粒子。
【請求項20】
前記送達される薬剤は、常磁性分子、蛍光化合物、磁性分子、および放射性核種からなる群より選択される診断剤である、請求項5に記載の微粒子。
【請求項21】
前記送達される薬剤は、カルシウム沈着を阻害する、請求項18に記載の微粒子。
【請求項22】
前記送達される薬剤は、細胞傷害性薬剤または抗増殖剤である、請求項5に記載の微粒子。
【請求項23】
前記リンカーは、ポリエチレングリコールであり、そして前記結合分子は、ストレプトアビジン、アビジンまたはビオチンである、請求項5に記載の微粒子。
【請求項24】
0.5ミクロンと20ミクロンとの間である直径を有する、請求項1に記載の微粒子。
【請求項25】
50ナノメートルと500ナノメートルとの間の直径を有するナノ粒子の形態である、請求項1に記載の微粒子。
【請求項26】
前記ナノ粒子は、100nm未満の直径を有する、請求項25に記載の微粒子。
【請求項27】
リポソーム中にカプセル化される、請求項1に記載の微粒子。
【請求項28】
治療剤、栄養剤、診断剤または予防剤の送達のための微粒子を作製するための方法であって、以下:
疎水性ポリマーの溶液または液体形態の該ポリマーを提供する工程、
10未満のHLBを有し、より好ましくは5未満のHLBを有する物質を、該ポリマーに添加する工程であって、該物質は、10未満のHLBを有する該物質の1つの末端が該ポリマー中に挿入されかつ他の末端が該微粒子のポリマー性表面から外向きに伸びる条件下で、該ポリマーが凝固され、該微粒子を形成する場合に、該微粒子の表面に挿入される、工程、
を包含する、方法。
【請求項29】
前記疎水性ポリマーおよび10未満のHLBを有する物質は、水中油型エマルションにおいて水中の該ポリマーに添加される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記10未満のHLBを有する物質は、標的化分子もしくは結合分子または治療剤、予防剤もしくは診断剤と最初に結合体化される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記10未満のHLBを有する物質は、脂肪酸、脂質または界面活性剤である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
疎水性ポリマーまたは親油性ポリマーから形成される微粒子であって、該疎水性ポリマーまたは該親油性ポリマーが、該微粒子中に分散されたリガンドとして10未満のHLBを有する物質である第1の末端、ならびに、該微粒子の表面から外向きに向かう10未満のHLBを有する物質である第2の末端を有する、微粒子。
【請求項33】
前記10未満のHLBを有する物質は、脂肪酸、脂質および界面活性剤からなる群より選択される、請求項32に記載の微粒子。
【請求項34】
細胞の望ましくない増殖を処置するか、または防止する方法であって、望ましくない増殖領域の部位、または望ましくない増殖の領域に隣接する部位に、高密度の抗増殖性の因子を送達する微粒子を、細胞増殖を防止するか、または減少させるのに有効な量で投与する工程を包含する、方法。
【請求項35】
前記望ましくない増殖は、内皮の機能不全から生じる再狭窄である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
血管形成術、血管移植術、組織移植もしくは器官移植、人工血管インプラント、人工関節インプラントまたは他の医療用インプラントと同時か、またはその直後に前記微粒子を投与する工程を包含する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞は、内皮細胞であり、前記方法は、黄斑変性の処置または防止のための方法であり、そして前記微粒子は、高密度の抗脈管形成剤、抗増殖剤または補体インヒビターを、該微粒子が眼内に投与される場合に網膜の血管新生を防止するか、または減少させるのに有効な量で含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤は、細胞傷害性薬剤、細胞増殖抑制剤、抗増殖剤または抗脈管形成剤であり、そして前記微粒子は、癌の処置のために、局所的か、または限局的に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記微粒子は、リガンドに結合される標的化分子または結合分子を有する該リガンドをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記薬剤は、細胞傷害性薬剤、細胞増殖抑制剤、抗増殖剤または抗脈管形成剤であり、前記標的化分子は、腫瘍細胞に対して特異的であり、そして前記微粒子は、該腫瘍細胞を有する個体に投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
外科的インプラント、ステント、プロテーゼのカルシウム沈着を阻害するための方法であって、該方法は、外科的インプラント、ステント、もしくはプロテーゼの一部としてか、または外科的インプラント、ステント、もしくはプロテーゼに隣接して、カルシウム沈着を阻害する分子を含む微粒子を移植する工程を包含する、方法。
【請求項42】
前記分子は、オステオポンチンである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
微粒子上または該微粒子内に高密度で組み込まれた治療剤、栄養剤、診断剤または予防剤を送達するための高密度微粒子を備える、組織工学マトリックス、創傷包帯、または医療用インプラント。
【請求項44】
前記微粒子は、該微粒子の表面に組み込まれた第1の末端、および該微粒子の表面から外向きに向かう第2の末端を有するリガンドを含み、該リガンドは、該微粒子の表面上に高密度で存在し、かつ送達される薬剤に結合され、該送達される薬剤は、治療剤、栄養剤、診断剤および予防剤、標的化分子および結合分子からなる群より選択される、請求項43に記載のマトリックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−512350(P2008−512350A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519462(P2007−519462)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/023444
【国際公開番号】WO2006/080951
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(506361834)イェール ユニバーシティ (6)
【Fターム(参考)】